JP2005058906A - 高分子多孔質膜、血液浄化器および高分子多孔質膜の製造方法 - Google Patents
高分子多孔質膜、血液浄化器および高分子多孔質膜の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】疎水性高分子および親水性高分子よりなる多孔質膜において、疎水性高分子が有する優れた機械的強度を持ちながら、膜全体の水ぬれ性が良く、微細孔表面を含む多孔質膜全表面における汚れ物質の付着が少ない、または蛋白質の吸着が少ない高分子多孔質膜を提供する。
【解決手段】疎水性高分子骨格の周囲が、非常に薄い親水性高分子リッチ層で被覆された多層構造を有することを特徴とする高分子多孔質膜。
【選択図】なし
【解決手段】疎水性高分子骨格の周囲が、非常に薄い親水性高分子リッチ層で被覆された多層構造を有することを特徴とする高分子多孔質膜。
【選択図】なし
Description
本発明は流体の限外濾過、精密濾過に有効に利用することができる高分子多孔質膜、血液浄化器およびこの高分子多孔質膜の製造方法に関する。
高分子多孔質膜は、工業廃水処理、工業分野で利用される工程水の処理、超純水の製造等の工業分野、血液透析、血液濾過などの医療分野等に幅広く利用されている。
中でもポリスルホン系多孔質膜は、熱安定性、耐薬品性に優れており、さらに成型加工性、製膜性、機械的強度にも優れることから、上記の膜材料として好ましく用いられている。
しかし、水処理や血液処理の分野では、濾過に供される液体を効率よく膜と接触させるために、多孔質膜が水ぬれ性、すなわち親水性を有することが望ましい事が知られている。
水処理の分野では、多孔質膜の長期継続使用の要求に伴い、防汚性の向上が望まれている。膜全体の防汚性を向上させるには、微細孔表面を含む全膜表面を親水化することが必要である。
中でもポリスルホン系多孔質膜は、熱安定性、耐薬品性に優れており、さらに成型加工性、製膜性、機械的強度にも優れることから、上記の膜材料として好ましく用いられている。
しかし、水処理や血液処理の分野では、濾過に供される液体を効率よく膜と接触させるために、多孔質膜が水ぬれ性、すなわち親水性を有することが望ましい事が知られている。
水処理の分野では、多孔質膜の長期継続使用の要求に伴い、防汚性の向上が望まれている。膜全体の防汚性を向上させるには、微細孔表面を含む全膜表面を親水化することが必要である。
血液透析の分野では、同じ中空糸膜を透析に繰り返し用いるという場合や、さらには、急性腎不全の治療に用いられる持続緩徐式血液濾過透析において、1日ないし数日間もの間、連続して治療する場合がある。このような場合、膜面積あたりの血液中の不要成分の分離処理量が大きくなるため、血液中に含まれる各種の蛋白質が膜全体へ吸着し、蓄積して該処理量が低下することが問題となる。この問題解決の場合には、微細孔表面を含む膜全体が、蛋白吸着を抑制する表面、すなわち親水性の表面を有していることが望まれる。
また、透析に用いる中空糸膜を使用前に蒸留水等でプライミングする場合にも、膜全体が親水化されていることによって、短時間で十分に膜表面を濡らすことができる。
さらには、中空糸全体の細孔表面が親水化されることによって、透析液が中空糸内部へ移行する際の抵抗が低減されるため、内部濾過の促進にも有効である。
また、透析に用いる中空糸膜を使用前に蒸留水等でプライミングする場合にも、膜全体が親水化されていることによって、短時間で十分に膜表面を濡らすことができる。
さらには、中空糸全体の細孔表面が親水化されることによって、透析液が中空糸内部へ移行する際の抵抗が低減されるため、内部濾過の促進にも有効である。
これまでに、疎水性高分子の多孔質膜に親水性を付与する方法(親水化の方法)がいくつか開示されている。
例えば、特許文献1では、湿式製膜法を用いて、ポリスルホン系多孔質膜をポリビニルピロリドン等の親水性高分子で親水化する方法が開示されている。特許文献1では、親水性高分子の膜内での分布を評価しているが、これはミクロンオーダーの分布を特定したに過ぎず、細孔表面におけるナノメーターオーダーの厚さの親水性高分子の存在状態はまったく不明であり、表面の親水性を改善する上で十分情報が得られているとは言えなかった。このため、十分な親水性を付与するために親水性高分子のバルクの好ましい含有率を12〜16重量%と多くする必要があったが、そうすると、膜中のPVPが溶出したり、ポリスルホン系多孔質膜が本来有する優れた機械的強度を大幅に低下させてしまう懸念があった。
一方、特許文献2では、ポリオレフィン多孔質膜の親水化の方法として、親水化剤の溶液に多孔質膜を浸せきするなどして保持させる方法が開示されている。
この技術においては、親水化剤の溶液濃度を低下させることによって保持量を低下させることが可能であるが、親水化剤溶液と多孔質膜基材とのぬれ性が親水化剤の付与の均一性に大きく影響するため微細孔表面の全てを親水化剤で被覆することは難しい。
