発明の詳細な説明
本発明は、特定の分子(標的分子)、好ましくは、望ましくないタンパク質などのタンパク質の標的化方法に関する。本方法は、特定の標的(例えば、標的タンパク質)と結合し得る抗体の細胞内発現を包含し、ここで好ましくは、抗体はその分泌をコードする配列を含んでいない。このような抗体は、標的と細胞内で結合する。本明細書で用いたように、抗体という用語は、少なくとも、タンパク質などの標的に選択的に結合し得る免疫グロブリンの部分を指す。抗体は、本明細書中で抗体遺伝子と呼ばれる、標的と結合し得る抗体の部分をコードする十分な数のヌクレオチドを含有するDNA配列から発現される。遺伝子は、目的の細胞中の抗体を発現し得るプロモーターと作動可能に連結される。プロモーターは、当該分野では周知であり、そして標的したい細胞型に依存して容易に選択され得る。さらに、誘導性プロモーターの使用もまた当該分野では周知であり、それは、いくつかの実施態様において好ましい。例えば、標的タンパク質の機能が、過剰発現の結果である場合である。次いで、「プロモーターを作動させること」により、抗体の発現が選択的に得られ得る。抗体遺伝子およびプロモーターの全体の配列は、抗体カセットとして本明細書中に記載されている。このカセットは、遺伝子を細胞内に送達し得る、以下に記載された多くの手段のいずれかにより細胞に送達される。
カセットは、細胞内で抗体を発現する。次いで、発現した抗体は、標的抗原に結合し得る。このことにより、広く多様な有用な提要が可能である。
ほとんどのどんな種類の生物学的分子でも、抗原として用い得る。例えば、中間代謝産物、糖質、脂質、オータコイド、およびホルモン、ならびに、高分子(複合糖類、リン脂質など)、核酸(RNAおよびDNAなど)、およびタンパク質である。当業者は、小分子および高分子の両方に特異的に結合する抗体を作成し得る。例えば、免疫化の前に、当業者は小分子を用いて、一般的に小分子(ハプテンと呼ばれる場合がある)を高分子(担体と呼ばれる場合がある)に結合させる。ハプテン−担体複合体は、免疫原として作用する。このように、標的の広い範囲と特異的に結合する抗体は公知である。好ましい標的分子には、タンパク質、RNA、DNA、およびハプテンを包含する。さらに好ましくは、標的はタンパク質である。
多くの癌遺伝子の過剰発現が、悪性の細胞形質転換に関連して報告されている。例えば、mycの増幅は、COLO 320結腸癌腫細胞培養物、SKBR3胸部癌腫細胞株、および肺癌腫細胞株で報告されている。N-mycの増幅は、神経芽細胞腫細胞株および網膜芽腫で報告されている。c-abl、c-myb、および他の癌遺伝子もまた、悪性の性質転換に関連して報告されている。RNA Tumor Viruses, Molecular Biology of Tumor Viruses、第2版、487-543頁、第12章、「ヒト癌遺伝子」、Weiss,R.ら編、(Cold Spring Harbor Laboratory (1985))を参照のこと。
高レベルの多様な癌遺伝子もまた、腫瘍の再発の危険をもたらすことが報告されている。例えば、neu/c-erbB-2のレベルとヒト胸部癌の原因および経過との間の相関関係が報告されている。Paterson,M. C.ら、Cancer Research 51:556-567 (1991)を参照のこと;高レベルのmyc、int-2、およびhst-1もまた、胸部癌に関与している。同様に、EGF、EGF-Rへのレセプターの上昇したレベルが、胸部癌と関連することが示されている。Grimaux,M.ら、Int.J. Cancer 45:255-262(1990)。これらの癌遺伝子および他の癌遺伝子の過剰発現もまた、他の癌と関連するとして報告されている。
多くの癌遺伝子は、細胞増殖に含まれている遺伝子と幾分かの相同性を示す。例えば、以下の表を参照のこと。
これらの癌遺伝子の大部分に対する抗体が報告されている。さらに、癌遺伝子(oncと呼ばれる場合もある)の過剰発現に対して、いくつかの癌遺伝子は、プロト-onc(正常タンパク質への正常遺伝子)から細胞の悪性の形質転換を生じるようなonc(悪性の形質転換を引き起こし得るタンパク質の遺伝子)までの変異を起こす。例えば、12位、13位、および61位の残基にあるrasp21のコドンでras遺伝子が点変異により、種々の癌に関与する変異体ras p21タンパク質が得られた。これらの ras変異体の多くに対して特異的な抗体が知られている。
同様に、ウイルスのタンパク質が発現すると、疾病を招き、その結果、病気および死ぬことすらあり得る。ウイルスは、RNAまたはDNAウイルスのいずれかであり得る。例えば、RNAウイルスの一種であるレトロウイルスは、典型的には、3つのサブファミリー、すなわち腫瘍ウイルス、泡沫状ウイルス亜科のウイルス、およびレンチウイルスの1種の一部であると分類されている。腫瘍ウイルスによる感染は、典型的には悪性疾患に関連する。コードされているウイルスのタンパク質には、gag、pol、およびエンベロープが包含される。ウイルスが、培養物中の細胞を悪性形質転換し得るタンパク質をコードする癌遺伝子を含む場合がある。レンチウイルスは、一般にゆっくりとした感染を生じ、そして長期の潜伏期間の後に、慢性の消耗性疾患を引き起こす。遺伝子が、gag、pol、およびエンベロープ構造タンパク質をコードすることに加えて、遺伝子は、種々の調節タンパク質をもコードする。ウイルスのRNAおよび/またはDNAは、細胞機構を引き継いでウイルスにコードされるタンパク質を生成し得る。
例えば、HTLV-1は、成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)の病因因子、つまりCD4+T細胞の攻撃的新生物であるレトロウイルスである[Poiesz,B.J.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. 77:7415-7419 (1980)]。このようなウイルスにより発現されるウイルスのタンパク質により、細胞の形質転換が生じる。taxおよびrex遺伝子ならびに遺伝子生成物は、腫瘍形成に関して重要であると考えられる。従って、それらは好ましいグループ分けの標的分子である。
HIVは、後天性免疫不全症候群(AIDS)および関連疾患などの免疫不全疾患の病因因子であるHIV-1およびHIV-2を包含するレンチウイルスのファミリーを構成する[Barre-Sinoussiら、Science220:868-871 (1983);Galloら、Science 224:500- 503 (1984);Levyら、Science225:840-842(1984);Popovicら、Science 224:497-500 (1984)]。
エプスタイン・バールウイルスは、免疫抑制された個体におけるバーキットリンパ腫、鼻咽頭部癌、およびB-リンパ腫が選択されて発生するように、多くの腫瘍と関連している [zurHausen, H., Science 254:1167-1173 (1991)]。
B型肝炎ウイルスは、肝細胞癌と関連している[zur Hausen, Science, 前出]。特に、ウイルスのXオープンリーディングフレームが含まれているようである[同書]。従って、この領域、またはこの領域からの発現生成物を標的とする抗体は、本発明の方法において好ましい。
パピローマウイルスは、肛門性器癌と関連している[同書]。E6およびE7遺伝子がこれらのウイルスに含まれると考えられ、そして良好な標的となる。
DNAプロウイルスなどの核酸に細胞内結合することにより、細胞へのウイルスの組込みを予防または阻害し得る。ウイルスのRNAへの結合により、ウイルスタンパク質の発現を妨害し得る。抗ヌクレオチド抗体は、広く研究され[VanEs, J. H.ら、J. of Immun. 149:2234-2240 (1992);Brigido, M. M.ら、J. of Immun.150:469-479(1993);Stollar, B.D.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:4469-4473 (1986);Eilat,D.ら、J. of Immun. 141:1745-1753(1988);Brigido, M. M.ら、J. of Immun. 146:2005-2009(1991)]、そして抗体は同じ基本的な特徴を共有している。
これらの抗体は、抗体を含むライブラリーをスクリーニングするために、RNAなどのヌクレオチド配列を用いるなどの標準技術により、生成および/またはスクリーニングされ得る[Tsai,D.E.、J.of Immun. 150:1137-1145(1993);Okano, Y.ら、J. of Immun. 149:1093-1098(1992);Tsai,D.E.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:8864-8868 (1992)]。
好ましくは、抗体を選択および/または設計して、重要な核酸結合部位で標的化および妨害をもし得る。例えば、霊長類免疫不全ウイルスのTAR成分である。この核酸配列は、5'LTRに存在し、そしてウイルスタンパク質の発現を増強するtatに応答性である。
これらの癌遺伝子およびウイルスの標的タンパク質に細胞内結合することにより、タンパク質の分裂の影響を減少または回避するこのようなタンパク質の正常な機能を中断させ得る。
例えば、レセプタータンパク質、ウイルスのエンベロープタンパク質(例えば、HIV gp160)などのさらにプロセスされたタンパク質と結合すると、タンパク質の切断が著しく減少して活性成分になり得る。別の例として、キャプシドタンパク質(例えば、HIVキャプシドタンパク質)は、脂肪酸のミリスチン酸を添加することにより、共翻訳的に改変されている。ミリスチン酸は、細胞の内表面に付着しているキャプシド前駆体タンパク質中に含まれているようである。HIVプロウイルスでは、このウイルスが変化しているので、このミリスチン酸を付加し得ず、プロウイルスは感染性ではない。ミリスチル化のプロセスの研究は、アミノ末端から2位で、およびミリスチル化部位から6〜10アミノ酸以内のアミノ酸残基でもグリシンが必要であることを示す。従って、これらの部位およびこの近くの部位のタンパク質に結合する抗体は、ミリスチル化を中断し得る。
同様に、重要な外部ドメインを有するタンパク質に結合することにより、タンパク質の影響を妨げ得る。
他の実施態様では、機能障害レセプタータンパク質に結合することにより、悪性形質転換などの細胞の機能障害を起こし得る望ましくない相互作用を遮断し得る。
例えば、多くのタンパク質(表面レセプター、貫膜タンパク質など)は、小胞体(ERと呼ばれる場合もある)-ゴルジ装置を通ってプロセスされる。このようなタンパク質の例には、neu、エンベロープ糖タンパク質(霊長類レンチウイルス、例えばHIV-1またはHIV-2のエンベロープ糖タンパク質など)が挙げられる。細胞のこのような領域に送達され得、そして特定のタンパク質に対して特異的であり得る抗体を用いることにより、他の細胞の機能を中断させることなくこのようなタンパク質の機能を中断させ得る。例えば、sisおよびint-2により生成されたPDGF-/2およびFGF様因子は、ERを通過する。これらの因子は、多くの癌に関与する。従って、レセプターを標的とすることに加えて、それらに対する抗体を用いて、成長因子を標的とし得る。
成長因子もまた、カルチノイド症候群腫瘍由来などの多くの他の悪性細胞により発現され、そしてこれらは別の標的となる。
この方法を用いてもまた、ある特定時間に望ましくない機能を中断もさせ得る。例えば、MHCクラスIおよびクラスIIの分子は、抗原の免疫系認識において重要である[Teyton,L.ら、The New Biologist 4:441-447(1992);Cox,J.H.ら、Science 247:715-718(1990);Peters,P.J.ら、Nature 349:669-676 (1991);Hackett, Nature 349:655-656 (1991)]。しかし、特にMHCクラスII分子からのこのような免疫認識は、器官移植片などに問題を生じ得る[Schreiner,G. F.ら、Science 240:1032-1033 (1988)]。従って、器官移植片でクラスII分子を標的化することにより、宿主の免疫応答を低く調節(down reguatee)し得る。これらの分子は、好ましくはそれらのプロセシング経路において、異なった点で標的化され得る。好ましくは、抗体遺伝子に対する誘導性プロモーターを使用する。
従って、特定の標的を考慮することにより、この方法の多くの変法が、当業者により設計され得る。
例えば、HIV-1エンベロープ遺伝子は、gp160と呼ばれる前駆体ポリ糖タンパク質の合成を指示する。このタンパク質は、小胞体に入り込むような多重にN架橋した糖を加えることにより改変される[Allan,J. S.ら、Science 228:1091-1094 (1985);Robey, W.G.,Science 228:593-595(1985);DiMarzo-Veronese,F.ら、Science 229:1402-1405 (1985);Willey, R.L.ら、Cell Biol. 85:9580-9584(1988)]。次いで、グリコシル化エンベロープタンパク質前駆体は、ゴルジ装置内で切断され、外部糖タンパク質のgp120、および貫膜タンパク質のgp41からなる成熟エンベロープタンパク質を生じる[Willey,Cell Biol.,前出;Stein, B. S.ら、J. Biol. Chem. 265:2640-2649 (1990);Earl, P. L.ら、J.Virol. 65:2047-2055 (1991)]。エンベロープ糖タンパク質複合体は、非共有相互作用を通してgp41によりビリオンエンベロープおよび感染細胞膜に固着されている[DiMarzo-Veronese,Science,前出; Gelderblom, H. R.ら、Lancet ii:1016-1017 (1985)]。gp120外部糖タンパク質がCD4レセプターへ結合した後、ウイルスおよび宿主細胞の膜の融合により、ウイルスが進入し得る[Stein,B. S., Cell 49:659-668 (1987)]。gp120/gp41複合体の融合誘導ドメインは、gp41のアミノ末端にあると考えられている。なぜなら、この領域が、他のウイルスのタンパク質の融合誘導ドメインと相同な配列を示し[Gallaher,W. R., Cell 50:327-328 (1987);Gonzalez-Scarano, F., AIDS Res. Hum. Retrovir.3:245-252 (1987)]、そしてこの領域での変異が、ウイルスを不活性化し、そしてウイルスの融合を防ぐからである[Kowalski, M.ら、Science237:1351-1355(1987);Kowalski, M.ら、J. Virol. 65:281-291(1991);McCune, J. M.ら、Cell53:55-67 (1988)]。
プロセスされたgp120およびgp41は、細胞表面に輸送され、そしてウイルスビリオン(ウイルス粒子と呼ばれる場合もある)の一部として分泌されるが、切断されていないgp160は、分解するためにリソソームに送達される。通常の切断プロセスは、比較的効果的ではない。このように、小胞体のルーメン中で新たに合成したgp160に結合し、そしてゴルジ装置へのgp160の輸送を阻害する細胞内抗体を用いる方法は、gp120および gpo41を切断するのに利用可能なタンパク質の量を激減させる。従って、生成されたウイルス粒子は、その表面のgp120およびgp41の量が、大きく減少していた。HIV-1gp160/120/41タンパク質についてのこの検討は、他のエンベロープタンパク質およびプロセスされたタンパク質の代表例である。本明細書中に用いられているのと同じ技法は、本明細書中の開示に基づく公知の技法により適用され得る。
さらに、免疫不全症ウイルスのエンベロープタンパク質は、疾患の他の局面と関連していた[DeRossi,A.ら、Proc. Natl. Acad. Sci.83:4297-4301 (1986)]。
例えば、細胞培養物のHIV感染は、典型的には急性および/または慢性感染を生じる。両方の場合、ウイルスが生成され、そして細胞膜での発芽により放出される。急性感染は、細胞の空胞化、およびシンシチウムの形成、およびその結果の細胞溶解による明らかな細胞変性の効果により典型的に特徴付けられる[Laurent-Crawford,Virol. 185:829-839 (1991)]。組織培養物中で、HIV-1の細胞変性効果は、多核化巨大細胞(シンシチウム)形成および単細胞の溶解からなる。[Popovic,M., Science 224:497-500 (1984);Somasundarin, M.ら、J. Virol. 61:3114-3119 (1987)]。シンシチウム形成は、感染細胞の表面上に発現したHIV-1エンベロープタンパク質により、単独で媒介されている[Sodroski,J.ら、Nature 322:470-474 (1986);Lifson, J. D.ら、Nature 323:725-728 (1986)]。エンベロープは、隣接した細胞上に存在するCD4レセプターに結合し、次いで、ウイルスの侵入に関連する融合反応に類似の(agnalogous)融合反応を経て、並んだ膜が融合して異核共存体が形成される。
