JP2005014238A - 無機質板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】積載時に基板どうしが付着することを防ぎ、かつ、無機質板裏面の防水性を高め、エフロレッセンスや反りの発生を防ぐことができる無機質板の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともセメント成分を固形分として含有する原料スラリーを抄造、押出し、または注型し、得られた湿潤板を成形、前養生、オートクレーブ養生する無機質板の製造方法において、前養生して得られた基板の裏面に、樹脂成分のガラス転移温度が60〜80℃であるアクリル系樹脂塗料を塗布した後、オートクレーブ養生し、無機質板裏面に防水性塗膜を形成する。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくともセメント成分を固形分として含有する原料スラリーを抄造、押出し、または注型し、得られた湿潤板を成形、前養生、オートクレーブ養生する無機質板の製造方法において、前養生して得られた基板の裏面に、樹脂成分のガラス転移温度が60〜80℃であるアクリル系樹脂塗料を塗布した後、オートクレーブ養生し、無機質板裏面に防水性塗膜を形成する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、無機質板の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、エフロレッセンスの発生や反りを防止し、積載時やオートクレーブ養生時のブロッキングを防ぐことのできる無機質板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
無機質板は、外壁材、屋根材等の外装材として広く用いられており、表面に柄、目地等の凹凸模様、着色、塗装等の施された多種多様の意匠を有するものが提供されている。
【0003】
無機質板は、通常、少なくともセメントを固形分として含有する原料スラリーを抄造、押出し、または注型して湿潤板とし、これをプレス機によって脱水成形して模様付けし、次いで前養生、オートクレーブ養生して得られる。さらに、意匠性や耐候性を向上させる目的で塗装が施されている。
【0004】
しかし、このような無機質板の製造方法では、塗装は表面のみに施される場合が多く、無機質板裏面の防水性が不十分なために、オートクレーブ養生工程においてしばしばセメントの石灰成分が溶け出し、エフロレッセンスが発生するという問題があった。また、無機質板が施工前に現場で野積みされ、風雨に曝された場合にも、無機質板裏面からの吸水により、エフロレッセンスが発生していた。
【0005】
無機質板裏面のエフロレッセンスは、化粧被膜の密着性や無機質板の意匠性には直接影響しないものの、無機質板そのものの劣化を生じさせ、強度の低下や経年による退色、破損等の大きな問題に発展する恐れがあった。さらに、無機質板裏面からの吸水は、エフロレッセンスの発生だけでなく、無機質板の反りの原因にもなるため、現場での施工に支障を来たすという問題もあった。
【0006】
そこで、前養生後の基板裏面にワックスやエマルジョン塗料を塗布し、防水性塗膜を形成することにより、無機質板裏面に防水性を付与する方法が提案された。しかし、このような方法は、無機質板裏面に防水性を付与する上では十分に効果的であったものの、積載時に基板どうしが付着し、ブロッキングが生じて良好な基板が得られないという新たな問題を引き起こした。また、高温でのオートクレーブ養生により防水性塗膜が再軟化され、ワックスや塗料樹脂が溶出したり、基板どうしが強固に密着したりし、十分な防水性や意匠性が得られなくなるという問題も起こった。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−240211号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題を解決するものとして、無機質板裏面に無機塗料を塗布し、高温においても軟化しない無機塗膜を形成する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、無機塗料は、高価な上、複雑な造膜条件を必要とするため、製造コストの上昇や工程の煩雑化につながるという問題があった。また、無機塗料の塗布量が多ければ無機塗膜にクラックが発生しやすくなり、防水性が維持できなくなるという問題もあった。
