JP2005092114A - 光学補償シート、それを用いた偏光板、及び液晶表示装置 - Google Patents

光学補償シート、それを用いた偏光板、及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 大画面サイズとしても薄層・軽量で膜の力学特性が充分であり、視認性に優れ、しかも視野角拡大特性のバラツキのなく、また、幅広の長尺ロール形態に製造した場合においても視野角拡大特性のバラツキの無い生産性のよい光学補償シートを提供すること。
【解決手段】 平均一次粒径が80nm以下の微粒子を少なくとも含有する膜厚が20μm以上80μm以下の透明支持体上に、配向膜および光学異方性層をこの順序で積層して成る光学補償シートであって、透明支持体の配向膜側の表面がJIS B0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0002μm以上0.1μm以下、十点平均粗さ(Rz)が0.0002μm以上0.3μm以下であり、及び最大高さ(Ry)が0.002μm以上0.5μm以下であり、特定の式で定義されるReの値が2nm以上200nm以下であり、Rthの値が50nm以上400nm以下の範囲であることを特徴とする光学補償シート。
【選択図面】 なし

Description

本発明は、液晶表示装置の視野角を改良する光学補償シートに関する。特に、薄膜透明支持体上に配向膜及び光学異方性層を配しており、十分な力学的強度を有し、しかも良好な視認性を有する光学補償シート、及びそれを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、通常、液晶セル、偏光板および光学補償シート(位相差板)からなりたっている。透過型液晶表示装置では、二枚の偏光板を液晶セルの両側に取り付け、一枚または二枚の光学補償シートが液晶セルと偏光板との間に配置されている。反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、一枚の光学補償シート、そして一枚の偏光板の順に配置されている。
液晶セルは、一般的な例として、棒状液晶性分子、それを封入するための二枚の基盤および棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなりたっている。液晶セルは、棒状液晶性分子の配向状態の違いにより、透過型については、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、反射型については、HAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。
偏光板は、一般に、偏光膜と透明保護膜とからなっており、この偏光膜は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料の水溶液を含浸させ、さらにこのフィルムを一軸延伸することにより得られる。この偏光膜の両側に二枚の透明保護膜を貼りつけた構成となっている。
光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。この光学補償シートとして透明支持体上にディスコティック液晶の配向を固定した光学異方性層を有するフィルムが、特許文献1〜7等に開示されている。
光学補償シートは、通常、透明支持体上に配向膜を設けるかあるいは直接、その上をラビング処理した後、液晶性化合物を含む塗布液を塗布して光学異方性層を設けて液晶性化合物のモノドメインを作らせた後、光重合等で配向を固定するなど複雑で長い製造工程を経て作製される。これらの製造工程を経て広幅の長尺ロール状態で作製する際には、透明支持体自身の光学異方性等の光学特性が均一なこと、支持体上に塗布する塗布膜の面状にムラ等のないこと等が画像表示の均一性に重要である。これらに対して、広幅のロール状態で作成しても、その全面を均一な光学特性とし、視野角のバラツキを改良するのに、支持体の遅相軸とフィルムの延伸方向との軸ズレ角を抑制すること(特許文献8等)、或は遅相軸角度の標準偏差値を規定する(特許文献9等)等の方法が提案されている。
そして、最近では、液晶表示装置は大型化・高精細化が急速に進展している。このため画面のサイズが大きくなっても、面内の視野角等の表示特性にバラツキのない、より一層視認性に優れた光学補償シートが望まれている。
更には、用いるフィルムの軽量化及び生産性の向上による安価化も強く望まれ、これらの要求を満たす膜厚を薄くした透明支持体からなる光学補償シートの提供が強く望まれている。
しかし、要求されている程度に光学補償シートの膜厚を薄くすると、支持体を薄くしなければならなくなるため、強度が低下してしまい、大型の液晶表示装置に用いる場合などにおいては特に実用上問題が生じていた。このような問題は従来の提案では未だ十分に解消されていない。
このため支持体の強度を高くすることが強く要望されている。
しかし、支持体の強度を単に高くすると、光学特性が悪くなり、視認性が低下するという問題が生じていた。
特許第2640083号明細書(欧州特許出願公開第646820号明細書) 特許第2587398号明細書(西独国特許出願公開19519928号明細書、米国特許第5583679号明細書) 特許第3118197号明細書(米国特許第5805253号明細書、欧州特許出願公開第774683号明細書) 国際公開第96/37804号パンフレット(特開平8−327822号公報、欧州特許出願公開第0783128号明細書、米国特許第6124913号明細書) 国際公開第96/31793号パンフレット 特開平11−316378号公報(米国特許第6064457号明細書) 特開平9−21914号公報 特開2003−066230号公報 特開2002−22943号公報
従って、本発明の目的は、大画面サイズとしても薄層・軽量で膜の力学特性が充分であり、視認性に優れ、しかも視野角拡大特性のバラツキのない優れた光学補償シートを提供することである。
また、本発明の他の目的は、幅広の長尺ロール形態に製造した場合においても視野角拡大特性のバラツキの無い生産性のよい光学補償シートを提供することである。
さらにまた、本発明の他の目的は、薄層・軽量で、視野角拡大特性のバラツキの無い優れた光学補償シートを用いた視認性に優れた偏光板および液晶表示装置を提供することである。
本発明者らは、前記の課題を解消するために鋭意検討した結果、強度を高くするために支持体を構成するフィルムに高強度の粒子を添加混合した場合、該支持体の表面の平滑性が損なわれる場合があり、このことにより液晶の視認性が低下することを知見した。そして、さらに支持体の表面の平滑性と視認性との関係について検討した結果、粒子を添加混合して支持体の強度を向上させても、支持体の表面が特定の条件を満足する場合に視認性が良好になることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記内容により、前記目的を達成したものである。
(1)平均一次粒径が80nm以下の微粒子を少なくとも含有する膜厚が20〜80μmの透明支持体上に、配向膜および光学異方性層をこの順序で積層して成る光学補償シートであって、透明支持体の配向膜側の表面がJIS B0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0002μm以上0.1μm以下、十点平均粗さ(Rz)が0.0002μm以上0.3μm以下であり、及び最大高さ(Ry)が0.002μm以上0.5μm以下であり、該透明支持体の式(I)、(II)で定義されるReの値が2〜200nmであり、Rthの値が50〜400nmの範囲であることを特徴とする光学補償シート。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
[式中、nxは、透明支持体面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、透明支持体面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、透明支持体の厚み方向の屈折率であり;そしてdは、透明支持体の厚さである]。
(2)前記の透明支持体の配向膜側の表面が、算術平均粗さ(Ra)と十点平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)が0.1以上1以下、JISB0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の平均間隔(Sm)が0.001μm以上5μm以下であることを特徴とする前記(1)記載の光学補償シート。
(3)前記透明支持体が、その長さが100m以上5000m以下であり且つ幅が0.7m以上2m以下の長尺品であって、幅方向のカールが−10/m〜+10/mであり、且つJIS K7128−2:1998に基づく引裂き強度が2g以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の光学補償シート。
(4)前記透明支持体が、その遅相軸角度の面内の平均の絶対値が0度以上3度以下であり、且つ遅相軸角度の標準偏差が0度以上1.5度以下であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の光学補償シート。
(5)前記透明支持体が、酢化度55.0乃至62.5%の範囲にあるセルロースアシレート、前記微粒子及び少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物とを各々少なくとも1種含有するセルロースアシレートフイルムからなることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の光学補償シート。
(6)前記透明支持体が、流延工程を有する溶液流延方法により製膜されるセルロースアシレートフィルムであって、該流延工程のドープを流延する金属支持体は、その表面の算術平均粗さ(Ra)が0.001μm以上0.015μm以下であり、その表面の十点平均粗さ(Rz)が0.001μm以上0.05μm以下であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学補償シート。
(7)前記透明支持体の配向膜側と反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Ry)が、それぞれ、配向膜側表面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Ry)の3倍以下であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の光学補償シート。
(8)前記の透明支持体がセルロースアシレートフイルムであって、該セルロースアシレートフイルムが、セルロースアシレートを実質的に非塩素系の溶剤に溶解してセルロースアシレート溶液を調製する溶液調製工程、セルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフイルムを製膜する製膜工程、及び、セルロースアシレートフイルムを延伸する延伸工程により製造されたフィルムであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の光学補償シート。
(9)前記の実質的に非塩素系の溶剤が、炭素原子数3以上12以下のエーテル、ケトン、エステルから選ばれる少なくとも1種の有機溶媒と、アルコールとの混合溶媒からなり、全溶媒中のアルコールの割合が2〜40質量%の範囲であることを特徴とする前記(8)記載の光学補償シートを提供するものである。
(10)前記透明支持体が、沸点が60〜120℃の水溶性有機溶媒、並びに界面活性剤及び/又は相溶化剤を少なくとも含有するアルカリ溶液により表面処理されたものであることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の光学補償シートを提供するものである。
(11)前記透明支持体がセルロースアシレートフィルムであり、該セルロースアシレートフィルムを流延工程を有する溶液流延方法により製膜することにより上記透明支持体を製造する前記(1)記載の光学補償シートの製造方法であって、前記流延工程のドープを流延する金属支持体は、その表面の算術平均粗さ(Ra)が0.001μm以上0.015μm以下であり、その表面の十点平均粗さ(Rz)が0.001μm以上0.05μm以下であることを特徴とする光学補償シートの製造方法。
(12)偏光膜、及びその両側に配置された2枚の透明保護膜からなる偏光板であって、該透明保護膜の一方が前記(1)〜(10)のいずれかに記載の光学補償シートを用いたことを特徴とする偏光板。
(13)液晶セル、及びその両側に配置された2枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜、及びその両側に配置された2枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光膜との間に配置される2枚の透明保護膜のうち少なくとも一方が前記(1)〜(10)のいずれかに記載の光学補償シートを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
(14)前記液晶セルがTNモード、VAモード、MVAモード、n−ASMモードまたはOCBモードの液晶セルであることを特徴とする前記(13)に記載の液晶表示装置。
本発明の光学補償シートは、大画面サイズとしても薄層・軽量で膜の力学特性が充分であり、視認性に優れたものである。また、本発明の光学補償シートは、視野角特性のバラツキが無く、幅広の長尺ロール形態に製造した場合においても視野角拡大特性のバラツキの無い生産性のよいものである。
また、本発明の偏光板及び液晶表示装置も、薄層・軽量で、視野角拡大特性のバラツキの無い、視認性に優れたものである。
以下、まず本発明の光学補償シートに関して説明する。
本発明の光学補償シートは、特定の粒径を有する微粒子を含有する特定の膜厚の透明支持体上に、配向膜および光学異方性層をこの順序で積層してなり、透明支持体が特定の表面形状及び光学特性を有することを特徴とする。
以下、本発明の光学補償シートの必須の構成材料である透明支持体、配向膜及び光学異方性層について説明することにより本発明の光学補償シートを詳細に説明する。
<透明支持体>
本発明の透明支持体は、透明なポリマーフイルムであることが好ましい。透明支持体は、光透過率が80%以上、ヘイズが3%以下であることが好ましい。ポリマーフイルムを構成するポリマーの例としては、セルロースエステル(例えば、セルロースのモノ、ジまたはトリアシレート体など)、ノルボルネン系ポリマーなどが挙げられる。該ノルボルネン系ポリマーとしては、アートン及びゼオネックス(いずれも商品名)が挙げられる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても、国際公開第00/26705号パンフレットに記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御すれば、本発明の透明支持体に用いることができる。これらのブレンドポリマー、グラフトポリマーなどであっても良く、2種類以上のものを用いることができる。
本発明の透明支持体の上記の特定の膜厚は、20〜80μmであり、好ましくは30〜80μmであり、更に好ましくは40〜65μmである。上記膜厚が20μm未満であると、十分な強度が発現せず、80μmを超えると、重さや取り扱い性の点で不十分となる。
また、膜厚の変動幅は、好ましくは±3%以内であり、さらに好ましくは±2%以内、もっとも好ましくは±1.5%以内である。この変動内において、支持体厚みの光学異方性に実質上の影響を及ぼさない良好なものとなる。
本発明に用いる透明支持体は、光学補償シート、偏光板および液晶表示装置を薄く軽量化するためや透過率を高めてコントラストや表示輝度を改善する等の良好な光学特性が安定して得られ、長尺で幅広な支持体をハンドリング性よく取り扱うことができる。
特に、本発明に用いられる上記透明支持体としては、セルロースエステルからなるポリマーフィルムが好ましく用いられる。
上記セルロースエステルの原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケフナー、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあるが、本発明においては、何れの原料セルロースから得られるセルロースエステルでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
本発明においてはセルロースからエステル化してなるセルロースアシレートが好ましく用いられるが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、前述のリンター、ケフナー、パルプは精製して用いられる。
本発明において、セルロースアシレートとは、セルロースの脂肪酸エステルのことであり、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。
低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースエステルとしてはセルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどが挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いることも好ましい。
一般に、セルロースアシレートの2,3,6の水酸基は全体の置換度の1/3づつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて同程度若しくは多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して6位の水酸基が30%以上40%以下アシル基で置換されていることが好ましく、更には31%以上、特に32%以上であることが好ましい。
6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMR法などによって求める事ができる。
本発明の透明支持体に用いられるポリマーフィルムとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアシレートを用いたフィルムが好ましく、57.0〜61.5%であるセルロースアシレートを用いたフィルムがより好ましい。ここで酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアシル化度の測定および計算に従って求められる。
また、セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、ポリマーフィルムは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜2.5であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
[微粒子]
本発明において用いられる透明支持体には、透明支持体の強度を向上させて、フィルムのカール抑制、搬送性、ロール形態での接着防止或は耐傷性を良好に保持するために微粒子が添加される。
上記微粒子の前記の特定の粒径は、平均一次粒子径で、80nm以下であり、好ましくは5〜80nmであり、より好ましくは5〜60nm、特に好ましくは8〜50nmである。平均一次粒径が80nmを超えると、透明支持体の表面平滑性が損なわれる。
特に、上記微粒子の粒径の分散度が揃っていることが好ましく、粒径500nm以上の粒子が存在しないことが更に好ましい。このような超微粒子を用いることで、分散物中での分散性が安定し製膜されたフィルムの機械的な物性を損なうことなく、ヘイズを低く抑え、且つ表面の凹凸形状が微細で凹凸の揃った状態とするのに好ましい。
微粒子のモース硬度は、2〜10であるのが好ましい。より好ましくは、2.5〜10である。