gp41アミノ末端での数種の変異は、シンシチウム形成および単細胞溶解の両方について減弱した感応ウイルスの複製を生じるので、単一細胞溶解もまた、エンベロープ糖タンパク質により誘導される効率的な膜融合に依存する[Kowalski,M. L.ら、J. Virol. 65,前出(1991)]。gp160前駆体のプロセシングをもたらすgp120におけるアミノ酸の変化が、単細胞溶解を減少し得ること[Stevenson,M.ら、J. Viol. 64:3792-3803 (1990)]、および、単細胞溶解には、感染細胞中でのウイルスタンパク質の発現またはウイルスDNAのレベルに依存しない適切なCD4発現レベルが必要であることも報告されている[DeRossi, A.ら、Proc. Natl. Acad. Sci, USA,前出]。
さらに、HIVエンベロープ糖タンパク質は、多くの他の個体により、関連の免疫不全症感染個体の徴候を説明するのに関連していた。Siliciano, R. F.ら[Cell54:561-575 (1988)]は、CD4が介在するT細胞によるgp120の取り込みに厳密に依存するプロセスにおけるgp120の存在下で、CD4+gp120特異的クローンのサブセットが、細胞溶解活性を示し、そして非感染自己由来CD4+T細胞を溶解することを示した。gp120は感染細胞から放出され得るので、このCD4依存自己細胞溶解機構は、AIDS患者のCD4+T細胞の十分な枯渇に寄与し得る。Kion,T. A.ら[Science 253:1138-1140 (1991)]およびHoffman, G. W.ら[Proc. Natl. Acad. Sci.USA 88:3060-3064 (1991)]は、自己免疫イディオタイプネットワークが、CD4+T細胞を破壊する自己免疫抗体の発生を導くHIV-1感染において発達することを示した。この自己免疫メカニズムは、gp120とクラスIIMHC分子との間で配列が相同であるので発達する[Young, J. A. T, Nature 333:215 (1988)]。抗原の刺激に対するCD4+T細胞増殖に及ぼすgp120の免疫抑制の影響が示された[Hoxie,J. A.ら、Science 234:1123-1127 (1986);Diamond, D. C.ら、J. Immunol.141:3715-3717(1988);Gurley, R. J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 86:1993-1997 (1989);Crise,B.ら、J.Virol. 66:2296-2301(1992)]。これらの研究は、HIV-1などの免疫不全疾患が、CD4+T細胞損失に依存しない抗原認識を制限された主な組織移植調和複合体IIに影響を及ぼし得ることを示唆する。げっ歯類のニューロンにおいて、gp120が、細胞内でのカルシウムおよび神経毒性の増加を引き起こし[Dreyer,E. B.ら、Science 248:364-367 (1990)]、核エンドヌクレアーゼの活性化により媒介され得る影響の原因となることを示した。さらに、T細胞の死、またはアポプトシスを誘発する活性化もまた、インビボで生じ、そしてAIDSに導くCD4+T細胞の進行性の枯渇を説明することが提案された[Groux,H.ら、J. Exp. Med. 175:331-340(1992);Meyaard,L.ら、Science 257:217-219 (1992)]。インビトロおよびインビボにおいて、可溶性gp120は、非感染細胞上のCD4レセプターと相互作用し得、不稔細胞を活性化し、このようにアポプトシスを誘発する [Mcconkey,D. J.ら、Immunol. Today 11:120-121 (1990);Pinching,A.J.ら、Immunol.Today11:256-259(1990);Newell, M. K.ら、Nature 347:286-289(1988)]。エンベロープ糖タンパク質が、T細胞抗原レセプターの可変β領域のみに結合する超抗原として作用し得、それによってこのようなT細胞の強い刺激および拡張を誘発し、その後欠失またはアネルギーを招く。Pantaleo,G.ら、N.Eng. J. of Med. 238:327-335(1993)。従って、gp120の量が減少することにより、AIDSに関連する影響は軽減され得、そして遅延し得る。
本明細書中で、より詳細に議論されているように、標的物(例えば、エンベロープ糖タンパク質に対する抗体、またはHIV tatタンパク質に対する抗体)に対する抗体の細胞内発現により、細胞で標的物(例えば、それぞれエンベロープ糖タンパク質、またはtatタンパク質)に結合し、そしてさらなるプロセシングを妨げる抗体を生ずることを確証した。本発明の方法は、特異性が高く、そして細胞の機能に不利な影響を及ぼさない。従って、この抗体に結合するタンパク質の能力をなくす単一点変異を含む変異エンベロープタンパク質は、タンパク質を構成的に発現する細胞で正常にプロセスされる。同様に、他のタンパク質に対する一本鎖抗体は、エンベロープタンパク質のプロセシングに影響を及ぼさない。従って、本発明の方法論は、特定のタンパク質に特異的な抗体を用いることを可能にし、そして特異的な疾患に対して作られ得るプロセスになる。さらに、この方法論は予防的に用いられ得る。標的物(例えば、HIVLTR)により特異的に活性化されるプロモーターの制御下で抗体をさらに有し得、それにより標的物が存在する場合に、抗体を向けるのみである。誘導性プロモーターの他の型は当該分野で公知であり、そして選択され得、そして本発明の開示に基づいて使用され得る。
本発明の抗体の使用では、他のタンパク質のプロセシングに影響を及ぼさない。例えば、HIVエンベロープ糖タンパク質に対する抗体は、他のエンベロープ糖タンパク質に結合せず、そしてこのようなタンパク質のプロセシングを妨げない。例えば、無関係のエンベロープ糖タンパク質(ブンヤウイルスエンベロープ糖タンパク質など)のプロセシングは、影響を受けない。例えば、構成的に抗体を発現する細胞を生成するエンベロープタンパク質に対する抗体を細胞内送達することによる、本発明の方法下の細胞は、親の細胞由来のウイルスと比べると、生成したウイルス粒子の活性が1,000〜10,000倍減少することを示した。
多くの他の部位が標的化され得る。例えば、膜レセプターの細胞質側を標的化することである。それは、シグナルの導入が起こる細胞質尾部を通じてである[Luttrell,L. M.ら、Science 259:1453-1457 (1993);Epstein, R. J.ら、Proc. Natl. Acad. Sci USA89:10435-10439(1992)]。例えば、neu/erbB-2レセプターまたはGタンパク質レセプターを用いて、ループまたは細胞質尾部を標的化し得、それにより、このようなシグナル導入を妨げる。例えば、リン酸化アミノ酸に対するなどの活性化レセプターに対する抗体を用いるのが好ましい。従って、標的レセプターのプールが減少し得る。
抗体は、標的物(例えば、タンパク質)に特異的に結合し、従って、タンパク質と複合体を形成もする他の分子と効果的に競合し得る。本発明の抗体が他の分子とうまく競合し得ることを保証するために、抗体は、標的に対する完全抗体(すなわち、定常部および可変部を有する)の少なくとも75%の結合有効性を保持しなければならない。より好ましくは、抗体は、完全抗体の少なくとも85%の結合有効性を有する。さらにより好ましくは、抗体は、完全抗体の少なくとも90%の結合有効性を有する。さらにより好ましくは、少なくとも95%の結合有効性を有する。
以下で述べるように、タンパク質、RNA、DNA、ハプテン、リン脂質、炭水化物などを含む広範囲の標的分子に広く適用可能な方法を開発した。
標的分子は、広い範囲の宿主に存在し得る。例えば、動物、鳥、および植物である。好ましくは、標的物は、ヒトを含む動物である。さらに好ましくは、種は、ニワトリ、ブタ、雄ウシ、雌ウシ、ヒツジなどの産業上重要性を有する種である。最も好ましくは、種はヒトである。
抗体は、ほとんど無限数の外来分子を認識する能力を有しているが、現実に、抗体は細胞の外部の構造を認識する [Winter, G.ら、Nature349:293 (1991)]。抗体は一旦合成されると、体液中に分泌されるか、または細胞外膜に結合したままである [Klein, Immunology,Blackwell Scientific Publications, Cambridge, MA 1990]。細胞内で標的物と特異的に結合する能力を保持している抗体を発現させる手段を見出した。
従って、特定の標的物に対する特異性は、免疫系それ自体を用いることにより得られ得る。抗体を作るために、標的物、またはそれらの抗原部分、またはハプテン-担体複合体を用いる。これは標準技法により達成され得る。
例えば、抗原の結合領域または可変部は、鎖のアミノ末端にある可変H(VH)ドメインおよび可変L(VL)ドメインの相互作用により形成される。完全な結合部位を含む最小のフラグメントは、Fvと呼ばれ、そしてVHおよびVLドメインのヘテロダイマーである。しかし、完全結合部位なしでの結合を得ることは可能である。例えば、H鎖結合ドメイン(dAbs、単一ドメイン抗体とも呼ばれる)のみを用いる抗原結合活性を得られ得る。前記のように、本発明においては、抗体フラグメントが親抗体に比べて十分な結合能力を保持する限り、このような抗体フラグメントをコードする遺伝子を使用し得る。好ましくは、少なくとも、少なくともVHおよびVLドメインのヘテロ二量体(Fv)を用いる。
X線結晶学による抗体フラグメントの三次元構造の測定から、可変ドメインが、密接にパックされたβシートの9つの鎖から構成される特性構造中にそれぞれ畳み込まれていることが理解された。この構造は、VHおよびVLドメインでの配列の変化にも関わらず維持されている[Depreval,C.ら、J.Mol. Biol. 102:657 (1976);Padlan, E. A., Q. Rev. Biophys. 10:35(1977)]。抗体の一次配列データの分析により、可変部配列の2つのクラスの存在を証明した。超可変部配列およびフレームワーク配列[Kabat,E.A.ら、Sequences of Protein of Immunological Interests, 第4版、U.S. Dept. Health and Human Services(1987)]。フレームワーク配列は、VHおよびVLドメインの正確なβシートの折り畳み、および共にドメインをもたらす鎖間相互作用の原因である。それぞれの可変ドメインは、ループとして現れる3つの超可変部配列を含む。可変部の6つの超可変部配列、つまり抗原結合部位を形成する3つのVH由来および3つのVL由来の超可変部配列は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。
目的のVHおよびVL鎖の両方に対する可変部遺伝子をクローニングすることにより、これらのタンパク質を細菌中で発現し、そしてそれらの機能を迅速に試験し得る。1つの方法は、このような遺伝子のPCR増幅のためのテンプレートとしてハイブリドーマmRNAまたは脾臓のmRNAを用いることによる[Huseら、Science246:1276 (1989)]。従って、抗体を容易にスクリーニングして、抗原への十分な結合親和力を有することを保証し得る。結合親和力(Kd)は、少なくとも約10−7l/M、さらに好ましくは、少なくとも約10−8l/Mであるべきである。
図1は、免疫グロブリン遺伝子およびPCRプライマーの位置を示す。L鎖およびH鎖の免疫グロブリン遺伝子は、表示したV、D、およびJセグメントならびに定常部で示されている。CDR領域もまた描かれている。PCR増幅のためのプライマーは、FvおよびFab遺伝子増幅の両方について示されるように、RNAまたはゲノムDNAであり得る。
1つの好ましい実施態様では、L鎖およびH鎖をコードする遺伝子は、一本鎖抗体(sFv)を生成するリンカーをコードする。sFvは、時々細胞内で起こる還元条件下でさえも適切に折り畳まれる。sFvは、典型的には、配列VH-リンカー-VL、またはVL-リンカー-VHを有する単一ペプチドを含む。このリンカーは、H鎖およびL鎖が適当な立体配座配向で互いに結合し得るように選択される。例えば、Huston,J.S.ら、Methods in Enzym. 203:46-121 (1991)を参照のこと。これは、本明細書中にに参考として援用されている。従って、リンカーは、天然のFvの立体配座にねじれのない可変ドメインへの融合点の間に3.5nmの距離にわたり得るべきである。リンカーを構成するアミノ酸残基は、この間隔を補い得るものでなければならず、そして5アミノ酸またはそれより大きいべきである。選択したアミノ酸もまた、選択される必要があるので、リンカーは親水性であり、抗体の中へと埋まり込まない。好ましくは、リンカーは、少なくとも約10残基の長さであるべきである。さらにより好ましくは、約15残基であるべきである。リンカーは、短すぎるべきではないが、長すぎて結合部位で立体的に妨害し得るべきでもない。従って、リンカーは、好ましくは、25残基またはそれより短いべきである。リンカー(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3(配列番号:1)は、十分な適応性を提供するので、多くの抗体に広く適用可能である好ましいリンカーである。他のリンカーは、
を包含する。あるいは、あらゆる配列が使用され得、そして変異誘発により、リンカー内のアミノ酸をランダム化し得るが、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3(配列番号:1)リンカーなどの15マーを使用し得る。次いで、ベクターを示すファージで、異なるリンカーを有する抗体を取り出し、そして生成した最も高い親和性の一本鎖抗体をスクリーニングし得る。
好ましくは、この遺伝子は、可変鎖に対する正常なリーダー配列をコードしない。抗体がリーダー配列をコードしないことが好ましい。好ましくは、抗体の結合部分をコードするヌクレオチドは、抗体の分泌物の配列(すなわち、細胞から分泌される抗体を生じる配列)をコードしない。このような配列は、定常部に含まれ得る。好ましくは、抗体の完全な定常部をコードするヌクレオチドもまた用いられない。さらに好ましくは、この遺伝子は、定常部の6個未満のアミノ酸をコードする。
上記のように、この免疫系は、標準の免疫学的技法によって、特定の分子(例えば、標的タンパク質)に結合する抗体を調製し得る。例えば、タンパク質、またはその免疫学的フラグメント、またはこのようなタンパク質に基づいて化学的に合成されたペプチドを用いる。所望であれば、これらのいかなる配列も、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と結合し得、そして動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、およびハムスター)において抗体を生じるために用いられ得る。その後、これらの動物を屠殺し、それらの脾臓を得る。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞を形成するための標準的な融合技法を用いることによって製造される。Kohler,G.ら、Nature 256:495 (1975)を参照のこと。これは、典型的に、抗体産生細胞(すなわち、脾臓)と、不朽化細胞株(例えば、ミエローマ細胞)とを融合して、ハイブリッド細胞を製造することを包含する。
抗体を調製するための他の方法は、インビトロでの免疫化技法、例えば、脾臓細胞(例えば、ネズミの脾臓細胞の培養物)を用い、抗原を注入し、次いで、この抗原に対して生成する抗体についてスクリーニングすることによる。約1μg/mlの抗原を用いることが好ましいが、この方法では、0.1μgと同程度少量の抗原が用いられ得る。インビトロでの免疫化に対しては、脾臓細胞(例えば、マウスの脾臓細胞)を採取し、そして、典型的には約1μg/mlの濃度の所望の抗原を加えた培地中で、所望の量(例えば、1×107細胞/ml)でインキュベートする。その後、フィルター免疫プラークアッセイの結果に依存するいくつかのアジュバントの1つを細胞培養物に加える。これらのアジュバントとしては、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミンが包含される[Boss,Methods in Enzymology 121:27-33 (1986)]。ネズミチフス菌のマイトゲン(mytogen)[Technical Bulletin, Ribi ImmunoChem. Res. Inc., Hamilton, Montana]または従来の技法により生成され得る[Borrebaeck,C. A. K., Mol. Immunol. 21:841-845 (1984);Borrebaeck, C. A. K., J. Immunol.136:3710-3715 (1986)を参照のこと]または市販により、例えば、Hannah Biologics, Inc.またはRibi ImmunoChem. Research Inc.から得られるT細胞状態。これらの脾臓細胞は、抗原と共に4日間インキュベートされ、次いで採取される。
次いで、インビトロで免疫化されたマウスの脾臓細胞の単一細胞の懸濁液は、例えば、ミクロフィルタープレート(例えば、Millipore, Corp.から入手可能)における抗原−ニトロセルロース膜上でインキュベートされる。生成した抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された第2抗体(例えば、ウサギ抗マウスIgA、IgG、およびIgM)のような抗体に対する標識を用いて検出される。分泌された抗体のイソタイプを決定する際、ビオチニル化ウサギ抗マウスH鎖特異的抗体(例えば、ZymedLab., Inc.から入手可能)には、次いで西洋ワサビペルオキシダーゼ−アビジン試薬(例えば、Vector Lab.から入手可能)が用いられ得る。
