以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について、検査対象として表面にパターンが形成された基板すなわちマスク(例えば、ステンシルマスク)を検査する半導体検査装置として説明する。
図1及び図2Aにおいて、本実施形態の半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
本実施形態の半導体検査装置1は、複数枚のマスクMを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、マスクをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置された試料台50上に装填するローダー60と、主ハウジング30に設けられた電子線装置70と、を備え、それらは図1及び図2Aに示されるような位置関係で配置されている。
カセットホルダ
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のマスクMが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図2Aで鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、図2Aで実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置内の第1の搬送ユニットの回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は図1で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すれば良いので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
別の実施の態様では、図2Bに示すように、複数の300mm基板を箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(記載せず)に収納した状態で収容し、搬送、保管等を行うものである。この基板搬送箱24は、角筒状の箱本体501と基板搬出入ドア自動開閉装置に連絡されて箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬出入ドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類およびファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、基板Wを保持するための溝型ポケット(図示せず)、ULPAフィルタ505、ケミカルフィルタ506、ファンモータ507とから構成されている。この実施の態様では、ローダー60のロボット式の第1の搬送ユニット612により、基板を出し入れする。
なお、カセットc内に収納される基板すなわちマスクMは、検査を受けるマスクであり、そのような検査は、半導体製造工程中でマスクを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた基板すなわちマスク、表面に配線パターンが形成されたマスクが、カセット内に収納される。カセットc内に収容されるマスクMは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のマスクと後述する第1の搬送ユニットで保持できるように、第1の搬送ユニットのアームを上下移動できるようになっている。
ミニエンバイロメント装置
図1ないし図3において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての基板すなわちマスクを粗位置決めするプリアライナー25とを備えている。
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有していてい、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図3に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施形態では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がマスクに付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。マスク近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3ないし0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間内でなくその外側に設けてもよい。
排出装置24は、前記搬送ユニットのマスク搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたアライナー25は、マスクの外形を光学的に或いは機械的に検出してマスクの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナーは請求項に記載された発明の検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナー自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
なお、図示しないが、プリアライナーの下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナーから排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
主ハウジング
図1及び図2において、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置される試料台等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施形態において、ハウジング本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはマスク出し入れ用の出入り口325が形成されている。
なお、防振装置は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
ローダハウジング
図1、図2及び図4において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でマスクMのやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけば良い。
第1のローディングチャンバ41内には、複数(この実施形態では2枚)のマスクMを上下に隔てて水平の状態で支持するマスクラック47が配設されている。マスクラック47は、図5の示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にマスクMの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からマスクに接近させてアームによりマスクを把持するようになっている。
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10−5〜10−6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、マスクの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ内に収容されていて次に欠陥検査されるマスクをワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバを採用することによって、後述する電子線装置と共に、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
