JP2006281538A - プラスチックフィルム用処理液およびそれを用いたインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、プラスチックフィルム用処理液に関する。詳しくは、本発明は、被記録面がプラスチックフィルムである記録媒体への印刷を行う場合に使用されるものであって、被記録面への水性インク組成物の印刷に先だって塗布される、印刷前処理液に関する。本発明はまた、そのような処理液を用いたインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、記録媒体の被記録面に付着させて印刷を行う印刷方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度、高品質な画像を高速で印刷可能であるという特徴を有する。記録媒体としては、一般的な紙等に加えて、プラスチックフィルムなどの素材への要求が高まっている。
Rは、直鎖状もしくは分岐鎖状の、C2〜12の飽和炭化水素鎖を表し、かつ
Xは、−CH2−または−O−を表す]。
また本発明の好ましい態様によれば、処理液は、界面活性剤および/または低表面張力有機溶剤をさらに含んでなる。
本発明による処理液は、前記したように、被記録面がプラスチックフィルムであるインクジェット記録媒体用であって、式(I)の環状エステル化合物と、主溶媒とを少なくとも含んでなる。ここで、主溶媒は、後述するように好ましくは水である。また本発明による処理液は、好ましくは、界面活性剤および/または低表面張力有機溶剤をさらに含んでなり、より好ましくは、界面活性剤をさらに含んでなるか、または、界面活性剤および低表面張力有機溶剤をさらに含んでなる。また本発明による処理液は、好ましくは、インクジェット記録方法により記録媒体に塗布される。
本発明による処理液は、プラスチックフィルムに塗布されると、その表面に均一に広がり、この状態で水分が蒸発すると、環状エステル化合物がプラスチックフィルム表面に均一かつ高濃度で残留させることができる。その結果、環状エステル化合物が、プラスチックフィルムの表面から極浅い部分を、溶解もしくは湿潤状態にできると考えられる。ここに、加熱により被膜化し得る樹脂を含む水性インクを付着させた後、そこに含まれる樹脂を硬化させて被膜化させると、この硬化被膜とプラスチックとの間の界面に、水性インクに含まれる樹脂とプラスチックが混合した層が形成されると考えられる。この混合層はプラスチックとインクに含まれる樹脂が硬化して形成された被膜とのそれぞれに対して一体化しているため、インク層とプラスチック表面との密着性を飛躍的に向上させることができると考えられる。このように密着性が高まることにより、擦りなどの外力や界面への水の浸入による剥れがほとんど無くなり、耐擦性、耐傷性、および耐水性に優れたプラスチック記録物を形成することができる。このため、プラスチックフィルム自体の耐久性を生かした強靭な印刷物を作成することが可能となる。
本発明による処理液は、式(I)の環状エステル化合物を必須の成分として含んでなる。
式(I)中、前記したように、Rは、直鎖状もしくは分岐鎖状の、C2〜12の飽和炭化水素鎖を表し、Xは、−CH2−または−O−を表す。Rは、好ましくはC2〜8、より好ましくはC2〜5、さらに好ましくはC2〜4の飽和炭化水素鎖を表す。なおここで、例えば「C2〜12の飽和炭化水素鎖」という場合の「C2〜12」とは、該飽和炭化水素鎖の炭素数が2〜12個であることを意味する。
直鎖状もしくは分岐鎖状の、C2〜12の飽和炭化水素鎖の具体例としては、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
水溶液は通常プラスチックにはじかれるが、本発明による処理液には、界面活性剤および/または低表面張力有機溶剤を添加することができるため、プラスチック面に均一に環状エステル化合物を塗布することができる。均一に塗布された処理液から水分を蒸発させることで、環状エステル化合物をプラスチック表面に過不足無く定着させ、所望の領域のプラスチック表面だけを溶解することができると考えられる。
低表面張力有機溶剤
プラスチック面に均一に環状エステル化合物を塗布するために、本発明の処理液は、界面活性剤の代わりに、または界面活性剤に加えて、低表面張力有機溶剤を含んでなることができる。
R21O−〔CH2−CH(R23)−O〕t−R22 (ii)
[式中、R21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数3〜6のアルキル基(好ましくはブチル基)であり、R23は水素原子または炭素数1〜4の低級アルキル基、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基であり、tは1〜8、好ましくは1〜4の整数であるが、但し、R21およびR22の少なくとも一方は炭素数3〜6のアルキル基(好ましくはブチル基)である]で表される化合物である。
本発明による処理液は、主溶媒を含んでなる。環状エステル化合物を含む水溶性成分を薄く均一にプラスチック表面に塗布するために、本発明においては、環状エステル化合物を主溶媒で希釈して塗布する。このような主溶媒としては、水または水溶性有機溶媒などが使用可能であるが、本発明においては、安全性などの観点から、水が好ましい。
したがって、本発明における処理液において、好ましくは、主溶媒は水である。ここで使用される水としては、イオン性の不純物を極力低減することを目的として、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、処理液を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
