JP2005233752A - 分子動力学を利用した物性値評価システムおよび物性値評価方法ならびに物性値評価プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】 分子動力学を用いた熱伝導度評価計算の精度を向上させる。
【解決手段】 微小体積内からなる系を構成する原子・分子間の相互に働く相互作用を計算し、相互作用に起因する力を用いて原子・分子に対する運動方程式を作成し、運動方程式を数値的に解くことにより、各原子の位置、速度情報を算出し、得られた位置・速度情報を統計的に処理することによって、熱伝導度を計算する。熱伝導度λを評価する際に、正準分布を仮定した評価式による熱伝導度をλ0とし、温度Tの系の全エネルギーの時間平均値と、温度T+ΔTの平衡分子動力学計算から得られた全エネルギーの時間平均値とを用いて求めた系の熱容量Cvと、温度Tの平衡分子動力学計算で得られた全エネルギーの時間ゆらぎから求めた系の熱容量Cv’との比αをα=Cv’/Cvと定義するときに、λ=λ0/αと表される評価式を用いる。
【選択図】 図1
【解決手段】 微小体積内からなる系を構成する原子・分子間の相互に働く相互作用を計算し、相互作用に起因する力を用いて原子・分子に対する運動方程式を作成し、運動方程式を数値的に解くことにより、各原子の位置、速度情報を算出し、得られた位置・速度情報を統計的に処理することによって、熱伝導度を計算する。熱伝導度λを評価する際に、正準分布を仮定した評価式による熱伝導度をλ0とし、温度Tの系の全エネルギーの時間平均値と、温度T+ΔTの平衡分子動力学計算から得られた全エネルギーの時間平均値とを用いて求めた系の熱容量Cvと、温度Tの平衡分子動力学計算で得られた全エネルギーの時間ゆらぎから求めた系の熱容量Cv’との比αをα=Cv’/Cvと定義するときに、λ=λ0/αと表される評価式を用いる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、分子動力学を利用した物性値評価システムおよび物性値評価方法ならびに物性値評価プログラムに関するものであって、特に熱伝導度の評価性度を高めることができるものに係る。
計算機の性能向上に伴い、系の構成要素である原子や分子レベル、あるいは超微粒子レベルの観点に立ち、微視的および巨視的な物理量等の評価を行なう、分子シミュレーションが盛んに行なわれるようになってきた。分子シミュレーションでは、連続体としての支配方程式を差分法は有限要素法などで離散化してその方程式の解を求める数値解析法とは異なり、系の構成要素である分子の運動を直接追跡する。実験室で作り出すことが困難な極限状態における諸問題を解決できる可能性も期待されている(特許文献1〜3参照)。
分子シミュレーションには、大別してモンテカルロ法と分子動力学法がある。モンテカルロ法は分子の配置をある確率法則の下に乱数を用いて作成していく確率論的な方法であり、分子動力学法は、分子の運動方程式を連立して解く決定論的方法である。モンテカルロ法、分子動力学法ともに統計力学が基本となっており、それぞれの粒子の位置や速度、エネルギーを統計的に処理することによって、巨視的な物理量を算出することができる。
分子動力学法では、原子や分子を球形や楕円体状の粒子として表現する。それぞれの粒子間にはポテンシャル関数に基づく相互作用が設定されており、それぞれの粒子はそのポテンシャルに従った力を受けて計算体系の中を運動する。
通常の分子動力学法では、粒子間のポテンシャルとして
(a)LJポテンシャル
(b)クーロンポテンシャル
(c)結合ポテンシャル
(d)結合角ポテンシャル
などが考慮される。
(a)LJポテンシャル
(b)クーロンポテンシャル
(c)結合ポテンシャル
(d)結合角ポテンシャル
などが考慮される。
