以下に、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、この発明の実施形態に係る画像形成装置の一部の構成を示す断面図である。この実施形態に係る画像形成装置Aは、静電潜像を保持する感光体ドラム1、静電潜像にトナーを供給する現像器8等を備える。感光体ドラム1の周囲には、感光体ドラム1を所定の電位に帯電させる帯電ローラ2、および感光体ドラム1上に形成されたトナー像を記録紙14に転写する転写ローラ13が配設される。また、図示していないが画像形成装置Aはさらに、帯電ローラ2によって所定電位に帯電された感光体ドラム1上に信号光3を照射して静電潜像を形成する光走査ユニット、記録紙14に転写されたトナー像をその記録紙14に定着させる定着器、感光体ドラム1と転写ローラ13とが対向する転写部へ供給すべき記録紙14を収容する記録紙供給部等を備える。
感光体ドラム1は、基材としてのアルミ素管と、アルミ素管上に形成される有機光感光層と、を含む。アルミ素管は、GND電位に接続される。感光体ドラム1の直径は30mmであり、感光体ドラム1は時計方向に周速度100mm/sで回転する。有機光感光層の材料としては、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコン等が用いられる。アルミ素管上の有機光感光層は、電荷発生層および電荷輸送層を積層して形成される。有機光感光層の層厚は20μmである。なお、有機光感光層の層構成は上述の構成に限定されず、有機光感光層の下層に下地層、表面に表面層を設けてもよい。
帯電ローラ2には所定の電圧が印加され、帯電ローラ2は、感光体ドラム1の表面を負極性の均一な電位に帯電させる。帯電ローラ2として例えば、スコロトロン等のコロナ帯電器を用いてもよい。
この実施形態で使用されるトナー4は、結着樹脂に着色剤および離型剤を分散して構成されており、体積平均粒径が6μm、軟化点が100℃、顔料の含有率が15%、離型剤としてのワックスの含有率が12%の、負帯電性の絶縁性非磁性一成分トナーである。このトナー4において所定の画像濃度(X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4)を得るために必要な、単位面積当たりのトナー量は3.6g/cm2であり、トナ ー密度は1.0×103kg/m3である。
この実施形態のトナー4に使用可能な結着樹脂は、一般の電子写真技術において使用されているトナー用樹脂であれば特に制限はない。具体的には例えば、結着樹脂として、ポリスチレン、スチレンおよびその置換体の単重合体、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン変性レジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等を、単独または2種以上の組合せで使用することができる。特にフルカラートナー用の結着樹脂としては、熱特性制御などから軟化点が95℃以上120℃以下のポリエステル樹脂が好ましい。
また、この実施形態のトナー4に使用可能な着色剤は、一般の電子写真技術で使用されているトナー用着色剤であれば特に制限はない。具体的には例えば、着色剤として、従来からモノクロ用として用いられているカーボンブラックやニグロシン染料などの他に、アゾ系染料、アントラキノン系染料、インジゴ染料、フタロシアニン系染料およびキサンテン系染料などの染料、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ぺリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料および金属錯体系顔料などの有機系顔料、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロムおよびベルリンブルーなどの無機系顔料、または、アルミニウム粉などの金属粉等、の公知の染料や顔料を使用することができる。
この実施形態のトナー4に使用可能な離型剤としてのワックスは、特に限定されるものではなく、ワックスとして例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス等を使用することができる。
なお、この実施形態で使用されるトナー4中には、必要に応じて、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤、導電剤が適宜選択して添加される。
上述のようなトナー4は、現像器8のトナーホッパ5に収容される。現像器8は、感光体ドラム1に対向する現像ローラ7、トナーホッパ5内に設けられるトナーパドル11およびトナー供給ローラ6等を備える。トナー供給ローラ6は、芯材と、芯材の周囲に形成されるウレタンスポンジとを含み、反時計方向に回転して現像ローラ7の表面にトナー4を供給する。現像ローラ7は、表面に担持するトナー層を介して感光体ドラム1に接触している。図2に示すように、現像ローラ7および感光体ドラム1は、現像ローラ7と感光体ドラム1とがトナー層を介して接触する現像ニップ部で、それぞれの表面が互いに同じ方向に移動するように回転する。この実施形態では現像ローラ7は、反時計方向に回転する。現像ローラ7の周速度は、45mm/sである。
