カルシウム様及びカルシウム拮抗分子
本発明の有用なカルシウム様及びカルシウム拮抗分子は一般的に上記される。これらの分子は、Ca2+レセプターでのCa2+の活性を模倣し又は拮抗する分子を明らかにするスクリーニング方法を用い容易に確認できる。そのような方法の例を、以下に提供する。これらの例は本発明を限定するものではなく、単に当業者により容易に用いられ、又は適用される方法を示すものである。
一般にカルシウム様及びカルシウム拮抗分子は、以下に記載されたもの(導出分子と呼ばれる)にならって修飾される分子をスクリーニングすることにより確認される。以下に見ることができるように、種々のCa2+レセプターに有用な幾つかの特異的カルシウム様物質及びカルシウム拮抗物質がある。誘導分子は標準的方法により容易に計画され、当業者に知られた多くのプロトコールの一つで試験する。多くの分子を、本発明に最も有用なものを確定するために容易にスクリーンしうる。
他の系でCa2+の作用を模倣し又は拮抗する有機カチオン分子はCa2+レセプターへの活性についての必要な構造を含む。他の有用な分子の理論的設計は、カルシウム様又はカルシウム拮抗であることが知られた分子の研究及びその既知分子の構造を修飾することを含む。例えばポリアミンは、スペルミンが幾つかのインビトロ系でCa2+の活用を模倣するので、潜在的にカルシウム様である。結果はスペルミンが実際細胞外二及び三価カチオンにより惹起されたものを連想させる[Ca2+]及びPTH分泌に変化を起こすことを示す(以下参照)。逆に、Ga3+はGd3+のウシ上皮小体カルシウム受容体における作用と拮抗する。以下に概略述べる実験は、従って、スペルミンにより得られたこの現象学が細胞外Ca2+により用いられる同じ機構を含むことを示すことを目ざしている。これを行うため、Ca2+レセプターの活性化を特徴づける種々の生理的及び生化学的パラメーターへのスペルミンの影響を評価した。同様の効果を有するこれらの分子は、本発明に有効であり、スペルミンと同様の構造を有する分子を選択又は製造することによって発現できる。一度、他の有用な分子が発見されると、本選択方法は容易に繰り返すことができる。
明瞭さのゆえに、以下に上皮小体細胞Ca2+レセプターに活性であるか、又は[Ca2+]の変化に対する細胞応答のアゴニスト又は拮抗体として作用する有用な分子を確認するための特別な一連のスクリーニングプロトコールを提供する。同等の検定を、他のCa2+レセプター、または他の無機イオン受容体に活性な、またはそうでないにせよ[Ca2+]または他のイオンにより調節される細胞機能を模倣し又は拮抗する、分子について用いることができる。これらの検定は、本発明のカルシウム状分子を含む分子を見出すのに有用である方法の例となる。同等の方法は、細胞外Ca2+を含むイオンの作用に最も拮抗する分子をスクリーニングすることによりカルシウム拮抗分子を見出すのに用いることができる。インビトロ検定を、標準的技術によりこれらのカルシウム様物質及びカルシウム拮抗物質の選択性、可飽和性(saturability)及び可逆性を特徴づけるのに用いることができる。
スクリーニング方法
一般にフラ−2を与えた上皮小体細胞は0.5mM CaCl2を含む緩衝液にまず懸濁する。試験物質をキュベットに少量(5−15μl)加え、蛍光シグナルの如何なる変化にも注意する。試験物質の濃度の累積増加を、いくらかの予め定めた濃度に達するか、又は蛍光の変化が見られるまで、キュベット中で行う。蛍光の変化が見られなければ、分子は不活性と考えられ、さらに試験は行わない。例えばポリアミン型分子による最初の研究では、分子は5又は10mMの高い濃度で試験した。より有効な分子が今や知られているので(以下参照)、天井濃度を低くする。例えば、新しい分子は500μMまでの濃度又はそれ以下で試験する。この濃度で蛍光に変化が認められなければ、その分子は不活性と考えることができる。
[Ca2+]に増加を生ずる分子は付加的試験に付す。カルシウム様分子としてその考察に重要な分子の二つの本質的特徴は、細胞内Ca2+の移動とPKCアクチベーターへの感受性である。PMA−感性方法で細胞内Ca2+の移動を起こしている分子がカルシウム様分子であること、そしてPTH分泌を阻害することを常に見出した。必要なら、付加的試験を、この考えを強固にするために実施した。典型的には、カルシウム様又はカルシウム拮抗活性(上記参照)についての全ての種々の試験は行わない。むしろ、分子がPMA−感性方法で細胞内Ca2+の移動を起こしたならば、それはヒト上皮小体細胞でのスクリーニングに昇格する。例えば[Ca2+]iの測定は、EC50を決定するために、又、一次又は二次上皮小体亢進に対し外科手術を受けている患者から得たヒト上皮小体細胞でのPTH分泌を阻止する分子の能力を測定するために行う。EC50又はIC50が低ければ低いほど、カルシウム様物質又はカルシウム拮抗物質としての分子はより有効である。
フラ−2による[Ca2+]の測定は、活性について新しい有機分子をスクリーニングする非常に速やかな方法を提供する。単一の午後に、10−15分子を試験し、それらの細胞内Ca2+を移動する(又はしない)能力を評価することができる。PMAによる減少に対する[Ca2+]iの観察された如何なる増加の感受性も評価できる。さらに、単一細胞調製品は[Ca2+]i、サイクリックAMPレベル、IP及びPTH分泌についてデータを提供できる。典型的な方法は、細胞にフラ−2を与え、次いで細胞懸濁液を二つに分けることである。ほとんどの細胞は[Ca2+]iを測定するのに用いられ、残りは分子とインキュベートしてサイクリックAMP及びPTH分泌に関するそれらの影響を評価する。サイクリックAMP及びPTHについての放射免疫検定の感受性の理由で、両変数は、0.3ml細胞懸濁液(約500,000細胞)を含む単一インキュベーション管で測定できる。イノシトールリン酸エステルの測定は、スクリーニングの時間つぶしの局面である。しかしながら、塩化物(どちらかといえばギ酸塩)で溶出されるイオン交換カラムは、(約30時間を要する)回転減圧蒸発を必要としないので、IP3形式をスクリーニングする非常に迅速な方法を提供する。この方法は単一の午後にほぼ100試料の手続きを可能にする。[Ca2+]i、サイクリックAMP、IP3及びPTHの測定により評価されるように興味を起こさせるこれらの分子は、次いで種々のイノシトールリン酸エステルの形成を試験し、HPLCによりそれらの異性形を評価することによる、より厳格な分析に付す。
これらのプロトコールで検出される興味ある分子は、次いで例えばラットMTC6−23細胞系を用い例えばカルシトニン−分泌C−細胞での[Ca2+]へのそれらの影響を試験することにより、特異性を評価する。
以下は、これらのスクリーニング方法に有用な方法の例示である。種々の試験カルシウム様又はカルシウム拮抗分子についての典型的結果の例を図7−42に与える。
上皮小体細胞調製
上皮小体腺を、地元の畜殺場で新たに屠殺した仔ウシ(12−15週令)から得て、(mM):NaCl、126:KCl、4:MgCl2、1:Na−HEPES、20:pH7.4;グルコース、5.6及び可変量のCaCl2、例えば1.25mMを含む氷冷上皮小体細胞緩衝液(PCB)中で実験室に移した。一次又は、尿毒症上皮小体亢進(HPT)のため上皮小体組織の外科手術除去を受けている患者から得たヒト上皮小体腺をウシ組織と同様に処理した。腺は過剰の脂肪と結合組織を取り除き、次いで鋭利なはさみで2−3mmの適当なさいころに刻んだ。次いで分離した細胞をパーコル緩衝液中で遠心分離により精製した。得られる上皮小体細胞調製品は相対比顕微鏡及びスーダンブラックB染色により評価される限り実質的に赤血球、脂肪細胞及び毛細管組織が無かった。分離し、精製した上皮小体細胞は5ないし20細胞を含む小さな固りとして存在した。トリパンブルー又はエチジウムブロミドの除外により示されるように、細胞生存度は通常通り95%であった。
細胞はこの時点で実験目的に用いることができるが、生理的反応(PTH分泌の抑制可能性及び[Ca2+]iの休止レベル)は、細胞を一夜培養後、より良好である。一次培養も、イノシトールリン酸エステル代謝の測定を含む研究に必要なように、細胞は同位体平衡に近い同位元素により標識化できる(以下参照)。パーコル勾配による精製後、細胞を50ug/mlストレプトマイシン、100U/mlペニシリン、5ug/mlゲンタマイシンを補足したハムF12−ダルベッコ修飾イーグルス培地(GIBCO)とITS+ の1:1混合物で数回洗浄した。ITS+ はインスリン、トランスフェリン、セレン及びウシ血清アルブミン(BSA)−リノレン酸を含むプレミックス溶液(コラボラティブ・リサーチ、ベッドフォード、MA)である。次いで細胞をプラスチックフラスコ(75又は150cm2 ;ファルコン)に移し、5%CO2の湿った雰囲気中37℃でインキュベートした。血清は、その存在が細胞をプラスチックに付着させ、増殖、脱分化を受けさせるので、一夜培養に加えない。上の条件下で培養した細胞は傾斜することによりフラスコから容易に除去され、新たに調製した細胞と同じ生存度を示す。
サイトゾルCa 2+ の測定
精製上皮小体細胞を1μMフラ−2−アセトキシメチルエステルを含む1.25mM CaCl2−2%BSA−PCBに再び懸濁し、37℃で20分間インキュベートした。次いで細胞をペレット化し、エステルを欠いた同じ緩衝液に再び懸濁し、さらに15分間37℃でインキュベートした。続いて細胞を0.5mM CaCl2及び0.5%BSAを含むPCBで2回洗浄し、室温(約20℃)で保持した。使用直前に、細胞を予め温めた0.5mM CaCl2−PCBで5倍に希釈し、0.1%の最終BSA濃度を得た。蛍光記録に用いたキュベット中の細胞の濃度は、1−2×106 /mlであった。
インディケーターを与えた細胞の蛍光を、それぞれ340及び510nmの励起及び放射波長を用いる、サーモスタットキュベットホルダー及び磁気攪拌器を備えた分光蛍光計(バイオメディカル・インストルメンティション・グループ、ユニバーシティー・オブ・ペンシルバニア、フィラデルフィア、PA)で、37℃にて測定した。本蛍光はサイトゾルCa2+のレベルを示す。蛍光シグナルは、最大蛍光(Fmax)を得るためジギトニン(50ug/ml、最終)を、最小蛍光(Fmin)を得るためEGTA(10mM、pH8.3、最終)を、そして224nMの解離定数を用い較正した。色素の漏れは温度に依存し、キュベット中細胞を加温後、初めの2分以内に最も起きる。色素漏れはその後きわめてわずかしか増加しない。色素漏れの較正を正すために、細胞をキュベットに置き、37℃で2−3分間攪拌した。次いで細胞懸濁液を取り、細胞をペレット化し、上清をきれいなキュベットにもどした。次いで上清を上記のようにジギトニン及びEGTAで処理し、色素漏れの評価として得た。それは、典型的には全Ca2+依存蛍光シグナルの10−15%である。本評価は明白なFminから引いた。
PTH分泌の測定
ほとんどの実験で、フラ−2を与えた細胞をPTH分泌の研究に用いた。フラ−2を与えている上皮小体細胞は、細胞外Ca2+に対するそれらの分泌反応を変更しない。細胞を0.5mM CaCl2及び0.1%BSAを含むPCBに懸濁した。インキュベーションは、小量のCaCl2及び/又は有機ポリカチオンを存在させ、又はさせることなく、0.3mlの細胞懸濁液を含むプラスチック試験管(ファルコン2058)中で実施した。37℃で種々の時間(典型的には30分)インキュベーション後、試験管を氷上に置き、細胞を2℃でペレット化した。上清の試料を酢酸でpH4.5とし、−70℃で保存した。このプロトコールはウシ及びヒト両上皮小体細胞に用いた。
ウシ細胞について、試料上清中のPTHの量は、1/45,000の最終希釈で、GW−1抗体又はその等価を用いる均一放射免疫検定により測定した。125I−PTH(65−84:インクスター、スティルウォーター、MN)をトレーサーとして用い、分画をデキストラン−活性炭により分離した。試料及びデータ減少の計数は、バッカード・コブラ5005ガンマ・カウンターで実施した。
ヒト細胞については、GW−1抗体がヒトPTHをほとんど認識しないので、無傷の及びN末端ヒトPTHを認識する、商業的に入手しうる放射免疫検定キット(INS−PTH:ニッコールス・インスティテュート、ロス・アンゼルス、CA)を用いた。
サイクリックAMPの測定
細胞を、PTH分泌研究用に上記のようにインキュベートし、インキュベーションの終わりに0.15mlの試料を採り、0.85mlの熱(70℃)湯に移し、この温度で5−10分間加熱した。次いで試験管を数回、凍結、解凍し、細胞残骸を遠心分離により沈降させた。上清の部分をアセチル化し、サイクリックAMP濃度を放射免疫検定により測定した。
イノシトールリン酸エステル形成の測定
上皮小体細胞を4μCi/ml 3H−myo−イノシトールと20−24時間インキュベートすることにより膜リン脂質を標識化した。次いで細胞を洗浄し、0.5mMCaCl2及び0.1%BSAを含むPCBに再び懸濁した。インキュベーションは、種々の濃度の有機ポリカチオンの不存在又は存在で、異なる時間、ミクロフューグ管で行った。反応は1mlクロロホルム/メタノール/12N HCl(200:100:1;v/v/v)の添加により停止した。次いでフィチン酸水解物(200μl:25μgリン酸エステル/試験管)水を加えた。試験管を遠心分離し、600μlの水性相を10ml水に希釈した。
イノシトールリン酸エステルを、AG1−X8を塩化物又はギ酸塩形で用いるイオン交換クロマトグラフィにより分離した。IP3レベルのみを測定する場合、塩化物形を用い、一方、ギ酸塩形は主なイノシトールリン酸エステル(IP3、IP2及びIP1)を解明するのに用いた。IP3だけの測定には、希釈試料を塩化物−形カラムに適用し、カラムを10ml 30mM HClで、次いで6ml 90mM HClで洗浄し、IP3を3ml 500mM HClで溶出した。最終溶出物を希釈し、計数した。全ての主要イノシトールリン酸エステルの測定には、希釈試料をギ酸塩−形カラムに適用し、ギ酸塩緩衝液の濃度を増すことにより、IP1、IP2及びIP3を次々に溶出した。ギ酸塩形カラムからの溶出試料は、回転減圧蒸発し、残渣をカクテルにとり、計数した。
IP3の同異形はHPLCにより評価した。反応は1ml 0.45M過塩素酸の添加により停止させ、氷上で10分間保った。次いで遠心分離し、上清をNaHCO3でpH7−8に調整した。次いで抽出物をパーティシルSAXアニオン交換カラムに適用し、ギ酸アンモニウムの直線公配によって溶出した。次いで種々の分画をダウエックスにより脱塩し、バッカード・トリカーブ1500LSCで液体シンチレーションカウンターにかける前に回転減圧蒸発に付した。
全てのイノシトールリン酸エステル分離法について有機ポリカチオンが分離により妨害されるかどうかを測定するために信ずべき標準を用いる適当なコントロールを使用した。
もしそうである場合は、イノシトールリン酸エステル分離前に試料をカチオン交換樹脂で処理して、害を及ぼす分子を除去した。
C−細胞中のサイトゾルCa 2+ の測定
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCCNo.1607)から得たラット骨髄甲状腺癌(rMTC6−23)から誘導した腫瘍C−細胞を、ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)プラス15%ウマ血清中、抗体の不存在で単層として培養した。[Ca2+]iの測定用に、細胞を0.02%EDTA/0.05%トリプシンにより収集し、1.25mM CaCl2及び0.5%BSAを含むPCBで2回洗浄し、上皮小体細胞に上記したようにフラー2を与えた。[Ca2+]iの測定は、上記したように色素漏れに対する適当な訂正により行った。
ラット破骨細胞での[Ca 2+ ] i の測定
破骨細胞は、無菌条件を用いる、1−2日令のスプラギュ−ドゥリィラットから得た。ラットの子供は首をはねて犠牲にし、後足を取り除き、大腿部は軟組織を速やかに除き、予め加温したF−12/DMEM培地(DMEMは10%ウシ胎仔血清及び抗生物質(ペニシリン−ストレプトマイシン−ゲンタマイシン;100U/ml−100ug/ml−100ug/ml)を含む)に置いた。二匹の子供からの骨は縦にカットし、1ml培養培地に置いた。骨細胞は、プラスチックピペットによる骨断片のおだやかな粉砕により得、培養培地で希釈した。骨断片を沈殿させて、等しい部分(約1ml)の培地を、25mmガラスカバーグラスを有する6ウェル培養プレートに移した。細胞を、湿った5%CO2−空気雰囲気で1時間、37℃で澄ませる。次いでカバーグラスを新しい培体で3回洗浄して非付着細胞を除去した。破骨細胞中の[Ca2+]iの測定は、非付着細胞を除去して6−8時間内に実施した。
カバーグラスに付着した細胞は、血清を欠き、代わりに0.5%BSAを含むF−12/DMEM中、5μMインド−1アセトキシメチルエステル/0.01%プルロニックF28との37℃、30分間インキュベーションによりインドール1を与えた。続いてカバーグラスを、微量蛍光定量法を装備したニコン・ダイアホト倒立顕微鏡の台上に設置した過融解室に移す前に、洗浄し、エステルを欠いたF−12/DMEM中、37℃でさらに15分間インキュベートした。破骨細胞は、それらの大きな形状及び多重核の存在から容易に確認した。(340nmでの励起により発した)細胞は、試験物質を存在させ又はさせることなく、1ml/分で緩衝後(典型的には0.1%BSA及び1mM Ca2+を含むPCB)と過融解した。340nmでの励起により発した蛍光は、顕微鏡のビデオポートを経て440nm二色鏡に送り、495及び405nmでの蛍光強度を光電子倍増管により収集した。光電子倍増管からの産生を増幅し、デジタル化し80386PCに記憶する。蛍光強度の比は[Ca2+]iを評価するのに用いた。
卵母細胞発現
付加的研究において、ウシ又はヒト上皮小体細胞からのmRNAを注射したアフリカツメガエル細胞をスクリーニングプロトコールに用い、Cl- コンダクタンスを[Ca2+]iの増加をモニターする間接手段として測定した。以下はネオマイシンの効果を試験する実施例である。
卵母細胞は、ヒト上皮小体組織(二次HPTの例からの上皮小体腺)からのポリ(A)+ −強化mRNAを注射した。3日後、卵母細胞を、ネオマイシンに対するそれらの反応について試験した。ネオマイシンBは薬物フリー生理食塩水との過融解を止めたCl- コンダクタンスの振動増幅を誘引した(図26参照)。ネオマイシンBに対する反応は100μMと10mMの間の濃度で観察した。ネオマイシンBにより誘引された反応が上皮小体mRNAの注射による偶発であったことを確かめるため、水注射卵母細胞中、電流についてネオマイシンBの効果を測定した。試験した5つの卵母細胞の各々でネオマイシンB(10mM)は電流に何らの変化も生じなかった。約40%の卵母細胞が、カルバコールに反応することが知られており、効果は内因性ムスカリンレセプターにより伝達された。試験した5つの卵母細胞中、1つはカルバコールに対する反応で内への電流を示し、これは図26の下部図形に示される。即ち、[Ca2+]i及びCl- コンダクタンスの増加に結合したムスカリンレセプターを発現する細胞中、ネオマイシンBは、反応を誘引しない。このことは、ネオマイシンBに対する反応が上皮小体細胞mRNAにより暗号化された特異的蛋白の発現に依存することを示す。無傷の細胞では、ネオマイシンBはCa2+レセプターに直接作用し、上皮小体細胞機能を変えることを非常に強く示唆する。
最も重要な分子からの薬物設計
幾つかの有機分子は、本明細書に示されるように、Ca2+レセプターで作用することにより細胞外Ca2+の作用を模倣又は拮抗する。しかしながら、試験した分子は、薬物候補として必ずしも適当でないが、それらは、仮説の基礎となるCa2+レセプターに基づく治療が正しいことを示すのに役立つ。これらの分子は、それらがCa2+レセプターに作用させることができ、従って本発明に有用な分子を選択しうる構造的特徴を決定するのに用いることができる。
そのような一つの分析分法の例は以下の通りである。本例は、以下の実施例で詳細に述べるが、本明細書で議論された最も重要な分子から本発明の有用な分子を設計するのに用いることができる理論的根拠を示すためにここで用いる。当業者は、実施例で明らかにされた分析段階を、又、最も望ましいカルシウム様物質又はカルシウム拮抗物質が明らかにされるまで、同様の分析を他の量も重要な分子に行うことができることを認識するであろう。
他の例も以下に提供する。存在するデータをまとめると、有用な最も重要な分子は、好ましくは1又はそれ以上の位置に置換される、そして所望により分枝状または直鎖状の置換又は非置換アルキル基を有しうる芳香基を有することであろうことを示す。加えて、望ましいCa2+レセプターに対するより高い親和性を確実にする正しい立体特異性の分子を選択することが重要である。従ってこれらのデータは当業者に以下に多くの記載されるように本発明の最高の望ましい分子を見出すために誘導されうる適当な最も重要な分子を教示する。
構造的に異なるけれども、試験される分子は研究されうる一般的特徴を有しうる。本実施例において、実効正電荷と細胞内Ca2+を移動する可能性との相関を試験した。プロタミン(+21:EC50=40nM)は、上皮小体細胞での[Ca2+]iの移動を起こすのに、スペルミン(+4;EC50=150μM)よりも有効であったネオマイシンB(+6;EC50=20μMヒト上皮小体細胞中、及び40μMウシ上皮小体細胞中)よりもさらに有効であった。これらの結果は、正電荷のみが可能性を決定するのかどうか、又はCa2+レセプター上の活性に寄与する他の構造的特徴があるのかどうかという疑問を生ずる。このことは、最初にそれがCa2+レセプターが有効且つ特異的な治療用分子を目標にできるという観点に大きく影響するということを決定するのが重要である。従って、ネオマイシンB及びスペルミンに関連する種々の他の有機ポリカチオンは分子の実効正電荷と細胞内Ca2+を移動するその可能性との間の関係を決定する研究ができる。
研究した最初の系列の分子はアミノグリコシドであった。その分子はウシ上皮小体細胞で研究し、それらの細胞内Ca2+の移動についてのEC50を測定した。アミノグリコシドについては、サイトゾルCa2+過渡電流を惹起する能力の位置順は、ネオマイシンB(EC50=20又は40μM)>ゲンタマイシン(150μM)>ベカナマイシン(200μM)>ストレプトマイシン(600μM)であった。カナマイシンとリンコマイシンは、500μMの濃度で試験したとき、効果がなかった。これらのアミノグリコシドのpH7.3での実効正電荷は、ネオマイシンB(+6)>ゲンタマイシン(+5)=ベカマイシン(+5)>カナマイシン(平均+4.5)>ストレプトマイシン(+3)>リンコマイシン(+1)である。次いでアミノグリコシド系列内で、実効正電荷間にある関係があるがこれは絶対的ではなく、ストレプトマイシンよりも有効であると予想されたカナマイシンは活性がない。
様々なポリアミンをテストすることにより、実効陽性電荷と有効性(potency)の間の付加的かつより著しい矛盾が明らかになった。これらポリアミンの構造的分類を試みた:(1)直鎖状、(2)分枝状、および(3)環状。テストしたポリアミンの構造を図1−6に与える。直鎖状ポリアミンの中では、スペルミン(+4:EC50=150μM)はペンタエチレンヘキサミン(+6:EC50=500μM)およびテトラエチレンペンタミン(+5:EC50=2.5μM)よりも、たとえ後者の分子の方がより大きい実効陽性電荷を有しているとしても、強力である。
我々は、様々な数の二級および一級アミノ基を持ち、従って実効陽性電荷が変化する幾つかの分枝状ポリアミンを合成した。これら2分子、NPS381およびNPS382でウシ上皮小体細胞における[Ca2+]iの効果を試験した。NPS382(+8:EC50=50μM)は、たとえそれが2つのより少ない陽性電荷を含有するとしても、NPS381(+10:EC50=100μM)の約2倍の有効性であった。
陽性電荷と有効性の間の同様の矛盾が環状ポリアミンでの実験において表された。例えば、ヘキササイクレン(+6:EC50=20μM)は、NPS383(+8:EC50=150μM)よりも強力であった。これらのポリアミンで得られた結果は、陽性電荷が有効性に貢献する単独の因子ではないことを示している。
