以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態に係る露光装置EXを示す概略構成図である。図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージMSTと、基板Pを保持して移動可能な基板ステージPSTと、マスクステージMSTに保持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンMPの像を基板ステージPSTに保持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。制御装置CONTには、露光処理に関する各種情報を記憶する記憶装置MRYが接続されている。また、制御装置CONTには、露光処理に関する情報を報知する報知装置INFが接続されている。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、投影光学系PLの像面側における露光光ELの光路空間を液体LQで満たすための液浸機構1を備えている。液浸機構1は、投影光学系PLの像面側近傍に設けられ、液体LQを供給する供給口18及び液体LQを回収する回収口28を有するノズル部材70と、ノズル部材70に設けられた供給口18を介して投影光学系PLの像面側に液体LQを供給する液体供給機構10と、ノズル部材70に設けられた回収口28を介して投影光学系PLの像面側の液体LQを回収する液体回収機構20とを備えている。ノズル部材70は、基板P(基板ステージPST)の上方において、投影光学系PLを構成する複数の光学素子LS1〜LS5のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1を囲むように環状に形成されている。
露光装置EXは、少なくともマスクMのパターンMPの像を基板P上に投影している間、液体供給機構10から供給した液体LQにより投影光学系PLの投影領域ARを含む基板P上の一部に、投影領域ARよりも大きく且つ基板Pよりも小さい液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する。具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1と、投影光学系PLの像面側に配置された基板P表面との間の光路空間を液体LQで満たす局所液浸方式を採用し、この投影光学系PLと基板Pとの間の液体LQ及び投影光学系PLを介してマスクMを通過した露光光ELを基板Pに照射することによってマスクMのパターンMPの像を基板Pに投影する。制御装置CONTは、液体供給機構10を使って基板P上に液体LQを所定量供給するとともに、液体回収機構20を使って基板P上の液体LQを所定量回収することで、基板P上に液体LQの液浸領域LRを局所的に形成する。
また、露光装置EXは、液体LQの光学的な特性を計測する計測装置30を備えている。計測装置30は、液体供給機構10による供給される液体LQの特性を光学的に計測するものであって、液体LQの屈折率、及び液体LQの光透過率のうち少なくともいずれか一方を計測可能である。また、液体供給機構10は、複数種類の液体どうしを混合する混合装置19を備えており、混合装置19で生成された液体LQを投影光学系PLの像面側に供給する。
本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、水平面内においてマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向(非走査方向)、X軸及びY軸方向に垂直で投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここでいう「基板」は半導体ウエハ上にレジスト(感光材)を塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
照明光学系ILは、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、及び露光光ELによるマスクM上の照明領域を設定する視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
マスクステージMSTは、マスクMを保持して移動可能である。マスクステージMSTは、マスクMを真空吸着(又は静電吸着)により保持する。マスクステージMSTは、制御装置CONTにより制御されるリニアモータ等を含むマスクステージ駆動装置MSTDの駆動により、マスクMを保持した状態で、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微少回転可能である。また、マスクステージMSTは、Z軸方向、及びθX、θY方向にも微動可能である。マスクステージMST上には移動鏡81が設けられている。また、移動鏡81に対向する位置にはレーザ干渉計82が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及びθZ方向の回転角(場合によってはθX、θY方向の回転角も含む)はレーザ干渉計82によりリアルタイムで計測される。レーザ干渉計82の計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、レーザ干渉計82の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動し、マスクステージMSTに保持されているマスクMの位置制御を行う。
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、複数の光学素子LS1〜LS5を含み、それら光学素子LS1〜LS5は鏡筒PKで保持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4、1/5、あるいは1/8の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、投影光学系PLは、反射素子を含まない屈折系、屈折素子を含まない反射系、反射素子と屈折素子とを含む反射屈折系のいずれであってもよい。
また、投影光学系PLのうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1は、液浸領域LRの液体LQに接する凹面部2を有している。凹面部2は、第1光学素子LS1のうち、基板Pに対向する下面T1に設けられており、基板Pから離れるように凹んでいる。凹面部2の形状は曲面形状となっている。一方、第1光学素子LS1の上面T2の形状は、投影光学系PLの物体面側(マスク側)に向かって膨らむような凸状の曲面形状となっている。
また、投影光学系PLには、例えば特開平11−195602号公報に開示されているような結像特性調整装置LCが設けられている。結像特性調整装置LCは、投影光学系PLを構成する複数の光学素子LS1〜LS5のうち特定の光学素子を駆動することで、投影光学系PLの収差や像面位置などの結像特性を調整可能である。また、結像特性調整装置LCとして、一部の光学素子間の気体の圧力調整を行う調整機構を用いてもよい。
基板ステージPSTは、基板Pを保持する基板ホルダPHを有し、その基板ホルダPHを投影光学系PLの像面側で移動可能である。基板ホルダPHは、例えば真空吸着等により基板Pを保持する。基板ステージPST上には凹部86が設けられており、基板Pを保持するための基板ホルダPHは凹部86に配置されている。そして、基板ステージPSTのうち凹部86以外の上面87は、基板ホルダPHに保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さ(面一)になるような平坦面(平坦部)となっている。
