JP2004510432A - 両能性肝前駆細胞の単離方法 - Google Patents
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Abstract
Description
1. 発明の分野
本発明は造血細胞から肝細胞を区別する新規の細胞表面マーカーに関する。特に、本発明は、古典的な主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI抗原陰性、細胞間接着分子1(ICAM−1)陽性、および非古典的MHCクラスI 抗原弱陽性を含む、独特の表現型を持つ両能性肝前駆細胞を単離する方法に関する。さらに、本発明は本発明の方法で産生された肝前駆細胞および肝幹細胞にも関する。
【0002】
2. 関連技術の説明
哺乳類組織の多能性前駆細胞群の同定は、臨床的および商業的に重要であり、また発生過程と組織のホメオスタシスの理解のためにも重要である。前駆細胞群は、遺伝子療法、細胞移植、および生体人工臓器の組織工学の理想的な標的である(Millar, A.D. 1992 Nature 357, 455; Langer, R.およびVacanti, J.P. 1993 Science 260, 920; Gage, F.H. 1998 Nature 392, 18)。
【0003】
増殖能および/または多能性の高い組織特異的な「運命づけられた」幹細胞または前駆細胞が存在することは、各々組織に合った特定の方法を用いてクローン同定した、造血幹細胞(Spangrudeら、1998 Science 241, 58)、神経幹細胞(Davis, A.A.およびTemple, S. 1994 Nature 372, 263; Stemple, D.L.およびAnderson, D.J. 1992 Cell 71, 973)、および上皮幹細胞(Jones, P.H.およびWatt, F.M. 1993 Cell 73, 713)の研究から明らかである。これらの前駆細胞は、正常な造血、神経、または上皮組織のホメオスタシスを担う、および重度の傷害後に再生応答を担う細胞だと考えられている(Hall, P.A.およびWatt, F.M. 1989 Development 106, 619)。
【0004】
哺乳類の成体の肝臓は、通常は代謝回転が遅く、静止状態の組織であるにも関わらず、高度の肝毒性による傷害または部分的肝切除の後に回復する能力が非常に高い(Fishback, F.C. 1929 Arch. Pathol. 7, 955); (Higgins, G.M.およびAnderson, R.M. 1931 Arch. Pathol. 12, 186)。マウスにおける最近の試験データでは、一連の移植実験で調べたところ、成体の実質細胞は、ほぼ無限の増殖可能性を持っていることが示唆された(Overturfら、1997 Am. J. Pathol. 151, 1273); (Rhim, J.A.ら、1994 Science 263, 1149)。これらの実験では不均質の幹細胞群を利用しているため、観察された増殖可能性が成体の実質細胞に由来するのか、成体の実質細胞の亜集団に由来するのか、および/または非実質細胞(即ち、前駆細胞)に由来するのかを証明する能力が限定されている。さらに実験では、使用された宿主がアルブミン・ウロキナーゼ導入遺伝子またはチロシン分解酵素の欠損を持っていたため、胆管上皮分化の証拠が示されていない;このいずれの宿主も、肝細胞系を選択するような特性を持つ。したがって、このアッセイ法では両能性細胞群の試験ができなかった。
【0005】
いくつかの組織学的試験により、妊娠中期の胎児の初期肝細胞が、胆管上皮および成熟幹細胞に分化する両能性の能力を持つことが確立している(Shiojiri, N. 1997 Microscopy Res. Tech. 39, 328−35)。肝臓の発生は、内胚葉の上皮が造心中胚葉と相互作用をした直後に、腹側前腸内胚葉から始まる(Douarin, N.M. 1975 Medical Biol. 53, 427); (Houssaint, E. 1980 Cell Differ. 9, 269)。この肝臓への関係づけは、マウスでは胎齢(E) 8日で起きる。肝臓発生の最初の段階は、形態学的変化の前に、内胚葉において血清アルブミンおよびαフェトプロテインのmRNAが誘導されて、明らかになる(Gualdi, Rら、1996 Genes Dev. 10, 1670)。マウス胎齢E 9.5日で、特定の細胞が増殖し、糸のような形で横中隔の間充織に侵入し、肝臓原基を形成する。その後、肝臓の質量は劇的に増加するが、質量の増加は主に造血細胞によるもので、これはマウスではE10に胎児肝にコロニーを形成し(Houssaint, E. 1981 Cell Differ. 10, 243)、肝細胞に影響を与えて極度にゆがんだ不規則な形をとらせる(Luzzatto, A.C. 1981 Cell Tissue Res. 215, 133)。興味深いことに、遺伝子ターゲティング変異マウスを用いた最近のデータは、いくつかの遺伝子の欠損により、E12からE15の間に、致死的な肝不全、実質細胞のアポトーシス、および/または壊死が引き起こされたことを示す(Gunes, C.ら、1998 EMBO J. 17, 2846; Hilberg, F.ら、1993 Nature 365, 1791; Motoyama, J.ら、1997 Mech. Dev. 66, 27; Schmidt, Cら、1995 Nature 373, 699)。ストレス活性化カスケード (Ganiatsas, S.ら、1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 6881; Nishina, H.ら、1999 Development 126, 505) または抗アポトーシスカスケード(Beg, A.ら、1995 Nature 376, 167; Li, Q.ら、1999 Science 284, 321; Tanaka, Mら、1999 Immunity 10, 421)の一部である遺伝子の破壊は、不活化された遺伝子が広く発現されるにも関わらず、肝発生をひどく損なうが、造血は損なわない。肝細胞が発生ストレスの刺激に本来感受性なのか、胎児肝自体の中の特定の微小環境がそのような破壊的な効果を引き起こすのかは明らかではない(Doi, T.Sら、1999 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 2994)。一方で、成体肝の基礎的構築は、門脈を取り囲む胆管上皮の最初の円柱の出現に依存する(Shiojiri, N. 1997 Microscopy Res. Tech. 39, 328)。免疫組織学的には、肝内胆管上皮細胞の分化の最初の徴候は、胆汁特異的サイトケラチン(CK)の発現である。上皮細胞の細胞質中間フィラメント(IF)タンパク質であるCKタンパク質は、多重遺伝子族によってコードされ、組織および分化に特異的に発現される(Moll, Rら、1982 Cell 31, 11)。成体の肝実質細胞はCK19を全く発現しないが、成体の胆管上皮細胞は発現するので、CK19は胆汁マーカーの中で最も目を引くものの1つである。CK8とCK18のみが初期の肝細胞から成体の肝実質細胞まで通して発現される(Moll, Rら、1982 Cell 31, 11)。マウスのE14に相当するラットの発現のE15.5において、胆管前駆細胞はCK18抗体およびCK8抗体の両方によって強く染色され、一部の胆管前駆細胞はCK19を発現する。発生が進むに連れ、成熟しつつある胆管はCK19に加えてCK7も徐々に発現し始め、アルブミンの発現を失う(Shiojiri, Nら、1991 Cancer Res. 51, 2611)。ラットのE13という早い時期の肝細胞は均一な細胞群と考えられているが、全ての初期の肝細胞が胆管上皮細胞系に分化することができるのかどうか、およびこのような運命がどのようにして決定されるのかはまだ分かっていない。レトロウイルスベクターを用いるような、決定的な系統マーキング試験は肝細胞については行われておらず、両能性肝前駆細胞の立証に必要なクローン培養条件は決定されていない。
【0006】
クローン増殖分析の1つの大きな障害は、造血細胞の爆発的な増加であり、これにより肝細胞のエクスビボでの増殖が観察できなくなる。したがって、肝細胞の濃縮方法を用いる必要がある。胎児肝において造血細胞を分画できる表面マーカーは、詳細に調べられているが(Dzierzak, Eら、1998 Immunol. Today 19, 228−36)、肝前駆細胞のマーカーの研究はまだ初期段階で、これらはあまり決定されていない(Sigal, Sら、1994 Hepatology 19, 999)。さらに、成体肝細胞で通常使用されるエクスビボの増殖条件では、アルブミン発現のような組織特異的機能の損失を伴った分化が起きる(Block, G.D.ら、1996 J. Cell Biol. 132, 1133)。組織特異的mRNAを合成するやや改善した能力と、翻訳後に完全に組織特異的遺伝子を調節する能力とは、無血清で、ホルモン、増殖因子、および/または一部の細胞外マトリックス成分が定義されている混合物を用いて維持された肝細胞にのみ、見受けられる(Jefferson, D.M.ら、1984. Mol. Cell. Biol. 4, 1929; Enat Rら、1984, 81, 1411)。しかし、増殖する胎児肝細胞は、インビボでそのような血清タンパク質の発現を維持する。
【0007】