なお、電子線を使用する本発明の検査装置において、後述する電子光学系の電子源として使用される代表的な六硼化ランタン(LaB6)等は一度熱電子を放出する程度まで高温状態に加熱された場合には、酸素等に可能な限り接触させないことがその寿命を縮めないために肝要であるが、電子光学系が配置されているワーキングチャンバにマスクを搬入する前段階で上記のような雰囲気制御を行うことにより、より確実に実行できる。
試料台
ステージ装置すなわち試料台50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のマスク載置面551上にマスクMを解放可能に保持する。ホルダは、マスクを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。試料台50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたマスクを電子光学装置から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図1において上下方向)に、更にマスクの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてマスクの外形の位置を測定してマスクの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御する。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、試料台用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、試料台50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のもので良いので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
電子ビームに対するマスクの回転位置やX、Y位置を予め後述する信号検出系或いは画像処理系に入力することで得られる信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたマスクチャック機構は、マスクをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、マスクの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。マスクチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランクピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
なお、この実施形態では図2で左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
ローダー
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、には公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のマスクを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダに保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたマスクを1枚アームの上に載せ或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(図2に示すような状態)、アームがプリアライナー25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたマスクをプリアライナー25に載せる。プリアライナーから前記と逆にしてマスクを受け取った後はアームは更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のマスク受け47にマスクを受け渡す。なお、機械的にマスクを把持する場合にはマスクの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これはマスクには周縁部を除いて全面にパターン(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとパターンの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニットと構造が基本的に同じであり、マスクの搬送をマスクラック47と試料台の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置された試料台50上への及びその逆のマスクの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、マスクのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、マスクのマスクラックへの載置及びそこからの取り出し及びマスクの試料台への載置及びそこからの取り出しのときるだけである。したがって、大型のマスク、例えば直径30cmのマスクの移動もスムースに行うことができる。
マスクの搬送
次にカセットホルダに支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置された試料台50までへのマスクの搬送を順を追って説明する。
カセットホルダ10は、前述のように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
カセットが出入り口225に整合されると、カセットに設けられたカバー(図示せず)が開きまたカセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセット内及びミニエンバイロメント空間内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
一方第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM1の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているマスクのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきマスクとの上下方向の位置調整は、この実施形態では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダの昇降テーブルの上下動で行っても或いはその両者で行ってもよい。
アーム612によるマスクの受け取りが完了すると、アームは縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アームは伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたマスクをプリアライナー25の上に載せ、そのプリアライナーによってマスクの回転方向の向き(マスク平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると搬送ユニット61はアームの先端にプリアライナー25からマスクを受け取ったのちアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてマスクを第1のローディングチャンバ41内のマスクラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてマスクラック47にマスクが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
