特願2002−340057で提案された装置及び方法により、例えば、到達タイミングを2倍の精度で求める(すなわち、時間分解能を2倍向上させる)ためには、2倍の拡大光学系を配置し、出力光を2倍に拡大すればよい。出力光が2倍に拡大されることで、1画素が相当する時間は半分になり、拡大光学系を用いない場合と比べて時間分解能は2倍良くなるが、拡大されて光検出器(検出領域)の外側に出射された出力光は検出できないため、測定できる出力光は時間的にも空間的にも2分の1になってしまう(以下、このことを「ダイナミックレンジが2分の1になる」という)。また、逆に、ダイナミックレンジを2倍にするためには、1/2倍の縮小光学系を配置して、出力光を1/2倍に縮小すればよいが、時間分解能は2分の1の精度になってしまう。
すなわち、光スイッチ30と光検出器70の間に結像倍率がn倍の光学系を配置した場合には、光検出器の時間分解能はn倍良くなるが、ダイナミックレンジは1/n倍になる。逆に、結像倍率が1/n倍の光学系を配置した場合には、光検出器のダイナミックレンジはn倍良くなるが、時間分解能は1/n倍悪くなる。
このため、時間分解能を変化させずにダイナミックレンジを拡大することができる装置の開発が望まれていた。
本発明は上記の問題を解決すべく成されたものであり、本発明の目的は、時間分解能を犠牲にすることなく、ダイナミックレンジを拡大して光パルスのタイミング揺らぎを検出することができる光パルスタイミング検出装置及び光パルスタイミング検出方法と、時間分解能を犠牲にすることなく、ダイナミックレンジを拡大して検出された光パルスのタイミング揺らぎを調整する光パルスタイミング調整装置及び光パルスタイミング調整方法と、光パルスのタイミング揺らぎを低減する光パルス処理装置及び光パルス処理方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の第1の光パルスタイミング検出装置は、制御光パルスの照射部分に、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が形成される光スイッチと、複数の制御光パルスを前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射する制御光照射手段と、前記光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを検出する複数の画素を備えた光検出器と、前記光検出器の検出結果に基づいて前記信号光パルスを検出した画素の位置情報を取得し、該画素の位置情報と該画素に対応する前記光スイッチの領域がオン状態にされた時刻とに基づいて、該検出された信号光パルスが該光スイッチに到達したタイミングを演算するタイミング演算手段と、を含んで構成されている。
本発明の第1の光パルスタイミング検出装置では、制御光パルスの照射部分にオン状態の領域が形成される光スイッチを用いる。該オン状態の領域は、入射する信号光パルスを透過又は反射させることができる。制御光照射手段は、複数の制御光パルスを光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射する。
例えば、第1の制御光パルスを光スイッチの上半分の領域に照射し、第2の制御光パルスを光スイッチの下半分の領域に照射する。照射のタイミングは、例えば、第1の制御光パルスの照射終了と同時に第2の制御光パルスの照射が開始されるようにすれば、制御光パルスが光スイッチ上に存在する時間レンジが2倍になり、これによりダイナミックレンジを2倍に拡大することができる。また、検出途中に検出不要な信号光パルスが存在する場合には、不要な信号光パルスが照射されている間だけ第2の制御光パルスの照射開始タイミングを遅延させればよい。これにより、制御光パルスの無駄な照射を削減できると共に、ダイナミックレンジもそれに応じて拡大することができる。
光検出器は、複数の画素を備え、該複数の画素で光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを検出する。光検出器に配置される複数の画素は制御光パルスの光スイッチに対する通過時間に対応して配置することができる。光検出器の各画素と光スイッチのオン状態とされる各領域とを予め対応づけておけば、信号光パルスを検出した画素の位置情報から該画素に対応する光スイッチの領域を特定することができると共に、ダイナミックレンジを拡大した状態でも、時間分解能は低下しない。
タイミング演算部は、光検出器の検出結果に基づいて所定の信号光パルスを検出した画素の位置情報を取得し、該画素の位置情報と該画素に対応する領域がオン状態にされた時刻とに基づいて、所定の信号光パルスが光スイッチに到達したタイミングを演算する。即ち、所定の信号光パルスを検出した画素の位置情報が取得されると、この画素の位置情報から該画素に対応する時刻を特定することができる。そして、この領域がオン状態にされた時刻が分かれば、所定の信号光パルスが前記光スイッチに到達したタイミングを求めることができる。このように、タイミング演算部では複雑な演算を行わないので、リアルタイムでの計測が可能になる。
ここで、信号光パルスが光スイッチに到達するタイミングの検出精度は、光スイッチの切り替え速度に依存する。本発明では、制御光パルスの照射により光スイッチの切り替えを行っているので、フェムト秒オーダーの制御光パルスでオンオフ動作させることができる。従って、光パルスまたはパルス列のタイミングゆらぎをフェムト秒オーダーの時間分解能で検出することができる。
このように、複数の制御光パルスを光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射すると共に、該制御光パルスの照射によりオン状態となった光スイッチの領域を透過し或いは該領域で反射された信号光パルスは光検出器に備えられた複数の画素で検出されるため、時間分解能を犠牲にせずにダイナミックレンジを拡大させた状態で、光パルスまたはパルス列のタイミングゆらぎをフェムト秒オーダーの時間分解能でリアルタイムに検出することができる。
前記制御光照射手段は、入射された制御光パルスを複数に分割し、該分割して得られた複数の制御光パルスを、前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射することができる。
即ち、1つの制御光パルスをダイナミックレンジの拡大率に応じて複数に分割するようにすれば、所望の拡大率でダイナミックレンジを拡大することができる。この場合、例えば、ハーフミラー等を用いて1つの制御光パルスを分割し、全反射ミラー等で光路長を変化させることにより、入射された制御光パルスを複数に分割し、該分割して得られた複数の制御光パルスを、前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射するようにしてもよいが、所定の光学媒質を用いてもよい。すなわち、前記制御光照射手段は、制御光パルスの一部が入射され、入射されない制御光パルスに対して入射された制御光パルスの光路長を異ならせる所定の光学媒質により構成された光学素子、または各々光路長が異なる複数の光学媒質により構成された光学素子により構成され、入射された制御光パルスを複数に分割し、該分割して得られた複数の制御光パルスを、前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射することができる。
例えば、制御光パルスの一部を光学素子に入射させ、残りの部分は入射されないようにすれば、制御光パルスは2分割され、光学素子に入射されない部分は先に光スイッチに到達し、光学素子に入射した部分は光路長の差により遅延されて到達することとなる。また、例えば、制御光パルスを各々光路長が異なる3つの光学媒質により構成された光学素子に入射させることにより、制御光パルスは3分割され、光路長が長くなる光学媒質に入射した部分ほど遅延されて光スイッチに到達する。また、制御光パルスの一部を各々光路長が異なる複数の光学媒質により構成された光学素子に入射させ、残りの部分は入射されないようにすることもできる。これによっても、同様の作用により、制御光パルスを分割して、各々異なるタイミングで光スイッチの異なる領域に照射させることができる。
ここで、前記光学媒質の屈折率及び前記光学媒質の制御光パルスの進行方向の厚さの少なくとも一方を変化させて前記光路長を異ならせてもよい。光学媒質は、特に限定されないが、例えばガラスなどの透明な材料を用いることができる。このような光学媒質は透過率が高く、光学媒質中で制御光パルスの光量はほとんど変化しない。このため、分割された複数の制御光パルスの光量が等しくなるように調整する必要がなく、好適である。
本発明の第2の光パルスタイミング検出装置は、制御光パルスの照射部分に、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が形成される光スイッチと、信号光パルスを複数に分割し、該分割して得られた複数の信号光パルスを前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射する信号光照射手段と、前記光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを検出する複数の画素を備えた光検出器と、前記光検出器の検出結果に基づいて前記信号光パルスを検出した画素の位置情報を取得し、該画素の位置情報と該画素に対応する前記光スイッチの領域がオン状態にされた時刻とに基づいて、該検出された信号光パルスが該光スイッチに到達したタイミングを演算するタイミング演算手段と、を含んで構成されている。
