しかしながら、上述の電気化学的探査方法よりも更に精度の高い地盤探査を行いたいとの要請があった。特に、電位電極間の電位差の測定波形のうち電位のたち下がり部分の形状はノイズの影響を受けて乱れ易いことから、上述の電気化学的探査方法では電位電極間の電位差の時間的変化量を正確に把握することが困難な場合が多く、測定精度の更なる向上を妨げていた。
本発明は、ノイズによる影響を受け難く、より高い精度で地盤探査を行うことができる地盤探査方法および地盤探査装置を提供することを目的とする。
本発明者は、地盤探査の精度を更に向上させるべく鋭意研究を行った結果、地盤に一対の電流電極と一対の電位電極を設置し、電流電極間に一定周期の電流を供給して電位電極間の電位差を測定し、その電流の波形に対する電位差の波形の抵抗及び位相差を求め、さらに、電流電極に供給する電流の周波数を変化させて抵抗及び位相差を求めることを繰り返し行ったところ、
電流の周波数と抵抗との関係及び電流の周波数と位相差との関係が地盤の種類によって変化することを見出した。
そして、この測定では周波数ごとに抵抗及び位相差を計測していくので、電位電極間の電位差の時間的変化量を利用する場合に比べて測定対象地盤でのノイズに強く、高精度の地盤探査を行うことができることを知見するに至った。
また、2つの関係、即ち電流の周波数と抵抗との関係及び電流の周波数と位相差との関係の両方に基づかなくても、電流の周波数と位相差との関係のみに基づいてもある程度高精度の地盤探査を行うことができることを知見するに至った。
かかる知見に基づいてなされたもので、請求項1記載の地盤探査方法は、測定対象地盤に設置した一対の電流電極間に一定周期で電流を供給して測定対象地盤に設置した電位電極間の電位差を測定し、電流の波形に対する電位差の波形の抵抗及び位相差を求め、電流の周期の周波数を変えて測定を複数回行い周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係を求め、これら2つの関係に基づいて測定対象地盤を判別するものである。
電流電極間に電流を供給すると電位電極間の電位差が変化し、この電位差の信号波形と電流電極間に一定周期で供給する電流の信号波形との間には位相差が生じる。電流電極間に供給する電流の周波数を変化させながら複数回の測定を行うと、抵抗と周波数との関係及び位相差と周波数との関係を求めることができる。これらの関係は地盤毎に異なっているので、これらの関係に基づいて地盤を判別することができる。
また、請求項2記載の地盤探査方法は、前述の関係を、予め求めておいた地盤別の周波数と抵抗との関係データ及び周波数と位相差との関係データと対比し、同一又は近似する場合に測定対象地盤が関係データの地盤であると判断するものである。即ち、予め収集しておいた関係データとの対比によって、測定対象の地盤の判別を行うことができる。
また、請求項3記載の地盤探査方法は、測定対象地盤に設置した一対の電流電極間に一定周期で電流を供給して測定対象地盤に設置した電位電極間の電位差を測定し、電流の波形に対する電位差の波形の位相差を求め、電流の周期の周波数を変えて測定を複数回行い周波数と位相差との関係を求め、この関係に基づいて測定対象地盤を判別するものである。
電流電極間に電流を供給すると電位電極間の電位差が変化し、この電位差の信号波形と電流電極間に一定周期で供給する電流の信号波形との間には位相差が生じる。電流電極間に供給する電流の周波数を変化させながら複数回の測定を行うと、位相差と周波数との関係を求めることができる。この関係は地盤毎に異なっているので、この関係に基づいて地盤を判別することができる。
また、請求項4記載の地盤探査方法は、前述の関係を、予め求めておいた地盤別の周波数と位相差との関係データと対比し、同一又は近似する場合に測定対象地盤が前記関係データの地盤であると判断するものである。即ち、予め収集しておいた関係データとの対比によって、測定対象の地盤の判別を行うことができる。
また、請求項5記載の地盤探査方法は、周波数と位相差との関係に関しては、位相差のピーク周波数に基づいて測定対象地盤を判別するものである。ここで、位相差のピーク周波数には、その周波数の値fmaxと当該周波数fmaxにおける位相差の大きさθmaxとが含まれる。即ち、周波数と位相差との関係をグラフで表したときの位相差グラフがピークとなる周波数(臨界周波数fmax)とfmaxにおける位相差の大きさθmaxのうち、少なくともいずれか一方に基づいて地盤の判別を行うことができる。
また、請求項6記載の地盤探査方法は、測線に沿って多数の電流電極を設置し、使用する一対の電流電極の組合せを順次切り替えて測定を行うものである。したがって、電流電極の位置を測線に沿って順次移動させながら測定を行うことができる。
また、請求項7記載の地盤探査方法は、測線に沿って多数の電位電極を設置し、使用する一対の電位電極の組合せを順次切り替えて測定を行うものである。したがって、電位差を測定する位置を測線に沿って順次移動させながら測定を行うことができる。
さらに、請求項8記載の地盤探査装置は、地盤に設置された一対の電流電極及び一対の電位電極と、電流電極間に一定周期で電流を供給して電位電極間の電位差を測定する測定部と、電流の波形に対する電位差の波形の抵抗及び位相差を求める処理部を備え、測定部は電流の周期の周波数を変えて測定を複数回行うものであり、処理部は、測定部の複数回の測定に基づき周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係を求めるものである。
測定部が電流電極間に電流を供給すると電位電極間の電位差が変化し、この電位差の信号波形と電流電極間に一定周期で供給する電流の信号波形との間には位相差が生じる。処理部は電位差の信号波形と電流の信号波形に基づいて抵抗及び位相差を求める。そして、測定部は電流電極間に供給する電流の周波数を変えて前記測定を繰り返し行い、処理部は周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係を求める。これらの関係は地盤毎に異なっているので、これらの関係に基づいて地盤を判別することができる。
