JP2005048216A - 電鋳装置及び電鋳方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造コストを増大させることなく、電鋳精度を向上させることができる電鋳装置及び電鋳方法を提供する。
【解決手段】陰極109は、電鋳対象物105を保持したときに、陽極102に対向するダミー面109eをメッキ液MLに露出しているので、陽極102と陰極109との間に供給される電流を変えなくても、ダミー面109eの面積が変われば電流密度が変化するため、電源111の電流制御装置を簡素化することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】陰極109は、電鋳対象物105を保持したときに、陽極102に対向するダミー面109eをメッキ液MLに露出しているので、陽極102と陰極109との間に供給される電流を変えなくても、ダミー面109eの面積が変われば電流密度が変化するため、電源111の電流制御装置を簡素化することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電鋳装置及び電鋳方法に関し、特に精密部品を成形する成形型などの製造に用いられると好適な電鋳装置及び電鋳方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、急速に発展している光ピックアップ装置の分野では、極めて高精度な対物レンズなどの光学素子が用いられている。プラスチックやガラスなどの素材を、金型を用いてそのような光学素子に成形すると、均一な形状の製品を迅速に製造することができるため、かかる金型成形は、そのような用途の光学素子の大量生産に適しているといえる。ここで、金型は消耗品であり、また不測の事態による破損なども予想されることから、高精度な光学素子を成形するためには、定期的或いは不定期の金型交換が必要であるといえる。従って、光学素子を成形するための金型も、一定精度の金型をある程度の量だけ予め用意しておく必要があるといえる。
【0003】
ここで、単結晶ダイヤモンド工具などを用いた切削加工で金型を製造した場合、手間がかかる上に、全く同一形状の金型を切り出すことは困難といえ、それ故金型交換前後で光学素子製品の形状バラツキが生じる恐れがあり、又コストもかかるという問題がある。これに対し、光学素子の光学面に対応した母光学面を有する母型に対し、電鋳を成長させることで、金型を製作しようとする試みがある。このような電鋳による金型製作手法を用いると、精度の良い母型を一つ用意するだけで、寸法バラツキの少ない光学素子成形用金型を比較的容易に得ることができる。このような電鋳方法としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものがある。
【特許文献1】
特開2002−4076号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電鋳により例えば光学素子成形用金型を形成する場合において、nmレベルの精度を求めた場合、陽極と陰極との間に供給される電流密度(電流/表面積)を極力小さなステップで制御する必要がある。ところが、市販されている一般の電流制御装置は、例えば5Aの電流を供給する場合、0.01A毎にしか調整できず、これを用いては、形成される電鋳の精度を所望のレベルまで向上させることができないという問題がある。これに対し、0.01Aより小さなステップで電流を調整できる電流制御装置を新たに設計とすると、製造コストが増大するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、製造コストを増大させることなく、電鋳精度を向上させることができる電鋳装置及び電鋳方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の本発明の電鋳装置は、電鋳対象物に対して電鋳処理を行う電鋳装置において、電鋳対象物を浸漬するメッキ液を貯留するメッキ槽と、電鋳対象物を保持する陰極と、前記電鋳対象物に対峙して配置された陽極と、前記陽極と前記陰極との間に電流を流すための電源と、を有し、前記陰極は、前記電鋳対象物を保持したときに、前記陽極に対向するダミー面を前記メッキ液に露出しているので、前記陽極と前記陰極との間に供給される電流を変えなくても、前記ダミー面の面積が変われば電流密度が変化するため、前記電源の電流制御装置を簡素化することができる。
【0007】
