JP2005225934A - ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー、カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン及びこれらの製造方法 - Google Patents

ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー、カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン及びこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新規有用なポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー並びにカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン及びそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】 フェニレンスルフィド化合物をコアIとし、これに末端塩素と等モルのトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドを反応させてコアIIとし、この反応を順次繰り返して、末端塩素と等モル数のトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドとが反応して、コアIから任意の数のフェニレンスルフィド鎖が等しく伸びていることを特徴とするポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー及びその製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー、カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン及びその製造方法に関する。
本発明のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー、カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンは高分子材料として有用である。
近年、直鎖以外の梯子状、星状、櫛状、樹状高分子およびデンドリマー等の構造を持った高分子を製造する合理的な方法の開発に関心がもたれている(非特許文献1)
デンドリマーや樹状高分子等の高度に分岐した分子はユニークな物理・化学的特性を持っているためにさまざまな研究グループの注目を集めている(非特許文献2〜4)。そして、発散的方法(非特許文献5〜7)および収束的方法(非特許文献8,9)のいずれもが、明確なナノ構造をもたらす。
新規のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーは超分子化学の新しい時代を開くことが期待されている(非特許文献10、11)。
珍しい硫黄含有デンドリマーは適切に機能化されるだろうし、マルチサイト触媒(非特許文献12)、多価グリコデンドリマー(非特許文献13、14)、蛍光バイオセンサ、新規の導電材料(非特許文献15)、金および銀表面上のセルフアセンブリモノレイヤーの最有力候補、スマートマテリアル用のデンドリマーおよび金粒子のコンポジットに至る様々な用途が見出されている。
樹状ポリ(フェニレインスルフィド)(非特許文献18)、星状分子(molecular asterisks:非特許文献19)およびオリゴmフェニレンスルフィドの合成が試みられている(非特許文献20〜22)。デンドロンをその焦点を通じて表面に付着させ、デンドロンをセルフアセンブリモノレイヤーとして使うような新規構造を合成することが可能である。こうした構造を作るためには、焦点において特定の官能基を持ち、周辺において特定の官能基を持つデンドロンの製造方法が必要とされる。
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本発明は、求核合成法による新規なポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー並びにカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン及びそれらの製造方法を提供するものである。
すなわち、本発明は、下記式(1)のフェニレンスルフィド化合物をコアIとし、これに末端塩素と等モルのトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドを反応させて下記式(2)のコアIIとし、この反応を順次繰り返して、末端塩素と等モル数のトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドとが反応して、式(1)のコアIから任意の数のフェニレンスルフィド鎖が等しく伸びていることを特徴とするポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーを提供するものである。










式(1)
Figure 2005225934
式(2)
Figure 2005225934
また、本発明は、極性非プロトン溶媒中において、下記式(1)のフェニレンスルフィド化合物をコアIとし、次に、これに末端塩素と等モルのトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドが反応して下記式(2)のコアIIし、この反応を順次繰り返して得られる任意世代のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーの末端塩素と等モル数のトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドが末端塩素を求核的に縮合させることにより、末端塩素から等しくフェニレンスルフィド鎖を順次段階的に伸ばすことを特徴とするポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーの製造方法を提供するものである。
式(1)
Figure 2005225934























式(2)
Figure 2005225934
さらに、本発明は、下記式(3)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンを提供するものである。


















式(3)
Figure 2005225934
また、本発明は、下記式(4)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンを提供するものである。
式(4)