更なる研究により、上皮小体細胞Ca2+レセプターの活性を分け与える分子の構造的特徴に洞察が与えられた。構造的に重要な特徴の1つに、(陽性電荷を帯びる)窒素間の分子間距離がある。それ故に、スペルミンはトリエチレンテトラミン(EC50=8mM)の50倍も強力にウシ上皮小体細胞における[Ca2+]iの増加を引き起こすが、両分子は+4の実効陽性電荷を帯びている。これら2つのポリアミン間の構造上の相違は、窒素を引き離しているメチレンの数だけであり、スペルミンでは、それは3−4−3であるのに対して、トリエチレンテトラミンでは、2−2−2である。この窒素間の間隔をあける外観上の少しの変化は、有効性に対して深い関係を持ち、分子内の窒素のコンホーメーション関係が重大であることを示唆している。これを支持するのは、ヘキササイクレンおよびペンタエチレンヘキサミンで得られた結果である。前者の分子は、単に後者の環状類似体であり、全窒素間に同数のメチレンを含有しているが、環構造の存在は、有効性を25倍に増加する。これらの結果は、それ自体の陽性電荷がCa2+レセプターにおける有機分子の活性を決定する重大な因子ではないことを示している。
他の一連の実験より、Ca2+レセプターの活性決定における芳香族基の重要性が明らかにする。その結果は、クモ、アルギオープ・ロバータ(Argiope lobata)の毒から単離された2種のアリルアルキルアミンで得られた。これらの分子、アルギオトキシン(algiotoxin)636およびアルギオトキシン659は、異なる芳香族基に結合した同一のポリカチオン部分を有する(図30)。アルギオトキシン659は、100ないし300μMの濃度でテストした時に、ウシ上皮小体細胞における[Ca2+]iの瞬間の増加を引き起こした。反対に、アルギオトキシン636は、同様の濃度でテストしても、効果無しであった(図30)。これらの2種のアリルアルキルアミン間の構造上の相違は、分子の芳香族部分のみであり:アルギオトキシン659は、4−ヒドロキシインドール部分を含んでいるのに対し、アルギオトキシン636は、2,4−ジヒドロキシフェニル基を含んでいる。これら2種のアリルアルキルアミンの実効陽性電荷は、同じであり(+4)、そのため、これらの異なる有効性は、異なる芳香族基から生じるに違いない。このことは、実効陽性電荷のみが、有効性を決定するのではないことを示している。しかしながら、これらを見い出したことにより実際に重要となるのは、芳香族基がCa2+レセプターを活性化する分子の能力に非常に貢献するという発見である。
アルガトキシン489(NPS017)およびアルガトキシン505(NPS015)のいずれも上皮小体細胞における細胞間Ca2+の流動化を引き起こし、それぞれEC50、6と22μMを有している。これらの分子の構造上の相違は、インドール部分のヒドロキシ基のみである(図1−6)。このことは、分子の芳香族領域上の置換が有効性に影響を与え得ることを示している。これは、研究に付しているリード分子が、芳香族部分が置換されているような分子を含んでいるであろうことを示している。
ここに記載したリード分子とは系統的に異なる構造的特徴は、(1)実効陽性電荷、(2)窒素を引き離しているメチレン数、および(3)例えば、メチレン間隔および実効陽性電荷における変化を伴う、および伴わないポリアミンの環状のものを含んでいる。加えて、構造および芳香族基の位置における系統的変化を、例えば、スズメバチおよびクモの毒から単離された様々なアリルアルキルアミンにおいて、試験することが出来;商業的に入手可能な芳香族部分をアルギオトキシンポリアミン部分と結合させることにより、合成分子を調製することが出来る。アルギオトキシンポリアミン部分は、カルボン酸を含有しているいずれかの芳香族部分と容易に結合することが出来る。従って、フェニル酢酸および安息香酸のヒドロキシおよびメトキシ誘導体、同じくヒドロキシインドール酢酸系を系統的にスクリーニングするのは簡単である。ヘテロ芳香族機能性を有する類似体を調製し、活性を評価することも出来る。
該分子間の有効性および効力の比較により、一定の陽性電荷で、芳香族基の最適な構造および位置が明らかになるであろう。
有効性を増加すると思われるポリアミンモティーフでの構造的多様性の1つは、直鎖状親分子の環状のものが存在することである。バドムンチアミンA(BudmunchiamineA)は、植物アルビジア・アマラ(Albizia
amara)から単離されたものであり、スペルミンの環状誘導体である(図1−6)。バドムンチアミンAをウシ上皮小体細胞に加えると、細胞外Ca2+の不在に固執し、PMAでの前処理により鈍化した[Ca2+]iの迅速かつ瞬間の増加を引き起こした。従って、それは、恐らく、Ca2+レセプターに作用することにより、上皮小体細胞における細胞間Ca2+の流動化を引き起こす。それは殆ど、スペルミン(EC50約200μM)と等しい効力をもっているが、スペルミンよりも1つ低い陽性電荷(+3)を帯びている。
バドムンチアミンAより得られた結果は、構造活性研究の予言力および天然物をテストすることにより得られる新規構造情報を表すものである。それ故に、構造情報に基づき合理的に選択される天然物のスクリーニングは、容易に行われ、例えば、分子を、ナプララート(Napralert)などの適切なデータベースを用いる非常に確立された化学分離的原則に基づき、選択することが出来る。例えば、ピセコロビウムなどのアルビジアに関連するパピリオノイド豆果(papilionoid legumes)から誘導される大環状ポリアミンアルカノイドおよび他の植物から誘導される分子をスクリーニングすることが出来る。
図44−63は、本発明に対して有用な分子を決定するためにスクリーニングされる一連の分子の第二例を与えるものである。これらの分子は、一般にフェンジリンから誘導されるものであり、テストして、それらのそれぞれのEC50を測定した。更に、関連分子、NPS447およびNPS448などをテストすることにより、分子構造の立体特異的効果を明らかにする。テストしてデータが得られた殆どの活性化合物は、新規化合物であり、NPS467およびNPS568と呼称し、5μM以下のEC50値を持つ。当業者はこの一連の分子を精密に調べることにより、本発明においてテストされ得る他の適切な誘導体を測定することが出来る。
これらの例は、本発明において有用な一般的設定およびスクリーニング方法を示しており、付加的化合物および天然物ライブラリーを当該技術に望ましくスクリーニングし、本発明の他の有用なリード分子または新規分子を決定することが出来る。
上記のように、カルシウム様物質として有用な分子の例は、分枝状または環状ポリアミン、陽性に荷電したポリアミノ酸、およびアリルアルキルアミンを含んでいる。加えて、他の陽性に荷電した有機分子は、天然に生じる分子およびそれらの類似体を含んでおり、有用なカルシウム様物質である。これらの天然に生じる分子およびそれらの類似体は、好ましくは陽性電荷対質量比率(positive charge−to−mass ratio)を有しており、ここに例示した分子に対するこれらの比率と相関している。(例としては、海洋哺乳類、節足動物毒、陸生植物および細菌類や菌類から得られる発酵ブロスから単離された物質がある。)カルシウム様物質として有用な天然に生じる分子および類似体の好ましい1群では、陽性電荷:分子量(ダルトンで)の比率、約1:40から1:200、好ましくは約1:40から1:100で有することが予期される。該分子の更に詳しい実施例は以下に与える。
ポリアミン
本発明におけるカルシウム様物質として有用なポリアミンは、分枝状または環状のいずれかであり得る。分枝状または環状ポリアミンは、潜在的にそれらの直鎖状類似体よりも高いカルシウム様活性を有している。即ち、分枝状または環状ポリアミンは、生理学的pHで同様の効果的電荷を持つそれらの対応する線状ポリアミンよりも低いEC50を持つ傾向がある(表1参照)。
本明細書で使用した“分枝状ポリアミン”とは、短いアルキル橋架け、またはアミノ結合(amino linkages)により一緒に連結したアルキル基から成り、また鎖が枝分かれする点を有している鎖状分子のことである。これらの“分枝点”は、炭素原子または窒素原子のいずれか、好ましくは窒素原子の所に位置することが出来る。窒素原子分枝点は、代表的には三級アミンであるが、四級であることもある。分枝状ポリアミンは、1ないし20の分枝点、好ましくは1ないし10の分枝点を有することもある。
一般に、分枝状ポリアミンにおけるアルキル橋架けおよびアルキル分枝は、長さ1から50の炭素原子であり、好ましくは2から6の炭素原子である。アルキル分枝は、1つまたはそれ以上のヘテロ原子(窒素、酸素または硫黄)により中断されるか、またはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを含むハロ:ヒドロキシ:ニトロ:アシロキシ(R′COO−)、アシルアミド(R′CONH−)、またはアルコキシ(−OR′)で、式中R′は1から4の炭素原子を含有し得るものなどの官能基で置換されることもある。アルキル分枝は、アミノまたはグアニドなどの生理学的pHで陽性に荷電される基で置換される場合もある。これらの官能置換基は、分子の活性、配達(delivery)、または生物学的利用能を増加する溶解度等の生理特性を与えたり変化したりすることもある。
分枝状ポリアミンは、3つまたはそれ以上の鎖および分枝末端点を有することもある。これらの末端点は、メチル基またはアミノ基であり、好ましくはアミノ基であり得る。
好ましい分子の1群は、式:
H2N−(CH2)j−(NRi−(CH2)j)k−NH2
(式中、kは1から10の整数であり、jはそれぞれ同じかまたは異なり、2から20の整数であり、Riはそれぞれ同じかまたは異なり、水素と−(CH2)j−NH2でjは上記で定義したものから成る群から選択され、少なくとも一つのRiは水素ではない)
を有する分枝ポリアミンの群である。
本発明の特に好ましい分枝状ポリアミンは、分子N1,N1,N5,N10,N14,N14−ヘキサキス−(3−アミノプロピル)スペルミンおよびN1,N1,N5,N14,N14−テトラキス−(3−アミノプロピル)スペルミンで、それぞれ、図1−6におけるNPS381およびNPS382のことである。
本明細書で使用した“環状ポリアミン”とは、2つまたはそれ以上のヘテロ原子(窒素、酸素または硫黄)を含有する複素環で、その内、少なくとも2つは窒素原子であるもののことである。複素環は、一般に周囲に約6から約20原子、好ましくは、周囲に約10から約18原子である。窒素ヘテロ原子は、2ないし10の炭素原子で隔てられている。複素環は、窒素部位でアミノアルキルまたはアミノアリル基(NH2R−)で置換されることもあり、式中Rは、アミノアリルまたは2ないし6炭素原子の低級アルキルである。
本発明の特に好ましい環状ポリアミンは、図1−6にヘキササイクレン(1,4,7,10,13,16−ヘキサアザ−シクロオクタデカンおよびNPS383として示している。
ポリアミノ酸
本発明において有用なポリアミノ酸は、生理学的pHで2つまたはそれ以上の陽性に荷電したアミノ酸残基を含有しても良い。これらの陽性に荷電したアミノ酸は、ヒスチジン、リジンおよびアルギニンを含んでいる。これらのポリペプチドは、長さにして2から800アミノ酸の範囲内で変化する場合があり、より好ましくは長さにして20から300アミノ酸である。これらのポリペプチドは、アミノ酸残基の単一の繰り返しから成ることがあり、天然タンパク質または酵素の変種を有することもある。
ポリアミノ酸から成るアミノ酸残基は、20の天然アミノ酸または他の代替し得る基のいくつかである場合がある。代替し得る基は、例えば、本発明の組成物は標識として作用し得る分子またはイオンを含んで誘導された要素もまた含み得る。広範な種類の標識部分を用いることができ、放射性同位元素、発色団および蛍光標識が含まれる。特に、放射性同位元素標識はインビボで容易に検出され得る。放射性同位元素はポルフィリン系におけるカチオンとしての配位によって結合され得る。有用なカチオンはテクネチウムおよびインジウムである。この組成物には、陽性荷電分子が標識に結合、または標識と対合され得る。
合成方法
ポリアミンの合成および修飾戦略には、機能化された分子を作成するために選択的に除去され得る様々なアミン保護基(フタルイミド、BOC、CBZ、ベンジルおよびニトリル)の使用を伴う。包含される合成方法は、アルギオピン636と659およびクモ毒から誘導された他のアリルアルキルアミンを作成するのに使用された方法に合わせる。
2−4メチレンの鎖伸長は、対応するN−(ブロモアルキル)フタルイミドでのアルキル化により典型的に行った。ブロモアルキルフタルイミドに対するアミンの1:1.2混合物をセライト上の50%KFの存在下、アセトニトリル中で還流した。鎖伸長もまた、得られたアミンのアクリロニトリルまたはエチルアクリレートでのアルキル化により行った。反応の進行は、TLCとジクロロメタン、メタノール、およびイソプロピルアミンの組み合わせを用いるシリカゲルで精製された中間体により追跡した。最終産物をカチオン交換(HEMA−SB)およびRP−HPLC(ヴィダックC−18)により精製した。純度と構造確認は、H1 −および13C−NMRと高分解能マススペクトロメトリー(EI、CIおよび/またはFAB)で行った。
BOC保護基を触媒量のジメチルアミノピリジンの存在下、ジクロロメタン中でアミン(1°または2°)をジ−tert−ブチルジカーボネートで処理して付加した。ベンジル保護基は、2種の方法:(1)1°アミンとベンズアルデヒドとの縮合、続いて水素化ホウ素ナトリウム反応、または(2)KFの存在下、2°アミンのベンジルブロミドでのアルキル化のうち1方法を適用した。アミド結合および環化はアミン(1°または2°)と得られた酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応により典型的に行った。これは(環化の場合)、希釈条件下で、“アミノ酸”をジシクロヘキシルカルボジイミドで処理して直接的に行った。
フタルイミド機能性の脱保護は、メタノールを還流しながら、ヒドラジンで還元することにより行った。BOC機能性の脱保護は、無水TFA中で行った。ベンジル、ニトリル、およびCBZ保護機能性の脱保護は、55psi水素下で、炭素中水酸化パラジウムの触媒量の存在下、氷酢酸中で還元することにより行った。ニトリル機能性を(ベンジルおよびCBZ基の存在下)水素下で、スポンジ状ラネー・ニッケルの存在下で選択的に還元した。
詳細には、分枝状ポリアミンは、代表的には式NH
2−(CH
2)
n−NH
2の簡単なジアミノアルカン、またはスペルミイミドまたはスペルミンなどの簡単なポリアミンから調製される。2つの(末端の)一級アミンの1つをBOC(t−ブチロキシカルボニル)、フタルイミド、ベンジル、2−エチルニトリル(アミンおよびアクリロニトリルのミカエル縮合製造生成物(Michael condensation production product))またはアミドなどの保護基で保護または“マスク”する。典型的な反応はジ−t−ブチル−ジカルボネート(無水BOC)での処理によるBOC保護基の付加である:
一保護生成物を非保護および二保護生成物から簡単なクロマトグラフ的または蒸留技術より分離する。
その後、一保護生成物において残っている遊離のアミンをアルキル化剤(またはアシル化剤)で選択的にアルキル化(またはアシル化)する。確実に一アルキル化(mono−alkylation)するために、遊離のアミンをベンズアルデヒドとの縮合、続いて水素化ホウ素ナトリウム還元により部分的に保護して、N−ベンジル誘導体を形成する:
その後、N−ベンジル誘導体をアルキル化剤と反応させる。典型的なアルキル化剤は、N−(ブロモアルキル)フタルイミドであり、それは以下のように反応する:
例えば、N−(ブロモブチル)フタルイミドを用いて、4メチレン単位で鎖を伸長または枝分かれさせる。代替法として、アクリルニトリルとの反応、続いてシアノ基の還元は、3−メチレンおよびアミノ基により鎖を伸長するであろう。
生じた鎖伸長分子の保護基をその後、選択的に切断して、新しい遊離のアミンを得ることが出来る。例えば、トリフルオロ酢酸を使用して、BOC基を除去し:触媒的水素化を用いてニトリル機能性を還元し、ベンジル基を除去し;ヒドラジンを用いて以下のようにフタルイミド基を以下のように除去する:
新しい遊離アミンは、更に上記のようにアルキル化(またはアシル化)されて、ポリアミンの長さを増加することもある。この工程を所望の鎖の長さおよび分枝の数が得られるまで繰り返す。最終段階で、生成物を脱保護し、結果として所望のポリアミンを生じる。しかしながら、脱保護前に更なる修飾が保護末端で以下の方法によりもたらされる場合があり:
例えば、BOC脱保護前に、ポリアミンを3,4−ジメトキシフェニル酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルでアシル化し、二保護ポリアミンを得る:
これは、最終的にアリルポリアミンを得ることになる。BOC基をその後選択的にトリフルオロ酢酸で除去して、上記のように伸長され得る他のアミノ末端にさらすことが出来る。
ある種の分枝状ポリアミンは、上記で形成したポリアミンにおける遊離の一級および二級アミンを同時にアルキル化またはアシル化することにより得られることもある。例えば、スペルミンを過剰のアクリロニトリルで処理し、続いて触媒的還元すると、以下を得る:
環状ポリアミンをヘキササイクレン(アルドリッチ・ケミカル)などの出発物質で始めて、上記のように調製する場合がある。
本発明の領域内のポリアミノ酸は、当業者に知られている組換え技術により作成しても良く、または当業者に知られている標準的な固相法を用いて合成することもある。固相合成は、ペプチドのカルボキシ末端からα−アミノ保護アミノ酸を用いて、開始される。BOC保護基は、他の保護基が安定であるとしても、すべてのアミノ基に対して用いることが出来る。例えば、BOC−lys−OHを、エステル化してクロロメチル化ポリスチレン樹脂支持体にすることが出来る。ポリスチレン樹脂支持体は、好ましくはスチレンの共重合体であり、ポリスチレン重合体を完全にある種の有機溶媒に溶解させる架橋剤として約0.5ないし2%ジビニルベンゼンを有している。スチュワート等、固相ペプチド合成(1969年)、W.H.フリーマン・カンパニー、サンフランシスコ;およびメリフィールド、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(1963年)、85巻、2149−2154頁、参照。ペプチド合成のこれらおよび他の方法は、U.S.特許第3,862,925号;第3,842,067号、第3,972,859号;および第4,105,602号も例示されている。
ポリペプチド合成は、マニュアル技術を用いるか、または例えば、アブライド・バイオシステム・403A・ペプチド・シンセサイザー(フォスター・シィー、カリフォルニア)またはバイオサーチ・SAMIIオートマティック・ペプチド・シンセサイザー(バイオサーチ・インコーポレイテッド、サン・ラファエル、カリフォルニア)を用いて自動的に行うこともあり、製造会社により提供された使用マニュアルにおいて与えられた使用説明に従う。
本発明のアリルアルキルアミンは、知られている技術で単離された天然物であり、またはジャシーズ等、テトラヘドロン・レター(1988年)、29巻、6223−6226頁、およびネイソン等、テトラヘドロン・レター(1989年)、30巻、2337−2340頁に記載のように合成される。
フェンジリン(または図44−63に示したフェンジリン類似体)調製のための1つの一般的なプロトコールは、以下の通りである。磁気攪拌棒とゴム隔膜を備えた10ml丸底フラスコ内で、2mlエタノール中1.0ミリモル3.3′−ビスフェニルプロピルアミン(または一級アルキルアミン)を1.1ミリモルのフェノールと1.0ミリモルのアセトフェノン(または置換アセトフェノン)で処理した。これに、2.0ミリモルMgSO4と1.0ミリモルNaCNBH3を加えた。これを窒素雰囲気下、室温(約20℃)で24時間攪拌した。反応物を50mlエーテルに注ぎ込み、1NNaOHで3回、ブリンで1回洗浄した。エーテル層を無水K2CO3で乾燥し、真空下で還元した。生成物をその後、カラムクロマトグラフィーまたはCH2Cl2−メタノール−イソプロピルアミン(典型的には、塩化メチレン中3%メタノールおよび0.1%イソプロピルアミン)の結合したシリカ固定相を組み込んだHPLCにより生成した。
フェンジリンまたはフェンジリン類似体(図44−63に表したようなもの)を調製するのに好ましい方法は、チタン(IV)イソプロポキシドを使用するものであり、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、55巻、2552頁(1990年)に記載の方法を一部修飾したものである。NPS544の合成には、チタンテトラクロリド(テトラヘドロン・レター、31巻、5547頁(1990年)に記載の方法)をチタン(IV)イソプロポキシドの代わりに使用した。反応スキームを図70aに表した。図70aにおいて、R、R’およびR”は、炭化水素基を表している。一実施態様に従うと、4mlバイアル中で、アミン(1)1ミリモル(代表的には、一般アミン)とケトンまたはアルデヒド(2)(一般には、アセトフェノン)1ミリモルを混合し、その後、1.25ミリモルのチタン(IV)イソプロポキシド(3)で処理し、時折攪拌しながら、室温で30分間置いておく。代替法として、二級アミンを(1)の代わりに用いることもある。注意:幾つかの反応は、重い沈殿または固体を生じるであろうが、(それらの融点まで)加温/加熱して反応の過程にわたり数回攪拌/混合させる。反応混合物を1ミリモルのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(4)を含有する1mlエタノールで処理し、生じた混合物をその後、室温で時折攪拌しながら約16時間置いておく。その後、約500μlの水を加えて、反応を止める。反応混合物をその後、総容量約4mlまで、エチルエーテルで希釈し、その後遠心分離する。上部の有機相を除去し、ロートベーパー(rotovapor)で還元する。生じた生成物(6)を、HPLC(ジクロロメタン:メタノール:イソプロピルアミンでシリカを用いる順相、またはアセトニトリルまたはメタノールと共に0.1%TFAでC−18を用いる逆相)により精製する前に、シリカの短いカラムのクロマトグラフィー(または代わりとしてシリカの分取TLCを用いることによる)で、ジクロロメタン:メタノール:イソプロピルアミン(典型的には、95:5:0.1)の組み合わせを用いて、部分的に精製する。
適切または望まれるならば、実施例21に記載のような方法を用いてキラル分割を行っても良い。
処方および投与
本明細書に示したように、本発明の分子は:細胞外Ca2+の1つまたはそれ以上の効果を模倣または拮抗し;(b)細胞外遊離Ca2+レベルに個々に影響を与え:(c)上皮小体機能亢進症、エステロプロシスおよび高血圧などの疾患を治療するために用いられ得る。一般に、無機−イオン受容体に関連する疾患または症状が今回検討、診断、および/または有利になるように処置され得る。これらの分子は、一般に上皮小体細胞に作用することが示されているのに対し、これらは、また、骨溶骨細胞、傍糸球体の腎臓細胞、近位小管腎臓細胞、遠位小管腎臓細胞、厚いヘレンわなの上行肢および/または集合管の細胞、表皮のケラチノサイト、甲状腺(C−細胞)中の小胞周縁細胞、腸管細胞、胎盤中の栄養膜細胞、血小板、血管平滑筋細胞、心臓心房細胞、ガストリンおよびグルカゴン分泌細胞、腎臓糸球体細胞および乳房細胞を含む他の細胞でのCa2+レセプターを調節することもある。
これらの分子は、典型的にヒト患者の治療に用いられるであろうが、他の霊長類、豚、畜牛および飼鳥類などの農場動物、馬、犬およびネコなどのスポーツ動物などの他の定温動物種において同様のまたは同一の疾患の治療に使用することも可能である。
治療的および/または診断的施用において、本発明の分子は、全身および局所または集中投与を含む様々な投与方法で処方され得る。技術および処方は、一般に、レミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンシィズ、マック・パブリッシング・カンパニー、イーストン、ペンシルバニアに見い出され得る。