微粒子としては、前述の機能を呈する素材であれば特に限定はなく、無機化合物、有機化合物のいずれを用いてもよく、好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムである。
また、表面処理された無機微粒子がセルロースアシレート中への分散性が良好となり好ましい。具体的には疎水性に表面修飾された無機微粒子が好ましい。
例えば、柳田博明 監修「微粒子工学体系第二巻 応用技術」第9章((株)フジ・テクノシステム、2002年刊行)、加賀美敏郎、林 瑛 監修「高純度シリカの製造と応用」((株)シーエムシー、1999年刊行)に記載のものが挙げられる。
有機化合物としては、例えば、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、なかでも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂のなかでも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましい。
上記ポリマーフィルムの原料ポリマーに対する上記微粒子の添加量は、ポリマー100質量部に対して、微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましい。
[レターデーション調整剤]
本発明において透明支持体として用いられるポリマーフイルムは、光学異方性の観点から溶液の紫外線吸収スペクトルの吸収極大を与える波長(λmax)が400nmより短波長にある紫外線を吸収する化合物をレターデーション調整剤として含有することが好ましい。このような化合物の例としては、フェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリフェニルフォスフェート等の紫外線吸収剤を挙げることができる。また、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物、トリフェニレン化合物、円盤状化合物(1,3,5−トリアジン骨格、ポルフィリン骨格を分子に含有の化合物等)等も好ましく挙げることができる。本発明において上記レターデーション調製剤に用いる化合物は、可視光領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
・少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物
上記レターデーション調整剤としては、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物(以下、「芳香族化合物A」とも言う)が特に好ましく用いられる。
芳香族化合物Aの芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環でもかまわない。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
芳香族化合物Aが有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましい。3以上の芳香族環を有する場合、少なくとも二つの芳香族環の立体配座を立体障害しなければよい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。レターデーション上昇機能の観点では、(a)〜(c)のいずれでもよい。具体的には、特開2002−131537号公報段落番号[0016]〜[0023]記載の内容のものが挙げられる。更に、上記(b)または(c)の場合は、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しないことが好ましい。
芳香族化合物Aとしては、特開2002−363343号公報段落番号[0011]〜[0031]に記載されると同一内容の直線的な分子構造を有する棒状化合物、特開2000−111914号公報段落番号[0011]〜[0085]に記載されると同一内容の立体障害しない立体配座となっている二つの芳香族環を含有する化合物、少なくとも1つの芳香族環を置換基として含有する1,3,5−トリアジン化合物或はポルフィリン骨格を有する化合物(特開2001−166144号公報記載の化合物)が挙げられる。
特に、少なくとも一つの芳香族環を置換基として含有する1,3,5−トリアジン化合物が好ましい(該トリアジン環がもう一つの芳香環となる)。具体的には、特開2001−166144号公報段落番号[0016]に記載の一般式(I)記載の1,3,5−トリアジン化合物が挙げられる。
上記芳香族化合物Aは、上述した化合物を単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
芳香族化合物Aの含有量は、所望のレターデーションに調整するためにレターデション調整剤用化合物の種類及び使用量を選択して用いる。透明支持体を作製するときに透明支持体作成物中での溶解性、製膜時での不溶化や析出等の問題を生じさせないことから、上記ポリマー100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜25質量部の範囲で使用することがより好ましい。
[可塑剤]
上記透明支持体にはフィルムの機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、従来公知の可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル類、カルボン酸エステル類(カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、オキシカルボン酸(クエン酸、リンゴ酸等)、芳香族カルボン酸(フタル酸等)等が挙げられ、発明協会公開技法公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.16に記載の化合物等が挙げられる。また、アルカンポリオールとカルボン酸とのエステル化化合物(特開平11−124445号公報、特開2001−247717号公報等に記載の化合物)等も好ましく挙げられる。
可塑剤の添加量は、上記ポリマー100質量部に対して0.05乃至25質量部であることが好ましく、1乃至20質量部であることがさらに好ましい。
[他の添加剤]
上記透明支持体には、更に、紫外線防止剤(例えば、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物等)、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、光安定化剤(ヒンダードアミン等)等)、剥離剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
これらの詳細は、上記の公技番号2001−1745号p17−22に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
本発明においては、上記透明支持体が、上述の酢化度55.0乃至62.5%の範囲にあるセルロースアシレート、上記微粒子及び上記芳香族化合物Aとを各々少なくとも1種含有するセルロースアシレートフイルムからなるのが好ましい。また、この際、該セルロースアシレートフィルムに上記可塑剤他の添加剤を添加するのは特に制限されない。
上記セルロースアシレートフィルムにおけるセルロースアシレート、微粒子及び芳香族化合物Aの配合割合は、上述の配合割合と同じである。
[透明支持体の製造方法]
本発明では、上記透明支持体は、溶液流延方法(ソルベントキャスト法)により製造することが好ましく、該溶液流延方法では、上記ポリマー等を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて製造される。
(溶液調製工程)
溶液流延方法において、用いる有機溶媒としては、通常溶液流延方法に用いられる有機溶媒であれば特に制限されず、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。具体的には、低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3〜12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。さらに、有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。前記有機溶媒が2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の上述の好ましい炭素数の範囲内であればよい。
具体的には、例えば前記の公技番号2001−1745号p12−16に詳細に記載されている化合物が挙げられる。
特に、本発明では、前記有機溶媒として、2種類以上の有機溶媒を混合した混合溶媒を用いることが好ましく、特に好ましくは、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が炭素原子数が3〜4のケトンおよび炭素原子数が3〜4のエステル或いはその混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が5〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として沸点が30〜170℃のアルコール類または沸点が30〜170℃の炭化水素から選ばれることが好ましい。
とくに、酢酸エステルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で混合してなる、酢酸エステル、ケトン類及びアルコール類の混合溶媒を用いることが、セルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。
この混合溶媒中アルコール類の配合割合は、好ましくは全溶剤中2vol%以上40vol%以下、より好ましくは3vol%以上30vol%以下、さらに好ましくは5vol%以上20vol%以下である。
上記アルコール類は炭素原子数が1以上8以下のモノアルコールまたはジアルコールあるいは炭素原子数が2以上10以下のフルオロアルコールが好ましく、より好ましくはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールが挙げられる。これらは単独で添加しても、あるいは2種以上混合して添加しても良い。
特に、ハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系、特に塩素原子を含まない実質的に非塩素系の溶剤(以下、単に「非塩素系溶媒」という)が好ましい態様として挙げられる。
技術的には、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素は問題なく使用できるが、地球環境や作業環境の観点では、有機溶媒はハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。また、製造したセルロースアシレートフィルムから、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素が全く検出されないことが好ましい。
本発明に使用する非塩素系溶媒は、例えば特開2002−146043号公報段落番号〔0021〕〜〔0025〕、特開2002−146045号公報段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
上記非塩素系溶媒としては、炭素原子数3以上12以下のエーテル、ケトン、エステルから選ばれる少なくとも1種の有機溶媒と、アルコールとの混合溶媒であって、前溶媒中のアルコールの含有割合が2〜40質量%である混合溶媒が好ましい。
このような混合溶媒としては、具体的には、例えば、以下のものを挙げることができる。
酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/エタノール(=70/20/5/5、質量部)
酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(=50/20/20/5/5、質量部)
アセトン/アセト酢酸メチル/エタノール(75/20/5、質量部)
酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)
酢酸メチル/1,4−ジオキサン/シクロペンタノン/メタノール/1−ブタノール(=60/20/12/5/3、質量部)
アセトン/シクロペンタノン/メタノール/エタノール(=60/30/5/5、質量部)
1,3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/エタノール(=55/20/15/5/5、質量部)
上記混合溶媒には、炭素原子数が5以上10以下の芳香族あるいは脂肪族の炭化水素を0vol%以上10vol%以下添加しても良い。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンが含まれる。
また、上記ドープには、上記有機溶媒以外に、フルオロアルコールを全有機溶媒量の10質量%以下、より好ましくは5質量%以下含有させることもフィルムの透明性を向上させたり、溶解性を早めたりする上で好ましい。該フルオロアルコールとしては例えば、特開平8−143709号公報段落番号[0020]、同11−60807号公報段落番号[0037]等に記載の化合物が挙げられる。これらのフルオロアルコールは一種又は二種以上使用してもよい。
本発明においては、上記ドープを調製する際に、容器内に窒素ガスなどの不活性ガスを充満させてもよい。また、ドープの製膜直前の粘度は、製膜の際、流延可能な範囲であればよく、通常10ps・s〜2000ps・sの範囲に調製されることが好ましく、特に30ps・s〜400ps・sが好ましい。
上記ドープの調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよく、冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301公報、特開昭61−106628公報、特開昭58−127737公報、特開平9−95544公報、特開平10−95854公報、特開平10−45950公報、特開2000−53784公報、特開平11−322946公報、さらに特開平11−322947公報、特開平2−276830公報、特開2000−273239公報、特開平11−71463公報、特開平04−259511公報、特開2000−273184公報、特開平11−323017公報、特開平11−302388公報などに記載のドープの調製法が挙げられ、これらの公報に記載されている透明支持体の原料ポリマーの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜これらの技術を適用できる。さらに、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いた場合のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液の濃縮と濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号p.25に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解させる場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
更に、上記ドープに上記微粒子、及び必要に応じてレターデーション調製剤、可塑剤、紫外線吸収剤等の他の添加剤を含有させる。
(微粒子の添加混合方法)
微粒子をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、前記したような粗大な粒子が存在しないこと、および凝集や析出などが生じないように分散されて存在することが重要であり、これらを満たすことが出来れば、特に方法は限定されずいずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができる。
上記微粒子は上記のドープ調整とは別に分散液を調製した後にドープに混合分散する方法が好ましい。例えば以下に示すような方法が挙げられる。
(1)溶剤(溶液流延方法に用いられる前記有機溶媒と同じ)と微粒子とを撹拌混合した後、分散機で微粒子分散物とし、ドープ液に加えて撹拌する。
(2)上記溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で微粒子分散物とし、別に溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散物を加えて撹拌して得られる微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
(3)上記溶剤に少量のバインダーを加えて撹拌溶解し、これに微粒子を加えて分散機で分散して微粒子分散物とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。バインダーとしては、セルロースアシレート等が挙げられ、好ましくはドープに供せられるセルロースアシレートを用いる。
分散は、従来公知の湿式分散方法を用いることが出来る。
メディア湿式分散機としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、ダイノミル、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル等の従来公知のものが挙げられる。特に本発明の酸化物微粒子を超微粒子に分散するには、サンドグラインダーミル、ダイノミル、及び高速インペラーミルが好ましい。
上記の範囲の粗大粒子を含まない超微粒子の大きさに分散するには平均粒径0.8mm未満のメディアを用いた湿式分散方法が好ましい。上記分散機と共に用いるメディアとしては、その平均粒径が0.8mm未満であり、平均粒径がこの範囲のメディアを用いることで上記の無機微粒子径が100nm以下となり、かつ粒子径の揃った超微粒子を得ることができる。メディアの平均粒径は、好ましくは0.5mm以下であり、より好ましくは0.05〜0.3mmである。
また、湿式分散に用いられるメディアとしては、ビーズが好ましい。具体的には、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ、スチールビーズ等が挙げられ、分散中におけるビーズの破壊等を生じ難い等の耐久性と超微粒子化の上から0.05〜0.2mmのジルコニアビーズが特に好ましい。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあり利用できる。高圧分散装置は、例えば管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.8MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.6MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/hr以上に達するものが好ましい。高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
更には、分散物中の分散粒子がその平均粒径、および粒子径の単分散性が上記した範囲を満足する上で、分散物中の粗大凝集物を除去するためにビーズとの分離処理において精密濾過されるように濾材を配置することも好ましい。精密濾過するための濾材は濾過粒子サイズ25μm以下が好ましい。精密濾過するための濾材のタイプは上記性能を有していれば特に限定されないが例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。分散物を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有しており、且つ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