肝前駆細胞の他に、多くの種の胎児肝は造血前駆細胞を含んでいる。造血前駆細胞および造血細胞は、その表面に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)抗原を発現している。MHCの命名法は、完全に標準化されてはいない。したがって、古典的MHCクラスI抗原は、MHCクラスIaまたはMHCクラスIAと呼ばれる場合もある。同様に、非古典的MHCクラスI抗原も、MHCクラスIbまたはMHCクラスIBと呼ばれる場合もある。
【0008】
MHC抗原に関する研究の中で、チャッペル(Chappel)の米国特許第5,679,340号は、2つの抗原エピトープに抗体を結合することによる、MHCを含む細胞表面抗原の修飾を特許請求している。反対に、チャッペルはMHCおよび他の抗原が前駆細胞の単離に使用できることを開示していない。
【0009】
インビトロで肝実質細胞を増殖させようという試みがなされてきた。ノートン(Naughton)らの米国特許第5,510,254号は、生体適合性であるが生きていない材料の3次元フレームワークに依存する肝細胞の培養を特許請求している。したがって、人工的フレームワークがなく、肝前駆細胞が増殖および培養できるような培養条件には未充足の需要がある。さらに、生体人工肝臓の成分として使用したり、肝臓毒の試験、および薬物開発するために適している両能性分化能を持つ肝前駆細胞をクローニングする方法には未充足の需要がある。
【0010】
ノートンらの米国特許第5,559,022号は、「予備細胞(reserve cell)」の特徴付けに使用される染料であるエオシンYに結合する肝予備細胞を特許請求している。米国特許第5,559,022号では、肝予備細胞の同定に、確立されたマーカーを使用しておらず、予備細胞のクローン増殖の方法も、生存能力のある肝予備細胞の単離に用いるマーカーも提供されていない。したがって、特異的マーカーの発現および肝実質細胞または胆管細胞のいずれかに分化する能力を含め、肝前駆細胞に必須の多くの特徴を持つ細胞の単離および培養方法には、未充足の需要がある。同様に必要なのは、肝前駆細胞をクローン増殖させる方法である。クローン増殖は、多能性肝前駆細胞の明確で厳密な区別および同定方法として必須である。
【0011】
本発明者らは、はるかに有用な肝前駆細胞からではなく、肝実質細胞のような成熟した肝細胞を培養するのは不適当であると認識した。発明者らは肝前駆細胞の単離パラメーターおよびクローン増殖の要件を注意深く決定した。前駆細胞ならびに前駆細胞の選択および培養方法には、肝不全の患者の治療薬、および毒性物質の評価、および薬剤の評価を含め、多くの利用方法がある。
【0012】
3. 発明の概要
本発明は、古典的MHCクラスI抗原(MHCクラスIa抗原)を発現せず、ICAM抗原またはICAM−1抗原を発現する、両能性肝前駆細胞の単離方法に関する。また、両能性肝前駆細胞は選択的に、MHCクラスIの単形性エピトープを含む非古典的MHCクラスI抗原(MHCクラスIb抗原)を発現する可能性がある。肝臓を含むがこれに限定されないいくつかの組織由来の前駆細胞が使用できる。したがって、本発明は、古典的MHCクラスI陰性で、選択的にICAM−1陽性の肝前駆細胞を単離する方法に関する。同様に、本発明は古典的MHCクラスI陽性の表現型を発現する細胞を除去することによって、ICAM−1陽性だが古典的MHCクラスI陰性の表現型を発現する前駆細胞を単離する方法に関する。非古典的MHCクラスIの弱い発現は、前駆細胞をさらに単離するために使用できる。好ましくは、本発明は多能性肝前駆細胞の単離およびクローニング方法に関する。多能性肝前駆細胞は、任意の魚類、両生類、爬虫類、鳥類、および哺乳類を含む脊椎動物由来でよく、より好ましくは哺乳類由来である。さらにより好ましくは、多能性肝前駆細胞は、霊長類、ブタ、ラット、ウサギ、イヌ、またはマウス由来である。最も好ましくは多能性肝前駆細胞は、ヒト由来である。最も好ましい方法では、両能性肝前駆細胞である、肝前駆細胞を生成する。したがって、両能性肝前駆細胞またはその子孫は、肝細胞または胆管細胞のいずれかに分化し得る。
【0013】
前駆細胞が濃縮された細胞群は、まず脊椎動物細胞の懸濁液を得る方法によって得られる。その後、任意の順で順番にまたは実質的に同時に、少なくとも1つのMHCクラスIa抗原を発現する細胞、およびICAM抗原を発現する細胞を細胞懸濁液から除去し、前駆細胞が濃縮された細胞混合物を提供する。同様に、脊椎動物の胚幹細胞を提供し、胚幹細胞を増殖させて胚幹細胞の子孫を提供し、ICAM抗原を発現し、MHCクラスIa抗原を発現しない胚幹細胞の子孫を単離することによって、肝前駆細胞が濃縮された、脊椎動物の胚幹細胞の混合物が得られる。
【0014】
当技術分野で周知の物理的、免疫学的、および細胞培養によるすべての分離方法は、本発明に含まれる。分離方法は、特に免疫分離を含む。免疫分離は、標識抗体との相互作用後のフローサイトメトリーでよい。免疫分離の方法には、磁性ビーズ、生分解性ビーズ、非生分解性ビーズ、ディッシュを含むパニング表面に結合している抗体を用いたアフィニティ法、およびその方法の組み合せも含まれる。
【0015】
さらに、肝前駆細胞および両能性幹細胞、ならびにその子孫は、選択的に、αフェトプロテイン、アルブミン、胎児肝由来の造血細胞よりも高い側方散乱光、または細胞が積み重なる増殖パターンを含むがこれらに限定されない他の表現型を発現する可能性がある。
【0016】
肝幹細胞は、αフェトプロテインまたはアルブミンを発現する場合もしない場合もあるが、αフェトプロテインおよびアルブミンまたはCK19のような胆管マーカーを発現する細胞を生み出す細胞である。
【0017】
本発明はICAM−1発現と組み合わせたMHCクラスI表現型を検出する手段に肝細胞を暴露し、細胞群内でMHCクラスI抗原を発現しない細胞を同定することによって、好ましくは肝前駆細胞である前駆細胞を同定する方法にも関する。同様に、αフェトプロテインのような、前駆細胞または肝臓の表現型の他のマーカーも検出できる。
【0018】
さらに本発明は、古典的MHCクラスI陰性およびICAM−1陽性の表現型により特徴付けられる、肝幹細胞および前駆細胞ならびにその子孫にも関するが、これらの細胞は、選択的に古典的MHCクラスI弱陽性、造血細胞前駆細胞よりも高い側方散乱光、または細胞が積み重なる増殖パターンを含むがこれらに限定されない他の表現型を発現する可能性がある。子孫はαフェトプロテイン、アルブミン、またはCK19を発現する可能性がある。そのように単離された肝幹細胞および前駆細胞の子孫は、親の表現型を維持し、選択的に発生してさらなる表現型を発現する可能性がある。特に、子孫細胞は、選択的に肝実質細胞の表現型および胆管細胞の表現型を発現し得る。肝実質細胞の表現型は、特色の中でも、アルブミンの発現で特徴付けられる。胆管細胞の表現型は、特色の中でも、CK19の発現により特徴付けられる。
【0019】
肝前駆細胞、その子孫、または前駆細胞と子孫の組み合せの組成物は、少なくとも1つのMHCクラスIb抗原を弱く発現する細胞、非実質細胞よりもフローサイトメトリーで高い側方散乱光を示す細胞、およびαフェトプロテイン、アルブミン、CK19、またはその組み合せからなるポリペプチドを発現する細胞も含み得る。組成物は、内胚葉または骨髄に由来し得る。この組成物では、内胚葉組織は、肝臓、膵臓、肺、消化管、甲状腺、性腺、またはその組み合せであり得る。
【0020】
5. 好ましい態様の詳細な説明
本発明は前駆細胞の単離過程および前駆細胞を含む組成物である。1つの態様では、本発明は肝幹細胞および肝前駆細胞の同定、単離、およびクローン増殖の過程である。本過程は、造血細胞および他の大部分の有核細胞を特徴付けるが、肝幹細胞および前駆細胞の細胞表面には実質的に存在しない、ICAM−1のようなICAM、接着タンパク質、および古典的MHCクラスI抗原に特異的な抗体に対し、肝臓のような内胚葉組織に由来する混合した細胞群を暴露する段階を含む。細胞は肝臓、膵臓、肺、消化管、甲状腺、性腺を含むがこれらに限定されない任意の内胚葉組織由来、または肝臓、または生物体全体に由来するものでよい。親和性に基づく相互作用、例えばアフィニティーパニングによる方法、補体と組み合せた免疫手術による方法またはフローサイトメトリーを含む、肝幹細胞および他の初期の肝前駆細胞を単離する任意の方法が使用できる。フローサイトメトリーによる分離は、例えば非古典的MHCクラスI抗原のような、中間的なレベルの抗原発現に基づいても良い。より好ましい態様では、この過程には、肝細胞の特徴である細胞の粒状度または細胞質脂肪滴の量に依存するパラメーターである、比較的高い側方散乱光(SSC)を示す細胞の選択がさらに含まれる。肝前駆細胞のSSCは、造血細胞または胎児肝の間質細胞のような他の非実質細胞よりも高いが、成体肝のような成熟した実質細胞よりも低い。また、CD34、CD38、CD14、および/またはCD117のようなαフェトプロテイン(AFP)陽性前駆細胞上に発現される他のマーカーも、両能性前駆細胞の単離に使用できる。同様に、非肝前駆細胞の除去のために、赤血球抗原(ヒト肝臓の赤血球細胞上のグリコフォリンAなど)、免疫グロブリンFc受容体、MHCクラスII抗原、ABO型マーカー、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD9、CD11a、CD11b、CD11c、CD15、CD16、CD19、CD20、CD28、CD32、CD36、CD42、CD43、CD45、CD56、CD57、CD61、CD74、CDw75を含むがこれらに限定されない他のマーカーも使用できる。さらに、当技術分野で周知の他の技術も前駆細胞の単離に使用される過程の一部として使用でき、これらにはレーザー剥離を含む剥離技術、密度分離、ゾーン遠心分離を含む沈降速度分離、細胞水簸、選択的接着、テトラゾリウム塩による細胞加重を含む分子加重、大きさによるふるい分け、選択的増殖、サイトトキシンの利用を含む選択的代謝阻害、および多因子分離が含まれるがこれらに限定されない。