上記第1の搬送ユニットによるマスクの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置のハウジングの上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がマスクの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジングの底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のマスクラック47内に第1の搬送ユニット61によりマスクが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバの真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口434を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でマスク受け47から1枚のマスクを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。マスクの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めマスクラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームはワーキングチャンバ31内の試料台50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内の試料台では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図2で上方に移動し、また、Xテーブル53は図2で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバがワーキングチャンバの真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びてマスクを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内の試料台に接近する。そして試料台50の載置面551上にマスクを載置する。マスクの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
以上は、カセットc内のマスクを試料台上に搬送するまでの動作に付いて説明したが、試料台に載せられて処理が完了したマスクを試料台からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行って戻す。また、マスクラック47に複数のマスクを載置しておくため、第2の搬送ユニットでマスクラックと試料台との間でマスクの搬送を行う間に、第1の搬送ユニットでカセットとマスクラックとの間でマスクの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
具体的には、第2の搬送ユニットのマスクラック47に、既に処理済のマスクAと未処理のマスクBがある場合、
I.まず、試料台50に未処理のマスクBを移動し、処理を開始する。
II.この処理中に、処理済マスクAを、アームにより試料台50からマスクラック47に移動し、未処理のマスクCを同じくアームによりマスクラックから抜き出し、プリアライナで位置決めした後、ローディングチャンバ41のマスクラック47に移動する。
このようにすることで、マスクラック47の中は、マスクBを処理中に、処理済のマスクAが未処理のマスクCに置き換えることができる。
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、試料台50を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのマスクラック47からマスクを移動することで、複数枚のマスクを同じ処理することもできる。
図6において、主ハウジングの支持方法の変形例30bがで示されている。図6に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの図6に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本外のみがハウジング支持装置によって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。
上記の実施例によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(ロ)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(ハ)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを一体的に振動防止装置を介して支持したので外部の環境に影響されずに試料台への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
電子線装置
主ハウジング30又は30bに設けられた電子線装置70(図1及び図6参照)のより詳細な実施の形態を図7に示す。図7は、下側に試料としてのマスクM、例えばステンシルマスク800を照射する電子銃711などを備えた照射光学系710を配し、この照射光学系710の上には、試料台50に支持されるステンシルマスク800と、更にその上側に、このステンシルマスクを透過した電子線を検出する検出器770を配置する。以下説明する実施形態は、下部に位置する電子銃711から上向きに電子線が照射される形態である。もちろん、上部に電子銃711を配置して下向きに電子線を照射する形態を採用してもよい。
電子銃711は、電子放出材(カソード)711aを加熱することにより電子を放出する熱電子線源タイプが用いられている。カソードとしての電子放出材(エミッタ)は、ランタンヘキサボライド(LaB6)が用いられている。高融点(高温での蒸気圧が低い)で仕事関数の小さい材料であれば、他の材料を使用することが可能である。本実施形態においては、電子銃711は、先端曲率半径15μmRと小さい単結晶LaB6カソード711aを有し、空間電荷制限条件で動作させる事により、高輝度でしかもショット雑音の小さい電子線を放出することができるようになっている。
また、ウェーネルト711bとアノード711c間の距離を8mm以上に大きくし、電子銃電流を高輝度になる条件を探せば輝度をラングミュア制限より大きい値にすることもできる。
このように、本実施形態における電子銃711は、熱電子放出カソード711aを有し、空間電荷制限条件にて動作するものが望ましい。また、電子銃711には、FE(フィールドエミッタ)、TFE(サーマルフィールドエミッタ)、ショットキーカソードを有する光源像の小さな電子銃711を用いてもよい。なお、上記「空間電荷制限条件」とは、カソードの温度をある一定以上に高めて、電子線の放出量がカソードの温度に影響されにくい条件をいう。
上記電子銃711の照射方向に向けて(図中上向き)、第1の成形開口713、第1の電子レンズ715が設けられている。第1の電子レンズ715は、第1の成形開口713を通過した像を第2の成形開口719(後述)に結像させる。この第1の電子レンズ715の上側であって、電子線の照射経路の周囲に第1の偏向器717が設けられている。更に、第1の偏向器717の上側に、第2の成形開口719、第1のコンデンサレンズ721、第3の形成開口723が設けられていると共に、この第3の形成開口723の周囲に第2の偏向器725が設けられている。
電子銃711から放出された電子線は、第1の成形開口713と第2の成形開口719とを通ることにより所望の形状に成形された可変成形ビームとなり、ステンシルマスク800の被検査領域のある瞬間での領域が照射される。この点についてさらに説明すると、第1の成形開口716を通ってきた電子線は、偏向器717で偏向させられ、これにより、第2の成形開口719への照射位置が変わり、電子線を所望の形状に成形できるようになっている。具体的には、所定面積を有する細長い矩形状の電子線が成形されるようにすることが好ましい。もっとも、正方形状の電子線を成形するようにしてもよい。
