JP2006307331A - 耐摩耗性焼結部材およびその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性焼結部材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い耐摩耗性を示すとともに被削性にも優れた耐摩耗性焼結部材を提供する。
【解決手段】鉄基合金基地と、合金基地中に硬質粒子が析出分散する硬質相とからなり、上記鉄基合金基地中に前記硬質相が分散し、上記基地組織の全面にわたり結晶粒内に10μm以下のマンガン硫化物粒子が均一に分散するとともに、上記硬質相の上記合金基地中に10μm以下のマンガン硫化物粒子が分散する金属組織を呈する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、焼結部材の強度の低下を招くことなく被削性を向上させた耐摩耗性焼結部材およびその製造方法に係り、例えば、内燃機関のバルブシート等の耐摩耗性とともに被削性が要求される部材に好適な技術である。
粉末冶金法により製造される耐摩耗性焼結部材は、通常の溶製法により製造不可能な、所望の各種硬質相を、所望の基地中に分散させることができることから、各種摺動部材に適用されている。例えば、特許文献1で使用されている硬質相は、質量比で、Mo:26〜30%、Cr:7〜9%、Si:1.5〜2.5%、およびCo残部の組成を有するもので、この硬質相を5〜25質量%分散させることが記載されている。この種の硬質相は各種基地組織との組み合わせが多数提案されている。
一方、特許文献1で記載の耐摩耗性焼結合金は、基地および硬質相に高価なCoを含むもので、低価格化の要求に対し、高価なCoを含まない耐摩耗性焼結合金として特許文献2の耐摩耗性焼結合金が提案、実施されている。この特許文献2等において開示された硬質相は、成分組成が、質量比で、Cr:4.0〜25%、C:0.25〜2.4%、を必須とし、残部がFe、および不可避的不純物からなる硬質相形成粉末を用いるものであり、追加元素としてMo:0.3〜3.0%、V:0.2〜2.2%およびW:1.0〜5.0%の1種または2種以上を所望により選択できることが記載されている。このような硬質相形成粉末を用いた硬質相は、元の硬質相形成粉末部分に主としてCr炭化物よりなる硬質粒子群が析出するとともに、硬質相形成粉末中のCrが基地に拡散することで、Fe基地の焼き入れ性を向上させる結果基地組織をマルテンサイトにするとともに、元の硬質相形成粉末に近い部分はCr濃度が高くなってフェライトを形成する組織を呈する硬質相を形成する。すなわち、元の硬質相形成粉末部分に耐摩耗性を向上させるCr炭化物粒子群が析出し、その周囲をCr濃度の高いフェライトで覆うことでCr炭化物粒子群の脱落を防止し、さらにその外周では基地組織がマルテンサイトを呈することで基地の耐摩耗性を向上させる。この特許文献2の硬質相形成技術も各種基地との組み合わせが多数提案され、特許文献1の硬質相と組み合わせた耐摩耗性焼結合金もいくつか提案されている。
このようにして耐摩耗性を向上させるべく各種の硬質相が提案されているが、より近年の内燃機関の高効率化の要求に応えて、特許文献3,4の硬質相形成用合金粉末およびこれを用いた耐摩耗性焼結部材が提案されている。特許文献3は、上記特許文献1で使用の硬質相や、この硬質粒子の基地をFe基合金に変えた硬質相の改良にあたるもので、質量比で、Si:1.0〜12%、Mo:20〜50%、Mn:0.5〜5.0%、および残部がFe、Ni、Coのうち少なくとも1種と不可避的不純物よりなる耐摩耗性硬質相形成用合金粉末を提案するものである。特許文献3ではこのように基地にMnを追加して与えることで、基地強化、固着性良化の効果を果たし、耐摩耗性を向上させたことが記載されている。
また、特許文献4は、上記の特許文献1で使用の硬質相の改良にあたり、全体組成が、質量比で、Mo:48〜60%、Cr:3〜12%、Si:1〜5%であり、残部がCoおよび不可避的不純物であることを特徴とする硬質相形成用合金粉末を提案するものである。特許文献4では、Moの含有量を多くしてMo珪化物量を増大させて一体化したMo珪化物を析出させることで、塑性流動、凝着の発生を最小限に止めて耐摩耗性を改善することが記載されている。
このようにして内燃機関の高出力化の要求にしたがい、耐摩耗性焼結部材用の硬質相についても改良が重ねられ、耐摩耗性の向上を図ってきた。ところで、このような耐摩耗性焼結部材は、ニアネットシェイプに造形できるという利点を有するものの、一部の摺動部材においては、高精度化の要求の下、切削加工が必須となっている。例えば内燃機関に用いられるバルブシートはエンジンのヘッドに圧入されて使用されるが、同様に圧入されるバルブガイドとの同心度が要求され、バルブガイド加工用の切削工具とバルブシート加工用の切削工具が一体となった工具で加工されることでバルブガイドと同心に加工される。このような耐摩耗性焼結部材は、その耐摩耗性故に被削性が悪く、加工し難いという特徴を有している。このため、耐摩耗性焼結部材の被削性向上の方策も各種提案がなされ、実施されてきている。
最も一般的な手法は、上記の特許文献2の請求項4および9や、特許文献3の請求項5に記載されているように、原料粉末にMnS粉末等の被削性を改善するための粉末を添加混合して用い、焼結合金の気孔および粉末粒界にMnS粒子等の被削性改善物質粒子を分散させる手法である。特許文献5は、この手法の1種で、被削性改善物質として、メタ珪酸マグネシウム系鉱物とオルト珪酸マグネシウム系鉱物との少くとも1種を用いることを提案したもので、窒化硼素と硫化マンガンとの少なくとも1種とともに用いることを開示している。これらの新規な被削性改善物質は、劈開性を有することから、被削性を向上させる作用を有するものである。なお、この特許文献5の技術を上記特許文献1の合金に適用したものが特許文献6である。
また、上記の被削性改善物質添加による手法とは異なる被削性改善手法も提案されている。特許文献7は、上記特許文献2の硬質相形成粉末を用いるにあたり、MoS2粉末,WS2粉末,FeS粉末,CuS粉末の少なくとも1種よりなる硫化物粉末を併用することで、焼結時に硫化物粉末が分解して、Cr炭化物とともにCr硫化物を析出させることで硬質相部分の耐摩耗性と被削性を向上させる技術を開示している。さらに、特許文献8には、Mn:0.1〜8質量%を含有する鋼粉末にSが0.04〜5質量%となる量の金属硫化物粉末を配合し混合した混合粉末を、金型内で圧縮成形し、その成形体を900〜1300℃の温度範囲で焼結することによって、基地組織の全面にわたり結晶粒内に10μm以下のMnS粒子0.15〜10質量%を均一に析出分散させた焼結部材とする技術が開示されている。特許文献8には、これらの手法は被削性を向上させる硫化物を析出させることで被削性を改善するもので、上記の被削性改善物質添加法と併用できること、およびこれらの手法を併用することでより一層被削性を改善できることが記載されている。