例えば、特許文献1では、湿式製膜法を用いて、ポリスルホン系多孔質膜をポリビニルピロリドン等の親水性高分子で親水化する方法が開示されている。特許文献1では、親水性高分子の膜内での分布を評価しているが、これはミクロンオーダーの分布を特定したに過ぎず、細孔表面におけるナノメーターオーダーの厚さの親水性高分子の存在状態はまったく不明であり、表面の親水性を改善する上で十分情報が得られているとは言えなかった。このため、十分な親水性を付与するために親水性高分子のバルクの好ましい含有率を12〜16重量%と多くする必要があったが、そうすると、膜中のPVPが溶出したり、ポリスルホン系多孔質膜が本来有する優れた機械的強度を大幅に低下させてしまう懸念があった。
一方、特許文献2では、ポリオレフィン多孔質膜の親水化の方法として、親水化剤の溶液に多孔質膜を浸せきするなどして保持させる方法が開示されている。
この技術においては、親水化剤の溶液濃度を低下させることによって保持量を低下させることが可能であるが、親水化剤溶液と多孔質膜基材とのぬれ性が親水化剤の付与の均一性に大きく影響するため微細孔表面の全てを親水化剤で被覆することは難しい。
このように従来の技術では、少ない親水化剤の量で微細孔表面を被覆することは困難であった。言い換えれば、多孔質膜の骨格となる疎水性高分子の機械的強度に匹敵する機械的強度を維持しながら、微細孔表面全体に十分な親水性を付与することは困難であった。
特開平10−180058号公報
特許第3130996号公報
H.AdeらScience,Vol.258,p972(1992)
本発明は、疎水性高分子および親水性高分子よりなる多孔質膜において、疎水性高分子が有する優れた機械的強度を維持しながら、膜全体の水ぬれ性が良く、微細孔表面を含む多孔質膜全表面における汚れ物質の付着が少ない、または蛋白質の吸着が少ない高分子多孔質膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、微細孔表面を含む多孔質膜全表面が非常に薄い親水性高分子リッチな層で被覆されている場合に、上記の目的を達成することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の内容を包含するものである。
(1) 疎水性高分子および親水性高分子よりなる多孔質膜において、疎水性高分子骨格の周囲が親水性高分子リッチ層で被覆された多層構造を有することを特徴とする高分子多孔質膜。
(2) 親水性高分子リッチ層の厚さが10〜200nmであることを特徴とする前記(1)に記載の高分子多孔質膜。
(3) 疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の高分子多孔質膜。
(4) 親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高分子多孔質膜。
(5) 多孔質膜が中空糸であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の高分子多孔質膜。
(6) 多孔質膜が、血液濾過または血液濾過透析用または持続緩徐式血液濾過透析用のいずれかであることを特徴とする前記(5)に記載の高分子多孔質膜。
(7) 前記(5)または(6)に記載の高分子多孔質膜が筒状プラスチック容器内に挿填され、束の両端部が封止剤で包埋された血液浄化器。
(8) ポリスルホン系高分子(PSf)の骨格がポリビニルピロリドン(PVP)で被覆された多層構造を有する多孔質膜の製造方法であって、PSfに対するPVPの混和重量比率が0.2〜0.4の紡糸原液を、紡口の吐出温度60〜90℃、紡口から凝固浴までのエアーギャップ内の温度40〜60℃で紡糸し、60℃より大きく90℃以下の凝固浴で凝固させる多孔質膜の製造方法。
すなわち、本発明は以下の内容を包含するものである。
(1) 疎水性高分子および親水性高分子よりなる多孔質膜において、疎水性高分子骨格の周囲が親水性高分子リッチ層で被覆された多層構造を有することを特徴とする高分子多孔質膜。
(2) 親水性高分子リッチ層の厚さが10〜200nmであることを特徴とする前記(1)に記載の高分子多孔質膜。
(3) 疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の高分子多孔質膜。
(4) 親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高分子多孔質膜。
(5) 多孔質膜が中空糸であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の高分子多孔質膜。
(6) 多孔質膜が、血液濾過または血液濾過透析用または持続緩徐式血液濾過透析用のいずれかであることを特徴とする前記(5)に記載の高分子多孔質膜。
(7) 前記(5)または(6)に記載の高分子多孔質膜が筒状プラスチック容器内に挿填され、束の両端部が封止剤で包埋された血液浄化器。
(8) ポリスルホン系高分子(PSf)の骨格がポリビニルピロリドン(PVP)で被覆された多層構造を有する多孔質膜の製造方法であって、PSfに対するPVPの混和重量比率が0.2〜0.4の紡糸原液を、紡口の吐出温度60〜90℃、紡口から凝固浴までのエアーギャップ内の温度40〜60℃で紡糸し、60℃より大きく90℃以下の凝固浴で凝固させる多孔質膜の製造方法。
