JP2005272737A - 金属酸化物薄膜前駆体の製造方法及びその利用 - Google Patents

金属酸化物薄膜前駆体の製造方法及びその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】 広範囲の金属原料に適用可能で、かつ、金属酸化物薄膜の物性を良好にし得る金属酸化物薄膜前駆体の製造方法及びその利用を提供する。
【解決手段】 本発明は、金属塩化物を溶剤に溶解した金属塩化物溶解液から金属酸化物薄膜前駆体を調製する金属酸化物薄膜前駆体の製造方法において、上記金属塩化物溶解液を冷却することにより塩素成分を析出し、この塩素成分を除去することにより、塩素成分を含まない金属酸化物薄膜前駆体を得ることが可能になる。そして、この金属酸化物薄膜前駆体を用いて金属酸化物薄膜を作成することで、物性が良好な金属酸化物薄膜を得ることができ、かつ、塩化物を形成する全ての金属塩化物に適用することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、金属酸化物薄膜前駆体の製造方法に関するものであり、より詳しくは、金属酸化物薄膜の製造に好適な金属酸化物薄膜前駆体の製造方法に関する。
金属酸化物薄膜は、多くの用途で使用されており、その需要は、拡大している。このような金属酸化物薄膜としては、例えば、透明導電性薄膜が挙げられる。この透明導電性薄膜は、ITO(Indium Tin Oxide)薄膜をはじめとして、光電変換素子、ディスプレー、帯電防止膜などに広く利用されている。
従来、このような金属酸化物薄膜の製造方法としては、ゾルゲル法、CDV法、スタッパリング法、レーザーアブレーション法などが挙げられる。その中でも、ゾルゲル法は、大規模な装置を必要とせずに非常に簡便な方法により、金属酸化物薄膜の製造が可能になるという特徴をもっている。また、ゾルゲル法は、大面積、複雑形状の物質上への薄膜形成が可能であるということも特徴である。
具体的に、このゾルゲル法とは、金属化合物を溶剤にて溶解して得られた、金属カチオンを含む溶液を調製し、この溶液から溶剤を除去して得られたゲル(以下、金属酸化物薄膜前駆体とする)を熱処理することにより金属酸化物薄膜を作製する方法である。
このようなゾルゲル法による金属酸化物薄膜製造方法は、例えば、非特許文献1及び2に記載されている。
非特許文献1の金属酸化物薄膜製造方法では、金属化合物としてインジウム硝酸塩(In(NO・HO)とスズ酢酸塩(Sn(CHCOO))とを用い、溶剤としてエチレングリコールとトリエタノールアミンとの混合物を用いて、金属酸化物薄膜前駆体を調製し、ゾルゲル法により、ITO薄膜を作製している。
また、非特許文献2では、金属化合物として塩化インジウム(InCl)と塩化スズ(SnCl)とを用いている。そして、塩化インジウムの溶剤としてアセチルアセトンを、塩化スズの溶剤としてエタノールを用いて、金属酸化物薄膜前駆体を調製している。この金属酸化物薄膜前駆体を、ゾルゲル法により、ITO薄膜を作製している。
Seon-Soon Kim, Se-Young Choi, Chan-Gyung Park, Hyeon-Woo Jin, "Transparent conductive ITO thin films through the sol-gel process using metal salts" Thin Solid Films 347, 1999, 155-160 M. J. Alam, D. C. Cameron, "Investigation of annealing effects of sol-gel deposited indium tin oxide thin films in different atmospheres" Thin Solid Films 420-421, 2002, 76-82
しかしながら、上述した何れの従来の金属酸化物薄膜製造方法において、それぞれ次に示すような課題を有している。そのため、その用途によっては、十分な実用性を発揮できない可能性がある。
まず、非特許文献1または2に記載の金属酸化物薄膜製造方法は、ITO薄膜の作製に限られた金属酸化物薄膜製造技術である。それゆえ、この金属酸化物薄膜製造方法を他の用途に用いられる金属酸化物薄膜に適用した場合、金属化合物の種類により異なる溶剤を用いなければならない。したがって、非特許文献1または2に記載の金属酸化物薄膜製造方法を、ITO薄膜以外の金属組成の金属酸化物薄膜に適用することは困難であり、広範囲の金属原料への汎用性がないという問題がある。
また、非特許文献2に記載の金属酸化物薄膜製造方法では、インジウム及びスズの塩化物を用いてITO薄膜を作製している。しかしながら、ゾルゲル法による金属酸化物薄膜製造方法において、金属酸化物薄膜前駆体中に塩素成分が含まれていると、金属酸化物薄膜の形成が困難になり、平滑な金属酸化物薄膜が得られないという問題がある。また、非特許文献2に記載の金属酸化物薄膜製造方法では、金属酸化物と塩素との複合物(MeOCl)が形成して、作製された金属酸化物薄膜に残ってしまうので、金属酸化物薄膜の物性に悪影響を与える。それゆえ、非特許文献2に記載の金属酸化物薄膜製造方法は、金属酸化物薄膜の物性の観点から、実用に供し得ない。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、広範囲の金属原料に適用可能で、かつ、金属酸化物薄膜の物性を良好にし得る金属酸化物薄膜前駆体の製造方法及びその利用を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、金属塩化物を溶剤に溶解した金属塩化物溶解液から塩素成分を除去することに成功し、これを用いることで広範囲の金属原料に適用可能で、かつ、金属酸化物薄膜の物性を良好にし得る金属酸化物薄膜前駆体を実現し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法は、上記の課題を解決するために、金属塩化物を溶剤に溶解した金属塩化物溶解液から金属酸化物薄膜前駆体を調製する金属酸化物薄膜前駆体の製造方法であって、上記金属塩化物溶解液を冷却する析出工程と、上記析出工程にて得られた、上記金属塩化物溶解液に含まれる物質を除去する除去工程とを含むことを特徴としている。