の形で知られるポテンシャルである。rは対象とする2粒子間の距離である。εとσは実数であり、対象とする粒子種毎に定められる。mとnは正の整数である。
(b)クーロンポテンシャルφQは、粒子の持つ電荷間に働くポテンシャルで、
φQ(r)=q1q2/r --- (2)
の形で与えられる。rは対象とする2粒子間の距離であり、q1とq2は対象とする2粒子のそれぞれが持つ電荷である。
φQ(r)=q1q2/r --- (2)
の形で与えられる。rは対象とする2粒子間の距離であり、q1とq2は対象とする2粒子のそれぞれが持つ電荷である。
(c)結合ポテンシャルは分子内の原子の化学結合を模擬するもので、対象とする二つの原子間あるいは粒子間の距離をr、安定な原子間(あるいは粒子間)距離をr0としたときに、例えば
φB(r)=kB(r−r0)2 --- (3)
の形で与えられる。ここで、kBは定数である。
φB(r)=kB(r−r0)2 --- (3)
の形で与えられる。ここで、kBは定数である。
(d)結合角ポテンシャルは、三つの原子(粒子)のなす角度に対するポテンシャルで、安定な角度をθ0、現在の角度をθとしたときに、例えば
φA(θ)=kA(θ−θ0)2 --- (4)
の形で与えられる。kAは定数である。
φA(θ)=kA(θ−θ0)2 --- (4)
の形で与えられる。kAは定数である。
分子動力学計算では設定されたタイムステップ毎に、すべての粒子対に対して上記ポテンシャル値を計算し、そこから算出される各粒子に働く力を用いて運動方程式を数値的に解いて、すべての粒子の位置・速度・加速度等の値を時系列データとして出力する。
熱伝導度の評価は、分子動力学計算から得られた構成粒子の位置と速度の時系列データに対して統計処理を行なって算出する。従来例として、分子動力学法を用いた熱伝導度評価の典型的な計算フローを図3に示す。
計算フローは、入力部S101と、その後の分子動力学計算部S102と、その後の熱伝導評価部S103に分けられる。
まず、入力部S101で、ある物質あるいは化合物を想定し、その物質の分子モデルを表現するパラメータを入力データとして設定する。すなわち、原子・分子データ入力(ステップS1)および,解析条件入力(ステップS2)を行なう。
次に分子動力学計算部S102に移り、入力データに対して分子動力学計算を、平衡状態のある一定時間について行なう(ステップS3)。分子動力学計算から各粒子の位置と速度を出力する(ステップS4)。
のように算出する(ステップS6)。ここで、mj、vjはそれぞれj番目の粒子の質量と速度であり、Nは全粒子数である。またφは(1)〜(4)式で与えられる各ポテンシャルの和である。
これらの諸量を用いて熱伝導度λを算出する(ステップS7、S8)。この熱伝導度λを算出するに当って使用される評価式がいくつか提案されている。以下にその例を示す(非特許文献1参照)。
ここで、tは分子動力学計算を実施した時間、kBはボルツマン定数、Tは温度、Nは計算に利用した原子あるいは分子の個数、E* j、E* pはそれぞれj番目、p番目の原子あるいは分子の持つエネルギーの時間平均値からのずれ、zj(t)はj番目の粒子の時刻tにおける位置、zp(0)はp番目の粒子の初期位置である。
ここで、tは分子動力学計算を実施した時間、kBはボルツマン定数、Tは温度、Nは計算に利用した原子あるいは分子の個数、E* j(t)、E* j(0)はそれぞれj番目の原子あるいは分子の時刻tおよび初期時間(時刻0)におけるエネルギーの時間平均値からのずれ、zj(t)、zj(0)はj番目の粒子の時刻tおよび初期時刻における位置である。
で定義される。
ここで、vi(t)はi番目の原子あるいは分子の時刻tにおける速度、xij(t)は時刻tにおけるi番目とj番目の原子あるいは分子の相対位置、fij(t)は時刻tにおけるi番目とj番目の原子あるいは分子間に働く力である。A2(t)についての時間平均<A2(t)>を評価する際には、t0についての平均を計算する。
