JP2004503342A - 微小器具及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

患者の皮膚を通して物質をモニタし、サンプル採取し、投与する器具が、支持体及び少なくとも１つの皮膚穿刺部材を備えた微小器具を有している。支持体は、実質的に平らな底面を有し、皮膚穿刺部材は、この底面を越えて延びている。出口ポートが、皮膚の穿刺性を高める真空を引くために支持体を貫通して皮膚穿刺部材と支持体の外縁部との間の位置にある底面まで延びている。器具は、微小器具を支持体に形成された凹部内に配置し、結合剤が微小器具と凹部の壁との間に形成された隙間中へしみ込むよう結合剤を塗布することにより製造される。

Description

【０００１】
〔発明の分野〕
本発明は、微小器具及び微小器具を製造する方法に関する。本発明は更に、患者に対する物質の経皮的な抜取り又は投与を行う方法及び器具に関する。本発明は又、微小針アレイの穿刺性を高める方法及び器械に関する。
【０００２】
〔発明の背景〕
例えば医薬品や薬剤のような物質の経皮的なサンプル採取及び投与のための種々の器具が提案されている。カニューレを用いる皮下サンプル採取及び投薬法は多くの用途で有効であるが、通常カニューレにより引き起こされる痛みに鑑みて、痛みの少ない投薬方法の開発が促された。
皮膚は、幾つかの層で構成されており、上に位置する複合層は、上皮層である。皮膚の最も外側に位置する層は、角質層であり、この角質層は、分子及び種々の物質が身体に入ったり分析物が身体から出るのを防止するよう周知のバリヤ特性を備えている。角質層は、角質化した細胞レムナントを押し固めたものから成る複雑な構造であり、その厚さは約１０〜３０ミクロンである。角質層は、身体を種々の物質の侵入及び種々の化合物の体外への移動から保護する防水メンブレンを形成している。
【０００３】
角質層の生まれつき備わった不透過性は、皮膚を通る大抵の医薬品及び他の物質の投与を阻止する。皮膚の透過性を高め、身体によって利用できる種々の薬剤の皮膚経由の拡散性を促進する多くの方法及び器具が提案された。典型的には、皮膚経由の薬剤投与は、皮膚の透過性を高めるか、或いは薬剤を皮膚中へ差し向けるのに用いられる力又はエネルギを増大させることによって促進される。
【０００４】
皮膚を通して種々の物質をサンプル採取したり投与する別の方法は、微小孔又は切れ目を角質層に形成することである。角質層の穿通又は穿刺を行って薬剤を角質層中又はその下の皮膚に投与することにより、多くの薬剤を効果的に投与することができる。これと同様な仕方で、或る物質を角質層に形成された切れ目又は細孔を通って身体から抽出することができる。角質層を穿通し又は穿刺する器具は一般に、表皮を完全に貫通することなく、角質層を穿刺する長さを備えた複数のミクロンサイズの針又はブレードを有している。これら器具の例が、ゴッドシャル（Ｇｏｄｓｈａｌｌ）氏等に付与された米国特許第５，８７９，３２６号明細書、リー（Ｌｅｅ ）氏等に付与された米国特許第５，２５０，０２３号及び国際公開第ＷＯ９７／４８４４０号パンフレットに開示されている。
【０００５】
ミクロンサイズの針又はブレードを有する上述の器具は、物質を体内に投与し又は体内の物質をサンプル採取するのに有効な場合がある。しかしながら、数ミクロンから数百ミクロンの長さのこれら針及びブレードは典型的には、皮膚を一様深さで穿刺しない。皮膚は生まれつき弾性及びレジリエンスを備えているので、その結果として、皮膚は穿刺されず針によって変形する場合が多い。微小針アレイは皮膚に押し付けられると、最も外側の針が皮膚を穿刺し、これに対し最も内側の針は穿刺しないか、或いは最も外側の針よりも浅い深さまで穿刺するに過ぎないという結果が生じる場合が多い。
物質の経皮サンプル採取及び投与のための従来方法及び器具では、限られた成功しか収めることができなかった。したがって、当該技術分野においては、種々の薬剤及び他の物質をサンプル採取したり身体に投与する改良型器具が要望され続けている。