【0009】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、積載時に基板どうしが付着することを防ぎ、かつ、無機質板裏面の防水性を高め、エフロレッセンスや反りの発生を長期にわたり防ぐことができる無機質板の製造方法を提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、少なくともセメント成分を固形分として含有する原料スラリーを抄造、押出し、または注型し、得られた湿潤板を成形、前養生、オートクレーブ養生する無機質板の製造方法において、前養生して得られた基板の裏面に、樹脂成分のガラス転移温度が60〜80℃であるアクリル系樹脂塗料を塗布した後、オートクレーブ養生し、防水性塗膜を形成することを特徴とする無機質板の製造方法を提供する。
【0011】
また、この出願の発明は、第2には、アクリル系樹脂塗料がスチレンモノマーを20〜30 wt%含有するものである前記の無機質板の製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の無機質板の製造方法は、少なくともセメント成分を固形分として含有する原料スラリーを抄造、押出しまたは注型し、成形、前養生して得られる基板の裏面に、樹脂成分のガラス転移温度(Tg)が60〜80℃であるアクリル系樹脂塗料を塗布した後、積載し、オートクレーブ養生することにより防水性塗膜を裏面に有する無機質板を得るものである。
【0013】
このとき、原料スラリーの組成や、抄造、押出しまたは注型の条件、成形条件、および前養生の条件はとくに限定されない。無機質板の製造において通常用いられる組成や条件を適用すればよい。
【0014】
この出願の発明の無機質板の製造方法において使用されるアクリル系樹脂塗料は、Tgが60〜80℃の樹脂成分を含有するものであればよく、このような樹脂成分は、1種類のホモポリマー(例えば、ポリメタクリル酸メチル)からなるものであっても、2種以上のメタクリル酸やアクリル酸の共重合体(例えば、メチルメタクリレート−ブチルアクリレートコポリマー)、あるいはメタクリル酸やアクリル酸とその他のモノマーの共重合体(例えば、メチルアクリレート−エチレンコポリマー)からなるものであっても、複数種のホモポリマーやコポリマーの混合物からなるものであってもよい。
【0015】
アクリル系樹脂塗料中の樹脂成分のTgが60℃未満の場合には、基板裏面に塗布された樹脂成分が軟質なため、積載時に基板どうしが付着しやすくなり、オートクレーブ養生により塗膜が形成された際にブロッキングが生じてしまう。一方、アクリル系樹脂塗料中の樹脂成分のTgが80℃より高い場合には、積載時の付着は見られないものの、基板裏面に塗布された樹脂成分を硬化させるために要する熱量が大幅に増大するため、均一な防水性塗膜を得ることが困難になる。
【0016】
このようなアクリル系樹脂塗料は、樹脂成分が有機溶媒に溶解された溶剤系アクリル樹脂塗料であっても、樹脂成分が水系溶媒に分散されたアクリルエマルジョン塗料であってもよい。
【0017】
また、この出願の発明の無機質板の製造方法において、アクリル系樹脂塗料は、樹脂成分以外に、スチレンモノマーを20〜30 wt%で含有していることが望ましい。スチレンモノマーを20〜30 wt%添加することにより、アクリル系樹脂塗料の粘度が低下し、アクリル系樹脂塗料が基板に適度に含浸されるようになると同時に、樹脂成分の硬化性が高まる。したがって、オートクレーブ養生後に、基板にアンカリングされた均一な防水性塗膜が形成され、無機質板裏面の防水性が高まる。一方、スチレンモノマーの含有量が20 wt%未満の場合には、稀に樹脂成分の硬化性が不十分となり、無機質板裏面の防水性が低下することがある。また、スチレンモノマーの含有量が30 wt%より多い場合には、反対に、アクリル系樹脂塗料が速乾性となり、防水性塗膜が不均一なものとなったり、クラックが発生したりすることがある。
【0018】
この出願の発明の無機質板の製造方法において、基板裏面に塗布されるアクリル系樹脂塗料は、前記の樹脂成分やスチレンモノマーのほかに、架橋剤、乳化剤、顔料、無機粉体等を含有していてもよい。
【0019】
とくに、アクリル系樹脂塗料が無機粉体を含有する場合には、防水性塗膜上に微細な凹凸が形成され、無機質板の積載時に裏面の接触面積が減少するため、ブロッキング防止効果がより増大する。このような無機粉体としては、砂、砕石、スラグ、パーライト、珪砂、珪藻土、シリカ、フライアッシュ等が例示される。無機粉体の粒径は、とくに限定されないが、例えば、10〜40μmとすることができる。無機粉体の粒径が10μm未満の場合には、得られる防水性塗膜に十分な凹凸が形成されず、無機粉体の効果が小さくなる場合があり、粒径が40μmより大きい場合には、アクリル系樹脂塗料中の樹脂成分との均一分散性が低下するだけでなく、樹脂成分と無機粉体の間に空隙ができやすくなるため、防水性塗膜が不均一となり無機質板裏面の防水性が低下する場合がある。また、このとき、無機粉体の添加量はとくに限定されないが、20 wt%未満の場合には、十分に無機粉体添加の効果が得られず、30 wt%よりも多い場合には、無機粉体の凝集が起こりやすくなることから、20〜30 wt%とすることが望ましい。