現像ローラ7は例えば、ステンレス等の金属材料で形成される外径12mmの芯金と、この芯金の外側に被覆される導電性および弾性を有する厚さ3mmのウレタンゴムと、を含む。現像ローラ7には、ウレタンゴムの他、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等に、導電性を付与するためにカーボンブラック等の導電剤を添加したものが用いられる。現像ローラ7の芯金の外側に形成される被覆層の材料は、ゴム材料に限定されず、弾性および導電性を有する材料であれば、他の材料であってもよい。現像ローラ7の被覆層の導電性は、体積抵抗率で107Ω・cm以下であればよい。
現像ローラ7のトナー層担持面の長さは330mmで、感光体ドラム1と現像ローラ7との圧接力は5Nである。感光体ドラム1と現像ローラ7との圧接力は、画像形成時の感光体ドラム1と現像ローラ7との摩擦力で感光体ドラム1と現像ローラ7とが離間せず、所定の現像ニップを安定して形成するように、3N〜15Nの範囲で設定可能である。現像ローラ7は、感光体ドラム1への圧接力を、トナーホッパ5を感光体ドラム1側へ押圧するバネ9によって付与される。現像ローラ7と感光体ドラム1とが圧接する現像ニップ部での、感光体ドラム1の食い込みによる現像ローラ7の変形量は、バネ9による押圧力と現像ローラ7の変形による反作用力とで決定される。
現像ローラ7に用いられる弾性を有する材料の硬度は、現像ローラにされた状態でAskerC硬度で20度以上80度以下であればよい。硬度が20度より低い場合は、現像ローラ7の柔軟性が過大となり、後述する層規制ブレード10の押圧による圧接痕が顕著にあらわれるようになり、画像上に筋上の濃度ムラが発生する。硬度が80度より高い場合は、感光体ドラム1との圧接部(現像ニップ部)の圧力が過大となり、感光体ドラム1の摩耗、現像ローラ7の摩耗、トナー4の劣化が引き起こされ、各部材が所定の寿命を得ることができなくなる。20度以上80度以下であれば、濃度ムラ、感光体ドラム1および現像ローラ7の摩耗、およびトナー4の劣化を抑制して、長期間にわたって高品位な画像を形成することができる。
また、現像ローラ7の表面には、現像ローラ7によるトナー4の搬送量を所定の値にするために、Ra(中心線平均粗さ)で0.5μmの凹凸が形成されており、現像ローラ7の芯金には後述の現像電圧が供給されている。
トナー供給ローラ6は、現像ローラ7と同様の材料で形成されるが、弾性をさらに大きくするために発泡された素材を用いて形成される。トナー供給ローラ6には、トナー4を現像ローラ7側へ移動させる方向に、現像ローラ7との電位差が100Vとなるような供給電圧が印加される。トナー供給ローラ6の周速度は、現像ローラ7と同じく45mm/sである。
現像ローラ7の周囲であって現像ローラ7の現像ニップ部より現像ローラ7の回転方向の上流側に、層規制ブレード10が配置される。層規制ブレード10はステンレス製で、層規制ブレード10の厚さは100μmである。層規制ブレード10は、先端から3mmの部分を曲げ半径0.5mmで略直角に曲げて形成された曲げエッジ部を有し、自由端長を9mmに設定される。
図3は、現像ローラ上のトナー層が規制されるトナー層規制部の拡大図である。層規制ブレード10は、曲げエッジ部を現像ローラ7の表面に押圧され、現像ローラ7上のトナー層を規制するとともに摩擦帯電させる。層規制ブレード10が現像ローラ7に圧接している部分をトナー層規制部と呼ぶ。層規制ブレード10の押圧条件および形状、ならびに現像ローラ7の表面粗さによって、層規制されたトナー層の搬送量が決定される。
トナーパドル11は厚さ200μmのPETシートからなる。トナーパドル11は、時計方向に回転して、トナーホッパ5内のトナー4をトナー供給ローラ6へ供給する。トナー供給ローラ6は現像ローラ7に接触して、トナーホッパ5内のトナー4を現像ローラ7へ供給する。
現像ニップ部より現像ローラ7の回転方向の下流側であって、トナーホッパ5の感光体ドラム1に対向する開口部と現像ローラ7との間隙部に、回収シール12が設けられる。回収シール12は、厚さが40μmで自由端長が6mmのシート状のウレタンゴムからなり、現像ローラ7と同等の導電性を有し、現像ローラ7と電気的に導通している。回収シール12は、現像に使用されなかった現像ローラ7上のトナー4をトナーホッパ5内に回収するとともに、トナーホッパ5内のトナー4の流出を防止する。また、回収シール12の導電性によって、現像ローラ7上のトナー層の電荷が逃がされ、トナー層が過度に帯電することが防止される。
次に、上述のように構成された画像形成装置Aの動作について説明する。感光体ドラム1が、帯電ローラ2によって−600Vに均一に帯電され、さらに信号光3によって露光されることで、感光体ドラム1上に静電潜像が形成される。感光体ドラム1の露光電位は例えば−70Vである。
静電潜像が形成された感光体ドラム1の表面に、トナー4を担持した現像ローラ7が接触する。現像ローラ7には現像電位として−240Vの直流電圧が印加されており、感光体ドラム1の表面にトナー4を供給することで感光体ドラム1上の静電潜像が現像され、感光体ドラム1上に静電潜像に対応したトナー像が形成される。ここで、感光体ドラム1の表面のうち静電潜像が保持された部分を画像部、感光体ドラム1の表面のうち静電潜像が保持されていない部分を非画像部、と呼ぶことにする。画像形成装置Aでは、感光体ドラム1の非画像部の表面電位をV0、感光体ドラム1の画像部の表面電位をVL、現像ローラ7に印加される現像電圧をVbとするとき、[数1]に示す関係を満たすように、感光体ドラム1の画像部および非画像部が帯電し、現像ローラ7が電圧を印加される。