全身投与には、経口投与が好ましい。代替法として、例えば、筋肉内、静脈内、腹膜内、および皮下注射を用いることもある。注射では、本発明の分子を液体溶液状、好ましくは、ハンク溶液またはリンガー溶液などの生理学的に融和性の緩衝液中で処方される。加えて、該分子を固形で処方し、使用する前に直ちに再溶解または懸濁させることもある。凍結乾燥形も含まれる。
経粘膜的または経皮的方法により、全身投与しても良く、または該分子を経口的に投与することも出来る。経粘膜的または経皮的投与のためには、浸透させるべき隔壁に適切な浸透剤を処方に用いる。このような浸透剤は、一般に当業者には知られており、例えば、経粘膜的投与のための胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。加えて、洗剤を用いて浸透を容易にすることもある。経粘膜的投与は、例えば鼻に散布するもの、または座薬であることもある。経口投与のためには、該分子をカプセル、錠剤、および強壮剤など、適宜の経口投与形で処方される。
局所投与のためには、本発明の分子を、一般に当業者には知られているものとして軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームで処方される。
以下の実施例に示したように、本発明の様々な化合物の投与されるべき量は、標準的手法により決定することが出来る。一般に、処置される動物のkgに対し約1および50mg/kgの間である。
Ca 2+ レセプター
天然物スクリーニングは、伝統的には多様な治療的分子の開発に対し、手掛かりとなる構造を与えてきた。しかしながら、Ca2+レセプターでの活性に対する天然物ライブラリーまたは他の分子ライブラリーの高処理量スクリーニング(high−througput screening)は、以前可能ではなかった。これを可能するには、Ca2+レセプターcDNAをクローン化し、その後、高処理量スクリーニングに安定なトランスフェクションした細胞系を作るのが最善である。レセプターの構造を用いて、付加的に配位子結合部位の分子の結合構造の洞察を得ることが出来、このような情報を使用して、上記で論議したように合理的薬剤デザイン計画を拡大することが出来る。限定された構造活性研究および選択された天然物分子の試験は、合理的天然物スクリーニングおよび薬剤デザインを導くに必要な最初の構造データベースを与えるものであろう。
遺伝子の上科(superfamily)の発見は、すべての無機−イオン受容体に関連して同じ利益をもたらすものである。下記の検討は時としてカルシウム受容体をクローニングする方法論にのみ言及するものであるが、この方法論が一般に、すべての無機−イオン受容体のクローニングに適用されるものであることが当業者には理解されるであろう。
これらの組換え受容体は、初めて、カルシウム様分子およびカルシウム拮抗分子を含む、−様分子および−拮抗分子のスクリーニングを可能にするものである。例えば、受容体と試験法を結合することによって。これは、特に、ひと受容体を用いてスクリーニングし、治療的に有用な化合物を識別するのに役立つ。
ウシおよびヒト上皮小体細胞Ca2+レセプターcDNAは、ツメガエル(Xenopus)卵母細胞における機能発現によりクローン化することが出来る。内生のCa2+活性化Cl- チャンネルを通る電流を測定することにより、ツメガエル卵母細胞における細胞間Ca2+の増加を間接的に追跡することが可能である。このシグナル形質導入経路より与えられた応答の増幅は、mRNAにより暗号化されるレセプタータンパク質の検出を非常に低レベルで可能にする。このことは、レセプター特異性cDNAクローンの検出を、高緩和性配位子、特異的抗血清またはタンパク質もしくは核酸配列情報の必要がなくても可能にするものである。該方法の実施例は以下である。
成体の雌ゼノプス・ラエビス(Xenopus laevis)はゼノプスI(アン・アーバー、MI)から得られ、常法に従い維持された。卵巣の丸い突出部を低体温法的に麻酔したヒキガエルから摘出した。卵母細胞の房を修飾バース塩水(MBS)に移した。個々の卵母細胞を2mg/mlコラゲナーゼ(シグマ、1A型)を含有するMBS中で21℃で2時間インキュベートすることによって得、V−VI段階の卵母細胞を注入するために選択した。
ガラスキャピラリー管(直径1mm)を引っ張って細い先端にし、手で折って、先端の直径を約15μMにする。mRNAの小滴(ジエチルピロカーボネート(DEPC)−処理水中1ng/nl)をパラフィルムに置き、キャピラリー管で吸い上げた。その後、そのキャピラリー管をビコスプリッツァー(picospritzer)(WPI・インストルメンツ)につなげ、空気−パルスした(air−pulsed)小滴の容量を調節してmRNA50ng(典型的には50nl)を出した。ナイロンストッキングを当てて底を固定した35mm培養皿を用いて、mRNAを動物極に注入する間中、卵母細胞を動かないようにした。注入した卵母細胞をMBS、100ug/mlペニシリンおよび100U/mlストレプトマイシンを含有する35mm培養皿に置き、18℃で3日間インキュベートした。
インキュベートに続いて、卵母細胞を100μlプラスチックチャンバーに置き、流速0.5ml/分で蠕動ポンプを用いてMBSに注いだ。試験分子または非有機ポリカチオンを、別の緩衝液に管を迅速に移すことにより加えた。記録し、電流を通す電極を、1−3モームの抵抗で引っ張られ、3MKClで満たされた薄壁キャピラリー管から組み立てた。卵母細胞に(動物極において)顕微鏡観察下で両方の電極を突き刺し、保持電位(−70ないし−80mV)に合わせ、保持電位を維持するために通した電流を測定するために用いられるアクソン・インストルメンツ・アキソクランプ2A電圧−クランプ増幅器につなげた。電流は、直接ストリップ・チャート記録機に記録した。
mRNA調製のために、子牛または二次HPT患者から上皮小体を外科的に除去して組織を得た。精製した細胞を調製する必要は無い;腺全体をツメガエル卵母細胞におけるCa2+レセプターの発現を支配するmRNAを調製するのに用いた。細胞のRNA全体を均一化した腺を酸グアニジニウムチオシアネート/フェノール抽出することにより調製した。オリゴーdTセルロースクロマトグラフィーを用いて、標準方法によりポリ(A)+ mRNAを選択した。mRNAの画分の大きさを揃えるために、グリセロール勾配の遠心分離を使用した。mRNAを20mV水酸化メチル水銀で変性させ、ベックマンTLS55管内で調製した直線15−30%グリセロール勾配上に乗せた(濃度1mg/mlで50−100ug)。続いて、34,000rpmで16時間遠心分離にかけ、0.3ml勾配画分を集めて、5mMベータ−メルカプトエタノールを含有する等容量の水で希釈した。mRNAをその後、2回のメタノール沈殿により回収した。所望ならば、mRNA(ポリ(A)+ 50−100ug)を1.2%アガロース/6.0M尿素分離ゲルで、RNAサイズマーカーの範囲に沿って分離することもある。続いて、エチジウムブロマイド染色によりmRNAを視覚化し、RNAを1.5−2.0kbサイズ段階で含有するゲル切片を削り取った。mRNAをRNAイド結合細胞間質(RNAid binding matrix)(供給者の標準的なプロトコールに従う:ストラタジーン・インコーポレイテッド)を用いてアガロースゲル切片から回収し、回収したmRNA画分はDEPC処理水中に溶出した。
回収したmRNA量をUV吸収測定により計った。各画分内に含まれるmRNAのサイズ範囲は、各試料の少量(0.5ug)を用いるホルムアルデヒド/アガロースゲル電気泳動により測定された。mRNAのインテグリティー(integrity)をイン・ビトロで各試料を翻訳することにより評価した。網状赤血球溶解物(商業的に入手出来るキット;BRL)を用いて各mRNA画分の0.05−0.5ugを翻訳した。生じた35S−標識タンパク質をSDS−PAGEにより分析した。無傷のmRNAは、完全なサイズ範囲のタンパク質合成を支配することが出来、個々のmRNA画分のサイズにおおよそ対応していた。
cDNAライブラリーをガブラーとホフマンの技術を改良したものに従い、ベクターλZAPIIにおいて構築した。卵母細胞アッセーにおいて最適な応答を与える画分由来のRNAを出発物質として用いた。第一鎖cDNA合成は、オリゴーdT/NotIプライマー−リンカーで活性化(primed)された。第二鎖合成は、RNアーゼH/DNAポリメラーゼI自己プライミング法(self−priming method)により行った。二本鎖cDNAをT4DNAポリメラーゼおよびT4リガーゼでcDNAに連結したEcoRIアダプター平滑末端で鈍化(blunted)した。リンカーを切断するNotI消化に続いて、cDNAの全長をセファクリル500HAの排除(exclusion)クロマトグラフィーによりサイズ選択した。第一鎖cDNAをα−32P−dATPで放射性標識し、合成および回収段階の全てを続いて放射活性を組み込んで追跡した。大きさで分類したカラムから回収したcDNAの全長をEcoRI/NotI消化されたλZAPII手に連結(legate)した。連結混合物(ligation mix)を商業的に入手可能な高効率パッケージング抽出物(high efficiency packaging extract)(ストラクタジーン・インコーポレイテッド)で試験パッケージ(package)し、適切な宿主株(XL1−ブルー)に置いた。組換ファージの割合は、ライブラリーがIPTGとX−gal上に置かれている場合、青色プラークに対する白色プラークの比率で測定した。
挿入物サイズの平均を無作為に選択した10個のクローンから測定した。ファージDNA“ミニープレップス(mini−preps)”をEcoRIとNotIで消化して挿入物を放出させ、アガロースゲル電気泳動によりサイズを測定した。ライブラリーは、>90%組換えファージから成っており、挿入物のサイズは、1.5から4.2kbの範囲であった。組換連結(recombinant ligation)を大規模にパッケージし、800,000個の一次クローンを産した。パッケージング混合物を滴定し、15cmプレート当たり50,000プラークで覆った。50,000クローンの各プールをSM緩衝液中で溶出し、個々に保存した。
クローンプールのそれぞれのプレート溶解物の保存品を小規模のファージDNA調製に用いた。ファージ粒子をポリエチレングリコール沈殿により濃縮し、ファージDNAをプロテナーゼK消化、続いてフェノール:クロロホルム抽出により精製した。DNAの20ミクログラムをNotIで消化し、鋳型としてイン・ビトロでのセンス鎖RNAの転写に用いた。イン・ビトロ転写は標準プロトコールに従い、総反応容量50μl中T7RNAポリメラーゼおよび5′キャップ類似体m7GpppGを利用する。DNアーゼI/プロテナーゼK消化およびフェノール/クロロホルム抽出に続き、RNAをエタノール沈殿により濃縮して、卵母細胞注入に用いた。
卵母細胞に、それぞれ50,000の独立クローンからなる16ライブラリーサブプール由来の合成mRNA(cRNA)それぞれを注入した。3〜4日間インキュベーションした後、卵母細胞のCa2+依存性Cl−電流の誘導に対する10mMのネオマイシンの能力を評価した。6と名付けたプールは、陽性信号を示し、従って機能的カルシウム受容体をコード化するcDNAクローンを含む。プール6の複合性を減少、すなわちこのプール中に含まれるカルシウム受容体クローンの精製を行うために、プール6ファージをプレート当たり〜20,000プラークで再び平板培養し、12プレートを回収した。DNAはそれぞれのこれらのサブプールから製造され、cRNAが合成された。再び卵母細胞にcRNAを注入し、3〜4日後、Ca2+依存性Cl−電流の誘導に対する10mMのネオマイシンの能力を評価した。サブプール6−3は陽性でこのプールは、プール当たり約5,000クローンに複合性を減少する、さらなる一連の平板培養の対象とした。プールは再びcRNAの製造および卵母細胞中への注入により測定した。サブプール6−3.4は陽性であった。プール6−3.4の陽性クローンのさらなる精製を促進するために、このプールからのファージDNAをヘルパーファージ、ExAssist(Stratagene)で重感染させることによりプラスミドDNAとして救済した。救済したプラスミドの細菌株DH5alphaF’への形質転換により、アンピシリンプレート上で形質転換細菌コロニーが得られた。これらはそれぞれ900クローンのプールとして回収した。プラスミドDNAを次にそれぞれのサブプールから製造し、通常の方法でcRNA合成および評価をした。サブプール6−3.4.4が陽性であった。プラスミドサブプール6−3.4.4を含む細菌をそれぞれ〜50クローンのサブプールで連続して平板培養した。この方法の繰返しにより機能的カルシウム受容体をコード化する単一クローンが得られることが期待される。
別の検定法は、卵母細胞中のカルシウム受容体の発現を検出するのに用い得る。例えば、卵母細胞に45Ca++を付加し、ついでカルシウム様分子で処理し得る。分子間貯留からの45Ca++の移動は、容易に測定しうる45Ca++流出の総量増加をもたらす。蛍光Ca++指示剤もまた卵母細胞中に導入し得る。この場合、カルシウム受容体を発現する卵母細胞は、カルシウム様分子で活性化されて増強された蛍光色を示す。これらの試験法は、上記例中に記載されたカルシウム誘導Cl−電流についての電気生理学的試験法の代わりに、クローニングカルシウム受容体を用いる。さらに、クローニング工程において用いられたカルシウム様分子配位子は上記のようにネオマイシンである必要はなく、その代わりに、例えば、Gd++、Ca++、Mg++または他のカルシウム様分子化合物であればよい。
最初の実験は、水またはウシ上皮小体由来ポリ(A)+ −に富むmRNA(50ng)を注入されたアフリカツメガエル卵母細胞を使用した。3日後、卵母細胞の、細胞外2または3価カチオン濃度の増加に応答する細胞内Ca2+増加の能力を評価した。卵母細胞に記録および通電用電極棒を刺し、[Ca2+]iを間接的に内因性Ca2+−活性化Cl- チャンネルを通る電流を測定することにより評価した。ウシ(またはひと、図32)上皮小体由来のポリ(A)+ −に富むmRNAを注入された卵母細胞中では、細胞外Ca2+の濃度が0.7から3、5または10mMへの増加が、次に高い基底コンダクタンスの付近で振動するCl-電流の急速および一時的増加を生じさせた。細胞外Mg2+の1から10mMへの濃度の増加は、同様にCl-電流の振動的増加を引き起こした。Cl-電流の細胞外Mg2+に対する応答は細胞外Ca2+濃度が<1μMに減少した場合に持続した(図31)。
一時的な3価カチオンGd3+(600μM)はまたCl- 電流の振動的増加を生じさせた(図31)。振動性であり、細胞外Ca2+の見かけ上不存在下で持続するCl- 電流のこのような増加は、卵母細胞に他のCa2+−流動受容体の発現され、適当な配位子で促進されることが認められた(例えばサブスタンスK、図31)。これらの例中、Cl- 電流の増加は細胞内Ca2+の流動化を反映する。これらの最初の研究は同様に細胞外多価カチオンが、細胞内Ca2+を、上皮小体細胞mRNA−注入卵母細胞中で流動させることを示す。
水を注入された卵母細胞は、細胞外Ca2+(10mM)またはMg2+(20または30mM)にさらした場合Cl- 電流の変化は示さなかった。一連の実験の中で、卵母細胞はサブスタンスK受容体をコード化するmRNAを注入された。これらの卵母細胞中、細胞外Mg2+(20mM)は電流を引き起こさないが、細胞はサブスタンスKの添加に活発に応答した(図31)。これらの実験は、卵母細胞の細胞外Ca2+またはMg2+に対する内因性の感受性がないことを示唆する。
同様の実験をひと上皮小体(第2期HPT由来の過形成組織)から製造したポリ(A)+−に富むmRNAを注入した卵母細胞を用いても行った。これらの卵母細胞では、細胞外Ca2+濃度の増加は振動しているCl-電流の可逆的増加を生じさせた(図32)。300μM La3+の添加も同様にCl-電流の振動的増加の原因となった。細胞外Mg2+の1から10mMへの増加が、細胞外Ca2+不存在下で持続するCl-電流の増加を引き起こした。付加実験は、細胞外Ca2+に対する反応が濃度依存性であることを示唆する。したがって、3個のmRNA−注入卵母細胞中、Cl-電流は最大111±2nAまで3mMの、および233±101nAまで10mMの細胞外Ca2+で増加した。
アフリカツメガエル卵母細胞で得られた結果は、通常非反応性細胞中で、細胞外Ca2+の感受性を与えることができる蛋白質をコード化する、上皮小体細胞中のmRNA(類)の存在を証明する。さらに、細胞外Mg2+の、細胞外Ca2+不存在下でCl- 電流の振動性増加を引き起こす能力は、Cl- 電流が、細胞外Ca2+の流入よりむしろ細胞内Ca2+の流動に依存することを証明する。La3+で得られた結果も同様に、発現蛋白質が、細胞内Ca2+の流動に関連していることを示す。まとめると、これらのデータは発現蛋白質はチャンネルというよりもむしろ細胞表面受容体として働く。これらの研究は、上皮小体細胞上のCa2+受容体蛋白質に存在の注目せずにはいられない証拠を提供し、Ca2+受容体cDNAの分子クローニングを成し遂げるためアフリカツメガエル卵母細胞系を使用することの可能性を示す。
他の一連の研究で、水酸化水銀メチルで変成させた上皮小体細胞のmRNAは、グリセロール勾配による遠心分離でサイズ分画した。画分を回収した。それぞれの群をアフリカツメガエルの卵母細胞系に注入し、3日間のインキュベーションの後、卵母細胞をCa2+受容体の発現に対して評価した。画分4−6を注入された卵母細胞が、細胞外Ca2+に反応したCl-電流の最大で最も調和した増加を示した。これらの結果は、Ca2+受容体がサイズ2.5−3.5kbのmRNAによりコード化されていることを示す。これは、形質転換ベクターcDNAライブラリーから合成されたRNAの直接発明を用いた方法が、可能性があることを示唆する。この種のサイズ分画実験が行われ、異なった3種の分画実験でそれぞれ同様の結果が得られた。
前記の実験で得られ、特徴付けられたmRNA画分は卵母細胞に注入することにより測定できる。それぞれのmRNA画分で、10−20個の卵母細胞に50ngのRNAが、濃度1ng/nl水溶液として注入される。注入された卵母細胞は18℃に48−72時間維持され、その後Cl- 電流測定を用いたCa2+受容体の発現を測定する。注入した卵母細胞のそれぞれの群で、受容体発現に対する陽性の数、および測定したCa2+−依存性Cl- 電流の大きさを測定する。陰性対象として、卵母細胞にラット肝臓ポリ(A)+ −に富むmRNA、酵母RNAまたは水を注入する。
2.5−3.5kbの範囲のmRNAは受容体をコード化することが予想される。大きいサイズのmRNAは、卵母細胞への注入に先立つ上皮小体mRNAのハイブリッド除去を基本にしたクローニング研究に必要であり得る。この方法の成功は完全な長さのcDNAクローンの産生に依存しない。もし受容体発現がmRNAの単一サイズの画分で得られない場合、卵母細胞にサイズ混合画分を注入し、機能的受容体を上昇させる組み合わせを決定する。もし、多重サブユニットが機能的受容体の形成のために必要であることが明らかなった場合、ハイブリッド除去発現クローニング法が使用される。この研究で、クローンは、特異的mRNA種を全mRNA集団から枯渇させるその能力を基本にして選択される。単一サブユニットをコード化するクローンは、活性多重サブユニット複合体形成の阻止能力により同定する。徹底的なスクリーニングにより、必要なサブユニットの全てをコード化するクローンの同定が可能になる。
この研究は、機能的受容体複合体を形成するために必要な個々のサブユニットをコード化するクローンの単離を可能にする。クローンのプール由来の合成RNAは、アフリカツメガエル卵母細胞にCa2+受容体の発現を誘導する能力により、基本mRNA画分の測定に使用したのと同様の技術で評価する。本来、それぞれ100,000個の初期クローンを表す10個のプールが試験される。陽性反応を示すクローンのプールは低い(一般的に4〜10倍)配合性でふるい分け、再び陽性プールを小分けし、ふるい分ける。ライブラリー細分画におけるこの方法は、個々の陽性クローンが同定されるまで続ける。卵母細胞発現測定の陰性対象として、アンチセンス転写物が、陽性反応を誘導するこれらの鋳型DNAのT7転写により産生される。アンチセンス転写物は標準受容体を発現できず、合成RNAの注入により発生する任意の非特異的陽性信号を制御する。他の重大なことは、卵母細胞中の合成RNAが、未確認の機構により時々「有毒」に翻訳され得るという事実である。この可能性を制御するために、陰性反応を与える合成RNAを、上皮小体細胞mRNAと共に種々の希釈で共注入し、それらがCa2+受容体の発現の非特異的妨害をするかどうか測定する。
Ca2+受容体をコード化する個々のクローンが同定された場合、挿入cDNAはλベクターから切除され、合成RNAの大きいスケールでの合成に使用される。この単一RNA種の卵母細胞注入は、発現受容体の特徴の厳密な測定を可能にする。
もしCa2+受容体をコード化するmRNAのサイズが直接転写によるクローニングおよび発現に大きすぎる場合、またはたとえ多重サブユニットが含まれても、スクリーニングしたクローンのプールのハイブリッド除去技術が使用される。cDNA挿入DNAは、サイズ選択上皮小体細胞cDNAライブラリーからのクローンのプールから製造される。このDNAは上皮小体細胞mRNAへ、DNA/RNA2重体の形成が可能な条件下でハイブリダイズされる。非アニール化、ハイブリッド除去RNAは回収され、卵母細胞注入へ使用される。ハイブリッド除去またはハイブリッド挿入のための別の方法は別におよび当分野の技術者に既知の方法を使用し得る。Ca2+受容体mRNAを示す配列を含むクローンのプール由来のDNAはこの全上皮小体細胞mRNA集団由来のmRNAから除去され、この受容体の発現は卵母細胞注入により減少しまたはなくなる。細分画の方法は、クローンのプールの複合性の減少により生じ、それぞれの工程で、全上皮小体mRNA集団からCa2+受容体コード化mRNAを除去したクローン化DNAを測定する。ハイブリッド除去測定の間の内部制御の使用は、ハイブリッド除去RNAは無傷であり卵母細胞への形質転換に用いられることを確実とする。
ひと上皮小体細胞はアデニレートサイクラーゼに結合したベータ−アドレナリン様受容体を発現する。この受容体は卵母細胞中で発現でき、そこでそれは内因性アデニレートサイクラーゼのアゴニスト−誘導活性化を担う。Ca2+受容体クローンのハイブリッド除去スクリーニングの間、ハイブリッド除去mRNAを注入された卵母細胞はイソプロテレノール−誘導アデニレートサイクラーゼ活性化として測定される。この測定における陽性反応は、Ca2+受容体反応の任意の観察される阻害が特異的であり、全mRNA集団の一般的な阻害によるものではないという示唆に役立つ。
ハイブリッド除去スクリーニンク法により、完全蛋白質コード化領域を含まないクローンの単離ができる。このスクリーニング法により単離された陽性クローンは、蛋白質コード化能力を測定するために順番に配列する。ひと上皮小体RNAのノーザンブロット分析は、特異的クローンに対応する完全mRNAのサイズの測定を可能にする。もし陽性クローンが完全な長さと思われない場合、クローン化cDNAは、完全cDNAのための上皮小体cDNAライブラリーをふるい分けるハイブリダイゼーションプローブとして使用する。
種々の細胞系で、内因性機能性受容体のための連結外因性発現受容体が可能である。これらの細胞系の多く(例えばNIH−3T3、HeLa、NG115、CHO、HEK、293およびCOS7)が内因性Ca2+受容体を欠いていることを確認するために試験できる。外部のCa2+への反応を欠いたこれらの系は、クローン化Ca2+受容体を発現する安定した形質導入細胞の確立に使用できる。