本発明の処理液は、上記した各成分を含むことにより、所望の効果を実現できるものであるが、必要に応じて、防腐剤・防かび剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、ノズルの目詰まり防止剤などをさらに含むことができる。
本発明の処理液は、前記の各配合成分を任意の順序で適宜混合し、溶解(または分散)させた後、必要に応じて不純物などを濾過して除去することにより、調製することができる。
環状エステル化合物 0.1〜50.0重量%;
界面活性剤 0.01〜5.0重量%;
低表面張力有機溶剤 0〜25.0重量%; および
水 残り。
本発明によるインクジェット記録方法は、前記したように、被記録面がプラスチックフィルムである記録媒体に、処理液を塗布した後、インク組成物の液滴を吐出させ、被記録面に付着させて印刷を行うものである。
本発明において使用し得る水性顔料インク組成物は、顔料と、熱可塑性樹脂と、水とを少なくとも含んでなる。
本発明において、水性顔料インク組成物は、水系インクジェット記録用インク組成物において従来から使用されている任意の顔料を含むことができる。顔料としては、例えば、インクジェット記録用インク組成物において従来から使用されている有機顔料または無機顔料を用いることができる。顔料は、水溶性樹脂や界面活性剤等の分散剤とともに分散した樹脂分散顔料、または顔料表面に親水性基を導入し分散剤の使用なしで水系媒体に分散もしくは溶解可能とした表面処理顔料として、インク組成物に添加することができる。なお、顔料を樹脂分散剤で分散する場合、後述する熱可塑性樹脂を分散剤として使用してもよい。また、顔料は2種以上を組合せて用いてもよい。
本発明において、水性顔料インク組成物は熱可塑性樹脂を含んでなる。熱可塑性樹脂として、水性インク媒体に可溶の樹脂、または不溶の樹脂を使用することができる。水性インク媒体に可溶の樹脂は、前述の顔料を分散するのに使用する樹脂分散剤を好適に使用することができる。また、水性インク媒体に不溶の樹脂は、樹脂粒子を樹脂エマルジョンの形態でインク組成物に添加することが好ましい。ここで樹脂エマルジョンは、連続相である水と分散相である樹脂成分(熱可塑性樹脂成分)とからなる。
水性顔料インク組成物は、水を含んでなる。ここで水は、前記した処理液の「主溶媒」の欄の記載に従って選択することができる。また水性顔料インク組成物は、浸透剤、保湿剤等の公知の他の成分や、前記した処理液の「界面活性剤」、「低表面張力有機溶剤」、および「他の成分」等の欄の記載に従って適宜選択して使用することができる。
本発明による処理液を下記の組成にしたがって調製した。
処理液1:
γ−ブチロラクトン 10.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
炭酸プロピレン 15.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
水性顔料インク組成物を下記の組成にしたがってそれぞれ調製した。
黒インク:
カーボンブラックMA7(三菱化成株式会社製) 5.0 重量%
スチレン−アクリル酸共重合体(熱可塑性樹脂) 2.5 重量%(固形分)
グリセリン 3.0 重量%
ジエチレングリコール 4.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
2−ピロリドン 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
C.I.ピグメントブルー15:3 2.0 重量%
スチレン−アクリル酸共重合体(熱可塑性樹脂) 1.0 重量%(固形分)
グリセリン 3.0 重量%
ジエチレングリコール 6.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
2−ピロリドン 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
C.I.ピグメントレッド122 3.0 重量%
スチレン−アクリル酸共重合体(熱可塑性樹脂) 1.5 重量%(固形分)
グリセリン 3.0 重量%
ジエチレングリコール 5.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
2−ピロリドン 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
C.I.ピグメントイエロー74 2.0 重量%
スチレン−アクリル酸共重合体(熱可塑性樹脂) 1.0 重量%(固形分)
グリセリン 3.0 重量%
ジエチレングリコール 6.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
2−ピロリドン 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
印刷サンプルの作成(例1〜5):
インクジェットプリンタ(TM−J8000;セイコーエプソン株式会社製)を用いてインクジェット印刷用の表面処理を施していない軟質塩化ビニルフィルム(スコッチカルフィルム;住友スリーエム株式会社製)に、処理液1または処理液2を、50%dutyで塗布した。その後、60℃、相対湿度20%の恒温槽で水分が蒸発するまで1分間乾燥し、直ちに黒インク、またはシアンインク、マゼンタインク、イエローインクを充填したインクジェットプリンタ(TM−J8000;セイコーエプソン株式会社製)を用いて、100%dutyパターンを印刷した。