感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、転写ローラ13に印加された電圧によって記録紙14に転写される。記録紙14に転写されたトナー像は、図示しない定着器で加熱および加圧されることで記録紙14上に定着され、これによって記録紙14上に画像が形成される。記録紙14に転写されずに感光体ドラム1上に残留したトナーは、図示しないクリーナによって除去される。そして、感光体ドラム1は帯電ローラ2によって再び帯電され、感光体ドラム1上に静電潜像が形成され、静電潜像が現像されてトナー像が形成され、トナー像が記録紙14に転写され定着されるというようにして、繰り返し画像が形成される。
静電潜像の現像後に現像ローラ7上の残留したトナーは、回収シール12を通過してトナーホッパ5へ戻される。現像ローラ7上のトナーは、回収シール12を通過後、現像ローラ7とトナー供給ローラ6とが摺擦しながら回転することによって初期化されるとともに、トナー供給ローラ6から現像ローラ7へ新たにトナー4が供給される。
ここで、画像形成時に現像ローラ7上に形成されるトナー層について詳しく説明する。
まず、図1において、トナーホッパ5内のトナー4はトナー供給ローラ6の回転によって現像ローラ7へ供給される。現像ローラ7上のトナー4のうち、余分なトナー4は層規制ブレード10によって掻き取られ、必要量のトナー4が層規制ブレード10を通過して現像ローラ7上に所定の厚さのトナー層を形成する。この実施形態では、トナー層の単位面積当たりの質量は9g/m2であり、このときのトナー層厚tdは36μmである。こ の場合の質量は、使用しているトナー4で所定の画像濃度を得るための単位面積当たりの質量3.6g/m2よりも多い。トナー層の充填トナー層厚tdは、上述の単位面積当た りの質量をトナーの密度で除算することで得られる。したがって、上述の場合の充填トナー層厚tdは、[数2]のようになる。
従って、このトナー層の充填率は25%である。図3に示すように、層規制されたトナー層には、微視的には不均一な凹凸があり、トナー層中には隙間がある。
なお、現像ローラ7上のトナー層厚は、トナー層のある状態とトナー層を除去した状態の差をレーザーマイクロメーターで測定した値である。
ここで、トナーの体積平均粒径をD(この実施形態では6μm)、トナー層の充填トナー層厚をtd(この実施形態では9μm)、感光体ドラム1によるトナーの搬送速度(感光体ドラム1の周速度)をvp(この実施形態では100mm/s)、現像ローラ7によるトナーの搬送速度(現像ローラ7の周速度)をvt(この実施形態では45mm/s)とするとき、[数3]の関係が成立する。
現像ローラ7上のトナー4の搬送量は9g/m2であり、vt=0.45×vpなので 、現像ローラ7上のトナー4が全て現像に使用されるとすると、感光体ドラム1上に供給されたトナー層の単位面積当たりの質量は9×0.45≒約4g/m2となる。これは、 必要な濃度を得るために十分なトナー量である。
感光体ドラム1上に供給されたトナー層の単位面積当たりの質量が過多である場合は、現像時や転写時にトナー4の飛び散りが生じて画像品位を低下させてしまう。この実施形態では、必要な画像濃度を得るためのトナー量は3.6g/m2である。この感光体ドラム1上でのトナー層に ついて充填トナー層厚tpを算出すると、3.6μmとなるので、tp=0.6×Dが成立する。トナー4の仕様にもよるが、概ね、感光体ドラム1上での充填トナー層厚tpが0.6以上1.0以下の範囲内である場合に、高品位な画像が得られるとともに、現像量の過多によるトナー4の飛び散り等を防止できる。
このように、感光体ドラム1上へのトナー4の供給量は、充填トナー層厚tdとトナー4の体積平均粒径Dとの比と、現像ローラ7の周速度vtと感光体ドラム1の周速度vpとの比と、の積(td/D)×(vt/vp)で略決定される。この関係式(td/D)×(vt/vp)で表される値は、0.6以上1.0以下であれば適正であり、この場合に十分な画像濃度と解像度とが得られる。この実施形態では、(td/D)×(vt/vp)=0.675であるので、十分な画像濃度と解像度とが得られる。
また、この実施形態において、トナー層規制部で規制された後に現像ローラ7によって搬送されるトナー層の単位面積当たりの質量は、必要な濃度を得るために現像ニップ部で必要とされる単位面積当たりのトナー量より多いが、この画像形成装置Aでは、静電潜像を現像する現像ローラ7の周速度が感光体ドラム1の周速度より遅いので、所定の濃度を得るためのトナー量として適正である。したがって、画像形成装置Aは、適正な画像濃度を確保でき、トナー4の飛び散りを防止することができる。
図4は、画像形成装置Aに関する実験結果を示す図である。「濃度」の欄には、画像形成動作の初期に所定の濃度(X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4)を得られた場合に「○」を記し、上述の反射濃度測定値が1.4以下であった場合に「△」を記した。「飛び散り(解像度)」の欄には、1200dpiの1ドットラインペアの顕微鏡観察時にライン間に非画像部を認識できた場合に「○」を記し、飛び散ったトナーでライン間が薄くつながっている状態が認識された場合は「△」を記した。また、「カブリ」の欄には、画像が形成された記録紙14の非画像部のX−Rite社製310による反射濃度測定値が0.2未満であった場合に「○」を記し、0.2以上であった場合に「×」を記した。「劣化」の欄には、現像器を10時間空転させた後の画像濃度が1.4以上であった場合に「○」を記し、1.4未満であった場合に「△」を記した。さらに、「感光体磨耗」の欄には、感光体ドラム1の磨耗筋を記録紙14の画像上に目視で判別不可能な場合に「○」を記し、目視で判別可能な場合に「△」を記し、目視で顕著に判別可能な場合に「×」を記した。なお、各欄の「○」「△」「×」の基準については、後述の図5および図11においても同様である。
