JP2006296112A - 建設機械のモータの制御装置および制御プログラム - Google Patents

建設機械のモータの制御装置および制御プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】モータがロック状態と回転状態を繰り返す運転を行う場合であっても、正確にスイッチング素子の温度を演算できるようにして、スイッチング素子の熱破壊からの保護を正確な時期に行えるようにする。
【解決手段】PMモータがロック状態にあるか、あるいは回転状態にあるかが判別され、ロック状態にあると判別された場合には、ロック状態であると判別されていた時間tと、前回までに演算されたジャンクション〜ベース間温度差Tbjn-1とに基づいて、今回のジャンクション〜ベース間温度差Tbjn(=fn(W))が順次演算される。PMモータが回転状態にあると判別された場合には、回転状態であると判別されていた時間tと、前回までに演算されたジャンクション〜ベース間温度差Tbjn-1とに基づいて、今回のジャンクション〜ベース間温度差Tbjn(=gn(W))が順次演算される。
【選択図】 図3

Description

本発明は、建設機械の上部旋回体等を駆動するモータを制御する装置および同モータを制御するためのプログラムに関する。
近年、一般自動車などにおいて、駆動源としてエンジンと電気モータを併用するハイブリッドシステムが実用化されており、油圧ショベル等の建設機械の分野においても、ハイブリッドシステムを取り入れる試みがされている。
たとえば特許文献1(特開2001−99103号公報)には、油圧ポンプの駆動源にエンジンと電気モータを併用するハイブリッド油圧システムが開示されている。
建設機械のハイブリッドシステムでは、電気モータとして、たとえばPM(永久磁石モータ)型が使用される(以下、PMモータという)。PMモータは、インバータによって周波数と電流(電圧)が制御され、PMモータの回転数(速度)とトルクが制御される。
図1(a)、(b)は、インバータ10、PMモータ30の構成をそれぞれ示している。
インバータ10は、図1(a)に示すように、三相(U相、V相、W相)のブリッジ回路で構成されている。すなわち、インバータ10には、6個のスイッチング素子11、12、13、14、15、16が設けられている。スイッチング素子は、たとえばIGBTが使用される。各スイッチング素子11、12、13、14、15、16にはそれぞれ、環流用のダイオード17、18、19、20、21、22が並列に接続されている。
図中上側のU相、V相、W相用のスイッチング素子11、12、13にはそれぞれ、スイッチング信号(オンオフの電圧)Vu、Vv、Vwが加えられる。図中下側のU相、V相、W相用のスイッチング素子14、15、16にはそれぞれ、スイッチング信号(電圧)Vu、Vv、Vwに応じたスイッチング信号(オンオフの電圧)が加えられる。
U相のスイッチング素子11、14の接続部位には、U相の相電流Iuが出力される電気信号線23が接続されている。V相のスイッチング素子12、15の接続部位には、V相の相電流Ivが出力される電気信号線24が接続されている。W相のスイッチング素子13、16の接続部位には、W相の相電流Iwが出力される電気信号線25が接続されている。
インバータ10の入力端子には、所定の直流電源から直流電圧が印加される。インバータ10の入力端子には、直流電圧を平滑化するための平滑コンデンサ40が接続されている。
各スイッチング素子11、12、13(14、15、16)には、所定のコントローラから、ゲート信号として、スイッチング信号(電圧)Vu、Vv、Vwが加えられる。スイッチング素子の制御は、たとえばPWM制御によって行われる。各スイッチング素子11、12、13(14、15、16)に加えるスイッチング信号のオンオフの時間、スイッチング周波数を制御することによって、各電気信号線23、24、25には、位相が120゜づつずれた所定周波数、所定振幅の正弦波状の相電流Iu、Iv、Iwが流れる。
インバータ10の出力端子には、PMモータ30が接続されており、各電気信号線23、24、25、出力端子を介して、相電流Iu、Iv、Iwが、三相交流電力としてPMモータ30に供給される。
図1(b)は、PMモータ30の概念図であり、PMモータ30のステータは、コイル31、32、33によって構成され、ロータ34の内部には永久磁石が埋め込まれている。すなわち、図1(b)のPMモータ30は、IPM型(埋込磁石型モータ)である。各コイル31、32、33にはそれぞれ、電気信号線23、24、25を介して相電流Iu、Iv、Iwが通電される。コイル31、32、33にそれぞれ相電流Iu、Iv、Iwが通電されると、ステータに回転磁界35、36が形成され、ロータ34は、その回転磁界35、36に応じて回転する。
PMモータ30には、レゾルバ、エンコーダ等を用いて構成される回転数検出器が設けられている。コントローラでは、検出された回転数をフィードバック量として、インバータ10の各スイッチング素子11〜16に対して、スイッチング信号を出力して、PMモータ30を制御する。コントローラは、PMモータ30の目標回転数と現在の回転数との偏差を零にするためのトルク値を演算し、更にこのトルク値を得るために必要なスイッチング信号(電圧)Vu、Vv、Vwを演算して、インバータ10に出力する。
インバータ10は、モジュール化された筐体として構成され、筐体を支持するベースを介して、ヒートシンク等の冷却器に接合されている。冷却器によって、インバータ10における熱発生源であるスイッチング素子11〜16(IGBT)が冷却される。
建設機械の場合、PMモータ30は、上部旋回体の駆動用のモータとして取り付けられることが多い。
これは、PMモータ30を発電機として用い、インバータ10を介して、直流電力のエネルギーを有効に回生できるからである。