【０００６】
〔発明の概要〕
本発明は、患者の皮膚を介する物質の経皮サンプル採取又は投与のための方法及び装置に関する。本発明は更に、患者の皮膚を通して物質を投与し又は抜き取る器具を製造したり組み立てる方法に関する。特に、本発明は、薬剤又はワクチンのような医薬品を皮膚の角質層に、医薬品を身体が吸収してこれを利用することができる充分な深さまで投与する方法及び装置に関する方法、したがって、本発明の主要な目的は皮膚穿刺部材を備えた器具及び実質的に患者に痛みを与えないで皮膚を通して物質をサンプル採取し又は投与するために皮膚を穿刺する方法を提供することにある。
【０００７】
本発明の別の目的は、患者の皮膚を通して物質を抜き取り又は投与するために皮膚の角質層を穿通し又は穿刺する複数本の微小管、針、微小針、ブレード又はランセットを備えた器具を提供することにある。
本発明の別の目的は、少なくとも皮膚穿刺部材を備えた器具及び皮膚の穿刺性を高める器具を提供することにある。
本発明の別の目的は、物質をサンプル採取し又は物質を患者に投与する器具であって、支持体及び支持体に結合された微小針器具を備えた器具を提供することにある。
【０００８】
本発明の別の目的は、物質を抜き取り又は投与する器具であって、皮膚穿刺器具及び真空を及ぼして皮膚穿刺器具による皮膚の穿刺性を高めるための真空ポートを有する器具を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、真空を標的領域の表面及び皮膚穿刺器具に及ぼすことにより標的領域内の皮膚穿刺器具による皮膚穿刺性を高める方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、微小器具を支持体に設けられた凹み領域に嵌め込む段階と、結合剤を凹部に塗布してこれが微小器具と支持体との間にしみ込むようにする段階とを有する器具の組立て方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、凹み領域及び凹み領域と連通する一端部を備えたチャネルに微小器具を結合する方法であって、微小器具を凹み領域に嵌め込み、結合剤をチャネルに塗布して結合剤が支持体と微小器具との間の隙間に流入するようにする方法を提供することにある。
【０００９】
本発明の上記目的及び他の目的は実質的に、患者の皮膚を通して物質を投与し又は抜き取る微小器具を製造する方法を提供することによって達成される。この方法は、凹み領域を備えた底面を有する支持体を準備する段階を有し、凹み領域は上記底面の寸法よりも小さな寸法を有し、上記方法は、皮膚穿刺器具を上記支持体の上記凹み領域内に位置決めする段階を更に有する。上記皮膚穿刺器具は上記凹み領域の上記寸法よりも小さな寸法をもつベース及び少なくとも１つの皮膚穿刺部材を有する。結合剤を上記支持体と上記凹み領域内の上記ベースとの間の少なくとも１つの場所に塗布し、結合剤は、上記ベースと上記支持体との間にしみ込むほどの粘度を有している。
【００１０】
本発明の目的及び利点は更に、患者の皮膚を通して物質を抜き取り又は物質を投与する方法であって、上記方法は、中央通路及び底面を備えた支持体及び上記底面に取り付けられた１つの皮膚穿刺器具を準備する段階を有し、上記中央通路は、上記皮膚穿刺器具と連通しており、上記支持体の上記底面及び上記少なくとも１つの皮膚穿刺器具が患者の上記皮膚に接触した状態で上記支持体を患者の皮膚上に置く段階と、上記支持体と上記皮膚との間の領域内の圧力を減少させて上記皮膚を上記皮膚穿刺部材に向かって引き寄せ、上記皮膚穿刺器具が上記皮膚を穿刺するようにする段階と、上記患者の皮膚を通して物質を抜き取り又は投与する段階とを更に有していることを特徴とする方法を提供することによって達成される。
【００１１】