更に、前記ダミー面は、保持された前記電鋳対象物を囲っていると、前記電鋳対象物に形成される電鋳の偏りを抑制できる。尚、「電鋳対象物を囲う」とは、前記電鋳対象物の周囲において、周方向に連続して(例えば環状的に)取り巻いていること、及び前記電鋳対象物の周囲において、周方向の一部が切断された状態で(例えばC字状的に)取り巻いている場合のいずれも含む。
【0008】
更に、(電流設定分解能(A)/前記電鋳対象物の表面積と前記ダミー面の面積とを加えた面積(dm2))で表される電流密度設定値(A/dm2)を、少なくとも1/100の刻みで変更可能とするように、前記ダミー面は所定の面積を有していると、精度良い電鋳の制御が可能となる。
【0009】
更に、前記ダミー面は、それに交差する側面に対して、曲面により接続されていると、前記ダミー面に成長した電鋳の除去が容易である。
【0010】
更に、前記電鋳対象物を保持した前記陰極を回転させる駆動装置を有すると、電鋳の偏りを抑制できる。
【0011】
第2の本発明の電鋳方法は、陰極に保持された電鋳対象物をメッキ液中で陽極と対峙させ、前記陰極と前記陽極との間に電流を流すことで電鋳対象物に電鋳処理を行う電鋳方法において、前記電鋳対象物を保持したときに、前記陽極に対向するダミー面を前記メッキ液に露出させたので、前記陽極と前記陰極との間に供給される電流を変えなくても、前記ダミー面の面積が変われば電流密度が変化するため、前記電源の電流制御装置を簡素化することができる。
【0012】
更に、(電流設定分解能(A)/前記電鋳対象物の表面積と前記ダミー面の面積とを加えた面積(dm2))で表される電流密度設定値(A/dm2)を、少なくとも1/100の刻みで変更可能とするように、前記ダミー面の面積を設定すると、精度良い電鋳の制御が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態にかかる電鋳方法を実行できる電鋳装置を示す概略図である。図1において、電鋳装置100は、エアコン201により雰囲気温度を調整可能な密閉された室200内に設置されている。電鋳装置100は、メッキ液MLを貯留し密閉されたメッキ槽101内に、電鋳対象物105を保持した円盤部109aと円板部109aに連結されたシャフト109bとを有する陰極109を有している。円盤109aは、その外周において、電鋳対象物105を囲うようにして環状の突部109dを形成している。突部109dの陽極102対向面が、電鋳対象物105と同じレベルまで陽極102に近接したダミー面109eとなっている。ダミー面109eは、それに交差する突部109dの側面に対して、曲面により接続されている。
【0014】
陰極109の一端側はメッキ液MLに触れ、その他端側は雰囲気に触れた状態にある。陰極109のシャフト109bは、駆動装置であるモータ110により回転するように構成されている。円盤部109aの電鋳対象物105の保持面と反対側の面は、殆どスキマなくメッキ槽101の壁面(遮蔽物)101cが対向し、ここにメッキ液MLの滞留が生じることを抑制している。
【0015】
メッキ液MLに浸漬された電鋳対象物105に対峙するようにして、メッキ槽101内には陽極102が配置されている。陽極102は、チタン製の金網できた籠102aと(チタンケース)、その内部に充填された多数のニッケルペレット102bとを有する。チタンケース102aは、直流電源111のプラス側に通電可能に接続されており、陰極109は、直流電源111のマイナス側に通電可能に接続されている。
【0016】
メッキ槽101の排出口101aは、循環ラインを構成する配管115に連結されている。配管115は、ヒータを内蔵した温度調整装置116を介してポンプ117に接続している。ポンプ117は、メッキ槽101の吐出口101bに接続されたノズル119に連結されている。
【0017】
ノズル119の近傍に、ノズル119から噴出するメッキ液の温度を測定する第1センサ203が配置されている。一方、シャフト109bの雰囲気に露出した面に、その温度を測定する第2のセンサ204が取り付けられている。第1センサ203と第2センサ204の出力信号は、エアコン201を制御する制御装置202に入力されるようになっている。尚、制御装置202は、陽極102と陰極109への電力供給も制御できるようになっている。
【0018】
本実施の形態にかかる電鋳装置の動作を説明する。まず温度調整装置116を動作させて、メッキ液MLを40〜60℃の範囲内で任意温度Tgに設定しつつメッキ槽101へと噴出させ、配管115を介して循環させる。メッキ槽101内のメッキ液MLが均一な温度Tgになった後、同じ温度に加熱した電鋳対象物105及び陰極109を、メッキ液ML内に浸漬する。更に、制御装置202はエアコン201を制御して、雰囲気温度をTgを目標に制御する。メッキ液MLの温度と雰囲気温度とが略等しくなれば、制御装置202は、電源111からの電力供給を開始し、電鋳処理を行う。所定時間経過後に、制御装置202は電力供給を停止し、電鋳処理を終了させる。