上記した微粒子以外の添加剤は、例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。これらの添加剤の混合は、添加物それ自身を添加してもよいが、予め溶媒やバインダー(好ましくはセルロースアシレート)を用いて溶解しておいたり、場合により分散して安定化した溶液として用いることも好ましい態様である。
(製膜工程)
次に、本発明において、ドープを用いたフィルムの製造方法について述べる。ポリマーフィルムを製造する方法及び設備は、ポリマーフィルム製造に供するドラム方法若しくはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。
製膜の工程を説明すると、溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜に一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。調製されたドープは精密濾過により凝集物、異物を除去することが重要である。具体的には、濾過のフィルターは、ドープ液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.1〜25μmであるフィルタが好ましく用いられる。フィルタの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、濾過圧力は15kgf/cm2 以下、より好ましくは10kgf/cm2 以下、更には2kgf/cm2 以下で濾過することが好ましい。
また、精密濾過のために、順次フィルターの孔径を小さくして濾過を数回行うことも好ましい。
精密濾過するための濾材のタイプは上記性能を有していれば特に限定されないが例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。分散物を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有しており、且つ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが、例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
調製したドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも称する)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。
流延工程でもちいる金属支持体は、その表面が
算術平均粗さ(Ra)が0.001μm以上0.015μm以下で、十点平均粗さ(Rz)が0.001μm以上0.05μm以下であることが好ましい。より好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.001μm以上0.01μm以下で、十点平均粗さ(Rz)が 0.001μm以上0.02μm以下である。更に好ましくは、(Ra)/(Rz)比が0.15以上である。このように、金属支持体の表面粗さを所定の範囲とすることで、製膜後のフィルムの表面形状を本発明の範囲内に制御できる。
これらの各製造工程(流延(共流延を含む)、乾燥、剥離、延伸などに分類される)については、前記の公技番号2001−1745号p.25−30に詳細に記載されている工程が好ましい。流延工程では1種類のドープを単層流延してもよいし、それぞれ異なるポリマーを溶解してなる2種類以上のドープを同時及び/又は逐次共流延しても良い。
特に、上記したような組成物からなるドープからフィルムに製膜する工程において、添加した化合物が凝集や偏在することなく行われるには、乾燥工程が重要である。
支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側の裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。
支持体上に流延したドープを乾燥させてポリマーフィルムを得るポリマーフィルムの乾燥工程における乾燥温度は30〜250℃、特に40〜180℃が好ましい。さらに残留溶媒を除去するために、50〜160℃で乾燥され、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましく用いられている。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。最終仕上がりフイルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフイルムを得る上で好ましい。なお本発明においては、剥離剤で更に剥離時間を短縮でき、かつ剥離時の抵抗が低くなることで、面状(剥離時の横方向のムラ、ゲル状ブツの剥げ残りに起因するブツなど)の悪化がないポリマーフィルムを得ることができる。
具体的には、ドープの流延から剥ぎ取りまでの平均乾燥速度を、好ましくは300質量%/分を超え、かつ1000質量%/分以下とし、さらに好ましくは400質量%/分を超え、かつ900質量%/分以下とし、もっとも好ましくは500質量%/分を超え、かつ800質量%/分以下とするのが望ましい。
平均乾燥速度が300質量%/分以下であると、高速でフィルムを剥ぎ取ることができず、結果的に生産性が悪くなる場合があり、また、1000質量%/分を超えると、乾燥風による風ムラが発生し、フィルムの平面性及び表面の形状にムラが生じる場合があるので、上述の範囲内とするのが好ましい。
平均乾燥速度とは、流延ドープの溶剤含有量の変化量を時間で割った値である。
平均乾燥速度を調整するには、乾燥風の温度、風量、溶剤ガスの濃度、流延支持体の表面温度、流延するドープの温度、流延するドープのウェット厚み、流延するドープの溶剤組成等を適宜調整することにより行うことができる。
更には、ドープの流延点より15m以内の範囲における平均乾燥速度が300質量%/分を超え、かつ1000質量%/分以下であり、好ましくは400質量%/分を超え、かつ900質量%/分以下であり、より好ましくは500質量%/分を超え、かつ800質量%/分以下である。また、流延点より15mを超える個所においては、平均乾燥速度は特に限定されないが、同様の範囲で行うことが好ましい。
流延直後の3秒ないし流延後20秒の間の平均乾燥速度が300質量%/分を超え、かつ1000質量%/分以下であり、好ましくは400質量%/分を超え、かつ900質量%/分以下であり、より好ましくは500質量%/分を超え、かつ800質量%/分以下である。また、流延後20秒を超えた範囲においては、平均乾燥速度は特に限定されない。
支持体から剥離後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフイルムは巾方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフイルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程或いは一部の工程を幅方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)が好ましい。
ポリマーフイルムを製造する速度はベルトの長さ、乾燥方法、ドープ溶媒組成等によっても変化するが、ウェブをベルトから剥離する時点での残留溶媒の量によって殆ど決まってしまう。つまり、ドープ膜の厚み方向でのベルト表面付近での溶媒濃度が高すぎる場合には、剥離した時、ベルトにドープが残ってしまい、次の流延に支障を来すため、剥離残りは絶対あってはならないし、更に剥離する力に耐えるだけのウェブ強度が必要であるからである。剥離時点での残留溶媒量は、ベルトやドラム上での乾燥方法によっても異なり、ドープ表面から風を当てて乾燥する方法よりは、ベルト或いはドラム裏面から伝熱する方法が効果的に残留溶媒量を低減することができる。
具体的には、ポリマーフイルムにおける残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。
流延工程では流延方向(縦方向)等の一方向のみの1軸延伸、或いは流延方向及び他の方向(横方向)の2軸延伸等が行われることが好ましい。
さらにドープは、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延してもよい。
要するに、本発明の光学補償シートの製造方法としては、上記透明支持体がセルロースアシレートフィルムであり、該セルロースアシレートフィルムを流延工程を有する溶液流延方法により製膜することにより上記透明支持体を製造する光学補償シートの製造方法であって、前記流延工程のドープを流延する金属支持体は、その表面の算術平均粗さ(Ra)が0.001μm以上0.015μm以下であり、その表面の十点平均粗さ(Rz)が0.001μm以上0.05μm以下であることを特徴とする光学補償シートの製造方法が採用される。ただし、本発明の光学補償シートは、この製造方法に制限されず、種々の方法により製造できる。
(延伸処理工程)
作製されたポリマーフィルムは、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3乃至100%であることが好ましい。
下記(1)及び/又は(2)の延伸方法を採用した場合には、軸ズレ(遅相軸角度)を所定の範囲内に調整できる。
(1)3乃至40%、より好ましくは7乃至38%、さらに好ましくは15乃至35%の延伸倍率で幅方向に延伸する。これに引き続き、長手方向に0.4%以上5%以下、より好ましくは0.7%以上4%以下、さらに好ましくは1%以上3.5%以下膨張させながら60〜160℃で熱処理する。
(2)延伸中に表裏に温度差を付与する。流延時に基板(バンドあるいはドラム)に接触していた面の温度を、その反対面より2℃以上20℃以下、より好ましくは3℃以上15℃以下、より好ましくは4℃以上12℃以下高くする。
このような方法により、延伸工程でのフィルム内に添加した添加剤(可塑剤、レターデーション調整剤、超微粒子等)の偏在化が解消されることで、「軸ズレ」制御がなされる。
また、この延伸処理の条件を調整することにより、光学補償シートの遅相軸の角度の標準偏差を小さくすることができる。延伸処理の方法に特に限定はないが、その例としてテンターによる延伸方法が挙げられる。上記のソルベントキャスト法により作製したフィルムに、テンターを用いて延伸を実施する際に、延伸後のフィルムの状態を制御することにより、フィルム遅相軸角度の標準偏差を小さくすることができる。具体的には、テンターを用いてレターデーション値を調整する延伸処理を行い、そして延伸直後のポリマーフィルムをその状態のまま、フィルムのガラス転移温度以下で保持することで、遅相軸角度の標準偏差を小さくすることができる。この保持の際のフィルムの温度をガラス転移温度以上で行うと、標準偏差が大きくなってしまう。
上述のように、本発明においては、上記透明支持体が、セルロースアシレートフイルムであって、該セルロースアシレートフイルムが、セルロースアシレートを実質的に非塩素系の溶剤に溶解してセルロースアシレート溶液を調製する溶液調製工程、セルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフイルムを製膜する製膜工程、及び、セルロースアシレートフイルムを延伸する延伸工程により製造されたフィルムであるのが、好ましい。
[透明支持体の特性(表面形状)]
そして、本発明の光学補償シートは、透明支持体が特定の表面形状を有することを特徴とする。以下、本発明の特徴部分である透明支持体の表面形状について説明する。
前記透明支持体の配向膜側の表面は、JIS B0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0002μm以上0.1μm以下、十点平均粗さ(Rz)が0.0002μm以上0.3μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.002μm以上0.5μm以下であり、好ましくは算術平均粗さ(Ra)が0.0002μm以上0.08μm以下、十点平均粗さ(Rz)が0.0002μm以上0.1μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.002μm以上0.5μm以下であり、更に好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.0002μm以上0.015μm以下、十点平均粗さ(Rz)が0.002μm以上0.05μm以下、且つ最大高さ(Ry)が0.002μm以上0.05μm以下であり、特に好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.001μm以上0.010μm以下、十点平均粗さ(Rz)が0.002μm以上0.025μm以下、且つ最大高さ(Ry)が0.002μm以上0.04μm以下である。
上記の範囲内において、塗布ムラの無い均一な配向膜が設けられる。
更には、微細な表面凹凸形態において、算術平均粗さ(Ra)と十点平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)が0.1以上1以下であるのが好ましく、且つJISB0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の平均間隔(Sm)が0.001μm以上5μm以下であることが好ましい。ここで、RaとRzの関係は表面の凹凸の均一性を示すものである。さらに好ましくは、(Ra/Rz)比が0.15以上1以下、特に好ましくは0.17以上1以下、平均間隔(Sm)が0.001μm以上1μm以下である。
表面の凹と凸の形状は、透過型電子顕微鏡(TEM)、原子間力顕微鏡(AFM)等により評価することが出来る。
(他方の表面形状)
また、本発明の透明支持体の配向膜側と反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Ry)が、配向膜側表面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Ry)の3倍以下であることが好ましい。更に好ましくは1〜2倍であり、特に好ましくは1〜1.5倍である。このような範囲において、フィルムの透明性、ロール形態での耐接着性等が良好となる。
[フィルムの力学特性]
(カール)
本発明に用いる透明支持体の幅方向のカール値は、−10/m〜+10/mであることが好ましい。本発明の透明支持体には後述する表面処理、ラビング処理の実施や配向膜、光学異方性層の設置などを長尺で広幅の透明支持体に対し行う際に、透明支持体の幅方向のカール値が前述の範囲内であると、フィルムのハンドリングが良好になり、フィルムの切断が起きなくなる。また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触して発塵したり、フィルム上への異物付着が生じなくなり、光学補償シートの点欠陥や塗布スジの頻度を許容値の範囲内とすることができる。また、カールを上述の範囲とすることで光学異方性層を設置するときに発生しやすい色斑故障を低減できるほか、偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができ、好ましい。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
(引裂き強度)
上記透明支持体は、前記のとおり膜厚が20〜80μmであり、そのJISK7128−2:1998の引裂き試験方法(エルメンドルフ引裂き法)に基づく引裂き強度が、2g以上であるのが、前記の膜厚においても膜の強度が充分に保持できる点で好ましい。より好ましくは、5〜25gであり、更に好ましくは6〜25gである。また60μm換算では、8g以上が好ましく、より好ましくは8〜15gである。
具体的には、試料片50mm×64mmを、25℃、65%RHの条件下に2時間調湿した後に軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定できる。
特に、上記カール及び上記引き裂き強度は、所定の製造工程を終了して得られる上記透明支持体が長さ100m以上5000m以下で幅0.7m以上2m以下の長尺品である場合に、上述の範囲内とするのが好ましい。
(引掻き強度)
また、引掻き強度は1g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましく、10g以上であることが特に好ましい。この範囲とすることにより、フィルム表面の耐傷性、ハンドリング性が問題なく保持される。
引掻き強度は、円錐頂角が90度で先端の半径が0.25mのサファイヤ針を用いて支持体表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価することができる。
[フィルムの吸湿膨張係数]
また、上記透明支持体は、その吸湿膨張係数を30×10-5/%RH以下とすることが好ましく、15×10-5/%RH以下とすることが更に好ましく、10×10-5/%RH以下であることが特に好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。
この吸湿膨張係数を調節することで、光学補償シートの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
吸湿膨張係数の測定方法は、作製したポリマーフイルムから幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R0)の雰囲気下にぶら下げる。次に他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(L0 )を測定する。そして、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R1)にして、長さ(L1)を測定する。測定結果を下式に代入して吸湿膨張係数を算出する。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用する。
吸湿膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(R1−R0)
[透明支持体の光学異方性]
本発明に用いる透明支持体は、特定の光学異方性を示すことを特徴とする。具体的には、下記式(I)および(II)で定義される、光学異方性の程度を表すReレターデーション値およびRthレターデーション値は、それぞれ、Reが2〜200nm、好ましくは4〜200nmであり、Rthが50〜400nm、好ましくは55〜350nmである。
(I) Re=(nx−ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(I)および(II)において、nxは、フィルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率である。
式(I)および(II)において、nyは、フィルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率である。
式(II)において、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率である。
式(I)および(II)において、dは、単位をnmとするフィルムの厚さである。
尚、透明支持体の複屈折率(Δn:nx−ny)は、波長550nmに対して0.000015〜0.0088であることが好ましく、より好ましくは0.00025〜0.005である。また、厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、波長550nmに対して0.0006〜0.02であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.007である。
特にTNモードに用いる光学補償シートの透明支持体としては、Reレターデーション値が4〜40nm、そしてRthレターデーション値は50〜200nmの範囲である事が好ましく、OCB、HAN、VAN、ホモジニアス配向モード等のECBモードに用いる光学補償シートの支持体としては、Reレターデーション値が10〜70nm、そしてRthレターデーション値は70〜400nmの範囲であることが好ましい。
