JP2005023983A - 車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】スリップ状態やスタック状態においてニュートラル制御を禁止する。
【解決手段】ECT_ECU1020は、自動変速機300の出力軸回転数を検知する出力軸回転数センサ420から入力された信号に基づいて、出力軸回転数の時間変化率が予め定められたしきい値よりも大きいと車両がスリップ状態またはスタック状態であると判定する回路と、車両がスリープ状態やスタック状態であると判定されるとニュートラル制御の実行フラグをリセット状態にする回路と、ニュートラル制御の実行フラグがセット状態である場合においてニュートラル制御を実行する回路と、車両の発進時にスタック状態でないと判定されるとスタック状態検出フラグをリセット状態にする回路とを含む。
【選択図】 図1
【解決手段】ECT_ECU1020は、自動変速機300の出力軸回転数を検知する出力軸回転数センサ420から入力された信号に基づいて、出力軸回転数の時間変化率が予め定められたしきい値よりも大きいと車両がスリップ状態またはスタック状態であると判定する回路と、車両がスリープ状態やスタック状態であると判定されるとニュートラル制御の実行フラグをリセット状態にする回路と、ニュートラル制御の実行フラグがセット状態である場合においてニュートラル制御を実行する回路と、車両の発進時にスタック状態でないと判定されるとスタック状態検出フラグをリセット状態にする回路とを含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の自動変速機の制御装置に関し、特に、ニュートラル制御を実行する自動変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載される自動変速機は、エンジンとトルクコンバータ等を介して繋がるとともに複数の動力伝達経路を有してなる変速機構を有して構成され、たとえば、アクセル開度および車速に基づいて自動的に動力伝達経路の切換えを行なう、すなわち自動的に変速比(走行速度段)の切換えを行なうように構成される。一般的に、自動変速機を有した車両には運転者により操作されるシフトレバーが設けられ、シフトレバー操作に基づいて変速ポジション(たとえば、後進走行ポジション、ニュートラルポジション、前進走行ポジション)が設定され、このように設定された変速ポジション内(通常は、前進走行ポジション内)において自動変速制御が行われる。
【0003】
このような自動変速機を有した車両において、前進走行ポジションが設定されて車両が停止している状態では、アイドリング回転するエンジンからの駆動力がトルクコンバータを介して変速機に伝達され、これが車輪に伝達されるため、いわゆるクリープ現象が発生する。クリープ現象は、登坂路での停車からの発進をスムーズに行わせることができるなど、所定条件下では非常に有用なのであるが、車両を停止保持したいときには不要な現象であり、車両のブレーキを作動させてクリープ力を抑えるようになっている。すなわち、エンジンからのクリープ力をブレーキにより抑えるようになっており、その分エンジンの燃費が低下するという問題がある。
【0004】
このようなことから、前進走行ポジションにおいて、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキが作動されるとともにアクセルがほぼ全閉となって車両が停止している状態では、前進走行ポジションのまま変速機をニュートラルに近いニュートラル状態として、燃費の向上を図ることが提案されている。
【0005】
自動変速機におけるフォワードクラッチ(入力クラッチ、前進クラッチともいう)を係合状態から解放状態に変更して、このようなニュートラル状態を実現することにより燃費の向上を図っている。以下、このような制御をニュートラル制御という。
【0006】
特開平5−60225号公報(特許文献1)は、クリープ防止制御を実行するシステムにおいて、交差点での右左折進入時の発進応答性を改善する車両のクリープ制御装置を開示する。この車両のクリープ制御装置は、自動変速機のシフトレンジが前進走行レンジとされているときであっても、所定の条件が成立したときにはニュートラル状態を形成してクリープを防止するように構成した車両のクリープ制御装置において、運転者の右左折する意思を検出する検出回路と、運転者の右左折する意思が検出されたときは、ニュートラル状態への移行を禁止する制御回路とを備える。
【0007】
この特許文献1に開示されたクリープ制御装置によると、クリープ防止制御を実行するための条件の1つとして、運転者の右左折する意思を考慮するようにしている。たとえば、ターンシグナルスイッチのオン−オフの状態を検出し、このスイッチがオンとされている場合、すなわち運転者の右左折する意思が確認された場合にはニュートラル状態への移行を禁止してクリープ防止制御に入らないようにしている。この結果、交差点での右左折進入の場合に発進応答性が損なわれることがなくなるとともに、フォワードクラッチの耐久性を向上させることができる。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−60225号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された車両のクリープ制御装置では、ニュートラル制御が実行されない条件として車両の運転者による左折や右折の意思の存在が検知された場合である。これでは、以下のような場合にも、ニュートラル制御が実行され、問題が生じる。
【0010】