すなわち、油圧ショベルなどの建設機械にあっては、地山等を掘削してバケットに積込み、上部旋回体を旋回させてバケットをダンプトラックの荷台まで移動させて、バケット内の積荷をダンプトラックの荷台に積み込む、という積込み作業が繰り返し行われる。かかる積込み作業の過程で、バケットをダンプトラックの荷台に位置決めするときに、上部旋回体に急激にブレーキがかかり、上部旋回体を旋回させるスイングマシナリに、大きなトルクが発生する。スイングマシナリで発生したトルクは、PMモータ30の駆動軸に伝達、吸収されて発電が行われる。ブレーキ時には、スイッチング素子11〜16に対して逆トルクを取り出すためのスイッチング信号が加えられる。これによりPMモータ30で発生した交流電力がインバータ10で直流電力に変換される。直流電力は、インバータ10の入力端子から逆向きに、直流電源線を介して、キャパシタ、蓄電池等の直流電源に供給されて、電力として蓄積される(充電される)。
このように積込み作業が繰り返し行われ、上部旋回体が繰り返し停止する毎に、エネルギー回生が行われるため、建設機械の燃費を大幅に低減させることができる。
(従来技術1)
エレベータの駆動を上述したインバータ10とPMモータ30を用いて行うという発明が、後掲する特許文献2に記載されている。
この特許文献2には、PMモータ30の回転数をフィードバックする信号線に断線が生じたり、機械的な要因などによって、PMモータ30がロック(回転停止)するという異常事態が生じることがあると記載されている。特許文献2には、PMモータ30のロック状態が継続すると、インバータ10を構成するスイッチング素子11〜16の接合部の温度が急激に上昇し、熱破壊を起こすおそれがあるということに鑑みて、ロック状態になったときのインバータ10およびPMモータ30の制御信号、制御定数(相電流値等)に関するデータと、冷却器の冷却能力に関するデータとに基づいて、スイッチング素子の温度を演算して、熱破壊に至るまでの許容時間を求め、この許容時間が経過した時点で、スイッチング素子11〜16を熱破壊から保護する制御を行うという発明が記載されている。
特開2001−99103号公報 特開2004−64864号公報
建設機械、たとえば油圧ショベルでは、溝掘り作業や埋め戻し作業が行われる。溝掘り作業や埋め戻し作業では、作業機を旋回させて作業機を地山等に押し当るという動作が繰り返し行われる。このとき上部旋回体を駆動するPMモータ30では、「回転→ロック→回転→ロック…」という具合に、回転状態とロック状態とが繰り返される。
PMモータ30がロック状態になると、PMモータ30の回転数がほぼ0となり、これをフィードバック量としてインバータ10に指令を与えるコントローラは、インバータ10に対して、大きなトルクを発生させるためのスイッチング信号を出力し続けることとなり、特定のスイッチング素子に大電流が流れ続けるために、その特定のスイッチング素子の発熱量が大きくなる。
このため上記従来技術1と同様に、スイッチング素子の熱破壊を保護するための制御を行う必要がある。
しかし、建設機械の場合には、上述したエレベータに適用される従来技術1をそのまま適用することはできない。その理由は以下の通りである。
a)従来技術1のPMモータ30では、ロックしたということはそれだけで異常な事態であり、前回にロックしたということは何ら想定されてはいない。これに対して建設機械のPMモータ30の場合には、作業時にロック状態が繰り返されることは当然のことであり、前回にロックしたということは当然に考慮されなくてはならない。従来技術1を建設機械のPMモータ30に適用すると、ロック状態になる毎に、前回のロック状態の熱履歴は何ら考慮されるなくスイッチング素子の温度が演算されることになる。しかし、実際には、前回のロック状態(あるいは前々回のロック状態)のときにスイッチング素子の温度は既に上昇しているのであり、その熱履歴を考慮せずに行った演算温度は、実際の温度とはかけ離れたものとなり、適切な時期にスイッチング素子を熱的に保護する制御を行うことができない。
b)建設機械は、多数の機種があり、上部旋回体を旋回させるために必要なPMモータ30の定格出力も様々である。このため、PMモータ30の種類に応じて、インバータ10のスイッチング素子に流れる電流の大きさも様々であり、それに応じて冷却器も異なる冷却性能のものを多種類にわたり用意しなければならない。従来技術1では、冷却器の冷却能力に関するデータに基づいて、スイッチング素子の温度を演算しているため、冷却器が多種類にわたると、演算処理のための演算プログラムを冷却器の種類毎に用意して、コントローラにインストールしなければならない。そこで冷却器の冷却能力の如何によらずに、共通の演算プログラムでスイッチング素子の温度を演算できるようにすることが、コントローラの汎用性を高め、部品の共通化、コスト削減を図るためにも、要請されている。
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、建設機械のモータのように、モータがロック状態と回転状態を繰り返す運転を行う場合であっても、正確にスイッチング素子の温度を演算できるようにして、スイッチング素子の熱破壊からの保護を正確な時期に行えるようにすることを第1の解決課題とするものである。また、本発明は、上記第1の解決課題の達成に加えて、建設機械のインバータ用の冷却器のように、冷却器(の冷却能力)が多種類におよぶ場合であっても、冷却器の冷却能力如何によらずに共通の演算プログラムでスイッチング素子の温度を演算できるようにして、コントローラの汎用性を高め、部品の共通化、コスト削減を図ることを第2の解決課題とするものである。
第1発明は、
建設機械を駆動するモータと、
入力されたスイッチング信号に応じて作動され、前記モータに対して駆動信号を出力するスイッチング素子と、
前記モータの回転数を検出する回転数検出手段と、
回転数検出手段で計測された回転数をフィードバック量として、前記スイッチング素子にスイッチング信号を出力する第1の制御手段と、
前記モータがロック状態にあるか、あるいは回転状態にあるかを判別する判別手段と、
前記モータがロック状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とに基づいて、ロック状態用の演算式を用いて、今回のスイッチング素子の温度を順次演算するとともに、