酵素反応の不溶産物は、膜上で青色のプラークとして可視化される。これらのプラークは、例えば、25倍の倍率を用いて数えられる。このマイクロフィルタープラークのニトロセルロース膜は、種々の抗原を容易に吸収し、そして洗浄工程に用いられる濾過単位は、プラークアッセイを促進するために好ましい。
次いで、目的の抗体を見つけるための標準的な技法によって、抗体をスクリーニングする。目的の抗体を含む培養物は、培養され、そして誘発され、そしてその上清はフィルター(例えば、0.45μmフィルター)を通し、次いでカラム(例えば、抗原アフィニティーカラムまたは抗tagペプチドカラム)に通される。結合親和性は、ミニゲル濾過技法を用いて試験される。例えば、Niedel,J., Biol. Chem. 256:9295 (1981)を参照のこと。例えば、抗ウサギIgGと結合した磁性ビーズを用いてウサギ抗tagペプチド抗体によって結合した125I-標識抗原から遊離の125I-標識抗原を分離するラジオイムノアッセイのような第2のアッセイもまた用いられ得る。好ましい代替法においては、例えば、バイオセンサーベースの分析システム(例えば、Pharmacia Biosensor ABから入手可能な「BIAcore」)を用いて、「on」速度および「off」速度を測定し得る[Nature 361:186-187(1993)を参照のこと]。
インビボでの方法が典型的に約50μgの抗原/マウス/注入物を必要とし、そして通常インビボでの方法に対する一次免疫化後の2回のブーストが存在するので、この後者の技法が、好ましい。
あるいは、標的タンパク質に対する公知の抗体が用いられ得る。このように、所望の標的タンパク質に対する抗体が得られ得る。その後、抗体の少なくとも抗原結合部分に対する遺伝子は、以下に記載のように合成される。好ましくは、この遺伝子は、通常のシグナルペプチド配列を含まない。いくつかの好ましい実施態様においては、細胞内の局在配列(例えば、小胞体、核、核小体などの配列)もまたコードされる。ERの通常の抗体分泌系(例えば、小胞体、ゴルジ装置)における発現を必要とする場合には、リーダー配列が用いられるべきである。特定の位置においてこのような抗体を保持するためには、KDEL配列のような局在配列が用いられ得る。いくつかの実施態様においては、好ましくは抗体の遺伝子はまた、機能的な分泌配列をコードしない。
抗体遺伝子は、公知の技法を用いることにより本明細書の開示内容に基づいて調製され得る。
これらのいかなる抗体を用いても、VHおよびVL遺伝子を構築し得る。例えば、上記のインビトロでの免疫化技法、または従来のインビボでの免疫化のいずれかによって免疫化されたネズミの脾臓細胞から、および、すでに生成されたまたは市販されているハイブリドーマ細胞株から、VHおよびVLライブラリーを製造することである。市販のVHおよびVLライブラリーもまた用いられ得る。1つの方法としては、脾臓細胞を用いて、cDNAによる合成に用いられるmRNAを得ることが包含される。二本鎖cDNAは、PCRを用いることによって、変性N末端V領域プライマーおよびJ領域プライマー、または、VHファミリー特異的プライマー(例えば、マウス-12、ヒト-7)を有する可変部を増幅することによって製造され得る。
例えば、HIV-1(例えば、F105)のエンベロープ糖タンパク質に対する、広範囲の中和抗体のVHおよびVLドメインの遺伝子[Olshevskyら、J.Virol. 64:5701-5707 (1990);Thaliら、J. Virol.65:6188-6193(1991);およびPosnerら、J.Immunol.146:4325-4332(1991)]は、クローン化され、そして配列決定され得る。この第1の鎖のcDNAは、公知の手順に従ってオリゴdTプライミングおよびMoloneyのネズミ白血病ウイルス逆転写酵素を用いることによって、全RNAから合成され得る。次いで、この第1の鎖のcDNAは、PCR反応を行うために用いられる。典型的なPCR条件(例えば、25から30サイクル)を用いることにより、免疫グロブリン遺伝子のcDNAが増幅される。次いで、DNA配列分析が行われる。[Sangerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:5463-5467 (1977)]。
H鎖のプライマーの対は、前方向のVHプライマーおよび逆方向のJHプライマー(これらはそれぞれ、クローニングに都合の良い制限部位を含んでいる)からなる。例えば、免疫グロブリン上のKabatデータベース[Kabatら、前出]が、7つの別個のヒトVHファミリーにおいて見い出されるアミノ酸およびコドン分布を分析するために用いられ得る。このことから、35個の塩基対の普遍的な5'VHプライマーが設計される。以下のようなプライマーが用いられ得る:
(配列番号9)。これは、2つの位置における2つの異なるヌクレオチドに変性し、そしてFR1配列の5'末端にアニールする。5' NotI部位(左側の下線部分)のような制限部位は、増幅されたDNAをクローニングするために導入され得、そしてVH遺伝子に対する第1のコドンの5'に存在する。同様に、中間のXhoI部位のような第2の制限部位も同様に導入され得る(右側の下線部分)。
同様に、66塩基対JH領域オリゴヌクレオチドは、例えば、以下のようなH鎖可変部遺伝子の3'末端で逆方向からのプライミングのために設計され得る:
ライマーは、リンカー(例えば、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3(配列番号:1)相互交換(interchange)リンカー)をコードする45個のヌクレオチド配列をさらに含む。このプライマーは、6個のヒトJH領域ミニ遺伝子のヌクレオチド配列に基づく各位置で2個のヌクレオチドを有する2個の変性位置を含む。制限部位が用いられ得、例えば、BspEI部位(左側の下線部分)は、重なる前方向へのVκプライマーとの付着末端の結合のための相互交換リンカー中に導入される。中間のBsTEII部位(右側の下線部分)はまた、さらなるリンカー交換手順のために導入される。
45個のヌクレオチド相互交換リンカーを用いた同様の方法は、69個のヌクレオチドのヒトVκプライマーの設計に組み込まれる。4つのファミリーのヒトVκ遺伝子が存在する。5'Vκプライマー
FR1配列の5'末端にアニールする)は、3箇所(それぞれ2つのヌクレオチド)において変性する。相互交換リンカーの一部は、逆方向のJHプライマーによる付着末端クローニングのためのBspEI部位を含み、他の制限部位もまた用いられ得る。中間のSacI部位(右側の下線部分)もまた、さらなるリンカーの交換手順を行うために同様に導入され得る。
逆方向の47個のヌクレオチドCκプライマー(Kabatの109位
(配列番号:12)は、κ鎖(Kabatの109位〜113位)の定常部に相補的であるように設計される。このプライマーは、κ定常部の5'の最末端にアニールする。このプライマーは、2つの終止コドンを生じる中間のMluI部位(右側の下線部分)を含む。さらに、多数の制限部位(例えば、BamHI XhoI/XbaI(左側の下線部分))は、縦列終止コドンの後に導入され得る。同様の逆方向のヌクレオチドCκプライマー(例えば、59個のヌクレオチドプライマー)はまた、特定の細胞内の部位に対するシグナル(例えば、カルボキシ末端の小胞体保持シグナル)Ser-Glu-Lys-Asp-Glu-Leu(配列番号:13)(SEKDEL)、
に設計され得る。同様の多数の制限部位(Bam HI XhoI/XbaI)は、縦列終止コドンの後に、導入され得る。
一次ヌクレオチド配列は、H鎖遺伝子とκ鎖遺伝子との両方について決定され、そして生殖系列遺伝子が決定される。次いで、PCRプライマーがVH71-4生殖系列遺伝子のリーダー配列に基づいて設計され得る。例えば、VH71-4リーダープライ
は、5'NcoI部位(下線部分)を含む。このリーダープライマー(P-L)は、PCR増幅実験のための第2のJHプライマーと共に用いられる。35個の塩基対のJH領域のオリゴヌクレオチドは、H鎖の可変部遺伝子の3'末端での逆方向へのプライミングの
(配列番号:16)を含むように設計される。このプライマーは、各位置において2個のヌクレオチドを有する2個の変性部分を含む。J領域の最後のアミノ酸を決定するコドンのBssHII部位(左側の下線部分)3'および該コドンのすぐ隣接部分では、VH遺伝子の3'末端において都合の良いクローニングが行われる。中間のBstEII部位(右側の下線部分)もまた、導入される。この配列は、VL配列を増幅するために用いられる。次いで、P-L(リーダープライマー)およびPリンカー(逆方向のプライマー)およびP-K(V2プライマー)およびP-CKプライマー(逆方向のCKプライマー)によって増幅されるフラグメントは、発現ベクター(例えば、pRc/CMV(Invitrogen))にクローン化され、得られた組換え体は、プロモーター(例えば、CMVプロモーター)の制御下に、シグナルペプチド、VH鎖間リンカー、およびVL配列を含む。当業者は、選択される細胞株(例えば、哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞)において遺伝子を発現する他のプロモーターを容易に選択し得る。
この一本鎖の抗体は、多くのいかなる公知の手段によっても、本明細書の開示内容に基づいて調製され得る。例えば、VH/JH-ICLおよびICL-Vκ/CκPCRフラグメントは、NotI/Bsp EIおよびBsp EI/Xba Iでそれぞれ切断され、そして、宿主としてSUREバクテリア(Strategy)を用いてプラスミド(例えば、pSL1180(Pharmacia))中にクローン化される。得られるsFvは、切断した制限酵素であり、そしてNotI/Bgl IIフラグメントは、pET発現ベクターにおいてpelBシグナルペプチドの3'に存在するNot I/Bam HI部位にクローン化される。得られるプラスミドは、次いで、適切な宿主(例えば、BL21(DE3))中に形質転換される。プラスミドフラグメントは、0.2mMのIPTGによる24℃でのインキュベーションの適切な時間の後(例えば、2〜4時間後)に得られ、そしてその標的との結合能力(例えば、gp120の結合活性)を標準的な技法(例えば、gp120(American Biotechnology, Inc.)でコートしたELISAプレート(Dynatech Labs)を用いたELISA)、およびアルカリホスファターゼで結合したアフィニティーカラムで精製したヤギ抗ヒトκ鎖抗体による検出によって、試験される。sFv結合gp120は、可溶性CD4によってブロックされ、そしてgp120アフィニティーカラム(Affi-Gel,BioRad, Inc.)に吸着し、それから溶出される。
VH 71-4リーダーおよびJH-BssH IIプライマーは、リーダーペプチドおよび再配列されたH鎖遺伝子を含む、イントロンを含まないフラグメントのPCR増幅に用いられる。このフラグメントは平滑化され、そしてプラスミド(例えば、pSL1180)におけるEcoRV部位の前方向にクローン化される。次いで、Nco I/Bst EIIフラグメントを得、そしてBst EII/Sph Iフラグメント(例えば、NcoI/SpH Iで切断したpSL1180による3つの小片の結合におけるpSL1180由来のF105 sFv)と組み合わせてVH71-4/SCAを生じる。カルボキシル末端のSEKDEL配列を含有するVH 71-4 SCAが、平滑化され、そしてpSL1180においてEcoRV部位へ前方向にクローン化されたICL-Vκ-SEKDEL PCR産物を用いることによって、構築され得る。このフラグメントは、Bsp EI/Xba I切断によって取り出され、そしてNcoI/Xba Iで切断したpSL1180による3部分の結合においてVH 71-4/SCAのNco I/Bsp EIフラグメントと組み合わされてVH71-4/KDELを製造する。pRC/CMV(Invitrogen)へのクローニングの前に、Eco RIのHind IIIへの変換リンカーは、2つの一本鎖抗体を含む、EcoRI切断pSL1180に導入される。次いで、両方の一本鎖抗体由来のHind III/Xba Iフラグメントが得られ、そしてHind III/XBa I切断pRC/CMV中にクローン化されて、 pRC/SCAおよびpRC/KDELが製造される。
1つの広範囲の中和抗体であるF105のFv、sFv、およびsFv-KDELの構造の概略図である図2を参照のこと。各鎖の3つの相補性決定領域(CDR)は、陰影をつけている。
同様の方法は、実質的には、いかなる他の抗体を調製するためにも用いられ得る。例えば、mRNA精製、一本鎖cDNA合成、および上記のVHおよびJH変性プライマーを用いたPCR増幅を用いて、約350bp産物が、tatおよび抗tatハイブリドーマ細胞株に対して免疫化された脾臓細胞から得られ得る。H鎖に対して記載されているように、同様の技法を用いて、320bpVκ遺伝子産物が、上記のようなVκおよびJκ変性プライマーを用いて、tatおよび抗tatハイブリドーマ細胞株に対して免疫化された脾臓細胞から得られ得る。得られると、VHおよびVLドメインは、sFv、Fv、またはFabフラグメントを構築するために用いられ得る。
好ましい標的は、タンパク質が典型的に生成される小胞体によってプロセスされる場所である。
しかし、より大きな割合の細胞内の特異性が望まれる場合がある。例えば、核タンパク質、RNA、DNA、あるいは、引き続きプロセスされる細胞タンパク質または核酸を標的することを伴う。例えば、ウイルスでコードされたタンパク質(例えば、レンチウイルス構造タンパク質)については、典型的に細胞質で発現する。一方、調節タンパク質は、核の中または近くで発現し得る。従って、好ましくは、このような標的に対する局在配列を用いる。このような抗体は、細胞内に送達され得、そしてそこで発現し得、そして標的タンパク質に結合する。
局在配列は、経路を定めるシグナル、選別シグナル、保持またはサルベージシグナルおよび膜トポロジー−移動終止シグナルに分けられる。[Pugsley, A.P.,Protein Targeting, Academic Press, Inc.(1989)]。例えば、特定の位置に対する抗体を示すために、特定の局在配列が用いられ得る。例えば、以下に示すシグナルが挙げられる:
ミリストレーション(Myristolation)配列は、原形質膜に対する抗体を示すために用いられ得る。表Iは、公知のN-ミリストイルタンパク質のアミノ末端配列およびそれらの細胞下の位置を示す。さらに、以下の表Iに示すように、ミリストレーション配列は、異なる細胞下位置(例えば、核領域)に対する抗体を示すために用いられ得る。局在配列は、細胞小器官(例えば、ミトコンドリアおよびゴルジ装置)に対する抗体を示すために用いられ得る。配列
抗体を示すために用いられ得る(Pugsley、前出)。Tangら、J. Bio. Chem. 207:10122(ゴルジ装置に対するタンパク質の局在化に関する)を参照のこと。例えば、tatが、感染した細胞について核領域および核小体領域に位置することは公知である。従って、tat抗体が細胞の核および/または核小体領域を標的とすることが好ましい。この抗体は細胞質中で合成されるべきなので、リーダー配列を有さない。核および/または核小体領域を標的とするためには、局在配列を必要とする。好ましい核標的化配列はSV40であり、そして好ましい核小体標的化領域はtat核小体シグナルである。例えば、SV40核局在シグナルを有するtat抗体、例えば一本鎖抗体は、tatと結合し、そして免疫グロブリンのリーダー配列を有する上記抗体と比較するとき80%を越える程度までtat活性を低減し得ることを示している。これは異なる細胞分画、例えばER、に対する抗体を示す。好ましくは、ウイルス、例えばHIVにおいては、調節タンパク質(例えば、tatおよびrev)は核領域および核小体領域で標的とされるのに対し、構造タンパク質は細胞質(例えば、エンベロープおよびgag)で標的とされる。さらに好ましくは、rev核小体配列
を用いてrevを標的とする。例えば、HTLV-1またはHTLV-2の taxもまた、好ましくは、核または核小体において見い出される。可能であるなら、所望の位置に対する抗体を示す標的タンパク質の局在シグナルを用いることが好ましい。例えば、HIV-1tatタンパク質は核小体局在シグナル(これは好ましく用いられる)を有する。
局在配列を用いることによって、通常見られない細胞内の領域で、発現する抗体および/または保持される抗体を有し得ることが示された。例えば、発現後に、ER中にtat抗体を保持した。同様に、細胞質において、抗HIVエンベロープおよび抗tat抗体を発現させた。
一本鎖抗体が通常見られない細胞内領域で発現し得ることを示すために、細胞質中で抗体を発現させた。例えば、さらなる局在シグナル(例えば、核で発現させるまたは核に転位させるためのSV40核局在シグナル)を含むように、3'末端で改変した細胞質で発現させた抗体を用いることである。例えば、F105一本鎖抗体(これはERにおいて典型的に発現する)は、抗体のフレームワーク1領域にアニールする新規の5'プライマーを含有して、再増幅された。従って、それはリーダーペプチドを含有しないが、開始コドンとして5'末端で特別のメチオニンを有する強い始動開始シグナルを含有する。このプライマーは、5'末端にHindIII部位、次いでMet開始コドンを含有するNcoI部位を有する。