特開平11−272723号公報
特開平11−53414号公報
特開2002−55970号公報
神山新一・佐藤明著、「分子動力学シミュレーション」、分子シミュレーション講座2、朝倉書店発行。第129〜131頁
上記評価式1〜3の導出においては、対象とするすべての粒子が構成する系が、統計力学で言うところの正準分布を有していることを仮定している。しかしながら、分子動力学のアルゴリズムは、対象とする系が正準分布を有することを必ずしも保証しているわけではない。したがって、正準分布を仮定した評価式は必ずしも適切ではない。例えば、340K、30MPaの水の熱伝導度を、定温制御(NVT−Berendsenの制御)を使用した分子動力学計算と評価式3を用いて算出すると、実験値と比べておよそ13.7倍大きな値が得られ、評価値の信頼性は低いものである。
このように、分子動力学を用いた熱伝導度評価には、分子動力学計算結果から熱伝導度を算出する従来の評価式を用いると、現実からかけ離れた値を算出する可能性がある。
この発明は上記に示す課題を解決するためになされたものであり、評価式を修正することにより評価計算の精度を向上させることを目的とする。
本発明は上記目的を達成するものであって、請求項1に記載の発明は、ある物質あるいは混合物の微小体積内からなる系を構成するN個の原子・分子間の相互に働く相互作用を計算し、その相互作用に起因する力を用いてすべての原子・分子に対する運動方程式を作成し、その運動方程式を数値的に解くことにより、各原子の位置、速度情報を算出し、得られた位置・速度情報を統計的に処理することによって、系の熱伝導度を含むマクロ物性値を計算する物性値評価システムにおいて、熱伝導度λを評価する際に、正準分布を仮定した評価式による熱伝導度をλ0とし、熱伝導度λを求めたい温度Tの系の全エネルギーの時間平均値と、温度Tよりも微小温度ΔTだけ高い温度T+ΔTの平衡分子動力学計算から得られた全エネルギーの時間平均値とを用いて求めた系の熱容量Cvと、温度Tの平衡分子動力学計算で得られた全エネルギーの時間ゆらぎから求めた系の熱容量Cv’との比αをα=Cv’/Cvと定義するときに、λ=λ0/αと表される評価式を用いること、を特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、ある物質あるいは混合物の微小体積内からなる系を構成するN個の原子・分子間の相互に働く相互作用を計算し、その相互作用に起因する力を用いてすべての原子・分子に対する運動方程式を作成し、その運動方程式を数値的に解くことにより、各原子の位置、速度情報を算出し、得られた位置・速度情報を統計的に処理することによって、系の熱伝導度を含むマクロ物性値を計算する物性値評価方法において、熱伝導度λを評価する際に、正準分布を仮定した評価式による熱伝導度をλ0とし、熱伝導度λを求めたい温度Tの系の全エネルギーの時間平均値と、温度Tよりも微小温度ΔTだけ高い温度T+ΔTの平衡分子動力学計算から得られた全エネルギーの時間平均値とを用いて求めた系の熱容量Cvと、温度Tの平衡分子動力学計算で得られた全エネルギーの時間ゆらぎから求めた系の熱容量Cv’との比αをα=Cv’/Cvと定義するときに、λ=λ0/αと表される評価式を用いること、を特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、計算機により、ある物質あるいは混合物の微小体積内からなる系を構成するN個の原子・分子間の相互に働く相互作用を計算し、その相互作用に起因する力を用いてすべての原子・分子に対する運動方程式を作成し、その運動方程式を数値的に解くことにより、各原子の位置、速度情報を算出し、得られた位置・速度情報を統計的に処理することによって、系の熱伝導度を含むマクロ物性値を計算する物性値評価プログラムにおいて、熱伝導度λを評価する際に、正準分布を仮定した評価式による熱伝導度をλ0とし、熱伝導度λを求めたい温度Tの系の全エネルギーの時間平均値と、温度Tよりも微小温度ΔTだけ高い温度T+ΔTの平衡分子動力学計算から得られた全エネルギーの時間平均値とを用いて求めた系の熱容量Cvと、温度Tの平衡分子動力学計算で得られた全エネルギーの時間ゆらぎから求めた系の熱容量Cv’との比αをα=Cv’/Cvと定義するときに、λ=λ0/αと表される評価式を用いること、を特徴とする。
