本発明は、トナー及び画像形成方法に関する。
従来から、トナーを用いて静電荷像を現像する方法は、大別して、トナーとキャリアが混合されてなる二成分系現像剤を用いる方法と、トナーのみからなる一成分系現像剤を用いる方法がある。
二成分系現像剤を用いる方法は、トナーとキャリアを撹拌することにより、各々を互いに異なる極性に帯電させ、帯電したトナーにより反対極性を有する静電荷像が可視化されるものである。具体的には、鉄粉キャリアを用いるマグネットブラシ法、ビーズキャリアを用いるカスケード法、ファーブラシ法等が挙げられる。
一成分系現像剤を用いる方法としては、トナーを噴霧状態にして用いるパウダークラウド法、トナーを直接的に静電潜像に接触させて現像する接触現像法、トナーを静電潜像からわずかに離して現像を行う非接触現像法等が挙げられる。
これらの現像方法に適用されるトナーとしては、結着樹脂に、カーボンブラック、顔料等の着色剤を分散させたものが用いられている。また、これらの成分の他に、さらにマグネタイト等の磁性材料を含有するものは、磁性トナーとして用いられる。
このように、種々の現像方法に用いられるトナーは、現像される静電荷像の極性に応じて、正又は負の電荷に帯電させる。トナーを帯電させるためには、トナーを形成する樹脂の帯電性を利用することもできるが、帯電性が小さいので、得られる画像は、カブリ易く、不鮮明なものとなる。そこで、所望の帯電性をトナーに付与するために、染料、顔料又は荷電制御剤が添加される。
負極性の荷電制御剤としては、モノアゾ染料の金属錯塩、ニトロフミン酸及びその塩、サリチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸の亜鉛、アルミニウム、コバルト、クロム、鉄等の金属錯体、スルホン化した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
しかしながら、上述の染料は、構造が複雑で性質が一定しないため、安定性に乏しく、環境により帯電性が変化するものが多い。また、金属錯体の多くは、着色しており、カラートナーに適用すると、画像の色再現範囲が狭くなる。一方、重金属を含有する化合物は、帯電性を向上させる効果が大きいものの、安全性の問題がある。
そこで、金属を含有しない荷電制御剤として、フェノールオリゴマー、カリックスアレン(特許文献1及び2参照)、ビスフェノール骨格を有する化合物(特許文献3乃至5参照)、芳香族フッ素化合物(特許文献6参照)が知られている。
しかしながら、これらの荷電制御剤は、湿式造粒法を用いてトナーを製造する場合に、水相や水相との界面に移行しやすく、トナーの帯電性が低下するという問題がある。また、現像装置内でのトナーの耐熱保存性が低下するという問題がある。
特許第3200459号公報
特開平5−216277号公報
特公平4−16109号公報
特開平3−146964号公報
特許第3444113号公報
特許第2815613号公報
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、帯電性が良好で、耐熱保存性に優れるトナー及び該トナーを用いて画像を形成する画像形成方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、トナーにおいて、一般式
で示されるビスフェノール化合物を含有し、X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Yは、炭素数が3以上である二価連結基であることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、一般式
で示されるビスフェノール化合物を含有し、X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Yは、炭素数が3以上である二価連結基であるので、帯電性が良好で、耐熱保存性に優れるトナーを提供することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のトナーにおいて、少なくとも、水性溶媒中で造粒されることにより得られることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、少なくとも、水性溶媒中で造粒されることにより得られるので、帯電性が良好で、耐熱保存性に優れるトナーを得ることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のトナーにおいて、少なくとも、前記ビスフェノール化合物、結着樹脂及び着色剤を含有する材料を有機溶媒に溶解又は分散させたものを前記水性溶媒中で分散させることにより得られることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、少なくとも、前記ビスフェノール化合物、結着樹脂及び着色剤を含有する材料を有機溶媒に溶解又は分散させたものを前記水性溶媒中で分散させることにより得られるので、帯電性が良好で、耐熱保存性に優れるトナーを得ることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のトナーにおいて、少なくとも、前記ビスフェノール化合物を含有する材料をモノマーに溶解又は分散させたものを前記水性溶媒中で乳化させ、前記モノマーを重合することにより得られる分散体を、着色剤の分散体を含有する分散体と凝集、融着させることにより得られることを特徴とする請求項2に記載のトナー。