特公平05−055593号公報(請求項1等) 特開平09−195012号公報(特許請求の範囲等) 特開2002−356704号公報(特許請求の範囲等) 特願2003−391954号(特許請求の範囲等) 特開平04−157139号公報(特許請求の範囲等) 特開平04−157138号公報(特許請求の範囲等) 特開2000−064002号公報(特許請求の範囲等) 特開2002−332552号公報(請求項8等)
上記のように耐摩耗性焼結部材は時代の要請にしたがい、より耐摩耗性を向上させるとともに、その被削性についても各種の改善がなされてきた。しかしながら、近年ではより一層の被削性改善の要求が高まってきており、上記の被削性改善技術のみでは、その要求に対応できなくなってきている。すなわち、上記の特許文献8では、図2に示すように、被削性を改善するMnSの析出が鉄基合金基地部分のみで、上記特許文献3や特許文献4のような耐摩耗性向上の観点より一層硬質となってきている硬質相に対しては被削性が不十分となる事態が生じてきている。そこで、本発明は、高い耐摩耗性を示すとともに被削性にも優れた耐摩耗性焼結部材を提供するとともに、その製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者等は上記特許文献8をベースに検討を行い、図1に示すように、鉄基合金基地部分のみではなく、硬質相部分にもマンガン硫化物を分散させて硬質相部分の被削性を改良することで、耐摩耗性焼結部材の被削性を向上できることを見出した。また、このマンガン硫化物の生成を安定して行える製造条件を見出した。すなわち、基地および硬質相のMnと結合させるためのS供給源となる、焼結時に分解しやすい硫化物の種類を特定した。さらに、硫化物粉末の大きさが硫化物の分解に影響を及ぼすことを見出し、その粒径を特定することで、安定したマンガン硫化物の生成が行えることを見出した。また、このような施策の下で得られた耐摩耗性焼結部材は、基地部分のみならず硬質相部分にもマンガン硫化物が析出し、被削性の向上が確認された。
本発明はその結果として為されたもので、具体的には、本発明の耐摩耗性焼結部材は、鉄基合金基地と、合金基地中に硬質粒子が析出分散する硬質相とからなり、前記鉄基合金基地中に前記硬質相が分散する耐摩耗性焼結部材において、前記基地組織の全面にわたり結晶粒内に10μm以下のマンガン硫化物粒子が均一に分散するとともに、前記硬質相の前記合金基地中に10μm以下のマンガン硫化物粒子が分散する金属組織を呈することを特徴とする。
本発明の耐摩耗性焼結部材の製造方法は、Mn:0.2〜3質量%を含有する基地形成用鋼粉末に、Mn:0.5〜5質量%を含有する硬質相形成用合金粉末と、二硫化モリブデン粉末、二硫化タングステン粉末、硫化鉄粉末、硫化銅粉末のうち少なくとも1種からなるとともに、Sが0.04〜5質量%となる量の硫化物粉末とを配合し混合した混合粉末を、金型内で圧縮成形し、その成形体を1000〜1300℃の温度範囲で焼結することを特徴とする。
本発明の耐摩耗性焼結部材によれば、基地部分のみならず硬質相部分にも微細なマンガン硫化物を析出分散させることで、従来に比べて、耐摩耗性焼結部材の被削性を大きく向上することが可能となる。また、本発明の耐摩耗性焼結部材の製造方法によれば、上記のマンガン硫化物を安定して析出させることで、上記の耐摩耗性焼結部材の被削性改善効果を安定して与えることが可能となる。
本発明は、基地部分と硬質相部分(析出物分散型硬質相の合金基地部分)にそれぞれMnを固溶させて与えておき、別途添加する硫化物粉末から焼結時に分解して生じるSとMnを反応させて、図1に示すように、基地部分と硬質相部分にそれぞれ微細なマンガン硫化物を析出させるものである。このとき、析出するマンガン硫化物の大きさが大きいと、マンガン硫化物が偏在することとなって耐摩耗性焼結部材に均一に被削性を付与できなくなるため、析出するマンガン硫化物の大きさは10μm以下であることが好ましい。
ところで、金属硫化物は全て安定であるという認識があったが、実際には、一部の金属硫化物は、焼結時に分解することが、上記特許文献7,8等により確認されている。実際に、参考文献1(化学大辞典9縮刷版 共立出版株式会社 昭和39年3月15日発行)によると、下記の事項が記載されている。すなわち、金属硫化物のうち、硫化マンガン(MnS)は融点が1610℃と高く、水素と1200℃で加熱しても侵されないことが記載され、硫化マンガン(MnS)は分解し難いものであることがわかる。また、硫化クロム(CrS)は融点が高く、水素と1200℃でも還元されないと記載され、分解し難い金属硫化物であることがわかる。
一方、二硫化モリブデン(MoS)については、電気炉で加熱すればMo2S3を経て金属モリブデンとなり、空気中で加熱すれば550℃で酸素と反応して三酸化モリブデンと二酸化硫黄に分解したり、水蒸気と赤熱で反応したりすることが記載されており、分解しやすいものであることがわかる。また、二硫化タングステン(WS)については、真空中で熱すると1100℃から分解を始め、水素では800℃でタングステンとなることが記載されており、これも分解しやすいものである。さらに、硫化鉄(FeS)については、空気中で加熱すると約200℃で酸化鉄になったり、水素気流中で強熱すると鉄になったり、炭素と1200℃以上に加熱すると鉄と二硫化炭素になったりすることが記載され、分解しやすいものである。加えて、硫化銅(CuS)については、加熱220℃で分解が始まり硫化第一銅(CuS)を生じてSが生じることが記載され、これも分解しやすいものである。
以上の二硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化鉄、および硫化銅は特定の条件下で分解しやすいことが記載されているが、実際の焼結過程においては、雰囲気中に含まれる水分、酸素、水素および鉄粉表面に吸着する水分や酸素の脱着により分解条件が満たされて分解することがあると考えられる。また上記の参考文献1に記載の条件は、あくまで硫化物単体で存在した場合の分解条件についてであり、金属粉末と硫化物粉末との混合物の焼結過程において、硫化物が高温で活性となった金属表面と反応したり、高温で活性となった金属表面が触媒として作用して硫化物の分解を促進することは十分考えられる。本発明においては、上記の分解しやすい二硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化鉄、および硫化銅を粉末の形態で原料粉末に添加することで、焼結過程で硫化物粉末の分解を生じさせて、Sを基地および硬質相に確実に供給する。また、これらの硫化物粉末が分解して生成する金属成分は基地中に拡散して基地の強化に働く。これらの硫化物粉末のうち、特に二硫化モリブデン粉末を用いることが好適である。
上記の硫化物粉末を用いて、基地部分および硬質相部分に十分な量のマンガン硫化物粒子を析出分散させるためには、硫化物粉末の添加量は、S分として0.04質量%以上が必要となる。一方、過大な硫化物粉末の添加は、分解後に残留する気孔量が増大することによって耐摩耗性焼結部材の強度低下を引き起こし、これに起因して耐摩耗性の低下を招くこととなるため、その上限をS分として5質量%となる量に止めるべきである。
