JP2005015593A - 発泡性スチレン系樹脂粒子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】スチレン系樹脂樹脂粒子に発泡剤を含浸させて得られる発泡性スチレン系樹脂粒子である。上記発泡性スチレン系樹脂粒子は,その表面に,ヒドロキシアルキルアミン類と,DSCにおける吸熱開始温度が60〜110℃で,かつ吸熱ピーク温度が100〜145℃の脂肪酸アマイド類とを被覆してなる。
【選択図】 なし
Description
【技術分野】
本発明は,予備発泡時に優れたブロッキング防止性能を発揮できると共に,成形時に優れた融着性を示すことができる発泡性スチレン系樹脂粒子に関する。
【0002】
【従来技術】
一般に,発泡性スチレン系樹脂の成形においては,まず,ブタンやペンタン等の発泡剤を含有する発泡性スチレン系樹脂粒子をスチームで加熱し,発泡させ,予備発泡粒子を得る。次いで,この予備発泡粒子を,スチーム孔を有する型内に充填し,スチームにより加熱し二次発泡させて成形している。
【0003】
上記発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡時に,ビーズ間の融着,即ちブロッキングが発生すると,金型に充填した時に金型の隅まで予備発泡粒子が充填され難くなったり,充填ガン等を用いて充填したときに,予備発泡粒子が詰まってしまうという不具合を発生する。
予備発泡工程においては,予備発泡粒子が相互に融着するのを防止し,成形時に予備発泡粒子が流動性を保ち,かつ予備発泡粒子の自動充填を行えることが望まれている。
この目的のために,発泡性スチレン系樹脂粒子の表面をステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩で被覆することが一般的に行われている。
【0004】
このように発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を被覆する方法としては,例えば,ステアリン酸亜鉛,高級脂肪酸,高級脂肪酸ビスアマイド,高級脂肪酸の金属石鹸からなる複合滑剤を使用する方法(特許文献1参照),グリセリン脂肪酸エステル及びステアリン酸亜鉛及び/または無機物を使用する方法(特許文献2参照),高級脂肪酸の金属塩と,常温で液体の脂肪酸エステル及び常温で固体の脂肪酸エステルとを使用する方法(特許文献3参照)等が提案されている。
【0005】
しかしながら,これらの方法は,いずれもステアリン酸亜鉛等の重金属塩を使用している。このような重金属の使用は,環境上理由から近年問題視されており,重金属塩を含まない適当な物質で置き換えることが望まれている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭55−127441号公報
【特許文献2】
特開平4−320434号公報
【特許文献3】
特開平6−116435号公報
【0007】
【解決しようとする課題】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,重金属を含まず,予備発泡時に優れたブロッキング防止性能を発揮できると共に,成形時に優れた融着性を示すことができる発泡性スチレン系樹脂粒子を提供しようとするものである。
【0008】
【課題の解決手段】
本発明は,スチレン系樹脂樹脂粒子に発泡剤を含浸してなる発泡性スチレン系樹脂粒子において,
上記発泡性スチレン系樹脂粒子は,その表面に,ヒドロキシアルキルアミン類と,DSCにおける吸熱開始温度が60〜110℃で,かつ吸熱ピーク温度が100〜145℃の脂肪酸アマイド類とを被覆してなることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子にある(請求項1)。
【0009】
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子においては,発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に帯電防止剤としてのヒドロキシアルキルアミン類とブロッキング防止剤としての脂肪酸アマイド類とが被覆されている。
そのため,発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させる工程において,粒子の帯電を抑制し,発泡機内で発泡粒子同士が融着することを抑えることができる。それ故,上記発泡性スチレン系樹脂粒子は,ステアリン酸亜鉛等の重金属を使用せずに,代わりにヒドロキシアルキルアミン類を用いても充分に予備発泡時のブロッキングを抑制することができるものとなる。
【0010】
尚,本発明において,重金属とは,密度の大きい金属(一般的には4〜5g/cm3以上の金属)全てではなく,水質汚濁防止法に挙げられ,環境を汚染する可能性が高い,水銀,カドミウム,鉛,クロム,亜鉛,マンガン,銅のことである。
【0011】
また,本発明においては,上記のように,DSCにおける吸熱開始温度が60〜110℃で,かつ吸熱ピーク温度が100〜145℃の脂肪酸アマイド類を被覆させている。
そのため,上記発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させる時に,例えば100℃付近の加熱水蒸気(スチーム)を導入しても,脂肪酸アマイド類は溶融しない。それ故,上記発泡性スチレン系樹脂粒子は,予備発泡時に,予備発泡樹脂粒子同士が融着することを安定して抑制することができ,優れたブロッキング防止性能を発揮することができる。
【0012】
一方,成形時においては,このとき導入される例えば120℃付近の加熱水蒸気(スチーム)で,脂肪酸アマイド類の大部分が溶融する。そのため,成形時における発泡粒子同士の融着を阻害することがなく,優れた融着性を示すことができる。
【0013】
