JP2006334269A - ゴルフクラブ - Google Patents
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Abstract
【課題】
打球時の衝撃を緩和してボールコントロール性を高めるとともに、広いスイートスポットの領域を有するゴルフクラブを提供する。
【解決手段】
ヘッドのフェイス面に薄板状の金属フェイス材を取り付け、該フェイス材は、厚さ方向に細孔が疎、密、疎の3層状に形成された多孔質焼結体であり、ゴルフボールがショット時にヘッドのフェイス面に当接した際に、打球時の衝撃振動を多孔質焼結体の細孔部で吸収してゴルフボールインパクト時のプレイヤーへの衝撃を和らげる。
【選択図】図4
打球時の衝撃を緩和してボールコントロール性を高めるとともに、広いスイートスポットの領域を有するゴルフクラブを提供する。
【解決手段】
ヘッドのフェイス面に薄板状の金属フェイス材を取り付け、該フェイス材は、厚さ方向に細孔が疎、密、疎の3層状に形成された多孔質焼結体であり、ゴルフボールがショット時にヘッドのフェイス面に当接した際に、打球時の衝撃振動を多孔質焼結体の細孔部で吸収してゴルフボールインパクト時のプレイヤーへの衝撃を和らげる。
【選択図】図4
Description
本発明は、打球時の衝撃を緩和してボールコントロール性を高めるとともに、広いスイートスポットの領域を有するゴルフクラブに関する。
ゴルフクラブは、パター,アイアン,ドライバーの3種を有し、パターヘッドとアイアンヘッドは金属製である。ドライバーヘッドには、柿木,桜木などの天然木材製のウッドヘッド、金属製のメタルヘッド、炭素繊維などの繊維強化プラスチック製のカーボンヘッドなどがある。ドライバーヘッドにおいて、ウッドヘッドおよびカーボンヘッドでは、打球面保護のために金属フェイス材が固着されている。メタルヘッドならびにパターヘッドとアイアンヘッドでも、別種の金属フェイス材を取り付けることがある。
これらのフェイス材は、ステンレス,チタン,アルミニウムなどの金属または合金を薄板状に成形することで製造する。フェイス材は、それを構成する金属の硬度を高めて耐久性と打球への反発力を増大させるのが普通であり、フェイス面の硬度を高めることにより、打球から受ける衝撃力に対する耐変形性が向上する。この反面、フェイス材の硬度を高くしすぎると、打球時にプレイヤーに対する衝撃が大きくなり、ボールコントロールが難しくなるので、耐変形性の向上には限界がある。
打球時におけるプレイヤーに対する衝撃を緩和してボールコントロール性を高めるために、特開平10−277180号では、ヘッド内のフェイス面の背後に空隙率5〜40%の衝撃緩和空間を形成し、該空間内に硬質金属粒をスイング前後方向に移動可能に収容する。このゴルフクラブでは、スイング時に硬質金属粒が空間内でスイング後方向に移動し、打球時に硬質金属粒が空間前方に高速移動して、該空間内のフェイス面背後の内壁面に衝突することで打球時の衝撃を緩和する。また、特開2001−231895号では、打球平面の中央付近に高硬度部および周辺部分に低硬度部を有する金属製フェイス材を備え、ゴルフボールが当接するフェイス材の中央付近が打球時の衝撃を受け止めてゴルフボールを弾発する。このフェイス材の中央付近は高硬度に設定されているので耐変形性が十分に向上し、一方、フェイス材の周辺部分は比較的低硬度に設定されることにより、打球時にプレイヤーへの衝撃を和らげ、ボールコントロール性を向上させる。
特開平10−277180号公報
特開2001−231895号公報