図4(a)に示すように、画像形成装置Aにおいて、(td/D)×(vt/vp)の値が、0.6以上1.0以下である場合に、適正な濃度かつ高解像度の高品位な画像を形成できるという実験結果を得た。
また、現像ローラ7と感光体ドラム1との周速比(vt/vp)が適度に高いので、現像ニップ部において感光体ドラム1上のトナーへの摺擦作用が得られ、感光体ドラム1上の非画像部に付着するトナー4を除去する作用も十分に得られる。このため、濃度が十分かつ均一で、カブリが無く、細線をも鮮明に表現できるほど解像度に優れた高品位な画像を形成することができる。
さらに、現像ローラ7の周速度vtが大きいほど、単位時間当たりに現像ニップ部へ搬送されるトナー量が多くなるので、感光体ドラム1上に供給されるトナー量を適正にするために、現像ローラ7上の充填トナー層厚tdを低く設定する必要がある。図4(b)および図4(c)に示すように、実験によれば、感光体ドラム1と現像ローラ7との周速比(vt/vp)が0.5より大きい場合はカブリが発生し、現像ローラ7上に充填トナー層厚tdが0.8×Dより小さいトナー層を担持させる必要があった。また、現像ローラ7と感光体ドラム1との周速比(Vt/Vp)が0.25より小さい場合は感光体ドラム1の磨耗による筋が発生し、所定濃度を得るために、現像ローラ7上に充填トナー層厚tdが3.0×Dより大きいトナー層を担持させる必要があった。
しかし、現像ローラ7上の充填トナー層厚tdが3.0×Dより大きくなると、現像ニップ部内で感光体ドラム1との摺擦によって、トナーが搬送方向の現像ニップ部の下流側へ掻き出され、現像ニップ部の出口のトナー量が過大になる。このため、非画像部のカブリが顕著になるとともに、トナーの飛散およびこぼれが発生する。また、トナー層厚tdが3.0×Dより大きくなると、現像ローラ7や層規制ブレード10とトナー4との接触帯電機会が不足する。このため、トナー4の帯電量が不足して、非画像部のカブリが増大する。一方、充填トナー層厚tdが0.8×Dより小さくなると、トナー層の規制時のトナー4へのストレスが増加して、トナー4の劣化が顕著になり、所定の印刷枚数を出力する前に、画像濃度の低下や解像度の悪化が引き起こされる。
したがって、上述の実験から、高品位の画像を形成するためには、0.8×D≦td≦3.0×D、かつ、0.25×vp≦vt<0.5×vp、の関係を満たす必要があるという結果を得た。
この実施形態では、充填トナー層厚td=1.5×Dであるので、カブリ、トナー飛散、トナー4のこぼれの発生を防止できるとともに、トナー層規制時のストレスを抑制して、トナー4の劣化による画像品位の低下を防止することができる。
また、層規制ブレード10へのトナー4の融着は、現像ローラ7と層規制ブレード10との摺擦距離に依存するが、この実施形態の構成では現像ローラ7の回転速度vtが低いので、層規制ブレード10にトナー4が融着するまでの期間を長くして層規制ブレード10の寿命を延ばすことができる。
さらに、現像ローラ7上に形成されるトナー層の充填トナー層厚tdが0.8×D以上であるので、トナー層の充填率(25%)を考慮すると、図3に示すように、トナー層規制部でのトナー層は2層を越えて、トナー層中には現像ローラ7にも層規制ブレード10にも接触しないトナー4が生じる。このトナー層を適正に帯電させるためには、さらなる帯電機会を付与することが必要である。
上述のようにこの実施形態では、現像ニップ部内での現像ローラ7と感光体ドラム1との周速比が0.45である。現像ローラ7と感光体ドラム1との周速差によって、図2に示す現像ニップ部内でトナー4を流動させ、トナー4同士の接触や、トナー4の感光体ドラム1および現像ローラ7との接触による帯電機会を増加させることによって、トナー4を均一に帯電させることができる。図4(c)に示すように、実験では、感光体ドラム1と現像ローラ7との周速比(vt/vp)を0.5未満にした場合、現像ニップ部内でトナー4を十分に帯電させることができた。一方、感光体ドラム1と現像ローラ7との周速比(vt/vp)が0.25より小さい場合、感光体ドラム1の摩耗が顕著になり、所定の印刷枚数の出力前に画像の品位が低下した。
この実施形態では、画像形成装置Aは、現像ニップ部において現像ローラ7の表面と感光体ドラム1の表面とが互いに同じ方向に移動するように構成されている。これによって、現像ニップ部を通過した感光体ドラム1の表面の画像部が、現像ニップ部内で十分に帯電されたトナー層と最後に接触するようにすることができる。従って、帯電量の低いトナー4が画像部に供給されることを防止できるとともに、非画像部のカブリを防止することができる。
また、この実施形態では、現像ローラ7上の単位面積当たりのトナー量が、適正な画像濃度を得るために感光体ドラム1上に供給されるべき単位面積当たりのトナー量より多いので、非画像部にトナー4のカブリが発生しやすいとも考えられる。図5に示す実験結果から、非画像部でトナー4を現像ローラ7側へ引きつける非画像部電位差を、画像部でトナー4を感光体ドラム1側へ引き付ける現像電位差の、2倍以上の大きさにした場合、カブリを抑制することができるという結果を得た。すなわち、感光体ドラム1の非画像部の表面電位をV0、画像部の表面電位をVL、現像ローラ7に印加される現像電圧をVb、とするとき、次の[数4]の関係を満たす場合に、現像ローラ7上の単位面積当たりのトナー量を感光体ドラム1上に供給されるべき単位面積当たりのトナー量より多くしながら、カブリの発生を防止することができるということが判明した。