以上のように,本発明によれば,重金属を含まず,予備発泡時に優れたブロッキング防止性能を発揮できると共に,成形時に優れた融着性を示すことができる発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において,ヒドロキシアルキルアミン類は,脂肪族炭化水素基と水酸基とを有するアミン類であり,例えば,N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ドデシルアミン,N,N−ビス(ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン,N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン,N,N−ビス(ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン,N−ヒドロキシエチル−N−(2−ヒドロキシテトラデシル)アミン,N−ヒドロキシエチル−N−(2−ヒドロキシヘキサデシル)アミン,N−ヒドロキシエチル−N−(2−ヒドロキシオクタデシル)アミン,N−ヒドロキシプロピル−N−(2−ヒドロキシテトラデシル)アミン,N−ヒドロキシブチル−N−(2−ヒドロキシテトラデシル)アミン,N−ヒドロキシペンチル−N−(2−ヒドロキシテトラデシル)アミン,N−ヒドロキシペンチル−N−(2−ヒドロキシヘキサデシル)アミン,N−ヒドロキシペンチル−N−(2−ヒドロキシオクタデシル)アミン,N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデシルアミン,N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン,N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン,N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン,オクチルジエタノールアミン,ウンデシルジエタノールアミン,ドデシルジエタノールアミン,テトラデシルジエタノールアミン,ヘキサデシルジエタノールアミン,オクタデシルジエタノールアミン等がある。これらのヒドロキシアルキルアミン類は,単独または2種類以上混合して使用することもできる。
【0015】
また,ヒドロキシアルキルアミン類の量は,発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.001〜1重量部であることが好ましい。更に好ましくは0.005〜0.2重量部がよい。
ヒドロキシアルキルアミン類の量が0.001重量部未満の場合には,発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させる工程で帯電が発生し,その結果予備発泡時におけるブロッキングの抑制効果が充分に得られないおそれがある。
一方,1重量部を越える場合には,発泡性スチレン系樹脂粒子の流動性が悪くなり,その結果予備発泡時におけるブロッキングの抑制効果が充分に得られないおそれがある。また,この場合には,発泡成形したときに発泡成形体の表面外観が悪くなる恐れがある。
【0016】
また,本発明においては,上記発泡性スチレン系樹脂粒子に,DSCにおける吸熱開始温度が60〜110℃で,かつ吸熱ピーク温度が100〜145℃の脂肪酸アマイド類を被覆させる。脂肪酸アマイド類は,ブロッキング防止剤としての役割を果たすことができる。
【0017】
DSCにおける吸熱開始温度が110℃を超える場合,又は吸熱ピーク温度が145℃を超える場合には,成形時に導入される120℃付近のスチームで脂肪酸アマイド類の大部分が溶融せず,発泡粒子同士の融着を阻害し,成形時の融着性が低下する恐れがある。一方,DSCにおける吸熱開始温度が60℃未満の場合,又は吸熱ピーク温度が100℃未満の場合には,予備発泡時に導入される100℃付近のスチームで脂肪酸アマイド類が溶融し,予備発泡樹脂粒子同士が融着し,予備発泡時のブロッキング量が増大する恐れがある。
【0018】
DSCにおける吸熱開始温度及び吸熱ピーク温度は,各種サンプル2〜4mgを,TAインスツルメン社製2010型DSC測定器を用い,空気中で20℃〜300℃まで10℃/分の昇温速度で加熱して得られるDSC曲線から求めることができる。尚,後述する図1に,示差走査熱量測定によって求められるDSC曲線における吸熱開始温度及び吸熱ピーク温度を示す(実施例参照)。
【0019】
脂肪酸アマイド類は,飽和及び不飽和の脂肪酸アマイド類であり,例えば,パルミチン酸アマイド,ベヘン酸アマイド,ヒドロキシステアリン酸アマイド等のモノアマイド類;N−パルミチンパルミチン酸アマイド,N−ステアリル12ヒドロキシステアリン酸アマイド等の置換アマイド類;メチロールステアリン酸アマイド,メチロールベヘン酸アマイド等のメチロールアマイド類;メチレンビスステアリン酸アマイド,メチレンビスラウリン酸アマイド,メチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド,エチレンビスステアリン酸アマイド,エチレンビスイソステアリン酸アマイド,エチレンビスヒロロキシステアリン酸アマイド,エチレンビスベヘン酸アマイド,ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド,ヘキサメチレンビスベヘン酸アマイド,ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド,N,N−ジステアリルアジピン酸アマイド,N,N−ジステアリルセバシン酸アマイド,メチレンビスオレイン酸アマイド,エチレンビスオレイン酸アマイド,エチレンビスエルカ酸アマイド,ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド,N,N−ジオレイルアジピン酸アマイド,N,N−ジオレイルセバシン酸アマイド等のビスアマイド類等がある。また,これらの脂肪酸アマイド類は,単独または2種類以上混合して使用することもできる。
【0020】
好ましくは,一般式RCONHCH2OH(但し,Rは,炭素数が8〜30のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,シクロアルキル基,シクロアルケニル基,シクロアルキニル基,及びアリール基等である)で表されるメチロールアマイド類がよい。より好ましくは,Rが炭素数8〜30のアルキル基であるメチロールアマイド類がよい。
【0021】
また,本発明では,必要に応じて,ヒドロキシルアルキルアミン類や脂肪酸アマイド類の他に,ブロッキング防止剤,帯電防止剤,融着改良剤,及び抗菌剤等を併用して上記発泡性スチレン系樹脂粒子に被覆させることができる。