請求項4に記載の発明によれば、少なくとも、前記ビスフェノール化合物を含有する材料をモノマーに溶解又は分散させたものを前記水性溶媒中で乳化させ、前記モノマーを重合することにより得られる分散体を、着色剤の分散体を含有する分散体と凝集、融着させることにより得られるので、帯電性が良好で、耐熱保存性に優れるトナーを得ることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載のトナーにおいて、少なくとも、前記ビスフェノール化合物、結着樹脂及び着色剤を含有する材料を前記水性溶媒中で分散させることにより得られる分散体を、凝集、融着させることにより得られることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、少なくとも、前記ビスフェノール化合物、結着樹脂及び着色剤を含有する材料を前記水性溶媒中で分散させることにより得られる分散体を、凝集、融着させることにより得られるので、帯電性が良好で、耐熱保存性に優れるトナーを得ることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載のトナーにおいて、少なくとも、前記ビスフェノール化合物及び着色剤を含有する材料をモノマーに溶解又は分散させたものを前記水性溶媒中で分散させ、前記モノマーを重合することにより得られることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、少なくとも、前記ビスフェノール化合物及び着色剤を含有する材料をモノマーに溶解又は分散させたものを前記水性溶媒中で分散させ、前記モノマーを重合することにより得られるので、帯電性が良好で、耐熱保存性に優れるトナーを得ることができる。
請求項7に記載の発明は、画像形成方法において、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナーを用いて画像を形成することを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナーを用いて画像を形成するので、高画質画像を形成することが可能な画像形成方法を提供することができる。
本発明によれば、帯電性が良好で、耐熱保存性に優れるトナー及び該トナーを用いて画像を形成する画像形成方法を提供することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
本発明で用いられるビスフェノール化合物は、一般式
で示される。ここで、X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であり、水素原子が好ましい。また、Yは、炭素数が3以上である二価連結基であり、炭素数が3以上30以下である二価連結基が好ましく、炭素数が4以上20以下であるアルキレン基がさらに好ましい。二価連結基の炭素数が大きすぎると、トナーの帯電性又はトナーへの均一分散性が低下する。
本発明において、ビスフェノール化合物が環状構造を有することにより、環状構造が適度な自由度を有する非極性基として、結着樹脂との親和性を向上させる。これにより、湿式造粒法においては、水性溶媒への移行や偏在を抑制することができる。例えば、Yの代わりに2つのアルキル基を有する化合物を用いる場合では、ビスフェノールAのようにアルキル基の鎖長が短ければ結着樹脂との親和性が乏しく、湿式造粒法では、水性溶媒への移行や表面偏在が起こり、帯電性の低下や耐久性の低下による画像の劣化に繋がる。一方、アルキル基の鎖長が長ければ、このような現象は抑制されるが、結着樹脂を可塑化するため、耐熱保存性が低下する。
本発明で用いられるビスフェノール化合物としては、化学構造式
で示される化合物が挙げられる。これらの化合物は、いずれも白色又はほぼ白色である。
本発明で用いられるビスフェノール化合物は、フェノール類と環状ケトン類とを酸性触媒の存在下で反応させる公知の方法を用いて合成することができる。フェノール類は、環状ケトン類と縮合してビスフェノール化合物を生成する一価の芳香族ヒドロキシ化合物であれば、特に限定されない。フェノール類の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、2,6−キシレノール、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール等が挙げられる。一方、環状ケトン類は、フェノール類と縮合してビスフェノール化合物を生成させるものであれば、特に限定されない。環状ケトン類の具体例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロノナノン、シクロオクタノン、シクロドデカノン、2−ノルボルナノン、2−アダマンタノン、1−インダノン、2−インダノン、α−テトラロン、β−テトラロン、フルオレノン及びその誘導体等が挙げられる。
フェノール類と環状ケトン類の縮合反応においては、通常、環状ケトン類に対し、過剰量のフェノール類を仕込む。なお、余剰のフェノール類は、反応終了後に回収し、再利用することができる。また、縮合反応には、酸触媒及び助触媒を用いることができる。酸触媒としては、一般的にビスフェノール類の製造において用いられる塩化水素、硫酸、塩化トリメチルシリル、スルホン酸類、陽イオン交換樹脂等の公知のものを用いることができる。また、助触媒としては、アルキルメルカプタン、アルキルジメルカプタン、メルカプトプロピオン酸等の公知のものを用いることができる。
また、特開平10−211433号公報のように、メルカプト基等の助触媒としての機能を有する置換基により変性された強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を、酸触媒及び助触媒の代わりに用いてビスフェノール化合物を合成することもできる。
本発明において、ビスフェノール化合物の添加量は、結着樹脂の種類、必要に応じて添加される添加剤の有無、分散方法を含めたトナーの製造方法により適宜決定されるが、結着樹脂の0.1〜20重量%であることが好ましい。添加量が0.1重量%未満では、トナーの帯電性が低下し、実用的でない。また、添加量が20重量%を超える場合には、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、キャリアとの静電引力が増大するため、現像剤の流動性が低下したり、画像濃度が低下したりする。
本発明のトナーは、ビスフェノール化合物の他に、公知の荷電制御剤を含有してもよい。
公知の荷電制御剤としては、モノアゾ染料の金属錯塩、ニトロフミン酸及びその塩、サリチル酸、ナフトエ酸及びジカルボン酸の亜鉛、アルミニウム、コバルト、クロム、鉄等の金属錯体、スルホン化されている銅フタロシアニン顔料、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロムを含有する金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、フッ素変性四級アンモニウム塩を含む四級アンモニウム塩、アルキルアミド、リンの単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。具体的には、ニグロシン系染料のボントロン03、四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(以上、日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料等が挙げられる。この他に、スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等を側鎖に有する高分子等が挙げられる。
