以下、本発明に係る光情報記録装置を添付図面を参照して詳細に説明する。尚、本発明は、以下説明する実施形態に限らず適宜変更可能である。
図1は、本発明に係る記録パルスの構成と記録条件決定の全体フローを示す概念図である。同図(a)に示すように、本発明に係る記録パルス10は、該記録パルスの先端に位置するトップパルス12と、該トップパルスに続く後続パルス14とで構成される。
ここで、記録パルス10の長さをn’Tとすると、トップパルス12はm’Tの長さを有し、後続パルス14は(n−m)Tの長さを有する。本実施形態では、m=3、n=3〜11および14の値をとるものとする。Tは光ディスクシステムにて定義された単位時間であり、その周期はクロック信号によって決定される。
記録パルス10の条件は、同図(b)に示す一連のフローを実行することによって決定される。このフローは、光情報記録装置(以下、「記録装置」または「ドライブ」という)に光情報記録媒体(以下、「メディア」または「ディスク」という)を装填した状態でのテスト記録を伴って実行される。
同図(b)に示すように、記録パルス10の条件を決定する際には、まず、m’T長のパルス条件を決定し(ステップS100)、その後、このm’T長の条件を利用して、m’T長のパルス条件と(n−m)T長のパルス条件との比率となるm’T/(n−m)Tを求める(ステップS200)。その後、この比率に基づいてnTパルスを構成し(ステップS300)、最後に位相ずれ補正を行ってn’T長の記録パルスの条件を決定する(ステップS400)。
図2は、本発明に係るドライブの内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、このドライブ100は、レーザ発振器1103から出力されたレーザ光を用いて、メディア50に対する情報の記録再生を行う。
メディア500に対して情報の記録を行う場合は、所望の記録情報に対応した記録信号をエンコーダ1101でEFM方式で符号化し、この符号化した記録データをストラテジ回路1102に加える。
ここで、このストラテジ回路1102には、所定のストラテジの各種設定パラメータが設定されており、該ストラテジ回路1102は、ストラテジの各種設定パラメータを補正して、レーザ発振器1103から出力されるレーザ光の強度やパルス幅を制御し、所望の記録状態が得られるであろう記録パルスを生成する。
ストラテジ回路1102で形成された記録パルスは、レーザ発振器1103に加えらえ、レーザ発振器1103は、この記録パルスに対応して出力レーザ光を制御し、この制御されたレーザ光をレンズ1104、ハーフミラー1105、レンズ1106を介して線速一定若しくは回転速度一定で回転するメディア500に照射し、これによりメディア500に、所望の記録データに対応したピット、ランド列からなる記録パターンが記録される。
一方、メディア500上に記録された情報の再生を行う場合は、レーザ発振器1103から一様な再生レーザ光がレンズ1104、ハーフミラー1105、レンズ1106を介して線速一定若しくは回転速度一定で回転するメディア500に照射される。
この時、再生レーザ光は、記録時にレーザ発振器1103から出力されるレーザ光よりも強度の弱い再生レーザ光が用いられ、この再生レーザ光によるメディア500からの反射光は、レンズ1106、ハーフミラー1105、レンズ1107を介して受光部1108で受光され、電気信号に変換される。
受光部1108から出力される電気信号は、メディア500に記録されたピット、ランドからなる記録パターンに対応している。この受光部1108から出力される電気信号は、同期信号検出回路1109で該電気信号に含まれるウォブル成分から所定周期のクロック信号が生成され、その後、2値化回路1110で2値化され、さらにデコーダ1111でデコードされて再生信号として出力される。
このように、ドライブとメディアで構成された記録システムの記録品位は、ドライブの特性ばらつきとメディアの特性ばらつきに左右されるため、この影響を前述のストラテジが吸収することで記録品位の向上が図られる。尚、メディアとしては、CD−RやDVD−Rに代表される色素型メディアやCD−RWやDVD−RWに代表される相変化型のメディア等の各種光情報記録媒体の適用が可能である。
以下、上述したドライブが実行する図1(b)に示した記録パルス条件決定フローの詳細を説明する。
(m’T条件の決定)
図3は、図1に示したm’T決定フローの詳細な実行手順を示すフローチャートである。同図に示すように、前述のドライブ100は、該ドライブの初期設定を行うまでステップS110〜S114までを実行し、次に、テスト記録の条件を決めるまでのステップS116〜S122までを実行し、その後、決定した条件でテスト記録を行うステップS124を実行し、その結果に基づいてmTパルスの条件を決定するステップS126を実行する。以下、これら各ステップの詳細を説明する。
(基準条件の決定)
図3に示すステップS110では、まず、任意の標準的なメディアを用いて記録速度を変化させながらテスト記録を行い、1つのパルス幅と3つのパワー値を基準条件として求める。3つのパワー値としては、上記テスト記録の結果、ジッタが最小となった値と、その前後に位置する2つのパワー値を用いることが望ましい。前後2つのパワー値としては、ジッタ良否の基準となる閾値近傍の値を用いることが好ましい。ここで求めた基準条件が後の記録品位検査の際に利用される。
(基準閾値の決定)
後述するように、本発明ではジッタ閾値以下の領域をテスト記録条件の範囲(以下、「テスト領域」という)として設定することを意図しているため、この判断基準となる閾値を決定する必要がある。閾値の値としては、ドライブやメディアの種類に応じて標準的な値を用意しておいても良いが、ジッタの許容領域のミニマムラインを示す閾値は、図2に示したピックアップを構成する光学系部品やその他の要素の状態によって変化し、また、メディアを記録する速度によっても変化する。
従って、この閾値も実際に使用するドライブとメディアの組み合わせごとに求め、より的確な判断基準を持たせることで、より的確なテスト領域の設定を行うことが推奨される。
もっとも、この閾値をドライブとメディアの組み合わせごとに設定することは、記録工程の増加要因にもなるため、ドライブ個体ごとのバラツキが閾値変動の主要因と仮定して、ドライブ製造時に個体ごとに適した閾値を記憶領域1115に格納しておいても良い。
図4は、図3に示す基準閾値の決定ステップの詳細を示すフローチャートである。同図に示すように、基準閾値の決定は、所定の記録条件による記録再生を行い、その結果に基づいてシステムとしての基準値を決定し、該基準値から所定のマージンを確保した値をテスト領域決定の際に使用する閾値とすることで行われる。以下、各ステップを順に説明する。
まず、記録条件設定を行うステップS150を実行し、このステップでは、パルス幅、パワー、記録再生速度、記録アドレス等の記録再生に必要な条件を所定のパターン用意し、この記録条件をドライブに設定した後、該ドライブ内に基準メディアを装填する。基準メディアとしては、各種のメディアがある中から特性が標準的なものを選ぶことが望ましい。
次に、上記のステップS150で設定した記録条件で装填した基準メディアに対して、記録と再生を行うステップS152を実行し、各記録条件における記録再生特性値、例えばジッタを取得する。ここで取得する特性値としては記録品位を示す値を選択する。
続いて、上記ステップS152で取得した記録再生特性値から最良の値、例えば、ジッタの最小値を求め、これをシステム基準値とするステップS154を実行する。これにより、当該ドライブで最適値に近いと思われるジッタ値が基準値として設定される。尚、この基準値はジッタ最適点ではなく、所定の閾値と交差する2点の中間値、即ちパワーマージンの中間値としても良い。
最後に、上記ステップS154で決定したシステム基準値に対して、所定の係数α(α>1とすることが望ましい)を掛け合わせた値を閾値として算出するステップS156を実行する。これにより、システム基準値に対して所定のマージンを持たせた形で判断が行われる。即ち、システム基準値を用いた閾値の算出は、閾値=システム基準値×αで行われ、係数αとしては、およそ1.5程度の値を用いることが望ましい。尚、この係数αはドライブやメディアの種類に応じて適切な値を設定すれば良く、α=0.8〜1.2のようにシステム基準値に近い値を設定しても良いし、α=2.0〜3.0のように、大きめに設定しても良い。
図5は、図4に示したフローの一実施例を示す概念図である。同図に示す例は、記録品位を示す特性値としてジッタ値を用い、W1〜W4までの各パルス幅に対してパワーをP1〜P6まで変化させて、再生特性202−1〜202−4までを得たときの例である。同図に示す例では、パルス幅W1〜W4とパワーP1〜P6が記録条件となり、最も低いジッタ値が得られた再生特性102−3の極がシステム基準値となり、このシステム基準値に例えば1.5を乗じて得られた値が閾値となる。尚、同図中のマトリクス内に示された矢印はテスト条件を変化させる方向を示し、以下の説明においても同様の意味で使用する。
図6は、図4に示したフローの一実施例を示す概念図である。同図に示す例は、記録品位を示す特性値としてジッタ値を用い、W1〜W4までの各パルス幅ごとにパワーの変化範囲を変えて、再生特性202−1〜202−4までを得たときの例である。同図に示す例では、最も低いジッタ値が得られた再生特性202−2の極がシステム基準値となり、このシステム基準値に例えば1.5を乗じて得られた値が閾値となる。このように、閾値の決定は、パルス幅ごとにパワー条件を変更して求めることも可能である。
図7は、ドライブごとに閾値を求める場合の例を示す概念図である。ドライブの個体ばらつきに応じた閾値設定が所望される場合には、同図に示すように、各ドライブ100−1〜100−5のそれぞれで共通の基準メディア50を記録再生し、各ドライブごとに固有の閾値1〜5を記憶させておく。
尚、閾値の設定工程を簡易化したい場合は、標準的なドライブ数個のそれぞれで共通の基準メディアを記録再生して得られた閾値1〜5の平均を取り、この平均閾値を他のドライブの閾値として使用してもよい。
このとき、平均閾値を求めるために使用したドライブは、同一設計のものでも、完全に同一設計ではなく類似設計のものであっても良い。また、これらドライブの閾値として平均閾値を使用することも可能である。さらに、一度求めた平均閾値を、以後製造される同一または類似設計のドライブの閾値として汎用的に使用しても良い。また、バラツキを持った複数台のドライブを意図的に用意し、これらの平均値を求めてもよい。
(記録装置の初期設定)
以上説明した図3のステップS110およびステップS112で求めた基準条件と基準閾値をドライブ100内の記録領域115に格納するステップS114を実行する。この工程はドライブ100の製造時に行っておくことが望ましい。
(記録対象メディアの装填)
続いて、ステップS114の初期設定が完了したドライブ100内に、情報記録を行うメディア50を装填するステップS116を実行する。
(基準条件による記録再生)
次に、ステップS114で設定した条件を用いて、ステップS116で装填したメディア50に記録を行うステップS118を実行する。具体的には、基準条件として定義された1つのパルス幅と3種類のパワー値を用いて3回の記録再生を行い3点のジッタ値を得る。この3点のジッタ値をパワー軸との関係でプロットすると、ドライブ100とメディア50の組み合わせに応じた記録特性の傾向が明らかになる。
(記録品位の検査)
図8は、図3のステップS120で実行した記録品位検査の結果、谷型パターンが得られた例を示す概念図である。同図に示すように、記録品位の検査は、前述までのステップで得られた各基準条件に対するジッタ値と閾値とを用いて行う。同図に示す例は、基準条件としてパワーP1、P2、P3を用いたときの例であり、各パワー値で得られたジッタ値を結ぶ仮想線が谷型のパターンとなる。このような谷型のパターンが得られたときは、ステップS110で使用した基準メディアとステップS116で装填した記録対象メディアとが同感度であり、記録特性が類似していることを意味する。
ここで、同図(a)は谷型パターンの最小値が閾値以下となる例であり、同図(b)は谷型パターンの最小値が閾値以上となる例であり、いずれのパターンにおいても基準メディアと記録対象メディアは同感度と考えられる。このように、基準メディアと記録対象メディアが同感度であった場合は、後述するように、テスト記録で使用する条件は、基準条件を中心としたパワー×パルス幅の面領域で設定する。
ここで、同図(a)と(b)とでは、各記録ポイントP1、P2、P3でそれぞれ得られた再生値と再生基準値との差分量、即ち、同図の例ではジッタ値とジッタ閾値との差分量が異なり、同図(a)の方が得られた再生値が再生基準値に近くなる。
このことは、同図(a)の方が同図(b)よりも最適条件の発見が容易であると考えられるため、同図(a)の記録特性が得られたときの方が同図(b)の記録特性が得られたときよりも、テスト回数を少なく設定し、より少ないテスト回数でより適した解を見出す構成としても良い。
即ち、再生値と再生基準値との差分量が少なかった場合は、最適条件が前述の基準条件に近くなり、再生値と再生基準値との差分量が多かった場合は、最適条件が前述の基準条件から遠くなるため、テスト回数をより少なくしたい場合には、再生値と再生基準値との差分量に応じてテスト回数を変化させることが望ましい。
図9は、図3のステップS120で実行した記録品位検査の結果、右下がりのパターンが得られた例を示す概念図である。同図に示す例では、P1、P2、P3とパワーが上昇するにつれてジッタ値が下がってゆく右下がりのパターンとなる。このような右下がりのパターンが得られたときは、基準メディアよりも記録対象メディアの方が低感度であることを意味する。
ここで、同図(a)は右下がりパターンの最小値が閾値以下となる例であり、同図(b)は右下がりパターンの最小値が閾値以上となる例であり、いずれのパターンにおいても基準メディアより記録対象メディアの方が低感度であると考えられる。このように、記録メディアの方が低感度であった場合は、後述するように、基準条件を中心としたパワー×パルス幅の面領域で区画されたテスト領域を高パワー、広パルス幅側にシフトさせてテスト記録を行う。
また、同図に示すような右下がりパターンが得られた場合は、ジッタの最小値がより高パワー側に存在すると考えられるため、P3よりも高パワーで追記を行って、再度記録特性を確認しても良い。この場合、記録回数は1回増えるが記録品位の検査精度を向上させることができる。尚、このパターンが得られた場合も、前述の谷型パターンが得られた場合と同様に、再生値と再生基準値との差分量に応じてテスト回数を変化させても良い。
