JP2005304362A - 1,3−プロパンジオール及び/又は3−ヒドロキシプロピオン酸を製造する方法 - Google Patents

1,3−プロパンジオール及び/又は3−ヒドロキシプロピオン酸を製造する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、グリセロールから1,3−プロパンジオールを製造する際の効率性を改善し、工業上有用なプロセスを提供することを目的とする。
【解決手段】 Lactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Listeria属細菌、Clostridium属細菌、Escherichia属細菌、Enterobacter属細菌、Caloramator属細菌、Acetobacterium属細菌、Brucella属細菌、Flavobacterium属細菌、Fusobacterium属細菌、Citrobacter属細菌及びPropionibacterium属細菌から選択される細菌において、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がノックアウトされたノックアウト細菌。
【選択図】 なし

Description

本発明は、Lactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Listeria属細菌、Clostridium属細菌、Escherichia属細菌、Enterobacter属細菌、Caloramator属細菌、Acetobacterium属細菌、Brucella属細菌、Flavobacterium属細菌、Fusobacterium属細菌、Citrobacter属細菌及びPropionibacterium属細菌から選択される細菌において、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がノックアウトされたノックアウト細菌、グリセロールデヒドラターゼ及び/又はジオールデヒドラターゼのラージサブユニットをコードする遺伝子、ミディアムサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子及び/又はジオールデヒドラターゼ再活性化因子のラージサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子、プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子、並びに1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子及び/又はプロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子を含みグリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含まない形質転換体、該細菌又は形質転換体を用いてグリセロールから1,3−プロパンジオール及び/又は3−ヒドロキシプロピオン酸を製造する方法に関する。
1,3−プロパンジオールはポリエステル繊維の生産並びにポリウレタン及び環状化合物の製造に使用されるモノマーである。1,3−プロパンジオール合成経路としては、種々ものが知られている。例えば、ホスフィン、水、一酸化炭素、水素及び酸の存在下、触媒上でのエチレンオキサイドの変換により製造する方法;アクロレインの触媒的液相水和、続いての還元により製造する方法;一酸化炭素及び水素存在下、周期律表のVIII族の原子を持っている触媒上で炭化水素(例えば、グリセロール)を反応させることにより製造する方法などが報告されている。しかしながら、伝統的化学合成法は、費用がかかるとともに、環境汚染物質を含んでいる一連の廃棄物を発生するという問題を有していた。
これに対し、1,3−プロパンジオールを製造するための生物学的方法として、グリセロールから1,3−プロパンジオールへの発酵を触媒する酵素を有する微生物を利用する方法が報告されている(特許文献1〜6参照)。グリセロールから1,3−プロパンジオールを生産できる細菌株が、例えば、Citrobacter属、Clostridium属、Enterobacter属、Salmonella属、Klebsiella属、Lactobacillus属、Caloramator属及びListeria属に属する細菌の群で発見されている。
生物学的系において、グリセロールは2段階の酵素触媒反応を経て、1,3−プロパンジオールに変換される。第1段階において、グリセロールデヒドラターゼがグリセロールを3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(3−HPA)及び水へ変換する(グリセロール→3−HPA+HO)。第2段階において、3−HPAがNAD−結合オキシドレダクターゼにより1,3−プロパンジオールに還元される(3−HPA+NADH+H→1,3−プロパンジオール+NAD)。1,3−プロパンジオールはそれ以上代謝されず、結果として媒体中に堆積する。
しかし、生物学的系におけるグリセロールからの1,3−プロパンジオールの生産は、一般に嫌気性条件下でグリセロールを単独の炭素源とし、他の外因性還元当量受容物質の不在下で行われるため、最初に、NAD−(又はNADP−)結合グリセロールデヒドロゲナーゼによるグリセロールのジヒドロキシアセトン(DHA)への酸化(グリセロール+NAD+→DHA+NADH+H)というグリセロールに関する平行経路が働く。そして、DHAは、DHAキナーゼによってジヒドロキシアセトンリン酸へリン酸化され、生合成及びATP生成のために利用される。
従って、従来の微生物を用いた1,3−プロパンジオールの製造方法においては、原料であるグリセロールの半分が上記平行経路において消費され、原料グリセロールに対する生成物の収率が低く、効率性及びコストの点で問題があった。
一方、3−ヒドロキシプロピオン酸及びそのエステルは、脂肪族ポリエステルの原料として有用な化合物であり、また、これらから合成されるポリエステルは生分解性の環境にやさしいポリエステルとして注目されている。
3−ヒドロキシプロピオン酸は、通常、アクリル酸に対する水の付加により、又はエチレンクロロヒドリンとシアン化ナトリウムとの反応により製造される。アクリル酸を水和する反応は平衡反応であるため、反応率が制限されるという問題があった。エチレンクロロヒドリンの反応の場合は、毒性の強い物質の使用が必要であり、さらに加水分解工程を追加しなくてはならない。この場合、塩化ナトリウム及びアンモニウム塩が大量に生じるという問題がある。
WO98/21339 WO98/21341 米国特許第5,821,092号 米国特許第5,254,467号 米国特許第5,633,362号 米国特許第5,686,276号
本発明は、グリセロールから1,3−プロパンジオールを製造する際の効率性を改善し、工業上有用なプロセスを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、Lactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Listeria属細菌、Clostridium属細菌、Escherichia属細菌、Enterobacter属細菌、Caloramator属細菌、Acetobacterium属細菌、Brucella属細菌、Flavobacterium属細菌、Fusobacterium属細菌、Citrobacter属細菌及びPropionibacterium属細菌のグリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子をノックアウトし、該細菌とグリセロールとを接触させることにより、2種類の有用な化合物を効率的に製造できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
また、本発明者らは、上記細菌におけるpduオペロンが上記反応に関与することを見いだした。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)Lactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Listeria属細菌、Clostridium属細菌、Escherichia属細菌、Enterobacter属細菌、Caloramator属細菌、Acetobacterium属細菌、Brucella属細菌、Flavobacterium属細菌、Fusobacterium属細菌、Citrobacter属細菌及びPropionibacterium属細菌から選択される細菌においてグリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がノックアウトされたノックアウト細菌。
(2)pduオペロン及びホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子を有する細菌において、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がノックアウトされたノックアウト細菌。
(3)(1)又は(2)記載の細菌とグリセロールとを接触させることにより、1,3−プロパンジオール及び/又は3−ヒドロキシプロピオン酸を製造する方法。
(4)グリセロールデヒドラターゼ及び/又はジオールデヒドラターゼのラージサブユニットをコードする遺伝子、ミディアムサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子及び/又はジオールデヒドラターゼ再活性化因子のラージサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子、プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子、並びに1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子及び/又はプロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子を含み、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含まない、形質転換体。
(5)pduオペロンを有し、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含まない、(4)記載の形質転換体。
(6)プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子である(4)又は(5)記載の形質転換体:
(a)配列番号41で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号41で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
(7)プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、以下の(a)又は(b)のDNAを含む、(4)又は(5)記載の形質転換体:
(a)配列番号42で表される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号42で表される塩基配列の全部又は一部からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(8)プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子が以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子である(4)又は(5)記載の形質転換体:
(a)配列番号43で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号43で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつプロピオン酸キナーゼ活性を有するタンパク質。
(9)プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子が、以下の(a)又は(b)のDNAを含む、(4)又は(5)記載の形質転換体:
(a)配列番号44で表される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号44で表される塩基配列の全部又は一部からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロピオン酸キナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(10)(4)〜(9)のいずれかに記載の形質転換体とグリセロールとを接触させることにより、1,3−プロパンジオール及び/又は3−ヒドロキシプロピオン酸を製造する方法。
本発明により、グリセロールから1,3−プロパンジオールを製造する際の原料グリセロールのロスを低減し、かつ1,3−プロパンジオールと合わせて3−ヒドロキシプロピオン酸を製造することができる。また、製造に用いる細菌を効率的に培養できるため、より効率的に1,3−プロパンジオールと合わせて3−ヒドロキシプロピオン酸を製造することができる。
本発明の細菌は、Lactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Listeria属細菌、Clostridium属細菌、Escherichia属細菌、Enterobacter属細菌、Caloramator属細菌、Acetobacterium属細菌、Brucella属細菌、Flavobacterium属細菌、Fusobacterium属細菌、Citrobacter属細菌及びPropionibacterium属細菌から選択される細菌において、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がノックアウトされているものである。本発明において、Lactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Listeria属細菌、Clostridium属細菌、Escherichia属細菌、Enterobacter属細菌、Caloramator属細菌、Acetobacterium属細菌、Brucella属細菌、Flavobacterium属細菌、Fusobacterium属細菌、Citrobacter属細菌及びPropionibacterium属細菌は、グリセロールデヒドラターゼ及び/又はジオールデヒドラターゼのラージサブユニットをコードする遺伝子、ミディアムサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子及び/又はジオールデヒドラターゼ再活性化因子のラージサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子、プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子、ならびに1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子及び/又はプロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子を有するものであれば特に制限されない。
本発明においては、さらに、補酵素B12合成系を有する細菌が好ましく、そのような細菌としては、Lactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Brucella属細菌、Fusobacterium属細菌及びPropionibacterium属細菌が挙げられる。
Lactobacillus属細菌としては、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus brevis、Lactobacillus collinoides、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus diolivorans、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus yamanashiensis等が挙げられる。
Salmonella属細菌としては、Salmonella enterica、Salmonella enteritidis、Salmonella typhi、Salmonella typhimuriumが挙げられ、Klebsiella属細菌としては、Klebsiella aerogenes、Klebsiella oxytoca、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella atlantae、Klebsiella edwardsii、Klebsiella mobilis、Klebsiella ozaenae、Klebsiella planticola、Klebsiella rhinoscleromatis、Klebsiella rubiacearum、Klebsiella terrigenaが挙げられ、Listeria属細菌としては、Listeria denitrificans、Listeria grayi、Listeria innocua、Listeria ivanovii、Listeria monocytogenes、Listeria murrayi、Listeria seeligeri、Listeria welshimeriが挙げられ、Clostridium属細菌としては、Clostridium acetobutylicum、Clostridium butyricum、Clostridium pasteurianum、Clostridium paraperfringens、Clostridium perfringens、Clostridium glycolicum、Clostridium difficileが挙げられ、Escherichia属細菌としては、Escherichia blattae、Escherichia hermannii、Escherichia vulneris、Escherichia freundiiが挙げられ、Enterobacter属細菌としては、Enterobacter aerogenes、Enterobacter agglomeransが挙げられ、Caloramator属細菌としては、Caloramator coolhaasii、Caloramator fervidus、Caloramator indicus、Caloramator proteoclasticus、Caloramator uzoniensis、Caloramator viterbiensisが挙げられ、Acetobacterium属細菌としては、Acetobacterium sp.が挙げられ、Brucella属細菌としては、Brucella melitensisが挙げられ、Flavobacterium属細菌としては、Flavobacterium sp.が挙げられ、Fusobacterium属細菌としては、Fusobacterium nucleatumが挙げられ、Citrobacter属細菌としては、Citrobacter freundiiが挙げられる。
Propionibacterium属菌としては、Propionibacterium acidipropionici、Propionibacterium acnes、Propionibacterium australiense、Propionibacterium avidum、Propionibacterium cyclohexanicum、Propionibacterium granulosum、Propionibacterium jensenii、Propionibacterium microaephilum、Propionibacterium propionicum、Propionibacterium thoenii、Propionibacterium freudenreichiiが挙げられる。
本発明においては、好ましくはLactobacillus属細菌、より好ましくはLactobacillus reuteri、特に好ましくはLactobacillus reuteri JCM1112株、好ましくはKlebsiella属細菌、より好ましくはにKlebsiella pneumoniae、Klebsiella oxytoca、特に好ましくはKlebsiella pneumoniae ATCC 25955株、Klebsiella oxytoca ATCC 8724株を用いる。
本発明の細菌は、上記細菌においてグリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がノックアウトされたものであり、該遺伝子をノックアウトすることにより、グリセロールが酸化されてジヒドロキシアセトンに変換される経路を遮断することができ、より高い収率で1,3−プロパンジオール及び/又は3−ヒドロキシプロピオン酸を製造することができる。
グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がノックアウトされたとは、グリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子が破壊されて発現できないような状況にあることを意味する。具体的には、該ノックアウト細菌は、細胞中のグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子を標的遺伝子として、標的遺伝子の任意の位置で相同組換えを起こすベクター(ターゲティングベクター)を用いて当該遺伝子を破壊する方法(ジーンターゲティング法)や、標的遺伝子の任意の位置にトラップベクター(プロモーターを持たないレポーター遺伝子)を挿入して当該遺伝子を破壊しその機能を失わせる方法(遺伝子トラップ法)、それらを組み合わせた方法等の通常当技術分野でノックアウト細胞、トランスジェニック動物(ノックアウト動物含む)等を作製する際に用いられる方法を用いて該細胞中のグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子を破壊することによって作製される。相同置換を起こす位置又はトラップベクターを挿入する位置は、グリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子の発現の消失をもたらす変異を生じる位置であれば特に限定されないが、好ましくは転写調節領域、より好ましくは第2エクソンを置換する。またグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子をノックアウトする他の方法としては、グリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子のアンチセンスcDNAを発現するベクターを導入する方法や、グリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子の2重鎖RNAを発現するベクターを細胞に導入する方法が挙げられる。当該ベクターとしては、ウイルスベクターやプラスミドベクター等が包含され、通常の遺伝子工学的手法に基づき、例えばMolecular cloning 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等の基本書に従い作製することができる。又、市販されているベクターを任意の制限酵素で切断し所望の遺伝子等を組み込んで半合成することもできる。
グリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子がノックアウトされているか否かは、該ベクターが導入された細胞についてサザンブロットを行い正しく相同組換えが起こっていることを確認することによって、ターゲティングベクターに宿主細胞が有しない薬剤耐性遺伝子を入れておき薬剤耐性の形質が組み込まれたものを選抜することによって、破壊導入後、選抜した株のゲノム、菌体、菌体培養液等をテンプレートにして、破壊するグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子のF側とR側のプライマーを用いてPCRをかけ、グリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子と破壊導入部位の配列を合わせた大きさのDNA断片の増幅を確認することによって、もしくはそれをクローニングして配列解析することによって、又はジヒドロキシアセトンが生成しないことを確認することによって知ることができる。