[フイルムの遅相軸角度]
透明支持体の面内における遅相軸の角度は、ロール状フィルムの幅方向を基準線(0°)とし、遅相軸と基準線のなす角度で定義する。時計回りを+とする。遅相軸角度(軸ズレ)の平均値の絶対値は0度以上3度以下であることが、視野角のバラツキが改良されて表示画像の視認性が良好となる点で好ましく、0度以上2度以下であることがさらに好ましく、0度以上1度以下であることが最も好ましい。遅相軸角度の平均値の方向を遅相軸の平均方向と定義する。
また、遅相軸角度の標準偏差は0度以上1.5度以下であることが好ましく、0度以上0.8度以下であることがにさら好ましく、0度以上0.4度以下であることが最も好ましい。
標準偏差を0度以上1.5度以下とすることにより、ディスプレイの色が変わる「色ムラ」が生じるのをより防止することができる。
[透明支持体の表面親水化処理]
本発明の透明支持体は、配向膜形成用組成物が均一に塗工され且つ塗工によって塗設された配向膜との密着性が充分に発現するように、支持体を表面処理して表面が親水性に改質される親水化表面処理を行うのが好ましい。
本発明では、透明支持体への親水化表面処理の態様として、物理的処理としては、コロナ処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、フレームプラズマ処理が挙げられ、湿式処理としてはオゾン処理、酸化処理、酸処理、アルカリ処理等が挙げられる。具体的には、発明協会公開技法公技番号2001−1745号(発行2001年3月15日)p30−31に記載の内容、特開2001−9973号公報等が挙げられる。
(アルカリ鹸化処理)
アルカリ溶液によるアルカリ鹸化処理を行うことが親水化処理装置の簡便性、装置のメンテナンス性(腐食し難い等)から好ましい。
アルカリ鹸化処理としては、アルカリ溶液中に透明支持体を浸漬する、透明支持体表面にアルカリ溶液を吹き付ける或は塗布する等いずれの方法も用いることができる。透明支持体の片面のみをムラ無く均一に鹸化処理できる塗布方式によるアルカリ鹸化処理がより好ましい。
鹸化処理は、処理するフィルムの変形、処理液の変質等が生じない温度120℃を越えない範囲の処理温度で行うことが好ましい。更に温度10℃以上であり100℃以下の範囲が好ましい。特に、温度20〜60℃が好ましい。
また、鹸化処理の時間は、アルカリ溶液、処理温度により適宜調整して決定するが、1秒から60秒の範囲で行われるのが好ましい。
[アルカリ溶液]
本発明のアルカリ溶液はpH11以上のアルカリ溶液が好ましい。より好ましくはpH12〜14である。
アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤の例として、水酸化ナトリウム、同カリウム、同リチウム等の無機アルカリ剤、また、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて併用することもでき、一部を例えばハロゲン化したような塩の形で添加してもよい。
これらのアルカリ剤の中でも、水酸化ナトリウム或は水酸化カリウムが、これらの量の調整により広いpH領域でのpH調整が可能となるため好ましい。
アルカリ溶液におけるアルカリ剤の濃度は、使用するアルカリ剤の種類、反応温度および反応時間に応じて決定されるが、アルカリ剤の含有量は、アルカリ溶液中の0.1〜3mol/Kgが好ましく、0.5〜2mol/Kgがより好ましい。
上記アルカリ溶液の溶媒は、水及び水溶性有機溶媒の混合溶液が好ましい。水溶性有機溶媒としては、水と混和可能な有機溶媒であればいずれも用いることができるが、処理液の経時での濃縮抑制及び処理後のフィルムからの除去(乾燥性)性の点から沸点が好ましくは120℃以下、より好ましくは60〜120℃、更に好ましくは100℃以下のものである。
その中でも好ましい有機溶媒は、無機性/有機性値(I/O値)が0.5以上、且つ溶解度パラメーターが16〜40[mJ/m31/2の範囲のものが好ましい。より好ましくは、I/O値が0.6〜10、且つ溶解度パラメーターが18〜31[mJ/m31/2である。I/O値がこの範囲よりも無機性が強いか、または溶解度パラメーターが低いと、アルカリ鹸化速度が低下し、また鹸化度の全面均一性も不満足となる。一方、I/O値が上記範囲よりも有機性の側であるか、又は溶解度パラメーターが高溶解性の側では、鹸化速度は速いが、ヘイズを生じ易く、したがって全面均一性の点では同様に不満足となる。
また、有機溶媒、とりわけ上記有機性と溶解性の各範囲の有機溶媒を後述する界面活性剤及び/又は相溶化剤等と組み合わせて用いると高い鹸化速度が維持されて、かつ全面に亘る鹸化度の均一性が向上する。
好ましい特性値を有する水溶性有機溶媒は、例えば、有機合成化学協会編、「新版溶剤ポケットブック」((株)オーム社、1994年刊)等に記載のものが挙げられる。(また、有機溶媒の無機性/有機性値(I/O値)については、例えば、田中善生著「有機概念図」(三共出版社1983年刊)p.1−31に解説されている)。
具体的には、一価脂肪族アルコール類(例、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等)、脂環式アルカノール(例、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、メトキシシクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、シクロヘキシルエタノール、シクロヘキシルプロパノール等)、フェニルアルカノール(例、べンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェノキシエタノール、メトキシベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等)、複素環式アルカノール類(フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等)、グリコール化合物のモノエーテル類(メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、メトキシメトキシエタノール、ブチルセルソルブ、ヘキシルセルソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、エトキシトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等)ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(例、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例、ジメチルスルホキシド)およびエーテル類(例、テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、トリオキサン、ジメチルセルソルブ、ジエチルセルソルブ、ジプロピルセルソルブ、メチルエチルセルソルブ、ジメチルカルビトール、ジメチルカルビトール、メチルエチルカルビトール等)等が挙げられる。用いる有機溶媒は、単独若しくは2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶媒を単独或いは2種以上を混合する場合の少なくとも一種の有機溶媒は、水への溶解性が大きなものが好ましい。有機溶媒の水の溶解度は、50質量%以上が好ましく、水と自由に混合するものがより好ましい。これによりアルカリ剤、鹸化処理で副生する脂肪酸の塩、空気中の二酸化炭素を吸収して生じた炭酸の塩等への溶解性が充分なアルカリ溶液を調製できる。
有機溶媒の溶媒中の使用割合は、溶媒の種類、水との混和性(溶解性)、反応温度および反応時間に応じて決定する。
水と有機溶媒の混合比は、3/97〜85/15質量比が好ましい。より好ましくは5/95〜60/40質量比であり、更に好ましくは15/85〜40/60質量比である。この範囲において、アシレートフィルムの光学特性を損なうことなく容易にフィルム全面が均一に鹸化処理される。
本発明に用いるアルカリ溶液が含有する有機溶媒として、上記した好ましいI/O値を有する有機溶媒とは異なる有機溶媒(例えばフッ化アルコール等)を、後述の界面活性剤、相溶化剤の溶解助剤として併用してもよい。その含有量はアルカリ溶液の総質量に対して0.1〜5質量%とするのが好ましい。
本発明に用いるアルカリ溶液は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を添加することによって表面張力を下げて塗布を容易にしたり、塗膜の均一性を上げてハジキ故障を防止し、かつ有機溶媒が存在すると起こり易いヘイズを抑止し、さらに鹸化反応が均一に進行する。その効果は、後述する相溶化剤の共存によって特に顕著となる。用いられる界面活性剤には特に制限はなく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等のいずれであってもよい。
具体的には、例えば、吉田時行著「界面活性剤ハンドブック(新版)」(工学図書、1987年刊行)、「界面活性剤の機能創製・素材開発・応用技術」第1編(技術教育出版、2000年刊行)等記載の公知の化合物が挙げられる。
これらの界面活性剤の中でも、カチオン性界面活性剤としての4級アンモニウム塩類、ノニオン性界面活性剤としての各種のポリアルキレンレングリコール誘導体類、各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、両性界面活性剤としてのベタイン型化合物類が好ましい。
アルカリ溶液には、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を共存させて用いることも本発明の効果が高められて好ましい。
これらの界面活性剤のアルカリ溶液に対する添加量は、好ましくは、0.001〜10質量%であり、より好ましくは、0.01〜5質量%の範囲が挙げられる。
本発明に用いられるアルカリ溶液は、相溶化剤を含有させることも好ましい。本発明において、「相溶化剤」とは、温度25℃において、相溶化剤100gに対して水の溶解度が50g以上となる親水性化合物をいう。相溶化剤の水の溶解度は、相溶化剤100gに対して、80g以上であるのが好ましく、100g以上であるのがより好ましい。また、相溶化剤が液状化合物である場合は、沸点が100℃以上であるのが好ましく、120℃以上であるのがより好ましい。
相溶化剤は、アルカリ溶液を貯留する浴等の壁面に付着したアルカリ溶液の乾燥を防止し、固着を抑制し、アルカリ溶液を安定に保持させる作用を有する。また、透明支持体の表面にアルカリ溶液を塗布して一定時間保持した後、鹸化処理を停止するまでの間に、塗布されたアルカリ溶液の薄膜が乾燥し、固形物の析出を生じ、水洗工程での固形物の洗い出しを困難にすることを防止する作用を有する。さらには、溶媒となる水と有機溶剤との相分離を防止する。特に、界面活性剤と有機溶剤と上述した相溶化剤との共存によって、処理された透明支持体は、ヘイズが少なく、かつ、長尺の連続鹸化処理の場合であっても安定して全面均一な鹸化度となる。
相溶化剤は、上記の条件を満たす材料であれば、特に限定されないが、例えば、ポリオール化合物、糖類等のヒドロキシル基および/またはアミド基を有する繰り返し単位を含む水溶性重合体が好適に挙げられる。
ポリオール化合物は、低分子化合物、オリゴマー化合物および高分子化合物のいずれも用いることができる。
脂肪族ポリオール類としては、例えば、炭素数2〜8のアルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリンモノメチルエーテル、グリセリンモノエチルエーテル、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等)、ヒドロキシル基を3個以上含有する炭素数3〜18のアルカン類(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、イノシトール等)が挙げられる。
ポリアルキレンオキシポリオール類としては、上記のような同じアルキレンジオール同士が結合していてもよく、異なるアルキレンジオールが互いに結合していてもよいが、同じアルキレンジオール同士が結合したポリアルキレンポリオールがより好ましい。いずれの場合もの結合数は3〜100であるのが好ましく、3〜50であるのがより好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)が挙げられる。
糖類としては、例えば、高分子学会高分子実験学編集委員会編「天然高分子」第二章(共立出版(株)、1984年刊)、小田良平等編「近代工業化学22、天然物工業化学II」((株)朝倉書店、1967年刊)等に記載されている水溶性化合物が挙げられる。中でも、遊離のアルデヒド基およびケトン基を持たない、還元性を示さない糖類が好ましい。
糖類は、一般に、グルコース、スクロース、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体および糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類されるが、いずれも本発明に好適に用いられる。
例えば、サッカロース、トレハロース、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット、還元水あめが挙げられる。これらの糖類は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ヒドロキシル基および/またはアミド基を有する繰り返し単位を有する水溶性重合体としては、例えば、天然ガム類(例えば、アラビアガム、グアーガム、トラガンドガム等)、ポリビニルピロリドン、ジヒドロキシプロピルアクリレート重合体、セルロース類またはキトサン類とエポキシ化合物(エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド)との付加反応体が挙げられる。
中でも、アルキレンポリオール、ポリアルキレンオキシポリオール、糖アルコール等のポリオール化合物が好ましい。
相溶化剤の含有量は、アルカリ溶液に対して、0.5〜25質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。
本発明に用いられるアルカリ溶液は、その他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、消泡剤、アルカリ溶液安定化剤、pH緩衝剤、防腐剤、防菌剤等の公知のものが挙げられる。
以上のように、本発明においては、上記透明支持体が、沸点が60〜120℃の水溶性有機溶媒、並びに界面活性剤及び/又は相溶化剤を少なくとも含有するアルカリ溶液(アルカリ剤は当然に含有する)により表面処理されたものであることが好ましい。
[アルカリ溶液の塗布鹸化方法]
上記のアルカリ溶液を用いたポリマーフィルム(以下、この方法の説明においては「セルロースアシレートフィルム」を例にとって説明する)の表面処理方法として、フィルムの片面のみを処理できる塗布方式が好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を挙げることができる。
更に、セルロースアシレートフィルムをその表面が少なくとも10℃以上の温度でアルカリ溶液で鹸化処理する工程、セルロースアシレートフィルムの温度を少なくとも10℃以上に維持する工程、そして、アルカリ溶液をセルロースアシレートフィルムから洗い落とす工程によりアルカリ鹸化処理を実施することが好ましい。
セルロースアシレートフィルムをその表面が所定の温度でアルカリ溶液で鹸化処理には、塗布する前に予め所定の温度に調整する工程、アルカリ液を予め所定の温度に調整しておく工程、或いはこれらを組み合わせた工程等が挙げられる。塗布する前に予め所定の温度に調整する工程と組み合わせることが好ましい。
鹸化反応後は、水洗、中和し水洗等でフィルム表面からアルカリ溶液及び鹸化処理反応物とを洗浄し除去することが好ましい。
具体的には、例えば国際公開第02/46809号パンフレット等に記載の内容が挙げられる。
[親水化処理された透明支持体の特性]
上記の処理を施された透明支持体の表面の親水性は、以下の物性の範囲であることが好ましい。
(1)フイルム表面における水との接触角が、20〜55度の範囲にあること。
水との接触角は、25〜50度の範囲にあることが好ましく、30〜45度の範囲にあることがより好ましい。
(2)フィルム表面における表面エネルギーは55〜75mN/mの範囲にあることが好ましい。
表面エネルギー(評価項目(2))の評価方法は、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社、1989年刊行)に記載の接触角法、湿潤熱法、及び吸着法により求めることが出来る。透明支持体としてセルロースアシレートフィルムを用いる場合、接触角法を用いることが好ましい。具体的には、表面エネルギーが既知の2種類の溶媒をセルロースアシレートフィルムに滴下し、液滴表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
以上のようにして本発明において用いられる特定の表面形状及び光学特性を有する透明支持体が調整されるが、該表面形状及び光学特性を上述の範囲とするには、(1)上述の(微粒子の添加混合方法)の欄に記載したように、単分散性の微粒子は溶液流延方法による製膜方法でドープに混合分散する前に、予め湿式分散処理して粗大粒子を除いた分散物とすること、すなわち上述のように500μmを超える粒径の粒子が存在しないように微粒子の粒径をそろえること、(2)上述のたように、ドープは流延工程前に精密濾過を行うこと、(3)上述のように、流延工程に用いる金属支持体はその表面の凹凸を一定の大きさとすること、(4)上述のように、ドープの乾燥工程での乾燥条件を制御すること、(5)上述のように、延伸工程の延伸条件を精密化すること、等により適宜調整可能である。結果として、遅相軸の角度のバラツキも抑制される。さらに、(6)上述のように、迅速鹸化のアルカリ溶液処理の親水化処理を行うことにより、配向膜及び光学異方性層が塗布面内にムラ無く塗設され、視認性の良好な光学補償シートが達成される。
<配向膜>
本発明の配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)塗布液を塗布して形成される配向膜が好ましい。配向膜の膜自身の強度、透明支持体或は上層となる光学異方性層との密着性の観点から硬化されたポリマー膜であることが好ましい。配向膜は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するために設けられる。配向規定の方法としては、従来公知のラビング、磁場或は電場の付与、光照射等が挙げられる。
本発明に供される配向膜は、液晶セルの表示モードの種類に応じることが出来る。
液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に垂直に配向している表示モード(例、VA、OCB、HAN)では、光学異方性層の液晶性分子を実質的に水平に配向させる機能を有する。液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に水平に配向している表示モード(例、STN)では、光学異方性層の液晶性分子を実質的に垂直に配向させる機能を有する。液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に斜めに配向している表示モード(例、TN)では、光学異方性層の液晶性分子を実質的に斜めに配向させる機能を有する。