なお、この実施形態では、使用するトナー4の軟化点温度を100℃としたが、95℃以上120℃以下とすることが望ましい。このような低温定着トナーを使用することによって、省エネおよび高速化を実現できる。低温定着トナーは負荷によって劣化しやすいが、この実施形態の構成では、トナー4への負荷が小さいので、低温定着トナーを用いても、長時間にわたって安定した画像を形成することができる。
また、トナー4中の着色剤の濃度を15%としたが、7%以上25%以下とすることが好ましい。このような着色剤の濃度が高いトナーを使用することによって、トナーの消費量を低減させることができるので、トナーホッパ5の小型化および長寿命化を実現することができる。着色剤の比率が高いトナーは一般的には負荷によって劣化しやすいが、画像形成装置Aの構成では、トナー4への負荷が小さいので、着色剤の比率が高いトナーを用いても、長時間にわたって安定した画像を形成することができる。
さらに、トナー4は離型剤としてのワックスを有し、ワックスの含有率を12%としたが、ワックスの含有率は6%以上20%以下であることが好ましい。ワックスを有するトナー4を使用することで、定着時の離型性を確保することができるので、オイルなどの離型剤の供給が不要になり、画像形成装置Aを小型化できる。ワックスを有するトナーは一般的には負荷によって劣化しやすいが、画像形成装置Aの構成では、トナー4に作用する負荷が小さいので、ワックスを有するトナー4を用いても、長時間にわたって安定した画像を形成することが出来る。
また、トナー4の体積平均粒子径は、上述の実施形態では6μmであるが、4μm以上8μm以下であればよい。このような小粒径トナーを使用することによって、単位面積当たりのトナーの質量が同じ場合でも記録紙14に対する被覆率が向上するので、低付着量での高画質化およびトナー消費量の低減を実現することができる。このため、画像濃度を十分に確保できるとともに、トナー4の飛び散りが少なく、潜像に忠実なシャープな細線の画像をも形成することができる。
小粒径のトナー4は、流動性が低いため一般的にはトナー層に対するストレスによって劣化しやすいが、画像形成装置Aの構成ではトナー4に対する負荷が小さいので、小粒径のトナーを用いても、長時間にわたって安定した画像を形成することができる。但し、トナーの粒径が4μm未満になると、トナー層に対するストレスでトナーが層規制ブレード10に融着しやすくなる。このため、例えば、トナー層に対するストレスが最も弱い、vt/vp=0.25の条件で用いた場合でも、連続回転時の融着発生までの時間が10時間未満となる。一方、トナーの粒径が8μmを越える場合は、所定の画像濃度を得るために必要なトナー量が多くなるとともに融着が発生しにくくなる。このため、層規制後のトナー搬送量が最小になる、vt/vp=0.5の条件で用いても、連続回転時の融着発生までの時間が所定時間を越え、周速比vt/vpを0.5未満にする必要がない。
また、トナー4の製法は、着色顔料や離型剤等を結着樹脂に分散し粉砕する粉砕法であってもよいが、乳化重合法、縣濁重合法、溶液縣濁法に代表される湿式でトナー4を製造することが好ましい。これらの製法では、粒子形状を球形または球形に近い形状にすることが容易であり、工程を制御することでトナーの流動性制御を行うことができる等の利点がある。この流動性の制御によって、感光体ドラム1のトナー搬送量を適切に設定することができる。これによって、十分な画像濃度を安定して得ることが容易になる。
トナーとしては、結着樹脂と、着色材としての顔料、離型材としてのワックスを含み、トナーの軟化点が95℃以上120℃以下で、その体積平均粒子径が4μm以上8μm以下、着色剤濃度が7%以上20%以下、ワックスの含有率が6%以上20%以下のものが使用可能である。このような、定着温度の低温度化(省エネ)や高画質化には好ましいが、融着や劣化が生じやすいトナーであっても、この画像形成装置Aであればトナーへの負荷が小さいので、高品位な画像形成に十分に使用可能である。
上述のように、画像形成装置Aによれば、画像濃度が十分かつ均一で、カブリも無く、細線にも優れた高品位な画像を、長期間にわたって安定して得ることができる。
なお、この実施形態では、現像ローラ7へ印加する現像電圧は直流電圧としたが、感光体ドラム1の表面の画像部の電位VL(−70V)に対して、トナー4が感光体ドラム1に接触する現像ニップ部とその近傍で、電界の方向が変化する振幅の振動電圧を現像ローラ7にさらに印加し、トナー4に感光体ドラム1の画像部と現像ローラ7との間を往復運動させるようにしてもよい。
上述の振動電圧は、感光体ドラム1の表面の画像部の電位VL(−70V)に対して、電界の方向が変化する振幅の振動電圧であればよいが、図6に示すように、ピーク電圧が、画像部の電位に対して50V以上の電位差を有することが望ましい。例えば、現像電圧の直流成分が−240V、画像部の電位が−70Vである場合、振動成分の振幅電圧は440Vpp以上であることが望ましい。
一般的に、図2に示すように、機械的な層規制手段によって形成された現像ローラ7上のトナー層は、完全に均一な層ではなく、不均一な凹凸がある。上述の実施形態では、現像ローラ7の速度が感光体ドラム1の速度より低いために、トナー層が感光体ドラム1上で引き伸ばされる。これによって、トナー層の不均一性が感光体ドラム1上で移動方向に拡大され、現像された画像は、トナー層の不均一性に基づいてムラが顕著な画像になる。