本発明の第2の光パルスタイミング検出装置では、信号光パルスを複数に分割し、該分割された複数の信号光パルスを前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射する。この場合には、制御光パルスが光スイッチ上に存在する時間レンジは変わらないが、例えば、2分割して得られた信号光パルスの一方を遅延させて光スイッチに照射すれば、基準とする時刻(例えば、先に到達した信号光パルスの光スイッチへの到達時刻)より前に出射された信号光パルスについても検出できるようになるため、ダイナミックレンジを拡大することができる。ここで、光検出器の各画素と光スイッチのオン状態とされる各領域とを予め対応づけておけば、信号光パルスを検出した画素の位置情報から該画素に対応する光スイッチの領域を特定することができると共に、ダイナミックレンジを拡大した状態でも、時間分解能は低下しない。
このように、信号光パルスを複数に分割し、該分割された複数の信号光パルスを前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射することにより、時間分解能を犠牲にせずにダイナミックレンジを拡大させた状態で、光パルスまたはパルス列のタイミングゆらぎをフェムト秒オーダーの時間分解能でリアルタイムに検出することができる。
なお、信号光パルスを複数に分割し、該分割された複数の信号光パルスを光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射する場合に、例えば、ハーフミラー等を用いて1つの信号光パルスを分割し、全反射ミラー等で光路長を変化させることにより、信号光パルスを複数に分割し、該分割された複数の信号光パルスを光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射するようにしてもよいが、所定の光学素子を用いてもよい。すなわち、前記信号光照射手段は、信号光パルスの一部が入射され、入射されない信号光パルスに対して入射された信号光パルスの光路長を異ならせる所定の光学媒質により構成された光学素子、または各々光路長が異なる複数の光学媒質により構成された光学素子により構成され、入射された信号光パルスを複数に分割し、該分割して得られた複数の信号光パルスを、前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射することができる。
例えば、信号光パルスの一部を光学素子に入射させ、残りの部分は入射されないようにすれば、信号光パルスは2分割され、光学素子に入射されない部分は先に光スイッチに到達し、光学素子に入射した部分は光路長の差により遅延されて到達することとなる。また、例えば、信号光パルスを各々光路長が異なる3つの光学媒質により構成された光学素子に入射させることにより、信号光パルスは3分割され、光路長が長くなる光学媒質に入射した部分ほど遅延されて光スイッチに到達する。また、信号光パルスの一部を各々光路長が異なる複数の光学媒質により構成された光学素子に入射させ、残りの部分は入射されないようにすることもできる。これによっても、同様の作用により、信号光パルスを分割して、各々異なるタイミングで光スイッチの異なる領域に照射させることができる。
ここで、前記光学媒質の屈折率及び前記光学媒質の信号光パルスの進行方向の厚さの少なくとも一方を変化させて前記光路長を異ならせてもよい。光学媒質は、特に限定されないが、例えばガラスなどの透明な材料を用いることができる。
また、上記第1及び第2の光パルスタイミング検出装置において、前記光検出器に備えられた複数の画素は、2次元的に配列されていることが好ましい。もちろん、1次元的に配列されていてもよいが、制御光パルス或いは信号光パルスの分割数に応じて、光スイッチを透過或いは反射した信号光パルスの進行方向を例えばミラー等を用いて変更する必要がある。これに対して、光スイッチの各領域に対応した各画素を2次元的に配列することによって、光スイッチを透過或いは反射したときの進行方向のまま信号光パルスを検出することができるため、信号光パルスの進行方向を変える必要がなくなり、装置の構成を簡易にすることができる。
上記第1及び第2の光パルスタイミング検出装置において、光スイッチを、入射する信号光パルスの進行方向に対して垂直に配置すると共に、前記制御光パルスの進行方向に対し所定角度傾けて配置することができる。この場合、制御光パルスにより光スイッチが所定方向に走査されて、あたかもスリットが移動するようにオン状態の領域が順次形成される。
また、前記制御光パルスの進行方向に対して垂直に配置すると共に、入射する信号光パルスの進行方向に対し所定角度傾けて配置してもよい。この場合、光スイッチの照射領域全体が、制御光パルスにより所定の時間間隔でオン状態とされる。なお、制御光パルスは、前記信号光パルスの入射タイミングに同期して前記光スイッチに照射するのが好ましい。
上記第1及び第2の光パルスタイミング検出装置において、前記光検出器としては、例えば、フォトダイオードの表面抵抗を利用したスポット光の位置センサ、CCDカメラ、又はフォトディテクタアレイを用いることができる。
前記光スイッチとしては、光照射により吸収係数が変化し且つ緩和時間が短い非線形光学材料を含む機能性薄膜を備えた光スイッチを用いることができる。この光スイッチでは、前記非線形光学材料の過飽和吸収を利用してオン状態の領域を形成してもよく、前記非線形光学材料の光カー効果を利用してオン状態の領域を形成してもよい。また、前記機能性薄膜としては、色素分子膜が好ましく、スクエアリリウム色素のJ−会合体で構成された色素分子膜が特に好ましい。
上記第1及び第2の光パルスタイミング検出装置では、光検出器の出力を元に信号処理を施す信号処理装置を更に設けることができる。例えば、CCDあるいはフォトディテクタアレイの複数画素に対して、一定の形状の信号パルスが計測されるとき、検出される出力信号の重心位置を計算することによって、信号光パルスの存在位置をサブピクセルの精度で検出することが可能になる。
また、本発明の第1の光パルスタイミング検出方法は、複数の制御光パルスを、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が制御光パルスの照射部分に形成される光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射し、前記光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを複数の画素を備えた光検出器で検出し、前記光検出器の検出結果に基づいて信号光パルスを検出した画素の位置情報を取得し、前記画素の位置情報と該画素に対応する領域がオン状態にされた時刻とに基づいて、検出された信号光パルスが前記光スイッチに到達したタイミングを演算する、ことを特徴とする。
本発明の第1の光パルスタイミング検出方法も、本発明の第1の光パルスタイミング検出装置と同様に作用するため、時間分解能を犠牲にせずにダイナミックレンジを拡大させた状態で、光パルスまたはパルス列のタイミングゆらぎをフェムト秒オーダーの時間分解能でリアルタイムに検出することができる。
本発明の第2の光パルスタイミング検出方法は、制御光パルスを、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が制御光パルスの照射部分に形成される光スイッチに照射し、信号光パルスを複数に分割し、該分割して得られた複数の信号光パルスを、前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射し、前記光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを複数の画素を備えた光検出器で検出し、前記光検出器の検出結果に基づいて信号光パルスを検出した画素の位置情報を取得し、前記画素の位置情報と該画素に対応する領域がオン状態にされた時刻とに基づいて、検出された所定の信号光パルスが前記光スイッチに到達したタイミングを演算する、ことを特徴とする。
本発明の第2の光パルスタイミング検出方法も、本発明の第2の光パルスタイミング検出装置と同様に作用するため、時間分解能を犠牲にせずにダイナミックレンジを拡大させた状態で、光パルスまたはパルス列のタイミングゆらぎをフェムト秒オーダーの時間分解能でリアルタイムに検出することができる。
また、本発明の第1の光パルスタイミング調整装置は、制御光パルスの照射部分に、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が形成される光スイッチと、複数の制御光パルスを前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射する制御光照射手段と、前記光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを検出する複数の画素を備えた光検出器と、前記光検出器の検出結果に基づいて前記信号光パルスを検出した画素の位置情報を取得し、該画素の位置情報と該画素に対応する前記光スイッチの領域がオン状態にされた時刻とに基づいて、該検出された信号光パルスが該光スイッチに到達したタイミングを演算するタイミング演算手段と、前記タイミング演算部で演算されたタイミングに基づいて、信号光パルスの前記光スイッチへの到達タイミングを調整する調整手段と、を含んで構成されている。
本発明の第1の光パルスタイミング調整装置は、調整手段により、タイミング演算部で演算されたタイミングに基づいて、信号光パルスを遅延させる等により、信号光パルスの光スイッチへの到達タイミングを調整する。この調整装置では、上述した第1の光パルスタイミング検出装置の構成を備えることで、時間分解能を変化させずにダイナミックレンジを拡大した状態で、光パルスまたはパルス列のタイミングゆらぎを検出することができるので、時間分解能の面で精度を低下させずに広いダイナミックレンジで光パルスまたはパルス列のタイミングを調整することができる。また、タイミング演算部ではリアルタイムでタイミングを演算することができるので、これに基づいてリアルタイムで到達タイミングを調整することができる。