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記析出工程の前に、上記金属塩化物溶解液を加熱する加熱工程を含むことが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記加熱後冷却工程にて、上記金属塩化物溶解液を100〜200℃の温度範囲で加熱する加熱工程を含むことが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記金属塩化物溶解液を加熱した後、冷却することが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記金属塩化物溶解液を100〜200℃の温度範囲で加熱することが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記溶剤が、アルコール系有機溶媒と、アミノアルコールと、非水系酸と、アンモニウム塩とを含んでなることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記金属塩化物溶解液には、金属塩化物1molに対して、アルコール系有機溶媒40〜70mol、アミノアルコール5〜12mol、非水系酸13〜32mol、アンモニウム塩1〜3molを混合していることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記アルコール系有機溶媒がアルキレングリコールであることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記アルコール系有機溶媒がエチレングリコールであることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記アミノアルコールが、ジアルカノアミン、または、トリアルコノールアミン、あるいは、これらの混合物であることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記アミノアルコールが、トリエタノールアミンであることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記非水系酸が、酢酸であることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記アンモニウム塩が、重炭酸アンモニウムであることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記金属塩化物は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオンからなる群より選択される少なくとも1つの金属イオンと、塩化物イオンとが形成する塩であることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記金属塩化物が、塩化スズと塩化インジウムとを含んでなることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜の製造方法は、上記の課題を解決するために、上述の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法により得られた金属酸化物薄膜前駆体を、基板上に膜状に形成して焼成する焼成工程を有することを特徴としている。
また、本発明の金属酸化物薄膜は、上記の課題を解決するために、上述の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法により得られた金属酸化物薄膜前駆体であることを特徴としている。
また、本発明の金属酸化物薄膜は、上記の課題を解決するために、上述の金属酸化物薄膜の製造方法により得られた金属酸化物薄膜であることを特徴としている。
本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法によれば、上記金属塩化物溶解液を冷却することにより、金属塩化物溶解液に含まれる塩素成分が析出する。そして、この塩素成分を除去することにより、金属酸化物薄膜の物性を良好にし得る金属酸化物薄膜前駆体を得ることができる。また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、塩化物を形成する全ての金属塩化物に適用することができる。それゆえ、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法は、広範囲の金属原料に適用可能である。
本発明の実施の一形態についてより具体的に説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこの記載に限定されるものではないことはいうまでもない。
・ 本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法
本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法は、金属塩化物を溶剤に溶解した金属塩化物溶解液から金属酸化物薄膜前駆体を調製する金属酸化物薄膜前駆体の製造方法であって、上記金属塩化物溶解液を冷却する析出工程と、上記析出工程にて得られた、上記金属塩化物溶解液に含まれる物質を除去する除去工程とを含んでいれば、特に限定されるものではない。ここでいう「金属塩化物」とは、金属イオンと塩化物イオンとの塩を意味する。また、上記「溶剤」とは、上記金属塩化物を溶解しえる溶媒のことをいう。それゆえ、上記「金属塩化物溶解液」とは、上記金属塩化物が上記溶剤に溶解された溶液のことをいう。
また、ここでいう「金属酸化物薄膜前駆体」とは、金属塩化物を溶剤にて溶解して得られた金属塩化物溶解液から、冷却することにより析出した物質を除去したゲル状組成物のことをいう。この金属酸化物薄膜前駆体には、金属‐酸素‐金属の結合を含む金属高分子(以下、(M−O−M)とする)、あるいは、コロイド状重合体が生成されている。
本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、析出工程にて、金属塩化物溶解液を冷却している。これにより、金属塩化物溶解液に含まれる物質が析出する。この析出工程にて析出された、金属塩化物溶解液に含まれる物質の中には、塩素成分が含まれている。