このように本実施形態においては、第1の偏向器717を調節することにより、照射領域を調整することが可能であるが、第1と第2の成形開口713、719を寸法の異る複数個の開口で代用させ、機械的に照射領域を調整してもよい。
なお、マスクを照明する方式は図ではケーラ照明方式としたが、クリティカル照明でも問題はない。
上記したように、本実施形態における照射光学系710においては、少なくとも1個の成形開口713、719を有し、該成形開口の像を試料であるステンシルマスク800の面上に結像させる形態が望ましい。また、光軸801の近くに上記成形開口713、719を複数有し、かつ、この成形開口713、719の相互の重なりを変化させることにより試料であるステンシルマスク800を照射する面積を変更可能とする形態も望ましい。
上記第3の成形開口723はステンシルマスク800を照明する電子線の平行度を良くするためのものでここに電子銃711が作るクロスオーバ像が結像される。走査手段としての第2の偏向器725は、主視野内を分割し、ステップアンドリピート的に照明領域を移動させ、その移動に応じてステンシルマスク800を透過した後の光学系の像面湾曲収差と非点収差を補正する場合に必要な偏向器である。この点について、より詳細に説明すると、第2の偏向器725は、電子線のマスク上位置をステップアンドリピート的に移動させる。例えば、第2の偏向器725により、一次電子ビームは、+X方向と−X方向に走査させられる。この場合、マスク800を保持する試料台50を+Y方向と−Y方向に移動させる。これにより、マスク88全体を走査することができる。像面湾曲収差と非点収差とを補正するために、電子線の位置に応じてタブレットレンズ(マスク800の下流側にある電子レンズ731a、731b)731に加える電圧条件を変更する。例えば、像面湾曲収差を補正するために、電子線が光軸にあるとき、レンズに加える電圧を高くして焦点距離が短くなるようにし、電子線が光軸から離れた端にあるとき、レンズに加える電圧を低くして焦点距離が長くなるようにする。
第2の偏向器725は、上記補正を行わない場合でも、ステンシルマスク800の面上を走査し、そのSEM像を得たりして、レジストレーションを行うのに使用することもできる。そのようなレジストレーションを行う場合、ステンシルマスク800の電子銃711側に検出器727を設け、電子線(換言すれば、一次電子線)のステンシルマスク800への入射により放出される二次電子や反射される反射電子を検出器727で検出するようにすることが好ましい。
なお、上記各種レンズ(715、721)のいずれかの焦点距離を変えることにより小径のクロスオーバ像を、ステンシルマスク800の試料面上に形成、走査するようにしてもよい。また、上記第1と第2の成形開口(713、719)の重なりを小さくして小径の電子線を形成し、この電子線を走査させるレジストレーションに利用するようにしてもよい。
上記成形開口713、719を通過し、試料であるステンシルマスク800を照射する電子線の照射領域は、長辺と短辺を有する長方形状が望ましい。そして、第2の偏向器725により上記照射領域の長辺方向の移動を行い、上記試料台50を短辺方向に移動させることで、上記照射領域の短辺方向の連続移動を行う。試料台を連続移動させながら検査を行うので、主視野の幅が小さくても高スループットで検査が行える。
ステンシルマスク800を照射する電子線(図中、その主光線をB1、B2、B3と示す)は、ステップ的に走査しても、連続的に走査してもよい。
上記ステンシルマスク800の上方側換言すれば下流側には、第1のダブレットレンズ731が配置されており、第1のダブレットレンズ731は2つの電子レンズ731a、731bから構成されている。第1のダブレットレンズ731の間には、NA開口733が設けられている。第1のダブレットレンズ731の上方側には、第2のダブレットレンズ735が設けられており、更に、第2のダブレットレンズ735の下流側には検出器770が設けられている。
第2のダブレットレンズ735は、2つの電子レンズ735a、735bから構成されている。
ステンシルマスク800を透過した電子線は、照射の開口角α’と同じ角度(図中、符号αと明記する。)で広がり第1のダブレットレンズ731に入射する。この時、ステンシルマスク800の側面で散乱された電子は、前記NA開口733により取り除かれる。また、X線マスクの様に薄いメンブレン上にパターンが形成されているマスクを検査する場合には、メンブレンで大きい角度で散乱された電子線をこのNA開口で取り除く作用がある。
第1のダブレットレンズ731を通過後、ステンシルマスクの透過像が形成される。この透過像を形成する領域を透過像形成領域737と示す。形成された透過像はさらに第2のダブレットレンズ735で拡大され、検出器770を照射する。
検出器770は、照射レンズ系としてのMCP(マルチチャンネルプレート)771と、FOP(ファイバオプティカルプレート)775とを備えている。電子線が照射される方向(図中上向き)に沿って、MCP771及びFOP775の順で設けられている。検出器770は、更に、照射レンズ系としての真空窓777と、リレー光学系としての光学レンズ779、複数の画素を有する検出センサとしてのTDI検出器781とを備えている。第2のダブレットレンズ735で拡大されたステンシルマスクの透過像は、約1,000倍に拡大されてMCP771に照射され、MCP771にこの約約1,000倍の拡大像が形成される。この拡大像はMCP771で増倍され、このMCP771で増倍された像を形成する電子線は、FOP775の試料側に塗られたシンチレータで光の像に変えられる。その像は真空窓777で大気外に取り出され光学レンズ779で倍率を縮小され、TDI検出器781に結像される。なお、このように光学レンズ779を用いる形態では、必ずしもFOPを用いる必要はない。
上記構成により、一次電子線を斜め上方から入射させE×B分離器を用いて試料に垂直入射させ、試料から放出された二次電子線が一次電子線の入射光路と共通の光路を通る方式に比べて、この光学系では照射ビームと透過ビームは共通の光路を通らないので、空間電荷効果による透過ビームのボケは大幅に改善される。ステンシルマスクを透過した電子は100%近く結像に寄与するのでS/N比の良い信号が得られる。
本実施形態における電子線装置は、検出器770により検出された電子から、試料であるステンシルマスク800の欠陥を検出することに利用可能である。
上記したように、本実施形態においては、試料を通過した電子線を上記電子レンズ(ダブレットレンズ731、737)で拡大し、これを複数の画素を有する検出器770で検出して試料の画像を形成する。更に、本実施形態は、検出器770を照射する電子線が平行度の良い電子線であることを特徴とし、そのための具体的構成として、上記第1のダブレットレンズ731の間であって、かつ、電子線の主光線B1、B2、B3の主光線が交わる位置にNA開口733を設ける。そして、このNA開口733を通過した電子線で検出器770を照射する。
このNA開口733を設ける望ましい実施形態は、上記したとおり二つのダブレットレンズ731、737と一枚の成形開口(第2の成形開口719)を有し、かつ、上記成形開口から出た主光線(B1、B2、B3)が試料(ステンシルマスク800)に平行に照射される形態である。更に、上記照射光学系710は、照射レンズ系としてのMCP771と真空窓775の入射ひとみを上記第3の成形開口723に有し、光源像は上記入射ひとみに結像されている。
