JP2005118097A - 体圧分散マットレス - Google Patents

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Abstract

【課題】
効果的に体圧を分散させると共に、理想的な睡眠姿勢を保つことができ、衛生的且つ除湿性に優れた体圧分散マットレスを提供する。
【解決手段】
軟質の発泡体から成るマットレス10の少なくとも使用箇所を含む部分において厚さ方向の穴20を多数設け、上記穴20の深さを部位に応じて変えることによって上記マットレス10の反発力を変化させる。これにより沈み込みやすい腰部に当接する領域は反発力を強くして身体を適度に支持し、背筋の伸びた理想的な睡眠姿勢をとることができるようにすると共に、腰部への体圧の集中を防止する。更に、上記マットレス10の表面を防水透湿性フィルム30によって被覆することにより、汚れを容易に拭き取れると共に、皮膚が蒸れるのを防ぐことができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、体圧分散機能を有する就寝用又は介護用のマットレスに関する。
快適な睡眠を得るための理想的な睡眠姿勢とは、立った状態をそのまま横にしたような、自然に背筋の伸びた状態であるといわれている。しかし、従来より広く用いられているウレタンとスプリングから成るマットレスは表面が硬く平坦であるため、頭部や、肩、臀部、踵などの身体の突出部分で体を支えることとなり上記の理想的な睡眠姿勢をとることができない。また、上記突出部に体圧が集中して血流が妨げられるため、睡眠中に何度も寝返りを打たなければならず、安眠が妨害される。また、自力で寝返りを打つことのできない病人や高齢者の場合には、上記突出部の血流が長時間妨げられ褥瘡(床ずれ)の原因ともなっていた。
そのため、上記のような身体の各部に掛かる圧力を分散させるために、スプリングを備えず、全体がウレタン等の軟質の発泡体から成るマットレスが用いられている。このようなマットレスは上記身体の突出部に応じてマットレスの表面が落ち込み、身体との接触面が広くなるため、上記突出部に掛かる圧力を分散させることが出来る。
更に、特許文献1には、軟質の発泡体から成るマットレスに厚さ方向の穴を多数設けることによって体圧分散効果を更に高めた体圧分散マットレスが記載されている。しかし、上記のような体圧分散マットレスは、マットレス全体が均一な柔らかさであるため、最も重い腰部が深く沈み込んでしまい、理想的な睡眠姿勢をとることができない上に、体圧が腰部に集中してしまうという問題があった。また、寝返りが打ちにくく寝心地が悪くなるという問題もあった。
また、従来のマットレスは布製のカバーで覆って使用されるが、特に医療用や介護用に使用する場合などに、患者の汗や排泄物等の汚物が表面に付着しても容易に拭き取ることが出来ず、カバーを通過してマットレスが汚染され、細菌等が繁殖して感染症を招くおそれもあった。また、表面を防水シートなどによって被覆すると、汚れを拭き取りやすくなる反面、体表から発散される水蒸気を逃がすことが出来ず、皮膚が湿潤状態となって褥瘡を発生しやすくなるなどの問題があった。
また、褥瘡防止用のマットレスとして、空気圧を利用して体圧を分散させるエアマットレスが広く用いられているが、これは表面素材が撥水性のフィルムであるため体が滑りやすいという問題がある。特に、ギャッチアップ機能(背部を支持する部分や脚部を支持する部分を上下させ、ベッド使用者の上体を起こしたり膝を曲げさせたりする機能)を備えたベッドに上記エアマットレスを使用した場合、ギャッチアップ時に体がずれるために、マットレスに当接する部分の皮膚と内部にずれを生じ、褥瘡をひき起こす原因となっていた。
特開2001-25425号公報([0014],図1)
本発明は上記の問題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、効果的に体圧を分散させると共に、理想的な睡眠姿勢を保つことができ、衛生的且つ除湿性に優れた体圧分散マットレスを提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る体圧分散マットレスは、軟質の発泡体から成るマットレスにおいて、該マットレスの少なくとも使用箇所を含む部分に厚さ方向の穴を多数形成し、該穴の深さを部位に応じて変化させたことを特徴とする。
本発明の体圧分散マットレスは、軟質の発泡体から成り、厚さ方向の穴が多数設けられることにより効果的に体圧を分散させることが出来ると共に、穴の深さを部位によって変えることによりマットレスの反発力を調節し、沈み込みやすい腰部に当接する領域は該穴を浅くすることによって、腰部を適度に支持できるようにするなど、理想的な睡眠姿勢を保ち、寝心地を良くすることが出来る。