前記モータが回転状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とに基づいて、回転状態用の演算式を用いて、今回のスイッチング素子の温度を順次演算する温度演算手段と、
前記温度演算手段で演算されたスイッチング素子の温度に応じて、前記スイッチング素子を熱的に保護する制御を行う第2の制御手段と
を具えた建設機械のモータ制御装置であることを特徴とする。
第2発明は、第1発明において、
前記スイッチング素子は、インバータを構成するスイッチング素子であり、
前記インバータは、ベース板上にスイッチング素子が装着されて構成されており、
ベース板には、スイッチング素子を冷却するための冷却器が接合されており、
前記ベース板の温度を検出する温度検出手段が設けられ、
前記温度演算手段は、
前記モータがロック状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とベース板の温度との温度差とに基づいて、今回のスイッチング素子の温度とベース板の温度との温度差を順次演算するとともに、
前記モータが回転ク状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とベース板の温度との温度差とに基づいて、今回のスイッチング素子の温度とベース板の温度との温度差を順次演算し、
さらに、この温度差に対して前記温度検出手段によって検出されたベース板の温度を加算することによって、スイッチング素子の温度を演算するものであること
を特徴とする。
第3発明は、第1発明において、
前記モータは、建設機械の旋回体を駆動するモータであること
を特徴とする。
第4発明は、第1発明において、
前記第2の制御手段は、
前記温度演算手段で演算されたスイッチング素子の温度が所定のしきい値以上になった場合に、前記スイッチング素子を熱的に保護するためのスイッチング信号が、第1の制御手段から前記スイッチング素子に出力されるように、第1の制御手段に指令を与えること
を特徴とする。
第5発明は、
建設機械を駆動するモータであって、スイッチング素子から駆動信号が与えられることで駆動されるモータ、を制御するプログラムにおいて、
前記モータがロック状態にあるか、あるいは回転状態にあるかを判別し、
前記モータがロック状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とに基づいて、ロック状態用の演算式を用いて、今回のスイッチング素子の温度を順次演算するとともに、
前記モータが回転状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とに基づいて、回転状態用の演算式を用いて、今回のスイッチング素子の温度を順次演算し、
演算されたスイッチング素子の温度に応じて、前記スイッチング素子を熱的に保護する制御を行うようにしたことを特徴とする。
第1発明〜第5発明を図3に即して説明する。
PMモータ30がロック状態にあるか、あるいは回転状態にあるかが判別される(ステップ102)。
PMモータ30がロック状態にあると判別された場合には(ステップ102の判断Yes)、前回までに演算されたジャンクション〜ベース間温度差Tbjn-1とに基づいて、ロック状態用の演算式、つまり関数fn(W)を用いて、その関数値が計算されて、今回のジャンクション〜ベース間温度差Tbjn(=fn(W))が順次演算される(ステップ103)。
一方、PMモータ30が回転状態にあると判別された場合には(ステップ102の判断No)、前回までに演算されたジャンクション〜ベース間温度差Tbjn-1とに基づいて、回転状態用の演算式、つまり関数gn(W)を用いて、その関数値が計算されて、今回のジャンクション〜ベース間温度差Tbjn(=gn(W))が順次演算される(ステップ104)。
ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnが演算されると、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnに対して、現在のベース温度Tbnを加算する処理が実行されて、現在のジャンクション温度Tjnが求められる(Tjn=Tbn+Tbjn;ステップ105)。
つぎに、ジャンクション温度Tjnが、上限値Terrを超えているか否かが判断される(ステップ106)。
ジャンクション温度Tjnが、上限値Terrを超えたと判断されると(ステップ106の判断Yes)、これ以上ジャンクション温度が上昇するとスイッチング素子が熱破壊を起こすおそれがあると判断して、、スイッチング素子11〜16を熱的に保護するための保護シーケンスが実行される(ステップ107)。
第1発明〜第5発明の共通の効果を図4を用いて説明する。
図4に示す「ロック(2)」では、過去の「ロック(1)」、「回転(1)」の熱履歴、つまり今まで演算されたジャンクション〜ベース間温度差Tbjn-1に基づいて、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnが計算される。
このためロック状態と回転状態が繰り返される場合に、極めて正確にジャンクャンクション〜ベース間温度差Tbjnを求めることができる。そして、この正確に得られたジャンクャンクション〜ベース間温度差Tbjnに基づきジャンクション温度Tjnが求められる(Tjn=Tbn+Tbjn)。このため、ジャンクション温度Tjnは、極めて精度のよいものとなる。この結果、適切な時期に、スイッチング素子11〜16を熱的に保護する制御を行うことができる。
第2発明は、図5に示す構成を前提としている。
すなわち、インバータ10は、ベース板91上には、図示しない絶縁基板を介してシリコンチップ11C〜16C(スイッチング素子11〜16)が装着されて構成されている(なお、実際には)。ベース板91には、シリコンチップ11C〜16C(スイッチング素子11〜16)を冷却するための冷却器92が接合されている。
