JP2006249138A - ポリエステルの製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 アンチモンをはじめとする重金属系の触媒を使用することなく、抗ピリング性ポリエステル繊維用に好適なポリエステルを製造する方法を提供する。
【解決手段】 ポリアルキレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステルを製造するに際し、平均重合度10以下のエステルオリゴマーに、濃度1〜10質量%のリン酸のグリコール溶液をポリエステルの酸成分に対してリン酸が0.5〜1モル%となるように添加し、0.2〜2時間エステル化反応を行った後、重縮合触媒としてアルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体を100〜400ppmとなる量添加し、極限粘度が0.55以上となるまで重縮合反応を行うことを特徴とするポリエステルの製造法。
【選択図】 なし
【解決手段】 ポリアルキレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステルを製造するに際し、平均重合度10以下のエステルオリゴマーに、濃度1〜10質量%のリン酸のグリコール溶液をポリエステルの酸成分に対してリン酸が0.5〜1モル%となるように添加し、0.2〜2時間エステル化反応を行った後、重縮合触媒としてアルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体を100〜400ppmとなる量添加し、極限粘度が0.55以上となるまで重縮合反応を行うことを特徴とするポリエステルの製造法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、抗ピリング性ポリエステル繊維用に適したポリエステルを製造する方法に関するものである。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記することがある)繊維は、機械的特性、化学的安定性等から衣料用や産業資材用等として広く用いられている。しかし、ポリエチレンテレフタレート繊維を衣料用に使用する場合、ピリング(毛玉)の発生等好ましくない現象が発現し、実用上大きな欠点の一つになっている。
従来、このようなピリング性を防止するための方法が種々提案されている。中でも、特許文献1には、平均重合度10以下のエステルオリゴマーに、濃度1〜10質量%のリン酸のグリコール溶液をポリエステルの酸成分に対してリン酸が0.5〜1モル%となるように添加し、0.2〜2時間エステル化反応を行った後、重縮合触媒として三酸化アンチモンを添加し、極限粘度が0.55以上となるまで重縮合反応を行うポリエステルの製造法の発明が開示されている。この発明によれば、多量のリン酸を添加して重縮合反応を行ってポリエステルを製造する際に生じる問題を解消し、良好な引張強度を示すとともに、優れた抗ピリング性を示すポリエステル繊維とすることのできる色調の良好なポリエステルを製造することができる。
ところで、PETやこれを主体とするポリエステルの重縮合触媒としては、安価で、かつ優れた触媒活性を有することから、三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物が広く用いられている。上記した特許文献1に記載の発明も、多量のリン酸を添加して重縮合反応を行ってポリエステルを製造するに際し、リン酸と三酸化アンチモンとが共存すると両者が反応してリン酸アンチモンが形成され、ポリマーが濁ったり、重縮合触媒が失活することにより重合度が上がらないという問題があったところ、三酸化アンチモンを使用しつつこの問題を解決したものである。
ところが、近年、環境面からアンチモンの安全性に対する問題が欧米をはじめ各国で指摘されている。このため、最近ではアンチモン化合物を触媒に用いないポリエステル樹脂が求められている。そこで、三酸化アンチモンの代わりとなる重縮合触媒として、テトラアルコキシチタネートやゲルマニウム化合物などが実用化されてきているが、テトラアルコキシチタネートを用いたポリエステルは、著しく着色し、かつ熱分解を容易に起こす問題があり、ゲルマニウム化合物は、非常に高価であるばかりか、反応中に系外へ溜出しやすく、反応系の触媒濃度が変化し、反応の制御が困難になるといった問題がある。
特開平8−208821号公報(特許請求の範囲)
上記の現状に鑑み、本発明の課題は、アンチモンをはじめとする重金属系の触媒を使用することなく、抗ピリング性ポリエステル繊維用に好適なポリエステルを製造する方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するものであり、ポリアルキレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステルを製造するに際し、平均重合度10以下のエステルオリゴマーに、濃度1〜10質量%のリン酸のグリコール溶液をポリエステルの酸成分に対してリン酸が0.5〜1モル%となるように添加し、0.2〜2時間エステル化反応を行った後、重縮合触媒としてアルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体を100〜400ppmとなる量添加し、極限粘度が0.55以上となるまで重縮合反応を行うことを特徴とするポリエステルの製造法を要旨とするものである。