ゴルフクラブは、ヘッドのフェイス面のほぼ中央にスイートスポットが存在し、スイートスポット以外の位置でゴルフボールを打撃すると、グリップを握った手に対する衝撃が大きく、打球距離が損なわれるうえに、ボールを正確にコントロールすることができない。特開2001−231895号に開示のクラブヘッドでは、スイートスポットの領域はフェイス材の中央付近であるから、スイートスポットの領域は多少広がるだけである。初心者の場合には、スイートスポット以外の領域で打球し、その打球時の衝撃がシャフトを経てグリップに伝わって手が痺れることを回避できない。
一方、特開2001−231895号に開示のゴルフクラブは、フェイス面積に対する衝撃緩和空間の縦断面積分がすべてスイートスポットであるとすれば、スイートスポットの領域はかなり広がるけれども、フェイス面すべてスイートスポットになるわけでなく、スイートスポット以外の領域で打球することはやはり発生する。このゴルフクラブは、構造上パターに適用することができない。また、内部構造が複雑化して製造コストがアップするという問題もある。
本発明は、ゴルフクラブに関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、ヘッドのフェイス面に多孔質焼結体のフェイス材を取り付けることにより、打球時の衝撃を緩和してボールコントロール性を高めるゴルフクラブを提供することを目的としている。本発明の他の目的は、フェイス材を構成する多孔質焼結体全体がスイートスポットであることにより、スイートスポットの領域を広くしたゴルフクラブを提供することである。本発明の別の目的は、打球時の衝撃緩和と広いスイートスポットを形成することがパターにも適用可能であるゴルフクラブを提供することである。
本発明に係るゴルフクラブは、打球面であるヘッドのヒッティング面に薄板状の金属フェイス材を取り付け、該フェイス材は、厚さ方向に細孔が疎、密、疎の3層状に形成された多孔質焼結体である。このゴルフクラブは、ゴルフボールがショット時にヘッドのフェイス面に当接した際に、打球時の衝撃振動を多孔質焼結体の細孔部で吸収してゴルフボールインパクト時のプレイヤーへの衝撃を和らげる。パターヘッドの場合には、そのフェイス面に多孔質焼結体のフェイス材を固着すると好ましい。
本発明のゴルフクラブは、ヘッドの鋳造の際に、1枚または複数枚の多孔質焼結体を鋳型の中に配置した後に溶湯を鋳型内へ注ぎ込むことにより、ヘッド内部に多孔質焼結体が埋設されている。このゴルフクラブは、ゴルフボールがショット時にヘッドのフェイス面に当接した際に、打球時の衝撃振動をヘッド中の多孔質焼結体の細孔部で吸収してゴルフボールインパクト時のプレイヤーへの衝撃を和らげる。
本発明のゴルフクラブにおいて、多孔質焼結体は、ゴルフボールからの衝撃を受け止めてゴルフボールを弾発する際の耐変形を発揮できる硬度を有する。また、多孔質焼結体の原料である金属チップは、1種または2種以上の金属の粉粒体または切削屑であると好ましく、鋳鉄切削屑,炭素鋼片,ステンレス鋼片、チタン粉末またはアルミニウム合金粉末のいずれかであるといっそう好ましい。
本発明を図面によって説明すると、図1に例示するように、パター、アイアンやウッドなどのゴルフクラブ1は、そのフェイス面に薄板状の金属フェイス材2を取り付ける。この取り付けは、ロウ付けや接着剤による接着またはボルト止めなどのいずれでもよい。フェイス材2は、図2に示すように、厚さ方向に細孔が疎、密、疎の3層の一体構造である多孔質焼結体3で構成する。フェイス材2として用いる多孔質焼結体3は、通常単体で使用し、所望に応じて厚みの異なるものを複数枚重合接着して用いてもよい。
多孔質焼結体3では、図2に示すように、外表面5の気孔が疎く且つ内部6の気孔が密になり、厚さ方向に細孔が疎、密、疎の3層状に形成されている。多孔質焼結体3は、一般に、粒径6〜50メッシュの金属チップを用いて、通電加熱と加圧によって平板状に成形する。この成形時に、各金属チップの表面が溶けてチップ相互間で融着するとともに、熱が焼結体内部に逃げて冷却するので、厚さ方向に細孔が疎、密、疎の3層状になる。