第2発明では、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnに対して、ベース温度Tbnを加算することで、ジャンクション温度Tjnが求められ(Tjn=Tbn+Tbjn)、そのジャンクション〜ベース間温度差Tbjnは、ヒートシンク92の冷却能力に依存しない演算式で算出される。
このため第2発明によれば、上述した第1発明〜第5発明の共通の効果に加えて以下の効果が得られる。
すなわち、ヒートシンク92が異なる冷却性能のものに変更された場合でも、共通の演算プログラムでスイッチング素子の温度(ジャンクション温度Tjn)を演算できる。このためIGBT保護用コントローラ70を共通化でき、コントローラの汎用性が高められ、部品の共通化、コスト削減が図られる。
以下、図面を参照して本発明に係る建設機械のモータ制御装置およびモータ制御プログラムの実施の形態について説明する。
図6は、建設機械のハイブリッドシステムの構成のうち、上部旋回体1を駆動制御する部分を抜き出して図示したものである。なお、実施形態では、建設機械として油圧ショベルを想定する。
油圧ショベルには、PMモータ30が、上部旋回体1の駆動用のモータとして取り付けられている。すなわち、上部旋回体1には、スイングサークル、スイングピニオン等をスイングマシナリ2が連結されている。スイングマシナリ2が駆動すると、上部旋回体1が旋回する。
スイングマシナリ2の駆動軸には、PMモータ30の駆動軸が連結されている。
インバータ10の出力端子はPMモータ30の入力端子に電気的に接続されている。インバータ10の入力端子には、キャパシタや蓄電池などで構成された直流電源3が電気的に接続されている。なお、エンジンの出力軸には発電電動機が連結され、発電電動機によって発電された電力が直流電源3に蓄積される。
コントローラ60は、インバータ10に対してスイッチング信号を出力して、インバータ10を介して、PMモータ30の回転数とトルクを制御して、上部旋回体1を所望の回転数で回転させる。
図2は、インバータ10、PMモータ30、コントローラ60の構成を示している。コントローラ60は、IGBT保護用コントローラ70と、インバータ制御用コントローラ80とからなる。
インバータ10は、三相(U相、V相、W相)のブリッジ回路で構成されている。すなわち、インバータ10には、6個のスイッチング素子11、12、13、14、15、16が設けられている。スイッチング素子は、たとえばIGBTが使用される。各スイッチング素子11、12、13、14、15、16にはそれぞれ、環流用のダイオード17、18、19、20、21、22が並列に接続されている。
図中上側のU相、V相、W相用のスイッチング素子11、12、13にはそれぞれ、スイッチング信号(オンオフの電圧)Vu、Vv、Vwが加えられる。図中下側のU相、V相、W相用のスイッチング素子14、15、16にはそれぞれ、スイッチング信号(電圧)Vu、Vv、Vwに応じたスイッチング信号(オンオフの電圧)が加えられる。
U相のスイッチング素子11、14の接続部位には、U相の相電流Iuが出力される電気信号線23が接続されている。V相のスイッチング素子12、15の接続部位には、V相の相電流Ivが出力される電気信号線24が接続されている。W相のスイッチング素子13、16の接続部位には、W相の相電流Iwが出力される電気信号線25が接続されている。
インバータ10の入力端子には、直流電源3から直流電圧が印加される。インバータ10の入力端子には、直流電圧を平滑化するための平滑コンデンサ40が接続されている。
各スイッチング素子11、12、13(14、15、16)には、インバータ制御用コントローラ80から、ゲート信号として、スイッチング信号(電圧)Vu、Vv、Vwが加えられる。スイッチング素子の制御は、たとえばPWM制御によって行われる。各スイッチング素子11、12、13(14、15、16)に加えるスイッチング信号のオンオフの時間、スイッチング周波数を制御することによって、各電気信号線23、24、25には、位相が120゜づつずれた所定周波数、所定振幅の正弦波状の相電流Iu、Iv、Iwが流れる。
インバータ10の出力端子には、PMモータ30が接続されており、各電気信号線23、24、25、出力端子を介して、相電流Iu、Iv、Iwが、三相交流電力としてPMモータ30に供給される。
PMモータ30には、PMモータ30の回転位置(回転角度)θを検出するレゾルバ等の回転位置(角度)検出器50が設けられている。インバータ制御用コントローラ80には、回転位置検出器50の検出信号θが入力される。回転位置検出器50の検出信号θに基づいて、回転数(回転速度)ωが算出される。
また、電気信号線23、25を流れる相電流Iu、Iwが検出されて、インバータ制御用コントローラ80に入力される。
インバータ制御用コントローラ80は、PMモータ30の実際の回転数ωをフィードバック量として、PMモータ30の回転数が目標回転数ωpとなるように、スイッチング信号Vu、Vv、Vwを生成し、インバータ10の各スイッチング素子11〜16に対して、出力して、PMモータ30を制御する。
インバータ制御用コントローラ80は、PMモータ30をベクトル制御する制御系で構成することができる。すなわち、インバータ制御用コントローラ80は、PMモータ30の目標回転数ωpと現在の回転数ωとの偏差を零にするためのトルク値τを演算し、更にこのトルク値τを回転座標系のd軸電流値Id、q軸電流値Iqに変換する。そして、回転位置θ、回転数ω、相電流Iu、Iwに基づいて、d軸電流値Id、q軸電流値Iqをそれぞれ、d軸電圧値Vd、q軸電圧値Vqに変換する。そして、回転位置θに基づいて、d軸電圧値Vd、q軸電圧値Vqを、静止座標系の各電圧値(スイッチング信号)Vu、Vv、Vwに変換する。こうして演算されたスイッチング信号(電圧)Vu、Vv、Vwを、インバータ10に出力する。
エネルギー回生時には以下のように動作する。