印刷サンプルは60℃、相対湿度20%の恒温槽で1時間、さらに室温で1日乾燥した後、下記の評価試験をおこなった。
黒インク、またはシアンインク、マゼンタインク、イエローインクを充填したインクジェットプリンタ(TM−J8000;セイコーエプソン株式会社製)を用いて、例1と同じ軟質塩化ビニルフィルム(処理液の塗布はなし)に100%dutyパターンを印刷した。これを60℃、相対湿度20%の恒温槽で1時間、さらに室温で1日乾燥した後、下記評価試験をおこなった。
評価1: 耐擦性および耐傷性
各硬度の鉛筆についてJIS K−5600−5−4に規定される750g荷重鉛筆引っ掻き試験器(株式会社井本製作所製)を使用して、印刷膜が取れた引っ掻き傷(凝集破壊)の有無を調べた。その結果を次の基準で評価した。
A: HB硬度鉛筆で傷つかず下地が現れない。
B: HB硬度鉛筆で傷ついて下地が現れるが、B硬度鉛筆では傷つかず下地が現れない。
C: B硬度鉛筆で傷ついて下地が現れる。
粘着テープ(セロテープNo.252;積水化学工業株式会社製)を印刷サンプルの印刷部に貼り、指で2ないし3回擦った後に粘着テープを引き剥がした。その部分の印刷部の状態を目視で観察した。その結果を次の基準で評価した。
A: 塩化ビニルフィルムからのインク(着色剤)の剥離が全く無い。
B: 塩化ビニルフィルムからインク(着色剤)の一部が剥離する。
C: 塩化ビニルフィルムからインク(着色剤)が完全に剥離している。
印刷サンプルの印刷部に水道水を1滴付着させて1分間放置し、その後ガーゼで水滴を拭き取った。拭き取った後の印刷部およびガーゼの状態を目視で観察した。その結果を次の基準で評価した。
A: 塩化ビニルフィルムからのインク(着色剤)の剥離が全く無く、ガーゼも着色しない。
B: 塩化ビニルフィルムからインク(着色剤)の一部が剥離し、ガーゼが着色している。
C: 塩化ビニルフィルムからインク(着色剤)が完全に剥離し、ガーゼが着色している。
Claims (17)
- 主溶媒が水である、請求項1に記載の処理液。
- 界面活性剤および/または低表面張力有機溶剤をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の処理液。
- 界面活性剤をさらに含んでなるか、または、界面活性剤および低表面張力有機溶剤をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の処理液。
- 式(I)中、Rが直鎖状もしくは分岐鎖状のC2〜5の飽和炭化水素基を表す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の処理液。
- 環状エステル化合物が、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、炭酸プロピレン、および炭酸エチレンからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の処理液。
- 界面活性剤が、アセチレングリコール系界面活性剤である、請求項3〜6のいずれか一項に記載の処理液。
- 低表面張力有機溶剤が、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、または、トリエチレングリコールモノブチルエーテルである、請求項3〜7のいずれか一項に記載の処理液。
- 環状エステル化合物の含有量が0.1〜50.0重量%であり、かつ、
界面活性剤の含有量が0.01〜5.0重量%である、請求項3〜8のいずれか一項に記載の処理液。 - インクジェット記録方法により記録媒体に塗布される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の処理液。
- 顔料と、熱可塑性樹脂と、水とを少なくとも含んでなる、水性顔料インク組成物の印刷前に、記録媒体に塗布される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の処理液。
- 被記録面がプラスチックフィルムである記録媒体に、処理液を塗布した後、インク組成物の液滴を吐出させ、被記録面に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法であって、
処理液が、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム用処理液であり、かつ、インク組成物が、顔料と、熱可塑性樹脂と、水とを少なくとも含んでなる、水性顔料インク組成物であることを特徴とする、インクジェット記録方法。 - 処理液の塗布を、該液滴を吐出させ、記録媒体の被記録面に付着させることによるインクジェット記録方法により行う、請求項12に記載のインクジェット記録方法。
- インク組成物を付着させる前に、
塗布した処理液の水分を蒸発させ、環状エステル化合物の一部を蒸発させる乾燥工程をさらに含んでなる、請求項12または13に記載の方法。 - 被記録面に付着させたインク組成物を加熱して樹脂被膜を形成させる加熱工程をさらに含んでなる、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
- 乾燥工程の乾燥処理および/または加熱工程の加熱処理を、ヒーター加熱または温風乾燥により行う、請求項15に記載の方法。
- 請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法によって印刷された、記録物。
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