【0020】
この出願の発明の無機質板の製造方法では、アクリル系樹脂塗料の塗装方法はとくに限定されない。刷毛、ローラー、スプレー等の一般的な方法で基板裏面に塗布することができる。
【0021】
なお、この出願の発明の無機質板の製造方法は、少なくともセメント成分を固形分として含有する原料スラリーを抄造、押出しまたは注型し、成形、前養生して得られる基板の裏面に、樹脂成分のTgが60〜80℃であるアクリル系樹脂塗料を塗布し、積載、オートクレーブ養生して無機質板裏面に防水性塗膜を形成することを特徴とするものであるが、それ以外の工程についてはとくに限定されるものではない。例えば、基板表面へのシーラー塗装や上塗り塗装等の工程を有していてもよい。
【0022】
以上のとおりのこの出願の発明の無機質板の製造方法では、前養生後の基板裏面に塗布されるアクリル系樹脂塗料中の樹脂成分が60〜80℃のTgを有するため、アクリル系樹脂塗料を塗布した後に基板を積載しても基板どうしが付着しない。したがって、オートクレーブ養生工程においてこの樹脂成分が硬化しても、ブロッキングが起こらず、均一な防水性塗膜が形成される。また、このようにして得られる無機質板は、裏面に高い防水性を有することから、製造工程、施工前、あるいは長期使用中におけるエフロレッセンスの発生や反りが防止される。
【0023】
以下、実施例を示し、さらにこの出願の発明の無機質板の製造方法について説明する。もちろん、この出願の発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については、様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0024】
【実施例】
以下の実施例において、基板は、セメントおよび繊維を主成分とするスラリーを抄造、プレス成形した後、前養生して得た。
<実施例1>
樹脂成分のTgが60℃で、不揮発分濃度(NV)を12 wt%に調整した水溶性アクリル系樹脂塗料を、基板裏面にwetで50 g/m2塗布し、上段の基板の裏面と下段の基板の表面が接触するように積載し、150℃のオートクレーブで養生した。
【0025】
得られた無機質板におけるブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を目視にて確認した。
【0026】
結果を表1に示した。
<実施例2>
樹脂成分のTgを80℃とした以外は、実施例1と同様の方法により無機質板を製造し、得られた無機質板におけるブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を確認した。結果を表1に示した。
<実施例3>
樹脂成分のTgが70℃で、不揮発分濃度(NV)を11 wt%に調整した水溶性アクリル系樹脂塗料に、スチレンモノマーを20 wt%加え、基板裏面にwetで80 g/m2塗布し、実施例1と同様に積載した後、オートクレーブ養生した。
【0027】
得られた無機質板におけるブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を目視にて確認し、結果を表1に示した。
<実施例4>
スチレンモノマーの添加量を30 wt%とした以外は、実施例3と同様の方法により無機質板を製造し、ブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を確認した。結果を表1に示した。
<実施例5>
実施例2で使用した水溶性アクリル系樹脂塗料にフライアッシュを25 wt%加え、無機質基板の裏面にwetで60 g/m2塗布し、実施例1と同様に積載した後、オートクレーブ養生した。
【0028】
得られた無機質板におけるブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を目視にて確認し、結果を表1に示した。
<比較例1>
水溶性アクリル系樹脂塗料における樹脂成分のTgを55℃とした以外は、実施例1と同様の方法により無機質板を製造し、ブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を確認した。結果を表1に示した。
<比較例2>
樹脂成分のTgを85℃とした以外は、実施例1と同様の方法により無機質板を製造し、ブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を確認した。結果を表1に示した。
<比較例3>
スチレンモノマーの添加量を15 wt%とした以外は、実施例3と同様の方法により無機質板を製造し、ブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を確認した。結果を表1に示した。
<比較例4>
