JP2006069206A - 液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 液体を吐出する吐出口119に連通する圧力発生室115と、圧力発生室115に対応して設けられる圧電素子108〜110と、圧力発生室115と圧電素子108〜110との間に設けられる振動板111と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法は、平板状の基板101の一方の主面に溝(凹部)104を有する基板101を用意する用意工程と、溝(凹部)104内に圧電素子108〜110を形成する圧電素子形成工程と、基板101の一方の主面と圧電素子108〜110との上に平坦な振動板111を形成する振動板形成工程と、振動板111の上に圧力発生室115を形成する圧力発生室形成工程と、基板101の少なくとも圧電素子108〜110の周辺を除去する除去工程と、を有する。
【選択図】 図3
Description
(1)まず、図3に示すように、表面の面方位が{110}であるシリコン基板101を熱酸化して両面に酸化膜102を形成し、上面側の酸化膜102を部分的にエッチングして、振動板背面空間101aと液体供給口101bを形成するための所定のパターン103を形成する。
(2)さらに、パターン103の部分を、高密度プラズマエッチング装置(ICP)で上面から見た図8のように長方形にエッチングして、溝(凹部)104を形成する。溝104の深さは2〜4μm程度である。溝104は、長方形の長辺が基板101の{111}面と等価の面に平行になるように形成する。
(3)さらに、基板101の上面の液体供給口101bを形成する部分の酸化膜102を除去する。そして、LPCVD法などによってポリシリコンまたはアモルファスシリコンを堆積して、液体供給口101bを形成する部分と溝104およびその周囲の部分に犠牲層105を形成する(図9参照)。
(4)次に、この基板101の上面上に、CVD法でSi3N4膜106とSiO2膜107とを堆積する。厚さはそれぞれ1000〜4000Å(100〜400nm)である。
(5)振動板111の後背部を形成する犠牲層105に合わせて、高温に耐えることができるPt/Ti等の金属で下電極108を形成する。さらに、この下電極108上に、スパッター等の方法でチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の薄膜を堆積後にパターニングして圧電体部109を形成する。この圧電体部109を形成した後に、O2雰囲気下で680℃、5時間の焼成を行う。さらに、圧電体部109の上に高温に耐えるPt/Tiなどの金属を堆積した後にパターニングして上電極110を形成する。また、そのパターニングに用いたレジストでPZTのパターニングも行う。以上により、溝104内に圧電素子108〜110を構成する。
(6)次に、図6に示すように、基板101の上面上にプラズマCVD等を使ってSiNx膜を堆積してこれをパターニングし、振動板111を形成する。振動板111の膜厚は1〜4μm程度である。この後、基板101の上面側の、液体供給口101bを形成する部分の上のSiO2膜106はパターニングして除去しておく。
(7)次に、後工程で除去されて圧力発生室115等を構成するための型材となる第1パターン112を、振動板111の上に形成する。その形成方法としては印刷技術やフォトリソ技術を利用することができるが、微細パターンを形成できるので感光性樹脂を利用したフォトリソ技術が望ましい。第1パターン112の材料としては厚膜のパターニングが可能で、後にアルカリ溶液や有機溶剤で溶解除去可能なものが好ましい。そのような材料として、例えば、THBシリーズ(JSR製)やPMERシリーズ(東京応化工業製)などを使用することができる。後述する実施例ではこの材料として東京応化工業製のPMER・HM−3000を使用しているが、材料は当然これに限定されるものではない。第1パターン112の膜厚としては、1度塗りで形成する場合には60μm以下、複数塗りで形成する場合でも90μm以下とすることが、膜厚の分布やパターニング性の観点から好ましい。
(8)次に、第1パターン112上に導電層113をスパッタリング等により成膜する。導電層113の材料としては、Pt、Au、Cu、Ni、Ti等を使用することができる。樹脂(第1パターン112)と導電層113との密着性がある程度良好でなくては微細なパターンを形成することができないので、第1パターン112上に他の金属からなる膜を成膜した後にPt、Au、Cu、Ni等を成膜して導電層113を形成しても良い。後に第1パターン112を除去する工程で吐出口119(図3参照)に対応する部分の導電層113を除去できる必要があるので、導電層113の厚さとしては1500Å(150nm)以下が良く、最適には1000Å(100nm)以下である。導電層113の厚さが1500Åより厚いと第1パターン112を除去する工程で吐出口119の部分の導電層113を完全に除去しきれない場合があるためである。