本発明の第2の光パルスタイミング調整装置は、制御光パルスの照射部分に、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が形成される光スイッチと、信号光パルスを複数に分割し、該分割して得られた複数の信号光パルスを前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射する信号光照射手段と、前記光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを検出する複数の画素を備えた光検出器と、前記光検出器の検出結果に基づいて前記信号光パルスを検出した画素の位置情報を取得し、該画素の位置情報と該画素に対応する前記光スイッチの領域がオン状態にされた時刻とに基づいて、該検出された信号光パルスが該光スイッチに到達したタイミングを演算するタイミング演算手段と、前記タイミング演算部で演算されたタイミングに基づいて、信号光パルスの前記光スイッチへの到達タイミングを調整する調整手段と、を含んで構成されている。
本発明の第2の光パルスタイミング調整装置においても、第1の光パルスタイミング調整装置と同様に、調整手段により、タイミング演算部で演算されたタイミングに基づいて、信号光パルスを遅延させる等により、信号光パルスの光スイッチへの到達タイミングを調整する。この調整装置では、上述した第2の光パルスタイミング検出装置の構成を備えることで、時間分解能を変化させずにダイナミックレンジを拡大した状態で、光パルスまたはパルス列のタイミングゆらぎを検出することができるので、時間分解能の面で精度を低下させずに広いダイナミックレンジで光パルスまたはパルス列のタイミングを調整することができる。また、タイミング演算部ではリアルタイムでタイミングを演算することができるので、これに基づいてリアルタイムで到達タイミングを調整することができる。
上記第1及び第2の光パルスタイミング調整装置において、前記調整手段は、前記光スイッチまでの信号光パルスの光路長を変化させることにより信号光パルスの前記光スイッチへの到達タイミングを調整することができる。
また、前記調整手段は、タイミングの検出に用いた信号光パルスの前記光スイッチへの到達タイミング、またはタイミングの検出に用いた信号光パルスに後続する信号光パルスの前記光スイッチへの到達タイミングを調整することができる。
このような構成により、信号光パルスのタイミング揺らぎのフィードバック調整、またはフィードフォワード調整が可能となる。
本発明の第1の光パルスタイミング調整方法は、複数の制御光パルスを、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が制御光パルスの照射部分に形成される光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射し、前記光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを複数の画素を備えた光検出器で検出し、前記光検出器の検出結果に基づいて信号光パルスを検出した画素の位置情報を取得し、前記画素の位置情報と該画素に対応する領域がオン状態にされた時刻とに基づいて、検出された信号光パルスが前記光スイッチに到達したタイミングを演算し、前記演算されたタイミングに基づいて、信号光パルスの前記光スイッチへの到達タイミングを調整する、ことを特徴とする。
本発明の第1の光パルスタイミング調整方法も、本発明の第1の光パルスタイミング調整装置と同様に作用するため、時間分解能を変化させずにダイナミックレンジを拡大した状態で、光パルスまたはパルス列のタイミングゆらぎを検出することができ、時間分解能の面で精度を低下させずに広いダイナミックレンジで光パルスまたはパルス列のタイミングを調整することができる。
本発明の第2の光パルスタイミング調整方法は、制御光パルスを、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が制御光パルスの照射部分に形成される光スイッチに照射し、信号光パルスを複数に分割し、該分割して得られた複数の信号光パルスを、前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射し、前記光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを複数の画素を備えた光検出器で検出し、前記光検出器の検出結果に基づいて信号光パルスを検出した画素の位置情報を取得し、前記画素の位置情報と該画素に対応する領域がオン状態にされた時刻とに基づいて、検出された信号光パルスが前記光スイッチに到達したタイミングを演算し、前記演算されたタイミングに基づいて、信号光パルスの前記光スイッチへの到達タイミングを調整する、ことを特徴とする。
本発明の第2の光パルスタイミング調整方法も、本発明の第2の光パルスタイミング調整装置と同様に作用するため、時間分解能を変化させずにダイナミックレンジを拡大した状態で、光パルスまたはパルス列のタイミングゆらぎを検出することができ、時間分解能の面で精度を低下させずに広いダイナミックレンジで光パルスまたはパルス列のタイミングを調整することができる。
本発明の第1の光パルス処理装置は、制御光パルスの照射部分に、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が形成される光スイッチと、複数の制御光パルスを前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射する制御光照射手段と、前記光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを検出する複数の画素を備えた光検出器と、前記光スイッチの予め定められた範囲外のオン状態の領域を透過し又は該領域で反射される信号光パルスが前記光検出器で検出されないように該信号光パルスを遮断する遮断手段と、を含んで構成されている。
本発明の第1の光パルス処理装置では、制御光パルスの照射部分にオン状態の領域が形成される光スイッチと、複数の制御光パルスを光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射する制御光照射手段と、光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを検出する光検出器と、を設けたため、第1の光パルスタイミング検出装置及び第1の光パルスタイミング調整装置と同様に、ダイナミックレンジを拡大することができる。
更に、第1の光パルス処理装置には、光スイッチの予め定められた範囲外のオン状態の領域を透過し又は該領域で反射される信号光パルスが光検出器で検出されないように該信号光パルスを遮断する遮断手段が設けられる。
例えば、信号光パルスのタイミング揺らぎの許容範囲を予め設定し、光スイッチ上に該許容範囲に対応する2次元的な範囲(位置)を予め定める。光スイッチ上の予め定められた範囲に到達した信号光パルスはタイミング揺らぎが許容範囲内であるとみなすことができる。また、予め定められた範囲外に到達した信号光パルスは、タイミング揺らぎが大きく、許容範囲を超えているとみなすことができる。従って、例えば光スイッチの受光面或いは受光面と反対側の面に、光スイッチの予め定められた範囲外のオン状態の領域を透過し又は該領域で反射される信号光パルスが光検出器で検出されないように遮断手段を設けることにより、タイミング揺らぎが許容範囲を超えた信号光パルスを遮断することができる。すなわち、光スイッチを透過或いは反射した信号光パルスは、タイミング揺らぎが低減される。
本発明の第2の光パルス処理装置は、制御光パルスの照射部分に、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が形成される光スイッチと、信号光パルスを複数に分割し、該分割して得られた複数の信号光パルスを前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射する信号光照射手段と、前記光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを検出する複数の画素を備えた光検出器と、前記光スイッチの予め定められた範囲外のオン状態の領域を透過し又は該領域で反射される信号光パルスが前記光検出器で検出されないように該信号光パルスを遮断する遮断手段と、を含んで構成されている。
本発明の第2の光パルス処理装置では、制御光パルスの照射部分にオン状態の領域が形成される光スイッチと、信号光パルスを複数に分割し、該分割された複数の信号光パルスを前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射する信号光照射手段と、光スイッチのオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを検出する複数の画素を備えた光検出器と、を設けたため、第2の光パルスタイミング検出装置及び第2の光パルスタイミング調整装置と同様に、ダイナミックレンジを拡大することができる。
更に、第1の光パルス処理装置と同様に、光スイッチの予め定められた範囲外のオン状態の領域を透過し又は該領域で反射される信号光パルスが光検出器で検出されないように該信号光パルスを遮断する遮断手段が設けられることにより、例えば、タイミング揺らぎが許容範囲を超えた信号光パルスを遮断することができ、光スイッチを透過或いは反射した信号光パルスは、タイミング揺らぎが低減される。