本発明の別の目的は、物質を患者に投与し又は物質を患者から抜き取る器具であって、底面及び上記底面の寸法よりも小さな寸法を備えた凹み領域を有する支持体と、上記支持体の上記凹み領域内に位置決めされるベース及び少なくとも１つの皮膚穿刺部材を備えた皮膚穿刺器具と、上記皮膚穿刺器具を上記支持体に取り付け、上記凹み領域と上記皮膚穿刺器具の上記ベースとの間の空間を満たす結合剤とを有していることを特徴とする器具によって達成される。
本発明の目的、利点及び新規な特徴は、添付の図面と関連して本発明の好ましい実施形態を開示する以下の詳細な説明から明らかになろう。
【００１２】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
本発明は、患者の皮膚を通して物質をサンプル採取し、モニタし又は投与する皮内器具に関する。特に、本発明は、サンプル採取、モニタ又は投与用の器具及び物質をサンプル採取し又は物質を患者の皮膚の角質層中又はその下に投与する方法に関する。本発明は更に、サンプル採取、モニタ又は投与用の器具を製造する方法に関する。
本明細書で用いる「穿刺」という用語は、皮膚の層にこれを完全に貫通しないで入ることをいう。「穿通」は、皮膚の層を完全に貫通することを意味する。
【００１３】
本発明の一実施形態としての器具及び方法は、医薬品を含む種々の物質を患者、特に人間に投与するのに用いるのに適している。本明細書で用いる「医薬品」という用語は、身体のメンブレン及び表面、特に皮膚を通して投与できる生物学的活性を備えた物質を含む。例としては、抗生物質、抗ウイルス剤、鎮痛薬、麻酔薬、食欲抑制剤、抗関節炎薬、抗うつ剤、抗ヒスタミン薬、抗炎症剤、抗腫瘍性薬、ＤＮＡワクチンを含むワクチン等が挙げられる。患者に皮内的に投与できる他の物質としては、蛋白質、ペプチド及びそのフラグメントが挙げられる。蛋白質及びペプチドは、生まれつき生じるものであってもよく、合成したものであってもよく、或いは組換えにより作ったものであってもよい。
本発明の器具及び方法は、物質を抜き取り又は体内の物質のレベルをモニタするのにも適している。モニタでき又は抜き取ることができる物質の例としては、分析物、グルコース、薬剤等が挙げられる。
【００１４】
図面を参照すると、本発明は、支持体１２及び微小器具１４を有する器具１０に関する。この器具１０は、体内の物質レベルをモニタするモニタ器具であってもよく、サンプルを身体から抜き取るサンプル採取器具であってもよく、或いは物質を身体に投与する投与器具であってもよい。
【００１５】
図１〜図７を参照すると、この実施形態の支持体１２は、全体として円形の形態をしたベース１６を有している。別の実施形態では、ベース１６は、器具の所期の用途に応じて非円形の形態をしていてもよい。ベース１６は、頂面１８、底面２０及び中央通路２２を有している。図２に示すように、中央通路２２は、支持体１２内にキャビティを形成するよう支持体１２を完全に貫通している。
カラー２４が、頂面１８から延びていて、中央通路２２を構成している。カラー２４は、中央通路２２に通じる入口開口部２８を備えた頂端部２６を有している。フランジ３０が、ねじ付き継手部材を形成するようカラー２４の頂端部２６から半径方向外方に延びている。図１の実施形態では、フランジ３０及びカラー２４は、雌型ルアー（Ｌｕｅｒ）タイプの継手を形成している。
【００１６】
支持体１２の底面２０は、図２に示すように実質的に平らである。凹み領域３２が、底面２０に形成されていて、中央通路２２と連通している。図２及び図３を参照すると、凹み領域３２は、形状が全体として矩形のものとして示されており、この凹み領域は、側面３４及び底面３６を有している。図示の実施形態の側面３４は、支持体１２の底面２０に対し実質的に垂直である。凹み領域３２の底面３６は、側面３４に対し全体として垂直である。一般に、凹み領域の底面３６は、底面２０と同一平面内に位置する。