(9)次に、圧力発生室115や吐出口119を含む液体流路を構成する流路構造体118をメッキ処理により形成する。メッキの種類には電気メッキや無電解メッキなどがあり、それらを適時使い分けることができる。電気メッキは処理液が安価である点、および廃液処理が簡易である点が有利である。無電解メッキはつき回りがよい点、均一な膜が形成できる点、およびメッキ皮膜が硬く耐摩耗性がある点で優れている。使い分けの例としては、まず電気メッキでNi層を厚く形成し、その後、無電解メッキによりNi−PTFE複合メッキ層を薄く形成して、流路構造体118を形成することができる。この場合、所望の特性の皮膜を持つメッキ層を安価に形成することができるという利点がある。
(10)前工程までで作成された基板101の上面側を後工程で用いられるエッチャントから保護するため、耐アルカリ性を持ち、後に有機溶剤などで除去可能な樹脂116で基板101の上面側を覆う。本実施形態では基板101の上面側を樹脂116で覆う構成としているが、これとは別に、基板101の下面側のみをエッチャントに接触させることが可能な治具に基板101を装着する手法を用いることもできる。
(11)続いて、基板101の下面側の酸化膜102を部分的にエッチングして、振動板背面空間101aと液体供給口101bを形成するための所定のパターンを形成する。これらのパターンは、図2に示すように平行四辺形の形状を有している。さらに、基板101の下面側の平行四辺形のパターンの狭角の近傍部分に、レーザー加工などによって先導孔(不図示)を開けても良い。これにより、基板101の異方性エッチングを行う際に平行四辺形の狭角の部分から発生する斜めのエッチングによって基板101の{111}面が傾斜することを抑制することができる。この先導孔はエッチングストップ層に限りなく近くまで到達していることが好ましい。先導孔の深さは、一般には基板101の厚さの60%、以上好ましくは70%以上、最適には80%以上である。当然のことであるが、先導孔は基板101を貫通してはならない。
(12)最後に、圧力発生室115や吐出口119を含む流路を形成する第1および第2パターン112,114をアルカリ溶液や有機溶剤によって除去する。
本発明のインクジェット記録ヘッドの一実施例を図1〜図4を参照して説明する。
(実施例2)
本発明のインクジェット記録ヘッドの製造プロセスの一実施例を、図5〜図9を参照して説明する。
(1)外径φ150mm、厚さ630μm、表面の面方位が{110}であるシリコン基板101を熱酸化して酸化膜102を形成し、上面側の酸化膜102を部分的にエッチングしてパターン103を形成し(図5(1))、さらにパターン103の部分を高密度プラズマエッチング装置(ICP)で上面から見た図8のように長方形にエッチングして溝104を形成した(図5(2))。溝104の深さは3μmとした。長方形の溝104の長辺の長さは3mm、短辺の長さは70μmとし、その長辺は{111}面と等価の面に平行になるように形成した。
(2)さらに、液体供給口101bに相当する部分の酸化膜102を除去し、LPCVD法でポリシリコン膜を3000Å(300nm)の厚さに堆積して、液体供給口101bに相当する部分と溝104およびその周囲部分に犠牲層105を形成した(図5(3))。
(3)この基板101上に、エッチングストップ層としてのSi3N4膜106をLPCVD法によって3000Å(300nm)の厚さに堆積し、さらにその上にSiO2膜107を熱CVD法によって2000Å(200nm)の厚さに堆積した(図5(4))。
(4)振動板の下面部を形成する犠牲層105に合わせて、Pt/Tiを1500/50Å(150/5nm)の厚さにそれぞれ堆積してこれをパターニングし、下電極108を形成した(図5(5))。
(5)この下電極108上に、PZTからなる薄膜をスパッター法で2μmの厚さに堆積して成膜を行い、その後にO2雰囲気下で680℃、5時間の焼成を行った。これにより、圧電体部109を形成した(図5(5))。
(6)圧電体部109上に、Pt/Tiを1500/50Å(150/5nm)の厚さにそれぞれ堆積してこれをパターニングし、上電極110を形成した。そして、同じレジストを用いてPZT膜である圧電体部109もパターニングした。以上により、圧電素子108〜110を形成した(図5(5))。
(7)次に、このようにして形成した圧電素子108〜110の上に、プラズマCVD等を使って、SiNx膜を2μmの厚さに堆積してこれをパターニングし、振動板111を形成した(図6(6))。この後、液体供給口121を成す部分の上のSiO2膜107をパターニングして除去した。
(8)振動板111上に圧力発生室115の型材である第1のパターン112をスピンナで60μmの厚さに形成し、これを乾燥した後にパターニングした(図6(7))。第1のパターン112には、PMER・HM−3000PM(東京応化工業製)を使用した。