そして、上記除去工程にて、この塩素成分を除去することにより、調製した金属酸化物薄膜前駆体中に金属酸化物と塩素との複合物(MeOCl)が形成することはない。したがって、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、金属酸化物と塩素との複合物を含まず、物性の良好な金属酸化物薄膜を製造することが可能になる。
上記析出工程における冷却温度は、金属塩化物溶解液中の塩素成分が析出する温度であれば、特に限定されるものではないが、0℃近傍の温度が好ましい。金属塩化物溶解液を0℃近傍に冷却することにより、より効率的に塩素成分を析出させることが可能になる。また、金属塩化物の冷却時間については、用いた金属塩化物溶解液中の各種材料の種類、または、金属塩化物溶解液の液量等により、5分〜15分の範囲で適宜調整することができる。また、金属塩化物溶解液を冷却する手段としては、所定の温度まで金属塩化物溶解液を冷却することが可能な従来公知のものであれば、特に限定されない。例えば、冷蔵庫、冷凍庫、アイスバス等が挙げられる。
また、上記除去工程において、金属塩化物溶解液の冷却により析出した塩素成分の除去方法は、液中の沈殿物・析出物を除去する従来公知の方法であれば、特に限定されない。例えば、塩素成分の除去方法としては、遠心分離法、静置・濾過法等が挙げられる。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、塩化物を形成する全ての金属塩化物に適用することができる。それゆえ、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法は、広範囲の金属原料に適用可能である。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記析出工程の前に、上記金属塩化物溶解液を加熱する加熱工程を含んでいてもよい。すなわち、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、金属塩化物溶解液を加熱後冷却している。こうすることでも、金属塩化物溶解液に含まれる物質(塩素成分)を析出させることが可能である。なお、上記加熱工程では、金属塩化物を溶剤に溶解する溶解工程を含んでいてもよいし、金属塩化物を溶剤で溶解したもの、すなわち、金属塩化物溶解液を加熱してもよい。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、金属塩化物溶解液を温度範囲100〜200℃で加熱することが好ましく、温度範囲100〜180℃で加熱することが特に好ましい。金属塩化物と溶剤との混合物を100℃未満で加熱する場合には、金属イオンは、後述するアルコール系有機溶媒との反応が十分に起こらないため、好ましくない。また、金属塩化物と溶剤との混合物は、通常の大気圧のもとでは200℃以上にまで加熱することができない。それゆえ、金属塩化物と溶剤との混合物を200℃よりも低い温度で加熱することが好ましい。
また、金属塩化物の加熱時間については、用いた金属塩化物溶解液中の各種材料の種類、または、金属塩化物溶解液の液量等により、5分〜100分の範囲で適宜調整することができる。これにより、適切な粘性、例えば10〜100mPasになるように、金属酸化物薄膜前駆体を製造することが可能になる。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記溶剤が、アルコール系有機溶媒と、アミノアルコールと、非水系酸と、アンモニウム塩とを含んでなることが好ましい。すなわち、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法は、金属塩化物、アルコール系有機溶媒、アミノアルコール、非水系酸、アンモニウム塩として、よりよい材料を選択し、各材料の割合を特定のものとして、金属とアルコール系有機溶媒との反応を制御しながら、進行させるものである。そして、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法は、室温大気中でも粘性が安定化した組成物として、金属酸化物薄膜前駆体を得ることが可能になる。
以下に、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法において、金属塩化物から金属酸化物薄膜前駆体が形成されるまでの、アルコール系有機溶媒、アミノアルコール、非水系酸、及び、アンモニウム塩の役割を説明する。
(I)まず、金属塩化物と上記溶剤が混合された段階では、金属塩化物がアルコール系有機溶媒に溶解するものであればそのまま溶解し透明な溶液となる。しかしながら、多くの金属塩化物は、アルコール系有機溶媒に溶解しにくい。
(II)そして、加熱工程にて、温度が上昇して撹拌が行われていると、金属イオンはアミノアルコールと錯体を形成すると考えられる。すなわち、金属塩化物において、塩素イオンに取って代わる配位子となる。
(III)さらに、加熱工程にて、温度を上昇し加熱すると、金属イオンは、沸点の高いアルコール系有機溶媒と反応して錯体を形成する。この金属イオンとアルコール系有機溶媒との錯体は、溶剤に非水系酸とアンモニウム塩とが存在した状態でのみ溶解する。これは、非水系酸とアンモニウム塩とを除いた溶剤中で反応を行ったとき、金属イオンとアルコール系有機溶媒との錯体の結晶が析出することで確認できる。
(IV)上記段階で形成される金属イオンとアルコール系有機溶媒との錯体が、非水系酸とアンモニウム塩存在下で溶解しているとき、金属塩化物溶解液の粘性があがる。この粘性は、金属イオンとアルコール系有機溶媒との反応の度合い、または、非水系酸に対する錯体の濃度などと関係する。具体的には、加熱する温度と時間に関係するものと考えられる。実際、加熱温度が高く、時間が長い場合、溶液は粘性があがりすぎ固体が析出することが確認される。
(V)次に、析出工程にて、上記金属塩化物溶解液を冷却すると、金属塩化物溶解液中で遊離していた塩素イオンとアミノアルコールとの塩酸塩を含む物質が生成し、その溶解度が下がり、析出してくる。この塩素イオンとアミノアルコールとの塩酸塩を含む物質は、水に非常に溶けやすい。それゆえ、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法において、溶剤は、非水溶性の溶媒である。
(VI)そして、除去工程にて、金属塩化物溶解液中で遊離していた塩素イオンとアミノアルコールとの塩酸塩を含む物質を除去することで、金属イオンとアルコール系有機溶媒との錯体を含む金属酸化物薄膜前駆体を得る。