すなわち、摩擦抵抗の非常に小さい路面(いわゆる低μ路)においても(車輪が空転した状態である雪道等におけるスリップ状態や、ぬかるみにタイヤがはまってしまったスタック状態においても)、ニュートラル制御が、以下のような手順で実行される。車両が停止して運転者が前進走行ポジションのままブレーキペダルを踏んでいることを検知することなどによりニュートラル制御の開始条件が満足される。スリップ状態やスタック状態で運転者が車両を発進させようとして、ブレーキペダルの踏込みを止めて、アクセルペダルを踏み込む。通常の路面であると車両が走行を開始して(停止状態から走行状態に少なくとも一旦は移行して)、次の交差点で赤信号で停止して、運転者が前進走行ポジションのままブレーキペダルを踏んでいることを再度検知することなどによりニュートラル制御が開始されて燃費が向上する。ところが、車速を検知するセンサが一般的には自動変速機の出力軸回転数を検知するセンサであるので、低μ路であって車輪が空転しても、車速が上昇して、あたかも停止状態から走行状態に一旦移行したようになる。このときに運転者がアクセルペダルを踏み込むことを止めてブレーキベダルを踏むと(通常、スリップ状態やスタック状態では、運転者は、車両の挙動に応じてmブレーキペダルを離してアクセルペダルを踏む動作と、アクセルペダルを離してブレーキペダルを踏む動作とを短い間隔で繰り返すことが多い)、ニュートラル制御を実行する。すなわち、車両が移動していないにも関わらず、ニュートラル制御の開始とニュートラル制御からの復帰とが、短いインターバルで繰返される。そのため、入力クラッチは、係合状態から解放状態、解放状態から係合状態という状態の変化を、高い頻度で繰返す。
【0011】
このため、係合時と解放時とにおける摩擦材がスリップする時間が長くなり、摩擦材の温度が上昇し、さらには焼付きを起こしてしまう場合もあり得る。このようになると、クラッチとして機能しなくなり、固着したままの状態になるか、離隔したままの状態になるか、いずれかの状態になっていまう。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両が走行している状態に基づいて、ニュートラル制御の実行を制御する、車両の制御装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る車両の制御装置は、前進走行ポジションで車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御装置を搭載した車両を制御する。この制御装置は、車両の発進時における、駆動輪の回転数を検知するための検知手段と、検知手段により検知された回転数の時間変化率に基づいて、ニュートラル制御の実行の許可を判定するための判定手段とを含む。
【0014】
第1の発明によると、車両がスリップ状態やスタック状態になると、アクセルを踏み込むと路面の摩擦抵抗が低いまたは極めて低いので、タイヤが空転する。このとき検知手段はこのタイヤの回転数(駆動輪の回転数)を検知する。このとき、この回転数の時間変化率が通常の路面における発進時よりもかなり大きくなる。このような場合には、ニュートラル制御を許可しないように判定される。このような場合にニュートラル制御を許可しないようにすると、ニュートラル制御の開始とニュートラル制御からの復帰とが、短いインターバルで繰返されることを回避できる。そのため、入力クラッチは、係合状態から解放状態、解放状態から係合状態という状態の変化を高い頻度で繰返すこともなくなる。その結果、係合時と解放時とにおける摩擦材がスリップする時間が短く、摩擦材の温度が上昇し蓄熱することもなく、良好にニュートラル制御の実行を制御できる、車両の制御装置を提供することができる。
【0015】
第2の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、検知手段は、車両の変速装置の出力軸回転数に基づいて駆動輪の回転数を検知するための手段を含む。
【0016】
第2の発明によると、たとえば、有段変速機の出力軸回転数や、無段変速機のセカンダリプーリ回転数に基づいて、駆動輪の回転数を検知して、この回転数に基づいて車両がスリップしている状況やスタックしている状況を判断して、ニュートラル制御の実行を許可しないようにする。
【0017】
第3の発明に係る車両の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加えて、判定手段は、回転数の時間変化率が予め定められた値より小さいと、ニュートラル制御の実行を許可するための手段を含む。
【0018】
第3の発明によると、回転数の時間変化率が予め定められた値より小さいと、車両がスリップしている状況やスタックしている状況ではないと判断して、ニュートラル制御の実行を許可する。
【0019】
第4の発明に係る車両の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加えて、判定手段は、回転数の時間変化率が予め定められた値以上であると、車両がスリップ状態またはスタック状態であると判断して、ニュートラル制御の実行を許可しないための手段を含む。
【0020】
第4の発明によると、回転数の時間変化率が予め定められた値以上であると、車両がスリップしている状況やスタックしている状況であると判断して、摩擦材の蓄熱による入力クラッチの破壊を避けるべく、ニュートラル制御の実行を許可しない。
【0021】
第5の発明に係る車両の制御装置においては、第4の発明の構成に加えて、判定手段は、ニュートラル制御の実行を許可しないと判定した後、その後の車両の発進時において回転数の時間変化率が予め定められた値より小さくなるまで、ニュートラル制御の実行を許可しない状態を継続するための手段を含む。
【0022】
第5の発明によると、車両がスリップしている状況やスタックしている状況であると判断して、ニュートラル制御の実行を許可しないように一旦判断された後には、スリップ状態やスタックは継続して発生する。そのため、ニュートラル制御の実行を許可しない後の車両の発進時において回転数の時間変化率が予め定められた値より小さくなるまで、ニュートラル制御の実行を許可しない状態を継続する。このため、スリップしている状況やスタックしている状況から、完全に抜け出すまでニュートラル制御を実行しないようにすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0024】
本発明の実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECU(Electronic Control Unit)1000により実現される。本実施の形態では、自動変速機を流体継手としてトルクコンバータを備え、歯車式変速機構を有する自動変速機として説明する。なお、自動変速機は、ベルト式などの無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよい。
【0025】