(9)振動板111および第1のパターン112の上にメッキを行う際に用いる導電層113を形成した(図6(8))。導電層113は、Ti/Cuをそれぞれ250/750Å(25/75nm)の厚さにスパッタリングにより成膜し、それをパターニングすることで形成した。Ti層は基板に対するCu層の密着性向上や導電性向上を目的として成膜した。
(10)導電層113の上に、吐出口の型材となる第2のパターン114をスピンナで25μmの厚さに形成し、これを乾燥した後にパターニングした(図6(8))。第2のパターン114にはPMER・LA−900PM(東京応化工業株式会社製)使用し、その露光にはプロキシミティタイプの露光機を使いた。露光時にマスクと基板とのギャップを100μmにすることで、第2のパターン114をテーパー形状にした。
(11)次に、導電層113の上に電気メッキでNi層を20μmの厚さに形成し、その後無電解メッキによりNi−PTFE複合メッキ層を3μmの厚さに形成して、圧力発生室115を形成する壁部材となる流路構造体118を形成した(図6(9))。
(12)次に、基板101の上面側を保護するために環化ゴム系樹脂116を基板101の上面側に塗布した(図7(10))。環化ゴム系樹脂116にはOBC(東京応化工業製)を使用した。その後、基板101の下面側の酸化膜102を、図2に示す振動板背面空間101aおよび液体供給口101bを成す平行四辺形の形状にパターニングし、それらの平行四辺形の狭角の近傍部分にレーザー加工を施して、基板101に先導孔(不図示)を開けた。先導孔の深さは基板101の厚さの80%にした。そして、基板101の下面側に対して、TMAH22wt%、80℃にて、異方性エッチングを所定の時間行った。これにより、基板101に振動板背面空間101aおよび液体供給口101bが形成されると共に、振動板背面空間101a内の犠牲層105がエッチングされて圧電素子108〜110の周囲には空間120が形成された(図7(11))。
(13)この異方性エッチングを行った後、環化ゴム系樹脂116をキシレンで除去し、その後、圧電素子108〜110の下面側に残ったエッチングストップ層としてのSi3N4層106をケミカルドライエッチング(CDE法)で除去した(図7(11))。これにより、圧電素子108〜110が完成した。最後にダイレクトパス(荒川化学工業製)を使って、第1および第2のパターン112,114を除去した(図7(12))。その溶剤としては、パインアルファST−380(荒川化学工業株式会社製)を使用した。
(実施例3)
本発明のインクジェット記録ヘッドの製造プロセスの他の実施例を、図10〜図13を参照して説明する。
(1)外径φ150mm、厚さ200μmのシリコン基板201に、熱酸化によって酸化膜202を6000Å(600nm)の厚さに形成し、上面側の酸化膜202を部分的にエッチングして開口部203を形成した(図10(1))。
(2)開口部203を高密度プラズマエッチング装置(ICP)でエッチングして、深さ3μmの溝部204を形成した(図10(2))。
(3)基板201の上面側に、エッチングストップ層としてLPCVD法でSi3N4膜205を3000Å(300nm)の厚さに堆積し、さらに保護膜として熱CVD法でSiO2膜206を2000Å(200nm)の厚さに堆積した(図10(3))。
(4)次に、図10(4)に示すように、溝部204内に50Å(5nm)の厚さのTiと1500Å(150nm)の厚さのPtとをスパッター法で堆積して下電極207を形成した。下電極207上にスパッター法でPZTの単結晶を2μmの厚さに堆積し、O2雰囲気下で680℃で5時間のアニールを行って圧電素子膜208を形成した。さらに、圧電素子膜208上に50Å(5nm)の厚さのTiと1500Å(150nm)の厚さのPtとをスパッター法で堆積し、パターニングして上電極209を形成した。
(5)基板201の上面上に、SiNx膜をプラズマCVD法を用いて2μmの厚さに堆積し、これをパターニングして振動板210を形成した(図11(5))。液体供給口(不図示)につながる部分のSiO2膜206をエッチングにより除去した。
(6)基板201の上面上に、圧力発生室の型材となる第1のパターン211を形成した(図11(6))。第1のパターン211は、PMER・HM−3000PM(東京応化工業製)をスピンナで60μmの厚さに形成し、乾燥した後にパターニングすることで形成した。
(7)振動板210および第1のパターン211の上にメッキを行う際に用いる導電層212を形成した(図11(7))。導電層212は、Ti/Cuをそれぞれ250/750Å(25/75nm)の厚さにスパッタリングにより成膜し、それをパターニングすることで形成した。Ti層は基板に対するCu層の密着性向上や導電性向上を目的として成膜した。