本発明においてLactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Listeria属細菌、Clostridium属細菌、Escherichia属細菌、Enterobacter属細菌、Caloramator属細菌、Acetobacterium属細菌、Brucella属細菌、Flavobacterium属細菌、Fusobacterium属細菌、Citrobacter属細菌及びPropionibacterium属細菌は、pduオペロン及びホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子を有し、かつグリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がノックアウトされているものが好ましい。
また、Lactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Listeria属細菌、Clostridium属細菌、Escherichia属細菌、Enterobacter属細菌、Caloramator属細菌、Acetobacterium属細菌、Brucella属細菌、Flavobacterium属細菌、Fusobacterium属細菌、Citrobacter属細菌及びPropionibacterium属細菌以外の細菌であっても、pduオペロン及びホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子を有する細菌において、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がノックアウトされた細菌もまた本発明に包含される。
pduオペロンとは、多面小胞体タンパク質をコードする遺伝子を含み、該多面小胞体の中でグリセリンを含む1,2−ジオール類から誘導されるアルデヒドを一定時間滞留させるとともに、小胞体内、小胞体膜、およびその近傍において、アルデヒドからの酸やアルコールへの反応を触媒し、アルデヒドによる菌体への直接の悪影響を減じる機能を有するものと考えられる。
従って、pduオペロンを有する微生物は、菌体中に多面小胞体を形成し、ジオール類を一旦小胞体内に取り込み、脱水により得られるアルデヒドをある程度保持して菌体の生育に悪影響が及ばないようにするものと考えられる。したがって、アルデヒドの酸化又は還元の反応は、多面小胞体内、小胞体膜あるいはその近傍で起こっていると考えられる。従って、本発明の細菌は、pduオペロンのうちの直接反応に関与するオペロンだけでなく、多面小胞体形成タンパク等をコードするorf、さらにはpduオペロンに含まれるその他のorfを含むことが好ましい。
pduオペロンの構造を図1に示し、pduオペロンの塩基配列を配列番号53に示す。また、以下に、各orfとその機能及びLactobacillus reuteri JCM1112株由来の塩基配列を示す。なお、orf1〜4はpduオペロンとは無関係であると考えられる。また、pduObisについても本発明に係る反応には無関係であると考えられる。
pduF グリセロール摂取促進因子(配列番号54)
orf1 エタノールアミン利用系のEutJ(配列番号55)
pocR 転写制御因子(配列番号56)
pduAB 多面小体構成タンパク質(配列番号57及び58)
pduCDE ジオールデヒドラターゼ(配列番号2、6、10)
pduGH ジオールデヒドラターゼ再活性化因子(配列番号20及び24)
pduJK 多面小体構成タンパク質(配列番号60及び59)
pduLM 不明(配列番号61及び62)
pduN 多面小体構成タンパク質(配列番号63)
pduOObis アデノシルトランスフェラーゼ(配列番号64及び65)
pduP プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号42)
pduQ プロパンジオールオキシドレダクターゼ(配列番号14)
pduW プロピオン酸キナーゼ(配列番号44)
pduU 多面小体構成タンパク質(配列番号66)
orf2 チロシンホスファターゼ(配列番号67)
orf3 ホスホグリセレートムターゼ(配列番号68)
orf4 カドミウム耐性(輸送タンパク質)(配列番号69)
pduV 不明(配列番号70)
そして、本発明者らは、pduオペロン有するLactobacillus属細菌において、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子をノックアウトすることにより、図2に示す機構に基づき、グリセロールから1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸が生成されることを見いだした。
図2の作用機構において、酵素の活性を考慮すると、ジオールデヒドラターゼ及びジオールデヒドラターゼ再活性化因子は、グリセロールデヒドラターゼ及びグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子に置換可能であり、プロパンジオールオキシドレダクターゼは、1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼに置換可能であり、同様の反応が生じる。
本発明者らは、上記知見に基づき、グリセロールデヒドラターゼ及び/又はジオールデヒドラターゼのラージサブユニットをコードする遺伝子、ミディアムサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子及び/又はジオールデヒドラターゼ再活性化因子のラージサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子、プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子、並びに1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子及び/又はプロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子を含み、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含まない形質転換体をグリセロールの存在下で培養することによっても、1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸を製造できることを見いだした。
本発明の形質転換体は、グリセロールを脱水して、3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド及び水へ変換する反応を触媒する酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む。そのようなタンパク質としては、グリセロールデヒドラターゼ及びジオールデヒドラターゼが挙げられる。グリセロールデヒドラターゼ及びジオールデヒドラターゼは、ラージサブユニット、ミディアムサブユニット及びスモールサブユニットの3種のサブユニットから構成される。本発明の形質転換体には、グリセロールデヒドラターゼの3種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を含むもの、ジオールデヒドラターゼの3種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を含むもの、ならびにグリセロールデヒドラターゼの3種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子とジオールデヒドラターゼの3種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を含むもののいずれをも包含する。
グリセロールデヒドラターゼ又はジオールデヒドラターゼの各サブユニットをコードする遺伝子としては、公知のものを使用でき、例えば、Lactobacillus属、Citrobacter属、Clostridium属、Klebsiella属、Enterobacter属、Caloramator属、Salmonella属、及びListeria属等に属する細菌に由来するものを使用することができる。本発明においては、Lactobacillus属細菌に由来するグリセロールデヒドラターゼ及び/又はジオールデヒドラターゼの各サブユニットの遺伝子、特にLactobacillus reuteri由来のグリセロールデヒドラターゼ及び/又はジオールデヒドラターゼの各サブユニットの遺伝子、さらにLactobacillus reuteri JCM1112株及びLactobacillus reuteri ATCC 53608株由来のグリセロールデヒドラターゼ及び/又はジオールデヒドラターゼの各サブユニットの遺伝子が好ましい。
Lactobacillus reuteri由来のグリセロールデヒドラターゼのラージサブユニットのアミノ酸配列を配列番号1及び3に、ミディアムサブユニットのアミノ酸配列を配列番号5及び7に、スモールサブユニットのアミノ酸配列を配列番号9及び11に例示する。Lactobacillus reuteri由来のグリセロールデヒドラターゼのラージサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号2及び4に、ミディアムサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号6及び8に、スモールサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号10及び12に、例示する。
各アミノ酸配列を含むタンパク質は、その他2種のサブユニットとともに発現させたときにグリセロールデヒドラターゼ活性を有する限り、各アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
また、各配列番号で表される塩基配列からなるDNAの全部又は一部の塩基配列からなるDNAに対し相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、その他2種のサブユニットとともに発現させたときにグリセロールデヒドラターゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を用いる場合も本発明に含まれる。
各サブユニットをコードする遺伝子は、同一の宿主で発現させる限り、同一のベクターに導入して形質転換を行ってもよいし、別々のベクターに導入して形質転換を行ってもよい。また。3種のサブユニットは、同一の種又は同一の株に由来するものを用いるのが好ましい。
本発明の形質転換体は、3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを還元し、プロパンジオールに変換する反応を触媒することができる酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む。そのようなタンパク質をコードする遺伝子としては、1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子及びプロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子が挙げられる。
プロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子は、公知のものを使用でき、例えば、Lactobacillus属、Citrobacter属、Clostridium属、Klebsiella属、Enterobacter属、Caloramator属、Salmonella属、及びListeria属等に属する細菌に由来するものを使用することができる。本発明においては、Lactobacillus属細菌に由来するプロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子、特にLactobacillus reuteri由来のプロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子、さらにLactobacillus reuteri JCM1112株及びLactobacillus reuteri ATCC 53608株由来のプロパンジオールオキシドレダクターゼが好ましい。