ゴルフクラブ1でゴルフボール7を打球すると、フェイス材2の多孔質焼結体3において、直角に加えられた衝撃による振動エネルギが粗い気孔の外表面5の窪みに吸い込まれてから、図2の矢印で示すように密な気孔の内部6で圧縮され、ごく微小な熱となって外部へ逃げていく。つまり、多孔質焼結体3は、振動エネルギを熱エネルギに変換することにより、その衝撃振動を吸収する内部損失型の防振材であり、衝撃力が大きくなっても吸収量は減少せず、場合によってはむしろ向上する。多孔質焼結体3は、衝撃吸収時に形状が変化しないので、ゴルフクラブ1のフェイス材2として使用可能である。
図3において、多孔質焼結体3の物性を他の素材のそれと比較し、鋳鉄の切削屑が原材料である多孔質焼結体3などの素材について、振動減衰率およびヤング率の領域をグラフで示す。図3において、多孔質焼結体3は、その振動減衰率が0.1前後であるので、ゴム並みに振動を吸収するうえに、ヤング率が5.0×109N/m2以上であるので剛性であり、ゴムやバネのように変位しない。多孔質焼結体3であるフェイス材2は、打球による衝撃を吸収することにより、打球の際にゴルフクラブ1のヘッドおよびシャフトが振動することを防ぐことにより、ボールコントロール性を高めるとともに、初心者が打球時に手が痺れることが解消する。
多孔質焼結体3は、本発明者が発明した表面が粗い金属製品であり、鋳鉄やアルミニウムなどの金属細片を高電流で直接通電加熱するとともに加圧によって製造する(特公昭58−52528号、米国特許第4443404号、日本特許第3259006号参照)。多孔質焼結体3は、単一または2種以上の金属チップから製造する。この金属チップは、金属の粉粒体や切削屑(ダライ粉)などであり、2金属成分を有する合金でも、形状や種類の異なる複数の金属チップを混合してもよい。この金属チップとして、鋳鉄切削屑,炭素鋼片,ステンレス鋼片のような鉄系金属、アルミニウム粉末,Al−Si合金切削屑のようなアルミニウム系金属、チタン粉末のようなチタン系金属などが例示できる。
多孔質焼結体3には、衝撃力が比較的強くないパターやアイアンの用途では、金属チップのほかに、ガラス粒、フェライト粉末、セメント粉および/または熱硬化性樹脂を少量添加して一体化させてもよい。この熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,フェノール樹脂,ジアリルフタレート樹脂などであり、他の添加物と混合して添加することも可能である。多孔質焼結体3は、セラミックスや合成樹脂などを少量含有していても、これらが一体化することで所望の物性を発揮できる。多孔質焼結体3において、前記の添加物が全体量の約10重量%以下であると十分に多孔質を維持するため、高い振動減衰率を要するフェイス材2では金属チップが約90重量%以上であると好ましい。
多孔質焼結体3を製造するには、例えば、四角筒形の型枠を有する成形装置(図示しない)によって製造し、該型枠の内に混合した金属チップを充填する。この成形装置では、水平のセラミックス板の上に、同一表面積である1対の矩形状の電極板を対向設置し、これと直交して1対の矩形状の耐熱側壁を設置して型枠を構成している。一方の電極板の側端には低電圧トランスからの電線を接続し、且つ他方の電極板における反対側の側端にも電線を接続する。
原料の金属チップは、型枠内にほぼ均等に入れ、次にプレス型を下降させ、数千アンペアの高電流を流して加熱しながら加圧することで平板状に成形する。焼結加工時には、金属チップに最大8000アンペアの高電流を流して加熱成形し、電圧は通常20ボルトである。この際に、型枠内において加熱温度が1000℃前後に達しても、高電流を流すことで体積拡散を殆ど起こさない。また、空隙の球状化、微細空隙の減少や消滅のような現象が発生せず、金属チップ間の接触部で部分的に相互に溶融して結合している。