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU1000により実現される。
【0026】
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、トルクコンバータ200と、自動変速機300と、ECU1000とから構成される。
【0027】
エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサ400により検知されるエンジン100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
【0028】
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ210と、入力軸側のポンプ羽根車220と、出力軸側のタービン羽根車230と、ワンウェイクラッチ250を有し、トルク増幅機能を発現するステータ240とから構成される。トルクコンバータ200と自動変速機300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ410により検知される。自動変速機300の出力軸回転数NOUTは、出力軸回転数センサ420により検知される。
【0029】
図2に自動変速機300の作動表を示す。図2に示す作動表によると、摩擦要素であるクラッチ要素(図中のC1〜C4)や、ブレーキ要素(B1〜B4)、ワンウェイクラッチ要素(F0〜F3)が、どのギヤ段の場合に係合および解放されるかを示している。車両の発進時に使用される1速時には、クラッチ要素(C1)、ワンウェイクラッチ要素(F0、F3)が係合する。これらのクラッチ要素の中で、特にクラッチ要素C1を入力クラッチ310という。この入力クラッチ310は、前進クラッチやフォワードクラッチとも呼ばれ、図2の作動表に示すように、パーキング(P)ポジション、後進走行(R)ポジション、ニュートラル(N)ポジション以外の、車両が前進するための変速段を構成する際に必ず係合状態で使用される。
前進走行(D)ポジションであって、車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチ310を解放して所定のスリップ状態にして、ニュートラルに近い状態にする制御をニュートラル制御という。
【0030】
これらのパワートレーンを制御するECU1000は、エンジン100を制御するエンジンECU1010と、自動変速機300を制御するECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU1020と、VSC(Vehicle Stability Control)_ECU1030とを含む。
【0031】
ECT_ECU1010には、タービン回転数センサ410からタービン回転数NTを表わす信号が、出力軸回転数センサ420から出力軸回転数NOUTを表わす信号が入力される。また、ECT_ECU1010には、エンジンECU1010から、エンジン回転数センサ400にて検知されたエンジン回転数NEを表わす信号と、スロットルポジションセンサにて検知されたスロットル開度を表わす信号とが入力される。
【0032】
これら回転数センサは、トルクコンバータ200の入力軸、トルクコンバータ200の出力軸および自動変速機300の出力軸に取り付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転数センサは、トルクコンバータ200の入力軸、トルクコンバータ200の出力軸および自動変速機300の出力軸の僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
【0033】
さらに、ECT_ECU1010には、VSC_ECU1030から、Gセンサにて検知された車両加速度を表わす信号と、ブレーキ圧を表わす信号とが入力される。
【0034】
ECT_ECU1020から、自動変速機300に、入力クラッチ310の係合圧指令信号と、ソレノイド制御信号が出力される。また、ECT_ECU1020においては、車両の発進時における出力軸回転数NOUTの時間変化率(車輪速の時間変化率=車輪速の加速度)を算出して、この時間変化率が予め定められた値よりも大きいと、この車両がスリップ状態やスタック状態であると判断して、次回からのニュートラル制御の実行を許可しない。
【0035】
具体的には、スリップ状態やスタック状態であると判断されると、スタック状態フラグをリセット状態からセット状態に変更して、このスタック状態フラグがセット状態であるとニュートラル制御実行フラグをセット状態からリセット状態にして、ニュートラル制御の実行を行なわないように制御される。
【0036】
図3を参照して、本実施の形態に係る制御装置のECT_ECU1020において実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0037】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECT_ECU1020は、スタック状態検出フラグがセット状態であるか否かを判断する。スタック状態検出フラグがセット状態であると(S100にてYES)、処理はS800へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS200へ移される。
【0038】
S200にて、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御実行フラグをセットする。S300にて、ECT_ECU1020は、予め定められたニュートラル制御の実行条件が成立すると(この実行条件には、ニュートラル制御実行フラグがセット状態であることを含む)、ニュートラル制御を実行し入力クラッチC1を解放する。
【0039】
S400にて、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御からの復帰状態になったか否かを判断する。ニュートラル制御からの復帰の判断は、ECT_ECU1020に入力される信号に基づいて、それらの信号が予め定められた条件を満足しているか否かにより行なわれる。ニュートラル制御からの復帰状態になると(S400にてYES)、処理はS500へ移される。もしそうでないと(S400にてNO)、この処理は終了する。なお、この図3に示すフローチャートはサブルーチンであって、この処理を終了するとは、メインルーチンに戻るということを示す。