配列番号13及び15にLactobacillus reuteri由来のプロパンジオールオキシドレダクターゼのアミノ酸配列を、配列番号14及び16にLactobacillus reuteri由来のプロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子の塩基配列を例示する。これらのアミノ酸配列を含むタンパク質がプロパンジオールオキシドレダクターゼ活性を有する限り、配列番号13で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
また、配列番号14及び16で表される塩基配列からなるDNAの全部又は一部の塩基配列からなるDNAに対し相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロパンジオールオキシドレダクターゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を用いる場合も本発明に含まれる。
1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子は、公知のものを使用でき、例えば、Lactobacillus属、Citrobacter属、Clostridium属、Klebsiella属、Enterobacter属、Caloramator属、Salmonella属、及びListeria属等に属する細菌に由来するものを使用することができる。本発明においては、Lactobacillus属細菌に由来する1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子、特にLactobacillus reuteri由来の1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子、さらにLactobacillus reuteri JCM1112株由来の1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子が好ましい。
配列番号17にLactobacillus reuteri由来の1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼのアミノ酸配列を、配列番号18にLactobacillus reuteri由来の1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子の塩基配列を例示する。これらのアミノ酸配列を含むタンパク質が1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼ活性を有する限り、配列番号17で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
また、配列番号18で表される塩基配列からなるDNAの全部又は一部の塩基配列からなるDNAに対し相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を用いる場合も本発明に含まれる。
本発明の形質転換体は、グリセロールの3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド及び水への変換反応を触媒することにより失活したグリセロールデヒドラターゼ又はジオールデヒドラターゼにおける反応中心部分の補酵素B12を入れ替えて、再度活性を取り戻させる役割を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む。そのようなタンパク質としては、グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子及びジオールデヒドラターゼ再活性化因子が挙げられる。グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子及びジオールデヒドラターゼ再活性化因子は、ラージサブユニット及びスモールサブユニットの2種のサブユニットから構成される。本発明の形質転換体には、グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子の2種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を含むもの、ジオールデヒドラターゼ再活性化因子の2種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を含むもの、ならびにグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子の2種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子とジオールデヒドラターゼ再活性化因子の2種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を含むもののいずれをも包含する。
同様の作用を有するものであれば、特に制限なく使用できる。グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子としては、WO98/21341;Daniel et al., J. Bacteriol., 177, 2151(1995);Toraya and Mori, J. Biol. Chem., 274, 3372(1999);及びTobimatsu et al., J. Bacteriol. 181, 4110(1999)に記載のものなどが挙げられる。
グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子又はジオールデヒドラターゼ再活性化因子の各サブユニットをコードする遺伝子としては、一般に嫌気条件下でグリセロールを資化することのできる細菌群が有するgdhレギュロン、pduオペロンと呼ばれる遺伝子郡内に存在するものが含まれ、例えば、gdrA、gdrB、pduG、pduH、ddrA、ddrB、dhaF、dhaG、orfZ、及びorfYなどが挙げられる。
グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子又はジオールデヒドラターゼ再活性化因子の各サブユニットをコードする遺伝子としては、公知のものを使用でき、例えば、Lactobacillus属、Citrobacter属、Clostridium属、Klebsiella属、Enterobacter属、Caloramator属、Salmonella属、及びListeria属等に属する細菌に由来するものを使用することができる。本発明においては、Lactobacillus属細菌に由来するグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子及び/又はジオールデヒドラターゼ再活性化因子の各サブユニットの遺伝子、特にLactobacillus reuteri由来のグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子及び/又はジオールデヒドラターゼ再活性化因子の各サブユニットの遺伝子、さらにLactobacillus reuteri JCM1112株及びLactobacillus reuteri ATCC 53608株由来のグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子及び/又はジオールデヒドラターゼ再活性化因子の各サブユニットの遺伝子が好ましい。
好ましくは、グリセロールデヒドラターゼの3種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を含む形質転換体は、少なくともグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子の2種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を含み、ジオールデヒドラターゼの3種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を含む形質転換体は、少なくともジオールデヒドラターゼ再活性化因子の2種のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を含む。
Lactobacillus reuteri由来のグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子のラージサブユニットのアミノ酸配列を配列番号19及び21に、スモールサブユニットのアミノ酸配列を配列番号23及び25に例示する。Lactobacillus reuteri由来のグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子のラージサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号20及び22に、スモールサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号24及び26に、例示する。
各アミノ酸配列を含むタンパク質は、もう一方のサブユニットとともに発現させたときにグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子活性を有する限り、各アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
また、各配列番号で表される塩基配列からなるDNAの全部又は一部の塩基配列からなるDNAに対し相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、もう一方のサブユニットとともに発現させたときにグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を用いる場合も本発明に含まれる。
本発明の形質転換体は、プロピオンアルデヒドにCoAを追加し、プロピオニル-CoAを生成する反応を触媒することができる酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む。そのようなタンパク質をコードする遺伝子としては、プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が挙げられる。
プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、公知のものを使用でき、例えば、Lactobacillus属、Citrobacter属、Clostridium属、Klebsiella属、Enterobacter属、Caloramator属、Salmonella属、及びListeria属等に属する細菌に由来するものを使用することができる。本発明においては、Lactobacillus属細菌に由来するプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子、特にLactobacillus reuteri由来のプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子、さらにLactobacillus reuteri JCM1112株由来のプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子が好ましい。
配列番号41にLactobacillus reuteri由来のプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列を、配列番号42にLactobacillus reuteri由来のプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子の塩基配列を例示する。これらのアミノ酸配列を含むタンパク質がプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する限り、配列番号41で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