基板ステージPSTは、制御装置CONTにより制御されるリニアモータ等を含む基板ステージ駆動装置PSTDの駆動により、基板Pを基板ホルダPHを介して保持した状態で、ベース部材BP上でXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。更に基板ステージPSTは、Z軸方向、θX方向、及びθY方向にも移動可能である。したがって、基板ステージPSTに支持された基板Pの表面は、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。基板ステージPSTの側面には移動鏡83が設けられている。また、移動鏡83に対向する位置にはレーザ干渉計84が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計84によりリアルタイムで計測される。また、露光装置EXは、例えば特開平8−37149号公報に開示されているような、基板ステージPSTに支持されている基板P表面の面位置情報を検出する斜入射方式のフォーカス・レベリング検出系(不図示)を備えている。フォーカス・レベリング検出系は、基板P表面の面位置情報(Z軸方向の位置情報、及び基板PのθX及びθY方向の傾斜情報)を検出する。なお、フォーカス・レベリング検出系は、静電容量型センサを使った方式のものを採用してもよい。レーザ干渉計84の計測結果は制御装置CONTに出力される。フォーカス・レベリング検出系の検出結果も制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、フォーカス・レベリング検出系の検出結果に基づいて、基板ステージ駆動装置PSTDを駆動し、基板Pのフォーカス位置(Z位置)及び傾斜角(θX、θY)を制御して基板P表面を投影光学系PLの像面に合わせ込むとともに、レーザ干渉計84の計測結果に基づいて、基板PのX軸方向、Y軸方向、及びθZ方向における位置制御を行う。なお、基板P表面の面位置情報の検出は、例えば特開2004−207710号公報に開示されているように行うことができる。
次に、液浸機構1の液体供給機構10及び液体回収機構20について説明する。なお、以下の説明において、露光光EL(ArFレーザ光:波長193nm)に対する液体の屈折率や光学素子の屈折率を、単に「屈折率」と記載する。
図2は液体供給機構10を示す図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の液体供給機構10は、第1液体LQ1を送出可能な第1液体供給部11と、第2液体LQ2を送出可能な第2液体供給部12と、第1液体供給部11から送出された第1液体LQ1と第2液体供給部12から送出された第2液体LQ2とを混合する混合装置19とを備えており、混合装置19で生成された液体LQを投影光学系PLの像面側に供給する。第1液体LQ1と第2液体LQ2とは、光学的な特性が互いに異なる液体であって、混合装置19は、光学的な特性が互いに異なる2種類の液体LQ1、LQ2どうしを混合する。以下の説明においては、混合装置19で生成された液体を「液体LQ」と称する。
第1、第2液体供給部11、12のそれぞれは、第1、第2液体LQ1、LQ2を収容するタンク、加圧ポンプ、供給する第1、第2液体LQ1、LQ2の温度を調整する温調装置、及び第1、第2液体LQ1、LQ2中の異物(微粒子(particle)あるいは気泡(bubble)を含む)を除去するフィルタユニット等を備えている。なお、液体供給機構10のタンク、加圧ポンプ、温調装置、フィルタユニット等は、その全てを露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場などの設備で代用してもよい。第1液体供給部11には第1供給管13の一端部が接続されており、第1供給管13の他端部は集合管15に接続されている。また、第2液体供給部12には第2供給管14の一端部が接続されており、第2供給管14の他端部は集合管15に接続されている。第1液体供給部11から送出された第1液体LQ1は、第1供給管13を流れた後、集合管15を介して混合装置19に供給される。第2液体供給部12から送出された第2液体LQ2は、第2供給管14を流れた後、集合管15を介して混合装置19に供給される。
ここで、混合装置19で生成され、液体供給機構10によって投影光学系PLの像面側に供給される液体LQとしては、例えばイソプロパノール(屈折率約1.50)やグリセロール(屈折率約1.61)のようなといったC−H結合やO−H結合を持つ所定液体を含んだもの、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の所定液体(有機溶剤)を含んだもの、あるいは純水を含んだものが挙げられる。あるいは、液体供給機構10が供給する液体LQとしては、純水と、H+、Cs+、K+、Cl−、SO4 2−、PO4 2−等の陽イオンまたは陰イオンなどを放出する塩基又は酸の所定物質とが混合されたものであってもよい。更には、純水とAl酸化物の微粒子などの所定物質とが混合されたものであってもよい。そして、第1、第2液体供給部11、12からは、上述の液体LQを生成するための互いに異なる種類の第1、第2液体LQ1、LQ2(上記所定物質を含む)が混合装置19に対して送出され、混合装置19においては、上述の液体LQを生成するために、第1、第2液体供給部11、12から供給された第1、第2液体LQ1、LQ2の混合が行われる。本実施形態においては、第1液体LQ1としてグリセロール(屈折率約1.61)が供給され、第2液体LQとしてイソプロパノールが供給される。
なお、第1、第2液体供給部11、12は、第1、第2液体LQ1、LQ2として、同じ種類(材質)の液体を供給してもよい。例えば、第1液体供給部11は、第1液体LQ1として、第1の温度を有する純水を供給し、第2液体供給部12は、第2液体LQ2として、第1の温度とは異なる第2の温度を有する純水を供給するようにしてもよい。この場合、第1、第2液体LQ1、LQ2の材質は同じであるが、温度は互いに異なるため、第1、第2液体LQ1、LQ2の光学的な特性(屈折率)は互いに異なる。混合装置19においては、第1、第2の温度に応じた液体LQが生成される。
また、第1、第2液体LQ1、LQ2としては、同じ材質であって、性質又は成分(液体が水である場合には水質)が異なるものであってもよい。ここで、液体の性質又は成分の項目としては、液体の比抵抗値、液体中の全有機体炭素(TOC:total organic carbon)、液体中に含まれる微粒子(particle)あるいは気泡(bubble)を含む異物、溶存酸素(DO:dissolved oxygen)及び溶存窒素(DN:dissolved nitrogen)を含む溶存気体、金属イオン含有量、及び液体中のシリカ濃度、生菌などが挙げられる。
上述したような液体供給機構10によって供給される液体LQとして、ArFエキシマレーザ光を透過することができる液体を使用可能である。また、液体LQとしては、ArFエキシマレーザ光の吸収係数が小さく、温度依存性が少なく、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているレジストに対して安定なものであることが好ましい。
また、第1、第2供給管13、14には第1、第2バルブ13B、14Bがそれぞれ設けられている。第1、第2バルブ13B、14Bの動作は制御装置CONTに制御される。制御装置CONTは、第1、第2バルブ13B、14B(第1、第2バルブ13B、14Bの開度)を調整することで、第1、第2液体供給部11、12より第1、第2供給管13、14、及び集合管15を介して混合装置19に供給される第1、第2液体LQ1、LQ2のそれぞれの単位時間あたりの供給量を調整する。
また、混合装置19には、液体回収機構20から戻された液体LQも供給できるようになっている。液体回収機構20から戻された液体LQは、戻し管27を介して混合装置19に供給される。混合装置19は、第1、第2供給管13、14、及び集合管15を介して第1、第2液体供給部11、12より供給された第1、第2液体LQ1、LQ2と、戻し管27を介して液体回収機構20より供給された液体LQとを混合する。また、混合装置19には、供給管16の一端部が接続され、他端部はノズル部材70に接続されている。ノズル部材70には、その一端部を供給口18に接続した供給用内部流路が形成されており、供給管16の他端部はノズル部材70の供給用内部流路の他端部に接続されている。混合装置19で生成された液体LQは、供給管16を介してノズル部材70に供給され、ノズル部材70の供給用内部流路を流れた後、供給口18より投影光学系PLの像面側に配置された基板P上に供給される。