すなわち、油圧ショベルが地山等を掘削してバケットに積込み、上部旋回体1を旋回させてバケットをダンプトラックの荷台まで移動させて、バケット内の積荷をダンプトラックの荷台に積み込む、という積込み作業を繰り返し行う場合を想定する。かかる積込み作業の過程で、バケットをダンプトラックの荷台に位置決めするときに、上部旋回体1に急激にブレーキがかかり、上部旋回体1を旋回させるスイングマシナリ2に、大きなトルクが発生する。スイングマシナリ2で発生したトルクは、PMモータ30の駆動軸に伝達、吸収されて発電が行われる。ブレーキ時には、スイッチング素子11〜16に対して逆トルクを取り出すためのスイッチング信号が加えられる。これによりPMモータ30で発生した交流電力がインバータ10で直流電力に変換される。直流電力は、インバータ10の入力端子から逆向きに、直流電源線を介して、直流電源3に供給されて、電力として蓄積される(充電される)。
このように積込み作業が繰り返し行われ、上部旋回体1が繰り返し停止する毎に、エネルギー回生が行われるため、建設機械の燃費を大幅に低減させることができる。
図5は、インバータ10を冷却する装置の構成を斜視図にて示している。
インバータ10は、ベース板91上に、図示しない絶縁基板を介して、各スイッチング素子11、12、13、14、15、16に対応するシリコンチップ11C、12C、13C、14C、15C、16Cが装着されたモジュールとして構成されている。
ベース板91には、冷却器としてのヒートシンク92が接合されている。ヒートシンク92は、所定流量の冷却水を通過させることによって、シリコンチップ11C、12C、13C、14C、15C、16C、つまりスイッチング素子11〜16(IGBT)を冷却する。とりわけ熱発生源となるPN接合部(IGBTジャンクション)を冷却する。PN接合部(IGBTジャンクション)は、シリコンチップ11C〜16Cのうち熱的に最も弱い部位である。
ベース板91には、ベース板91の温度(以下、ベース温度)Tbを検出する温度センサ26が設けられている。
以下において、スイッチング素子11、12、13、14、15、16のPN接合部(IGBTジャンクション)の温度を、ジャンクション温度Tjと定義し、ジャンクション温度Tjと、ベース温度Tbとの温度差を、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjと定義する。
つぎに、IGBT保護用コントローラ70で行われる制御内容について説明する。
IGBT保護用コントローラ70には、直流電源3の電圧値Vdc、相電流の検出電流値Iu、Iw、PMモータ30の検出回転位置θが入力される。
IGBT保護用コントローラ70には、図3のフローチャートで示される制御プログラムがインストールされている。IGBT保護用コントローラ70の各処理部71〜77では図3の制御プログラムにしたがい順次、処理が実行される。
以下では、油圧ショベルが溝掘り作業や埋め戻し作業を行う場合を想定する。溝掘り作業や埋め戻し作業では、作業機を旋回させて作業機を地山等に押し当るという動作が繰り返し行われる。このとき上部旋回体1を駆動するPMモータ30では、「回転→ロック→回転→ロック…」という具合に、回転状態とロック状態とが繰り返される。
PMモータ30がロック状態になると、PMモータ30の回転数ωがほぼ0となり、これをフィードバック量としてインバータ10に指令を与えるインバータ制御用コントローラ80は、インバータ10に対して、大きなトルクτを発生させるためのスイッチング信号を出力し続けることとなり、スイッチング素子に大きな電流が流れ続け、スイッチング素子の発熱量が大きくなる。
そこで、IGBT保護用コントローラ70では、スイッチング素子の熱破壊を保護するための制御が行われる。
図3の処理は、所定のサンプリング時間t毎に行われるものとする。したがって、n回目のサンプリング時の時刻は、ntとなる。以下では、変数を表す符合にサフィックス「n」を付与して、時刻ntにおける値であることを明確にする。
まず、IGBT損失計算部74で、入力された直流電源3の電圧値Vdc、相電流の検出電流値Iu、Iwと、メモリ78の記憶データとに基づいて、各スイッチング素子11〜16(IGBT)毎に、時刻(n−1)t〜nt間のIGBT損失Wn(単位:ジュールJ)が計算される。
IGBT損失Wnは、次式にて求められる。
IGBT損失Wn=定常損失W1n+スイッチ損失W2n
定常損失W1n=m・Vce(sat)・I・t
スイッチ損失W2n=Vdc・I・(τon+τoff)・f・t・a
ただし、
m:変調率
I:相電流Iu、Iv、Iw
Vce(sat):スイッチング素子11〜16(IGBT)のオン(飽和)電圧
Vdc:電源電圧
τon:スイッチング素子11〜16(IGBT)の立上り時間
τoff:スイッチング素子11〜16(IGBT)の立下り時間
f:スイッチング周波数
a:係数
変調率m、飽和電圧Vce(sat)、立上り時間τon、立下り時間τoff、スイッチング周波数f、係数aについては、固有の定数としてメモリ78に記憶されておかれる。相電流IのうちV相の電流値Ivについては、入力された検出電流値Iu、Iwに基づいて求められる(ステップ101)。
つぎに、モータロック判定部72で、PMモータ30がロック状態にあるか、あるいは回転状態にあるかが判別される。たとえば、速度信号処理部71で、入力された回転位置θに基づいて、回転数ωが算出される。そして、ロック状態であると判断するためのしきい値ω0(たとえば±50rpm)が設定され、PMモータ30の回転数ωがしきい値ω0以下であるか否かを判断することによって、PMモータ30がロック状態であるか否かを判定する(ステップ102)。
以下では、つぎのように変数を定義する。
Tbjn:時刻ntにおけるジャンクション〜ベース間温度差
fn(W):時刻ntでロック状態であると判定されたときにジャンクション 〜ベース間温度差Tbjnを算出する関数
gn(W):時刻ntで回転状態であると判定されたときにジャンクション〜 ベース間温度差Tbjnを算出する関数
Tbn:時刻ntにおけるベース温度
Tjn:時刻ntにおけるジャンクション温度
Terr:ジャンクション温度の上限値
つぎに、ジャンクション〜ベース間温度差Tbj算出部73では、時刻ntにおけるジャンクション〜ベース間温度差Tbjnがサンプリング時間t毎に順次演算される。