(配列番号:57)および Met Ala Gln Val Gln Leu Gln Glu Ser Gly(配列番号:58)についてのコード。メチオニン(これはNcoI部位の中間の右側にある)に加えて、さらなるアミノ酸Alaがある。細菌での発現のためのシグナルペプチドのカルボキシ末端には、Ala-Met-Ala開裂がある。ペリプラズム中の開裂は、2番目のAlaの後の右側に、そしてこのフレームワークの1番目のアミノ酸の前に生じる。すなわち、これは、多くの状況下で用いられ、または修飾されて用いられ得る可変性のプライマーである。例えば、適切なエンドヌクレアーゼによってNcoI部位で開始し得、そして細菌性の発現ベクター中にそれをクローン化し得る。同様のプライマーは、再使用されて、増幅し得るか、またはHindIII部位をさらに有しそしてHindIIIで切断する増幅された物質を取り込み得る。従って、5'末端上に、さらなるメチオニンおよびAlaを有する一本鎖抗体を有する。これは、ベクター(例えば、pRC/CMV発現ベクター)中でクローン化され、リポフェクション(lipofection)でトランスフェクトされ、S35メチオニンで放射標識され、そして抗κ抗体で免疫沈降され得る。この技術を用いて、細胞質中のエンベロープに対する抗体の発現を得た。この基本的な方法を有し得、そして、抗体を修飾して所望の標的に対する発現した抗体を移動させるための局在シグナルもまた有し得る。例えば、一本鎖抗体(例えば、tat)を用いることにより、種々の領域のフレームワーク1領域にアニールし、そしてクローニングのための開始コドンおよびHindIII部位のメチオニン残基を有するプライマーで、5'末端においてそれを再増幅する。この抗体遺伝子は、次いで、クローニングのために再増幅され、そしてpRC/CMVにおいて発現する。さらに、この抗体は、細胞質性の発現のための新規の5'プライマーを用いることに加えて、C末端がSV40核局在シグナルを含有するようにさらに改変される。このように、抗体は細胞質において、そしてまた例えば、SV40核局在シグナルを用いる場所で発現し得、そして核中に移動し得る。
抗体のこれらの2つの形態、および2つのネガティブコントロールを用いた。ネガティブコントロールには、種々のκ鎖(これは同じミエローマから増幅された)が包含される。細胞質において発現し得る種々の抗tat一本鎖抗体構築物を製造した。ミエローマ細胞株から、抗tatモノクローナル抗体を産生して、種々のκ鎖を含有する2つの異なる一本鎖抗体をまた、SV40核局在配列によって増幅した。このようにして、一本鎖抗体を調製して、核局在シグナルを有するかまたは有さない細胞質において発現させた。抗体の特異性を示すために、不正確なL鎖もまた用いられた。その抗体の4つの形態の全ては、真核細胞において発現した。これらの実験において、この4つの異なるプラスミドは、COS細胞中にトランスフェクトされ、そしてこれらの実験はtat発現プラスミドを共に発現することによっておよび共に発現せずに行われた。KDELエンベロープ抗体は、リガンドまたはgp120がそれに結合するまでは不安定であった。同様のことが細胞質において生じることを確認した。4つの抗体全てはtatによっておよびtatなしで発現した。ウサギ抗マウス免疫グロブリンのプールによって、COS細胞由来の放射標識された溶解物を免疫沈降し、そしてオートラジオグラフィーすることによって、tatの非存在下に比べて、tatタンパク質の存在下において、より強い抗体の免疫沈降が生じる。
tat抗体がtat活性を阻害し得ることを示した。例えば、tat発現プラスミド0.01μgと同程度少量のHIV-1 LTR-CATリポーターを含有するプラスミドを発現するHeLa細胞において、25Xトランス活性化を生じ得る。10または5μgの抗tatSCA、すなわち、SV40核局在シグナル(Vκ SV40)を有する抗tat SCA(Vκ)、および、ERへの抗体を示す免疫グロブリンのリーダー配列を有する抗tatSCA抗体の添加により、tat抗体の細胞内発現がtat活性を著しく低下させ得ることを示すHeLa細胞中に、tat発現プラスミド0.1μgで共にトランスフェクトした(図21および22を参照のこと)。免疫グロブリンのリーダーを有するtat抗体はこれらの実験においてネガティブコントロールとして用いる。抗tat Vκは10μgで、ERにおいて発現した抗tatSCAの活性のわずか4%を示す。ここでtatは存在しない。
シグナルが抗体においてさらされ、そしてこの位置が抗体の結合能力を中断しない限り、局在シグナルは抗体上のいかなる場所においても存在し得る。例えば、局在シグナルは、カルボキシ末端またはアミノ末端に、あるいはsFv抗体のH鎖とL鎖との間のリンカー上にさえも位置し得、それは上記条件を満たす。
細胞においてこれらの抗体を保持するために、発現した抗体が一定の完全な領域ドメインを含有しないことが好ましい。特定の配列(これは細胞からの抗体の分泌を助ける)が存在するこの領域にそれがあると考えられる。例えば、エンベロープ糖タンパク質に対する広範囲の中和抗体sFv抗体を構築した。このエンベロープ糖タンパク質は、このようなタンパク質に対する改変されていないFab抗体が分泌されるのに対して、細胞によって全く分泌されない定常部の6個のアミノ酸のみを含有する。このような配列を除外するようなこのタイプの設計は、抗体をコードするヌクレオチドの選択および省略において容易に達成され得る。広範囲の中和抗体が本明細書の実施例において記載されていたが、用いられる抗体は広範囲で中和されている必要はない。中和は必要とされず、むしろ抗体は標的物に結合する必要がある。このように、保存されそして接近可能である分子上にエピトープが見い出されることは好ましい。
あるいは、分泌シグナルが維持されている位置では、小胞体に対する細胞内維持配列(例えば、KDEL)は、細胞内で発現する抗体の多くを保持するべきである。
発現したsFv抗体がBiPタンパク質とさらに結合することが見い出された。これは細胞内で生じた抗体標的物複合体を維持することを補助し得る。
ある種の実施態様においては、細胞に保持されない抗体を用いる。例えば、エンベロープ糖タンパク質に対するFab(例えば、F105 Fab)を用い得る。このFabは、それらが分泌されるような細胞中および細胞の外側の種々の位置でエンベロープ糖タンパク質に結合する。従って、標的分子、この例においてはエンベロープ糖タンパク質が、1つの位置であまり結合しない場合には、このような分泌可能な抗体を使用すると、複数の位置でタンパク質を標的とすることが可能となる。F105Fab抗体遺伝子によって安定に形質転換されるCOS細胞のような細胞を用いて、F105 Fabの構造的な発現が得られ得ることが見い出された。これらの細胞株は約1〜3μg/mlのFabを分泌する。この量は種々のエンハンサーおよびプロモーターを用いることによって、当業者により所望のように変化され得る。上記のように、分泌されたFabはそれが分泌されるような種々の細胞内の位置で分子を標的とし得る。さらに、Fabはまた、細胞から逃れ得るいかなる分子をも細胞外で標的とし得る。例えば、プロセスされている状態のエンベロープ糖タンパク質を標的とすることにより、プロセスしたタンパク質の量を大いに減少することと同様に、遊離のビリオン上のgp120にもまた結合し得、そして他のCD4レセプターまたは非感染細胞を感染することによってそれを止め得る。例えば、HIVに感染されたCOS細胞でこれらのF105 Fabを使用することにより、シンシチウム形成を阻害する。
用語が本明細書において用いられるように、抗体に対する遺伝子は、H鎖およびL鎖領域に対する遺伝子を包含し得る。さらに、この遺伝子は、発現を生じる1つのプロモーターまたは複数のプロモーターに作動可能に連結する。哺乳類細胞において発現し得るプロモーターは周知であり、そしてCMV、ウイルス性LTR(例えば、ラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1LTR)、SV40初期プロモーター、E. coli lac UV5プロモーター、および単純ヘルペスtkウイルスプロモーターが包含される。このDNA配列は、抗体カセットとして記載されている。
この抗体カセットは任意の公知の手段によって細胞に送達される。例えば、Miller, A.D., Nature 357: 455-460(1992);Anderson, W.F., Sience 256:808-813(1992);Wuら、J. of Biol. Chem.263:14621-14624(1988)を参照のこと。例えば、これらの抗体遺伝子(例えば、sFv遺伝子)を含有するカセットは、多くの技法によって特定の細胞に標的とされ得る。以下の記載において、HIV抗体をコードするsFv遺伝子が記載され、これは、好ましくは、CD4+T細胞に導入される。しかし、記載されている技法は、抗体遺伝子を、他の細胞、好ましくはヒト細胞に導入するために容易に用いられ得る。例えば、ヘルペスベクター、アデノウイルスベクターまたはポックスベクター、レトロウイルスベクター、抗体に結合したプラスミドなどの哺乳類の発現ベクターを用いる。これらのベクターは、当業者に周知の標準の技法によって細胞を形質導入するために用いられ得る。好ましくは、このカセットは、HIVウイルス性ベクター(これはHIV配列をパッケージングするのに不完全であるが、HIV感受性の(susceptable)細胞を選択的に標的とする)を用いることによって、細胞中に導入される。さらに、所望の標的細胞において遺伝子を特異的に発現するプロモーターが用いられ得る。例えば、標的がHIV感染細胞である場所にプロモーターとしてHIV-LTRが用いられる。このような場合には、細胞中のHIVウイルス性タンパク質(例えば、tat)は、非感染細胞と比較すると、抗体の増強された発現を生じ得る。他の実施態様においては、ウイルス性の感染に対してより大きなリスクのある細胞(例えば、CD4細胞)を形質導入し得る。
抗体の細胞内の発現により、標的物が結合され得る。これは標的物(例えば、タンパク質)の機能化(所望でない機能化も包含する)を中断する。例えば、エンベロープ糖タンパク質に対する広範囲の中和抗体のsFvを発現することにより、HIV-1糖タンパク質のCD4分子による移動および相互作用、ならびにタンパク質の切断が、細胞内で遮断され得る。いかなる標的化シグナルをも含まないsFvおよび小胞体保持シグナル(KDEL)を有するsFv抗体の両方をクローン化した。次いで、例えば、レトロウイルスベクターがこの抗体構築物と共に好ましいが、哺乳類細胞の発現ベクターを用いて、これらを哺乳類細胞の細胞内に挿入した。他の例として、胸部組織を標的とするneuに特異的な抗体を用いることにより、細胞中のneuタンパク質を保持することを助け得る。
これらの抗体の発現によって細胞を傷つけるべきではない。実際、「リガンド」標的抗体が存在しない場合には、抗体は分解するように設計され得る。例えば、KDEL保持配列を有するエンベロープ糖タンパク質に対する抗体は、HIV-1エンベロープ糖タンパク質が存在して抗体−リガンド複合体を形成しない限りは、合成後ただちに分解した。対照的に、保持シグナルなしに発現されるエンベロープ糖タンパク質に対する一本鎖抗体は、同様な分解はしないが、トランスフェクトされた細胞中でヒト免疫グロブリンK鎖またはH鎖に対するポリクローナル抗体による免疫沈降を放射標識した後に検出され得る。両方の例において、形質転換された細胞は通常の形態学(morphology)および成長速度を有していると考えられる。例えば、図4を参照のこと。これは、形質転換されたCOS細胞を示す。これは、一本鎖抗体またはKDEL配列を有する一本鎖(これは小胞体に保持されている)のいずれかを発現するネオマイシン選択によって確立される。この抗体はHIV-1gp160タンパク質に結合し、そして抗Kまたは抗gp120のいずれかと共沈され得る。ベクターで形質転換された細胞において、およびsFv KDELで形質転換された細胞におけるより少ない部分において、gp120の画分を検出したが、sFvで形質転換された細胞からの4時間の追跡サンプルにおいてさえも、gp120をほとんど検出しなかった(図5を参照のこと)。このようにして、発現したsFv抗体がgp160タンパク質に結合し、そしてgp160タンパク質がさらにプロセシングされることを妨げる。好ましい実施態様においては、gp41に対する抗体はまた、切断されたいかなるgp160タンパク質をも標的とするこのような細胞に送達される。
もう1つの方法は、誘導性プロモーターの制御下で抗体の発現を行うことである。好ましくは、プロモーターは、標的物の影響によって誘導性となる。例えば、プロモーターとしてウイルス性LTR(例えば、HIVLTR)を用い得る。HIVウイルスは、そのプロモーターを「開始する」タンパク質(例えば、tat)を生成する。
上記で説明されているように、sFv-KDEL生成物は、標的物の非存在下で速やかに分解されるが、HIV-1糖タンパク質が存在する場合には、速やかに分解するとは考えられなかった。従って、sFv-KDELバンドは、放射標識化および免疫沈降後、ポリアクリルアミドゲルにおいて目に見えるようになった。このタンパク質はまた、HIV-1糖タンパク質とともに共沈する。ただし、gp120の小さい部分は検出される。これは、おそらくリガンドと結合する前に新規に合成された抗体の速やかな分解による、糖タンパク質の移動の不完全な遮断を示唆する。形質転換された細胞におけるsFv-KDELについての免疫蛍光染色、HIV-1-糖タンパク質の共発現は、小胞体の染色パターンを示し、これは、抗体がそのリガンドへの結合の前に安定となり、そして小胞体にとどまることを示唆している。
標的タンパク質の存在はまた、抗体を正しい立体配座状態に折り返すことを助ける。上記のようなこれらの抗体−リガンド複合体は、標的をその典型的な手法で操作することを妨げる。例えば、HIV-1gp120/41により媒介される細胞変性融合は、細胞において阻害される。このことは、HIV-1糖タンパク質発現物質(expresser) pSVIII envおよびsFvまたはsFv-KDELプラスミドDNAを1:5の割合で有するCD4+Hela細胞を共にトランスフェクトすること、または、pSVIIIを有する形質転換をトランスフェクトすることによって示される。シンシチウム形成の著しい減少が、抗体を発現しないベクターによって形質転換またはトランスフェクトされた細胞において観察されないとき、細胞内の抗体を有する細胞はシンシチウム形成の著しい減少を示した。このことは、たとえsFv-gp120複合体が細胞表面に到達できたとしても、細胞内抗体が、HIV糖タンパク質のプラスミド膜への移動、および/または、HIV-1糖タンパク質と、隣接細胞上のCD4分子との相互作用を遮断することによって細胞変性融合を阻害し得ることを示す。
さらに、ほとんどの感染性HIV-1粒子はこれらの細胞内抗体含有細胞からは生成されなかった。細胞内抗体を発現する細胞は感染性のHIV-1プロウイルスDNAでトランスフェクトされ、そしてこのトランスフェクトされた細胞由来の上清はCD4ヒトリンパ球SupT1を感染するために用いられ得る。これらのすべての細胞由来のp24活性の比較可能な量が観測され、これはHIV-1糖タンパク質の非存在下において、非感染性HIV-1粒子が生成され得ることを示し得るが、ベクターで形質転換された細胞由来のものと比較する場合には、非常に遅い感染のキネティクスがこのような細胞において観察される。
SupT sFv105細胞は親の表現型を維持し、外部の刺激に対して適切に応答し得、HIV-1感染の細胞変性の影響に対して耐性であり、そして感染した細胞は、それらの感染力が著しく低減しているHIV-1ウイルス粒子を生成する。
このことは、細胞内で発現した抗体(例えば、工作した (engineered)一本鎖抗体)を用いてウイルス感染(例えば、HIV-1感染)において介在する本発明の方法が用いられ得ること、および機能不全または所望でない遺伝子産物に結合することによって、所望でない影響が軽減され得ることを示す。同様の基本的な方法を用いて、DNAウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)およびRNAウイルス(例えば、HTLV-1および2)によって感染されるような他のウイルス性および代謝性疾患において介在し得るべきである。好ましくは、この方法は、長期間かかり、および/または他の形態の処理に容易に影響されないウイルスに対して用いられる。
本発明の方法は広範囲のアプローチに(同様の疾病に対してさえも)用いられ得る。例えば、逆転写酵素に対する抗体は、タンパク質の機能を結合しているテンプレートによって干渉し得る[DeVico,A.L.ら、J. of Biol. Chem. 266:6774-6779(1991)]。このタンパク質に対する抗体は公知であり、そしてp66成分のC末端部分における配列に結合するC2003を包含する[前出]。この抗体はまた、HIV-2に結合する[DeVico,A.L., AIDS Res & H. Retro. 5:51-60(1989)]。このような抗体は患者の血清および上記のようなクローン化された抗体からスクリーニングされ得る。