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、ワックス等を含有することが好ましい。
結着樹脂は、トナー用樹脂として一般に用いられているものであれば特に限定されず、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、エポキシ樹脂、ビニル系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂及びこれらのブロック共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
着色剤としては、公知の染料及び顔料を用いることができ、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、p−クロロ−o−ニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物が挙げられる。トナー中の着色剤の含有量は、通常、1〜15重量%であり、3〜10重量%が好ましい。
ワックスとしては、公知のものを用いることができ、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、フィッシャートロプシュワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸アミド、高級アルコールの高級脂肪酸エステル、エチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル、グリセリンの高級脂肪酸トリエステル、ペンタエリスリトールの高級脂肪酸テトラエステル、ジペンタエリスリトールの高級脂肪酸ヘキサエステル等の合成ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ライスワックス、カルナバワックス、ラノリンワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス等が挙げられる。
本発明のトナーの製造方法は、特に限定されないが、溶解懸濁法、懸濁重合法、乳化凝集法等の公知の湿式造粒法、粉砕法が挙げられる。特に、湿式造粒法を用いて製造されるトナーは、荷電制御剤の水性溶媒への移行やトナー表面への偏在が抑制されるため、帯電性を制御することが可能となる。
溶解懸濁法を用いてトナーを製造する方法としては、少なくとも、結着樹脂、着色剤及びビスフェノール化合物からなるトナー組成物を、有機溶媒に溶解又は分散させることにより得られる溶解液又は分散液を、無機分散剤又は樹脂微粒子の存在する水性溶媒中で、通常の撹拌機、ホモミキサー、ホモジナイザー等を用いて、所望の粒度分布を有するトナーが得られるように分散させた後、有機溶媒を除去することによりトナースラリーを得る方法が挙げられる。トナーは、公知の方法に従い、洗浄・濾過により回収し、乾燥することにより単離することができる。
有機溶媒は、容易に除去することが可能となるため、沸点が100℃未満であるものを用いることが好ましい。このような有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、単独又は2種以上を組合せて用いることができる。
水性溶媒は、水単独でもよいが、水と混和可能な溶媒を併用することもできる。混和可能な溶媒としては、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類等が挙げられる。トナー材料100重量部に対する水性溶媒の使用量は、通常、50〜2000重量部であり、100〜1000重量部が好ましい。水性溶媒の使用量が50重量部未満では、トナー材料の分散状態が悪くなる。また、2000重量部を超えると経済的でない。
無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等を用いることができる。
樹脂微粒子を形成する樹脂としては、水性分散体を形成することができる樹脂であれば特に限定されないが、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれでもよく、二種以上を併用してもよい。中でも、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすいことから、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの併用が好ましい。
また、トナー組成物として、ポリエステル等のプレポリマーを加え、トナーを製造する工程の中で重付加反応させてもよい。
乳化凝集法を用いてトナーを製造する方法としては、少なくとも、ビスフェノール化合物をモノマーに溶解又は分散させたものを、乳化剤を用いて水性溶媒中で乳化させ、重合開始剤を用いて重合することにより得られるビスフェノール化合物を含有する樹脂分散体を、着色剤の分散体、ワックスの分散体等と凝集、融着させることによりトナースラリーを得る方法、ビスフェノール化合物の分散液を調製し、樹脂の分散体、着色剤の分散体、ワックスの分散体等と凝集、融着させることにより、トナースラリーを得る方法が挙げられる。トナーは、公知の方法に従い、洗浄・濾過により回収し、乾燥することにより単離することができる。
モノマーとしては、ビニル系モノマーを用いることができ、スチレン、p−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸、p−クロロスチレン、p−カルボキシスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート等の(メタ)アクリル酸及びそのエステル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、イタコン酸及びそのエステル、各種ビニルエステル等が挙げられる。