これらの安定なトランスフェクタントの製造は、Ca2+受容体cDNAのコード配列が多重クローニング部位内にクローン化されているpMSGなどの真核発現べクターで適当な細胞系をトランスフェクションすることによって達成される。これらの発現ベクターは、様々な哺乳類細胞中で高レベルなcDNAの転写を駆動するマウス乳腫瘍ウイルスプロモーター(MMTV)などのプロモーター領域を含有する。さらに、これらのべクターは目的のcDNAを安定に発現させる細胞を選択するための遺伝子をも含有する。pMSG中の選択可能な標識(マーカー)は、トランスフェクションされていない細胞を殺すために培養に加えられる代謝阻害因子に対する耐性を付与するキサンチン−グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(XGPRT)という酵素をコード化している。通常は、高処理量スクリーニング検定法で使用されるCa2+受容体発現細胞系を生産するための至適条件を決定するべく、様々な発現べクターと選択法を評価する。
プラスミドDNAで真核細胞系をトランスフェクションするための最も効果的な方法は与えられた細胞型によって異なる。Ca2+受容体発現構築物を適当な技術、即ちCa2+リン酸沈殿法、DEAE−デキストラン・トランスフェクション法、リポフェクションもしくはエレクトロポレーションで培養細胞に導入する。
トランスフェクションされたDNAを安定に取り込んでいる細胞を上述の選択培地に対するそれらの耐性によって同定し、耐性コロニーの拡張によってクローン細胞系を生産する。これらの細胞系によるCa2+受容体cDNAの発現は溶液ハイブリッド形成とノーザンブロット分析によって評価する。受容体タンパク質の機能的な発現は、細胞内Ca2+の流動化を外部から添加するCa2+受容体作用薬に対する応答として測定することによって決定する。
Ca2+受容体のクローニングは、この新規受容体の構造的研究と機能的研究の両方を可能にする。組換え生産された受容体を構造的研究のために結晶化することもできる。この受容体を発現させる安定にトランスフェクションされた細胞系を天然の産物や他の化合物ライブラリーの高処理量スクリーニングに用いることができる。必須の効力と特異性を有する分子を(放射線や蛍光的に)標識することができる。このような標識分子を置換するという試験分子/抽出物の能力は、スクリーニングのための高処理量検定法の基礎を為す。
卵母細胞内で無機イオン受容体をクローニングするもう1つの方法は次の通りである。
カエル卵母細胞の単離、デフォリキュレーション(defolliculation)および注入の一般的な手法について以下に記述する。簡単に述べると、0.17%トリカインに浸けることによってXenopus laevisカエルを麻酔し、卵巣の葉(lobe)を摘出し、小片に破砕する。カルシウムを含有しない緩衝液中室温で90分間卵巣組織をインキュベートした後、L−型毛細管を用いて個々のV−VI期卵母細胞を単離する。次に、分離した卵母細胞[通常1実験あたり200〜300]をコラーゲナーゼ溶液[Sigma,II型;2mg/ml]中でさらに90分間インキュベートした後、微細ピンセットで小胞状層を除去することができる。デフォリキュレーションされた卵母細胞をカエルリンゲル[ND96]中17℃で終夜インキュべーションし、変性卵母細胞を除去する[通常は全体の<2〜3%]。次に、生き残った卵母細胞にH2O 50nl[対照]またはポリ(A)+RNA[15〜50ng/卵母細胞;H2O50nl中]を注入した後、17℃で2〜4日間インキュベートする。(カエルリンゲル[ND96]は次の成分を含有する(mM):NaCl(96)、KCl(2)、CaCl2(0.5)、MgCl2(0.5)、HEPES(5)、ピルビン酸(2.5))。
グアニジニウムチオシアネートで組織[腎臓、破骨細胞など]から全RNAを抽出し、CsClクッションで分離する。次に、オリゴ(dT)セルロースクロマトグラフィー[このカラムに2回通す]によってポリ(A)+RNAを単離する。アガロースゲル電気泳動によってポリ(A)+RNAの完全性を評価する。細胞外Gd3+にさらした時にCa2+依存性Cl-チャンネル活性を生じさせるという20〜50ngのポリ(A)+RNAの能力を[即ち、Ca2+受容体活性の証拠として]評価する。次の段階は、Ca2+受容体活性を発現させるmRNAの位置を小さいサイズ範囲(〜1kb)に特定することである。このために、ショ糖勾配によって約100μgのポリ(A)+RNAを分離し、その勾配から40個のサイズ分画を集める。別法として、調製用連続フローアガロースゲル電気泳動[Hediger,M.A.:Anal.Biochem.159:280−86(1986)]によって約200〜300μgのポリ(A)+RNAを分画し、70〜90個の分画を集めることができる。これらのプールから得られるポリ(A)+RNA[0.2〜0.5ng/卵母細胞]分画の分画のプール[3〜5分画/プール]をX.laevis卵母細胞に注入し、Ca2+受容体活性を生じさせるというこれらプールの能力について評価する。最高のCa2+受容体活性を与えるプールから得られる個々の分画を卵母細胞に注入して、卵母細胞内でCa2+受容体を最高に発現させるこのポリ(A)+RNAプール内の分画を明確にする。
スーパースクリプト・プラスミド(SuperScriptPlasmid)系[pSPORT1;BRL]を用いて、このポリ(A)+RNAプールから指向性cDNAライブラリーを構築する。スーパースクリプト、MuMLV−RT、逆転写物[これらの多くはコード領域の全長であろう]を用いてcDNAを作成する。cDNAをゲル電気泳動によってサイズ分画し、[ポリ(A)+RNAサイズ範囲に基づく]適当なcDNAサイズ領域をジェネクリーン(GENECLEAN)II[Bio101]を用いて抽出する。次に、サイズ選択されたこのcDNAを、3’末端のNotIプライマーと5’末端のSalI用アダプターを用いてpSPORT1プラスミドベクター中に指向的に連結する。得られたプラスミドをエレクトロポレーションによってエレクトロマックス(ELECTROMAX)DH18B細胞[BRL]に導入する。形質転換された細菌をニトロセルロースフィルター上で生育させ[500〜800コロニー/フィルター]、原フィルターを4℃[短期間]もしくは−70℃[長期間]で保存する。複製フィルターを生育させ、そのフィルターからプラスミドDNAを単離し、制限切断によって直線化した後、インビトロ転写[Cap類縁体存在下でのT7プロモーター]によるセンスcRNA合成の鋳型として使用する。cRNAのプールを卵母細胞に個別に注入し、それを、Cl-流のGd3+誘発性[1〜100μM]活性化の発現について検定する。卵母細胞内でCa2+受容体活性を発現させるクローンを同定するには標準的な姉妹選択法を使用する。
Ca2+受容体cDNAの制限地図を作成し、適当な制限断片をpSPORT1中にサブクローニングする。標準的な方法[シークエナーゼ・ポリメラーゼ(Sequenase Polymerase)2R2,USB]を用いて、サブクローン化したcDNAを双方向的に配列決定する。サブクローン内もしくはサブクローン間の領域を配列決定する必要がある場合や、圧縮された配列領域もしくは不明瞭な配列領域を解析する必要がある場合には、配列決定用プライマー(18マー)を使用する。Ca2+受容体タンパク質のコード領域は、好ましくはコザック(Kozak)共通配列と相同な開始部位を有する最長の読み取り枠から決定する。ハイドロパシーと他のタンパク質アルゴリズムを用いてCa2+受容体タンパク質に関するトポロジーを作成する。そのcDNAのヌクレオチド配列、そのCa2+受容体タンバク質のアミノ酸配列およびそのタンパク質トポロジーを、データベース中に存在する他のCa2+受容体ならびに他の既知のcDNAおよびタンパク質のそれと比較する。相同な領域はカチオンの結合または調節に関与するドメインを表すかもしれない。
無機イオン受容体核酸を単離するための現在好ましい方法はハイブリッド形成スクリーニングに基づいている。
BoPCaR1から誘導される領域特異的なプライマーまたはプローブを用いることによって、DNA合成とPCR増幅を始動させると共に、既知の方法(Imisら,PCR Protocols,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ(1990))で無機イオン受容体ファミリーの構成要素をコードするクローン化DNAを含有するコロニーを同定することができる。
無機イオン受容体をコード化する核酸から誘導されるプライマーを使用する場合、高い厳密度条件、50〜60℃でのアニーリングを使用することによって、そのプライマーに対して約76%以上相同な配列が増幅されるであろうことを当業者は認識するであろう。より低い厳密度条件、35〜37℃でのアニーリングを使用することによって、そのプライマーに対して約40〜50%以上相同な配列が増幅されるであろう。
無機イオン受容体から誘導されたDNAプローブをコロニー/プラークハイブリッド形成に使用する場合、高い厳密度条件、50〜65℃、5×SSPC、50%ホルムアミドでのハイブリッド形成、50〜65℃、0。5×SSPCでの洗浄を使用することによって、そのプローブに対して約90%以上相同な領域を有する配列を得ることができ、より低い厳密度条件、35〜37℃、5×SSPC、40〜45%ホルムアミドでのハイブリッド形成、42℃、SSPCでの洗浄を使用することによって、そのプローブと35〜45%以上相同な領域を有する配列が得られるであろうことを当業者は認識するであろう。
無機イオン受容体ファミリーの構成要素をコード化するゲノムDNAの供給源としてはいずれの組織を使用してもよい。しかしRNAの場合、最も好ましい供給源は所望の無機イオン受容体ファミリー構成要素の発現レベルが上昇している組織である。本発明では、そのような組織供給源からの発現を同定するために、卵母細胞注入と2電極全卵母細胞電圧クランピング(two−electrode whole oocyte voltage clamping)を使用した。しかし本明細書に記載の配列を使用することによって、今では、無機イオン受容体配列をノーザンブロットや原位置ハイブリッド形成法でのプローブにしてそのような細胞を同定することが可能であるから、このファミリーの最初の構成要素をクローン化するために使用した手法の必要性はなくなり、また、無機イオン受容体の発現レベルが上昇している組織からRNAを得る必要もなくなった。
さらに本発明は、無機イオン受容体ファミリーの構成要素を発現させる細胞または組織を同定する方法をも提供する。例えばBoPCaR1のDNA配列、その断片もしくは無機イオン受容体タンパク質ファミリーの他の構成要素をコード化するDNA配列からなるプローブをプローブもしくは増幅プライマーとして使用することにより、そのプローブもしくはプライマーに相同なメッセージを発現させる細胞を検出することができる。当業者であれば、現在利用できる核酸増幅技術や核酸検出技術を、無機イオン受容体ファミリーの構成要素をコード化する配列に基づくプローブもしくはプライマーを使用するように適合させることは容易にできる。
他の受容体を発現させる適当な細胞もしくは組織が与えられれば、上皮小体細胞カルシウム受容体について上述した方法と類似の方法でこれらの受容体をクローン化することができる。例えばヒト破骨細胞腫組織から得られるmRNAは破骨細胞カルシウム受容体をコード化している(図42)。したがって、ヒト破骨細胞受容体のクローンを単離するには、破骨細胞腫組織から上述のようにmRNAを単離し、cDNAライブラリーを調製し、サブプールを検定/分画するだけでよい。さらに、薬物スクリーニングに好ましい受容体はヒト起源のものである。ある種の受容体をコード化するクローンを用いることによって、当業者にはよく知られている交差ハイブリッド形成で対応するヒトcDNAクローンを得ることができる。加えて、上皮小体細胞や他の細胞の受容体のクローンは、他の細胞中の類似する無機イオン検知タンパク質をコード化する遺伝子の単離と、それらタンパク質の発現を可能にする。これは様々な方法によって達成される。Ca2+受容体cDNAをハイブリッド形成プローブとして使用するヒトゲノムDNAのサザンブロット分析は、そのゲノム内にコード化されている関連配列の数の指標を与え、様々な厳密度におけるハイブリッド形成はそれら関連配列間のダイバージェンス(分岐)の程度の指標を与えるであろう。これは関連する受容体タンパク質をコード化する遺伝子の潜在的な数に関する情報を提供するであろう。Ca2+受容体cDNAをプローブとするノーザンブロット分析は、同じ転写物もしくは関連する転写物が様々な組織の中に存在するかどうかを決定するであろう。上皮小体細胞Ca2+受容体に相同な関連する転写物が検出される場合、適当なcDNAライブラリーをスクリーニングするか、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によって、これらのmRNAのクローンを得ることは比較的簡単な問題である。
標的遣伝子歩行(TGW)は標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の変法であり、これは配列がわかっている短い部分に隣接する未知のDNA配列の増幅を可能にする。Parkerら,Nucl.Acids Res.,19:3055(1991)。2つの既知のプライマー部位の間のDNA配列を増幅する従来のPCR技術とは異なり、TGWは1つのそのような部位に隣接するDNAを増幅することができる。したがってTGWは、既知の配列の上流もしくは下流にある配列を単離するための従来のクローニング法とライブラリースクリーニング法の代替法として機能することができる。この手法を用いることによって、配列情報の量が限られている出発DNA鋳型から遣伝子を単離することができる。
第1に、1つの「標的プライマー」と異なる「歩行プライマー」とを用いていくつかの標準的PCR反応を平行して行う。標的プライマーは目的のDNA分子上の既知の配列に対して正確に相補的な配列特異的プライマーであり、未知の隣接配列に向かっている。歩行プライマーは標的プライマー近くのDNAに対して相補的でない非特異的配列である。歩行プライマーは標的プライマー配列とは無関係ないずれのオリゴヌクレオチドであってもよい。第1シリーズのPCRでは、標的プライマーがハイブリッド形成している鎖に隣接し、かつ、相補的なDNA鎖に対して、歩行プライマーがアニールする場合にのみ産物が生産される。目的のPCR産物は好ましくは5キロ塩基のサイズ範囲内である。増幅産物はDNA鋳型に対して歩行プライマー内に60%程度の誤対合ヌクレオチドを伴って生産される。完全は塩基対は歩行プライマーの3’の最初の2ヌクレオチドについてのみ要求されるが、それ以外では部分的な相同性が許容される。アニーリング温度は、アガロースゲル電気泳動で同定されるPCR産物の数を決定する上で重要な変数である。
第2に、「内部検出プライマー」を用いてオリゴマー伸長検定を行う。このプライマーは、先の2つのプライマー間にあって標的プライマーに隣接する既知の配列を表す。内部検出プライマーを32P−ガンマ−ATPでキナーゼ処理した後、第1PCRから得られるDNAを鋳型とする1回のPCRサイクルで使用する。この伸長は標的プライマーに隣接する第1PCR中の産物を同定する。これらの新しい産物をアガロースゲル電気泳動とオートラジオグラフィーによって同定する。内部検出プライマーにハイブリッド形成しない産物はいずれも、プライマーの部分集合によって生産される非連続的な増幅産物を表す。
最後に、オリゴマー伸長検定法で同定されたバンドをゲルから切り出し、標的プライマーとそのバンドを最初に生産した歩行プライマーとを用いる標準的なPCRによって再増幅する。次に、この新しいPCRバンドを直接的に配列決定することにより、わかっていなかった配列情報を得る。
反対方向に情報を拡張するためには、標的および内部検出プライマーから補集合を作成し、上記操作においてそれらの順番を反対にする。
ハイブリッド形成スクリーニングおよびクローニングを行う際には、次の点を考慮すべきである。遺伝子コードには縮重が存在するので、ほとんど全てのアミノ酸(トリプトファンとメチオニンを除く)について複数のコドンが存在する。さらに、特定のコドンの使用頻度はヒトと比較するとヒト以外では異なる。コドン縮重とヒトが好むコドンを考慮に入れて、オリゴヌクレオチドを合成する。さらに、考え得るコドンの様々な置換を伴うオリゴヌクレオチドをも合成する。膨大な数を避けるため、コードの縮重がもたらす考え得る配列のすべてを合成する必要はない。むしろ、最も発現頻度の高いコドンの部分集合を選択する。
このようにして得られる新規受容体クローンを、卵母細胞もしくはトランスフェクションされた細胞系における発現によって機能的に評価することができる。そうすれば細胞特異的な無機イオン受容体を発現させるトランスフェクションされた細胞系は、例えば破骨細胞や傍糸球体細胞などのイオン検知機構に対して特異的に作用する分子の高処理量スクリーニングの手段を提供することができる。
別法として、カルシウム受容体を真核細胞中での発現によってクローン化することができる。例えば上皮小体mRNAからcDNAライブラリーを調製し、それをpcDNA1などの真核発現べクター中にクローン化することができる。このライブラリーから得られるサブプールをCOS7やHEK293細胞などの真核細胞中にトランスフェクションすれば、コード化されているcDNA配列の比較的高レベルな一時的発現を得ることができる。機能カルシウム受容体クローンでトランスフェクションされた細胞は、カルシウム、ネオマイシンまたは他のカルシウム様化合物によって活性化され得るカルシウム受容体を発現させるであろう。[Ca2+]iのための蛍光測定用指示薬を最初に細胞に充填すれば、カルシウム受容体の活性化が蛍光の増大をもたらす。このように、真核細胞中にトランスフェクションされた時に蛍光のカルシウムまたはカルシウム様特異的増大を誘発するというそれらの能力によって、カルシウム受容体を含有するライブラリーサブプールを同定する。この蛍光は蛍光計か、もしくは蛍光活性化細胞選別機(FACS)を用いて検出することができる。
また、本発明者らは、G蛋白質結合受容体を発現するCOS7細胞を検出するための「カルシウム捕捉検定」を開発した。この検定においては、COS7細胞単層をウシ上皮小体細胞cDNAライブラリー(例えば、pcDNA1において調製したライブラリーからのサブフラクションまたはプール)由来のcDNAクローンでトランスフェクションし、Ca2+受容体のアゴニストによる処理に応答して放射活性45Ca2+を捕捉するそれらの能力を検定する。この単層にエマルジョン・オートラジオグラフィーを行ない、45Ca2+を捕捉した細胞を暗視野顕微鏡下での写真上の穀粒状房の存在によって同定する。次いで、陽性信号を与えるライブラリープールを、この信号を与える単一のcDNAが同定されるまで続けて小分割する。
カルシウム受容体は、細胞内信号に結合するリガンドに結合するためにいわゆる「G」蛋白質を利用する一群の受容体に機能的に関連しているようである。このような「G−結合」受容体は、受容体活性化された「Gs」蛋白質によるアデニルシクラーゼの刺激によって細胞内環状AMPの増加を誘導することができるか、またはその他では受容体活性化された「Gi」蛋白質によるアデニルシクラーゼの阻害によって環状AMPの減少を誘導することができる。他の受容体活性化されたG蛋白質はイノシトール三リン酸レベルの変化を導き、細胞内貯蔵からのCa++の放出の結果を与える。この後者の機序は、カルシウム受容体に特によく当てはまる。既知のG結合受容体の全ては構造的に関連しており、7つの保存性のトランスメンブランドメインを有している。このような受容体の多数が、先にクローン化された受容体に対する配列相同性に基づいてクローン化されている。1つの特に有用なアプローチは、保存性トランスメンブランドメイン暗号領域に相同な同義プライマーを用いること、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてこれらの配列をコードしているDNA領域を増幅することである。即ち、このようなオリゴヌクレオチドプライマーを、ゲノムDNAまたはcDNAないし選択した組織から単離したRNAと混合し、PCRを行なう。一部の実験法では、選択した組織から新規なG−結合受容体配列を特異的に増幅することが必要になることがあるが、これはこれらが既知のG−結合受容体と必ずしも同一ではないためである。このことは、当業者にはよく理解されていることである[例えば、Buck,L.およびAxel,R.(1991)Cell,65:175−187]。
また、カルシウム受容体を上記のようなPCR法によってクローン化することができる。カルシウム受容体をコードしている配列をPCR増幅するのに用いることができる同義オリゴヌクレオチドプライマー対の2つの例を以下に挙げる。第1の対は、それぞれトランスメンブランドメインIIおよびVIIをコードしている配列においてG−結合受容体の大部分が示す交差相同性に基づいている。第2のプライマー対は、カルシトニン、セクレチン、PTHおよびGLP受容体を含むG−結合受容体のより分岐したサブグループが示す交差相同性に基づいている。この対は、トランスメンブランドメインIIIおよびVIIをコードしている保存性配列に対応している。これら2つのプライマー対の一方または両方を上皮小体細胞または破骨細胞組織に由来するcDNAと混合したときには、例えば、PCR増幅によって約500〜800塩基対の増幅されたDNAが生成する結果になる。これらのDNAを単離し、カルシウム受容体配列の存在について分析することができる。例えば、それぞれの増幅された配列を完全長cDNAクローンを単離するためのプローブとして用いることができ、次いでこのクローンを上に示した1またはそれ以上の検定で評価して無機イオン受容体がコードされているか否かを決定することができる。
別の方法においては、無機イオン受容体を、受容体に対して生成させたモノクローナル抗体の使用によってクローン化することができる。モノクローナル抗体は、特定蛋白質の免疫親和性精製のための強力な手段を与える。精製したときには、限定されたアミノ酸配列のデータを所望の蛋白質から得ることができ、これを用いて完全cDNA配列のクローンをスクリーニングするためのオリゴヌクレオチド配列プローブを設計することができる。
カルシウム受容体が関係する例を説明する。ハイブリドーマを調製するために、全ウシ上皮小体細胞を免疫原として用いる。精製して分散した細胞を得、生存または固定細胞調製物を確立された方法に従って適当なマウス株の腹腔内に注射する。免疫計画およびハイブリドーマの調製については通常のプロトコールに従う。2工程スクリーニング法を用いてCa2+受容体を認識するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを同定する。最初のスクリーニングは、上皮小体細胞表面抗原を認識するモノクローナルを同定する。次いで、免疫組織化学的方法を用いて、上皮小体細胞の表面に結合するマウス抗体の存在についてハイブリドーマ上清をスクリーニングする。このスクリーニングは、上皮小体組織の固定切片を用いて、または1次培養の分散細胞を用いて行なうことができる。この検定のための方法は文献において十分に確立されている。
このスクリーニングは種々の細胞表面決定基に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定し、Ca2+受容体に特異的なモノクローナルはこれらの小さなサブセットだけを含有することが予測されるであろう。このCa2+受容体に結合するモノクローナル抗体を同定するために、最初のスクリーニングで陽性と試験されたハイブリドーマ上清を、Ca2+受容体アゴニストに対する培養上皮小体細胞の反応をブロックするそれらの能力について検定する。この受容体の細胞外ドメインに結合する抗体の一部は、リガンド結合を阻害もしくは活性化するか、またはそれ以外では受容体活性化に干渉もしくはそれに影響を及ぼすことが予測される。
両方のスクリーニングで陽性のモノクローナル抗体を、ウエスタンブロット、免疫沈殿および免疫組織化学によって特徴付ける。これにより、認識される抗原の大きさおよびその組織分布の決定が可能になる。次いで、適当なモノクローナル抗体を、常法に従い、免疫親和性クロマトグラフィーによってCa2+受容体蛋白質を精製するために用いる。限定アミノ酸配列決定を可能にする十分量の蛋白質が得られる。次いで、ペプチド配列情報に基づいて同義オリゴヌクレオチドプローブを設計する。次いで、これらのプローブを用いて、Ca2+受容体の完全長クローンについて上皮小体細胞cDNAライブラリーをスクリーニングする。得られたクローンを、DNA配列決定ならびに卵母細胞系および培養哺乳動物セルラインにおける機能的な発現によって特徴付ける。