他のアプローチには、TARエレメントのような、ウイルスにおいて臨界的な核酸配列を標的とすることがある。このtarエレメント(これはtatに対して応答性である)は、ウイルスのメッセンジャーRNAの5'末端に位置する。このtarエレメントに結合するtatは、インビトロでの翻訳のtar阻害の低下が生じることが認められる。さらに、このtarエレメントは、転写、開始を増強し、そしてまた、転写伸長の抗アテニュエーターとして作用する。tar配列に対する抗体を示すことによって、tat結合の阻害が生じ、そして転写有効性が劇的に減少する。このことによって、結局、ウイルス産生の阻害または減少が生じる。同様のアプローチがrev応答性エレメント(RRE)に対する抗体を産生するために用いられ得る。Revは、ウイルスの構造タンパク質(これにはキャプシドタンパク質、複製酵素、およびエンベロープ糖タンパク質が含まれる)の合成を制御する。revタンパク質は、RNA種の細胞質蓄積を制御することによって、ビリオンのタンパク質の発現を制御する。rev活性の非存在下では、小さく多様にスプライスされたウイルスのRNA種が蓄積し、revの存在下では、全長および部分的にスプライスされたエンベロープ糖タンパク質のメッセンジャーRNA種が蓄積する。RREに対して示される抗体は、RREに結合するrevを阻害し、それによって、revの主要な生物学的効果を阻害するべきである。概して、revタンパク質は、メッセンジャーRNA種の蓄積をそれらが産生するものから調節することによって、キャプシド、複製酵素、およびエンベロープ糖タンパク質の生成の合成を調節する。構造タンパク質のメッセンジャーRNA種は、核から細胞質への転移のために、revタンパク質の、RREと呼ばれる折り返しRNA構造との結合を必要とする。抗rev抗体によるrev結合の阻害は、感染細胞からのウイルス発現を防ぐ。このようなTARまたはRRE抗体は、上記開示に基づく公知の技法を用いて合成され得る。例えば、ある抗体を用いてRNAライブラリーをスクリーニングすることにより、所望の抗体が得られ得る。
腫瘍の形成および転移が脈管形成(すなわち、新しい毛細血管の形成)に依存することが提案されている。[Folkmanら、Origins of Human Cancer:A Comprehensive Review, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1991)]。例えば、ヒトメラノーマは、脈管形成の活性(これは線維芽細胞成長因子(bFGF)、トランスフォーミング成長因子α(TGFα)、およびトランスフォーミング成長因子βを含む)によって種々のタンパク質を生成することが見い出される。[Herlynら、Lab.Invest. 56:461(1987)]。このようなタンパク質を細胞内の抗体のための標的として用いることによって、腫瘍の形成および転移が制限され得る。
ras p21タンパク質の12位、13位、または61位の改変によって腫瘍の形成が生じることが示唆されている。この変異タンパク質を細胞内の抗体(これは腫瘍発生rasとプロトrasとを区別し得る)のための標的として用いると、腫瘍形成が制限される。このような特異的な結合をし得る抗体は、当業者に公知である。
望ましくないウイルスのタンパク質を取り扱う場合には、「カクテル」アプローチ(すなわち、抗体の混合物)を用いることが好ましく、それによって、一度に種々のウイルスのタンパク質を標的化し、そして、抗体を阻害し得る機能的な標的タンパク質を製造する変異体に進化することをより困難にする。例えば、少なくともエンベロープ糖タンパク質に対する抗体のカクテルおよびtatが好ましい。他のカクテルには、逆転写酵素に対する抗体、TAR、RREなどが含まれる。このような「カクテル」は、共に投与され得るか、または共にトランスフェクトすることにより投与され得る。同じ細胞内領域では、約3個のタンパク質のみが標的とされることが好ましく、好ましくは約2個のタンパク質のみが標的とされる。例えば、小胞体のgp160およびgp41が標的とされる。他の細胞内標的が異なる細胞領域(すなわち、核、小胞体)に存在する限りは、抗体の産生において有害な影響を有することなく標的化され得る。抗体の好ましいカクテルは、少なくとも1種の構造ウイルスタンパク質に対する抗体(例えば、キャプシドまたはエンベロープ)および調節タンパク質(例えば、HIVrev、tat、HTLV-1またはtax)または核酸配列(例えば、TARまたはRRE)である。
他の好ましいカクテルは、同じ標的に対する抗体のカクテルであるが、種々の細胞内の位置にある。これは、種々の局在配列を用いて行われ得た。従って、ある種の標的が1ヵ所で抗体に結合しないなら、そして例えば、さらにプロセスされるなら、それは連続した位置で標的化され得る。例えば、エンベロープ糖タンパク質と共に、プロセシング経路の多くの位置でタンパク質を標的とするために局在配列を用い得る。あるいは、分子の種々のエピトープを標的とするための多様な抗体を用い得る。例えば、エンベロープ糖タンパク質の CD4結合領域を標的とする1つの抗体およびgp41の融合誘導ドメインを標的とする第2の抗体を用いる。
HIVでコードされたタンパク質については、好ましいベクターは、キャプシドまたはエンベロープ糖タンパク質に対する2つの抗体において、および調節タンパク質(例えば、gp160、gp41、tatおよびrev)に対する少なくとも1つの抗体において、存在する。他のカクテルとしては、ウイルスのmRNAとそれがコードするタンパク質との両方に対する抗体が包含される。
他の好ましいHIVでコードされた標的タンパク質は、nef、vprおよびHIV-1に対するvpu、およびHIV-2に対するvpxである。さらに好ましくは、nefおよびvpuである。例えば、nefタンパク質は、細胞質に存在し、そして原形質膜の内面に付着する。タンパク質は、アミノ末端から2番目のグリシンにミリスチン酸を付加することによって、共に翻訳されて改変される。vprタンパク質は、キャプシドウイルス中に取り込まれて見い出される。vpuタンパク質は、細胞の細胞質内に存在し、そして細胞下の小器官に関連する。これらのタンパク質に対する抗体は、本明細書中に記載されている方法論によって製造され得る。さらに、これらのタンパク質は、適切な局在配列の選択によって本明細書の開示内容に基づいて、当業者によってさらに特異的に標的とされ得る。
従って、上記方法論を用いると、特定のタンパク質の発現または過剰発現によって生じる病気にかかっている哺乳類(好ましくはヒト)を治療し得る。ウイルス性の疾患および代謝性の疾患を治療するためにこの方法を用い得る。ウイルス性の疾患(例えば、HIV、HTLV-1、HTLV-2、ヘルペス)によって感染した個体は、治療され得る。同様に、悪性腫瘍を有する個体、または高レベルのタンパク質またはタンパク質類、変性タンパク質または変性タンパク質類、またはそれらの組合せによって引き起こされる悪性細胞の形質転換を受けやすい個体が治療され得る。例えば、少なくとも1種の抗原が、このような抗原に特異的に結合する抗体で標的とされ得る。望ましくない標的抗原の発現を受けやすい細胞に細胞内発現を起こさせるような条件下で抗体を発現し得る有効量の遺伝子が送達される。この方法は、予防措置として用いられ、このような細胞が望ましくない抗原によって有害な影響を受けることを防ぎ得るか、または、より困難にし得る。例えば、それは、タンパク質のプロセシング、望ましくないタンパク質と他のタンパク質との相互作用、ウイルスによる宿主細胞への組込みなどを防ぐことによって行われる。多くの標的が存在する場合には、好ましい標的は、小胞体によってプロセスされるタンパク質である。いかなる抗体遺伝子の細胞内送達も、上記のような遺伝子治療の技法を用いて達成され得る。抗体は、上記のようないずれの抗体でもあり得る。ウイルス感染した哺乳類(例えば、HIVウイルスに感染したヒト)に対する抗体遺伝子を送達するこのシステムの使用について本明細書中に述べられているが、それは本明細書の開示内容に基づいて理解されるべきであり、他のシステム(例えば、悪性に形質転換された細胞を有する個体)に対するこのようなアプローチに容易に適合し得る。
HIVは、CD4ポジティブのヒトリンパ球および他の免疫細胞を感染させる。少なくとも1つのHIVでコードされた標的分子(例えば、タンパク質)に結合する抗体で細胞を標的とすることによって、ウイルスによって感染した個体を治療し得、感染の拡大を遅くおよび/または妨害し得、またはこのような細胞が感染することをさらに困難にするように予防的に治療し得る。
CD4ポジティブのリンパ球に対する遺伝子を送達するための遺伝子治療のいかなる公知の形態も用いられ得る。例えば、細胞特異的遺伝子移動メカニズムを用いることが挙げられる。これには、RNAまたはDNA分子を細胞に運ぶレセプター媒介エンドサイトーシスが用いられる(例えば、Wu& Wu, J.Biol.Chem. 262:4429-4432(1987)を参照のこと)。リガンドとして作用するタンパク質は、ポリL-リジンに結合する。次いでこれはRNAまたはDNA(遺伝子)と組み合わされて、強い静電相互作用によって可溶性の複合体が形成される。それによって、目的の細胞(例えば、CD4細胞)に遺伝子(すなわち、RNAまたはDNA)を送達し得る。例えば、gp120またはCD4に対する抗体をリガンドとして用いると、このような細胞が特異的に標的とされ得る。実際に、HIV感染細胞またはHIV感染を受けやすい細胞に治療遺伝子を送達するベクターとして働くことに加えて、インビボでの遺伝子の移動のこのような方法もまた、その中和活性を維持する。細胞表面で発現したgp120またはCD4を結合した後の抗体のインターナリゼーションが非常に有効であるということが見い出された。
細胞を標的とするのに用いられる抗体は、ポリリジンと結合して、抗体−ポリリジン結合体を形成し得る。これは、試薬(例えば、スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)で修飾した後、ジスルフィド結合による結合によって形成される。この抗体−ポリリジン−遺伝子複合体は、抗体ポリリジン結合体と、抗体カセット(すなわち、プラスミドまたはベクターのようなプロモーターに作動可能に連結した抗体を含むDNA配列)を有する部分とを、混合することによって製造される(図14)。好ましくは、平均鎖長が約60から500のリジンモノマーを有するポリリジンが用いられる。さらに好ましくは、このポリリジンは、平均鎖長が約90から450のリジンモノマーを有する。
上記のように、抗体との結合は、SPDPを用いて達成され得る。第1のジチオピリジン基は、SPDPによって抗体またはポリリジンの両方に導入し、次いで、ポリリジン中のこの基を還元して遊離のスルフヒドリル化合物が得られ得る。これは、上記のようにして改変した抗体と混合することによって、反応させて所望のジスルフィド結合を有する結合体を得る。これらの結合体は、従来の技法(例えば、陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Pharmacia Mono Sカラム, HR 10/10)を用いること)によって精製され得る。例えば、図15を参照のこと。次いで、これらの結合体は、結合が可能な条件下で抗体カセットとともに混合される。例えば、25℃で1時間インキュベートし、次いで所望の分子量限界を有する膜を介して、0.15Mの生理食塩液に対して24時間透析する。このような膜は、例えば、カリフォルニア州、ロサンゼルスのSpectrum Medical Industriesから得られ得る。
標的とされる細胞を治療するために、これらのベクターは、哺乳類宿主中に注入された形質導入細胞を用いてインビトロで細胞に導入され得るか、またはこれらのベクターは、結合する場合には、CD4細胞を用いて哺乳類宿主(例えば、ヒト)に注入され、次いで取り出される。インビボでの遺伝子発現の効果を増大するために、抗体カセットは、エピソームの哺乳類発現ベクターの一部であり得る。例えば、哺乳類細胞における染色体外複製のためのヒトパポバウイルス(BK)複製起点およびBKラージT抗原を含むベクター、高度なコピーのエピソームの複製を得るためのエプスタイン・バール(EB)ウイルス複製起点および核抗原(EBNA-1)を含有するベクターが挙げられる。他の哺乳類発現ベクター(例えば、ヘルペスウイルス発現ベクター、またはポックスウイルス発現ベクター)もまた用いられ得る。このようなベクターは、広範囲の多くの供給源(Invitrogen Corp.を含む)から入手可能である。抗体カセットは、標準的な技法、例えば、制限エンドヌクレアーゼを用いること、およびそれをこのような哺乳類発現ベクターにおける特定の部位に挿入することによって、発現ベクターに挿入される。これらの発現ベクターは、抗体ポリリジン結合体と混合され得る。抗体カセット複合体を含有する、得られた抗体−ポリリジン−発現ベクターは、本明細書中に含まれる開示内容に基づいて容易に製造され得る。十分な量のこれらのベクターを注入して約0.05μg/mlから20μg/mlの間の範囲の血清濃度の抗体結合体が得られる。さらに好ましくは約0.1μg/mlから10μg/mlの間、さらに好ましくは、約 0.5μg/mlから10μg/mlの間である。
これらのベクターは、任意の種々の手段(例えば、非経口注入(筋肉内(I.M.)、腹腔内(I.P.)、静脈内(I.V.)、頭蓋内(I.C.)、または皮下(S.C.))、経口または他の公知の投与経路によって投与され得る。非経口注入が典型的に好ましい。
この物質は、いかなる手段の状況においても投与され得る。例えば、不活性なキャリア(例えば、スクロース、ラクトース、またはデンプン)と混合され得る。それは、錠剤、カプセル、および丸剤の形態であり得る。非経口投与については、生理食塩水のような薬学的に受容可能な非経口キャリアと共に、滅菌水溶液または非水の溶液、懸濁液または乳濁液で典型的に注入される。
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。これらの実施例は、本発明を理解することを助けるために提供され、その範囲を限定することは意図していない。
A.エンベロープ糖タンパク質に対する広範囲の中和抗体の構築および発現
1.F105免疫グロブリン遺伝子のcDNA合成およびPCR増幅。
F105ハイブリドーマを、EBV形質転換体と非分泌のヒト-マウスミエローマ類似体のHMMA2.11TG/O細胞株との融合により誘導した[Posnerら、J.Immunol. 146:4325-4332 (1991)]。公表されたプロトコールに従って、オリゴ(dT)プライミングおよびモロニーネズミ白血病ウイルス逆転写酵素を用いて、全量5μgのRNAから、25μlの反応液中で第1鎖のcDNAを合成した[Guslerら、Gene25:263-269 (1983)]。第1鎖のcDNAの5〜10%を用いて、PCR反応を行った。PCRに用いた温度は:融解94℃、1分;プライマーアニーリング52℃、2分;プライマー伸長72℃、2分である。アニーリングと伸長との間で2分間の傾斜時間を用いた以外は、1分間の傾斜時間を用いた。25〜30回の熱サイクルを行った。エチジウムブロミドで染色した2%アガロースゲルを用いて、PCRフラグメントを分離した。適切なバンドを切り取り、遺伝子を洗浄し(Bio101, La Jolla, CA)、クレノウ修復し、制限酵素で切断し、そしてクローニングに用いた。それぞれのPCRフラグメントの少なくとも3つの別々の形質転換体を、正方向および逆方向の両方のシーケンスプライマーを用いて配列決定した。DNA配列を、Sangerの方法で分析した[Sangerら、J.Mol. Biol. 183:161-178 (1980)]。
2.PCRプライマー設計。
H鎖プライマー対は、正方向のVHプライマーおよび逆方向のJHプライマーからなり、それぞれのプライマーはクローニングに便利な制限部位を含んでいる。免疫グロブリンに関するKabatデータベースを利用して、6つの別々のヒトVHファミリー中に見られるアミノ酸およびコドン分布を分析した[Kabatら、前出]。この分析に基づいて、2つの位置で2つの異なるヌクレオチドが縮重し、そしてFR1配列の5'末端とアニールする、以下の35塩基対の普遍的5'VHプライマーを設計した:
(左の下線部)を導入して増幅したDNAをクローニングし、そしてこれはVH遺伝子の1番目のコドンの5'に位置する。中間のXhoI部位も同様に導入した(右の下線部)。
同様に、66塩基対JH領域オリゴヌクレオチドを設計し、H鎖可変部遺伝子の3'末端で逆方向プライミングした:
このプライマーは、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3(配列番号:1)の鎖間リンカーをコードする45ヌクレオチドの配列をさらに含有する。6つのヒトJH領域のミニ遺伝子のヌクレオチド配列に基づくと、このプライマーは、それぞれの位置で2つのヌクレオチドを有する2つの縮重した位置を含有する。BspEI部位(左の下線部)を鎖間リンカーに挿入し、重複するVκプライマーと付着末端で結合した。中間のBstEII部位(右の下線部)も同様に、将来のリンカーに交換実験用に挿入した。
45ヌクレオチドの鎖間リンカーを用いる同様の方法を、69ヌクレオチドのヒトVκプライマーの設計に援用した。4つのヒトVκ遺伝子のファミリーがある。5'Vκプライマーの
は、FR1配列の5'にアニールし、3つの位置(それぞれ2つのヌクレオチド)で縮重している。鎖間リンカー部分は、逆方向のJHプライマーでクローニングする付着末端のBspEI部位を含んでいる。中間のSac I部位(右の下線部)も同様に、将来のリンカー交換実験用に挿入した。
逆方向の47ヌクレオチドCκプライマー(Kabat位置109位〜113位)
(配列番号:12)を、κ鎖(Kabat位置109位〜113位)(Kabat)の定常部と相補的であるように設計した。このプライマーを、κ定常部の大部分の5'最末端とアニールする。プライマーは、2つの終止コドンの前に中間のMluI部位(右の下線部)を含む。さらに、多重制限部位(Bam HI/XhoI/XbaI)(左の下線部)を、縦列の終止コドンの後に挿入した。類似の逆方向の59ヌクレオチドのCκプライマーもまた設計し、これはカルボキシ末端
を含む。類似の多重制限部位(Bam HI/XhoI/XbaI)(下線部)を、縦列の終止コドンの後に挿入した。