図1において、液体回収機構20は、投影光学系PLの像面側の液体LQを回収するために、液体LQを回収可能な液体回収部21と、液体回収部21にその一端部を接続する回収管26とを備えている。回収管26の他端部はノズル部材70に接続されている。液体回収部21は例えば真空ポンプ等の真空系(吸引装置)、回収された液体LQと気体とを分離する気液分離器、及び回収した液体LQを収容するタンク等を備えている。なお、液体回収機構20の真空系、気液分離器、タンク等は、その全てを露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場などの設備で代用してもよい。ノズル部材70には、その一端部を回収口28に接続した回収用内部流路が形成されており、回収管26の他端部はノズル部材70の回収用内部流路の他端部に接続されている。液体回収部21の真空系が駆動されることにより、投影光学系PLの像面側に配置されている基板P上の液体LQは、回収口28より回収用内部流路に流入し、回収管26を介して液体回収部21に回収される。
ここで、供給口18は、ノズル部材70のうち基板Pと対向する下面70Aにおいて、投影光学系PLの投影領域ARを囲むように設けられている。また、回収口28は、ノズル部材70の下面70Aにおいて、投影領域ARに対して供給口18の外側に設けられている。回収口28は、ノズル部材70の下面70Aにおいて環状のスリット状に形成されている。そして、液浸領域LRの液体LQは、第1光学素子LS1の下面T1及びノズル部材70の下面70Aと基板Pとの間に満たされている。
また、液体回収機構20は、回収した液体LQに対して所定の処理を施す処理装置60を備えている。液体回収機構20は、処理装置60で処理した後の液体LQを戻し管27を介して液体供給機構10の混合装置19に戻す。処理装置60は、回収した液体LQを清浄にするものであって、例えばフィルタユニットや蒸留装置等を備えている。液体回収機構20により回収される液体LQは、基板P表面のレジスト(感光材)に接するので、基板P(レジスト)より発生した不純物を含んでいる可能性がある。また、液体回収機構20により回収される液体LQは、大気に触れた後、回収されるため、大気中の不純物(ガスを含む)を含んでいる可能性もある。そこで、液体回収機構20は、回収した液体LQの一部を処理装置60で清浄にした後、その清浄化された液体LQを液体供給機構10の混合装置19に戻す。なお、液体回収機構20は、回収した液体LQの残りの一部を液体供給機構10に戻さずに露光装置EXの外部に排出(廃棄)する。液体供給機構10は、液体回収機構20より戻された液体LQを投影光学系PLの像面側に再び供給し、液浸露光のために再利用する。なお、液体回収機構20は、回収した液体LQの全部を液体供給機構10に戻してもよい。
液体供給機構10は、液体LQの光学的な特性を計測する計測装置30を備えている。計測装置30は、液体供給機構10により投影光学系PLの像面側に供給する液体LQの光学的な特性を計測するものであって、液体回収機構20の処理装置60と混合装置19との間の戻し管27の途中に設けられた第1計測器31と、混合装置19とノズル部材70との間の供給管16の途中に設けられた第2計測器32とを備えている。第1計測器31は、液体回収機構20の処理装置60から戻され、混合装置19に供給される前の液体LQの光学的な特性を計測し、第2計測器32は、混合装置19で生成され、ノズル部材70を介して投影光学系PLの像面側に供給される前の液体LQの光学的な特性を計測する。第1計測器31と第2計測器32とはほぼ同等の構成を有しており、液体LQの屈折率、及び液体LQの透過率のうち少なくとも一方を計測可能となっている。
以下、図3及び図4を参照しながら第1計測器31について説明する。図3は第1計測器31を示す概略斜視図、図4は断面図である。なお、上述したように、第1計測器31と第2計測器32とはほぼ同等の構成を有しているので、第2計測器32の説明は省略する。
図3及び図4において、第1計測器31は、液体LQが流れる戻し管27の途中に設けられた流路形成部材33と、流路形成部材33に対して計測光Laを照射する投光部34と、流路形成部材33を通過した計測光Laを集光する光学素子(集光光学系)35と、光学素子35を介した計測光Laを受光するCCD等からなる撮像素子36とを備えている。投光部34から流路形成部材33に対して照射される計測光Laは、適当な断面積を有する平行光線である。光学素子35と撮像素子36との距離は、光学素子35の焦点距離にほぼ等しくなるように設けられており、光学素子35は、その光学素子35を通過した計測光Laを撮像素子36上に集光するようになっている。投光部34から射出される計測光Laは、露光光ELとほぼ同じ波長(ArFエキシマレーザ光の波長である193nm)を有している。
流路形成部材33は、石英や蛍石など計測光La(露光光EL)を通過可能な部材で形成されており、断面視三角形状に形成された管状部材である。流路形成部材33はプリズムとしての機能を有している。流路形成部材33の内部には、液体LQが流れる流路37が形成されている。流路形成部材33によって形成された流路37の一端部は、戻し管27に接続されており、液体回収機構20の処理装置60から戻された液体LQは、戻し管27を介して流路37の一端部に流入する。また、流路形成部材33によって形成された流路37の他端部は戻し管27を介して混合装置19に接続されている。流路37の一端部に流入した液体LQは、流路37を流れた後、他端部より流出し、戻し管27を介して混合装置19に供給される。すなわち、流路形成部材33の流路37には、液体供給機構10によって投影光学系PLの像面側に供給される液体LQが流れるようになっている。流路37は、投影光学系PLの像面側に供給される液体LQで満たされるようになっている。
第1計測器31を使って液体LQの光学的な特性を計測するとき、制御装置CONTは、流路形成部材33の流路37に液体LQが満たされている状態で、流路形成部材33の第1面33Aに投光部34より計測光Laを斜入射で照射する。流路形成部材33は計測光Laを透過可能であるため、流路形成部材33に照射された計測光Laは、流路37を流れる液体LQに照射される。そして、流路37を流れる液体LQに照射された計測光Laは、その液体LQを通過した後、流路形成部材33の第2面33Bより外部に射出される。流路形成部材33の第2面33Bより射出された計測光Laは、光学素子35によって撮像素子36上に集光される。
計測光Laの撮像素子36上での集光位置は、流路37を流れる液体LQの光学的な特性に応じて変化する。具体的には、流路37に満たされた液体LQの計測光Laに対する屈折率に応じて、第1面33Aと液体LQの界面におけ入射角及び出射角がそれぞれ変化し、それにより液体LQを通過する計測光Laの光路が変動するため、計測光Laの撮像素子36上における集光位置、すなわち撮像素子36による計測光Laの受光位置が、図4の矢印F1で示すように変化する。撮像素子36の受光結果は制御装置CONTに出力される。ここで、制御装置CONTに接続されている記憶装置MRYには、撮像素子36上での計測光Laの受光位置と、流路37を流れる液体LQの屈折率との関係が予め記憶されている。制御装置CONTは、撮像素子36の受光結果と、記憶装置MRYに記憶されている記憶情報とに基づいて、流路37を流れる液体LQの計測光Laに対する屈折率を求めることができる。
また、流路37を流れる液体LQの計測光Laに対する光透過率に応じて、撮像素子36による計測光Laの受光量が変化する。撮像素子36の受光結果は制御装置CONTに出力される。ここで、制御装置CONTに接続されている記憶装置MRYには、撮像素子36上での計測光Laの受光量と、内部流路37を流れる液体LQの光透過率との関係が予め記憶されている。制御装置CONTは、撮像素子36の受光結果と、記憶装置MRYに記憶されている記憶情報とに基づいて、内部流路37を流れる液体LQの計測光Laに対する光透過率も求めることができる。
そして、計測光Laは露光光ELとほぼ同じ波長を有しているため、制御装置CONTは、液体LQの露光光ELに対する屈折率及び光透過率を求めることができる。このように、第1検出器31は、液体LQの露光光ELに対する屈折率及び光透過率のうち少なくとも一方を含む光学的な特性を、計測光Laを使って光学的に求める。同様に、第2計測器32は、混合装置19を通過した液体LQの光学的な特性を、計測光Laを使って光学的に求める。