一方、図6に例示するように、本発明のゴルフクラブは、鋳造ヘッド8の内部に多孔質焼結体10が埋設されていてもよい。鋳造ヘッド8を製造するには、1枚または複数枚の多孔質焼結体10を公知の鋳型(図示しない)の中に配置して固定した後に、溶湯を鋳型内へ注ぎ込む。多孔質焼結体10は、図6のようにヘッド8に全体が埋設されても、部分的に埋設されて一部が露出していてもよい。部分的に埋設する場合には、多孔質焼結体10をあらかじめ砂型や金型などの鋳型壁面の中に嵌め込んだ態様で配置しておくことを要する。
多孔質焼結体10の総体積は、鋳造ヘッド8のパッティング部体積に対する体積比が通常10%以上であり、好ましくは15%以上である。多孔質焼結体10の体積比が10%未満であると、通常の鋳造ヘッドと比べて振動吸収性の差が少なく、その体積比が10%以上であれば振動吸収性が大きくなる。多孔質焼結体の体積比が15%以上であると、ゴルフクラブの衝撃振動をよく吸収してボールコントロール性を高めることが可能である。多孔質焼結体10は、一般に、鋳型内において垂直になるように定め、湯を鋳型内へ注ぎ込む際に湯の流れをスムースにしてヒケ巣や湯境が発生しないように配置する。
多孔質焼結体10はその空隙の中に空気を含んでいるため、溶湯を鋳型の中に注ぎ込む際に多孔質焼結体10中の空気が高温で急膨張することにより、鋳造ヘッド8内において多孔質焼結体10にねじれが発生しやすい。このような事態を回避するには、例えば、金型の一部に凹みまたは突起を設け、該凹みや突起に多孔質焼結体10を嵌めることにより、該焼結体を確実に固定して鋳込み時の位置ずれを防ぎ、鋳造後に多孔質焼結体10の突出部分を切削加工で削除すればよい。また、鋳造工程を2段階に分け、第1段階で各多孔質焼結体10の位置が固定する分だけ鋳込み、次の段階で鋳造ヘッド8の形状になるように鋳込んでもよい。鋳造で金属ソール(図示しない)をヘッド8に張り合わせる場合には、該ソールに各多孔質焼結体10を直角に溶接してから鋳込みを行ってもよい。
本発明に係るゴルフクラブヘッドは、打球面を有するヘッド本体と、打球面であるフェイス面に装着された薄板状の金属フェイス材とを備え、該フェイス材は多孔質焼結体である。多孔質焼結体のフェイス材は、ショット時にゴルフボールが直接当接し、ゴルフボールからの衝撃を受け止めて該ボールを弾発するとともに、打球時の衝撃振動をよく吸収し、ゴルフクラブのヘッドおよびシャフトが振動することを防いで殆ど変位しないので、その衝撃振動をシャフトつまりプレイヤーに伝達することがない。
本発明のゴルフクラブヘッドにおいて、フェイス材は、硬い多孔質焼結体であるので衝撃を受けたときにゴムのように変形することがなく、十分な耐変形性を有する。このフェイス材は、ゴルフボールインパクト時のプレイヤーへの衝撃を緩和し、打球時の衝撃によるブレや揺れを減らすことでボールコントロール性が向上する。パターヘッドであれば、その動きが安定してパッティング時のブレが解消し、ボールを真っ直ぐに転がし易くなる。ドライバーヘッドであれば、ショットが安定してボールを真っ直ぐに飛ばし易くなり、飛距離を稼ぐことができる。
本発明のゴルフクラブヘッドでは、打球点がフェイス材の平面内であれば、どの位置であっても衝撃振動をほぼ同等に吸収できることにより、実質的にスイートスポットが広がり、フェイス材の全表面に相当する。本発明のゴルフクラブヘッドのように、広いスイートスポットであると、初心者であってもミスショットすることなく、正確なドライバーショットを行うことが容易になる。
