JP2005187891A - めっき方法、めっき製品の製造方法、およびめっき製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 希土類ボンド磁石の表面に、電気化学反応によりニッケル被膜を形成させるめっき方法であって、硫酸ニッケル、塩化ニッケルおよびほう酸を含有するめっき浴を用い、単層のニッケル被膜を形成させるめっき工程と、前記めっき工程の前に、被めっき物である希土類ボンド磁石を1〜6%濃度の塩酸に7〜25秒間浸漬して表面処理する表面活性化工程と、を含むことを特徴とする、めっき方法。
【選択図】図1
Description
表面活性化工程は、被めっき物である希土類ボンド磁石を1〜6%濃度の塩酸溶液中に、7〜25秒間浸漬して表面処理する工程である。塩酸には、短時間で酸化鉄等を溶解除去する効果があり、この作用によって希土類ボンド磁石表面の酸化膜を溶解除去して、磁石表面を活性化することができる。この工程では、使用する塩酸の濃度と浸漬時間との関係が特に重要である。塩酸の濃度が低すぎたり、あるいは浸漬時間が短すぎる場合には、酸化鉄被膜の除去が不十分になって、めっき被膜の密着性低下などを引き起こすおそれがあり、逆に濃度が濃すぎたり、あるいは浸漬時間が長すぎる場合には、空孔の多い希土類ボンド磁石に塩酸が浸透して磁石自体の鉄分を酸化してしまい、錆の発生原因となる。従って、塩酸濃度と浸漬時間には、良好なめっき被膜を形成させ得る特定の範囲が存在する。また、特定の条件であれば、後述するように、塩素イオンの残留による好ましい影響も考えられる。以上の理由から、本発明のめっき方法では、希土類ボンド磁石の表面活性化処理において、1〜6%濃度の塩酸溶液中に7〜25秒間浸漬処理する条件を採用するのであり、特に好ましくは1.5〜5.5%濃度の塩酸溶液中に10〜20秒間浸漬することによって、非常に優れたニッケルめっき被膜が得られる。
硫酸ニッケル、塩化ニッケルおよびほう酸を含有するめっき浴(ワット浴)を用いる。また、上記めっき浴には、半光沢添加剤を添加することも可能である。半光沢添加剤としては、特に制限なく公知のものを利用できる。
図1に本発明の一実施形態に係る希土類ボンド磁石の電気めっきプロセスの工程例を示す。本実施形態は、アルカリ洗浄工程、第1水洗工程、表面活性化工程、第2水洗工程、めっき工程、第3水洗工程、湯洗工程、乾燥工程を含むように構成され、めっき処理は、被めっき物である希土類ボンド磁石を、順次、各工程に付することにより実施される。
[めっき液構成]1リットル中
硫酸ニッケル 300g/リットル
塩化ニッケル 50g/リットル
ほう酸 50g/リットル
半光沢添加剤 適量 (芳香族系塩類を主成分とし硫黄は含まない)
純水 残分
湯洗工程、乾燥工程は、いずれも一般的な仕上げ処理であり、常法に従い実施できる。
<希土類ボンド磁石めっき製品>
めっきの対象となる希土類ボンド磁石の空孔率は、7体積%以下が好ましく、3体積%以下がより好ましい。なお、希土類ボンド磁石の形状、寸法等は特に限定されず、例えば、円柱状、角柱状、円筒状、円弧状、平板状、湾曲板状等のあらゆる形状のものが対象となる。
(1)Smを主とする希土類元素と、Coを主とする遷移金属とを基本成分とするもの(以下、Sm−Co系合金と言う)。
(2)R(ただし、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種)と、Feを主とする遷移金属と、Bとを基本成分とするもの(以下、R−Fe−B系合金と言う)。
(3)Smを主とする希土類元素と、Feを主とする遷移金属と、Nを主とする格子間元素とを基本成分とするもの(以下、Sm−Fe−N系合金と言う)。
(4)R(ただし、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種)とFe等の遷移金属とを基本成分とし、ナノメーターレベルで磁性相を有するもの(以下、ナノ結晶磁石と言う)。
(5)前記(1)〜(4)の組成のもののうち、少なくとも2種を混合したもの。この場合、混合する各磁石粉末の利点を併有することができ、より優れた磁気特性を容易に得ることができる。
R−Fe−B系合金の代表的なものとしては、Nd−Fe−B系合金、Pr−Fe−B系合金、Nd−Pr−Fe−B系合金、Ce−Nd−Fe−B系合金、Ce−Pr−Nd−Fe−B系合金、これらにおけるFeの一部をCo、Ni等の他の遷移金属で置換したもの等が挙げられる。