一次ヌクレオチド配列を決定した後、F105H鎖およびκ鎖の両方の遺伝子および生殖系列遺伝子を同定し、VH71-4(Leeら、J.Mol. Biol. 195:761-768 (1987))生殖系列遺伝子のリーダー配列に基づいて、PCRプライマーを設計した。VH71-4リー
号:15)は、5'Nco I部位(下線部)を含む。このリーダープライマーを、PCR増幅実験のために第2のJHプライマーとともに用いた。35塩基対のJH領域オリゴヌクレオチドを、H鎖可変
(配列番号:16)の3'末端での逆方向のプライミングのために、同じ配列を含むように設計した。このプライマーは、それぞれの位置で2つのヌクレオチドを有する2つの縮重位置を含む。J領域の最後のアミノ酸を決定するコドンの3'およびすぐ隣接する部分のBssHII部位(左の下線部)は、VH遺伝子の3'末端でのクローニングに好都合である。中間のBstEII部位(右の下線部)も同様に挿入した。
3.F105一本鎖抗体の構築および細菌での発現
細菌で発現するための最初のF105 sFvを構築するために、VH/JH-ICLおよびICLVκ/CκPCRフラグメントを、それぞれ NotI/BspEIおよびBspEi/XbaIで切断し、そしてSURE細菌(Stratagenem,La Jolla, Ca)を宿主として用いて、プラスミドpSL1180(Pharmacia LKB, Biotech. Inc., Piscataway,N. J.)中にクローニングした。得られたF105 sFvを制限酵素で切断し、そしてNotI/BglIIフラグメントを、pET発現ベクター中のpel Bシグナルペプチドの3'に位置するNotI/BamHI部位にクローニングした。得られたpETpelBF105sFvプラスミドを、BL21(DE3)宿主中に形質転換した。sFv 105タンパク質は、ヒトH鎖およびLκ鎖の両方に対する抗血清により認識される。このタンパク質は、gp120をプラスチック表面に固定したELISAアッセイを用いて決定した精製gp120と結合する。0.2mMのIPTGを用いて24℃で2〜4時間誘導した後にペリプラズム画分を得、そしてgp120(American Biotechnology, Inc.)でコートしたELISAプレート(Dynatech Labs, Inc., Chantilly, VA)を用いるELISA、およびアフィニティーカラムで精製したヤギ抗ヒトκ鎖抗体(Fisher Scientific)に結合したアルカリホスファターゼでの検出によりgp120結合活性を試験した。F105 sFv結合gp120は可溶性CD4により遮断され、それによりCD4との競合を示し、そしてgp120アフィニティーカラム(Affi-Gel,BioRad, Inc.)に吸着し、そこから溶出された。
4.SEKDEL内部細胞質保持シグナルを有するおよび有さないF105一本鎖抗体の構築および真核細胞での発現。
VH71-4リーダーおよびJH/BssHIIプライマーを用いて、リーダーペプチドおよび転位したH鎖遺伝子を含むイントロンのないフラグメントをPCR増幅した。フラグメントを、pSL1180のEcoRV部位中に正方向で平滑末端にしてからクローニングした。その後、NcoI/BstEIIフラグメントを得、そして、pSL1180由来のF105sFvのBstEII/SphIフラグメントと、NcoI/SpHIで切断したpSL1180と3つの断片で結合して組み合わせて、 VH71-4/SCAを作成した。カルボキシ末端SEKDEL配列を含むVH71-4SCAを構築するために、ICL-Vκ-SEKDEL PCR産物を、 pSL1180中のEcoRV部位に正方向で平滑末端にしてからクローニングした。フラグメントをBspEI/XbaIでの切断により取り出し、そしてVH71-4/SCAのNcoI/BspEIフラグメントと、Ncol/XbaIで切断したpSL1180と3つの断片で結合して組み合わせて、VH71-4/KDELを作成した。pRC/CMV(Invitrogen)中にクローニングする前に、EcoRIからHindIIIへの変換リンカーを、2つの一本鎖抗体を含む、EcoRIで切断したpSL1180の中に挿入した。その後、両方の一本鎖抗体由来のHindIII/XbaIフラグメントを得、そしてHindIII/XbaIで切断したpRC/CMV中にクローニングし、pRC/SCAおよびpRC/KDELを作成した。
Fv、sFv、およびsFv-KDELの構造の概略図である図2を参照のこと。それぞれの鎖の3つの相補性決定領域(CDR)は、陰影をつけてある。
5.他のエンベロープ抗体の構築および発現
エンベロープ糖タンパク質に対する他の2つの広範囲の中和一本鎖抗体を作成し、そして同じ基本的な手順を用いて発現させた。これらのPCRプライマーは、VHについては正方向、そしてVκについては逆方向に用い、そして内部鎖リンカーが、JHの24アミノ酸を有する結果、Vκの24ヌクレオチドおよび24塩基対が増幅される。
このような1つの抗体は、gp120上のCD4増強エピトープに対する、1.7bのヒトモノクローナル抗体由来の一本鎖抗体であった。遺伝子分析により、1.7bモノクローナル抗体の転位H鎖が、VH1263生殖系列遺伝子由来であることを決定した。VH1263リーダーペプチドのリーダー配列に対するH鎖プライマーを使用した。このプライマー、
そのリーダー配列を含む転位H鎖を増幅した。κ鎖を同様に増幅した。上記の重複伸長方法を用いて、gp120上のCD4増強部位に対する一本鎖抗体を作成した。
さらに、DP-35生殖系列遺伝子のリーダー配列に対するリーダープライマーを用いた。この転位生殖系列遺伝子は、モノクローナル抗体21H(これもまた、gp120上のCD4結合部位に対する)により使用される。
21HリーダープライマーをJHプライマーとともに用いた。 JH平滑末端プライマー
(配列番号:61)を用いて、21Hモノクローナル抗体の転位H鎖を増幅した。さらに、適切に設計されたλL鎖プライマーを用いて、21Hモノクローナル抗体の転位L鎖を増幅した。2つの精製PCR産物を用いて、真核細胞中で発現する21H一本鎖抗体を作成するために、λ配列を含むように改変された好適な内部鎖リンカーと重複伸長した。
正方向のプライマーであり、これを21Hλ鎖の増幅に用いた。
最も基部に近い定常部λ領域に対する逆方向のプライマー、すなわち、21Hλ鎖に対する3'プライマーである。
ーであり、このプライマーを用いてF105の内部鎖リンカーを再増幅してκ可変部の代わりにλ可変部を入れる。
換言すれば、前の実施例に示したように、リーダーペプチド、リーダープライマー、および平滑末端JHプライマーを入れて、一方の末端にリーダーペプチドを有し、もう一方の末端にJH平滑末端セグメントを有する転位H鎖を増幅した。リーダーペプチドは、HindIII部位を有した。
(配列番号:65)、および3'末端のプライマー
を用いて、内部鎖リンカーと共に転位H鎖を作成した。この転位H鎖を1.7bの場合にκ鎖と共に用いて、リーダー配列を有する一本鎖抗体を作成した。1.7bに用いたプライマーは、
(配列番号:67)、およびκ鎖の定常部分の大部分とアニール
3つの断片を一緒に添加し、そして重複伸長により作成した後、一本鎖抗体は、5'末端にHindIIIクローニング部位、および3'末端にXbaIクローニング部位を有する。PCRで作成したフラグメントを、製造者の指示に従って、適切な制限酵素を用いて切断し、次いで、pRC/CMVなどのプラスミド中に直接的にクローニングした。
6.変異抗体の構築および発現
これらの広範囲の中和抗体のいずれかを用いて、変異抗体を作成し得る。標準の変異誘発技法を用いて、CDR3領域などのH鎖の可変部中に異なるアミノ酸をコードするcDNAが得られ得る。
免疫グロブリンH鎖リーダーペプチドを含むF105一本鎖抗体を、上記のpSL1180クローニングベクターにいれて初期クローニングした。CDR3置換に対するこの抗体を調製するために、以下の方法論を行った。抗体がNcoI/SphI部位にクローン化されるので、いくつかのスタッファー(stuffer)DNAを除去することを必要とした。このように、ベクターを、SpeIおよびNheIで切断して、NotI部位を除去した。自己結合の後、スクリーニングによって除去されるこのスタッファーDNAを有するコロニーを選択した。得られたプラスミドは、リーダーペプチドを有するF105一本鎖抗体を、H鎖CDR3領域に隣接する2つの固有の制限部位と逆方向に、含んでいた。CDR3の5'末端に、固有のEagI部位が存在し:ACG-GCC-GTG-TAT-TACTGT-GCG CGA(配列番号:69)、そしてH鎖CDR3の3'末端にBst EII部位が存在する:TGG GGC CAG GGA ACC-CYG-GTCACS GTN WCC(配列番号:70)。このベクターをEag IおよびBst EIIで切断し、そしてCDR3領域のライブラリーをそこにクローン化した。得られた形質転換体をPVU2で切断し、そして変異抗体をPVU2切断後のパターンの変化によって、野生型と区別した。固有のPVU2部位は、H鎖CDR3に存在し、従って、変異抗体においてその部位は破壊される。このように、このパターンは、PVU2部位を有する野生型CDR3を含む野生型とは異なっている。
合成CDR3の構築のために、3'プライマーを用いた。5'プライマーは、Eag I部位CGC-ACA-GTA-ATA-CAC(配列番号:71)を含む。3'プライマーは、BstEII部位GT-GAC-CGT-GAC-CGG-GGT(配列番号:72)を含む。CDR3は、NNS×15の変性配列を含む(ここで、Nは任意のヌクレオチドであり、そしてSはCまたはGである)。これは、終止コドンの数を減少させ、そして20個全てのアミノ酸を、以下の15個の位置それぞれにおいて発現させる:
のペプチドのキナーゼ処理および上記方法論によるアニーリングの後、得られたペプチドは、CDR3に隣接するフレームワークヌクレオチド上に二本鎖を有し、そしてオープン(open)制限部位を含んでいた。CDR3自体は一本鎖のままであった。細菌性のポリメラーゼにより、間隙に満たした。Cwirla,S. E.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382 (1990)を参照のこと。
これが達成され得ることによる代替法は、アニーリングポリマーとして2つの短いポリマーを用いて、増幅後にCDR3をつなぐ長いオリゴヌクレオチドに製造したこの同じオリゴをPCR増幅することである。この大きなオリゴヌクレオチドを、EAGIおよびBstEIIで切断し、次いで標準的な分子生物学技法を用いて結合した。
固有のCDR3変異体をPVU2切断によって確立した。次いで、完全な抗体カセットをHindIII-Xba I切断によって除去した(これは、クローニング部位とともに完全な抗体カセットを除去する)。次いで、これらの変異抗体をゲル精製し、遺伝子清浄し、そしてHindIIIおよびXba1で切断したpRC/CMV中にクローン化した。次いで、これらの得られたプラスミドを上記のように、COS細胞にリポフェクションによってトランスフェクトした。その後、エンベロープ糖タンパク質に対する種々の結合親和性を有する変異体をスクリーニングした。
上記の技術を用いて、6つの変異体のsFv105抗体を作成し、そこでは、H鎖のCDR3領域におけるアミノ酸は、任意のアミノ酸に置き換えられていた。
Rと呼ばれる6つの変異体の1つは、(配列番号:74)
これらの6つの変異体は、HIV-1エンベロープタンパク質と結合しなかった。
7.エンベロープ糖タンパク質に対するFab中和抗体の構築。
COS-1細胞中で高い力価のヒトFabフラグメントを産生し得る真核細胞発現ベクターもまた産生した。このベクターは、上記のpRC/CMVベクターに基づているが、FdH鎖およびL鎖は縦列にクローン化されており、それぞれの鎖は、別々のCMVプロモーターの制御下にある。このベクターもまた、安定なトランスフェクションのためのネオマイシン遺伝子を含む。図3は、F105H鎖およびL鎖のFabフラグメントを発現するプラスミドを用いてトランスフェクトされたCOS-1細胞のパルスチェイスを示す。図3における、最初の3つのレーンは、細胞溶解物であり、2番目のセットの3つのレーンは、細胞培養液由来である。それぞれのセットのレーンは、2、3、および4時間インキュベーションしたものである。35S-Metで30分間標識した後、さらに記載したインキュベーション時間の後、細胞溶解物(I)および培養液(M)を収集し、そして抗ヒトIgG1および抗ヒトκ鎖抗体の混合物を用いて、放射免疫沈降物を得た。図3中に示されるパルスチェイス実験は、高レベルのF105のFabフラグメントが細胞内および付加物中の両方に存在することを示し、Fabフラグメントが培養液中に活発に分泌されていることを示している。F105FabトランスフェクトされたCOS-1細胞由来の細胞溶解物および培養上清は、ELISAアッセイにおいてgp120と結合し、H鎖およびL鎖の両方は、抗IgG1H鎖(図3中のFabH)または抗κ鎖抗体(図3中のFab K)のいずれかと迅速に免疫沈降し得る。
B.抗TAT一本鎖抗体の構築および発現
同様の一般的方法論が、他の抗原に対する一本鎖抗体の発現に用いられる。HIV-1 tatタンパク質に対する一本鎖抗体を、以下のようにして生成した。
1.H鎖プライマー
5'順方向のVHプライマーは、以下の配列を有する55塩基対のオリゴヌクレオチドからなる:
5'末端から始まる逆方向のネズミJHプライマーは、以下の配列を有する:
2.ネズミκ鎖プライマー
ネズミκ鎖(一本鎖抗体の産生のための鎖内リンカーを含む)のPCR増幅のために、次のVκプライマーを生成した。
上記順方向Vκプライマーとともに用いるために、2つの異なる逆方向のCκプライマーを生成した。1つは、以下の配列を有する44ヌクレオチドプライマーであった:
このプライマーは、Kabatの110位から115位までがアニールされる。
第2の逆方向Cκプライマーは、SV40核位置シグナルを3'末端に含むCκ鎖の増幅に用いた。このプライマーは以下の配列を有する。
このプライマーは、Kabatの110位から115位までがアニールされ、次いで以下のアミノ酸配列を有するSV40核位置シグナルが続く。
PCR増幅
抗tatIIIハイブリドーマから単離した2〜3μgの総RNAを用いて、25μgの反応でランダムプライマーをアニールすることにより産生されるcDNAを産生した。一本鎖cDNAの5〜10%を、VHプライマーおよびVJプライマーと結合し、そしてPCRを実施例1に記載のように行った。PCR反応のためのアニーリング温度は、56℃であった。
L鎖のPCR増幅のために、鎖間リンカーを含むVκプライマーを、Cκプライマー単独、またはSV40核局在シグナルを含むCκプライマーのいずれかと結合させた。この反応のためのアニーリング温度は、56℃であった。
L鎖およびH鎖の両方の増幅のために、30回のPCRを用いた。これらのPCR産物を、2%低融点のアガロースゲルでゲル精製した。κ鎖の先の配列分析により中間のBstE-II部位が示されたので、マルチステップクローニング手順が必要であった。まず、H鎖PCR産物を、末端を修復し、そして平滑末端を生成することを確実にするように、クレノウキナーゼ処理した。H鎖フラグメントを、次いでXbaIを用いて切断した。同様に、2つの異なるκ鎖構築物を、SV40核局在シグナルを用いておよび用いずに、クレノウキナーゼで処理し、次いでXholを用いて切断した。等モル量のこれらの2つのフラグメントをPSK+ベクター(XbaIおよびXhoIを用いて切断されている)と混合した。これにより、5'および3'最末端で付着末端クローニングされ、2つのPCR産物の間で平滑末端クローニングされた。
H鎖およびL鎖のクローニングに成功した後、プラスミドDNAをBstE-IIを用いて切断し、そして約120塩基対のBstE-IIフラグメントを回収し、そして同じベクター内に再クローニングした。これは、平滑末端部位の余分のヌクレオチドを除去するために必要であった。数個のクローンを得、そして上記のVH、VκプライマーまたはVκ、Cκプライマーのいずれかを用いるPCR増幅により、BstE-IIフラグメントの配向を確認した。
真核細胞発現ベクターpRc/CMV(Invitrogen)へのクローニングのために、XbaII/ApaIフラグメントをPSK+ベクターから得、そして同じ制限酵素を用いて切断されているPRC-CMVベクター中にクローニングした。この構築物から得られた抗tat一本鎖抗体の生物学的活性を確認するために、新規な3'プライマーを用いて、この一本鎖抗体を再増幅し、そしてP-10-1ファージミドベクター中にクローニングした。元のVHプライマーと共に、新規な逆方向のCκプライマーを用いた
リポフェクションを用いて、PRC-CMV抗tat一本鎖抗体をCOS細胞中にトランスフェクトした。一本鎖抗体の発現がみられた。
ER局在リーダー配列を有すること以外は上記tat抗体と同様である、第2の抗tat sFvを、以下のように構築した:
ネズミの抗HIV-1 tatハイブリドーマ細胞株のVHおよびVLドメインの遺伝子を、記載のようにクローニングし、そしてDNA配列決定をした。他の制限酵素部位を有するH鎖リーダー配列(P-L)
およびH鎖可変部の3'末端に対応する逆方向のプライマー(P-J)
を用いて、上記のようにポリメラーゼ連鎖反応によりリーダー配列および転位H鎖配列を増幅した。VLの5'末端配列に対応するVLプライマー(P-K)
および、停止コドンを有するκ鎖の定常部の開始部に対応する逆方向のCkプライマー(P-Ck)
またはSV40核局在シグナルを有さない逆方向のCkプライマ
を用いて、VL配列を増幅した。