以上述べたように、本発明によれば、疎水性高分子および親水性高分子よりなる多孔質膜において、疎水性高分子が有する優れた機械的強度を失うことなく、維持しつつ、膜全体の水ぬれ性が良く、微細孔表面を含む多孔質膜全表面における汚れ物質の付着が少ない、または蛋白質の吸着が少ない高分子多孔質膜を得ることができる。
本発明の多孔質膜は、疎水性高分子と親水性高分子から成るが、膜の骨格を形成するのは主として疎水性高分子である。
本発明で言う疎水性高分子としては、ポリスルホン系、ポリエーテルスルホン系、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
これらの素材のうち、ポリスルホン系高分子は、近年、水処理膜や、血液処理膜の素材として利用されており、特に血液処理膜の素材としは、機械的強度・化学的安定性・生物学的安全性という血液処理膜に必要な特性を全て兼ね備えているので好ましく使用できる。
本発明で言うポリスルホン系高分子(以下、PSfと略すことがある)とは、スルホン結合を有する高分子結合物の総称であり、例を挙げると、下記式(1)、(2)に示される繰り返し単位を持つポリスルホン系高分子樹脂が広く市販されており、入手も容易なため好ましく用いられる。
本発明で言う疎水性高分子としては、ポリスルホン系、ポリエーテルスルホン系、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
これらの素材のうち、ポリスルホン系高分子は、近年、水処理膜や、血液処理膜の素材として利用されており、特に血液処理膜の素材としは、機械的強度・化学的安定性・生物学的安全性という血液処理膜に必要な特性を全て兼ね備えているので好ましく使用できる。
本発明で言うポリスルホン系高分子(以下、PSfと略すことがある)とは、スルホン結合を有する高分子結合物の総称であり、例を挙げると、下記式(1)、(2)に示される繰り返し単位を持つポリスルホン系高分子樹脂が広く市販されており、入手も容易なため好ましく用いられる。
式(1)の構造を持つポリスルホン樹脂は アモコ・エンジニアリング・ポリマーズ社より「ユーデル」の商標名で、また、ビー・エー・エス・エフ社より「ウルトラゾーン」の商標名で市販されており、重合度等によっていくつかの種類が存在する。
一方、本発明で言う親水性高分子の素材としては、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレートなどを例示することができる。また、疎水性高分子に親水性高分子を結合させたり、吸着させたもの、あるいは疎水性高分子を化学処理、プラズマ処理させたものなども使用することができ、親水化されていれば特に限定されない。
これらの親水性高分子の中では、親水性に優れる一方で膜表面に比較的残存しやすいポリビニルピロリドンが特に好ましく使用される。
ポリビニルピロリドン(以下、PVPと略すことがある)は、N−ビニルピロリドンをビニル結合させた水溶性の高分子化合物であり、アイ・エス・ピー社より「プラスドン」の商標名で、また、ビー・エー・エス・エフ社より「コリドン」の商標名で市販されており、それぞれいくつかの分子量のものがある。これらについては特に限定しない。
これらの親水性高分子の中では、親水性に優れる一方で膜表面に比較的残存しやすいポリビニルピロリドンが特に好ましく使用される。
ポリビニルピロリドン(以下、PVPと略すことがある)は、N−ビニルピロリドンをビニル結合させた水溶性の高分子化合物であり、アイ・エス・ピー社より「プラスドン」の商標名で、また、ビー・エー・エス・エフ社より「コリドン」の商標名で市販されており、それぞれいくつかの分子量のものがある。これらについては特に限定しない。
膜の構造については、膜厚断面方向において比較的均一な構造をもつものや、あるいは血液と接触する面が緻密で血液接触面から外表面にむかって多孔性が増す構造、あるいは血液と接触する面とその逆面の両面が緻密で、その両面の内側が比較的多孔ないわゆるダブルスキン構造、などが存在するが、本発明ではいずれの構造の膜も使用できる。
本発明でいう親水性高分子リッチ層とは、疎水性高分子がリッチな骨格に比べて親水性高分子の含有量が高い層であって、以下の方法で観察できる層をいう。
骨格とは、言い換えれば、疎水性高分子からなる網目構造のことである。そして親水性高分子リッチ層は、この網目構造の網目表面を覆っている。
また、さらに別の表現をすれば、網目は多孔質膜の小孔のことであり、この小孔の表面を親水性高分子が覆うことによって膜全体の親水性を高めることができる。
親水性高分子リッチ層を観察する手段としては、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと略すことがある)による観察を用いる。適切な染色方法を選択することにより、疎水性高分子と親水性高分子を染め分けて識別することにより、多孔質膜断面における「親水性高分子リッチ層」を観察する。
骨格とは、言い換えれば、疎水性高分子からなる網目構造のことである。そして親水性高分子リッチ層は、この網目構造の網目表面を覆っている。
また、さらに別の表現をすれば、網目は多孔質膜の小孔のことであり、この小孔の表面を親水性高分子が覆うことによって膜全体の親水性を高めることができる。