(VII)そして、焼成工程にて、この金属酸化物薄膜前駆体を焼成することで、上記金属イオンとアルコール系有機溶媒との錯体で、金属イオンがアルコール系有機溶媒の酸素と結合して金属酸化物薄膜が得られる。
また、本発明において、良好な酸化物薄膜を作るための金属酸化物薄膜前駆体を得るためには、次の条件が必要であると考えられる。すなわち、1)塩素イオンを塩酸塩という形で除去すること、2)上記の(III)の段階での反応によりアルコール系有機溶媒と金属イオンとの錯体を形成すること、及び、この錯体が非水系酸に溶解して適度な粘性を持つこと、が必要であると考えられる。
また、上記金属塩化物溶解液には、金属塩化物1molに対して、アルコール系有機溶媒40〜70mol、アミノアルコール5〜12mol、非水系酸13〜32mol、アンモニウム塩1〜3molを混合していることが好ましい。
以下に、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法における、金属塩化物、アルコール系有機溶媒、アミノアルコール、非水系酸、アンモニウム塩、をこの順に詳細に説明する。
(1−1)金属塩化物
上記「金属塩化物」とは、金属イオンと塩素イオンとの反応により生じた塩のことをいう。本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法において、金属塩化物は、金属酸化物薄膜前駆体の原料となる。本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、塩化物を形成する全ての金属塩化物に適用可能である。このような金属塩化物として、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオンからなる群より選択される少なくとも1つの金属イオンと、塩化物イオンとが形成する塩を用いることが可能である。
より具体的には、金属塩化物として、アルカリ金属であるリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、または、カリウム(K)、アルカリ土類金属であるカルシウム(Ca)、または、ストロンチウム(Sr)、遷移金属であるバリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、タンタル(Ta)、モリブテン(Mo)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、または、ビスマス(Bi)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等の塩化物を例示することができ、これらのいずれか1種を単独で、あるいは、2種以上の混合物として用いることができる。また、上述の金属塩化物に結晶水が含まれていてもよい。
従来のゾルゲル法では、一般的に、金属原料として金属アルコキシドなどの有機金属化合物を用いている。この金属アルコキシドは、高価であり、対応可能な金属原料が限られるという問題を有している。しかしながら、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、金属原料として、比較的安価な金属塩化物を用いている。それゆえ、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法は、より低コストで金属酸化物薄膜前駆体を提供することができる。
また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上述の金属塩化物を、アルコール系有機溶媒と、アミノアルコールと、非水系酸と、アンモニウム塩とを含んでなる溶剤に溶解して、金属酸化物薄膜前駆体を合成している。すなわち、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、同一の組成からなる溶剤から、上述の金属塩化物を金属原料とする金属酸化物薄膜前駆体を合成することが可能である。それゆえ、従来のゾルゲル法のように、合成する金属酸化物薄膜の金属原料ごとに、溶剤の組成、濃度等を検討・決定する必要がない。したがって、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法を適用することで、同一の組成からなる溶剤で、多種多様な金属原料を有する金属酸化物薄膜前駆体が容易に得られる。さらに、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法は、多種の金属原料が成分として含む多成分系金属酸化物薄膜の調製に極めて有効である。このような多成分系金属酸化物薄膜としては、上述の金属塩化物における金属を2成分以上有する金属酸化物薄膜であれば、特に限定されないが、例えば、CuAlO、(BaSr)TiO、(ZrY)O、InCuO、CoNi、CoFe、または、NiFe等を金属原料とする金属酸化物薄膜が挙げられる。
以下、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法における溶剤について、アルコール系有機溶媒、アミノアルコール、非水系酸、アンモニウム塩の順で具体的に説明する。
(1−2)アルコール系有機溶媒
本発明の金属酸化物薄膜の製造方法において、アルコール系有機溶媒は、極めて重要な役割を果たし、金属塩化物の主たる溶媒として多量に用いるようにしている。すなわち、このアルコール系有機溶媒は、金属塩化物を溶解して安定化することで、加熱処理におけるより低い温度ないしは室温付近の低い温度における(M−O−M)結合の形成を抑制する一方、加熱処理におけるより高い温度での(M−O−M)結合の形成を進行させている。それゆえ、(M−O−M)結合をより効率的に生成し、所望の高い粘度を有する金属酸化物薄膜前駆体を生成するようにしている。
上記アルコール系有機溶媒としては、金属塩化物を低温でも安定して溶解させることができるものであれば、特に限定されない。このようなアルコール系有機溶媒としては、沸点が100〜200℃程度の溶媒を用いることが好ましい。沸点が100〜200℃程度のアルコール系有機溶媒としては、例えば、1‐ブタノール、1‐ペンタノール等のモノアルコールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2‐ブタンジオール、1,3‐ブタンジオール、ヘキサメチレンジオール等のジオール、グリセリン、1,2,6‐ヘキサントリオール等のトリオールが挙げられる。中でも、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、上記アルコール系有機溶媒がアルキレングリコールであることが好ましく、エチレングリコールであることが特に好ましい。