図３を参照すると、底面２０に形成された開放チャネル３８が、支持体１２の凹み領域３２からその外縁部４２に向かって外方に延びている。図示の実施形態では、２つのチャネル３８は、凹み領域３２の反対側に位置したコーナ部から円形凹部４０まで延びている。変形実施形態では、チャネル３８は底面２０の外縁部４２まで完全に延びてもよい。
【００１７】
本発明の図示の実施形態の微小器具１４は、患者の皮膚を通して物質をモニタし、サンプル採取し又は投与するのに用いられるのに適した穿刺器具である。好ましい実施形態では、微小器具１４は、ベース４６から外方に延びる複数の皮膚穿刺部材４４を有している。本明細書で用いる「皮膚穿刺部材」という用語は、皮膚を所望深さまで穿刺し又は穿通できる部材を意味している。皮膚穿刺部材４４は、断面が実質的に矩形であり、斜切又は傾斜先端部４８を備えた微小針として図示されている。軸方向通路５０が、各皮膚穿刺部材４４及びベース４６を貫通して延びていて、したがって頂面５２から斜切先端部４８まで延びるようになっている。図４に示すように皮膚穿刺部材４４は、実質的に一様な間隔を置いて設けられた行及び列（又は、横列及び縦列）から成るアレイの状態で配列されている。行及び列の間隔は、投与され又は抜き取られる物質及び器具と接触状態にある皮膚の面積に応じて様々であってよい。皮膚穿刺器具が微小針である場合、微小針の相互間隔は約０．０５ｍｍ〜約５ｍｍである。
【００１８】
微小器具１４のベース４６は、図４及び図５に示すように凹み領域３２に嵌まり込むよう寸法決めされている。本発明の好ましい実施形態では、凹み領域３２の側面３４は、微小器具１４のベース４６の厚さよりも小さい凹み領域３２の深さを定める高さを備えている。図５及び図６に示すように、凹み領域３２は、ベース４６の厚さの約１／２の深さを有している。変形実施形態では、凹み領域３２は、ベース４６の厚さに実質的に等しい深さを備えてもよい。本発明の一実施形態では、ベース４６の厚さは、約２５０ミクロンである。
【００１９】
本発明の一実施形態では、微小器具１４のベース４６は、図５に示すようにベース４６の側縁部５６と凹み領域３２の側面３４との間に隙間５４を形成するよう凹み領域３２の長さ及び幅よりも僅かに小さい長さ及び幅を有している。別の実施形態では、ベース４６は、凹み領域３２の寸法に実質的に等しい外寸を有している。器具１０は、微小器具１４を実質的に一様な隙間５４がベース４６の周囲に沿って形成された状態で凹み領域３２内に配置することにより組み立てられる。ベース４６の頂面５２は好ましくは、図５に示すように凹み領域３２の底面３６に当接する。図１〜図６の実施形態では、接着剤がチャネル３８の端部のところで凹部４０に塗布されている。接着剤は好ましくは、チャネル３８に沿って流れるのに十分低い粘度を有し、接着剤の表面張力により隙間５４にしみ込む。接着剤は、隙間５４を満たすと共にベース４６を包囲し、それによりベース４６を支持体１２に取り付けて実質的に流体密シールを形成する。
【００２０】
接着剤がこれに力を及ぼす必要なく、図６に示すように凹み領域３２の底面３６とベース４６の頂面５２との間にしみ込むことが判明している。接着剤５８は、ベース４６の頂面５２に沿って支持体１２の中央通路２２内へ流入する。接着剤５８の表面張力により、中央通路２２内の垂直側壁６０とベース４６の頂面５２との間の領域の充填が行われる。接着剤は、隙間５４内の接着剤の曲率半径６４に実質的に等しい曲率半径６２を中央通路２２内に達成するまで壁６０の表面及び頂面５２に沿って流れる。したがって、接着剤５８が皮膚穿刺部材４４の軸方向通路５２内に流れ込むのを阻止するため、中央通路２２の側壁６０と軸方向通路５０の最も内側の縁部との間の空間６６は、隙間５４の幅６８よりも大きい。接着剤５８は、物体を互いに結合できる当該技術分野において知られている任意適当な接着剤であってよい。本発明の好ましい実施形態では、接着剤は、ＵＶ硬化性促進接着剤であり、例えば、Ｌｏｃｋ−Ｔｉｔｅ３３１１ という商品名で市販されている接着剤である。