本発明の配向膜に使用される具体的なポリマーの種類については、前述した様々な表示モードに対応するディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートについての文献に記載がある。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例として、例えば特開平8−338913号公報 段落番号[0022]記載の化合物が挙げられる。好ましくは水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が挙げられ、この中でもゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70乃至100%が好ましく、80乃至100%がさらに好ましく、85乃至95%が最も好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100乃至3000であることが好ましい。
変性ポリビニルアルコールの変性基は、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば、特開2000−56310号公報段落番号[0074]、同2000−155216号公報段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
また、配向を光照射で行う場合には、光配向機能を発現する光配向性基を分子内に有する。これらの光配向性基としては、例えば、長谷川雅樹著書の「液晶、第3巻(1)3〜16頁(1999)」記載のもの、C=C結合を有する光二量化反応によって光配向機能を発現する光配向性基(例えば、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、シンナモイル基、ヘミチオインジゴ基、カルコン基等)、C=O結合を有する光二量化反応によって光配向機能を発現する光配向性基(例えば、ベンゾフェノン基、クマリン基等の構造を有する基等)が挙げられる。具体的には、例えば特開2000−122069号公報、同2002−317013号公報の段落番号[0021]等記載のものが挙げられる。
前記配向膜に使用するポリマー(好ましくは水溶性ポリマー、さらに好ましくはポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコール)の架橋剤の例には、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1乃至20質量%が好ましく、0.5乃至15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。配向膜中に1.0質量%を超える量で架橋剤が残存していると、充分な耐久性が得られない。そのような配向膜を液晶表示装置に使用すると、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合にレチキュレーションが発生することがある。
[配向膜に含有されるカルボン酸化合物]
本発明の配向膜形成用組成物は、特定のカルボン酸化合物を含有することが好ましい。
これにより、得られた配向膜に配向手段で配向した後に光学異方性層を塗設して得られた光学補償シートの塗布面状が良好で白抜け等の光学的欠陥を軽減若しくは解消する改善効果を発現する。推測される理由としては、配向膜に含有する特定のカルボン酸化合物が配向膜の膜表面水素イオン濃度等を安定にして光学異方性層塗設した時に液晶分子の配向状態への影響を小さくすることが1つの要因と思われる。また、透明支持体表面をアルカリ鹸化処理で親水化した場合には、該フィルム表面に僅かに残存した処理液があっても安定して良好な光学的性能の配向膜が形成されると思われる。当然、添加量により効果は異なってくる為、適時量を調整する必要がある。
特定のカルボン酸化合物としては、水素結合性を有する水素原子含有の極性基を少なくとも1種含有するカルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸は、脂肪族化合物、芳香族化合物、或は複素環化合物の何れのものでもよい。
特定の極性基としては、−OH、−SH、−NHR、−CONHR、−SO2NHR、−HNCONHR、−NHSO2NHR、−NHCOR1、−NHSO21が挙げられる。但し、Rは、水素原子、脂肪族基、アリール基、又は複素環基を表す。R1は、脂肪族基、アリール基又は複素環基を表す。該カルボン酸が上記の極性基を複数含有する場合には、該極性基は同じでも異なってもよい。
本発明の好ましい特定の極性基として、−OH、−SH、−NHR、−CONH2、−SO2NH2、−HNCONHR、−NHSO2NHR、−NHSO21が挙げられる。
ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、アリール基、又は複素環基を表す。R1は、脂肪族基、アリール基又は複素環基を表す。
Rが脂肪族基を表す場合、脂肪族基は炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコサニル基、ヘネイコサニル基、ドコサニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、オクタジエニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、オクタニル基、デカニル基、ドデカニル基等)、炭素数5〜22の脂環式炭化水素基(例えば、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロへプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、デカリン等)が挙げられる。
脂肪族基としては、これらの中で、炭素数1〜18の直鎖状、炭素原子数3〜18の分岐状脂肪族基がより好ましい。
アリール基としては、炭素数6〜18のアリール基(アリール環としては、ベンゼン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、ビフェニレン等)を表す。
複素環基としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかを少なくとも1個含有する単環式若しくは多環式の環構造を有する複素環基(複素環基としては、例えば、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピロイル基、、ピリジイル基、ピラジニル基、モルホリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基等)等が挙げられる。
上記の脂肪族基、アリール基、複素環基は各々置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。
非金属原子団の具体的な例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、−OR11、−SR11、−COR11、−COOR11、−OCOR11、−SO211、−NHCONHR11、−N(R12)COR11、−N(R12)SO211、−N(R13)(R14)、−CON(R13)(R14)、−SO2N(R13)(R14)、−P(=O)(R15)(R16)、−OP(=O)(R15)(R16)、−Si(R17)(R18)(R19)、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、又は複素環基を表す。これら脂肪族基、アリール基、複素環基は、前記Rのものと同義である。
前記R11は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜18のアリール基、又は複素環基を表す。R11における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R11におけるアリール基としては、前記Rで表されるアリール基と同様のものが挙げられる。R11における複素環基としては、前記Rで表される複素環基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基、アリール基、複素環基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
12は、水素原子又はR11基と同様のものを表す。
前記R13及びR14は、各々独立に、水素原子、又はR11と同様のものを表し、R13とR14とは互いに結合して、N原子を含有する5員又は6員の環を形成してもよい。
前記R15及びR16は、各々独立に、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜14のアリール基、又は−OR11を表す。R15及びR16における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R15及びR16におけるアリール基としては、前記Rで表されるアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基、アリール基、複素環基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
前記R17、R18及びR19は、各々独立に、炭素数1〜22の炭化水素基又は−OR20を表すが、これらの置換基の内少なくとも1つは炭化水素基を表す。炭化水素基は前記Rで示される脂肪族基及びアリール基と同様のものを表し、−OR20は前記−OR11と同様の内容を表す。
1における、脂肪族基、アリール基および複素環基はRと同じものを表す。
本発明の特定のカルボン酸化合物としては、炭素数1〜22(カルボン酸の炭素原子を除く)の脂肪族カルボン酸、炭素数6〜14の芳香族カルボン酸、複素環カルボン酸のカルボン酸化合物であり、pKaが6.5以下となるものが特に好ましい。より好ましくはカルボン酸のpKaが3.0〜6.5の化合物である。
これら特定のカルボン酸化合物として具体的には、例えばオキシ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、α−オキシアルカン酸(アルカンとしては、炭素数3〜18のアルカン)、等)、アミノ酸、α−オキシ−β−アミノ酸、α−オキシ−γ−アミノ酸、β−オキシ−α−アミノ酸、これらオキシ酸或はオキシアミノ酸のヒドロキシル基がアルコキシ基に誘導された化合物、ヒドキシシクロヘキサンカルボン酸類、ヒドロキシベンゼンカルボン酸類、ポリオール(例えば、アルカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール等)の少なくとも1個のヒドロキシル基を環状カルボン酸無水物(コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸等の無水物等)でエステル化した化合物、ポリアミノ化合物(例えば、アルキレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、シクロヘキサンジアミン、フェニレンジアミン等)と環状カルボン酸無水物でアミド化した化合物とから誘導される化合物が挙げられるが、本発明の化合物はこれらに限定されるものではない。
更に好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含有したポリカルボン酸であり、その少なくとも1つのカルボキシル基がエステル化されてなるカルボン酸化合物が挙げられる。
少なくとも1つのヒドロキシル基を含有したポリカルボン酸としては、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、オキシグルタミン酸(β−体、γ−体)、上記のポリオールの少なくとも2個のヒドロキシル基を環状カルボン酸無水物でエステル化した化合物等が挙げられる。
これらのポリカルボン酸化合物の少なくとも1つのカルボン酸が炭素数1〜22の炭化水素基でエステル置換されていることが好ましい。
エステル置換される炭素数1〜18の炭化水素基の具体的態様は、前記のRで記載した脂肪族基、芳香族基、複素環基と同義である。またこれらの炭化水素基は置換されてもよく、置換基としては、前記のRに置換されると同一の内容のものが挙げられる。
本発明の特定のカルボン酸化合物は、配向膜形成用組成物中、0.01〜1.0質量%の割合で添加するのが好ましい。更には、0.02〜0.5質量%が好ましい。
この範囲において、膜の強度が十分に保持された白抜け等の光学的に欠陥の無い光学補償シートが得られる。更には、長尺フィルムを連続して製造しても、極めて安定な性能で製造することが出来る。
配向膜は、基本的に、配向膜形成用組成物である前記ポリマー、架橋剤及び特定のカルボン酸を含む塗布液を透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、配向処理することにより形成することができる硬化膜である。架橋反応は、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なって良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成用組成物として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方性層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1乃至10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。
更に、本発明の配向膜形成用組成物を含有する塗布液を支持体に塗布、乾燥し、配向手段で配向させたのちに光学異方性層用塗布液が塗布されるときに、該配向膜の表面がpH2.0〜6.9の範囲に保持されることがこの好ましい。更にはpH2.5〜5.0がより好ましい。
また、該光学異方性層用塗布液を塗布する際に、塗布の幅方向での配向膜表面のpHの変動幅△pHが±0.30の範囲で行われることが好ましい。より好ましくは、△pHが±0.15の範囲である。
この範囲において光学異方性層を塗設された光学補償シートは、光学的欠陥が著しく軽減され、好ましい。
配向膜表面のpH値の測定方法は、配向膜を塗設した試料を(温度25℃/湿度65%RH)の環境下に1日静置した後、窒素雰囲気下で純水を10ml乗せて速やかにpHメーターでpH値を読み取る。
本発明の配向膜表面のpH値を特定とし、且つ塗布幅方向での△pHを制御するには、上記のロッドコーティング方式による塗布により達成される。更には、膜表面の乾燥温度、乾燥風を用いる場合のその風量、風向等を調節することも有効である。
配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
また、光照射で光配向する場合には、光照射装置としての光源は、超高圧水銀灯、キセノン灯、蛍光灯、レーザ等を用いることが出来、光二量化化合物を光配向をするには上記光源と偏光子を組み合わせて(偏光子を通して)紫外線を直線偏光とし、光配向膜に照射する。偏光子としては、主に使用されているものとして延伸染色PVAがある。この直線偏光紫外線照射装置としては、例えば、特開平10−90684号公報に開示されているものを用いることが出来る。
配向膜の厚さは、0.01乃至5μmであることが好ましく、0.05乃至1μmであることがさらに好ましい。
<光学異方性層>
本発明の光学異方性層は、液晶性分子から形成される。
液晶性分子としては、棒状液晶性分子またはディスコティック液晶性分子が好ましく、ディスコティック液晶性分子が特に好ましい。
以下に液晶性分子として用いる液晶性化合物を挙げる。
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。これら低分子液晶性分子は重合性基を分子内に有することが好ましい(例えば、特開2000−304932号公報段落番号[0016]等記載)。以上のような低分子液晶性分子だけではなく、高分子液晶性分子も用いることができる。高分子液晶性分子は、以上のような低分子液晶性分子に相当する側鎖を有するポリマーである。高分子液晶性分子を用いた光学補償シートについては、特開平5−53016号公報に記載の化合物が挙げられる。
ディスコティック液晶性分子としては、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている化合物が挙げられる。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報の記載が挙げられる。
ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことが出来る。例えば、特開2000−155216号公報段落番号[0151]〜[0168]記載の化合物等が挙げられる。
なお、STNモードのような棒状液晶性分子がねじれ配向している液晶セルを、光学的に補償するためには、ディスコティック液晶性分子もねじれ配向させることが好ましい。上記連結基に、不斉炭素原子を導入すると、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。また、不斉炭素原子を含む光学活性を示す化合物(カイラル剤)を光学異方性層に添加しても、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。
二種類以上のディスコティック液晶性分子を併用してもよい。例えば、以上述べたような重合性ディスコティック液晶性分子と非重合性ディスコティック液晶性分子とを併用することができる。
非重合性ディスコティック液晶性分子は、前述した重合性ディスコティック液晶性分子の重合性基を、水素原子またはアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性ディスコティック液晶性分子は、例えば特許第2640083号明細書記載の化合物等が挙げられる。
[光学異方性層の他の成分]
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー、ポリマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することが出来る。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、ディスコティック液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
ディスコティック液晶性分子とともに使用するポリマーは、ディスコティック液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
ディスコティック液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
光学異方性層は、液晶性分子、あるいは下記の重合性開始剤や任意の添加剤(例、可塑剤、重合性モノマー、界面活性剤、セルロースエステル、1,3,5−トリアジン化合物、カイラル剤)を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成される。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が挙げられる。このうち、アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
[液晶性分子の配向状態の固定]
液晶性分子は、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがさらに好ましく、重合反応により液晶性分子が固定されていることが最も好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例としては、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20質量%であることが好ましく、0.5乃至5質量%であることがさらに好ましい。
ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2 乃至50J/cm2 であることが好ましく、100乃至800mJ/cm2 であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