また、同図に示すような右下がりパターンが得られた場合は、前述の図8に示した谷型のパターンよりも、最適解が基準条件から遠くなると考えられるため、谷型パターンの場合よりもテスト回数を増加させておくことが望ましい。
図10は、図2のステップS120で実行した記録品位検査の結果、右上がりのパターンが得られた例を示す概念図である。同図に示す例では、P1、P2、P3とパワーが上昇するにつれてジッタ値が上がってゆく右上がりのパターンとなる。このような右上がりのパターンが得られたときは、基準メディアよりも記録対象メディアの方が高感度であることを意味する。
ここで、同図(a)は右上がりパターンの最小値が閾値以下となる例であり、同図(b)は右上がりパターンの最小値が閾値以上となる例であり、いずれのパターンにおいても基準メディアより記録対象メディアの方が高感度であると考えられる。このように、記録メディアの方が高感度であった場合は、後述するように、基準条件を中心としたパワー×パルス幅の面領域で区画されたテスト領域を低パワー、狭パルス幅側にシフトさせてテスト記録を行う。
また、同図に示すような右上がりパターンが得られた場合は、ジッタの最小値がより低パワー側に存在すると考えられるため、P1よりも低パワーで追記を行って、再度記録特性を確認しても良い。この場合、記録回数は1回増えるが記録品位の検査精度を向上させることができる。尚、このパターンが得られた場合も、前述の谷型パターンが得られた場合と同様に、再生値と再生基準値との差分量に応じてテスト回数を変化させても良い。
また、同図に示すような右上がりパターンが得られた場合は、前述の図8に示した谷型のパターンよりも、最適解が基準条件から遠くなると考えられるため、谷型パターンの場合よりもテスト回数を増加させておくことが望ましい。
(テスト領域の決定)
図11は、図3のステップS120で谷型パターンが得られた場合に、ステップS122で実行されるテスト領域決定の一例を示す概念図である。同図に示すように、谷型パターンが得られた場合は、P1、P2、P3のそれぞれで得られたジッタ値が描く近似曲線206と閾値とのクロスポイントをテスト記録で使用するパワーの変化領域とし、この変化領域がパワーレンジとなる。尚、本発明においては、実際にテスト記録で使用するパワーの範囲を「パワーレンジ」と定義し、ジッタが閾値以下となるパワーの範囲を「パワーマージン」と定義する。
ここで、近似曲線206は、パルス幅ごとに異なるため、基準条件で用いたパルス幅をW4とすると、このW4を中心としたパルス幅W1〜W6のそれぞれに対して、パワーP1、P2、P3で記録し、その結果得られた近似曲線206と閾値とのクロスポイントを確認してゆく。これにより同図のマトリクスイメージに示すように、各パルス幅ごとに閾値以下となるパワーレンジが得られ、同図のハッチで示した領域がテスト領域となる。ここで、基準条件として使用したP1、P2、P3のパワー3条件と、パルス幅W4をマトリクス中のイメージで示すと、同図の208−1、208−2、208−3となり、決定されたテスト領域は、基準条件を中心としたパワー×パルス幅の面領域として設定される。
このように、パルス幅ごとにパワーレンジを求めることで、閾値以下となる領域を集中してテストすることができるため、少ないテスト回数でより適した条件を見出すことが可能になる。
尚、パワーマージンが広く取れた場合には、パワー変化のステップを大きめに設定し、パワーマージンが狭かった場合には、パワー変化のステップを小さく設定することでもテスト回数の低減を図ることができる。例えば、10mWのマージンが取れた場合には、ラフにテストしても最適値が得られるものと仮定して2mWステップで5回のテストを行い、1mWのマージンが取れた場合には、より精密なテストが必要と判断して0.1mWステップで10回テストするような構成も可能である。
図12は、図3のステップS120で右下がりパターンが得られた場合に、ステップS122で実行されるテスト領域決定の一例を示す概念図である。同図に示すように、右下がりパターンが得られた場合は、最適条件がより高パワー側にあると考えられるため、P3よりも高いパワー値P+で追加記録を行い、P1、P2、P3、P+のそれぞれで得られたジッタ値が描く近似曲線206と閾値とのクロスポイントをパワーレンジとする。この処理をパルス幅W1〜W6のそれぞれで行って、同図のマトリクスイメージに示すようなテスト領域を得る。
ここで、上記の手順により決定されたテスト領域は、基準条件208−1、208−2、208−3を中心としたパワー×パルス幅の面領域が高パワー側にシフトされた形となる。この例では、谷型パターンで使用したW1〜W6をそのまま用いたが、右下がりパターンの場合は、低感度傾向にあるため、W1〜W6よりも広いパルス幅領域にシフトさせてパワーレンジを決めても良い。
図13は、図3のステップS120で右上がりパターンが得られた場合に、ステップS122で実行されるテスト領域決定の一例を示す概念図である。同図に示すように、右上がりパターンが得られた場合は、最適条件がより低パワー側にあると考えられるため、P1よりも低いパワー値P+で追加記録を行い、P+、P1、P2、P3のそれぞれで得られたジッタ値が描く近似曲線206と閾値とのクロスポイントをパワーレンジとする。この処理をパルス幅W1〜W6のそれぞれで行って、同図のマトリクスイメージに示すようなテスト領域を得る。
ここで、上記の手順により決定されたテスト領域は、基準条件208−1、208−2、208−3を中心としたパワー×パルス幅の面領域が低パワー側にシフトされた形となる。この例でも谷型パターンで使用したW1〜W6をそのまま用いたが、右上がりパターンの場合は、高感度傾向にあるため、W1〜W6よりも狭いパルス幅領域にシフトさせてパワーレンジを決めても良い。
即ち、上述した手法では、各パルス幅ごとに記録品位の検査が行われ、その結果に基づいて、各パルス幅ごとにテスト回数が決定されるため、テスト回数の低減が期待できる。以上説明した記録品位の検査は、基準条件での記録によるジッタ変化をパターニングすることで行う例であり、より望ましくは、下記に示す8パターンを用いて行うことが推奨される。
図14は、図3のステップS120を8つのパターンを用いて実行する場合の例を示す図である。同図に示すように、パターン1は、谷型、右上がり、右下がり等のどのようなパターンであっても、ジッタの最大値が閾値以下となったときに適用されるパターンである。このパターンが得られたときは、基準メディアと同程度の感度であると見なすとともに、閾値以下となるマージンが広く取れると判断し、パワー条件を低パワー側と高パワー側のそれぞれに拡張する。即ち、このパターン1では、閾値近傍の値が取れていないため、低パワー側と高パワー側の両方に追加記録が行われることになる。
その後、この追加記録の結果得られたジッタ特性を曲線近似し、この近似曲線がジッタ閾値と交差する大小2点の間隔をパワーレンジの基準値とする。
さらに、このパターンが得られたときは、基準値±0.2Tのパルス幅領域をテスト領域として決定し、テスト記録時には、このテスト領域内を0.2Tごとに変化させて最適記録条件の検出を行う。尚、Tは記録ピットの単位時間長を示す。
ここで、基準値となるパルス幅をパルス条件1とし、拡張した2点をパルス条件2および3とすると、パターン1のパルス条件2および3は±0.2T拡張された後のパルス幅となる。このパルス幅の条件変更に伴って、テスト条件として使用するパワーレンジにも若干の変更を行う。
即ち、パルス幅を0.1T変更したときは、パワーレンジの基準値×(1−0.05×1)mWを当該パルス幅におけるパワーレンジとし、パルス幅を0.2T変更したときは、パワーレンジの基準値×(1−0.05×2)mWを当該パルス幅におけるパワーレンジとし、パルス幅を−0.1T変更したときは、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−1))mWを当該パルス幅におけるパワーレンジとする。
よって、このパターン1に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−2))mW
(3)パルス幅の基準値+0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+2))mW
尚、本発明では、上記(1)に示した基準条件は、実際のテスト記録で使用しなくても良い。
パターン2は、谷型パターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値以下であるときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアと同感度であると判断し、基準値±0.1Tをパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン2に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.1T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−1))mW
(3)パルス幅の基準値+0.1T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+1))mW
パターン3は、谷型パターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値を超えたときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアと同感度、かつメディアの素性差が大きいと判断し、基準値±0.2Tをパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン3に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−2))mW
(3)パルス幅の基準値+0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+2))mW
パターン4は、右下がりパターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値以下であるときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアよりやや低感度であると判断し、基準値、+0.1Tおよび+0.2Tの3点をパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン4に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値+0.1T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+1))mW
(3)パルス幅の基準値+0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+2))mW
パターン5は、右下がりパターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値を超えたときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアよりかなり低感度であると判断し、基準値、+0.2Tおよび+0.4Tの3点をパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン5に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値+0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+2))mW
(3)パルス幅の基準値+0.4T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+4))mW
パターン6は、右上がりパターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値以下となったときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアよりやや高感度であると判断し、基準値、−0.1Tおよび−0.2Tの3点をパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン6に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.1T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−1))mW
(3)パルス幅の基準値−0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−2))mW
パターン7は、右上がりパターンが得られた場合であって、ジッタの最小値が閾値を超えたときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、記録対象メディアが基準メディアよりかなり高感度であると判断し、基準値、−0.2Tおよび−0.4Tの3点をパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン7に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−2))mW
(3)パルス幅の基準値−0.4T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−4))mW
パターン8は、山型パターンが得られた場合であって、ジッタの最大値が閾値を超えたときに適用されるパターンである。このパターンが得られた場合は、異常パターンであると判断し、基準値±0.2Tをパルス幅条件として選択する。その後、パターン1と同様の手順により、これらパルス条件ごとにパワーレンジの設定を行う。その結果、このパターン8に該当した場合のテスト条件は下記の3セットとなる。
(1)パルス幅の基準値、パワーレンジの基準値
(2)パルス幅の基準値−0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(−2))mW
(3)パルス幅の基準値+0.2T、パワーレンジの基準値×(1−0.05×(+2))mW