すなわち、PMモータ30がロック状態にあると判別された場合には(ステップ102の判断Yes)、前回までに演算されたジャンクション〜ベース間温度差Tbjn-1に基づいて、ロック状態用の演算式、つまり関数fn(W)を用いて、その関数値が計算されて、今回のジャンクション〜ベース間温度差Tbjn(=fn(W))が順次演算される(ステップ103)。一方、PMモータ30が回転状態にあると判別された場合には(ステップ102の判断No)、前回までに演算されたジャンクション〜ベース間温度差Tbjn-1に基づいて、回転状態用の演算式、つまり関数gn(W)を用いて、その関数値が計算されて、今回のジャンクション〜ベース間温度差Tbjn(=gn(W))が順次演算される(ステップ104)。
関数fn(W)、gn(W)は、たとえば下記式で表される。
fn(W)=kL1・Wn/(1+τL1/t)
+(τL1/t)/(1+τL1/t)・Tbjn-1 …(1)
gn(W)=kR・Wn/(1+τR/t)
+(τR/t)/(1+τR/t)・Tbjn-1 …(2)
ただし、
kL1:ロック状態のときの一次遅れのゲイン
kR:回転状態のときの一次遅れのゲイン
τL1:ロック状態のときの一次遅れ時定数
τR:回転状態のときの一次遅れ時定数
Tbjn-1:前回のサンプリング時刻(n−1)tにおけるジャンクション〜ベ ース間温度差
上記(1)、(2)式に示されるように、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnは、IGBT損失Wnの1次遅れ(積分)として計算される。ただし、PMモータ30がロック状態のときには回転状態である場合に比べてベース板91の面内温度分布がばらつくため、この温度分布のばらつきを考慮して、ロック状態のときの一次遅れのゲインkL1は、回転状態のときの一次遅れのゲインkRよりも大きい値に設定される。つまりロック時には、ベース板91の面内の温度分布が偏りをもつため、ベース板面内の温度分布による温度上昇分を加味して、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnを求める。
さらに、ロック状態のときには、ベース板91の面内の温度分布も一次遅れとして捕らえて、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjn(=fn(W))を算出する実施も可能である。この場合には、上記(1)式の代わりに、下記(3)式が用いられる。
fn(W)=Tbbjn+Tbbn …(3)
ただし、
Tbbjn:時刻ntにおけるPN接合部(IGBTジャンクション)の温度と、 PN接合部(IGBTジャンクション)直下のベース板91の部位の 温度との温度差(以下、ジャンクション〜ジャンクション真下部位間 温度差)
Tbbn:時刻ntにおけるPN接合部(IGBTジャンクション)直下のベー ス板91の部位の温度と、ベース温度Tbとの温度差(以下、ジャンク ション真下部位〜ベース間温度差)
上記Tbbjn、Tbbnはそれぞれ、下記式で表される。
Tbbjn=kL2・Wn/(1+τL2/t)
+(τL2/t)/(1+τL2/t)・Tbbjn-1 …(4)
Tbbn=kL3・Wn/(1+τL3/t)
+(τL3/t)/(1+τL3/t)・Tbbn-1 …(5)
kL2:ロック状態のときの一次遅れ(IGBT損失Wnの一次遅れ)のゲイン
kL3:ロック状態のときの一次遅れ(ベース板面内温度分布の一次遅れ)の ゲイン
τL2:ロック状態のときの一次遅れ(IGBT損失Wnの一次遅れ)時定数
τL3:ロック状態のときの一次遅れ(ベース板面内温度分布の一次遅れ)時 定数
Tbbjn-1:前回のサンプリング時刻(n−1)tにおけるジャンクション〜ジ ャンクション真下部位間温度差
Tbbn-1:前回のサンプリング時刻(n−1)tにおけるジャンクション真下 部位〜ベース間温度差
こうして現在のジャンクション〜ベース間温度差Tbjnが演算されると、加算部75にて、下記式のごとく、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnに対して、現在のベース温度Tbnを加算する処理が実行されて、現在のジャンクション温度Tjnが求められる。
Tjn=Tbn+Tbjn (ステップ105)
図4は、油圧ショベルが溝掘り作業や埋め戻し作業を行い、PMモータ30が「ロック(1)→回転(1)→ロック(2)→回転(2)→ロック(3)」という動作をしたときのジャンクション〜ベース間温度差Tbj(Tbjn)の計算結果を例示している。横軸が時間(秒)で、縦軸がジャンクション〜ベース間温度差Tbj(゜C)である。
図4に示す「ロック(1)」では、ロック状態用の関数fn(W)によって、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnが計算される。このため、ロック状態であると判定されている時間tの経過に伴い、ジャンクャンクション〜ベース間温度差Tbjnが増大する。
「回転(1)」では、過去の「ロック(1)」の熱履歴、つまり今まで演算されたジャンクション〜ベース間温度差Tbjn-1に基づいて、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnが計算される。「回転(1)」では、回転状態用の関数gn(W)によって、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnが計算される。このため、回転状態であると判定されている時間tの経過に伴い、ジャンクャンクション〜ベース間温度差Tbjnが減少する。