【0021】
本発明の1つの好ましい態様では、前駆細胞は胎児、小児、若者、または成体から得られる。
【0022】
本発明の1つの好ましい態様では、肝細胞は無血清のホルモン添加合成培地で選択的に増殖される。さらに、線維芽細胞または別の中胚葉細胞から派生するフィーダー細胞の層を用いて、肝細胞が選択的に培養増殖されるのが、さらに好ましい。フィーダー細胞は、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ラット、またはマウスのフィーダー細胞であるのが好ましいが、任意の哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類のフィーダー細胞でも構わない。フィーダー細胞が胚細胞であるのがより好ましいが、新生児または成体組織のフィーダー細胞でも構わない。より好ましい態様では、フィーダー細胞はクローニングされ、肝幹細胞および前駆細胞を支持する能力で選択される。さらに好ましい態様では、肝幹細胞および前駆細胞はクローン増殖条件下で培養され、それにより肝細胞としての同定がなされ、かつクローン起源の細胞群の増殖が可能となる。
【0023】
本発明の1つの好ましい態様には、古典的MHCクラスI陰性およびICAM−1陽性の哺乳類肝前駆細胞が含まれる。両能性細胞の単離には、2色ソートが便利な方法である:ICAM−1陽性および古典的MHCクラスI陰性は、これらの細胞を定義する2つのパラメーターである。ICAM−1陽性細胞群には、造血、中胚葉、および成熟肝細胞が含まれる。発現の程度は、細胞の状態によって大きく変動する(例えば、活性化状態と静止状態の細胞では異なる)。古典的MHCクラスI抗原は、幹細胞から成熟細胞まで、全ての有核造血細胞上、および成熟肝実質細胞上に発現している(ただし成熟肝実質細胞の発現量は造血細胞よりも低い)。ラット胎児肝では、古典的MHCクラスI陰性細胞には:両能性肝前駆細胞、除核成熟赤血球、および同定されていない細胞群が含まれる。また、細胞は非古典的MHCクラスIを発現していても良い。さらに、前駆細胞の子孫は、αフェトプロテイン、アルブミン、またはCK19を発現する可能性があり、細胞が互いの上に積み重なってクラスターで増殖する増殖特性を示す場合もある。
【0024】
本発明の1つの態様では、単離された前駆細胞は分裂し、子孫を産生する能力を持つ。より好ましくは、前駆細胞は約10以上の有糸分裂サイクルの能力を持つ。さらに好ましくは、子孫は前駆細胞または肝実質細胞および胆管細胞である。本発明の好ましい態様では、単離された肝幹細胞および前駆細胞は、上皮成長因子(EGF)の選択的使用により、肝実質細胞または胆管細胞に運命づけられている。
【0025】
1つの好ましい態様では、本過程には、さらにαフェトプロテインを発現し、αフェトプロテインに特異的な抗体に結合する細胞を選択する段階が含まれる。別の好ましい態様では、さらにアルブミンを合成し、アルブミンに特異的な抗体に結合する細胞を選択する段階が含まれる。
【0026】
本発明のより好ましい態様では、単離された幹細胞および前駆細胞は、生体外の肝臓の成分として使用される。本発明のさらに好ましい態様では、単離された幹細胞および前駆細胞およびその子孫を持つ生体外の肝臓は、肝機能不全または肝不全を患う患者の生命維持に使用される。
【0027】
本発明は、ここでは胎児由来で示される肝前駆細胞のエクスビボの増殖に必要な、特定の培養条件を開示する。本発明者らは、フィーダー細胞として理想的なことが分かったSTOマウス胚細胞の亜系統を選択した。フィーダー細胞は、新規の無血清のホルモン添加合成培地(HDM)と組み合せて使用された。この組み合せによって、細胞が悪性形質転換せずに、ラットのE15肝臓から様々なラット胚肝細胞株を確立できた。発明者は肝臓組織から新しく単離された肝前駆細胞のクローナル増殖能力を決定するための、インビトロコロニー形成アッセイ(CFA)法の開発のための、肝細胞株の使用およびHDM−STO共培養系を開示する。CFAと、決められたフローサイトメトリープロファイルによってソートされた細胞とを組み合せると、両能性肝前駆細胞が明らかになる。例えば、マウスのE11.5に対応し、増殖能力の高いE13ラットの肝臓由来の前駆細胞は、古典的MHCクラスI(ラットのRT1A領域)陰性、OX18(MHCクラスI抗原上の単形性エピトープ)弱陽性、およびICAM−1陽性という表現型を持つ。RI1A陰性およびOX18弱陽性という表現型は、非古典的MHCクラスI(MHCクラスIb)弱陽性と同等である。本発明では、EGFが、前駆細胞コロニーの増殖と、その肝実質細胞または胆管上皮細胞としての運命との両方に影響を与えることが開示される。
【0028】
6. 実施例
用語の説明
古典的MHCクラスI抗原
造血細胞上に最も強く発現しているが、主にすべての有核細胞上に見られる主要組織適合性抗原の群。抗原はMDHCクラスIaとしても知られる。古典的MHC抗原の名称は種により異なり、例えばヒトではMHC抗原はHLAと呼ばれる。表3はいくつかの種の古典的MHC抗原の名称を示す。
【0029】
非古典的MHCクラスI抗原
1つの種の中でも異なり得る主要組織適合性抗原の群で、MHCクラスIbとしても知られる。非古典的MHC抗原の名称は種により異なる。例えば、表4を参照のこと。
【0030】
ICAM
細胞間接着分子−1 (CD54)は膜糖蛋白であり、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。ICAM−1のリガンドはβ2インテグリン、LFA−1 (CD11a/CD18) 、およびMac−1 (CD11b/CD18)である。この分子は、白血球の内皮への接着にも重要である。さらに、ICAM−1は白血球の管外遊出にも関与する。ICAM−1という用語は、哺乳類に見られるこれらの分子の形を指す。ICAMまたはICAM−1様という用語は、非哺乳類の脊椎動物において相同および機能的に関連したタンパク質を指すのに使われる。
【0031】
デバルキング
細胞懸濁液から、主要な細胞群を除去する過程である。胎児肝では、主要な非肝細胞系細胞は、赤血球細胞、マクロファージ、単球、顆粒球、リンパ球、巨核球、造血前駆細胞、および間質細胞である。
【0032】
弱陽性(Dull positive)
蛍光活性化セルソートにおいて、発光強度は細胞に結合した蛍光色素結合免疫グロブリン分子の数に比例し、これは分析する細胞表面抗原の密度に比例する。抗原の表面密度または細胞内密度は1細胞あたり数個から数十万まであるので、広範囲の蛍光強度が測定される。弱陽性(または弱)の値は、経験的に決定され、多くの抗原を持つ明るい蛍光細胞の強度と、特定の抗原の発現量の低い暗い細胞の中間である。強度はゲートまたは強度の間隔でも定義できる。弱陽性の表現型は、弱く発現された抗原の特徴である。この表現型は弱いまたは低い発現とも表現される。
【0033】
クローン増殖
細胞培養では、クローン増殖とは最初の単一の細胞が有糸分裂を繰り返し、1つの親細胞に由来する細胞のクローンを形成することである。細胞のクローンを増殖させて、細胞のコロニーまたはクラスターを形成させることができる。クローン増殖とは、単一の細胞の生存能力および有糸分裂を支持するために必要な条件も指す。これらの条件は、通常、強化されたおよび複合基礎栄養培地、無血清、特定の増殖因子およびホルモンの存在、決められた性質の細胞外マトリックスの基底、および/または1つまたは複数の増殖因子、ホルモン、またはマトリックス成分を供給する細胞の共培養を含む。
【0034】
濃縮の条件
「除去する」という用語は、保存するまたは廃棄するために、分離、選択、および取り分けをすることを意味する。したがって、間質細胞は、これを保存するためまたは廃棄するために、任意のいくつかの方法によって、混合した細胞群から除去することができる。「単離する」という用語は、より大きな群から分離して、分けて置いておくことを意味する。したがって、前駆細胞は前駆細胞および非前駆細胞の混合群から単離することができる。「精製する」という用語は、不要な成分から分離することを意味する。
【0035】
クラスター増殖
肝前駆細胞は、しばしば明確な特徴を示し、細胞は分裂し、互いに接近したままになる。前駆細胞は、細胞が積み重なりあったクラスターを形成する。重なった細胞の3次元塊の中の細胞は、フィーダー細胞または他の前駆細胞に隣接している。クラスターはPコロニーまたはP型コロニーとも呼ばれ、細胞単層とは異なる。
【0036】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明はこれらの具体的な実施例によって限定されるものではない。当業者は、これらの実施例の中に、本発明を実施する手段を見いだすものと思われる。また、当業者は本発明の範囲内である別の複数の態様も認識すると思われる。
【0037】
6.1 肝幹細胞および肝前駆細胞の調製および分析
ラット
チャールズ・リバー・ブリーディングラボラトリー(Charles River Breeding Laboratory)(Wilmingon, MA)から、妊娠したフィッシャー334ラットを入手する。時刻を設定した妊娠には、午後に動物を一緒にして、プラグが観察された朝を0日とする。成体の肝細胞には、オスのフィッシャー334ラット(200〜250 g)が使用される。
【0038】
胎齢15日の肝臓由来の幹細胞株の確立