【0040】
S500にて、ECT_ECU1020は、スタック状態であるか否かの判定を行なう。この判定は、ECT_ECU1020に入力される出力軸回転数の時間変化率に基づいて行なわれる。この時間変化率は、車輪速の加速度ともいえる。この出力軸回転数の時間変化率や車輪速の加速度が予め定められたしきい値以上のときのスタック状態と判定される。スタック状態と判定されると(S500にてYES)、処理はS600へ移される。もしそうでないと(S500にてNO)、処理はS700へ移される。
【0041】
S600にて、ECT_ECU1020は、スタック状態検出フラグをセットする。S700にて、ECT_ECU1020は、スタック状態検出フラグをリセットする。S600およびS700の処理の後、処理は終了する。
【0042】
S800にて、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御実行フラグをリセットする。このS800における処理の後、処理は終了する。
【0043】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECT_ECU1020を搭載した車両の動作について説明する。
【0044】
車両の状態が、スタック状態であるか否かが判定され(S500)、スタック状態であると(S500にてYES)、スタック状態検出フラグがセットされる(S600)。
【0045】
ニュートラル制御の開始判断前において、スタック状態検出フラグがセット状態でない場合には(S100にてNO)ニュートラル制御実行フラグがセットされて(S200)、ニュートラル制御が実行される(S300)。
【0046】
一方、ニュートラル制御の開始判断前において、スタック状態検出フラグがセット状態であると(S100にてYES)、この車両はスタック状態であるかまたはスリップ状態であるため、ニュートラル制御実行フラグがリセットされる(S800)。それ以降の車両の発進時においてスタック状態でないと判定されるまでスタック状態検出フラグがセット状態であり続けるために、ニュートラル制御実行フラグがリセット状態であることが継続され、ニュートラル制御が実行されることはない。
【0047】
以下、図4を参照して、この車両の動作についてさらに詳しく説明する。図4は、横軸を時間軸としたタイミングチャートである。
【0048】
車両の運転者によりアクセルペダルが踏み込まれるとアクセル開度が開きニュートラル制御からの復帰と判断される(S400にてYES)。出力軸回転数の時間変化率(車輪速の加速度)が算出されて、出力軸回転数の時間変化率や車輪側の加速度が予め定められたしきい値以上の時には(S500にてYES)、スタック状態検出フラグがセットされる(S600)。これが、スタック時やスリップ時であって、図4(C)の実線で示されるものである。
【0049】
一方、出力軸回転数の時間変化率や車輪側の加速度が予め定められたしきい値よりも小さい場合には、車両はスタック状態やスリップ状態ではないと判断され(S500にてNO)、スタック状態検出フラグがリセットされる(S700)。これが図4(C)の点線に対応する。
【0050】
一旦S600にてスタック状態検出フラグがセットされると、ニュートラル制御の実行前に、スタック状態検出フラグがセット状態であるか否かが判断されてスタック状態検出フラグがセット状態であるため(S100にてYES)、ニュートラル制御実行フラグがリセット状態のままとなる。
【0051】
たとえば、スタック状態やスリップ状態から車両が離脱して車両の発進時にスタック状態でないと判定されると(S500にてNO)、スタック状態検出フラグがリセットされる(S700)。スタック状態検出フラグがリセットされ(S700)、次回のニュートラル制御が実行される前にスタック状態検出フラグがセット状態ではないため(S100にてNO)、ニュートラル制御実行フラグがセットされ(S200)、ニュートラル制御が実行される。すなわち、一旦スタック状態であると判定された後、この車両においてスタック状態でないと判定されるまで、スタック状態検出フラグがセット状態であり続けるので、ニュートラル制御が実行されることはない。
【0052】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECT_ECUによると、自動変速機の出力軸回転数などに基づいて、車両がスリップ状態やスタック状態であるか否かを判断する。車両がスリップ状態やスタック状態である場合には、入力クラッチC1の摩擦による蓄熱を避けるため、インターバルが非常に短いニュートラル制御の実行とニュートラル制御からの復帰を回避するように制御される。その結果、ニュートラル制御を実行する車両において、車両がスリップ状態やスタック状態に陥った場合にはニュートラル制御を実行しないようにして、ニュートラル制御に関して制御される入力クラッチC1を蓄熱により損傷させることを回避することができる。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置であるECT_ECUを含むパワートレーンの制御ブロック図である。
【図2】図1に示す自動変速機の作動表である。
【図3】ECT_ECUで実行されるニュートラル実行可否処理のプログラムの制御構造を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置であるECT_ECUが搭載された車両の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
