JP2006231208A - 軟弱土の固化処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 大量のセメントを使用しなくても、また、石膏などの原材料を使用しなくても、製鋼スラグを用いて浚渫土などの軟弱土を迅速に且つ安価に固化する方法を提供する。
【解決手段】 1m3 当たりの軟弱土に対し、遊離石灰を含有した、最大粒径が10mm以下である転炉スラグを20〜150kg、及び、高炉セメントを40〜100kg添加して、軟弱土と転炉スラグと高炉セメントとを混合する。この場合、軟弱土の固化処理方法が、開放した出口部を有する管の内部を通過する軟弱土に転炉スラグ及び高炉スラグを添加し、管内で軟弱土と転炉スラグと高炉セメントとを混合して前記出口部から放出する固化処理方法であり、且つ、混合後の軟弱土の流動性が100mm以上である場合に、軟弱土の固化が促進される。
【選択図】 図3
【解決手段】 1m3 当たりの軟弱土に対し、遊離石灰を含有した、最大粒径が10mm以下である転炉スラグを20〜150kg、及び、高炉セメントを40〜100kg添加して、軟弱土と転炉スラグと高炉セメントとを混合する。この場合、軟弱土の固化処理方法が、開放した出口部を有する管の内部を通過する軟弱土に転炉スラグ及び高炉スラグを添加し、管内で軟弱土と転炉スラグと高炉セメントとを混合して前記出口部から放出する固化処理方法であり、且つ、混合後の軟弱土の流動性が100mm以上である場合に、軟弱土の固化が促進される。
【選択図】 図3
Description
本発明は、鉄鋼精錬の際に発生する転炉スラグを用いて浚渫土などの軟弱土を固化する処理方法に関するものである。
軟弱な土壌などを硬化させて土地の有効利用を図る目的で、土壌に地盤改良材を混入する土木工事が行われている。この地盤改良材としては、一般にポルトランドセメントや高炉セメントが用いられている。これらのセメントは土壌を硬化する目的には有効であるが、地盤改良には多量の地盤改良材が必要であるため、より安価で有効な材料が求められていた。
そうした観点から、鉄鋼生産における副産物である製鋼スラグを利用した地盤改良材及び地盤改良方法が多数提案されている。例えば、特許文献1には、セメント5〜50質量部、鋼滓40〜80質量部、石膏(2水石膏換算)10〜30質量部よりなる地盤改良材が提案されており、特許文献2には、100μm以下の粉末に調製した転炉スラグと、高炉水砕スラグと、普通ポルトランドセメントとを、質量比で100:(20〜35):(5〜10)の割合で配合した固化材を使用して軟弱土を固化する方法が提案されている。
また、特許文献3には、転炉スラグとセメントと乳剤とを、自然土に混合して造成地を形成する方法が提案されており、特許文献4には、製鋼水滓乾燥物を30〜50質量%、石膏、石灰、セメント或いはセメントクリンカーの一種以上を5〜20質量%、残部を高炉水滓乾燥物とし、これらを粉砕・混合したヘドロ硬化材が提案されている。
特開昭54−113911号公報
特開昭56−41916号公報
特開昭60−133115号公報
特開昭61−238398号公報
しかしながら、これらの従来技術では、特に浚渫土などの軟弱土においては緩衝作用があるためにpHが上昇しにくく、そのため、セメントが少ない場合には固化しにくく、固化させるためには大量のセメントを使用する必要があった。その結果、セメントの大量使用により処理コストが上昇するという従来の基本的な問題は、解決されず依然として抱えていた。また、これらの従来技術では、石膏(特許文献1,4)や乳剤(特許文献3)を用いる必要があったり、転炉スラグを微粉砕(特許文献2)する必要があったりして、これらも処理コストを上昇させる要因となっていた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、大量のセメントを使用しなくても、また、石膏などの原材料を使用しなくても、製鋼スラグを用いて浚渫土などの軟弱土を、迅速に且つ安価に固化することのできる、軟弱土の固化処理方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る軟弱土の固化処理方法は、1m3 当たりの軟弱土に対し、遊離石灰を含有した、最大粒径が10mm以下である転炉スラグを20〜150kg、及び、高炉セメントを40〜100kg添加して、軟弱土と転炉スラグと高炉セメントとを混合することを特徴とするものである。
第2の発明に係る軟弱土の固化処理方法は、第1の発明において、軟弱土の固化処理方法が、開放した出口部を有する管の内部を通過する軟弱土に転炉スラグ及び高炉セメントを添加し、管内で軟弱土と転炉スラグと高炉セメントとを混合して前記出口部から放出する固化処理方法であり、且つ、混合後の軟弱土の流動性が100mm以上であることを特徴とするものである。