【0019】
図2は、陰極109と、それに保持された電鋳対象物105の断面図であり、電鋳後の状態を示している。ダミー面109eと陽極102との間にも電流が流れるので、図2より明らかなように、陰極109のダミー面109eからも電鋳Eが成長している。すなわち、ダミー面109eを形成したことで、陽極102と陰極109との間の電流密度は小さくなっており、その分、ゆっくりした速度で電鋳Eを成長させることができ、より緻密な組成の電鋳Eを得ることができる。又、ダミー面109eを、電鋳対象物105の軸線に対して点対称に形成することで、電鋳対象物105に形成された電鋳Eの歪みを抑制できる。従って、電鋳対象物105は光学素子成形用型の母型に好適である。更に、電鋳対象物105とダミー面109eとを、ある程度距離を離隔させることで、それらの間に電鋳が架橋して成長することが抑制され、その後にカット加工などが不要となる。
【0020】
尚、電鋳処理後において、電鋳装置を再使用する場合、ダミー面109eから電鋳Eを取り外す必要があるが、ダミー面109eの周縁は曲面となっているので、その電鋳Eの取り外しは容易に行える。尚、突部109dの側面をテーパ状にするとより好ましい。電鋳対象物105と、ダミー面109eの陽極と対向する面は同一である必要はなく、電鋳対象物の形状に合わせ、シュミレーション等を利用して最適値を設定するとよい。ダミー面が電鋳対象物より陽極から遠くなるよう設定すると、一般的に均一性が良くなる。
【0021】
又、電鋳対象物105のサイズ等、必要に応じて、ダミー面109eの面積を変えることもできる。例えば、突部109dを円盤109aから分離可能としておき、ダミー面109eの面積が異なる突部109dに交換することで、電流密度の変更を行うことができる。尚、それ以外にもダミー面109eに樹脂製のカバーをつけたり、絶縁剤を塗布することでも、メッキ液MLに露出するダミー面109eの有効面積を変更させることができる。即ち、ダミー面とは、陽極102に対向し、且つメッキ液MLに露出した陰極109の面と定義できる。
【0022】
図3は、本発明者らが行った実験結果を示すものであり、縦軸に電鋳の反り、横軸に電流密度をとったグラフである。特に光学素子成形用型を電鋳で形成しようとした場合、反りは数10〜数nmの範囲内に抑える必要がある。従って、図3より、電流密度は、設定電流密度(電流設定分解能(A)/前記電鋳対象物の表面積と前記ダミー面の面積とを加えた面積(dm2))の1%刻みで制御を行う必要があるが、かかる場合、本実施の形態によれば、ダミー面109eの面積を、設定電流密度(A/dm2)の少なくとも1/100(好ましくは、より安定的に制御可能な1/200)の刻みで変更可能な面積とすることで対処可能である。
【0023】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。本発明は、光ピックアップ装置用の光学素子成形用型に用いる電鋳に限らず、例えばインクジェットプリンタのヘッド成形用型に用いる電鋳、その他精密部品成形用型に用いる電鋳など幅広く適用が可能である。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、製造コストを増大させることなく、電鋳精度を向上させることができる電鋳装置及び電鋳方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる電鋳方法を実行できる電鋳装置を示す概略図である。
【図2】本実施の形態にかかる陰極109と、それに保持された電鋳対象物105の断面図である。
【図3】本発明者らが行った実験結果を示す図である。
【符号の説明】
101 メッキ槽
102 陽極
105 電鋳対象物
109 陰極
109e ダミー面
110 モータ
115 配管
116 温度調整装置
117 ポンプ
119 ノズル
201 エアコン
202 制御装置
203 第1のセンサ