100 エンジン、200 トルクコンバータ、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、240 ステータ、250 ワンウェイクラッチ、300 自動変速機、310 入力クラッチ、400エンジン回転数センサ、410 タービン回転数センサ、420 出力軸回転数センサ、1000 ECU、1010 エンジンECU、1020 ECT_ECU、1030 VSC_ECU。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の自動変速機の制御装置に関し、特に、ニュートラル制御を実行する自動変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載される自動変速機は、エンジンとトルクコンバータ等を介して繋がるとともに複数の動力伝達経路を有してなる変速機構を有して構成され、たとえば、アクセル開度および車速に基づいて自動的に動力伝達経路の切換えを行なう、すなわち自動的に変速比(走行速度段)の切換えを行なうように構成される。一般的に、自動変速機を有した車両には運転者により操作されるシフトレバーが設けられ、シフトレバー操作に基づいて変速ポジション(たとえば、後進走行ポジション、ニュートラルポジション、前進走行ポジション)が設定され、このように設定された変速ポジション内(通常は、前進走行ポジション内)において自動変速制御が行われる。
【0003】
このような自動変速機を有した車両において、前進走行ポジションが設定されて車両が停止している状態では、アイドリング回転するエンジンからの駆動力がトルクコンバータを介して変速機に伝達され、これが車輪に伝達されるため、いわゆるクリープ現象が発生する。クリープ現象は、登坂路での停車からの発進をスムーズに行わせることができるなど、所定条件下では非常に有用なのであるが、車両を停止保持したいときには不要な現象であり、車両のブレーキを作動させてクリープ力を抑えるようになっている。すなわち、エンジンからのクリープ力をブレーキにより抑えるようになっており、その分エンジンの燃費が低下するという問題がある。
【0004】
このようなことから、前進走行ポジションにおいて、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキが作動されるとともにアクセルがほぼ全閉となって車両が停止している状態では、前進走行ポジションのまま変速機をニュートラルに近いニュートラル状態として、燃費の向上を図ることが提案されている。
【0005】
自動変速機におけるフォワードクラッチ(入力クラッチ、前進クラッチともいう)を係合状態から解放状態に変更して、このようなニュートラル状態を実現することにより燃費の向上を図っている。以下、このような制御をニュートラル制御という。
【0006】
特開平5−60225号公報(特許文献1)は、クリープ防止制御を実行するシステムにおいて、交差点での右左折進入時の発進応答性を改善する車両のクリープ制御装置を開示する。この車両のクリープ制御装置は、自動変速機のシフトレンジが前進走行レンジとされているときであっても、所定の条件が成立したときにはニュートラル状態を形成してクリープを防止するように構成した車両のクリープ制御装置において、運転者の右左折する意思を検出する検出回路と、運転者の右左折する意思が検出されたときは、ニュートラル状態への移行を禁止する制御回路とを備える。
【0007】
この特許文献1に開示されたクリープ制御装置によると、クリープ防止制御を実行するための条件の1つとして、運転者の右左折する意思を考慮するようにしている。たとえば、ターンシグナルスイッチのオン−オフの状態を検出し、このスイッチがオンとされている場合、すなわち運転者の右左折する意思が確認された場合にはニュートラル状態への移行を禁止してクリープ防止制御に入らないようにしている。この結果、交差点での右左折進入の場合に発進応答性が損なわれることがなくなるとともに、フォワードクラッチの耐久性を向上させることができる。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−60225号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された車両のクリープ制御装置では、ニュートラル制御が実行されない条件として車両の運転者による左折や右折の意思の存在が検知された場合である。これでは、以下のような場合にも、ニュートラル制御が実行され、問題が生じる。
【0010】
すなわち、摩擦抵抗の非常に小さい路面(いわゆる低μ路)においても(車輪が空転した状態である雪道等におけるスリップ状態や、ぬかるみにタイヤがはまってしまったスタック状態においても)、ニュートラル制御が、以下のような手順で実行される。車両が停止して運転者が前進走行ポジションのままブレーキペダルを踏んでいることを検知することなどによりニュートラル制御の開始条件が満足される。スリップ状態やスタック状態で運転者が車両を発進させようとして、ブレーキペダルの踏込みを止めて、アクセルペダルを踏み込む。通常の路面であると車両が走行を開始して(停止状態から走行状態に少なくとも一旦は移行して)、次の交差点で赤信号で停止して、運転者が前進走行ポジションのままブレーキペダルを踏んでいることを再度検知することなどによりニュートラル制御が開始されて燃費が向上する。ところが、車速を検知するセンサが一般的には自動変速機の出力軸回転数を検知するセンサであるので、低μ路であって車輪が空転しても、車速が上昇して、あたかも停止状態から走行状態に一旦移行したようになる。このときに運転者がアクセルペダルを踏み込むことを止めてブレーキベダルを踏むと(通常、スリップ状態やスタック状態では、運転者は、車両の挙動に応じてmブレーキペダルを離してアクセルペダルを踏む動作と、アクセルペダルを離してブレーキペダルを踏む動作とを短い間隔で繰り返すことが多い)、ニュートラル制御を実行する。すなわち、車両が移動していないにも関わらず、ニュートラル制御の開始とニュートラル制御からの復帰とが、短いインターバルで繰返される。そのため、入力クラッチは、係合状態から解放状態、解放状態から係合状態という状態の変化を、高い頻度で繰返す。
【0011】
このため、係合時と解放時とにおける摩擦材がスリップする時間が長くなり、摩擦材の温度が上昇し、さらには焼付きを起こしてしまう場合もあり得る。このようになると、クラッチとして機能しなくなり、固着したままの状態になるか、離隔したままの状態になるか、いずれかの状態になっていまう。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両が走行している状態に基づいて、ニュートラル制御の実行を制御する、車両の制御装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る車両の制御装置は、前進走行ポジションで車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御装置を搭載した車両を制御する。この制御装置は、車両の発進時における、駆動輪の回転数を検知するための検知手段と、検知手段により検知された回転数の時間変化率に基づいて、ニュートラル制御の実行の許可を判定するための判定手段とを含む。