乳化剤としては、公知のものを用いることができ、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシプロピルアルキルエーテル、ゾルビタン脂肪酸エステル等のノニオン性乳化剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性乳化剤、アルキルベタイン等の両性乳化剤等が挙げられる。中でも、アニオン性乳化剤が乳化安定性に優れるため好ましい。また、親水基及び重合可能な官能基の両方を有する反応性乳化剤を用いることにより、重合された分散体の分散状態を安定にすることもできる。
重合開始剤としては、公知のものを用いることができ、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及びその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等の水溶性の重合開始剤、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、過酸化ラウロイル等の油溶性の重合開始剤等が挙げられる。
懸濁重合法を用いてトナーを製造する方法としては、モノマー中に着色剤、ビスフェノール化合物、重合開始剤、その他の添加剤を加え、ホモジナイザー、超音波分散機等を用いて均一に溶解又は分散させた溶解液又は分散液を、通常の撹拌機、ホモミキサー、ホモジナイザー等を用いて、分散安定剤を含有する水性溶媒中で分散させ、重合する方法が挙げられる。モノマーの液滴が所望のトナーの粒子径を有するように撹拌速度及び時間を調整し、造粒することが好ましい。その後は、分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、粒子が沈降しないように撹拌すればよい。重合温度は、通常、40℃以上であり、50〜90℃が好ましい。また、重合反応の後半に昇温してもよい。さらに、トナーを定着させる際の臭気の原因等となる未反応のモノマー、副生成物等を除去するために、重合反応の後半又は終了後に、水性溶媒を留去してもよい。重合反応の終了後に、生成したトナーは、洗浄・濾過により回収し、乾燥する。
分散安定剤としては、無機化合物として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。有機化合物としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン等が挙げられる。これらは、水性溶媒に分散させて用いることができる。なお、分散安定剤は、モノマーに対して、0.2〜20重量%を添加することが好ましい。分散安定剤として、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いてもよいが、細かい粒子を得るために、分散媒体中で無機化合物の微粒子を生成してもよい。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合するとよい。
粉砕法を用いてトナーを製造する方法としては、従来公知の手段に従い、少なくとも、結着樹脂、ビスフェノール化合物及び着色剤からなるトナー組成物を機械的に混合する工程と、溶融混練する工程と、粉砕する工程と、分級する工程を有するトナーの製造方法が挙げられる。なお、機械的に混合する工程や溶融混練する工程において、粉砕又は分級する工程で得られる製品となるトナー以外のものを再利用してもよい。
機械的に混合する工程は、攪拌羽根を有する混合機等を用いて通常の条件で行えばよく、特に制限されない。この工程が終了したら、混合物を混練機に仕込んで溶融混練する。溶融混練機としては、一軸、二軸の連続混練機やロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。具体的には、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型押出機(東芝機械社製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、PCM型2軸押出機(池貝鉄工所社製)、コニーダー(ブス社製)等が挙げられる。溶融混練は、結着樹脂の分子鎖を切断しないような条件で行う必要がある。溶融混練温度が結着樹脂の軟化点より低過ぎると、分子鎖の切断が起こり、高過ぎると、ビスフェノール化合物、着色剤等の分散が進まないため、溶融混練温度は、樹脂の軟化点に応じて適宜設定されることが好ましい。
溶融混練する工程が終了したら、混練物を粉砕する。粉砕する工程においては、粗粉砕した後に、微粉砕することが好ましい。このような粉砕方法としては、ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕する方法、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕する方法、機械的に回転するローターとステーターの狭いギャップで粉砕する方法が挙げられる。この工程が終了した後に、遠心力等を用いて粉砕物を気流中で分級することにより、所定の粒子径を有するトナーを得ることができる。
本発明の画像形成方法は、本発明のトナーを用いて画像を形成する。なお、本発明のトナーは、一成分現像剤として用いてもよいし、キャリアと混合して、二成分現像剤として用いてもよい。
図1に、一成分現像剤を用いて画像を形成する画像形成装置の一例を示す。この画像形成装置には、潜像保持手段である感光体(感光体ベルト102)と、感光体ベルト102の図中右側にイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の異なる色のトナーを充填した現像装置1Y、1M、1C及び1Kが配置されており、現像装置1Cの下部には、感光体ベルト102に潜像を形成するための露光装置104が配置され、感光体ベルト102の下部には、帯電装置105が配置されている。露光装置104の下側には、記録媒体106aを溜めておく給紙カセット106が配置されている。感光体ベルト102の図中左側には、中間転写体(転写ドラム107)が配置され、その上部に定着装置101が配置されている。また、現像装置1Y、1M、1C及び1Kには、図示しない識別形状部がある。