尚、以上説明した8つのパターンのうち、基準メディアに最も近くなるパターン2以外のパターンが検出された場合は、再生誤動作によるものでないことを確認するために、このパターンの基になった記録結果を再度再生し、ジッタを再検出する構成としても良い。この場合、再度の再生によりパターン2以外の特性が検出された場合は、図14に示す条件に従って、記録条件の追加と拡張を行えば良い。
ここで、上記再生誤動作の確認を行った結果、パターン8が検出された場合は、記録誤動作の可能性が考えられるため、追加記録およびパルス幅の拡張を行う前に、パルス幅の基準値で再度記録を行う。この再記録結果を再生してもパターン8となった場合は、追加記録、即ち、パルス条件1のマージン測定を行うためのパワー拡張は行わずに、パルス条件の拡張、即ち、パルス条件2および3の拡張を行う。これらパルス条件2および3の拡張に応じたパワーの拡張は前述の手法で行えば良い。
即ち、パターン8の場合、パルス条件1ではマージンが取れず、拡張の基準となるパワーレンジを求めることができないため、初期のパワー条件範囲を基準となるパワーレンジとして設定する。
(テスト領域の決定:近似法によるパワーレンジの決定)
前述の手順を実行することにより、少ないテスト回数で最適解を得るに有効なテスト領域が決定されるが、このテスト領域決定の際に重要となるパワーレンジの決定手法について以下説明を加える。
本発明では可能な限り少ないテスト回数で最適解発見の精度を上げたいため、閾値以下の領域にテスト条件を集中させることは前述したとおりである。この考え方に基づけば、テスト記録の際に使用されるパワーレンジは、閾値に対するマージンを示す大小2点のパワー値から求めればよいこととなる。ここで、閾値に対するマージンとは、その領域であれば、閾値以下の特性値が得られる幅を意味し、大小2点のパワー値とは、このマージンの幅を決める低パワー側の値と、高パワー側の値を意味する。
ここで、各種メディアのテスト記録時間の短縮およびライトワンスメディアのようにテスト記録領域に制限の有るメディアのテスト領域の効率化を考えると、テスト記録に要する記録ポイントはより少ないことが望ましいが、ここで求めるパワーレンジは、最適記録条件の判断基準となる重要なパラメータであるため、高精度であることが望まれる。
このパワーレンジを精度良く求めることは、より選択された領域の集中したテストを意味するため、テスト回数の低減にも寄与する。例えば、0.1mWに1回の頻度でテスト記録を行う場合には、パワーレンジが1mWだと10回のテスト記録が行われ、2mWだと20回のテスト記録が行われるため、パワーレンジを絞ることがテスト回数の低減に寄与することになる。
そこで、本発明では、記録再生信号の記録品位が記録パワーに対して最適点を極値とする2次曲線的な変化を描くことに着目し、数点の記録ポイントを用いて特性曲線を近似算出することで、求めたいマージン量を得る手法を提唱する。このような近似手法を適用することにより、数点の記録ポイントでパワーレンジを高精度かつ容易に求めることが可能になり、テスト回数の低減が図られる。
図15は、図3のステップS122で使用されるパワーレンジを曲線近似によって求める方法を説明した概念図である。同図に示すように、近似を行うにあたっては、まず、記録特性の判断基準とするジッタ値が閾値近傍となる低パワー側のaおよび高パワー側のcの2点と、これらの間に位置し、かつ、これらa、cおよび閾値のいずれの値よりも小さなジッタ値となるbを選択する。即ち、ここで選択されるa、b、cは、下記の関係を有することになる。
a>b、c>b、閾値>b
ここで、上記の閾値近傍は、同図に示すように、閾値からある幅を持った上限値と下限値の間として定義し、望ましくは、上限値を閾値の40%、下限値を閾値の5%に設定する。その後、これらa,b,cの値を2次関数で近似し、該2次関数と閾値がクロスする大小2点の差分をパワーレンジとする。尚、閾値近傍として定義する範囲は、−5%〜+40%や−10%〜30%等、記録ポイントの間隔等を考慮して適宜変更可能である。
図16は、図3のステップS122で使用されるパワーレンジを曲線近似によって求める別の例を説明した概念図である。同図に示すように、A、B、Cの3条件でのみでは、前述の「a>b、c>b、閾値>b」の条件を満たす関係が得られなかった場合、高パワー側のDを追記することで、閾値近傍の値を得ることが望ましい。
さらに、同図に示すように、B>Cの関係がある場合は、Bを用いずに、A、C、Dの3点で近似式を算出することが望ましい。
このとき記録ポイント3点と閾値の関係は、「A>C、D>C、閾値>C」となり、近似曲線を描くに適した関係となるため、3点近似で高精度な近似曲線を得ることができる。尚、Dに示した追加記録条件は、追記前の記録ポイントが示すA>B、B>Cおよび閾値によって決定すれば良い。
また、図15とは逆に、低パワー側に閾値近傍の値がなかった場合は、Aより低パワー条件で追記を行えば良く、記録ポイントと閾値の関係によっては、適宜1点以上の記録条件を追加しても良い。
また、追加記録条件で用いるパワーの範囲は、所定のパワーステップに対して一定の変化を持たせても良いし、予めパワーの変動に対するジッタ変動の関係を求めておき、その関係からパワー条件を設定しても良い。
尚、上記記録条件の追加を行っても、パワーレンジを求めるに十分な記録ポイントが得られない場合は、上述と同様の手順により再度記録条件の追加を行って記録ポイントを変更する。
また、ライトワンスメディアのようにテスト記録領域に制限のある場合や、膨大なテスト時間の使用を回避するため、上記再度記録条件の追加回数に上限値を持たせても良く、記録条件の追加によって記録パワーがレーザ出力値を超えないように、追記パワーの上限値を持たせておいても良い。
また、上述の例では、3点近似によりパワーレンジを求めたが、最も閾値に近い2点を選択し、これら2点がそれぞれ示す大小2点のパワー値の差分よりパワーレンジを決定しても良い。
その他、閾値近傍の2点を選択する手法としては、閾値をまたぐ大小2点が見つかるまでパワーを変化させて記録し、該記録した中で最も閾値に近い2点を選択しても、この2点をそのまま選択しても良い。この方法については以下詳細な説明を加える。
(テスト領域の決定:サンプリングによるパワーレンジの決定)
図17は、図3のステップS122で使用されるパワーレンジをサンプリングによって求める例を説明した概念図である。同図に示す例では、前述した3点近似ではなく、閾値に近い値が得られるまでパワーを徐々に変化させて、閾値に近い大小2点のパワー値を基準にパワーレンジが求められる。
つまり、同図に示すように、記録パワーをP1からP2、P3・・・と順に増加させて記録再生を行い、閾値以上の値が得られたパワー値P6まで記録再生を繰り返す。この処理のイメージをマトリクスで示すと、パワー変化はP1〜P6まで行うが、パワーレンジは、閾値に最も近い低パワー側のP2と高パワー側のP6との間となる。このように、閾値をまたぐ2点を選択することによってもパワーレンジを決定することができる。
ここで、閾値に近い大小2点を選択する方法としては、下記のような形態を適宜選択して使用することができる。
1)パワーマージンを成す大小2点を選択する方法、即ち、再生基準値を満たすパワー領域内であって、夫々再生基準値と最も近い2点を選択
2)パワーマージンのやや外にはなるが再生基準に最も近い2点を選択
3)低パワー側で再生基準値を跨ぐ大小2点を選択
4)高パワー側で再生基準値を跨ぐ大小2点を選択
5)低パワー側および高パワー側で再生基準値を跨ぐ形となる2点であって、夫々再生基準値と最も近い2点を選択
また、上記各手法により選択した2点を用いて記録特性を近似し、再生基準値と交差する大小2点を求めても良い。
(m’T/(n−m)T比率の決定)
図18は、図1(b)に示したステップS200の比率決定で使用するテスト用記録パルスの例を示す概念図である。同図(a)は、単一のパルスパターンで構成されたシングルパルスを用いる場合の例であり、同図(b)は、複数のパルスパターンで構成されたマルチパルスを用いる場合の例である。同図に示すように、シングルパルス10−1およびマルチパルス10ー2は、記録パルスの先頭に配置されたトップパルス12と、それに続く後続パルス14とで構成され、後続パルス14は、記録パルスの最後尾に配置された後端パルス14を備える。
ここで、メインパワーPWが示す高さで記録パルス全体のエネルギー量が規定され、トップパルス幅Ttopが示す長さで記録ピット先端に与える初段のエネルギー量が規定される。このメインパワーPWは、記録パルス10−1、10ー2の中で最も高い値とすることが望ましく、トップパルスの幅Ttopは、3Tの長さを有する最短記録ピットに対応した幅を有する。この最短幅の記録パルスが最も出現確率が高く、記録品位への影響が大きいため、まずは、前述したm’T条件決定フローによって、このトップパルス12のパワーPWと幅Ttopの最適条件を確定させる。
続いて、m’T/(n−m)T比率決定フローによって、後続パルス14の条件決定を行う。後続パルスの条件としては、シングルパルス10−1の場合には、同図(a)に示すように、メインパワーPWよりもPWDだけ低い低パワー領域を設け、この量を規定することで、記録ピットが涙型になることを防止する。同様に、マルチパルス10−2の場合には、同図(b)に示すように、先頭パルス12と後端パルス14との間に位置する中間パルスの幅Tmpを規定するか、または、TmpとTsmpのデューティ比を規定することで、記録ピットが涙型になることを防止する。これら後続パルスの条件決定は、トップパルスの条件を基準として行われる。
図19は、 図1(b)に示したステップS200の比率決定フローの実行手順を示すフローチャートである。同図に示すように、図2に示したドライブは、まず最初に、ストラテジ回路102が実行する記録ストラテジの各種パラメータを設定するために、メディア50に対して(n−m)Tの条件を変更した複数の記録パターンによるテスト記録を行う(ステップS210)。このときmTパルスの条件は、前述のm’T条件決定フローで得られた値に固定しておく。、
その後、このテスト記録により形成された記録パターンを再生し(ステップS212)、その結果として2値化回路110から得られた再生2値化信号を記録ずれ検出部112が所定クロックに同期したカウンタで計数して(ステップS214)、該再生2値化信号に含まれたピットおよびランドの長さを計数データとして記録領域115に格納する(ステップS216)。
その後、記録ずれ検出部112は、記録領域115に蓄積された計数データを用いて、計数値ごとの出現頻度を示すヒストグラムを作成し(ステップS218)、このヒストグラムからピット長とランド長の判定基準となる計数結果の閾値を決定する(ステップS220)。
その後、記録ずれ検出部112は、前記閾値を基準に記録領域115に格納された計数データの中から特定のピット/ランドパターンを含む複数種の特定パターンを検索し(ステップS222)、この特定パターンに含まれた同一ピット長と思われる計数結果を平均化するとともに、同一ランド長と思われる計数結果を平均化して、特定パターンを構成する各ピットと各ランドの平均長を求める(ステップS224)。
その後、記録ずれ検出部112は、抽出した複数の特定パターンのうちの一つを抽出パターンに設定し、この抽出パターンに含まれる対象記録ピットの長さを基準長と比較して(ステップS226)、記録パルスに対するピットの長さずれ量を検出する(ステップS228)。
その後、演算式導出部113は、記録ずれ検出部112が検出したずれ量に基づいて、最適ストラテジを決定するための演算式を導出し、ストラテジ決定部114は、この演算式導出部113が導出した演算式を用いて各種パラメータの制御結果を予測し(ステップS230)、この予測結果に基づいて、図18に示したPWDまたはTmpを決定し、これをストラテジ回路102に設定する(ステップS232)。
図20は、図19に示したテスト記録から再生データの計数までの動作概念を示す概念図である。同図に示すように、まず、テスト記録が行われると、同図(a)に示すような記録ピットが光ディスク上に形成される。そして、この記録ピットを再生すると、同図(b)に示すように、この記録ピットに対応した再生RF信号が得られる。この再生RF信号を2値化すると、同図(c)に示したような再生2値化信号が得られ、この2値化信号の極性反転間のパルス長を同図(d)に示すようなクロック信号で計数すると、同図(e)に示したような計数結果が得られる。
図21は、図19に示した計数結果の格納イメージを示す概念図である。同図に示すようにクロック信号で計数された2値化信号は、極性反転部を区切りとして、その計数結果がピット、ランドの区別とともに記憶領域1115に設けられたテーブル内に順次時系列で格納される。この同図に示すテーブルは、後に検索可能なアドレスが付された状態で格納される。
図22は、図19に示したヒストグラム作成のイメージを示す概念図である。同図に示すように、計数値の出現頻度をグラフ化するとヒストグラムが得られ、ピットとランドをそれぞれ区別してヒストグラムを作成すると、同図(a)に示したピットの計数傾向を示すピットヒストグラムと、同図(b)に示したランドの計数傾向を示すランドヒストグラムの2種類を得ることができる。このように、光ディスクでは基準クロックに対する各単位長nT(n=3、4、5、・・・14)の長さが必然的に決まるため、各単位長nTに対して、出現頻度分布の山が得られることになる。
図23は、図19に示した閾値決定のイメージを示す概念図である。同図に示すように、ヒストグラム中の各山と山の間に形成された谷の部分が各単位長nTの長さ判定閾値として使用できるため、ピットヒストグラムおよびランドヒストグラムのそれぞれについて、ピット長の判断基準となるピット長閾値と、ランド長の判断基準となるランド長閾値を設定する。
図24は、図23に示した手法によって得られた閾値の例を示す概念図である。同図(a)に示すように、各ピット長の境界ごとにピット長閾値が定義され、同図(b)に示すように、各ランド長の境界ごとにランド長閾値が定義される。同図(a)に示す例では、2Tと3Tの境界となる閾値は「計数値=2」となり、3Tと4Tの境界となる閾値は「計数値=9」となり、以降、14Tと15Tの境界まで設定される。また、同図(b)に示す例では、2Tと3Tの境界となる閾値は「計数値=2」となり、3Tと4Tの境界となる閾値は「計数値=10」となる。以降、14Tと15Tの境界まで設定される。
次に、図19に示した特定パターンの検索(ステップS222)からずれ量の検出(ステップS228)までの各工程の詳細について説明を加える。これらの工程は、記録ずれ検出部112における各種ずれの検出原理に基づいて行われる。