【0014】
第1の発明によると、車両がスリップ状態やスタック状態になると、アクセルを踏み込むと路面の摩擦抵抗が低いまたは極めて低いので、タイヤが空転する。このとき検知手段はこのタイヤの回転数(駆動輪の回転数)を検知する。このとき、この回転数の時間変化率が通常の路面における発進時よりもかなり大きくなる。このような場合には、ニュートラル制御を許可しないように判定される。このような場合にニュートラル制御を許可しないようにすると、ニュートラル制御の開始とニュートラル制御からの復帰とが、短いインターバルで繰返されることを回避できる。そのため、入力クラッチは、係合状態から解放状態、解放状態から係合状態という状態の変化を高い頻度で繰返すこともなくなる。その結果、係合時と解放時とにおける摩擦材がスリップする時間が短く、摩擦材の温度が上昇し蓄熱することもなく、良好にニュートラル制御の実行を制御できる、車両の制御装置を提供することができる。
【0015】
第2の発明に係る車両の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、検知手段は、車両の変速装置の出力軸回転数に基づいて駆動輪の回転数を検知するための手段を含む。
【0016】
第2の発明によると、たとえば、有段変速機の出力軸回転数や、無段変速機のセカンダリプーリ回転数に基づいて、駆動輪の回転数を検知して、この回転数に基づいて車両がスリップしている状況やスタックしている状況を判断して、ニュートラル制御の実行を許可しないようにする。
【0017】
第3の発明に係る車両の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加えて、判定手段は、回転数の時間変化率が予め定められた値より小さいと、ニュートラル制御の実行を許可するための手段を含む。
【0018】
第3の発明によると、回転数の時間変化率が予め定められた値より小さいと、車両がスリップしている状況やスタックしている状況ではないと判断して、ニュートラル制御の実行を許可する。
【0019】
第4の発明に係る車両の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加えて、判定手段は、回転数の時間変化率が予め定められた値以上であると、車両がスリップ状態またはスタック状態であると判断して、ニュートラル制御の実行を許可しないための手段を含む。
【0020】
第4の発明によると、回転数の時間変化率が予め定められた値以上であると、車両がスリップしている状況やスタックしている状況であると判断して、摩擦材の蓄熱による入力クラッチの破壊を避けるべく、ニュートラル制御の実行を許可しない。
【0021】
第5の発明に係る車両の制御装置においては、第4の発明の構成に加えて、判定手段は、ニュートラル制御の実行を許可しないと判定した後、その後の車両の発進時において回転数の時間変化率が予め定められた値より小さくなるまで、ニュートラル制御の実行を許可しない状態を継続するための手段を含む。
【0022】
第5の発明によると、車両がスリップしている状況やスタックしている状況であると判断して、ニュートラル制御の実行を許可しないように一旦判断された後には、スリップ状態やスタックは継続して発生する。そのため、ニュートラル制御の実行を許可しない後の車両の発進時において回転数の時間変化率が予め定められた値より小さくなるまで、ニュートラル制御の実行を許可しない状態を継続する。このため、スリップしている状況やスタックしている状況から、完全に抜け出すまでニュートラル制御を実行しないようにすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0024】
本発明の実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECU(Electronic Control Unit)1000により実現される。本実施の形態では、自動変速機を流体継手としてトルクコンバータを備え、歯車式変速機構を有する自動変速機として説明する。なお、自動変速機は、ベルト式などの無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよい。
【0025】
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU1000により実現される。
【0026】
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、トルクコンバータ200と、自動変速機300と、ECU1000とから構成される。
【0027】
エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサ400により検知されるエンジン100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
【0028】
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ210と、入力軸側のポンプ羽根車220と、出力軸側のタービン羽根車230と、ワンウェイクラッチ250を有し、トルク増幅機能を発現するステータ240とから構成される。トルクコンバータ200と自動変速機300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ410により検知される。自動変速機300の出力軸回転数NOUTは、出力軸回転数センサ420により検知される。
【0029】