また、請求項9記載の地盤探査装置は、予め求めておいた地盤別の周波数と抵抗との関係データ及び周波数と位相差との関係データを記憶した記憶手段を備え、処理部は、記憶手段に記憶されている関係データと求めた関係とを対比して測定対象地盤を判別するものである。したがって、予め収集しておいた関係データとの対比によって、測定対象地盤の判別を行うことができる。
また、請求項10記載の地盤探査装置は、地盤に設置された一対の電流電極及び一対の電位電極と、電流電極間に一定周期で電流を供給して電位電極間の電位差を測定する測定部と、電流の波形に対する電位差の波形の位相差を求める処理部を備え、測定部は電流の周期の周波数を変えて測定を複数回行うものであり、処理部は、測定部の複数回の測定に基づき周波数と位相差との関係を求めるものである。
測定部が電流電極間に電流を供給すると電位電極間の電位差が変化し、この電位差の信号波形と電流電極間に一定周期で供給する電流の信号波形との間には位相差が生じる。処理部は電位差の信号波形と電流の信号波形に基づいて位相差を求める。そして、測定部は電流電極間に供給する電流の周波数を変えて前記測定を繰り返し行い、処理部は位相差と周波数との関係を求める。この関係は地盤毎に異なっているので、この関係に基づいて地盤を判別することができる。
また、請求項11記載の地盤探査装置は、予め求めておいた地盤別の周波数と位相差との関係データを記憶した記憶手段を備え、処理部は、記憶手段に記憶されている関係データと求めた関係とを対比して測定対象地盤を判別するものである。したがって、予め収集しておいた関係データとの対比によって、測定対象地盤の判別を行うことができる。
また、請求項12記載の地盤探査装置は、周波数と位相差との関係に関しては、位相差のピーク周波数に基づいて測定対象地盤を判別するものである。ここで、位相差のピーク周波数には、その周波数の値fmaxと当該周波数における位相差の大きさθmaxとが含まれる。即ち、処理部は、周波数と位相差との関係をグラフで表したときの位相差グラフがピークとなる周波数(臨界周波数fmax)とfmaxにおける位相差の大きさθmaxのうち、少なくともいずれか一方に基づいて地盤の判別を行う。
また、請求項13記載の地盤探査装置は、測線に沿って設置された多数の電流電極を備え、測定部は、使用する一対の電流電極の組合せを順次切り替えて測定を行うものである。したがって、電流電極の位置を測線に沿って順次移動させながら測定を行うことができる。
また、請求項14記載の地盤探査装置は、測線に沿って設置された多数の電位電極を備え、測定部は、使用する一対の電位電極の組合せを順次切り替えて測定を行うものである。したがって、電位差を測定する位置を測線に沿って順次移動させながら測定を行うことができる。
しかして、請求項1記載の地盤探査方法では、上述のようにして測定対象地盤を判別しているので、地盤を高精度で探査することができる。また、本発明では、計測した電流波形と電位差波形に対し複素フーリエ変換により抵抗と位相差を算出することができるので、ノイズによる影響を受け難く、探査精度を向上させることができる。
また、請求項2記載の地盤探査方法では、前述の2つの関係を予め求めておいた地盤別の周波数と抵抗との関係データ及び周波数と位相差との関係データと対比し、同一又は近似する場合に測定対象地盤が関係データの地盤であると判断するので、予め収集しておいた関係データとの対比によって測定対象地盤の判別を行うことができ、高精度に地盤探査を行うことができる。
また、請求項3記載の地盤探査方法では、上述のようにして測定対象地盤を判別しているので、地盤を高精度で探査することができる。また、本発明では、計測した電流波形と電位差波形に対し複素フーリエ変換により位相差を算出することができるので、ノイズによる影響を受け難く、探査精度を向上させることができる。
また、請求項4記載の地盤探査方法では、前述の関係を予め求めておいた地盤別の周波数と位相差との関係データと対比し、同一又は近似する場合に測定対象地盤が関係データの地盤であると判断するので、予め収集しておいた関係データとの対比によって測定対象地盤の判別を行うことができ、高精度に地盤探査を行うことができる。
また、請求項5記載の地盤探査方法では、周波数と位相差との関係に関しては、位相差のピーク周波数に基づいて測定対象地盤を判別するので、周波数と位相差との関係をグラフで表したときの位相差グラフがピークとなるfmaxとθmaxのうち、少なくともいずれか一方に基づいて地盤の判別を行うことができる。このため、地盤の判別を簡単、高精度に行うことができる。
また、請求項6記載の地盤探査方法では、測線に沿って多数の電流電極を設置し、使用する一対の電流電極の組合せを順次切り替えて測定を行うので、電流電極の位置を測線に沿って順次移動させながら測定を行うことができ、測線に沿った測定をすることができる。
また、請求項7記載の地盤探査方法では、測線に沿って多数の電位電極を設置し、使用する一対の電位電極の組合せを順次切り替えて測定を行うので、電位差を測定する位置を測線に沿って順次移動させながら測定を行うことができ、測線に沿った測定をすることができる。
さらに、請求項8記載の地盤探査装置では、上述のように構成されているので、周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係に基づいて電極を設置した地盤の判別を高精度に行うことができる。また、本発明では、計測した電流波形と電位差波形に対し複素フーリエ変換により抵抗と位相差を算出することができるので、ノイズによる影響を受け難く、地盤判別の精度を向上させることができる。
請求項9記載の地盤探査装置では、予め求めておいた地盤別の周波数と抵抗との関係データ及び周波数と位相差との関係データを記憶した記憶手段を備え、処理部は、記憶手段に記憶されている関係データと求めた関係とを対比して測定対象地盤を判別するので、予め収集しておいた関係データとの対比によって測定対象地盤の判別を行うことができ、高精度に地盤探査を行うことができる。