【００２１】
使用にあたり、器具１０を図７に示すように患者の皮膚７０上に置き、矢印７２の方向で皮膚７０に向かって下方に押して皮膚穿刺部材４４が皮膚７０の表面を穿通するようにする。支持体１２の底面２０は、微小器具１４を完全に包囲した状態で皮膚７０の表面に当たる密封フランジを形成する寸法のものである。図示の実施形態では、ルアーカラー７６を備えた注射器又は注入器７４が、流体密シールを形成するようカラー２４のフランジ３０に結合されている。次に、注射器７４を作動させて中央通路２２に通じる入口２８内へ又はこれを通して物質を小出しし、そして皮膚穿刺部材４４の軸方向通路５０を通して物質を送るのがよい。注射器７４を作動させて患者の皮膚を通って物質を送るのに十分な力を加えるのがよい。変形例として、注射器７４を用いて皮膚を通して物質を患者から抽出し又は抜き取ってもよい。
【００２２】
支持体１２の底面２０は、摩擦促進部材、例えばリブ又は底面２０に塗布された粘着性物質を有するのがよい。好ましくは、支持体１２は、皮膚７０の形状に合致することができるよう弾性材料で作られる。支持体１２の底面２０は、漏れを防止し、流体を皮膚中へ差し向け、又は患者の皮膚を通って物質を抜き取るために皮膚穿刺部材４４を通って小出しされた流体を封じ込める密封フランジを形成する。加うるに、底面２０は、皮膚を摩擦の作用で掴み、それにより支持体１２と皮膚穿刺部材４４と皮膚７０との間の相対運動を減少させる。これにより皮膚穿刺部材４４に加わる側方剪断力が減少し、それより皮膚の切断及び擦過傷の発生の恐れが減少する。
【００２３】
支持体１２は好ましくは、投与され又は患者から抜き取られる物質と反応しないプラスチック材料で作られる。適当なプラスチック材料としては、当該技術分野で知られているように例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミン、ポリカーボネート及びそのコポリマーが挙げられる。
微小器具１４を当該技術分野で知られている適当な材料で作ることができる。本発明の一実施形態では、微小器具１４は、互いに間隔を置いた行及び列で作られたアレイの状態に形成される複数の微小針を有している。微小針をシリコンウェーハから作るのがよく、このシリコンウェーハを機械加工し又はエッチングして微小針アレイを形成する。微小針アレイをステンレス鋼、タングステン鋼、及びニッケル、モリブデン、クロム、コバルト及びチタンの合金から作ってもよい。別の実施形態では、微小針をセラミック材料、ガラスポリマー及び他の無反応性金属で作ることができる。別の実施形態では、微小器具１４を適当なベース内に設けられた針で作ってもよい。
【００２４】
皮膚穿刺部材は、皮膚内への所望の穿刺深さを達成するのに適した長さを有している。皮膚穿刺部材の長さ及び厚さは、投与され又は抜き取られる物質及び器具が当てられる場所の皮膚の厚さに応じて選択される。本発明の実施形態では、皮膚穿刺部材は、微小針、微小管、中実又は中空針、ランセット等であるのがよい。一般的に言って、皮膚穿刺部材の長さは、約５０ミクロン〜約２，０００ミクロン、好ましくは約２５０ミクロン〜約１，０００ミクロンである。一実施形態では、皮膚穿刺部材は、長さが約５００ミクロン〜約１，０００ミクロンの約１５ゲージ〜約４０ゲージ針である。図示の実施形態では、皮膚穿刺部材は、断面形状が実質的に矩形である。変形例として、皮膚穿刺部材は、三角形、円筒形、ピラミッド形又は平らなブレードであってもよい。
【００２５】
微小器具１４は、所望の結果を達成するのに必要な幅及び長さを有するのがよい。一実施形態では、微小器具１４は、約１ｃｍ^２〜約１０ｃｍ^２である。別の実施形態では、微小器具１４は、約１ｃｍ〜約５ｃｍの幅及び長さを有するのがよい。