本発明の望ましい実施形態は、上記ダブレットレンズ731、737の拡大率を、上記電子線の照射領域の大きさに対応させて可変とする。可変とする具体的構成としては、ダブレットレンズを交換するほか、一組のダブレットレンズにおいて、前後のレンズの距離を調節する、また、第1と第2のダブレットレンズ731、737の相互距離を調節する形態などで実施可能である。
上記検出器770における検出センサには、CCD検出器(CCDセンサ)を用いることが可能であり、シンチレータが作る像の大きさを光学レンズ779で調節してCCD検出器におけるCCD面に結像させることも可能である。CCD検出器を用いることで安価に製造可能となるといった利点がある。
本発明における電子線装置の望ましい構成例を以下説明する。
I.上記電子銃711を試料の下側に、上記検出器770を試料の上側に配置する。
II.電子銃711と検出器770との間に、上記電子線を拡大する拡大レンズを複数備える。上記実施形態では、二つのダブレットレンズ(731、737)を設ける。そして、試料を通過した電子線を最初に拡大するレンズをダブレットレンズとする。上記実施形態では、第1のダブレットレンズ731が該当する。これにより、倍率の色収差と歪が補正されボケが小さく歪の小さい像が得られる。
III.検出器770において、MCP771とFOP775の試料側に設けられたシンチレータを真空中とし、その後方に真空窓777、リレー光学系としての光学レンズ779、検出センサ(CCD検出器、TDI検出器781)の順に配置する。
IV.検出器770において、リレー光学系及びCCD検出器、または、リレー光学系及びTDI検出器を真空中に配置する。また、本発明の実施形態としては、電子線装置全体、もしくは、検出器770全体を真空中に配置してもよい。
V.検出器770における検出センサには、MCP,EB−CCD検出器、EB−TDI検出器などを用いてもよい。
VI.上記電子線装置では、複数の画素から同時に信号を取るので、各画素を100KHzで動作させても、2000個の画素から同時に信号を取ると装置の等価周波数は200MHz以上となる。
VII.一つの電子線装置において、複数の照射光学系700と、複数の検出器770を設け、照射光学系と検出器とをそれぞれ対応させて、試料の欠陥を検出する。
検査装置の変形例
図8は、本発明の変形例による欠陥検査装置の概略構成を示す。
この欠陥検査装置は、上述した電子線装置(図7)70を用いた検査装置である。この検査装置は、図8中右側に示す制御部1016と、図8中左側に示す電子線装置70により構成される。電子線装置は図7と同様に、電子線を放出する電子銃711を含む照射光学系710を下部に設け、その上に試料としてのステンシルマスク800とそれを支える試料台50を設ける。更に、放出された電子線を拡大する拡大レンズとしてのダブレットレンズ731、737を設け、最上部に検出器770を設ける。そして、この検出器770は、装置全体を制御すると共に、検出器770により検出された電子画像に基づいてステンシルマスク800の欠陥を検出する処理を実行する制御部1016に接続される。
検出器770は、結像された電子画像を後処理可能な信号に変換することができる限り、任意の構成とすることができる。例えば、図9にその詳細を示すように、検出器770は、マルチチャンネルプレート771と、蛍光面772と、リレー光学系773と、多数のCCD素子からなる撮像センサ775と、を含んで構成することができる。マルチチャンネルプレート771は、プレート内に多数のチャンネルを備えており、結像された電子が該チャンネル内を通過する間に、更に多数の電子を生成させる。即ち、電子を増幅させる。蛍光面772は、増幅された電子によって蛍光を発することにより電子を光に変換する。リレーレンズ773がこの蛍光をCCD撮像センサ775に導き、CCD撮像センサ775は、ステンシルマスク800表面上の電子の強度分布を素子毎の電気信号即ちデジタル画像データに変換して制御部1016に出力する。
制御部1016は、図8に例示されたように、汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体1014と、本体1014の処理結果を表示するCRT1015と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部1018と、を備える、勿論、欠陥検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどから制御部1016を構成してもよい。
制御部本体1014は、図示しないCPU、RAM、ROM、ハードディスク、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成される。RAM若しくはハードディスクなどのメモリ上には、検出器770から受信した電気信号即ちステンシルマスク800を透過した電子画像のデジタル画像データを記憶するための電子画像記憶領域1008が割り当てられている。また、ハードディスク上には、予め欠陥の存在しない試料(ステンシルマスク)の基準画像データを記憶しておく基準画像記憶部1013が存在する。更に、ハードディスク上には、欠陥検査装置全体を制御する制御プログラムの他、記憶領域1008から電子画像データを読み出し、該画像データに基づき所定のアルゴリズムに従ってステンシルマスク800の欠陥を自動的に検出する欠陥検出プログラム1009が格納されている。この欠陥検出プログラム1009は、詳細を更に後述するように、基準画像記憶部1013から読み出した基準画像と、実際に検出された電子線画像とをマッチングして、欠陥部分を自動的に検出し、欠陥有りと判定した場合、オペレータに警告表示する機能を有する。このとき、CRT1015の表示部に電子画像1017を表示するようにしてもよい。
次に、該実施例による欠陥検査装置の作用を図10乃至図12のフローチャートを例にして説明する。
先ず、図10のメインルーチンの流れに示すように、検査対象となるステンシルマスク800を試料台50の上にセットする(ステップ1300)。これは、前述したようにローダーに多数格納されたマスク全てを一枚毎に自動的に試料台50にセットする形態であってもよい。
次に、ステンシルマスク800表面のXY平面上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得する(ステップ1304)。これら画像取得すべき複数の被検査領域とは、図13に示すように、例えばマスク検査表面1034上に、参照番号1032a、1032b、...1032k、...で示す矩形領域のことであり、これらは、マスクの検査パターン1030の回りで、部分的に重なり合いながら位置がずらされていることがわかる。例えば、図14に示されたように、16個の被検査領域の画像1032(被検査画像)が取得される。ここで、図14に示す画像は、矩形の桝目が1画素(或いは、画素より大きいブロック単位でもよい)に相当し、このうち黒塗りの桝目がステンシルマスク800上のパターンの画像部分に相当する。このステップ1304の詳細は図11のフローチャートで後述する。
次に、ステップ1304で取得した複数の被検査領域の画像データを記憶部1013に記憶された基準画像データ(パターンデータ)と、各々比較照合し(図10のステップ1308)、上記複数の被検査領域により網羅されるマスク検査面に欠陥が有るか否かが判定される。この工程では、いわゆる画像データ同士のマッチング処理を実行するが、その詳細については図12のフローチャートで後述する。
ステップ1308の比較結果より、上記複数の被検査領域により網羅されるマスク検査面に欠陥が有ると判定された場合(ステップ1312肯定判定)、オペレータに欠陥の存在を警告する(ステップ1318)。警告の方法として、例えば、CRT1015の表示部に欠陥の存在を知らせるメッセージを表示したり、これと同時に欠陥の存在するパターンの拡大画像1017を表示してもよい。このような欠陥マスクを直ちに試料室31から取り出し、欠陥の無いマスクとは別の保管場所に格納してもよい(ステップ1319)。