また、請求項10記載の地盤探査装置では、上述のように構成されているので、周波数と位相差との関係に基づいて電極を設置した地盤の判別を高精度に行うことができる。また、本発明では、計測した電流波形と電位差波形に対し複素フーリエ変換により位相差を算出することができるので、ノイズによる影響を受け難く、地盤判別の精度を向上させることができる。
請求項11記載の地盤探査装置では、予め求めておいた地盤別の周波数と位相差との関係データを記憶した記憶手段を備え、処理部は、記憶手段に記憶されている関係データと求めた関係とを対比して測定対象地盤を判別するので、予め収集しておいた関係データとの対比によって測定対象地盤の判別を行うことができ、高精度に地盤探査を行うことができる。
また、請求項12記載の地盤探査装置では、周波数と位相差との関係に関しては、位相差のピーク周波数に基づいて測定対象地盤を判別するので、周波数と位相差との関係をグラフで表したときの位相差グラフがピークとなるfmaxとθmaxのうち、少なくともいずれか一方に基づいて地盤の判別を行うことができる。このため、地盤の判別を簡単、高精度に行うことができる。
また、請求項13記載の地盤探査装置では、測線に沿って設置された多数の電流電極を備え、測定部は、使用する一対の電流電極の組合せを順次切り替えて測定を行うので、電流電極の位置を測線に沿って順次移動させながら測定を行うことができ、測線に沿った測定をすることができる。
また、請求項14記載の地盤探査装置では、測線に沿って設置された多数の電位電極を備え、測定部は、使用する一対の電位電極の組合せを順次切り替えて測定を行うので、電位差を測定する位置を測線に沿って順次移動させながら測定を行うことができ、測線に沿った測定をすることができる。
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図7に、本発明の地盤探査装置の実施形態の一例を示す。地盤探査装置1は、地盤2に設置された一対の電流電極3及び一対の電位電極4と、電流電極3間に一定周期で電流を供給して電位電極4間の電位差を測定する測定部5と、電流の波形に対する電位差の波形の抵抗及び位相差を求める処理部6を備え、測定部5は電流の周期の周波数を変えて測定を複数回行うものであり、処理部6は、測定部5の複数回の測定に基づき周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係を求めるものである。測定部5と処理部6は制御部28によって同期され制御されている。また、本実施形態では、予め求めておいた地盤2別の周波数と抵抗との関係データ及び周波数と位相差との関係データを記憶した記憶手段29を備えており、処理部6は、記憶手段29に記憶されている関係データと求めた関係とを対比して測定対象地盤2を判別するものである。
地盤2には、測線7に沿って多数の電流電極3と電位電極4が設置されており、多数の電流電極3の中から2個(一対)を選択して使用すると共に、多数の電位電極4の中から2個(一対)を選択して使用する。1本の測線7に対し、例えば60箇所の測点8が設定されており、各測点8には電流電極3と電位電極4が別々に設置されている。同一測点8の電流電極3と電位電極4は、測線7に直交する方向に並べて配置されている。電極3,4の各々は別々の導線によって測定部5の電極切替装置9の各接続端子10に接続されている。即ち、60個の電流電極3と60個の電位電極4はそれぞれ60本の導線を束ねた多芯ケーブル11によって電極切替装置9の対応する接続端子10に接続されている。測定部5は設置された電極3,4の中から使用する一対の電流電極3と一対の電位電極4の組合せを順次切り替えて測定を行う。例えば、四極法のDipole-Dipole法の電極配置で測定を行う。測線7として、例えば4本の測線7が設定されている。
図3に電流電極3を示す。電流電極3は、例えばステンレス製の電極であり、地表から例えば30〜40cmの深さまで差し込まれる。電流電極3の太さは例えば15mmである。また、図4に電位電極4を示す。電位電極4は、例えば鉛製の電極であり、地表から例えば30から40cmの深さまで差し込まれる。電位電極4の太さは例えば15mmである。電位電極4の周囲には導電性ゲル材(アースFC硬化剤)12が充填されており、分極が生じ難くなっている。
測定部5は送信装置13と受信装置14と電極切替装置9を備えている。送信装置13は、端子15間に一定周期で定電流を供給し、電流値と電流の送信周波数を調節することができる。電流値は例えば1mA〜400mAの範囲で、送信周波数は例えば0.01Hz〜10kHzの範囲で、それぞれ調節することができる。ただし、調節できる範囲はこれらに限るものではない。また、送信装置13は、定電流として、例えば電流を供給する。電流値は、測定条件等に応じて適宜選択される。
受信装置14は、電流検出回路16と受信増幅回路17とA/D変換器18を備えている。また、電位電極4からの信号を受け付ける受信チャネルとして、例えば4つのチャネルを有している。受信増幅回路17は受信チャネル数に対応して、例えば4つ設けられている。また、A/D変換器18は、増幅の程度に応じて、例えば3つ(0dB,20dB,40dB)設けられている。
電極切替装置9を図5及び図6に示す。電極切替装置9は、測線7上の複数の測点8にそれぞれ設置された電極の中から測定に使用する電流電極3と電位電極4を選択し、選択した電流電極3に通じる導線を送信装置13に接続すると共に、選択した電位電極4に通じる導線を受信装置14に接続するものである。導線を接続する接続端子10を複数の測線7に対応する数だけ設けて複数の測線7の電極3,4を接続可能としている。また、複数の測線7の中から測定に使用する1本の測線7を選択して接続を切替える測線選択部19と、測定に使用する測点8を選択して接続を切替える測点選択部20を備えている。本実施形態では、測点8には電流電極3と電位電極4が別々に設置されており、測線選択部19と測点選択部20は、電流電極3を送信装置13に接続する経路の途中と電位電極4を受信装置14に接続する経路の途中のそれぞれに設けられている。