光学異方性層の厚さは、0.1乃至10μmであることが好ましく、0.5乃至5μmであることがさらに好ましく、0.7乃至3μmであることが最も好ましい。ただし、液晶セルのモードによっては、高い光学異方性を得るために、光学異方性層を厚く(3乃至10μm)する場合がある。
光学異方性層内での液晶性分子の配向状態は、前述したように、液晶セルの表示モードの種類に応じて決定される。液晶性分子の配向状態は、具体的には、液晶性分子の種類、配向膜の種類および光学異方性層内の添加剤(例、可塑剤、ポリマー、界面活性剤)の使用によって制御される。
上記のようにして、本発明の光学補償シートが製造される。本発明の光学補償シートは、前記した通り、予め密着性を付与処理した透明支持体、配向膜、及び光学異方性層がこの順に積層された層構成を有する。
本発明の光学補償シートは、偏光板と貼り合せるか、偏光板の保護フィルムとして使用することで、その機能を著しく発揮する。
次に、本発明の偏光板及びその製造について詳しく説明する。
<偏光板>
本発明の偏光板は、偏光膜、及びその両側に配置された2枚の透明保護膜からなる偏光板であって、該透明保護膜の一方に上記の本発明の光学補償シートを用いたことを特徴とする。ここで、「一方」とは、必ず一方は上記の本発明の光学補償シートを用いることを意味し、両方が本発明の光学補償シートにより構成されていてもよい。
[偏光板の透明保護膜]
本発明において、透明保護膜、すなわち保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。上記の本発明の光学補償シート以外の透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフィルム、好ましくはアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、前記の透明支持体の説明の欄に記載のソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜200μmであることが好ましく、30〜100μmであることがさらに好ましい。特に好ましくは30〜80μmである。
本発明のように、偏光板の一方に上記の本発明の光学補償シートを用いることにより、偏光膜と光学異方性層との間に透明保護膜を使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作成される。本発明による偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示する。
[光学補償シートの表面処理]
光学補償シートと偏光板との接着性を改善するために、光学補償シートの偏光膜側の面を表面処理するのが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、オゾン処理、酸処理又はアルカリ処理を実施する。
コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、オゾン処理、酸処理、アルカリ処理等の処理方法は、例えば、前記の公技番号2001−1745号p30−31に記載の内容が挙げられる。本発明は、アルカリ処理することが好ましく、本発明の塗布方式でのアルカリ溶液鹸化処理で記載と同様の内容のものが挙げられる。
[偏光膜]
本発明に用いられる偏光膜は、通常、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素または二色性色素からなる偏光膜が好ましい。
偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素および二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
現在、市販の偏光子(偏光膜)は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
市販の偏光子は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
上記のように、バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、液晶表示装置の光漏れの観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。20μm以下であると、光漏れ現象は、17インチの液晶表示装置で観察されなくなる。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。ポリマーの例としては、前記の配向膜で記載のポリマーと同様のものが挙げられる。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。
架橋しているバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーを用いることができる。官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入して得られるバインダーを、光、熱あるいはpH変化により、バインダー間で反応させて偏光膜を形成することができる。
また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。
架橋は一般に、ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱を行なうことにより実施される。最終商品の段階で耐久性が確保できれば良いため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なっても良い。
バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1乃至20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
偏光膜は、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。但し、残存する架橋剤の量は、偏光膜中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、偏光膜を液晶表示装置に組み込み、長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、偏光度の低下を生じない。
架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書の記載が挙げられる。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も架橋剤として用いることができる。
二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
二色性色素の例としては、例えば、発明協会公開技法、公技番号2001−1745号、58頁(発行日2001年3月15日)に記載の化合物が挙げられる。
液晶表示装置のコントラスト比を高めるためには、偏光板の透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30乃至50%の範囲にあることが好ましく、35乃至50%の範囲にあることがさらに好ましく、40乃至50%の範囲にあることが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90乃至100%の範囲にあることが好ましく、95乃至100%の範囲にあることがさらに好ましく、99乃至100%の範囲にあることが最も好ましい。
偏光膜と光学異方性層、あるいは、偏光膜と配向膜を接着剤を介して配置することも可能性である。接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01乃至10μmの範囲にあることが好ましく、0.05乃至5μmの範囲にあることが特に好ましい。
[偏光板の製造]
偏光膜は、歩留まりの観点から、バインダーを偏光膜の長手方向(MD方向)に対して、10乃至80度傾斜して延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。
通常の傾斜角度は45゜である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45゜でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は1.1乃至30.0倍が好ましく、1.5乃至10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、1.2乃至5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0乃至10.0倍が好ましい。延伸工程は、斜め延伸を含め数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。斜め延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。
延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフイルム製膜において行われている延伸方法と同様である。二軸延伸では、左右異なる速度によって延伸されるため、延伸前のバインダーフイルムの厚みが左右で異なるようにする必要がある。流延製膜では、ダイにテーパーを付けることにより、バインダー溶液の流量に左右の差をつけることができる。
以上のように、偏光膜のMD方向に対して10乃至80度斜め延伸されたバインダーフイルムが製造される。
ラビング法では、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフイルムのラップ角度は、0.1乃至90゜が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360゜以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
長尺フイルムをラビング処理する場合は、フイルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/minの速度で搬送することが好ましい。ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフイルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60゜の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40乃至50゜が好ましい。45゜が特に好ましい。
そして、偏光膜の両面側に前記透明保護膜を配置(本発明の光学補償シート/偏光膜/他の透明保護膜、又は、本発明の光学補償シート/偏光膜/本発明の光学補償シート)する。
透明保護膜は、その最表面に防汚性及び耐擦傷性を有する反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜は、従来公知のいずれのものも用いることが出来る。
上記のようにして、本発明の偏光板が製造される。
本発明の光学補償シートを用いた本発明の偏光板は、液晶表示装置、特に透過型液晶表示装置に有利に用いられる。
次に、本発明の液晶表示装置について、特に透過型液晶表示装置及びその製造について詳しく説明する。
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、液晶セル、及びその両側に配置された2枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜、及びその両側に配置された2枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光膜との間に配置される2枚の透明保護膜のうち少なくとも一方が上記の本発明の光学補償シートを用いたことを特徴とする。すなわち、本発明の液晶表示装置は、偏光板として上述の本発明の偏光板を用いたものである。
各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態について、以下で説明する。
各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態において、本発明の光学補償シート偏光板は、有利に光学的に補償することができる。
(TNモード液晶表示装置)
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献の記載が挙げられる。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている装置が挙げられる。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(VAモード液晶表示装置)
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモード)の液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が挙げられる。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することが出来る。
本発明の液晶表示装置においては、上記液晶セルがTNモード、VAモード、MVAモード、n−ASMモードまたはOCBモードの液晶セルであるのが本発明の光学補償シートの効果を最大限に発揮させる点で好ましい。
以下に本発明を実施例及び比較例により例証するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
<透明支持体の作製>
(微粒子分散物(RL-1)の調整)
下記の組成からなる溶液を調製し、アトライターにて体積平均粒径80nmになるよう分散を行い、微粒子分散物を得た。得られた微粒子分散物の粒度分布を測定したところ、粒径500nm以上の粒子は0%であった。
ここで体積平均粒径は、『粒度分布測定装置 LA920(堀場製作所製)』で測定した。
・微粒子分散物(RL-1)組成
疎水性シリカ(商品名「AEROSIL R812」(メチル基変性体、
一次粒径7nm:日本アエロジル(株)) 2.00質量部
酢化度60.7%(6位置換度0.90)のセルローストリアセテート
2.00質量部
トリフェニルフォスフェート 0.16質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.08質量部
メチレンクロライド 78.70質量部
メタノール 14.20質量部
1−ブタノール 2.86質量部
(セルロースアシレート溶液(A−1)の調整)
下記の組成からなる混合物を攪拌溶解して、セルロースアシレート溶液(A−1)を調整した。
・セルロースアシレート溶液(A−1)組成
酢化度60.7%(6位置換度0.90)のセルローストリアセテート
89.3質量部
トリフェニルホスフェート 7.1質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 3.6質量部
メチレンクロライド 300質量部
メタノール 54質量部
1−ブタノール 11質量部
下記組成のレターデーション調整剤溶液組成物を加熱撹拌して、レターデーション調整剤溶液(RE−1)を調製した。
・レターデーション調整剤溶液(RE−1)組成物
2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン 12質量部
2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン 4質量部
メチレンクロライド 82.2質量部
メタノール 14.8質量部
1−ブタノール 3.0質量部
(ドープの調製)
セルロースアシレート溶液(A−1)474質量部に、微粒子分散物(RL−1)15.3質量部を添加して充分に攪拌した後、レターデーション調整剤溶液(RE−1)22質量部を添加し、十分に撹拌して更に室温(25℃)にて3時間放置し、得られた不均一なゲル状溶液を、−70℃にて6時間冷却した後、50℃に加温・攪拌して完全に溶解したドープを得た。
次に得られたドープを50℃にて、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にてフィルター濾過及び脱泡を行ってドープを調製した。
(溶液流延方法)
上述のようにセルロースアシレート溶液を調製する工程を行い、得られたドープを、バンド流延機を用いて流延して、セルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフィルムを製膜する工程を行った。
金属支持体(流延バンド)としては、ステンレススチールからなり、幅2m、長さ56m(面積112m2)からなるものを用いた。該金属支持体の算術平均粗さ(Ra)は0.006μmで、最大高さ(Ry)は0.06μmであり、また十点平均粗さ(Rz)は0.009μmであった。算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、十点平均粗さ(Rz)の各測定は、JIS B 0601に規定によった。
流延されたドープは、流延直後の1秒間は風速0.5m/s以下で乾燥し、それ以降は風速15m/sで乾燥した。乾燥風の温度は50℃であった。
流延バンドから剥ぎ取った時のフィルムの残留溶剤量は230質量%であり、フィルムの温度は−6℃であった。流延から剥ぎ取りまでの間における平均乾燥速度は744質量%/分であった。また、剥ぎ取り時点でのドープのゲル化温度は約10℃であった。
金属支持体上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、剥ぎ取った後、乾燥風の温度を120℃とした。このときのフィルムの幅方向の温度分布は5℃以下であり、乾燥の平均風速は5m/s、伝熱係数の平均値は25kcal/m2・Hr・℃であり、フィルムの幅方向分布はいずれも5%以内であった。また乾燥ゾーン中におけるピンテンター担持部分は遮風装置により乾燥熱風が直接当らないようにした。
次に、セルロースアシレートフィルムを延伸する工程を行った。すなわち、残留溶剤量が15質量%のフイルムの状態で、130℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外して巻き取りを行った。剥ぎ取りより巻取りまでの間で蒸発した溶剤は初期の溶剤量の97質量%であった。乾燥したフィルムは、さらにローラーで搬送しつつ乾燥させる乾燥工程において145℃の乾燥風により乾燥した後、湿度、温度を調整して巻取り時の残留溶剤量0.35質量%、水分量0.8質量%で巻き取り、透明支持体としてのセルロースアシレートフィルム(CA−1)(厚さ65μm)を得た。
得られたセルロースアシレートフィルム(CA−1)について、レターデーションを測定したところ、厚み方向のレターデーションRthは61nm、面内のレターデーションReは6nmであった。
[比較例1−1〜1−3]
(比較例1−1)
実施例1において、微粒子分散物(RL−1)の分散において分散条件を代えて分散物中の分散粒子の平均粒子径が200nmの分散物を調整した。この時の分散物の500nm以上の粒子は20体積%であった。この分散物を用いた他は、実施例1と同様にして膜厚65μmのセルロースアシレートフィルム(CAR1−1)を作製した。
(比較例1−2)
実施例1において、流延製膜での乾燥風の平均風速25m/分、温度60℃とした他は実施例1と同様にして膜厚65μmのセルロースアシレートフィルム(CAR1−2)を作製した。
(フィルム表面の凹凸形状)
得られたセルロースアシレートフィルムCA−1、及び比較例1−1〜1−2の各試料のバンド側面の表面形状を測定した。その結果を表1に示す。又、以下の光学特性や力学的特性についても評価したその結果も併せて表1に示す。
(光学特性の評価方法)
・レターデーション値
エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用い、波長550nmにおけるReレターデーション値(Re550)およびRthレターデーション値(Rth550)を測定した。