また、これら抗体を用いて発現ライブラリー(例えば、λgt11またはその等価物中のcDNAライブラリー)をスクリーニングして、抗原として反応性の蛋白質を発現するクローンを決定することができる。次いで、このようなクローンを配列決定して、これらがCa2+受容体でありうる蛋白質をコードしているか否かを決定することができる。
さらに、モノクローナル抗体の代わりにカルシウム受容体をクローン化および分析するためにファージ・ディスプレイ(表示)・ライブラリーを用いうることは当業者の理解するところであろう。これらのライブラリーにおいては、抗体の可変領域またはランダムぺプチドをファージ発現べクター中にショットガンクローン化し、抗体領域またはペプチドがファージ粒子の表面に表示されるようにする。カルシウム受容体に特異性高く結合しうる抗体領域またはぺプチドを表示するファージは、これらの受容体を表示する細胞(例えば、上皮小体細胞、C細胞、破骨細胞など)に結合するであろう。このようなファージ100万のうちの100を、これら細胞に結合しうるファージ(カルシウム受容体に結合するファージを含む)を優先的に選択する細胞種に対して選別することができる。このようにして、ライブラリーの複雑さを大きく減少させることができる。この方法の繰返し反復によって、使用する細胞種に結合するファージのプールが得られることになる。次いで、モノクローナル抗体について上記したスクリーニングを用いてカルシウム受容体結合抗体またはペプチド領域を表示するファージを単離することができ、そしてこれらのファージを用いて構造の同定およびクローニングの目的でカルシウム受容体を単離することができる。このようなファージ・ディスプレイ・ライブラリーを調製するためのキットは市販品から入手可能である[例えば、StratacyteまたはCambridge Antibody Technology Limited]。また、このようなカルシウム受容体結合の性質を持つ組換えファージを、カルシウム受容体の種々の分析においてモノクローナル抗体の代わりに用いることができる。さらに、このようなファージを高効率の結合−競合スクリーニングにおいて用いて、カルシウム受容体のところで作用するヒト治療薬の開発のための構造的指標として役立ちうる、カルシウム受容体に機能的に結合しうる有機化合物を同定することができる。
別の方法においては、放射リガンドのその受容体への親和性架橋を用いて文献[Pilch&Czech,Receptor Biochem.Methodol.1 161,1984]に記載のように受容体蛋白質を単離することができる。放射リガンドの共有結合は非特異的な結合を除くための徹底的な洗浄を可能にする。例えば、約100nMまたはそれ以下のEC50で細胞内Ca2+を移動させるアルギニンとチロシンのランダムコポリマー(Mw=22K;arg tyr比=4:1)などの高親和性分子を125Iでヨウ素化し、架橋する。比較的サイズが小さいのでプロタミン類が架橋の研究に好ましく、文献[Dottavio−Martin&Ravel,87 Analyt.Biochem.562,1978]に記載のように還元的にアルキル化することができる。
未ラベルのポリカチオンならびに二および三価カチオンの存在下で架橋することによって、非特異的なラベル化を最少に維持する。これら分子が高濃度のときに、ラベルと細胞表面の非特異的な相互作用が減少するであろう。
本発明は、無機イオン受容体をコードしている単離した核酸配列および単離した受容体それ自体を提供する。また、本発明は上述の独特のフラグメントを提供する。「単離した」なる用語は次のような核酸配列を意味する:(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってインビトロで増幅された核酸;(ii)例えば、化学合成によって合成された核酸;(iii)クローニングによって組換え調製された核酸;または(iv)切断とゲル分離によって精製された核酸。ポリぺプチドまたはアミノ酸配列を記述する際に用いるときの「単離した」なる用語は、本発明の単離した核酸配列を用いて発現系から得たポリペプチド、ならびに例えば化学合成法によって合成したポリペプチド、および天然の生物学的材料から分離し、続いて通常の蛋白質分析法を用いて実質的に精製したポリペプチドを意味する。
また、本発明の範囲内に含まれるのは、無機イオン受容体の独特のフラグメントである。この「独特のフラグメント」なる用語は、本発明の日の時点で既知の配列に対応するところがないことが見い出された受容体の部分を意味する。これらのポリぺプチドフラグメントは、本発明の時点で既知の蛋白質データベースを同一ペプチドについてスキャニングすることによって、独特であると容易に同定することができる。受容体DNAのクローン化した部分配列の発現による受容体フラグメントの創製に加えて、無傷蛋白質からフラグメントを直接創製することができる。蛋白質を蛋白質加水分解酵素(トリプシン、キモトリプシンまたはペプシンを含むが、これらに限定されない)によって特異的に切断する。これら酵素のそれぞれは、それが攻撃するペプチド結合のタイプに特異的である。トリプシンは、カルボニル基が塩基性アミノ酸(通常はアルギニンまたはリジン)に由来するペプチド結合の加水分解を触媒する。ペプシンとキモトリプシンは、芳香族アミノ酸(具体的にはトリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニン)に由来するぺプチド結合の加水分解を触媒する。別組の切断されたポリペプチドフラグメントが、蛋白質加水分解酵素に感受性である部位での切断を妨げることによって創製される。例えば、穏やかな塩基性溶液中でのリジンのεーアミノ基とエチルトリフルオロチオアセテートの反応によって、隣接ペプチド結合がもはやトリプシンによる加水分解に感受性ではないブロックされたアミノ酸残基が生成する[Goldbergerら,Biochem.,1:401(1962)]。従って、このようなポリペプチドをトリプシンで処理すると、アルギニル残基のところでのみ切断される。また、ポリぺプチドを修飾して、蛋白質加水分解酵素によって触媒される加水分解に感受性であるペプチド結合を創製することができる。例えば、システイン残基をβ−ハロエチルアミンでアルキル化すると、トリプシンで加水分解されるぺプチド結合が生成する[Lindley,Nature,178:647(1956)]。さらに、特定残基のところでポリペプチド鎖を切断する化学試薬を用いることができる[Witcop,Adv.Protein Chem.16:221(1961)]。例えば、臭化シアンはメチオニン残基のところでポリペプチドを切断する[Gross&Witkip,J.Am.Chem.Soc.83:1510(1961)]。従って、無機イオン受容体(例えば、ヒトカルシウム受容体またはそのフラグメントなど)を修飾化試薬、蛋白質加水分解酵素および/または化学試薬の種々の組合せによって処理することにより、大きさの異なる多数の別個の重複したペプチドが創製される。これらのペブチドフラグメントを、クロマトグラフィー法によってこのような消化物から単離および精製することができる。
別法によれば、適当な固相合成法を用いてフラグメントを合成することができる[StewardおよびYomg,Solid Phase Peptide Synthesis Freemantle,San Fransisco,CA(1968)]。
これらフラグメントを、抗体などの調製の際のイオン結合試薬として検定において用いることができる。また、これらフラグメントを所望の生物学的活性を有するように選択することができる。例えば、このフラグメントは、本明細書中に記載したように、正にその結合部位またはアゴニストもしくはアンタゴニスト(例えば、カルシウムの)に結合する部位を含むことができる。このようなフラグメントは、このフラグメントに対する特異的な結合を検出するための常法を用いて当業者により容易に同定される。例えば、カルシウム受容体の場合、組換えDNA法を用いて組換え受容体をコードしている遺伝子フラグメントから被験フラグメントを発現させることができる。次いで、このフラグメントを適当な結合条件下でカルシウムまたは他の化学物質と接触させて、カルシウムがこのフラグメントに結合するか否かを決定する。これらのフラグメントは、カルシウムのアゴニストおよびアンタゴニストのスクリーニング検定、ならびに、血清または他の体組織からカルシウムを除去するのに有用という治療効果のスクリーニング検定において有用である。
他の有用なフラグメントには、受容体の外側部分、膜−スパニング部分または細胞内部分だけを有するフラグメントが含まれる。これらの部分は、受容体のアミノ酸配列を既知受容体の配列と比較することによって、または他の常法によって容易に同定される。これらのフラグメントは他の受容体のフラグメントとのキメラ受容体を形成させるのに有用であり、これにより受容体を欠く細胞を、該細胞内で所望の機能を発揮する細胞内部分、およびイオンまたは本明細書中に記載したアゴニストもしくはアンタゴニストの存在に対する該細胞の反応を引き起こす細胞外部分を伴って生成させることができる。適切に構成されたときのこれらキメラ受容体遺伝子は、受容体の機能不全が関係する種々の疾患、または受容体機能の変調が患者に所望の効果を与える種々の疾患のための有用な遺伝療法である。さらに、細胞外部分とその天然リガンド(例えば、カルシウム)または本発明のアゴニストおよび/またはアンタゴニストの相互作用によって活性化され、そして比色、放射、発光、分光または蛍光検定によって容易に検出しうる所望の酵素過程に細胞内ドメインが関係するように、キメラ受容体を構築することができる。このようなキメラ受容体を発現する細胞は、本発明の新規なアゴニストおよび/またはアンタゴニストの発見のための容易なスクリーニングの基礎となる。
本発明は、本明細書に記載している単離されたレセプターの突然変異体又は同族体及び他の誘導体をも提供する。従って、本発明は天然に存在するタンパク質だけでなく、そのような誘導体をも包含する。これらの誘導体は本明細書に記載する所望のレセプター活性を有しており、一般に本明細書に記載の方法によって同定される。このようなタンパク質及びそれをコードする遺伝子の例を挙げるが、これらの例は本発明を限定するものでなく、このような遺伝子及びタンパク質に関連し得る変異を説明するのみである。一般には、その遺伝子は天然レセプターのアミノ酸配列を有しているが、産生されるレセプタータンパク質のレセプター活性に顕著な影響を与えない1つ又はそれ以上のアミノ酸部位で変動させることができる。従って、例えばカルシウムレセプタータンパク質の非保存領域(即ち、レセプター活性に必須でない領域)ではアミノ酸は欠失、付加又は置換されていてもよい。より保存されている領域はレセプター活性に必要であるが、その領域のアミノ酸はより保存的に置換されていてもよい。例えば、この配列内の1つ又はそれ以上のアミノ酸残基は機能的な等価物として働く類似の極性を有する別のアミノ酸と置き換えることができる。この配列内のアミノ酸との置換物は、そのアミノ酸が属しているクラス内の別のアミノ酸から選択すればよい。非極性(疎水性)アミノ酸にはアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンがある。極性中性アミノ酸にはグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンがある。正に帯電した(塩基性)アミノ酸にはアルギニン、リジン及びヒスチジンがある。負に帯電した(酸性)アミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸がある。
当業者ならば、インビトロ突然変異誘発法又は欠失分析によって、タンパク質の保存及び非保存領域を決定するために標準的な手法を使用でき、またこのような誘導体はすべて以下に記載するものと等価であることは理解されよう。
本発明の範囲内にはさらに、レセプタータンパク質、又は翻訳中もしくは翻訳後に別個に修飾されるそれらのユニークな断片又は誘導体、例えばリン酸化、グリコシル化、架橋結合、アシル化、タンパク質分解的開裂、抗体分子、膜分子もしくは他のリガンドへの結合といった修飾が施されているものが包含され得る[Fergusonら,1988,Am.Rev.Biochem.57:285−320]。
さらに、本発明の組換え核酸配列を操作することにより、レセプター配列のプロセッシング又は発現を改変することができる。例えば、コード化配列は充分に特性化された方法によってプロモーター配列及び/又はリボゾーム結合部位と結合させ、それにより発現及びバイオアベイラビリティーを向上させることができが、このことのみに限定されるものでない。
また、ある組換えコード化配列はインビトロ又はインビボにて突然変異させることにより、コード化領域内に変異を与え、及び/又は新たな制限エンドヌクレアーゼ部位を生成させ又は先に存在していた制限部位を破壊するといった、さらなるインビトロ修飾を行うことができる。当業者に知られている突然変異のための手法にはインビトロ部位特異的突然変異[Hutchinsonら,1978,J.Biol.Chem.253:6551]、TABRリンカー[ファルマシア]の使用、PCR指向型突然変異などがあるが、これらに限定されない。
さらに、コドンが同一のアミノ酸をコードしつつ、選択する発現系にとって好ましいコドンとなるように、コドンを改変することができる。
本発明はさらに、無機イオンレセプターをコードする核酸のユニークな断片をも提供する。「ユニークな断片」なる用語は、本発明の発明日当時に知られている配列の中には同一の対応物が見いだされない核酸の部分を意味する。これらの断片は、発明日当時に存在する対応物を検出するための核酸データベースの分析によって容易に同定することができる。ユニークな断片はクローニング手法及び検定にて特に有用である。
本発明はさらに、毒素部分にコンジュゲートでき、又は組換え融合タンパク質として毒素部分と共に発現され得る抗体及び/又はその断片などのレセプター結合剤をも提供する。この毒素部分は、結合剤と対応標的細胞表面レセプターとの相互作用によりその標的細胞と結合し、そしてその細胞に侵入する。かかる結合剤、抗体及び/又は断片がコンジュゲートされる毒素部分はタンパク質であることができ、例えばアメリカヤマゴボウ(pokeweed)抗−ウイルスタンパク質、リチン(ricin)、ゲロニン、アプリン、ジフテリア外毒素又はシュードモナス外毒素などである。この毒素部分は、コバルト−60などの高エネルギー放出放射性核種であってもよい。毒素部分の化学構造はいかなる意味においても本発明の範囲の限定を意図するものでない。当業者ならば、広範な種類の可能性ある部分を結合剤と結合することができるのは理解されよう。例えば、”Conjugate Vaccines”,Contributions to Microbiology and Immunology,J.M.Cruse及びR.E.Lewis,Jr(編),Carger Press,ニューヨーク,(1989)を参照のこと。また、先に列挙したものなどの多くの毒素部分は製薬的に許容し得ることも理解されよう。
結合剤と他の部分(例えば細菌毒素)とのコンジュゲート化は、それら2つの分子がそれぞれの活性を保持する限り、両分子を結合できるあらゆる化学反応によって行うことができる。この結合には例えば、共有結合、アフィニティー結合、挿入(インターカレーション)、配位結合及び錯形成反応などの多くの化学的メカニズムが包含される。しかし、好ましい結合は共有結合である。共有結合は、存在する側鎖の直接縮合、又は外部架橋分子の取り込みのいずれかによって行うことができる。抗体などのタンパク質分子を別の分子とカップリングするには多くの二価又は多価結合剤が有用である。例えば、代表的なカップリング剤には、チオエステル類、カルボジイミド類、スクシンイミドエステル類、ジイソシアネート類、グルタルアルデヒド類、ジアゾベンゼン類及びへキサメチレンジアミン類などの有機化合物が包含され得る。この列挙は、当業者に知られている種々のクラスのカップリング剤を網羅的に表すことを意図しておらず、より普通のカップリング剤を単に例示するものである[次ぎを参照のこと:Killen及びLindstrom 1984,「毒素ーアセチルコリンレセプターコンジュゲート体による実験的自己免疫重症筋無力症を引き起こすリンパ球の特異的な死滅(Specific Killing of lymphocytes that cause experimental Autoimmune Myasthenia Gravis by toxin−acetylcholine receptor conjugates)」,Jour.Immun.133:1335−2549;Jansen,F.K.,H.E.Blythman,D.Carriere,P.Casella,O.Gros,P.Gros,J.C.Laurent,F.Paolucci,B.Pau,P.Poncelet,G.Richer,H.Vidal,及びG.A.Voisin,1982;「免疫毒素:高い特異性及び強力な細胞毒性が組み合わされた雑種分子(Immunotoxins:Hybridmolecules combining high specificity and potent cytotoxicity)」Immunological Reviews 62:185−216;及びVitettaら,前掲]。
組換えDNA手法を使用することで、本発明は、無機イオンレセプターを発現するよう操作されている哺乳動物標的細胞などの標的細胞を提供する。例えば、上記の方法によってクローンされるこのようなレセプターの遺伝子をレセプターを天然にて発現する細胞に挿入すれば、その結果、組換え遺伝子を非常に高いレべルで発現させることができる。
本発明はまた、レセプターの生理的役割を研究するための実験モデル系を提供する。このモデル系では、無機イオンレセプター、その断片もしくは誘導体をその系に供給し、又は系内でそれらを産生させればよい。このようなモデル系は、レセプターの過剰又は枯渇の効果又は細胞機能を研究するために使用できるであろう。この実験モデル系を使用すれば、細胞もしくは組織培養物、全動物、又は全動物もしくは組織培養系内の個々の細胞もしくは組織における効果、又は特定の時間間隔(胚形成など)にわたるそれらの効果を研究することができる。好ましい態様は、クローン化レセプター又はその一部が絡む検定、例えば特に高流量薬物スクリーニング検定(high through−put drug screening assays)に有用なものである。
本発明のさらなる態様では、組換え遺伝子を使用することにより、相同組換えによって内生遺伝子を不活化し、それにより無機イオンレセプター欠損細胞、組織又は動物を作成することができる。例えば、組換え遺伝子は、受容細胞、組織又は動物のゲノムに挿入した場合にレセプターの転写を不活化する挿入突然変異(例えば、neo遺伝子)を含有するよう操作することができるが、これに限定されない。このような構築物は、トランスフェクション、形質導入(トランスダクション)、注入などの手法によって胚性幹細胞などの細胞に導入することができる。無傷のレセプター配列を欠く幹細胞により、このレセプターが欠失しているトランスジェニック動物を作成することができる。
「トランスジェニック動物」は、細胞に人工的に挿入されたDNAであってその細胞から生育する動物のゲノムの一部となるDNA、を含有する細胞を有している動物である。好ましいトランスジェニック動物は霊長類動物、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ及びネコである。トランスジェニックDNAはヒトの無機イオンレセプ夕ーをコードすることができる。本発明のさらなる態様では、レセプターの発現を減少させるに有効な量のアンチセンスRNA又はDNAを提供することによって、動物における天然の発現を減少させることができる。
本発明に関連するトランスジェニック動物を創製するには種々の方法を利用することができる。DNAは雄及び雌の前核が融合する前に受精卵の前核に注入するか、又は細胞分割の開始後に胚性細胞の核(例えば、2細胞胚の核)に注入することができる[Brinsterら,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,82:4438−4442(1985)]。胚は、本発明の無機イオンレセプターヌクレオチド配列を担持するよう改変したウイルス、特にレトロウイルスによって感染させることができる。
胚の内部細胞塊(inner cell mass)から誘導し培養物中にて安定化した多能性幹細胞は本発明のヌクレオチド配列を含有するよう培養物中にて操作することができる。このような細胞からトランスジェニック動物は作成できるが、それは借腹(foster mother)中に移植した胚盤胞に移植し、臨月期に至らしめることによって行う。
トランスジェニック実験に適している動物は、Charles River[ウィルミントン,MA]、Taconic[ジャーマンタウン,NY]、Harlan Sprague Dawley[インディアナポリス,IN]などの標準的な商業供給元から入手することができる。
ネズミの胚を操作しDNAを接合体の前核にマイクロインジェクションする操作は当業者に周知である[Hoganら,前掲]。魚類、両生類の卵、及び鳥類のためのマイクロインジェクション手法はHoudebine及びChourrout,Experientia,47:897−905(1991)に詳述されている。DNAを動物組織に導入するための他の手法は米国特許第4,945,050号(Sandfordら,1990年6月30日)に記載されている。
単なる実施例であるが、トランスジェニックマウスを作成するため、雌性マウスに過剰排卵を誘発させた。雌性動物を雄性動物ともに一緒に置き、交尾した雌性動物をCO2窒息又は頚部脱臼によって殺し、切除した輸卵管から胚を回収する。周りの卵丘細胞を除去する。次いで、前核胚を洗浄し、注入の時まで保存する。無作為な周期の成人雌性マウスを精管切除した雄性動物とつがわせる。受容雌性マウスをドナーの雌性マウスと同じ時に交尾させる。次いで、胚を外科的に移す。
トランスジェニックラットを作成するための手法はこのマウスの手法と同様である。Hammerら,Cell,63:1099−1112(1990)。
胚性幹細胞(ES)細胞を培養し、次いでこのES細胞にエレクトロポレーション、リン酸カルシウム/DNA沈降及び直接注入などの方法によりDNAを導入することによってトランスジェニック動物を創製する方法は、当業者に周知である。例えば、Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells,APractical Approach,E.J.Robertson,編,IRLPress(1987)を参照のこと。
無作為遺伝子組込みの場合は、本発明の配列(群)を含有するクローンを耐性をコードする遺伝子と共に同時トランスフェクトする。あるいは、ネオマイシン耐性をコードする遺伝子を本発明の配列(群)に物理的に結合させる。所望のクローンをトランスフェクションし単離することは、当業者に周知の幾つかの方法のいずれによっても行われる[E.J.Robertson,前掲]。
ES細胞に導入するDNA分子はまた、相同組換え工程によって染色体に組込むことができる。Capecchi,Science 244:1288−1292(1989)。組換え事象(即ち、neo耐性)の陽性選択及び二元陽性−陰性選択(即ち、neo耐性及びガンシクロバー(gancyclovir)耐性)のための方法、及びそれ以後のPCRによる所望のクローンの同定はCapecchi,前掲及びJoynerら,Nature 338:153−156(1989)に記載されており、これらの教示は本明細書に包含される。操作の最終段階は標的されたES細胞を胚盤胞に注入し、その胚盤胞を偽妊娠雌性動物に移入する。得られたキメラ動物を交配し、その子孫をサザーンブロッティングによって分析し、トランスジーン(transgene)を担持する個体を同定する。