電流電極3用の接続端子10と電位電極4用の接続端子10は、それぞれ240(=60×4)個ずつ設けられており、最大4本分の測線7(A測線7〜D測線7)の電流電極3と電位電極4を接続することができる。即ち、測点8の数と同じ数の接続端子10が1組となり、接続可能とする測線7の最大数と同じ組数の接続端子10が設けられている。また、1組の接続端子10には、最大60個の電極を接続することができる。各接続端子10には、各測線7の多芯ケーブル11の導線が1本ずつ接続されている。ここで電流電極3を例に説明すると、各測線7とも、1番目の測点8の電流電極3に通じる導線は1番目の接続端子10に、2番目の測点8の電流電極3に通じる導線は2番目の接続端子10に、…、n番目の測点8の電流電極3に通じる導線はn番目の接続端子10に、…、60番目の測点8の電流電極3に通じる導線は60番目の接続端子10に、それぞれ接続されている。電位電極4についても同様である。
なお、接続端子10の数は240個ずつに限るものではない。例えば、図5及び図6に破線で示すように、拡張用の接続端子10を電流電極3用と電位電極4用にそれぞれ120(60×2)個ずつ設けておき、測線7の数を必要に応じて6本まで増加できるようにしても良い。また、その他の数でも良い。あるいは、測線1本分の電極3,4のみを接続可能にしても良い。
測線選択部19は、測点8の数と同じ数だけ設けられた本線21と、各本線21を測線7の数と同じ数に分岐させた分岐線22と、分岐線22の途中に設けられたリレー23を備えている。分岐線22は接続端子10に接続されている。リレー23は測線7毎に組み分け(A組〜D組)されており、同じ組のリレー23は同時にオンオフ操作される。4つの組のうち、1つの組が択一的に選択されてオン操作される。例えば、A測線7を選択する場合にはA組のリレー23が全てオン操作され、他の組のリレー23は全てオフ操作される。B測線7、C測線7、D測線7を選択する場合も同様である。測線選択部19は電流電極3用のものと電位電極4用のものとで同じ構造である。
図5に示す電流電極3用の測点選択部20は、測定に使用する電流電極3の数に合わせて2つのスイッチ回路24を備えている。また、図6に示す電位電極4用の測点選択部20は、受信チャネル分の電位電極4の数に合わせて8つのスイッチ回路24を備えている。スイッチ回路24を図7に示す。スイッチ回路24は、端子25と各本線21を接続する分岐線26と、各分岐線26の途中に設けられたリレー27を備えている。本実施形態では、測点8の数に対応して60本の本線21を有しているので、60個のリレー27を有している。各リレー27は択一的にオン操作される。例えば、1番目の測点8の電流電極3を端子25に接続する場合には、1番目の本線21に接続された分岐線26に設けられているリレー27をオン操作する。2番目〜60番目の測点8の電流電極3を端子25に接続する場合も同様であり、また、電位電極4についても同様である。
例えば、A測線7の1,2番目の測点8の電流電極3と、3,4番目の測点8の電位電極4(1ch)と、5,6番目の測点8の電位電極4(2ch)と、7,8番目の測点8の電位電極4(3ch)と、9,10番目の測点8の電位電極4(4ch)を使用する場合には、以下のリレー23,27をオン操作する。図5の電流電極3側(送信装置13側)については、測点選択部20の一方のスイッチ回路24の1番目のリレー27と、他方のスイッチ回路24の2番目のリレー27をオン操作すると共に、測線選択部19のA組のリレー23を全てオン操作する。また、図6の電位電極4側(受信装置14側)については、測線選択部19の1chの一方のスイッチ回路24の3番目のリレー27と他方のスイッチ回路24の4番目のリレー27、2chの一方のスイッチ回路24の5番目のリレー27と他方のスイッチ回路24の6番目のリレー27、3chの一方のスイッチ回路24の7番目のリレー27と他方のスイッチ回路24の8番目のリレー27、4chの一方のスイッチ回路24の9番目のリレー27と他方のスイッチ回路24の10番目のリレー27をオン操作すると共に、測線選択部19のA組のリレー23を全てオン操作する。
各リレー23,27は、制御部28によって切替操作される。
電極切替装置9は、送信装置13の端子15と電流検出回路16の端子30を接続している。また、電極切替装置9は、受信チャネル毎に電位電極4と受信装置14の受信増幅回路17の端子31とを接続している。電流検出回路16と受信増幅回路17は、3つのA/D変換器18を介して処理部6に接続されている。その接続にはUSB端子が使用されている。
処理部6は、抵抗及び位相差算出手段32、関係算出手段33、判別手段34を備えている。本実施形態では、処理部6と制御部28をコンピュータによって実現している。即ち、少なくとも1つのCPUやMPUなどの中央演算装置と、データの入出力を行うインターフェースと、プログラムやデータを記憶する記憶装置等を備えるコンピュータと所定の制御ないし演算プログラムによって、抵抗及び位相差算出手段32、関係算出手段33、判別手段34、制御部28を実現している。即ち、中央演算装置は、記憶装置に記憶されたOS等の制御プログラム、周波数と抵抗との関係データ及び周波数と位相差との関係やそれらの関係に基づいて岩盤を判別する方法などの手順を規定したプログラム及び所要データ等により、抵抗及び位相差算出手段32、関係算出手段33、判別手段34、制御部28を実現している。また、コンピュータには、例えばディスプレイやプリンター等の出力装置35が接続されている。コンピュータとして、例えば作動周波数1.4GHzクラスのCPUを搭載するパーソナルコンピュータの使用が可能である。また、そのOSとしては、一般に市販され広く普及している例えばWindows(登録商標)等の使用が可能である。