ステップ1308の比較処理の結果、ステンシルマスク800に欠陥が無いと判定された場合(ステップ1312否定判定)、現在検査対象となっているステンシルマスク800について、検査すべき領域が未だ残っているか否かが判定される(ステップ1314)。検査すべき領域が残っている場合(ステップ1314肯定判定)、試料台50を駆動し、これから検査すべき他の領域が電子線の照射領域内に入るようにステンシルマスク800を移動させる(ステップ1316)。その後、ステップ1302に戻って当該他の検査領域に関して同様の処理を繰り返す。
検査すべき領域が残っていない場合(ステップ1314否定判定)、或いは、欠陥マスクの抜き取り工程(ステップ1319)の後、現在検査対象となっているステンシルマスク800が、最終のマスクであるか否か、即ち図示しないローダーに未検査のマスクが残っていないか否かが判定される(ステップ320)。最終のマスクでない場合(ステップ1320否定判定)、検査済みマスクを所定の格納箇所に保管し、その代わりに新しい未検査のマスクを試料台50にセットする(ステップ1322)。その後、ステップ1302に戻って当該マスクに関して同様の処理を繰り返す。最終のマスクであった場合(ステップ1320肯定判定)、検査済みマスクを所定の格納箇所に保管し、全工程を終了する。
次に、ステップ1304の処理の流れを図11のフローチャートに従って説明する。
図11では、先ず、画像番号iを初期値1にセットする(ステップ1330)。この画像番号は、複数の被検査領域画像の各々に順次付与された識別番号である。次に、セットされた画像番号iの被検査領域について画像位置(Xi,Yi)を決定する(ステップ1332)。この画像位置は、被検査領域を画定させるための該領域内の特定位置、例えば該領域内の中心位置として定義される。現時点では、i=1であるから画像位置(X1,Y1)となり、これは例えば図13に示された被検査領域1032aの中心位置に該当する。全ての被検査画像領域の画像位置は予め定められており、例えば制御部1016のハードディスク上に記憶され、ステップ1332で読み出される。
次に、図8の照射光学系710の第2の偏向器725(図7参照)を通過する電子線が、ステップ1332で決定された画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域に照射されるように、第2の偏向器725に電位を加える(図11のステップ1334)。
次に、電子銃711から電子線を放出し、セットされたステンシルマスク800表面上に照射する(ステップ1336)。このとき、電子線は、第2の偏向器725の作り出す電場によって偏向され、マスク検査表面1034上の画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域全体に亘って照射される。画像番号i=1の場合、被検査領域は1032aとなる。
ステンシルマスク800を透過した電子線は、ダブレットレンズ731、737により所定の倍率で検出器770に結像される。検出器770は、結像された電子線を検出し、検出素子毎の電気信号即ちデジタル画像データに変換出力する(ステップ1338)。そして、検出した画像番号iのデジタル画像データを電子画像記憶領域1008に転送する(ステップ1340)。
次に、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ1342)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップ1344)。このiMAXは、取得すべき被検査画像の数であり、図14の上述した例では、「16」である。
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ1344否定判定)、再びステップ1332に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像位置(Xi+1,Yi+1)を再び決定する。この画像位置は、前のルーチンで決定した画像位置(Xi,Yi)からX方向及び/又はY方向に所定距離(ΔXi,ΔYi)だけ移動させた位置である。図8の例では、被検査領域は、(X1,Y1)からY方向にのみ移動した位置(X2,Y2)となり、破線で示した矩形領域1032bとなる。なお、(ΔXi,ΔYi)(i=1,2,...iMAX)の値は、マスク検査面1034のパターン1030が検出器770の視野から実際に経験的にどれだけずれるかというデータと、被検査領域の数及び面積から適宜定めておくことができる。
そして、ステップ1332乃至1342の処理をiMAX個の被検査領域について順次繰り返し実行する。これらの被検査領域は、図13に示すように、k回移動した画像位置(Xk,Yk)では被検査画像領域1032kとなるように、ステンシルマスク800の検査面1034上で、部分的に重なり合いながら位置がずらされていく。このようにして、図14に例示した16個の被検査画像データが画像記憶領域1008に取得される。取得した複数の被検査領域の画像1032(被検査画像)は、図14に例示されたように、マスク検査面1034上のパターン1030の画像1030aを部分的若しくは完全に取り込んでいることがわかる。
インクリメントした画像番号iがiMAXを越えた場合(ステップ1344肯定判定)、このサブルーチンをリターンして図37のメインルーチンの比較工程(ステップ308)に移行する。
なお、ステップ1340でメモリ転送された画像データは、検出器770により検出された各画素毎の電子の強度値(いわゆるベタデータ)からなるが、後段の比較工程(図37のステップ1308)で基準画像とマッチング演算を行うため、様々な演算処理を施した状態で記憶領域1008に格納しておくことができる。このような演算処理には、例えば、画像データのサイズ及び/又は濃度を基準画像データのサイズ及び/又は濃度に一致させるための正規化処理や、所定画素数以下の孤立した画素群をノイズとして除去する処理などがある。更には、単純なベタデータではなく、高精細パターンの検出精度を低下させない範囲で検出パターンの特徴を抽出した特徴マトリクスにデータ圧縮変換しておいてもよい。このような特徴マトリクスとして、例えば、M×N画素からなる2次元の被検査領域を、m×n(m<M,n<N)ブロックに分割し、各ブロックに含まれる画素の二次電子強度値の総和(若しくはこの総和値を被検査領域全体の総画素数で割った正規化値)を、各マトリックス成分としてなる、m×n特徴マトリックスなどがある。この場合、基準画像データもこれと同じ表現で記憶しておく。本発明の実施形態でいう画像データとは、単なるべタデータは勿論のこと、このように任意のアルゴリズムで特徴抽出された画像データを包含する。
次に、ステップ1308の処理の流れを図12のフローチャートに従って説明する。
先ず、制御部1016のCPUは、基準画像記憶部1013(図8)から基準画像データをRAM等のワーキングメモリ上に読み出す(ステップ1350)。この基準画像は、図14では参照番号1036で表される。そして、画像番号iを1にリセットし(ステップ1352)、記憶領域1008から画像番号iの被検査画像データをワーキングメモリ上に読み出す(ステップ1354)。
次に、読み出した基準画像データと、画像iのデータとをマッチングして、両者間の距離値Diを算出する(ステップ1356)。この距離値Diは、基準画像と、被検査画像iとの間の類似度を表し、距離値が大きいほど基準画像と被検査画像との差異が大きいことを表している。この距離値Diとして類似度を表す量であれば任意のものを採用することができる。例えば、画像データがM×N画素からなる場合、各画素の二次電子強度(又は特徴量)をM×N次元空間の各位置ベクトル成分とみなし、このM×N次元空間上における基準画像ベクトル及び画像iベクトル間のユークリッド距離又は相関係数を演算してもよい。勿論、ユークリッド距離以外の距離、例えばいわゆる市街地距離等を演算することもできる。更には、画素数が大きい場合、演算量が膨大になるので、上記したようにm×n特徴ベクトルで表した画像データ同士の距離値を演算してもよい。