計測光Laは露光光ELとほぼ同じ波長を有しているが、投光部34が、露光光ELと同じ波長を有する計測光Laを発生可能な光源を有していてもよいし、照影光学系ILから発生する露光光ELを分岐装置で分岐し、その分岐した露光光ELの一部を計測光Laとして使用してもよい。この場合、投光部34は分岐装置の一部を構成することになる。投光部34に光源を設ける場合には、本実施形態においては、露光光ELはArFエキシマレーザ光であるため、投光部34の光源として、193nmの固体レーザやArFエキシマランプ、重水素ランプなどに狭帯域化素子(フィルタ、グレーティングなど)を組み合わせたものを用い、光源から射出された光の波長を露光光ELの波長に合わせ込むようにしてもよい。また、投光部34から流路形成部材33に照射される計測光Laとしては、露光光ELとは異なる波長を有する光であってもよい。その場合、露光光ELと同じ波長を有する計測光Laを使った場合の撮像素子36上における受光位置(又は受光量)と、露光光ELと異なる波長を有する計測光Laを使った場合の撮像素子36上における受光位置(又は受光量)との関係を予め求めておく。そして、露光光ELとは異なる波長を有する計測光Laを使って計測動作を行ったときの計測結果(受光位置、受光量)を、前記関係に基づいて補正することで、露光光ELに対する液体LQの屈折率情報や光透過率情報を求めることができる。
第1、第2計測器31、32は、液体供給機構10の供給路の一部である流路37を流れる液体LQの特性を光学的に計測するようになっている。液体LQを流しながらその液体LQの光学的な特性を計測することで、液体LQの大きな温度変化を伴うことなく計測でき、計測精度を向上することができる。また、基板Pを液浸露光するときは、液体供給機構10より液体LQが基板P上に供給されるが、液体供給機構10の供給路を流れる液体LQの特性を直接的に計測することができるため、基板Pを液浸露光しながら液体LQの特性を常時計測(モニタ)することができる。すなわち、液体LQの供給動作を行いながら液体LQの計測動作を行うことができるため、露光装置EXの稼働を停止することなく、液体LQの計測動作を行うことができる。したがって、露光装置EXの稼働率の低下といった不都合を防止できる。
本実施形態において、流路形成部材33は、液体供給機構10によって投影光学系PLの像面側に供給される液体LQの供給路の一部を構成しており、液体LQの全部が流路形成部材33によって形成された流路37を流れる構成である。こうすることにより、実際に投影光学系PLの像面側に供給される液体LQの特性を直接的に計測できるため、計測精度を向上することができる。一方、戻し管27や供給管16に対して分岐する分岐管を設け、液体LQの一部を分岐管に流し、その分岐管を流れる液体LQを第1、第2計測器31、32で計測する構成も考えられる。このような構成とすることにより、第1、第2計測器31、32のコンパクト化を図ることができる。
また、液体LQ中に微粒子(particle)や気泡(bubble)等の異物が有る場合、撮像素子36上での受光量が低下するため、第1、第2計測器31、32は、液体LQ中に異物が有るか否かを検出することもできる。また、計測光Laに対して複数の所定位置のそれぞれに撮像素子36を配置しておくことで、液体LQ中に異物が有る場合には、液体LQに照射された計測光Laは異物によって散乱するため、その散乱光に基づいて、第1、第2計測器31、32は、液体LQ中に異物が有るか否かを検出することができる。また、本実施形態の第1、第2計測器31、32によれば、液体LQの計測光La(露光光EL)に対する色分散(アッベ数)を計測することもできる。なお、第1計測器31,第2計測器32のそれぞれの近傍に温度センサを配置して、液体LQの光学特性として液体LQの温度を計測するようにしてもよい。
次に、上述した構成を有する露光装置EXを使って基板Pを露光する動作について図5のフローチャート図を参照しながら説明する。基板Pを露光するに際し、制御装置CONTは、液浸機構1を使って、液体LQの液浸領域LRの形成動作を開始する。なお、露光処理されるべき基板Pは基板ホルダPHに既にロードされているものとする。液浸領域LRの形成動作を開始するときにおいては、制御装置CONTは、投影光学系PLの第1光学素子LS1と、基板P表面を含む基板ステージPSTの上面87とを対向させた状態で、液浸機構1の液体供給機構10による液体LQの供給動作、及び液体回収機構20による液体LQの回収動作を開始する。
液体供給機構10による液体LQの供給動作、及び液体回収機構20による液体LQの回収動作によって、投影光学系PLの像面側に液体LQの液浸領域LRが形成される。液体回収機構20によって回収された液体LQは、処理装置60で処理された後、戻し管27を介して液体供給機構10に戻される。制御装置CONTは、計測装置30の第1計測器31を使って、液体回収機構20より戻された液体LQの光学的な特性を計測する(ステップS1)。
制御装置CONTは、第1計測器31の計測結果に基づいて、第1、第2供給管13、14に設けられている第1、第2バルブ13B、14Bを調整し、第1、第2液体供給部11、12のそれぞれから混合装置19に供給される第1、第2液体LQ1、LQ2の単位時間当たりの供給量を調整する。換言すれば、制御装置CONTは、第1計測器31の計測結果に基づいて、第1、第2液体供給部11、12のそれぞれから供給され、混合装置19で混合される第1、第2液体LQ1、LQ2の混合比を調整する(ステップS2)。
第1、第2液体LQ1、LQ2は、光学的な特性(屈折率、光透過率)が互いに異なっている。この実施形態では、第1液体LQ1の方が、第2液体LQ2よりも屈折率が高い。そこで、制御装置CONTは、混合装置19で生成される液体LQの光学的な特性を所望状態に調整するために、具体的には混合装置19で生成された液体LQの屈折率及び光透過率のうち少なくとも一方を所望値に調整するために、第1計測器31の計測結果に基づいて、混合装置19で混合される第1、第2液体LQ1、LQ2の混合比を調整する。第1計測器31は、液体回収機構20から戻された液体LQの光学的な特性を計測するので、制御装置CONTは、その第1検出器31の計測結果に基づいて、戻された液体LQに対して、第1、第2液体供給部11、12より、第1、第2液体LQ1、LQ2を適宜、適量だけ追加することで、混合装置19で生成される液体LQの光学的な特性を所望状態に調整することができる。
ここで、第1、第2液体LQ1、LQ2の混合比と、その混合比で生成された液体LQの光学的な特性との関係が、例えば実験あるいはシミュレーションによって予め求められており、その関係に関する情報が、制御装置CONTに接続されている記憶装置MRYに予め記憶されている。制御装置CONTは、記憶装置MRYに記憶されている情報と、第1計測器31の計測結果とに基づいて、第1、第2バルブ13B、14Bを調整し、液体LQの所望な光学的な特性を得るための、第1、第2液体LQ1、LQ2の混合比を決定する。そして、制御装置CONTは、決定した混合比に基づいて、混合装置19を使って第1、第2液体供給部11、12より送出された第1、第2液体LQ1、LQ2、及び液体回収機構20より戻された液体LQの混合を行い、液体LQを生成する(ステップS3)。
例えば、第1液体LQ1の屈折率が第2液体LQ2の屈折率よりも高い場合において、制御装置CONTは、第1計測器31の計測結果に基づいて、液体LQの屈折率が所望値よりも低いと判断した場合、第1、第2バルブ13B、14Bを制御して、混合装置19に供給する第1液体LQ1の量を、第2液体LQ2の量よりも多くする。また、第1計測器31の計測結果に基づいて、液体LQの屈折率が所望値よりも高いと判断した場合には、制御装置CONTは、第1、第2バルブ13B、14Bを制御して、混合装置19に供給する第2液体LQ2の量を、第1液体LQ1の量よりも多くする。こうすることにより、液体LQの屈折率を所望値にすることができる。
以上により、第1計測器31の計測結果に基づいて、混合装置19で生成される液体LQの光学的な特性が調整される。