図2に自動変速機300の作動表を示す。図2に示す作動表によると、摩擦要素であるクラッチ要素(図中のC1〜C4)や、ブレーキ要素(B1〜B4)、ワンウェイクラッチ要素(F0〜F3)が、どのギヤ段の場合に係合および解放されるかを示している。車両の発進時に使用される1速時には、クラッチ要素(C1)、ワンウェイクラッチ要素(F0、F3)が係合する。これらのクラッチ要素の中で、特にクラッチ要素C1を入力クラッチ310という。この入力クラッチ310は、前進クラッチやフォワードクラッチとも呼ばれ、図2の作動表に示すように、パーキング(P)ポジション、後進走行(R)ポジション、ニュートラル(N)ポジション以外の、車両が前進するための変速段を構成する際に必ず係合状態で使用される。
前進走行(D)ポジションであって、車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチ310を解放して所定のスリップ状態にして、ニュートラルに近い状態にする制御をニュートラル制御という。
【0030】
これらのパワートレーンを制御するECU1000は、エンジン100を制御するエンジンECU1010と、自動変速機300を制御するECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU1020と、VSC(Vehicle Stability Control)_ECU1030とを含む。
【0031】
ECT_ECU1010には、タービン回転数センサ410からタービン回転数NTを表わす信号が、出力軸回転数センサ420から出力軸回転数NOUTを表わす信号が入力される。また、ECT_ECU1010には、エンジンECU1010から、エンジン回転数センサ400にて検知されたエンジン回転数NEを表わす信号と、スロットルポジションセンサにて検知されたスロットル開度を表わす信号とが入力される。
【0032】
これら回転数センサは、トルクコンバータ200の入力軸、トルクコンバータ200の出力軸および自動変速機300の出力軸に取り付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転数センサは、トルクコンバータ200の入力軸、トルクコンバータ200の出力軸および自動変速機300の出力軸の僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
【0033】
さらに、ECT_ECU1010には、VSC_ECU1030から、Gセンサにて検知された車両加速度を表わす信号と、ブレーキ圧を表わす信号とが入力される。
【0034】
ECT_ECU1020から、自動変速機300に、入力クラッチ310の係合圧指令信号と、ソレノイド制御信号が出力される。また、ECT_ECU1020においては、車両の発進時における出力軸回転数NOUTの時間変化率(車輪速の時間変化率=車輪速の加速度)を算出して、この時間変化率が予め定められた値よりも大きいと、この車両がスリップ状態やスタック状態であると判断して、次回からのニュートラル制御の実行を許可しない。
【0035】
具体的には、スリップ状態やスタック状態であると判断されると、スタック状態フラグをリセット状態からセット状態に変更して、このスタック状態フラグがセット状態であるとニュートラル制御実行フラグをセット状態からリセット状態にして、ニュートラル制御の実行を行なわないように制御される。
【0036】
図3を参照して、本実施の形態に係る制御装置のECT_ECU1020において実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0037】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECT_ECU1020は、スタック状態検出フラグがセット状態であるか否かを判断する。スタック状態検出フラグがセット状態であると(S100にてYES)、処理はS800へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS200へ移される。
【0038】
S200にて、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御実行フラグをセットする。S300にて、ECT_ECU1020は、予め定められたニュートラル制御の実行条件が成立すると(この実行条件には、ニュートラル制御実行フラグがセット状態であることを含む)、ニュートラル制御を実行し入力クラッチC1を解放する。
【0039】
S400にて、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御からの復帰状態になったか否かを判断する。ニュートラル制御からの復帰の判断は、ECT_ECU1020に入力される信号に基づいて、それらの信号が予め定められた条件を満足しているか否かにより行なわれる。ニュートラル制御からの復帰状態になると(S400にてYES)、処理はS500へ移される。もしそうでないと(S400にてNO)、この処理は終了する。なお、この図3に示すフローチャートはサブルーチンであって、この処理を終了するとは、メインルーチンに戻るということを示す。
【0040】
S500にて、ECT_ECU1020は、スタック状態であるか否かの判定を行なう。この判定は、ECT_ECU1020に入力される出力軸回転数の時間変化率に基づいて行なわれる。この時間変化率は、車輪速の加速度ともいえる。この出力軸回転数の時間変化率や車輪速の加速度が予め定められたしきい値以上のときのスタック状態と判定される。スタック状態と判定されると(S500にてYES)、処理はS600へ移される。もしそうでないと(S500にてNO)、処理はS700へ移される。
【0041】
S600にて、ECT_ECU1020は、スタック状態検出フラグをセットする。S700にて、ECT_ECU1020は、スタック状態検出フラグをリセットする。S600およびS700の処理の後、処理は終了する。
【0042】
S800にて、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御実行フラグをリセットする。このS800における処理の後、処理は終了する。
【0043】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECT_ECU1020を搭載した車両の動作について説明する。
【0044】
車両の状態が、スタック状態であるか否かが判定され(S500)、スタック状態であると(S500にてYES)、スタック状態検出フラグがセットされる(S600)。