感光体ベルト102は、矢印102aの方向に駆動される。駆動される感光体ベルト102の表面の感光層は、帯電装置105により、一様に帯電される。次に、パソコン,イメージスキャナ等による画像又は文字情報を、露光装置104を用いてドット単位で露光し、感光体ベルト102上に静電潜像を形成する。感光体ベルト102上に形成された静電潜像は、現像装置1Y、1M、1C及び1Kのいずれかによって、対応する色のトナー像に現像される。感光ベルト102上に形成されたトナー像は、矢印107aの方向に回転する転写ドラム107上に転写される。
上述のサイクルを、現像装置1Y、1M、1C及び1Kに対し、順次行うことにより、4色のトナーを重ね合わせたカラートナー像が転写ドラム107上に形成される。それに合わせ、給紙カセット106から用紙、OHP等の記録媒体106aがタイミングを合わせて送られてくることにより、記録媒体上にトナー画像が転写される。トナー画像が転写された記録媒体が定着装置101を通り、熱と圧力が加わることにより、トナーが溶融し、記録媒体に定着され、画像形成装置の上部に排出される。
次に、現像装置について説明する。図2に、現像装置1Y、1M、1C及び1Kの概略図を示す。トナー格納室1には、現像に用いるトナー2が格納されている。トナー格納室1内には、搬送羽根3が配置しており、それらの回転により、現像ロール5側にトナー2を搬送するように構成されている。トナー格納室1の前部には、導電性弾性発泡ロールからなる供給ロール4が配置されており、トナー格納室1の前部に搬送されたトナー2を現像ロール5に供給する。現像ロール5上に供給されたトナー2は、規制ブレード6により、現像に適正なトナー層厚に規制されると共に、規制ブレード6との摺擦により、トナーが摩擦帯電する。
以下、実施例及び比較例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、実施例で用いられる部は、重量部を意味する。
(実施例1)
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキシド付加物硫酸エステルのナトリウム塩エレミノールRS−30(三洋化成工業製)11部、スチレン83部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル83部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400rpmで15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。次に、75℃に昇温し、5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で5時間熟成して、樹脂微粒子分散液を得た。UPA−150(日揮装社製)を用いて樹脂微粒子分散液の体積平均粒子径を測定すると、38nmであった。樹脂微粒子分散液の一部を乾燥して単離したところ、樹脂のガラス転移温度は、56℃であった。
水990部、樹脂微粒子分散液80部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液エレミノールMON−7(三洋化成工業製)40部、酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の分散媒を得た。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキシド2モル付加物220部、ビスフェノールAプロピレンオキシド3モル付加物561部、テレフタル酸218部、アジピン酸48部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧230℃で8時間反応させ、さらに10〜15mmHgの減圧下で5時聞反応させた後、反応容器に無水トリメリット酸45部を入れ、180℃、常圧で2時間反応させ、低分子量ポリエステルを得た。低分子量ポリエステルは、数平均分子量が2500、重量平均分子量が6700、ガラス転移温度が43℃、酸価が25mgKOH/gであった。
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキシド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させ、さらに10〜15mmHgの減圧下で5時間反応させ、中間体ポリエステルを得た。中間体ポリエステルは、数平均分子量が2100、重量平均分子量が9500、ガラス転移温度が55℃、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が49mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、中間体ポリエステル411部、イソホロンジイソシアネート89部及び酢酸エチル500部を仕込み、100℃で5時間反応させ、プレポリマーを得た。プレポリマーの遊離イソシアネート%は、1.53重量%であった。
カーボンブラックとして、リーガル400R(キャボット社製)40部、結着樹脂として、酸価が10mgKOH/g、重量平均分子量が20000、ガラス転移温度が64℃のポリエステル樹脂RS−801(三洋化成社製)60部、水30部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これを、表面温度を130℃に設定した2本ロールを用いて45分間混練を行い、パルベライザーで粒子径が1mmになるように粉砕し、マスターバッチを得た。
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、低分子量ポリエステル378部、カルナバワックス110部、105部の化学構造式
で示されるビスフェノール化合物1及び酢酸エチル947部を仕込み、撹拌しながら80℃に昇温し、80℃で5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次に、マスターバッチ500部、酢酸エチル500部を容器に加え、1時間混合し、トナー組成物混合液を得た。