しかし、現像ニップ部とその近傍で電界の方向が変化する振動電圧を現像ローラ7に印加することによって、トナー4は、現像ニップ部とその近傍で振動するとともに、感光体ドラム1と現像ローラ7との間を往復運動する。これによって、トナー層の凹凸が均一化され、感光体ドラム1上に現像されたトナー像におけるムラの発生を解消し、均一で高品位な画像を得ることができる。
現像ローラ7に印加される振動電圧の周波数は、500Hz〜3kHzの範囲内であることが望ましい。3kHzを超える周波数の電圧では、トナーの振動が追従できず、500Hz未満の周波数の電圧では、トナーの振動回数が過小で十分な効果が得られない。
現像ローラ7に印加される振動電圧が、画像部と現像ローラ7との間およびその近傍でトナー4を振動させるとともに、画像部と現像ローラ7との間でトナー4を往復運動させることによって、トナー4が現像ローラ7および感光体ドラム1と接触する機会が増加し、トナーの帯電の均一性が向上する。したがって、画像部上にトナー4がムラなく供給され、感光体ドラム1上に形成されるトナー像の品位を向上させることができる。
さらに、図7に示すように、振動電圧のピーク電圧は、画像部電位および非画像部電位に対して各々50V以上の電位差を有することが好ましい。例えば、現像電圧の直流成分が−240V、画像部電位が−70V、非画像部電位が−600Vである場合、振動成分の振幅電圧は820Vpp以上であることが望ましい。
現像ローラ7に印加される振動電圧は、画像部のトナーのみならず非画像部のトナーをも振動させることによって、すべてのトナー4に現像ローラ7や感光体ドラム1との帯電機会を付与することができるので、画像部トナーのみならず、非画像部のトナーの帯電をも向上させることができる。さらに、現像ニップ部を通過した感光体ドラム1の非画像部に付着したトナー4に、別のトナー4の粒子を衝突させることによって、非画像部のカブリを除去する効果も得ることができる。
なお、振動電圧が過大な場合は、トナー4の飛散が顕著になり、画像上にカブリが発生する場合がある。このカブリを防止するため、電圧の振幅の上限は2kVpp以下にすることが必要である。
上述の現像電圧によって、さらに均一かつ適度な画像濃度で、カブリがなく、細線にも優れた高品位な画像を、長期間にわたって安定して形成することができるようになる。
図8は、他の実施形態に係る画像形成装置Bの一部の構成を示す断面図である。図9は、画像形成装置Bの現像ニップ部の拡大図である。この実施形態に係る画像形成装置Bは、感光体ドラム1の表面と現像ローラ7上に担持されるトナー層との間に間隙が設けられる点と、現像ローラ7に印加する現像電圧の条件と、を除いて、上述の実施形態に係る画像形成装置Aと同様に形成される。なお、画像形成装置Aの各部材と同様の構成を有する部材には画像形成装置Aの場合と同一の符号を付している。
現像ローラ7および感光体ドラム1の回転軸はそれぞれ、現像ローラ7の表面と感光体ドラム1の表面との間隔が250μmとなるように位置決めされる。これによって、感光体ドラム1の表面と現像ローラ7上のトナー層との間に間隙が設けられる。
図10は、画像形成装置Bの現像ローラ7に印加される振動電圧の波形の一例を示す図である。現像ローラ7には、直流電圧−240Vと、周波数1.5kHz、振幅1800Vppの振動電圧と、が重畳された現像電圧が印加される。この現像電圧は、感光体ドラム1上の画像部の電位VL(−70V)に対して、感光体ドラム1に対向する現像ローラ7の表面とその近傍で電界の方向が変化する振動電圧である。この振動電圧による電界によって、トナー4は、現像ニップ部である感光体ドラム1と現像ローラ7との間を往復運動する。
ここで、トナー4を往復運動させるためには、両方向の電界強度が1MV/m以上であればよい。感光体ドラム1と現像ローラ7との間隔が250μmの場合は、往復両方向の電位差がそれぞれ250V以上となる。従って、−70Vの画像部の電位に対しては、+電位のピークが+180Vより、−電位のピークが−320Vより、それぞれ絶対値で大きくなる振動電圧を現像ローラ7に印加すればよい。
感光体ドラム1の表面と現像ローラ7上のトナー層との間に間隙が設けられることで、現像ニップ部内で感光体ドラム1と現像ローラ7上のトナー層との摺擦作用がないので、トナー4が現像ニップ部のトナー4の搬送方向の下流側へ掻き出され、現像ニップ部の出口のトナー量が過大になるというようなことがない。これによって、非画像部のカブリ、およびトナー4のこぼれを防止することができる。また、感光体ドラム1と現像ローラ7とが非接触に配置されるので、感光体ドラム1および現像ローラ7の現像ニップ部での摩耗を防止することができる。
また、感光体ドラム1が現像ローラ7上のトナーを摺擦しないので、現像ローラ7上のトナー層に不均一な部分があったとしても、その不均一性を感光体ドラム1が引き伸ばして拡大することがない。さらに、現像に用いられるトナー4は、現像ニップ部の間隙を飛翔して移動するので、現像ローラ7上のトナー層に不均一性があったとしても、その不均一性が感光体ドラム1の画像部上に供給されたトナー層に与えられる影響は小さくなる。
上述のように、この実施形態における現像ローラ7および感光体ドラム1のそれぞれの周速度やトナー4の構成は、画像形成装置Aの場合と同様である。現像ローラ7に搬送されるトナー層の単位面積当たりの質量は9g/m2であり、このときのトナー層厚tdは 36μmである。この質量は、使用しているトナー4で所定の画像濃度を得るための単位面積当たりの質量3.6g/m2よりも多い。トナー層の充填トナー層厚tdは、上述の 単位面積当たりの質量をトナー密度で除算することで得られる。したがって、上述の場合の充填トナー層厚tdは、[数5]のようになる。