スチレンモノマーの添加量を50 wt%とした以外は、実施例3と同様の方法により無機質板を製造し、ブロッキング、エフロレッセンス、およびクラックの発生度を目視にて確認した。結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
表1より、樹脂成分のTgが60〜80℃であるアクリル系樹脂塗料を基板裏面に塗布して得られる無機質板では、アクリル系樹脂塗料がスチレンモノマーを含有しない場合(実施例1、2)、アクリル系樹脂塗料がスチレンモノマーを20〜30 wt%含有する場合(実施例3、4)、アクリル系樹脂塗料が無機粉体を含有する場合(実施例5)のいずれにおいても、オートクレーブ養生後にブロッキングが起らないことが確認された。また、いずれの場合にも、得られた無機質板裏面には、エフロレッセンスやクラックの発生が見られず、高い防水性が付与されることが確認できた。
【0030】
一方、樹脂成分のTgが60℃未満の場合には、積載時に基板どうしの付着が見られ、オートクレーブ養生後にはブロッキングが起った。(比較例1)
また、樹脂成分のTgが80℃より高い場合には、積載やオートクレーブ養生時にブロッキングは起こらなかったものの、オートクレーブ養生後に得られた塗膜にクラックが見られ、エフロレッセンスが発生した。(比較例2)
さらに、アクリル系樹脂塗料中のスチレンモノマー含有量が20 wt%未満の場合には、ブロッキングやクラックは見られなかったものの、エフロレッセンスが若干見られたことから、防水性が不十分となることが示唆された。(比較例3)
また、アクリル系樹脂塗料中のスチレンモノマー含有量が30 wt%より多い場合には、ブロッキングは見られなかったものの、塗膜にクラックが見られ、エフロレッセンスが発生した。(比較例4)
【0031】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明の無機質板の製造方法により、無機質板裏面に防水性の高い塗膜が形成され、無機質板裏面からの吸水による反りやエフロレッセンスの発生が防止できる。また、この出願の発明の無機質板の製造方法では、アクリル系樹脂塗料を基板裏面に塗布した後、基板を積載しても基板どうしが付着しないため、オートクレーブ養生後のブロッキングが起こらない。したがって、無機質板の生産性を低下させることなく、無機質板裏面に高い防水性を付与できる。
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、無機質板の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、エフロレッセンスの発生や反りを防止し、積載時やオートクレーブ養生時のブロッキングを防ぐことのできる無機質板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
無機質板は、外壁材、屋根材等の外装材として広く用いられており、表面に柄、目地等の凹凸模様、着色、塗装等の施された多種多様の意匠を有するものが提供されている。
【0003】
無機質板は、通常、少なくともセメントを固形分として含有する原料スラリーを抄造、押出し、または注型して湿潤板とし、これをプレス機によって脱水成形して模様付けし、次いで前養生、オートクレーブ養生して得られる。さらに、意匠性や耐候性を向上させる目的で塗装が施されている。
【0004】
しかし、このような無機質板の製造方法では、塗装は表面のみに施される場合が多く、無機質板裏面の防水性が不十分なために、オートクレーブ養生工程においてしばしばセメントの石灰成分が溶け出し、エフロレッセンスが発生するという問題があった。また、無機質板が施工前に現場で野積みされ、風雨に曝された場合にも、無機質板裏面からの吸水により、エフロレッセンスが発生していた。
【0005】
無機質板裏面のエフロレッセンスは、化粧被膜の密着性や無機質板の意匠性には直接影響しないものの、無機質板そのものの劣化を生じさせ、強度の低下や経年による退色、破損等の大きな問題に発展する恐れがあった。さらに、無機質板裏面からの吸水は、エフロレッセンスの発生だけでなく、無機質板の反りの原因にもなるため、現場での施工に支障を来たすという問題もあった。
【0006】
そこで、前養生後の基板裏面にワックスやエマルジョン塗料を塗布し、防水性塗膜を形成することにより、無機質板裏面に防水性を付与する方法が提案された。しかし、このような方法は、無機質板裏面に防水性を付与する上では十分に効果的であったものの、積載時に基板どうしが付着し、ブロッキングが生じて良好な基板が得られないという新たな問題を引き起こした。また、高温でのオートクレーブ養生により防水性塗膜が再軟化され、ワックスや塗料樹脂が溶出したり、基板どうしが強固に密着したりし、十分な防水性や意匠性が得られなくなるという問題も起こった。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−240211号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題を解決するものとして、無機質板裏面に無機塗料を塗布し、高温においても軟化しない無機塗膜を形成する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、無機塗料は、高価な上、複雑な造膜条件を必要とするため、製造コストの上昇や工程の煩雑化につながるという問題があった。また、無機塗料の塗布量が多ければ無機塗膜にクラックが発生しやすくなり、防水性が維持できなくなるという問題もあった。