・遅相軸ズレ及び標準偏差
自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株))で軸ずれ角度を測定した。各々の測定は幅方向10点で行い、平均値を求めた。遅相軸角度については標準偏差も求めた。
・ヘイズ
ヘイズはヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。フイルム1サンプルにつき、5点を測定し、その平均値を採用した
(力学的特性の評価方法)
・カール
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985、Method−A)に従い測定した。ポリマーフイルムを、幅方向に35mm、長手方向に2mmの大きさに切り取った後、カール板に設置する。これを温度25℃、相対湿度65%の環境下に1時間調湿後カール値を読みとる。そして同様に、ポリマーフイルムを、幅方向に2mm、長手方向に35mmの大きさに切り取った後、カール板に設置する。これを温度25℃、相対湿度65%の環境下に1時間調湿後カール値を読みとる。幅方向、長手方向の二方向で測定し、両者のうちの大きい値をカール値とした。カール値は、曲率半径(m)の逆数で表す。
・引き裂き強度
フイルムを幅65mm×長さ50mmに切断してサンプルを作製する。このサンプルを温度30℃、相対湿度85%の室内で2時間以上調湿し、ISO6383/2−1983の規格に従い、東洋精機製作所製軽荷重引裂強度試験器を用いて、引き裂きに要する荷重(g)を求めた。
Figure 2005092114
上記表1記載のように、実施例1のセルロースアシレートフィルム(CA−1)は、面状良好で、表面の形状は表1記載の値で凹凸形状揃ったものであった。また、レターデーション値、遅相軸角度ズレ、標準偏差、ヘイズ値の光学特性並びにカール、引裂き強度の力学特性も良好であった。一方、比較例1−1は、表面凹凸形状のバラツキが現れ、ヘイズ値が大きくなった。比較例1−2は面状及び平面性が著しく低下した。
以上のように、膜厚65μmのフィルム中に500nm以上の粒子を含有しない超微粒子分散物を含有して、ヘイズが大きくなることを抑制しつつ力学的な特性を保持した光学補償シート用の透明支持体が得られた。
(比較例1−3)
実施例1においてテンターを用いての延伸保持条件として、残留溶剤量が15質量%のフイルムを、130℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま130℃で15秒間保持した他は、実施例1と同様にして膜厚65μmのセルロースアシレートフィルム(CAR1−3)を作製した。
得られたフィルムの表面の凹凸形状、光学特性及び力学的特性を、実施例1及び比較例1−1〜1−2と同様に測定した。比較例1−3は遅相軸の角度ズレが3.5と大きかった。また、表面形状・遅相軸角度ズレ・標準偏差・ヘイズが低下した。
(アルカリ鹸化処理)
上記表1の各フィルムおよび比較例1−3のフィルムの試料の片面に、以下のアルカリ鹸化処理を行った。
すなわち、フィルムの上に、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度40℃に昇温した後に、下記に示す組成のアルカリ溶液(S−1)をロッドコーターを用いて塗布量12cc/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に10秒滞留させた。続けて、同じくロッドコーターを用いて純水を4cc/m2塗布した。この時のフイルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に70℃の乾燥ゾーンに5秒間滞留させて乾燥した。
・アルカリ溶液(S−1)組成
水酸化カリウム 8.6質量部
水 24.1質量部
イソプロパノール 56.3質量部
界面活性剤(K−1:C1429O(CH2CH2O)20H) 1.0質量部
プロピレングリコール 10.0質量部
消泡剤サーフィノールDF110D
(商品名、日信化学工業(株)製) 0.010質量部
(親水化表面処理後のフィルムの特性)
作成した各フィルムについて、以下の試験を行いアルカリ処理の効果を確認した。その結果を表2に示す。
(水との接触角)
接触角計(協和界面科学(株)製、CA−X型接触角計)を用いて、乾燥状態(20℃/65%RH)で液体に純水を使用して直径1.0mmの液滴を針先に作り、これをフィルムの表面に接触させて液滴を作った。固体液体が接する点における液体表面に対する接線と固体表面がなす角で、液体を含む方の角度を接触角とした。
各フィルムについて、1平方メートルの面内において両端及び中央の9箇所の接触角を測定し、上限値と下限値を記載した。ただし、±1度の範囲は測定におけるばらつきの範囲であり、その中央値で示した。
(表面の面状:異物、濁り)
鹸化処理フイルムから全幅で長手方向に1mの長さに切りだし、この試料にシャウカステン上で光を透過させながら目視及びルーペで異物及び濁りの有無を観察し、以下の基準を用いて評価した。
〇:異物、濁りの発生が全く認められない(10人で評価し、一人も認識できないレベル)
△:異物、濁りが弱く発生する(10人で評価し、2〜5人が認識するレベル)
×:異物、濁りが強く発生する(10人で評価し、6人以上が認識するレベル)
Figure 2005092114
表2に示すように、実施例1のシート(FS−1)は、1平方メートルの面内おいて水との接触角は34度であり、面内のバラツキが見られない均一な処理であった。面状もフィルム全面において異物や濁りの発生は認められなかった。表面凹凸が大きな形状の比較例1(FSR1−1)は、1平方メートルの面内おける水との接触角のバラツキが大きくなり、35から43度となった。また、面状も悪化し、特に異物が多く見られた。また比較例(FSR1−2、FSR1−3)も、鹸化処理が均一でなく水との接触角も著しくばらついた。
以上のように、実施例1の本発明の光学補償シートにおける透明支持体は、面内を均一に親水化されてなるものであることが明らかになった。
(配向膜の形成)
この親水化表面処理して得られた各透明支持体上に、下記の組成の配向膜塗布液(O−1)をロッドコーターで28ml/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
乾燥後の塗布面のpHを測定した所、その値は4.0であった。また、塗布幅方向での中央と左右両端の位置のpH値は3.95〜4.10の範囲であった。
次に、親水化表面処理した各フィルムの長手方向にラビング処理を実施した。
・配向膜塗布液(O−1)組成
下記化1で表される変性ポリビニルアルコール 20質量部
クエン酸 0.06質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
Figure 2005092114
そして、得られた配向膜の形成された透明支持体について配向膜の密着性の試験を以下のようにして行った。その結果を表3に示す。
(配向膜の密着性の評価法)
配向膜層表面に、JIS K−5400の碁盤目テープ法に準拠し、規定のカッターナイフ、カッターガイドを用いて1mm×1mmのクロスハッチ(升目)を100個入れ、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間放置した後、規定のセロハン粘着テープをはりつけ消しゴムでこすって塗膜に付着する。テープを付着後2分後に塗面に直角方向に引き剥がしたときに配向膜が透明支持体から剥がれた升目の数を計測することで評価した。
◎:100升において剥がれが全く認められなかったもの
○:100升において剥がれが認められたものが2升以内のもの
△:100升において剥がれが認められたものが10〜3升のもの
×:100升において剥がれが認められたものが10升をこえたもの
(光学異方性層の形成)
次に、配向膜が形成された透明支持体について、以下のようにして光学異方性層を形成し、光学補償シートを得た。
すなわち、下記の組成のディスコティック液晶塗布液(DA−1)を#4のワイヤーバーコーターで配向膜上に塗布し、125℃の高温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶を配向させた後、高圧水銀灯を用いてUVを500mJ/cm2照射し、室温まで放冷して、表3に記載の各光学補償シートを作成した。
・ディスコティック液晶塗布液(DA−1)
下記化2に示すディスコティック液晶DLC−A 9.1質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート
(V#360、商品名、大阪有機化学(株)) 0.9質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、商品名、イーストマンケミカル製)0.2質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、商品名、イ−ストマンケミカル製) 0.05質量部
下記化2に示すフッ素化合物(F−1) 1.3質量部
イルガキュアー907(商品名、チバガイギー社製) 3.0質量部
カヤキュアーDETX(商品名、日本化薬(株)製) 0.1質量部
メチルエチルケトン 29.6質量部
Figure 2005092114
各フィルムの光学異方性層の厚さは、各々1.6μmであった。
また、得られた各光学補償シートについて、以下の性能評価試験を行った。その結果を表3に示す。
(光学補償シートの性能評価試験)
(密着性)
表2記載の光学補償シートKS−1、KSR−1〜KSR−3を、アクリル系接着剤を用いてガラス板に貼りつけ、90℃で20時間保存した。アクリル系接着剤は液晶表示装置の組み立てに、ガラス板は液晶セルに用いられるものと同じである。ガラス板から光学補償シートを垂直方向に剥がして、剥離残りが生じた部分を調べることで、密着性を評価した。
◎ :全く発生しない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)
○ :わずかに発生する(10人が評価し、1〜3人が認識するレベル)
△ :弱く発生する(10人が評価し、3〜5人が認識するレベル)
× :強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)
(透過光ムラ)
各光学補償シートを、クロスニコルス配置した2枚の偏光板の間に挟み、透過光のムラを目視で観察し官能評価を行った。
○ :全く発生しない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)
△ :弱く発生する(10人が評価し、1〜5人が認識するレベル)
× :強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)
下記表3に示す結果から明らかなように、本発明の光学補償シートKS−1は密着性が充分であり、且つ透過光ムラが見られない極めて良好なものであった。

(偏光膜の作製)
平均重合度4000、鹸化度99.8mol%のPVAを水に溶解し、4.0%の水溶液を得た。
この溶液をテーパーのついたダイを用いてバンド流延して乾燥し、延伸前の幅が110mmで厚みは左端が120μm、右端が135μmになるように製膜して、フィルムを得た。
このフィルムをバンドから剥ぎ取り、ドライ状態で45度方向に斜め延伸してそのままヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム50g/Lの水溶液中に30℃で1分間浸漬し、次いでホウ酸100g/L、ヨウ化カリウム60g/Lの水溶液中に70℃で5分間浸漬し、さらに水洗槽で20度で10秒間水洗したのち80℃で5分間乾燥してヨウ素系偏光膜(HF−01)を得た。偏光膜は、幅660mm、厚みは左右とも20μmであった。
(偏光板の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記の角光学補償シート(KS−1、KSR−1〜1−3)をセルロースアシレートフィルム(CA−1)面で偏光膜(HF−01)の片側に貼り付けた。また、厚さ80μmのセルローストリアセテートフィルム(TD−80UF:富士写真フイルム(株)製)に実施例1のアルカリ溶液による鹸化処理と同様にして片面を鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
偏光膜の透過軸とセルロースアシレートフィルム(CA−1)の遅相軸とは平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と上記セルローストリアセテートフィルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板(HB−1)及び(HBR−1)〜(HBR−3)を作製した。
(液晶表示装置)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(6E−A3、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記に作製した各偏光板を、実施例1で作製した光学補償シートが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
得られた液晶表示装置について以下の評価試験を行った。その結果を表3に示す。
(描画画像のムラ評価)
このようにして作製した液晶表示装置について、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の描画ムラを目視で観察した。
○ :全く発生しない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)
△ :弱く発生する(10人が評価し、1〜5人が認識するレベル)
× :強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)
(描画画像のコントラスト及び視野角)
液晶表示装置の液晶セルに、白表示電圧2V、黒表示電圧6Vを印加し、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。さらに左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べた。
Figure 2005092114
表3に示す結果から明らかなように、セルロースアシレートフィルムKS−1を透明支持体として用いてなる本発明の光学補償シートを用いた液晶表示装置は、何れも画面全面が曇りの無い鮮明で高い輝度の画像であり且つコントラスト及び視野角の優れた描画画像が得られた。すなわち、視認性が良好なものであった。一方、比較用フィルムKSR−1及びKSR−3を用いたものは、画面全面にわたりムラが見られ実用に供するには問題となるものであった。
以上の目視観察結果より、本発明の光学補償シートを用いたものは、良好な光学特性を有し、且つそれを付設した液晶画像装置は優れた描画性を有することがわかる。
[実施例2]
(透明支持体の作製)
(微粒子分散物(RL−2)の調整)
下記の組成からなる混合物及びビーズ径0.3mmのジルコニアビーズを、ダイノミル分散機で投入し湿式分散して体積平均粒径65nmになるよう分散を行った。得られた分散物を200メッシュのナイロン布でビーズを分離して、微粒子分散物(RL−2)を調製した。
得られた分散物の分散粒子径は、走査型電子顕微鏡で測定した。また、分散物の粒度分布を測定した(レーザー解析・散乱粒子径分布測定装置LA−920.堀場製作所製)結果、粒径300nm以上の粒子は0%であった。
・微粒子分散物(RL−2)組成
疎水性シリカ(商品名「AEROSIL972」メチル基変性体、
一次粒径16nm:日本アエロジル(株)) 2.20質量部
酢化度59.9%(6位置換度0.90)のセルローストリアセテート
2.00質量部
モノドデシルフォスフェート 0.22質量部
(微粒子化分散助剤)
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.08質量部
酢酸メチル 71.0質量部
メタノール 6.2質量部
アセトン 6.1質量部
エタノール 6.1質量部
1−ブタノール 6.1質量部
(セルロースアシレート溶液(A−2)の調整)
下記組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱撹拌して、セルロースアシレート溶液を調製した。
・セルロースアシレート溶液(A−2)組成
酢化度59.9%(6位置換度0.90)のセルローストリアセテート
100質量部
トリフェニルホスフェート 7.9質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
下記化3に示すUV剤:UV-1 1.0質量部
下記化3に示すUV剤:UV-2 1.0質量部
酢酸メチル 290質量部
メタノール 25質量部
アセトン 25質量部
エタノール 25質量部
1−ブタノール 25質量部
Figure 2005092114
上記のセルローストリアセテート4質量部、下記化4に示すレターデーション調整剤16質量部、酢酸メチル74.4質量部、メタノール6.4質量部、アセトン6.4質量部、エタノール6.4質量部及びi−ブタノール6.4質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション調整剤溶液(RE−2)を調製した。
Figure 2005092114
セルロースアシレート溶液464質量部に微粒子分散物10.5質量部を加えて十分に攪拌し、次にレターデーション調整剤溶液36質量部を混合し、充分に攪拌した後に室温(25℃)にて3時間放置し、得られた不均一なゲル状溶液を、−70℃にて6時間冷却した後、50℃に加温・攪拌して完全に溶解したドープを得た。
次に得られたドープを50℃にて、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にてフィルター濾過及び脱泡を行ってドープを調製した。
そして、回転ドラム流延機を用いてドープを流延した。
ドラムはハードクロム鍍金を施しその表面は算術平均粗さ(Ra)が0.010μm、十点平均粗さ(Rz)は0.016μmとした、直径200mm、幅2500mmのものを用いた。
流延方法は実施例1記載のバンド流延と同様の条件で行った。ドラム面上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、残留溶剤量が50質量%のフィルムを剥ぎ取った後、140℃の乾燥風で、残留溶剤量が40質量%のフィルムをテンターを用いて幅方向に17%延伸し、延伸後の幅のまま130℃で30秒間保持した。この後、130℃の乾燥風で20分間乾燥し、残留溶剤量が0.25質量%のセルロースアシレートフィルム(CA−2)を、厚さ60μm、長さ1000m、幅1.34mの巻きロール形態で製造した。
得られたセルロースアシレートフィルム(CA−2)の波長590nmにおけるレターデーション値(Re)は29nm、波長590nmにおけるレターデーション値(Rth)は101nmであった。
得られた長尺ロールのセルロースアシレートフィルム(CA−2)の表面凹凸形状について、フィルムのドラム面側(外面)とドラム面の反対側(内面)の両面を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2005092114
表4に示す結果から明らかなように、得られたフィルムの表面の形状は両面ともに形状の揃ったものであった。また外面と内面の(Ra)及び(Ry)の各比は何れも1.5未満でその差は小さく良好であった。
(アルカリ鹸化処理)
次に、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度30℃に昇温した後に、下記内容のアルカリ溶液(S−2)をロッドコーターを用いて塗布量10cc/m2でフィルム内面側表面に塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に8秒滞留するようにした。続けて、同じくロッドコーターを用いて純水を3cc/m2塗布した。この時のフイルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に70℃の乾燥ゾーンに5秒間滞留させて乾燥した。