Sm−Fe−N系合金の代表的なものとしては、Sm2Fe17合金を窒化して作製したSm2Fe17N3が挙げられる。
これらのうちでも、成形性の向上がより顕著であり、また機械的強度が強く、耐熱性に優れるという点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。また、これらの熱硬化性樹脂は、磁石粉末との混練性、混練の均一性にも優れている。
なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)は、室温で固形(粉末状)のもの、あるいは液状のものを用いることができる。
すなわち、成形金型を加熱する等により、成形時の材料温度が用いる結合樹脂の軟化温度以上の温度となるようにすることが好ましい。このような温間成形とすることにより、金型内での成形材料の流動性が向上し、低い成形圧で、寸法精度のよい成形をすることができる。温間成形により、例えば、好ましくは50kgf/mm2以下、より好ましくは35kgf/mm2以下、さらに好ましくは20kgf/mm2以下の成形圧で成形(賦形)することができ、成形への負荷が少なく、成形が容易となるとともに、リング状、平板状、湾曲板状等の薄肉部を有する形状のものや長尺なものでも、良好かつ安定した形状、寸法のものを量産することができる。
希土類ボンド磁石は、その性質上発錆しやすいため、めっき前の表面活性化処理では、被膜中への塩素イオンの混入を避けるため塩酸は用いられず、硫酸など塩素イオンを含まない酸が使用されてきた。例えば、前記特許文献4においても、めっき浴から塩素イオンを排除するだけでなく、表面活性化処理においても酸性フッ化アンモンやフッ酸などが使用され、塩酸の使用は避けられている。
<希土類ボンド磁石の製造>
原料として、希土類磁石粉末(急冷Nd12Fe78Co4B6粉末、平均粒径=19μm)96.5重量%と、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)2.7重量%と、酸化防止剤0.5重量%と、潤滑剤0.1重量%と、可塑剤0.2重量%を準備した。
上記の原料を混合し、スクリュー混練機を用いて80〜100℃で15分間混練することによって、希土類ボンド磁石組成物を調製した。次に、この組成物をプレス成形機により圧縮成形し、その後150℃の焼成炉内に60分間放置することで含有する熱硬化性樹脂を硬化させ、リング状の希土類ボンド磁石を得た。この希土類ボンド磁石の空孔率は4.9%であった。
1層めっき化による効果・影響の確認:
<実験方法>
めっき方法は、以下に示すめっき液構成・条件により、図1のプロセスに従い実施した。
(1)めっき液A:以下のめっき液構成からなる半光沢めっき液
[めっき液構成]1リットル中
硫酸ニッケル 300g/リットル
塩化ニッケル 50g/リットル
ほう酸 50g/リットル
半光沢添加剤 適量(芳香族系塩類を主成分とし、硫黄は含まない既知の添加剤)
純水 残分
(2)めっき液B:めっき液Aの構成のうち、半光沢添加剤を「光沢添加剤」(脂肪族スルホン酸塩を主成分とする)に変更して適量混合した。
1層めっき(本発明方法1):めっき液Aにて、50℃、電流密度2A/dm2で40分間めっきを行った。その結果、めっき製品の外周部膜厚は25μmであった。
2層めっき(比較方法1):めっき液Aにて50℃、電流密度2A/dm2で20分間めっきを行った。その後、液切りを含めて約10秒後、引き続きめっき液Bにて50℃、電流密度2A/dm2で20分間めっきを行った。その結果、めっき製品の外周部膜厚は計26μmであった。
塩水噴霧試験:
JIS Z2371に準拠し、5%塩化ナトリウム水溶液にて48時間塩水噴霧を行った。その後10倍顕微鏡にて外観観察を実施した。
1層めっきの本発明方法1では、外観上の異常は見られず、良好なめっき被膜が形成できた。一方、比較方法1の2層めっきでは、部分的に磁石母材からの発錆が確認された。
塩酸による前処理の効果・影響の確認:
表面活性化工程に塩酸を用いた場合(本発明方法2)、表面活性化工程に硫酸(前処理としては一般的な薬剤)を用いた場合(比較方法2)について、比較検討を行った。