204 第2のセンサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、電鋳装置及び電鋳方法に関し、特に精密部品を成形する成形型などの製造に用いられると好適な電鋳装置及び電鋳方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、急速に発展している光ピックアップ装置の分野では、極めて高精度な対物レンズなどの光学素子が用いられている。プラスチックやガラスなどの素材を、金型を用いてそのような光学素子に成形すると、均一な形状の製品を迅速に製造することができるため、かかる金型成形は、そのような用途の光学素子の大量生産に適しているといえる。ここで、金型は消耗品であり、また不測の事態による破損なども予想されることから、高精度な光学素子を成形するためには、定期的或いは不定期の金型交換が必要であるといえる。従って、光学素子を成形するための金型も、一定精度の金型をある程度の量だけ予め用意しておく必要があるといえる。
【0003】
ここで、単結晶ダイヤモンド工具などを用いた切削加工で金型を製造した場合、手間がかかる上に、全く同一形状の金型を切り出すことは困難といえ、それ故金型交換前後で光学素子製品の形状バラツキが生じる恐れがあり、又コストもかかるという問題がある。これに対し、光学素子の光学面に対応した母光学面を有する母型に対し、電鋳を成長させることで、金型を製作しようとする試みがある。このような電鋳による金型製作手法を用いると、精度の良い母型を一つ用意するだけで、寸法バラツキの少ない光学素子成形用金型を比較的容易に得ることができる。このような電鋳方法としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものがある。
【特許文献1】
特開2002−4076号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電鋳により例えば光学素子成形用金型を形成する場合において、nmレベルの精度を求めた場合、陽極と陰極との間に供給される電流密度(電流/表面積)を極力小さなステップで制御する必要がある。ところが、市販されている一般の電流制御装置は、例えば5Aの電流を供給する場合、0.01A毎にしか調整できず、これを用いては、形成される電鋳の精度を所望のレベルまで向上させることができないという問題がある。これに対し、0.01Aより小さなステップで電流を調整できる電流制御装置を新たに設計とすると、製造コストが増大するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、製造コストを増大させることなく、電鋳精度を向上させることができる電鋳装置及び電鋳方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の本発明の電鋳装置は、電鋳対象物に対して電鋳処理を行う電鋳装置において、電鋳対象物を浸漬するメッキ液を貯留するメッキ槽と、電鋳対象物を保持する陰極と、前記電鋳対象物に対峙して配置された陽極と、前記陽極と前記陰極との間に電流を流すための電源と、を有し、前記陰極は、前記電鋳対象物を保持したときに、前記陽極に対向するダミー面を前記メッキ液に露出しているので、前記陽極と前記陰極との間に供給される電流を変えなくても、前記ダミー面の面積が変われば電流密度が変化するため、前記電源の電流制御装置を簡素化することができる。
【0007】
更に、前記ダミー面は、保持された前記電鋳対象物を囲っていると、前記電鋳対象物に形成される電鋳の偏りを抑制できる。尚、「電鋳対象物を囲う」とは、前記電鋳対象物の周囲において、周方向に連続して(例えば環状的に)取り巻いていること、及び前記電鋳対象物の周囲において、周方向の一部が切断された状態で(例えばC字状的に)取り巻いている場合のいずれも含む。
【0008】
更に、(電流設定分解能(A)/前記電鋳対象物の表面積と前記ダミー面の面積とを加えた面積(dm2))で表される電流密度設定値(A/dm2)を、少なくとも1/100の刻みで変更可能とするように、前記ダミー面は所定の面積を有していると、精度良い電鋳の制御が可能となる。
【0009】
更に、前記ダミー面は、それに交差する側面に対して、曲面により接続されていると、前記ダミー面に成長した電鋳の除去が容易である。
【0010】
更に、前記電鋳対象物を保持した前記陰極を回転させる駆動装置を有すると、電鋳の偏りを抑制できる。
【0011】
第2の本発明の電鋳方法は、陰極に保持された電鋳対象物をメッキ液中で陽極と対峙させ、前記陰極と前記陽極との間に電流を流すことで電鋳対象物に電鋳処理を行う電鋳方法において、前記電鋳対象物を保持したときに、前記陽極に対向するダミー面を前記メッキ液に露出させたので、前記陽極と前記陰極との間に供給される電流を変えなくても、前記ダミー面の面積が変われば電流密度が変化するため、前記電源の電流制御装置を簡素化することができる。
【0012】