本発明によれば、分子動力学を用いた熱伝導度評価の計算精度を向上させることができる。
従来の熱伝導度評価値の精度が悪いのは、分子動力学計算で必ずしも保証されていない正準分布を仮定した評価式を用いていることにある。
本発明に係わる物性値評価システムは、従来の正準分布を仮定した評価式による熱伝導度λ0を以下に定義するαで除した、新しい評価式を用いて熱伝導度λを計算する。
α=Cv’/Cv --- (11)
ここで、Cvは、熱伝導度を求めたい温度Tの系の全エネルギーの時間平均値<H(T)>と、温度Tよりも微小温度ΔTだけ高い温度T+ΔTの平衡分子動力学計算から得られた全エネルギーの時間平均値<H(T+ΔT)>とを用いて求めた系の熱容量
ここで、Cvは、熱伝導度を求めたい温度Tの系の全エネルギーの時間平均値<H(T)>と、温度Tよりも微小温度ΔTだけ高い温度T+ΔTの平衡分子動力学計算から得られた全エネルギーの時間平均値<H(T+ΔT)>とを用いて求めた系の熱容量
である。
から求める。
このαで(6)〜(8)式を除してやることにより、新評価式が得られる。
λ=λ0/α --- (15)
具体的には、以下の各式になる。
具体的には、以下の各式になる。
ここで、tは分子動力学計算を実施した時間、kBはボルツマン定数、Tは温度、Nは計算に利用した原子あるいは分子の個数、E* j、E* pはそれぞれj番目、p番目の原子あるいは分子の持つエネルギーの時間平均値からのずれ、zj(t)はj番目の粒子の時刻tにおける位置、zp(0)はp番目の粒子の初期位置である。
ここで、tは分子動力学計算を実施した時間、kBはボルツマン定数、Tは温度、Nは計算に利用した原子あるいは分子の個数、E* j(t)、E* j(0)はそれぞれj番目の原子あるいは分子の時刻tおよび初期時間(時刻0)におけるエネルギーの時間平均値からのずれ、zj(t)、zj(0)はj番目の粒子の時刻tおよび初期時刻における位置である。
ここで、tは分子動力学計算を実施した時間、Vは分子動力学計算で用いたセルの体積、kBはボルツマン定数、Tは温度であり、<>は時間平均を表す。
で定義される。ここで、vi(t)はi番目の原子あるいは分子の時刻tにおける速度、xij(t)は時刻tにおけるi番目とj番目の原子あるいは分子の相対位置、fij(t)は時刻tにおけるi番目とj番目の原子あるいは分子間に働く力である。A2(t)についての時間平均<A2(t)>を評価する際には、t0についての平均を計算する。
ここで、図2を参照して、本発明に係る物性値評価システムの実施の形態の構成を説明する。このシステムは、入力装置33および表示装置32が接続された演算処理装置(計算機)31を有する。演算処理装置31は、あらかじめ記憶媒体に記憶されたプログラムによって、後述の熱伝導度評価計算方法(図1)における分子動力学計算部S202と熱伝導評価部S203を実行するように構成されている。
次に、図1を参照して、本発明に係る物性値評価方法の実施の形態の具体的フローを説明する。
計算フローは、入力部S201と、その後の分子動力学計算部S202と、その後の熱伝導評価部S203に分けられる。
まず、入力部S201で、ある物質あるいは化合物を想定し、その物質の分子モデルを表現するパラメータを入力データとして設定する。すなわち、原子・分子データ入力(ステップS11)および,解析条件入力(ステップS12)を行なう。