本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法において、アルコール系有機溶媒の配合の割合は、例えば、金属塩化物1molに対して40〜70molの範囲で調整することができる。アルコール系有機溶媒の配合の割合が40mol未満の場合には、金属イオンとアルコール系有機溶媒とが十分に反応しないのため好ましくない。また、アルコール系有機溶媒の配合の割合が70molを超過する場合、金属イオン濃度が過度に低く金属酸化物薄膜形成に悪い影響を及ぼすため好ましくない。アミノアルコール、非水系酸、及び、アンモニウム塩とのバランスを考慮すると一概にはいえないが、このアルコール系有機溶媒は、金属塩化物1molに対して50〜70mol程度の範囲で調整することがより好ましく、60〜70mol程度の範囲で調整することが特に好ましい。アルコール系有機溶媒の配合の割合として、より具体的には、金属塩化物1molに対して60molの割合である。
(1−3)アミノアルコール
本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法において、アミノアルコールは、金属塩化物と反応し、金属塩化物における金属イオンの金属錯体を形成することで、室温付近の低温での室温付近の低い温度における(M−O−M)結合の形成の反応速度を抑制して制御するようにしている。
このようなアミノアルコールとしては、一般式(HORN(R3−sで表わされる各種のアミノアルコールを使用することができる。ここで、Rはアルキレン基またはアリール基であり、Rは水素、アルキル基、または、アリール基であり、sは1〜3の整数を示す。これらのRのアルキレン基またはアリール基、Rの水素、アルキル基、または、アリール基としては、特に限定されるものではなく、それぞれ各種のものとすることができる。
また、より保存安定性に優れた金属錯体が得られるという観点から、Rとしては、メチレン基、エチレン基、i‐プロピレン基、n‐プロピレン基、i‐ブチレン基、n‐ブチレン基、s‐ブチレン基、t‐ブチレン基等のアルキレン基、または、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基等のアリーレン基であることがより好ましい。さらに、安定化した金属錯体が得るために、R2は、直鎖または分岐を有するアルキレン基であることが特に好ましい。さらに、限定的には、分岐を有するアルキレン基であることが好ましい。このようなアミノアルコールとしては、ジアルカノールアミンやトリアルカノールアミンが挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、または、これらの内1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。これらのアミノアルコールのうち、特にトリエタノールアミン、ジエタノールアミンあるいはこれらの混合物が、金属錯体の保存安定性をより高いものにできることから、より好ましい。より限定的には、上記アミノアルコールとしては、トリエタノールアミンであることが好ましい。
本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法において、アミノアルコールの配合の割合は、例えば、金属塩化物1molに対して5〜12molの範囲で調整することができる。アミノアルコールの配合の割合が5mol未満の場合には、アミノアルコールが十分に金属イオンと錯体を形成することができないため好ましくない。また、アミノアルコールの配合の割合が12molを超過する場合、高温に加熱すると、金属イオンとアミノアルコールとの錯体が安定になり、金属イオンとアルコール系溶媒との反応が十分に起こらないため好ましくない。アルコール系有機溶媒、非水系酸、及び、アンモニウム塩とのバランスを考慮すると一概にはいえないが、このアミノアルコールは、金属塩化物1molに対して3〜15mol程度の範囲で調整することがより好ましく、5〜10mol程度の範囲で調整することが特に好ましい。アミノアルコールの配合の割合として、より具体的には、金属塩化物1molに対して7.5molの割合である。
(1−4)非水系酸
上記「非水系酸」とは、水を含まない酸性溶媒のことをいう。本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法において、非水系酸は、金属塩化物と反応し、金属塩化物における金属とのリガンドを形成することで、室温付近の低温での室温付近の低い温度における(M−O−M)結合の形成の反応速度を抑制して制御するようにしている。
このような非水系酸としては、金属塩化物における金属とリガンドを形成することが可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、ギ酸、プロピオン酸、安息香酸、フェノール、酢酸等が挙げられる。なかでも、上記非水系酸として、酢酸であることが好ましい。
(1−5)アンモニウム塩
上記「アンモニウム塩」とは、アンモニウムイオンと各種酸との反応により形成された化合物のことを意味する。本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法において、このアンモニウム塩は、特にアンモニウムイオンが、金属イオンとアルコール系有機溶媒との反応を助け、触媒の役割を果たす。それゆえ、このアンモニウム塩は、本発明の金属酸化物薄膜前駆体において、金属酸化物薄膜を形成する上で必須の化合物である。
このようなアンモニウム塩としては、金属酸化物薄膜の生成において触媒の役割を果たすアンモニウムイオンを含む塩であれば、特に限定されるものではないが、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム等が挙げられる。中でも、上記アンモニウム塩として、重炭酸アンモニウムであることが好ましい。