一般的に言って、器具が投与器具として用いられる場合、医薬品又は薬剤溶液を注射器又は他の流体小出し器具により中央通路内へ導入する。変形実施形態では、乾燥状態又は凍結乾燥状態の薬剤又は医薬品を皮膚穿刺部材の外面上又は皮膚穿刺部材の軸方向通路内に設けてもよい。次に、希釈剤、例えば蒸留水又は食塩水を、中央通路を通り、そして皮膚穿刺部材の軸方向通路を通って注入して薬剤又は医薬品を溶解させて再構成し、次に薬剤を患者に投与するのがよい。
【００２６】
図８〜図１２の実施形態
本発明の第２の実施形態が、図８〜図１２に示されている。この実施形態では、器具８０は、支持体８２及び複数の皮膚穿刺部材８６を備えた微小器具８４を有している。
支持体８２は、図８及び図９に示すように、実質的に切頭円錐形頂面８８及び底面９０を有している。支持体８２は、周囲外縁部９２及び底面９０から実質的に垂直に延びる環状フランジ９４を有している。カラー９６が、全体として軸方向に支持体８２の頂面８８から延びている。カラー９６は、カラー９６の頂端部１００から外方に延びるフランジ９８を有している。軸方向通路１０２が、カラー９６を貫通して支持体８２の底面９０まで延びており、それにより底面９０に中央開口部１０４が形成されている。
【００２７】
カラー１０６が、カラー９６から間隔を置いた状態で支持体８２の頂面８８から延びている。カラー１０６は、外端部１０５のところで半径方向外方に延びるフランジ１０８を有している。軸方向通路１１０が、カラー１０６を貫通して支持体８２の底面９０まで延びていて、それにより底面９０に出口ポート１１２が形成されている。
上述の実施形態の場合と同様、底面９０は、微小器具８４を受け入れる棚部を形成する凹み領域１１４を有している。チャネル１１６及び接着剤リザーバ１１８を形成する凹部が、接着剤を凹み領域１１４に差し向けて微小器具８４を支持体８２に接着するために、凹み領域１１４に連結されている。使用にあたり、器具８０を、図１１に示すように皮膚１２０に当てて置く。器具１１０を、フランジ９４が皮膚１２０に接触し、標的領域１２２を包囲した状態で位置決めする。一実施形態では、フランジ９４は、皮膚穿刺部材８６の先端部１２４と同一平面の平面内に位置するほどの軸方向長さを有している。
【００２８】
器具８０を皮膚１２０に押し当て、そして適当な真空源をカラー１０６に結合する。一実施形態では、真空源は、カラー１０６のフランジ１０８に螺着されたルアーロックカラー付きの注射器又は注入器である。注射器のプランジャを引き出し、それにより皮膚を上方に引っ張って皮膚穿刺部材８６に接触させる減圧状態を標的領域１２２内に生じさせる。底壁９０と皮膚１２０との間の空間内の圧力を減少させて皮膚７０を上方に引っ張ることにより、皮膚穿刺部材８６は、微小器具８４の幅全体にわたり皮膚を実質的に一様に穿通し又は穿刺することができる。一般的に言って、真空源は、物質のサンプル採取又は投与中、皮膚穿刺部材による皮膚の穿刺状態を保つために維持される。加うるに、真空を維持することにより、皮膚に対する器具の動きが防止され、それにより、皮膚穿刺部材の破損及び皮膚の擦過傷が防止される。
【００２９】
皮膚穿刺部材が皮膚を所望深さまで適切に穿通し又は穿刺した後、ルアータイプ継手を用いて供給又はサンプル採取容器、例えば注射器１２８をカラー９６に結合する。物質を患者からサンプル採取し又は抜き取ろうとする場合、注射器のプランジャを引き出して支持体８２の中央領域内の圧力を減少させ、流体を皮膚穿刺部材の軸方向通路を通って抜き取る。変形例として、物質を支持体８２の中央通路に差し向け、そして皮膚穿刺部材８６の中央通路中へ差し向けることにより、物質を患者に投与してもよい。物質を、能動式投与システムとして加圧下で又は受動式投与システムとして圧力を用いないで患者に投与することができる。所望の物質を抜き取り、又は所望の物質を患者に投与するのに十分な時間の間、器具を皮膚に接触させたままにする。所要時間は、投与され又は抜き取られる物質、物質の量及び皮膚上の標的領域で決まる。
【００３０】