次に、分子動力学計算部S202に移り、入力データに対して分子動力学計算を、温度Tについて、平衡状態のある一定時間について行なう(ステップS13)。分子動力学計算から、温度Tについて、各粒子の位置と速度を出力する(ステップS14)。さらに、温度T+ΔTについても同様に分子動力学計算を行ない(ステップS15)、これに基づいて温度T+ΔTについて各粒子の位置と速度を出力する(ステップS16)。
次に、熱伝導評価部S203に移り、各粒子の位置と速度を読み込んで(ステップS17)、(5)式を用いて、それぞれの粒子の全エネルギーを計算する(ステップS18)。また、温度Tと温度T+ΔTの分子動力学計算結果から(12)式を用いて定積熱容量Cvを計算し(ステップS19)、温度Tの分子動力学計算結果から(13)式を用いて定積熱容量Cv’を計算する(ステップS20)。これらの結果から、(11)式によりαを計算する(ステップS21)。さらに、本発明による新評価式1〜3((16)〜(18)式)のいずれかを用いて熱伝導度λを算出し(ステップS22)、これを熱伝導度データとして出力する(ステップS23)。
なお、上記説明では、各計算部および各ステップを順次実行するように説明したが、これらは、式を変形することなどにより、順番を変えたり、一つの式で一度に複数のステップを実行することも可能である。
次に、本実施の形態の作用・効果を説明する。
従来手法による熱伝導度評価では、評価式の導出に正準分布を仮定していたため、必ずしも正準分布が保証されていない分子動力学の計算結果を用いた熱伝導評価では評価誤差が大きかった。
と書ける。
分子動力学計算により、空間的・時間的な温度変化が求められたとすると、熱伝導方程式(21)を利用して熱伝導度を算出することができる。ある温度の時間・空間分布が得られたとき、比例関係を満たす定積比熱(あるいは定積熱容量)と熱伝導度の任意の組に対して(21)式あるいは(22)式が成り立つ。したがって、定積比熱(あるいは定積熱容量)の値に誤差があれば、その誤差分だけ熱伝導度の評価値にも誤差が生じることになる。
実際、先に背景技術として述べた、340K、30MPaの水に対して定温制御(NVT−Berendsenの制御)を使用した分子動力学計算から、(12)式と(13)式を用いて2種類の定積比熱を算出すると、それぞれ4.9(kJ/kg・K)、37(kJ/kg・K)が得られ、実測値3.9(kJ/kg・K)と比べると、正準分布を仮定した(13)式よりも、系の熱容量から直接算出した(12)式の方が現実に則している。すなわち、従来の熱伝導度評価式においては、誤差の大きい(12)式を用いて熱容量を評価しているため、(21)式あるいは(22)式を通じて熱伝導度の評価値も大きな誤差を持つことになる。
これに対して、本発明の実施の形態では、(12)式と(13)式を用いて評価した二つの熱容量CvとCv’の比α=Cv’/Cvという補正係数を導入し、正準分布と実際の分布への補正を行なう。これにより、分子動力学計算と整合した熱伝導度の評価を行なうことができ、評価精度が向上する。
実際、340K、30MPaの水に対して定温制御(NVT−Berendsenの制御)を使用した分子動力学計算から新しい評価式(17)式を用いて熱伝導度評価を行なうと、1.1(W/m・K)となって実測値0.67(W/m・K)と比べ約1.6倍の評価値となり、従来の評価式で得られた13.7倍と比べて大きく改善される。
31…演算処理装置、32…表示装置、33…入力装置。
Claims (6)
- ある物質あるいは混合物の微小体積内からなる系を構成するN個の原子・分子間の相互に働く相互作用を計算し、その相互作用に起因する力を用いてすべての原子・分子に対する運動方程式を作成し、その運動方程式を数値的に解くことにより、各原子の位置、速度情報を算出し、得られた位置・速度情報を統計的に処理することによって、系の熱伝導度を含むマクロ物性値を計算する物性値評価システムにおいて、