親水性高分子リッチ層を観察する手段としては、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと略すことがある)による観察を用いる。適切な染色方法を選択することにより、疎水性高分子と親水性高分子を染め分けて識別することにより、多孔質膜断面における「親水性高分子リッチ層」を観察する。
さらに、上記染色法を用いたTEMによって観察され、骨格表面に存在するコントラストの異なる層が、確かに親水性高分子リッチ層であることの確証を得るために、化学状態別の分布測定が可能な、走査型透過X線顕微鏡(以下、STXMと略すことがある)を用いて確認してもよい。
ここで、STXMとは、非特許文献1にあるように、0.1μm以下に集光したX線ビームを用いて、微小領域において炭素のK殻吸収端におけるX線吸収スペクトルを取得することによって微小領域の化学状態を明らかにし、さらにX線ビームを走査することにより炭素の化学状態別の分布測定を行う手段である。
STXMを用いる場合、多孔質断面のSTXM観察において、疎水性高分子の分布測定結果と親水性高分子の分布測定結果を比較して、親水性高分子の分布領域から疎水性高分子の骨格の領域を差し引いて得られる層を「親水性高分子リッチ層」とする。
従って、必ずしも疎水性高分子からなる骨格が純粋に疎水性高分子のみから成るわけではなく、また、親水性高分子リッチ層も親水性高分子のみから成るとは限らず、両者が互いに少量混在している場合もあり得る。
同様に、疎水性高分子骨格の周囲が親水性高分子リッチ層で被覆された「多層構造」についても、境界部分については両者が混在する場合があり得る。
STXMおよびTEM像の観察は、骨格構造が明確に観察される部位であれば、膜の表面近傍で行っても中央部で行っても構わない。
親水性高分子リッチ層の厚さの具体的な評価方法については、実施例の項で述べる。
ここで、STXMとは、非特許文献1にあるように、0.1μm以下に集光したX線ビームを用いて、微小領域において炭素のK殻吸収端におけるX線吸収スペクトルを取得することによって微小領域の化学状態を明らかにし、さらにX線ビームを走査することにより炭素の化学状態別の分布測定を行う手段である。
STXMを用いる場合、多孔質断面のSTXM観察において、疎水性高分子の分布測定結果と親水性高分子の分布測定結果を比較して、親水性高分子の分布領域から疎水性高分子の骨格の領域を差し引いて得られる層を「親水性高分子リッチ層」とする。
従って、必ずしも疎水性高分子からなる骨格が純粋に疎水性高分子のみから成るわけではなく、また、親水性高分子リッチ層も親水性高分子のみから成るとは限らず、両者が互いに少量混在している場合もあり得る。
同様に、疎水性高分子骨格の周囲が親水性高分子リッチ層で被覆された「多層構造」についても、境界部分については両者が混在する場合があり得る。
STXMおよびTEM像の観察は、骨格構造が明確に観察される部位であれば、膜の表面近傍で行っても中央部で行っても構わない。
親水性高分子リッチ層の厚さの具体的な評価方法については、実施例の項で述べる。
本発明でいう「親水性高分子リッチ層で被覆された」状態とは、後述する方法で倍率10万倍の膜断面のTEM像を観察した際に、骨格表面において親水性高分子リッチ層が観測されない部位が0.2μm以上の長さにわたって連続的に存在しないことを言う。
本発明における、「親水性高分子リッチ層」の厚さは、10〜200nmが好ましく、そのうちでも20〜100nmがより好ましく、最も好ましくは20〜50nmである。200nmより大きい場合は、親水性高分子が溶出する恐れがあるため好ましくなく、10nmより小さい場合は十分な親水性が付与できないため好ましくない。
このように、薄い親水性高分子リッチ層で疎水性高分子の骨格の周囲が被覆されることは、糸全体の細孔表面が親水性高分子で被覆されることであり、例えば透析液等の処理液が膜内部へ移行する際に抵抗が低減され、内部濾過の促進に有効である。
本発明における多孔質膜の製膜に際しては、従来から一般的に知られている技術である乾湿式製膜技術を利用できる。以下にPSfとPVPからなる中空糸膜の場合を例にとって詳細に説明する。
まず、PSfとPVPの両方を共通溶媒に溶解し、均一な紡糸原液を調整する。このようなPSf及びPVPを共に溶解する共通溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジオキサン等の多種の溶媒あるいは上記2種以上の混合液からなる溶媒が挙げられる。本発明の紡糸原液は、これらのPSf、PVP及び溶媒とを少なくとも含有していれば良く、紡糸原液には、孔径制御のための水などの他の添加物を加えても良い。
本発明における、「親水性高分子リッチ層」の厚さは、10〜200nmが好ましく、そのうちでも20〜100nmがより好ましく、最も好ましくは20〜50nmである。200nmより大きい場合は、親水性高分子が溶出する恐れがあるため好ましくなく、10nmより小さい場合は十分な親水性が付与できないため好ましくない。
このように、薄い親水性高分子リッチ層で疎水性高分子の骨格の周囲が被覆されることは、糸全体の細孔表面が親水性高分子で被覆されることであり、例えば透析液等の処理液が膜内部へ移行する際に抵抗が低減され、内部濾過の促進に有効である。