抵抗及び位相差算出手段32は、送信装置13が送信した定電流の信号波形と、測定部5によって測定された電位電極4間の電位差の信号波形とを比較し、電流の信号波形に対する電位差の信号波形の抵抗及び位相差を求める。測定部5は電流の周波数fを変化させて測定を複数回繰り返し行い、抵抗及び位相差算出手段32は繰り返し行われる測定毎に抵抗及び位相差を算出する。算出した抵抗R及び位相差θは定電流の周波数fとともに関係算出手段33に送信される。
関係算出手段33は、抵抗及び位相差算出手段32から供給されたデータに基づいて周波数fと抵抗Rとの関係及び周波数fと位相差θとの関係を求める。周波数fと抵抗Rとの関係及び周波数fと位相差θとの関係の一例を図8に示す。いま、測定部5が周波数fを変えた測定を10回繰り返したとすると、得られたデータ(周波数,抵抗)は、(f1,R1)、(f2,R2)、(f3,R3)、…、(f10,R10)となるので、縦軸に抵抗Rを、横軸に周波数fをとってグラフ化すると、図8に示す関係が得られる。同様に、得られたデータ(周波数,位相差)は、(f1,θ1)、(f2,θ2)、(f3,θ3)、…、(f10,θ10)となるので、縦軸に位相差θを、横軸に周波数fをとってグラフ化すると、図8に示す関係が得られる。周波数fと抵抗Rとの関係を表す抵抗グラフは途中で傾斜をもつ形状となり、周波数fと位相差θとの関係を表す位相差グラフは抵抗グラフの最大傾斜の周波数でピークを示す山形形状となり、地盤2の状況・含水率等に応じてその形状が変化する(図9、図10)。
関係算出手段33が求めた周波数fと抵抗Rとの関係及び周波数fと位相差θとの関係は判別手段34に出力される。判別手段34は、周波数fと抵抗Rとの関係及び周波数fと位相差θとの関係に基づいて測定対象の地盤2を判別する。ここでは、周波数fと位相差θとの関係に関しては、位相差のピーク周波数に基づいて測定対象地盤2を判別する。ここで、位相差のピーク周波数には、その周波数の値fmaxと当該周波数fmaxにおける位相差の大きさθmaxとが含まれる。記憶手段29には予め求めておいた地盤別の周波数と位相差との関係データ(ここではfmaxとθmax)が記憶されており、判別手段34は記憶手段29に記憶されている関係データとの対比によって測定対象地盤2の判定を行う。また、これに加えて周波数fと抵抗Rとの関係にも基づいて測定対象地盤2を判別する。記憶手段29には予め求めておいた地盤別の周波数と抵抗との関係データが記憶されており、判別手段34は記憶手段29に記憶されている関係データとの対比によって測定対象地盤2の判定を行う。例えば、fmaxと、θmaxと、周波数と抵抗との関係とが一致又は近似する場合に、測定対象地盤2が対比しているサンプル地盤であると判断する。
記憶手段29としては、例えばハードディスク、メモリ、DVD、CD、MO、フロッピーディスク(登録商標)等の使用が可能である。
地盤探査装置1は、例えば測定現場に設置されている。ただし、必ずしも地盤探査装置1の全てを測定現場に設置する必要はなく、例えば電極3,4及び測定部5を測定現場に設置すると共に、処理部6及び制御部28を例えば研究所等の遠隔地に設置し、これらを例えばインターネット、専用線、無線通信線等の電気通信回線を使用して接続しても良い。なお、この場合には、制御部28とは別に測定部5専用の制御部を測定部5に設けることが好ましい。このような構成の地盤探査装置1は、特に、地盤2を長期間にわたりモニタリングする場合等の使用に適している。即ち、例えば高レベル放射性廃棄物の地層処分、石油や液化天然ガス等の液体の地下岩盤貯蔵、地下発電所等、大規模地下空間の掘削に伴う空洞周辺岩盤全域の水理的な挙動を長期間モニタリングする場合の地盤探査装置1としての使用に特に適している。
この地盤探査装置1によれば、(1)広帯域(例えば0.01Hz〜10kHz)中任意の周波数の電流に対する地盤の電気特性(抵抗及び位相差)を測定することができる。(2)最大60点の測点8に対応し、あらゆる電極配置の組み合わせに対応することができる。また、例えば4chの受信回路を有し、例えばdipole-dipole法では1組の電流電極(送信電極)3対に対し4箇所4組の電位電極(受信電極)4対での信号を同時に計測することができる。(3)送信装置13が送信する電流の周波数の切替、電極切替装置9のリレー23,27の切替、送信装置13の送信電流のレベル・受信装置14の受信ゲインの調整などの一連の測定操作は、コンピュータによる制御で全て自動的に行うことができる。等の効果がある。
次に、本発明の地盤探査方法について説明する。この方法は、測定対象地盤2に設置した一対の電流電極3間に一定周期で電流を供給して測定対象地盤2に設置した電位電極4間の電位差を測定し、電流の波形に対する電位差の波形の抵抗及び位相差を求め、電流の周期の周波数を変えて測定を複数回行い周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係を求め、上述の2つの関係に基づいて測定対象地盤2を判別するものである。
本実施形態では、受信装置14は4チャネル(1ch〜4ch)の受信チャネルを有しているが、説明を簡単にし理解を容易にするために、まず最初に4チャネル有ることを考慮しないで説明し、その後4チャネル有ることを考慮した場合について説明する。また、同様の理由から、まず最初に使用する電流電極3と電位電極4を変化させることを考慮しないで説明し、その後使用する電流電極3と電位電極4を変化させることを考慮して説明する。
測定部5の送信装置13が例えば周波数f1で電流を送信すると、電流電極3間にの電流が周波数f1で流される。同時に、電流は受信装置14の電流検出回路16にも供給され、基準抵抗で電圧信号としてA/D変換器18を通じて処理部6の抵抗及び位相差算出手段32に出力される。
電流電極3間に電流が流されると、電位電極4間の電位差が変化する。一対の電位電極4によって測定された電位差信号は受信装置14の受信増幅回路17に供給され、増幅された後、A/D変換器18を通じて処理部6の抵抗及び位相差算出手段32に出力される。測定部5は、処理部6に電流信号と電位差信号を出力したことを制御部28に知らせる。