【0022】
他のブロッキング防止剤としては,例えばシリカ,炭酸カルシウム,タルク,ポリエチレンワックス,ポリプロピレンワックスやステアリン酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸が挙げられる。
帯電防止剤としては,例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系界面活性剤;アルキルスルホン酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルホスフェート等のアニオン系界面活性剤;テトラアルキルアンモニウム塩,トリアルキルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤等がある。また,これらのブロッキング防止剤や帯電防止剤は,単独または2種類以上混合して使用することもできる。
【0023】
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は,スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて得られる。スチレン系樹脂粒子としては,ポリスチレン,ゴム変性ポリスチレン,ABS樹脂,AS樹脂,及びAES樹脂などよりなる樹脂粒子を用いることができる。これらは単独で用いても,2種類以上混合して用いても良い。
【0024】
スチレン系樹脂粒子の樹脂成分の種類としては,例えば,スチレン単独重合体が挙げられる。また,スチレンモノマーと,このスチレンモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体を用いることもできる。
【0025】
スチレンモノマーと共重合可能なモノマーとしては,例えば,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸プロピル,アクリル酸ブチル,アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸の炭素数が1〜10のアルキルエステル等;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸プロピル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸の炭素数が1〜10のアルキルエステル等;α−メチルスチレン,o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,ビニルトルエン,p−エチルスチレン,2,4−ジメチルスチレン,p−メトキシスチレン,p−フェニルスチレン,o−クロロスチレン,m−クロロスチレン,p−クロロスチレン,2,4−ジクロロスチレン,p−n−ブチルスチレン,p−t−ブチルスチレン,p−n−ヘキシルスチレン,p−オクチルスチレン,スチレンスルホン酸,スチレンスルホン酸ナトリウム等;アクリロニトリル,メタクリロニトリル等のニトリル基含有不飽和化合物等の,スチレンモノマー誘導体のモノマー等がある。これらは単独で,または二種以上を組み合わせて,スチレンモノマーと共重合させることができる。
【0026】
尚,スチレンモノマー及びスチレンモノマーと共重合可能なモノマー成分を,スチレン系モノマーと称する。
但し,スチレンモノマー以外に,これらのモノマーを併用する場合には,スチレン系樹脂を重合する際のスチレン系モノマーの全重量に対して,スチレンモノマーの重量を,50%以上にすることが好ましい。
【0027】
次に,上記発泡性スチレン系樹脂粒子は,GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)の値が16万〜40万の間にあることが好ましい。
重量平均分子量が16万未満の場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して得られる発泡成形体の強度が低下する恐れがある。一方,重量平均分子量が40万を越える場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し,目標の発泡倍率(例えば50〜60倍)まで発泡させることが困難になったり,成形時に発泡性スチレン系樹脂粒子同士が融着にくくなり,成形品強度が低下する恐れがある。より好ましくは18万〜38万,さらに好ましくは20万〜35万である。尚,上記重量平均分子量はGPC法により測定した値である。
【0028】
また,上記発泡性スチレン系樹脂粒子中のスチレン系樹脂成分は,そのメルトフローレート(MFR)の値が0.5〜30g/10分であることが好ましい。この場合には,工業的に有用な製造効率を保ちつつ上記発泡性スチレン系樹脂粒子を生産することができ,かつこの発泡性スチレン系樹脂粒子から得られる発泡成形体の力学物性が優れるという効果を得ることができる。
【0029】
上記メルトフローレート(MFR)が,0.5g/10分未満の場合には,発泡性スチレン系樹脂粒子の製造効率,なかでも溶融混練工程での生産性が低下するおそれがある。一方,MFRが30g/10分を超える場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡成形体の圧縮強度,引張強度などの力学物性が低くなるおそれがある。なお,より好ましくは,1〜10g/10分,さらに好ましくは1〜5g/10分である。
【0030】
尚,発泡性スチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は,ISO 1133に準じて測定することができる。具体的には,例えばスチレン系樹脂粒子を105℃で1時間以上状態調整した後,自動MFR測定機(テクノセブン社製 全自動MFR試験機280,ダイ;長さ8mm×内径2.1mm)を用いて,試験温度200℃,試験荷重5kgの条件で測定することができる。
【0031】
発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法としては,例えば特開平7−79376号公報及び特開平8−253510号公報に開示されている方法がある。