本発明の第1の光パルス処理方法は、複数の制御光パルスを、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が制御光パルスの照射部分に形成される光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射し、信号光パルスを前記光スイッチに照射し、前記光スイッチの予め定められた範囲外のオン状態の領域を透過し又は該領域で反射される信号光パルスが複数の画素を備えた光検出器で検出されないように該信号光パルスを遮断し、前記光スイッチの予め定められた範囲内のオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを前記光検出器で検出する、ことを特徴とする。
本発明の第1の光パルス処理方法も、本発明の第2の光パルス処理装置と同様に作用するため、信号光パルスのタイミング揺らぎを低減させることができる。
本発明の第2の光パルス処理方法は、制御光パルスを、入射する信号光パルスを透過または反射させるオン状態の領域が制御光パルスの照射部分に形成される光スイッチに照射し、信号光パルスを複数に分割し、該分割して得られた複数の信号光パルスを、前記光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射し、前記光スイッチの予め定められた範囲外のオン状態の領域を透過し又は該領域で反射される信号光パルスが複数の画素を備えた光検出器で検出されないように該信号光パルスを遮断し、前記光スイッチの予め定められた範囲内のオン状態の領域を透過し又は該領域で反射された信号光パルスを前記光検出器で検出する、ことを特徴とする。
本発明の第2の光パルス処理方法も、本発明の第2の光パルス処理装置と同様に作用するため、信号光パルスのタイミング揺らぎを低減させることができる。
以上説明した如く本発明によれば、時間分解能を犠牲にせずにダイナミックレンジを拡大することができる、という優れた効果を奏する。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下では、上記背景技術の図27で説明したタイミング検出装置と同様の構成については同一の符号を付して説明する。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係るタイミング検出装置は、図1に示すように、信号光1’を伝送する光ファイバなどの光導波路10と、該光導波路10から出射された信号光1’を拡大して信号光パルス1A〜1H(図1では信号光パルス1Aのみ図示)の列からなる信号光1とする光学系20と、2次元的に配列され互いに独立した光シャッタ部として機能する複数の領域ARp〜ARw(後述の図3に図示)を備え、制御光2(制御光パルス2A)の照射による該光シャッター部のオンオフ動作により信号光1から出力光パルスを切り出す透過型かつ面型の光スイッチ50と、光スイッチ50から出射された出力光を検出する光検出器70と、空気と屈折率の異なる光学媒質から構成され、制御光2(制御光パルス2A)を分割・遅延する分割・遅延素子60と、光検出器70での検出結果に基づいて信号光パルス1A〜1Hの光スイッチ50への到達タイミングを演算するタイミング演算部100と、を備えている。
光ファイバなどの光導波路10中に伝送される信号光は、複数チャンネルの信号光が時間的にシリアルに多重化された、ビットレートが1テラビット/秒(Tbit/s)、パルス時間間隔が1psのものである。
光学系20は、複数のレンズを組み合わせて構成され、光導波路10から入射された信号光1’を、進行方向に対して垂直な面方向に波面が広げられた、各チャンネルの信号光パルス1A〜1Hの列からなる信号光1に変換する。信号光パルスの時間間隔は1psであるので、空間的な距離間隔は300μmとなる。
透過型の光スイッチ50は、受光面が信号光1の進行方向に対して垂直になるように配置された面型の光スイッチである。この配置により、2次元的に所定の広がりを有する信号光1を受光面に入射させると共に、制御光2を、その進行方向を光スイッチ50の受光面に対して傾けて、光スイッチ50に入射させる。
制御光2は、不図示の光源から出射され、信号光1と同様に進行方向に対して垂直な面方向に波面が広げられた光であり、信号光パルス1A〜1Hの1組につき1つの制御光パルス2Aを含むパルス列から構成されている。また、制御光2は信号光1に同期している。信号光1’には、信号光パルス1A〜1Hの列の始まりを示す情報が挿入され、これらの情報から、信号光1に対して所定の時間関係で信号光1に同期した制御光2を形成することができる。また、制御光2(制御光パルス2A)は、光スイッチ50の受光面に対して所定角度傾けた状態で(すなわち斜めに)照射される。なお、図1では、制御光2を信号光1の入射側から光スイッチ50に入射させているが、制御光2を信号光1の出射側から光スイッチ50に入射させてもよい。
また、光スイッチ50の光シャッタ部として機能する複数の領域ARp〜ARwは、制御光2が照射されるか否かにより吸収係数(吸光度)が変化し且つ緩和時間が短い非線形光学材料によって形成されており、制御光2が照射された瞬間だけ透過率が変化して信号光1を所定値以上の透過率で透過させる。即ち、光スイッチ50は、非線形光学材料の過飽和吸収を利用してオンオフ動作を行う。光スイッチ50のオンオフ動作は、総ての信号光パルスに同期している必要はなく、必要に応じて選択された信号光パルスに同期していればよい。
なお、本発明者等は先に有機色素膜を用いた平面型の光−光スイッチを提案している(特開平11−15031号公報)。この光−光スイッチを、本実施の形態に係る面型の光スイッチ50として好適に使用することができる。
この光−光スイッチは、図2に示すように、石英基板31上に、フェムト秒オーダーで可飽和吸収を示す機能性薄膜32を形成し、その機能性薄膜32上に、アルミニウムの蒸着およびエッチングにより、遮光層33を所定パターンに形成して、機能性薄膜32の遮光層33で覆われていない部分34を、互いに独立の複数の光シャッタ部として機能させるものである。
機能性薄膜32としては、AlPo−F(フルオロ−アルミニウムフタロシアニン)、ポリジアセチレン、ポリチオフェンなどのπ共役系高分子、スクエアリリウムなどの色素会合体、C60薄膜などを用いることができる。機能性薄膜32をこれら有機材料で構成することにより、膜厚の制御が容易になり、光スイッチの大面積化が可能となる。これらの中でも、スクエアリリウム色素の色素分子膜が好ましい。スクエアリリウム色素の色素分子膜は、そのJ−会合体を用いることで効率良くスイッチング動作を行うことができる。なお、上記の光スイッチの製造方法は、特開平11−15031号公報に記載されている。
分割・遅延素子60は、空気と屈折率の異なる透明な光学媒質(例えばガラス)から構成された光学素子であり、光スイッチ50と制御光2(制御光パルス2A)を出射する光源(不図示)との間であって制御光パルス2Aの進行経路途中に、制御光パルス2Aの下半分のみが入射され、制御光パルス2Aの上半分は入射されないように配置されている。この配置により、制御光パルス2Aが、分割・遅延素子60に入射されない上半分(制御光パルス2Aa)と、分割・遅延素子60に入射された下半分(制御光パルス2Ab)とに分割される。また、空気と光学媒質の屈折率差により光路長に差が生じて、分割・遅延素子60に入射されずに空気中を通過した制御光パルス2Aaが先に進行し、分割・遅延素子60に入射された制御光パルス2Abは遅れて進行する。これにより、制御光パルス2Aaは、光スイッチ50の上半分の領域に先に照射され、それより所定時間遅れて制御光パルス2Abが光スイッチ50の下半分の領域に照射される。
このように、分割されて得られた2つの制御光パルス2Aa、2Abの、光スイッチ50に到達するタイミングは各々異なる。この到達タイミングの時間差は、分割・遅延素子60の屈折率を変えることにより調整できる。本実施の形態では、制御光パルス2Aa、2Abが連続的に光スイッチ50に照射されるように、制御光パルス2Aaの光スイッチ50に対する照射終了と同時に、制御光パルス2Abの光スイッチ50に対する照射が開始されるような屈折率の分割・遅延素子60を用いる。
なお、ここでは、制御光2(制御光パルス2A)は、光スイッチ50の受光面に対して斜めに照射されるため、分割されて得られた制御光パルス2Aa、2Abが光スイッチ50の受光面に到達した後、制御光パルス2Aa、2Abの進行に伴って徐徐に照射領域(すなわち、制御光パルス2Aa或いは2Abと光スイッチ50とが交差してオン状態となる領域)が変化する。具体的にはあたかもスリット部SL(光スイッチ50のオン状態となる領域)が図1の光スイッチの受光面上の点線で示される矢印方向に移動するように、光スイッチ50の複数の領域ARp〜ARwが順次制御光パルス2Aa、2Abと交差して透過状態となる。
光検出器70は、多数の画素が2次元状に配列されたCCDカメラやフォトディテクタアレイ、フォトダイオードの表面抵抗を利用したスポット光の位置センサ(ポジション・センシティブ・ダイオード)などの光検出素子で構成されており、各画素は、光スイッチ50の光シャッター部として機能する複数の領域に対応する信号光1の各空間位置部分の光路上に位置するように配置されている。
タイミング演算部100は、CPU、ROM、RAM、入出力部等を備えた通常のパーソナル・コンピュータで構成されている。
次に、光スイッチ50のシャッター機能及び光検出器70の信号光検出機能について図3から図7を参照しながら説明する。なお、図3乃至図7では、信号光1及び制御光1の位置が図1と異なっているが、光スイッチ50の受光面が信号光1の進行方向に対して垂直に設けられ、制御光2が光スイッチ50の受光面に対して所定角度傾けた状態で(すなわち斜めに)照射される点においては同一である。