また、配列番号42で表される塩基配列からなるDNAの全部又は一部の塩基配列からなるDNAに対し相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を用いる場合も本発明に含まれる。
本発明の形質転換体は、プロピオニルCoAからCoAをはずし、リン酸を付加してプロピオニルリン酸を生成する反応を触媒することができる酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む。そのようなタンパク質をコードする遺伝子としては、ホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子が挙げられる。
ホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子は、公知のものを使用でき、例えば、Lactobacillus属、Citrobacter属、Clostridium属、Klebsiella属、Enterobacter属、Caloramator属、Salmonella属、及びListeria属等に属する細菌に由来するものを使用することができる。本発明においては、Lactobacillus属細菌に由来するホスホトランスアシラーゼ遺伝子、特にLactobacillus reuteri由来のホスホトランスアシラーゼ遺伝子、さらにLactobacillus reuteri JCM1112株由来のホスホトランスアシラーゼ遺伝子が好ましい。
本発明の形質転換体は、プロピオニルリン酸からリン酸をはずし、ADPに付加してATPを生成すると同時にプロピオン酸を生成する反応を触媒することができる酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む。そのようなタンパク質をコードする遺伝子としては、プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子が挙げられる。
このような酵素活性を有する遺伝子を含むことにより、1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸が生成する反応と同時にATPが生成され、形質転換体が効率的に増殖し、培養を効率的に実施することができる。
プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子は、公知のものを使用でき、例えば、Lactobacillus属、Citrobacter属、Clostridium属、Klebsiella属、Enterobacter属、Caloramator属、Salmonella属、及びListeria属等に属する細菌に由来するものを使用することができる。本発明においては、Lactobacillus属細菌に由来するプロピオン酸キナーゼ遺伝子、特にLactobacillus reuteri由来のプロピオン酸キナーゼ遺伝子、さらにLactobacillus reuteri JCM1112株由来のプロピオン酸キナーゼ遺伝子が好ましい。
配列番号43にLactobacillus reuteri由来のプロピオン酸キナーゼのアミノ酸配列を、配列番号44にLactobacillus reuteri由来のプロピオン酸キナーゼ遺伝子の塩基配列を例示する。これらのアミノ酸配列を含むタンパク質がプロピオン酸キナーゼ活性を有する限り、配列番号43で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じていてもよい。
また、配列番号44で表される塩基配列からなるDNAの全部又は一部の塩基配列からなるDNAに対し相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロピオン酸キナーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を用いる場合も本発明に含まれる。
本明細書において、各配列番号で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じたアミノ酸配列とは、各配列番号で表されるアミノ酸配列の1個、又は好ましくは10〜20個、より好ましくは5〜10個、さらに好ましくは2〜3個のアミノ酸が欠失してもよく、又は各配列番号で表されるアミノ酸配列に1個、又は好ましくは、10〜20個、より好ましくは5〜10個、さらに好ましくは2〜3個のアミノ酸が付加してもよく、又は、各配列番号で表されるアミノ酸配列の1個、又は好ましくは、10〜20個、より好ましくは5〜10個、さらに好ましくは2〜3個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよいことを意味する。
本明細書において、ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、すなわち、各遺伝子に対し高い相同性(相同性が90%以上、好ましくは95%以上)を有するDNAがハイブリダイズする条件をいう。より具体的には、このような条件は、0.5〜1MのNaCl存在下42〜68℃で、又は50%ホルムアミド存在下42℃で、又は水溶液中65〜68℃で、ハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline sodium citrate)溶液を用いて室温〜68℃でフィルターを洗浄することにより達成できる。
ここで、「一部の配列」とは、各遺伝子の塩基配列の一部分を含むDNAの塩基配列であって、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせるのに十分な塩基配列の長さを有するもの、例えば、少なくとも50塩基、好ましくは少なくとも100塩基、より好ましくは少なくとも200塩基の配列である。
なお、遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法、Gapped duplex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法により、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutan-K(TAKARA社製)、Mutan-G(TAKARA社製))などを用いて、又は、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキットを用いて行うことができる。なお、上記手法により塩基配列が決定された後は、化学合成によって、又は染色体DNAを鋳型としたPCR法によって、又は該塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることにより、本発明の遺伝子を得ることができる。
形質転換体の作成
本発明の形質転換体は、上記4種の遺伝子又はその一部を適当なベクターに連結し、得られた組換えベクターを本発明の遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。「一部」とは、宿主中に導入された場合に各遺伝子がコードするタンパク質を発現することができる各遺伝子の一部分を指す。
バクテリアゲノムから所望の遺伝子を得る方法は、分子生物学の分野において周知である。例えば遺伝子の配列が既知の場合、制限エンドヌクレアーゼ消化により適したゲノムライブラリを作り、所望の遺伝子配列に相補的なプローブを用いてスクリーニングすることができる。配列が単離されたら、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第4,683,202号)のような標準的増幅法を用いてDNAを増幅し、形質転換に適した量のDNAを得ることができる。
本発明においては、グリセロールデヒドラターゼ及び/又はジオールデヒドラターゼのラージサブユニットをコードする遺伝子、ミディアムサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子及び/又はジオールデヒドラターゼ再活性化因子のラージサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子、プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子、並びに1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子及び/又はプロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子は、別々にベクターに導入して複数のベクターで形質転換を実施してもよいし、複数種の遺伝子を1つのベクターに導入して形質転換を行ってもよい。
本発明の遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主細胞で複製可能なものであれば特に限定されず、例えばプラスミドDNA、ファージDNA、コスミドDNA等が挙げられる。プラスミドDNAとしては、例えばpBR322、pSC101、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119、pACYC117、pBluescript II SK(+)、pETDuet−1、pACYCDuet−1等が挙げられ、ファージDNAとしては、例えばλgt10、Charon 4A、M13mp18、M13mp19等が挙げられる。
宿主としては、目的とする遺伝子を発現できるものであれば特に限定されず、例えば、Ralstonia属細菌、Pseudomonas属細菌、Bacillus属細菌、Escherichia属細菌、Propionibacterium属細菌、Lactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Acetobacterium属細菌、Flavobacterium属細菌、Citrobacter属細菌、Agrobacterium属細菌、Anabaena属細菌、Bradyrhizobium属細菌、Brucella属細菌、Chlorobium属細菌、Clostridium属細菌、Corynebacterium属細菌、Fusobacterium属細菌、Geobacter属細菌、Gloeobacter属細菌、Leptospira属細菌、Mycobacterium属細菌、Mycobacterium属細菌、Photorhabdus属細菌、Porphyromonas属細菌、Prochlorococcus属細菌、Rhodobacter属細菌、Rhodopseudomonas属細菌、Sinorhizobium属細菌、Streptomyces属細菌、Synechococcus属細菌、Thermosynechococcus属細菌、Treponema 属細菌、Archaeoglobus属始原菌、Halobacterium属始原菌、Mesorhizobium属始原菌、Methanobacterium属始原菌、Methanococcus属始原菌、Methanopyrus属始原菌、Methanosarcina属始原菌、Methanosarcina属始原菌、Pyrobaculum属始原菌、Sulfolobus 属始原菌、Thermoplasma属始原菌、具体的には、Acetobacterium sp.、Citrobacter freundii、Flavobacterium sp.