JP2005000428A - 紙おむつ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】実際に紙おむつを使用している乳幼児を持つ消費者を対象に、紙おむつ用トップシートの風合い用語を抽出し、主観評価値と基本力学パラメータとの重回帰分析を行って得られた客観評価式Y=C0+ΣCi(Xi−Mi/σi)により求まる値によって基本風合いを客観的に最適評価された不織布を用いて紙おむつを構成するようにして、実際に紙おむつを使用している乳幼児を持つ消費者の主観評価値に対応した客観評価値により最適評価された不織布を使用できるようにしている。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、紙おむつに関し、さらに詳しくは肌に直接接触する部分を構成する不織布として、その基本風合いを客観的に評価する客観評価方法を用いて最適に評価して得られたものを用いた紙おむつに関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
布の風合いを基本力学特性から客観評価する方法は、従来から知られており、現在では、紳士用スーツ地、婦人用薄手布、外衣用ニット地、肌着用ニット地などのための用途別の風合い客観評価式が一般的に用いられている。
【0003】
また、最近では、不織布の風合い客観評価や、紙おむつ用トップシートの風合い客観評価法についても検討されている。
【0004】
しかしながら、これらの評価においては、いぜんとして紳士用スーツ地用として定義された基本風合いを用いており、紙おむつ用トップシートの風合いとしては、必ずしも満足できる結果が得られていない。
【0005】
例えば、紙おむつ用トップシートの基本風合いとして、紳士用スーツ地用の「こし」、「ぬめり」、「ふくらみ」を用いた場合、一般消費者の意見によると、特に基本風合い「ぬめり」に対する理解の困難さと、実際のトップシートとの不一致感が指摘されていた。
【0006】
そこで、本発明者らは、実際に乳幼児をもち、紙おむつの風合い評価を日常的に行っている消費者(即ち、母親)を対象に、トップシートの基本風合い用語を定義し、その客観評価式を開発し、この客観評価式を用いて紙おむつに使用される不織布の最適化を図った。
【0007】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、実際に紙おむつを使用している乳幼児を持つ消費者が主として用いる基本風合い用語に基づいて風合い評価を数値化して得られた最適な不織布を用いることにより、消費者ニーズに合わせた製品が得られるようにすることを目的としている。
【0008】
なお、本願発明者らの調査した範囲では、実際に乳幼児をもち、紙おむつの風合いを日常的に行っている消費者(即ち、母親)を対象に、トップシートの基本風合い用語を定義し、その客観評価式を開発することを目的とし、さらに、そのときの各種条件を規定することを意図した公知文献は発見することはできなかった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、実際に紙おむつを使用している乳幼児を持つ消費者を対象に、紙おむつ用トップシートの風合い用語を抽出し、主観評価値と基本力学パラメータとの重回帰分析を行って得られた客観評価式
Y=C0+ΣCi(Xi−Mi/σi)
ここで、Y:客観的に求まる各基本風合い、
C0,Ci:係数(i=1〜3,4)、
Xi:基本力学パラメータ、
Mi:基本力学パラメータの平均値、
σi:基本力学パラメータの標準偏差
により求まる値によって基本風合いを客観的に最適評価された不織布を用いて紙おむつを構成している。
【0010】
上記のように構成したことにより、実際に紙おむつを使用している乳幼児を持つ消費者の主観評価値に対応した客観評価値により最適評価された不織布を使用できることとなり、消費者ニーズに合わせた製品が得られる。
【0011】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第2の手段として、上記第1の手段を備えた紙おむつにおいて、前記基本風合いの最適評価値を、「なめらかさ」については4〜8、「ソフトさ」については4〜7、「こし」については3〜5、「ふくらみ」については3〜6とすることもでき、そのようにした場合、基本風合いの最適評価を数値により規定できることとなり、より消費者ニーズに合わせた製品が得られる。