本発明における多孔質膜の製膜に際しては、従来から一般的に知られている技術である乾湿式製膜技術を利用できる。以下にPSfとPVPからなる中空糸膜の場合を例にとって詳細に説明する。
まず、PSfとPVPの両方を共通溶媒に溶解し、均一な紡糸原液を調整する。このようなPSf及びPVPを共に溶解する共通溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジオキサン等の多種の溶媒あるいは上記2種以上の混合液からなる溶媒が挙げられる。本発明の紡糸原液は、これらのPSf、PVP及び溶媒とを少なくとも含有していれば良く、紡糸原液には、孔径制御のための水などの他の添加物を加えても良い。
PSfの骨格表面を極めて薄いPVPリッチな層で被覆するためには、乾湿式製膜における両者の相分離状態を制御する事が極めて重要である。相分離状態は、紡糸原液におけるPSfとPVPの混和比率、紡口の吐出温度、紡口から凝固浴までの空気に触れる空間であるエアーギャップ内の温度、凝固浴の温度、凝固浴の組成、紡糸原液の温度等の要因が複雑に絡み合って決まる。中でも凝固浴の組成と凝固浴の温度制御は、好適な膜を得る上で特に重要である。
具体的には、紡糸原液におけるPSfに対するPVPの混和重量比率は0.2〜0.4、紡口の吐出温度は60〜90℃、紡口から凝固浴までのエアーギャップ内の温度は40〜60℃が好ましい。また、凝固浴の温度は60℃より大きく90℃以下が好ましく、この範囲内で温度を下げると親水性高分子の被膜は薄くなる傾向にあり、該温度を制御することで被膜の厚さを調整することになる。
さらに、紡糸液原液の温度は40℃〜80℃が好ましく、55℃〜65℃が更に好ましい。
また、凝固浴の組成は、水またはN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略することがある)の割合が40重量%以下である水とDMAcとの混合液とすることが好ましい。
また、このような紡糸条件により製造された多孔質膜の全高分子量に対する親水性高分子の含有率は、5〜10重量%であること好ましい。
十分に親水化されるためには、5重量%以上必要であり、また、溶出をおさえるためには10%以下である必要がある。
具体的には、紡糸原液におけるPSfに対するPVPの混和重量比率は0.2〜0.4、紡口の吐出温度は60〜90℃、紡口から凝固浴までのエアーギャップ内の温度は40〜60℃が好ましい。また、凝固浴の温度は60℃より大きく90℃以下が好ましく、この範囲内で温度を下げると親水性高分子の被膜は薄くなる傾向にあり、該温度を制御することで被膜の厚さを調整することになる。
さらに、紡糸液原液の温度は40℃〜80℃が好ましく、55℃〜65℃が更に好ましい。
また、凝固浴の組成は、水またはN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略することがある)の割合が40重量%以下である水とDMAcとの混合液とすることが好ましい。
また、このような紡糸条件により製造された多孔質膜の全高分子量に対する親水性高分子の含有率は、5〜10重量%であること好ましい。
十分に親水化されるためには、5重量%以上必要であり、また、溶出をおさえるためには10%以下である必要がある。
このようにして得られた多孔質膜は、公知の方法によって例えば血液浄化器に成型される。すなわち、中空糸状に形成した多孔質膜の束を、透析液等の出入り口となるノズルを有する筒状プラスチック容器に挿填し、中空糸束の両端部をウレタン等の硬化性封止材で包埋する。包埋樹脂が硬化した後、両端部の包埋樹脂の一部を切断して中空糸膜を開口させ、この半製品に、血液の導入、導出用のノズルを有するヘッダーキャップを取り付ければよい。このようにして得た成型品を放射線、高圧蒸気、ガス等によって滅菌処理することにより、医療用途としての本発明の血液浄化器が得られる。
さらに、このような血液浄化器を用いて血液透析を行う場合には、中空糸膜内側に血液を流し、さらにその外側には透析液を流して、血液中の老廃物あるいは有害物を透析液側に拡散あるいは濾過の原理によって除去する。
以下に具体的な実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
まず、本発明で用いる測定方法、評価方法について説明する。
さらに、このような血液浄化器を用いて血液透析を行う場合には、中空糸膜内側に血液を流し、さらにその外側には透析液を流して、血液中の老廃物あるいは有害物を透析液側に拡散あるいは濾過の原理によって除去する。
以下に具体的な実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
まず、本発明で用いる測定方法、評価方法について説明する。
[親水性高分子リッチ層の観察]
本発明でいう、「親水性高分子リッチ層」を観察する手段としては、TEMを用いる。以下に述べるように、適切な染色方法を選択することにより、疎水性高分子と親水性高分子を染め分けて識別することにより、「親水性高分子リッチ層」を観察する。