図25は、ピットバランスによるずれ量を検出するための記録パターンの一例を示す図である。ここで、ピットバランスとは、前述のトップパルスと後続パルスのバランスを示す。同図に示すように、ピットバランスによるずれ量を検出する場合には、同図(a)に示す記録パルスを用いてテスト記録を行う。この記録パルスは、ランドLxT、ピットPyT、ランドLzTが連続するパターンを含み、固定ランドLyTのランド長および固定ランドLzTのランド長を固定して、可変ピットPxTのピット長を、同図(b)から同図(f)に示すように、3T、4T、・・・7Tと変化させたものである。尚、図示しないが可変ランド長の変化は14Tまで行うものとする。
ここで、この記録パターンの可変長のピットPyTの長さを測定すると、この可変長のピットPyTの長さは、理想の記録状態ではそれぞれ理想のピット長に対応するはずである。
しかし、この可変長のピットPyTの長さが理想の規定の長さからずれていると、ランドLxTのランド長およびランドLzTのランド長は固定されているので、この可変長のピットPyTの規定長さからのずれ量は記録時のストラテジにおける3T、4T、・・・14TのそれぞれのピットP3T、P4T、・・・P14Tの記録パルスに対する長さずれ量に対応することになる。
したがって、あるストラテジを用いてテスト記録を行い、この記録パルスによるテスト記録の再生パターンから、同図(b)〜(f)に示すように、可変長のピットPyTの記録結果と各ピットの基準長とを比較し、各ピット長の理想の長さからのずれ量を検出すれば、各ピット長の長さずれ量を検出することができる。
図26は、ピットバランスずれ検出で使用される特定パターン検索用のテーブル構成を示す概念図である。ピットバランスずれの検出を行う場合には、特定パターンごとに設定されたランドLxT、ピットPyT、ランドLzTに関する閾値範囲を基準に、図2の記憶領域1115内に格納されたデータを検索し(図19のステップS222に相当)、該閾値を満たすデータ列を抽出する。
その後、ランドLxT、ピットPyT、ランドLzTのぞれぞれに該当する計数結果を分別し、ランドLxT、ピットPyT、ランドLzTごとに平均値を求める(図19のステップS224に相当)。この計数結果の平均値を用いて、図25に示したパターン比較を行えば、各ピット長における前側位相ずれ量が得られる。
図27は、計数結果の絶対比較により長さずれ量を検出する場合の具体例を示す概念図である。同図に示すように、理想の基準長との比較でずれ量を検出する場合は、まず記憶領域内に格納されたデータ群の中から、同図(a)に示した特定パターンを検索抽出し、同図(b)および(c)に示すように、比較対象となる部位に対する両者の計数値を比較する。同図に示す例では、ピット3Tが比較部位になるため、特定パターンの計数結果である同図(c)に示す「9」と、基準長に相当する計数結果である同図(d)に示す「8」との差分を求め、得られた差分「1」が3Tピットのずれ量になる。
図28は、図19に示した制御量予測の実行例を示すフローチャートである。同図に示すように、制御量の予測は、記録条件の異なるS1とS2の2種以上の条件でテスト記録を行い(ステップS250)、その結果得られた記録ピットを再生し(ステップS252)、その結果得られた再生パターンの比較によって、条件S1に対応するずれ量D1と、条件S2に対応するずれ量D2とを求め(ステップS254)、これらS1およびS2とD1およびD2との関係を直線近似し(ステップS256)、該直線を用いて最適補正量を決定する(ステップS258)一連の手順を実行することによって行われる。
ところで、上記のように検出されるずれ量D1およびD2は、ストラテジの各種設定パラメータにより変動する。そして、このストラテジの各種設定パラメータにより変動するずれ量D1およびD2は、解析の結果ほぼ直線状に変化することが解明された。
すなわち、上記記録ずれ検出部112で検出されるそれぞれのテスト記録におけるずれ量は、最小二乗法に基づき近似された直線状の変化として捉えることができることになる。
そこで、本実施形態に係るドライブにおいては、例えば、2回のテスト記録を行った場合には、ストラテジの各種設定パラメータと検出したずれ量D1およびD2との直線関係に着目して最適なストラテジを決定することができる。もっとも、本発明では、直線近似に替えて曲線で近似しても良い。
即ち、シングルパルスの場合にはPWDが、マルチパルスの場合はTmpが記録条件S1およびS2で変化させる代表的なパラメータとなり、これらのパラメータをS1、S2と変化させて、その影響をD1、D2として検出し、これら4点を用いて直線近似を行い、該直線を用いてずれがキャンセルできる補正量を得る。
図29は、PWDを変化させる場合の記録条件S1、S2の変化とずれ量D1、D2との関係を示す概念図である。ここで、同図(a)に示す記録パルスは、PWDをS1だけ変化させた記録パルスS1であり、同図(b)に示す記録パルスは、PWDをS2だけ変化させた記録パルスS2であり、これらの2条件を使用してテスト記録を行う。
その結果、同図(a)の記録パルスに対応して同図(a1)に示すパターンS1が得られ、同図(b)の記録パルスに対応して同図(b1)に示すパターンS2が得られる。ここで、パターンS1は、制御量S1に対応してD1のすれ量が生じ、パターンS2は、制御量S2に対応してD2のずれが生じる。
制御量S1およびS2に対するずれ量D1およびD2がわかれば、どのパラメータに関してどれだけの制御量を持たせれば、どれだけのずれが生じるかが予測可能となるため、これらの関係を利用して、制御量の予測と補正値の決定を行う。
図30は、シングルパルスの形状に関する直線近似を利用した長さずれ補正の一例を示す概念図である。当該長さずれに対する補正量PWDを決める場合には、まず、同図(a)に示すように、基準となるパルス長を基準波形nTとしたとき、同図(b)に示すように、PWDだけパルスの中央を欠いた波形でテスト記録を行い、その結果、同図(c)に示すように、得られた再生信号の長さずれΔを検出する。
同図に示す例では、このPWDの変化をS1=+0.3とS2=+0.1の2種類行い、その結果得られた長さずれΔをずれ量D1=+0.1およびD2=−0.1として得る。そして、これら得られたS1、S2、D1、D2を用いて、同図(e)に示す如く、制御量PWDに対する制御結果Δの関係を直線で近似し、この直線を利用して長さずれがキャンセルできる補正量PWD=+0.2を最適補正値として決定する。このとき、トップパルスの条件は変化させずに固定しておく。
このように、ストラテジの変化S1、S2とずれ量の変化D1、D2との関係は、変化点を少なくとも2点求めれば、直線または曲線による近似が可能になるため、この直線を用いてずれ量が零になる最適補正量を求めることができる。
具体的には、ストラテジSを数点変化させたときのずれ量Dを求め、このときのストラテジSとずれ量Dとの関係を一般式「D=a×S+b」に代入し、連立方程式を解くことにより定数a、bを求め、最終的に理想のずれ量Dに対応するストラテジSを求め、このストラテジSを図1に示したストラテジ回路102に設定することにより記録パルスの最適補正を行う。
例えば、図2に示した記録ずれ検出部112で、あるストラテジS1を用いたテスト記録の再生パターンから検出したずれ量がD1、他のストラテジS2を用いたテスト記録の再生パターンから検出したずれ量がD2であるとすると、
D1=a×S1+b
D2=a×S2+b
からaおよびbを算出し、該算出したaおよびbを用いた関数
S=(D−b)/a
を求め、この関数に、記録品位を改善させるための、例えば、イコライザ等において生じる初期的な出力ずれ等を補正するための出力ずれ量Dを代入することで最適ストラテジSを決定する。
図31は、マルチパルスの形状に関する直線近似を利用した長さずれ補正の一例を示す概念図である。当該長さずれに対する補正量Tmpを決める場合には、まず、同図(a)に示すように、基準となるパルス長を基準波形nTとしたとき、同図(b)に示すように、中間パルス長をTmpとした波形でテスト記録を行い、その結果、同図(c)に示すように、得られた再生信号の長さずれΔを検出する。このとき、トップパルスの条件は変化させずに固定しておく。
同図に示す例では、このTmpの変化をS1=+0.3とS2=+0.1の2種類行い、その結果得られた長さずれΔをずれ量D1=+0.1およびD2=−0.1として得る。そして、これら得られたS1、S2、D1、D2を用いて、同図(e)に示す如く、制御量Tmpに対する制御結果Δの関係を直線で近似し、この直線を利用して長さずれがキャンセルできる補正量Tmp=+0.2を最適補正値として決定する。
図32は、補正量PWDとTmpを格納するためのテーブル構造を示す概念図である。同図(a)に示すように、補正量PWDおよびTmpは、補正対象となるピット長ごとに定義される。例えば、補正対象ピットが3Tである場合の補正量PWDは、図中「PW3」と示した領域に補正量が格納され、補正対象ピットが3Tである場合の補正量Tmpは、図中「Tm3」と示した領域に補正量が格納される。以下、4T、5T、・・・14Tまで3Tと同様に格納される。
図33は、図1のステップS300で実行されるnTパルスの構成概念を示す概念図である。同図(a)に示すように、例えば5Tピットを形成する場合の記録データは、クロック信号5周期分の長さを有するnTの長さを有するパルス信号として出力される。この記録データに対して補正後のパルスは、同図(b)および(c)に示すように、m’Tのトップパルスで始まり、n’Tの長さを有するパルス信号として出力され、シングルパルスの場合は、(n−m)Tパルス内にPWDが定義され、マルチパルスの場合は、(n−m)Tパルス内にTmpが定義される。
このとき、PWDおよびTmpは、トップパルスの条件を固定して求められた値であるため、mTパルスの条件を基準とした最適m’T/(n−m)T比率に準拠した値となる。その結果、トップパルスと後続パルスとで構成されるnTパルスは、記録品位の向上に望ましい値となる。ただし、この時点では未だ位相条件は定義されていないため、後述する位相条件の決定に関するフローをさらに実行することで最適化されたストラテジを得る。
(位相ずれ補正)
図34は、図1(b)に示したステップS400の位相ずれ補正で使用するテスト用記録パルスの例を示す概念図である。同図(a)は、単一のパルスパターンで構成されたシングルパルスを用いる場合の例であり、同図(b)は、複数のパルスパターンで構成されたマルチパルスを用いる場合の例である。
同各図に示すように、シングルパルス10−1とマルチパルス10−2のいずれの場合も、記録パルスの位相条件として、トップパルス12の開始位置を調整するTtoprと、後端パルス16の終了位置を調整するTlastを設定する。これらの値を調整することで、記録後のピット長がより最適化される。尚、これらの位相条件は、前述までのフローで決定されたトップパルスの条件と後続パルスの条件とを基準としたテスト記録を行うことで決定される。
図35は、図1(b)に示したステップS400の位相条件決定フローの実行手順を示すフローチャートである。同図に示すように、図2に示したドライブは、まず最初に、メディア50に対して、mTパルスと(n−m)Tパルスとで構成されるnTパルスの位相条件を変更した複数の記録パターンによるテスト記録を行う(ステップS410)。このとき、mTパルスの条件および(n−m)Tパルスの条件は、前述までのフローで得られた値に固定しておく。、
その後、このテスト記録により形成された記録パターンを再生し(ステップS412)、その結果として2値化回路110から得られた再生2値化信号を記録ずれ検出部112が所定クロックに同期したカウンタで計数して(ステップS414)、該再生2値化信号に含まれたピットおよびランドの長さを計数データとして記録領域115に格納する(ステップS416)。
その後、記録ずれ検出部112は、記録領域115に蓄積された計数データを用いて、計数値ごとの出現頻度を示すヒストグラムを作成し(ステップS418)、このヒストグラムからピット長とランド長の判定基準となる計数結果の閾値を決定する(ステップS420)。
その後、記録ずれ検出部112は、前記閾値を基準に記録領域115に格納された計数データの中から特定のピット/ランドパターンを含む複数種の特定パターンを検索し(ステップS422)、この特定パターンに含まれた同一ピット長と思われる計数結果を平均化するとともに、同一ランド長と思われる計数結果を平均化して、特定パターンを構成する各ピットと各ランドの平均長を求める(ステップS424)。
その後、記録ずれ検出部112は、抽出した複数の特定パターンのうちの一つを基準パターンに設定し、この基準パターンと他のパターンとを比較して(ステップS426)、下記のずれ量をそれぞれ独立に検出する(ステップS428)。
1)記録パルスに対するピットの前側位相ずれ量
2)記録パルスに対するピットの後側位相ずれ量
3)熱干渉による記録パルスからのピットずれ量
その後、演算式導出部113は、記録ずれ検出部112が検出したずれ量に基づいて、最適ストラテジを決定するための演算式を導出し、ストラテジ決定部114は、この演算式導出部113が導出した演算式を用いて各種パラメータの制御結果を予測し(ステップS430)、この予測結果に基づいて、図34に示したTtoprおよびTlastを決定し、これをストラテジ回路102に設定する(ステップS432)。
ここで、ステップS410のテスト記録からステップS424の平均化までの手順は、前述の図20〜図24までに示した手法と同様に行われるため、ここでは詳細な説明を省略する。
図36は、各ピット長における前側位相ずれ量を検出するための記録パターンおよび再生パターンの一例を示す概念図である。同図に示すように、各ピット長における前側位相ずれ量を検出する場合には、同図(a)に示す記録パルスを用いてテスト記録を行う。この記録パルスは、固定ピットPxT、固定ランドLyT、可変ピットPzTが連続するパターンを含み、固定ピットPxTのピット長と固定ランドLyTのランド長を固定して、可変ピットPzTのピット長を、同図(b)から(f)に示すように、3T、4T、・・・7Tと変化させたものである。尚、図示しないが可変ピット長の変化は14Tまで行うものとする。
ここで、この記録パターンの固定ランドLyTの長さを測定すると、この固定ランドLyTの長さは、理想の記録状態では一定になるはずである。しかし、この固定ランドLyTの長さが理想の規定の長さからずれていると、ピットPxTのピット長は固定されているので、この固定ランドLyT長の理想の規定長さのずれ量は記録時のストラテジにおける3T、4T、・・・14TのそれぞれのピットP3T、P4T、・・・P14Tの記録パルスに対する前側位相ずれ量に対応することになる。