【0012】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2の手段を備えた紙おむつにおいて、前記基本力学パラメータを、布の引っ張り特性、曲げ特性、剪断特性、圧縮特性、表面特性等の基本力学特性から求められるパラメータに対して相関分析およびクラスター分析を行い、重相関係数=0.8以上とした変数増減法による重回帰分析を行って得られた所定数のパラメータとすることもでき、そのようにした場合、基本力学パラメータの数を必要最小限に絞ることができることとなり、予測式の導出が容易となる。
【0013】
【発明の効果】
本願発明によれば、実際に紙おむつを使用している乳幼児を持つ消費者を対象に、紙おむつ用トップシートの風合い用語を抽出し、主観評価値と基本力学パラメータとの重回帰分析を行って得られた客観評価式
Y=C0+ΣCi(Xi−Mi/σi)
ここで、Y:客観的に求まる各基本風合い、
C0,Ci:係数(i=1〜3,4)、
Xi:基本力学パラメータ、
Mi:基本力学パラメータの平均値、
σi:基本力学パラメータの標準偏差
により求まる値によって基本風合いを客観的に最適評価された不織布を用いて紙おむつを構成するようにしているので、実際に紙おむつを使用している乳幼児を持つ消費者の主観評価値に対応した客観評価値により最適評価された不織布を使用できることとなり、消費者ニーズに合わせた製品が得られるという効果がある。また、これまで判断できなかった主観評価を客観的に評価することができるので、主観評価にかかる時間を短縮できることとなり、迅速に開発を進めることができるという効果もある。さらに、基本風合いを個別に表すことができるので、消費者のニーズに合わせた設計が可能となるという効果もある。
【0014】
本願発明の第2の手段におけるように、上記第1の手段を備えた紙おむつにおいて、前記基本風合いの最適評価値を、「なめらかさ」については4〜8、「ソフトさ」については4〜7、「こし」については3〜5、「ふくらみ」については3〜6とすることもでき、そのようにした場合、基本風合いの最適評価を数値により規定できることとなり、より消費者ニーズに合わせた製品が得られる。
【0015】
本願発明の第3の手段におけるように、上記第1又は第2の手段を備えた紙おむつにおいて、前記基本力学パラメータを、布の引っ張り特性、曲げ特性、剪断特性、圧縮特性、表面特性等の基本力学特性から求められるパラメータに対して相関分析およびクラスター分析を行い、重相関係数=0.8以上とした変数増減法による重回帰分析を行って得られた所定数のパラメータとすることもでき、そのようにした場合、基本力学パラメータの数を必要最小限に絞ることができることとなり、予測式の導出が容易となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
まず、本願発明にかかる紙おむつにおいて適用される紙おむつ用トップシート(即ち、不織布)の客観評価方法について詳述する。
(I) 基本風合い用語の選定
実際に紙おむつを使用している、0〜2歳の乳幼児を持つ母親(25〜35歳)36名に一同に集まってもらい、紙おむつ用トップシートの風合い(手触り、肌触り)を評価する用語を自由に記述してもらった。この際、現在最も大量に使用されているトップシートの見本3種類を手で触りながら、自由記述を試み、出現頻度の高い用語の選択及び統一を行い、紙おむつ用トップシートの風合いを評価するための必要最小限の用語を基本風合いとして定義した。
(II) 基本風合い用語の定義
上記のようにして消費者(母親)によって定義された紙おむつ用トップシートの基本風合いを表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
ここで、「なめらかさ」とは、「さらさらしていて滑らかであり、指に引っ掛かりが無く、つるつるしている感覚」と定義され、「ソフトさ」とは、「柔らかく、ソフトな感覚。曲げ柔らかく、しなやかな感覚」と定義され、「こし」とは、「触って得られる曲げ硬さ、反発力、弾性のある充実した感覚。例えば弾力性のある繊維と糸で構成されている、そして適度に高い糸密度の布の持つ感覚」と定義され、「ふくらみ」とは、「かさ高でよくこなれたふくよかな布の手触り感覚。圧縮に弾力があり、暖かみを伴う厚み感覚」と定義される。
【0019】
上記表1に示す4個の基本風合いで、自由に記述された風合い用語の87%を占めていた。「なめらかさ」は今回初めて定義した用語であり、さらっと感やつるつる感を含んだ紙おむつ用トップシート特有の基本風合いであると考えられる。細いカシミヤ繊維からもたらされる「ぬめり」とは大きく異なっている。「ソフトさ」は風合い計量と規格化研究委員会(HESC)が婦人外衣用中厚手布に定義した基本風合いと同様に定義した。「こし」と「ふくらみ」については、HESCが定義した紳士秋冬用スーツ地と同様である。上記以外の用語としては、温熱的用語、快適性に関する用語、布の構造に関する用語等で13%を占めていた。 上記結果に鑑みて、本願発明では、紙おむつ用トップシートの基本風合いとして、「なめらかさ」、「ソフトさ」、「こし」および「ふくらみ」の4個の用語を定義する。