染色による識別が困難な場合には、STXMを用いる。
観察および測定の詳細を以下に記す。
本発明でいう、「親水性高分子リッチ層」を観察する手段としては、TEMを用いる。以下に述べるように、適切な染色方法を選択することにより、疎水性高分子と親水性高分子を染め分けて識別することにより、「親水性高分子リッチ層」を観察する。
染色による識別が困難な場合には、STXMを用いる。
観察および測定の詳細を以下に記す。
[TEM観察による方法]
乾燥状態の多孔質膜をRuO4の結晶とともに容器に入れて密閉して、3時間RuO4蒸気染色を行ってPVPのみを選択的に染色した後、その膜をエポキシ包埋樹脂に包埋し、ミクロトームを用いて、厚さ0.05μm〜0.1μmの膜断面の切片を切り出し、これをTEM観察用のグリッド上に保持して、TEM観察用サンプルとする。
膜断面のTEM像観察は、日立製作所製 H7100を用いて加速電圧125kVにて行った。
図1は、倍率10万倍のTEM像における厚さ測定概念図である。
TEM像で観察される親水性高分子リッチ層の厚さを、図1を用いて具体的に説明すると、TEM像において、互いに0.2μm以上離れた骨格表面の点を無作為に10ヶ所選択し、その点において骨格表面に観測される、骨格および包埋樹脂のいずれともコントラストが異なる層の厚さを計測し、10ヶ所の平均値を算出したものである。
乾燥状態の多孔質膜をRuO4の結晶とともに容器に入れて密閉して、3時間RuO4蒸気染色を行ってPVPのみを選択的に染色した後、その膜をエポキシ包埋樹脂に包埋し、ミクロトームを用いて、厚さ0.05μm〜0.1μmの膜断面の切片を切り出し、これをTEM観察用のグリッド上に保持して、TEM観察用サンプルとする。
膜断面のTEM像観察は、日立製作所製 H7100を用いて加速電圧125kVにて行った。
図1は、倍率10万倍のTEM像における厚さ測定概念図である。
TEM像で観察される親水性高分子リッチ層の厚さを、図1を用いて具体的に説明すると、TEM像において、互いに0.2μm以上離れた骨格表面の点を無作為に10ヶ所選択し、その点において骨格表面に観測される、骨格および包埋樹脂のいずれともコントラストが異なる層の厚さを計測し、10ヶ所の平均値を算出したものである。
[STXM観察による方法]
乾燥状態の多孔質膜をエポキシ樹脂等の包埋樹脂に包埋し、ミクロトームを用いて厚さ約0.1μmの膜断面の切片を切り出し、これをTEM観察用のグリッド上に保持してSTXM測定用サンプルとする。
膜断面のSTXM像観察は、米国Advanced Light Sourceシンクロトロン放射光施設のビームライン5.3.2に設置されたSTXM装置を用いて行った。まず、親水性高分子、疎水性高分子、包埋樹脂おのおの単独の、炭素のK殻吸収端におけるX線吸収スペクトルを透過法または全電子収量法で測定して標準スペクトルとする。ついで、膜断面サンプルの4μm角の視野を120×120分割し、各点における吸収スペクトルを取得する。この120×120個の吸収スペクトルのデータセットから装置付属の解析ソフトウエアを用いて上記の標準スペクトルを成分とする特異値分解を行う事により各成分の分布を得る。図2はSTXM像における親水性高分子リッチ層の厚さ測定概念図である。
STXM像で観察される親水性高分子リッチ層の厚さを、図2を用いて具体的に説明する。まず、膜断面の一辺4μm角のSTXM像において、疎水性高分子骨格を横切るラインを無作為に10ヶ所引き、そのラインにおける親水性高分子の分布の幅から疎水性高分子の分布の幅を差し引いた値を2で除して、該ヶ所における層の厚さを得る。そして前記10ヶ所すべてについて同様に求め、これらの平均値を算出したものを親水性高分子リッチ層の厚さとする。
乾燥状態の多孔質膜をエポキシ樹脂等の包埋樹脂に包埋し、ミクロトームを用いて厚さ約0.1μmの膜断面の切片を切り出し、これをTEM観察用のグリッド上に保持してSTXM測定用サンプルとする。
膜断面のSTXM像観察は、米国Advanced Light Sourceシンクロトロン放射光施設のビームライン5.3.2に設置されたSTXM装置を用いて行った。まず、親水性高分子、疎水性高分子、包埋樹脂おのおの単独の、炭素のK殻吸収端におけるX線吸収スペクトルを透過法または全電子収量法で測定して標準スペクトルとする。ついで、膜断面サンプルの4μm角の視野を120×120分割し、各点における吸収スペクトルを取得する。この120×120個の吸収スペクトルのデータセットから装置付属の解析ソフトウエアを用いて上記の標準スペクトルを成分とする特異値分解を行う事により各成分の分布を得る。図2はSTXM像における親水性高分子リッチ層の厚さ測定概念図である。
STXM像で観察される親水性高分子リッチ層の厚さを、図2を用いて具体的に説明する。まず、膜断面の一辺4μm角のSTXM像において、疎水性高分子骨格を横切るラインを無作為に10ヶ所引き、そのラインにおける親水性高分子の分布の幅から疎水性高分子の分布の幅を差し引いた値を2で除して、該ヶ所における層の厚さを得る。そして前記10ヶ所すべてについて同様に求め、これらの平均値を算出したものを親水性高分子リッチ層の厚さとする。
[親水性高分子の含有量]