また、上記体圧分散マットレスを防水性及び透湿性を備えたフィルムで覆うことにより、汚れを容易に拭き取ることが可能となり、マットレスを常に清潔に使用することができると共に、皮膚から発散する水蒸気を逃がすことが出来るため、皮膚を適度に乾燥した状態に保って褥瘡を予防することが出来る。該フィルムをマットレスの表面に貼り付けた場合には、内部のマットレスが汚染されることが無く、洗浄や滅菌などのメンテナンスが不要となる。また、該フィルムから成るカバーでマットレスを包んだ場合には、カバーを取り外して洗浄したりカバーを交換したりすることができる。
更に、上記体圧分散マットレスを天然ゴムの発泡体で形成した場合、リサイクル可能であると共に、焼却しても有毒ガスを発生することが無く、埋設処理した場合にも自然分解されるため、環境への悪影響を生じることなく廃棄することが出来る。
本発明の体圧分散マットレスの材質としては、従来のマットレスに広く用いられているウレタン樹脂等の合成樹脂発泡体の他、合成ゴムの発泡体など柔軟性に富む材質であればどのようなものを用いても良いが、使用後のリサイクルや廃棄処理の点に鑑み、上記マットレスは天然ゴム発泡体によって形成することが望ましい。
上記マットレスには厚さ方向の穴が多数設けられており、該穴の深さを変えることにより、体の部位に応じた柔らかさに設計できる。該穴はマットレスの裏面のみ、表面のみ、又は両面の少なくとも使用箇所を含む領域に設けるものとし、マットレスの全面に穴を設けても良い。該穴の深さはマットレスの長さ方向に沿って変化させても、幅方向に変化させても良い。また、身体の各突出部に応じて二次元的に更に細かく変化させても良い。穴の分布や深さを変えた様々なタイプのマットレスを製造し、使用者の身長、体重などに応じたものを選択できるようにしても良い。また、穴の形状は円柱に限らず、角柱、円錐など種々の形状とすることが出来る。更に、穴の深さに加えて穴の直径や数を部位に応じて変化させることによってマットレスの柔らかさを調節しても良い。
本発明の体圧分散マットレスを医療用・介護用として用いる場合には、該マットレスを防水性及び透湿性を有する素材から成るフィルムで覆うことが望ましい。このような素材は湿気や水蒸気等の気体は透過するが、水滴・水分は遮断するため、汚れが付着した場合にも容易に拭き取ることができ、マットレスを常に清潔に使用することができると共に、体表から発散する水蒸気を逃がすことができるため、皮膚が湿潤し褥瘡を発生しやすい状態になるのを防ぐことができる。更に、表面が滑りにくいフィルムを用いれば、ギャッチアップ時の体のずれを防ぐことができると共に、マットレス上にシーツを敷いてもしわになりにくく、しわによる局所的な圧迫を防ぐことができるため、褥瘡防止により効果的である。
上記のような防水性及び透湿性を備えたフィルムでマットレスを覆う方法としては、接着剤等によりマットレス表面に該フィルムを貼り付ける方法の他、上記フィルムから成るカバーによりマットレスを包む等の方法を用いることができる。上記フィルムから成るカバーによりマットレスを包む場合には、該カバーにファスナーなどを設けて着脱可能とし、取り外して丸洗いできるようにすることが望ましい。更に、マットレスと上記カバーの間に布製のインナーカバーを設けても良い。
以下、図を用いて本発明の実施例を説明する。図1は本実施例の体圧分散マットレス10の長さ方向の断面を示す模式図であり、図2は本実施例の体圧分散マットレス10に設けられた穴の形状を示す横断面図、図3は本実施例の体圧分散マットレス10を裏側から見た状態を示す斜視図であり、表面を被覆するフィルムを一部除いて示している。
本実施例の体圧分散マットレス10は密度80kg/m3の天然ゴムの発泡体から成る。該マットレス10の寸法は長さ1910mm、幅850mm、厚さ90mmであり、その裏面には長さ方向に100個×幅方向に44個、合計4400個の穴20が設けられている。上記のような穴を形成するために、本実施例の体圧分散マットレスは、図4に示すような底面に多数の突起41を備えた型40を用いて成形される。そのため、成形されたマットレスを容易に型40から外すことができるように、該穴20の形状はマットレスの内部に向かってテーパー状となるようにする。該穴20の直径は、マットレスの表面部分d1で10mm、先端部分d2で8mmである。穴20の深さhはマットレス10の部位によって異なっており、図1に示すように長さ方向の中央部11では50mm、その外側の領域12では60mm、更に外側の領域13では70mmとなっている。マットレス10に設ける穴20の深さを上記のように調節することによって、マットレス10の長さ方向中央部11は反発力が強く、外側へ行くほど反発力が弱くなるため、腰部が沈み込んで腰が曲がった姿勢となることが無く、背筋の伸びた理想的な睡眠姿勢をとることができると共に、腰部への体圧の集中を防ぐことができる。