(III) 基本風合いの主観評価
次に、上記のようにして定義された紙おむつ用トップシートの基本風合いを用いて、評価のために収集した試料(表2参照)を7段階SD法(セマンティックディフェレンシャル法)で主観的に等級付けした。但し、評価値の信頼性を高めるため、ここでは、一対比較SD法を用いた。即ち、まず試料の中から基本風合いの点で、最も平均的な試料を基準試料として選び、それに対して、ある基本風合いが、「極めて高い」、「高い」、「やや高い」、「同じ」、「やや低い」、「低い」、「極めて低い」の7段階で評価した。基準試料と同じ試料を5点とし、全ての試料を2〜8点の間で数値化した。
【0020】
主観評価者としては、基本風合いの定義に協力してもらった消費者(母親)29名と、金沢大学教育学部所属の20名の女子学生を選んだ。これは、現在の母親と将来の母親とで、主観評価に相違があるかどうかを検討するためである。
【0021】
【表2】
【0022】
上記表1に示す試料は13点であるが、これらは、現在(2001年〜2002年)の日本で製造使用されている紙おむつ用トップシートのほぼ全てである。
(IV) 基本風合いの主観評価結果
実際の数値は省略するが、母親29名と女子学生20名の主観評価結果について、まず各グループ内での結果を検討した。即ち、各基本風合い毎に、各群の平均値を求め、平均値と相関の小さい(有意水準5%)個人の値を除いた。その結果、個々の基本風合いについて、表3に示す人数の結果が互いに一致していた。そこで、後述する基本力学パラメータと回帰する目的変数としては、母親のみの結果、女子学生のみの結果、両者の混合した結果の3種類について検討した。
【0023】
主観評価の際の基準試料としては、各々の基本風合いに最も寄与すると予測される基本力学パラメータが中間値を示す試料を選択した。即ち、「なめらかさ」については、表面粗さ;SMDを用い、「ソフトさ」については、ねじり抵抗;TRを用い、「こし」については、曲げ剛性;Bを用い、「ふくらみ」については、厚み;Tを用いた。
【0024】
【表3】
【0025】
(V) 布の基本力学特性の測定
ついで、布の引っ張り特性、曲げ特性、剪断特性、圧縮特性、表面特性等の基本力学特性を、KESシステムを用いて測定した。トップシートの場合、不織布であり、織物地とは異なるため、以下のように測定条件を変更した。
【0026】
引っ張り特性は、婦人用薄手布に用いられる高感度条件、即ち、最大引っ張り荷重を50gf/cmとして、基本力学パラメータ;LT(引っ張りの直線性)、WT(引っ張り仕事量)、RT(引っ張りの回復性)を求めた。
【0027】
曲げ特性では、布によっては折れ曲がる挙動を示したため、それ以前の曲げ剛性;B、ヒステリシス;2HBの他に、降伏点での曲率;Kyを機械方向、横方向の両者について求めた。
【0028】
剪断特性についても、やはり降伏点が認められたため、剪断角の小さな領域(±0.5degree)における剪断難さ;G、ヒステリシス;2HG、5度におけるヒステリシス;2HG5の他に、降伏点を示す剪断角度;φyを機械方向、横方向の両者について求めた。
【0029】
圧縮特性では、婦人用薄手布に用いられる高感度条件、即ち、最大圧縮力を10gf/cm2として基本力学パラメータ;LC(圧縮の直線性)、WC(圧縮仕事量)、RC(圧縮の回復性)を求めた。
【0030】
表面特性については、標準条件と同様(但し張力;10gf/cm)、MIU(表面摩擦係数の平均値)、MMD(MIUの平均偏差)、SMD(厚みの平均偏差;表面粗さ)を求めた。厚み;T、重さ;Wも測定した。
【0031】
更に、布のねじり特性を表すパラメータ;ねじり抵抗を以下の方法で求めた。カトーテック(株)製ねじり試験機を用いて、機械方向(18cm)×横方向(10cm)の試料を、機械方向に一定張力で、横方向に±30degreeの範囲でねじって測定した。ねじり力対ねじり角度の関係曲線から求めた勾配(+5〜+15°、−5〜−15°)をねじり抵抗値;TRとした。
【0032】
測定は、全て標準条件(20±0.5℃、65±5%RH)で行った。
(VI) 客観評価式の誘導
トップシートの基本力学パラメータは19個もあり、試料数13点に比べて多すぎるため、互いに相関の強い変数を除くため、相関分析及びクラスター分析を行った。図1に基本力学パラメータの変数クラスター分析樹形図を示す。但し、曲げ特性における降伏点での曲率;Kyは、計測できない試料もあったため、省略した。また、機械方向、横方向の両方向計測可能な特性はそれらの平均値を採用した。
【0033】