原料粉末に与えた硫化物粉末を焼結過程で完全に分解するためには、焼結温度を1000℃以上とする必要がある。この温度域では焼結過程で活性となった金属粉末表面と硫化物粉末が反応して硫化物粉末の分解が確実に行える。ただし、1300℃を超えて加熱すると炉の損耗等が大きくなり経済的ではないため、焼結温度上限は1300℃とした。
また、原料粉末に与えた硫化物粉末を焼結過程で完全に分解するためには、硫化物粉末の粒径が重要である。すなわち、金属粉末に接触した部分で分解反応が活性となるため、大きい硫化物粉末の形態で与えると、一部で分解反応が不十分となり、S供給量にバラツキが発生し、基地部分および硬質相部分で析出するマンガン硫化物の量が安定しなくなる。したがってこの事態を避けるためには硫化物粉末の粒径は小さいものが適しており、具体的には、最大粒径が100μm以下で、平均粒径が50μm以下の粉末であると、添加した硫化物粉末の分解が確実に行えて、安定したマンガン硫化物の生成が可能となる。さらに、粒径の大きい硫化物粉末を用いた場合、硫化物粉末が分解して消失した後、元の粉末部分が粗大なカーケンダル気孔として残留して、強度および耐摩耗性低下の原因となることからも、上記の粒径範囲の硫化物の使用が求められる。
さらに、硫化物粉末の分解においては、焼結雰囲気の影響が大きく、金属粉末表面を活性化するため、焼結雰囲気を、真空雰囲気中もしくは露点が−10℃以下の分解アンモニアガス、窒素ガス、水素ガス、アルゴンガスのいずれかの雰囲気とすると、金属粉末表面が清浄となり活性化して、硫化物粉末の分解が確実に行えるようになる。一方、酸素分をある程度以上含む焼結雰囲気であると、金属粉末表面が酸化して活性な状態とならず、また硫化物粉末が分解しても容易に酸素と結合して有害なSOが発生しやすくなるため、これは避けるべきである。
本発明における硬質相には、析出物分散型の硬質相が適しており、上記特許文献1、3および4に使用されているようなMo珪化物析出型の硬質相、上記特許文献2等に使用されているようなCr炭化物析出型の硬質相、従来より用いられている高速度工具鋼系の硬質相(W、Mo、Cr等炭化物析出型)等を適用することができる。本発明においては、これらの析出物分散型の硬質相の合金基地部分にMnを固溶して与えることで、別途添加する硫化物粉末から焼結時に分解して生じたSと合金基地部分のMnが結合して、結晶粒内に10μm以下の微細なマンガン硫化物粒子を生成する。析出分散型の硬質相の合金基地部分は上記特許文献1、3および4に使用されているCo基合金、特許文献2および3に使用されているFe基合金等とすることができる。
なお、硫化物の形成能は電気陰性度と相関があり、Sは電気陰性度の低い元素と結合して硫化物を形成しやすいという傾向を有する。ここで、各元素の電気陰性度は、
Mn(1.5)<Cr(1.6)<Fe,Ni,Co,Mo(1.8)<Cu(1.9)
の順となっており、Mnが最も結合しやすいため、選択的にマンガン硫化物を析出させることができる。この序列は上記の参考文献1の記載とも一致する。
このような析出物分散型の硬質相は、硬質相を形成する成分を合金化した合金粉末を原料粉末に添加することで容易に形成することができる。硬質相形成用合金粉末の添加量は基地形成用鋼粉末よりも少なく、元々の粉末硬さも硬いものが用いられていることから、Mnを含有することで粉末硬さが増加しても、基地形成鋼粉末の場合ほど、原料粉末の圧縮性に及ぼす影響は少ない。また、硬質相においては硬質粒子が析出するため被削性が悪いが、このような硬質相の被削性を改善するためには、基地部分よりも多量のマンガン硫化物が必要となる。このため、硬質相部分(析出物分散型の硬質相の合金基地部分)に被削性改善に必要なマンガン硫化物を析出させるためには硬質相部分に固溶するMn量を0.5質量%以上とする必要がある。一方で過剰なMnの添加は、硬質相形成用合金粉末の硬さを増加させて圧縮性を損なうため、その添加量を5質量%以下とする必要がある。
具体的には、Mo珪化物析出型の硬質相を形成する場合には、組成が、質量比で、Mo:10〜50%、Si:0.5〜10%、Mn:0.5〜5%、および残部がFeまたはCoと不可避的不純物からなる合金粉末を用いることが望ましい。また、Cr炭化物析出型の硬質相を形成する場合には、組成が、質量比で、Cr:4〜25%、Mn:0.5〜5%、C:0.25〜2.4%を含有し、所望によりMo:0.3〜3%、V:0.2〜2.2%、W:1〜5%のうちの1種もしくは2種以上を含有し、残部がFeと不可避的不純物からなる合金粉末を用いるとともに、原料粉末にCr炭化物形成用の所定量の黒鉛粉末を同時に与えることが望ましい。さらに高速度工具鋼系の硬質相を形成する場合には、組成が、質量比で、Cr:3〜5%、W:1〜20%、V:0.5〜6%、Mn:0.5〜5%、C:0.6〜1.7%を含有し、所望によりMoまたはCoの少なくとも1種:20%以下を含有し、残部がFeと不可避的不純物からなる合金粉末を用いるとともに、原料粉末にCr、W、V、Mo等の炭化物形成用の所定量の黒鉛粉末を同時に与えることが望ましい。
このような析出物分散型の硬質相は、耐摩耗性焼結部材の耐摩耗性の観点より、原料粉末中への硬質相形成用合金粉末の添加量を2〜40質量%とし、耐摩耗性焼結部材中の分散量を2〜40質量%とすると好適である。すなわち、硬質相の分散量が2質量%に満たないと耐摩耗性向上の効果が乏しく、一方、硬質相の分散量が40質量%を超えると、原料粉末の圧縮性が低下する結果、耐摩耗性焼結部材の強度が低下し、そのため耐摩耗性の低下が生じることとなる。
また、上記の析出物分散型硬質相のうち、Mo珪化物分散型の硬質相は、Mo珪化物が自己潤滑性を有することが従来より知られており、相手攻撃性および自己の耐摩耗性の観点より特に推奨される。
耐摩耗性焼結部材の基地部分は、上記特許文献8のように、Mnを固溶して与えることで、別途添加する硫化物粉末から焼結時に分解して生じたSと合金基地部分のMnが結合して結晶粒内に10μm以下の微細なマンガン硫化物粒子を生成するものであるが、このマンガン硫化物を確実に析出させるためには基地部分に固溶するMn量を0.2質量%以上とする必要がある。一方、基地中に硬質粒子が分散する耐摩耗性焼結部材においては、基地形成用鋼粉末よりも硬質な硬質相形成用合金粉末が添加される。よって、原料粉末としての圧縮性をある程度確保するためには、硬質相が分散しない焼結部材に比して、原料粉末の大部分を占める基地形成用鋼粉末の圧縮性をある程度確保することが重要である。このため、硬質相が分散しない焼結部材の場合よりも、基地形成用鋼粉末に固溶するMn量を抑制する必要がある。具体的には、基地形成用鋼粉末へ3質量%を超えてMnを与えると、基地形成用鋼粉末の硬さが高くなって原料粉末全体の圧縮性を損なうため、基地形成用鋼粉末へのMn添加量を3質量%以下とする必要がある。