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明で用いる多孔質焼結体3を製造するには、例えば、成形装置として底面積675×675mmで高さ15cmである箱形の型枠を組み立てる。
この型枠では、水平の矩形耐熱性セラミックス板の上に、同一表面積である1対の矩形状の電極板を対向設置し、これと直交して1対の矩形状の耐熱側壁を設置する。一方の電極板の側端には低電圧トランス(図示しない)からの電線を接続し、且つ他方の電極板における反対側の側端に電線を接続する。水平のセラミックス板の中には熱電対を挿入しており、型枠内の温度を測定することが望ましい。
この型枠において、底面に市販の耐熱紙を平らに敷設し、その上に鋳鉄(FC−25、含有量:炭素約3.5 %,ケイ素約2.5%,マンガン約0.5%)の切削屑(ダライ粉)8.5kgを入れ、厚さ約15mmになるように均等にならす。その表面にさらに耐熱紙を平らに敷設する。次に、セラミックス製のプレス型を下降させると同時に電源を入れ、電流が5000アンペアになるまでプレス型を下げて加圧する。圧力210kg/cm2で加圧を継続すると、型枠内を通過する電流が0から5000アンペアへ急激に上昇し、さらに徐々に上昇を続けて加圧後10〜12分で6400アンペアに達する。電流は6400アンペアで平衡になるから、ここでプレス型を上げて成形板を取り出して冷却する。
得た金属焼結板は、平面がほぼ600×600mmの角形であり、気孔率約50%を有し、厚さ方向において外表面の気孔が疎く且つ内部の気孔が密になっている。この金属焼結板は、抗折力が全面的にほぼ等しくて150〜250kgf/cm2および圧縮強度が980〜1000kgf/cm2である。この金属焼結板を縦30等分および横10等分に切断し、平滑仕上げ加工した後に20×60×5mmの多孔質焼結板3を得る。
一方、ゴルフクラブ1のパターヘッド11は、図1に例示するように全長が120mmで横断面がほぼL字形である。パターヘッド11において、水平のソール部12の前端辺に沿った垂直立ち上がり部つまりパッティング部14は肉厚10mmを有し、その高さは25mm程度である。ソール部12は、図2に示すように、ヒール部20からトゥ部22へ向かって幅が狭くなるように形成されており、具体的には、ヒール部20の横幅が約50mm、トゥ部22の横幅が約20mmである。ヒール部20には、図4に示すように、高さ60mm程度の角柱形の首部18があり、該首部にシャフト16を接続する。ソール部12の肉厚は、最薄部で2〜3mmおよび最厚部で約6mmであり、その底面はほぼ平坦である。
パッティング部14の前端面がフェイス面24である。フェイス面24には、パターヘッド11の本来のスィートスポットがほぼ中心に位置するように浅い縦溝26を形成し、該縦溝は高さ20mm、長さ60mm、深さ5mmである(図2と図4参照)。縦溝26に嵌入する金属フェイス材2は前記の薄板状の多孔質焼結体3であり、該フェイス材を縦溝26に嵌入してロウ付けする。
フェイス材2は、図2に示すように、厚さ方向に細孔が疎、密、疎の3層の一体構造である多孔質焼結体3で構成する。フェイス材2の多孔質焼結体3は、ゴルフボール7を打球して衝撃が加わった際に、直角に加えられたその衝撃による振動エネルギを粗い気孔の外表面5の窪みに吸い込み、密な気孔の内部6で圧縮してごく微小な熱として外部へ逃散させる。
図5は、市販のパターヘッドでパッティングを行った際に、該ヘッドからシャフトへ伝達される衝撃振動を示すグラフであり、X軸は周波数(Hz)およびY軸は振動レベル(dB)である。図5において、実線はフェイス面に薄板状の多孔質焼結体を貼着した場合であり、点線は多孔質焼結体を貼着せず、フェイス面がそのままの場合である。図5のグラフから明らかなように、フェイス面に薄板状の多孔質焼結体を貼着すると、パターヘッドにおける打球時の衝撃振動をよく吸収し、その振動をシャフトに伝達することが減少することが判る。
