JP2005342776A - 高強度部品の製造方法および高強度部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼板をAc3以上融点以下の温度まで加熱した後、該鋼板のフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト変態が生じる温度より高い温度で成形を開始し、前記鋼板の成形後に金型中にて冷却して焼入れを行って高強度部品を製造する際に、上金型と下金型の同位置に空隙を設け、該空隙が体積率30%以上の気体と難燃性材料が充填されている金型を用いることを特徴とする高強度部品の製造方法およびその方法で製造した高強度部品。
【選択図】図1
Description
また、特許文献2(特開2000−87183号公報)では、プレス成形精度を向上させる目的で温間プレス時での降伏強度を低く、常温での降伏強度を高くする高強度鋼板が提案されている。 しかしながら、これらの技術では得られる強度に限度がある可能性がある。より高強度を得る目的で、成形後に高温のオーステナイト単相域に加熱し、その後の冷却過程で硬質の相に変態させる技術が特許文献3(特開2002−282951号公報)に開示されている。この方法は、金型間のクリアランスを制限し、その間隙に冷媒を導入することで焼き入れを行い高強度でかつ形状凍結性に優れた部品を得ることができるものである。
きるとされている。しかし、断熱材をインサートする方法では成形中の鋼板に大きな面圧がかかるため、熱伝達係数が大きくなり、鋼板が十分強度が低下するまで冷却速度が低下しない課題がある。また、空隙を設ける方法では、鋼板表面からは大気に熱が伝達されるが、空隙中で大気が対流することにより、冷却速度の低下が不十分となり鋼板強度の低下が不十分である場合がある。また、鋼板の一部を加熱する方法については、加熱装置が必要となり、さらに加熱装置を金型に組み込むために型構造が複雑となって、コスト的に課題がある。
本発明者らは、上記課題を解決するために基礎的な検討を実施した。その結果、低熱伝導率の材料を型材として用いても、面圧が大きくかかる状態では冷却速度の低下が不十分であることがわかった。そこで、強度を低下したい部位には、面圧が付与されないように金型に空隙を設けることとした。さらに、空隙中の大気の対流を抑制するための難燃性の材料を空隙中に充填することとした。難燃性材料を用いた理由としては、鋼板の温度が高いために、対流を抑制するために充填した材料が燃焼する可能性があるからである。この方法を用いると、後加工のために強度を低下させたい部位の冷却速度を低下させることが可能となる。
すなわち、本発明の要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(2)前記空隙に充填された気体が空気であることを特徴とする(1)に記載の高強度部品の製造方法。
(3)前記難燃性材料が繊維で形成される綿状の形態をなしているものである(1)または(2)に記載の高強度部品の製造方法。
(4)(1)乃至(3)に記載の方法にて製造されたことを特徴とする高強度部品。
(5)(1)乃至(3)に記載の方法にて製造された成形品に剪断加工が施されたことを特徴とする高強度部品。
鋼板の加熱温度Ac3以上、融点以下としたのは成形後に焼入れ強化するために鋼板の組織をオーステナイトにしておくためである。また加熱温度が融点以上であるとプレス成形が不可能であるためである。
成形開始温度をフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト変態が生じる温度より高い温度としたのはその温度以下で成形した場合には成形後の硬度が不十分であるためである。
空隙が体積率30%以上の気体と難燃性材料が充填された金型としたのは、気体の体積率が30%以下であると鋼板の面圧が生じ、冷却速度が低下しないためである。また難燃性材料としたのは、成形する鋼板温度が高温であるために、難燃性材料でない場合は燃焼する可能性があるためである。この難燃性材料とは、1100℃で燃えない材料をいう。この難燃性材料としては具体的にはセラミックファイバー、グラスファイバー、スチールウールなどが挙げられるが、ここに挙げた材料に限定するものではない。
請求項2において、空隙にある気体が空気であるとしたのは、気体を空気とすることが他の気体を使用するよりもコスト的に有利であるためである。
請求項3において、難燃性材料が繊維で形成される線状の形態をとるとしたのは、このような形態の場合、気体の対流が抑制されやすいためである。
金型の温度については特に限定しないが、加工の間隔が短く、金型の温度が上昇してマルテンサイト変態がせず、部品の強度が確保できない場合があるため、金型温度を300℃以下、望ましくは200℃以下した方が良い。その冷却の方法については特に規定しないが、金型中に水冷配管する方法、金型の体積を確保し熱容量を大きくする方法、金型表面に冷媒により冷却する方法などを取ってもよい。
部品の強度が1000MPa以上必要な場合には、質量%でC:0.1〜0.55%、Mn:0.2%〜 3%以下の化学成分を含有する鋼板を用いるのが望ましい。
Cは冷却後の組織をマルテンサイトとして材質を確保するために添加する元素であり、強度1000MPa以上を確保するためには0.1%以上添加することが望ましい。ところが、添加量が多すぎると、衝撃変形時の強度確保が困難となるため、その上限を0.55%とすることが望ましい。