従って、可変ピットPzTが3Tとなる同図(b)のパターンを基準パターンに設定し、同図(c)〜(f)までの残りのパターンを比較パターンに設定し、これら比較パターンの固定ランドLyTの長さと、基準パターンの固定ランドLyTの長さとを比較すると、同各図に示すように、基準パターンに対する前側位相ずれ量FPS4T〜FPS7Tが得られる。
ここで、各ずれ量FPS3T〜FPS7Tは、ある部位を基準とした相対的な値として検出できれば良いため、基準パターンの前側位相ずれ量FPS3Tは零と定義しても良く、また、理想の長さからのずれ量として検出しても良い。また、同図(b)のパターンに替えて、同図(c)〜(f)に示したパターンのいずれかを基準パターンに設定しても良い。
図37は、各ピット長における後側位相ずれ量を検出するための記録パターンおよび再生パターンの一例を示す概念図である。同図に示すように、各ピット長における後側位相ずれ量を検出する場合には、同図(a)に示す記録パルスを用いてテスト記録を行う。この記録パルスは、可変ピットPxT、固定ランドLyT、固定ピットPzTが連続するパターンを含み、固定ランドLyTのランド長と固定ピットPzTのピット長とを固定して、可変ピットPxTのピット長を、同図(b)から(f)に示すように、3T、4T、・・・7Tと変化させたものである。尚、図示しないが可変ピット長の変化は14Tまで行うものとする。
ここで、この記録パターンの固定ランドLyTの長さを測定すると、この固定ランドLyTの長さは、理想の記録状態では一定になるはずである。しかし、この固定ランドLyTの長さが理想の規定の長さからずれていると、ピットPzTのピット長は固定されているので、この固定ランドLyT長の理想の規定長さのずれ量は記録時のストラテジにおける3T、4T、・・・14TのそれぞれのピットP3T、P4T、・・・P14Tの記録パルスに対する後側位相ずれ量に対応することになる。
従って、可変ピットPxTが3Tとなる同図(b)のパターンを基準パターンに設定し、同図(c)〜(f)までの残りのパターンを比較パターンに設定し、これら比較パターンの固定ランドLyTの長さと、基準パターンの固定ランドLyTの長さとを比較すると、同各図に示すように、基準パターンに対する後側位相ずれ量RPS4T〜RPS7Tが得られる。
ここで、各ずれ量RPS3T〜RPS7Tは、ある部位を基準とした相対的な値として検出できれば良いため、基準パターンの後側位相ずれ量RPS3Tは零と定義しても良く、また、理想の長さからのずれ量として検出しても良い。また、同図(b)のパターンに替えて、同図(c)〜(f)に示したパターンのいずれかを基準パターンに設定しても良い。
図38は、熱干渉によるピットずれ量を検出するための記録パターンの一例を示す図である。同図に示すように、熱干渉によるピットずれ量を検出する場合には、同図(a)に示す記録パルスを用いてテスト記録を行う。この記録パルスは、ランドLxT、ピットPyT、ランドLzTが連続するパターンを含み、固定ピットPyTのピット長および固定ランドLzTのランド長を固定して、可変ランドLxTのランド長を、同図(b)から同図(f)に示すように、3T、4T、・・・7Tと変化させたものである。尚、図示しないが可変ランド長の変化は14Tまで行うものとする。
ここで、この記録パターンの固定ピットPyTの長さを測定すると、この固定長のピットPyTの長さは、理想の記録状態では一定になるはずである。しかし、この固定ピットPyTの長さが理想の規定の長さからずれていると、ランドLzTのランド長は固定されているので、この固定ピットLyTの理想の規定長さのずれ量は、可変ランドLxTの直前に形成されたピットの熱干渉によるずれ量に対応することになる。
従って、可変ランドLxTが3Tとなる同図(b)のパターンを基準パターンに設定し、同図(c)〜(f)までの残りのパターンを比較パターンに設定し、これら比較パターンの固定ピットPyTの長さと、基準パターンの固定ピットPyTの長さとを比較すると、同各図に示すように、基準パターンに対する前側位相ずれ量HID3T〜HID7Tが得られる。
ここで、各ずれ量HID3T〜HID7Tは、ある部位を基準とした相対的な値として検出できれば良いため、基準パターンの前側位相ずれ量HID3Tは零と定義しても良く、また、理想の長さからのずれ量として検出しても良い。また、同図(b)のパターンに替えて、同図(c)〜(f)に示したパターンのいずれかを基準パターンに設定しても良い。
図39は、ピット前位相ずれ検出と後位相ずれ検出で使用される特定パターン検索用のテーブル構成を示す概念図である。ピット前位相ずれの検出を行う場合には、特定パターンごとに設定されたピットPxT、ランドLyT、ピットPzTに関する同図(a)に示した閾値範囲を基準に、図2の記憶領域1115内に格納されたデータを検索し(図35のステップS422に相当)、該閾値を満たすデータ列を抽出する。
その後、ピットPxT、ランドLyT、ピットPzTのぞれぞれに該当する計数結果を分別し、ピットPxT、ランドLyT、ピットPzTごとに平均値を求める(図35のステップS424に相当)。この計数結果の平均値を用いて、前述のパターン比較を行えば、各ピット長における前側位相ずれ量が得られる。同図(b)は、ピット後位相ずれの検出を行う場合の閾値例であるが、考え方と動作は、ピット前位相ずれの検出を行う場合と同様である。
図40は、ピット干渉ずれ検出で使用される特定パターン検索用のテーブル構成を示す概念図である。同図に示すように、ピット干渉ずれの検出は、図39を用いて説明したピット前位相ずれおよび後位相ずれと同様の手法で行われる。
図41は、計数結果の相対比較によりずれ量を検出する場合の具体例を示す概念図である。同図は、ピット前位相ずれを検出する場合の例であるが、他のずれ量を検出する場合も同様の手法で行われる。ずれ量を検出する場合は、まず記憶領域内に格納されたデータ群の中から、同図(a)および(b)に示した基準パターンと比較パターンを検索抽出し、同図(c)および(d)に示すように、本来固定長であるはずの部位に対する計数値を比較する。同図に示す例では、ランドLyTが比較部位になるため、基準パターンの計数結果である同図(c)に示す「12」と、比較パターンの計数結果である同図(d)に示す「11」との差分を求め、得られた差分「1」がずれ量FPS4Tの値となる。
図42は、図35に示した制御量の予測によるTtopr、Tlast決定の実行例を示すフローチャートである。同図に示すように、制御量の予測は、記録条件の異なるS1とS2の2種以上の条件でテスト記録を行い(ステップS450)、その結果得られた記録ピットを再生し(ステップS452)、その結果得られた再生パターンの比較によって、条件S1に対応するずれ量D1と、条件S2に対応するずれ量D2とを求め(ステップS454)、これらS1およびS2とD1およびD2との関係を直線近似し(ステップS456)、該直線を用いて最適なTtoprとTlastを決定する(ステップS458)一連の手順を実行することによって行われる。
図43は、記録条件S1、S2の変化とずれ量D1、D2との関係を示す概念図である。同図(a)に示す記録パルスを「PzT=3T」の基準パルスとすると、比較対象となる「PzT=4T」の記録パルスは、PzTの先端をS1変化させた同図(b)の記録パルスS1と、PzTの先端をS2変化させた同図(c)の記録パルスS2の2条件でテスト記録を行う。
その結果、同図(a)の記録パルスに対応して同図(a1)に示す基準パターンが得られ、同図(b)の記録パルスに対応して同図(b1)に示す比較パターンS1が得られ、同図(c)の記録パルスに対応して同図(c1)に示す比較パターンS2が得られる。ここで、比較パターンS1は、制御量S1に対応してD1のすれ量が生じ、比較パターンS2は、制御量S2に対応してD2のずれが生じる。
制御量S1およびS2に対するずれ量D1およびD2がわかれば、どのパラメータに関してどれだけの制御量を持たせれば、どれだけのずれが生じるかが予測可能となるため、これらの関係を利用して、制御量の予測と補正値の決定を行う。
図44は、直線近似を利用した前側位相ずれ補正の一例を示す概念図である。前側位相ずれに対する補正量Ttopを決める場合には、まず、同図(a)に示すように、基準となるパルス位置を基準位相φとしたとき、同図(b)に示すように、Ttopだけパルスの位置をずらした波形でテスト記録を行い(記録条件S1、S2に相当)、その結果、同図(c)に示すように、得られた再生信号の位相ずれΔφtopを検出する(ずれ量D1、D2に相当)。
同図に示す例では、このTtopの変化をS1=+0.1とS2=+0.3の2種類行い、その結果得られた検出位相Δφtopをずれ量D1=−0.1およびD2=+0.1として得る。そして、これら得られたS1、S2、D1、D2を用いて、同図(e)に示す如く、制御量Ttopに対する制御結果Δφtopの関係を直線で近似し、この直線を利用して位相ずれがキャンセルできる補正位相Ttop=+0.2を最適補正値として決定する。
このように、ストラテジの変化S1、S2とずれ量の変化D1、D2との関係は、変化点を少なくとも2点求めれば、直線または曲線による近似が可能になるため、この直線を用いてずれ量が零になる最適補正量を求めることができる。
具体的には、ストラテジSを数点変化させたときのずれ量Dを求め、このときのストラテジSとずれ量Dとの関係を一般式「D=a×S+b」に代入し、連立方程式を解くことにより定数a、bを求め、最終的に理想のずれ量Dに対応するストラテジSを求め、このストラテジSを図1に示したストラテジ回路102に設定することにより記録パルスの最適補正を行う。
例えば、図1に示した記録ずれ検出部112で、あるストラテジS1を用いたテスト記録の再生パターンから検出したずれ量がD1、他のストラテジS2を用いたテスト記録の再生パターンから検出したずれ量がD2であるとすると、
D1=a×S1+b
D2=a×S2+b
からaおよびbを算出し、該算出したaおよびbを用いた関数
S=(D−b)/a
を求め、この関数に、記録品位を改善させるための、例えば、イコライザ等において生じる初期的な出力ずれ等を補正するための出力ずれ量Dを代入することで最適ストラテジSを決定する。
なお、この最適ストラテジSを求める関数は、3T、4T、・・・14TのそれぞれのピットP3T、P4T、・・・P14Tに対応して求めることができる。また、この最適ストラテジSを求める関数は、記録速度に対応してそれぞれ求めることもできる。
図45は、直線近似を利用した後側位相ずれ補正の一例を示す概念図である。後側位相ずれに対する補正量Tlastを決める場合には、まず、同図(a)に示すように、基準となるパルス位置を基準位相φとしたとき、同図(b)に示すように、Tlastだけパルスの位置をずらした波形でテスト記録を行い、その結果、同図(c)に示すように、得られた再生信号の位相ずれΔφlastを検出する。
同図に示す例では、このTlastの変化をS1=−0.1とS2=−0.3の2種類行い、その結果得られた検出位相Δφlastをずれ量D1=+0.1およびD2=−0.1として得る。そして、これら得られたS1、S2、D1、D2を用いて、同図(e)に示す如く、制御量Tlastに対する制御結果Δφlastの関係を直線で近似し、この直線を利用して位相ずれがキャンセルできる補正位相Tlast=−0.2を最適補正値として決定する。
図46は、補正量TtopとTlastを格納するためのテーブル構造を示す概念図である。同図(a)に示すように、補正量Ttopは、補正対象となるピット長ごとに、該各ピットの前方ランド長との組み合わせで定義される。例えば、補正対象ピットが3Tであり、該ピットの前方ランドが3Tである場合は、図中「3−3」と示した領域に補正量が格納され、補正対象ピットが4Tであり、該ピットの前方ランドが3Tである場合は、図中「3−4」と示した領域に補正量が格納される。以下、5T、・・・14Tまで3Tおよび4Tと同様に格納される。
また、同図(b)に示すように、補正量Tlastは、補正対象となるピット長ごとに、該各ピットの後方ランド長との組み合わせで定義される。例えば、補正対象ピットが3Tであり、該ピットの後方ランドが3Tである場合は、図中「3−3」と示した領域に補正量が格納され、補正対象ピットが4Tであり、該ピットの後方ランドが3Tである場合は、図中「3−4」と示した領域に補正量が格納される。以下、5T、・・・14Tまで3Tおよび4Tと同様に格納される。
図47は、補正後のシングルパルスの例を示す概念図である。同各図に示すように、同図(a)に示す記録データを光ディスク上に記録する場合には、各ピット長ごとに最適な補正値が適用されたストラテジが設定される。例えば、3Tピットを記録する場合には、同図(b)に示すように、図46に示したテーブルより前方のランド長に応じて3Tピットの前端補正値Ttopを読み出すとともに、後方ランド長に応じて3Tピットの後端補正値Tlastを読み出して、記録パルスの前端および後端を当該TtopおよびTlastで補正する。
また、4Tピット以上を補正する場合は、同図(c)〜(f)に示すように、TtopおよびTlastに加えて、該当ピット長のPWD補正値を図32のテーブルから読み出し、当該PWDの値に応じたパルス形状の補正を行う。
図48は、補正後のマルチパルスの例を示す概念図である。同各図に示すように、マルチパルスの場合には、前述の図47に示したシングルパルスのPWD補正値に替えて、Tmp補正値を図32のテーブルから読み出し、当該Tmpの値に応じたパルス形状の補正を行う。その他はシングルパルスの場合と同様である。
尚、以上説明した実施形態では、最適ストラテジSを求める関数に、ずれ量Dを代入することで最適ストラテジSを決定したが、これに替えて、上記関数から求めた補正テーブルを用意し、この補正テーブルに基づき最適ストラテジSを決定するように構成してもよい。
また、上記最適ストラテジの設定処理は、光ディスクの種別を変更する毎に、あるいは、記録速度を変更する毎に行っても良く、さらに、上記最適ストラテジの設定処理で決定された最適ストラテジの条件を光ディスクの種別および記録速度に対応させてメモリに記憶しておき、再度同一の種別の光ディスクで記録を行う場合、あるいは、同一の記録速度で記録を行う場合は、このメモリに記憶した最適ストラテジを読み出して使用する構成としてもよい。
図49は、本発明に係るドライブの内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、このドライブ100は、レーザダイオード110から出力されたレーザ光を用いて、光ディスク500に対する情報の記録再生を行い、パーソナルコンピュータ600等の外部装置との間でデータの送受信を行う。