更に、(電流設定分解能(A)/前記電鋳対象物の表面積と前記ダミー面の面積とを加えた面積(dm2))で表される電流密度設定値(A/dm2)を、少なくとも1/100の刻みで変更可能とするように、前記ダミー面の面積を設定すると、精度良い電鋳の制御が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態にかかる電鋳方法を実行できる電鋳装置を示す概略図である。図1において、電鋳装置100は、エアコン201により雰囲気温度を調整可能な密閉された室200内に設置されている。電鋳装置100は、メッキ液MLを貯留し密閉されたメッキ槽101内に、電鋳対象物105を保持した円盤部109aと円板部109aに連結されたシャフト109bとを有する陰極109を有している。円盤109aは、その外周において、電鋳対象物105を囲うようにして環状の突部109dを形成している。突部109dの陽極102対向面が、電鋳対象物105と同じレベルまで陽極102に近接したダミー面109eとなっている。ダミー面109eは、それに交差する突部109dの側面に対して、曲面により接続されている。
【0014】
陰極109の一端側はメッキ液MLに触れ、その他端側は雰囲気に触れた状態にある。陰極109のシャフト109bは、駆動装置であるモータ110により回転するように構成されている。円盤部109aの電鋳対象物105の保持面と反対側の面は、殆どスキマなくメッキ槽101の壁面(遮蔽物)101cが対向し、ここにメッキ液MLの滞留が生じることを抑制している。
【0015】
メッキ液MLに浸漬された電鋳対象物105に対峙するようにして、メッキ槽101内には陽極102が配置されている。陽極102は、チタン製の金網できた籠102aと(チタンケース)、その内部に充填された多数のニッケルペレット102bとを有する。チタンケース102aは、直流電源111のプラス側に通電可能に接続されており、陰極109は、直流電源111のマイナス側に通電可能に接続されている。
【0016】
メッキ槽101の排出口101aは、循環ラインを構成する配管115に連結されている。配管115は、ヒータを内蔵した温度調整装置116を介してポンプ117に接続している。ポンプ117は、メッキ槽101の吐出口101bに接続されたノズル119に連結されている。
【0017】
ノズル119の近傍に、ノズル119から噴出するメッキ液の温度を測定する第1センサ203が配置されている。一方、シャフト109bの雰囲気に露出した面に、その温度を測定する第2のセンサ204が取り付けられている。第1センサ203と第2センサ204の出力信号は、エアコン201を制御する制御装置202に入力されるようになっている。尚、制御装置202は、陽極102と陰極109への電力供給も制御できるようになっている。
【0018】
本実施の形態にかかる電鋳装置の動作を説明する。まず温度調整装置116を動作させて、メッキ液MLを40〜60℃の範囲内で任意温度Tgに設定しつつメッキ槽101へと噴出させ、配管115を介して循環させる。メッキ槽101内のメッキ液MLが均一な温度Tgになった後、同じ温度に加熱した電鋳対象物105及び陰極109を、メッキ液ML内に浸漬する。更に、制御装置202はエアコン201を制御して、雰囲気温度をTgを目標に制御する。メッキ液MLの温度と雰囲気温度とが略等しくなれば、制御装置202は、電源111からの電力供給を開始し、電鋳処理を行う。所定時間経過後に、制御装置202は電力供給を停止し、電鋳処理を終了させる。
【0019】
図2は、陰極109と、それに保持された電鋳対象物105の断面図であり、電鋳後の状態を示している。ダミー面109eと陽極102との間にも電流が流れるので、図2より明らかなように、陰極109のダミー面109eからも電鋳Eが成長している。すなわち、ダミー面109eを形成したことで、陽極102と陰極109との間の電流密度は小さくなっており、その分、ゆっくりした速度で電鋳Eを成長させることができ、より緻密な組成の電鋳Eを得ることができる。又、ダミー面109eを、電鋳対象物105の軸線に対して点対称に形成することで、電鋳対象物105に形成された電鋳Eの歪みを抑制できる。従って、電鋳対象物105は光学素子成形用型の母型に好適である。更に、電鋳対象物105とダミー面109eとを、ある程度距離を離隔させることで、それらの間に電鋳が架橋して成長することが抑制され、その後にカット加工などが不要となる。
【0020】
尚、電鋳処理後において、電鋳装置を再使用する場合、ダミー面109eから電鋳Eを取り外す必要があるが、ダミー面109eの周縁は曲面となっているので、その電鋳Eの取り外しは容易に行える。尚、突部109dの側面をテーパ状にするとより好ましい。電鋳対象物105と、ダミー面109eの陽極と対向する面は同一である必要はなく、電鋳対象物の形状に合わせ、シュミレーション等を利用して最適値を設定するとよい。ダミー面が電鋳対象物より陽極から遠くなるよう設定すると、一般的に均一性が良くなる。