フェイス材2の多孔質焼結体3は、図5に例示するように、ゴルフクラブの衝撃振動をよく吸収し、その振動をシャフトに伝達することが少ないから、パターヘッドの動きが安定してパッティング時のブレが解消し、図2の太い矢印のようにボールを真っ直ぐに転がし易くなり、ボールコントロール性を高める。また、打球点がフェイス材2の平面内であれば、どの位置であっても衝撃振動をほぼ同等に吸収できるから、スイートスポットがフェイス材2のほぼ全表面に広がり、初心者であっても正確なパッティングを行うことが容易である。
図6に示すゴルフクラブにおいて、パターヘッド8の形状は実施例1とほぼ同一である。パターヘッド8は、例えば、6Al−4V−Ti合金などをロストワックス法のような精密鋳造法によって製造する。ロストワックス法では、ロウの原型の周囲にアルミナやマグネシアなどの耐火物を被覆して十分乾燥させた後に、加熱などによってロウを溶かし出して鋳型とする。この鋳型内において、パッティング部30に該当するキャビティの中央に位置するように、高さ15mm、長さ60mm、厚さ5mmの多孔質焼結体10を横向きに垂直に配置して固定する。
パターヘッド8を鋳造するには、多孔質焼結体10の配置後に溶湯を鋳型内へ注ぎ込み、鋳造ヘッド8の内部に多孔質焼結体10を埋設する。パターヘッド8において、パッティング部30は、高さ約25mm、長さ120mm、厚さ15mmであり、その内部中央に多孔質焼結体10が存在する。パッティング部30のフェイス面32は、鋳造後に複数のライン溝を切削した後に平滑に研磨する。
パターヘッド8において、多孔質焼結体10の総体積は、パッティング部30の全体積に対する体積比が15%である。パターヘッド8でゴルフボールを打球すると、多孔質焼結体10がゴルフクラブの衝撃振動を吸収し、その振動をシャフトに伝達することがないから、ボールコントロール性を高めることができる。
図7と図8に示すゴルフクラブ34はドライバーの例であり、ウッド型のドライバーヘッド36にシャフト38を接続する。ドライバーヘッド36は、パーシモンなどの木材や合成樹脂からなるヘッド本体38と、ヘッド本体の後部表面を覆う金属製バックメタル(図示しない)と、ヘッド本体の下面を覆うソールメタル40とを有する。ヘッド本体38は、その前方側内部が中空であり、その内部にエポキシ樹脂やウレタン樹脂などの緩衝材42を充填し、ソールメタル40と緩衝材42との間には鉛シンカ44を埋設する。前方の打球面であるフェイス面には、平面が楕円形に近いフェイス材46を部分的に埋め込んで固着する。
フェイス材46は、主としてチタン粉末を焼結させた気孔率約40%を有する厚さ4mmの多孔質焼結板からなり、必要に応じてアルミニウム粉などを添加してもよく、該焼結板は厚さ方向において外表面の気孔が疎く且つ内部の気孔が密になっている。フェイス材46は、ゴルフボールを打球して衝撃が加わった際に、ほぼ直角に加えられたその衝撃による振動エネルギを焼結板の粗い気孔の外表面の窪みに吸い込み、密な気孔の内部で圧縮してごく微小な熱として外部へ逃散させる。
図9は、市販のドライバーヘッドでショットを行った際に、該ヘッドからシャフトへ伝達される衝撃振動を示すグラフであり、X軸は周波数(Hz)およびY軸は振動レベル(dB)である。図9のドライバーヘッドでは、フェイス材を多孔質焼結板で構成し、さらに該フェイス材の裏側中央からヘッド本体の内壁面まで別の多孔質焼結板を取り付けることにより、該フェイス材を確実に支持するとともに、衝撃振動をいっそう効果的に緩和する。図5のグラフから明らかなように、フェイス面に薄板状の多孔質焼結体を貼着すると、ドライバーヘッドにおける打球時の衝撃振動をよく吸収し、その振動をシャフトに伝達することが少なくなる。