Mnは強度および焼入れ性を向上させる元素であり、0.2%未満では焼入れ時の強度を十分に得られず、また、3%を超えて添加しても効果が飽和するため、Mnは0.2〜3%の範囲が望ましい。
Siは固溶強化型の合金元素であるが、1%を超えると、表面スケールの問題が生じる。また、鋼板表面にメッキ処理を行う場合は、Siの添加量が多いとメッキ性が劣化するため、上限を0.5%とすることが好ましい。
Alは溶鋼の脱酸材として使われる必要な元素であり、またNを固定する元素でもあり、その量は結晶粒径や機械的性質に影響を及ぼす。このような効果を有するためには0.005%以上の含有量が必要であるが、0.1%を超えると非金属介在物が多くなり製品に表面疵が発生しやすくなる。このため、Alは0.005〜0.1%の範囲が望ましい。
Sは鋼中の非金属介在物に影響し、加工性を劣化させるとともに、靭性劣化、異方性および再熱割れ感受性の増大の原因となる。このため、Sは0.02%以下が望ましい。なお、さらに好ましくは、0.01%以下である。また、Sを0.005%以下に規制することにより、衝撃特性が飛躍的に向上する。
Pは溶接割れ性および靭性に悪影響を及ぼす元素であるため、Pは0.03%以下が望ましい。なお、好ましくは、0.02%以下である。また、更に好ましくは0.015%以下である。
Bはプレス成形中あるいはプレス成形後の冷却での焼入れ性を向上させるために添加するが、この効果を発揮させるためには0.0002%以上の添加が必要である。しかしながら、この添加量がむやみに増加すると熱間での割れの懸念があることや、その効果が飽和するためその上限は0.0050%が望ましい。
スクラップから混入すると考えられるNi,Cu,Snなどの元素が含有してもよい。更に介在物の形状制御の観点からCa,Mg,Y,As,Sb,REMを添加してもよい。さらに強度を向上する目的でTi,Nb,Zr,Mo,Vを添加してもよいが、これらの元素がむやみに増加するとこれらの元素と結合していないC量が減少し冷却後に十分な強度が得られなくなる。
Oについても特に規制しないが、過度の添加は靭性に悪影響を及ぼす酸化物の生成の原因となるとともに、疲労破壊の起点となる酸化物を生成するため、0.015%以下の含有が望ましい。
その他、不可避的に含まれる不純物が含有しても特に問題は生じない。
以上の成分の鋼板にアルミめっき、アルミ・亜鉛めっき、亜鉛めっきを施しても良い。その製造方法は酸洗、冷間圧延は常法でよく、その後アルミめっき工程あるいはアルミ−亜鉛めっき工程、亜鉛めっきについても常法で問題ない。つまり、アルミめっきであれば浴中Si濃度は5〜12%が適しており、アルミ−亜鉛めっきでは浴中Zn濃度は40〜50%が適している。また、アルミめっき層中にMgやZnが混在しても、アルミ−亜鉛めっき層中にMgが混在しても特に問題なく同様の特性の鋼板を製造することができる。
金型形状の断面を図1に、パンチを上方から見た形状を図2に、ダイスを下方から見た形状を図3に示す。
図1乃至図3において、1はダイス、2はパンチ、3は空隙、またはセラミック、または空気を含んだセラミックファイバーが充填された部位を示す。
金型はパンチ形状に倣い、板厚1.4mmのクリアランスにてダイスの形状と決定した。金型のパンチ底には、空冷部、空気を含んだセラミックファイバーが充填された部位、セラミックをインサートした部位を設けた。ブランクサイズを1.4mm厚×300×500とした。成形条件としては、パンチ速度10mm/s、加圧力200トン、下死点での保持時間を5秒とした。成形品の模式図を図4に示す。
そして、その際の成形荷重を用いて、後加工の容易性を評価した。評価基準は焼き入れ部を同様のピアス加工をした際の成形荷重とし、焼き入れ部の成形荷重の75%以下の場合を良好とした。
表3に用いた試験材の鋼種とめっき種と成形荷重を示す。表3中の鋼板の緩冷却方法の凡例を表4に示す。また成形荷重の凡例を表5に示す。また表3中にセラミックファイバー中の空気の体積率も示す。
実験番号5、6、14、15、20、21は比較例であり、鋼板の緩冷却方法が発明の範囲外であるため、冷却速度が低下せず、ピアス加工部の強度が高かったために、成形荷重が十分低下しなかった。他の実験番号は本発明の範囲内の本発明例であり、鋼板の緩冷却方法が本発明の範囲内であるため、その部位の冷却速度が低下し、ピアス加工部の強度が低下して、ピアス加工時の成形荷重が低下した。
2 パンチ
3 空隙、またはセラミック、または空気を含んだセラミックファイバーが充填された部位
Claims (5)
- 鋼板をAc3以上融点以下の温度まで加熱した後、該鋼板のフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト変態が生じる温度より高い温度で成形を開始し、前記鋼板の成形後に金型中にて冷却して焼入れを行って高強度部品を製造する際に、上金型と下金型の同位置に空隙を設け、該空隙が体積率30%以上の気体と難燃性材料が充填されている金型を用いることを特徴とする高強度部品の製造方法。
- 前記空隙に充填された気体が空気であることを特徴とする請求項1に記載の高強度部品の製造方法。
- 前記難燃性材料が繊維で形成される綿状の形態をなしているものである請求項1または請求項2に記載の高強度部品の製造方法。
- 請求項1乃至請求項3に記載の方法にて製造されたことを特徴とする高強度部品。
- 請求項1乃至請求項3に記載の方法にて製造された成形品に剪断加工が施されたことを特徴とする高強度部品。
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