また、上記のように基地形成用鋼粉末に与えるMn量は0.2〜3質量%、および硬質相形成用合金粉末に与えるMn量は0.5〜5質量%であるが、耐摩耗性焼結部材の被削性の点から、硬質かつ被削性の悪い硬質相部分により多量のマンガン硫化物を付与する方が被削性改善の効果が高く、このことから基地形成用鋼粉末に含有するMn量よりも硬質相形成用合金粉末に含有するMn量を多く与えることが推奨される。
さて耐摩耗性焼結部材の鉄基合金基地について考察すると、耐摩耗性焼結部材の自己の耐摩耗性および相手攻撃性の観点、および自己の強度の観点より鉄基合金基地の組織をベイナイトとすると好適である。このような基地組織のベイナイト化にはMo、Ni、Cr等の合金元素の添加が有効であり、この効果を基地組織全面に均一に及ぼすため、これらの合金成分をFeに合金化させたFe合金粉末を使用することが推奨される。具体的には、基地形成用鋼粉末の組成として、質量比で、Ni:0.5〜4.5%、Mo:0.5〜5.0%、Cr:0.1〜3.0%、Mn:0.2〜3.0%、および残部がFeおよび不可避的不純物からなる合金粉末を用いることが推奨される。すなわち、Ni:0.5質量%未満、Mo:0.5質量%未満、Cr:0.1質量%未満では基地のベイナイト化が不十分となる。一方、Ni:4.5質量%超では基地の焼き入れ性が向上する結果組織の一部が硬いマルテンサイトとなり、摺動する相手部材の摩耗を促進することとなる。また、Cr:3.0質量%超では合金粉末表面にCrの不動態膜が形成されるようになって、焼結性が悪化して強度および耐摩耗性低下が生じることとなる。さらに、Ni:4.5質量%超、Mo:5.0質量%超、Cr:3.0質量%超では合金粉末の硬さが高くなって圧縮性が低下し、このため強度および耐摩耗性低下が生じることとなる。
ただし、耐摩耗性焼結部材においては鉄基合金基地中に硬質相が分散する構成となっており、硬質相形成用合金粉末から一部成分が基地形成用鋼粉末に拡散して、鉄基合金基地の硬質相周囲の一部がベイナイト以外の組織となる場合があるが、これは硬質相の影響で避けられないものであるから許容する。すなわち、基地組織全体をベイナイトとする必要はなく、基地の大部分がベイナイトとなればよく、Ni粉末添加等を行って積極的に異なる金属組織(この例の場合はマルテンサイトとオーステナイト)を形成しなければよい。
原料粉末に与える黒鉛粉末は、基地組織の強化に働き、炭化物析出型硬質相を用いる場合に炭化物形成のためのC供給源として働く。基地強化のために必要なC分は0.3質量%以上であり、黒鉛粉末として0.3質量%の添加が必要となる。またC分が過剰な場合には、基地組織中にセメンタイト等の硬質かつ脆いFeC化合物が析出するようになり、強度および耐摩耗性低下を招くことから、珪化物析出型硬質相を用いる場合にはその上限を1.2質量%とし、炭化物析出型硬質相を用いる場合にはその上限を2.0質量%とするべきである。
以上の基地形成用鋼粉末の推奨される組成および硬質相形成用合金粉末の推奨される組成より、推奨される耐摩耗性焼結部材の具体的な合金組成としては、Mo珪化物析出分散型硬質相の合金基地部分としてFe基合金を選択し、硫化物粉末として硫化鉄粉末を選択した場合に、全体組成が、質量比で、Ni:0.23〜4.39%、Mo:0.62〜22.98%、Cr:0.05〜2.93%、Mn:0.18〜3.79%、Si:0.01〜4.0%、S:0.04〜5.0%、C:0.3〜1.2%、および残部がFeおよび不可避的不純物である耐摩耗性焼結合金となる。また上記において硫化物粉末として硫化鉄粉末に替えて二硫化モリブデン粉末を用いる場合は、硫化物粉末が分解して生成した成分が基地成分に追加されるため、上記組成にMo:0.13〜6.86質量%が追加され、全体組成中のMo量は0.75〜29.84質量%となる。さらに上記において硫化物粉末として硫化鉄粉末に替えて二硫化タングステン粉末または硫化銅粉末を用いる場合は、同様に、上記組成に、W:0.12〜14.33質量%またはCu:0.08〜9.91質量%をさらに追加して含む組成となる。
Mo珪化物析出分散型硬質相の合金基地部分としてCo基合金を選択し、硫化物粉末として硫化鉄粉末を選択した場合に、全体組成が、質量比で、Co:0.7〜35.6%、Ni:0.23〜4.39%、Mo:0.62〜22.98%、Cr:0.05〜2.93%、Mn:0.18〜3.79%、Si:0.01〜4.0%、S:0.04〜5.0%、C:0.3〜1.2%、および残部がFeおよび不可避的不純物である耐摩耗性焼結合金となる。また上記において硫化物粉末として硫化鉄粉末に替えて二硫化モリブデン粉末を用いる場合は、上記組成にMo:0.13〜6.86質量%が追加され、全体組成中のMo量は0.75〜29.84質量%となる。さらに上記において硫化物粉末として硫化鉄粉末に替えて二硫化タングステン粉末または硫化銅粉末を用いる場合は、同様に、上記組成に、W:0.12〜14.33質量%またはCu:0.08〜9.91質量%をさらに追加して含む組成となる。
Cr炭化物析出型の硬質相を選択し、硫化物粉末として硫化鉄粉末を選択した場合に、全体組成が、質量比で、Ni:0.22〜4.39%、Mo:0.22〜4.88%、Cr:0.16〜11.79%、Mn:0.18〜3.79%、S:0.04〜5.0%、C:0.3〜2.0%で、所望により前記組成にMo:0.06〜0.12%、V:0.004〜0.88%およびW:0.02〜2.0%のうちの少なくとも1種以上を追加して含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である耐摩耗性焼結合金となる。また硫化物粉末として二硫化モリブデン粉末、二硫化タングステン粉末または硫化銅粉末を選択した場合は、全体組成は上記組成に、質量比で、Mo:0.13〜6.86%、W:0.12〜14.33%、およびCu:0.08〜9.91%のうちの少なくとも1種をさらに追加して含む組成となる。
高速度工具鋼系の硬質相を選択し、硫化物粉末として硫化鉄粉末を選択した場合に、全体組成が、質量比で、Ni:0.22〜4.39%、Mo:0.22〜4.88%、Cr:0.14〜3.79%、Mn:0.18〜3.79%、W:0.02〜8.0%、V:0.01〜2.4%、S:0.04〜5.0%、C:0.3〜2.0%で、所望により前記組成にMoまたはCoの少なくとも1種以上を8.0%以下追加して含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である耐摩耗性焼結合金となる。また硫化物粉末として二硫化モリブデン粉末、二硫化タングステン粉末または硫化銅粉末を選択した場合は、全体組成は上記組成に、質量比で、Mo:0.13〜6.86%、W:0.12〜14.33%、およびCu:0.08〜9.91%のうちの少なくとも1種をさらに追加して含む組成となる。
以上のように、基地形成用鋼粉末に0.2〜3質量%のMnを固溶させて与え、かつ硬質相形成用合金粉末に0.5〜5質量%のMnを固溶させて与えるとともに、S分として0.04〜5質量%の硫化物粉末を黒鉛粉末とともに与えて焼結時に硫化物粉末を分解させてS供給を行い両者にマンガン硫化物を析出分散させると、基地組織の全面にわたり結晶粒内に10μm以下のマンガン硫化物粒子が均一に分散するとともに、析出物分散型硬質相の合金基地中に10μm以下のマンガン硫化物粒子が分散する金属組織が得られる。また、そのときのマンガン硫化物粒子の分散量は、基地部分および硬質相部分を併せた耐摩耗性焼結部材中、0.3〜4.5質量%となり、被削性の向上に寄与する。