本実施例のマットレス10の表面は、積水フィルム社製の透湿・防水性ポリウレタンラミネートフィルム30によって被覆される。該フィルム30は接着剤によって該マットレス10の表面に貼り付けられる。上記フィルム30は滴状の水分は通さず、水蒸気は透過するため、マットレス10の表面に付着した汚れを容易に拭き取ることができると共に、体表から発散する水蒸気を逃して、皮膚が湿潤状態になることを防ぐことができる。更に、該フィルム30の表面は、密着性があり滑りにくいため、褥瘡の原因となる体のずれや、シーツのしわによる局所的な圧迫を防ぐことができる。
以下、本実施例の体圧分散マットレス10と従来のマットレスとを比較した体圧分散性評価試験について説明する。該試験は、評価試料60として、本実施例の体圧分散マットレス10、市販の低反発ウレタンマットレス(市販品A)、及びポリエステル製クッション材を波形に折り畳んだ芯材から成る市販の介護用マットレス(市販品B)を使用し、同一被験者80で行った。評価方法は、図5に示すように介護用ベッド50の上に評価試料60となるマットレスを載せ、該マットレス上にシート状の圧力センサ70(ニッタ株式会社製、Big-Mat)を敷き、その上に被験者80が仰臥位で横たわった際の圧力を測定した。
図6は上記の試験結果を示す体圧分布図であり、右側の凡例に示すように上記圧力センサ70の各部に掛かった圧力の高さを色で表している。赤で示される部分が最も圧力の高い領域、青で示される部分が圧力の低い領域、白い部分は圧力の掛かっていない領域である。図6(a)は本実施例の体圧分散マットレス10、図6(b)は市販品A、図6(c)は市販品Bを用いた結果を示す体圧分布図であり、それぞれ図の左側が被験者の頭部になっている。 この結果から、市販品Bでは、腰部、肩部、頭部、踵部等、身体のごく限られた領域に体圧が集中しているのに対し、本実施例の体圧分散マットレス10及び市販品Aでは圧力の掛かる部分が全身に分散されていることが分かる。更に、本実施例の体圧分散マットレス10では、本来最も体圧が掛かり褥瘡の発生しやすい腰部の体圧が市販品Aと比べて良く分散されている。なお、被験者80は、市販品Aは本実施例の体圧分散マットレス10に比べて腰部が沈み込んでいる感じがすると述べており、これは上記の試験結果とも一致している。
上記のように、本実施例の体圧分散マットレスを使用することにより、市販のマットレスに比べて高い体圧分散効果が得られた。
なお、上記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明は請求の範囲に記載された技術範囲内で種々の変更が許容されるものである。
本実施例の体圧分散マットレスの長さ方向の断面を示す模式図。 本実施例の体圧分散マットレスに設けられた穴の形状を示す縦断面図。 本実施例の体圧分散マットレスを裏側から見た状態を示す斜視図。 本実施例の体圧分散マットレスの成形に用いる型の断面を示す模式図。 本実施例の体圧分散マットレス及び市販のマットレスを使用した体圧分散性評価試験の概略図。 同上の体圧分散性評価試験の結果を示す体圧分布図。(a)本実施例の体圧分散マットレス(b)市販品A(c)市販品B
符号の説明
10…体圧分散マットレス
20…穴
30…透湿・防水性フィルム
50…介護用ベッド
60…評価試料
70…体圧センサ
80…被験者

Claims (6)

  1. 軟質の発泡体から成るマットレスにおいて、該マットレスの少なくとも使用箇所を含む部分に厚さ方向の穴を多数形成し、該穴の深さを部位に応じて変化させたことを特徴とする体圧分散マットレス。
  2. 防水性及び透湿性を備えたフィルムで上記マットレスを覆ったことを特徴とする請求項1に記載の体圧分散マットレス。
  3. 上記防水性及び透湿性を備えたフィルムを上記マットレスの表面に貼り付けたことを特徴とする請求項2に記載の体圧分散マットレス。
  4. 上記防水性及び透湿性を備えたフィルムから成るカバーで上記マットレスを包んだことを特徴とする請求項2に記載の体圧分散マットレス。
  5. 上記マットレスが天然ゴムの発泡体から成ることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の体圧分散マットレス。
  6. 上記穴の深さを上記マットレスの長さ方向中央部において浅くしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の体圧分散マットレス。
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