胎齢15日の胎児肝が調製される。単細胞懸濁液は、0.05%トリプシンおよび0.5 mM EDTAまたは10ユニット/mlサーモリシン(Sigma, St. Louis, MO)および100ユニット/mlデオキシリボヌクレアーゼI(Sigma)で肝臓を37℃でインキュベートして得られる。細胞は、フィコール−パーク(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)に重ね、450gで15分間密度勾配遠心を行なう。th1120−3およびrter6またはrhel4321について、底部の画分の細胞を、それぞれ17 mg/ml IV型コラーゲン(Collaborative Biomedical Products, Bedford, MA)または12μg/mlラミニン(Collaborative Biomedical Products)でコートした組織培養ディッシュに接種する。無血清のホルモン添加培地HDMは、ダルベッコ変法イーグル培地およびハムF12の1:1の混合物(DMEM/F12、GIBCO/BRL、Grand Island, NY)に、20 ng/ml EGF(Collaborative Biomedical Products)、5μg/mlインスリン(Sigma)、10−7Mデキサメタゾン(Sigma)、10μg/ml鉄飽和トランスフェリン(Sigma)、4.4 x 10−3Mニコチンアミド(Sigma)、0.2%ウシ血清アルブミン(Sigma)、5 x 10−5M 2−メルカプトエタノール(Sigma)、7.6 μeq/l遊離脂肪酸、2 x 10−3Mグルタミン(GIBCO/BRL)、1 x 10−6M CuSO4、3 x 10−8M H2SeO3および抗生物質を添加したものである。記載の各濃度は、培地中の最終濃度である。4週間の培養後、トリプシン処理した細胞をマイトマイシンCで処理したSTOマウス胚線維芽細胞株(American Type Culture Collection, Rockville MD)のフィーダー層上で培養する。Th1120−3、rter6およびrhel4321は、胎児肝細胞の3つの独立した調製物からクローニングし、HDMを用いてSTOフィーダー細胞上で維持する。細胞株の確立後、全ての培養に関してEGFの濃度は10 ng/mlに低下させる。
【0039】
E13の胎児肝の解離
胎児肝は10 mM HEPES, 0.8 mM MgSO4および1mM EGTA (pH 7.4)を添加した、Ca++フリーの氷冷HBSS中に切開して入れる。肝臓は10 mM HEPES、0.8 mM MgSO4、および1 mM CaCl2で調製されたHBSS中の0.2% IV型コラゲナーゼ(Sigma)および16.5ユニット/mlサーモリシン(Sigma)を用いて、粉砕する。37℃で10分間インキュベーションした後、細胞懸濁液を0.025%トリプシンおよび2.5 mM EDTA (Sigma)で10分間消化する。その後、1 mg/mlのトリプシン阻害剤(Sigma)を添加してトリプシンを抑制する。最後に、細胞を200ユニット/mlデオキシリボヌクレアーゼI (Sigma)で処理する。全ての実験において、肝臓1つあたり3〜5 x 105細胞が得られる。
【0040】
成体肝細胞の単離
肝細胞を単離するために、2段階の肝臓潅流法が用いられる。潅流後、細胞を50gで1分間、2回遠心し、大きな実質細胞を濃縮する。生存度はトリパンブルー排除による測定によると>90%である。
【0041】
細胞接着アッセイ法
フィブロネクチン(Collaborative Biomedical Products)、ラミニン、およびIV型コラーゲンに対する細胞の接着は、これらのタンパク質を0.3〜10μg/mlでコートした96穴マイクロタイタープレート(Corning, Cambridge, MA)を用いて評価する。200gで15分間のパーコール(Pharmacia Biotech)密度勾配遠心によりSTO細胞を除去した後、各ウェル中で3 x 104細胞の肝細胞株th1120−3、rter6、およびrhel4321をHDMを用いて10時間培養する。浮遊細胞を除去するために2回すすいだ後、テトラゾリウム塩WST−1を含む新しい培地(Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN)を添加して、生存可能な接着細胞の数を測定する。4時間後に、製造元のプロトコールにしたがって、吸光度を決定する。
【0042】
STO亜系統
ATCCから得た100個の親STO細胞は、10%の熱で不活化した胎児ウシ血清、2 x 10−3Mグルタミン、5 x 10−5M 2−メルカプトエタノール、および抗生物質を添加したDMEM/F12中で、100mm培養ディッシュで7日間培養する。細胞の形態および増殖速度によって、さらに解析するために4つのサブクローンが選択される。rter6のCFAは4つのサブクローンで行われるが、その1つであるSTO6はマイトマイシンC処理後に培養プレートに接着しなくなる。1つのサブクローンSTO5はアダムス博士(Dr. J. M. Adams, The Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research)から提供を受けたpEF−Hlx−MC1neoまたはpEF−MC1neoによってトランスフェクトする。Nde I部位で線状にしたプラスミドを、DOSPERリポソームトランスフェクション試薬(Boehringer Mannheim)によって細胞中に導入する。G418選択後、6つのクローンが単離される。各々3つのクローンがCFAで分析される。
【0043】
コロニーの免疫組織化学染色
培養プレートはメタノール−アセトン(1:1)で室温で2分間固定し、すすぎ、20%のヤギ血清(GIBCO/BRL)を含むハンクス液(Hanks Balanced Salt Solution (HBSS))により、4℃でブロックする。αフェトプロテインとアルブミンの二重免疫組織化学のためには、プレートは抗ラットアルブミン抗体(ICN Biomedicals, Costa Mesa, CA)処理後にテキサスレッド結合抗ウサギIgG(Vector laboratories, Burlingame, CA)、およびFITC結合抗ラットαフェトプロテインポリクローナル抗体(Nordic Immunology, Tilburg, Netherlands)とインキュベートする。アルブミンとCK19の二重標識には、抗αフェトプロテイン抗体の代わりに、抗CK19モノクローナル抗体(Amersham, Buckinghamshire, England)およびFITC結合抗マウスIgG(Caltag, Burlingame, CA)が使用される。
【0044】
フローサイトメトリー分析
細胞はFACScan (Becton−Dickinson, Mountain View, CA)で分析し、Moflow Flow Cytometer (Cytomation, Fort Collins, CO)を用いてソートする。E13胎児肝から得た細胞懸濁液は、非特異的抗体結合を予防するために、氷上で20%ヤギ血清(GIBCO/BRL)および1%硬骨類のゼラチン(Sigma)を含むHBSSとインキュベートする。すすいだ後、細胞はFITC結合抗ラットRT1Aa,b,l抗体B5 (Pharmingen, San Diego, CA)およびPE結合抗ラットICAM−1抗体1A29(Pharmingen)と懸濁する。一部の実験では、3色染色のため、細胞はビオチン化抗ラット単形性MHCクラスI抗体OX18 (Pharmingen)で染色した後、ストレプトアビジン−レッド670 (GIBCO/BRL)による第2の染色を行なう。全ての染色は、10 mM HEPES, 0.8 mM MgSO4, 0.2 mM EGTA、および0.2% BSA (pH 7.4)を含み、Ca++フリーの氷冷HBSSを用いて行なう。確立された3つの細胞株は、トリプシン処理をして、パーコール密度勾配遠心によってフィーダー細胞を除去する。ラットヘパトーマ細胞株FTO−2Bおよびラット肝上皮細胞株WB−F344ならびに成体肝細胞は、胎児肝細胞株と比較するために染色する。細胞株は、それぞれフォアニエー博士(Dr. R.E.K. Fournier, Fred Hutchinson Cancer Research Center, Seattle, WA)、およびソウ博士(Dr. M.−S. Tsao, University of North Carolina, Chapel Hill, NC)から贈与された。細胞はブロックして、FITC結合B5, OX18, PE結合1A29、または抗FITC結合ラットインテグリンβ1抗体Ha2/5 (Pharmingen)により染色する。OX18にはFITC結合抗マウスIgGが使用される。マウス細胞群を排除するために、3つの胎児肝細胞株の細胞懸濁液は、ビオチン化抗マウスCD98で染色後、ストレプトアビジン−レッド670および抗ラットモノクローナル抗体による第2の染色を行なう。
【0045】
肝細胞株、ソートした細胞、および成体肝細胞のCFA