上記樹形図から10個の変数に絞った。即ち、MMD(MIU;表面摩擦係数の変数の平均偏差)、MIU(表面摩擦係数)、LC(圧縮の直線性)のうちの一つと、TR(ねじり抵抗)、SMD(厚みの平均偏差)、2HB(曲げ特性におけるヒステリシス)のうちの一つと、T(厚み)、WC(圧縮仕事量)、B(曲げ剛性)のうちの一つと、φy(剪断角度)、WT(引っ張り仕事量)のうちの一つと、RC(圧縮の回復性)、RT(引っ張りの回復性)のうちの一つと、2HG5(剪断特性における5度のヒステリシス)、2HG(剪断特性におけるヒステリシス)、G(剪断難さ)のうちの一つと、W(重さ)、LT(引っ張りの直線性)のうちの一つとの10個に絞った。
【0034】
上記のようにして絞った変数のうち同一クラスター内の類似している変数内では、目的変数(基本風合いの主観評価値)と相関が高く、経験的にも矛盾のない変数を各クラスターの代表変数として選択した。選択された変数を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
主観評価値の結果は、母親の結果と女子学生の結果とは極めて良く一致しており(「なめらかさ」の相関係数はr=0.947、「ソフトさ」では0.938、「こし」では0.950、「ふくらみ」では0.975)、変数として選択された基本力学パラメータには、母親の値、女子学生の値、両者の混合した値、全てにおいて全く差がなかった。そこで、両者の混合した主観評価値を回帰に用いることにした。客観評価式の誘導は、市販の多変量解析ソフト「エクセル」を用い、変数増減法による重回帰分析を行った(F値=2.0)。
【0037】
重相関係数として0.8以上をめどに求めたところ、変数は3〜4個取り込まれ、下記の客観評価式が得られた。
【0038】
Y=C0+ΣCi(Xi−Mi/σi)
ここで、Y:客観的に求まる各基本風合い、
C0,Ci:係数(i=1〜3,4)、
Xi:基本力学パラメータ、
Mi:基本力学パラメータの平均値、
σi:基本力学パラメータの標準偏差
得られた各基本風合いについて、各基本力学パラメータの平均値や標準偏差と共に、表5〜表8に示す。
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【0043】
上記客観評価式においては、Yの値が大きいほど、各基本風合いの値が大きいことを示している。また、係数Ciの符号の正負で基本風合いにプラスに効くかマイナスに効くか分かり、その絶対値の大小で基本風合いへの寄与率が分かる。
【0044】
「なめらかさ」については、表面粗さ;SMDや、表面摩擦係数の変動;MMDが小さい程なめらかであることを意味しており、納得のできる結果である。引っ張りの回復性;RTが大きく、厚み;Tが小さい程、やはりなめらかであることを示している。「なめらかさ」に何故引っ張りの回復性;RTが効くかは不明であるが、薄い程つるつる感が増大して、「なめらかさ」が高くなると考えられる。
【0045】
「ソフトさ」については、圧縮の直線性;LCやねじり抵抗;TRが小さい程高くなっており、圧縮初期における変形量が大きい程ソフトであり、容易にねじられるトップシート程ソフトであることを示している。また、圧縮の回復性;RCが大きい程ソフトであることも分かる。「ソフトさ」は、全てのパラメータが経験と一致する結果であるが、ねじり抵抗;TRはねじり試験機での測定が必要であり、KESシステム以外の測定が必要である。
【0046】
「こし」については、圧縮の直線性;LC、表面粗さ;SMD、曲げ剛性;Bが大きい程高くなることを意味しており、初期圧縮特性が弾力性に優れ、堅く、表面粗さが大きく、曲げ硬いトップシートの「こし」が高いと評価される。ねじり抵抗;RTが小さい程「こし」が高くなる点については、解釈が難しいが、引っ張りからの回復性の小さなトップシートを「こし」があると判定した母親や女子学生が多かったためと考えられる。
【0047】
「ふくらみ」については、圧縮仕事量;WCの寄与率が大きく、圧縮時の変形量が大きいトップシートの「ふくらみ」が大であると評価される。寄与率は小さいが圧縮の直線性;LCが大きく、引っ張りの直線性;LT、剪断難さ;Gが小さい程「ふくらみ」が高くなっており、引っ張りの初期において伸び柔らかく剪断柔らかいトップシートが「ふくらみ」があると判定されていることを意味している。
【0048】
主観評価については、現在乳幼児を持つ消費者である母親、女子学生、共に全ての基本風合いで各グループ内で良く一致した結果であり、紙おむつ用トップシートの風合い判断が比較的容易であることを示している。母親の「こし」については、一致性がやや低く、29人中17人の結果しか使えなかったが、毛羽だっているように思える試料の評価が難しい、との一部の母親からの意見があった。
【0049】
母親と女子学生との主観評価が極めて良く一致しており、紙おむつ用トップシートの風合いに関しては、両者の判定が同じであることを意味している。