非ネズミ哺乳動物及び他の動物を産するための手法は別に議論されている。Houdebine及びChourrout,前掲;Purselら,Science 244:1281−1288(1989);及びSimmsら,Bio/Technology,6:179−183(1988)。
使用
初期上皮小体機能亢進症(HPT)は高カルシウム血症および循環PTHのレベルの増加により特徴付けられる。HPTの主要な欠陥のうちの一つは上皮小体細胞の、細胞外Ca2+による負のフィードバック制御に対する感受性の減少であると思われる。したがって、初期HPT患者由来の組織では、細胞外Ca2+に対する「定点」が右にずれ、そのため通常より高い細胞外Ca2+濃度がPTH分泌を抑制するために必要である。さらに、初期HPTでは、細胞外Ca2+濃度がたとえ高くても、PTH分泌抑制はしばしば部分的のみである。第2期(尿毒症の)HPTでは、たとえCa2+が抑制するPTH分泌が通常の割合であっても、細胞外Ca2+に対する定点が同様に上昇していることが観察される。PTH分泌の変化は、[Ca2+]iの変化に平行である:細胞外Ca2+−誘導[Ca2+]i増加の定点は右にずれ、このような増加の度合は減少する。さらに、モノクローナル抗体による組織の染色は、Ca2+受容体が腺腫様および過形成上皮小体細胞で減少していることを表す。
Ca2+受容体は薬理学的介入のための不連続の分子本体を構成する。細胞外Ca2+の作用が類似または反対である分子は、初期および第2期HPT両方の長期管理に有益である。このような分子は、高カルシウム血症状態単独では成し遂げ得ないPTH分泌抑制に必要な付加刺激を提供する。細胞外Ca2+より大きい効果のこのような分子は、腺腫様組織で特に厄介であるPTH分泌の明白な非抑制可能因子を征服し得る。別にまたは付加的に、このような分子は、ウシおよびひと腺腫症上皮小体組織で長期の高カルシウム血症がpreproPTHmRNAのレベルの抑制を示すように、PTHの合成を抑制し得る。長期高カルシウム血症はまた上皮小体細胞のイン・ビトロでの増殖をまた抑制し、したがってカルシウム様物質は、第2期HPTで特殊的な上皮小体細胞過形成の制限にもまた効果的であり得る。
他の体細胞は、直接細胞外Ca2+濃度の物理的変化に反応できる。甲状腺内小胞周辺細胞(C−細胞)からのカルシトニン分泌は、細胞外Ca2+の濃度の変化により調節される。腎臓傍糸球体細胞からのレニン分泌は、PTH分泌のように、細胞外Ca2+の濃度の増加により抑制される。細胞外Ca2+は、これらの細胞の細胞内Ca2+流動を生じさせる。他の腎臓細胞は下記のようにカルシウムに反応する:Ca2+上昇は、近位小管細胞による1,25(OH)2ビタミンDの形成を阻害し、遠位小管細胞におけるカルシウム−結合蛋白質の産生を刺激し、Ca2+およびMg2+の小管の再吸収および髄質のヘレンわなの太い上行肢(MTAL)細胞に対するバソプレシンの作用を阻害し、皮質の集合管細胞におけるバソプレシン作用を減少させ、腎の糸球体の血管の平滑筋細胞に影響を及ぼす。カルシウムは腸管小球細胞、乳房細胞および皮膚細胞の分化を促進する。それはまた、心臓心房からの心房性カルシウム排泄増加性ペプチド分泌を阻害し、血小板におけるcAMP蓄積を減少させ、ガストリンおよびグルカゴン分泌を変化させ、血管平滑筋細胞に作用し、血管作動性因子の細胞分泌を調節する。単離破骨細胞は細胞内Ca2+流動からある程度生じた[Ca2+]iの増加に対する細胞外Ca2+の濃度を増加させる反応をする。破骨細胞での[Ca2+]iの増加は、上皮小体細胞におけるPTH分泌と類似の機能的反応(骨吸収)の阻害に関連する。骨−形成骨芽細胞からのアルカリホスファターゼの放出は直接カルシウムによって刺激される。したがって、Ca2+は、その細胞内信号としての偏在的役割に加えて、ある特異的細胞の反応を制御する細胞外信号としてまた機能するという示唆をする充分な徴候がある。本発明の分子は、これらの細胞での崩壊したCa2+反応に関連する疾病の処置に使用できる。
上皮小体細胞および他の細胞のCa2+受容体のクローニングは、直接評価すべき他の細胞中の相同蛋白質の存在を可能にする。構造的に相同なCa2+受容体蛋白質の群は、このように得ることができる。このような受容体は、これらの細胞がどのようにこれらの細胞が細胞外Ca2+を検出するかの理解を可能にし、本明細書に述べたHPT、骨粗鬆症および高血圧の処置に有効な治療の活性部位としての機構の評価および他の骨および鉱物関連疾患の新規療法を可能にする。
他の使用は上記した。例えば、組み換えCa2+受容体蛋白質は療法に使用され、標準法、例えばこの蛋白質をコード化する核酸の形質導入により導入される。さらに、このような蛋白質は本発明のカルシウム様分子の測定に有用である。
下記の実施例は、範囲を限定することなく本発明を説明する。
本明細書に記載の研究で、種々の有機分子が上皮小体細胞において細胞内Ca2+を流動させることおよびPTH分泌を抑制することが分かった。これらの分子は構造的には多様であるが、多くが生理学的pHで正味の陽電荷をもつ。有機化合物のカチオン性の性質は有用な役割を担うが、活性決定における唯一の因子ではない。
実施例1:ウシ上皮小体細胞におけるカルシウム様分子のスクリーニング
分離したウシ上皮小体細胞をパーコール勾配で精製し、一晩血清非存在培地で培養した。細胞を連続してfura−2と共に導入し、遊離細胞内Ca2+濃度を蛍光的に測定した。[Ca2+]iの変化はCa2+受容体に活性な分子のふるい分けに使用した。カルシウム様とみなすため、分子は細胞外Ca2+の増加による通常の効果を示し、Ca2+受容体の活性化により誘因されることが必要であった。1)分子は、[Ca2+]iの増加を誘発しなければならない;[Ca2+]i増加は細胞外Ca2+の不存在下で継続し得、および/または分子は細胞外Ca2+によって誘発された[Ca2+]iの増加を強め得る。
2)分子は、百日咳毒素により阻止されるイソプロテレノール−刺激されたサイクリックAMP形成減少を生じさせなければならない:
3)分子は濃度と同等の範囲で、[Ca2+]i増加を生じさせるPTH分泌を阻害しなければならない:および
4)[Ca2+]およびPTH分泌における増加についての分子の濃度反応曲線はフォルボールミリステートアセテート(PMA)のようなPKC活性化剤で右に移動しなければならない。
分子のいくつかの構造的に異なる群を試験した:ポリアミン類、アミノグリコシド抗生物質、プロタミンおよびリジンまたはアルギニンポリマー類。これらの分子の構造は図1−6に描く。図1−6に含まれるものは、その分子の正味の陽電荷、ウシ上皮小体細胞の細胞内Ca2+流動の誘導に対するEC50である。
一般に、分子の正味の陽電荷が大きければ大きいほど、その細胞内Ca2+流動を生じさせる有効性は高い。しかしながら、この見かけの規制に対するいくつかの著しい例外が、下記のように発見された。
図から見られるように、スペルミン、ネオマイシンBおよびプロタミンはfura−2−導入ウシ上皮小体細胞において[Ca2+]iの急速で一時的な増加を誘導する(図11、12、17)。しかしながら、それらは、ひと上皮小体細胞ではなるが(図25)、ウシ上皮小体細胞では充分な[Ca2+]iの定常増加を生じさせない(図11、17)。この点で、それらは、ウシ細胞における細胞外Mg2+により誘導され、細胞外Ca2+の流入を伴わない細胞内Ca2+の流動化を生じさせる細胞質ゾルのCa2+反応に似ている(図17b)。スペルミン、ネオマイシンBまたはプロタミンにより誘導された[Ca2+]iの一時的な増加は、低濃度(1μM)のLa3+またはGd3+で阻止されない(図17f、g)。多価カチオン分子により誘導された細胞質ゾルのCa2+過渡現象は細胞外Ca2+の不存在下で持続したが、Ca2+の細胞蓄積がイノマイシンによる前処置で枯渇した場合阻止された(図12:17h、i)。これらのすべての分子は、したがって上皮小体細胞で細胞内Ca2+流動を生じさせる。
多価分子は細胞内Ca2+の、細胞外Ca2+により使用されるのと同じプールを流動化することを加えて示唆した。したがって、細胞外Ca2+の濃度の増加は、スペルミンにより誘導された[Ca2+]iの一時的な増加を進歩的に阻害する(図11)。逆に、スペルミンまたはネオマイシンBの最大に有効な濃度は(図7)過渡現象を阻止するが、細胞外Ca2+により誘導された[Ca2+]iの定常増加ではない。
重要には、スペルミン、ネオマイシンBおよびプロタミンはPTH分泌を細胞外Ca2+と同程度阻害した。これらの分泌における阻害効果は、細胞内Ca2+の流動化を生じさせる濃度で得られた(図13、14、19)。これらの発見は、細胞外Ca2+によるPTH分泌の抑制に寄与した機構の理解に関連する。種々の無機多価カチオンがすべて分泌を阻害するため、細胞外Ca2+のみが依然として持続した、[Ca2+]iの定常増加を生じさせ、このような[Ca2+]iの増加は分泌の制御に重大に含まれることはできない。細胞外Ca2+流入よりむしろ細胞内Ca2+の流動が、PTH分泌抑制に関連する本質的な機構である。これは分子がPTHに影響がある場合、影響される充分な機構を定義するため、重要である;分子刺激選択的細胞外Ca2+流入は、PTH分泌抑制には比較的効果がない。比較して、単にCa2+流動を生じさせる分子は、PTH分泌抑制において細胞外Ca2+と全く同程度に有効である。
細胞外Ca2+により誘導される細胞内Ca2+流動化のように、多価カチオン分子により誘導されるものはPMAにより抑制された。スペルミンで誘導される細胞質ゾルCa2+過渡現象のPMAによる優先的阻害効果を示す代用的な実験は、図20に示す。ATPにより誘導された細胞質ゾルCa2+過渡現象は、ATPのほとんど最大濃度を使用した場合でさえ、効果がなかった。多価カチオンにより誘導された細胞質ゾルCa2+過渡現象におけるPMAの効果はその細胞外Ca2+に対する反応への影響と平行であった:両方の場合、濃度反応曲線が右へ移動した(図21)。PMAの[Ca2+]iにおける抑制的効果は、高濃度の有機多価カチオンで征服された分泌における効力を高める効果に付随した(図22)。
多価カチオン分子により誘導された細胞内Ca2+の流動は、イノシトールリン酸の形成の増加と関連があった。例えば、プロタミンはIP1レベルの増加に付随したIP3の形成の急速(30秒以内)増加を生じさせた。これらの両方の効果は、細胞外プロタミンの濃度に依存した(図23)。さらに、PMAによる前処理は、多価カチオン分子により誘導されるイノシトールリン酸の形成を鈍らせた。スペルミンで得られた代表的な結果は図24に示す。
スペルミン、ネオマイシンBおよびプロタミンは、イソプロテレノール−誘導サイクリックAMP増加を抑制した。分子細胞外Ca2+のサイクリックAMP形成に対する阻害効果のように、多価カチオン分子により誘導されるそれは、百日咳毒素との前処置により阻止された(表2)。
百日咳毒素(PTx)は、細胞外Ca
2+およびサイクリックAMP形成における多価カチオンの阻害効果を阻止する。ウシ上皮小体細胞は、16時間100ng/mlの百日咳毒素存在下または非存在下で培養した。細胞を次に洗浄し、15分間、指示量の細胞外Ca
2+または多価カチオン分子存在下または非存在下で10μMのイソプロテレノールと共にインキュベーションした。全サイクリックAMP(細胞+上清)はRIAにより測定し、結果は0.5mMCa
2+(112±17pmol/10
6 細胞)で得られたレベルの割合で示す。それぞれの値は3回の実験の平均±SEMである。
ひと上皮小体細胞では、細胞外Mg2+が、持続する、定常[Ca2+]i増加を急速一過性増加に加えて誘導した(図16)。ウシ上皮小体細胞が細胞外Ca2+に反応するように、ひと上皮小体細胞におけるMg2+誘導[Ca2+]i定常増加は、電圧非感受性チャンネルを経由したCa2+の流入による結果である(図16a)。このひと上皮小体細胞での[Ca2+]i定常増加におけるMg2+の効果は、腺腫様および過形成組織の両方で見られた。
ネオマイシンBおよびスペルミンで、腺腫様組織から調製したひと上皮小体細胞における[Ca2+]iの効果を試験した。ネオマイシンBにおける代表的な結果は図25に示す。ネオマイシンBは、ひと上皮小体細胞で[Ca2+]iの過渡現象だけでなく、加えて定常増加を生じさせた(図25a)。したがって、ひと細胞では、細胞外Ca2+、Mg2+またはネオマイシンBにより誘導される[Ca2+]iの変化の様子は非常に類似である。
ネオマイシンBにより誘導される細胞質ゾルCa2+過渡現象は、La3+(1μM)の存在下および細胞外Ca2+の非存在下で持続した。ネオマイシンBは、したがって、ひと上皮小体細胞における細胞内Ca2+流動を生じさせる。ネオマイシンBは細胞内Ca2+の流動を生じさせる濃度でひと上皮小体細胞のPTH分泌を阻害した(図19)。しかしながら、ひとおよびウシ上皮小体細胞のネオマイシンBに対する反応においてある違いが存在した。細胞内Ca2+流動に対するネオマイシンBのEC50は、ウシ上皮小体細胞では40μMおよびひとのでは20μMであり(図19および21参照)、一方スペルミンの有効性はひとおよびウシ上皮小体細胞で類似であった(EC50=150μM)。したがって、ウシ細胞では分子の活性化試験のふるい分け研究に使用できるが、ひと上皮小体を用いた追跡研究を行うことが重要である。
C−細胞における多価カチオン分子の効果を評価するために、ラット脊髄の甲状腺腫瘍(γMTC6−23細胞)由来の腫瘍性細胞を使用した。スペルミン(10mM)およびネオマイシンB(5mM)の両方とも、これらの細胞で基底[Ca2+]iに効果はなかった。両方の分子のいずれも、細胞外Ca2+の連続添加における反応に効果はなかった。ネオマイシンBの効果を欠いたことを報告する代表的な結果を図27に示す。ネオマイシンB(1mM)またはスペルミン(1または5mM)は、破骨細胞で[Ca2+]iのいかなる増加の誘導に失敗した(図29)。記録が示すように、細胞外Ca2+の連続した濃度の増加にある効果があるように見えるが、これは一貫した発見ではない。他の2番目の細胞で、スペルミン(5μM)は再び基底[Ca2+]iに影響がなく、細胞外Ca2+誘導[Ca2+]i増加の僅かな阻害(約15%)を生じさせた。3番目の細胞で、ネオマイシンBは基底[Ca2+]iに影響がなく、細胞外Ca2+誘導[Ca2+]i増加に影響はなかった。これらの研究から発展した相対的な状況は、スペルミンおよびネオマイシンBが、破骨細胞の細胞質ゾルCa2+のレベルの基底または刺激レベルにおいて効果がないことである。
C−細胞または破骨細胞に対する多価カチオンのCa2+−感受性機構の影響の欠損は、上皮小体細胞Ca2+受容体に特異的に働く、あるいは[Ca2+]iに対する上皮小体の正常な反応の1個またはそれ以上の機能を変える新規先駆物資の発見または設計の能力を証明する。
種々の他の分子のスクリーニングは下記に詳述し、結果を表1に要約する。
実施例2
ポリアミンのスクリーニング
直鎖ポリアミン(スペルミン、スペルミジン、TETA、TEPAおよびPEHA)および2つのそれらの誘導体(NPS381およびNPS382)を実施例1と同様にスクリーニングする。これらの分子はすべてウシ上皮小体細胞中の細胞間Ca2+を可動化させることが判明した。それらの効力のオーダーは以下の通りであり、そのネット正電荷を括弧内に示す。
プトレッシン(+2)およびカダベリン(+2)は2mMで不活性である。
別の直鎖ポリアミン、DADDは他のポリアミンとやや異なる挙動を示し、実施例7に記載する。
実施例3
2つの環式ポリアミン、ヘキササイクレンおよびNPS383を実施例1と同様にスクリーニングする。ヘキササイクレン(+6、EC50=20μM)はNPS383(+8、EC50=150μM)よりも7倍より有効である。この正反対の結果は、Ca2+レセプター活性の構造的特徴としてのネット正電荷のみに基づくようである。
実施例4
アミノグリコシド抗生物質スクリーニング
6つの抗生物質を実施例1と同様にスクリーニングする。細胞間Ca2+の可動化につき得られたEC50(効力のランクオーダー)は以下のとおりである。
カナマイシン(+4.5)およびリンコマイシン(+1)は濃度500μMで有効ではなかった。アミノグリコシド系内では、ネット正電荷と効力の間で相関関係がある。しかし、ネオマイシンは正電荷が等しいかまたはより大きな種々のポリアミン(NPS381、NPS382、NPS383、PEHA)よりも著しくより有効である。この型のアミドグリコシド抗体は、腎臓中のカルシウム受容体との相互作用に関連し得る腎毒性を有するから、このようなスクリーニングは、新規なアミドグリコシド抗体の開発における毒性についてのスクリーニングに用い得る。
実施例5
ペプチドおよびポリアミノ酸のスクリーニング
プロタミンおよびペプチド長さを変化させたリシンまたはアルギニンのポリマーを、実施例1と同様にスクリーニングして、それらの細胞間Ca2+可動化能力を調べた。細胞間Ca2+の可動化につき得られたEC50(効力のランクオーダー)は以下のとおりである。
これらポリマーのネット正電荷はMwの増加につれて増加した。すなわち、ポリアミノ酸のこの系列のうち、アミノグリコシドについては、ネット正電荷と効力の間に直接的な相関関係がある。プロタミンはネット正電荷+21を有する実質的にpolyArgである。
実施例6
アリルアルキルアミンのスクリーニング
毒液およびクモから得られたアリルアルキルアミン毒物の部類から選択された分子を実施例1のようにスクリーニングする。
フィルアントトキシン−433(+3)は濃度500μMで有効ではない。これは、以下に記載のアルギオトキシンと類似の構造である。
アルギオトキシン−636(400μM)は[Ca2+]iの増加を惹起しないが、細胞間Ca2+のその後の添加に対するサイトゾルCa2+応答には有効である。これは、Ca2+レセプターを活性化する分子すべてに共通の特徴であり、種々の細胞間2価カチオンについて見られる。これに関し、実施例7で詳細に考察する。
アルギオトキシン−636に対し、アルギオトキシン−659は[Ca2+]iの増加を惹起し、EC50300μMを示す。アルギオトキシン−659はジヒドロキシフェニル基よりもむしろヒドロキシル化インドールを有する点で、アルギオトキシン−636と相異する。これは、2つのこれら分子の唯一の構造上の相異である。すなわち、効力の相異は芳香族基の特性において存在し、正電荷を担持するポリアミン鎖においてではない。
実施例7
Ca 2+ 通路遮断剤のスクリーニング
Ca2+通路遮断剤、すなわち細胞外Ca2+の電圧感受性Ca2+通路を介する流入を遮断する。これらの分子を実施例1のようにスクリーニングする。3つの構造的分類のCa2+通路遮断剤が存在する(1)ジヒドロピリジン(2)フェニルアルキルアミン(3)ベンゾチアジピン。
テストしたジヒドロピリジン(ニフェジピン、ニトレンジピン、BAY K8644および(−)202−791および(+)202−791)は、1μMでテストした場合に細胞外Ca2+によって誘発される[Ca2+]iの増加または基本的な[Ca2+]iに対する効果を、全く示さない。従来の研究が示すように、上皮小体細胞は電圧感受性Ca2+通路を欠いているが、Ca2+レセプターによって規制される電圧非感受性Ca2+通路を有している。
調べたフェニルアルキルアミンは、ベラパミル、D−600(ベラパミルのメトキシ誘導体)、TMB−8、およびTMB−8の周族体、NPS384である。最初の3つの分子を濃度100μMでテストする。フェニルアルキルアミンは調べた他の分子とは異なる挙動を示す。これらは、低濃度の細胞外Ca2+(0.5mM)含有緩衝剤中に浸した細胞に添加しても[Ca2+]iの変化を全く示さない。しかし、ベラパミル、D−600およびTMB−8は、細胞外2価カチオンによって惹起された細胞間Ca2+の可動化を可能にさせ、またこれらは付加的に細胞外Ca2+の流入を遮断する。中間的なレベルの細胞外Ca2+(1〜1.5mM)では、これら分子は誘発はわずかであるが、細胞間Ca2+の可動化から生じる[Ca2+]iの増加は強力である。
フェニルアルキルアミンはネオマイシンのような有機ポリカチオンとは異なった作用を示す。データの示唆するところによれば、ベラパミル、D−600およびTMB−8はCa2+レセプターにおいて部分的なアゴニストであるか、またはアロリスティクな活性化剤であった。これは、調べた他の部分的が完全なアゴニストであることと対照的であった。
分子NPS384(濃度300μM)は[Ca2+]iの増加を誘発しないが、細胞外Ca2+の流入を遮断する。高濃度でのテストは細胞間Ca2+の移動を引き起こす当該分子の能力を示す。
流入を遮断するこれら分子の能力は興味深いが、意外ではなく、一方、細胞間Ca2+可動化から生じる重要な[Ca2+]iの一時的な増加を誘発することが、これら分子の能力である。上皮小体細胞における[Ca2+]iの測定による相当な数の実験の示すように、一時的な[Ca2+]iの増加は、ほぼ不変的に細胞間Ca2+の移動に起因し、そのためCa2+レセプターの活性化を示す。
調べたベンゾチアジピン、ジルチアゼムは全ての点でベラパミルに類似し、またD−600もまた100μMで有効である。
注意すべきは、フェニルアルキルアミンを除き、前記でテストした活性分子はすべて[Ca2+]iの増加を誘発し、これは、最大有効濃度の細胞外Ca2+により誘発されるものと同様に、最大である。これは、かかる分子が細胞外2価カチオンと同様な効力を有することを示す。またこれは、部分的なアゴニストとしてのみ作用するようであるフェニルアルキルアミンの活性と対照的である。
フェニルアルキルアミンのうち、興味深い構造−活性関係を示すものがある。TMB−8およびNPS384のような分子の異なる効力は重要である。TMB−8は[Ca2+]iの一時的な増加を100μMで可能にし、一方NPS384は300μMでもさえもかかる増加させないが、これら分子は同じネット正電荷を担持する。以下に、ネット正電荷とは無関係なある種の他の構造的特徴がより大きな効力をTMB−8に付与することを説明する。
実施例8
ヒト上皮小体細胞に対する分子スクリーニング
スペルミンおよびネオマイシンを、外科手術により取り出した上皮小体から得る実施例1のように調製したヒト上皮小体細胞における[Ca2+]iの効果について、テストする。ヒト上皮小体細胞において、スペルミンは、濃度300μMでテストすると[Ca2+]iのわずかな増加のみを引き起こすことが判明した。
他方、ネオマイシンは、濃度20μMでテストするとヒト上皮小体細胞において[Ca2+]iの大きな増加を誘発する。ネオマイシンにより惹起された応答の最大は、最大有効濃度の細胞外Ca2+により誘発されるものと同様である。
実施例9
アフリカツメガエル卵母細胞(Xenopus Oocytes)についての分子スクリーニング
卵母細胞は、ヒト上皮小体細胞からのmRNAを注入すると、Ca2+レセプターを発現させ、また種々の細胞外無機2または3価カチオンに応答する細胞間Ca2+を移動させる。このスクリーニングを用いると、Ca2+レセプターに対する直接的な作用をテストすることができる。Ca2+レセプターを発現させる卵母細胞は、また以下のようにスクリーニングすると、無傷の上皮小体細胞についての数種の分子活性に応答する。ヘキササイクレンは濃度135μMで細胞間Ca2+の移動を引き起こす。ネオマイシン(100μM)およびNPS382(5mM)も有効である。これは、かなり強制的な形跡であり、かかる分子がCa2+レセプターまたはその機能と緊密に関係する数種の他のタンパクに対し作用することを示す。
たとえば、本発明者らは45Ca2+移動の測定によって卵母細胞のCa2+レセプターの発現を検知することができる。これらの実験において、卵母細胞は、ウシ上皮小体mRNAまたは水を注入し、72時間後、血清または10mMネオマイシンへさらす。刺激前に、卵母細胞に45Ca2+を注入する。20分間の血清による刺激は、細胞間[Ca2+]i放出をもたらし、これは、緩衝剤による疑似抗原投与に比し45%の増加を示す。20分間のネオマイシン10mMの抗原投与は、[Ca2+]i放出の76%の増加をもたらす。当該分析はCa2+レセプターのクローニングの使用に十分に感受性を示し、Ca2+活性化Cl電流の電気生理学的測定よりも非常に大きな利点を有する。