また、ここでは、図3に示すように、光スイッチ50の受光面に対して垂直な方向から照射され等間隔tで並ぶ信号光パルス1A〜1Hを例に挙げる。便宜上、等間隔に並んでいる信号光パルスを例としてあげるが、実際の測定では等間隔に並んでいる必要はない。また、制御光パルス2Aは、分割・遅延素子60により上下半分に分割されて(制御光パルス2Aa、2Ab)、上述したように異なるタイミングで光スイッチ50の受光面に対して所定角度傾けて照射される。
図4に示すように、信号光パルス1Aが光スイッチ50に到達した時点で、制御光パルス2Aの上半分の制御光パルス2Aaが光スイッチ50の受光面の上段の領域ARpに到達するように、制御光2を信号光1に対して同期させる。これにより、信号光パルス1Aが光スイッチ50に到達した時点で、光スイッチ50の上段の領域ARpが透過状態とされ、該領域ARpに対応する信号光パルス1Aの空間位置部分が透過して、出力光パルス3Apとして切り出される。
更に、図5に示すように、制御光パルス2Aaの進行に伴い、光スイッチ50の上段の透過状態とされる領域が順次変化すると共に、信号光パルス1B、1C、1Dが順次光スイッチ50に到達するため、透過状態とされた領域ARq〜ARsに対応する信号光パルス1B〜1Dの空間位置部分が透過して、それぞれ出力光パルス3Bq,3Cr、3Dsとして切り出される。また、先に切り出された出力光パルスは、光検出器70に到達し、順次光検出器70の対応する画素で検出される。
制御光パルス2Aaの光スイッチ50への照射が終了したと同時に、制御光パルス2Aの下半分の制御光パルス2Abが光スイッチ50に到達する。図5に示すように、信号光パルス1Eが光スイッチ50に到達した時点で、制御光パルス2Abが光スイッチ50に到達し、光スイッチ50の下段の領域ARtが透過状態とされ、該領域ARtに対応する信号光パルス1Eの空間位置部分が透過して、出力光パルス3Egとして切り出される。
更に、図6に示すように、光スイッチ50の下段でも上段と同様に透過状態とされる領域が順次変化すると共に信号光パルス1Fから1Hが光スイッチ50に順次到達するため、透過状態とされた領域ARu〜ARwに対応する信号光パルス1F〜1Hの空間位置部分が透過して、それぞれ出力光パルス3Fu、3Gv、3Hwとして切り出され、順次光検出器70の対応する画素で検出される。
最終的には図7に示すように、各出力光パルスが光検出器70に到達し、光検出器70の2次元状に等間隔に配列された画素により、光スイッチ50を上下段にそれぞれ等間隔に透過した出力光パルス(信号光パルス)が検出される。
制御光パルス2Aを分割しない状態で照射すると、制御光パルス2Aaのみ照射した場合と等価となり、信号光パルス1E〜1Hの検出はできないが、本実施の形態で示したように、制御光パルスを上下に2分割して、異なるタイミングで(ここでは、上半分の制御光パルス2Aaの照射終了と同時に制御光パルス2Abの照射が開始されるように)照射し、かつ光検出器70の画素を光スイッチ50の透過状態とされる領域ARp〜ARwに対応する信号光1の各空間位置部分の光路上に位置するように配置することによって、信号光パルス1A〜1Hの検出が可能となる。すなわち、制御光パルスが1つの場合に比べてダイナミックレンジは2倍となる。
ここで、図8を参照しながらタイミング演算部100で実施されるタイミング演算処理について説明する。なお、ここでは、図3乃至図7で説明したような配置で出力光3を検出した場合の演算方法を説明する。
図8は、出力光3の検出状態を上方から見た図であり、光スイッチ50の上段の領域、光検出器70の2次元状に配列された複数の画素の上段部分の画素、該上段の画素で検出される出力光パルス(すなわち、制御光パルス2Aaの照射により切り出された出力光パルス3Ap、3Bq、3Cr、3Ds)が図示されている。
上述した通り、出力光パルス3Ap〜3Hwの各々が、光検出器70の対応する画素で順次検出される。光検出器70は、出力光パルス3Ap〜3Hwを検出した画素の位置情報をタイミング演算部100に出力する。
次に、タイミング演算部100は、入力された位置情報から、出力光パルス3Ap〜3Hwを検出した画素の位置座標を算出する。既に説明した通り、光検出器70の各画素は、信号光1の各空間位置部分(図8では、上段の空間位置部分が1p、1q、1r、1sとして示されている)の光路上に位置するように配置されており、検出した画素の位置座標から信号光1が光スイッチ50を通過した位置(スリット位置)を特定することができる。この関係に基づいて、検出した画素の位置座標から、各信号光パルス1A〜1Hが光スイッチ50の対応する各領域ARp〜ARwへ到達するタイミングを演算する。即ち、信号光1の光パルスタイミング(パルス列の時間差)を検出する。
なお、空間位置を検出する光検出器として、CCDやフォトディテクタアレイを用い、信号光パルスが複数の画素にまたがるように検出されるとき、各画素で検出される光量に基づいて重心検出等の演算を施すことにより、パルスの到着タイミングを、光検出器の空間解像度よりも細かい分解能で検出することができる。
次に、光検出器70において最初の出力光パルス3Apが検出された画素の位置座標を原点とし、次の出力光パルス3Bqが検出された画素の位置座標をX(m)とし、スリットSLの移動速度をV(m/s)とすると、光スイッチ50に信号光パルス1Aが到達してから次の信号光パルス1Bが到達するまでの時間tは下記式で表される。
ここで、制御光2の照射角度(入射角)をθ、光速をc(m/s)とすると、スリットSLの移動速度Vは下記式で表される。この式から分かるように、制御光の照射角度θを適宜変更することによって、タイミング検出の時間分解能を更に調整することができる。
従って、上記の時間tは下記式で表される。
即ち、スリットSLによって、信号光1の光パルスの到達時間差は光検出器70の画素の位置座標の差に変換される。従って、光検出器70で得られた位置情報から、逆に、信号光1の光パルスの到達時間差を求めることができる。上述した通り、光スイッチ50の各光シャッター部は、フェムト秒オーダーの制御光パルスでオンオフ動作させることができるので、フェムト秒オーダーの時間分解能で信号光1の光パルスの到達時間差を求めることができる。従って、光パルスまたはパルス列にタイミングゆらぎが発生している場合にも、このタイミングゆらぎをフェムト秒オーダーの時間分解能で検出することができる。また、複雑な演算を行わないため、リアルタイムでタイミングゆらぎを検出することができる。
なお、スリットSLの幅は、制御光と光パルスまたはパルス列の照射角度と時間幅、スイッチのオン・オフ速度によって決定される。
以上説明したように、制御光パルスを分割し、分割して得られた複数の制御光パルスを光スイッチの異なる領域に異なるタイミングで照射することにより、時間分解能を悪化させることなく、ダイナミックレンジを拡大することができる。
以下、上記実施の形態の変形例について説明する。
(変形例1)
上記実施の形態では、空気と屈折率の異なる透明な光学媒質から構成された分割・遅延素子60を、制御光パルス2Aの下半分のみが入射され、制御光パルス2Aの上半分は入射されないように配置することにより制御光パルス2Aを分割して、光スイッチ50の上半分の領域と下半分の領域に、それぞれ異なるタイミングで照射する例について説明したが、該分割・遅延素子60に代えて、図9に示されるように、制御光パルス2Bの進行方向に厚さの異なる複数の透明媒質(例えばガラス)により構成された光学素子61を配置することにより制御光パルス2Bを分割して、異なるタイミングで照射するようにしてもよい。図示される光学素子61は、第1の透明媒質61a、第2の透明媒質61b、第3の透明媒質61cの3つの透明媒質から構成されており、各透明媒質は、制御光パルス2Bの進行方向の厚さがそれぞれ、第1の透明媒質61a、第2の透明媒質61b、第3の透明媒質61cの順に長くなっている。
この配置により、制御光パルス2Bが、光学素子61に入射されない制御光パルス2Baと、光学素子61の第1の透明媒質61aに入射された制御光パルス2Bbと、光学素子61の第2の透明媒質61bに入射された制御光パルス2Bcと、光学素子61の第3の透明媒質61cに入射された制御光パルス2Bdと、に分割される。また、厚さの異なる3つの透明媒質により光路長に差が生じ、各制御光パルスは光スイッチ50の異なる領域に異なるタイミングで(制御光パルス2Ba、2Bb、2Bc、2Bdの順に)到達する。図9に示す例では、制御光パルス2Bが4つに分割されるため、ダイナミックレンジを4倍にすることが可能となる。
なお、透明媒質としては、ガラスに限定されず他の材質(アクリル等)を、所望の遅延となるように選択して用いることができる。このように、配置する光学素子の構成を変更して、制御光パルスの分割数や遅延時間を変更することにより、柔軟性高くダイナミックレンジを変更することができる。
(変形例2)
また、図10に示すように、ハーフミラー62を用いて制御光パルスを分割し、全反射ミラー63、64、65を用いて、光路長を調整するようにしてもよい。図示されるように、制御光パルス2Cの進行方向に対して45度傾けて配置されたハーフミラー62により、制御光パルス2Cは2つの制御光パルス2Ca、2Cbに分割される。更に、分割した一方の制御光パルス2Cbの進行方向に全反射ミラー63を設け、この全反射ミラー63により制御光パルス2Cbを反射して他方の制御光パルス2Caと平行にして出力する。更に、この制御光パルス2Cbの進行方向に全反射ミラー64を設け、この全反射ミラー64により制御光パルス2Cbを反射して制御光パルス2Caの光路に近づける。更に、この制御光パルス2Cbの進行方向に全反射ミラー65を設け、この全反射ミラーにより制御光パルス2Cbを反射して、制御光パルス2Caの光路と平行にして出力する。なお、全反射ミラー65は、光スイッチ50の制御光パルス2Caが照射する領域と異なる領域に制御光パルス2Cbが照射されるように配置される。これにより、制御光パルス2Caに比べて、ハーフミラー62と全反射ミラー63間、及び全反射ミラー64と全反射ミラー65間の光路長分だけ差が生じ、制御光パルス2Cbを遅延させることができる。