【0050】
主観評価の際には、判定者にはどれが基準試料かを知らせずに判定してもらったが、基準試料に対する判定は、母親も女子学生も50%以上の人が基準試料と同じであると判定していた。このことは紙おむつ用トップシートの風合い判定の正確性を裏付けていると考えられる。
【0051】
それ故、得られた客観評価式Y=C0+ΣCi(Xi−Mi/σi)は信頼の高い主観評価値を基に誘導されていると考えられ、信頼性は高いと結論付けられる。
【0052】
表2に示す試料による回帰精度を各基本風合いについて、図2〜図5に示す。これによれば、全ての基本風合いにおいて、重相関係数が0.86以上となっており、極めて良く一致していることが分かる。なお、この重相関係数は0.8以上であれば十分である。
【0053】
上記客観評価式の有効性を確かめるために、3種類の試料1〜3を用意し、その主観評価値と客観評価値との一致性を検討した。上記試料1〜3は、表9に示す。これらの実施例は、その厚みや重さにおいて表2に示す試料群の範疇に属している。
【0054】
【表9】
【0055】
主観評価者としては、現在乳幼児を持つ母親14名を選び、前述したと同様に、基準試料に対する一対比較SD法で行った。得られた結果を表10に示す。
【0056】
【表10】
【0057】
表10によれば、主観評価値はトップシートの基本力学パラメータから上記客観評価式から算出された客観評価値と全ての基本風合いにおいて良く一致していると言える。このことは上記客観評価式が極めて有効であることを示している。
【0058】
次に、種々の不織布について基本風合い客観評価値のパラメータデータの測定結果と、基本風合い客観評価値の演算結果とを表11および表12に示す。
【0059】
【表11】
【0060】
【表12】
【0061】
ところで、客観評価式Y=C0+ΣCi(Xi−Mi/σi)により求まる値が、「なめらかさ」については4〜8、「ソフトさ」については4〜7、「こし」については3〜5、「ふくらみ」については3〜6が最適範囲であり、上記の上下限値を超えない方が望ましいとされる。
【0062】
上記結果によれば、サンプル1、2、3、4、8、9、15、16の不織布が紙おむつにおいて直接肌に触れる部分を構成するのに適していることが分かる。
【0063】
上記のようにして選定された不織布は、実際に紙おむつを使用している乳幼児を持つ消費者の主観評価値に対応した客観評価値により規定されるものであり、このような不織布を用いれば、消費者ニーズに合わせた製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の紙おむつに用いられる不織布の客観評価方法における基本力学パラメータの変数クラスター分析樹形図である。
【図2】本願発明の紙おむつに用いられる不織布の客観評価方法における基本風合いである「なめらかさ」に関する主観評価と客観評価との相関関係を示す特性図である。
【図3】本願発明の紙おむつに用いられる不織布の客観評価方法における基本風合いである「ソフトさ」に関する主観評価と客観評価との相関関係を示す特性図である。
【図4】本願発明の紙おむつに用いられる不織布の客観評価方法における基本風合いである「こし」に関する主観評価と客観評価との相関関係を示す特性図である。
【図5】本願発明の紙おむつに用いられる不織布の客観評価方法における基本風合いである「ふくらみ」に関する主観評価と客観評価との相関関係を示す特性図である。
Claims (3)
- 実際に紙おむつを使用している乳幼児を持つ消費者を対象に、紙おむつ用トップシートの風合い用語を抽出し、主観評価値と基本力学パラメータとの重回帰分析を行って得られた客観評価式
Y=C0+ΣCi(Xi−Mi/σi)
ここで、Y:客観的に求まる各基本風合い、
C0,Ci:係数(i=1〜3,4)、
Xi:基本力学パラメータ、
Mi:基本力学パラメータの平均値、
σi:基本力学パラメータの標準偏差
により求まる値によって基本風合いを客観的に最適評価された不織布を用いたことを特徴とする紙おむつ。 - 前記基本風合いの最適評価値は、「なめらかさ」については4〜8、「ソフトさ」については4〜7、「こし」については3〜5、「ふくらみ」については3〜6とされていることを特徴とする前記請求項1記載の紙おむつ。
- 前記基本力学パラメータは、布の引っ張り特性、曲げ特性、剪断特性、圧縮特性、表面特性等の基本力学特性から求められるパラメータに対して相関分析およびクラスター分析を行い、重相関係数=0.8以上とした変数増減法による重回帰分析を行って得られた所定数のパラメータとされていることを特徴とする前記請求項1および2のいずれか一項記載の紙おむつ。
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