(P-J)および(P-K)プライマーに完全に相補的であり、そして中間の鎖間リンカー配列(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3(配列番号:1)を含むプライマーを用いて、93bp鎖間リンカーを増幅した。これら3種のフラグメントをゲル精製し、そしてClackson,T.ら [Nature 352:624 (1991)]の方法論による重複伸長により、抗tat sFvを生成した。作成した抗tat sFvシグナル配列をpRC/CMV内にクローニングし、そしてそのDNA配列を確認した[Sanger,F.ら、Proc.Natl. Acad. Sci USA 74:5463(1977)]。次いで、5'HindIII部位を有する順方向のフレームワーク1プライマー
を用いて、この一本鎖抗体を再増幅した。
C.細胞内抗体による機能の阻害
1.哺乳動物細胞で発現される抗体の能力
哺乳動物細胞で発現されるこれらのタンパク質の能力を、下記のように、CD4タンパク質を構成的に発現する、COS-1細胞の一時的(transient)トランスフェクトによりおよびHeLa細胞株、HeLa-CD4[Madden,P. J.ら、Cell 47:333-348 (1986);McDougal, J. S.ら、J. Immunol. 137:2937-2944(1986)]]により測定した。抗ヒトH鎖抗体および抗ヒトL鎖抗体により大量のsFv 105タンパク質が沈澱するが、sFv105-KDELタンパク質は、一時的発現アッセイではほとんど検出されないことが見出された。
sFv105およびsFv105-KDELタンパク質(COS sFv105およびCOS sFv105-KDEL)を構成的に発現する細胞を、2種のプラスミドを用いてCOS-1細胞をトランスフェクトした後、ネオマイシン耐性について選別することにより作製した。
35mm皿上のCOS-1細胞を、Chen, S. Y.ら、J. Virol. 65:5902-5909 (1991)に記載されるように、リポフェクチン(BRLCorp)を用いて、pCMV-sFvまたはpCMV-sFv-KDELまたはネオマイシン耐性遺伝子を含むベクタープラスミドDNA 10μgでトランスフェクトした。トランスフェクトから2時間後、10%のウシ胎児血清を添加したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)1.5mlを細胞に添加し、そして48時間インキュベートした。形質転換細胞を500μg/mlのG418(BRL)を含有するウシ胎児血清を10%添加したDMEMで選別した。次いで、形質転換細胞を6ウェルプレートで増殖し、そしてシステインを含有しない、100μci35S-システイン0.5ml中で30分間インキュベートすることにより代謝的に標識した。次いで、この細胞を洗浄し、そして10mMの非標識システインを含有するDMEM中でインキュベートした。タンパク質を細胞溶解物または培地から免疫沈降し、そして電気泳動により分析した。図4を参照。これらの細胞を30分間パルス標識し、追跡し、そして抗ヒト免疫グロブリンK鎖抗体を用いて、細胞溶解物または培地から免疫沈降した。このタンパク質を12.5%のSDS-ポリアクリルアミドゲル上の電気泳動により分析し、そしてオートラジオグラフィーにより可視化した(Laemmli,U. K., Nature 227:680-684 (1970))。タンパク質マーカーの位置を図に示す。レーン1、CMV-COS-1細胞、60分間追跡。レーン2〜5の試料は、COSsFv 105の細胞溶解物から免疫沈降した。レーン6〜9は、sFv105-COSの培地から沈澱された。レーン2および6は、追跡30分間。レーン3および7は、追跡60分間。レーン4および8は、追跡120分間。レーン5および7は、追跡360分間である。
sFvまたはベクター形質転換細胞の免疫蛍光染色を、直径 15mmのカバーグラス上で行った。この細胞は、エタノール95%および酢酸5%を含有する溶液中で-20℃で5分間固定した。図5A〜Dを参照のこと。sFv105単独(A)またはベクター単独(D)による形質転換細胞、あるいはHelseth,E. M.ら、J. Virol. 64:2416-2420 (1990)に記載の、HIV-1糖タンパク質発現プラスミドpSVIII env 10μgで同時トランスフェクトしたsFv-KDEL形質転換細胞(B)を、抗ヒトκ鎖抗体で染色し、次いでフルオレセイン(FITC)結合抗ウサギIgGとインキュベートした。ER染色には、ベクター形質転換細胞を、抗BIP抗体と、次いで抗マウスIgG-FITC(C)とインキュベートした。ベクター形質転換細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、抗Bip抗体と37℃で30分間、次いで抗ウサギIgG-FITCまたは抗マウスIgG-FITCとインキュベートした。最終洗浄の後、細胞をマウントし、そして蛍光光学系を有するニコン顕微鏡で倍率1100倍で観察した。
このように、細胞内のsFv105タンパク質の位置を測定し得た。この抗体は、ER固有のタンパク質の特性である細胞質全体の管状網(network)を染色する(図5A)。このパターンは、親細胞(図5c)中で、ER固有のタンパク質免疫グロブリンH鎖結合性タンパク質BiP[Wu,G. E.ら、Cell 33:77-83 (1983); Bole, D. G.ら、J. Cell Biol. 102:1558-1566 (1986);Dul,J. Lら、Proc. Natl. Acad. Sci USA 87:8135-8139 (1990);Knittler, M. R.ら、the EMBOJ. 11:1573-1581 (1992)]に対する抗体を用いて得られたパターンと同じである。
2.エンベロープ糖タンパク質に対する抗体がエンベロープタンパク質の生合成および活性を阻害する能力
構成的にsFv105またはsFv105-KDELタンパク質を発現する細胞株がHIV-1エンベロープタンパク質の生合成および活性を阻害する能力を、高レベルのエンベロープタンパク質を発現するベクターを用いるCOS sFv105およびCOS sFv105-KDEL細胞のトランスフェクションにより決定した。パルス追跡分析に続くエンベロープタンパク質の免疫沈降は、4時間の追跡の間に親細胞株において、gp160のかなりの画分がgp120に開裂されることを示す(図6)。gp160の類似量が親およびCOS sFv105細胞において作られるが、4時間の追跡後は、gp120はほんの僅かである(図6)。COS sFv105細胞に存在するgp160タンパク質を、抗ヒトκ鎖抗体を用いて共沈させ得る。この抗体は、親のCOS-1細胞株中で作られるgp160タンパク質を沈降させない。HIV-1エンベロープ糖タンパク質に対する抗体もまた、gp160を発現する細胞中のsFv105タンパク質を共沈させる(図6)。
形質転換細胞を、10μgのpSVIIIenvプラズマDNAおよび2μgのpSVIII tat発現性tat(Helseth, E. M., J.Virol., 前出を参照のこと)を用いてトランスフェクトし、そして35S-システインを用いて30分間パルスラベルし、そして4時間追跡した。細胞溶解物を抗K抗体あるいはポリクローナルなヒツジまたはウサギ抗gp120血清(AIDS Research and Reference Program)を用いて免疫沈降させた。上記のように、タンパク質を11%SDS−ポリアクリルアミドゲル上の電気泳動により分析し、そして上記のようにオートラジオグラフィーによって可視化した。図6を参照のこと。図6Aは、ポリクローナルヒツジ、抗gp120血清を用いて免疫沈降させた細胞溶解物を示し、そして図6Bは、ウサギ抗gp120血清を用いて免疫沈降させた細胞溶解物を示す。図6A:レーン1、抗κおよび抗gp120を用いてHIV-1から免疫沈降した偽トランスフェクトsFv105-COS-1である。レーン2-4は、エンベロープトランスフェクトsFv105-COS-1からの沈降物。レーン2は、抗gp120による沈降物。レーン3は、抗κ鎖抗体による沈降物。レーン4は、抗κおよび抗gp120抗体(AIDS Research and Reference Program)による沈降物。図6B、レーン1は、抗κ2鎖および抗gp120タンパク質抗体を用いて偽トランスフェクトCOS-1からの免疫沈降物。レーン2-3は、エンベロープトランスフェクトsFv105-KDELからの沈降物。レーン2は、抗gp120による沈降物。レーン3は、抗κ鎖抗体による沈降物。レーン4は、抗κ鎖および抗gp120抗体を用いたsFv105-KDELからの沈降物。
COS sFv105-KDEL細胞において、gp160からgp120へのプロセシングは、部分的に阻害される(図8)。図8は、ポリアクリルアミドゲルのオートラジオグラムにより、細胞中において、sFv105-KDELは、特異的にHIV-1糖タンパク質と結合し、sFv105-KDELタンパク質がHIV-1糖タンパク質と共沈することを示す。レーン1は、抗gp120および抗κ鎖抗血清の混合物を用いて沈降させた偽トランスフェクトCOS-1細胞の溶解物を示す。レーン2-3は、エンベロープ発現プラスミドpSVIIIENVを用いてトランスフェクトしたCOS sFv105-KDEL細胞の溶解物を示す。レーン2は、抗gp120抗血清を用いて沈降させた。レーン3は、抗κ鎖抗血清を用いて沈降させた。レーン4は、抗gp120および抗κ鎖抗血清の混合物を用いて沈降させたCOSsFv105-KDEL細胞の溶解物を示す。抗ヒトκ鎖抗体によって沈降するsFv105-KDELタンパク質の量は、gp160の存在によって増加する。COS sFv105-KDEL細胞中に存在するgp160タンパク質はまた、抗κ鎖抗体によって沈降する。gp160を発現する抗血清は、
COS sFv105細胞中のsFv105タンパク質の分布と類似している(図5B)。明らかに、sFv105-KDELタンパク質は、gp160と結合することによって安定化する。
免疫共沈実験を、ERシャペロンタンパク質、BiPに対する抗血清を用いて行った。sFv105タンパク質はBiPに対する抗血清を用いて沈降する。免疫グロブリンのH鎖およびL鎖は、BiPに結合することが知られているが(Wu,G. E.ら、Cell 33:77-83 (1983);Bole, D. G.ら、J. Cell Biol. 102:1558-1566 (1986);Dul,J. L.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8135-8139 (1990);Knittler, M. R.ら、The EMBOJ. 11:1573-1581(1992)]、いくらかのさらなる実験が行われ、gp160プロセシングの阻害がsFv105タンパク質の非特異的活性によるものである可能性が排除された。
sFv105に結合し得る一本鎖抗体を発現する細胞が、envタンパク質変異体のプロセシングを阻害する能力を評価した。この目的のために、COS sFv105細胞を、370位のグルタミン酸がグルタミンに置換されたエンベロープタンパク質変異体を発現するプラスミドを用いてトランスフェクトした。この変異によりsFv105親抗体によるエンベロープタンパク質の検出し得る結合が除かれることが、以前に示されている[Thali,M. C.ら、J. Virol. 66:5635-5641 (1992)]。sFv105のHIV-1エンベロープタンパク質への結合特異性はまた、ブンヤウイルス科のPunta Toroウイルスのエンベロープタンパク質、あるいはオルソミクソウイルス科のインフルエンザAウイルスのWSN株のヘマグルチニンを用いてCOS sFv105細胞をトランスフェクトすることにより評価した。これら2つのウイルスタンパク質は、ERおよびゴルジ体においてプロセシングされることが、以前に示されている(Chen,S. Y.ら、J. Virol. 65:5902-5909 (1991);Hughey, P. G.ら、J. Virol. 66:5542-5552(1992)]。 Punta Totoおよびインフルエンザウイルスタンパク質のいずれも、sFv105 HIV-1 gp160複合体を共沈させることが示されている抗ヒトκ鎖抗体で沈降しなかった。図9、レーン1および2は、COSsFv105細胞中の親エンベロープタンパク質のプロセシングにおける遮断と対照的に、変異gp160エンベロープタンパク質は正常にgp120にプロセシングされることを示す。従って、図9は、sFv105は、関連のないタンパク質と共沈しないことを示している。COSsFv細胞を10μgの変異HIV-1糖タンパク質発現370E/Dを用いてトランスフェクトし、(この糖タンパク質は、F105に結合しない[Thali, M.C.ら、J. Virol.前出])、35S-システインを用いて30分パルスラベルし、そして4時間追跡した。 抗HIV-1糖タンパク質(レーン1)または抗κ鎖抗体(レーン2)のいずれかを用いてタンパク質を免疫沈降させた。T7ポリメラーゼをコードする痘疹ウイルス5M.O.Iを、COS-sFv細胞に2時間感染させ、次いで、T7プロモーター(Chen, S. Y.ら、J. Virol.,前出]の制御下でPunta ToroウイルスのG1およびG2糖タンパク質の遺伝子を含むプラスミドDNAPTV-G1-G2、あるいはT7プロモーター[Chen,前出]の制御下でインフルエンザAウイルスのWSN株のHA遺伝子を含むプラスミドT7-HA 10μgでトランスフェクトした。続いて、細胞を、35S-システインを用いて30分パルスラベルし、そして4時間追跡した。レーン3および4:抗PTV糖タンパク質(Chen,前出)(レーン3)または抗κ鎖(レーン4)で免疫沈降したPTVG1-G2トランスフェクト細胞溶解物。図9はまた、Punta totoエンベロープタンパク質のプロセシングが、sFv105抗体の発現に影響されないことを示す(レーン3-6)。
他のgp160に結合しない単鎖抗体のエンベロープタンパク質のプロセシングを妨害する能力を評価した。2つの異なる一本鎖抗体を用いた。1つは、HIV-1 tatタンパク質を認識するネズミモノクローナル抗体由来の一本鎖抗体である。この抗tat単鎖抗体は、tat抗体の正常細胞内標的から、ERを標的にし得るリーダー配列を有するように改変された。この抗体はまた、COS細胞内に安定に残存し、一時的発現アッセイで培養液中に分泌されない。COS細胞内のgp160からgp120へのプロセシングは、HIV-1糖タンパク質を発現するプラスミドの抗tatsFvを発現するプラスミドとの同時トランスフェクションに影響されなかった。
さらに、抗tat sFvを沈降させる抗免疫グロブリン抗血清は、HIV-1エンベロープタンパク質を共沈しない(図10を参照)。図10は、細胞内に保存された抗tatsFvがHIV-1糖タンパク質に結合しないことを示す。COS細胞を、10μgのpSVIIIenvおよび10μgのpRC/CMV-sFvtatプラスミドDNAで同時トランスフェクトし、35S-システインを用いて30分パルスラベルし、そして4時間追跡した。タンパク質を抗マウス免疫グロブリン抗血清(レーン1)またはヒツジ抗gp120(レーン2)で免疫沈降させ、そしてSDS-PAGEで分析した。H鎖のCDR3領域の全てのアミノ酸が任意のアミノ酸で置換され、そしてタンパク質を結合しない産生されたsFv105の6つの変異体もまた用いた。COS細胞内のgp160からgp120へのプロセシングは、これらの変異体タンパク質を発現するプラスミドの同時トランスフェクションに影響されなかった。抗免疫グロブリン抗血清は、HIV-1エンベロープタンパク質を共沈降させなかった。
sFv105およびsFv105-KDELタンパク質のエンベロープタンパク質の機能を阻害する能力を、エンベロープ遺伝子でトランスフェクトされた細胞のCD4+細胞のシンシチウム形成を誘導する能力を測定することによって決定した。一連の実験において、親COSベクター細胞ならびにCOS sFv105およびCOS sFv105-KDEL細胞を、機能的なエンベロープ糖タンパク質を発現するプラスミドを用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの2日間後、細胞を、エンベロープ介在で融合し易いヒトCD4+T細胞株、SupT1、と、約1から10の割合で混合した。エンベロープが介在するシンシチウム形成の程度は、sFv105またはsFv105-KDELタンパク質のいずれかを発現する細胞で80-90%減少した(図7)。類似量のgp160が、代謝標識およびトランスフェクト培養物の沈降で決定されるように、3種の細胞株全てにおいて作られた。シンシチウム形成の減少はまた、機能的なエンベロープ糖タンパク質を発現するプラスミドを有するHeLaCD4+細胞株のsFv105またはsFv105-KDELタンパク質のいずれかを発現する第二のプラスミドとの同時トランスフェクションにおいて観察された(図7)。対照的に、抗tat sFvを発現する第二のプラスミドの場合、顕著なシンシチウム形成の減少はなかった(図7)。