光ディスク500に対して情報の記録を行う場合は、パーソナルコンピュータ600からインターフェース回路218を介して受信した記録データをEFMエンコーダ/デコーダ216で符号化し、この符号化した記録データをCPU212で処理することで、当該光ディスク500に対する記録条件となるストラテジを決定し、このストラテジをパルス生成回路300で記録パルスに変換し、この記録パルスをLDドライバ124に出力する。
LDドライバ124は、入力された記録パルスに基づいてレーザダイオード110を駆動し、レーザダイオード110は、この記録パルスに対応して出力レーザ光を制御し、この制御されたレーザ光をコリメータレンズ112、回折格子114、ハーフミラー116、対物レンズ118を介して、線速一定若しくは回転速度一定で回転する光ディスク500に照射し、これにより光ディスク500に、所望の記録データに対応したピット、スペース列からなる記録パターンが記録される。
一方、光ディスク500上に記録された情報の再生を行う場合は、レーザダイオード110から再生レーザ光がコリメータレンズ112、回折格子114、ハーフミラー116、対物レンズ118を介して、光ディスク10に照射される。
この時、再生レーザ光は、記録時のレーザ光よりも強度の低いレーザ光が用いられ、この再生レーザ光による光ディスク500からの反射光が対物レンズ118、ハーフミラー116、受光レンズ120を介してディテクタ122で受光され、電気信号に変換される。
ディテクタ122から出力される電気信号は、光ディスク500に記録されたピット、スペースからなる記録パターンに対応しており、この電気信号がスライサ210で2値化され、さらにEFMエンコーダ/デコーダ216で、デコードされて再生信号として出力される。
図50は、図49に示したドライブ内に組み込まれるピックアップ部の構造を示す分解斜視図である。同図に示すように、レーザダイオード110と光ディスク500の盤面との間に設けられた回折格子は、2枚の回折格子114−1、114−2で構成され、各回折格子には、方向の異なる溝115−1、115−2がそれぞれ形成される。
このように構成される回折格子にレーザ光20が入射すると、第1の回折格子115−1で3つのレーザ光に分岐し、さらに、第2の回折格子115−2で3つのレーザ光に分岐して、5つのスポット20A〜20Eが光ディスクの盤面に照射される。
図51は、光ディスクの盤面上に照射されたスポットの配置を示す平面図である。同図に示すように、光ディスク500の盤面上には、記録用メインビーム20A、トラッキング用先行サブビーム20B、トラッキング用後行サブビーム20C、再生用先行サブビーム20D、再生用後行サブビーム20Eが照射される。
ここで、記録用メインビーム20Aは、光ディスク500に形成されたグループ502−2上に照射され、このビームスポットの照射によって、グルーブ502−2内にピット506が形成される。この記録用メインビーム20Aは、ヒートモードによるピットの形成を可能とするために最も発光強度が高く設定される。
トラッキング用先行サブビーム20Bは、メインビーム20Aが照射されたグルーブ502−2と隣接するランド504−3上に照射され、トラッキング用後行サブビーム20Cは、メインビーム20Aが照射されたグルーブ502−2と隣接するランドであって、サブビーム20Bが照射されたランドとは反対側のランド504−2に照射される。
再生用先行サブビーム20Dは、メインビーム20Aが照射されたグルーブと同一のグルーブ502−2上であって、メインビーム20Aよりも先行した位置に照射され、再生用後行サブビーム20Eは、メインビーム20Aが照射されたグルーブと同一のグルーブ502−2上であって、メインビーム20Aよりも後ろの位置に照射される。
各スポットをこのように配置することで、メインビーム20Aによって形成された記録パターン、即ち、ピット506とスペース508の組み合わせで構成される記録パターンを再生用後行サブビーム20Eで検出することが可能になる。
図52は、光ディスクの盤面上に照射されるスポットとディテクタとの関係を示す概念図である。同図に示すように、図49に示したディテクタ122は、122A〜122Eまでの5つの受光部で構成され、各受光部には、スポット20A〜20Eに対応する反射光22A〜22Eがそれぞれ照射され、電気信号に変換される。
図53は、記録パルスの形状と安定領域との関係を示す概念図である。同各図に示すように、図49に示したLDドライバ124から出力される記録パルスには、様々な形状があり、それぞれ、記録パルスのON状態を示す高出力領域50と、OFF状態を示す低出力領域52と、ON状態であって変調が少ない定出力領域54とを備える。
より具体的には、同図(a)は、ON状態で一定の出力となる記録パルスであり、同図(b)は、先頭部と後続部で高さが異なる記録パルスであり、同図(c)は、先頭部、中間部、後端部で高さが異なる記録パルスであり、同図(d)は、先頭部に定出力部が形成された後、後続部で出力を数回変化させた記録パルスである。
本発明では、記録パルスがONとなった状態で、再生信号を取り込むことを意図しているため、後述するゲート信号は、高出力領域50に対応させて生成することが望ましいが、より望ましくは、変調の影響を受けにくい定出力領域54に対応させて生成する。この定出力領域54は、便宜上、高出力領域50の中で最も安定した状態の長い区間と定義するが、安定状態が最も長い区間よりも短い安定領域であっても、定出力領域として使用することが可能である。尚、以後の説明では、同図(c)のキャッスル型と称されるパルス形状を例に説明するが、本発明は、他の記録パルスにも適用可能である。
例えば、同図に示すような相変化型の光ディスクで用いられる記録パワーに適用する場合には、高出力と低出力との繰り返しにより相変化材料が急冷されてアモルファス(非結晶)状態となる高出力領域50と、メインビームでサーボがかかる程度の0.7〜1mW程度のパワーが出力される低出力領域52と、ゆっくり冷却されて結晶状態になる定出力領域54とで構成される記録パルスのうち、消去パワーに相当する定出力領域54に対応させてゲート信号を生成し、この定出力領域54にサブビームで再生された信号を取り込む構成とすれば良い。
図54は、図49に示したパルス生成回路の内部構成を示す回路ブロック図である。同図に示すように、本パルス生成回路300では、図49のCPU212から送出されたストラテジ条件SD1、SD2をパルスユニット生成回路310−1、310−2でそれぞれ受信し、クロック信号CLKに同期したパルス信号PW1、PW2を生成する。
ここで、ストラテジ条件SD1、SD2は、パルスのON期間とOFF期間の長さをクロック数で示した数値データとして定義されており、これらのデータを受けたパルスユニット生成回路310−1、310−2は、ドライブ内で生成されたクロック信号CLKを用いて、ストラテジ条件SD1、SD2が示す条件のパルス信号を生成する。
これらのパルス信号PW1、PW2は、図49のLDドライバ124に出力されるとともに、AND演算器316でパルス信号PW1の反転信号とパルス信号PW2との論理積が取られ、ゲート信号Gateとして図49のマスク回路400に出力される。尚、パルス信号PW1の反転信号は、反転回路314によって生成される。
図55は、図54に示したゲート信号の生成概念を示すタイミングチャートである。同各図に示すように、記録パルスの定出力領域に対応したゲート信号は、記録パルスの構成要素となるパルス信号PW1、PW2を用いて生成される。即ち、同図(b)および(c)に示すように、パルス信号PW1、PW2は、同図(a)のクロック信号CLKと同期して生成され、このパルス信号PW1から、同図(d)に示す反転信号が生成される。
そして、同図(c)のパルス信号PW2と同図(d)に示す反転信号とのレベルを同各図に示すように定義して論理積を取ると、同図(e)に示すゲート信号が得られる。その結果、このようにして得られたゲート信号は、記録パルスの定出力領域に対応したものとなる。
図56は、図49に示したLDドライバの内部構成を示す回路図である。同図に示すように、LDドライバ124は、抵抗R1、R2を用いた分圧回路と、これらの出力電圧を合成する合成器126とで構成され、パルス生成回路300からのパルス信号PW1、PW2は、抵抗R1、R2を介して所定の出力レベルに増幅された後、合成器126にて論理和合成され、記録パルスPWRが生成されて、図49のレーザダイオード110に出力される。
図57は、図49に示したマスク回路の内部構成を示す回路ブロック図である。同図に示すように、マスク回路400は、2つのAND演算器410−1、410−2で構成され、初段のAND演算器410−1には、図49のパルス生成回路300で生成されたゲート信号Gateと、図49のCPU212で生成されたフラグ信号Flagとが入力され、これらの論理積を取ったゲート信号Gate’が後段のAND演算器410−2に出力される。
AND演算器410−2は、このゲート信号Gate’を用いて、図52のディテクタ122Eが出力する再生用後行サブビーム20Eで再生されたRF信号RF−Subにマスクをかけ、ゲート信号Gate’に対応した部分のRF信号RF−Sub’を抽出して、図49のスライサ210に出力する。その結果、記録パルスの定出力領域で再生されたRF信号RF−Sub’が選択的に抽出されるため、精度の高いピット検出が行われる。
そして、この検出されたピットの長さや位相情報に基づいて、図49のCPU212がストラテジの補正条件を算出し、パルス生成回路300に出力するストラテジ条件に補正をかける。その結果、データの記録中に記録条件が補正されるリアルタイム補正が行われる。
図58は、記録パルスとゲートパルスと再生信号との関係を示すタイミングチャートである。同図(a)に示すように、記録パルスPWRは、所定のデータパターンに対応してON/OFFが変化するパルスパターンとなる。ここで、最も長い無変調領域を有するピット14Tの定出力領域54をゲート信号として使用する場合を想定すると、図49のパルス回路300で生成されるゲート信号Gateは、同図(b)に示すタイミングで出力され、図49のCPU212で生成されるフラグ信号Flagは、同図(c)に示すタイミングで出力され、図57のマスク回路400内で生成されるゲート信号Gate’は、同図(d)に示すタイミングで出力され、このゲート信号Gate’を用いて同図(e)のRF−Sub信号を抽出した結果が同図(f)のRF−Sub’信号となる。
このように、最終的に抽出された再生信号RF−Sub’は、記録パルスPWRの定出力領域54で再生された信号であるため、この信号を用いることで高精度なピットの検出が可能となり、ひいてはストラテジの正確な補正が可能となる。
図59は、図49に示したCPUが実行するフラグ信号の生成手法を示す概念図である。同図に示す例は、ピット14Tの定出力領域内に存在するスペース4Tを選択的に検出する場合の例である。同図に示すように、CPU212は、記録パルスのデータ長に対応する数値を順次メモリ214に蓄積し、ピット14T(同図中、「P14」と示す)の定出力領域内にスペース4T(同図中、「L4」と示す)が存在するデータを特定し、この特定したピット14Tのデータにフラグを立てる。
ここで、記録用のメインビームと再生用のサブビームとの時間差をτと定義すると、CPU212は、時間差τをクロック数で換算し、ピット14Tからスペース4Tまでの間に存在するデータ長を時間差τと比較する。その結果、ピット14Tから時間差τ離れた領域であって、かつ、このピット14Tの定出力領域に相当する範囲内にスペース4Tのデータが存在していれば、当該ピット14Tにフラグを立て、図58に示したタイミングでフラグ信号Flagを出力する。
図60は、記録用のメインビームと再生用のサブビームとの関係を示すタイミングチャートである。同図(a)に示すように、記録用メインビームの出力は、ピットの形成に必要な高出力のパルスパターンとなり、このパルス照射によって光ディスク上に形成されたピットパターンは、同図(b)に示すようになる。
一方、同図(c)に示すように、再生用サブビームの出力は、記録用メインビームの出力パターンと同一のタイミングであって、記録用メインビームよりも分岐比率分だけ出力が縮小されたパルスパターンとなり、この再生用サブビームで再生されるピットパターンは、同図(d)に示すように、記録中のピットから時間差τだけ遅れたパターンとなる。
従って、ピット14Tの記録中に再生されたスペース4Tを検出する場合には、同図(e)に示すように、記録パルスのパターンを時間差τだけ遅延させたパルスのスペース4Tと、記録パルスのピット14Tの定出力領域とが重なる位置を特定すれば良いことになる。即ち、記録パルスのうち長いピットの定出力領域から第1のゲート信号を生成するとともに、記録パルスを時間差τだけ遅延させたパルスパターンのうち、検出対象とする短いピットまたはスペースに相当するパルスから第2のゲート信号を生成し、これら第1および第2のゲート信号を用いて、再生用サブビームから得られたRF信号にマスクをかける構成が有用となる。
図61は、記録パルスと、該記録パルスを遅延させたパルスと、RF信号との関係を示すタイミングチャートである。同各図に示すように、記録パルスPWRを時間τだけ遅延させたパルスPWR’を生成し、記録パルスPWRのピット14Tの定出力領域内に、遅延パルスPWR’のスペース4Tが含まれる部分をゲート信号Gate’とすれば、長いピットの記録中に短いピットまたはスペースを選択的に検出することが可能になり、その結果、ピットの長さズレや位相ズレを正確に検出することができる。
図62は、長いピットの記録中に短いピットまたはスペースを検出する手法の例を示したブロック図である。同図は、図49のEFMエンコーダ/デコーダ216により、メインビームが14Tピットを記録する間にサブビーム下に存在する4Tスペースを検出する場合の構成例である。
このように構成する場合、EFMエンコーダ/デコーダ216は、同図に示すように、図49のスライサ210から入力された8ビットの2値化信号を一旦バッファ250−1に蓄積し、このバッファから出力された8ビットデータを変換テーブル252に従って16ビットのデータに変換してバッファ250−2に出力する。このとき、遅延器254による時間Tの遅延操作が一変換ごとに行われる。
バッファ250−2に蓄積されたデータは、カウンタ256に出力され、パルス長nT(n=3〜14)を示すデータとして、図49に示すCPU212を経て、パルス生成回路300に出力され、該当する記録パルスが生成される。