処理部6の抵抗及び位相差算出手段32は、受信装置14から供給された電位差信号と電流信号とを比較し、電流の波形に対する電流の波形の抵抗R1及び位相差θ1を求める。そして、抵抗及び位相差算出手段32は求めた抵抗R1及び位相差θ1を電流の周波数f1とともに関係算出手段33に送信する。
一方、測定部5は、電流信号と測定した電位差信号を処理部6に出力した後、制御部28の命令に受けて、電流の周波数を変化(f1→f2)させて上述の測定を繰り返し行う。これにより、周波数を変えた測定用電流信号と測定した電位差信号が処理部6の抵抗及び位相差算出手段32に供給される。そして、電流の周波数をf2に変えて上述の測定を行った結果、抵抗及び位相差算出手段32が算出した抵抗がR2、位相差がθ2であったとすると、データとしてf2とR2及びθ2が関係算出手段33に送信される。
そして、測定部5による周波数を変えた繰り返しの測定が終了すると、関係算出手段33は制御部28の命令を受けて周波数fと抵抗Rとの関係及び周波数fと位相差θとの関係を求める。例えば周波数がf1、f2、…、f10のとき、抵抗がR1、R2、…、R10、位相差がθ1、θ2、…、θ10であったとすると、図8に示すような関係が求められる。
周波数と位相差との関係を図9及び図10に示す。図9に示すように、位相差グラフは地盤2中に分極現象を発生する粘土鉱物が多く含まれるほど大きくなる(図9のA→B→Cの順)。また、図10に示すように、分極現象を発生する粘土鉱物を含む地盤2の性質(間隙率、鉱物の配列構造)、物理的な性質(例えば含水率)等により、位相差グラフのピーク周波数の値fmaxは変化する。このため、地盤2の種類が変われば位相差グラフも変化する。また、周波数と抵抗との関係を示す抵抗グラフも地盤2の種類が変われば変化する。したがって、測定によって図8に示すような関係を求めることで、地盤2を判別することができる。
本実施形態では、各種サンプル地盤2について予め周波数と位相差との関係及び周波数と抵抗との関係を求めておき、それらを関係データとして記憶手段29に記憶してあるので、判別手段34は記憶手段29にアクセスし、記憶されている関係データと関係算出手段33が算出した周波数と位相差との関係及び周波数と抵抗との関係を対比し、測定対象地盤2を判別する。例えば、位相差グラフのピーク周波数の値fmaxと、当該周波数における位相差の大きさθmaxと、周波数と抵抗との関係とに基づいて測定対象地盤2を判別する。例えば、fmaxと、θmax、周波数と抵抗との関係とが一致又は近似するサンプル地盤2を、測定対象地盤2と判断する。このようにすることで、高精度の判別を行うことができる。特に、周波数と位相差との関係及び周波数と抵抗との関係という2つの関係に基づいて判別を行うので、非常に高精度の判別を行うことができる。
なお、周波数fと位相差θとの関係には、(1)fmaxとθmaxの組み合わせ、の他に、(2)fmaxのみ、(3)θmaxのみ、(4)これらと位相差グラフの形状との組み合わせ、(5)位相差グラフの形状のみ、が含まれる。
したがって、例えば地盤判別の精度にそれ程高い精度が要求されない場合等には、fmaxとθmaxのうち、いずれか一方にのみ基づいて地盤2を判別しても良い。また、例えば地盤2中に含まれる粘土鉱物の多少を判別することを目的にする場合等には、θmaxに基づいて地盤2の判別を行っても良い。さらに、例えば粘土鉱物を含む地盤2の性質(間隙率、鉱物の配列構造)、物理的な性質(例えば含水率)等を判別することを目的にする場合等には、fmaxに基づいて地盤2の判別を行っても良い。
また、周波数と位相差との関係については、位相差グラフの形状に基づいて地盤2を判別しても良い。例えば、各種サンプル地盤2について予め周波数と位相差との関係を求めて位相差グラフを求めておき、これらを関係データとして記憶手段29に記憶しておく。判別手段34は記憶手段29にアクセスし、記憶されている関係データと関係算出手段33が求めた周波数と位相差との関係(ここでは位相差グラフの形状)を対比し、測定対象地盤2を判別する。例えば、位相差グラフの形状が一致又は近似するサンプル地盤を、測定対象地盤2と判断する。このようにすることで、高精度の判別を行うことができる。同様に、周波数と抵抗との関係についても、抵抗グラフの形状に基づいて地盤2を判別しても良い。
また、抵抗及び位相差グラフの形状に基づいて地盤2を判別する場合には、抵抗及び位相差グラフのフィッティングにより直流比抵抗R0、チャージアビリティm等を求め、これらに基づいて判別を行っても良い。
即ち、地盤2のスペクトルIP(Induced-Polarization:分極)現象を説明する等価な電気回路モデルの一つとして、Cole-Coleモデル(コールコールモデル;Patron,1978)がある。これは数学的には複素数であり4つの未知数を含む数式1で示される。
ここに、R0は直流比抵抗、mはチャージアビリティ(chargeability)、τは緩和の時定数(sec)、cは周波数依存係数、ωは角周波数、iは√(-1)である。
4つの未知数とは数式1中のR0、m、τ、cのことであり、数学的には最小二乗法により観測した位相差(および抵抗)データに最もよく整合する“解”として求めることができる。物理的なイメージを、図12に示す。図12は、時間領域でみたIP現象の概念図である。なお、図12(a)は送信電流波形を、(b)は受信電位波形をそれぞれ示している。
R0は直流電流に対する電位より求まる抵抗(=測定電位/直流電流)である。mは地盤2の充電効果(電荷を蓄える性質)の強さを表す指標で、過渡応答の積分値に関連する。τは分極現象の時間的な長さに関連し、時間領域でIP現象を見た場合、電流を流している期間に地盤2に蓄えられた電荷が電流遮断後に地盤2から流れる電流により観測される電位波形、すなわち“過渡応答”の時間的な長さに関連する。cは分極の支配過程に伴う係数で、分極現象が単一の支配過程による場合はc=1となる(そうでない場合cは1以下になる)。分極現象の支配過程としては、鉱石と地下水中のイオンとの電荷の移動過程、電気二重層の充電・放電過程、電気二重層の構造が変化するのに伴いイオンの拡散過程などがある(電気二重層とは鉱物粒子(固体)とそれを取り巻く地下水(液体)との境界面に形成されるイオン濃度が高い領域をいう)。