Figure 2005225934
さらに、本発明は、極性非プロトン溶媒中において、下記式(5)または(6)のジチオール末端SH基と等モルの3,5-ジクロロブロモベンゼンが反応して求核的に縮合することを特徴とする上記のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンの製造方法を提供するものである。
式(5)
Figure 2005225934
式(6)
Figure 2005225934
また、本発明は、下記式(3)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンに、末端塩素と等モルのNaSHが反応してジチオールとなり、さらに末端SH基と等モルの3,5-ジクロロブロモベンゼンが反応して式(4)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンとなり、以後、末端塩素と等モルのNaSHを反応させてジチオールとする反応と、末端SH基にこれと等モルの3,5-ジクロロブロモベンゼンを求核的に縮合させる反応とを順次繰り返すことによって、任意の数のフェニレンスルフィド鎖が等しく伸びていることを特徴とするカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンを提供するものである。



式(3)
Figure 2005225934
式(4)
Figure 2005225934
さらに、本発明は、極性非プロトン溶媒中において、下記式(3)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンに、末端塩素と等モルのNaSHが反応してジチオールとし、次に該ジチオール末端SH基と等モルの3,5-ジクロロブロモベンゼンが反応して式(4)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンとし、以後、末端塩素と等モルのNaSHを反応させてジチオールとする反応と、末端SH基にこれと等モルの3,5-ジクロロブロモベンゼンを求核的に縮合させる反応とを繰り返すことによって、任意世代のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンから、任意の数のフェニレンスルフィド鎖を等しく順次段階的に伸ばすことを特徴とするカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンの製造方法を提供するものである。
式(3)
Figure 2005225934
式(4)
Figure 2005225934
本発明によれば、希望する任意の長さのフェニレンスルフィド鎖が扇状に伸びて、希望する任意の分子量のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー及びカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンを容易に製造出来る。
本発明のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー及びカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンは、架橋していないので有機溶媒に可溶であるという利点がある。さらに、結晶性が低く、リニアな高分子と比較しても有機溶媒に溶解しやすく、成形加工もし易い。さらには各種機能を有する官能基で修飾することが出来る。したがって、様々な工業的応用が可能であり、高分子材料として極めて有用である。
本発明のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンは、扇状構造の要の部分にカルボキシルの反応性基を有するので、固体表面に容易に結合可能である。固体の表面改質剤としても有用である。また、ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーの原料としても有用である。
以下、本発明について詳述する。
<ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー及びその製造方法>
本発明のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーの製造方法について、図1の反応スキーム1に基づき説明する。
本発明は発散的合成法によるのである。すなわち、極性非プロトン溶媒中、(例えばN-メチルピロリドン、N-シクロヘキシルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド)において、コアIのフェニレンスルフィド化合物を中央コアIとなり、これに3モルのトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドが反応して中央コアIIとなる。そして、末端塩素と同モルのトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドを順次段階的に反応させて、求核的縮合を繰り返し、3方向に等しくフェニレンスルフィド鎖が伸びて行くことを特徴としている。これらの反応においては例えばトリクロロベンゼンの代わりにトリブロモベンゼンあるいはトリイオドベンゼン等を用いることが出来るし、またリチウムスルフィドの代わりにソジウムスルフィド、ポタシウムスルフィド、ポタシウムチオアセテートなどを用いることが出来る。
図1において、G1はコア2からさらに6個のフェニレンスルフィドが、2個ずつ3方向に伸びたポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーを表し、G2はG1からさらに12個のフェニレンスルフィドが等しく3方向に伸びたポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーを表している。G3はG2からさらに24個のフェニレンスルフィド、G4はG3からさらに48個のフェニレンスルフィドが等しく3方向に伸びたポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーである。