以上のように、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、金属酸化物と塩素との複合物(MeOCl)を含まず、物性の良好な金属酸化物薄膜を実現する金属酸化物薄膜前駆体を製造することが可能になる。また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法は、金属酸化物薄膜の金属原料として、金属塩化物を用いているので、塩化物を生成する全ての金属原料に適用可能である。
(2)本発明の金属酸化物薄膜の製造方法
一方で、本発明の金属酸化物薄膜の製造方法は、以上の方法により得られた金属酸化物薄膜前駆体を焼成する焼成工程を有することを特徴としている。この焼成工程により、金属酸化物薄膜前駆体中に含まれているアルコール系有機溶媒、アミノアルコールが除去されるとともに、金属酸化物薄膜前駆体中に形成されている(M−O−M)結合の不規則性が改善されて金属(M)が結晶化し、金属酸化物薄膜を得ることができる。
本発明の金属酸化物薄膜の製造方法において、金属酸化物薄膜前駆体は、所望の形態に形成してから焼成することができる。たとえば、この金属酸化物薄膜前駆体は、塊状のものとして形成することや、厚膜あるいは薄膜として、さらには所望のパターンあるいは大きさの厚膜あるいは薄膜として形成することなど、任意の形状に形成してから焼成することができる。また、この金属酸化物薄膜前駆体は、10〜100mPas程度の適切な粘度に調節することができるため、基板上に任意の手段で塗布するなどしてから焼成することなども可能とされる。
この金属酸化物薄膜前駆体が塗布される基板の材質や形状等については特に制限されず、各種のものとすることができる。たとえば、本発明の金属酸化物薄膜の製造方法においては、従来のゾル状の金属酸化物薄膜前駆体液では塗布することができなかったステンレス基板等の各種金属からなる基板に対しても容易に塗布が可能となる。もちろん、従来と同様に、ガラスやセラミックス等の基板に対しても塗布できる。また、基板の形状についてもたとえば平担な基板等に限定されず、任意の形状のものとすることができる。
さらに、この金属酸化物薄膜前駆体の基板上への塗布の方法については、特に限定されることものではないが、金属酸化物薄膜前駆体の特性を最もよく利用できるものとして、例えば、ディップコート法、及び、スピンコート法の何れの方法でも良好な金属酸化物薄膜を生成することが可能である。たとえばこの金属酸化物薄膜前駆体をディップコート法により塗布すると、1回の塗布により、基板上に数μm程度の厚さの均一な薄膜を、容易に形成することができる。これは、従来のゾル状の金属酸化物薄膜前駆体液を用いたスピンコート法やディップコート法により塗布して得られる膜厚の0.1〜0.2μmという厚さに比較して十分厚いものである。そして、このような膜厚は、もちろん金属酸化物薄膜前駆体の粘度により調整することができ、また、金属酸化物薄膜前駆体の複数回の塗布によって厚くすることなども可能である。
このように形成された金属酸化物薄膜前駆体に対する焼成は、空気または不活性ガス雰囲気中で、500〜1000℃程度の温度範囲で施すことができる。焼成温度が500℃以下では、有機物(アルコール系有機溶媒、アミノアルコール、非水系酸、及び、アンモニウム塩)が完全に燃焼、脱離することなく、金属酸化物中に残存するため好ましくない。また、焼成温度が1000℃を超過すると、金属酸化物薄膜前駆体が基板と反応を起こすために好ましくない。このより限定された焼成温度の範囲は、用いた金属塩化物、アルコール系有機溶媒およびアミノアルコールの種類、さらには非水系酸やアンモニウム塩の種類や量等によって様々に変わってくるものであるが、おおよその目安として500〜700℃程度の範囲を例示することができる。なお、不活性ガス雰囲気中での焼成は、アルコール系有機溶媒、アミノアルコールの除去の温度をより高温側に移動させるため、焼成の温度を高めに設定することが好ましい。この焼成の時間については、金属酸化物薄膜前駆体の粘性、厚さおよび形状等に応じて適宜調整することができる。
(3)本発明の利用
本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法によれば、上述のように、上記金属塩化物溶解液を冷却することにより、金属塩化物溶解液に含まれる塩素成分が析出し、この塩素成分を除去することにより、金属酸化物薄膜の物性を良好にし得る金属酸化物薄膜前駆体を得ることができる。また、本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法では、塩化物を形成する全ての金属塩化物に適用することができるので、広範囲の金属原料に適用可能である。
それゆえ、本発明の金属酸化物薄膜前駆体、または、金属酸化物薄膜の製造方法は、金属塩化物を形成可能な各種金属原料を有する金属酸化物薄膜の製造に有効である。特に、金属原料が2成分以上含んでなる金属酸化物薄膜の製造に有効である。
本発明の金属酸化物薄膜の製造方法は、金属酸化物薄膜として、例えば、n型透明半導体膜(ITO薄膜)の製造に適用することが可能である。n型透明半導体膜としては、これまで、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)等を金属原料とする金属酸化物薄膜、In(Sn)膜、SnO(Sb)膜、ZnO膜、CdSnO膜、CdSnO膜、TiO膜、CdO膜等の半導体膜、または、TiO/Ag/TiO膜、Au/Bi膜、In/Ag/In膜、In/Cu/In膜等の多層膜が用いられてきている。上記の金属酸化物薄膜、半導体膜、または、多層膜における金属原料は、塩化物を形成することが可能であるので、本発明の金属酸化物薄膜の製造方法を適用することができる。より具体的には、金属塩化物として塩化スズと塩化インジウムとを含んでなるものを用いた場合、本発明により、液中に塩素成分を含まない金属酸化物薄膜前駆体が得られ、この金属酸化物薄膜前駆体を用いて金属酸化物薄膜を製造することで、物性が良好なITO薄膜を得ることができる。
次に、本発明の金属酸化物薄膜の製造方法は、上記のITO薄膜の製造以外にも、例えば、CuAlO膜等のp型半導体膜、または、YBaCu膜やBi(SrCa)Cu膜等の酸化物超導電体薄膜の製造に、本発明の金属酸化物薄膜の製造方法を適用することができる。また、上記以外にも、本発明の金属酸化物薄膜の製造方法は、広範囲の金属原料に適用可能であり、各種金属原料の組み合わせが可能であるため、新規な物性を有する金属酸化物薄膜の合成が可能である。