めっき方法は、表面活性化工程以外は図1のめっきプロセスに従い、酸処理の条件を表1、表2のように変えて実験した。
JIS Z2371に準拠し、5%塩化ナトリウム水溶液にて48時間塩水噴霧を行った。その後10倍顕微鏡にて外観観察を実施した。
結果を表1および表2に示す。なお、表中の評価結果の記載は以下の意味を有する。
丸 :良好(外観上異常無し)
フクレ:めっき被膜が部分的に母材から剥がれて膨れている状態
点 錆:部分的に磁石母材からの発錆が確認された状態
めっき液構成による効果:
<実験方法>
めっき方法は、めっき液条件を変える以外は図1のめっきプロセスに従い実施した。
めっき条件A:表3に示す組成の半光沢めっき液を用い、同表の方法で実施した(本発明方法3)。
めっき条件B:表3に示す組成のめっき液(塩化物を使用しない電気めっき液で、電鋳等で一般的)を用い、同表の方法で実施した(比較方法3)。
試験例1と同様の塩水噴霧試験(JIS Z2371に準拠)を実施し、同様に評価した。
本発明方法3では、外観上の異常は見られず、良好なめっき被膜が形成できた。一方、比較方法3では、フクレ(めっき被膜が部分的に母材から剥がれて膨れている状態)、点錆(部分的に磁石母材からの発錆が確認された状態)が確認された。
希土類ボンド磁石の空孔率の検討:
成形圧力を変更することで空孔率を後記表4に示すように変動させた以外は、前記したものと同様の原料、混合比率、混練方法、成形方法、焼成方法により、希土類ボンド磁石を製造した。
その後150℃の焼成炉内に60分間放置することで含有する熱硬化性樹脂を硬化させ、リング状の希土類ボンド磁石を得た。
得られた希土類ボンド磁石に、以下に示すめっき液構成・条件により、図1のプロセスに従いめっきを施した。
[めっき液構成]1リットル中
硫酸ニッケル 300g/リットル
塩化ニッケル 50g/リットル
ほう酸 50g/リットル
半光沢添加剤 適量(芳香族系塩類を主成分とし、硫黄は含まない既知の添加剤)
純水 残分
このめっき液Aを用い、50℃、電流密度2A/dm2で40分間通電し、1層めっき被膜を形成した。
めっき後、目視にて外観観察を実施した。
結果を表4に示す。なお、表中の評価結果の記載は以下の意味を有する。また、「外周部めっき膜厚」は、試験に供したリング状の希土類ボンド磁石めっき物の外周面のめっき膜厚を意味する。
二重丸:非常に滑らかな表面状態(金属部品へのめっきと同等水準)
丸 :上記ほどではないが荒れは目立たない表面状態
三 角:めっき表面に多少の荒れが見られる表面状態
Claims (5)
- 希土類ボンド磁石の表面に、電気化学反応によりニッケル被膜を形成させるめっき方法であって、
硫酸ニッケル、塩化ニッケルおよびほう酸を含有するめっき浴を用い、単層のニッケル被膜を形成させるめっき工程と、
前記めっき工程の前に、被めっき物である希土類ボンド磁石を1〜6%濃度の塩酸に7〜25秒間浸漬して表面処理する表面活性化工程と、
を含むことを特徴とする、めっき方法。 - 請求項1において、前記めっき浴は、半光沢添加剤を含有するものである、めっき方法。
- 希土類ボンド磁石の表面にニッケル被膜を形成させためっき製品の製造方法であって、
前記希土類ボンド磁石として、空孔率が7体積%以下の希土類ボンド磁石を用い、該希土類ボンド磁石を1〜6%濃度の塩酸に7〜25秒間浸漬して表面処理した後、硫酸ニッケル、塩化ニッケルおよびほう酸を含有するめっき浴を用いて電気めっきを施すことにより、単層のニッケル被膜を形成させることを特徴とする、めっき製品の製造方法。 - 請求項3において、前記希土類ボンド磁石が、平均粒径0.5〜50μmの希土類磁石粉末と、結合樹脂とを混合し、該結合樹脂の軟化温度以上の温度で混練してなる希土類ボンド磁石用組成物を、成形することにより得られるものであることを特徴とする、めっき製品の製造方法。
- 請求項3または4に記載の製造方法により得られるめっき製品。
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CN103839670A (zh) * | 2014-03-18 | 2014-06-04 | 安徽大地熊新材料股份有限公司 | 一种制备高矫顽力的烧结钕铁硼永磁体的方法 |
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