トナー組成物混合液1324部を容器に移し、ビーズミルとして、ウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度が1kg/時、ディスクの周速度が6m/秒で、直径が0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填し、3パスの条件で、顔料及びワックスの分散を行った。次に、低分子量ポリエステルの65%酢酸エチル溶液1324部加え、上記条件のビーズミルで1パスし、顔料・ワックス分散液を得た。顔料・ワックス分散液の固形分濃度は、50%であった。なお、固形分濃度は、130℃で30分間乾燥させることにより測定した。
顔料・ワックス分散液648部、プレポリマー154部及びイソホロンジアミン4部を容器に仕込み、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、5000rpmで1分間混合した後、容器に分散媒1200部を加え、TKホモミキサーを用いて、13000rpmで20分間混合し、乳化スラリーを得た。
撹拌機及び温度計をセットした容器に、乳化スラリーを投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、分散スラリーを得た。
分散スラリー100部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーを用いて、12000rpmで30分間混合した後、減圧濾過する操作を2回行った。濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。
循風乾燥機を用いて、濾過ケーキを45℃で48時間乾燥し、目開きが75μmのメッシュで篩い、トナー母粒子を得た。体積平均粒子径は、5.9μm、個数平均粒子径は、5.2μmで、平均円形度は0.971であった。次に、トナー母粒子100部、疎水性シリカ0.5部及び疎水化酸化チタン0.5部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナーを得た。
(実施例2)
シアン顔料として、50部のC.I.ピグメントブルー15:3、ドデシル硫酸ナトリウム10部及びイオン交換水200部を、サンドグラインダーミルを用いて分散させ、体積平均粒子径が170nmの着色剤分散液を得た。
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000m1のセパラブルフラスコに、ドデシル硫酸ナトリウム4.05部をイオン交換水2500部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下、230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、80℃に昇温した。次に、過硫酸カリウム9.62部をイオン交換水200部に溶解させた溶液を添加した後、スチレン568部、アクリル酸n−ブチル164部、メタクリル酸68部及びn−オクチルメルカプタン16.51部の混合物を1.5時間で滴下し、80℃で2時間、加熱撹拌することにより、重合(第一段重合)を行い、ラテックス(1H)を調製した。ラテックス(1H)の重量平均粒子径は、68nmであった。
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、スチレン123.81部、アクリル酸n−ブチル39.51部、メタクリル酸12.29部、n−オクチルメルカプタン0.72部、化学構造式
C(CH2OCO(CH2)20CH3)4
で示されるエステルワックス75部、10部のビスフェノール化合物1を仕込み、80℃に加熱し、溶解させてモノマー溶液を調製した。
化学構造式
C10H21(OCH2CH2)2OSO3 −Na+
で示される界面活性剤0.6部をイオン交換水2700部に溶解させた溶液を98℃に加熱し、ラテックス(1H)を固形分換算で32部添加した後、モノマー溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて8時間混合分散させ、分散液を調製した。
次に、この分散液に、過硫酸カリウム6.12部をイオン交換水250部に溶解させた溶液を添加し、82℃で12時間、加熱撹拌することにより、重合(第二段重合)を行い、ラテックス(1HM)を得た。
ラテックス(1HM)に、過硫酸カリウム8.8部をイオン交換水350部に溶解させた溶液を添加した後、82℃で、スチレン350部、アクリル酸n−ブチル95部、メタクリル酸5部及びモノマーの1mol%のn−オクチルメルカプタンの混合物を1時間で滴下した。滴下が終了した後、82℃で2時間加熱撹拌することにより、重合(第三段重合)を行い、28℃に冷却し、ラテックス(1HML)を得た。
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に、ラテックス(1HML)420部(固形分換算)、イオン交換水900部及び着色剤分散液150部を仕込み、撹拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、5N水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを8〜10に調整した。
次に、塩化マグネシウム六水和物65部をイオン交換水1000部に溶解させた溶液を、撹拌下、10分間で添加した。3分間放置した後、92℃に昇温し、凝集粒子が生成した。この状態で、コールターカウンターTA−II(べックマン・コールター社製)を用いて凝集粒子の粒子径を測定し、個数平均粒子径が6.1μmになった時点で、塩化ナトリウム80.4部をイオン交換水1000部に溶解させた溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、熟成処理として、94℃で加熱撹拌することにより、粒子の融着及び結晶性物質の相分離を継続させた。この状態で、FPIA−2000(シスメックス社製)を用いて、融着粒子の形状を測定し、平均円形度が0.960になった時点で30℃に冷却し、撹拌を停止した。生成した融着粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄し、40℃の温風で乾燥することにより、トナー母粒子を得た。トナー母粒子の個数平均粒子径及び形状係数を再度測定したところ、それぞれ6.0μm及び0.962であった。