以下添付した図面に沿って実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔実施例1〕
エチレングリコール 0.24mol(14.796ml)
トリエタノールアミン 0.03mol(4.5ml)
酢酸 0.083mol(5ml)
重炭酸アンモニウム 0.007mol(0.5849g)
金属塩化物 0.004mol
を混合して金属塩化物溶解液を調製した。具体的には、エチレングリコール14.796ml中に、マグネチックスターラーで攪拌しながら、トリエタノールアミン4.5mlを添加した。そして、この溶液に以下の表1に示す様々な金属塩化物を0.004mol加え、さらに重炭酸アンモニウムを0.5849g加えて、最後に酢酸5mlを加え、200℃に設定したヒーターで温度上昇が止まるまで加熱し、金属塩化物溶解液を調製した。そして、この金属塩化物溶解液を、100〜180℃まで還流下で30分加熱処理した(加熱工程)。その後、金属塩化物溶解液を、攪拌しながらアイスバスで冷却した(析出工程)。金属塩化物溶解液がほぼ0℃になったとき、濁ったゲル状の組成物が得られ、白い沈殿物が急速に生じた。この沈殿物には、塩素イオンとトリエタノールアミンが含まれて折り、この組成物を遠心分離して上澄み液と沈殿物とに分離して、沈殿物を除去し、金属酸化物薄膜前駆体を調製した(除去工程)。この上澄み液を、約1cm角のPYREX(登録商標)ガラスに塗布し、ホットプレートにより、100℃から200℃で加熱し、塗布液について完全にゲル化を行なった後、所定の温度で12時間、電気炉で焼成し、金属酸化物薄膜を得た(焼成工程)。そして、それぞれの金属塩化物から金属酸化物薄膜前駆体を作成するとき、加熱温度が止まったときの温度とその温度における金属塩化物溶解液の外見、及び、沈殿物の有無を観察した。その結果を表1に示す。
Figure 2005272737
表1に示すように、金属塩化物溶解液各種において、沈殿物が観察された。この沈殿物は、金属塩化物溶解液を室温にまで冷却しても得られず、0℃(氷水)においてのみ得られることがわかった。しかしながら、可逆性は認められず、金属塩化物溶解液を冷却後室温に戻しても沈殿物が溶剤に溶解することはなかった。さらに、この沈殿物は、非常に不安定であり、水に簡単に溶解し、空気中においても、空気中の水分を吸って潮解することがわかった。
また、金属塩化物の代わりに、例えば、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属バナジン酸塩、金属タングステン酸塩等の金属塩を用いた場合、金属塩は溶剤に溶解するが、0℃まで冷却しても沈殿物が全く得られないことがわかった。
〔実施例2〕
本実施例では、透明電極として広く使われているIn−Sn系におけるITO薄膜を合成した。
エチレングリコール 240mol
トリエタノールアミン 30mol
酢酸 83mol
重炭酸アンモニウム 7mol
塩化インジウム90% 塩化スズ(IV)10% 合計4mol
上記のように、実施例1で使用した溶剤と同様の組成において、塩化インジウム90% 塩化スズ(IV)10%(金属塩化物)の濃度、トリエタノールアミンの濃度、または、酢酸の濃度を変えて、上記実施例を同様の方法で、ITO薄膜前駆体(金属酸化物薄膜前駆体)を調製した。このITO薄膜前駆体をホウケイ酸ガラス(軟化点800℃)板上に1回塗布し、加熱処理(焼成)を行なって、ITO薄膜を得た。以下に加熱処理の温度設定を示す。
室温(1.5時間)→200℃(2時間)→700℃(5時間)
そして、得られたITO薄膜の外見を観察するととともに、テスターによる抵抗測定を行い、各種ITO薄膜の評価を行なった。その結果を表2に示す。
Figure 2005272737
表2に示すように、金属塩化物の濃度、トリエタノールアミンの濃度、あるいは、酢酸の濃度を変化させて、ITO薄膜を調製した場合、外見観察の結果、不透明であったり、表面がザラザラなど平滑性に欠けるITO薄膜が見られた。さらに、抵抗測定の結果、抵抗値が所定の範囲で変動したり、全く電流が流れなかったりして、良好な抵抗値を示すものがなかった。これに対して、上記の組成条件でITO薄膜を調整した場合、外見及び抵抗値が良好なITO薄膜が得られた。それゆえ、ITO薄膜の製造において、上記実施例1と同様の組成の溶剤を用いても、物性(外見・抵抗値)が良好なITO薄膜を得ることができることがわかった。
〔実施例3〕
本実施例では、上記実施例2におけるITO薄膜のIn/Snのモル比を変えて合成しITO薄膜前駆体を塗布した。そして、得られたITO薄膜について、(a)X線回折、(b)電気伝導測定、及び、(c)可視紫外透過度測定を行い、電気伝導性と可視紫外透過度とが良好なIn/Snのモル比を調べた。なお、ITO薄膜前駆体、及び、ITO薄膜の調製は、上記実施例2と同様の方法で行った。
(a)ITO薄膜についてX線回折を行い、その結果を図1及び図2に示した。図1は、In/SnにおけるSnのモル比(Sn/(In+Sn))を60〜100%にした場合に調製したITO薄膜についてのX線回折パターンである。また、図2は、In/SnにおけるSnのモル比(Sn/(In+Sn))を0〜50%にした場合に調製したITO薄膜についてのX線回折パターンである。図1に示すように、Snのモル比(Sn/(In+Sn))が80%のとき、酸化スズ(IV)固有の結晶構造を示す回折ピーク(図1中(211))が確認でき、その結晶性が、Snのモル比が上昇するとともに高まっていくことがわかった。また、図2に示すように、Snのモル比(Sn/(In+Sn))が0%のとき、既に酸化インジウム固有の結晶構造を示す回折ピーク(図2中(222))が確認でき、その結晶性が、Snのモル比が上昇するとともに減少していくことがわかった。また、このX線回折の結果から、ITO薄膜の表面(端成分)における酸化インジウム、酸化スズに対する、スズ、インジウムそれぞれの固溶限界が60%、10%であることがわかった。
次に(b)ITO薄膜について電気伝導測定を行い、その結果を図3に示した。図3は、Snのモル比が0〜20%におけるITO薄膜の比抵抗(Electric Conductivity)の変化を示すグラフである。なお、ITO薄膜は、所定のSnのモル比のITO薄膜前駆体を1回塗布した後、700℃で焼成したものを用いた。図3に示すように、Snのモル比が10%、すなわち、(In0.9Sn0.1において、ITO薄膜の比抵抗が最小になることがわかった。それゆえ、Snのモル比が10%で、電気伝導性が良好なITO薄膜が得られることが明らかになった。