本発明によれば、遊離石灰(「free-CaO」ともいう)を含有する製鋼スラグを高炉セメントとともに軟弱土に添加するので、製鋼スラグ中の遊離石灰の溶出によってpHが上昇し、セメントが固まりやすくなる。特に、浚渫土は緩衝作用があるため、セメントを添加しただけではpHが上がりにくく、固化し難かったが、遊離石灰を含有する転炉スラグを添加することで迅速に且つ安価に浚渫土さえも固化させることが可能となる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明では、鉄鋼製造工程において、転炉を用いて溶銑を脱炭精錬する或いは溶銑を脱燐精錬する際に、副産物として発生する転炉スラグを、高炉セメントとともに浚渫土などの軟弱土に添加し、これらを混合して軟弱土を固化させる。添加された転炉スラグから遊離石灰が溶出することでpHが上昇し、pHが上昇することで高炉セメントの固化が促進され、これによって軟弱土の固化が促進される。
用いる転炉スラグの組成は特に限定するものでないが、転炉スラグは遊離石灰を含んでいることが必須であり、従って、スラグの塩基度(CaO/SiO2 )が遊離石灰の生ずる範囲である2.0以上であることが必要であり、3.0以上の塩基度の転炉スラグを用いることがより好ましい。塩基度が2.0以上であるならば、どのような成分であっても使用することができる。転炉スラグ中の遊離石灰は通常10質量%程度であり、5質量%以上の遊離石灰を含有する転炉スラグを使用することが好ましい。
転炉で発生したスラグを破砕し、10mm以下に調製したものを使用する。製鋼スラグの粒度が大きいと、製鋼スラグに含有される遊離石灰が溶出しにくく、pHが高くなりにくいので、製鋼スラグは10mm以下に破砕する必要があり、5mm以下とすれば更に好ましい。尚、本発明に示す粒子のサイズは、篩分機の目開き寸法で表示したものであり、例えば10mm以下のサイズとは、目開き寸法が10mmの篩を通過した粒子であり、10mm以上の長径を有する粒子であっても構わない。
この製鋼スラグを軟弱土1m3 当たり20kg〜150kgの範囲で添加する。この添加量が20kg未満の場合には、製鋼スラグの添加量が少なすぎて溶出する遊離石灰の絶対量が少なく、pHの上昇がそれほどなく、セメント固化の促進が期待できない。一方、この添加量が150kgを超える場合には、固化材から溶出するCaイオンと硫酸イオンとのバランスが悪くなって強度が低下してしまうために短期の固化が難しくなり、好ましくない。
使用する高炉セメントは、JIS−R5211で規定されるB種の高炉セメントを使用する。或いは、普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末とを、1:1程度の比率、例えば55:45程度の比率で混合したものを使用しても構わない。この高炉セメントを、軟弱土1m3 当たり40kg〜100kgの範囲で添加する。この添加量が40kg未満では、セメントの絶対量が少なく、軟弱土の固化に長時間を必要とする。一方、100kgを超えて添加した場合には、セメントのみで固化が可能であるが、長期強度が高くなり過ぎて地盤の掘り返しなどに困難を生じるほか、固化材費が高くなってしまい経済的でないことから、好ましくない。
製鋼スラグ及び高炉セメントを添加する際に、必要に応じて水を添加してもよい。その他の原材料は何ら添加する必要はない。
軟弱土に、製鋼スラグと高炉セメントとを添加する方法は、どのような方法でもよく、例えば、水を添加して製鋼スラグと高炉セメントとをスラリー状の地盤改質材とし、円筒形ケーシングを用いてスラリー状改質材を軟弱土に注入しながら、回転するケーシングの周辺部に装着させた攪拌翼で軟弱土とスラリー状改質材とを混合する方法などでもよい。但し、特に好ましくは、浚渫土を埋立地に処分する場合などのように、開放した出口部を有する管を介して軟弱土を放出する際に、本発明を適用することが好ましい。
即ち、開放した出口部を有する管の内部を通して軟弱土を埋立地などに投入処分する際に、管の内部を通過する軟弱土に、管の途中から所定量の製鋼スラグ及び高炉セメントを連続的に或いは間歇的に添加し、管を流れる軟弱土自体の混合作用によって添加した製鋼スラグ及び高炉セメントを軟弱土に混合させる方法である。この処理方法を、「管中混合処理工法」という。この場合、特に混合攪拌の工程を別に設けずとも、製鋼スラグ及び高炉セメントと、良く攪拌・混合された軟弱土を得ることができる。管から放出された軟弱土は、その時点から固化を開始する。