「ロック(2)」では、過去の「ロック(1)」、「回転(1)」の熱履歴、つまり今まで演算されたジャンクション〜ベース間温度差Tbjn-1に基づいて、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnが計算される。「ロック(2)」では、ロック状態用の関数fn(W)によって、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnが計算される。このため、ロック状態であると判定されている時間tの経過に伴い、ジャンクャンクション〜ベース間温度差Tbjnが増大する。以下、「回転(2)」、「ロック(3)」についても同様である。このためロック状態と回転状態が繰り返される場合に、極めて正確にジャンクャンクション〜ベース間温度差Tbjnを求めることができる。したがって、その正確に得られたジャンクャンクション〜ベース間温度差Tbjnに基づきジャンクション温度Tjnが求められるため、ジャンクション温度Tjnは、極めて精度のよいものとなる。
つぎに、判断部76にて、演算された現在のサンプリング時刻におけるジャンクション温度Tjnが、上限値Terrを超えているか否かが判断される(ステップ106)。
現在のサンプリング時刻におけるジャンクション温度Tjnが、上限値Terrを超えていないと判断されると(ステップ106の判断No)、再度ステップ101に戻り同様の処理が繰り返されるが、現在のサンプリング時刻におけるジャンクション温度Tjnが、上限値Terrを超えたと判断されると(ステップ106の判断Yes)、これ以上ジャンクション温度が上昇するとスイッチング素子が熱破壊を起こすおそれがあると判断して、ステップ107に移行し、保護シーケンス部77で、スイッチング素子を熱的に保護するための保護シーケンスを実行する。なお、ジャンクション温度Tjnは、各スイッチング素子11〜16毎に求められるため、少なくとも1つのスイッチング素子について、ジャンクション温度Tjnが上限値Terrを超えたと判断されると、保護シーケンスが実行される。
保護シーケンスは、たとえば下記に列挙される内容のものを採用することができる。
1)PMモータ30を停止させる。
すなわち、インバータ制御用コントローラ80は、PMモータ30の目標回転数ωpと現在の回転数ωとの偏差を零にするためのトルク値τを演算しているが、ジャンクション温度Tjnが上限値Terrを超えると、IGBT保護用コントローラ70は、インバータ制御用コントローラ80に対して、現在、演算されているトルク値にかかわらずにトルク値τを強制的に0にする旨の指令を送り、PMモータ30に流れる電流値を零にして、回転を停止させる。
2)PMモータ30のトルク(電流)を徐々に下げる。
上部旋回体1が旋回している途中で、トルクを直ぐに0にすると、オペレータや油圧ショベルの周囲の作業者にショックを与えたり危険がおよぶおそれがある。そこで、ジャンクション温度Tjnが上限値Terrを超えると、IGBT保護用コントローラ70は、インバータ制御用コントローラ80に対して、現在、演算されているトルク値から徐々にトルク値τを小さくする旨の指令を送り、PMモータ30に流れる電流値を徐々に小さくする。
また、ジャンクション温度Tjnの大きさと、PMモータ30で出力可能な最大トルク値とを対応づけたテーブルを用意しておき、ジャンクション温度Tjnが上限値Terrを超えると、IGBT保護用コントローラ70は、インバータ制御用コントローラ80に対して、現在のジャンクション温度Tjnに対応する最大トルク値を上限として、トルク値τを演算する旨の指令を送り、PMモータ30に流れる電流値に制限を加える。
3)スイッチング周波数fを下げてIGBT損失Wnを低減させる。
ジャンクション温度Tjnが上限値Terrを超えると、IGBT保護用コントローラ70は、インバータ制御用コントローラ80に対して、スイッチング周波数fを下げてスイッチング信号を生成する旨の指令を送り、スイッチング素子11〜16(IGBT)のIGBT損失Wnを低減させて、スイッチング素子11〜16(IGBT)の発熱を抑制する。この場合、PMモータ30のトルクは維持できるが、スイッチング周波数fの低下に伴い、スイッチング音は大きくなる。
4)電流ベクトルを意図的にずらし、特定のスイッチング素子(IGBT)への熱負荷を緩和させる。ただし、PMモータ30のトルクは維持できる電流ベクトルにする。
ジャンクション温度Tjnが上限値Terrを超えると、IGBT保護用コントローラ70は、インバータ制御用コントローラ80に対して、PMモータ30の出力トルクを維持しつつ、特定の相、特定のスイッチング素子に流れる電流値を最小にするように電流ベクトルを設定する旨の指令を送る。
たとえば正弦波駆動(SM)の埋込磁石型モータ(IPM)では、次式によってトルクτを算出することができる。
τ=p(Ψ・iq+(Ld−Lq)・id・iq)
ただし、
τ:トルク
p:極対数
Ψ:トルク定数
iq:q軸電流
id:d軸電流
Ld:d軸インダクタンス
Lq:q軸インダクタンス
d軸電流id、q軸電流iqの比率と大きさを決めるのが電流ベクトルであるので、同じトルクτを出力するにもd軸電流id、q軸電流iqの組み合わせが何通りもある。通常は、PMモータ30、インバータ10の効率を最大とするため出来る限り電流値を最小にしている。しかし、ロック時には、それが最適とは限らない。例えば、U相の電流値iuが100Aで、V相、W相の電流値iv、iwが−50Aとなっている状態で、PMモータ30がロックしてジャンクション温度Tjnが上限値Terrを超えると、電流ベクトルを30゜づつずらすことによって、U相の電流値iuを(86.6・k)A、V相の電流値ivを0A、W相の電流値iwを(−86.6・k)Aにすることで、トルク値τを維持しつつ、特定のスイッチング素子への熱負荷を低減できる。ただし、kは定数である(ステップ107)。
ところで、油圧ショベルなどの建設機械は、多数の機種があり、上部旋回体1を旋回させるために必要なPMモータ30の定格出力も様々である。このため、PMモータ30の種類に応じて、インバータ10のスイッチング素子に流れる電流の大きさも様々であり、それに応じてヒートシンク92も異なる冷却性能のものを、多種類にわたり用意しなければならない。たとえばヒートシンク92に流す冷却水の流量が、機種によって変更される。