本発明の耐摩耗性焼結部材においては、従来より行われている被削性改善物質添加法を併用することができ、上記の耐摩耗性焼結部材の気孔中または粉末粒界に、珪酸マグネシウム系鉱物、窒化硼素、硫化マンガン、Ca弗化物、ビスマス、硫化クロム、鉛のうち少なくとも1種を分散させることができる。これらの被削性改善物質は高温でも安定であり、粉末の形態で原料粉末に添加しても焼結過程で分解せず、被削性改善物質として上記の箇所に分散して被削性を改善できる。この被削性改善物質添加法の併用により、より一層の耐摩耗性焼結部材の被削性改善を行うことができる。また、被削性改善物質添加法を併用する場合の被削性改善物質粉末の添加量は、過剰に添加すると耐摩耗性焼結部材の強度を損ない、耐摩耗性の低下を招くため、上限を2.0質量%に止めるべきである。
さらに、本発明の耐摩耗性焼結部材においては、上記特許文献2等で用いられているような、前記耐摩耗性焼結部材の気孔を、鉛または鉛合金、銅または銅合金、アクリル樹脂のうちのいずれかで満たす、被削性の改善技術を併用することができる。すなわち、アクリル樹脂、鉛または鉛合金、銅または銅合金は気孔中に存在し、切削時に切削形態を断続切削から連続切削に変化させ、工具に与える衝撃を減少させて工具刃先の損傷を防止し、被削性を向上させる効果がある。また、鉛または鉛合金、銅または銅合金は軟質であるため、工具刃面に付着して工具の刃先を保護し、被削性および工具の寿命を向上させるとともに、使用時にバルブシートとバルブのフェイス面との間で固体潤滑剤として作用し、双方の摩耗を減少させる働きがある。さらに、銅または銅合金は熱伝導率が高く、切削時に刃先で発生する熱を外部へ逃がし、刃先部の熱のこもりを防止して刃先部のダメージを軽減する効果がある。
<実施例1>
表1に示す粉末組成の基地形成用鋼粉末を用意した。また、粉末組成が、質量比で、Mo:35%、Si:3%、Mn:2%、および残部がFeおよび不可避的不純物からなる硬質相形成用合金粉末と、最大粒径が100μmで、平均粒径が50μmの二硫化モリブデン粉末、および黒鉛粉末を用意した。これらの粉末を表1に示す割合で、成形潤滑剤(ステアリン酸亜鉛0.8質量%)とともに配合し、混合した混合粉末を成形圧力650MPaでφ30×φ20×h10のリングに成形した。次に、これら成形体を、アンモニア分解ガス雰囲気中で1160℃で60分間焼結し、表2に示す組成の試料01〜06を作製した。以上の試料について、金属組織観察によりマンガン硫化物の析出量について断面面積比の測定を行い、これを質量比に換算した値を表3の「MnS量」の欄に示す。また、以上の試料について、耐摩耗性の評価を簡易摩耗試験により行い、表3の「バルブ摩耗量」、「バルブシート摩耗量」に示すとともに、これらの総和を「合計摩耗量」の欄に示す。さらに、被削性の評価を簡易被削性試験により行った結果を表3の「加工穴数」の欄に示す。
簡易摩耗試験は、高温下で叩きと摺動の入力がかかる状態で行った。具体的には、上記リング状試験片を、内径面に45°のテーパ面を有するバルブシート形状に加工し、焼結合金をアルミ合金製ハウジングに圧入嵌合した。そして、SUH−36素材で作製した外形面に一部45°のテーパ面を有する円盤形状の相手材(バルブ)を、モータ駆動による偏心カムの回転によって上下ピストン運動させることにより、焼結合金と相手材とのテーパ面同士を繰り返し衝突させた。すなわち、バルブの動作は、モータ駆動によって回転する偏心カムによってバルブシートから離れる開放動作と、バルブスプリングによるバルブシートへの着座動作とを繰り返し、上下ピストン運動が実現される。なお、この試験では、相手材をバーナーで加熱して焼結合金が300℃となるように温度設定し、簡易摩耗試験叩き回数を2800回/分、繰り返し時間を15時間とした。このようにして、試験後のバルブシートの摩耗量およびバルブの摩耗量を測定して評価を行った。
簡易被削性試験は、5mm厚の板状に加工した試料に対してφ3mmの超硬チップドリルで穴を空ける試験で、チップドリル1本、5kNの一定荷重の条件下で空けることのできた穴の数を測定した。加工した穴の数が多ければ多いほど被削性がよいという評価である。
表1の試料番号03の試料について、顕微鏡で観察した金属組織写真を図3に、電子顕微鏡で観察した金属組織写真を図4に示す。図3および図4中、白っぽい微細な粒子群が凝集したような相を示す部分が硬質相で、白っぽい微細な粒子がモリブデン珪化物析出粒子である。このモリブデン珪化物析出粒子間の隙間が硬質相の合金基地部分である。また、図3および図4の鉄基合金基地中および硬質相内に灰色の粒子が認められるが、この粒子は別途面分析を行った結果、この部分でMnとSが濃化して検出されており、マンガン硫化物を形成していることを確認した。また、Sの分散箇所と、Moの分散箇所が一致せず、二硫化モリブデンが焼結時に分解すること、および分解して生じたSは基地に与えたMnと選択的に結合することを確認した。さらに、灰色のマンガン硫化物の粒径は図4のゲージ(10μの表示の横の2本の白線の間の距離が10μm)を参照すると、全て10μm以下の微細なものであることが確認できる。そして図3より鉄基合金基地の組織はベイナイトであり、硬質相周囲は硬質相からの成分の拡散により一部異なる金属組織となっていることが確認できる。
表1〜3より、基地形成用鋼粉末中のMn量が、増加するにしたがい、マンガン硫化物の析出量が増加するが、基地形成用鋼粉末中のMn量が2.0質量%以上では、一定の析出量となっている。これは、Mnと結合するSが全体組成中0.4質量%と一定であるため、このSと結合して生成するマンガン硫化物の量が一定であり、それより過剰のMnが存在しても一定量以上のマンガン硫化物は析出できないためと考えられる。したがって、試料番号05および06の試料では、過剰のMnは基地に固溶されているものと考えられる。
このため、基地形成用鋼粉末中のMn量が増加するにしたがい、バルブシート摩耗量は低減するが、Mnが過剰となって基地に固溶する量が増加すると、基地が硬くなり却ってバルブシート摩耗量は増加する。さらに、基地形成用鋼粉末中のMn量が5質量%を超える試料番号06の試料では、多量のMnを基地形成用鋼粉末中に固溶して与えた結果、粉末の圧縮性が損なわれて、成形体密度の低下、およびこれにともなう焼結体密度の低下が生じて基地の強度が低下してバルブシートの摩耗量が増大するとともに、基地が過分に硬くなって相手材のバルブの攻撃性が高くなりバルブ摩耗量が増大して合計摩耗量が急激に増大していることがわかる。