(8)導電層212の上に、吐出口の型材となる第2のパターン213をスピンナで25μmの厚さに形成し、これを乾燥した後にパターニングした(図11(7))。第2のパターン213にはPMER・LA−900PM(東京応化工業株式会社製)使用し、その露光にはプロキシミティタイプの露光機を使いた。露光時にマスクと基板とのギャップを120μmにすることで、第2のパターン213をテーパー形状にした。
(9)次に、導電層212の上に電気メッキでNi層を20μmの厚さに形成し、その後無電解メッキによりNi−PTFE複合メッキ層を3μmの厚さに形成して、圧力発生室を形成する壁部材となる流路構造体214を形成した(図11(8))。
(10)基板201の下面側の酸化膜202を、図13に示すように振動板背面空間および液体供給口を成す長方形形状にパターニング(202a)し、ICPにてSi基板201をエッチングしてエッチング層であるSi3N4膜205に到達するまで掘り込んで、振動板210の下面側に振動板背面空間201aと液体供給口(不図示)を形成した(図12(9))。このときに圧電素子207〜209の周囲に空間216ができるように、基板201の下面側のSiO2膜202のパターンを設計した。
(11)エッチングストップ層であるSi3N4膜205をケミカルドライエッチング(CDE法)で除去し、最後にダイレクトパス(荒川化学工業製)を使って各パターン211,213を除去した(図12(10))。このとき、溶剤としてパインアルファST−380(荒川化学工業株式会社製)を使用した。
(実施例4)
図15は、実施例3の工程(10)においてSi基板の下面側に図13に示すようなパターン202aを形成せずに、ICPでSi基板を全部エッチングで取り去ったものを示している。
図16は、実施例2の工程(1)でSi基板に溝を形成せずに基板上に積層する形で圧電素子を作製し、圧電素子の下側と両側にポリシリコンの犠牲層を配置して、振動板背面空間404を形成したものである。このインクジェット記録ヘッドで連続吐出試験を行ったところ、3×107回の吐出で振動板402の角部403に亀裂が発生して吐出不能になるヘッドがあった。
101a 振動板背面空間
101b 液体供給口
108 下電極
109 圧電体膜
110 上電極
111 振動板
117 圧力発生室
119 吐出口
Claims (7)
- 液体を吐出する吐出口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に対応して設けられる圧電素子と、前記圧力発生室と前記圧電素子との間に設けられる振動板と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
平板状の基板の一方の主面に凹部を有する当該基板を用意する用意工程と、
前記凹部内に前記圧電素子を形成する圧電素子形成工程と、
前記基板の一方の主面と前記圧電素子との上に平坦な前記振動板を形成する振動板形成工程と、
前記振動板の上に前記圧力発生室を形成する圧力発生室形成工程と、
前記基板の少なくとも前記圧電素子の周辺を除去する除去工程と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。 - 前記用意工程と前記圧電素子形成工程との間において、選択的にエッチングを行うことが可能な犠牲層を前記凹部内に形成する工程と、耐エッチング性を有するパッシベーション層を少なくとも前記犠牲層の上に形成する工程と、を更に有する請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 前記基板の一部と前記パッシベーション層の一部とを除去することにより、前記圧力発生室に連通する液体供給口を前記基板に形成する工程を更に有する請求項2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 前記圧力発生室形成工程は、前記圧力発生室となる第1のパターンを前記振動板の上に形成する工程と、前記第1のパターンの上に前記圧力発生室の壁を構成する部材となる第2のパターンを形成する工程と、前記第1のパターンを除去して前記圧力発生室を形成する工程と、を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 前記第1のパターンを除去して前記圧力発生室を形成する工程は、前記除去工程の後に行う請求項4に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 前記基板は表面の面方位が{110}であるシリコンからなる請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 前記除去工程は結晶軸異方性エッチングによって行う請求項1から6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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