また、混合装置19においては、液体LQの光学的な特性のうち屈折率を調整するために、上述したように、液体LQにAl酸化物の微粒子などの所定物質を混合(添加)するようにしてもよいし、液体LQの光透過率を調整するための所定物質を液体LQに混合(添加)するようにしてもよい。また、液体LQに混合する所定物質としては、固体であってもよいし、スラリー状であってもよい。また、液体LQに固体の微粒子を分散してもよいし、液体LQに固体を投入した後、その固体を液体LQに溶解させてもよい。
混合装置19で生成された液体LQは、供給管16を介して第2計測器32に供給される。制御装置CONTは、混合装置19で生成された液体LQの光学的な特性を計測装置30の第2計測器32で計測する。第2計測器32は、第1計測器31の計測結果に基づいて光学的な特性の調整が行われた後の液体LQを計測する(ステップS4)。
制御装置CONTは、第2計測器32の計測結果に基づいて、結像特性を調整し、投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置と、基板P表面との位置関係を調整する(ステップS5)。
混合装置19で生成された液体LQの光学的な特性のうち、例えば屈折率が僅かながら変動し、投影光学系PL及び液体LQを介した像面位置が変動する可能性がある。あるいは、混合装置19で生成された液体LQの光学的な特性を、所望状態に調整しきれない可能性もある。そこで、制御装置CONTは、第2計測器32の計測結果に基づいて、投影光学系PLに設けられている結像特性調整装置LCを使って、投影光学系PLを構成する複数の光学素子LS1〜LS5のうち特定の光学素子を駆動したり、鏡筒PK内部の圧力を調整したりすることで、投影光学系PLの結像特性である像面位置を調整する。あるいは、結像特性調整装置LCは、投影光学系PLを構成する複数の光学素子LS1〜LS5のうち特定の光学素子の温度調整を行って特定の光学素子の温度を変えたり、鏡筒PK内部の温度を変えたりすることで、投影光学系PLの結像特性を調整することもできる。制御装置CONTは、その液体LQの光学的な特性(屈折率)に応じて、結像特性を調整することで、例えば投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置と、基板P表面とを合致させることができる。
また、制御装置CONTは、結像特性調整装置LCによる投影光学系PLの調整に代えて、あるいは結像特性調整装置LCによる調整と併用して、液体LQの光学特性(屈折率)に基づき、基板ステージ駆動装置PSTDを介して基板ステージPSTの駆動を制御してもよい。この場合、基板ステージ駆動装置PSTDは、基板ステージPSTの位置を調整する調整装置としての機能を有する。
例えば、液体LQの屈折率が所望値よりも高い場合、投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置は、液体LQの屈折率が所望値であるときの投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置に比べて、−Z側にシフトする。したがって、制御装置CONTは、投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置と基板P表面とを合致させるために、第2計測器32の計測結果に基づいて、基板ステージ駆動装置PSTDによって基板Pを保持した基板ステージPSTを−Z側にシフトする。
あるいは、マスクステージ駆動装置MSTDを介して、マスクMを保持したマスクステージMSTを駆動してもよい。この場合、マスクステージ駆動装置MSTDは、結像特性を調整する調整装置としての機能を有する。あるいは、ノズル部材70と第2計測器32との間に液体LQの温度を微調整する温調装置を配置して、投影光学系PLの像面側に供給される液体LQの温度を調整してもよい。あるいは、照明光学系IL(露光用光源)を調整し、露光光ELの波長を調整するようにしてもよい。あるいは、液体LQの屈折率はその液体LQの圧力によっても変動するため、液体LQの圧力を調整することで、投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置を調整するようにしてもよい。液体LQの圧力を調整する場合には、例えばノズル部材70に供給口18及び回収口28とは別の第2の口を設ける。そして、供給口18及び回収口28による液体供給動作及び液体回収動作に基づいて形成された液体LQの液浸領域LRに対して、第2の口を介して液体LQの追加又は一部回収を行う。こうすることにより、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間に満たされた液体LQの圧力を調整することができる。あるいは、露光装置EXを収容するチャンバ内の圧力を調整することで、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間に満たされた液体LQの圧力を調整することもできる。
ここで、液体LQの光学的な特性と投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置との関係が、例えば実験あるいはシミュレーションによって予め求められており、その関係に関する情報が、制御装置CONTに接続されている記憶装置MRYに予め記憶されている。制御装置CONTは、記憶装置MRYに記憶されている情報と、第2計測器32の計測結果とに基づいて、結像特性調整装置LC、基板ステージ駆動装置PSTD、マスクステージ駆動装置MSTD、温調装置等を含む各調整機構の少なくとも一つを使って、投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置と、基板P表面とを合致させることができる。なお、上述したこれら調整機構の全てを露光装置EXが備える必要はなく、必要に応じて、適宜露光装置EXに搭載すればよい。
なお、液体LQの光学的な特性に応じて液体LQを介して形成される像面が変化する場合に限らず、液体LQの光学的な特性(屈折率)に応じて、波面収差や歪曲収差などの他の結像特性も変化する場合も同様にして、第2計測器32の計測で計測された液体LQの光学的な特性に基づいて調整を行えばよい。また、液体LQの屈折率に限らず、混合装置19で生成された液体LQの光学的な特性のうち、光透過率が変動したり、光透過率を所望状態に調整しきれない場合には、制御装置CONTは、第2計測器32の計測結果に基づいて、例えば、光源を含む照明光学系IL等を調整して、露光光ELの照射量(照度)を調整したり、基板Pの走査速度を調整したり、露光光ELのパルス発光周期を調整したり、基板P上における露光光ELの走査方向の幅を調整したり、これらの調整を適宜組み合わせることによって、液体LQの透過率に応じた最適な露光量制御(ドーズ制御)を実行することができる。
このように、制御装置CONTは、第1計測器31の計測結果に基づいて、第1、第2液体LQ1、LQ2の混合比を調整したり、液体LQに所定物質の混合(添加)したりすることで液体LQの光学的な特性を調整するとともに、第2計測器32の計測結果に基づいて、結像特性(例えば、像面位置)を調整する。そして、第1計測器31の計測結果に基づく液体LQの光学的な特性の調整、及び第2計測器32の計測結果に基づく結像特性の調整等を含む露光条件の調整が完了した後、制御装置CONTは、その調整された露光条件の下で、投影光学系PL及び液体LQを介して基板Pを液浸露光する(ステップS6)。
なお、上述の実施形態において、第2計測器32の計測結果も考慮して混合装置19での混合比を調整したり、第1液体供給部11、第2液体供給部12から供給される第1液体LQ1の温度や第2液体LQ2の温度調整を行うようにしてもよい。すなわち、設定した計測結果が第2計測器32で計測されるまで、制御装置は混合装置19における混合比を調整し、また第1液体LQ1及び第2液体LQ2の温度を制御してもよい(フィードバック制御)。また、基板Pの液浸露光中においても、液体LQの光学的な特性は、第1、第2計測器31、32により常時計測(モニタ)されている。制御装置CONTは、基板Pの液浸露光中においても、第1計測器31のモニタ情報に基づいて、液体LQの光学的な特性の調整を行うとともに、第2計測器32のモニタ情報に基づいて、結像特性の調整などを行うことができる。