被削性(加工穴数)も耐摩耗性と同様の傾向であり、基地形成用鋼粉末中にMnを含有しない試料番号01の試料では、基地中にマンガン硫化物が析出せず、加工穴数が低く、被削性が低いことがわかるが、基地形成用鋼粉末にMnを0.2質量%含有させると基地中にマンガン硫化物が析出して被削性が改善され加工穴数が飛躍的に伸びている。また、基地形成用鋼粉末中のMn量が増加するにしたがい、基地に析出するマンガン硫化物の量が増え、加工穴数はさらに増大している。ただし、基地形成用鋼粉末中のMn量が3.0質量%を超える試料番号06の試料では、基地に固溶するMnが過剰となり、大幅な被削性の低下が生じている。
以上より、基地形成用鋼粉末に0.2質量%以上のMnを含有させると基地中にマンガン硫化物が析出して被削性を改善するとともに耐摩耗性も改善されることが確認された。また、基地形成用鋼粉末に含有するMnは3.0質量%を超えると基地に固溶するMnが過剰となって、被削性改善効果および耐摩耗性改善効果を却って損なうことが確認された。
また、金属組織観察の際に確認したところ、試料番号01〜06の試料において、析出するマンガン硫化物の大きさはいずれも10μm以下であり、基地中に均一に分散していることを確認した。
<実施例2>
実施例1の試料番号03で用いた基地形成用鋼粉末(Mn含有量:0.5質量%)を用い、この粉末に、表4に示す組成の硬質相形成用合金粉末を5質量%と、黒鉛粉末1.0質量%と、最大粒径が100μmで平均粒径が50μmの二硫化モリブデン粉末1.0質量%とを、成形潤滑剤(ステアリン酸亜鉛0.8質量%)とともに配合し、混合した混合粉末を、実施例1と同じ試料作製条件で、表5に示す全体組成の試料番号07〜11の試料を作製した。これらについて、実施例1と同じ評価条件にて評価を行い、この結果を表6に示した。また、表4〜6に、実施例1の試料番号03の試料のデータを併記する。
表4〜6より、硬質相形成用合金粉末中のMn量が、増加するにしたがい、マンガン硫化物の析出量が増加するが、硬質相形成用合金粉末中のMn量が2.0質量%以上では、一定の析出量となっている。これは、実施例1の場合と同じで、S量が一定であるため、硬質相形成用合金粉末中のMnが一定量を超えると過剰となるためであり、このため試料番号10および11の試料では、過剰のMnは基地に固溶されている。
耐摩耗性の傾向も実施例1の場合と同様で、硬質相形成用合金粉末中のMn量が増加するにしたがい、バルブシート摩耗量は低減するが、一定量以上の添加は、硬質相の合金基地中に固溶するMnが過剰となって、Mn量が5質量%を超えると、相手材のバルブの攻撃性が高くなりバルブ摩耗量が増大して合計摩耗量も増大していることがわかる。
被削性も実施例1の場合と同様の傾向を示すが、硬質相形成用合金粉末中にMnを含有しない試料番号07の試料(特許文献8で開示の従来技術)では、硬質相中にマンガン硫化物が析出せず、マンガン硫化物の量は試料番号08の試料と大きな差はないものの、加工穴数が少なく、被削性が低いことがわかる。一方、Mnを0.5質量%含有させると硬質相の合金基地中にマンガン硫化物が析出して被削性が改善され加工穴数が増加している。また、硬質相形成用合金粉末中のMn量が増加するにしたがい、硬質相の合金基地に析出するマンガン硫化物の量が増え、加工穴数はさらに増大している。ただし、硬質相形成用合金粉末中のMn量が5質量%を超える試料番号11の試料では、硬質相の合金基地に固溶するMnが過剰となり、大幅な被削性の低下が生じている。
以上より、硬質相の合金基地部分にもマンガン硫化物を析出させることで、特許文献8に開示のものより被削性を向上させることができることが確認され、本発明の効果が確認された。また、その場合、硬質相形成用合金粉末に0.5質量%以上のMnを含有させることで被削性および耐摩耗性も改善できるが、硬質相形成用合金粉末に含有するMnが5質量%を超えると基地に固溶するMnが過剰となって、被削性改善効果および耐摩耗性改善効果を却って損なうことが確認された。
なお、試料番号07〜11の試料においても、金属組織観察の際にマンガン硫化物の大きさを確認したところ、いずれも10μm以下であり、基地中に均一に分散していることを確認した。
<実施例3>
実施例1の試料番号03で用いた基地形成用鋼粉末と硬質相形成用合金粉末を用い、これらの粉末に、1.0質量%の黒鉛粉末と、最大粒径が100μmで平均粒径が50μmであって、表7に示す添加量の二硫化モリブデン粉末とを、成形潤滑剤(ステアリン酸亜鉛0.8質量%)とともに配合し、混合した混合粉末を、実施例1と同じ試料作製条件で試料作製を行い、表8に示す全体組成の試料番号12〜16の試料を得た。これらについて、実施例1と同じ評価条件にて評価を行い、この結果を表9に示した。また、表7〜9に、実施例1の試料番号03の試料のデータを併記する。
表7〜9より、二硫化モリブデン粉末の添加量が増加するにしたがい、マンガン硫化物の析出量が増加するが、添加量が1質量%以上では析出量が一定となっている。これは、基地および硬質相に含有するMn量が一定であるため、このMn量と結合できるS量を超えて硫化物粉末を与えてもMn量を超える析出量は得られないためである。
このような状況の下ではあるが、二硫化モリブデン粉末の添加量が増加するにしたがい加工穴数は増加しつづけ、実施例1および実施例2に見られたような加工穴数の低下は見られない。これは実施例1および実施例2において検証したMnは、基地に固溶して基地硬さを上昇させるという作用があり、この作用により被削性を損なう方向に作用する結果、余剰のMnはマンガン硫化物析出による被削性改善の効果が相殺されて一定量以上のMnの付与は逆効果となるが、Sは上記のようなネガティブな作用は少なく、余剰のSは、Mnに次いで硫化物を形成しやすいCrや、その次に硫化物を形成しやすいFe,Co,Ni,Mo等と硫化物を形成して被削性の向上に寄与するためと考えられる。
一方、耐摩耗性は、マンガン硫化物の析出量が一定量まではバルブシート摩耗量が向上し良好な耐摩耗性を示すが、それを超えると徐々にバルブシート摩耗量が増加し、二硫化モリブデン粉末の添加量が12.65質量%(全体組成中のS量が5質量%)を超えて過剰となると、基地強度が低下する結果、急激な摩耗を引き起こしていることがわかる。
以上より全体組成中のS量で0.2質量%以上の硫化物粉末の添加は、被削性改善の効果および耐摩耗性改善の効果があるが、全体組成中のS量で5質量%を超える添加は、基地強度が低下する結果、耐摩耗性が低下することがわかった。
なお、試料番号07〜11の試料においても、金属組織観察の際にマンガン硫化物の大きさを確認したところ、いずれも10μm以下であり、基地中に均一に分散していることを確認した。
<実施例4>
基地形成用鋼粉末として、実施例1の試料番号02,05で用いた基地形成用鋼粉末およびこれらに対してMn以外の組成が等しくMnを含有しない基地形成用鋼粉末を用意した。また、硬質相形成用合金粉末として、実施例2の試料番号08,10で用いた硬質相形成用合金粉末およびMn以外の組成が等しくMnを含有しない硬質相形成用合金粉末を用意した。これらの粉末に、表10に示すように、黒鉛粉末1.0質量%と、最大粒径が100μmで平均粒径が50μmであって、表10に示す組成の二硫化モリブデン粉末を、成形潤滑剤(ステアリン酸亜鉛0.8質量%)とともに配合し、混合した混合粉末を、実施例2と同じ試料作製条件で試料作製を行い、表11に示す全体組成の試料番号17〜19の試料を得た。これらについて、実施例1と同じ評価条件にて評価を行い、この結果を表12に示した。