得られたフィルム表面の水との接触角34度で、表面の面状はムラの無い良好なものであった。
・アルカリ溶液(S−2)組成
水酸化カリウム 5.0質量部
水 21.8質量部
イソプロパノール 65.2質量部
エチレングリコール 8.0質量部
消泡剤プルロニックTR70(旭電化工業(株)製) 0.01質量部
(配向膜の形成)
次に、下記組成の配向膜塗布液(O−2)を用いた他は実施例1における配向膜の形成と同様にして配向膜塗布液の塗布・乾燥を行った後、ラビング処理を実施した。
・配向膜塗布液(O−2)
下記化5に示す変性ポリビニルアルコール 20質量部
下記化5に示すカルボン酸(A) 0.06質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
Figure 2005092114
(光学異方性層の形成)
実施例1で使用したディスコティック液晶塗布液(DA−1)において、液晶DLC−A及びフッ素系化合物(F−1)の代わりに、下記化6に示す液晶DLC−B、9.2質量部、及び下記化6に示すフッ素系化合物(F−2)1.4質量部を用いた他は塗布液DA−1と同一の内容の塗布液DA−2を用いて、#4のワイヤーバーコーターで塗布し、125℃の高温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶を配向させた後、高圧水銀灯を用いてUVを500mJ/cm2照射し、室温まで放冷して、光学補償シートKS−2を作成した。
Figure 2005092114
光学異方性層の厚さは、1.7μmであった。長尺ロール形態で製造された光学補償シートKS−2の密着性及び面状性を実施例1と同様にして評価した所、実施例1と同等の良好なものであった。
(偏光板の作製)
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、光学補償シートKS−2をセルロースアシレートフィルム(CA−2)面で偏光膜(HF−01:実施例1記載)の片側に貼り付けた。また、厚さ80μmのセルローストリアセテートフィルム(TD−80UF:富士写真フイルム(株)製)に実施例1のアルカリ溶液による鹸化処理と同様にして片面を鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。
偏光膜の透過軸とセルロースアシレートフィルム(CA−2)の遅相軸とは平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と上記セルローストリアセテートフィルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして偏光板(HB−2)を作製した。
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。Δn(屈折率neとnoの差)が0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。液晶セルの大きさは20インチであった。
作製したベンド配向セルを挟むように、上記で作製した偏光板(HB−2)を二枚貼り付けた。偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示2V、黒表示5Vのノーマリーホワイトモードとした。透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比として、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。
視野角の評価尺度として、視野の画像のコントラスト比が10以上を維持し、かつ黒側の階調反転の起こらない(即ち黒表示(L1)と次のレベル(L2)の間で反転が起こらない)範囲の角度の値を用いた。
その結果は160°となり、良好であった。
(液晶表示装置パネル上でのムラ評価)
実施例2の液晶表示装置の表示パネルを全面中間調に調整し、ムラを評価した。実施例2は、どの方向から見てもムラは観察されなかった。
(TN液晶セルでの評価)
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC20C1S、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記偏光板(HB−2)を、光学補償シート(KS−2)が液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で画像面内の最小となる視野角を測定した。
その結果は、80°以上となり、良好であった。
[実施例3]
(セルロースアシレートフイルムの作製)
(セルロースアセテート原液溶液の調製)
表5に示す組成のセルロースアセテート原液溶液(元ドープ液)調製した。溶解はミキシングタンクに原料を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解した。
Figure 2005092114
(レターデーション調整剤溶液(RE−3)の調製)
下記化7に示すレターデーション調整剤11.6質量部、酢酸メチル質量部、メタノール質量部、アセトン質量部、n−ブタノール質量部を別のミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション調整剤溶液(RE−3)を調製した。
Figure 2005092114
(内層用及び外層用セルロースアセテートドープ溶液の調製)
表6に示す組成物を、元ドープ液にレターデーション調製剤溶液(RE−3)、更に微粒子分散物(RL−2)の順序で攪拌下にミキシングタンクに投入、攪拌、混合し、内層用、外層用セルロースアセテートドープ液を調製した。セルロースアセテート100質量部に対するレターデーション調整剤及び微粒子分散物の各添加量は、表6に示したとおりである。
得られたドープを50℃にて、絶対ろ過精度0.01mmのフィルター(東洋濾紙(株)製、#63)および絶対ろ過精度0.0025mmのフィルター(ポール社製、FH025)にてろ過した。
Figure 2005092114
3層共流延ダイを用いて、ろ過したドープを内層用ドープが内側に外層用ドープが両外側になるように配置してバンド流延機を用いて重層流延した。バンド流延機は実施例1と同様のものを用いた。内層厚み48μm、両外層厚みが6μmとなるようにドープ吐出量を調整し、流延・乾燥の条件は実施例1と同様にし、テンターを用いての延伸倍率を16%で横延伸し、延伸後の幅のまま130℃で30秒間保持し、長さ3000m、幅1.2mの巻きロール形態のセルロースアシレートフイルム(CA−3)を作製した。Reは14nm、Rthは80nmであった。
(セルロースアシレートフィルムの特性)
得られた透明支持体の獲得性を評価し、結果を表7に示す。
Figure 2005092114
(セルローストリアセテートフイルムのケン化処理)
上記のセルローストリアシレートフイルム(CA−3)の内面側表面上に、1.0モル/リットルの水酸化カリウム溶液(溶剤:イソプロピルアルコール/プロピレングリコール/水=75/13/12質量%)を#6バーで塗布し、40℃で10秒間加熱した後、濡れたままの塗布面に#1.6バーで水を塗布し、すぐに25℃の洗浄水500cc/m2をノズルから吹き付け、エアナイフでフイルム表面の洗浄水を吹き飛ばす処理を三回連続して行い、100℃の温風で乾燥して、表面が鹸化されたセルローストリアシレートフイルム(FS−3)を作製した。
得られたフィルム表面の水との接触角33度で、表面の面状はムラの無い良好なものであった。
(配向膜の形成)
得られた透明支持体の片面に、下記処方の配向膜塗布液(O−3)を、#14のワイヤーバーコーターで塗布し、60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で160秒乾燥して、配向膜を設けた長尺ロール状の透明支持体を作製した。次に、上述の配向膜を設けた長尺ロール状のセルロースアセテートフイルムの遅相軸方向となす角度が45゜となる方向にラビング処理を実施した。
・配向膜塗布液(O−3)処方
下記化8に示す変性ポリビニルアルコール 19質量部
下記化8に示すカルボン酸化合物A−2 0.075質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド 1質量部
Figure 2005092114
(光学異方性層の形成)
SUS製のタンク中に、下記の処方のディスコティック液晶塗布液(DA−3)を調製した。
・光学異方性層塗布液(DA−3)組成
下記化9に示すディスコティック液晶性分子(DLC−C) 42質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.92質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.92質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.23質量部
下記化9に示す含フッ素化合物(F−3) 4.2質量部
光重合開始剤(イルガキュア−907、チバガイギー社製) 1.40質量部
増感剤 (カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 0.45質量部
メチルエチルケトン 111質量部
Figure 2005092114
上記透明支持体に形成された配向膜上に、上記塗布液を、#3のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の熟成ゾーンで2分間加熱し、ディスコティック液晶性分子を配向させた。次に、130℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック液晶性分子を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を有する光学補償シート(KS−3)を作製した。
得られたシートの性能を実施例2と同様にして調べた所、実施例2の光学補償シートと同等の良好な性能が得られた。
(偏光膜(HF−02)の作製)
PVAフイルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフイルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、テンター出口におけるシワ、フイルム変形は観察されなかった。
得られた偏光膜の550nmにおける透過率43.7%、偏光度99.97%であった。
(反射防止フィルムの作製)
下記処方の低屈折率層塗布液を攪拌、調製し、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過した後、フジタック(TD80U、富士写真フイルム(株)製)上にバーコーターで塗布し、80℃で5分乾燥後、120℃で10分間加熱してポリマーを架橋させ、厚さ0.1μmの低屈折率層を形成し、反射防止フイルムを作製した。
・低屈折率層塗布液組成
熱架橋性含フッ素ポリマー 210質量部
(JN−7228、固形分濃度6%、JSR(株)製)
シリカゾル(MEK−ST) 18質量部
(平均粒径10〜20nm、固形分濃度30wt%、日産化学(株)製)
メチルエチルケトン 200質量部
この反射防止フイルムと、上記の通り作製した光学異方性層を有する光学補償シートとを液温度が55℃の1.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液中に1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸および水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアセテート側にポリビニルアルコール系粘着材を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光膜(HF−02)の両側に貼り合わせさらに80℃で乾燥して偏光板を作製した。
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。セルギャップにΔn(波長550nm)が0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
(ベンド配向モード透過型液晶表示装置の作製)
作製したベンド配向液晶セルを挟むように、作製した偏光板(反射防止フイルム、偏光膜、光学補償シートよりなる)の光学補償シートの光学異方性層上にアクリル系粘着剤をつけ、液晶セルのラビング方向と光学補償シートのラビング方向とが反平行となる様にして貼り合せ、ベンド配向モードの透過型液晶表示装置を作製した。
この液晶表示装置の液晶セルに、白表示電圧2V、黒表示電圧6Vを印加し、測定機(EZ-Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。さらに左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べた。
本発明の液晶表示装置は優れた正面コントラスト比が200,及び視野角160°を示し、良好なコントラストと広い視野角を有している。加えて、表面に曇りや異物のない優れた表示品位の液晶表示装置であることが確認された。

Claims (14)

  1. 平均一次粒径が80nm以下の微粒子を少なくとも含有する膜厚が20μm以上80μm以下の透明支持体上に、配向膜および光学異方性層をこの順序で積層して成る光学補償シートであって、
    該透明支持体の配向膜側の表面がJIS B0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0002μm以上0.1μm以下、十点平均粗さ(Rz)が0.0002μm以上0.3μm以下であり、及び最大高さ(Ry)が0.002μm以上0.5μm以下であり、該透明支持体の式(I)、(II)で定義されるReの値が2nm以上200nm以下であり、Rthの値が50nm以上400nm以下の範囲であることを特徴とする光学補償シート。
    (I) Re=(nx−ny)×d
    (II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
    [式中、nxは、透明支持体面内の遅相軸方向の屈折率であり;nyは、透明支持体面内の進相軸方向の屈折率であり;nzは、透明支持体の厚み方向の屈折率であり;そしてdは、透明支持体の厚さである]。
  2. 前記の透明支持体の配向膜側の表面が、算術平均粗さ(Ra)と十点平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)が0.1以上1以下、JISB0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の平均間隔(Sm)が0.001μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の光学補償シート。
  3. 前記透明支持体が、その長さが100m以上5000m以下であり且つ幅が0.7m以上2m以下の長尺品であって、幅方向のカールが−10/m〜+10/mであり、且つJIS K7128−2:1998に基づく引裂き強度が2g以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学補償シート。
  4. 前記透明支持体が、その遅相軸角度の面内の平均の絶対値が0度以上3度以下であり、且つ遅相軸角度の標準偏差が0度以上1.5度以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学補償シート。
  5. 前記透明支持体が、酢化度55.0乃至62.5%の範囲にあるセルロースアシレート、前記微粒子及び少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物とを各々少なくとも1種含有するセルロースアシレートフイルムからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学補償シート。
  6. 前記透明支持体が、流延工程を有する溶液流延方法により製膜されるセルロースアシレートフィルムであって、該流延工程のドープを流延する金属支持体は、その表面の算術平均粗さ(Ra)が0.001μm以上0.015μm以下であり、その表面の十点平均粗さ(Rz)が0.001μm以上0.05μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学補償シート。
  7. 前記透明支持体の配向膜側と反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Ry)が、それぞれ、配向膜側表面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Ry)の3倍以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学補償シート。
  8. 前記の透明支持体がセルロースアシレートフイルムであって、該セルロースアシレートフイルムが、セルロースアシレートを実質的に非塩素系の溶剤に溶解してセルロースアシレート溶液を調製する溶液調製工程、セルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフイルムを製膜する製膜工程、及び、セルロースアシレートフイルムを延伸する延伸工程により製造されたフィルムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学補償シート。
  9. 前記の実質的に非塩素系の溶剤が、炭素原子数3以上12以下のエーテル、ケトン、エステルから選ばれる少なくとも1種の有機溶媒と、アルコールとの混合溶剤であり、全溶剤中のアルコールの割合が2〜40質量%の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の光学補償シート。
  10. 前記透明支持体が、沸点が60〜120℃の水溶性有機溶媒、並びに界面活性剤及び/又は相溶化剤を少なくとも含有するアルカリ溶液により表面処理されたものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光学補償シート。
  11. 前記透明支持体がセルロースアシレートフィルムであり、該セルロースアシレートフィルムを流延工程を有する溶液流延方法により製膜することにより前記透明支持体を製造する請求項1記載の光学補償シートの製造方法であって、
    前記流延工程のドープを流延する金属支持体は、その表面の算術平均粗さ(Ra)が0.001μm以上0.015μm以下であり、その表面の十点平均粗さ(Rz)が0.001μm以上0.05μm以下であることを特徴とする光学補償シートの製造方法。
  12. 偏光膜、及びその両側に配置された2枚の透明保護膜からなる偏光板であって、該透明保護膜の一方が請求項1〜10のいずれかに記載の光学補償シートを用いたことを特徴とする偏光板。
  13. 液晶セル、及びその両側に配置された2枚の偏光板からなり、偏光板が偏光膜、及びその両側に配置された2枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、液晶セルと偏光膜との間に配置される2枚の透明保護膜のうち少なくとも一方が請求項1〜10のいずれかに記載の光学補償シートを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
  14. 前記液晶セルがTNモード、VAモード、MVAモード、n−ASMモードまたはOCBモードの液晶セルであることを特徴とする請求項13に記載の液晶表示装置。
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