また、制御装置CONTには報知装置INFが接続されており、制御装置CONTは、報知装置INFによって、計測装置30の計測結果を報知することができる。報知装置INFは、ディスプレイ装置(表示装置)、音又は光を使って警報(警告)を発する警報装置等を含んで構成されており、例えば第1、第2計測器31、32の計測結果(液体LQの屈折率情報、光透過率情報等)を表示装置で表示することができる。あるいは、第1、第2計測器31、32の計測結果が、予め定められている許容値を超えた際に、制御装置CONTは、警報装置で警報を発するようにしてもよい。この場合、第2計測器32の計測結果の許容値は、結像特性の調整などで補償できる範囲を考慮して設定することが望ましい。
本実施形態においては、液体供給機構10は混合装置19で生成された液体LQを供給する構成であり、第1、第2液体LQ1、LQ2の混合比を調整したり、液体LQに所定物質を混合することで、所望の光学的な特性を有する液体LQを生成することができる。本実施形態においては、液体供給機構10の混合装置19は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子LS1〜LS5のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1の光学的な特性に応じて、第1光学素子LS1の下面T1と基板Pとの間の光路空間を満たすための液体LQを生成する。
液体供給機構10は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子LS1〜LS5のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1の屈折率よりも高い(大きい)屈折率を有する液体LQを供給する。その高い屈折率を有する液体LQによって、投影光学系PLの像面側に配置された基板P(あるいは基板ステージPST)と第1光学素子LS1との間の光路空間が満たされる。本実施形態においては、第1光学素子LS1は石英で形成されており、液体LQの屈折率は石英の屈折率より高い。ここで、石英の屈折率は約1.5程度であり、液体供給機構10の混合装置19から供給される液体LQは1.6〜1.8程度である。なお、第1光学素子LS1は蛍石で形成されていてもよい。
第1光学素子LS1の形成材料である石英は、露光光ELであるArFエキシマレーザ光を透過可能である。また、石英は屈折率の大きい材料であるため、例えば第1光学素子LS1の大きさを小さくすることができ、投影光学系PL全体や露光装置EX全体をコンパクト化できる。また、例えば光学素子LS2〜LS5を蛍石で形成し、光学素子LS1を石英で形成してもよいし、光学素子LS2〜LS5を石英で形成し、光学素子LS1を蛍石で形成してもよいし、光学素子LS1〜LS5の全てを石英(あるいは蛍石)で形成してもよい。
図6は投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1近傍を示す拡大断面図である。図6において、第1光学素子LS1のうち、基板Pと対向する下面T1には凹面部2が形成されている。第1光学素子LS1の上面T2側の光路空間は気体(窒素)であり、第1光学素子LS1の下面T1側の光路空間は液体LQで満たされている。第1光学素子LS1の上面T2の形状は、投影光学系PLの物体面側(マスク側)に向かって膨らむような凸状の曲面形状である。
このように、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1の屈折率よりも高い屈折率を有する液体LQを使用することで、解像度や焦点深度を大幅に向上できる。そして、第1光学素子LS1は、その液体LQに接触する凹面部(曲面部)2を有しているので、第1光学素子LS1から液体LQへ入射する際の反射を抑制して露光光ELを投影光学系PLの像面側まで良好に到達させることができる。
以上説明したように、混合装置19によって複数種類の液体どうしを適宜混合することで、露光条件等に応じた所望の特性を有する液体LQを生成することができる。したがって、例えば所望の屈折率を有する液体LQを任意に供給できるので、液体LQを介して露光するときの解像度や焦点深度を向上することができ、露光精度を所望状態に維持することができる。そして、液体LQの光学的な特性を計測する計測装置30を設けたので、その計測装置30の計測結果に基づいて、液体LQの光学的な特性を把握し、液体LQの光学的な特性を所望状態に調整したり、結像特性を調整するなどの適切な処置を講ずることができる。また、計測装置30は、液体供給機構10の供給路を流れる液体LQの特性を計測するために、投影光学系PLの像面側に供給される直前の液体LQを計測(モニタ)する。したがって、供給される直前の液体LQの計測結果に基づいて、液体LQの光学的な特性や結像特性などを調整することで、所望の露光条件の下で基板Pを精度良く露光できる。
また、上述した第1液体LQ1や第2液体LQ2として使われる液体(機能液)が液体製造工場(液体製造メーカー)等で工業的に生産される場合、その液体の特性が変動する可能性がある。すなわち、工業的に生産される機能液の特性にロットぶれが発生する可能性がある。本実施形態においては、液体供給機構10の混合装置19は、計測装置30(第1計測器31)の計測結果に基づいて、第1、第2液体LQ1、LQ2の混合比を適宜調整しつつ混合して液体LQを生成するので、例えば第1液体LQ1として第1ロットの機能液を用い、第2液体LQ2として第2ロットの機能液を用いることで、同じ材質の機能液にロットぶれが存在する場合でも、そのロットぶれをキャンセルして、所望の特性を有する液体LQを生成することができる。
また、本実施形態においては、第1計測器31の計測結果に基づいて液体LQの光学的な特性が調整され、その調整が行われた後の液体LQを第2計測器32で計測する構成であるため、液体LQの光学的な特性を所望状態に調整しきれない場合が生じても、第2計測器32の計測結果に基づいて、結像特性の調整などをすることができるため、所望の露光条件の下で基板Pを精度良く露光することができる。
また、液体回収機構20は、回収した液体LQを液体供給機構10に戻すので、使用する液体LQが工業的に生産された高価なものあるいは希少なものであっても、その液体LQを再利用することができ、デバイスの生産コストを抑えることができる。また、液体回収機構20より液体供給機構10に戻された液体LQの光学的な特性は、例えば処理装置60の能力などによって変動する可能性があるが、混合装置19によって、戻された液体LQの光学的な特性が再び調整されるので、回収して戻された液体LQを所望状態に調整した後、再利用することができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について図7を参照しながら説明する。以下の説明において、上述した第1の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略もしくは省略する。
第2の実施形態の特徴的な部分は、液体供給機構10が、投影光学系PLの像面側に供給する液体LQの温度を検出する温度検出器41、及び液体LQの温度を調整する温調装置42を備えている点にある。温度検出器41は、供給管16の途中に設けられ、混合装置16で生成された液体LQの温度を検出する。また、温調装置42は、供給管16のうち、温度検出器41と第2計測器32(ノズル部材70)との間に設けられ、温度検出器41で温度検出が行われた後の液体LQの温度を調整する。制御装置CONTは、温度検出器41の検出結果に基づいて、投影光学系PLの像面側に供給される液体LQの温度を、温調装置42を使って調整する。
例えば、液体LQの温度が所望値よりも高い場合、液体LQの屈折率は低下し、投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置は、液体LQの温度が所望値であるときの投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置に比べて、+Z側にシフトする。したがって、制御装置CONTは、投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置と基板P表面とを合致させるために、温調装置42によって、液体LQの温度を調整(低下)する。あるいは、制御装置CONTは、投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面位置と基板P表面とを合致させるために、温調装置42の検出結果に基づいて、基板Pを保持した基板ステージPSTを+Z側にシフトしたり、結像特性調整装置LCを駆動する。