、Ralstonia solanacearum、Ralstonia eutropha、Pseudomonas putida、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas denitrificans、Bacillus subtilis、Bacillus megaterium、Escherichia coli、Propionibacterium acidipropionici、Propionibacterium acnes、Propionibacterium australiense、Propionibacterium avidum、Propionibacterium cyclohexanicum、Propionibacterium granulosum、Propionibacterium jensenii、Propionibacterium microaephilum、Propionibacterium propionicum、Propionibacterium thoenii、Propionibacterium freudenreichii、Agrobacterium tumefaciens、Anabaena sp.、Bradyrhizobium japonicum、Brucella melitensis、Brucella suis、Chlorobium tepidum、Clostridium tetani、Clostridium glycolicum、Clostridium difficile、Corynebacterium diphtheriae、Fusobacterium nucleatum、Geobacter sulfurreducens、Gloeobacter violaceus、Leptospira interrogans、Mycobacterium bovis、Mycobacterium tuberculosis、Photorhabdus luminescens、Porphyromonas gingivalis、Prochlorococcus marinus、Rhodobacter capsulatus、Rhodopseudomonas palustris、Sinorhizobium meliloti、Streptomyces avermitilis、Streptomyces coelicolor、Synechococcus sp.、Thermosynechococcus elongatus、Treponema denticola、Archaeoglobus fulgidus、Halobacterium sp、Mesorhizobium loti、Methanobacterium thermoautotrophicum、Methanococcus jannaschii、Methanopyrus kandleri、Methanosarcina acetivorans、Methanosarcina mazei、Pyrobaculum aerophilum、Sulfolobus solfataricus、Sulfolobus tokodaii、Thermoplasma acidophilum、Thermoplasma volcaniumが挙げられる。
また、Saccharomyces cerevisiaeなどのSaccharomyces属に属する酵母、Candida maltosaなどのCandida属に属する酵母、COS細胞、CHO細胞、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などの動物細胞、SF9細胞などの昆虫細胞などを使用できる。
本発明においては、補酵素B12合成系を有するものを宿主として使用するのが好ましい。例えば、Lactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Propionibacterium属細菌、Agrobacterium属細菌、Anabaena属細菌、Bacillus属細菌、Bradyrhizobium属細菌、Brucella属細菌、Chlorobium属細菌、Clostridium属細菌、Corynebacterium属細菌、Fusobacterium属細菌、Geobacter属細菌、Gloeobacter属細菌、Leptospira属細菌、Mycobacterium属細菌、Mycobacterium属細菌、Photorhabdus属細菌、Porphyromonas属細菌、Prochlorococcus属細菌、Pseudomonas属細菌、Ralstonia属細菌、Rhodobacter属細菌、Rhodopseudomonas属細菌、Sinorhizobium属細菌、Streptomyces属細菌、Synechococcus属細菌、Thermosynechococcus属細菌、Treponema属細菌、Archaeoglobus属始原菌、Halobacterium属始原菌、Mesorhizobium属始原菌、Methanobacterium属始原菌、Methanococcus属始原菌、Methanopyrus属始原菌、Methanosarcina属始原菌、Methanosarcina属始原菌、Pyrobaculum属始原菌、Sulfolobus 属始原菌、Thermoplasma属始原菌、好ましくはPropionibacterium属細菌、特にPropionibacterium freudenreichiiを宿主として使用する。あるいは、補酵素B12合成遺伝子を組み換えにより導入した宿主を用いてもよい。
宿主細胞においては、グリセロールデヒドロゲナーゼを発現しない宿主細胞、すなわちグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子を有しない細胞及びグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子をノックアウトした細胞を使用する。これらを用いることにより、グリセロールが酸化されてジヒドロキシアセトンに変換される経路を遮断することができ、より高い収率で1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸を製造することができる。グリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子をノックアウトする方法については、上記と同様の方法を使用できる。
大腸菌等の細菌を宿主として用いる場合は、組換えベクターが該宿主中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、目的とするDNA、転写終結配列を含む構成であることが好ましい。発現ベクターとしては、広範囲の宿主において複製・保持されるRK2複製起点を有するpLA2917(ATCC 37355)やRSF1010複製起点を有するpJRD215(ATCC 37533)等が挙げられる。
プロモーターとしては、宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター、T7プロモーターなどの大腸菌やファージ等に由来するプロモーターが用いられる。細菌への組換えベクターの導入方法としては、特に限定されないが、例えばカルシウムイオンを用いる方法(Current Protocols in Molecular Biology, 1, 181(1994))やエレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母を宿主として用いる場合は、発現ベクターとして、例えばYEp13、YCp50等が挙げられる。プロモーターとしては、例えばgal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、GAPプロモーター等が挙げられる。酵母への組換えベクターの導入方法としては、特に限定されないが、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 192, 9-1933(1978))、酢酸リチウム法(J. Bacteriol., 153, 163-168(1983))等が挙げられる。
動物細胞を宿主として用いる場合は、発現ベクターとして例えばpcDNAI、pcDNAI/Amp(インビトロジェン社)等が用いられる。プロモーターとしては、例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、CMVプロモーター等が挙げられる。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、特に限定されないが、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
遺伝子の単離及び形質転換体の作成については、Sambrook, J. et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Second Edition(1989) Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸の製造
本発明において、1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸の製造は、本発明の細菌又は形質転換体とグリセロールとを接触させ、反応生成物(培養菌体又は培養上清)中に1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸を蓄積させ、1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸を採取することにより実施できる。
本発明の細菌又は形質転換体とグリセロールとを接触させるとは、グリセロールの存在下で本発明の細菌又は形質転換体を培養すること、また、本発明の細菌又は形質転換体の培養物の処理物を用いて反応を行うことを包含する。該処理物としては、菌死体、菌体破砕物、菌体破砕物又は培養上清から調製した粗酵素、精製酵素等が挙げられる。また、常法により担体に固定化した菌体、該処理物、酵素等を用いることができる。
本発明の細菌又は形質転換体を培養する方法は、通常の方法に従って、炭素源としてグリセロールを用いることにより行われる。例えば、比較的リッチな培地、例えば2培地等を用いて好気培養し、菌体量を増やしてから嫌気条件にし、グリセロールを与えて発酵を行う。pHは、宿主の生育を妨害せず、かつ発酵液から酸を分離するときの障害とならない試薬を用いて調整する。炭酸ナトリウム、アンモニア、ナトリウムイオン供給源、例えば塩化ナトリウムを添加してもよい。また、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウム水溶液等の一般的なアルカリ試薬を用いてもよい。培養期間中pHは、5.0〜8.0、好ましくは5.5〜7.5に保持する。
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー等が挙げられる。また、無機物としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
培養中は、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、インデューサーを培地に添加することもできる。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)、インドール酢酸(IAA)等を培地に添加することができる。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、例えばRPMI−1640、DMEM培地又はこれらの培地にウシ胎児血清を添加した培地が用いられる。培養は、通常5%CO存在下、30〜40℃で1〜30日間行う。培養中はカナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
あるいは、上記において得られた細菌又は形質転換体の培養物から遠心分離などによって集菌を行い、適当なバッファに懸濁する。この菌体懸濁液をグリセロールを含むバッファに懸濁し、反応を行うことによって、1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸を製造することができる。反応の条件は、例えば、反応温度は10〜80℃、好ましくは15〜50℃、反応時間は5分〜96時間、好ましくは10分〜72時間、pHは5.0〜8.0、好ましくは5.5〜7.5である。
培養培地からの1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸の精製法は当該技術分野において周知である。例えば、有機溶媒を用いる抽出、蒸留及びカラムクロマトグラフィーに反応混合物を供することにより、培地から1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸を得ることができる(米国特許第5,356,812号)。また、限外濾過膜や水などの低分子のみが透過できるゼオライト分離膜などで発酵液の濃縮を行うのが好ましい。濃縮を行うことにより、水を蒸発させるためのエネルギーを低減することができる。