即ち,まず重合開始剤及び懸濁剤の存在下にて,スチレン系単量体を水性媒体中に分散させる。その後,重合反応を開始し,該重合反応の前後または途中で発泡剤を添加し,発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法である。
【0032】
また,他の製造方法としては,押出機内にてスチレン系樹脂と揮発性発泡剤とを溶融混練し,押出機先端のダイの細孔より押出し,直ちに水中へ導入し急冷し,未発泡の状態で粒子化し,発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法がある。また,押出機中でスチレン系樹脂を溶融混練し,ストランドカット,ホットカット,水中カット等の方法により0.5mg/ケ〜5mg/ケの大きさの粒子とし,得られたスチレン系樹脂の樹脂粒子を密閉容器中に,懸濁剤の存在下で水性媒体に分散させる。その後,揮発性発泡剤を樹脂粒子に含浸させて,発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法がある(特開2000−178373号公報参照)。
【0033】
また,発泡剤としては,常温で液体状または気体状の易揮発性の有機化合物で,その沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下のものを,単独または2種以上で使用できる。このような発泡剤としては,窒素,二酸化炭素等の無機ガス,プロパン,n−ブタン,イソブタン,n−ペンタン,イソペンタン,シクロペンタン,n−ヘキサン,シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素,ジメチルエーテル,ジエチルエーテル,フラン等のエーテル類,メチルアルコール,エチルアルコール,プロピルアルコール等のアルコール類,HCFC−141b,HCFC−142,HCFC−124,HFC−152a,HFC−134a等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0034】
好ましくは,上記発泡剤は,炭素数が3〜6の炭化水素がよい。
この場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子は,製品ライフが長く,発泡倍率の高いものとなる。炭素数が2個以下の炭化水素を用いた場合には,上記発泡性スチレン系樹脂粒子からの発泡剤の逸散性が高いために製品ライフが非常に短くなる恐れがある。炭素数が7個以上の場合には,発泡力が低下し,目標の発泡倍率まで発泡させることが困難になるおそれがある。
【0035】
尚,炭素数が3〜6個の炭化水素としては,プロパン,ノルマルブタン,イソペンタン,ノルマルペンタン,イソペンタン,ネオペンタン,ヘキサン等の脂肪族炭化水素や,シクロブタン,シクロペンタン等の脂環族炭化水素が挙げられる。更に好ましくは,炭素数4〜5個の炭化水素がよい。
【0036】
また,発泡性スチレン系樹脂粒子にヒドロキシアルキルアミン類と脂肪酸アマイド類を被覆する方法としては,例えば,リボンブレンダー,ヘンシェルミキサー,スーパーミキサー,タンブラー等のミキサーで行うことができる。
【0037】
次に,上記脂肪酸アマイド類は,DSCにおける吸熱開始温度が70〜100℃で,かつ吸熱ピーク温度が100〜120℃であることが好ましい(請求項2)。
この場合には,予備発泡時においては,このとき導入される100℃付近の高温のスチームによっても,脂肪酸アマイド類がより溶融しにくくなり,上記発泡性スチレン系樹脂粒子は,より優れたブロッキング防止性能を発揮できるものとなる。また,成形時においては,このとき導入される120℃付近の高温のスチームで脂肪酸アマイド類の大部分がより溶融し易くなり,上記発泡性スチレン系樹脂粒子は,より優れた融着性を示すことができる。
さらに好ましくは,DSCにおける吸熱開始温度が80〜100℃で,かつ吸熱ピーク温度が110〜120℃の脂肪酸アマイド類がよい。
【0038】
次に,上記脂肪酸アマイド類の50%粒子径は,0.5〜20μmであることが好ましい(請求項3)。
この場合には,予備発泡時におけるブロッキング防止性能及び成形時における融着性をさらに向上させることができる。より好ましくは0.5〜10μmがよい。脂肪酸アマイド類の50%粒子径が20μmを超える場合には,予備発泡時にブロッキング防止効果が充分に得られない恐れがある。
【0039】
また,脂肪酸アマイド類の10%粒子径に対する90%粒子径の比は,1〜20であることが好ましい。
この場合には,予備発泡時におけるブロッキング防止性能を向上させ,成形時における融着性をさらに向上させることができる。より好ましくは,1〜10がよい。
【0040】
脂肪酸アマイド類の10%粒子径に対する90%粒子径の比が20を超える場合には,大きな粒子径のブロッキング防止剤の割合が増えるため,予備発泡時におけるブロッキング防止効果が充分に得られない恐れがある。
【0041】
上記の脂肪酸アマイド類の50%粒子径,及び10%粒子径に対する90%粒子径の比は,脂肪酸アマイド類を水中に分散させ,レーザー回折散乱法(独SYMPATEC社製)により粒度分布を測定し,全粒子の体積に対する累積体積が10%,50%,90%になる時の粒子径をそれぞれ10%粒子径,50%粒子径,90%粒子径として求めることができる。このときの粒子の形状ファクターは1(球形)とする。
【0042】
次に,上記脂肪酸アマイド類は,上記発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.001〜0.5重量部添加されていることが好ましい(請求項4)。
脂肪酸アマイド類の添加量が0.001重量部未満の場合には,予備発泡時のブロッキング防止効果が充分に得られないおそれがある。一方,0.5重量部を超えると,成形時の融着性が低下するおそれがある。
【0043】
次に,上記ヒドロキシアルキルアミン類は,アルキルジエタノールアミンであることが好ましい(請求項5)。
アルキルジエタノールアミン類とは,一般式R−N−(CH2CH2OH)2(但し,Rは,炭素数が8〜30のアルキル基,又はシクロアルキル基である)で表され,例えば,オクチルジエタノールアミン,ウンデシルジエタノールアミン,ドデシルジエタノールアミン,テトラデシルジエタノールアミン,ヘキサデシルジエタノールアミン,オクタデシルジエタノールアミン等があげられる。好ましくは,Rの炭素数が8〜16であるものがよい。