本発明によれば、アンチモンに代表される重金属系の触媒を使用しないことから、環境への負荷を低減してポリエステルを製造することができ、本発明により得られたポリエステルを用いれば、良好な引張強度を示すとともに、優れた抗ピリング性を示し、かつ重金属を実質的に含まない環境に優しいポリエステル繊維を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明において、ポリエステルを構成する主成分としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体、ジオール成分としてエチレングリコール(以下、EGと略記することがある)もしくはそのエステル形成性誘導体が好ましく用いられるが、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、アジピン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビスフェノールA、ビスフェノールS等及びこれらのエステル形成性誘導体を共重合成分として併用してもよい。
本発明の製造法では、平均重合度10以下のエステルオリゴマーに、リン酸のグリコール溶液を添加してエステル化反応を行なう。ここで、出発原料となる平均重合度10以下のエステルオリゴマーを得るための方法としては、公知の方法を採用できる。エチレンテレフタレートオリゴマーの場合であれば、例えば、温度230〜250℃で窒素ガス制圧下、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートまたはその低重合体の存在するエステル化反応槽に、EGとテレフタル酸(以下、TPAと略記する。)からなり、両者の物質量(モル)比が1.1〜2.0のスラリーを添加し、滞留時間7〜8時間でエステル化反応物を連続的に得る。このようにして得られるエステル化反応物は、本発明にいうエチレンテレフタレートオリゴマーに該当する。
本発明において、上記のようにエステルオリゴマーの平均重合度を10以下とする理由は、10を超えるものであると、リン酸のグリコール溶液を添加してから行うエステル化反応が円滑に進行しないためである。
本発明において、リン酸は上記のようにグリコール溶液として添加するのであるが、そのときのグリコール溶液の濃度としては、1〜10質量%であることが必要である。当該グリコール溶液におけるリン酸の濃度が1質量%未満であると、投入グリコール量が非常に多くなるために、その後の工程で多量のグリコールを溜出させることが必要になり、経済的でない。一方、リン酸の濃度が10質量%を超えると、重合速度が著しく遅くなり、ポリエステル繊維としたときに十分な繊維強度を付与するのに必要な極限粘度粘度0.55以上のポリエステルを得ることが不可能になるばかりでなく、得られるポリエステルの色調が悪くなり好ましくない。
なお、リン酸のグリコール溶液に使用するグリコールは、ポリエステルのジオール成分として用いるグリコールと同じものであることが好ましい。また、リン酸のグリコール溶液は、常温で添加してもよいが、加熱して添加すれば反応系の温度低下を防ぐことができる。
そのようにグリコール溶液として添加されるリン酸の量としては、リン酸がポリエステルの酸成分に対して0.5〜1モル%となるよう添加することが必要である。これは、ポリエステル繊維に優れた抗ピリング性を発現させるためであり、リン酸の添加量が0.5モル%未満であると染色(130℃×1時間程度)に代表される湿熱処理を行っても、優れた抗ピリング性は発現しない。逆に1モル%を超えるとポリマーが三次元化し、ポリエステルの優れた性質が損なわれる。
本発明においては、上記のようにリン酸のグリコール溶液を添加してから、重縮合反応を行なう前に、0.2〜2時間、好ましくは0.5〜1.5時間エステル化反応を行う。このエステル化反応を行わずに重縮合反応を行うと、重合触媒とリン酸とが反応し、ポリマーの色調を著しく悪化させるため好ましくない。また、このエステル化反応時間が0.5時間未満であると、リン酸により重合触媒が失活し、ポリエステルの優れた機械特性を損なわせる可能性があり好ましくない。逆に、2時間を超える反応は、効果が飽和して意味がないばかりか、ポリマー中のジエチレングリコール量が増加するので好ましくない。なお、エステル化反応の温度としては、230〜280℃とするのが好ましい。
本発明においては、ポリエステルの重縮合触媒として、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体を使用することが重要である。アルミニウム化合物とマグネシウム化合物とを別個の触媒物質として系に添加するのではなく、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体を用いることによって、適度な重合活性が得られるとともに、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物とを逐次的に添加する場合に生じるような、共重合ポリエステル中に不溶な分解物等の微小な異物が発生したり、色調が優れないという問題も生じない。
本発明に用いられるアルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体とは、それぞれの化合物が均一に溶け合った固体である。この固溶体において、アルミニウム元素とマグネシウム元素の物質量(モル)比としては、アルミニウム/マグネシウムの比が0.1〜10.0であることが好ましく、0.2〜5.0がさらに好ましい。
上記した固溶体を構成するアルミニウム化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム等のカルボン酸塩が挙げられ、また、
塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等の無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド等のアルミニウムアルコキサイドが挙げられ、また、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテートまた、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物及びこれら有機アルミニウム化合物の部分加水分解物が挙げられ、また、酸化アルミニウム、金属アルミニウム等が挙げられる。これらのうちカルボン酸塩と無機酸塩が好ましく、これらの中でも水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウムが特に好ましい。
塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等の無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド等のアルミニウムアルコキサイドが挙げられ、また、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテートまた、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物及びこれら有機アルミニウム化合物の部分加水分解物が挙げられ、また、酸化アルミニウム、金属アルミニウム等が挙げられる。これらのうちカルボン酸塩と無機酸塩が好ましく、これらの中でも水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウムが特に好ましい。
一方、マグネシウム化合物としては、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、マグネシウムアセチルアセトネート、酢酸以外のカルボン酸等が挙げられ、中でも、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムが特に好ましい。
なお、本発明におけるアルミニウム化合物とマグネシウム化合物からなる固溶体としては、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物のいずれか一方もしくは両者において2種類以上が選択されて構成されたものであってもよい。
また、本発明におけるアルミニウム化合物とマグネシウム化合物からなる固溶体には、必要に応じて、マグネシウム、アルミニウム以外の金属(他の金属)の化合物が固溶していてもよいが、その場合には、当該固溶体の質量の70%以上がアルミニウム化合物とマグネシウム化合物とで占められていることが好ましい。他の金属としては、亜鉛、チタン、錫、コバルト、マンガン、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、鉄、ニッケル、ガリウム等が挙げられる。
本発明におけるアルミニウム化合物とマグネシウム化合物からなる固溶体のうち、特に好適なものとしては、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムと炭酸マグネシウムとからなる固溶体が挙げられる。また、これに少量の酸化亜鉛が固溶したものも好適である。
本発明において、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体を重縮合触媒として添加するときの添加量としては、100〜400ppmとする。これは、重縮合して得られるポリエステルの量に対して100〜400ppmという意味である。この添加量が100ppm未満では、重縮合触媒としての活性が不足して、ポリエステルの重合度を十分に高めることが困難となり、繊維化に適した極限粘度を有するポリエステルが得られ難いので好ましくない。一方、400ppmを超える使用量とすると、得られるポリエステルの色調が悪化したり、あるいは、固溶体がポリエステル中で凝集して粗大粒子となり、溶融紡糸に用いた際のパック圧の上昇や糸切れといったトラブルの原因となることがあるので好ましくない。
この添加量が100ppm未満では、十分な触媒活性が得られない。一方、400ppmを超えると、得られるポリエステル樹脂の色調が悪化したり、固溶体がポリマー中で凝集して粗大粒子となり、紡糸時のノズルパックの異常昇圧や糸切れの原因になる。
上記において、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体を添加する方法としては、特に限定されるものではないが、上記固溶体を分散媒中に分散させたスラリーとして添加することが好ましい。このとき、スラリー中の固溶体の含有量としては、0.5〜3.0質量%とするのが好ましい。0.5質量%未満では、スラリーの添加量が多くなり、重合時に多量の溜出物が生成し、コストアップにつながりやすいので好ましくない。一方、3.0質量%を超えると、系にスラリーを添加した際に、固溶体の凝集が起こりやすく、ポリエステル中で固溶体が粗大粒子となり、ポリエステル繊維を紡糸する際にパック圧の上昇や糸切れといったトラブルを生じる原因となりやすいので好ましくない。
上記した固溶体のスラリーに用いる分散媒としては、EG、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、DEG、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3ーブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等が挙げられ、これらの中でもEGが特に好ましい。
また、固溶体が凝集して粗大粒子となることを防止するうえで、EG等の分散媒に所定量の固溶体を添加して撹拌混合した後、超音波処理を行うことが好ましい。このときの超音波の周波数は通常の周波数領域でよく、例えば、20kHz程度から100kHzの範囲での処理が採用できる。超音波を発生させる発振源としては、公知の手段でよく、例えば、水晶を用いた圧電振動子、ニッケルやフェライトを用いた電歪発振子等が挙げられる。また、超音波処理の時間としては、0.5〜5.0時間の範囲が好ましい。