次に、(c)ITO薄膜について可視紫外透過度測定を行い、その結果を図4に示した。図4は、Snのモル比が0〜100%におけるITO薄膜の可視紫外透過度の変化を示す写真である。可視紫外透過度は、Snのモル比が0〜100%のITO薄膜を所定の直線が描かれた基板ように、直線に沿って配置し、ITO薄膜に可視紫外光を照射し、直線が明確に見えるかで判定した。その結果、図4に示すように、Snのモル比が10%のときのITO薄膜が可視紫外光を良好に透過し、直線が最も鮮明に観察された。それゆえ、Snのモル比が10%で、可視紫外透過度が良好なITO薄膜が得られることが明らかになった。
以上のことから、Snのモル比が10%のときのITO薄膜が、最も良好な電気伝導性と可視紫外透過度とを示すことが明らかになった。
本発明の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法によれば、上述のように、金属酸化物薄膜の物性を良好にし得る金属酸化物薄膜前駆体を得ることができ、広範囲の金属原料に適用可能である。それゆえ、本発明の金属酸化物薄膜の製造方法は、金属塩化物を形成可能な各種金属原料を有する金属酸化物薄膜の製造に有効である。特に、金属原料が2成分以上含んでなる金属酸化物薄膜の製造に有効である。例えば、半導体産業におけるn型半導体膜、p型半導体膜などの製造に有効である。
図1は、In/SnにおけるSnのモル比(Sn/(In+Sn))を60〜100%にした場合に調製したITO薄膜についてのX線回折パターンを示す図である。 図2は、In/SnにおけるSnのモル比(Sn/(In+Sn))を0〜50%にした場合に調製したITO薄膜についてのX線回折パターンを示す図である。 図3は、Snのモル比が0〜20%におけるITO薄膜の比抵抗(Electric Conductivity)の変化を示すグラフである。 図4は、Snのモル比が0〜100%におけるITO薄膜の可視紫外透過度の変化を示す写真である。

Claims (16)

  1. 金属塩化物を溶剤に溶解した金属塩化物溶解液から金属酸化物薄膜前駆体を調製する金属酸化物薄膜前駆体の製造方法であって、
    上記金属塩化物溶解液を冷却する析出工程と、
    上記析出工程にて得られた、上記金属塩化物溶解液に含まれる物質を除去する除去工程とを含むことを特徴とする金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  2. さらに、上記析出工程の前に、を含むことを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  3. 上記加熱工程では、上記金属塩化物溶解液を100〜200℃の温度範囲で加熱することを含むことを特徴とする請求項2に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  4. 上記溶剤が、アルコール系有機溶媒と、アミノアルコールと、非水系酸と、アンモニウム塩とを含んでなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  5. 上記金属塩化物溶解液には、金属塩化物1molに対して、アルコール系有機溶媒40〜70mol、アミノアルコール5〜12mol、非水系酸13〜32mol、アンモニウム塩1〜3molを混合していることを特徴とする請求項4に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  6. 上記アルコール系有機溶媒がアルキレングリコールであることを特徴とする請求項4または5に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  7. 上記アルコール系有機溶媒がエチレングリコールであることを特徴とする請求項4または5に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  8. 上記アミノアルコールが、ジアルカノアミン、または、トリアルコノールアミン、あるいは、これらの混合物であることを特徴とする請求項4〜7の何れか1項に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  9. 上記アミノアルコールが、トリエタノールアミンであることを特徴とする請求項4〜8の何れか1項に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  10. 上記非水系酸が、酢酸であることを特徴とする請求項4〜9の何れか1項に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  11. 上記アンモニウム塩が、重炭酸アンモニウムであることを特徴とする請求項4〜10の何れか1項に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  12. 上記金属塩化物は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオンからなる群より選択される少なくとも1つの金属イオンと、
    塩化物イオンとが形成する塩であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  13. 上記金属塩化物が、塩化スズと塩化インジウムとを含んでなることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法。
  14. 請求項1〜13の何れか1項に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法により得られた金属酸化物薄膜前駆体を、基板上に膜状に形成して焼成する焼成工程を有することを特徴とする金属酸化物薄膜の製造方法。
  15. 請求項1〜13の何れか1項に記載の金属酸化物薄膜前駆体の製造方法により得られた金属酸化物薄膜前駆体。
  16. 請求項14に記載の金属酸化物薄膜の製造方法により得られた金属酸化物薄膜。
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