【0044】
次に,上記発泡性スチレン系樹脂粒子には,さらに脂肪酸エステル類が被覆されていることが好ましい(請求項6)。
この場合には,成形時に脂肪酸エステル類が溶融して,発泡粒子同士の融着を促進することができる。即ち,成形時における融着性をさらに向上させることができる。
【0045】
脂肪酸エステル類としては,2−エチルヘキサン酸ヘキサデシル,ヤシ脂肪酸メチル,ラウリン酸メチル,ミリスチン酸イソプロピル,パルミチン酸イソプロピル,パルミチン酸2−エチルヘキシル,牛脂脂肪酸メチル,ミリスチン酸オクチルドデシル,ステアリン酸メチル,ステアリン酸ブチル,ステアリン酸2−エチルヘキシル,ステアリン酸イソトリデシル,カプリン酸メチル,ミリスチン酸メチル,オレイン酸メチル,オレイン酸イソブチル,オレイン酸オクチル,オレイン酸ラウリル,オレイン酸オレイル,ミリスチン酸ミリスチル,ステアリン酸ステアリル,オレイン酸2−エチルヘキシル,オレイン酸デシル,オレイン酸イソブチル等の脂肪酸と1価のアルコールのエステル,ソルビタンモノラウレート,ソルビタンモノパルミテート,ソルビタンモノステアレート,ソルビタントリステアレート,ソルビタンモノオレエート,ソルビタントリオレエート,ソルビタントリステアレート,ポリエチレングリコールモノラウレート,ポリエチレングリコールモノステアレート,ポリエチレングリコールジステアレート,ペンタエリスリトールモノステアレート,グリセリンモノステアレート,グリセリンジステアレート,グリセリントリステアレート,グリセリンモノオレエート,硬化牛脂,硬化ヒマシ油等の脂肪酸と多価アルコールのエステル等が挙げられる。特に好ましくは,グリセリンモノステアレート,グリセリンジステアレート,グリセリントリステアレート等のグリセリン脂肪酸エステルである。これらの脂肪酸エステル類は,単独または2種類以上混合して使用することもできる。
【0046】
また,脂肪酸エステル類の量は,発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.01〜1重量部であることが好ましい。更に好ましくは0.05〜0.5重量部である。
脂肪酸エステル類の量が0.01重量部未満の場合には,発泡粒子同士の融着を促進する効果が充分に得られないおそれがある。一方,1重量部を越える場合には,成形体の内部融着を上げる効果がほぼ飽和に達し,かつ発泡力が低下し,目標の発泡倍率まで発泡させることが困難になるおそれがある。
【0047】
次に,上記発泡性スチレン系樹脂粒子にヒドロキシアルキルアミン類を被覆するに当り,カルボン酸類を併用することが好ましい(請求項7)。
ヒドロキシアルキルアミン類を被覆するに当り,カルボン酸類を併用することで,ヒドロキシアルキルアミン類の分散性を改善することができる。そのため,この場合には,予備発泡時の帯電をさらに抑制することができ,ブロッキング防止効果をより顕著に得ることができる。
【0048】
上記のカルボン酸類としては,ギ酸,酢酸,プロピオン酸,酪酸,ラウリン酸,オレイン酸,カプロン酸,カプリル酸,リノール酸,リノレン酸,クエン酸等が挙げられる。また,これらのカルボン酸類は,単独または2種類以上混合して使用することもできる。
【0049】
次に,上記カルボン酸類の主成分は,クエン酸であることが好ましい(請求項8)。
ヒドロキシアルキルアミン類を被覆するに当り,クエン酸を主成分とするカルボン酸類を併用することで,ヒドロキシアルキルアミン類の分散性がさらに改善される。そのため,予備発泡時の帯電がより一層抑制され,ブロッキング防止効果をさらに顕著に得ることができる。
【0050】
【実施例】
次に,本発明の実施例にかかる発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する例を示す。
まず,以下の製造例1〜4に示す方法により,4種類の発泡性スチレン系樹脂粒子(発泡性スチレン系樹脂粒子A〜D)を準備した。
【0051】
製造例1
「発泡性スチレン系樹脂粒子A」
撹拌機付きの50リットルのオートクレーブに,イオン交換水18リットルと難水溶性の無機系懸濁剤としての第3リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)63gと,界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)0.54gを投入した。
【0052】
次いで,撹拌下に重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド(日本油脂株式会社製,純度75%)を45g(純品換算で33.75g)とt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート27gと有機臭素化合物としての1,2,5,6−テトラブロモシクロオクタン(第一エフアール社製;ピロガードFR200)108gと,可塑剤として硬化牛脂180gを溶解させたスチレンモノマー18kgとを投入した。
【0053】
次に,撹拌下で30分間室温のまま放置した後,1時間半かけて90℃まで昇温し,更に6時間半かけて100℃まで昇温した。この間,90℃到達後から5時間目後に,ブタン1.7kgをオートクレーブに圧入した。その後さらに,110℃まで3時間かけて昇温し,110℃を5時間保持した。続いて,4時間かけて30℃まで冷却し,発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。
【0054】
さらに,発泡性スチレン系樹脂粒子を遠心分離機にて脱水し,流動乾燥装置で表面付着水分を除去した。その後,目開きが0.7mmと1.4mmの篩いで篩い分け,粒子径が0.7〜1.4mmの発泡性スチレン系樹脂粒子Aを得た。
【0055】
製造例2
「発泡性スチレン系樹脂粒子B」
撹拌機付きの50リットルのオートクレーブに,イオン交換水20リットルと,難水溶性の無機系懸濁剤としての第3リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)80gと,界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)0.8gとを投入した。
【0056】