トナー母粒子100部に、疎水性シリカH2000(ワッカー杜製)0.5部、一次粒子径が21nmの疎水性シリカ(HMDS処理品)0.5部、酸化チタンSTT−30S(チタン工業杜製)0.5部及び平均粒子径が0.2μmのチタン酸ストロンチウム1部を添加し、9Lヘンシェルミキサーを用いて、周速40m/秒で5分間混合した後、目開き106μmの篩で篩い、トナーを得た。なお、疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンの添加によって、トナーの形状及び粒子径は変化しなかった。
(実施例3)
四つ口容器中にイオン交換水360部と0.1Mリン酸ナトリウム水溶液430部を仕込み、高速撹拌装置ホモミキサーを用いて15000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに、1M塩化カルシウム水溶液34部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤であるリン酸カルシウムを含有する水分散液を調製した。
一方、分散質として、スチレン83部、アクリル酸n−ブチル17部、銅フタロシアニン顔料5部、0.8部のビスフェノール化合物1、ジビニルベンゼン0.05部、融点が75℃のエステルワックス5部、炭化水素ワックス2部及び重量平均分子量が25000で、酸価が15mgKOH/gのポリエステル樹脂5部を、アトライター(三井金属社製)を用いて、3時間分散させた後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3部を添加し、モノマー組成物を調製した。
次に、水分散液中にモノマー組成物を投入し、60℃の窒素雰囲気下で、高速撹拌装置の回転数を15000rpmに維持しつつ、4分間撹拌し、モノマー組成物を造粒した。その後、撹拌装置を、パドル撹拌羽根を具備したものに換え、200rpmで撹拌しながら、60℃に保持し、5時間重合を行った。
この後、80℃に昇温し、さらに重合を行った。冷却後、希塩酸を添加してpHを1.2にしてリン酸カルシウムを溶解させた。さらに、加圧濾過により固液分離させた後、18000部の水で洗浄を行った。その後、真空乾燥装置を用いて乾燥させ、重量平均粒子径が7.1μmのトナー母粒子を得た。
次に、トナー母粒子100部に、疎水化処理をした平均粒子径が30nmの酸化チタン及び疎水化処理をした、比表面積が120m2/gのシリカ微粒子をそれぞれ1部ずつ乾式で添加し、トナーを得た。
(実施例4)
重量平均分子量が27000で、酸価が18mgKOH/gのポリエステル樹脂100部、融点が120℃のポリエチレンワックス5部、5部のC.I.ピグメントブルー15:3及び1.5部のビスフェノール化合物1を、ヘンシェルミキサーを用いて撹拌混合した後、2軸押し出し機を用いて混練し、冷却後、体積平均粒子径が9±0.5μmになるように粉砕、分級を行い、トナー母粒子を得た。混練条件については、混練機出口での混練品の温度が130℃付近になるように、混練機の温度設定を行った。
得られたトナー母粒子に対して、0.5重量%の疎水性シリカと0.3重量%の酸化チタンを添加混合し、トナーを得た。
(実施例5)
ビスフェノール化合物1の代わりに、化学構造式
で示されるビスフェノール化合物2を用いた以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。
(実施例6)
ビスフェノール化合物1の代わりに、化学構造式
で示されるビスフェノール化合物3を用いた以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。
(実施例7)
ビスフェノール化合物1の代わりに、化学構造式
で示されるビスフェノール化合物4を用いた以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。
(実施例8)
反応槽に、イオン交換水35部を投入し、非イオン性界面活性剤ノニポール400(三洋化成社製)0.43部及びアニオン性界面活性剤ネオゲンR(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)(第一工業製薬社製)0.59部を溶解させた。次に、スチレン25部、アクリル酸n−ブチル3部、アクリル酸0.56部、ドデカンチオール1.1部及び四臭化炭素0.3部を予め混合溶解させたモノマー溶液を反応槽に分散させて乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、さらにイオン交換水7部に過硫酸アンモニウム0.29部を溶解させた溶液を投入し、窒素置換を行うことにより乳化液を得た。その後、さらに攪拌しながら、乳化液の温度が70℃になるまで加熱し、この状態で6時間そのまま乳化重合を継続することにより、樹脂微粒子の体積平均粒子径が210nm、ガラス転移温度が57℃、重量平均分子量が16500のアニオン性の樹脂微粒子分散液1を得た。
反応槽に、イオン交換水35部を投入し、非イオン性界面活性剤ノニポール400(三洋化成社製)0.43部及びアニオン性界面活性剤ネオゲンR(第一工業製薬社製)0.9部を溶解させた。次に、スチレン19.4部、アクリル酸n−ブチル8.3部及びアクリル酸0.57部を予め混合溶解させたモノマー溶液を反応槽に分散させて乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、さらにイオン交換水7部に過硫酸アンモニウム0.15部を溶解させた溶液を投入し、窒素置換を行うことにより乳化液を得た。その後、さらに攪拌しながら、乳化液の温度が70℃になるまで加熱し、この状態で6時間そのまま乳化重合を継続し、樹脂微粒子の体積平均粒子径が190nm、ガラス転移温度が55℃、重量平均分子量が830000のアニオン性の樹脂微粒子分散液2を得た。
シアン顔料C.I.Pigment Blue 15:3(大日本インキ化学工業社製)50部、アニオン性界面活性剤ネオゲンR(第一工業製薬社製)5部及びイオン交換水200部を混合し、ホモジナイザーのウルトラタラックス(IKA社製)で10分間予備分散し、さらにサンドミルで2時間分散することにより、体積平均粒子径140nm、固形分21.5重量%の着色剤分散液を得た。