G1は第1世代のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー、G2は第2世代のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー、G3は第3世代のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー、G4は第4世代のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーである。このように、第n世代のGn(nは自然数)が、その一つ前の第(n−1)世代のGn−1のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーから、等しく3方向にフェニレンスルフィド鎖が一段階伸びたポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーが、本発明の製造方法により製造される。これらのデンドリマーの分子量は定量的に規定され、G1,G2,G3,およびG4デンドリマーの分子量はそれぞれ1789,3500,6382,および13768となる。同様の反応を繰り返すことで任意世代のGn(nは自然数)のデンドリマーが合成可能であるが第8世代以上のデンドリマーはその立体障害効果により合成が困難になる。このような特性を持つ物が、本発明のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーである。
本発明の任意の分子量を有するポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーは、1,3,5-トリス(4-クロロフェニル-1-チオ)ベンゼンを4-クロロチオフェノキシドとトリブロモベンゼンから求核置換反応により合成し、これをポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー製造の中央コア(コアI)として用いる。
加熱温度は適宜調整できるが、150〜210℃の範囲で行われ、特に180℃の高温で行うことが好ましい。そして、NMPなどの極性非プロトン性溶媒中にて、コアIをトリクロロベンゼンおよびリチウムスルフィドと反応させることにより、次々と高いジェネレーション(世代)を製造する。反応スキーム1の各ステップの定量的な収率は60〜85%である。
コアIの紫外〜可視スペクトルにおいて、248 nmの最大吸収バンドはフェニレンスルフィドに帰属し、275 nmの弱いバンドは硫化ベンゼンコアに帰属し、消光係数(extension coefficient)は4121 mol-1 cm2である。248 nmの励起により、396 nmに最大蛍光発光バンドが見られる。コアIIの化合物は最大吸収バンドが250 nmで、消光係数(extension coefficient)は9569 mol-1 cm2である。同様に、ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーの第1世代〜第4世代の化合物も最大吸収値が253 nmから260 nmに増え、消光係数(extension coefficient)値が21364から55249 mol-1 cm2に増える。一方、第1世代から第4世代のデンドリマーを対応するUV〜可視最大値で励起したときの最大蛍光発光値は世代数が増加するにつれて減少する。
なお、本発明のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーの末端塩素は末端フェニレンに対して2つ置換しているが、これらの塩素を他の置換基で収縮することは自由である。
例えば、NaSHを反応させればSHとなる。
<カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン及びその製造方法>
本発明のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンの製造方法について、図2の反応スキーム2に基づき説明する。
本発明は発散的合成法によるものである。すなわち、3,5−ジクロロ安息香酸の末端塩素に2モルのNaSHが反応してジチオール−1になり、極性非プロトン溶媒中において、ジチオール1の末端SH基のそれぞれに3,5-ジクロロブロモベンゼンが反応して、本発明のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン(Den−1)となる。
そして、このDen−1の塩素に等モルのNaSHが反応してジチオール−2になり、極性非プロトン溶媒中において、ジチオール−2の末端SH基のそれぞれに3,5-ジクロロブロモベンゼンが反応して、本発明のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン(Den−2)となる。
以後、末端塩素と等モルのNaSHを反応させてジチオールとする反応と、次に末端SH基にこれと等モルの3,5-ジクロロブロモベンゼンを求核的に縮合させる反応とを、順次段階的繰り返すことによって、カルボキシル基を扇の要の構造として、その2方向に等しく任意の数のフェニレンスルフィド鎖を伸びた構造を有する本発明のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンが製造出来る。
形成されるジチオール−1は、酸化やカップリング反応を避けるために不活性な条件で単離する。これをさらにDMF溶媒中で3,5-ジクロロブロモベンゼンで求核的に縮合してカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンの第1世代(Den−1)を形成する。
カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンの第2世代(Den−2)は、Den−1を対応するジチオール2に変換して、ジクロロブロモベンゼンで求核的に縮合することによって製造される。各合成ステップにおける定量的な収率は60〜90%の範囲である。
このようにして、等しく2方向にフェニレンスルフィド鎖が一段階伸びた任意の第n世代のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンが、その一つ前の第(n−1)世代から製造される。そして、任意の第n世代(nは自然数)のデンドロンが本発明のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンである。
加熱温度は適宜調整できるが、60〜250℃の範囲で行われる。ジチオールとする反応は特に180℃の高温で行うことが好ましい。デンドロンとする反応は特に140℃の高温で行うことが好ましい。
ジチオールとする反応はNMP、Nシクロヘキシルピロリドン、ジメチルアセトアミド、およびジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン溶媒、デンドロンとする反応はDMFなどの極性非プロトン溶媒中にて行うことが好ましい。
ジチオール−1の紫外〜可視スペクトルは、それぞれ248, 287および298 nmに最大吸収バンドを示し、消光係数(extension coefficient)値は、3952 mol-1 cm2である。248 nmの励起により、390 nmに最大蛍光発光バンドが見られる。Den−1の紫外〜可視スペクトルは241, 262 and 288 nmに、Den−2は263および286 nmに最大吸収バンドを示す。消光係数(Extension coefficient)値は,ジチオール−1では3952 mol-1 cm2で、Den−2では9524 mol-1 cm2に増加する。