位相差グラフは、地盤2の含水率等によりfmaxとθmaxが変化するだけではなく、グラフの山形の曲線形状(太さや対称性)も変化する。上記4つのパラメータからIP特性をより詳細に数値的な指標として表すことができる。即ち、上記4つのパラメータを求め、これに基づいて測定対象地盤2の判別を行うことができる。例えば、各種サンプル地盤2について予め上記4つのパラメータを求めておき、これらを関係データとして記憶手段29に記憶しておく。判別手段34は記憶手段29にアクセスし、記憶されている関係データと関係算出手段33が求めた周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係(ここでは、上記4つのパラメータ)を対比し、測定対象地盤2を判別する。例えば、上記4つのパラメータが一致又は近似するサンプル地盤2を、測定対象地盤2と判断する。このようにすることで、さらに高精度の判別を行うことができる。
なお、図12に示すような時間領域で計測した過渡応答曲線からIP特性を求めることも可能ではある。しかし、この場合には次のような欠点がある。即ち、実際ノイズがあるフィールドでは、図12(b)で示すような過渡応答を計測するのは困難である。また、測定システムそのものの周波数特性の補正を正確に行うのは困難である。これらに対し、測定に使用する電流の周波数を変えて複数回測定を繰り返す手法(周波数領域での計測)は、ノイズに強く単一周波数ごとに確実にデータを計測していくことができる。
本実施形態では受信装置14は4チャネルの受信チャネルを有しているので、同時に4箇所4対の電位電極4間の電位差を測定できる。このため、4箇所の電位差信号が一度に受信装置14から抵抗及び位相差算出手段32に供給され、抵抗及び位相差算出手段32は4箇所の抵抗及び位相差を一度に算出する。そして、算出された4箇所の抵抗及び位相差は一度に関係算出手段33に供給され、関係算出手段33は4箇所についての周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係を並行して求める。求められた4箇所についての周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係は判別手段34に一度に供給され、判別手段34では、4箇所について地盤2の判別を一度に行う。このように、受信チャネルを4チャネル有することで、一度に4箇所についての処理を行うことができるので、短時間で電気探査を終了することができる。
次に、電流電極3と電位電極4の組み合わせを変えて測定を行う場合について説明する。例えば、以下の(1)〜(3)の順序で測定を行う。
(1)まず、1つの測線7を選択し、1つの組み合わせの電流電極3に対し、電位電極4の組み合わせを変化させて測定を行う。電流電極3以外の測点8の電位電極4について、その組み合わせを変えて測定を行う(図13(a))。なお、図13の黒三角形は電位電極4となる測点8を、斜線の三角形は電流電極3となる測点8を、白色の三角形は測定に使用しない測点8を示している。また、C1,P1a等の文字は端子25を示している。
(2)次に、電流電極3の組み合わせを変えて(1)の測定を繰り返す。全ての電流電極3の組み合わせについて測定を行う。これにより1つの測線7についての測定が終了する。(図13(b))
(3)次に、測線7を変えて(1)と(2)の測定を繰り返し行う。そして、全ての測線7について測定を行う。
表1に、1つの測線7についての電極3,4の組み合わせの変化を示す。なお、表1中の電極3,4についての番号は、測点8を意味する。例えば、番号1の電流電極3は、各測線7に設けられている60箇所の測点8のうち1番目の測点8の電流電極3を意味し、番号60の電位電極4は、各測線7に設けられている60箇所の測点8のうち60番目の測点8の電位電極4を意味する。
4本の測線7のうち、最初にA測線7について測定を行う。例えば1回目の測定では1,2番目の測点8の電流電極3を選択し、電位電極4の組み合わせを変化させて測定を行う(表1のA)。なお、4チャネルを使用して測定を行うので、8回目の測定では1チャネルのみを使用する。
そして、1,2番目の測点8の電流電極3に対し、3〜60番目の測点8の電位電極4を使用した測定が終了した後、電流電極3を1,3番目の測点8の電流電極3に変えて、2,4〜60番目の測点8の電位電極4を使用して測定を行う(表1のB)。そして、1,3番目の測点8の電流電極3に対し、2,4〜60番目の測点8の電位電極4を使用した測定が終了した後、さらに、電流電極3の組み合わせを変えて測定を行い、全ての電流電極3の組み合わせについて測定を行う(表1のC)。これにより、A測線7についての測定が終了する。次に、同様の測定をB測線7→C測線7→D測線7についても行う。これにより、測定が終了する。
このように4本の測線7について測定を行うことで、地盤2についての周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差の関係を三次元的に求めることができる。そのイメージを図14に示す。なお、図14には、測線7が1本しか記載されていないが、測線7を複数設けることで地盤2中の周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係の空間分布を求めることができ、地盤2を三次元的に探査することができる。測定部5はコンピュータ制御によって自動的に電極切替装置9のリレー23,27を切替えるので、迅速に測定を行うことができ、電極2,3の組み合わせが多数あっても測定に要する期間を短くできる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、上述の説明では、四極法のDipole-Dipole法の電極配置を例に説明したが、Dipole-Dipole法に限るものでなく、Wenner法、Eltran法、シュランベルジャー法でも良い。また、四極法に限るものではなく、二極法、三極法の電極配置でも良い。