次いで,撹拌下に,重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを45gとt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート27gと,可塑剤としてシクロヘキサン270gと硬化牛脂135gを溶解させたスチレンモノマー18kgとを投入した。
【0057】
次に,撹拌下で30分間室温のまま放置した後,1時間半かけて90℃まで昇温し,更に5時間半かけて100℃まで昇温した。この間,90℃到達後から4時間目にブタン1.7kgをオートクレーブに圧入した。その後さらに,100℃から110℃まで1時間半かけて昇温し,そのまま撹拌下にて110℃を2時間保持した。続いて,4時間かけて30℃まで冷却し,発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。
【0058】
さらに,発泡性スチレン系樹脂粒子を遠心分離機にて脱水し,流動乾燥装置で表面付着水分を除去した。その後,目開きが0.7mmと1.4mmの篩いで篩い分け,粒子径が0.7〜1.4mmの発泡性スチレン系樹脂粒子Bを得た。
【0059】
製造例3
「発泡性スチレン系樹脂粒子C」
撹拌機付きの50リットルオートクレーブに,イオン交換水18リットルと,難水溶性の無機系懸濁剤としての第3リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)63gと,界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)0.54gとを投入した。
【0060】
次いで,撹拌下に,重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを45gとt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート27gと,可塑剤として流動パラフィン(松村石油研究所社製 モレスコホワイトP60)180gを溶解させたスチレンモノマー18kgを投入した。
【0061】
次に,撹拌下で30分間室温のまま放置した後,1時間半かけて90℃まで昇温し,更に5時間かけて110℃まで昇温した。この間,90℃到達後から3時間半後にブタン1.7kgをオートクレーブに圧入した。その後さらに,そのまま撹拌下にて110℃を4時間保持した。続いて,4時間かけて30℃まで冷却し,発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。 さらに,発泡性スチレン系樹脂粒子を遠心分離機にて脱水し,流動乾燥装置で表面付着水分を除去した。その後,目開きが0.7mmと1.4mmの篩いで篩い分け,粒子径が0.7〜1.4mmの発泡性スチレン系樹脂粒子Cを得た。
【0062】
製造例4
「発泡性スチレン系樹脂粒子D」
スチレン系樹脂粒子としてポリスチレン(エー・アンド・エム スチレン社製 HH102)を100重量部,アルミニウム粉(ダイヤ工業社製No30000,鱗片状アルミニウム粉)3重量部をミキサーで混合した後,Φ30mmの単軸押出機で200〜220℃の温度で溶融混合し,溶融した樹脂を押出機先端のダイよりストランド状に押し出し,直ちに約30℃の水槽に導入して冷却後,ストランドカッターにより,重量が約1mg/個の円柱状のアルミニウム粉を含有する樹脂粒子を作成した。
【0063】
次いで,撹拌機付き50リットルオートクレーブに,上記アルミニウム粉を含有する樹脂粒子,イオン交換水18リットル,難水溶性の無機系懸濁剤としての第3リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)160g,界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)1.6g,難燃剤として2,2−ビス(4−アリルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン(帝人化成製;ファイヤガード3200)128g,NaCl(並塩)32gを16kg投入し180rpmで撹拌した。
【0064】
そして,スチームにより加温し,内温が90℃に到達したところで,発泡剤としてペンタン(ノルマルペンタン約80%,イソペンタン約20%の混合物)1.2kgを30分かけて徐々に添加した。その後,90℃で5時間保持した後,120℃まで昇温し更に6時間保持した後,40℃まで4時間かけて冷却した。
【0065】
次いで,得られたものを遠心分離器にて脱水し,酸洗浄してスチレン系樹脂粒子の表面の第3リン酸カルシウムを除去した。その後,流動乾燥装置で上面付着水分を除去し,発泡性スチレン系樹脂粒子Dを得た。
【0066】
次に,以下の実施例1〜8のようにして,上記製造例1〜4にて得られた発泡性スチレン系樹脂粒子A〜Dに,ヒドロキシアルキルアミン類と脂肪酸アマイド類を被覆し,発泡性スチレン系樹脂粒子を作製し,さらにスチレン系樹脂発泡体を得た。
【0067】
(実施例1)
上記発泡性スチレン系樹脂粒子A 10kgと,脂肪酸アマイド類としてメチロールステアリン酸アマイド(日本化成社製 メチロールアマイド 微粉)5g,ヒドロキシアルキルアミン類としてアルキルジエタノールアミン(アルキル鎖の炭素数12を主成分とする炭素数8〜18の混合物)の5%水溶液(アルキルジエタノールアミン1gと脱イオン水 18.8g,クエン酸 0.2gの混合物)20g,グリセリン2.5g,グリセリントリステアレート15g,グリセリンモノステアレート6.4gとを,リボンミキサーで10分間撹拌混合した。
このようにしてヒドロキシアルキルアミン類と脂肪酸アマイド類とを被覆してなる発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0068】
次に,上記にて得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を30Lのバッチ式発泡機により,嵩密度20g/lに発泡させ,予備発泡粒子を得た。続いて,得られた予備発泡粒子を1日間室温で放置(熟成)し,25×75×300mmの金型内に充填し0.07MPaの蒸気吹き込み圧で20秒間加熱成形し,発泡成形体を得た。
【0069】