肝細胞株は細胞株の維持に使用されたのと同一のHDMを用いて、マイトマイシンC処理STOフィーダー層上に、9.6 cm2あたり500細胞で、3連で播く。播く前に、細胞はトリプシン処理をして、パーコール密度勾配遠心によってフィーダー細胞を除去する。培養液は2日ごとに培地を取り換えながら10〜14日インキュベートする。その後、αフェトプロテインおよびアルブミンの二重免疫蛍光染色が行われる。各ウェル100コロニーを、コロニーの形態、PまたはF型、およびαフェトプロテインおよびアルブミンの発現について分析する。コロニーはDiff−Quick (Baxter, McGaw Park, IL)を用いて染色し、各ウェルのコロニー数を数える。初代のソートした細胞および成体肝細胞のCFAでは、記述のように播く細胞数を変更する。別のわずかな変更として、培養期間を14および17日の間に延長し、デキサメタゾンの濃度を10−6Mに上昇させる。他の手順は上述のように実行される。成体肝細胞のCFAでは、調製後、細胞懸濁液から、少数の肝細胞クランプが除去されない。したがって、クランプから不確定数のコロニーが作られる可能性がある。ソートした細胞上の胆管分化のCFAでは、コロニーのアルブミンおよびCK19の二重免疫蛍光染色がEGFの存在下または非存在下で、培養5日目に行われる。培養5日目に、CK19+細胞を1個を超えて持つコロニーは、CK19+コロニーとして数える。10日および15日目には、2個のCK19+細胞のクラスターを複数含むコロニー、または3個を超えるCK19+細胞のクラスターを1つ含むコロニーは、CK19+コロニーとして数える。各ウェルで約100のコロニーが数えられる。各点は3連の染色した培養物の平均±SDを表す。
【0046】
6.2. ホルモン添加合成培地を用いた、マウス胚細胞のフィーダーを用いた胎児ラット肝細胞株の作製および解析
どれだけの期間、胎児肝細胞が維持され、エクスビボで増殖し、子孫を産生できるかを知るために、ラットE15肝細胞の単純な長期培養を試みる。造血単核細胞を除去するために密度勾配遠心を行なった後、胎児肝細胞をIV型コラーゲンまたはラミニンでコートした培養ディッシュおよびHDM(実施例6.1参照)を用いて培養する。細胞は4週間以上、生存する。しかし、新しくIV型コラーゲンまたはラミニンでコートしたディッシュ上の2次培養では、さらには増殖しない。マイトマイシンC処理のSTO胚マウス線維芽細胞株を2次培養のフィーダー層として使用すると、細胞の多くの塊が増殖する。最終的に、4つの独立した実験から、いくつかの安定した肝細胞株が確立される。
【0047】
αフェトプロテインおよびアルブミンの免疫組織分析は、細胞株のクローニングの前に、連続的に増殖する細胞群で行われる。αフェトプロテインおよびアルブミンの両方のタンパク質は、細胞群が肝細胞系起源であることを確認するマーカーとして使用される。Pコロニーと呼ばれる、細胞の積み重なりを形成する傾向のある細胞群は、αフェトプロテインおよびアルブミンを強く発現したが、別のクラスターはFコロニーと呼ばれる平坦な単層を形成し、αフェトプロテインの発現は低下し、アルブミンは発現しなかった。胚マウス線維芽細胞STOは、いずれの抗体にも反応性を示さない。さらに解析するために、P型またはF型のコロニーという形態的な基準により、独立した実験で、3つのクローニングされた肝細胞株が選択される(図1A〜1C)。Rhel4321(図1A)は、主に小さな細胞の詰まったP型コロニーからなり、th1120−3(図1C)は、F型コロニーの平らな単層のみを形成する。Rter6(図1B)はこの2つの表現型の中間である。興味深いことに、rter6の不均一性は、平らなコロニーを連続3回クローニングした後でも観察される。rhel4321およびrter6の単一細胞に由来するコロニーの不均一性を見るために、9.6 cm2(6穴プレートの1つのウェル)あたり500細胞の密度で播種し、細胞をSTO線維芽細胞上で10〜14日培養した。その後、コロニーの形態およびαフェトプロテインおよびアルブミンの発現の解析をした。図2A〜2Fはその結果を表す。rhel4321(図2B)およびrter6(図2C)の細胞株、ならびにクローニング前の元の細胞群(図2A)は、ほぼ全てのP型コロニーで強くαフェトプロテインを発現するのに対して、F型コロニーでは発現しない。さらに、αフェトプロテインとアルブミンの両方の強い発現は、P型コロニーのみに観察される。クローニングされた肝細胞株の形態的違いは、P型コロニーの割合と相関している(図2Bおよび2C)。rter6およびrhel4321のCFAのP型コロニーの割合は、それぞれ33.3%(±8.6% SD)および65.7%(±4.0% SD)である。1ウェルあたりの総コロニー数を数えて、クローン増殖効率(コロニー効率)を計算する。rter6およびrhel4321の効率は、それぞれ45.7%(±1.3% SD)および36.4%(±1.1% SD)である。th1120−3細胞は、側面の境界にそって互いに強く接着しあっており、単細胞懸濁液の調製が、非常に困難である。しかし、th1120−3細胞は、重なり合ったクラスターを形成しない(図1C)。
【0048】
マウス肝細胞のラミニン、IV型コラーゲン、およびフィブロネクチンのような細胞外マトリックス(ECM)タンパク質に対する接着は発生段階によって異なるため、各細胞株が特定のECM成分に接着するときの選好性を次に調べる。成体肝細胞での所見と同様に、IV型コラーゲンはth1120−3の接着に最も効果的であるが(図1C)、rter6(図1B)およびrhel4321(図1A)ではそれほどでもない。ラミニンはrhel4321の接着に最も有効な基質である(図1A)。この選好性は、マウス胎児肝細胞の初代培養と同様である(Hirataら、1983)。要約すると、P型コロニーにおけるαフェトプロテインおよびアルブミンの保存された発現、ならびにrhel4321によるラミニンヘの優先した接着は、P型コロニーを産生している細胞群がより厳密に肝前駆細胞と関連していることを示唆する。
【0049】
6.3 コロニー形成のためのSTOサブクローンの単離;肝前駆細胞のアッセイ法
増殖能力の高い、両能性肝前駆細胞を同定するためのCFAシステムを開発するために、培養系は、クローン播種密度で細胞の増殖を支持し、重要な元の肝機能を保存するものでなくてはならない。初期の肝臓発生に最も重要なマーカーのうちの2つがアルブミンおよびαフェトプロテインである。F型ではなくP型のコロニーがクローン増殖中にαフェトプロテインおよびアルブミンの発現を維持するので、P型コロニーを最適化する培養条件が最良である。したがって、rter6のP型コロニーを支持するSTOサブクローンの能力が比較される。1つのクローンSTO5は、他の全ての亜系統および親株以上にP型コロニー形成を支持する(図2D)。rhel4321のCFAも、STO5が親STOよりも有効なフィーダーであることを確認する(図2E)。E10.5の消化管の内側を覆っている間充織細胞で発現するマウスH1x遺伝子産物は、胎児肝細胞の増殖に必須である。H1x遺伝子のmRNA発現がSTOサブクローンで分析されても、サブクローン間での発現の有意な差はない(データは示さず)。さらに、マウスH1xのSTO5中の安定なトランスフェクタントは、コロニー形成アッセイ法を改善しない(図2F)。しかし、トランスフェクタントの1つのクローンは、比較的高密度の継代で、STO5の元の形態をより安定的に持続させるので、このクローンはさらなる実験に使用される。
【0050】
6.4 表面抗原マーカーおよびコロニー形成アッセイ法を用いた、E13胎児肝からの肝前駆細胞の同定
肝形成と大量の造血とが、胎児肝の中に共存する。これまで、造血前駆細胞の抗原性プロファイルは広く分析されてきたが、初期の肝前駆細胞の研究はまだ初期段階である。本研究で確立された3つの肝細胞株、成体肝癌細胞株(FTO−2B)、成体ラット肝由来の上皮細胞株(WB−F344)、および新しく単離された成体肝細胞(図3A〜3X)を用いて、肝細胞の抗原性プロファイルが分析される。FTO−2B、WB−F344、および成体肝細胞と比較して、最も未熟な胎児肝細胞株rhel4321は、古典的MHCクラスI(RT1A1)の発現がないという点で、非常に独特である(図3A)。細胞株th1120−3は、RT1A1(図3I)、OX18(汎MHCクラスI)(図3J)、およびICAM−1(図3K)のパターンがrhel4321と類似しているが、rter6はRT1A1(図3E)およびOX18(図3F)の発現が比較的高い。さらに、異なる実験で得られた別の細胞株は、rhel4321と同一の形態を持つが(図1A〜1D)、やはりRT1A1−、OX18dull、およびICAM−1+である。インテグリンb1の発現は、全ての細胞株で類似しているが、RT1Aa, b, 1およびICAM−1のパターンは細胞において独特である。成体肝細胞の抗原性プロファイルはRT1A1+(図3U)、OX18+(図3V)、およびICAM−1+(図3W)である。成体ラット中では、赤血球を除く全ての骨髄細胞がMHCクラスI分子を強く発現するので、胎児肝細胞群は、MHCクラスI発現によって造血細胞群から分離できる。ラットE13肝臓から得られた細胞懸濁液を抗RT1A1およびICAM−1抗体で染色する。図4A1〜4A2は、RT1A1およびICAM−1の2色染色パターンを示す。どの画分に肝細胞群が含まれているかを決定するために、蛍光活性化セルソートによって5つの画分(図4B−1〜4B−5)を単離し、クローン増殖能力をCFAによってスクリーニングする。図4B−1〜4B−5は、ソート後の、5つの画分の再ソート結果を表す。アルブミンおよびαフェトプロテインの発現で定義される肝細胞コロニーは、形態的にも区別可能なので、各ウェルの肝コロニーの数を数えることが可能である。肝コロニーの大部分は、RT1A1dullおよびICAM−1+のゲートで検出され(表1、図4B−2、即ちゲート2)、P型コロニーの頻度は75.6%(±4.9% SD)である。ゲート1(図4B−1)は、はるかに少ないコロニー数を示し、他の画分のコロニー形成能力を持つ細胞の数はごくわずかだった。ゲート1および2では、全ての肝コロニーにおいて、αフェトプロテインおよびアルブミンの両方の発現が確認される。ゲート2の細胞に由来する一部のコロニーは、他よりも大きい。肝細胞上のMHCクラスI発現を詳細に調べるために、細胞分画のために、RT1A1、ICAM−1、およびOX18の3色の染色、ならびにもう1つのパラメーターとして側方散乱光(SSC)が使用される。胎児肝細胞はE11という早期の胎齢でも脂肪滴を含むので、細胞の粒状度を反映する側方散乱光(SSC)は、造血細胞から肝細胞を分離するために有用なパラメーターである。図4C−1〜4C−5は、ゲート2に最も多数のコロニー形成細胞が含まれていることを示す。SSCに基づいてR2でゲートをかけると、ゲート2に対応する細胞群は明らかにRT1A1−およびOX18dullの表現型を示す(図4C−1〜4C−5および図4D−1〜4D−4)。CFAにより、R4にはゲート2よりも多くのコロニー形成細胞が含まれることが確認される(表1)。これらの結果は、E13ラット肝から得られたRT1A1−およびOX18dull、およびICAM−1+細胞群の大部分が、αフェトプロテイン+およびアルブミン+のコロニーを生成する肝細胞であることを示唆する。これはrhel4321細胞で見られるのと同一の抗原性プロファイルである(図3A〜3D)。