【0045】
ニュートラル制御の開始判断前において、スタック状態検出フラグがセット状態でない場合には(S100にてNO)ニュートラル制御実行フラグがセットされて(S200)、ニュートラル制御が実行される(S300)。
【0046】
一方、ニュートラル制御の開始判断前において、スタック状態検出フラグがセット状態であると(S100にてYES)、この車両はスタック状態であるかまたはスリップ状態であるため、ニュートラル制御実行フラグがリセットされる(S800)。それ以降の車両の発進時においてスタック状態でないと判定されるまでスタック状態検出フラグがセット状態であり続けるために、ニュートラル制御実行フラグがリセット状態であることが継続され、ニュートラル制御が実行されることはない。
【0047】
以下、図4を参照して、この車両の動作についてさらに詳しく説明する。図4は、横軸を時間軸としたタイミングチャートである。
【0048】
車両の運転者によりアクセルペダルが踏み込まれるとアクセル開度が開きニュートラル制御からの復帰と判断される(S400にてYES)。出力軸回転数の時間変化率(車輪速の加速度)が算出されて、出力軸回転数の時間変化率や車輪側の加速度が予め定められたしきい値以上の時には(S500にてYES)、スタック状態検出フラグがセットされる(S600)。これが、スタック時やスリップ時であって、図4(C)の実線で示されるものである。
【0049】
一方、出力軸回転数の時間変化率や車輪側の加速度が予め定められたしきい値よりも小さい場合には、車両はスタック状態やスリップ状態ではないと判断され(S500にてNO)、スタック状態検出フラグがリセットされる(S700)。これが図4(C)の点線に対応する。
【0050】
一旦S600にてスタック状態検出フラグがセットされると、ニュートラル制御の実行前に、スタック状態検出フラグがセット状態であるか否かが判断されてスタック状態検出フラグがセット状態であるため(S100にてYES)、ニュートラル制御実行フラグがリセット状態のままとなる。
【0051】
たとえば、スタック状態やスリップ状態から車両が離脱して車両の発進時にスタック状態でないと判定されると(S500にてNO)、スタック状態検出フラグがリセットされる(S700)。スタック状態検出フラグがリセットされ(S700)、次回のニュートラル制御が実行される前にスタック状態検出フラグがセット状態ではないため(S100にてNO)、ニュートラル制御実行フラグがセットされ(S200)、ニュートラル制御が実行される。すなわち、一旦スタック状態であると判定された後、この車両においてスタック状態でないと判定されるまで、スタック状態検出フラグがセット状態であり続けるので、ニュートラル制御が実行されることはない。
【0052】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECT_ECUによると、自動変速機の出力軸回転数などに基づいて、車両がスリップ状態やスタック状態であるか否かを判断する。車両がスリップ状態やスタック状態である場合には、入力クラッチC1の摩擦による蓄熱を避けるため、インターバルが非常に短いニュートラル制御の実行とニュートラル制御からの復帰を回避するように制御される。その結果、ニュートラル制御を実行する車両において、車両がスリップ状態やスタック状態に陥った場合にはニュートラル制御を実行しないようにして、ニュートラル制御に関して制御される入力クラッチC1を蓄熱により損傷させることを回避することができる。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置であるECT_ECUを含むパワートレーンの制御ブロック図である。
【図2】図1に示す自動変速機の作動表である。
【図3】ECT_ECUで実行されるニュートラル実行可否処理のプログラムの制御構造を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置であるECT_ECUが搭載された車両の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
100 エンジン、200 トルクコンバータ、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、240 ステータ、250 ワンウェイクラッチ、300 自動変速機、310 入力クラッチ、400エンジン回転数センサ、410 タービン回転数センサ、420 出力軸回転数センサ、1000 ECU、1010 エンジンECU、1020 ECT_ECU、1030 VSC_ECU。
Claims (5)
- 前進走行ポジションで車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御装置を搭載した車両の制御装置であって、
前記車両の発進時における、駆動輪の回転数を検知するための検知手段と、
前記検知手段により検知された回転数の時間変化率に基づいて、ニュートラル制御の実行の許可を判定するための判定手段とを含む、車両の制御装置。 - 前記検知手段は、前記車両の変速装置の出力軸回転数に基づいて駆動輪の回転数を検知するための手段を含む、請求項1に記載の車両の制御装置。
- 前記判定手段は、前記回転数の時間変化率が予め定められた値より小さいと、前記ニュートラル制御の実行を許可するための手段を含む、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
- 前記判定手段は、前記回転数の時間変化率が予め定められた値以上であると、車両がスリップ状態またはスタック状態であると判断して、前記ニュートラル制御の実行を許可しないための手段を含む、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
- 前記判定手段は、前記ニュートラル制御の実行を許可しないと判定した後、その後の車両の発進時において前記回転数の時間変化率が予め定められた値より小さくなるまで、前記ニュートラル制御の実行を許可しない状態を継続するための手段を含む、請求項4に記載の車両の制御装置。
Priority Applications (1)
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