【0009】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、積載時に基板どうしが付着することを防ぎ、かつ、無機質板裏面の防水性を高め、エフロレッセンスや反りの発生を長期にわたり防ぐことができる無機質板の製造方法を提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、少なくともセメント成分を固形分として含有する原料スラリーを抄造、押出し、または注型し、得られた湿潤板を成形、前養生、オートクレーブ養生する無機質板の製造方法において、前養生して得られた基板の裏面に、樹脂成分のガラス転移温度が60〜80℃であるアクリル系樹脂塗料を塗布した後、オートクレーブ養生し、防水性塗膜を形成することを特徴とする無機質板の製造方法を提供する。
【0011】
また、この出願の発明は、第2には、アクリル系樹脂塗料がスチレンモノマーを20〜30 wt%含有するものである前記の無機質板の製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の無機質板の製造方法は、少なくともセメント成分を固形分として含有する原料スラリーを抄造、押出しまたは注型し、成形、前養生して得られる基板の裏面に、樹脂成分のガラス転移温度(Tg)が60〜80℃であるアクリル系樹脂塗料を塗布した後、積載し、オートクレーブ養生することにより防水性塗膜を裏面に有する無機質板を得るものである。
【0013】
このとき、原料スラリーの組成や、抄造、押出しまたは注型の条件、成形条件、および前養生の条件はとくに限定されない。無機質板の製造において通常用いられる組成や条件を適用すればよい。
【0014】
この出願の発明の無機質板の製造方法において使用されるアクリル系樹脂塗料は、Tgが60〜80℃の樹脂成分を含有するものであればよく、このような樹脂成分は、1種類のホモポリマー(例えば、ポリメタクリル酸メチル)からなるものであっても、2種以上のメタクリル酸やアクリル酸の共重合体(例えば、メチルメタクリレート−ブチルアクリレートコポリマー)、あるいはメタクリル酸やアクリル酸とその他のモノマーの共重合体(例えば、メチルアクリレート−エチレンコポリマー)からなるものであっても、複数種のホモポリマーやコポリマーの混合物からなるものであってもよい。
【0015】
アクリル系樹脂塗料中の樹脂成分のTgが60℃未満の場合には、基板裏面に塗布された樹脂成分が軟質なため、積載時に基板どうしが付着しやすくなり、オートクレーブ養生により塗膜が形成された際にブロッキングが生じてしまう。一方、アクリル系樹脂塗料中の樹脂成分のTgが80℃より高い場合には、積載時の付着は見られないものの、基板裏面に塗布された樹脂成分を硬化させるために要する熱量が大幅に増大するため、均一な防水性塗膜を得ることが困難になる。
【0016】
このようなアクリル系樹脂塗料は、樹脂成分が有機溶媒に溶解された溶剤系アクリル樹脂塗料であっても、樹脂成分が水系溶媒に分散されたアクリルエマルジョン塗料であってもよい。
【0017】
また、この出願の発明の無機質板の製造方法において、アクリル系樹脂塗料は、樹脂成分以外に、スチレンモノマーを20〜30 wt%で含有していることが望ましい。スチレンモノマーを20〜30 wt%添加することにより、アクリル系樹脂塗料の粘度が低下し、アクリル系樹脂塗料が基板に適度に含浸されるようになると同時に、樹脂成分の硬化性が高まる。したがって、オートクレーブ養生後に、基板にアンカリングされた均一な防水性塗膜が形成され、無機質板裏面の防水性が高まる。一方、スチレンモノマーの含有量が20 wt%未満の場合には、稀に樹脂成分の硬化性が不十分となり、無機質板裏面の防水性が低下することがある。また、スチレンモノマーの含有量が30 wt%より多い場合には、反対に、アクリル系樹脂塗料が速乾性となり、防水性塗膜が不均一なものとなったり、クラックが発生したりすることがある。
【0018】
この出願の発明の無機質板の製造方法において、基板裏面に塗布されるアクリル系樹脂塗料は、前記の樹脂成分やスチレンモノマーのほかに、架橋剤、乳化剤、顔料、無機粉体等を含有していてもよい。
【0019】