次に,脂肪酸アマイド類のDSCにおける吸熱開始温度及び吸熱ピーク温度,50%平均粒子径,脂肪酸アマイド類の10%粒子径に対する90%粒子径の比,予備発泡時のブロッキング量,及びスチレン系樹脂発泡成形体の内部融着の度合いを下記の方法によって評価した。
【0070】
「DSCにおける吸熱開始温度及び吸熱ピーク温度」
各種サンプル2〜4mgを,TAインスツルメン社製2010型DSC測定器を用い,空気中で20℃〜300℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し,DSC曲線を求め,このDSC曲線から吸熱開始温度と吸熱ピーク温度を求めた。図1に,示差走査熱量測定によって求められるDSC曲線における吸熱開始温度(図1中のA)及び吸熱ピーク温度(図1中のB)を記載した。
また,2つ以上吸熱ピークが現れるサンプルについては,最も低い吸熱開始温度と,最も大きいピークの吸熱ピーク温度の値を用いた。
その結果を後述する表1に示す。
【0071】
「脂肪酸アマイド類の50%粒子径」
脂肪酸アマイド類を水中に分散させ,レーザー回折散乱法(独SYMPATEC社製)により粒度分布を測定し,全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒子径を50%粒子径として求めた。粒子の形状ファクターは1(球形)とした。その結果を後述する表1に示す。
【0072】
「脂肪酸アマイド類の10%粒子径に対する90%粒子径の比」
脂肪酸アマイド類を水中に分散させ,レーザー回折散乱法(独SYMPATEC社製)により粒度分布を測定し,全粒子の体積に対する累積体積が10%,90%になる時の粒子径をそれぞれ10%粒子径,90%粒子径とし,90%粒子径を10%粒子径で除した値を用いた。粒子の形状ファクターは1(球形)とした。その結果を後述する表1に示す。
【0073】
「予備発泡時のブロッキング量」
内容積が30Lのバッチ式発泡機を予熱しておき,発泡性スチレン系樹脂粒子300gを発泡機の上から投入して,40rpmで撹拌しながら,発泡機下部よりスチームを導入し,50倍に発泡した。次に,得られた予備発泡粒子を室温で24時間乾燥させた後,目開き3.75mmの篩にかけ,篩上に残留した重量を測定し,篩にかけた全予備発泡粒子の重量で除算し,ブロッキング量として算出し,3%未満を「◎」,3〜5%を「○」,5%を超える場合を「×」と評価した。その結果を後述する表1に示す。
【0074】
「スチレン系樹脂発泡成形体の内部融着の度合い」
発泡成形体を破断し,破断面において予備発泡粒子の界面に生じた裂けを目視にて観察した。予備発泡粒子の全ての界面で裂けが発生している場合を0%とし,予備発泡粒子の界面で裂けが全く生じていない場合を100%として評価した。尚,評価は0%から100%の10%毎の10段階にて行った。その結果を後述する表1に示す。
【0075】
(実施例2)
本例では,実施例1における発泡性スチレン系樹脂粒子Aの代わりに発泡性スチレン系樹脂粒子Bを用い,また,脂肪酸アマイド類としてメチロールベヘン酸アマイド(日本化成社製 クローバエースKN 微粉)3gを用い,グリセリン2.5g,ポリメチルフェニルシロキサン2.5g,グリセリントリステアレート5g,グリセリンモノステアレート5gと混合する他は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。さらに,実施例1と同様にして,得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して発泡成形体を作製し,実施例1と同様の評価を行った。その結果を後述する表1に示す。
【0076】
(実施例3)
本例では,実施例1における発泡性スチレン系樹脂粒子Aの代わりに発泡性スチレン系樹脂粒子Cを用い,また,脂肪酸アマイド類としてエチレンビスステアリン酸アマイド(日本化成社製 スリパックスE 微粉)10gを用い,グリセリン2.5g,ポリメチルフェニルシロキサン2.5g,グリセリントリステアレート5g,グリセリンモノステアレート5gと混合する他は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。さらに,実施例1と同様にして,得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して発泡成形体を作製し,実施例1と同様の評価を行った。その結果を後述する表1に示す。
【0077】
(実施例4)
本例では,実施例1における発泡性スチレン系樹脂粒子Aの代わりに発泡性スチレン系樹脂粒子Dを用い,また,脂肪酸アマイド類としてメチレンビスステアリン酸アマイド(日本化成社製 ビスアマイドLA 微粉)15gを用いた他は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。さらに,実施例1と同様にして,得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して発泡成形体を作製し,実施例1と同様の評価を行った。その結果を後述する表1に示す。
【0078】
(実施例5)
本例では,脂肪酸アマイド類としてメチレンビスステアリン酸アマイド(日本化成社製 ビスアマイドLA 標準粉)1gを用いた他は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。さらに,実施例1と同様にして,得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して発泡成形体を作製し,実施例1と同様の評価を行った。その結果を後述する表1に示す。
【0079】
(実施例6)
本例では,脂肪酸アマイド類としてステアリン酸アマイド(日本化成社製 ダイヤミッドAP−1 微粉)5gを用いた他は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。さらに,実施例1と同様にして,得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して発泡成形体を作製し,実施例1と同様の評価を行った。その結果を後述する表2に示す。
【0080】
(実施例7)