なお、図7において、温調装置42を使って液体LQの温度を調整するときに、第2計測器32の計測結果と、温度検出器41の検出結果との両方を考慮するようにしてもよい。また、図7において、温度検出器41は無くてもよい。制御装置CONTは、第2計測器32で計測される液体LQの屈折率が所望値となるように、第2計測器32の計測結果に基づいて、温調装置42を使って液体LQの温度を調整することで、液体LQの屈折率を所望値にすることができる。
屈折率の温度依存性が高い液体LQ(温度変化に対する屈折率変化が大きい液体LQ)を使用する場合、温調装置42で温度調整され、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間に満たされた液体LQの光学的な特性(屈折率)は、露光装置EXを収容するチャンバ内の温度変動、ひいては光路空間近傍の環境の温度変動に起因して変動する可能性がある。そこで、例えば光路空間近傍の環境の温度を計測可能な温度計測器を設けておき、その温度計測器の計測結果に基づいて、光路空間近傍の環境の温度変動に応じた、温調装置42による液体LQの温度調整や、第1、第2液体LQ1、LQ2の混合比の調整を行うようにしてもよい。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の特徴的な部分は、液体LQの光学的な特性を計測する計測装置30’が、ノズル部材70に設けられている点にある。図8は第3の実施形態に係るノズル部材70近傍を示す側断面図、図8(B)はノズル部材70を下方から見た図である。
図8において、ノズル部材70は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子LS1〜LS5のうち、投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1を囲むように環状に形成されている。ノズル部材70の内側面70Tのうち、液浸領域LRの液体LQに接触する所定位置にはプリズム33’が設けられている。また、ノズル部材70の内側面70Tのうち、液浸領域LRを挟んでプリズム33’と対向する位置には、光学素子(集光光学系)35が設けられている。更に、ノズル部材70の所定位置には、光学素子35を介した光を受光する撮像素子36が設けられている。また、プリズム33’には、投光部34より計測光Laが照射されるようになっている。なお、図8に示すノズル部材70は模式的に示されているが、ノズル部材70には計測光Laが通過する光路が確保されている。投光部34よりプリズム33’に照射された計測光Laは、プリズム33’を通過した後、液浸領域LRの液体LQ中を通過する。液体LQを通過した計測光Laは、光学素子35を介して撮像素子36に受光される。計測装置30’が液体LQの光学的な特性を計測するときの計測原理は、図3及び図4を参照して説明した第1計測器31と同様である。計測装置30’は、計測装置30の第2計測器32の替わりとして用いることもできるし、第2計測器32と併用することもできる。いずれの場合にも、ノズル部材70に設けられた計測装置30’を使って、投影光学系PLと基板Pとの間の光路空間に配置された液体LQの特性を計測し、その計測結果に基づいて、液体LQの光学的な特性や結像特性などを調整することもできる。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について図9を参照しながら説明する。第4の実施形態の特徴的な部分は、投影光学系PLの第1光学素子LS1の下面T1はほぼ平坦面であって、液体供給機構10の混合装置19は、その第1光学素子LS1の屈折率とほぼ同じ屈折率の液体LQを生成する点にある。液体供給機構10は、混合装置19で生成された液体LQを供給する。
図9は投影光学系PLの像面に最も近い第1光学素子LS1近傍を示す拡大断面図である。図9において、第1光学素子LS1のうち、基板Pと対向する下面T1は平坦面である。第1光学素子LS1の上面T2側の光路空間は気体(窒素)であり、第1光学素子LS1の下面T1側の光路空間は液体LQで満たされている。第1光学素子LS1の上面T2の形状は、投影光学系PLの物体面側(マスク側)に向かって膨らむような凸状の曲面形状である。第1光学素子LS1の屈折率は、液体LQの屈折率とほぼ同じである。
また、第1光学素子LS1の下面T1は、平面形状となっている。そして、上述したように、第1光学素子LS1の屈折率と液体LQの屈折率とは同じであるため、基板P表面に到達する露光光ELは、第1光学素子LS1の下面T1において、ほとんど屈折しない。本実施形態においても、屈折率(n)を有する液体LQによって開口数NAを約n倍にすることで、解像度及び焦点深度を大幅に向上することができる。なお、第4の実施形態において、第1光学素子LS1の屈折率と液体LQの屈折率とが異なっていてもよい。
なお、上述した第1〜第4の実施形態においては、液体供給機構10は、混合装置19で2種類の第1、第2液体LQ1、LQ2を混合し、その混合装置19で生成された液体LQを投影光学系PLの像面側に供給するが、3種類以上の任意の複数種類の液体を混合装置19で混合し、その混合装置19で生成された液体LQを供給することはもちろん可能である。
あるいは、液体供給機構10は、複数種類の液体を混合せずに、1種類の液体を供給するようにしてもよい。この場合、液体供給機構10は混合装置19を省略することができる。制御装置CONTは、計測装置30(第2計測器32)を使って液体LQの光学的な特性を計測し、その計測結果に基づいて、結像特性調整装置LC、基板ステージ駆動装置PSTD、マスクステージ駆動装置MSTD、温調装置等を含む各調整機構の少なくとも一つを使って、結像特性の調整などを行うことができる。また、液体回収機構20で回収された少なくとも一部の液体LQを液体供給機構10に戻すようにしているが、液体回収機構20で回収された液体を全て廃棄して、新しい清浄な液体LQを液体供給機構10から供給するようにしてもよい。なお、ノズル部材70などの液浸機構1の構造は、上述のものに限られず、例えば、欧州特許公開第1420298号公報、国際公開第2004/055803号公報、国際公開第2004/057589号公報、国際公開第2004/057590号公報、国際公開第2005/029559号公報に記載されているものも用いることができる。
また、上述の実施形態においては、投影光学系PLの第1光学素子LS1の光射出側の光路空間を液体LQで満たす露光装置について説明しているが、他の光路空間を液体(水)で満たすようにしてもよい。例えば、国際公開第2004/019128号に開示されているように、第1光学素子LS1の光入射側の光路空間も液体(純水)で満たすようにしてもよく、この光路空間に液体を供給するときに、図2や図7を参照して説明した液体供給機構を適用することができる。