別の実験では、ヒト破骨細細胞腫組織を、骨生死鑑定組織から得た。卵母細胞にこの細胞から単離したmRNAを注入し、Ca2+30mMを抗原投与する。対照は応答しない一方、破骨細細胞腫組織mRNAを注入した12の卵母細胞のうち8は明白に応答する(図42)。これらの実験によれば、破骨細胞の細胞外Ca2+に対するCa2+応答は、事実遺伝学的にコード付けされる。またこの結果によれば、破骨細胞Ca2+レセプターはアフリカツメガエル卵母細胞における発現によってクローニングすることができる。
実施例10
ラット破骨細胞に対する分子スクリーニング
細胞外Ca2+に対する上皮小体細胞および破骨細胞の種々の感受性の示唆するところによれば、それらのCa2+レセプターは異なっている。上皮小体細胞は0.5〜3mMの間の濃度の細胞外Ca2+に応答するが、破骨細胞外は細胞外Ca2+のレベルが5mMを越えたときにのみ応答する。このかなり高いCa2+濃度は、それにも拘わらず破骨細胞に対し生理学的である。なぜなら、それらが破骨細胞に吸収されるからであり、局部的な細胞外Ca2+濃度は30mMもの高レベルに達しうる。
ラット破骨細胞を用いる分子スクリーニングは以下のようになされる。破骨細胞を新生児ラットの長い骨から得る。[Ca2+]iを単一の細胞においてフルオロメトリック・インジケーター・インド−1を用い測定する。スペルミン、スペルミジン、ネオマイシンおよびベラパミルをテストしたが、これらは、破骨細胞において大きな[Ca2+]i増加を引き起こさない(わずか応答は検知される)。
濃度1mMでは、スペルミジンはわずかな[Ca2+]i増加を引き起こす(細胞外Ca2+の最大濃度で惹起される約10%の増加)。ネオマイシン(10mM)またはスペルミン(10または20mM)はラット破骨細胞において[Ca2+]i増加を引き起こさない。ネオマイシン(10mM)は、25mMの細胞外Ca2+のその後の添加により惹起された[Ca2+]i濃度の増加を遮断しない。一方、スペルミン(20mM)での予備処理は細胞外Ca2+に対する応答を弱めた。ベラパミル(100μM)は検知可能な[Ca2+]i増加を引き起こさないが、細胞外Ca2+に対する応答を遮断する。
破骨細胞と上皮小体細胞の間の比較は、後者に対するかかる分子の活性が破骨細胞において比較的有効ではないことが示される。これは、他のCa2+感知細胞に存在するこれらの受容体型に影響を及ぼすことなく特異的Ca2+受容体を標的する医薬が容易に開発されることを示す。同様に、二又はそれ以上のそのようなCa2+受容体で有用な医薬も開発しうる。
破骨細胞カルシウム受容体でのカルシウム様及びカルシウム拮抗作用のスクリーニング
破骨細胞カルシウム受容体で活性を有する化合物は、上記したほうに単一ラット破骨細胞中の[Ca2+]iを測定することにより発見できる。改良検定は化合物の緩和−ないし−高レベルを全て可能にする。本新規方法は、ウサギ破骨細胞の使用に基づき、高い収量(動物当たり105)と純度(95%の細胞が破骨細胞である)で得ることができる。ウサギ破骨細胞調製物は細胞の固体群上で実施されるべき[Ca2+]iの測定を可能にする。記録された経口信号が平均固体群反応であるので、細胞内変異性は最少化され、又、検定の精密度は大きく増大する。これは、交替により多くの化合物が活性をスクリーンされるようにする。
ウサギ破骨細胞は6日齢ウサギから調製する。動物は摘心により犠牲にし、長骨を取出し、破骨細胞培地(OC培地:5%ウシ胎仔血清及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むアルファ−最小基本培地)内に入れる。骨は外科用メスで切片にカットし、50mlコニカル遠心管内の2mlのOC培地中に入れる。骨切片を骨粒子の細かい均一懸濁液が得られるまで、はさみで細分化する。次いで懸濁液を25mlのOC培地で希釈し、調製物を30秒間ゆるやかにかきまぜる(「うず巻く」)。骨粒子は上清を除き50ml遠心管に加えた後2分間放置する。骨粒子を上記したようにOC培地に再び懸濁し、かきまぜ、沈殿させて取得する。2つの取得物からの上清を合わせて遠心し、得られる細胞ペレットをパーコルに再び懸濁する。次いで懸濁液を遠心し、メニスカスの丁度下の白色粘性バンドを除き、OC培地で洗浄する。パーコル遠心段階により純度で有意な改良となり、破骨細胞は以下に記載される方法の一つによって細胞の固体群中の[Ca2+]iを測定するのに適当な、高密度で塗布されるようになる。要すれば、調製物の純度は改良できる。この場合、細胞は一夜、培養し、次いでCa2+及びMg2+フリーの緩衝液でリンスする。ついで細胞単層を、0.02%EDTA及び0.001%プロナーゼを含むCa2+及びMg2+フリーの緩衝液中に5分間浸漬する。次いでこの緩衝液を除き、OC培地と置き換え、細胞を1ないし2時間回復(recover)させ、その後で細胞に蛍光分析指示薬を与え、以下に記載するように[Ca2+]iを測定する。
一実施態様では、本技術により蛍光顕微鏡を用い破骨細胞の固体群中の[Ca2+]iの測定を可能にする。精製破骨細胞を25mmのガラスカバースリップに付着させ、次いでインド−1を与える。カバースリップを過融解室内に保管し、蛍光顕微鏡の段上に置く。低倍率対物レンズ(×4)の使用により10ないし15破骨細胞を含む視野が視覚化される。一つの変形では、視野中の各細胞の蛍光は同時に記録でき、又、後の分析用に別個に記憶できる。各細胞の[Ca2+]iの電荷を決定でき、視野内の全細胞の平均反応を計算できる。他の変形では、細胞の全視野からの蛍光を記録し、直ちに処理(process)できる。別の変形では、最終データは顕微鏡視野に存在する細胞からの平均反応の形である。このために、細胞内変異性は最小化され、検定の精密度は大きく増加する。この方法は、破骨細胞カルシウム受容体の活性をスクリーンするのに週当り10−20化合物が可能である。
より好ましい実施態様では、本技術により、慣用の蛍光分析器を用い破骨細胞の固体群中の[Ca2+]iの測定が可能である。精製破骨細胞は、直方形ガラスカバースリップに付着できる。一変形では、標準石英キュベット(1cm2)を用い、ガラスカバースリップは2×1.35cmである。他の変形では、ミクロキュベットを用い(0.5cm2)、ガラスカバースリップは1×0.75cmである。別の例では細胞は、フラ−2又は[Ca2+]i測定用の他の適当な蛍光指示薬を与える。指示薬付与細胞の細胞の蛍光は、ウシ上皮小体について上記したと同様に記録する。この方法は蛍光顕微鏡よりも高い処理能力を可能にし、破骨細胞カルシウム受容体の活性を評価するのに週当り10−50化合物が可能である。
最も好ましい態様では、技術は96ウエルプレート中、破骨細胞の[Ca2+]iを測定するのに使用できる。精製破骨細胞を高密度で96ウエルプレートの各ウエルに入れ、次いで適当な蛍光指示薬を与える。各ウエルの蛍光を蛍光光度プレートリーダーを用い記録する。この方法は、ロボット工学を用い完全に自動化になる可能性を有し、週当り50ないし100化合物をスクリーンできる高処理能力スクリーニングを可能にするであろう。
他のCa 2+ レセプターの実施例
以下の実験は、まさに分子リガンドのレセプター・サブタイプが存在するように、薬剤によって区別的に影響を受けうるCa2+レセプターのサブタイプが存在することを証明する。上皮小体細胞Ca2+レセプターは細胞外Ca2+約1.5mMのレベルで感受性を示す一方、破骨細胞上のCa2+レセプターは約10mMのレベルに応答する(図28)。上皮小体細胞Ca2+レセプターを活性化するネオマイシンまたはスペルミンは、C−細胞または破骨細胞上のCa2+レセプターに影響を与えない(図27および29)。これらのデータは、Ca2+レセプターの薬学的に区別可能なサブタイプ存在についてのはじめての証拠を構成し、またこれらのデータは特異的なタイプのCa2+レセプターに対し選択的に作用する薬剤の設計および開発に使用することができる。事実、リード分子のテストはかかる細胞特異的効果を証明する。たとえば、NPS449は、破骨細胞において[Ca2+]iの増加を惹起するが、破骨細胞において[Ca2+]iに対する効果はない。逆に、NPS447は、上皮小体細胞Ca2+レセプターを活性化するが、10倍もの高濃度でのみ破骨細胞Ca2+レセプターを活性化するのに有効である。最後に、アガトキシン489は、C細胞Ca2+レセプターの活性化には非常に有効とはいえないが(EC50=150μM)、上皮小体細胞Ca2+レセプターの活性化剤として非常に有効である(EC50=3μM)。現在開発中のリード分子は、イン・ビボにおいてCa2+感受性細胞の特異的なタイプの活性に選択的に影響を与える。
特異性が劣る薬剤は、必然的に治療的には好ましくない。すなわち、破骨細胞活性の抑制およびカルシトニン分泌の刺激は、骨再吸収の抑制のための2つの異なる方法である。これら両細胞のCa2+レセプターを標的とする薬剤は、オステオポローシスに非常に有効である。PTHはまた骨代謝の規制を包含するため、上皮小体細胞Ca2+レセプターに作用する薬剤は、またオステオポローシスの治療および/または予防に有用である。
数種のテスト分子の結果を以下に示す。表6では、カルシウム様物質分子の比較テストを示す。ウシ上皮小体細胞およびC細胞(rMT6−23細胞)にフラ−2を充填し、ラット破骨細胞にはインド−1を充填したもので、表示した細胞間Ca2+の移動のための分子の効力は、累積濃度−応答曲線の作成により決定する。
実施例11
上皮小体Ca 2+ レセプターのリード分子
ポリアミンおよびアリルアルキルアミンを用いる構造活性の研究は、NPS456に構造的類似の分子のテストにつながる。NPS456は上皮小体細胞Ca2+レセプターの有効なアクチベータである。この分子は、ただ1つののみの正電荷を有するが多数のポリベーシック分子よりもより有効であるので、特徴的である。短時間(2分間)の、PMAによる予備処理はNPS456の濃度応答曲線を右手に移行させる。これは、NPS456が細胞外Ca2+により使用されるのと同じメカニズムを介し作用することを示す。NPS456は、上皮小体細胞Ca2+レセプター発現するアフリカツメガエル卵母細胞における細胞間Ca2+の移動を誘発し、これは、当該Ca2+レセプターに対する直接的な作用を証明する(図41)。加えてNPS456キラル炭素を含むため、2つの異性体形が存在する。両異性体を合成し、活性を調べた。R−異性体、NPS447は、S−異性体、NPS448よりも12倍より有効である(図34)。これは、Ca2+レセプターが有機分子を立体特異的な方法で認識できる第1の証明である。
NPS447は、構造的に単純な分子であるとともに上皮小体細胞Ca2+レセプターに対し選択的で有効な作用を示すため、このリード分子に関する構造活性の研究は単純である。これらの研究の目的は、そこから最終の開発候補を選択可能な種々の特性を有する関連分子の配列を形成することである。この努力はすでに活性および効力に貢献するNPS447の構造領域のいくつかを開示する。たとえば、新規な化合物NPS459は小型(分子量<240)であるがほぼペアレント分子と同等な効力を有するNPS447の類似体である。一方、幾つかの他の類似体は比較的不活性である。この類似体プロジェクトから最も興味ある分子はイン・ビボ中に入れてPTH分泌および血清Ca2+レベルに対する効果をテストする(実施例15,16,17,18,23参照)。
新規化合物NPS467はNPS447よりもやや小型の分子であるが、前者は、上皮小体細胞における[Ca2+]iの増加を引き起こす点で、後者よりも約3倍より有効である。NPS456と同様に、NPS467はラセミ混合物である。NPS467のその鏡像体への分割がラセミ混合物よりもより大きな効力の異性体を提供する(実施例16参照)。さらに、NPS447、NPS467およびNPS568に関連する分子についての構造活性の研究は、それらのラセミ形の分子よりもより有効である純粋な異性体を製造が期待される。
NPS456を用い得られた結果(図41)が示すように、そは濃度100μMでCl- 電流の振幅増加を誘発する。NPS456は上皮小体細胞Ca2+レセプターを発現するアフリカツメガエル卵母細胞に対する最も有効な分子アクチベータである。ネオマイシンおよびNPS456を用いるこの発現システムで得た結果は、これらの分子がCa2+レセプターに対し直接作用することを、証明する。
実施例12
破骨細胞Ca 2+ レセプターリード分子
破骨細胞に対する細胞外Ca2+の作用メカニズムを解明すべく用いた方策は上皮小体細胞の有効性を証明するのと同じである。第1実験はフルオリメトリック・インジケータ・インド−1を充填した単一のラット破骨細胞において[Ca2+]iに対するLa3+の作用を調べる。前記のごとく、La3+のように3価カチオンは一時的でCa2+流入を遮断する。低マイクロモル濃度のLa3+は部分的に[Ca2+]iについての細胞外Ca2+誘発増加を抑制する(図35)。[Ca2+]iについてのLa3+抗増加の証明は、細胞間Ca2+の移動の証拠を提供する。上皮小体細胞において得られたものと類似の実験の結果は、同様なメカニズムを細胞外Ca2+により用い、両細胞タイプにおいて[Ca2+]iを規制することを、示唆する。
別の系列の実験は、細胞外Ca2+の不存在下に永続的な(図37)細胞外Mn2+が[Ca2+]iについての一時的な増加(図36参照)を誘発することを、示す。これらの結果は、細胞間Ca2+の移動を示唆するものと同様である。Mn2+は、ある種の細胞内に侵入できるが、破骨細胞におけるかかる挙動とは似ていない。なぜなら、Mn2+はインド−1蛍光を停止させるからである。すなわち、Mn2+が細胞間に侵入すると、減少、すなわち蛍光の増加は観察されない。
種々の2価または3価のカチオンの使用により得られた結果は、全て、細胞間Ca2+の移動および細胞外Ca2+の電圧感受性通路を介する流入とつながる破骨細胞の表面上のCa2+レセプターの存在と一致する。結果は、Ca2+レセプタータンパクをコード付けするヒト破骨細胞における遺伝物質の証拠を示す(以下参照)。細胞間Ca2+の移動を起因とする[Ca2+]i一時的な増加は、イン・ビトロにおいて破骨細胞の骨吸収を抑制するのに充分である。すなわち、上皮小体細胞を用いる場合のように、Ca2+レセプターの活性化は破骨細胞の活性を抑制する可変的な手段のようである。
NPS449は現時点このレセプターのカルシウム様薬剤のリード分子である。これは、小さな分子(Mw<425)で、細胞間Ca2+をラット破骨細胞においてEC50200μMで移動させる(図38および39)。NPS449の効力は比較的小さく、単純な構造でただ1つの正電荷を有し、所望の薬理学および動的薬理学特性を有するようである。
NPS449をイン・ビトロにおいて骨吸収を抑止するその能力について実験する。これは、走査電子顕微鏡を用い、ウシ皮質骨の剥片のピット形成についての生物形態分析により行う。ラット破骨細胞を24時間、骨剥片中にて、種々の濃度のNPS449の存在または不存在下にインキュベートする。NPS449IC5010μMで骨吸収の濃度依存抑制を引き起こす。この新規なサイトにおいて作用する分子は破骨細胞の骨吸収を抑制できるというはじめての証明が、予期せぬ結果として得る。NPS449のより有効な類似体を合成化学を用いて得、本明細書に記載の方法でテスト、分析する。
実施例13
C細胞Ca 2+ レセプター・リード分子
C細胞Ca2+レセプターの活性化は、破骨細胞に作用して骨吸収を抑制するカルシトニンの分泌を刺激する。選択的にC細胞に影響を与えるカルシウム様薬剤オステオポロシスの治療に有用である。
細胞間Ca2+の移動をCa2+レセプター活性の機能指数として用いる。C細胞のスクリーニング作業は、C細胞表現型を発現する培養セルラインの利用により促進することができる(たとえば、ラット延髄乾酪癌細胞、rMTC 6−23細胞)。3つのアルキルアミン分子は初期の実験で選択される。天然のものは2つ(アガトキシン489およびアガトキシン505)あり、他のもの(NPS019)は合成類似体である。アガトキシン505は、IC50=3μMで[Ca2+]iについてのCa2+誘発増加を抑制することが判明した。抑制作用は、かかる細胞中に存在するLタイプ電圧感受性Ca2+通過の遮断に起因する。これに対し、アガトキシン489は、rMTC細胞における細胞間Ca2+を移動させることが、判明した(EC50=150μM)。これは、C細胞Ca2+レセプターを活性化することが判明した、初めて開示される有機分子である。合成類似体、NPS019は、より有効で、細胞間Ca2+を移動させる(EC50=5μM)(図40)。NPS019とアガトキシン489の間の構造的な相異がヒドロキシ基を有すか否かであるのみであることは、重要である。これは、Ca2+レセプターの非常に有効で選択的なアクチベータを開発できることを支持している。
NPS019は小さな分子(Mw<500)であり、これは、C細胞Ca2+レセプターのカルシウム様物質の開発用のリード分子であり、イン・ビトロでカルシオニンを刺激するその能力をテストすることができる。その後、イン・ビボのテストはカルシオニン分泌を刺激し骨吸収を抑制するこの分子の能力を決定する。これらイン・ビボの研究はラットで行う。これらの研究で得られた結果は、予期せぬことで、これは、新規なレセプターに作用する小さな有機分子がカルシオニン分泌を刺激し骨吸収を抑制することを示すはじめての証拠を提供する。
実施例14
上皮小体細胞に対するNPS021のカルシウム拮抗活性
カルシウム拮抗であると思われる化合物について、細胞外Ca2+感受性細胞に対する細胞外Ca2+の作用またはカルシウム拮抗化合物の作用を遮断せねばならない。カルシウム拮抗化合物の具体例はNPS021で、その構造を図1−6に示す。フラ−2を充填したウシ上皮小体細胞において、細胞外Ca2+により惹起されるNPS021は[Ca2+]iの増加を遮断する。この応答遮断のためのNPS021のIC50は約200μMであって、濃度約500μMで、細胞外Ca2+により惹起された[Ca2+]iの増加は停止する。重要には、NPS021は、低[Ca2+](0.5mM、図64)でテストすると、それ自体いずれの変化も引き起こさない。3+もまた、クローンされたCa2+受容体を発現するアフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞に対してカルシウム拮抗的である:Gd3+それ自体はGd3+によって活性化されるCl-電流に影響を及ぼさない。カルシウム様分子は、しかしGd3+で前処理すると、Gd3+を遮断する。
実施例15
NPS467の血清イオン化カルシウムの低下
イン・ビトロにおいてウシ上皮小体細胞Ca2+レセプターを活性化することが証明された化合物を、イン・ビボにおいて低カルシウム血症活性をテストした。雄性スプラーグ・ドゥーリイ・ラット(200g)を、対照としてテスト物質または担体を与える前に、1週間、低カルシウムの餌を与え続けた。血液を、NPS467の腹腔内投与ののち3時間後に尾静脈から採取した。全血液または血清中のイオン化Ca2+を、チバ−コーニング634アナライザーを用い、当該装置に付属の説明書に従い、測定する。血清全カルシウム、アルブミンおよびホスフェートを常法で測定する。
NPS467は、血清または全血液Ca2+の用量依存減少をもたらす(図65)。この時点での血液Ca2+の減少は、血液全カルシウムレベルの比例的な減少当該平行関係にある。調べた用量のいずれにおいても、血清アルブミンまたはホスフェートレベルの変化は全くなかった。予備的な研究では、血中Ca2+低下有効用量でのNPS467は、PTHの循環レベルでの用量依存減少をもたらす(図66)。NPS467の低カルシウム血症効果は、3時間以内に最大となり、24時間後に対照レベルに戻る(図67)。
NPS467(実施例16)もまた、正常、カルシウム反復餌で維持したラットにおいて血清イオン化Ca2+の低下に有効である。NPS467(10mg/kg腹腔内)の単一用量は、イオン化Ca2+の血清レベルの急速な減少をもたらす。かかるレベルは、1時間で最大となり(対照レベルから22%の減少)、6時間までこのレベル付近に抑制される。
実施例16
NPS467の立体特異的方法による血清イオン化カルシウムの低下
NPS467はラセミ混合物である。その2つの鏡像体へのNPS467の分割は、キラルカラムでの分割により行った。R−異性体は、S−異性体よりも約100倍も有効であり、上皮小体細胞の[Ca2+]i増加を誘発する当該鏡像体の能力によって評価されるように(図68)、イン・ビトロにおいてウシ上皮小体細胞Ca2+レセプターを活性化する。同様に、新規化合物NPS568のその鏡像体への類似の分割は、R−異性体はS−異性体よりも約40倍有効であり、細胞間Ca2+の移動をウシ上皮小体細胞においてもたらす(前記表6参照)。
NPS467異性体を実施例15のように血清Ca2+に対する効果につき試験した。NPS 467のR−異性体はイン・ビボにおける血清Ca2+の低下に関しS−異性体よりも有効であることが証明されたEE異性体またはNPS467はイン・ビトロの結果と一致する(図69、各化合物は濃度5mg/体重1kgでテストする)。
実施例17
NPS467の2次上皮小体こう進症のビボ・モデルにおける血清イオン化カルシウムの低下
広範に受け入れられ使用されている、慢性腎不全から生じた2次上皮小体こう進疾の動物モデルは、5/6腎切除のラットである。かかる手術を施した動物は、まず低カルシウム血症にさせて血清Ca2+レベルを維持すると、上皮小体の代償性の過形成および循環PTHのレベル向上が生じる。雄性スブラーグ・ドゥーリイ・ラット(250g)を5/6腎切除し、2週間回復させる。この時点で、標準的なカルシウム血症である(血清PTHの上昇レベルによる)。NPS R−467の投与は(10mg/kg腹腔内)、2次上皮小体こう進疾の動物モデルにおいて血清イオン化Ca2+レベルの対照の83%への、急速な(2時間以内)低下をもたらす。これは、以下のことを示唆する:この種の化合物は2次上皮小体こう進疾および増殖性上皮小体を有する患者においてPTH分泌を有効に抑制する。
実施例18
NPS467の上皮小体切除動物における血清イオン化カルシウム濃度の非低下
低カルシウム血症応答を引き起こすようにNPS467が作用する一次標的組織を決定するため、ラットにおける上皮小体を外科的に取り出す。上皮小体全体を切除した動物を低カルシウム血症にさせ、カルシウム餌に大きく依存させて、血清Ca2+ホメホスタシス状態に維持する。上皮小体削除動物は、6時間の絶食後、0.92mMレベルの血清イオン化Ca2+を有し、これは0.76mMに徐々に低下する。NPS R−467の単一用量の投与(10mg/kg i.p.)はいずれの変化も、血清イオン化Ca2+レベルにおいて、6時間の期間にわたり与えなかった。これらの結果は、無傷の上皮小体がNPS R−467の低カルシウム血症効果に必要であることを証明する。データは付加的にNPS R−467はインビボにおいて上皮小体を標的にすることができることを証明する。結果は以下の見解に一致する:NPS R−467はインビボにおいて上皮小体細胞Ca2+レセプターに対し作用してPTHの分泌を抑制し、これによりイオン化Ca2+の血清レベルを低下させる。
実施例19
NPS467のヒト上皮小体における細胞間カルシウムの増加
解離上皮小体細胞を、一次上皮小体こう進疾を有する患者から外科手術で得た上皮小体アデノーマから調製する。細胞に、フラ−2を充填し、[Ca2+]iを前記よう測定した。NPS R−467およびNPS R−568の両者は[Ca2+]iの濃度依存増加をもたらす。NPS R−467およびNPS R−568のEC50は各々20および3μMである。これら両者の化合物は病理学的ヒト組織において[Ca2+]iを増加させることができ、一次上皮小体こう進疾の患者においてPTHおよびCa2+の血清レベルを減少させるようである。
実施例20
上皮小体細胞カルシウムレセプターにおけるNPS467の作用メカニズム