CD4+Hela細胞を、pSFIIIenv3μgおよびベクターまたはpCMV-sFvまたはpCMV-sFv-KDEL 15μgを用いて同時トランスフェクトした。シンシチウムをトランスフェクションから30時間後計数した。形質転換細胞を、pSVIIIenv3μgを用いてトランスフェクトし、48時間インキュベートし、次いでPBSで洗浄し、そして50mMのEDTAを用いて、37℃で40分間インキュベートした。細胞をプレートから取り出し、PBSで洗浄し、そして10%のウシ胎児血清を追加したDMEM2ml中に再懸濁した。次いで、細胞に約2×106個のSupT1リンパ球を添加し、37℃で12時間インキュベートし、そしてシンシチウムを計数した。形質転換細胞による感染性HIV-1の産生を調べるために、COS、COSsFv105、およびCOS sFv105-KDEL細胞を感染性pSVIIIB DNA5μgでトランスフェクトした。これら細胞からの上清液を、トランスフェクションの4日後に回収し、次いで上清液のそれぞれ1mlを、約2×106個のSupT1細胞と12時間インキュベートした。次いで、SupT1細胞をDMEMで2回洗浄し、そして10%のウシ胎児血清を添加したRPMI培地中に12時間置いた。次いで、SupT1細胞の上清液を回収し、そしてウイルス粒子の産生を、製造者の指示に従って、HIV-1p24キャプシド抗原タンパク質のための高感度のラジオイムノアッセイ血清(DuPont-NEN Inc.)を用いることにより測定した。図7は、CD4+HeLa細胞およびsFvまたはsFv-KDELを発現する形質転換COS細胞における、シンシチウム形成の顕著な減少を示す。CD4+HeLa細胞またはpSVIIIenvでトランスフェクトされたベクター形質転換細胞で観察されたシンシチウムのパーセント値を示す。
sFv105タンパク質が感染性ウイルスの産生を阻害する能力を調べるために、COSベクター、COS sFv105、およびCOS sFv105-KDEL細胞を、1コピーの完全なウイルスゲノムを含むプラスミドでトランスフェクトした[Fisher,A. G.ら、Nature 316:262-265 (1985);Helseth,E.M.ら、J. Virol. 64:2416-2420 (1990)]。トランスフェクションから4日後、培養物上清液中のウイルスを用いて、高感度の指標細胞株SupT1の感染を開始した。3種のトランスフェクト細胞全ての上清液は、ウイルス性キャプシドタンパク質p24を含むことが示された。プロセシング欠損を含み、そしてそのためにERに保持されるエンベロープ糖タンパク質が存在する場合、およびエンベロープ糖タンパク質の合成のない場合に、キャプシドタンパク質の細胞上清内への放出が起こることは、以前示されている[McCune,J. M.ら、Cell 53:55-67 (1988);Ratner, L. N.ら、AIDS Research and Human Retroviruses7:287-294 (1991)]。
図11は、トランスフェクトされたCOS sFv105またはCOS sFv105-KDEL細胞からの上清液により開始されたSupT1細胞でのウイルス複製は、トランスフェクトされたCOS sFv 105またはCOS sFv105-KDEL細胞からの上清液により開始されたウイルス複製に比較して約5日遅く、ベクターを含むがsFv105配列は含まないコントロールCOS-1細胞株により産生されたウイルスにより開始されたSupT1細胞でのウイルス複製に比較して、約5日間遅い。図11は、感染SupT1細胞によるウイルス収率を示す。感染性pSVIIIBDNAは、HXBc2株の感染性HIV-1プロウイルスDNAである[Fisher, A. G.ら、Nature 315:262-265 (1985)]。sFv105またはsFv105-KDELまたはベクター形質転換細胞を、HXBc2株の感染性HIV-1プロウイルス性DNAを含む、pSVIIIBプラスミドDNA5μgでトランスフェクトした。トランスフェクションから4日後、トランスフェクト細胞の上清液を、SupTi細胞と16時間インキュベートし、次いで洗浄し、新鮮な培地に移し、培養培地中のgagp24活性によるウイルスキャプシドp24タンパク質の濃度をモニターした。トランスフェクト細胞の上清液から検出された培地中の量は、それぞれ1.2ng/ml(ベクター−COS)、1.0ng/ml(COS sFv105)、および1.4ng(COS sFv105-KDEL)であった。図11中の記号は、ベクターのみを含むCOSコントロール細胞株(○)、sFv105タンパク質を構成的に発現するCOS細胞株(□)、およびsFv105-KDELタンパク質を発現するCOS細胞株(△)から回収した上清液を用いて得た結果を表す。
上清液の連続希釈物を用いてSupT1細胞を感染したとき、シンシチウム形成が103分の1以下に減少した(図12)。図12は、SupT1細胞でのシンシチウム形成によるウイルス力価を示す。形質転換COSベクターおよびCOS-sFv105細胞を、HXBc2株[Ratner,前出]の感染性HIV-1プロウイルスDNAを含むpSVIIIBプラスミドDNA4μgでトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、トランスフェクトされた細胞からの上清を回収し、そしてこれを連続希釈物として用いて、SupT1細胞を16時間感染し、そして洗浄した。8日後、シンシチウムを計数した。データは、シンシチウムについてポジティブなウェルの数/計数されたウェルの数である。5つの高力価フィールド(HPF)を各ウェルで計測した。希釈物について、5つのHPFで1個またはそれ以上のシンシチウムを(+)と計数する。COS-sFv105細胞により産生されるウイルスの複製の遅れおよび感染力価の減少は、コントロール細胞株により産生されるウイルスの感染性に比較して、ウイルス感染性が低いことが原因である。これらの実験結果は、これらの細胞が、細胞内で機能する抗体を産生し得ることを示す。この抗体は安定に発現され、そして小胞体中に保持され、そして細胞に対して毒性でない。この抗体は、細胞内のエンベロープタンパク質に結合し、そしてこの重要なウイルスタンパク質の成熟および機能を阻害する。一本鎖抗体を発現する細胞により産生されるHIV-1粒子の感染性は、実質的に低下する。
トランス相補(trans-complementation)アッセイを用いた。このアッセイは、2種のプラスミド、1つはHIV-1 LTRの制御下でrevおよびエンベロープタンパク質(pSVIIIenv)をコードし、そして他はenv遺伝子(pHXBenvCAT)に欠失を有するHIV-1プロウイルスおよびnef遺伝子を置換するクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子[Helseth,J. Virol. 64:2416 (1990)]を含む。両プラスミドをCOS-1細胞内にトランスフェクトし、そしてこれらの細胞からの、一回(single round)感染性を有するウイルス粒子を含む上清を用いて、親SupT、SupTベクターまたはSupT sFv105細胞を感染した。CAT活性を、感染細胞の溶解物から測定した。CAT活性は、ウイルス粒子の一回感染性を反映している。これらの実験では、相応量のCAT活性が、同時トランスフェクトCOS細胞から得た上清液で感染させた親SupT、SupTベクターまたはSupT sFv105細胞から観測されたが、pSVIIIenvまたはpHXBenvCATプラスミドのいずれか単独でトランスフェクトしたCOS細胞からの上清液で感染させた親SupT、SupTベクターまたはSupT sFv105細胞からは、検出し得るCAT活性は観察されなかった。これらの実験結果により、SupT sFv105細胞はHIV-1感染を受け易く、そして観測された、細胞変性効果および感染性ウイルス産生の両方の遮断は、ウイルスのライフサイクル(感染性ビリオンのアセンブリ)中で後期の事象によることを示す。この実験により、SupT sFv105細胞におけるHIV-1複製を支持する能力が損なわれたことは、CD4レセプター機能の損失または細胞内抗体産生の結果として起こる他の観測されない変化によるものではないことが確認される。
sFv105の発現は、数種の細胞表面分子の発現を妨害しない。sFv105産生SupT細胞でのHIV-1感染後、表面CD4発現が正常化することが示された。CD3、CD5、CD7、CD8、β2M、CD20、およびHLA-DRを包含する、他の表面マーカーについてFACS分析を行った。CD3、CD5、CD7、CD8、およびβ2Mの表面レベルを比較すると、SupTベクターとSupT sFv105細胞との間には、蛍光強度差はなかった。いずれの細胞株においてもCD20またはHLA-DRの表面発現はなかった。これらのマーカーは公表されたSupT細胞の表現型と同じである。
形質導入細胞は、誘導性タンパク質のレベルが増加するにつれて、適切な刺激に応答し得る。SupTベクターとSupT sFv105細胞との間で3H−チミジン取込みレベルを比較する、いくつかのPHA刺激実験を行った。8mMのPHAを用いてまたは用いずに6時間インキュベーションし、そして3H−チミジン標識した後、両細胞株のチミジン組み込みは10倍以上増加したが、非刺激レベルは同等であった(SupTベクター−刺激1485cpm/非刺激139cpm;SupT sFv105細胞−刺激3330cpm/非刺激263cpm)。従って、これらの形質導入細胞は、同等レベルでマイトジェン反応に応答するようである。
これらの追加データから、SupT sFv105細胞は、親の表現型を維持し、外部刺激に適切に反応し、HIV-1感染の細胞変性作用効果に耐性であり、そして感染細胞は、感染性が顕著に低下したHIV-1ウイルス粒子を産生する。これらの効果は、sFv105分子がgp160と細胞内結合する活性の結果である。
4.トランス活性化を阻害するTatタンパク質への
抗体の能力
HIV-1からのtatタンパク質は、HIV-1の長末端反復(LTR)から発現する遺伝子をトランス活性化する。細胞内のtatの存在に対する高感度のアッセイは、HIV-1LTR-CATリポーターを含むプラスミドを発現している細胞へtatを導入することにより開発された。
クロラムフェニコール−アセチルトランスフェラーゼ(CAT)アッセイ
組込みLTR-CATプラスミドを含むHeLa細胞株H3TI(NIAID Aids Reagent Program) を、10%ウシ胎児血清(FCS)が補足されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で増殖させた。6ウェルのNunc組織培養プレート上で、細胞を50%の集密になるまで増殖させた。
リーダーを有する抗tatSCA、SV40(Vκ)を有さない抗tatSCA、およびSV40(VκSV40)を有する抗tatSCAを種々の濃度で、0.1マイクログラムのpSVIIIenv(tat発現プラスミド)と共に、リポフェクション(lipofection)を用いて2時間、H3TIへ同時感染させた。
トランスフェクションの72時間後、CAT活性を、[Gormanら、Mol. Cell. Biol. 2:1044〜1051 (1982)]に記載されるように測定した。
HIV-1 LTR-CATリポータープラスミドを含むHeLa細胞のトランスフェクションは、0.01マイクログラム程度の少量のtat発現性プラスミドのトランスフェクションで、著しいトランス活性化(25×)を示す(図20)。
Tat活性の阻害
トランス活性化に際し細胞内で発現する抗tat一本鎖抗体(SCA)の存在の効果を以下のようにして測定した:
10マイクログラムの抗tatSCA(Vκ)、SV40核局在シグナル(VκSV40)を有する抗tatSCA、およびSCAを小胞体へ指向させる免疫グロブリンリーダー配列を有する抗tatSCAを、0.1マイクログラムのpSVIIIenvtat発現体プラスミドと共に、HIV-1LTR-CATプラスミドを含むHeLa細胞へ同時感染させた。リーダー配列は、一本鎖抗体をERへ指向させるので、細胞質および核にのみ存在するtatに対してなんら効果を有さない。図21に要約した結果は、抗tatSCAVκおよび抗tatSCAVκSV40が存在すると、細胞内の異なる区画へ指向する同じ抗体の活性と比較して、tatによるHIV-1 LTR-CATのトランス活性化が低下することを示している。抗tatVκは、リーダーを有する抗tatSCAの活性の4%のみを示すのに対して、抗tatVκSV40は18.4%を示す。
細胞に添加する抗体の量を半分に減らすと(図22)、抗tatVκでトランスフェクトした細胞内のtatの活性は、全活性の15%を示すのに対して、抗tatVκSV40は28%を示す。
5.細胞内抗体の誘導発現
発明者らは、HIV-1 5'LTRの制御下で、F105 sFvをクローン化し、そしてSupT細胞における安定な細胞株を確立した。図13レーン1に見られ得るように、tat発現性プラスミドpSVIIItatを有する安定なF105 LTR SupT細胞のトランスフェクションの後に、F105 sFvは発現する。図13は、SupT細胞がpLTR F105 sFv(レーン1)またはpRC/CMVF105 sFv(レーン2)で安定に形質転換したことを示している。SupT LTR F105 sFv細胞を、pSVIIItatでさらにトランスフェクトした。両方の細胞を35s-Cysで3時間標識し、そして細胞溶解液を調製した。抗ヒトκ鎖抗血清を用いて、放射免疫沈殿は、続いて15%SDS-PAGEを行った。tatタンパク質の発現がないとF105sFvは見られない。この発現のプロモーターと細胞との相互依存性を図13のレーン2に示し、ここではCMVプロモーターを用いている。多くのクローンをスクリーニングし、そして実際は検出可能な抗体を産生しなかった。Jurkat細胞は同様の結果を与えた。
HIV-1 LTRの制御下にあるF105 sFvで安定に形質転換した、上記の安定な形質転換SupT細胞を、種々の濃度のtatタンパク質で誘導した。図16は、F105 sFvが、0.1μg程度の少ないtatタンパク質で誘導的に発現したことを示している。レーン1は、10μgのtatタンパク質の投与を示している;レーン2は、1μgのtatタンパク質である;レーン3は、0.5μgのタンパク質である;レーン4は0.1μgのタンパク質であり、そしてレーン5は0μgのタンパク質である。sFv105の局在を示すマーカーが存在する。形質転換SupT細胞は、通常の形態および複製速度を維持し、そして高いレベルのF105 sFvを発現するために形質導入され得る。
SupT細胞を上記のようにHIV-1に感染させた。次いで、上記のように、それらをpLTR F105 sFvで安定に形質導入した。図17は、SupT細胞のFACS分析である。図17Aは、感染していないSupT1細胞を示す負のコントロールである。図17Bは、形質導入されていない、SupT HIV感染細胞の正のコントロールである。図17Cは、SupT HIV-LTR-sFv 105形質導入HIV感染SupT細胞のFACS分析であり、そして図17Dは、sFv 105抗体遺伝子以外のHIV-LTRを含むベクターで偽感染した(mock infected)HIV感染SupT細胞である。
図17B〜Dは、HIV-1の20 M.O.I.のHXB2株を用いた感染の8日後の、FITC抗gp120(ABT Inc.)を用いたgp120の表面染色を示している。分析から理解され得るように、図17Dは、正のコントロールとしての、同じSupT細胞の染色の一般的パターンを示している(図17B)。対照的に、本発明(図17C)の抗体で形質導入されたHIV感染細胞は、負のコントロール(図17A)と類似したバックグラウンド染色を示し、これによって、表面gp120の発現がSupT sFv 105細胞内で著しく低下することが示される。
図18A〜Dは、このような細胞内での表面CD4の発現を示している。図18Aは、負のコントロールにおけるバックグラウンド染色を示し、図18Bは、HIV-1の20M.O.I.のHXB2株を用いた感染8日後の、FITC抗CD4(ABT, Inc.)を用いたCD4の表面染色を示している(正のコントロール)。図18Dは、感染して8日後の、HIV-LTRベクターで偽感染したSupT HIV感染細胞におけるCD4発現の著しい低下制御を示している。対照的に、図18Cは、sFv 105で形質導入されたSupT HIV感染細胞内での表面CD4の発現は、HIV-LTRの制御下において、感染して8日後では殆ど正常であったことを示している。従って、これらの実験は、表面CD4発現が、細胞内で有意には低下制御されなかったことを示している(ここで、HIVタンパク質は本発明に従って標的化されている)。この実験によって、ER内で形成することが知られているCD4-gp160の細胞内複合体は、本発明の方法により分離し得ることがさらに示される。
図19は、F105 sFvを発現するCD4 SupT HIV感染細胞における、HIV-1ウイルス阻害の細胞変性効果を示している。(Θ)線は、偽トランスフェクトしたSupT細胞を示している。(△)は、上記の条件下でHIVに感染したSupT細胞を示す正のコントロールである。(□)は、上記の条件下で感染し、そして上述のようにHIV-LTRの制御下でsFv105抗体が形質導入された、SupT細胞を示している。この図は、上記のように、SupTベクター細胞またはSupT sFv 105細胞を、HIV-1のHXBC2株の20M.O.I.で感染させた後の、シンシチウムの形成の結果を示している。感染して11日後では、SupT sFv 105細胞において形成されるシンシチウムは実質的にない。対照的に、SupT細胞では、シンシチウムのピークが4〜5日後に見られる。これらの実験は、上記のgp120の表面発現の欠如と一致しており、本発明の細胞内抗体によって、gp120の細胞変性効果の耐性が導かれることを示唆している。
明細書中に引用した参考文献は、本明細書中に参考として援用されている。
本発明を、その好ましい実施態様に関して詳細に説明してきた。しかしながら、当業者は、この開示を考慮することによって、請求の範囲に示されるような本発明の意図および範囲から逸脱することなく、それに関する変更および改良をなし得ることが理解される。