培地を高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析にかけることにより、1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸を直接同定することもできる。
(実施例1)グリセロールデヒドラターゼ遺伝子の取得
合成オリゴヌクレオチドプライマー(フォワードプライマー:5'-ATGAAACGTCAAAAACGATTTGAAGAACTAGAAAAAC-3'(配列番号27)、リバースプライマー:5'-TTAGTTATCGCCCTTTAGCTTCTTACGACTTT-3'(配列番号28)を作成し、Lactobacillus reuteri JCM1112株のゲノムを鋳型にして、以下の条件でPCR反応を実施した。
PCR反応組成(μl)
10×Buffer KODplus 5
2mM dNTPs 5
25mM MgSO
ゲノム 111ng/μl 1
KODplus 1
水 34
フォワードプライマー 20pM 1
リバースプライマー 20pM 1
反応系体積 計 50
反応サイクル:(94℃ 2分×1、94℃ 15秒、45〜65℃ 30秒、68℃ 5分)×30回、4℃ ∞。
断片溶液にTaqプレミックスを等量加えて、72℃で10分、3’A−オーバーハング処理し、精製したサンプルをpCR4−TOPOにTAクローニングした。シーケンサーはABIのPEISM310、3100を使用した。その結果、配列番号2で示されるグリセロールデヒドラターゼのラージサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列、配列番号6で示されるグリセロールデヒドラターゼのミディアムサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列、並びに配列番号10で示されるグリセロールデヒドラターゼのスモールサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列を決定した。
また、フォワードプライマー:5'-ATGAAACGTCAAAAACGTTTTGAAGAACTA-3'(配列番号29)、リバースプライマー:5'-CTAGTTATCACCCTTGAGCTTCTTT-3'(配列番号30)を作成し、Lactobacillus reuteri ATCC 53608株のゲノムを鋳型にして、上記と同様にPCR反応及びDNAシークエンスを実施した。その結果、配列番号4で示されるグリセロールデヒドラターゼのラージサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列、配列番号8で示されるグリセロールデヒドラターゼのミディアムサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列、並びに配列番号12で示されるグリセロールデヒドラターゼのスモールサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列を決定した。
(実施例2)プロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子の取得
フォワードプライマー:5'-ATGGGAGGCATAATTCCAATGGAAAAATA-3'(配列番号31)、リバースプライマー:5'-TTAACGAATTATTGCTTCGTAAACCATCTTC-3'(配列番号32)を作成し、Lactobacillus reuteri JCM1112株のゲノムを鋳型にして、実施例1と同様にPCR反応及びDNAシークエンスを実施した。その結果、配列番号14で示されるプロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子の塩基配列を決定した。
また、フォワードプライマー:5'-ATGGGAGGCATAATGCCGATG-3'(配列番号33)、リバースプライマー:5'-TTAACGAATTATTGCTTCGTAAATCATCTTC-3'(配列番号34)を作成し、Lactobacillus reuteri ATCC 53608株のゲノムを鋳型にして、実施例1と同様にPCR反応及びDNAシークエンスを実施した。その結果、配列番号16で示されるプロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子の塩基配列を決定した。
(実施例3)1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子の取得
フォワードプライマー:5'-ATGAATAGACAATTTGATTTCTTAATGCCAAG-3'(配列番号35)、リバースプライマー:5'-TTAGTAGATGCCATCGTAAGCCTTTT-3'(配列番号36)を作成し、Lactobacillus reuteri JCM1112株のゲノムを鋳型にして、実施例1と同様にPCR反応及びDNAシークエンスを実施した。その結果、配列番号18で示される1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子の塩基配列を決定した。
(実施例4)グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子遺伝子の取得
フォワードプライマー:5'-ATGGCAACTGAAAAAGTAATTGGTGTTGATATT-3'(配列番号37)、リバースプライマー:5'-TCACCTGTTTGCCATTTCCTTAAAAGGGATT-3'(配列番号38)を作成し、Lactobacillus reuteri JCM1112株のゲノムを鋳型にして、実施例1と同様にPCR反応及びDNAシークエンスを実施した。配列番号20で示されるグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子のラージサブユニットをコードする遺伝子、並びに配列番号24で示されるグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子のスモールサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列を決定した。
また、フォワードプライマー:5'-ATGGCAACTGAAAAAGTAATTGGTGTTG-3'(配列番号39)、リバースプライマー:5'-TCACCTGTTTACCATTTCCTTAAAGG-3'(配列番号40)を作成し、Lactobacillus reuteri ATCC 53608株のゲノムを鋳型にして、実施例1と同様にPCR反応及びDNAシークエンスを実施した。その結果、配列番号22で示されるグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子のラージサブユニットをコードする遺伝子、並びに配列番号26で示されるグリセロールデヒドラターゼ再活性化因子のスモールサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列を決定した。
(実施例5)プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子の取得
フォワードプライマー:5'-ATGCAGATTAATGATATTGAAAGTGCTGTA-3'(配列番号47)、リバースプライマー:5'-TTAATACCAGTTACGTACTGAGAATCC-3'(配列番号48)を作成し、Lactobacillus reuteri JCM1112株のゲノムを鋳型にして、実施例1と同様にPCR反応及びDNAシークエンスを実施した。配列番号42で示されるプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の塩基配列を決定した。
(実施例6)プロピオン酸キナーゼ遺伝子の取得
フォワードプライマー:5'-TTGATGTCAAAAAAAATACTTGCAATTAATTCTG-3'(配列番号49)、リバースプライマー:5'-TTATTGCTGAGTTACATTCATTACATCAC-3'(配列番号50)を作成し、Lactobacillus reuteri JCM1112株のゲノムを鋳型にして、実施例1と同様にPCR反応及びDNAシークエンスを実施した。配列番号44で示されるプロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子の塩基配列を決定した。
(実施例7)1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸の製造
(1)組み換え微生物の作成
5’-ATGGACCGCATTATTCAATCACCGGGTAAATACATCCAGGGCGCTGATGTGATTAATCGTTAACC-3’(プライマー1:配列番号71)をN末側に付加し、配列5’-CTGGGCGAATACCTGAAGCCGCTGGCAGAAC GCTGGTTAGTGGTGGGTGACAAATTTG-3’(プライマー2:配列番号72)を付加したアンピシリン耐性遺伝子(配列番号73)5μgとE.coli TOP10エレクトロコンピテントセル50μlの混合液を、Bio-Rad社製 Gene-Pulser IIを用いて、0.1 cmキュベットに移した。
Gene-Pulser IIを2.0 kV、25 mF、200Ωにセットし、電気パルスを印加した。印加後の混合液をSOC培地250μlに加え、37℃で1h培養したのち、50μg/mlのアンピシリンを含むLB培地の寒天プレートに塗布し、アンピシリン耐性株の選抜を行なった。アンピシリン耐性株の中からプライマー1とプライマー2を用いたコロニーPCRにより約2300bpの断片の増幅が認められた株をグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子ノックアウト菌株とした。
Klebsiella oxytoca ATCC8724のゲノム1μgを制限酵素Sau3AI1Uで37℃で10分間処理したサンプルを電気泳動で分離し、25〜35kb周辺のDNAを回収・精製した。これを日本ジーン社製Charomid9-20ベクターにライゲーションして日本ジーン社製Lambda INNでパッケージングし、グリセロールデヒドロゲナーゼをノックアウトしたE.coli TOP10に感染させて形質転換した。この形質転換体の中から、プローブとして、どの属のpduオペロンにおいてもオペロンの先頭部分にあるpocRのORF中の保存領域であるプローブ1(配列番号74)、どの属のpduオペロンにおいてもオペロンの後半部分にあるpduVのORF中の保存領域であるプローブ2(配列番号75)を選択し、コロニーハイブリダイゼーションを行い2つとも陽性だった菌株を選抜した。
(2)組み換え微生物の培養
この菌株1μlループ1掻き分を、クロラムフェニコール100μg/ml、アンピシリン50μg/mlを含む2培地5ml(グリセロール40g/l、硫酸アンモニウム 10g/l、KHPO 2g/l、KHPO6g/l、酵母エキス40g/l、硫酸マグネシウム七水和物1g/l、消泡剤アデカノール20滴/l)で、37℃にて振とうしながら好気条件で、対数増殖後期(OD660=50)まで培養した。この培養液1mlをとり、再度500ml坂口フラスコに入れたクロラムフェニコール100μg/ml、アンピシリン50μg/mlを含む2培地100mlに植え継ぎ、37℃にて振とうしながら好気条件で、対数増殖後期(OD660=50)まで培養した。
ここでIPTGを1mMとなるように投入し、2時間おいた。菌体を遠心分離で回収し、1Mのグリセロール200mMに加え、気相部を窒素に置換した100mlボトルをボトルローラー上に37℃で5時間おき、その後、液を分析した。その結果、液中には1,3−プロパンジオールが25mM、3−ヒドロキシプロピオン酸が21mM含まれていた。
(実施例8)