このような構成において光路長を調整するには、図示されるように、全反射ミラー63、64を、ハーフミラー62と全反射ミラー63間、及び全反射ミラー64と全反射ミラー65間の光路長が変更されるように移動すればよい。例えば、全反射ミラー63、64を、図示される63’、64’の方向に移動すれば更に光路長を長くすることができる。また、分割数を増やすには、ハーフミラー及び全反射ミラーを増やして同様に配置すればよい。なお、この場合には、分割された制御光パルスのそれぞれの光量が異なってしまう場合があるため、全ての制御光パルスが同じ光量となるように分割量を調整する必要がある。
(変形例3)
上記では、制御光パルス2Aを分割・遅延して光スイッチ50に対する照射時間を拡大することによりダイナミックレンジを拡大する例について説明したが、図11に示されるように信号光パルス1Aを分割・遅延することによりダイナミックレンジを拡大することもできる。
本例の分割・遅延素子60も、上記図1に示した分割・遅延素子と同様に、空気と屈折率の異なる透明な光学媒質から構成された光学素子であるが、ここでは、光スイッチ50と光学系20との間であって信号光パルス1Aの進行経路途中に、信号光パルス1Aの下半分のみが入射され、信号光パルス1Aの上半分は入射されないように配置されている。
この配置により、信号光パルス1Aが、分割・遅延素子60に入射されない上半分(信号光パルス1Aa)と、分割・遅延素子60に入射された下半分(信号光パルス1Ab)とに分割される。また、空気と光学媒質の屈折率差により光路長に差が生じて、分割・遅延素子60に入射されずに空気中を通過した信号光パルス1Aaが先に進行し、分割・遅延素子60に入射された信号光パルス1Abは遅れて進行する。これにより、信号光パルス1Aaは、光スイッチ50の上半分の領域に先に照射され、それより所定時間遅れて信号光パルス1Abが光スイッチ50の下半分の領域に照射される。
他の構成要素は、図1と同様であるため、図1と同一の符号を付して説明を省略する。
図12は、光検出器70における分割された信号光パルスの検出状態を模式的に示した図である。上下の数字は、タイミングのずれを示しており、この図の場合には、上段の画素では0〜4の範囲のずれを測定することができ、下段では−4〜0の範囲のずれを測定することができる。
基準時刻を0とし、上段0の位置で信号光パルス1Aaに対応する出力光パルスを検出した際に信号光パルス1Abに対応する出力光パルスを下段0の位置で検出できるように信号光パルス1Aの分割・遅延を行えば、基準時刻0より前に到達した出力光パルスについても検出できるようになる。
より具体的には、分割されて得られた上半分の信号光パルス1Aaは遅延させずに(基準時刻0に光スイッチ50に到達するように)光スイッチ50に照射し、下半分の信号光パルス1Abは、基準時刻0から4だけタイミングを異ならせて(遅延させて)光スイッチ50に照射する。図12において、信号光パルス1A自体にタイミングのずれが無い場合には、光検出器70の上段の基準時刻0に相当する画素で、分割されて先に光スイッチ50に到達した信号光パルス1Aaの出力光パルス3Aaが検出され、下段の基準時刻0に相当する画素で、信号光パルス1Abの出力光パルス3Abが検出される。ここで、信号光パルス1Aの到達タイミングが遅かった場合には、そのタイミングのずれは光検出器70の上段のいずれかの画素で検出することができ、逆に到達タイミングが早かった場合には、そのタイミングのずれは光検出器70の下段のいずれかの画素で検出することができる。
このように、信号光パルス1Aの分割・遅延を行わない場合にはダイナミックレンジは0から4までであったのに対し、信号光パルス1Aを分割して一方を遅延させた場合には、基準時刻0より前に到達した出力光パルスも検出できるため、ダイナミックレンジは−4から4に拡大できる。
なお、基準時刻としては、例えば、2分割された信号光パルス1Aaの光スイッチ50への到達時刻を基準時刻0としてもよいし、制御光パルス2Aの光スイッチ50への到達時刻を基準時刻0としてもよい。なお、後者の場合には、タイミングを演算する際に制御光パルス2Aの到達時刻と信号光パルス1Aaの到達時刻との差分でタイミングのずれ量を調整することが好ましい。
(変形例4)
上記実施の形態では、光スイッチ50を、その受光面が信号光1(信号光パルス1A)の進行方向に対して垂直になるように配置し、制御光2(制御光パルス2A)を、その進行方向を光スイッチ50の受光面に対して傾けて光スイッチ50に入射させる例について説明したが、光スイッチ50を、その受光面が制御光2(制御光パルス2A)の進行方向に対して垂直になるように配置し、信号光1(信号光パルス1A〜1H)を、その進行方向を光スイッチ50の受光面に対して傾けて光スイッチ50に入射させるようにしてもよい。
図13は、このようなタイミング検出装置の構成を上方から見た図である。図示されるように、透過型の光スイッチ50が、信号光1(信号光パルス1A〜1H)の進行方向に対して所定角度(図では、45°)傾けて配置されている。この配置により、2次元的に所定の広がりを有する信号光1を受光面に斜めに入射させると共に、制御光2(制御光パルス2A)を、その進行方向が光スイッチ50の受光面に垂直になるように入射させる。また、分割・遅延素子60により、制御光パルス2Aは、上半分の制御光パルス2Aaと下半分の制御光パルス2Abに分割される。更に、分割・遅延素子60により分割された2つの制御光パルス2Aa、2Abの光路長に差が生じ、制御光パルス2Aaは、光スイッチ50の上半分の領域に先に照射され、それより所定時間遅れて制御光パルス2Abが光スイッチ50の下半分の領域に照射される。
なお、図13は、タイミング検出装置の構成を上方から見た図であるため、光スイッチ50は、制御光パルス2Aaにより照射される光スイッチ50の上半分の領域のみが図示されており、制御光パルス2Abにより照射される光スイッチ50の下半分の領域は図示されていない。同様に、光検出器70の2次元状に配列された画素については、上段に配列された画素のみが図示されており、下段に配列された画素については図示されていない。
更に、図13では、制御光2を信号光1の出射側から光スイッチ50に入射させているが、制御光2を信号光1の入射側から光スイッチ50に入射させてもよい。また、上記で図1を用いて説明したタイミング検出装置と同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
ここで、本例における光スイッチ50のシャッター機能及び光検出器70の信号光検出機能について説明する。図13に示す装置でも、図7に示されるような互いに独立した光シャッター部として機能する複数の領域ARp〜ARwを備えた透過型の光スイッチ50を用いているが、制御光パルス2Aa、2Abを光スイッチ50に垂直に入射させるので、光スイッチ50の上半分の複数の領域ARp〜ARsは制御光パルス2Aaにより同時に透過状態となり、下半分の複数の領域ARt〜ARwは制御光パルス2Abにより複数の領域ARp〜ARsとは異なるタイミングで同時に透過状態となる。
図14に示すように、分割・遅延素子60により分割された上半分の制御光パルス2Aaが光スイッチ50の上半分の各領域ARp〜ARsを同時に照射し、同時に透過状態にする。そして、4つの信号光パルス1A〜1Dが光スイッチ50の対応する領域ARp〜ARsに同時に到達する時点で、制御光パルス2Aaが光スイッチ50の各領域ARp〜ARsに到達するように、制御光2を信号光1に対して同期させる。
従って、制御光パルス2Aaが光スイッチ50の各領域ARp〜ARsに到達した時点で、信号光パルス1Aの空間位置部分1pが領域ARpを、信号光パルス1Bの空間位置部分1qが領域ARqを、信号光パルス1Cの空間位置部分1rが領域ARrを、信号光パルス1Dの空間位置部分1sが領域ARsを、それぞれ透過して、図15に示すように、それぞれ出力光パルス3Ap,3Bq,3Cr,3Dsとして切り出される。そして、この出力光パルス3Ap〜3Dsが、光検出器70の対応する画素で検出される。
続いて、図16に示すように、分割・遅延素子60により分割され遅延された制御光パルス2Aの下半分の制御光パルス2Abが、制御光パルス2Aaと異なるタイミングで光スイッチ50の下半分の各領域ARt〜ARwを同時に照射し、同時に透過状態にする。そして、4つの信号光パルス1E〜1Hが光スイッチ50の対応する領域ARt〜ARwに同時に到達する時点で、制御光パルス2Aaが光スイッチ50の各領域ARt〜ARwに到達するように、制御光2を信号光1に対して同期させる。
従って、制御光パルス2Abが光スイッチ50の各領域ARt〜ARwに到達した時点で、信号光パルス1Eの空間位置部分1tが領域ARtを、信号光パルス1Fの空間位置部分1uが領域ARuを、信号光パルス1Gの空間位置部分1vが領域ARvを、信号光パルス1Hの空間位置部分1wが領域ARwを、それぞれ透過して、図17に示すように、それぞれ出力光パルス3Et,3Fu,3Gv,3Hwとして切り出される。そして、この出力光パルス3Et〜3Hwが、光検出器70の対応する画素で検出される。
なお、図13乃至図17では一部を省略したが、信号光1は信号光パルス1A〜1Hの組がシリアルに連続するもので、光スイッチ50からは、図18に示すように、出力光パルス3Ap〜3Hwの組が連続して切り出される。但し、同図は、出力光パルス3Ap〜3Hwの空間的位置関係を示したもので、時間的には、制御光パルス2Aaの照射により出力光パルス3Ap〜3Dsが同時に切り出され、それとは異なるタイミングで制御光パルス2Abの照射により出力光パルス3Et〜3Hwが同時に切り出される。