なお、本発明のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンの末端塩素は、末端フェニレンに2つ置換しているが、これらの塩素を他の置換基で収縮することは自由である。例えば、NaSHを反応させればSHとなる。
次に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されない。
「試薬」
以下の実施例において、4-クロロ-チオフェノール、1,3,5-トリブロモベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、3,5-ジクロロ安息香酸、ナトリウムヒドロスルフィド、3,5-ジクロロブロモベンゼン、N,N'-ジメチルアセトアミド、リチウムスルフィド、N-メチルピロリドン、メタノール、その他の化学物質は、アルドリッチ社(Aldrich Chemical Co.)または、東京化成工業(Tokyo Kasei Kogyo)から入手した。化学物質はさらなる精製を行わずに使用した。
<ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー及びその製造方法>
「製造例1: 1,3,5-トリス(4-クロロフェニル-1-チオ)ベンゼン [コア I:式(1)]」
1,3,5-トリス(4-クロロフェニル-1-チオ)ベンゼンは、1,3,5-トリブロモベンゼンから求核置換により合成した。窒素ガス取入れ口と還流冷却器を備えた二首丸底フラスコに12.8g(10mmol)の1,3,5-トリブロモベンゼン、23.8g(30 mmol)の4-クロロチオフェノールナトリウム塩および50mlのジメチルアセトアミド(DMAc)溶媒を仕込んだ。窒素ガス(99.9%)の気泡を溶液に通して空気を完全に置換した。反応混合液を6時間にわたり攪拌しながらゆっくりと150℃まで加熱した後、室温まで冷却した。生成物はクロロホルムで抽出した。酢酸エチル/ヘキサン(1:4)混合溶媒でさらに再結晶し、重量が一定になるまで25℃で乾燥した。収率は70%だった。
特性測定の結果を以下に示す。
mp 280℃; 元素分析 C24H15S3Cl3 (FW 505) 計算 C 56.97, H 2.98, S 19.01; 実測 C 56.10, H 2.51, S 18.42; IR (KBr) : 3110, 3072, 2362, 2340, 1739, 1714, 1556, 1527, 1405, 1374, 1351, 1096, 846, 744, 656 cm-1; UV-Vis (CHCl3max (ε) = 248 nm (4121mol-1cm2), 275 nm; 蛍光発光 (CH2Cl2max = 396 nm; 1H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ= 7.55 - 7.45 ppm (s, 3H), 7.60 - 7.75 ppm (d, 12 H);
「製造例2 コアII 式(2)」
厚壁の圧力チューブに0.50 g (1 mmol)のコアI, 0.13 g (3 mmol) のリチウムスルフィド(Li2S), 0.543 g (3 mmol) of 1,3,5-トリクロロベンゼンおよび10 mlのN-メチルピロリドン(NMP)を仕込んだ。混合液に窒素ガスの気泡を通して内部の空気を全て除去し、チューブに適切な密閉を施して気密にした。チューブを180℃の恒温オイル浴で6時間、加熱した。それから室温に冷却し、反応混合液をメタノールに溶かした硝酸(5-vol%)の中に注いで定量的に固体を沈殿させた。固体を濾過し、暖かい蒸留水とメタノールで洗って過剰な反応物と副産物を取り除いた。クロロホルム/ヘキサン(1:4)混合溶媒でさらに再結晶し、重量が一定になるまで25℃で乾燥した。収率は65%だった。
特性測定の結果を以下に示す。
IR (KBr) : 3062, 1688, 1547, 1403 1284, 1136, 1095, 987, 850, 796, 756, 673 cm-1;元素分析 C42H24S6Cl6 (FW = 933) 計算 C 54.02, H 2.59, S 20.60; 実測 C 53.36, H 2.10, S 19.49;
UV-Vis (CHCl3max (ε)= 250 nm (9569mol-1cm2); 蛍光発光 (CH2Cl2max = 391 nm; 1H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ= 7.46 - 7.45 ppm (d,12H), 7.36 - 7.34 ppm (s, 3H), 7.28 - 7.27 ppm (s, 9H)。
「実施例1:第1世代のジェネレーション1[G1]のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー」
ジェネレーション1(G1)の合成手順は上述のコアIIと同様である。反応モル比は以下の通りである。
コアIIが0.933 g (1 mmol)、リチウムスルフィドが0.276 g (6 mmol)、そして1,3,5-トリクロロベンゼンが1.08 g (6 mmol)。生成物を単離した後、熱湯とメタノールで洗って副産物と反応物を除去し、重量が一定になるまで25℃で乾燥した。収率は85%だった。
特性測定の結果を以下に示す。
IR (KBr) : 3060, 2940, 1685, 1648, 1401, 1388, 1289, 1136, 989, 845, 797, 669 cm-1; 元素分析 C78H42S12Cl12 (FW = 1789) 計算 C 52.35, H 2.36, S 21.50, Cl 23.77.; 実測 C 51.28, H 2.04, S 20.16, Cl 22.09. UV-Vis (CHCl3max (ε)= 266 nm (21634mol-1cm2); 蛍光発光 (CH2Cl2max = 386 nm; 1H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ= 7.36 - 7.33 ppm (s, 18H), 7.25 - 7.24 ppm (d, 12 H), 7.17 ppm (s, 12 H)。
「実施例2:第2世代のジェネレーション2[G2]のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー」