本発明の器具は一般に、使い捨ての１回使用器具であるよう設計されている。器具を医薬品又は他の物質の皮内投与が可能であるよう安全且つ効率的に用いることができる。この器具は、少量のワクチン抗原をランゲルハンス細胞への投与のために効率的に投与するようワクチンを皮内導入するのに特に適している。微小針の長さ、及びこれらの相互間隔は、投与される医薬品に応じて様々であってよく、或いは投与される特定の医薬品についての最適深さまで角質層を穿刺するのに必要なものであるのがよい。ワクチンを投与する場合、微小針は、所望の免疫反応を促進するため、最適皮内投与部位を標的とするよう寸法決めされる。
本発明の説明のために種々の実施形態を選択したが、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく本発明の種々の追加例及び改造例を想到できることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の第１の実施形態としてのサンプル採取又は投与器具の斜視図である。
【図２】図１の器具の分解断面図である。
【図３】図１の器具の底面図であり、皮膚穿刺部材を省いた状態で支持体を示す図である。
【図４】図１の器具の底面図であり、支持体に結合された皮膚穿刺部材を示す図である。
【図５】支持体及び接合前に支持体の凹部に嵌め込まれた皮膚穿刺部材の部分側面断面図である。
【図６】器具の部分側面断面図であり、皮膚穿刺器具を支持体に取り付ける結合剤を示す図である。
【図７】器具を患者の皮膚と接触状態で示す側面図である。
【図８】第２の実施形態の器具の側面図である。
【図９】図８の実施形態の器具の斜視図であり、底側部及び皮膚穿刺器具を受け入れる凹部を示す図である。
【図１０】図８の器具の底面図であり、皮膚穿刺部材を示す図である。
【図１１】患者の皮膚と接触状態にある図８の器具の断面側面図である。
【図１２】図８の断面側面図であり、真空を器具の内部領域に及ぼしたときの皮膚の穿刺状態を示す図である。

Claims (33)

1. 患者の皮膚を通して物質を投与し又は抜き取る微小器具を製造する方法であって、凹み領域を備えた底面を有する支持体を準備する段階を有し、凹み領域は前記底面の寸法よりも小さな寸法を有し、前記方法は、皮膚穿刺器具を前記支持体の前記凹み領域内に位置決めする段階を更に有し、前記皮膚穿刺器具は前記凹み領域の前記寸法よりも小さな寸法をもつベース及び少なくとも１つの皮膚穿刺部材を有し、前記方法は、結合剤を前記支持体と前記凹み領域内の前記ベースとの間の少なくとも１つの場所に塗布する段階を更に有し、前記結合剤は、前記ベースと前記支持体との間にしみ込むほどの粘度を有していることを特徴とする方法。
2. 前記ベースは、シリコンウェーハであり、前記皮膚穿刺部材は、微小針アレイであることを特徴とする請求項１記載の方法。
3. 前記ベースの厚さは、約２５０ミクロンであることを特徴とする請求項１記載の方法。
4. 前記凹み領域は、前記ベースの厚さ以下の深さを有していることを特徴とする請求項１記載の方法。
5. 前記凹み領域は、前記支持体の前記底面と同一平面内に位置した底面と、前記支持体の前記底面と前記凹部の前記底面との間に延びる側面とを有し、前記方法は、前記皮膚穿刺器具を前記底面上に配置する段階を更に有していることを特徴とする請求項１記載の方法。
6. 前記凹み領域の前記側面は、前記支持体の前記底面に実質的に垂直であることを特徴とする請求項５記載の方法。
7. 前記凹み領域は、前記側面と前記皮膚穿刺部材の前記ベースの間に隙間を構成するよう寸法決めされており、前記方法は、前記結合剤を前記隙間に塗布する段階を更に有していることを特徴とする請求項５記載の方法。
8. 前記支持体は、前記凹み領域と連通した少なくとも１つのチャネルを有し、前記方法は、前記接着材料を前記チャネルに塗布し、前記結合剤が前記凹み領域内へ流れるようにする段階を更に有していることを特徴とする請求項１記載の方法。