本例では,脂肪酸アマイド類としてヒドロキシステアリン酸アマイド(日本化成社製 ダイヤミッドKH 微粉)5gを用いた他は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。さらに,実施例1と同様にして,得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して発泡成形体を作製し,実施例1と同様の評価を行った。その結果を後述する表2に示す。
【0081】
(実施例8)
本例では,脂肪酸アマイド類としてメチロールステアリン酸アマイド(日本化成社製 メチロールアマイド 微粉)30gを用い,ヒドロキシアルキルアミン類として,アルキルジエタノールアミン(アルキル鎖の炭素数12を主成分とする炭素数8〜18の混合物)5%水溶液(アルキルジエタノールアミン1g,脱イオン水13g,イソプロピルアルコール6gの混合物)20gを用い,さらにグリセリン,グリセリントリステアレート,及びグリセリンモノステアレートを添加しなかった他は,実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。さらに,実施例1と同様にして,得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して発泡成形体を作製し,実施例1と同様の評価を行った。その結果を後述する表2に示す。
【0082】
次に,比較のために以下に示す比較例1〜3を行った。
(比較例1)
本例では,実施例1における脂肪酸アマイド類を用いる代わりにステアリン酸亜鉛5gを用い,また,ヒドロキシアルキルアミン類を被覆させない他は実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。
さらに,実施例1と同様にして,得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して発泡成形体を作製し,実施例1と同様の評価を行った。その結果を後述する表2に示す。
【0083】
(比較例2)
本例では,脂肪酸アマイド類としてラウリン酸アマイド(日本化成社製 ダイヤミッドY 微粉)5gに変える他は,実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。さらに,実施例1と同様にして,得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して発泡成形体を作製し,実施例1と同様の評価を行った。その結果を後述する表2に示す。
【0084】
(比較例3)
本例では,脂肪酸アマイド類としてエチレンビスラウリン酸アマイド(日本化成社製 スピパックスL 粗粉)5gに変える他は,実施例1と同様にして発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。さらに,実施例1と同様にして,得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を成形して発泡成形体を作製し,実施例1と同様の評価を行った。その結果を後述する表2に示す。
【0085】
以上の各実施例及び各比較例における,脂肪酸アマイド類のDSCにおける吸熱開始温度,吸熱ピーク温度,50%粒子径,10%粒子径に対する90%粒子径の比,予備発泡時のブロッキング量,成形品の内部融着,重金属の使用有無について表1及び表2に示した。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
表1及び表2より知られるごとく,本発明の実施例にかかる発泡性スチレン系樹脂粒子(実施例1〜8)は,既知の一般的にはステアリン酸亜鉛を含むコーティング組成物と比較した時に,重金属を含まず,優れたブロッキング防止性能を有し,同時に優れた成形時の融着能を有する発泡性スチレン系樹脂粒子であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1にかかる,示差走査熱量測定によって求められるDSC曲線を示す説明図。
Claims (8)
- スチレン系樹脂樹脂粒子に発泡剤を含浸してなる発泡性スチレン系樹脂粒子において,
上記発泡性スチレン系樹脂粒子は,その表面に,ヒドロキシアルキルアミン類と,DSCにおける吸熱開始温度が60〜110℃で,かつ吸熱ピーク温度が100〜145℃の脂肪酸アマイド類とを被覆してなることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。 - 請求項1において,上記脂肪酸アマイド類は,DSCにおける吸熱開始温度が70〜100℃で,かつ吸熱ピーク温度が100〜120℃であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 請求項1または2において,上記脂肪酸アマイド類の50%粒子径は,0.5〜20μmであることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 請求項1〜3のいずれか1項において,上記脂肪酸アマイド類は,上記発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して0.001〜0.5重量部添加されていることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 請求項1〜4のいずれか1項において,上記ヒドロキシアルキルアミン類は,アルキルジエタノールアミンであることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 請求項1〜5のいずれか1項において,上記発泡性スチレン系樹脂粒子には,さらに脂肪酸エステル類が被覆されていることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 請求項1〜6のいずれか1項において,上記発泡性スチレン系樹脂粒子にヒドロキシアルキルアミン類を被覆するに当り,カルボン酸類を併用することを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 請求項7において,上記カルボン酸類の主成分は,クエン酸であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。
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