ジェネレーション2(G2)の合成および精製手順は上記と同様である。反応モル比は以下の通りである。G1が1.789 g (1 mmol)、リチウムスルフィドが0.552 g (12 mmol)、そして1,3,5-トリクロロベンゼンが2.172 g (12 mmol)。収率は65%だった。
特性測定の結果を以下に示す。
IR (KBr) : 3062, 1717, 1548, 1403, 1291, 1137, 1100, 990, 845, 799, 670 cm-1; 元素分析 C150H78S24Cl24 (FW = 3500) 計算 C 51.46, H 2.24, S 21.98, Cl 24.30.; 実測 C 50.19, H 2.10, S 20.96, Cl 23.78.; UV-Vis (CHCl3max (ε)= 268 nm (30854 mol-1cm2); 蛍光発光 (CH2Cl2max = 381 nm; 1H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ= 7.32 - 7.31 ppm (d, 12 H), 7.26 ppm (s, 24 H), 7.25 ppm (s, 12H), 7.24 ppm (s, 30H)
「実施例3:第3世代のジェネレーション3[G3]のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー」
ジェネレーション3(G3)の合成および精製手順は上記と同様である。反応モル比は以下の通りである。
G2が0.350 g (1 mmol)、リチウムスルフィドが0.110 g (24 mmol)、そして1,3,5-トリクロロベンゼンが0.434 g (24 mmol)。収率は60%だった。
特性測定の結果を以下に示す。
IR (KBr): 3109, 3058, 1686, 1545, 1388, 1289, 1135, 1099, 989, 845, 796, 670 cm-1; 元素分析 C249H150S48Cl48 (FW = 6382) Calcd. C 46.85, H 2.36, S 24.11, Cl 26.66.; Found C 45.12, H 2.03, S 22.58, Cl 25.98.; UV-Vis (CHCl3max (藹och) = 274 nm (42249 mol-1cm2); 蛍光発光 λmax (CH2Cl2 ) = 377; 1H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ= 7.32 - 7.31 ppm (d, 12H), 7.25 ppm (s, 72 H), 7.24 ppm (s, 66H)。
「実施例4:第4世代のジェネレーション4[G4]のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー」
ジェネレーション4(G4)の合成および精製手順は上記と同様である。反応モル比は以下の通りである: G3が0.638 g (1 mmol)、リチウムスルフィドが0.220 g (48 mmol)、そして1,3,5-トリクロロベンゼンが0.868 g (48 mmol)。収率は80%だった。
特性測定の結果を以下に示す。
IR (KBr) : 3109, 3059, 1689, 1556, 1540, 1389, 1289, 1135, 1100, 989, 845, 798, 670 cm-1; 元素分析 C582H294S96Cl96 (FW = 13768) 計算 C 50.77, H 2.15, S 22.35, Cl 24.71.; 実測 C 49.35, H 2.02, S 21.06, Cl 23.58.; UV-Vis (CHCl3max = 275 nm (55249 mol-1cm2); 蛍光発光 (CH2Cl2max = 375 nm; 1H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ= 7.32 ppm (d, 12H), 7.26 ppm (s, 120H), 7.24 ppm (s, 162 H)。
<カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン及びその製造方法>
「3,5-ジチオ安息香酸(ジチオール1)」
厚壁の圧力チューブに1.91 g (10 mmol) の 3,5-ジクロロベンゼンアシド, 1.60 g (22 mmol) のナトリウムヒドロスルフィドおよび10 mlのNMPを仕込んだ。混合液に窒素ガスの気泡を通して内部の空気を全て除去し、チューブに適切な密閉を施して気密にした。チューブを180℃の恒温オイル浴で6時間加熱した。それから室温に冷却し、反応混合液を希硝酸(5-vol%)の中に注いで定量的に沈殿させた。沈殿した固体を濾過し、暖かい蒸留水で洗って過剰な反応物と副産物を取り除いた。さらにクロロホルム/ヘキサン(1:4)混合溶媒で再結晶し、重量が一定になるまで25℃で乾燥した。収率は85%だった。
特性測定の結果を以下に示す。
IR (KBr) : 3086, 3003, 2555, 1708, 1571, 1449, 1426, 1405, 1300, 1291, 1239, 1166, 925, 909, 877, 807, 770, 709, 659 cm-1; 元素分析 C7H6S2O2 (FW = 186) 計算 C 45.14, H 3.25; 実測 C 45.00, H 3.35; UV-Vis (CHCl3max (ε)= 248, 287, 298 nm(3952 mol-1cm2); 蛍光発光 (CH2Cl2 max = 390;
「実施例5:カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン(Den−1):式(3)」
窒素ガス取入れ口と還流冷却器を備えた二首丸底フラスコ(電磁攪拌機付)に4.52 g (20 mmol)の3,5-ジクロロ-1-ブロモベンゼン、2.49 g (10 mmol)のsodium salt of 3,5-ジチオ安息香酸ナトリウム塩および50 mlのDMAc溶媒を仕込んだ。窒素ガス(99.9%)の気泡を溶液に通して空気を完全に置換した。反応混合液を6時間にわたりゆっくりと150℃まで加熱した。反応混合液を冷却してから、生成物をクロロホルムで抽出した。さらに酢酸エチル/ヘキサン(1:4)混合溶媒で再結晶し、乾燥秤量、収率を測定した(90%)。
特性測定の結果を以下に示す。