本発明では、上記のようにしてアルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体を添加してから、重縮合反応を行なうのであるが、重縮合反応としては、ポリエステルの極限粘度が0.55以上となるまで行なう必要がある。得られるポリエステルの極限粘度が0.55未満では、十分な強度を有するポリエステル繊維を得られないからである。極限粘度を0.55以上とすることは、重縮合反応時の温度、時間を適宜設定することにより可能である。
以上説明した本発明の製造法の全体を振りかえるべく今一度簡単に例を挙げて説明すると、次のようになる。
まず、温度230〜250℃で窒素ガス制圧下、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート又はその低重合体の存在するエステル化反応槽に、EGとTPAとからなり、両者の物質量(モル)比が1.1〜2.0のスラリーを連続的に添加し、滞留時間7〜8時間で平均重合度10以下のエステルオリゴマーを連続的に得る。次に、このエステルオリゴマーを重縮合反応缶に移し、濃度が1〜10質量%のリン酸のグリコール溶液をポリエステルの酸成分に対してリン酸が0.5〜1モル%となるように添加し、230〜280℃の温度で0.2〜2時間エステル化反応を行う。その後、重縮合触媒としてアルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体を添加した後、重縮合反応缶の温度を260〜300℃に昇温し、0.01〜13.3hPaの減圧下にて、極限粘度0.55以上となるまで重縮合反応を行う。このようにして所定の条件で重縮合反応を行って本発明により製造されたポリエステルは、ガス圧を利用してノズルから押出すことにより多数の棒状に払い出され、カットされてチップ状の形態として得られるのが普通である。
本発明により得られたポリエステルは、常法によって溶融紡糸し、必要に応じて延伸することにより、ポリエステル繊維とすることができる。なお、必要に応じて捲縮を付与した後に切断して短繊維としてもよい。
そして、得られた繊維を湿熱処理することにより、抗ピリング性の優れたポリエステル繊維が得られる。この湿熱処理は、熱水または水蒸気等を用いて、80〜160℃の温度範囲で、約0.5〜2時間行うのが好ましい。処理温度が80℃未満では、繊維に十分な抗ピリング性を付与することができず、160℃を超える温度ではポリエステル繊維の強度が低くなりすぎ、ポリエステル繊維本来の好ましい性質が損なわれる。なお、熱水または水蒸気処理はそれ自体単独の工程として行ってもよいし、繊維または布帛の種々の加工、例えば染色工程等と兼用してもよい。また、湿熱処理は、若干酸性あるいはアルカリ性の条件で行ってもよく、通常pH3〜10の範囲で行われる。なお、この湿熱処理は、短繊維について行ってもよく、紡績糸、織編物等に加工した後に行ってもよい。
次に、実施例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、各特性の評価方法は、次の通りである。
(1)極限粘度[η]
フェノールと四塩化エタンとを質量比1/1で混合したものを測定用溶媒として、温度20℃で測定した。
(2)色調b値
日本電飾工業社製の色差計ND−Σ80型を用い、ハンターのLab表色系のb値を求めて評価した。(b値は、値が大きいほど黄色味、小さいほど青色味が強くなり、極端に小さくならない限り、小さいほうがよい。)
(3)融点(Tm)およびガラス転移点(Tg)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(4)抗ピリング性
JIS−L−1076−Aの方法により測定した。
(5)強度
オリエンティック社製テンシロンUTM−4−100型を用い、試料長20mm、引張速度20mm/分で測定した。
(1)極限粘度[η]
フェノールと四塩化エタンとを質量比1/1で混合したものを測定用溶媒として、温度20℃で測定した。
(2)色調b値
日本電飾工業社製の色差計ND−Σ80型を用い、ハンターのLab表色系のb値を求めて評価した。(b値は、値が大きいほど黄色味、小さいほど青色味が強くなり、極端に小さくならない限り、小さいほうがよい。)
(3)融点(Tm)およびガラス転移点(Tg)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(4)抗ピリング性
JIS−L−1076−Aの方法により測定した。
(5)強度
オリエンティック社製テンシロンUTM−4−100型を用い、試料長20mm、引張速度20mm/分で測定した。
実施例1
ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびその低重合体の存在するエステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコールとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、平均重合度7のエステルオリゴマーを連続的に得た。
ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびその低重合体の存在するエステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコールとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、平均重合度7のエステルオリゴマーを連続的に得た。