図63は、図62に示したカウンタ256と図49のパルス生成回路300との関係を示すブロック図である。同図に示すように、カウンタ256は、バッファ250−2からパルス生成回路300に向けて流れるデータストリームの中から、14Tピットに相当するビット列を特定する14Tデコーダ258と、4Tスペースに相当するビット列特定する4Tデコーダ259とを具備する。
図64は、図62に示したバッファ250−2がビット列を蓄積する際の例を示す概念図である。同図(c)に示すように、バッファ250−2には、同図(a)に示すクロック信号と同期した形でピットまたはスペースの長さを示すデータが格納される。
例えば、3Tの長さは、「100」で表現し、4Tの長さは「1000」で表現し、5Tの長さは「10000」で表現し、14Tの長さは「10000000000000」で表現する。
よって、同図(b)に示すようなパルスが入力された場合には、バッファ250−2に格納されるビット列は、同図(c)に示すように、4Tスペースに相当する部分が「1000」となり、14Tピットに相当する部分が「10000000000000」となり、各々のパルス幅がビット数で表現された形式で蓄積される。
ここで、記録用のメインビームと再生用のサブビームとの間隔が300ビットに相当する場合には、同図(c)に示すように、バッファ250−2に蓄積されたビット列の中から、現在記録中の14Tピットの位置を特定し、該14Tピットから300ビット離れた位置に4Tスペースのビット列があるか否かを判定する。
その結果、4Tスペースのビット列があった場合には、メインビームによる14Tピットの記録中に、サブビームによって4Tスペースを検出することができるタイミングと判断し、このタイミングで得られた信号を用いてリアルタイム補正の条件を決定する。
図65は、14Tピットの記録中に検出対象となる4Tスペースのバリエーションを示す概念図である。同図(a)に示すように、14Tピットの記録パルスが高出力の3Tパルスと、安定出力の9Tパルスと、高出力の2Tパルスとで構成される場合には、安定出力領域内に収まる4Tスペースが検出対象となる。
よって、14Tパルスの中央部に出現した4Tスペースを抽出することが最も望ましいが、これでは出現確率が低くなるため、4Tスペースの両端が14Tピットの安定出力領域をはみ出さない場合も抽出対象となるようにカウンタ回路を設けておく。
例えば、同図(a)に示した14Tピットのパルスから、同図(b)に示したゲート信号を生成し、このゲート信号の中に収まる同図(c)のハッチで示した4Tスペースが特定できるデータパターンを用意しておき、このデータパターンに合致するビット列を抽出する。
図66は、長いピットの記録中に短いピットまたはスペースを検出する手法の別の例を示したブロック図である。同図に示す例は、ある時間内で発生するパルス数を基準として、長いピットの記録中に短いピットまたはスペースが存在するか否かを判定する例である。
同図に示した回路ブロックでは、スライサ210から出力された2値化信号SL RF−Sub’を反転回路420−1を介してAND演算器422に入力するとともに、図49のパルス生成回路300から出力されるゲート信号GateをAND演算器422に入力する。
AND演算器422は、これら入力された信号の論理積をカウンタ424のセット端子に出力し、この信号を受けたカウンタ424は、反転回路420−2で反転されたゲート信号が示す区間内に生じたパルス数を計数し、その結果を判定信号Detection Enableとして、図49のCPU212に出力する。尚、反転回路420−2で反転されたゲート信号は、カウンタ424のリセット信号として使用される。
CPU212は、この判定信号が示すパルス数が所定の数以上、例えば2回以上発生されたかを基準に14Tピットの記録中に4Tスペースが存在するか否かを判定し、存在すると判定した場合に当該4Tスペースから得られた信号の取り込みを行う。
図67は、図66に示した回路ブロックの処理例を示すタイミングチャートである。同図(a)に示すように、スライサ210に入力された信号RF−Sub’は、あるレベルで2値化されて、同図(b)に示すようなパルス信号SL RF−Sub’が生成される。
そして、図49に示したパルス生成回路300にて同図(c)および(d)に示す信号から生成された同図(e)に示すゲート信号Gateと、反転回路420−1にて生成された同図(f)に示す反転信号との論理積が取られることで、同図(g)に示す判定信号Detection Enableが生成される。
図68は、図66の回路ブロックにより生成された判定信号の判定基準を示す概念図である。同各図に示すように、この例では、同図(a)の区間内に2回以上のパルスをカウントした場合に、14Tピットの記録中に14Tの安定領域を示すゲート信号Gate内に収まるスペース、例えば、3T〜7Tのスペースが存在すると判定され、この4Tスペースから得られた信号の取り込みが行われる。
よって、同図(b)に示すように、ゲート信号内にパルスが2回カウント出来た場合は、14Tピットの記録中に14Tの安定領域を示すゲート信号Gate内に収まるスペース、例えば、3T〜7Tのスペースが存在すると判定され、この4Tスペースから得られた信号が取り込まれる。他方、同図(c)および(d)に示すように、1回しかカウントできなかった場合は、14Tピットの記録中に4Tスペースが存在しないと判定され、信号の取り込みは行われない。
図69は、長いピットの記録中に短いピットまたはスペースを検出する手法の別の例を示したブロック図である。同図に示す例は、ゲート信号内で発生したパルスの長さを測定することで、長いピットの記録中に短いピットまたはスペースが存在するか否かを判定する例である。
同図に示した回路ブロックでは、AND演算器422により、スライサ210から出力された2値化信号SL RF−Sub’と、図49のパルス生成回路300から出力されたゲート信号Gateと、クロック信号CLKとの論理積が取られ、計数可能な信号Countable Pulseとしてカウンタ424のセット端子に入力され、カウンタ424によって当該信号の長さが計数される。尚、このカウンタには、リセットパルス生成回路426が生成したリセットパルスが入力される。
図70は、図69に示した回路ブロックの処理例を示すタイミングチャートである。同図(a)に示すように、スライサ210に入力された信号RF−Sub’は、あるレベルで2値化されて、同図(b)に示すようなパルス信号SL RF−Sub’が生成される。
そして、図49に示したパルス生成回路300にて生成された同図(c)に示すゲート信号Gateと、同図(d)に示すクロック信号CLKとの論理積が取られることで、同図(e)に示す計数可能な信号Countable Pulseが生成される。尚、ここで取り上げたクロック信号は、「1T=1周期」とした場合の例を用いて説明したが、より高速のクロック、例えば、「1T=40周期」のクロックを用いて長さ検出の分解能を向上させても良い。
図71は、図69に示したリセットパルス生成回路426の処理例を示すタイミングチャートである。同図に示すように、リセットパルス生成回路426は、同図(a)に示すクロック信号CLKを2回に1回カウントして同図(b)に示す中間信号CLK/2を生成し、さらに、この中間信号CLK/2を2回に1回カウントして同図(c)に示す中間信号CLK/4を生成する。
そして、同図(d)に示すように、同図(c)の2回目の立ち上りに同期させて立ち上がり、ゲート信号Gate相当の長さを走査したときに立ち下がるリセット信号Resetを生成する。このリセット信号が図69に示したカウンタ424のリセット端子に入力されることで、カウンタの計数結果がリセットされる。
尚、同図(a)に示すクロック信号として「1T=40周期」の信号を用いる場合であって、ゲート信号Gateが9T相当の幅を有するときは、クロック信号を360回カウントしたときに同図(d)に示すリセット信号Resetが立ち下がり、カウンタ424がリセットされる。
同様に、同図(a)に示すクロック信号として「1T=2.5周期」の信号を用いる場合であって、ゲート信号Gateが9T相当の幅を有するときは、クロック信号を22.5回カウントしたときに同図(d)に示すリセット信号Resetが立ち下がり、カウンタ424がリセットされる。ただし、「1T=2.5周期」のようにクロック信号の周期が単位長Tの整数倍でない場合は、「2T=5周期」のように整数倍として扱われる。
図72は、図49に示したマスク回路の別の構成例を示す回路ブロック図である。同図に示すマスク回路は、タンジェンシャルプッシュプル信号Tppを利用して長さ検出を行う場合の例である。
同図に示すように、このマスク回路400は、4つの分割領域を備えたディテクタ122からの信号を用いてタンジェンシャルプッシュプル信号Tppを生成するタンジェンシャルプッシュプル信号生成回路430と、このタンジェンシャルプッシュプル信号Tppの振幅を一定にするVGA回路432(VGA:Volume Gain Amp)と、タンジェンシャルプッシュプル信号Tppを微分する微分回路434と、タンジェンシャルプッシュプル信号Tppの微分値とゲート信号Gateとの論理積を取るAND演算器422とで構成される。
ここで、タンジェンシャルプッシュプル信号生成回路430は、ディタクタ122の分割領域を同図に示すように光メディアの回転接線方向Tanとの関係でA、B、C、Dとした場合に、回転方向の前方に位置するAおよびBから得られた信号の合計と、回転方向の後方に位置するCおよびDから得られた信号の合計との差を求め、この差信号をタンジェンシャルプッシュプル信号Tppとして出力する。この関係を式で記述すると、同図に示すように、「Tpp=(A+B)−(C+D)」となる。
VGA回路432は、上記タンジェンシャルプッシュプル信号Tppの振幅を一定化させた信号Tpp−Subを生成し、この信号を受けた微分回路434は、該Tpp−Sub信号を微分してΔ(Tpp−Sub)信号を生成する。
AND演算器422は、上記Δ(Tpp−Sub)信号とゲート信号Gateとの論理積を取ることで、記録パルスの光出力安定領域に相当する信号Δ(Tpp−Sub’)を抽出し、スライサ210がこのΔ(Tpp−Sub’)信号をゼロレベルでスライスしてSL Δ(Tpp−Sub’)信号を生成する。
図73は、図72に示した回路の動作を示す第1のタイミングチャートである。同図(a)に示すように、図72に示したディテクタが検出したRF信号は、符号X1.0で示した1倍速記録の信号と符号X1.5で示した1.5倍速記録の信号とで、それぞれ振幅とゼロ点が異なる波形となる。
また、図72に示したVGA回路432が出力するタンジェンシャルプッシュプル信号Tpp−Subは、同図(b)に示すように、符号X1.0で示した1倍速記録の信号と符号X1.5で示した1.5倍速記録の信号とで、振幅は異なるがゼロ点が一致した波形となる。このタンジェンシャルプッシュプル信号Tpp−Subのゼロ点は、同図(a)に示したRF信号RF−Subのピーク位置に相当する。
また、図72に示した微分回路434が出力するタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値Δ(Tpp−Sub)は、同図(c)に示すように、符号X1.0で示した1倍速記録の信号と符号X1.5で示した1.5倍速記録の信号とで、振幅は異なるがゼロ点が一致した波形となる。このタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値Δ(Tpp−Sub)のゼロ点は、同図(b)に示したタンジェンシャルプッシュプル信号Tpp−Subのピーク位置に相当し、同図(a)に示したRF信号RF−Subの傾きが最大点となる位置に相当する。
図74は、図72に示した回路の動作を示す第2のタイミングチャートである。同図(a)は、図72に示した微分回路434が出力するタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値Δ(Tpp−Sub)を示す図であり、この微分値は、同図(b)に示すゲート信号Gateでマスクされ、同図(c)に示すように、タンジェンシャルプッシュプル信号の微分値Δ(Tpp−Sub)がゲート信号Gateで切り出された信号Δ(Tpp−Sub’)となる。
そして、図72に示したスライス回路210によって、信号Δ(Tpp−Sub’)のゼロクロス点が抽出され、同図(d)に示すようなパルス信号SL Δ(Tpp−Sub’)が生成される。このパルス信号が前述した記録用パルスの高出力安定期間内に存在する短いピットまたはスペース信号となり、前述の例では4Tスペースの検出信号となる。
以上説明したタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値を利用して、ピットまたはスペースの長さを検出する構成により、リアルタイムで長さのズレを検出し、このズレを補正しながら記録を行う。
ここで、前述したように、単にタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値を利用するだけでは、3Tや4Tといった短い信号の干渉が生じ、正確な長さを検出することができない。
そこで、本実施形態では、予めテスト領域へのテスト記録により、補正基準とするタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値を求めておき、記録領域への本記録の際には、記録用レーザ光で記録したピットまたはスペースを再生用レーザ光で再生し、得られた再生信号からタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値を求め、この記録領域で求めた微分値とテスト領域で求めた微分値との差異を長さズレ量とみなして、このズレ量の補正に適した記録条件を設定する。
図75は、テスト領域で求めたピットおよびスペースに関するタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値と実際の物理長との関係を示すグラフである。同図(a)に示すように、例えば3T〜8Tの長さを有するピットをテスト記録によりテスト領域内に形成すると、各ピット長に対するタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値を得ることができ、この微分値から各ピット長の長さを予測することができる。ここで、比較的長い5T〜8Tピットについては、図中の点線で示す本来の物理長に相当する長さが得られるが、干渉が生じ易い3T、4Tピットについては、本来の物理長とは異なる長さとして検出される。