50部のビスフェノール化合物1、アニオン性界面活性剤ネオゲンR(第一工業製薬社製)3部及びイオン交換水200部を混合し、ホモジナイザーのウルトラタラックス(IKA社製)で10分間予備分散し、さらにサンドミルで2時間分散することにより、固形分量21.1%のビスフェノール化合物分散液を得た。
融点が85℃のパラフィンワックスHNPO190(日本精蝋社製)7.0部、アニオン性界面活性剤ネオゲンR(第一工業製薬社製)1.1部及びイオン交換水18部を混合した後、95℃に加熱して、高圧型ホモジナイザーで分散処理することにより、体積平均粒子径が250nmの離型剤分散液を得た。
ポリ塩化アルミニウムPAC(浅田化学社製)0.18部及び0.1重量%硝酸水溶液1.8部をボトル中で混合攪拌し、凝集剤水溶液を得た。
以下の攪拌及び分散には、インライン式の攪拌・分散装置を用いた。この装置は、攪拌槽と、攪拌槽の底部から攪拌槽の上部へと循環するループ配管と、ループ配管の途中に挿入された分散機キャビトロンCD1010(太平洋機構社製)から構成されており、攪拌槽には、冷却手段として、冷却水により攪拌槽の冷却が可能なジャケットが取り付けられているものである。
インライン式の分散・攪拌装置を用いて、8.35部の樹脂微粒子分散液1、5.5部の樹脂微粒子分散液2、着色剤分散液2.1部、ビスフェノール化合物分散液0.5部、離型剤分散液2.8部及びイオン交換水43部からなる混合液を攪拌槽で十分に混合した後、凝集剤水溶液1.5部を徐々に加えながら、攪拌槽の底弁から混合液を分散機へと導入し、ローターの周速度(最外周の周速度)を36m/秒にして分散させ、分散機を通過した混合液を再び攪拌槽の上部へと10分間循環させた。攪拌・分散を終えた後の混合液中に含まれる凝集粒子をコールターカウンターのマルチマイザーII(コールター社製)で測定したところ、体積平均粒子径は3.1μmであった。なお、この際の混合液の温度は32℃であった。
次に、この混合液を、加熱ジャケット付攪拌槽で52℃まで加熱し、90分間保持した。加熱処理を終えた後の混合液をコールターカウンターで測定すると、体積平均粒子径が5.5μmの凝集粒子が確認された。この混合液に4.3部の樹脂微粒子分散液1を緩やかに添加し、さらに1時間保持すると、体積平均粒子径が6.0μmの凝集粒子が確認された。
次に、この混合液に、4重量%水酸化ナトリウム水溶液1.5部を添加して、95℃まで加熱し、4時間保持して凝集粒子を融合した。その後、冷却して、孔径が20μmのナイロンメッシュで濾過し、さらに孔径が3μmの濾布で濾過した後、濾布上の濾過物をイオン交換水で充分に洗浄し、濾過物を真空乾燥機で乾燥してトナー母粒子を得た。トナー母粒子は、体積平均粒子径が6.0μm、個数平均粒子径が5.4μm、平均円形度が0.968であった。次に、トナー母粒子100部、疎水性シリカ0.5部及び疎水化酸化チタン0.5部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナーを得た。
(比較例1)
ビスフェノール化合物1を加えなかった以外は、実施例1と同様に、トナーを作製した。
(比較例2)
ビスフェノール化合物1を加えなかった以外は、実施例2と同様に、トナーを作製した。
(比較例3)
ビスフェノール化合物1の代わりに、サリチル酸亜鉛E−304(オリエント化学工業社製)を用いた以外は、実施例3と同様にトナーを作製した。
(比較例4)
ビスフェノール化合物1の代わりに、サリチル酸亜鉛E−304(オリエント化学工業社製)を用いた以外は、実施例4と同様にトナーを作製した。
(比較例5)
ビスフェノール化合物1の代わりに、化学構造式
で示されるビスフェノール化合物5を用いた以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。
(比較例6)
ビスフェノール化合物1の代わりに、化学構造式
で示されるビスフェノール化合物5を用いた以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。
(比較例7)
ビスフェノール化合物分散液を加えずに、加熱温度及び時間を適宜調節してトナー母粒子を得た以外は、実施例8と同様に、トナーを作製した。
(分子量の測定)
樹脂の分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて求めた。具体的には、HLC−8220GPC(東ソー社製)を用い、カラムTSKgel SuperHZM−M x 3の温度を40℃、テトラヒドロフランの流速を0.35ml/分に設定して、濃度0.05〜0.6%の試料を0.01ml注入することにより、測定した。
以上の条件で測定した樹脂の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して重量平均分子量を算出した。単分散ポリスチレン標準試料としては、5.8×100〜7.5×1000000の範囲のものを10点使用した。
(評価方法及び評価結果)
トナーをLP−1500C(エプソン社製)の黒トナーカートリッジに入れ、初期及び白紙通紙800枚後の地汚れの観察を行った。なお、地汚れが少ない程、トナーの帯電性は、良好である。
地汚れは、ほとんど見られない場合を○、若干見られるが、気になるレベルではない場合を△、目立つ程、見られる場合を×として、判定した。
耐熱保存性は、以下のようにして評価した。トナー20gを20mlのガラス瓶に入れ、55℃の恒温槽で24時間静置した後、トナーを24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)を行った。なお、針入度が大きいトナー程、耐熱保存性が優れており、針入度が15mm以下の場合は、使用上問題が発生する可能性が高い。
耐熱保存性は、針入度が20mm以上である場合を○、15mm以上20mm未満である場合を△、15mm未満である場合を×として、判定した。この結果を表1に示す。
これより、実施例1〜7のトナーは、帯電性が良好で耐熱保存性に優れることがわかる。
本発明で用いられる画像形成装置の一例を示す図である。
図1の画像形成装置の現像装置の概略図である。
符号の説明
1Y、1M、1C、1K 現像装置
101 定着装置
102 感光体ベルト
104 露光装置
105 帯電装置
106 給紙カセット
106a 記録媒体
107 転写ドラム
1 トナー格納室
2 トナー
3 搬送羽根
4 供給ロール
5 現像ロール
6 規制ブレード