この点、上述した本実施例では、ジャンクション〜ベース間温度差Tbjnに対して、ベース温度Tbnを加算することで、ジャンクション温度Tjnが求められ(Tjn=Tbn+Tbjn)、そのジャンクション〜ベース間温度差Tbjnは、ヒートシンク92の冷却能力に依存しない演算式で算出される。このためヒートシンク92が異なる冷却性能のものに変更された場合でも、共通の演算プログラムでスイッチング素子の温度(ジャンクション温度Tjn)を演算できる。このためIGBT保護用コントローラ70を共通化でき、コントローラの汎用性が高められ、部品の共通化、コスト削減が図られる。
なお、上述した実施形態では、油圧ショベルを想定して説明したが、油圧ショベル以外のホイールローダ、ブルドーザ等の他の建設機械に対しても同様に本発明を適用できる。また、PMモータ30が上部旋回体1を駆動する構成(図6)を想定して説明したが、PMモータ30が上部旋回体1を駆動する構成に代えて、作業機(ブーム、アーム、バケット)を駆動する構成の場合にも、本発明を適用することができる。あるいはPMモータ30が上部旋回体1を駆動するとともに、PMモータ30が作業機(ブーム、アーム、バケット)を駆動する構成の場合にも、本発明を適用することができる。
実施例では、建設機械のハイブリッドシステムを想定して説明したが、駆動源が電気モータのみのシステム(エンジンと併用しないシステム)にも、当然本発明を適用することができる。
図1(a)、(b)はそれぞれインバータの構成、PMモータの構成を説明する図である。 図2は実施例のモータ制御装置の構成図である。 図3は図2に示すIGBT保護用コントローラで行われる処理手順を示すフローチャートである。 図4はジャンクション〜ベース間温度差の計算結果を例示した図である。 図5は実施例のインバータと、インバータを冷却する冷却器の構成を示す斜視図である。 図6は、建設機械のハイブリッドシステムのうち、上部旋回体を駆動制御する構成部分を取りだして示したブロック図である。
符号の説明
10 インバータ 11〜16 スイッチング素子(IGBT)、30 PMモータ、70 IGBT保護用コントローラ、80 インバータ制御用コントローラ

Claims (5)

  1. 建設機械を駆動するモータと、
    入力されたスイッチング信号に応じて作動され、前記モータに対して駆動信号を出力するスイッチング素子と、
    前記モータの回転数を検出する回転数検出手段と、
    回転数検出手段で計測された回転数をフィードバック量として、前記スイッチング素子にスイッチング信号を出力する第1の制御手段と、
    前記モータがロック状態にあるか、あるいは回転状態にあるかを判別する判別手段と、
    前記モータがロック状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とに基づいて、ロック状態用の演算式を用いて、今回のスイッチング素子の温度を順次演算するとともに、
    前記モータが回転状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とに基づいて、回転状態用の演算式を用いて、今回のスイッチング素子の温度を順次演算する温度演算手段と、
    前記温度演算手段で演算されたスイッチング素子の温度に応じて、前記スイッチング素子を熱的に保護する制御を行う第2の制御手段と
    を具えたことを特徴とする建設機械のモータ制御装置。
  2. 前記スイッチング素子は、インバータを構成するスイッチング素子であり、
    前記インバータは、ベース板上にスイッチング素子が装着されて構成されており、
    ベース板には、スイッチング素子を冷却するための冷却器が接合されており、
    前記ベース板の温度を検出する温度検出手段が設けられ、
    前記温度演算手段は、
    前記モータがロック状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とベース板の温度との温度差とに基づいて、ロック状態用の演算式を用いて、今回のスイッチング素子の温度とベース板の温度との温度差を順次演算するとともに、
    前記モータが回転状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とベース板の温度との温度差とに基づいて、回転状態用の演算式を用いて、今回のスイッチング素子の温度とベース板の温度との温度差を順次演算し、
    さらに、この温度差に対して前記温度検出手段によって検出されたベース板の温度を加算することによって、スイッチング素子の温度を演算するものであること
    を特徴とする請求項1記載の建設機械のモータ制御装置。
  3. 前記モータは、建設機械の旋回体を駆動するモータであること
    を特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
  4. 前記第2の制御手段は、
    前記温度演算手段で演算されたスイッチング素子の温度が所定のしきい値以上になった場合に、前記スイッチング素子を熱的に保護するためのスイッチング信号が、第1の制御手段から前記スイッチング素子に出力されるように、第1の制御手段に指令を与えること
    を特徴とする請求項1記載の建設機械のモータ制御装置。
  5. 建設機械を駆動するモータであって、スイッチング素子から駆動信号が与えられることで駆動されるモータ、を制御するプログラムにおいて、
    前記モータがロック状態にあるか、あるいは回転状態にあるかを判別し、
    前記モータがロック状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とに基づいて、ロック状態用の演算式を用いて、今回のスイッチング素子の温度を順次演算するとともに、
    前記モータが回転状態にあると判別された場合には、前回までに演算されたスイッチング素子の温度とに基づいて、回転状態用の演算式を用いて、今回のスイッチング素子の温度を順次演算し、
    演算されたスイッチング素子の温度に応じて、前記スイッチング素子を熱的に保護する制御を行うようにした、建設機械のモータ制御プログラム。
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