次に、算出した距離値Diが所定の閾値Thより小さいか否かを判定する(ステップ1358)。この閾値Thは、基準画像と被検査画像との間の十分な一致を判定する際の基準として実験的に求められる。
距離値Diが所定の閾値Thより小さい場合(ステップ1358肯定判定)、当該ステンシルマスク800の当該検査面1034には「欠陥無し」と判定し(ステップ1360)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像のうち1つでも基準画像と略一致したものがあれば、「欠陥無し」と判定する。このように全ての被検査画像とのマッチングを行う必要が無いので、高速判定が可能となる。図14の例の場合、3行3列目の被検査画像が、基準画像に対して位置ずれが無く略一致していることがわかる。
距離値Diが所定の閾値Th以上の場合(ステップ1358否定判定)、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ1362)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップ1364)。
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ1364否定判定)、再びステップ1354に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像データを読み出し、同様の処理を繰り返す。
画像番号iが一定値iMAXを越えた場合(ステップ1364肯定判定)、当該マスクの当該検査面1034には「欠陥有り」と判定し(ステップ1366)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像の全てが基準画像と略一致していなければ、「欠陥有り」と判定する。
以上が試料台の各実施形態であるが、本発明は、上記例にのみ限定されるものではなく本発明の要旨の範囲内で任意好適に変更可能である。
例えば、被検査試料として半導体マスクを例に掲げたが、本発明の被検査試料はこれに限定されず、電子線によって欠陥を検出することができる任意のものが選択可能である。
また、本発明は、電子以外の荷電粒子線を用いて欠陥検出を行う装置にも適用できるばかりでなく、試料の欠陥を検査可能な画像を取得できる任意の装置にも適用可能である。
また、上記実施形態では、画像データ同士のマッチングを行う際に、画素間のマッチング及び特徴ベクトル間のマッチングのいずれかとしたが、両者を組み合わせることもできる。例えば、最初、演算量の少ない特徴ベクトルで高速マッチングを行い、その結果、類似度の高い被検査画像については、より詳細な画素データでマッチングを行うという2段階の処理によって、高速化と精度とを両立させることができる。
また、本発明の実施形態では、被検査画像の位置ずれを電子線の照射領域の位置ずらしのみで対応したが、マッチング処理の前若しくはその間で画像データ上で最適マッチング領域を検索する処理(例えば相関係数の高い領域同士を検出してマッチングさせる)と本発明とを組み合わせることもできる。これによれば、被検査画像の大きな位置ずれを本発明による一次電子線の照射領域の位置ずらしで対応すると共に、比較的小さな位置ずれを後段のデジタル画像処理で吸収することができるので、欠陥検出の精度を向上させることができる。
また、図10のフローチャートの流れも、これに限定されない。例えば、ステップ1312で欠陥有りと判定された試料について、他の領域の欠陥検査は行わないことにしたが、全領域を網羅して欠陥を検出するように処理の流れを変更してもよい。また、電子線の照射領域を拡大し1回の照射で試料のほぼ全検査領域をカバーできれば、ステップ1314及びステップ1316を省略することができる。
以上詳細に説明したように本実施例の欠陥検査装置によれば、試料上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得し、これらの被検査領域の画像と基準画像とを比較することによって、試料の欠陥を検査するようにしたので、被検査画像と基準画像との位置ずれによる欠陥検査精度の低下を防止できる、という優れた効果が得られる。
更に本発明のデバイス製造方法によれば、上記のような欠陥検査装置を用いてマスクの欠陥検査を行うようにしたので、製品の歩留まりの向上及び欠陥製品の出荷防止が図れる、という優れた効果が得られる。
電子線装置の他の実施の形態
図15Aは単ビームによるステンシルマスク検査装置の実施の形態である。電子銃711から放出された電子線はコンデンサレンズ751と対物レンズ753で縮小され、ステンシルマスク800に合焦され、偏向器755,757でステンシルマスク800上を二次元走査する。ステンシルマスク800の穴部を透過した電子はMCP771で検出され、アンプ761で増幅、かつ、AD変換され、画像形成回路763で画像データが形成される。この画像データはCADで作られた設計データと比較され、異る座標が出力される。
この実施形態においては、例えば、偏向器755,757で、X方向に単ビームを走査し、試料台50をY方向に移動させるようにする。勿論、偏向器755,757で、Y方向に単ビームを走査し、試料台50をX方向に移動させるようにしてもよい。
図15Bは前記図15Aと比較して電子線の数を複数にした場合の実施の形態である。複数のエミッション領域を有するLaB6カソードを持つ電子銃711’から放出された複数の電子線はコンデンサレンズ752で互の距離を拡大され、第2のコンデンサレンズ754の上に設けたマルチ開口756を照射する。マルチ開口756で成形された電子線は縮小レンズ758と対物レンズ760とでステンシルマスク800に合焦される。ステンシルマスク800を通過した電子は拡大レンズ762、764によって拡大され、複数の検出器(各検出器は符号a〜fとして示し、全体を770’と示す。)で検出され、各検出器に付属のA/D変換器768でデジタル信号にされ、欠陥検査処理が行われる。マルチビームを作る光軸を複数にすると、収差が低減され、各ビームを細く絞ることができる。
本実施形態においては、第2のコンデンサレンズ754と縮小レンズ758との間に、偏向器755’と757’が設けられている。当該偏向器755,757により、ステンシルマスク800に合焦された複数の電子線は、ステンシルマスク800上を二次元に走査される。本実施形態においても、例えば、偏向器755’、757’で、複数の電子線をX方向にを走査し、試料台50をY方向に移動させるようにする。勿論、偏向器755’,757’で、Y方向に複数の電子線をを走査し、試料台50をX方向に移動させるようにしてもよい。
複数の電子線の横断面形状は、円形でも矩形でもよい。しかし、X方向にかかる複数の電子線を走査する場合、X方向の電子間距離は同一であることが望ましい。
上記実施形態によれば、下記の効果を奏することができる。
1.照射電子線の平行度を良くする即ち、開口度αを小さくするので拡大光学系の収差が小さく高解像度の像が得られる。
2.照射光学系はレンズ2段でもテレセントリック光学系になるので、光学系が簡単でしかも、試料のZ方向位置の変動の許容法は大きい。またαが小さいので、焦点深度も深い。
3.試料台を連続移動させながら検査を行うので、主視野の幅が小さくても高スループットで検査が行える。
4.主視野内をステップ又は連続移動的に走査し、ダイナミック収差補正を行えば、αを大きくしてビーム電流を大きくしても低収差を実現できる。
5.シンチレータ像をCCDに結像させる倍率を光学レンズで調整するので一次系の倍率をきちんと合せる必要がない。
6.LaB6電子銃を高輝度条件で使ったり、FE電子銃を使うことにより、高解像度、高スループットが可能である。画素当りの等価周波数を800MHz以上も可能である。