膜全体におけるバルクの親水性高分子の含有量は、溶剤や膜構造保持剤等を除いて高分子材のみにさせ、十分に乾燥させた後、適当な溶媒に均一溶解させてNMRにより測定することができる。この場合、親水性高分子または疎水性高分子に特有のケミカルシフトを有するピークの強度から含有量を算出することができる。
また、蛋白質吸着性の指標としては、血漿蛋白吸着量を用いた。
膜全体におけるバルクの親水性高分子の含有量は、溶剤や膜構造保持剤等を除いて高分子材のみにさせ、十分に乾燥させた後、適当な溶媒に均一溶解させてNMRにより測定することができる。この場合、親水性高分子または疎水性高分子に特有のケミカルシフトを有するピークの強度から含有量を算出することができる。
また、蛋白質吸着性の指標としては、血漿蛋白吸着量を用いた。
[血漿蛋白吸着量]
膜への血漿蛋白吸着量は、次のようにして求めた。まず、下記の膜面積1.5m2のモジュールを用いて、牛血を用いた限外濾過を240分行った後、生理食塩水で1分間洗浄した。次に中空糸状膜を5mm間隔程度に細断し、1.0%ラウリル酸ナトリウムを含む生理食塩水中で攪拌して抽出した血漿蛋白を定量することにより膜重量当たりの蛋白吸着量として算出した。蛋白濃度はBCAプロテインアッセイ(ピアース社製)を使用した。
膜への血漿蛋白吸着量は、次のようにして求めた。まず、下記の膜面積1.5m2のモジュールを用いて、牛血を用いた限外濾過を240分行った後、生理食塩水で1分間洗浄した。次に中空糸状膜を5mm間隔程度に細断し、1.0%ラウリル酸ナトリウムを含む生理食塩水中で攪拌して抽出した血漿蛋白を定量することにより膜重量当たりの蛋白吸着量として算出した。蛋白濃度はBCAプロテインアッセイ(ピアース社製)を使用した。
ポリスルホン樹脂(アモコ・エンジニアリング・ポリマーズ社製)18.0重量%、ポリビニルピロリドン(ビー・エー・エス・エフ社製 K90、重量平均分子量1,200,000)4.3重量%を、N,N−ジメチルアセトアミド77.7重量%からなる溶液を金属不織布製フィルター(SUS303、径1μm)に通して、均一な紡糸原液を作成した。ここで、製膜原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和重量比率は23.9重量%であった。この製膜原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド30重量%と水70重量%の混合溶液からなる内部液とともに、80℃に保持した紡口(2重環状ノズル 0.1mm−0.2mm−0.3mm)から吐出させ、0.96mのエアギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬した。
この時、紡口から凝固浴までを円筒状の筒で囲み、筒の中に水蒸気を含んだ窒素ガスを流しながら、筒の中の湿度を54.5%、温度を51℃にコントロールした。紡速は、80m/分に固定した。ここで、紡速に対するエアギャップの比率は、0.012m/(m/分)であった。中空糸膜厚を45μm、内径を200μmに合わせるように紡糸原液、中空内液の吐出量を調製した。
この時、紡口から凝固浴までを円筒状の筒で囲み、筒の中に水蒸気を含んだ窒素ガスを流しながら、筒の中の湿度を54.5%、温度を51℃にコントロールした。紡速は、80m/分に固定した。ここで、紡速に対するエアギャップの比率は、0.012m/(m/分)であった。中空糸膜厚を45μm、内径を200μmに合わせるように紡糸原液、中空内液の吐出量を調製した。
巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて洗浄することにより膜中の残溶剤を除去した。
次に水に浸漬することによって湿潤状態の中空糸の含水率を310%になるよう調整した後、85℃にて7時間熱風乾燥させた。この中空糸束を所定の容器に挿填し両端をウレタン樹脂で封止することで、膜面積1.5m2の中空糸膜型モジュールを作成した。
また、得られた中空糸膜の断面における親水性高分子リッチ層を上記の方法にて観察した。得られたTEM像を図1に、STXM画像を図2に例示する。また、膜のTEM像における各部位での親水性高分子リッチ層の厚さとその平均値を表1に、膜のSTXM像における各部位での親水性高分子リッチ層の厚さとその平均値を表2に示す。さらに、それらの平均値として得られた親水性高分子リッチ層の厚さと血漿蛋白質吸着量の測定結果を表3に示す。また、血漿蛋白吸着量の測定を行った結果も表3に示す。
本中空糸膜におけるバルクのPVP含有量は7.9重量%であり、中空糸膜の引っ張り強度は18g/filamentであった。
これより、親水性高分子で被覆されず、疎水性高分子のみからなる以下の比較例と引っ張り強度は同等でありながら、かつ、蛋白吸着量は小さいことがわかる。
次に水に浸漬することによって湿潤状態の中空糸の含水率を310%になるよう調整した後、85℃にて7時間熱風乾燥させた。この中空糸束を所定の容器に挿填し両端をウレタン樹脂で封止することで、膜面積1.5m2の中空糸膜型モジュールを作成した。