従って、このトナー層の充填率は40%である。現像ローラ7に搬送されるトナー層の単位面積当たりの質量は9g/m2であり、vt=0.45×vpなので、現像ローラ7 上のトナーが全て現像に使用されるとすると、感光体ドラム1上に供給されたトナー層の単位面積当たりの質量は9×0.45≒約4[g/m2]となる。これは、必要な濃度を 得るために十分なトナー量である。
このように、感光体ドラム1上へのトナー4の供給量は、充填トナー層厚tdとトナー4の体積平均粒径Dとの比と、現像ローラ7の周速度vtと感光体ドラム1の周速度vpとの比と、の積(td/D)×(vt/vp)で略決定される。この関係式(td/D)×(vt/vp)で表される値は、0.6以上1.0以下であれば適正であり、この場合に十分な画像濃度と解像度とが得られる。この実施形態では、(td/D)×(vt/vp)=0.675であるので、十分な画像濃度と解像度とが得られる。
感光体ドラム1上に供給されたトナー層の単位面積当たりの質量が過多である場合は、現像時や転写時にトナー4の飛び散りが生じて画像品位を低下させてしまう。この実施形態では、現像ローラ7によって搬送されるトナー層の単位面積当たりの質量は、必要な濃度を得るために現像ニップ部で必要とされる単位面積当たりのトナー量より多いが、この画像形成装置Bでは、現像ローラ7の周速度が感光体ドラム1の周速度より遅いので、所定の濃度を得るためのトナー量として適正である。したがって、画像形成装置Bは、濃度が均一かつ適正で、細線をも鮮明に表現できる高品位な画像を形成することができる。
図11は、画像形成装置Bに関する実験結果を示す図である。各欄の符号の意味については上述の図4の場合と同様である。
図11(a)に示すように、画像形成装置Bにおいて、(td/D)×(vt/vp)の値が、0.6以上1.0以下である場合に、適正な濃度かつ高解像度の高品位な画像を形成することができるという実験結果を得た。
また、感光体ドラム1と現像ローラ7との周速比(vt/vp)が大きいほど、単位時間当たりに現像ニップ部へ搬送されるトナー量が多くなるので、感光体ドラム1上に供給されるトナー量を適正にするために、現像ローラ7上の充填トナー層厚tdを低く設定する必要がある。図11(b)および図11(c)に示すように、実験によれば、感光体ドラム1と現像ローラ7との周速比(vt/vp)が0.5より大きい場合はカブリが発生し、現像ローラ7上に充填トナー層厚tdが0.8×Dより小さいトナー層を担持させる必要があった。また、現像ローラ7と感光体ドラム1との周速比(Vt/Vp)が0.25より小さい場合は、所定の濃度を得るために、現像ローラ7上に充填トナー層厚tdが3.0×Dより大きいトナー層を担持させる必要があった。
しかし、現像ローラ7上の充填トナー層厚tdが3.0×Dより大きくなると、現像ニップ部内で飛翔時および往復運動時にトナー4が飛散するため、非画像部のカブリが顕著になるとともに、トナー4のこぼれが発生する。また、充填トナー層厚tdが3×Dより大きくなると、現像ローラ7や層規制ブレード10とトナー4との接触による帯電機会が不足するので、トナー4の帯電量が不足して、非画像部のカブリが増加する。一方、充填トナー層厚tdが0.8×Dより小さくなると、トナー層の規制時のトナー4へのストレスが増加して、トナー4の劣化が顕著になり、所定の印刷枚数を出力する前に、画像濃度の低下や解像度の悪化が引き起こされる。
したがって、上述の実験から、高品位の画像を形成するためには、0.8×D≦td≦3.0×D、かつ、0.25×vp≦vt<0.5×vp、の関係を満たす必要があるという結果を得た。
この実施形態では、充填トナー層厚td=1.5×Dであるので、カブリ、トナー飛散、トナー4のこぼれの発生を防止できるとともに、トナー層規制時のストレスを抑制して、トナー4の劣化による画像品位の低下を防止することができる。
また、層規制ブレード10へのトナー4の融着は、現像ローラ7と層規制ブレード10との摺擦距離に依存するが、この実施形態の構成では現像ローラ7の回転速度vtが低いので、層規制ブレード10にトナー4が融着するまでの期間を長くして層規制ブレード10の寿命を延ばすことができる。
さらに、現像ローラ7上に形成されるトナー層の充填トナー層厚tdが0.8×D以上であるので、トナー層の充填率を考慮すると、図3に示すように、トナー層規制部でのトナー層は2層を越えて、トナー層中には現像ローラ7にも層規制ブレード10にも接触しないトナー4が生じる。このトナー層を適正に帯電させるためには、さらなる帯電機会を付与することが必要である。この実施形態では、現像ニップ部内での現像ローラ7と感光体ドラム1との間を画像部のトナー4が往復運動するので、トナー4同士の接触や、トナー4の感光体ドラム1および現像ローラ7との接触による帯電機会を増加させることによって、トナーを均一に帯電させることができる。
機械的な層規制手段によって形成された現像ローラ7上のトナー層は、完全に均一な層ではなく、図3に示すように、凹凸があり不均一な部分がある。上述の画像形成装置Bでは、現像ニップ部内でトナー4が往復運動して飛翔するので、トナー層の凹凸が均一化される。したがって、感光体ドラム1上に供給されトナー像となったトナー層のムラを解消し、均一で高品位な画像を形成することができる。
なお、現像ローラ7に印加される振動電圧の周波数は、500Hz〜3kHzの範囲内であることが望ましい。3kHzを超える周波数ではトナーの振動が追従できず、500Hz未満の周波数では、トナー4の振動回数が過小で十分な効果が得られないからである。