このように、制御光パルス2Aを分割しない場合には、制御光パルス2Aaのみ照射した場合と等価となり、信号光パルス1A〜1D(出力光パルス3Ap〜3Ds)しか検出することはできないが、制御光パルス2Aを上下に2分割して、異なるタイミングで照射し、かつ光検出器70の画素を光スイッチ50の透過状態とされる領域ARp〜ARwに対応する信号光1の各空間位置部分1p〜1wの光路上に位置するように配置することによって、信号光パルス1A〜1Hの検出が可能となる。すなわち、制御光パルスが1つの場合に比べてダイナミックレンジは2倍となる。
ここで、図19を参照しながら本例のタイミング演算部100で実施されるタイミング演算処理について説明する。なお、図19(A)では、光スイッチ50の上段の領域、光検出器70の2次元状に配列された複数の画素の上段部分の画素、該上段の画素で検出される出力光パルス(すなわち、制御光パルス2Aaの照射により切り出された出力光3Ap、3Bq、3Cr、3Ds)が図示されている。
上述した通り、出力光パルス3Ap〜3Hwの各々が、光検出器70の対応する画素で順次検出される。光検出器70は、出力光パルス3Ap〜3Hwを検出した画素の位置情報をタイミング演算部100に出力する。
次に、タイミング演算部100は、入力された位置情報から、出力光パルス3Ap〜3Hwを検出した画素の位置座標を算出する。既に説明した通り、光検出器70の各画素は、信号光1の各空間位置部分(図19(A)では、信号光パルス1A〜1Dに対応する空間位置部分1p、1q、1r、1sのみが示されている)の光路上に位置するように配置されており、検出した画素の位置座標から信号光1が光スイッチ50を通過した位置(スリット位置)を特定することができる。この関係に基づいて、検出した画素の位置座標から、各信号光パルス1A〜1Hが光スイッチ50の対応する各領域ARp〜ARwへ到達するタイミングを演算する。即ち、信号光1の光パルスタイミング(パルス列の時間差)を検出する。
次に、光スイッチ50の上段に配列された複数の領域ARp〜ARsは同時に制御光パルス2Aaと交差して透過状態とされるが、このシャッター動作は、図19(B)に示すように、信号光1の進行方向と直交する方向にスリット部SLが移動する場合と同等である。ここで、信号光1の光スイッチ50への入射角度(即ち、光スイッチ50の傾斜角度)をθ1、光速をc(m/s)とすると、スリットSLの移動速度V1は下記式で表される。この式から分かるように、光スイッチ50の傾斜角度θ1を適宜変更することによって、タイミング検出の時間分解能を調整することができる。
光検出器70において最初の出力光パルス3Apが検出された画素の位置座標を原点とし、次の出力光パルス3Bqが検出された画素の位置座標をX1(m)とすると、信号光パルス1Aと信号光パルス1Bとのパルス間隔t1は下記式で表される。
即ち、スリットSLによって、信号光1の光パルスの到達時間差は光検出器70の画素の位置座標の差に変換される。従って、光検出器70で得られた位置情報から、逆に、信号光1の光パルス列のパルス間隔を求めることができる。上述した通り、光スイッチ50の各光シャッター部は、フェムト秒オーダーの制御光パルスでオンオフ動作させることができるので、フェムト秒オーダーの時間分解能で信号光1の光パルス列のパルス間隔を求めることができる。従って、光パルスまたはパルス列にタイミングゆらぎが発生している場合にも、このタイミングゆらぎをフェムト秒オーダーの時間分解能で検出することができる。また、複雑な演算を行わないため、リアルタイムでタイミングゆらぎを検出することができる。
(変形例5)
上記実施の形態や変形例では、光スイッチとして透過型の面型光スイッチを用いた例について説明したが、反射型の面型光スイッチを用いてもよい。
図20は、変形例4の透過型の光スイッチに代えて反射型の光スイッチを用いたタイミング検出装置の構成を上方から見た図である。図示されるように、反射型の光スイッチ50が、信号光1(信号光パルス1A〜1H)の進行方向に対して所定角度(図では、45°)傾けて配置されている。この配置により、2次元的に所定の広がりを有する信号光1を受光面に入射させると共に、制御光2(制御光パルス2A)を、その進行方向を光スイッチ50の受光面に垂直に入射させる。また、分割・遅延素子60により、制御光パルス2Aは、上半分の制御光パルス2Aaと下半分の制御光パルス2Abに分割される。更に、分割・遅延素子60により分割された2つの制御光パルス2Aa、2Abの光路長に差が生じ、制御光パルス2Aaは、光スイッチ50の上半分の領域に先に照射され、それより所定時間遅れて制御光パルス2Abが光スイッチ50の下半分の領域に照射される。
なお、図20は、タイミング検出装置の構成を上方から見た図であるため、光スイッチ50は、制御光パルス2Aaにより照射される光スイッチ50の上半分の領域のみが図示されており、制御光パルス2Abにより照射される光スイッチ50の下半分の領域は図示されていない。同様に、光検出器70の2次元状に配列された画素については、上段に配列された画素のみが図示されており、下段に配列された画素については図示されていない。
反射型の光スイッチ50は、制御光2が照射されるか否かにより屈折率が変化し且つ緩和時間が短い非線形光学材料によって形成されており、制御光2が照射された瞬間だけ干渉により反射状態となって信号光1を所定値以上の反射率で反射する。また、信号光1が光スイッチ50で反射した後の位置には、多数の画素が2次元状に配列された光検出器70が、その各画素が信号光1の各空間位置部分1p〜1w(図では信号光パルス1A〜1Dに対応する空間位置部分1p〜1sのみが示されている)の反射光を受けるように配置されている。その他は、上記変形例4と同じであるため、同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
このような構成によっても、時間分解能を犠牲にせずにダイナミックレンジを拡大することができる。
(変形例7)
上記の実施の形態や変形例では、非線形光学材料の過飽和吸収を利用してオンオフ動作を行う光スイッチを使用する例について説明したが、特開2002−258333号公報に記載されているように、制御光によって偏光面が回転する光カー効果を利用してオンオフ動作を行う光スイッチを用いることもできる。この場合は、光スイッチの前後に偏光子を直交させて配置することにより、一次元光検出器でのバックグラウンド(ノイズ)を抑制することができる。
(変形例8)
上記の実施の形態や変形例では、出力光を検出した画素の位置情報を光検出器からタイミング演算部に直接入力して光パルスのタイミングを演算する例について説明したが、信号光パルスが光検出器の複数の画素にまたがって受光される状況において、各画素の出力信号を基にして、重心検出等の信号処理を施すことにより、出力光の位置情報を抽出し、これに基づいて光パルスのタイミングを演算してもよい。これにより、サブピクセルの分解能で出力信号のタイミングを検出することができる。
(変形例9)
上記実施の形態や変形例では、2つの制御光パルス2Aa、2Abを異なるタイミングで光スイッチ50照射する際、先に照射された制御光パルス2Aaの照射終了と同時に次の制御光パルス2Abの照射を開始する(すなわち連続的に照射する)例について説明したが、信号光1の中で検出不要な信号光パルスが存在する場合には、該不要な信号光パルスを検出しないように、各制御光パルスの照射インターバルを大きくする、すなわち、次の制御光パルスの照射を開始するタイミングを所定の時間だけ更に遅延させるようにすることもできる。これにより、制御光パルスの分割数が2であっても、分割されて得られた各制御光パルスの遅延時間によってはダイナミックレンジを2倍以上に拡大することができる。
(変形例10)
上記実施の形態や変形例では、多数の画素が2次元状に配列された光検出器を用いて出力光を検出する例について説明したが、1次元状に配列された光検出器を用いてもよい。この場合には、光スイッチにより切り出された出力光が、該1次元状に配列された対応する画素の位置に到達するように、その進行方向を全反射ミラー等により変更する必要がある。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係るタイミング調整装置は、第1の実施の形態に示した構成を備えたタイミング検出装置を用いて構成されたタイミング調整装置であり、タイミング検出装置の被検出光パルスである信号光パルスの到達タイミングを調整するものである。
図21は、タイミング調整装置の構成と動作の概要を説明する図である。タイミング調整装置は、不図示の光源から発生した複数の信号光パルスの列からなる信号光1を2分割する分割素子400と、2分割された信号光1の一方を入射してタイミング揺らぎを検出するタイミング検出装置200と、2分割された信号光1の他方を入射して、タイミング検出装置200で検出されたタイミング揺らぎに基づいて、該入射した信号光パルスまたは信号光パルス列のタイミング揺らぎを調整して出射するタイミング制御器300と、を備えている。
例えば、図21の信号光1が何らかの外乱等を受け、該信号光1の光スイッチ50へのタイミングが本来その信号光1が到着すべきタイミングからずれている場合には、このズレ(タイミング揺らぎ)は、タイミング検出装置200によって検出され、検出されたズレが補償されるように、タイミング制御器300を制御し、信号光1のタイミングズレが低減されるようにする。
なお、ここでは、図示されるように、信号光1は、分割素子400によって、タイミング検出装置200に入射される系(タイミングが検出される系)と、タイミング制御器300に入射される系(タイミングが調整される系)の2系統に分けられる。また、信号光パルスのタイミングはタイミング検出装置200により電気信号として得られるが、タイミング制御器300の内部では光電変換は行われない。すなわち、タイミングの制御は全光学的に行われる。