なお、上述したように液浸法を用いることにより投影光学系の開口数NAが大きくなる場合には、従来から露光光として用いられているランダム偏光光では偏光効果によって結像性能が悪化することもあるので、偏光照明を用いるのが望ましい。その場合、マスク(レチクル)のライン・アンド・スペースパターンのラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明を行い、マスク(レチクル)のパターンからは、S偏光成分(TE偏光成分)、すなわちラインパターンの長手方向に沿った偏光方向成分の回折光が多く射出されるようにするとよい。投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が液体で満たされている場合、投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が空気(気体)で満たされている場合に比べて、コントラストの向上に寄与するS偏光成分(TE偏光成分)の回折光のレジスト表面での透過率が高くなるため、投影光学系の開口数NAが1.0を越えるような場合でも高い結像性能を得ることができる。また、位相シフトマスクや特開平6−188169号公報に開示されているようなラインパターンの長手方向に合わせた斜入射照明法(特にダイポール照明法)等を適宜組み合わせると更に効果的である。特に、直線偏光照明法とダイポール照明法との組み合わせは、ライン・アンド・スペースパターンの周期方向が所定の一方向に限られている場合や、所定の一方向に沿ってホールパターンが密集している場合に有効である。例えば、透過率6%のハーフトーン型の位相シフトマスク(ハーフピッチ45nm程度のパターン)を、直線偏光照明法とダイポール照明法とを併用して照明する場合、照明系の瞳面においてダイポールを形成する二光束の外接円で規定される照明σを0.95、その瞳面における各光束の半径を0.125σ、投影光学系PLの開口数をNA=1.2とすると、ランダム偏光光を用いるよりも、焦点深度(DOF)を150nm程度増加させることができる。
また、直線偏光照明と小σ照明法(照明系の開口数NAiと投影光学系の開口数NApとの比を示すσ値が0.4以下となる照明法)との組み合わせも有効である。
また、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、微細なライン・アンド・スペースパターン(例えば25〜50nm程度のライン・アンド・スペース)を基板P上に露光するような場合、マスクMの構造(例えばパターンの微細度やクロムの厚み)によっては、Wave guide効果によりマスクMが偏光板として作用し、コントラストを低下させるP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりS偏光成分(TE偏光成分)の回折光が多くマスクMから射出されるようになる。この場合、上述の直線偏光照明を用いることが望ましいが、ランダム偏光光でマスクMを照明しても、投影光学系PLの開口数NAが大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。
また、マスクM上の極微細なライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合、Wire Grid効果によりP偏光成分(TM偏光成分)がS偏光成分(TE偏光成分)よりも大きくなる可能性もあるが、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、25nmより大きいライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合には、S偏光成分(TE偏光成分)の回折光がP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりも多くマスクMから射出されるので、投影光学系PLの開口数NAが大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。
更に、マスク(レチクル)のラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明(S偏光照明)だけでなく、特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線(周)方向に直線偏光する偏光照明法と斜入射照明法との組み合わせも効果的である。特に、マスク(レチクル)のパターンが所定の一方向に延びるラインパターンだけでなく、複数の異なる方向に延びるラインパターンが混在(周期方向が異なるライン・アンド・スペースパターンが混在)する場合には、同じく特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線方向に直線偏光する偏光照明法と輪帯照明法とを併用することによって、投影光学系の開口数NAが大きい場合でも高い結像性能を得ることができる。例えば、透過率6%のハーフトーン型の位相シフトマスク(ハーフピッチ63nm程度のパターン)を、光軸を中心とした円の接線方向に直線偏光する偏光照明法と輪帯照明法(輪帯比3/4)とを併用して照明する場合、照明σを0.95、投影光学系PLの開口数をNA=1.00とすると、ランダム偏光光を用いるよりも、焦点深度(DOF)を250nm程度増加させることができ、ハーフピッチ55nm程度のパターンで投影光学系の開口数NA=1.2では、焦点深度を100nm程度増加させることができる。
更に、上述の各種照明法に加えて、例えば特開平4−277612号公報や特開2001−345245号公報に開示されている累進焦点露光法や、多波長(例えば二波長)の露光光を用いて累進焦点露光法と同様の効果を得る多波長露光法を適用することも有効である。
なお、液体LQの流れによって生じる投影光学系PLの先端の第1光学素子LS1と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その第1光学素子LS1を交換可能とするのではなく、その圧力によって第1光学素子LS1が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
また、露光装置EXとしては、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第1パターンの縮小像を投影光学系(例えば1/8縮小倍率で反射素子を含まない屈折型投影光学系)を用いて基板P上に一括露光する方式の露光装置にも適用できる。この場合、更にその後に、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第2パターンの縮小像をその投影光学系を用いて、第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光するスティッチ方式の一括露光装置にも適用できる。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。また、上記実施形態では投影光学系PLを備えた露光装置を例に挙げて説明してきたが、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているツインステージ型の露光装置にも適用できる。
また、上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間に局所的に液体を満たす露光装置を採用しているが、本発明は、特開平6−124873号公報や特開平10−303114号公報などに開示されているような、基板表面全体を液浸した状態で基板の露光を行う液浸露光装置にも適用可能である。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータ(USP5,623,853またはUSP5,528,118参照)を用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−166475号公報(USP5,528,118)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−330224号公報(USP5,874,820)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図10に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光し、露光した基板を現像する基板処理(露光処理)ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。なお、基板処理ステップ204には、図5で説明した液体計測及び液体比の調整などの工程が含まれる。
1…液浸機構、10…液体供給機構、19…混合装置、20…液体回収機構、30…計測装置、31…第1計測器、32…第2計測器、42…温調装置、60…処理装置、70…ノズル部材、CONT…制御装置、EL…露光光、EX…露光装置、INF…報知装置、LC…結像特性調整装置、LQ…液体、LQ1…第1液体、LQ2…第2液体、LS1…第1光学素子、MRY…記憶装置、P…基板、PL…投影光学系、PST…基板ステージ、PSTD…基板ステージ駆動装置、T1…下面