また、現像ローラ7に印加される振動電圧は、感光体ドラム1の表面の画像部の電位VL(−70V)に対して、トナー4を電界力によって往復運動させるような振動電圧であればよい。トナー4を往復運動させるためには、両方向の電界強度が1MV/m以上であればよい。振動電圧が画像部のトナー4を振動させることによって、現像ローラ7や感光体ドラム1とトナー4との帯電機会を増やすことができるので、画像部のトナー4をいっそう均一に所定電位まで帯電させることができる。
さらに、現像ローラ7に印加される振動電圧のピーク電圧は、画像部電位および非画像部電位のそれぞれに対して、往復の両方向で電界強度が1MV/m以上となるような電圧であることが望ましい。例えば、感光体ドラム1と現像ローラ7との間隔が250μmである場合は、往復両方向の電位差が250V以上となる。したがって、図12に示すように、画像部電位が−70V、非画像部電位が−600Vである場合、−70Vの画像部電位に対して+電位のピークが+180Vより、−600Vの非画像部に対して−電位のピークが−850Vより、それぞれ絶対値で大きくなる振動電圧を現像ローラ7に印加すればよい。現像電圧の直流成分が−240Vである場合、振動電圧の振幅は1220Vpp以上であることが望ましい。
振動電圧が、画像部のみならず非画像部に対向する位置にあるトナー4をも往復運動させることによって、現像ローラ7および感光体ドラム1とのトナー4の帯電機会を増やすことができるので、トナー4を所定電位に均一に帯電させることができる。また、現像ニップ部を通過した非画像部の感光体ドラム1に付着したトナー4に、他のトナー粒子を衝突させることによって、非画像部のカブリを除去することができる。さらに、非画像部のトナー4の帯電をも向上させることができるので、これによっても非画像部のカブリを抑制することができる。
なお、振動電界が過大である場合は、トナー4の飛散が顕著になり、画像上にカブリが発生する。このカブリを防止するために、振動電界の振幅の上限は3MV/m以下とすることが望ましい。
上述の現像電圧によって、画像形成装置Bは、画像濃度が適正かつ均一で、カブリがなく、細線の表現にも優れた高品位な画像を、長期間にわたって安定して形成することができる。
なお、この実施形態では、現像電圧を振動電圧としたが、直流電圧であっても、トナー4を現像ローラ7から感光体ドラム1へ飛翔させて現像することができる。この場合は、現像電圧の電源回路を安価に構成することができる。
また、上述の各実施形態では、潜像保持体として感光体ドラムを用いたが、ベルト形態のものを用いることもできる。
図13は、さらに他の実施形態に係る画像形成装置Cの一部の構成を示す断面図である。なお、上述の画像形成装置A,Bと同様に構成される部材には同一の符号を付している。
この実施形態に係る画像形成装置Cは、現像ローラ7と感光体ドラム1とが圧接する現像ニップ部での感光体ドラム1の食い込みによる現像ローラ7の変形量を規制するギャップリング20を、現像ローラ7の両端に備える。ギャップリング20は、ポリアセタール樹脂やPPSなどの摺動性に優れた絶縁性の樹脂材料からなる。ギャップリング20の外径は、現像ローラ7の外径より400μm小さく形成される。ギャップリング20は、現像ローラ7と同軸に設けられ、感光層が塗工されていない感光体ドラム1の両端部に押圧し、感光体ドラム1の回転中心と現像ローラ7の回転中心との距離を規制する。また、現像ニップ部の押圧力を安定させるために、現像器8の後部を押圧するバネ9の押圧力は20Nに設定される。これによって、感光体ドラム1の現像ローラ7への食い込み量は、200μmで安定して保持される。
現像ニップ部を現像ローラ7の弾性変形による反作用で規制する構成では、起動や停止時に、感光体ドラム1と現像ローラ7とのタイミングのズレや、駆動力の衝撃的な作用によって現像ローラ7が軸方向に不均一な力を受けることがある。この場合は、現像ローラ7と感光体ドラム1との接触圧力が部分的に大きくなり、感光体ドラム1を部分的に摩耗させるおそれがある。ギャップリング20を設けることによって、感光体ドラム1と現像ローラ7との中心間の距離を規制して、現像ローラ7と感光体ドラム1との押圧力を安定化させることができる。これによって、感光体ドラム1の部分的な摩耗を防止して、長期間にわたり濃度が均一で高品位な画像を形成することができる。
なお、上述の各実施形態では、現像ローラ7の表面と感光体ドラム1の表面とが同方向に移動するように現像ローラ7および感光体ドラム1を回転させたが、この構成に限定されず、現像ローラ7の表面と感光体ドラム1の表面とが逆方向に移動するように現像ローラ7および感光体ドラム1を回転させてもよい。
画像形成装置A,B,Cによれば、現像ローラ7上のトナー層規制時のストレスを抑制して、トナー4の劣化や層規制ブレード10への融着を防止することができる。これによって、筋状のムラ、画像濃度の低下、および解像度の悪化を防止することができる。また、現像ローラ7と感光体ドラム1との周速比を上述のように制御することによって、感光体ドラム1へのトナーの供給量を適正化して、画像濃度が適正かつ均一で、優れた解像度の画像を形成することができる。さらに、現像ローラ7の回転速度が低いので、層規制ブレード10にトナー4が融着するまでの期間を長くして層規制ブレード10の寿命を長くすることができる。
なお、上述のような画像形成装置A,B,Cは、具体的には例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ等として具現化される。