とくに、アクリル系樹脂塗料が無機粉体を含有する場合には、防水性塗膜上に微細な凹凸が形成され、無機質板の積載時に裏面の接触面積が減少するため、ブロッキング防止効果がより増大する。このような無機粉体としては、砂、砕石、スラグ、パーライト、珪砂、珪藻土、シリカ、フライアッシュ等が例示される。無機粉体の粒径は、とくに限定されないが、例えば、10〜40μmとすることができる。無機粉体の粒径が10μm未満の場合には、得られる防水性塗膜に十分な凹凸が形成されず、無機粉体の効果が小さくなる場合があり、粒径が40μmより大きい場合には、アクリル系樹脂塗料中の樹脂成分との均一分散性が低下するだけでなく、樹脂成分と無機粉体の間に空隙ができやすくなるため、防水性塗膜が不均一となり無機質板裏面の防水性が低下する場合がある。また、このとき、無機粉体の添加量はとくに限定されないが、20 wt%未満の場合には、十分に無機粉体添加の効果が得られず、30 wt%よりも多い場合には、無機粉体の凝集が起こりやすくなることから、20〜30 wt%とすることが望ましい。
【0020】
この出願の発明の無機質板の製造方法では、アクリル系樹脂塗料の塗装方法はとくに限定されない。刷毛、ローラー、スプレー等の一般的な方法で基板裏面に塗布することができる。
【0021】
なお、この出願の発明の無機質板の製造方法は、少なくともセメント成分を固形分として含有する原料スラリーを抄造、押出しまたは注型し、成形、前養生して得られる基板の裏面に、樹脂成分のTgが60〜80℃であるアクリル系樹脂塗料を塗布し、積載、オートクレーブ養生して無機質板裏面に防水性塗膜を形成することを特徴とするものであるが、それ以外の工程についてはとくに限定されるものではない。例えば、基板表面へのシーラー塗装や上塗り塗装等の工程を有していてもよい。
【0022】
以上のとおりのこの出願の発明の無機質板の製造方法では、前養生後の基板裏面に塗布されるアクリル系樹脂塗料中の樹脂成分が60〜80℃のTgを有するため、アクリル系樹脂塗料を塗布した後に基板を積載しても基板どうしが付着しない。したがって、オートクレーブ養生工程においてこの樹脂成分が硬化しても、ブロッキングが起こらず、均一な防水性塗膜が形成される。また、このようにして得られる無機質板は、裏面に高い防水性を有することから、製造工程、施工前、あるいは長期使用中におけるエフロレッセンスの発生や反りが防止される。
【0023】
以下、実施例を示し、さらにこの出願の発明の無機質板の製造方法について説明する。もちろん、この出願の発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については、様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0024】
【実施例】
以下の実施例において、基板は、セメントおよび繊維を主成分とするスラリーを抄造、プレス成形した後、前養生して得た。
<実施例1>
樹脂成分のTgが60℃で、不揮発分濃度(NV)を12 wt%に調整した水溶性アクリル系樹脂塗料を、基板裏面にwetで50 g/m2塗布し、上段の基板の裏面と下段の基板の表面が接触するように積載し、150℃のオートクレーブで養生した。
【0025】
得られた無機質板におけるブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を目視にて確認した。
【0026】
結果を表1に示した。
<実施例2>
樹脂成分のTgを80℃とした以外は、実施例1と同様の方法により無機質板を製造し、得られた無機質板におけるブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を確認した。結果を表1に示した。
<実施例3>
樹脂成分のTgが70℃で、不揮発分濃度(NV)を11 wt%に調整した水溶性アクリル系樹脂塗料に、スチレンモノマーを20 wt%加え、基板裏面にwetで80 g/m2塗布し、実施例1と同様に積載した後、オートクレーブ養生した。
【0027】
得られた無機質板におけるブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を目視にて確認し、結果を表1に示した。
<実施例4>
スチレンモノマーの添加量を30 wt%とした以外は、実施例3と同様の方法により無機質板を製造し、ブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を確認した。結果を表1に示した。
<実施例5>
実施例2で使用した水溶性アクリル系樹脂塗料にフライアッシュを25 wt%加え、無機質基板の裏面にwetで60 g/m2塗布し、実施例1と同様に積載した後、オートクレーブ養生した。
【0028】
得られた無機質板におけるブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を目視にて確認し、結果を表1に示した。