7.電子銃を下、検出器を上にする事により、マスク位置が下り、振動に強くなる。
8.初段のレンズをダブレットレンズにすることで、倍率の色収差と歪が補正されボケが小さく歪の小さい像が得られる。
9.拡大レンズ系の倍率を可変にしたので、等倍マスク、1/4縮のマスク、1/10縮小等のキャラクターマスクの検査すべてを能率良く検査できる。
10.TDI検出器を大気外とすることで高速の信号を容易に取り扱える。
11.照明系のレンズ条件を変えることにより、クロスオーバ縮小の小ビームとできるので、レジストレーションを高輝度で行える。
12.電子線を用いることで、光を用いるより高輝度の検査が行える。これにより、欠陥製品を製造する事故が減らせる。
13.画像データとパターンデータとを比較するので、近接効果補正された結果、正しく補正されているか検査できる。
デバイス製造方法
次に図16及び図17を参照して本発明による半導体デバイスの製造方法の実施例を説明する。
図16は、本発明による半導体デバイスの製造方法の一実施例を示すフローチャートである。この実施例の製造工程は以下の主工程を含んでいる。
(1)ウエハを製造するウエハ製造工程(又はウエハを準備するウエハ準備工程)(ステップ1400)
(2)露光に使用するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)(ステップ1401)
(2’)製造したマスクの検査工程(ここで、上記電子線装置を利用した検査装置を用いる。)
(3)ウエハに必要な加工処理を行うウエハプロセッシング工程(ステップ1402)
(4)ウエハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にならしめるチップ組立工程(ステップ1403)
(5)できたチップを検査するチップ検査工程(ステップ1404)
なお、上記のそれぞれの主工程は更に幾つかのサブ工程からなっている。
これらの主工程中の中で、半導体デバイスの性能に決定的な影響を及ぼすのが(3)のウエハプロセッシング工程である。この工程では、設計された回路パターンをウエハ上に順次積層し、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウエハプロセッシング工程は以下の各工程を含んでいる。
(A)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、或いは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)
(B)この薄膜層やウエハ基板を酸化する酸化工程
(C)薄膜層やウエハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストパターンを形成するリソグラフィー工程
このリソグラフィー工程で用いられるマスクには、上記検査装置で検査されたマスクを用いる。
(D)レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
(E)イオン・不純物注入拡散工程
(F)レジスト剥離工程
(G)加工されたウエハを検査する工程
なお、ウエハプロセッシング工程は必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
図17Aは、図16のウエハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程を示すフローチャートである。このリソグラフィー工程は以下の各工程を含む。
(a)前段の工程で回路パターンが形成されたウエハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程(ステップ1500)
(b)レジストを露光する工程(ステップ1501)
(c)露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程(ステップ1502)
(d)現像されたレジストパターンを安定化するためのアニール工程(ステップ1503)
上記の半導体デバイス製造工程、ウエハプロセッシング工程、リソグラフィー工程については、周知のものでありこれ以上の説明を要しないであろう。
上記(2)−(2’)の検査工程、及び、上記リソグラフィー工程に本発明に係る欠陥検査方法、欠陥検査装置を用いると、微細なパターンを有するステンシルマスクでも、スループット良く検査できるので、全数検査が可能となり、欠陥製品の製造防止が可能と成る。
検査手順
上記(2)−(2’)の検査工程における検査手順について述べる。
一般に電子線を用いた欠陥検査装置は高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、現状では最も検査が必要と考えられている重要な工程(例えばエッチング、成膜、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理等)の後に使用されている。
検査されるマスクは大気搬送系及び真空搬送系を通して、超精密X−Yステージ上に位置合わせ後、静電チャック機構等により固定され、以後、(図17B)の手順に従って欠陥検査等が行われる。はじめに光学顕微鏡により、必要に応じて各ダイの位置確認や、各場所の高さ検出が行われ記憶される。光学顕微鏡はこの他に欠陥等の見たい所の光学顕微鏡像を取得し、電子線像との比較等にも使用される。次にマスクの種類(どの工程後か、マスクのサイズは20cmか30cmか等)に応じたレシピの情報を装置に入力し、以下検査場所の指定、電子光学系の設定、検査条件の設定等を行なった後、画像取得を行ないながら通常はリアルタイムで欠陥検査を行なう。セル同士の比較、ダイ比較等が、アルゴリズムを備えた高速の情報処理システムにより検査が行なわれ、必要に応じてCRT等に結果を出力や、メモリーへ記憶を行なう。欠陥にはパーティクル欠陥、形状異常(パターン欠陥)、及び電気的(配線又はビア等の断線及び導通不良等)欠陥等が有り、これらを区別したり欠陥の大きさや、キラー欠陥(チップの使用が不可能になる重大な欠陥等)の分類を自動的にリアルタイムで行うことも出来る。電気的欠陥の検出はコントラスト異状を検出することで達成される。例えば導通不良の場所は電子線照射(500eV程度)により、通常正に帯電し、コントラストが低下するので正常な場所と区別ができる。この場合の電子線照射手段とは、通常検査用の電子線照射手段以外に別途、電位差によるコントラストを際立たせるために設けた低電位(エネルギー)の電子線発生手段(熱電子発生、UV/光電子)をいう。検査対象領域に検査用の電子線を照射する前に、この低電位(エネルギー)の電子線を発生・照射している。検査用の電子線を照射すること自体正に帯電させることができる写像投影方式の場合は、仕様によっては、別途低電位の電子線発生手段を設ける必要はない。また、マスク等の試料に基準電位に対して、正又は負の電位をかけること等による(素子の順方向又は逆方向により流れ易さが異なるために生じる)コントラストの違いから欠陥検出が出来る。線幅測定装置及び合わせ精度測定にも利用できる。
〔発明の効果〕
以上のように本発明によれば、電子線を放出して当該電子線を試料に照射するために該試料の下側に配置された電子銃と、試料の上側に配置され、試料を透過した電子線を拡大する電子レンズと、前記電子レンズの上側に配置され、前記拡大された電子線を検出して、試料の画像を形成する検出器とを備えるようにしたので、電子線が試料の下方から当てられて、試料を透過した電子線が上方にある検出器に当てられることになる。これにより、試料を透過した電子線を用いて試料の画像を形成するようにしたので、照射ビームと透過ビームは共通の経路を通らないことから、従来のように共通の経路を通る装置と比較して、空間電荷効果による透過ビームのボケは大幅に改善され、その結果、S/N比の良い信号を得ることができ、短時間で試料の欠陥を検査することができる。電子銃を下、検出器を上にする事により、試料位置が下り、振動に強くなる。