同様に、同図(b)に示すように、例えば3T〜8Tの長さを有するスペースをテスト記録により形成すると、各スペース長に対するタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値を得ることができ、この微分値から各スペース長の長さを予測することができる。ここで、比較的長い5T〜8Tスペースについては、図中の点線で示す本来の物理長に相当する長さが得られるが、干渉が生じ易い3T、4Tスペースについては、本来の物理長とは異なる長さとして検出される。
よって、同図(a)に示した各ピット長に対するタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値を補正基準とするか、同図(b)に示した各スペース長に対するタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値を補正基準とすることで、干渉の影響を回避することができる。
図76は、記録領域で求めたピットおよびスペースに関するタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値とテスト領域で求めたピットおよびスペースに関するタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値との関係を示すグラフである。同図(a)に示すように、例えば3T〜8Tの長さを有するピットパターンを記録用レーザ光により記録領域内に記録しつつ再生用レーザ光により再生すると、図中に黒丸で示した各ピット長に対するタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値が得られ、この微分値をテスト記録で得た図中に白丸で示す微分値に合わせる補正を行うことで、本来の物理長に適合したピットおよびスペースから成る記録パターンを形成することができる。
同様に、同図(b)に示すように、例えば3T〜8Tの長さを有するスペースパターンを記録用レーザ光により記録領域内に記録しつつ再生用レーザ光により再生すると、図中に黒丸で示した各スペースに対するタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値が得られ、この微分値をテスト記録で得た図中に白丸で示す微分値に合わせる補正を行うことで、本来の物理長に適合したピットおよびスペースから成る記録パターンを形成することができる。
図77は、テスト領域内のタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値を得るために行うテスト記録の一例を示した概念図である。同図に示すように、記録パルスの前位相ズレ、後位相ズレ、熱干渉に対する影響の検査が可能なパターンを用いたテスト記録によって、各ピットまたはスペース長ごとにRF長a01〜a15およびタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値b01〜b15を求め、これらを所定の記憶領域に格納しておく。
図78は、記録領域内のタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値を得るために行うテスト記録の一例を示した概念図である。同図に示すように、記録領域に形成されたピットおよびスペースのパターンから記録パルスの前位相ズレ、後位相ズレ、熱干渉に対する影響の検査が可能なパターンを抽出することによって、各ピットまたはスペース長ごとにタンジェンシャルプッシュプル信号の微分値c01〜c15および図77に示したテスト記録で得たタンジェンシャルプッシュプル信号との差分d01〜d15を求め、これらを所定の記憶領域に格納する。
図79は、 図78に示したタンジェンシャルプッシュプル信号の差分を用いて記録パルスの補正を行う例を示した概念図である。同各図に示すように、同図(a)に示す記録データを光ディスク上に記録する場合には、各ピット長ごとに最適な補正値が適用されたストラテジが設定される。例えば、3Tピットを記録する場合には、同図(b)に示すように、図78に示した記憶データの前位相ズレ3Tピットの前端補正値Ttopを読み出すとともに、3Tピットの後端補正値Tlastを読み出して、記録パルスの前端および後端を当該TtopおよびTlastで補正する。
また、4Tピット以上を補正する場合は、同図(c)〜(f)に示すように、TtopおよびTlastに加えて、該当ピット長の安定領域の高さPWDを加えてパルス形状の補正を行う。
図80は、図49に示したマスク回路の別の構成例を示す回路ブロック図である。同図に示すマスク回路は、RF信号の2回微分値を利用して長さ検出を行う場合の例である。
同図に示すように、このマスク回路400は、4つの分割領域を備えたディテクタ122からの信号を用いてRF信号を生成するRF信号生成回路436と、このRF信号の振幅を一定にするVGA回路432と、RF信号を2回微分する微分回路434−1および434−2と、該2回微分値とゲート信号Gateとの論理積を取るAND演算器422とで構成される。
ここで、RF信号生成回路436は、ディタクタ122の分割領域A、B、C、Dから得られた信号の合計をRF信号Tppとして出力する。この関係を式で記述すると、同図に示すように、「RF=(A+B)+(C+D)」となる。
VGA回路432は、上記RF信号の振幅を一定化させた信号RF−Subを生成し、この信号を受けた微分回路434−1は、該RF−Sub信号を微分してΔRF−Sub信号を生成し、微分回路434−2が該ΔRF−Sub信号を微分してΔΔRF−Sub信号を生成する。
AND演算器422は、上記ΔΔRF−Sub信号とゲート信号Gateとの論理積を取ることで、記録パルスの光出力安定領域に相当する信号ΔΔRF−Sub’を抽出し、スライサ210がこのΔΔRF−Sub’信号をゼロレベルでスライスしてSL ΔΔRF−Sub’信号を生成する。
図81は、本発明に係るパワーおよびパルス幅のリアルタイム制御概念を示す概念図である。同図に示すように、本実施形態では、長さm’Tを有するmTパルスをパワー制御用パルスとして用い、長さn’Tを有するnTパルスをパルス幅制御用パルスとして用いることで、パワーとパルス幅の調整要因を分離した検出および補正を可能としている。mTパルスとnTパルスの構成については前述と同様である。
ここで、記録用レーザ光20Aを用いて、これらmTパルスとnTパルスを含む記録パルス列をメディア500上に照射するとともに、再生用レーザ光20Eを用いて、前記記録パルス列の照射により形成されたピットおよびスペースを再生し、パワーとパルス幅の影響を独立に検出して、mTパルスのパワー補正とnTパルスの幅補正とをリアルタイムで実行する。
mTパルスのパワー補正は、同図に示すように、該mTパルスの高さを調整することで行われ、該パルスの最適高さPoは、再生用レーザ光の検出結果に基づき設定される。このmTパルスの幅は、例えば、前述したように最も出現頻度の高い3Tに対応させてテスト記録で最適化した条件が用いられる。
nTパルスの幅補正は、前述したように、該パルスの前端および後端の位相をそれぞれ調整することにより行われ、該パルスの前端補正量Ttopおよび後端補正量Tlastは、再生用レーザ光の検出結果に基づき設定される。このnTパルスの高さは、mTパルスと同条件のPoが用いられ、中央部の高さPWDは前述した手法により設定される。
図82は、パワーとパルス幅の調整要素を分離して得られる記録品位の拡大イメージを示す概念図である。同図に示すように、出現頻度の高いmTパルスの幅を固定し、位相条件はnTパルスの幅を変化させて調整すると、パワーの変化に対して低ジッタが確保できる領域が広い特性、即ち、マージンの大きな再生特性202−2が得られるが、全パルスの幅を変化させる手法やパワーのみを調整する手法では、再生特性202−1または202−3のようなマージンの小さな特性しか得られない。
図83は、mTパルスの検出信号量を確保する手法の概念を示した概念図である。同図(a)に示すように、mTパルスを例えば3Tパルスに設定したとすると、この3Tパルスで記録されたピットの形状は同図(b)に示すように小さく、このピットから得られるRF信号も同図(c)に示すように小振幅の開口が小さな信号となるため、特に高速記録では3Tピットの検出が困難になる。
そこで、本実施形態では、同図(a)に示すように、検出対象とする2つのmTパルスを該mTパルスよりも長い間隔を隔てて配置し、この間隔に相当する信号を検出することで、mTパルスによって形成されたピットの長さを検出する。例えば、同図(b)に示すように、3Tピット、6Tスペース、3Tピットの順に形成することで、6Tスペースが両側の3Tピットの影響を受けるように配置し、6Tスペースに対応した大振幅の信号を検出することで、間接的に3Tピットの長さずれを検出する。
図84は、3Tピットの長さずれ量を6Tスペースの信号を用いて検出する例を示したタイミングチャートである。同図(a)に示すように、3T、6T、3Tの順で記録パルスを照射した結果、同図(b)に示すように、基準長よりも長い3Tピットが形成されると、同図(c)〜(e)に示すように、6TスペースのRF信号から得られた2値化信号は、基準長よりも短く検出される。その結果、同図(f)に示すようなずれ量ΔaおよびΔbが検出され、これらの合計が3Tピットの長さずれ量Δになる。
図85は、長さずれ量に基づいてパワー補正を行う概念を示した概念図である。同図に示すように、テスト記録によって得られたアシンメトリ特性は線形特性になり、このアシンメトリ特性のゼロ点が最適パワーPoになるため、この得られたアシンメトリ特性上で長さずれ量Δを適合させると、P1−Poのパワーずれが発生していることがわかる。よって、この最適値からのパワーずれ量に応じて現在のパワーを補正し、最適記録条件に戻した状態で記録を継続する。
図86は、RF信号を用いて3Tスペースによる歪みの影響を検出する例を示したタイミングチャートである。同図(a)および(b)に示すように、3Tピット、6Tスペース、3Tピット、3Tスペースのパターンを有する記録パルスAを照射すると、最後尾の3Tスペースの影響が直前の3Tピットに歪みを与える場合がある。
このような歪みが発生すると、基準長からずれのない3Tピットが形成された場合であっても、同図(c)に示したように、RF信号のゼロクロス点が本来の位置よりも遠くに現れ、その結果として2値化信号のパルス幅が大きくなる。
そこで、同図(d)〜(g)に示すように、最後尾のスペース長を3Tよりも長い5Tに設定することで、歪みの発生を抑えた記録パルスBの照射結果を再生し、この記録パルスBから得られた6Tスペースの長さと記録パルスAから得られた6Tスペースの長さとのずれ量Δを検出する。
このように、記録パルスAから得られた結果と記録パルスBから得られた結果との間にずれ量Δが生じた場合には、記録パルスAから得られた結果は、誤りであると想定できるため、この結果を使用しない構成とすることで誤検出を回避することができる。
図87は、タンジェンシャルプッシュプル信号を用いて3Tスペースによる歪みの影響を検出する例を示したタイミングチャートである。前述した3Tスペースによる歪みの影響は、RF信号だけでなくタンジェンシャルプッシュプル信号を用いることでも検出することができる。以下この例をRF信号を用いた例と同様に説明する。
同図(a)および(b)に示すように、3Tピット、6Tスペース、3Tピット、3Tスペースのパターンを有する記録パルスAを照射すると、基準長からずれのない3Tピットが形成された場合であっても、同図(c)に示したように、タンジェンシャルプッシュプル信号Tppのゼロクロス点が本来の位置よりも近くに現れ、その結果として2値化信号のパルス幅が小さくなる。
そこで、同図(d)〜(g)に示すように、最後尾のスペース長を3Tよりも長い5Tに設定することで、歪みの発生を抑えた記録パルスBの照射結果を再生し、この記録パルスBから得られた6Tスペースの長さと記録パルスAから得られた6Tスペースの長さとのずれ量Δを検出する。
このように、記録パルスAから得られた結果と記録パルスBから得られた結果との間にずれ量Δが生じた場合には、記録パルスAから得られた結果は、誤りであると想定できるため、この結果を使用しない構成とすることで誤検出を回避することができる。
図88は、3Tスペースによる歪みの影響を回避する構成例を示した概念図である。前述したように、歪みの影響を回避するためには、歪みの影響を受けやすいパターンの再生結果と受けにくいパターンの再生結果とを比較する構成が有効であるため、同図に示すように、2つのパターンのRF信号またはタンジェンシャルプッシュプル信号を比較し、この比較の結果、両者に差異が生じたときは、3Tピット、6Tスペース、3Tピット、3Tスペースのパターンから得られた再生結果をマスクする構成とする。
10…記録パルス、12…トップパルス、14…後続パルス、16…後端パルス、20…レーザ光、20A…記録用メインビーム、20B…トラッキング用先行サブビーム、20C…トラッキング用後行サブビーム、20D…再生用先行サブビーム、20E…再生用後行サブビーム、22…反射光、50…高出力領域、52…低出力領域、54…定出力領域、100…ドライブ、110…レーザダイオード、112…コリメータレンズ、114…回折格子、115…溝、116…ハーフミラー、118…対物レンズ、120…受光レンズ、122…ディテクタ、124…LDドライバ、126…合成器、200…テスト領域、202…再生特性、204…記録条件、206…近似曲線、208…基準条件、210…スライサ、212…CPU、214…メモリ、216…EFMエンコーダ/デコーダ、218…インターフェース回路、250…バッファ、252…変換テーブル、254…遅延器、256…カウンタ、258…14Tデコーダ、259…4Tデコーダ、300…パルス生成回路、310…パルスユニット生成回路、314…反転回路、316…AND演算器、400…マスク回路、410…AND演算器、420…反転回路、422…AND演算器、424…カウンタ、426…リセットパルス生成回路、430…タンジェンシャルプッシュプル信号生成回路、432…VGA回路、434…微分回路、436…RF信号生成回路、500…光ディスク、502…グループ、504…ランド、506…ピット、508…スペース、600…パーソナルコンピュータ、1101…エンコーダ、1102…ストラテジ回路、1103…レーザ発振器、1104…レンズ、1105…ハーフミラー、1106…レンズ、1107…レンズ、1108…受光部、1109…同期信号検出回路、1110…2値化回路、1111…デコーダ、1112…記録ずれ検出部、1113…演算式導出部、1114…ストラテジ決定部、1115…記憶領域