<比較例1>
水溶性アクリル系樹脂塗料における樹脂成分のTgを55℃とした以外は、実施例1と同様の方法により無機質板を製造し、ブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を確認した。結果を表1に示した。
<比較例2>
樹脂成分のTgを85℃とした以外は、実施例1と同様の方法により無機質板を製造し、ブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を確認した。結果を表1に示した。
<比較例3>
スチレンモノマーの添加量を15 wt%とした以外は、実施例3と同様の方法により無機質板を製造し、ブロッキングとエフロレッセンスの発生度、および防水性塗膜におけるクラックの発生度を確認した。結果を表1に示した。
<比較例4>
スチレンモノマーの添加量を50 wt%とした以外は、実施例3と同様の方法により無機質板を製造し、ブロッキング、エフロレッセンス、およびクラックの発生度を目視にて確認した。結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
表1より、樹脂成分のTgが60〜80℃であるアクリル系樹脂塗料を基板裏面に塗布して得られる無機質板では、アクリル系樹脂塗料がスチレンモノマーを含有しない場合(実施例1、2)、アクリル系樹脂塗料がスチレンモノマーを20〜30 wt%含有する場合(実施例3、4)、アクリル系樹脂塗料が無機粉体を含有する場合(実施例5)のいずれにおいても、オートクレーブ養生後にブロッキングが起らないことが確認された。また、いずれの場合にも、得られた無機質板裏面には、エフロレッセンスやクラックの発生が見られず、高い防水性が付与されることが確認できた。
【0030】
一方、樹脂成分のTgが60℃未満の場合には、積載時に基板どうしの付着が見られ、オートクレーブ養生後にはブロッキングが起った。(比較例1)
また、樹脂成分のTgが80℃より高い場合には、積載やオートクレーブ養生時にブロッキングは起こらなかったものの、オートクレーブ養生後に得られた塗膜にクラックが見られ、エフロレッセンスが発生した。(比較例2)
さらに、アクリル系樹脂塗料中のスチレンモノマー含有量が20 wt%未満の場合には、ブロッキングやクラックは見られなかったものの、エフロレッセンスが若干見られたことから、防水性が不十分となることが示唆された。(比較例3)
また、アクリル系樹脂塗料中のスチレンモノマー含有量が30 wt%より多い場合には、ブロッキングは見られなかったものの、塗膜にクラックが見られ、エフロレッセンスが発生した。(比較例4)
【0031】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明の無機質板の製造方法により、無機質板裏面に防水性の高い塗膜が形成され、無機質板裏面からの吸水による反りやエフロレッセンスの発生が防止できる。また、この出願の発明の無機質板の製造方法では、アクリル系樹脂塗料を基板裏面に塗布した後、基板を積載しても基板どうしが付着しないため、オートクレーブ養生後のブロッキングが起こらない。したがって、無機質板の生産性を低下させることなく、無機質板裏面に高い防水性を付与できる。
Claims (2)
- 少なくともセメント成分を固形分として含有する原料スラリーを抄造、押出し、または注型し、得られた湿潤板を成形、前養生、オートクレーブ養生する無機質板の製造方法において、前養生して得られた基板の裏面に、樹脂成分のガラス転移温度が60〜80℃であるアクリル系樹脂塗料を塗布した後、オートクレーブ養生し、防水性塗膜を形成することを特徴とする無機質板の製造方法。
- アクリル系樹脂塗料は、スチレンモノマーを20〜30 wt%含有する請求項1の無機質板の製造方法。
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JP2003178197A JP2005014238A (ja) | 2003-06-23 | 2003-06-23 | 無機質板の製造方法 |
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JP2008142677A (ja) * | 2006-12-13 | 2008-06-26 | Nichiha Corp | 窯業系外壁材 |
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2003
- 2003-06-23 JP JP2003178197A patent/JP2005014238A/ja active Pending
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