グリセロールデヒドロゲナーゼの遺伝子を破壊するため、グリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子の配列(配列番号45)を解析し、開始コドンから830bp付近のKpnIサイトを選択し制限酵素サイトに破壊導入確認用の薬剤耐性マーカーを導入した。
1)Lactobacillus reuteri JCM1112株のグリセロールデヒドロゲナーゼの取得とpCR4-TOPOベクターへの導入
ゲノム情報を元に以下のように、Lactobacillus reuteri JCM1112株のグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子部分増幅用プライマーを作成した。
フォワードプライマー:5'-ATGGTTGAAGAATTTGGCTCACC-3'(配列番号51)
リバースプライマー:5'-TTACATACGACTATGGTGACAACG-3'(配列番号52)
PCRによる増幅の結果、目的の1112bpの断片が作成できたので、これを3'Aオーバーハング処理して更に精製し、インビトロジェンTOPO TAクローニングkitを用いたTAクローニングを行い、TOP10セルへと形質転換した。pCR4-TOPOベクターのTAクローニングサイトにLactobacillus reuteri JCM1112株のグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子部が導入されたプラスミドを持つ形質転換体からプラスミド(pCR4-TOPO/Lb_GDH)を回収した。
2)薬剤耐性マーカー遺伝子の作成と制限酵素処理
既にインターネット上に公開されてるpIL253プラスミドの配列(http://www. ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=nucleotide&val=277339参照)を解析し、乳酸菌で薬剤耐性マーカーとして使用可能なエリスロマイシン耐性遺伝子とそのプロモーター、ターミネーター領域が含まれかつ両末端にKpnIサイトが存在するように配列番号46で表されるDNA断片を合成した。このDNA断片を以下の表1の組成で37℃、2時間、制限酵素処理を行い、精製回収し薬剤耐性マーカー配列とした。
Figure 2005304362
3)破壊導入断片の作成
a)直線化pCR4-TOPO/Lb_GDHの作成
以下の表2の組成で、37℃にて2時間制限酵素処理を行い、約4986bpの直線化プラスミドを回収した。
Figure 2005304362
続いて以下の表3の組成で、この直線化pCR4-TOPO/Lb_GDHを37℃で1.5時間アルカリフォスファターゼ処理し、精製回収した。回収された直線化pCR4-TOPO/Lb_GDHの濃度は30ng/μlであった。
Figure 2005304362
b)破壊導入断片を挿入配列として持つpCR-4/TOPOベクターの作成
a)で作成した直線化プラスミドと2)で作成した薬剤耐性マーカー配列を、ライゲーション反応を行って連結し、E.coli TOP10セルに形質転換した。形質転換体の中から破壊導入断片を挿入配列として持つpCR4-TOPOプラスミド(hakai/ pCR4-TOPO)を選抜し、回収した。
c)破壊導入断片の作成
b)で作成したhakai/ pCR4-TOPOをテンプレートに1)で使用したプライマーである
フォワードプライマー:5'-ATGGTTGAAGAATTTGGCTCACC-3'(配列番号51)
リバースプライマー:5'-TTACATACGACTATGGTGACAACG-3'(配列番号52)
を用いてPCRを行なったところ、2144bpの目的断片が増幅された。この断片を大量に精製及び濃縮し、平均5μg/μlの濃度に調製し、遺伝子破壊導入実験に用いた。
4)遺伝子破壊の導入
a)コンピテントセルの作成
以下の手順でコンピテントセルを作成した。
1. MRS培地10 ml×5に、終夜培養したL. reuteri菌液 各100mlを植菌し、OD600≒0.8まで培養した(試験管で培養を行った。ガスパックを使用した嫌気培養で約5〜5.5 h)。
2. 培養液×5本を50 mlファルコンチューブに移し、集菌後、滅菌蒸留水(室温) 30〜40 mlで3回洗浄した。
3. 滅菌蒸留水(室温) 800 mlで懸濁後、1.5 mlマイクロチューブに移し、集菌した。
4. 上清を廃棄後、30 % (wt/vol) PEG1500(dH2O) 250 mlで懸濁した。
5. 100 mlずつ分注し、−80℃で保存した。
6. 使用直前に溶解し、エレクトロポレーションに供した。
b) コンピテントセルへの破壊断片の導入
1. 供試プラスミド(5〜10 ml ; 2〜3 mg)を前記手法で作成したコンピテントセルに添加した。
2. 予め冷却しておいた0.2 cmキュベットに混合液を移した。
3. Gene pulserを2.5 kV, 25 mF, 200Ωにセットし、電気パルスを印加した。
4. すぐに、予め37℃で保温しておいたMRS brothをtotal 1 mlになるように添加し、37℃で1.5〜2 hインキュベートした。
5. MRS agar containing erythromycin (2 mg/ml)に塗抹し、37℃で24〜48 h嫌気培養した(ガスパックで嫌気培養を行った)。
c)破壊導入株の選抜
b)の培養の結果生育してきたエリスロマイシン耐性株を選抜し、ゲノムを回収した。そのゲノムをテンプレートにPCRにてインサートの確認を行なった。薬剤耐性という形質と、ゲノム上での遺伝子の導入がPCRにて確認できた株を破壊導入株とした。
5)破壊株を用いた反応
通常のMRS培地に2%グリセリンが入った培地10mlに終夜培養した破壊株の培養液100μlを加え、37℃で24h嫌気条件下で培養する。この菌体を2500×gで10分遠心分離して回収後、pH7.5の50mMカリウムリン酸バッファ10mlで2回洗浄後、グリセリン2%を含むpH7.5の50mMカリウムリン酸バッファ10mlを入れ37℃で反応させた。反応実績は、以下のとおりである。比較例として破壊導入していない乳酸菌を用いた。結果を以下の表4に示す。
Figure 2005304362
以上から、本発明により、グリセロールから1,3−プロパンジオールを製造する際の原料グリセロールのロスを低減し、かつ1,3−プロパンジオールと合わせて3−ヒドロキシプロピオン酸を製造することができることが明らかとなった。
(実施例9)ホスホトランスアシラーゼ活性の確認
対数増殖後期の菌体(Lactobacillus reuteri JCM1112株)ブロス10mlをpH8の50mMカリウムリン酸バッファ10mlで2回洗浄し、pH8の50mMカリウムリン酸バッファ10mlに再懸濁させ、氷冷しながら超音波にて菌体を破砕する。20,000×gで30分遠心し、上清を粗酵素液とした。この粗酵素液を適当に希釈し、アセチルCoAを加えたpH7.5のバッファに加え、37℃で反応させ、CoAの生成を定量した。その結果、CoAの生成が確認された。
また、Lactobacillus reuteri JCM1112株をゲノム解析した結果、ホスホトランスアシラーゼと相同性を持つorfが確認された。
pduオペロンの構造を示す。 グリセロールから1,3−プロパンジオール及び3−ヒドロキシプロピオン酸が生成される機構の一態様を示す。
配列番号27〜40、46〜52:合成オリゴヌクレオチド

Claims (10)

  1. Lactobacillus属細菌、Salmonella属細菌、Klebsiella属細菌、Listeria属細菌、Clostridium属細菌、Escherichia属細菌、Enterobacter属細菌、Caloramator属細菌、Acetobacterium属細菌、Brucella属細菌、Flavobacterium属細菌、Fusobacterium属細菌、Citrobacter属細菌及びPropionibacterium属細菌から選択される細菌において、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がノックアウトされたノックアウト細菌。
  2. pduオペロン及びホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子を有する細菌において、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がノックアウトされたノックアウト細菌。
  3. 請求項1又は2記載の細菌とグリセロールとを接触させることにより、1,3−プロパンジオール及び/又は3−ヒドロキシプロピオン酸を製造する方法。
  4. グリセロールデヒドラターゼ及び/又はジオールデヒドラターゼのラージサブユニットをコードする遺伝子、ミディアムサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子及び/又はジオールデヒドラターゼ再活性化因子のラージサブユニットをコードする遺伝子及びスモールサブユニットをコードする遺伝子、プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ホスホトランスアシラーゼをコードする遺伝子、プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子、並びに1,3−プロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子及び/又はプロパンジオールオキシドレダクターゼをコードする遺伝子を含み、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含まない、形質転換体。
  5. pduオペロンを有し、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含まない、請求項4記載の形質転換体。
  6. プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子である請求項4又は5記載の形質転換体:
    (a)配列番号41で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質
    (b)配列番号41で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
  7. プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、以下の(a)又は(b)のDNAを含む、請求項4又は5記載の形質転換体:
    (a)配列番号42で表される塩基配列からなるDNA
    (b)配列番号42で表される塩基配列の全部又は一部からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  8. プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子が以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子である請求項4又は5記載の形質転換体:
    (a)配列番号43で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質
    (b)配列番号43で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつプロピオン酸キナーゼ活性を有するタンパク質。
  9. プロピオン酸キナーゼをコードする遺伝子が、以下の(a)又は(b)のDNAを含む、請求項4又は5記載の形質転換体:
    (a)配列番号44で表される塩基配列からなるDNA
    (b)配列番号44で表される塩基配列の全部又は一部からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロピオン酸キナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  10. 請求項4〜9のいずれか1項記載の形質転換体とグリセロールとを接触させることにより、1,3−プロパンジオール及び/又は3−ヒドロキシプロピオン酸を製造する方法。
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