【0051】
【表1】RT1AおよびICAM−1の発現に基づいてソートしたE13胎児肝由来の肝コロニーの頻度
【0052】
STO5hlx上でのコロニー形成培養は、E13の胎児肝の各画分から得られる、示された数の細胞を含む。肝コロニーの数を、3連の染色した培養物から確立した(平均±SD)。コロニー形成の効率は、培養液に接種した細胞のうち、16日の培養後に分析したところ、コロニーを形成するようになった割合を示す。
【0053】
6.5. E13肝細胞および成体肝細胞の異なる培養要件
E13肝臓から得られたソートされた肝細胞の成長要件は、決められたSTO5フィーダーおよびHDMを用いて調べられた。EGFは成体肝細胞の強力な増殖因子であることが以前から知られている。したがって、ソートした肝細胞のコロニー形成に対するEGFの効果を調べる。RT1A1− OX18dull、ICAM−1+肝細胞のコロニーサイズはEGFがないと大きくなるが、成体肝細胞はEGFの存在下でのみ、コロニーを生成した(図5A)。さらに、成体肝細胞に由来するコロニーの形態は、通常F型であるが、RT1A1−肝細胞はEGFなしでP型コロニーを形成する。しかし、コロニー効率はEGFがないとわずかに低下する(図6A)。興味深いことに、EGFのない培養条件は、2種類のPコロニー、P1およびP2を際立たせた。培養12日目にはコロニーの大部分はP2型であるが、典型的な形態を持たないコロニーもあるので、2つのタイプを完全に区別するのは困難である。これらの結果は、胎児肝細胞および成体肝細胞は、その増殖要件ならびにRT1A1発現(図3および4)およびコロニーの形態において、本質的に異なることを示唆している。
【0054】
増殖が最大に到達したと思われる培養3週間後に、RT1A1− 、OX18、およびICAM−1の発現を評価する。図5B〜5Dに示すように、RT1A1の発現は誘導されず、OX18の発現は低下している。ICAM−1のレベルは変化しない。さらに、単一コロニーの平均細胞数を、回収した細胞数、ラット肝細胞の割合、およびコロニー効率から計算する。見積もられる細胞数は3〜4 x 103(表2)に達する。これは、コロニーを形成する単一細胞が、この培養条件では平均で約11〜12回分裂したことを示す。
【0055】
【表2】単一肝コロニーにおける細胞数の計算
【0056】
図4C−5のR4からソートした細胞は、60 mmまたは100 mmのディッシュでSTO5hlxフィーダー細胞上で培養した。示された期間培養した後、全ての細胞を回収し、総細胞数を計算した。ラット細胞の割合は、ラットICAM−1およびマウスCD98の発現に基づく、フローサイトメトリー分析による。コロニー効率は、培養に接種された細胞のうち、コロニーを形成したものの割合を示す。3連の染色した培養(平均)からのデータは、平行して行なった実験から得られた。
【0057】
単一コロニー中の平均細胞数=(回収した細胞の数 x ラット細胞のパーセンテージ/100)/接種した細胞の数 x コロニー効率/100)
【0058】
6.6 RT1A1−肝前駆細胞が両能性である証拠
ラット胎齢E13において、肝細胞は成熟した肝実質細胞および胆管上皮細胞を生み出す両能性前駆細胞だと考えられる。しかし、本発明以前では、この2つの運命が単一の細胞から生ずるのかどうかを示す直接の証拠がなかった。RT1A1− OX18dull ICAM−1+の胎児肝細胞がこの培養系で胆管細胞系に分化できるかどうかを知るために、胆管上皮細胞に特異的なマーカーとして抗CK19でコロニーの染色を行なう。CK19は、胎児肝で15.5日以降に胆管上皮前駆細胞で発現され、この時点で細胞のアルブミン発現が消失する。ソートされたRT1A1− ICAM−1+細胞をEGFの存在下または非存在下で培養し、その運命は培養5日目にCK19およびアルブミンの発現によってモニターする。最初から5日後、EGF処理した培養物ではCK19+のコロニーがほとんどないが、EGFのない培養物ではCK19+細胞を含むコロニーがいくつか見られる(図6A〜6B)。CK19の強度はかなり弱いが、CK19+細胞ではアルブミン発現が低下している。培養10日目には、図6A〜6Bに示すように、CK19のみまたはアルブミンのみを発現するコロニーや、両方が陽性のコロニーが存在する。単一コロニーの中でのCK19+およびアルブミン+細胞のパターンは相反している。両方陽性のコロニーおよびCK19のみ陽性のコロニーの数は、やはりEGF非存在下のほうが高い(図6A)。EGF存在下では、10日目には多くのコロニーがアルブミン+細胞のみからなる(図6B)。最終的には、両方陽性のコロニーの数は、15日目にEGF非存在下では100%近くになる(図6A)。全体では、EGFは培養を通してCK19+のコロニーの出現を劇的に抑制する(図6B)。これらの結果は、E13胎児肝から得たRT1A1−、OX18dull、およびICAM−1+細胞が、胆管細胞系に分化でき、その運命はインビトロではEGFに影響されることを示唆する(図7)。
【0059】
6.7 ICAMおよび古典的MHCクラスIエピトープに対する抗体を用いたヒトおよび非ヒト肝前駆細胞の単離
古典的MHCクラスI抗原の分子構造および生物機能は、脊椎動物間で高度に保存されており、ICAM抗原についても同様である。しかし、MHC抗原は、無脊椎動物には見られない。MHC抗原は、脊椎動物種では最も詳しく研究された分子である。ICAM抗原に関する情報は限られているが、ICAM抗原の生物機能は、ヒト、マウス、およびラットのような多くの哺乳類において保存されている。今までのところ、ICAM−1のcDNAはヒト、チンパンジー、マウス、ラット、イヌ、およびウシからクローニングされている。配列データからの結論は、全ての種において分子構造が高度に保存されているというものである。したがって、特定の種におけるICAM−1に特異的な抗体、および表に記載された、指定のMHCクラスI抗原に対する抗体を選択することによって、肝前駆細胞が濃縮された細胞群を単離することができる。
【0060】
【表3】主要組織適合性抗原:名称
【0061】
OX18はラットMHCクラスI抗原の単形性エピトープを認識する。したがって、抗体は古典的MHCクラスIに加えて非古典的MHCクラスIも認識する。非古典的MHCクラスI遺伝子座の数は同じ種でも変動するので、その正確な数はどの種でも決定されていない。したがって、将来、これらの種の亜集団で、非古典的MHCクラスIとして新しい遺伝子座が発見される可能性がある。
【0062】
本発明の1つの態様は、肝前駆細胞の表現型を予測する方法である。この特徴は、種々の種において鍵となる細胞表面マーカーの表に示されている。
【0063】
【表4】本発明に基づく、肝前駆細胞のマーカー
【0064】
6.8 ラットの両能性肝前駆細胞の解析および成体肝細胞との比較
【表5】ラット細胞における細胞表面および内部マーカー
EGF=培養物に添加すると、細胞を肝細胞系に誘導し、胆管細胞系の発生を阻止する上皮成長因子。EGFの非存在下では、胆管および肝細胞系の両方に自然に分化する。
* 他の研究者らが、成体肝細胞および成体胆管上皮はCD44H(Cruishank SMら、J Clin Pathol 1999 52:730−734)およびCD90(Gordon GらAmerican Journal of Pathology 157:771−786)陰性であることを示した。
** 成体肝実質細胞は、上述の培養条件で、過形成性の増殖によって増殖できる。
*** CK19はインビボでは成体肝実質細胞では発現しない。しかし、成体肝細胞の任意の培養物では、ある程度のCK19を発現する細胞が1つまたは2つ観察されるが、明らかな培養条件による誘導性はなく、陽性細胞と陰性細胞の間に形態的区別はない。これはインビボにおける胎児肝、および両能性肝細胞および他の胎児肝細胞の培養における所見とは対照的である。
【0065】
6.9 ヒト胎児肝細胞の抗原フェノタイピング
ヒト胎児肝細胞は、CD14に対する抗体で染色する。HLA (ABC) vs CD14の2色セルソートによっていくつかの細胞群が同定される。これらの細胞群には、中程度にHLA染色され、かつCD14染色されないという特徴のR2と呼ばれる群、ならびに高度にCD14染色され、かつ高度にHLA染色されるという特徴のR3と呼ばれる別の群が含まれる。αフェトプロテインの染色をすると、R3細胞はαフェトプロテイン陽性で、R2には2つの亜集団が含まれ、そのうちの1つのみがAFP陽性である。
【0066】
6.10 非古典的MHCクラスI、αフェトプロテイン、アルブミン、およびCK19を含む発現マーカーに対する抗体を用いたヒト肝前駆細胞のさらなる単離