このエステルオリゴマー55.5kgを重縮合缶に仕込み、濃度3質量%のリン酸のエチレングリコール溶液をテレフタル酸1モルに対してリン酸が0.75モル%となる量を添加した後、エステル化反応を250℃で1時間行った。
その後、重縮合触媒として、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムからなり、アルミニウム/マグネシウムの物質量(モル)比が0.4である固溶体(堺化学工業社製HT−P)の濃度が1.5質量%に調製されたEGスラリー0.8kg(固溶体の含有量がポリエステルに対して250ppm)を加え、徐々に減圧して、最終的に圧力0.9hPa、温度280℃で、4時間重縮合反応を行い、常法により払い出してチップ状のポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルは、[η]=0.64、Tm=245℃、Tg=69℃、b値は2.5という特性を有するものであった。
このポリエステルのチップを常法により乾燥してから、溶融紡糸装置に投入し、孔径0.3mm、孔数720の紡糸口金を用いて、紡糸温度270℃、紡糸速度900m/分、吐出量360g/分の紡糸条件で溶融紡糸し、その後、引き揃えて12万dtexの未延伸トウを得た。次いで、このトウを加熱ローラ温度65℃で、3.3倍に第一延伸した後、加熱ローラ温度60℃で、1.1倍に第二延伸した。その後、ヒートドラムで温度190℃で熱セットし、機械捲縮を付与した後に長さ51mmに切断した。このようにして得られたポリエステル短繊維は、繊度1.4dtex、強度4.0cN/dtex、伸度35%というものであった。
さらに、この短繊維を常法により英式番手40Sの紡績糸とし、筒編み地を作製した後、130℃の熱水中で60分間処理した。この熱処理後の筒編み地の抗ピリング性は5級であった。
実施例2〜3および比較例1〜8
エステルオリゴマー重合度、リン酸を添加する際のエチレングリコール溶液濃度及び添加量、リン酸のエチレングリコール溶液を添加した後のエステル化反応時間、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体の添加量等、ポリエステルの製造条件を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを製造した。また、得られたポリエステルから、実施例1と同様にしてポリエステル短繊維及び筒編み地を作製した。
エステルオリゴマー重合度、リン酸を添加する際のエチレングリコール溶液濃度及び添加量、リン酸のエチレングリコール溶液を添加した後のエステル化反応時間、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体の添加量等、ポリエステルの製造条件を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを製造した。また、得られたポリエステルから、実施例1と同様にしてポリエステル短繊維及び筒編み地を作製した。
なお、各実施例及び比較例におけるポリエステルの製造条件、並びに得られたポリエステル及びポリエステル繊維の特性をまとめて下記表1に示す。
表1に示したように、実施例1〜3では本発明の製造法に適う条件で製造されたことにより、得られたポリエステルの[η]や色調は良好であり、それからなるポリエステル繊維は十分な強度及び優れた抗ピリング性を有していた。しかも、重縮合触媒としてアンチモン化合物等の重金属系の触媒を使用せずにこれらの良好な結果が得られた。
これに対して、比較例1では、ポリエステルの極限粘度[η]が低すぎて、繊維化できなかった。
比較例2では、リン酸の添加量が少なすぎて、抗ピリング性が2級と不十分であった。一方、比較例3では、リン酸の添加量が多すぎて、ポリエステル反応中にポリマーが急激に三次元化(ゲル化)して、重縮合反応缶から払い出せなかった。
比較例4では、リン酸のグリコール溶液の濃度が高かったため、ポリエステル反応速度が極端に遅く、長時間反応缶に在中していたため、ポリエステルの色調が悪化した。
比較例5では、リン酸のグリコール溶液を添加した後のエステル化反応を行わなかったため、リン酸と重合触媒が反応して、ポリエステルの色調が著しく悪化した。一方、比較例6では、リン酸のグリコール溶液を添加した後のエステル化反応時間が長かったため、ジエチレングリコールの副性量が増加し、ポリマーの耐熱性が低くなり、ポリエステル繊維にした際の強度が低くなった。
比較例7では、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体の添加量が少なかったため、ポリエステルの重合性が極めて悪く、所定の極限粘度まで到達させることができなかった。一方、比較例8では、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体の添加量が多かったため、ポリエステルの色調が極めて悪く、かつ、固溶体に起因すると見られる粗大粒子のため、紡糸時に糸切れが多発して、ポリエステル繊維を得ることができなかった。
Claims (1)
- ポリアルキレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステルを製造するに際し、平均重合度10以下のエステルオリゴマーに、濃度1〜10質量%のリン酸のグリコール溶液をポリエステルの酸成分に対してリン酸が0.5〜1モル%となるように添加し、0.2〜2時間エステル化反応を行った後、重縮合触媒としてアルミニウム化合物とマグネシウム化合物とからなる固溶体を100〜400ppmとなる量添加し、極限粘度が0.55以上となるまで重縮合反応を行うことを特徴とするポリエステルの製造法。
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