IR (KBr) : 3419, 3060, 2940, 1707, 1546, 1401, 1388, 1289, 1136, 1099, 989, 845, 797, 669 cm-1; 元素分析 C19H10S2Cl4O4 (FW 476) 計算 C 47.92, H 2.12, S 12.61.; 実測 C 46.11, H 2.24, S 12.83; UV-Vis (CHCl3max = 241, 262, 288 nm (4560 mol-1cm2); 蛍光発光 (CH2Cl2 max = 387; 標準アルカリとの滴定による分子量 計算 476 実測 475。
「ジチオール2」
ジチオール2の合成および精製手順は上記のジチオール1と同様である。反応モル比は以下の通りである: 4.76 g (10 mmol) のDen−1、3.10 g (42 mmol) のナトリウムヒドロスルフィドおよび10 mlのNMP。収率は60%だった。IR (KBr) : 3085, 2821, 2556, 1701, 1570, 1449, 1406, 1301, 1292, 1239, 1166, 927, 909, 878, 808, 770, 709, 659 cm-1; 元素分析 C19H14S6O2 (FW = 466) 計算 C 48.90, H 3.02; 実測 C 47.90, H 3.02; UV-Vis (CHCl3max (ε)= 261, 285 nm (8962 mol-1cm2); 蛍光発光 (CH2Cl2 max = 383。
「実施例6:カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン(Den−2):式(4)」
Den−2の合成および精製手順は上記のDen−1と同様である。反応モル比は以下の通りである。5.71 g (10 mmol) ジチオール2ナトリウム塩、9.04 g (40 mmol) の3,5-ジクロロ-1-ブロモベンゼンおよび50 mlのDMAc。収率は90%だった。
特性測定の結果を以下に示す。
mp 260℃; IR (KBr) : 3452, 3114, 3067, 1703, 1550, 1405, 1287, 1139, 1100, 1097, 990, 845, 799, 676, 666 cm-1; 元素分析 C43H22S6Cl8O2 (FW 1046) 計算 C 49.35, H 2.12, S 18.38; 実測 C 50.21, H 2.42, S 19.10; UV-Vis (CHCl3max (ε)= 263, 286 nm (9524 mol-1cm2); 蛍光発光 (CH2Cl2 max = 379; 1H-NMR (600 MHz,CDCl3) δ= 7.32 ppm (s, 2H), 7.31 - 7.24 ppm (m, 8H), 7.24-7.17 ppm (m, 7H), 7.16 ppm (s, 2H), 7.15 ppm (s, 2H)。標準アルカリとの滴定による分子量 計算 1046、実測 1045。
「特性測定の方法」
IR値は、フーリエ変換赤外吸収(FTIR)スペクトルはBio-Rad FTS575C FT-IR分光計を使って記録した。元素分析は、LECO CHN - 900 C CHNアナライザで行った。UV〜可視吸収スペクトルは島津UV 2200分光器で測定し、蛍光スペクトルは日立F-4010型で測定した。1 mg/cm3のデンドリマー粉末をUV測定の場合はクロロホルム、蛍光スペクトルの場合はジクロロメタンに溶かして溶液を調製した。NMRスペクトルは重水素化クロロホルム内でJEOL JNM-L500により測定した。X線回折(XRD)測定はRigaku RINT 2100 V X線回折計によりスキャンレートは0.5°/分で行った。放射線はCuKα (λ= 1.5405 Å)を用いた。サンプルは高分子をカプトンフィルム上に薄く伸ばして調製した。全ての測定は室温で行った。
「結果と考察」
<ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー>
上記実施例においてポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーを発散的合成法により製造した。1,3,5-トリス(4-クロロフェニル-1-チオ)ベンゼンは4-クロロチオフェノキシドとトリブロモベンゼンから求核置換反応により合成した。そしてポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー合成の中央コア(コアI)として用いた。高温で(NMP)などの極性非プロトン性溶媒中においてコアIをトリクロロベンゼンおよびリチウムスルフィドと反応させることにより、次々と高いジェネレーション(世代)を合成した。完全な反応スキームを図1に示す。各ステップの定量的な収率は60〜85%であった。
コアIの紫外〜可視スペクトルにおいて、248 nmの最大吸収バンドはフェニレンスルフィドに帰属し、275 nmの弱いバンドは硫化ベンゼンコアに帰属し、extension coefficientは4121 mol-1 cm2である。248 nmの励起により、396 nmに最大蛍光発光バンドが見られた。コアIの第4世代デンドリマーまでの紫外〜可視および蛍光スペクトルのデータを表1に示す。コアII化合物は最大吸収バンドが250 nmで、extension coefficientは9569 mol-1 cm2であった。同様に、ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーの第1世代〜第4世代の化合物も最大吸収値が253 nmから260 nmに増え、extension coefficient値が21364から55249 mol-1 cm2に増えた。一方、第1世代から第4世代のデンドリマーを対応するUV〜可視最大値で励起したときの最大蛍光発光値は世代数が増加するにつれて減少した。
Figure 2005225934
トリス-1,3,5(4-クロロフェニル-1-チオ)ベンゼン (コア I)のFT-IRスペクトルは1556, 1405, および 1374 cm-1 にバンドを示したが、これらはフェニル環の伸縮に帰属されている[2D. A. Zimmerman, J. L. Koenig, H. Ishida, Spectrochimica Acta 1995, A 51, 2397.]。900〜700 cm-1 の範囲における赤外吸収バンドは、ベンゼン環の伸縮モードに芳香族置換があることを示している。1096 cm-1 のバンドはフェニルクロリドの伸縮モードに帰属される可能性がある。なぜならこの特性は4-クロロチオフェノールのスペクトルで観察されるからである[C. J. Pouchert, Ed., "The Aldrich Library of Infrared Spectra", 3rd edition Aldrich Chemical Company Inc., Milwaukee 1981]。チオール基に対応する2600〜2550 cm-1 の範囲にはピークがない。スルホンに帰属される1163, 1323, 1032および641 cm-1 のバンドおよびスルフオキシドに帰属される1030〜1000 cm-1 のバンドも不在であり、このことはコアI化合物には酸化生成物がないことを示す。1428, 1258および880 cm-1のチアントレンのピークも不在である。したがって、生成物は架橋結合を持っていない。