解離ウシ上皮小体作用を用いて、レセプターレベルにおけるNPS467の作用メカニズムをさらに調べた。0.5mM細胞外Ca2+の存在下に、NPS R−467は急速で一次的な[Ca2+]iの増加をもたらす。この増加は1μMのLa3+の存在下に維持され、PMAでの予備処理で部分的に抑制される(100nM×2分)。すべてのこれらの結果はCa2+レセプターに対するNPS R−467の作用と一致する。しかし、NPS R−467に対する細胞ゾルCa2+の応答は、上皮小体細胞がCa2+非含有緩衝剤中に懸濁すれば停止する。これは、NPS R−467がそれ自体では細胞間Ca2+の可動化を引き起こせないことを示唆する。これは、部分的なCa2+結合部位の支配がNPS R−467が応答を惹起させるのに必要であることを示唆する。この仮説をテストするため、上皮小体細胞をCa2+非含有緩衝剤に懸濁し、亜最大濃度のネオマイシンにさらす。ネオマイシンは以下の理由により用いる:これは、ほぼすべての点において、上皮小体細胞およびアフリカツメガエル卵母細胞(上皮小体細胞Ca2+レセプターを発現)に対する細胞外Ca2+の効果に類似するからである。ネオマイシン10μMの添加はそれ自体では、これらの条件下に[Ca2+]iの増加を引き起こさない。しかし、NPS R−467(30μM)のその後の添加は[Ca2+]iの一次的な増加を惹起するが、これは、細胞外Ca2+が存在しないため、細胞間Ca2+の可動化から生じなければならない。Ca2+非含有緩衝剤に浸した細胞は30μM NPS R−467にさらすと、[Ca2+]iの増加はない。NPS R−467の濃度は細胞外Ca2+0.5mMが存在すれば[Ca2+]iの増加に最大限有効である。しかし、ネオマイシン10μMのその後の添加は一次的な[Ca2+]iの増加を誘発する。恐らく、ネオマイシンは同じ部位に細胞外Ca2+として結合し、そのため機能的に置換される。亜最大濃度(これ自体応答を引き起こさない)を用い、部分的なCa2+結合部位の支配を達成し、NPS R−467によるCa2+レセプターの活性化を可能にする。
NPS R−467の作用メカニズムを付加的に定義する付加的な研究を行う。細胞を一旦再度カルシウム非含有緩衝剤に懸濁して、いずれか観察された[Ca2+]iの増加が細胞間Ca2+の可動化に起因することを保証する。これらの実験では、しかし、ネオマイシンの最大有効濃度100μMを用いた。細胞外Ca2+の不存在下に、100μMのネオマイシンは急速で一次的な[Ca2+]iの増加を誘発する。30μM NPS R−467のその後の添加は[Ca2+]iの増加を引き起こさせない。逆の実験では、30μM NPS R−467を100μMネオマイシンの前に添加する。予想どおり、NPS R−467はいずれの[Ca2+]iの増加を引き起こさない。しかし、それは、100μMネオマイシンのその後の添加により誘発された[Ca2+]iの増加に影響を与えない。NPS R−467の最大有効濃度で得られたこれらの結果は、これら2つの化合物が同じ部位において作用しないことを示唆する。むしろ、その結果は、2つの別々のCa2+レセプター上の部位、すなわち細胞外Ca2+およびネオマイシンが結合するものおよびNPS R−467および構造関連化合物(NPS R−568など)を仮定すれば、充分に説明する。前者の部位に結合するリガンドはCa2+レセプターの完全な活性化をもたらすことができる一方、後者の部位に結合するリガンドは細胞外Ca2+結合性部位がある程度ではあるが限定されない程度に支配される場合のみ生じるかそして/または機能的に適当なものとできる。細胞外Ca2+結合性部位に結合するリガンドは、予めふさいだNPS R−467の結合部位にさらすことができる。NPS R−467結合部位は細胞外Ca2+結合性部位において結合するリガンドに応答してレセプター活性化を増大させるアロステリック部位のようである。
データは上皮小体細胞Ca2+レセプターが少なくとも2つの明確な部位において有機リガンドを有することを証明する。一方の部位は生理学的なリガンド、細胞外Ca2+、およびある種の有機ポリカチオン、たとえばネオマイシンが結合する。この部位の結合は完全なCa2+レセプターの活性化、[Ca2+]iの増加およびPTH分泌の抑制をもたらす。NPS R−467およびNPS R−568は、予め認識していないCa2+レセプター上の結合部位を規定する。この部位への結合は細胞外Ca2+結合性部位が部分的に支配される場合にのみ生じるかそして/またはCa2+レセプターの完全な活性化をもたらす。いずれかの部位において作用するリガンドはインビボにおいて血清Ca2+レベルを抑制するのに有効である。
上皮小体カルシウム受容体のアロステリックな部位
NPS R−467およびNPS R−568のようなウシ上皮小体細胞カルシウム受容体を活性化するカルシウム様化合物は、細胞外Ca2+の不存在下で、細胞内Ca2+の移動の原因とはならない。むしろ、それらは細胞外Ca2+によるCa2+受容体の感受性を増加し、したがって、細胞外Ca2+についての濃度反応曲線の左へのシフトの原因となる。このために、それらは細胞外Ca2+が働くのと同じ受容体上の部位に働くことはありそうにない。対比して、有機および無機ポリカチオン類は細胞外Ca2+の不存在下、細胞内Ca2+の移動の原因となり、従って、多分細胞外Ca2+と同じ部位で働く。NPS R−568のような化合物は、アロステリックな方法で働き、その活性はある細胞外Ca2+の最小濃度に依存するのであろう。これは、受容体の細胞外Ca2+−結合部位の部分的な占拠がNPS R−568のような化合物が有効であるために必要であることを示唆する。このモデルは実施例20に記載の観察と矛盾がない。
上皮小体Ca2+受容体におけるNPS R−568の活性の機構の他の詳述は、しかしながら、放射能標識(例えば3Hを使用して)NPS R−568の特異的結合を評価することにより更に正確に調査されている。上皮小体細胞Ca2+受容体上のNPS R−568活性を説明できるいくつかの分子的機構がある。一つの機構において(モデル1)、NPS R−568は、占拠されている場合、受容体を機能的に活性化するのに十分でない場所でCa2+受容体と結合できる。活性化は、細胞外Ca2+−結合部位(複数もある)のあるレベルの占有が成し遂げられた場合にのみ起こる。別の機構において(モデル2)、細胞外Ca2+−結合部位の占拠は、NPS R−568のような化合物のための潜在的結合部位を曝露し得る。この潜在的部位のNPS R−568による占拠は、次に細胞外Ca2+部位の親和性および/または結合の効果を増加させる。いずれの機構もNPS R−568のような化合物によるCa2+受容体のアロステリックな活性化の形態を含む。これらのみがNPS R−568のような化合物の上皮小体細胞上Ca2+受容体における効果を説明することが可能な機構ではない。作用の他の機構が下記の結合研究により示唆され得る。
NPS R−568のような化合物の上皮小体細胞Ca2+受容体における働きの機構を更に研究するために、3H−NPS R−568を用いた研究を行うことができる。もとのままの上皮小体細胞または上皮小体細胞から調製した膜への3H−NPS R−568の特異的結合は最初に当分野で既知の技術により研究される。対で、結合の動態パラメーターを細胞外Ca2+濃度の関数として測定する。特にデータのスキャッチャード分析は結合部位の数および3H−NPS R−568に対する受容体部位の見かけの親和性を明らかにするであろう。次いで、これらのパラメーターを測定に使用する緩衝液中の細胞外Ca2+のレベルの変化の関数として求める。もし機構1が正しければ、次に細胞外Ca2+不存在下で特異的結合が著しいレベルでおこるであろう。細胞外Ca2+のレベルの関数としての結合の動態パラメーターの大きな変化は機構2を支持するであろう。上記の他の実施例で述べられている種々の他の無機および有機ポリカチオン類が、細胞外Ca2+と同様の3H−NPS R−568の結合パラメーターの変化の原因になることが予期される。これは、これらのポリカチオンがNPS R−568のような化合物が結合する部位と異なった細胞外Ca2+−結合部位に働くという見解を支持する。
実施例21
NPS467の製造
250mlの丸底フラスコ中に、3′−メトキシ・アセトフェノン10.0g(100ミリモル)および3−フェニル−プロピルアミン13.5g(100ミリモル)を混合し、チタン(IV)イソプロポキシド125ミリモル(35.5g)で処理する。反応混合物を30分間、室温にて窒素雰囲気下で攪はんする。その後、エタノール100ml中ナトリウム・シアノポロヒドリン6.3g(100ミリモル)を2分間にわたり滴下する。反応を室温にて窒素下に、16時間攪拌する。その後、反応混合物をエチルエーテル1.5リットルおよび水0.5リットルを含む2リットルの分離用ろうとへ移す。相を平衡状態にさせ、エーテル相を取り出す。残りの水相をエーテル1リットルづつ4回処理して完全に抽出する。洗液を合し、無水炭酸カリウム上で乾燥し、透明で薄こはく色の油を得る。
この物質のTLC分析(シリカ上、クロロホルム−メタノール−イソプロピルアミン=100:5:1を使用)は、Rf0.65の生成物および、Rf0.99(3′−メトキシ・アセトフェノン)およびRf0.0(3−フェニルプロピルアミン)の痕跡の2つの出発物質を示す。
反応混合物を、シリカ(48×4.6cm)を用いて、クロロホルム−メタノール−イソプロピルアミン(99:1:0.1〜90:10:0.1)の傾斜溶出を用いてクロマトグラフィにかけ、精製したNPS467(13.66g)を得る。この物質を0.1%ジエチルアミン含有ヘキサン−イソプロパノール(99:1)に溶解して、濃度50mg/mlの溶液を得る。キラル分解を、この溶液4ml(200mg、分離達成へ最大)のクロマトグラフィにより、キラルセル(Chiral Cell)OD(25×2cm)を用いて、ヘキサン中0.7%イソプロピルアミンおよび0.07%ジエチルアミンを用い、100ml/分にて、260nmの光学密度をモニターしながら行う。これらの条件下では(物質100mgの注入)、先の溶出異性体(NPS467R)は−26分でカラムから現れはじめ、後の溶出異性体(NPS467S)は−34分で現れはじめる。ベースライン分解はこれらの条件で達成される。各光学異性体(遊離塩基)を対応する塩酸塩へ、遊離塩基3gをエタノール100ml中へ溶解し10モル当量のHCl含有水100mlで処理して、変換させる。この溶液の凍結乾燥により白色の固体を得る。
NPS568
NPS568はウシおよびひと上皮小体細胞中の[Ca2+]iの増加のより有効な原因となるNPS467の構造的類似体である。NPS467のように、NPS568の効果は立体特異的であり、より有効なエナンチオマーはR−異性体である(表6、前掲参照)。NPS R−568は現在上皮小体Ca2+受容体に選択的活性のあるリードカルシウム様化合物である。それは例え大きな有効性と一緒であっても、上記の実施例で述べたNPS R−467と同様に行動する。従って、NPS R−568はウシ上皮小体細胞における[Ca2+]iの増加を立体特異的方法(表6参照、前掲)で誘発する。NPS R−568は細胞外Ca2+の不存在下で[Ca2+]iの増加の誘発をしないが、細胞外Ca2+に対しての反応を強める。NPS R−568は細胞外Ca2+についての濃度反応曲線を左にシフトさせる。
ラットへのNPS R−568の経口投与は、血清Ca2+の濃度を容量依存的に減少させる原因となる(ED50=7mg/kg)。NPS R−568の経口投与により誘発された低カルシウム反応は開始時は迅速であり、血清PTHレベルの減少と平行である。NPS R−568により誘発された低カルシウム反応は前もっての完全な腎摘出によってのみ最小限に影響するだけである。しかしながら、NPS R−568は上皮小体摘出ラットの低カルシウム反応の誘導は起こさない。NPS R−568は、したがって、イン・ビボ上皮小体細胞Ca2+受容体を選択的な標的にし、PTH分泌阻害の原因となる。血清PTHレベルの減少およびその結果である低カルシウム症は上皮小体亢進症の場合における望ましい治療上の効果である。NPS R−568の合成を下記に示す。
実施例22
NPS568の製造
NPS568を、実施例21記載の方法で製造する。ただし、3−フェニルプロピルアミンに代えて、当量の3−(2−クロロフェニル)プロピルアミンを用いる。3′−メトキシ・アセトフェノン、3−(2−クロロフェニル)プロピルアミンおよびチタン(IV)イソプロポキシドの混合物を5時間攪はんし、次いでNaCNBH3/EtOHで処理すると、著しく高い収率をもたらすことが判明した(98%)。
実施例23
経口投与の場合のNPS467が血清イオン化カルシウムを低下
ラット(雄、スプラーグ・ドウリー、250〜300g)は、標準ラット食餌で、実験前に一夜絶食させる。NPS467をトウモロコシ油に懸濁し、栄養補給ニードルを用いて、一回経口用量として投与する。3時間後、血液試料を尾静脈から採取し、イオン化Ca2+レベルを測定する。図71は、経口投与した場合のイオン化Ca2+の血清レベルについての用量依存減少を引き起こすNPS467を示す。
実施例24
BOPCAR1クローニング法1
アフリカツメガエル(ゼノプス・リーヴィス(Xenopus laevis))卵母細胞をウシ上皮小体カルシウム受容体コード化cDNAを同定するために使用した。これらの技術は本明細書には簡潔にしか記載していないが、この完全な詳細な方法は、このセクションに先行する技術を記載したセクションにあり、この技術は他の細胞型Ca2+−受容体の更なる形をクローンするのに使用し得る。ポリ(A+)−に富むRNAは、最初にウシ上皮小体からグアニジウムチオシアネートを用いた抽出、CsClを通した遠心およびオリゴ(dT)セルロースクロマトグラフィーにより調製した。得られたポリ(A+)−に富むRNAの卵母細胞への注入(25−50ng/卵母細胞)は、本明細書で述べたようにCa2+および3価カチオン(1−100μM)Gd3+の細胞外の濃度の上昇に対する感受性をもたらし、2種のカチオンがカルシウム活性化塩素電流を誘発する。このような電流は、水を注入した対照の卵では誘発されなかった。アフリカツメガエルは採取された卵母細胞が:(i)高レベルの成熟(即ちステージV、VI);(ii)A23187のようなCa2+イオノフォアにより活性化されるCl-電流の高活性;(iii)ウシ上皮小体から単離された全ポリ(A)+RNAの25ng/卵母細胞を注入された場合、Gd3+−誘導Cl-電流の高レベルな機能的発現を示すことを基本にして選択する。mRNAは次に予備の連続流アガロースゲル電気泳動(へディガー エム・エー、アナリティカル・バイオケミストリー、159:280−286(1986))を使用してサイズ分画をし、Ca2+−受容体をコードする転写物中にポリ(A+)−RNAに更に富む分画を得る。活性のピーク、例えばこれらの分画由来のmRNAを注入された卵母細胞は、4−5.5kbのサイズの範囲から得られるGd3+−活性化Cl-電流の発現の増強を示す。このRNAは、完全な長さの転写物中に豊富なプラスミドpSPORT1中のサイズ−選択、指向性cDNAライブラリーの製造に使用された。次いで、センス相補的RNA(cRNA)を、このライブラリー由来の別々の350−500のクローンから集めたDNA挿入物から合成し、卵母細胞に注入する。Gd3+−活性化Cl-電流は350コロニーを含む単一フィルター由来のRNAの注入後観察された。クローンの系列的減少プールからのCRNAの製造および注入は、cRNAの卵母細胞への注入後、非常に促進されたCa2+−受容体活性を示す5.3kbのcDNA挿入物を有する単一クローン(BoPCaR 1)を分離するに至った。BoPCaR 1cRNAを含むプラスミド(プラスミド、図72;制限地図、図73;および部分的ヌクレオチド配列、図74参照)はATCCに受託番号ATCC75416で寄託されている。
BoPCaR 1cDNAはアフリカツメガエル卵母細胞におけるネオマイシン誘発Cl-チャンネル活性を示すことが知られているサイズ−分画されたRNAのサイズの範囲からはずれている。これは異なったイソ形態または多重遺伝子が他の多くのCa2+受容体遺伝子群を隠している可能性と矛盾しない。
いくつかの薬理学的および生化学的基準が、真正なウシ上皮小体Ca2+−受容体をコード化しているクローンの同定に使用された。水−注入卵母細胞ではない、このクローン化受容体を発現する卵母細胞は細胞外Ca2+(1.5−5mM)またはGd3+(20−600μM)の増加に、ポリ(A+)−注入卵母細胞で観察されるものの数倍大きいCl-の増加(少なくとも1.8ミクロアンペア)を伴って反応した。これらの反応は、BoPCaR 1cDNAから調製したcRNAを卵に注射した後一(1)から四(4)日にわたって著しく増加する。更に、この反応を誘発する2種のカチオンの濃度の範囲は、上皮小体細胞上におけるCa2+の効果が非常に似ていることが知られており、Ca2+およびGd3+によって生じさせられるCl-電流の変化と実質的に同一の卵母細胞におけるCl-電流の変化を生じさせ、これらはこの抗生物質がインビトロ上皮小体機能を調節するのと同じ濃度範囲にわたって生じる、ネオマイシンの、ウシ上皮小体細胞インビトロ上に作用することがすでに示されている濃度の範囲(20−100μM)と非常に似ている。最後に、クローンから製造されたイン・ビトロのRNAの翻訳物はポリアクリルアミドゲル上では分子量約100kdの単一タンパク質となり、この合成はイヌ膵臓ミクロソームの添加により、見かけ上の分子量の10−15%の増加を付随して促進された。後者は、クローン化受容体は必須の膜タンパク質受容体と予期される膜と強力に相互作用し、天然の形においてグリコシル化されていることを示す。レクチンコンカナバリンAの研究は、Ca2+受容体が糖タンパク質に似ていることを示す。従って、卵母細胞に高レベルで発現されるクローン化受容体の薬理学的特性および今日まで行われている生化学的研究は、そのウシ上皮小体Ca2+動態(卵母細胞中のCa2+活性化Cl-電流の変化により例示してあるような)の本質と全く矛盾しない。
診断における使用
NPS R−568または他のカルシウム受容体で活性な化合物は診断用の手段として使用できる。特にこのような化合物の薬理学的製剤は診断用の手段として有用である。一つの例として、NPS R−568のような上皮小体カルシウム様化合物を含む薬理学的製剤は精神的抑欝の症状を示す高カルシウム血症の患者に経口または他の投与経路で投与できる。もしこれらの症状が、上皮小体亢進症などの潜在的高上皮小体状態から生じた場合、NPS R−568または同様に働く化合物の投与はこれらの症状の緩和をするであろう。もし症状が緩和されない場合、精神抑制は上皮小体亢進症以外のある病理学的状態によるものである。従って、上皮小体細胞カルシウム様化合物は精神的抑欝の区別化診断に使用できる。
上皮小体亢進症および他の疾病に一般的な症状および兆候はまた上記の方法を使用して区別的に診断ができる。このような共通の兆候および症状は、高血圧、筋肉虚弱および一般的な不快感を含むが、これに限定されない。上皮小体細胞Ca2+受容体カルシウム様化合物での処置後のこれらの症状の緩和は、問題が潜在的上皮小体亢進症からもたらされることを示すものである。
他の例として、C−細胞Ca2+受容体においてアンタゴニスト(カルシウム拮抗抗的)として働く化合物は、骨髄の甲状腺癌の診断に上記と同様に投与できる。この場合、C−細胞Ca2+受容体カルシウム拮抗化合物の投与は、放射免疫測定により容易に測定できるカルシトニンの血清レベルを低下させるであろう。骨髄の甲状腺癌に関連する下痢のようなある症状は、それらがカルシウム拮抗化合物の投与後、緩和または減少するか否かを観察し診断し得る。
3番目の例として、糸球体近接細胞Ca2+受容体においてカルシウム拮抗的に働く化合物は高血圧の相違診断に使用できる。この場合、糸球体近接細胞Ca2+受容体カルシウム様化合物の投与は上記のように投与される。もし高血圧が別の病理学的状態よりむしろ大部分または完全にレニンのレベルの増加によるものである場合、正常レベルまでの血圧の低下が起こる。
他の例として、破骨細胞Ca2+受容体に特異的にカルシウム様に働く化合物は骨粗鬆症を形成する高−または低−レベルのターンオーバーの区別化診断に使用できる。この場合、このような化合物は好適な薬理学的調合剤で投与でき、血清アルカリホスファターゼ、オステオカルシン(osteocalcin)、ピリジノリンおよび/またはデオキシピリジノリン架橋および/または骨吸収および/または形成の他の予報的マーカーのレベルを当分野で既知の方法により測定する。これらの一つまたはそれ以上のパラメーターの非常な減少は高ターンオーバー骨粗鬆症を予言し、一方僅かな減少または減少がないことは低−ターンオーバー骨粗鬆症を予言する。このような情報は好適な処置に必要である。抗吸収剤は低−ターンオーバー骨粗鬆症には好適な単独治療ではない。
これらの例は完全ではないが、特異的Ca2+受容体が薬理学的製剤を対象とし、身体的機能および/または化学的成分についてのこのような製剤の観察された効果は診断に用い得ることの説明として役立つ。一般に、上記の種々の細胞のCa2+受容体で働くカルシウム様およびカルシウム拮抗化合物は個々の細胞型に関連する種々の疾病の診断に使用できる。これらの疾病は骨および鉱物関連疾患(コエら、ディスオーダーズ・オブ・ボーン・アンド・ミネラル・メタボリズム、ラベン出版、1990に記載)、腎臓病、内分泌疾患、癌、心臓血管系疾患および妊娠に関連する疾患を含むが、これに限定されない。このような分子が治療的に有効なひとの疾病または疾患は下記の通りである:(1)カルシウム様物質は異常皮膚細胞増殖を減少させることにより乾癬を改善することが予期される。(2)Ca2+がMTALおよび皮質回収細胞上のバソプレシッシン効果を阻害するため、カルシウム様物質は、不適当なバソプレッシン(ADH)分泌症候群のようなバソプレッシン過剰状態における水分保持を減少する事が予期される。逆に、ADH欠乏状態において使用されるカルシウム受容体アンタゴニストは、部分的中央糖尿病インシピディス内のように存在する任意のADHの活性を強化することが予期される。(3)カルシウム様物質は(a)レニン分泌を抑制する、(b)PTHrP(PTH−関連ペプチド)のような血管平滑筋に対する血管拡張薬の製造を刺激することにより、高血圧の処置に使用し得る。(4)カルシウム様物質は血小板凝集能を増加することが予期され、それは血小板数が少ない場合、有用である。逆に、カルシウム拮抗物質は、それらが高凝集能である場合血小板機能を阻害する。(5)カルシウムは結腸および乳房細胞の分化を促進する。カルシウム様物質は結腸または乳癌の危険性を減少する。(6)カルシウムはMTALにおいて尿カルシウム排泄を促進する。カルシウム様物質は高カルシウム血症疾患の治療において有用な低カルシウム活性をもつことが予期される。カルシウム様物質の破骨細胞における阻害効果および低カルシウムペプチドカルシトニン分泌の刺激により高カルシウム血症およびその症状の治療に有用であることが予期される。カルシウム様物質はまたカルシウム受容体を活性化することにより低カルシウム症状を改善する。逆に、カルシウム拮抗物質は尿カルシウム排泄を減少させることが予期され、腎臓結石の処置に有用である。加えて、カルシウムは近位尿細管における1,25−ジヒドロキシビタミンDの合成を抑制し、このビタミンD代謝物はしばしば腎臓結石患者で過剰蓄積され、高カルシウム尿症の一因となる。1,25−ジヒドロキシビタミンD形成のカルシウム様物質による抑制は腎臓カルシウム結石疾患の処置に有用であることが予期される。(7)内因性アミン類はカルシウム様または細胞溶解性活性により尿毒症患者の症状を再現することができる。カルシウム様および/またはカルシウム拮抗剤はこれらの症状を改善することが予期される。(8)アミノグリコシド系抗生物質のある腎臓毒性はこれらの薬と腎臓カルシウム受容体の相互作用が媒介し得る。カルシウム受容体をもって、クラスの薬を設計した場合の最小の腎臓毒性のスクリーニングを容易に行うことが可能となることが予期される。加えて、腎臓カルシウム受容体アンタゴニストは、この機構に関連する場合、この腎臓毒性の予防または処置となる。(9)カルシウム関連疾患の遺伝的因子のいくつか、例えば骨粗鬆症、腎臓結石および高血圧は、受容体の一定の形の遺伝的問題に関係があることが予期されている。これらは現在研究されており、受容体に基づく試薬を用いた遺伝子スクリーニング/試験が行われ得る。ひと疾患、家族特有の低カルシウム尿症様高カルシウム血症はカルシウム受容体欠陥のせいであり得る。最終的な原発性上皮小体亢進症との診断的分離は受容体に基づく技術を使用して行うことができる。(10)カルシウム受容体は胎盤に存在し、胎盤機能の疾患に影響を与え、成長している胎児に栄養を輸送していることが予想される。
他の具体例は以下の請求の範囲に含まれる。