また、得られた中空糸膜の断面における親水性高分子リッチ層を上記の方法にて観察した。得られたTEM像を図1に、STXM画像を図2に例示する。また、膜のTEM像における各部位での親水性高分子リッチ層の厚さとその平均値を表1に、膜のSTXM像における各部位での親水性高分子リッチ層の厚さとその平均値を表2に示す。さらに、それらの平均値として得られた親水性高分子リッチ層の厚さと血漿蛋白質吸着量の測定結果を表3に示す。また、血漿蛋白吸着量の測定を行った結果も表3に示す。
本中空糸膜におけるバルクのPVP含有量は7.9重量%であり、中空糸膜の引っ張り強度は18g/filamentであった。
これより、親水性高分子で被覆されず、疎水性高分子のみからなる以下の比較例と引っ張り強度は同等でありながら、かつ、蛋白吸着量は小さいことがわかる。
実施例1の紡口温度を50℃、エアギャップの温度を30℃、凝固浴の温度を40℃にするほかは実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。続いて、実施例1と同様に、得られた中空糸膜の断面における親水性高分子リッチ層を上記の方法にて観察した。その結果を表3に示す。
本比較例1の膜は、親水性高分子リッチ層で被覆されておらず、血漿蛋白吸着量は2.09μg/cm2と実施例に比べ大きな値を示した。なお、本中空糸膜の引っ張り強度は18g/filamentであった。
本比較例1の膜は、親水性高分子リッチ層で被覆されておらず、血漿蛋白吸着量は2.09μg/cm2と実施例に比べ大きな値を示した。なお、本中空糸膜の引っ張り強度は18g/filamentであった。
本発明により、疎水性高分子および親水性高分子よりなる多孔質膜において、疎水性高分子が有する優れた機械的強度を失うことなく、維持しつつ、膜全体の水ぬれ性が良く、微細孔表面を含む多孔質膜全表面における汚れ物質の付着が少ない、または蛋白質の吸着が少ない高分子多孔質膜を提供することができる。
Claims (8)
- 疎水性高分子および親水性高分子よりなる多孔質膜において、疎水性高分子骨格の周囲が親水性高分子リッチ層で被覆された多層構造を有することを特徴とする高分子多孔質膜。
- 親水性高分子リッチ層の厚さが10〜200nmであることを特徴とする請求項1に記載の高分子多孔質膜。
- 疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子多孔質膜。
- 親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子多孔質膜。
- 多孔質膜が中空糸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高分子多孔質膜。
- 多孔質膜が、血液濾過用または血液濾過透析用または持続緩徐式血液濾過透析用のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の高分子多孔質膜。
- 請求項5または6に記載の高分子多孔質膜が筒状プラスチック容器内に挿填され、束の両端部が封止剤で包埋された血液浄化器。
- ポリスルホン系高分子(PSf)の骨格がポリビニルピロリドン(PVP)で被覆された多層構造を有する多孔質膜の製造方法であって、PSfに対するPVPの混和重量比率が0.2〜0.4の紡糸原液を、紡口の吐出温度60〜90℃、紡口から凝固浴までのエアーギャップ内の温度40〜60℃で紡糸し、60℃より大きく90℃以下の凝固浴で凝固させる多孔質膜の製造方法。
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JP2003292145A JP2005058906A (ja) | 2003-08-12 | 2003-08-12 | 高分子多孔質膜、血液浄化器および高分子多孔質膜の製造方法 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010142747A (ja) * | 2008-12-19 | 2010-07-01 | Toyobo Co Ltd | 中空糸膜の紡糸方法および中空糸膜 |
US9616393B2 (en) | 2007-12-06 | 2017-04-11 | Asahi Kasei Medical Co., Ltd. | Porous hollow fiber membrane for treating blood |
JP2017201252A (ja) * | 2016-05-02 | 2017-11-09 | 住友ゴム工業株式会社 | 加硫系材料分析方法 |
WO2020203716A1 (ja) * | 2019-03-29 | 2020-10-08 | 旭化成メディカル株式会社 | 多孔質膜 |
-
2003
- 2003-08-12 JP JP2003292145A patent/JP2005058906A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
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---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20061107 |