コアIからポリ(フェニレンスルフィド)第4世代デンドリマーまでの相応するFT-IRスペクトルを図3に示す。コアIIからポリ(フェニレンスルフィド)第4世代デンドリマーまでのFT-IRスペクトルは1556, 1405, 1374, 900および700 cm-1においてフェニル伸縮モードのバンドを示す。同様に、全てのスペクトルが1096 cm-1においてフェニルクロリドの伸縮モードのバンドを示すが、このことは全てのデンドリマーの末端基がクロリド官能基を持っていることを示唆している。フェニル伸縮モードバンドの強度はフェニルクロリド伸縮モードの強度に比べて弱く、このことはフェニルクロリド基の全数がフェニル基の全数に比べて少ないことを示唆する。
コアIのプロトンNMRスペクトルは2組のピークを示す。δ= 7.55 - 7.45 ppmのピークはシングレットとして硫化ベンゼンに対応し、δ= 7.60 - 7.75 ppmのピークはダブレットとしてフェニレンスルフィドのサイドアームに対応する。同様に、コアIIからポリ(フェニレンスルフィド)第4世代までの他の化合物のプロトンNMRはδ= 7.17 to 7.75 ppmの範囲にピークを示す。データを表1に示す。理論(δ)値と実測(δ)値は良く一致している。
コアI化合物のX線回折(XRD)は、2θ角度11.48, 11.98, 12.72, 16.49, 19.25に主要な結晶ピークを示していて、このことはコアI化合物が高度な結晶性を持つことを示唆している。しかしながら、ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーの第1世代〜第4世代のX線回折パターンは2θ角度22.5に一つの結晶ピークと幅広いピークを示した。結晶性は幅の広いピークと鋭い結晶ピークの比較により評価した。値を表1に示す。コアIからポリ(フェニレンスルフィド)第4世代(G4)デンドリマーまでの相応するXRDを図4に示す。ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーは半結晶性である。デンドリマーの結晶性は世代数が増えるに従って減少し、G1では結晶性が42%なのがG4では25%となる。ポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーの高次相同体で結晶性が低いのは立体化学的な混雑が原因である可能性がある。
<カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン>
上記実施例において、カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンの第2世代までを発散的方法で製造した。3,5-ジクロロ安息香酸を開始材料として用い、まずこれを高温において(NMP)等の極性非プロトン性溶媒中でナトリウムヒドロスルフィドと反応させて3,5-ジチオ安息香酸(ジチオール1)に変換した。形成されたジチオール1は酸化やカップリング反応を避けるために不活性な条件で単離した。これをさらにDMF溶媒中で3,5-ジクロロブロモベンゼンで求核的に縮合してカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンの第1世代(Den−1)を形成した。完全な反応スキームを図2のスキーム2に示す。カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンの第2世代(Den−2)は、Den−1を対応するジチオール2に変換して、ジクロロブロモベンゼンで求核的に縮合することによって合成された。各合成ステップにおける定量的な収率は60〜90%の範囲であった。
ジチオール1の紫外〜可視スペクトルはそれぞれ248, 287および298 nmに最大吸収バンドを示し、extension coefficient値は3952 mol-1 cm2である。248 nmの励起により、390 nmに最大蛍光発光バンドが見られた。Den−1の紫外〜可視スペクトルは241, 262 and 288 nmに、Den−2は263および286 nmに最大吸収バンドを示す。Extension coefficient値はジチオール1では3952 mol-1 cm2で、Den−2では9524 mol-1 cm2に増加する。ジチオール1からDen−2までの紫外〜可視および蛍光スペクトルのデータを表2に示す。
Figure 2005225934
ジチオール1のFT-IRスペクトルは3086 cm-1にバンドを示し、これはカルボン酸の水酸基の伸縮モードに帰属される。また、1708 cm-1にもバンドを示し、これはカルボン酸のケト基の伸縮モードに帰属される。チオフェノールの伸縮モードに帰属される2555 cm-1のバンドが観察された。これらのスペクトルの中に、フェニレン環の伸縮モードに帰属されるバンドが1571, 1405および1300 cm-1 で観察された。1096 cm-1付近にバンドが観察されないことは、この化合物中にフェニルクロリドが不在であることを示唆する。同様に、硫黄酸化物スルホキシドの1163, 1323 1032および641 cm-1のピーク、さらにスルホンの1030および1000 cm-1 のピークが見られなかった。Den−1のFT-IRスペクトルはカルボン酸の水酸基に帰属される3060 cm-1にバンドを示し、カルボン酸のケト基に帰属される1707 cm-1 、フェニレンの伸縮モードに帰属される1546, 1401および1388 cm-1にもバンドを示す。また、フェニルクロリドの伸縮モードに帰属される1099 cm-1にもバンドを示す。しかし、チオール基の存在を示すはずの2600〜2550 cm-1の領域にはバンドがない。ジチオール2のスペクトルは、カルボン酸の水酸基モードに帰属される3085 cm-1にピークを示し、1570, 1406 cm-1にフェニレンの伸縮モードのバンドを示すとともに、カルボン酸の伸縮モードに帰属される1701 cm-1 にバンドを示す。また、チオールの伸縮モードに帰属される2556 cm-1にピークを示すが、1096 cm-1のフェニルクロリドのピークはない。最後に、Den−2化合物は、カルボン酸の水酸基の伸縮モードに帰属される3067 cm-1に大きなピークを示し、カルボン酸のケト基の伸縮モードに帰属される1703 cm-1にバンドを示す。このことは最終化合物にこの酸基が存在することを確証している。1550および1405 cm-1のバンドはフェニレンの伸縮モードに帰属される。1097 cm-1のバンドはフェニレンクロリドの伸縮モードバンドが存在することを意味する。