表10〜12より、実施例1〜3で求めた最小のMn量の基地形成用鋼粉末、および最小のMn量の硬質相形成用合金粉末を用い、最小量の硫化物粉末を添加した試料番号18の試料と、基地形成用鋼粉末および硬質相形成用合金粉末にMnを含有せず、硫化物粉末の添加も行わない試料番号17を比較すると、試料番号18の試料は、マンガン硫化物の析出量が0.3質量%であり、この量であってもマンガン硫化物が分散しない試料番号17の試料に比較して耐摩耗性および被削性(加工穴数)が向上しており、本発明の効果が確認された。また、試料番号19の試料は、実施例1〜3で求めた最大のMn量の基地形成用鋼粉末、および最大のMn量の硬質相形成用合金粉末を用い、最大量の硫化物粉末を添加した例であるが、この場合のマンガン硫化物の析出量は4.5質量%であり、上記の実施例1〜3で各条件が過剰である場合の実施例において見られたような、特性の大幅な低下は認められず、かつ極めて優れた被削性を示していることが確認された。
<実施例5>
基地形成用鋼粉末として実施例1の試料番号03で用いた基地形成用鋼粉末を用意するとともに、硬質相形成用合金粉末として表13に示す組成の硬質相形成用合金粉末を用意した。これらの粉末に、表13に示すように、黒鉛粉末1.0質量%と、最大粒径が100μmで平均粒径が50μmの二硫化モリブデン粉末1.0質量%を、成形潤滑剤(ステアリン酸亜鉛0.8質量%)とともに配合し、混合した混合粉末を、実施例1と同じ試料作製条件で試料作製を行い、表14に示す全体組成の試料番号20〜22の試料を得た。これらについて、実施例1と同じ評価条件にて評価を行い、この結果を表15に示した。また表13〜15には、比較のため、実施例1の試料番号03の試料および実施例4の試料番号17の試料(マンガン硫化物が分散しない例)のデータを併記した。
なお、試料番号20の試料で用いた硬質相形成用合金粉末は、試料番号03の試料で用いた硬質相形成用合金粉末の母材をFeからCoに変更したCo合金相中にMo珪化物が析出分散する硬質相の例、試料番号21の試料で用いた硬質相形成用合金粉末はCr炭化物析出型の硬質相の例、試料番号22の試料で用いた硬質相形成用合金粉末は高速度工具鋼系の硬質相(W、Mo、Cr等炭化物析出型)の例である。
表13〜15により、硬質相の種類を変更しても、マンガン硫化物が未分散の試料(試料番号17)に比べて、高い耐摩耗性と優れた被削性を実現しており、いずれの場合もほぼ同等の特性を示すことがわかる。このことより、析出物分散型硬質相においてMnを含有させて硬質相の合金基地部分にマンガン硫化物を析出させる本発明の技術は、上記の第実施例1〜4のFe基地中にモリブデン珪化物が析出分散する硬質相だけでなく、他の析出分散型硬質相においても同様の被削性および耐摩耗性の改善効果を有することが確認された。
<実施例6>
基地形成用鋼粉末として実施例1の試料番号03で用いた基地形成用鋼粉末と硬質相形成用合金粉末を用意し、黒鉛粉末を用意した。また、硫化物粉末として、二硫化タングステン粉末、硫化鉄粉末および硫化銅粉末を用意した。これらの粉末を、成形潤滑剤(ステアリン酸亜鉛0.8質量%)とともに表16に示す割合で配合し、混合した混合粉末を、実施例1と同じ試料作製条件で試料作製を行い、表17に示す全体組成の試料番号23〜25の試料を得た。これらについて、実施例1と同じ評価条件にて評価を行い、この結果を表18に示した。また、表16〜18には、硫化物粉末として二硫化モリブデン粉末を使用した実施例1の試料番号03の試料のデータを併記した。なお、硫化物粉末の添加量については、全体組成中のS量が0.4質量%になるように調整して添加を行った。
試料番号23〜25の試料について金属組織観察を行った結果、硫化物粉末の種類を二硫化モリブデン粉末から二硫化タングステン粉末、硫化鉄粉末、または硫化銅粉末に変更しても、二硫化モリブデン粉末の場合と同様に基地および硬質相の合金基地部分にマンガン硫化物が析出分散していることが確認できた。またこれらの試料において析出しているマンガン硫化物の粒径はいずれも10μm以下の微細なものであることも確認した。
表16〜18により、硫化物粉末の添加量を、全体組成中のS量が0.4質量%となるよう調整して添加した結果、マンガン硫化物の析出量はほぼ等しくなっており、いずれの試料においても良好な被削性と耐摩耗性を示している。以上より、マンガン硫化物の析出に有効な硫化物粉末は、二硫化モリブデン粉末に限らず、二硫化タングステン粉末、硫化鉄粉末、または硫化銅粉末に変更しても被削性および耐摩耗性を改善する効果があることが確認され、分解しやすい硫化物粉末であれば同様の効果があると考えられる。
<実施例7>
表19に示すように二硫化モリブデン粉末の粒径を変更した以外は実施例1の試料番号03の試料と同じ粉末を用い、実施例1と同じ試料作製条件で試料作製を行い、全体組成が、質量比で、Ni:1.49%、Mo:3.28%、Cr:0.19%、Mn:0.57%、Si:0.15%、C:1%、S:0.4%および残部がFeおよび不可避的不純物となる試料番号26および27の試料を得た。これらについて、実施例1と同じ評価条件にて評価を行い、この結果を表20に示した。また、表19および20には、実施例1の試料番号03の試料のデータを併記した。
表19および20より、硫化物粉末の粒径が、最大粒径100μm以下および平均粒径50μm以下の範囲では、添加した硫化物粉末の分解が十分に行われ、被削性および耐摩耗性は良好な値を示すが、最大粒径100μmおよび平均粒径50μmを超える硫化物粉末を用いた試料番号27の試料では、マンガン硫化物の析出量が減少していることから、硫化物粉末の分解が不十分であると考えられる。このため試料番号27の試料では耐摩耗性向上の効果が不十分でバルブシート摩耗量が増加するとともに、被削性向上の効果も不十分で加工穴数の大幅な減少が生じている。以上より、硫化物粉末として最大粒径が100μm以下、および平均粒径が50μm以下のものを用いることで、添加した硫化物粉末を十分に分解して、マンガン硫化物を十分に析出させることができることがわかった。
本発明は、硬質粒子が分散する耐摩耗性焼結部材の被削性を改善する技術に関し、例えば、内燃機関のバルブシート等の耐摩耗性とともに被削性を要求される部材に活用することができる。
本発明の耐摩耗性焼結部材の金属組織を示す模式図である。 従来の耐摩耗性焼結部材の金属組織を示す模式図である。 本発明の耐摩耗性焼結部材の顕微鏡観察による金属組織写真である。 本発明の耐摩耗性焼結部材の電子顕微鏡観察による金属組織写真である。

Claims (23)

  1. 鉄基合金基地と、合金基地中に硬質粒子が析出分散する硬質相とからなり、前記鉄基合金基地中に前記硬質相が分散する耐摩耗性焼結部材において、
    前記基地組織の全面にわたり結晶粒内に10μm以下のマンガン硫化物粒子が均一に分散するとともに、前記硬質相の前記合金基地中に10μm以下のマンガン硫化物粒子が分散する金属組織を呈することを特徴とする耐摩耗性焼結部材。