フェイス材46の多孔質焼結体は、ドライバーの強い衝撃振動をよく吸収し、その振動をシャフトに伝達することがないから、ドライバーショットが安定してボールを真っ直ぐに飛ばし易くなる。また、打球点がフェイス材46の平面内であれば、どの位置であっても衝撃振動をほぼ同等に吸収できるから、スイートスポットがフェイス材46のほぼ全表面に広がり、初心者であっても正確なドライバーショットを行うことが容易である。例えば、図9のデータ測定に用いたドライバーでショットすると、打球したボールのスライスやフックが明らかに減少し、通常の飛距離が200ヤード前後のアマチュアが300ヤード近くまでキャリーで飛ばすことが可能になった。
図10に示すゴルフクラブ46はアイアンの例であり、アイアンヘッド48にはシャフト(図示しない)を接続すればよい。アイアンヘッド48は、フェイス材50と、バック部52および首部54を分割した構造である。フェイス材50は、実施例3と同様にチタン粉末を焼結させた厚さ4mmの多孔質焼結板からなる。バック部52および首部54は、例えば、SUS317系の析出硬化型ステンレス鋼(組成:16.5Cr−4.1Ni−4.0Cu−Nb添加)を使用し、精密鋳造または粉末冶金の凍結成形法によって製造する。分割して製造された各部品は、ロウ付けや接着剤などによって一体化する。
アイアンヘッド48は、バック部52および首部54が粉末冶金の凍結成形法で製造したステンレス鋼製であると、高強度を有するために首部54を細めにすることが可能である。フェイス材50は、ロフトとライ角を精度高く加工ができるうえに、ゴルフボールを打球して衝撃が加わった際に、その衝撃による振動エネルギを焼結板の粗い気孔の外表面の窪みに吸い込み、密な気孔の内部で圧縮してごく微小な熱として外部へ逃散させる。
1 ゴルフクラブ
2 フェイス材
3 多孔質焼結体
10 パターヘッド
14 パッティング部
16 シャフト
18 角柱形の首部
24 フェイス面
2 フェイス材
3 多孔質焼結体
10 パターヘッド
14 パッティング部
16 シャフト
18 角柱形の首部
24 フェイス面
Claims (6)
- ヘッドのフェイス面で打球するゴルフクラブにおいて、ヘッドのフェイス面に薄板状の金属フェイス材を取り付け、該フェイス材は、厚さ方向に細孔が疎、密、疎の3層状に形成された多孔質焼結体であり、ゴルフボールがショット時にヘッドのフェイス面に当接した際に、打球時の衝撃振動を多孔質焼結体の細孔部で吸収してゴルフボールインパクト時のプレイヤーへの衝撃を和らげるゴルフクラブ。
- 多孔質焼結体のフェイス材をパターヘッドのフェイス面に固着する請求項1記載のゴルフクラブ。
- ヘッドのフェイス面で打球するゴルフクラブにおいて、ヘッドを鋳造する際に、1枚または複数枚の多孔質焼結体を鋳型の中に配置した後に溶湯を鋳型内へ注ぎ込むことにより、ヘッド内部に多孔質焼結体が埋設されており、ゴルフボールがショット時にヘッドのフェイス面に当接した際に、打球時の衝撃振動をヘッド中の多孔質焼結体の細孔部で吸収してゴルフボールインパクト時のプレイヤーへの衝撃を和らげるゴルフクラブ。
- 多孔質焼結体は、ゴルフボールからの衝撃を受け止めてゴルフボールを弾発する際の耐変形を発揮できる硬度を有する請求項1または3記載のゴルフクラブ。
- 多孔質焼結体の原料である金属チップは、1種または2種以上の金属の粉粒体または切削屑である請求項1または3記載のゴルフクラブ。
- 多孔質焼結体の原料である金属チップは、鋳鉄切削屑,炭素鋼片,ステンレス鋼片、チタン粉末またはアルミニウム合金粉末のいずれかである請求項5記載のゴルフクラブ。
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