単形性エピトープを選択するために、HLAクラスI単形性エピトープに対するフルオレセイン結合抗体と細胞懸濁液とをインキュベートする。当業者は、テキサスレッドを含め、任意の他の多くの蛍光色素がフルオレセインの代わりに使用できることを認識するものと思われる。代わりに、細胞の標識には間接的免疫蛍光も使用できる。すなわち、1次抗体が作られた種の免疫グロブリンに対する抗体に蛍光標識を結合する。細胞試料は、様々な市販のまたはカスタム化した任意のセルローター装置を用いて、ハイスループットな蛍光活性化セルソートによりソートする。標識した抗単形性エピトープによって中間または弱い蛍光を示す肝前駆細胞を選択する。
【0067】
ラット肝前駆細胞が濃縮された組成物は、CD44Hに対する抗体を用いて、肝細胞懸濁液をソートすることによって都合よくソートできる。高レベルの側方散乱光を示す肝細胞も、CD44Hおよびαフェトプロテインを発現する。特に、αフェトプロテインを発現する細胞は、より高いレベルのCD44Hを発現する。反対に、低レベルの側方散乱光を持つ肝細胞は、CD44を高いレベルでは発現しない。
【0068】
高レベルの側方散乱光を示す肝細胞は、αフェトプロテインの発現に、CD90に依存する差が見られない。しかし、低レベルの側方散乱光を示す細胞は、αフェトプロテインの発現に、CD90に依存する差が見られる。特に、αフェトプロテインを発現する細胞は、CD90の発現レベルも、より高い。
【0069】
代わりに、HLA−A2、HLA−B27、およびHLA−Bw22を含むがこれらに限定されない多形性エピトープに特異的な抗体が、肝前駆細胞の同定および単離に使用される。
【0070】
また、HLA−G、HLA−E、およびHLA−Fを含む非古典的HLAクラスI抗原に特異的な抗体が、その抗原を発現する肝前駆細胞の同定および単離に使用される。
【0071】
これらの方法は、非哺乳類肝前駆細胞に容易に適用できることは明らかである。
【0072】
6.11. αフェトプロテイン、アルブミン、非古典的MHCクラスIおよびCK19を含む発現マーカーに対する抗体を用いたハイスループットアフィニティ単離法を使用する、ヒト肝前駆細胞のさらなる単離
単離プロトコールを模式的に以下に示す:
ヒト肝前駆細胞の単離の図
物理的方法および/または酵素消化によるヒト組織からの単一細胞懸濁液の調製
↓
赤血球を排除するための、溶解溶液を用いたデバルキング
↓
古典的MHCクラスI HLA−A、 B、およびCを高レベルに発現する非完前駆細胞群のネガティブ除去
↓
ICAM−1を発現する肝前駆細胞の単離
↓
HLA−E, F, G, H, J, Xを含む非古典的MHCクラスIの弱い発現による、肝前駆細胞のさらなる単離
↓
非実質細胞と比較して高い側方散乱光、αフェトプロテイン、アルブミン、またはCK19を発現する子孫の産生性、またはクローン増殖能力、または工程の組み合せによる、肝前駆細胞のさらなる単離
【0073】
赤血球細胞成分のデバルキングおよび排除のための他の方法も都合良く使用でき、これらの方法は間質細胞群の一部も減らすことができる。これらの方法には、パーコール勾配による分画、グリコフォリンA、CD45,またはその両方に対する抗体を用いた特異的な除去が含まれる。また、これらの方法には、沈降速度、例えばフィコールのようなパーコール以外の密度勾配による分離、ゾーン遠心、および細胞水簸が含まれる。これらの方法によって、赤血球細胞、倍数体の肝実質細胞、造血細胞、および間質細胞が除去される。
【0074】
ICAM−1陽性で古典的MHCクラスI抗原陰性の細胞群の単離は、肝前駆細胞を同定するために非古典的MHCクラスIを含む他のマーカーを用いてさらに解析される。また、これらの前駆細胞の子孫は、肝前駆細胞の特徴として以前から知られているマーカーであるαフェトプロテインおよび/またはアルブミンのような細胞質タンパク質に対する抗体で標識される。αフェトプロテインおよびアルブミンは、生存可能な細胞の選択には使用できない肝前駆細胞の周知のマーカーの代表である。これは、これらのタンパク質で細胞を標識するためには細胞を透過性にする必要があり、そのために生存可能性が損なわれるためである。しかし、1つの細胞群から得た細胞試料は、αフェトプロテイン、アルブミン、およびサイトケラチンに関して調べることができる。それにより、細胞群全体の特性が推定される。しかし、細胞表面マーカー(例、ICAM−1陽性、OX−18弱陽性、古典的MHCクラスI陰性)およびクローン増殖能力と、細胞質マーカーであるαフェトプロテイン、アルブミン、またはCK19とに高度の相関があることは、表面マーカーのみで選択して、生存可能な細胞が単離できることを示す。
【0075】
6.12. 側方散乱光を用いたヒト肝前駆細胞のさらなる単離
側方散乱光自身で、肝前駆細胞というような細胞の種類を同定することはできない。しかし、これはマーカーに関する蛍光活性化セルソートのような他の手段による選択の補助として、非常に有用である。古典的MHCクラスIのような特定のマーカーによって同定された細胞群について、その側方散乱光の特性によって規定される亜集団に注目する必要がある(図4C参照)。
【0076】
成熟した肝細胞は高度に粒状であり(非常に高い側方散乱光を示す);肝前駆細胞は粒状度では中程度であり;非実質細胞群は肝前駆細胞よりも粒状度が低いことを認識するのは重要である。ほぼ全てが非実質細胞および肝前駆細胞からなる胎児組織由来の細胞では、肝前駆細胞が最も高い粒状度を有する。肝前駆細胞は、フローサイトメトリーで粒状度が中程度の細胞群として選択される。
【0077】
ヒト肝前駆細胞が濃縮された組成物は、CD14に対する抗体と、ヒトのMHCであるHLAに対する抗体とを組み合せて使用して、肝細胞懸濁液をソートすることによっても、都合良く調製できる。免疫選択の全ての方法が、同様に適用できる。特定の例として、フローサイトメトリーが細胞の単離に使用される:相対的に中間レベルのHLAを発現しCD14を発現しないR2と呼ばれる細胞、および比較的高いレベルのHLAおよびCD14を発現するR3と呼ばれる細胞である。R2細胞は、さらにαフェトプロテインの発現により、2つの亜集団があることで特徴付けられる。R3細胞は、αフェトプロテインを発現する細胞のみからなることで特徴付けられる。
【0078】
6.13. グリコフォリンAまたはCD45に対する抗体を用いたネガティブ選択による、非肝前駆細胞の除去
肝前駆細胞は、モノクローナル抗体(ヒトのグリコフォリンA)およびモノクローナル抗体がなければ赤血球に対するポリクローナル抗血清を使用して、赤血球細胞から区別される。また、白血球共通抗原(CD45)を発現する細胞も、古典的MHCクラスI抗原を発現する。したがって、CD45は齧歯類の肝前駆細胞を同定するために使用できる抗原ではないが、古典的MHCクラスIによるネガティブ選択の代わりとしてまたは補足として、指定されない場合は使用できる。
【0079】
6.14. 肝癌の同定および治療に対する応答
非古典的HLAクラスI抗原、ICAM−1、およびαフェトプロテインを含む肝前駆細胞の同定に使用したマーカーは、肝癌の治療の成功を明らかにするために、肝癌の解析に使用できる。一般に、癌は幹細胞および初期の前駆細胞群の形質転換体である。しかし、これらの形質転換体はしばしば正常な細胞にも存在する抗原性マーカーの発現を保持している。これらの抗原性マーカーによって識別される肝癌は、癌の種々の治療様式(例、化学療法薬、放射線、およびアジュバント療法)に対して異なる応答をする癌を同定できる。
【0080】
6.15. 胚幹細胞の同定および選択
本明細書に記述されるマーカーおよび選択方法は、特定の運命への胚幹(ES)細胞の分化を特徴付けるためにも使用できる。ES細胞は任意の組織の再生に使用できる万能幹細胞として普及している。しかし、組織にES細胞を注入した過去の研究では、腫瘍が発生し、中には悪性のものもあった。ES細胞が臨床で使用される唯一の方法は、これを運命づけられた幹細胞へ分化させ、それからその運命づけられた幹細胞を注入することである。したがって、胚幹細胞は、増殖して子孫を形成できる培養条件で維持される。ES子孫は、古典的MHCクラスIおよびICAM−1抗原に対する抗体とインキュベートした後、フローサイトメトリーにかける。肝前駆細胞の基準に適合するES子孫を細胞培養によって増殖させる。我々が同定したマーカーは、運命づけられた幹細胞の肝臓の運命を決めるために使用できる。
【0081】
6.16. 遺伝子療法と組み合せた使用
本明細書で同定される肝前駆細胞のマーカーは、遺伝子療法のための細胞群の同定に使用される。現在まで、成熟した細胞群を標的とした遺伝子療法は、しばしば全くまたはあまり機能しなかった。現在までの遺伝子療法の大きな成功は、造血前駆細胞群におけるエクスビボの遺伝子療法である。したがって、肝臓のためのエクスビボの遺伝子療法は、我々のプロトコールによって単離された肝臓に運命づけられた幹細胞および前駆細胞を用いて行われる。また、「標的を定めた注入ベクター」を用いる遺伝子療法は、肝前駆細胞を標的とするものに集中することによって改善される。これらの方法によって、血友病、呼吸鎖複合体I欠損、フェニルケトン尿症、ガラクトース血症、肝腎性高チロシン血症、遺伝性果糖不耐性、ウィルソン病、ヘモクロマトーシス、小胞体蓄積症、高シュウ酸尿症I型およびIII型、β−ヒドロキシ−δ5−C27−ステロイドデヒドロゲナーゼ欠損、糖原病(グルコース−6−ホスファターゼ、グルコース−6−フォスフェートトランスロカーゼ、脱分枝酵素、肝ホスホリラーゼおよびホスホリラーゼ−b−キナーゼの欠損を含む)、脂肪酸酸化または転移欠損(器質性酸性尿症、アシル−CoAデヒドロゲナーゼ欠損を含む)、ポルフィリン症、およびビリルビンウリジンジフォスフェートグルクロニルトランスフェラーゼを含む、代謝における先天性のエラーが改善できる。