管中混合処理工法による処理の対象となる軟弱土は、流動性が100mm以上であることが好ましい。流動性が100mm未満の場合には、管を通して軟弱土を送ることが困難になり、管中混合処理工法自体ができなくなる恐れがあるからである。管中混合処理工法の場合も、この流動性を確保するために、必要に応じて水を添加する。
尚、本発明における流動性とは、内径(直径)が80mmで高さが80mmのアクリル製円筒を500mm四方のアクリル製平板の上に置き、混練した土壌をアクリル製円筒の内部に充填した後、アクリル製円筒を引き上げて水平方向に広がった土壌の直径を測定し、この直径(単位:mm)で表示したものである。水平方向に大きく広がる土壌ほど、つまり測定される直径が大きいものほど、流動性が高いということになる。このときの直径は平均的な直径を指し、測定方法としては種々あり得るが、簡便な方法としては最大直径と最小直径を測定し、平均するという方法が採用できる。
転炉スラグは、高炉セメントやポルトランドセメントなどに比べて極めて安価であり、従って、このようにして軟弱土を固化処理することにより、極めて安価に且つ迅速に軟弱土を固化させることが可能となる。また、従来、主に埋め立て用路盤材として使用されていた製鋼スラグの新たな用途が開発されることで、製鋼スラグの有効利用が促進され、省資源や環境保全に大いに貢献できる。
以下、本発明を、実施例を用いて更に詳細に説明する。岡山県高梁川河口から採取した浚渫土に、転炉スラグ及び高炉セメントを種々の配合割合で混合し、これを混練した後に成型して成型体の強度を測定する21回の試験(試験No.1〜21)を実験室内で行った。
浚渫土は、試験毎に水を添加して流動性がおよそ150mmになるように調整した。製鋼スラグは、塩基度(CaO/SiO2 )が3.0以上で、篩分機で5mm以下に調製したものを使用した。用いた高炉セメントは、普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末とが55:45の割合で配合された市販の高炉セメント(高炉セメントB種)である。これらの原材料を、流動性が120mm〜130mmとなるように適量の水を加えて室内(25℃)で混練し、混練後、内径(直径)が100mmで高さが200mmの型枠に充填した。充填後、合成樹脂フィルムで封緘し、室内(25℃)で養生した。1日養生した後、成型体の強度、即ち1日コーン指数を測定した。1日コーン指数は、JIS−A1228「締固めた土のコーン指数試験方法」に準拠して測定した。
また、比較のために、製鋼スラグを使用せずに製鋼スラグの代替として消石灰を使用した試験も合計9回実施した(試験No.22〜30)。試験No.22〜30では、製鋼スラグを使用しないこと以外は、試験No.1〜21に準じて実施した。
下記の表1に、各試験における原材料の配合量及び1日コーン指数の測定結果を示す。また、図1に、試験No.1〜6における転炉スラグ配合量と1日コーン指数との関係を示し、図2に、試験No.7〜12における転炉スラグ配合量と1日コーン指数との関係を示し、図3に、試験No.13〜21における転炉スラグ配合量と1日コーン指数との関係を示す。
表1及び図1〜3に示すように、高炉セメントの配合量によって1日コーン指数の絶対値には差が生ずるが、転炉スラグを浚渫土1m3 当たり20kg〜150kg添加することで、1日コーン指数が高炉セメントのみを配合した場合よりも高くなることが分かった。特に、試験No.19及び試験No.20のように、1日コーン指数が突出して改善される場合もあることが分かった。また、転炉スラグに比べると高価な消石灰を添加した場合と同等の強度が得られる場合もあることが分かった。尚、消石灰を添加した試験No.22〜30では、消石灰の添加量の増加に伴って1日コーン指数が低下した。また、表1の備考欄には、本発明範囲の試験には「本発明例」と表示し、それ以外の試験には「比較例」と表示した。
Claims (2)
- 1m3 当たりの軟弱土に対し、遊離石灰を含有した、最大粒径が10mm以下である転炉スラグを20〜150kg、及び、高炉セメントを40〜100kg添加して、軟弱土と転炉スラグと高炉セメントとを混合することを特徴とする、軟弱土の固化処理方法。
- 軟弱土の固化処理方法が、開放した出口部を有する管の内部を通過する軟弱土に転炉スラグ及び高炉セメントを添加し、管内で軟弱土と転炉スラグと高炉セメントとを混合して前記出口部から放出する固化処理方法であり、且つ、混合後の軟弱土の流動性が100mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の軟弱土の固化処理方法。
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