タイミング制御器の実装方式としては様々な方式がある。タイミング検出装置200で信号光1のタイミングのずれを検出してからタイミング制御器300でタイミングを調整するまでには、実際にはある程度の時間(レイテンシ)が発生するが、この時間が経過する間も、信号光は光速で媒体中を伝搬する。以下、このレイテンシを考慮した実装方式(フィードフォワード型)と考慮しない実装方式(フィードバック型)の2つタイミング調整装置について説明する。
まず、図22を参照しながら、フィードバック型のタイミング調整装置について説明する。このタイミング調整装置は、信号光1のパルス列を発生させる不図示の信号光発生光源と、信号光発生光源から入力される信号光1を、タイミングを検出する系(タイミング検出装置200に入射される系)S1の信号光と、及びタイミングを調整する系(タイミング制御器300に入射される系)S2の信号光の2系統に分ける分割素子400と、制御光2のパルス列を発生させる不図示の制御光発生光源と、信号光1のパルス列の光スイッチ50への到着タイミングを検出するタイミング検出装置200と、タイミング検出装置で検出された到着タイミングに基づいて信号光パルスまたは信号光パルス列の到着タイミングを調整するタイミング制御器300と、を備えている。また、ダイナミックレンジを拡大しない場合にはこのままの構成を用い、拡大する場合には、上記構成に加えて、第1の実施の形態で説明したように分割・遅延素子60を配置する。
タイミング検出装置200は、上述した通り、光スイッチ50と、光スイッチ50から出射された出力光を検出する光検出器70と、光検出器70での検出結果に基づいて信号光パルス列の光スイッチ50への到達タイミングを演算するタイミング演算部100と、を備えており、タイミングを検出する系S1の信号光1のパルス列の到着タイミングを検出する。
タイミング制御器300は、分割素子400と光スイッチ50との間であってタイミングを調整する系S2の途中に配設され、タイミング演算部100の演算結果(検出結果)に基づいて、信号光パルスまたは信号光パルス列の到達タイミングを遅延させることにより調整する。
このタイミング調整装置では、タイミング検出装置200に、信号光発生光源から信号光1のパルス列が入力されて、光パルス列の到達タイミングが演算される。タイミング検出装置200は、この演算結果をタイミング制御器300に入力する。タイミング制御器300は、検出された到達タイミングから所望の到達タイミングを補償するための遅延時間を演算し、演算した遅延時間が達成されるように信号光発生光源から光スイッチ50までの光路長を変化させ、光パルス列の到着タイミングを調整する。このように、タイミング検出装置200の演算結果をタイミング制御器300に随時フィードバックすることで、リアルタイムで光パルスタイミングを調整できる。
すなわち、所定間隔で入力された信号光パルスまたは信号光パルス列に、図22に示されるようにタイミング揺らぎが含まれている場合には、本タイミング調整装置のタイミング制御器300によってタイミング揺らぎの補償が施されるのは、必要なレイテンシが経過したあとに到達した信号光パルスまたは信号光パルス列に対してである。すなわち、この場合には、タイミング検出の対象となる信号光パルスまたは信号光パルス列と、タイミング制御の対象となる信号光パルスまたは信号光パルス列とは、厳密には異なっている。
ただし、タイミング揺らぎのダイナミクスが、タイミング揺らぎの検出及び制御に必要なレイテンシよりも十分に低速であれば、タイミング揺らぎの低減は実効的には可能となる。これにより、フィードバック型のタイミング調整装置は、ワンダーと呼ばれるゆっくりとしたタイミング揺らぎの低減等において適用できる。
次に、図23を参照しながら、フィードフォワード型のタイミング調整装置について説明する。ここでは、上述したフィードバック型のタイミング調整装置と同一の構成については同一符号を付して説明を省略する。
このフィードフォワード型のタイミング調整装置には、遅延線302が、分割素子400とタイミング制御器300との間であって、タイミングを調整する系S2の途中に配設されている。この遅延線302は、タイミング検出の対象となる信号光パルスまたは信号光パルス列が、タイミング制御の対象となるように、入力された信号光1を遅延させるためのものである。ここでは、タイミング検出装置200で信号光1のパルス列のタイミングズレを検出してからタイミング制御器300でタイミングの調整が開始されるまでの時間(レイテンシ)分だけ遅延させるように構成されている。この遅延線302以外の構成は、上述したフィードバック型のタイミング調整装置と同様である。
このような構成により、タイミング検出のレイテンシに対応する時間だけ信号光1のパルス列を遅延させることができ、検出に用いた信号光1のパルス列に対してタイミング制御を施すことができる。このようなタイミング調整装置は、光パケットスイッチングシステムにおける光パケットの同期など、検出に用いた信号光パルスまたはパルス列と補償が施される信号光パルスまたはパルス列とが一致することが本質的に必要なシステムにおいて好適である。
なお、上述したタイミング制御器300のタイミング調整方法として、実際には様々な方法を採用することができる。以下、2種類のタイミング制御器300を例に挙げて説明する。
図24(A)に示したタイミング制御器300は、全反射ミラー304を複数用いたタイミング制御器であり、ミラー304の位置を調整することによって、光の伝搬距離(光路長)を制御でき、これにより信号光パルスまたはパルス列の光スイッチ50への到達タイミングを制御することができる。
図24(B)に示したタイミング制御器300は、異なる距離の遅延線308を複数用いたタイミング制御器である。入力端と出力端の間には、複数の分岐線306が設けられている。この複数の分岐線306により、信号光1を複数の系統に分岐することができる。分岐後のそれぞれのチャンネルには、異なる距離の遅延線308が配置され、信号光1の光路長を異ならせることができる。更に、分岐線306上にあって遅延線308の後方には光ゲートスイッチ310が配置され、遅延時間に応じていずれか一つの光ゲートスイッチ308が選択される。
これにより、タイミング検出装置200によって検出されたタイミングのズレに対応して、必要な遅延を決定し、これに対応したチャンネルの光ゲートスイッチ310をONすることによってタイミングを制御することができる。
[第3の実施の形態]
上述した第2の実施の形態では、タイミング検出装置200により信号光1のパルス列の到着タイミングを検出し、該検出結果に基づいてタイミング制御器300により信号光1のパルス列の到着タイミングを調整することにより、タイミング揺らぎを低減する例について説明したが、本実施の形態では、タイミング制御器300を用いずにタイミング揺らぎを低減させる光パルス処理装置について説明する。
図25は、本実施の形態に係る光パルス処理装置を上方から見た図である。本光パルス処理装置は、許容可能なタイミング揺らぎの範囲(許容範囲)を予め定めておき、タイミング揺らぎが許容範囲外の信号光パルスを廃棄するものである。タイミングの揺らぎは、光スイッチ50上の位置と対応づけられる。図示されるように、本光パルス処理装置は、信号光1のパルス列を発生させる不図示の信号光発生光源と、制御光2のパルス列を発生させる不図示の制御光発生光源と、面型の光スイッチ50と、光スイッチ50の一部を遮光する遮光部80と、光スイッチの50を透過した信号光パルス(出力光パルス)を検出する光検出器70(図25では不図示)とを備えている。
光スイッチ50は、第1の実施の形態で説明したものと同様の構成である。光スイッチ50は、遮光部80が設けられていない許容範囲の領域と、遮光部80が設けられている許容範囲外の領域とにより構成される。図25では遮光部80は、光スイッチ50の受光面と反対側の面に設けられているが、受光面側に設けられていてもよい。このような構成により、光スイッチ50上にタイミング揺らぎの許容範囲に対応した空間的な範囲を導くことができ、許容範囲外に到達した光(タイミング揺らぎが許容範囲を超えた光)を遮断することができる。
本実施の形態でも、第2の実施の形態と同様に、ダイナミックレンジを拡大しない場合にはこのままの構成を用い、拡大する場合には、上記構成に加えて、第1の実施の形態で説明したように分割・遅延素子60を配置する。
以下、本光パルス処理装置の動作について詳細に説明する。
信号光パルス1が、その進行方向が光スイッチ50の受光面に対して垂直になるように入射され、不図示の分割・遅延素子60により制御光パルス2Aが分割されて得られた制御光パルス2Aaが光スイッチ50の受光面に対して斜めに(θ2の角度で)入射される。ここで、第1の実施の形態で説明したように制御光パルス2Aaと光スイッチ50の交差する領域が透過状態とされ、該透過状態とされた領域において、信号光パルス1Aが光スイッチ50を透過することができる。ここで、信号光パルス1Aの光スイッチ50への到達タイミングにズレ(タイミング揺らぎ)があると、第1の実施の形態で説明した通り、光スイッチ50上で透過する領域がタイミングにズレが無い場合の領域と異なることになる。このタイミングの揺らぎは、上述したように、光スイッチ50上での空間的な位置ずれに対応する。タイミング揺らぎが許容範囲内である場合には、信号光パルス1Aは遮光部80に遮断されずに光スイッチ50を透過することができる。ここで透過した信号光パルスは、光検出器70で検出でき、所望の処理に用いることができる。また、信号光パルス1Aのタイミング揺らぎが大きく、許容範囲外である場合には、遮光部80に遮断され光スイッチ50を透過することはできない。従って光検出器70では検出されない。
図26に示されるように、タイミング揺らぎが許容範囲内AR1の信号光パルス(1)は光スイッチ50を透過して出力される。タイミング揺らぎが許容範囲外AR2の信号光パルス(2)は遮光部80によりブロックされ光スイッチ50を透過できずに廃棄される(出力されない)。すなわち、光スイッチ50を透過して出力された信号光(出力光)では、タイミング揺らぎが低減される。