【0021】
又、電鋳対象物105のサイズ等、必要に応じて、ダミー面109eの面積を変えることもできる。例えば、突部109dを円盤109aから分離可能としておき、ダミー面109eの面積が異なる突部109dに交換することで、電流密度の変更を行うことができる。尚、それ以外にもダミー面109eに樹脂製のカバーをつけたり、絶縁剤を塗布することでも、メッキ液MLに露出するダミー面109eの有効面積を変更させることができる。即ち、ダミー面とは、陽極102に対向し、且つメッキ液MLに露出した陰極109の面と定義できる。
【0022】
図3は、本発明者らが行った実験結果を示すものであり、縦軸に電鋳の反り、横軸に電流密度をとったグラフである。特に光学素子成形用型を電鋳で形成しようとした場合、反りは数10〜数nmの範囲内に抑える必要がある。従って、図3より、電流密度は、設定電流密度(電流設定分解能(A)/前記電鋳対象物の表面積と前記ダミー面の面積とを加えた面積(dm2))の1%刻みで制御を行う必要があるが、かかる場合、本実施の形態によれば、ダミー面109eの面積を、設定電流密度(A/dm2)の少なくとも1/100(好ましくは、より安定的に制御可能な1/200)の刻みで変更可能な面積とすることで対処可能である。
【0023】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。本発明は、光ピックアップ装置用の光学素子成形用型に用いる電鋳に限らず、例えばインクジェットプリンタのヘッド成形用型に用いる電鋳、その他精密部品成形用型に用いる電鋳など幅広く適用が可能である。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、製造コストを増大させることなく、電鋳精度を向上させることができる電鋳装置及び電鋳方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる電鋳方法を実行できる電鋳装置を示す概略図である。
【図2】本実施の形態にかかる陰極109と、それに保持された電鋳対象物105の断面図である。
【図3】本発明者らが行った実験結果を示す図である。
【符号の説明】
101 メッキ槽
102 陽極
105 電鋳対象物
109 陰極
109e ダミー面
110 モータ
115 配管
116 温度調整装置
117 ポンプ
119 ノズル
201 エアコン
202 制御装置
203 第1のセンサ
204 第2のセンサ
Claims (7)
- 電鋳対象物に対して電鋳処理を行う電鋳装置において、
電鋳対象物を浸漬するメッキ液を貯留するメッキ槽と、
電鋳対象物を保持する陰極と、
前記電鋳対象物に対峙して配置された陽極と、
前記陽極と前記陰極との間に電流を流すための電源と、を有し、
前記陰極は、前記電鋳対象物を保持したときに、前記陽極に対向するダミー面を前記メッキ液に露出していることを特徴とする電鋳装置。 - 前記ダミー面は、保持された前記電鋳対象物を囲っていることを特徴とする請求項1に記載の電鋳装置。
- (電流設定分解能(A)/前記電鋳対象物の表面積と前記ダミー面の面積とを加えた面積(dm2))で表される電流密度設定値(A/dm2)を、少なくとも1/100の刻みで変更可能とするように、前記ダミー面は所定の面積を有していることを特徴とする請求項2に記載の電鋳装置。
- 前記ダミー面は、それに交差する側面に対して、曲面により接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電鋳装置。
- 前記電鋳対象物を保持した前記陰極を回転させる駆動装置を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電鋳装置。
- 陰極に保持された電鋳対象物をメッキ液中で陽極と対峙させ、前記陰極と前記陽極との間に電流を流すことで電鋳対象物に電鋳処理を行う電鋳方法において、
前記電鋳対象物を保持したときに、前記陽極に対向するダミー面を前記メッキ液に露出させたことを特徴とする電鋳方法。 - (電流設定分解能(A)/前記電鋳対象物の表面積と前記ダミー面の面積とを加えた面積(dm2))で表される電流密度設定値(A/dm2)を、少なくとも1/100の刻みで変更可能とするように、前記ダミー面の面積を設定することを特徴とする請求項6に記載の電鋳方法。
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