熱伝導度λを評価する際に、
正準分布を仮定した評価式による熱伝導度をλ0とし、
熱伝導度λを求めたい温度Tの系の全エネルギーの時間平均値と、温度Tよりも微小温度ΔTだけ高い温度T+ΔTの平衡分子動力学計算から得られた全エネルギーの時間平均値とを用いて求めた系の熱容量Cvと、温度Tの平衡分子動力学計算で得られた全エネルギーの時間ゆらぎから求めた系の熱容量Cv’との比αをα=Cv’/Cvと定義するときに、
λ=λ0/αと表される評価式を用いること、を特徴とする物性値評価システム。 - 請求項1に記載の物性値評価システムにおいて、
分子動力学計算を実施した時間をtとし、分子動力学計算で用いたセルの体積をVとし、ボルツマン定数をkBとし、温度をTとし、時間平均を<>で表し、
i番目の原子あるいは分子の時刻tにおける速度をvi(t)とし、時刻tにおけるi番目とj番目の原子あるいは分子の相対位置をxij(t)とし、時刻tにおけるi番目とj番目の原子あるいは分子間に働く力をfij(t)とし、
A(t)として、
A2(t)についての時間平均<A2(t)>を評価する際には、t0についての平均を計算するものとするときに、
前記正準分布を仮定した評価式による熱伝導度λ0として、
- ある物質あるいは混合物の微小体積内からなる系を構成するN個の原子・分子間の相互に働く相互作用を計算し、その相互作用に起因する力を用いてすべての原子・分子に対する運動方程式を作成し、その運動方程式を数値的に解くことにより、各原子の位置、速度情報を算出し、得られた位置・速度情報を統計的に処理することによって、系の熱伝導度を含むマクロ物性値を計算する物性値評価方法において、
熱伝導度λを評価する際に、
正準分布を仮定した評価式による熱伝導度をλ0とし、
熱伝導度λを求めたい温度Tの系の全エネルギーの時間平均値と、温度Tよりも微小温度ΔTだけ高い温度T+ΔTの平衡分子動力学計算から得られた全エネルギーの時間平均値とを用いて求めた系の熱容量Cvと、温度Tの平衡分子動力学計算で得られた全エネルギーの時間ゆらぎから求めた系の熱容量Cv’との比αをα=Cv’/Cvと定義するときに、
λ=λ0/αと表される評価式を用いること、を特徴とする物性値評価方法。 - 計算機により、
ある物質あるいは混合物の微小体積内からなる系を構成するN個の原子・分子間の相互に働く相互作用を計算し、その相互作用に起因する力を用いてすべての原子・分子に対する運動方程式を作成し、その運動方程式を数値的に解くことにより、各原子の位置、速度情報を算出し、得られた位置・速度情報を統計的に処理することによって、系の熱伝導度を含むマクロ物性値を計算する物性値評価プログラムにおいて、
熱伝導度λを評価する際に、
正準分布を仮定した評価式による熱伝導度をλ0とし、
熱伝導度λを求めたい温度Tの系の全エネルギーの時間平均値と、温度Tよりも微小温度ΔTだけ高い温度T+ΔTの平衡分子動力学計算から得られた全エネルギーの時間平均値とを用いて求めた系の熱容量Cvと、温度Tの平衡分子動力学計算で得られた全エネルギーの時間ゆらぎから求めた系の熱容量Cv’との比αをα=Cv’/Cvと定義するときに、
λ=λ0/αと表される評価式を用いること、を特徴とする物性値評価プログラム。
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---|---|---|---|---|
JP2010139500A (ja) * | 2008-11-13 | 2010-06-24 | Mitsubishi Electric Corp | 輸送係数の算出方法、輸送係数の算出装置、および輸送係数の算出プログラム |
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