Den−2のプロトンNMRスペクトルは、カルボン酸に隣接する芳香族プロトンが極性酸性基に起因して低磁場側のδ= 7.32 ppmに表れている。一方、その他の芳香族プロトンは理論値と良く一致するδ = 7.31 to 7.15 ppmにある。「Den−1」と「Den−2」の分子量は、Frietz他(J. S. Fritz Analytical Chemistry 1952, 24, 674.25)の非水溶性溶媒におけるイミドとエノールに関する報告に準拠して、標準アルカリ溶液による滴定で評価した。
本発明のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー、カルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンは、様々な工業的応用が可能であり、高分子材料として極めて有用である。
本発明のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー及びその製造方法の反応スキームの説明図である。 本発明のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン及びその製造方法の反応スキームの説明図である。 式(3)のコアI、式(4)のコア2及び本発明のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー(第1〜第4世代)のFT-IRスペクトルである。 式(3)のコアI、式(4)のコア2及び本発明のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー(第1〜第4世代)のXRDスペクトルである。

Claims (7)

  1. 下記式(1)のフェニレンスルフィド化合物をコアIとし、これに末端塩素と等モルのトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドを反応させて下記式(2)のコアIIとし、この反応を順次繰り返して、末端塩素と等モル数のトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドとが反応して、式(1)のコアIから任意の数のフェニレンスルフィド鎖が等しく伸びていることを特徴とするポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマー。
    式(1)
    Figure 2005225934























    式(2)
    Figure 2005225934
  2. 極性非プロトン溶媒中において、下記式(1)のフェニレンスルフィド化合物をコアIとし、次に、これに末端塩素と等モルのトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドが反応して下記式(2)のコアIIし、この反応を順次繰り返して得られる任意世代のポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーの末端塩素と等モル数のトリクロロベンゼン及びリチウムスルフィドが末端塩素を求核的に縮合させることにより、末端塩素から等しくフェニレンスルフィド鎖を順次段階的に伸ばすことを特徴とするポリ(フェニレンスルフィド)デンドリマーの製造方法。













    式(1)
    Figure 2005225934
    式(2)
    Figure 2005225934
  3. 下記式(3)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン。
    式(3)
    Figure 2005225934
  4. 下記式(4)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン。
    式(4)
    Figure 2005225934
  5. 極性非プロトン溶媒中において、下記式(5)または(6)のジチオール末端SH基と等モルの3,5-ジクロロブロモベンゼンが反応して求核的に縮合することを特徴とする請求項3または4記載のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンの製造方法。
    式(5)
    Figure 2005225934
    式(6)
    Figure 2005225934
  6. 下記式(3)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンに、末端塩素と等モルのNaSHが反応してジチオールとなり、さらに末端SH基と等モルの3,5-ジクロロブロモベンゼンが反応して式(4)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンとなり、以後、末端塩素と等モルのNaSHを反応させてジチオールとする反応と、末端SH基にこれと等モルの3,5-ジクロロブロモベンゼンを求核的に縮合させる反応とを順次繰り返すことによって、任意の数のフェニレンスルフィド鎖が等しく伸びていることを特徴とするカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロン。





    式(3)
    Figure 2005225934
    式(4)
    Figure 2005225934
  7. 極性非プロトン溶媒中において、下記式(3)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンに、末端塩素と等モルのNaSHが反応してジチオールとし、次に該ジチオール末端SH基と等モルの3,5-ジクロロブロモベンゼンが反応して式(4)のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンとし、以後、末端塩素と等モルのNaSHを反応させてジチオールとする反応と、末端SH基にこれと等モルの3,5-ジクロロブロモベンゼンを求核的に縮合させる反応とを繰り返すことによって、任意世代のカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンから、任意の数のフェニレンスルフィド鎖を等しく順次段階的に伸ばすことを特徴とするカルボキシフォーカルフェニレンスルフィドデンドロンの製造方法。
    式(3)
    Figure 2005225934
    式(4)
    Figure 2005225934
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