  2. 前記鉄基合金基地および前記硬質相の前記合金基地中に分散するマンガン硫化物粒子の量が、耐摩耗性焼結部材中、0.3〜4.5質量%であることを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗性焼結部材。
  3. 前記鉄基合金基地のMn量が0.2〜3質量%であり、かつ前記硬質相のMn量が0.5〜5質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐摩耗性焼結部材。
  4. 前記鉄基合金基地中に分散する前記硬質相の量が、耐摩耗性焼結部材中、2〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材。
  5. 前記鉄基合金基地の組織がベイナイトであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材。
  6. 前記硬質相の前記合金基地がFe基合金またはCo基合金であり、前記硬質相の前記硬質粒子がMo珪化物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材。
  7. 全体組成が、質量比で、Ni:0.23〜4.39%、Mo:0.62〜22.98%、Cr:0.05〜2.93%、Mn:0.18〜3.79%、Si:0.01〜4.0%、S:0.04〜5.0%、C:0.3〜1.2%、および残部がFeおよび不可避的不純物である焼結合金からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材。
  8. 全体組成が、質量比で、Co:0.7〜35.6%、Ni:0.23〜4.39%、Mo:0.62〜22.98%、Cr:0.05〜2.93%、Mn:0.18〜3.79%、Si:0.01〜4.0%、S:0.04〜5.0%、C:0.3〜1.2%、および残部がFeおよび不可避的不純物である焼結合金からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材。
  9. 前記焼結合金の全体組成中に、質量比で、Mo:0.13〜6.86%、W:0.12〜14.33%、およびCu:0.08〜9.91%のうちの少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の耐摩耗性焼結部材。
  10. 前記耐摩耗性焼結部材の気孔中または粉末粒界に、珪酸マグネシウム系鉱物、窒化硼素、硫化マンガン、Ca弗化物、ビスマス、硫化クロム、鉛のうち少なくとも1種が分散することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材。
  11. 前記耐摩耗性焼結部材の気孔が鉛または鉛合金、銅または銅合金、アクリル樹脂のうちのいずれかで満たされていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材。
  12. Mn:0.2〜3質量%を含有する基地形成用鋼粉末に、Mn:0.5〜5質量%を含有する硬質相形成用合金粉末と、二硫化モリブデン粉末、二硫化タングステン粉末、硫化鉄粉末、硫化銅粉末のうち少なくとも1種からなるとともに、Sが0.04〜5質量%となる量の硫化物粉末と、黒鉛粉末とを配合し混合した混合粉末を、金型内で圧縮成形し、その成形体を1000〜1300℃の温度範囲で焼結することを特徴とする耐摩耗性焼結部材の製造方法。
  13. 前記硫化物粉末は、最大粒径が100μm以下で、平均粒径が50μm以下の粉末であることを特徴とする請求項12に記載の耐摩耗性焼結部材の製造方法。
  14. 前記硬質相形成用合金粉末の添加量が2〜40質量%であることを特徴とする請求項12または13に記載の耐摩耗性焼結部材の製造方法。
  15. 前記焼結を、真空雰囲気中もしくは露点が−10℃以下の分解アンモニアガス、窒素ガス、水素ガス、アルゴンガスのいずれかの雰囲気中で行うことを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材の製造方法。
  16. 前記硬質相形成用合金粉末の組成が、質量比で、Mo:10〜50%、Si:0.5〜10%、Mn:0.5〜5%、および残部がFeまたはCoと不可避的不純物からなるとともに、前記黒鉛粉末の添加量が0.3〜1.2質量%であることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材の製造方法。
  17. 前記硬質相形成用合金粉末の組成が、質量比で、Cr:4〜25%、Mn:0.5〜5%、C:0.25〜2.4%、および残部がFeと不可避的不純物からなるとともに、前記黒鉛粉末の添加量が0.3〜2.0質量%であることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材の製造方法。
  18. 前記硬質相形成用合金粉末の組成が、質量比で、Mo:0.3〜3%、V:0.2〜2.2%、W:1〜5%のうちの1種もしくは2種以上を追加して含有することを特徴とする請求項17に記載の耐摩耗性焼結部材の製造方法。
  19. 前記硬質相形成用合金粉末の組成が、質量比で、Cr:3〜5%、W:1〜20%、V:0.5〜6%、Mn:0.5〜5%、C:0.6〜1.7%、および残部がFeと不可避的不純物からなるとともに、前記黒鉛粉末の添加量が0.3〜2.0質量%であることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材の製造方法。
  20. 前記硬質相形成用合金粉末の組成が、質量比で、MoまたはCoの少なくとも1種:20%以下を追加して含有することを特徴とする請求項19に記載の耐摩耗性焼結部材の製造方法。
  21. 前記基地形成用鋼粉末の組成が、質量比で、Ni:0.5〜4.5%、Mo:0.5〜5.0%、Cr:0.1〜3.0%、Mn:0.2〜3.0%、および残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項12〜20のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材の製造方法。
  22. 前記混合粉末に、珪酸マグネシウム系鉱物、窒化硼素、硫化マンガン、Ca弗化物、ビスマス、硫化クロム、鉛のうち少なくとも1種の粉末を添加することを特徴とする請求項12〜21のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材の製造方法。
  23. 前記焼結の後に、鉛または鉛合金、銅または銅合金、アクリル樹脂のうちのいずれかを溶浸もしくは含浸することを特徴とする請求項12〜22のいずれかに記載の耐摩耗性焼結部材の製造方法。
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