なお、二極法の場合には、60個の電流電極3のうちいずれか1つを電流遠電極として固定的に使用すると共に、60個の電位電極4のうちいずれか1つを電位遠電極として固定的に使用することが考えられる。例えば、59番目の電流電極3(59番目の測点8の電流電極3をいう、以下同様)を電流遠電極として固定的に使用し、60番目の電位電極4(60番目の測点8の電位電極4をいう、以下同様)を電位遠電極として固定的に使用する。即ち、測線7が切り替わっても、例えば59番目の電流電極3と60番目の電位電極4は常に遠電極となる。この場合、電極切替装置9の電流電極3用の測点選択部20の2つのスイッチ回路24のうち、片方のスイッチ回路(例えばC2端子25側の回路)24の59番目のリレー27(59番目の本線21に接続された分岐線26に設けられているリレー27をいう、以下同様)をオン状態に維持すると共に、電位電極4用の測点選択部20の8つのスイッチ回路24のうち、1ch〜4chの片方のスイッチ回路(例えばP2a、P2b、P2c、P2d端子25側の回路)24の60番目のリレー27をオン状態に維持する。
また、三極法の場合には、60個の電流電極3のうちいずれか1つを電流遠電極として固定的に使用することが考えられる。例えば、60番目の電流電極3を電流遠電極として固定的に使用する。即ち、測線7が切り替わっても、例えば60番目の電流電極4は常に遠電極となる。この場合、電極切替装置9の電流電極3用の測点選択部20の2つのスイッチ回路24のうち、片方のスイッチ回路(例えばC2端子25側の回路)24の60番目のリレー27をオン状態に維持する。
また、上述の説明では、測点8には電流電極3と電位電極4が別々に設置されていたが、必ずしもこの構成に限るものではなく、測点8に電流電極3と電位電極4を兼用する兼用電極を設置しても良い。
兼用電極を設置した場合の電極切替装置9を図11に示す。この電極切替装置9の測線選択部19と測点選択部20は、兼用電極を送信装置13又は前記受信装置14に接続する経路の途中に設けられている。即ち、上述の電極切替装置9では、図5及び図6に示すように測線選択部19と測点選択部20を電流電極3用のものと電位電極4用のものとに分けていたが、図11の電極切替装置9では、測線選択部19と測点選択部20とを共通にしている。測線選択部19は、図5又は図6の測線選択部19と同じ構成である。測点選択部20は、測定に同時使用する電流電極3と電位電極4の合計数に合わせて10個のスイッチ回路24を備えている。より具体的には、送信装置13に接続する2つのスイッチ回路24(C1端子25用とC2端子25用)と、受信装置14の1chに接続する2つのスイッチ回路24(P1a端子25用とP2a端子25用)、2chに接続する2つのスイッチ回路24(P1b端子25用とP2b端子25用)、3chに接続する2つのスイッチ回路24(P1c端子25用とP2c端子25用)、4chに接続する2つのスイッチ回路24(P1d端子25用とP2d端子25用)を備えている。各スイッチ回路24は図7のスイッチ回路24と同じである。また、兼用電極を使用することで電極3,4の数が全体として1/2になるので、接続端子10の数も1/2となる。
例えば、A測線7の1,2番目の兼用電極を電流電極3として、3,4番目の兼用電極を電位電極4(1ch)として、5,6番目の兼用電極を電位電極4(2ch)として、7,8番目の兼用電極を電位電極4(3ch)として、9,10番目の兼用電極を電位電極4(4ch)としてそれぞれ使用する場合には、以下のリレー23,27をオン操作する。例えば、測点選択部20のC1用スイッチ回路24(C1端子25用のスイッチ回路24をいう、以下同様)の1番目のリレー27、C2用スイッチ回路24の2番目のリレー27、P1a用スイッチ回路24の3番目のリレー27、P2a用スイッチ回路24の4番目のリレー27、P1b用スイッチ回路24の5番目のリレー27、P2b用スイッチ回路24の6番目のリレー27、P1c用スイッチ回路24の7番目のリレー27、P2c用スイッチ回路24の8番目のリレー27、P1d用スイッチ回路24の9番目のリレー27、P2d用スイッチ回路24の10番目のリレー27をオン操作すると共に、測線選択部19のA組のリレー23を全てオン操作する。
兼用電極を使用する場合には、必要な電極の数を半分にできると共に、電極切替装置9の構成が簡単なものになり、電極の設置等の準備作業が容易になると共に、電極切替装置9の製造コストを安くすることができる。
また、上述の説明では、測線7として4本の測線7を設定していたが、設定する測線7の数は4本に限るものではない。例えば1本、2本、3本、5本以上でも良い。
また、上述の説明では、1本の測線7に60箇所の測点8を設けたが、1本の測線7に設ける測点8の数は60箇所に限るものではない。なお、測点8の数の増減に応じて電極切替装置9の接続端子10や本線21、リレー23,27等の数を増減させても良いが、測点8の数が電極切替装置9の接続端子10や本線21、リレー23,27等の数よりも少ない場合には、測点8に対応する接続端子10や本線21、リレー23,27等を使用し、余った接続端子10、本線21、リレー23,27等は不使用にすれば良い。
さらに、上述の説明では、地盤探査装置1が判別手段34を備えていたが、判別手段34を省略すると共に、関係算出手段33によって求められた周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係を出力装置35に出力するようにしても良い。
また、上述の説明では、周波数と抵抗との関係及び周波数と位相差との関係の2つの関係に基づいて地盤2を判別していたが、必ずしもこれに限るものではなく、周波数と位相差の関係に基づいて地盤2を判別するようにしても良い。この場合には、判別の精度をある程度高く維持しつつ、計算量の減少により迅速に測定を行うことができる。