【0082】
肝前駆細胞は、以下のようにして遺伝子療法に使用できる:
【0083】
フェニルケトン尿症(PKU)は肝臓のフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)の欠損によって引き起こされる常染色体劣性の疾患である。PAHは、コファクターとしてテトラヒドロビオプテリンを用いてフェニルアラニンからチロシンへの変換を触媒する。PKUの患者は、体液中のフェニルアラニン量が上昇するために、重篤な精神遅滞、および皮膚、髪、および目の色素沈着低下を示す。厳格な食事制限によって、血清フェニルアラニンレベルは低下するが、思春期または成人期初期におけるコンプライアンスの低下でさえ、精神的または行動機能の低下を引き起こす。遺伝子療法技術は、PKUの食事療法に代わるものの1つである。PKUの変異マウスPahenu2の開発によって、この手法の試みが容易になった。現在のところ、3つのベクターシステム、組換えアデノウイルス、レトロウイルス、およびDNA/タンパク質複合体が開発されている。アデノウイルスを介した遺伝子移入の効果は、組換えウイルスに対する宿主の免疫応答のために、注入後短期間しか継続しなかった。組換えレトロウイルスおよびDNA/タンパク質複合体はインビトロでPAH欠損肝実質細胞に効果的に形質導入するが、主に肝臓にうまく再移植される細胞数が少ない理由で、エクスビボの手法の臨床的有用性は限定されている。増殖能力の高い肝前駆細胞を利用すると、上述のような問題が解決される。
【0084】
自己肝前駆細胞を用いたエクスビボ遺伝子療法の図
PKU患者(または実験ではPAH欠損マウス、Pahenu2)からの肝前駆細胞の単離
↓
ウイルスまたは非ウイルス法による、G418選択のためのネオマイシン耐性遺伝子およびヒトPAH cDNAを用いた細胞の形質導入
↓
フィーダー細胞上でのネオマイシン耐性遺伝子を含む細胞のG418を用いた7〜14日間のエクスビボ増殖
↓
ディスパーゼにより細胞を採集。このプロナーゼはフィーダーにはきかない。したがって、PAH cDNAおよびネオマイシンを持つ肝前駆細胞のみが培養物から回収される。
↓
門脈または脾臓から宿主肝臓へ細胞を注入
【0085】
6.17 細胞療法における両能性肝前駆細胞の使用
異種細胞移植療法を評価するために、ラットの肝不全モデルが使用される。肝不全は、10匹のオスラット(体重125〜160 g)の実験群で肝臓の約70%を外科的に除去し、総胆管を結紮することでモデルを作製する。年齢および性別が一致するラット10匹の疑似対照群は、同様に麻酔し、正中線開腹術、肝臓の操作を行なうが、胆管の結紮と肝切除は行なわない。
【0086】
肝前駆細胞が濃縮された細胞群は、上述のように調製される。簡単に述べると、12匹の胎児(胎齢14日)ラットの肝臓を無菌的に除去し、さいの目に切り、カルシウムもマグネシウムも含まないハンクス液pH 7.0中1 mM EDTAですすぎ、0.5 mg/mlコラゲナーゼを含むハンクス液中で20分間までインキュベートして、ほぼ単細胞懸濁液を作製する。
【0087】
両能性肝前駆細胞は、上述の任意の方法で調製される。
【0088】
肝切除または擬似手術後3日目に、実験群および疑似対照群のラットに5 mmの腹部切開を施し、脾臓を露出する。実験群および疑似対照群の動物の各々半分を無作為に選択し、両能性肝前駆細胞組成物を直接脾臓に01.1 mlずつ注入する。全ての切開は外科用ステープルで閉じる。異なる動物群に投与される細胞の数は、約103〜約1010個、特に103, 104, 105, 106, 107, 108, 109、および1010個であり得る。免疫抑制剤サイクロスポリンAを体重1 kgあたり1 mgで毎日腹腔内投与する。
【0089】
ビリルビン、γグルタミルトランスフェラーゼ、およびアラニンアミノトランスフェラーゼ活性は、肝切除または疑似肝切除の2日前、および術後3、7、14、および28日にモニターする。体重、水分摂取、および目視による嗜眠状態も同じ日程で記録する。肝切除の28日後に、全ての生存している動物を殺して、脾臓および肝臓の組織学的評価を行なう。
【0090】
上述の実施例は、例示のためのみに説明されており、本発明の範囲または態様を制限するものではない。上記に特に説明されていない他の態様も、当業者にとって明らかであると思われる。しかし、そのような他の態様も、本発明の範囲および精神に含まれると考えられる。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ、正しく限定される。
【図面の簡単な説明】
【図1Aから1C】15日目の胎児ラットの肝臓から得た肝細胞株の特徴付けである。
【図2Aから2F】フィーダー細胞上のコロニー形成アッセイ結果である。
【図3Aから3X】成体肝細胞中の様々な細胞株上のラット細胞表面抗原の発現である。
【図4A1から4D4】E13胎児ラットの肝臓の表現型分析を表す。
【図5Aから5D】EGF存在下および非存在下での肝臓コロニーの特徴付けである。
【図6Aから6B】RT1A1−肝細胞上のCK19発現の誘導を表す。
【図7】STO5フィーダー細胞上の肝臓コロニー形成の模式図である。
Claims (26)
- 少なくとも1つの細胞間接着分子(ICAM)抗原を発現し、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIa抗原を発現しない、分化能力を持つ両能性(bipotent)肝前駆細胞を含む組成物。
- 肝前駆細胞が少なくとも1つのMHCクラスIb抗原を発現する請求項1記載の組成物。
- MHCクラスIb抗原が弱く発現する、請求項2記載の組成物。
- ICAM抗原がICAM−1である、請求項1記載の組成物。
- フローサイトメトリーにおける肝前駆細胞の側方散乱光が、成熟した実質細胞の側方散乱光よりも少ない、請求項1記載の組成物。
- フローサイトメトリーにおける肝前駆細胞の側方散乱光が、非実質細胞の側方散乱光と、成熟した実質細胞の側方散乱光の間である、請求項1記載の組成物。
- 肝前駆細胞が分裂し、子孫を産生する能力のある、請求項1記載の組成物。
- 肝前駆細胞がクローン増殖する能力を示す、請求項7記載の組成物。
- クローン増殖が細胞外マトリックスを必要とする、請求項8記載の組成物。
- 子孫が積み重なったクラスターで増殖する、請求項7記載の組成物。
- 子孫がαフェトプロテイン、アルブミン、CK19、またはその組み合せを発現する、請求項7記載の組成物。
- 子孫が肝実質細胞または胆管細胞である、請求項7記載の組成物。
- 肝実質細胞または胆管細胞が、さらに特定の亜集団の選択または同定に使用できる細胞接着分子を発現する、請求項12記載の組成物。
- 肝前駆細胞、その子孫、またはその組み合せを含む組成物であって、肝前駆細胞およびその子孫が:
(a) 少なくとも1つのMHCクラスIb抗原を弱く発現し、
(b) フローサイトメトリーで非実質細胞よりも高い側方散乱光を示し、
(c) αフェトプロテイン、アルブミン、CK19、またはその組み合せを発現する組成物。 - 肝前駆細胞、その子孫、またはその組み合せが、内胚葉または骨髄由来である、請求項14記載の組成物。
- 内胚葉が肝臓、膵臓、肺、消化管、甲状腺、性腺、またはその組み合せから選択される、請求項15記載の組成物。
- 前駆細胞がICAM抗原を発現する、請求項15記載の組成物。
- ICAM抗原がICAM−1である、請求項17記載の組成物。
- 前駆細胞がMHCクラスIaを発現しない、請求項15記載の組成物。
- 前駆細胞が少なくとも1つのMHCクラスIb抗原を発現する、請求項15記載の組成物。
- 肝前駆細胞が濃縮された脊椎動物細胞の混合物を得る方法であって、
(a) 脊椎動物肝細胞を含む細胞懸濁液を得る段階、および
(b) 少なくとも1つのMHCクラスIa抗原を発現する細胞を細胞懸濁液から除去し、肝前駆細胞が濃縮された細胞混合物を提供する段階
を含む方法。 - 前駆細胞が濃縮された脊椎動物細胞の混合物を得る方法であって、
(a) 脊椎動物細胞の細胞懸濁液を得る段階、および
(b) 任意の順で順番にまたは実質的に同時に、少なくとも1つのMHCクラスIa抗原を発現する細胞を細胞懸濁液から除去し、およびICAM抗原陽性の細胞を細胞懸濁液から単離し、前駆細胞が濃縮された細胞混合物を提供する段階
を含む方法。 - 前駆細胞を同定する方法であって、
(a) 前駆細胞を含むと思われる細胞懸濁液を提供する段階、および
(b) ICAM抗原を発現し、MHCクラスIa抗原を発現しない細胞を同定する段階
を含む方法。 - 肝前駆細胞が濃縮された脊椎動物細胞の混合物を得る方法であって、
(a) 脊椎動物の胚幹細胞を提供する段階、
(b) 胚幹細胞を増殖させ、胚幹細胞の子孫を産生する段階、
(c) 少なくとも1つのICAM抗原を発現し、MHCクラスIa抗原を発現しない、胚幹細胞の子孫を単離する段階
を含む方法。 - ICAM抗原は発現するがMHCクラスIa抗原は発現しないヒト肝前駆細胞、その子孫、またはその組み合せが濃縮された細胞の有効量を、薬学的に許容される担体で患者に投与する段階を含む、治療を必要としている患者において、肝前駆細胞を用いて肝臓の疾患または機能不全を治療する方法。
- 遺伝的障害を治す遺伝子を持つ両能性肝前駆細胞の有効量を、治療を必要とする患者に投与する段階を含む、治療を必要とする患者における遺伝的障害の治療方法。
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