9. 前記少なくとも１つのチャネルは、前記支持体の前記底面に設けられた開放チャネルであることを特徴とする請求項８記載の方法。
10. 前記少なくとも１つのチャネルは、前記凹み領域に通じる第１の端部と、前記支持体に形成されたリザーバに通じる第２の端部とを有し、前記方法は、前記結合剤を前記リザーバに塗布し、前記結合剤が前記少なくとも１つのチャネル通って前記凹み領域に流れるようにする段階を更に有していることを特徴とする請求項８記載の方法。
11. 前記支持体は、前記凹み領域と連通したキャビティを有していることを特徴とする請求項１記載の方法。
12. 前記支持体は、頂面から前記キャビティまで延びる開口部を有していることを特徴とする請求項１１記載の方法。
13. 前記支持体は、前記底面と連通した少なくとも１つのポートを有し、前記少なくとも１つのポートは、前記凹み領域から間隔を置いて位置していることを特徴とする請求項１０記載の方法。
14. 前記皮膚穿刺器具の前記ベースは、シリコンウェーハであり、前記少なくとも１つの皮膚穿刺部材は、微小針のアレイであることを特徴とする請求項１記載の方法。
15. 前記皮膚穿刺器具は、前記少なくとも１つの皮膚穿刺部材と連通した状態で前記ベースを貫通して延びる少なくとも１つの通路を有していることを特徴とする請求項１記載の方法。
16. 患者の皮膚を通して物質を抜き取り又は物質を投与する方法であって、前記方法は、中央通路及び底面を備えた支持体及び前記底面に取り付けられた１つの皮膚穿刺器具を準備する段階を有し、前記中央通路は、前記皮膚穿刺器具と連通しており、前記支持体の前記底面及び前記少なくとも１つの皮膚穿刺器具が患者の前記皮膚に接触した状態で前記支持体を患者の皮膚上に置く段階と、前記支持体と前記皮膚との間の領域内の圧力を減少させて前記皮膚を前記皮膚穿刺部材に向かって引き寄せ、前記皮膚穿刺器具が前記皮膚を穿刺するようにする段階と、前記患者の皮膚を通して物質を抜き取り又は投与する段階とを更に有していることを特徴とする方法。
17. 前記支持体の前記底面は、前記底面の寸法よりも小さな寸法を備えた凹み領域を有し、前記皮膚穿刺器具は、前記凹み領域内に嵌め込まれて前記支持体に結合されたベースを有していることを特徴とする請求項１６記載の方法。
18. 前記支持体は、前記少なくとも１つの皮膚穿刺部材を包囲した状態でこれから間隔を置いて位置した外縁部と、前記外縁部に結合された状態で前記支持体から遠ざかって延びる環状フランジとを有していることを特徴とする請求項１６記載の方法。
19. 前記支持体は、前記環状フランジと前記皮膚穿刺部材との間で前記支持体の前記底面と連通した出口ポートを更に有し、前記方法は、真空源を前記出口ポートに適用して前記支持体と前記皮膚との間の圧力を減少させる段階を更に有していることを特徴とする請求項１８記載の方法。
20. 前記皮膚穿刺器具は、前記支持体の前記中央通路と連通した軸方向通路を有していることを特徴とする請求項１６記載の方法。
21. 前記少なくとも１つの皮膚穿刺器具は、皮膚穿刺部材のアレイから成り、前記皮膚穿刺部材は、微小管、微小針、カニューレ、ブレード及びランセットから成る群から選択されていることを特徴とすると請求項１６記載の方法。
22. 前記支持体は、前記中央通路と連通した流体継手を有し、前記方法は、前記流体継手を通して物質を抜き取り又は物質を前記中央通路に供給する段階を更に有していることを特徴とする請求項１６記載の方法。
23. 注射器バレルを前記出口ポートに結合し、前記注射器バレル内の注射器プランジャを引っ張って前記真空を生じさせる段階を更に有していることを特徴とする請求項１９記載の方法。
24. 物質を患者に投与し又は物質を患者から抜き取る器具であって、底面及び前記底面の寸法よりも小さな寸法を備えた凹み領域を有する支持体と、前記支持体の前記凹み領域内に位置決めされるベース及び少なくとも１つの皮膚穿刺部材を備えた皮膚穿刺器具と、前記皮膚穿刺器具を前記支持体に取り付け、前記凹み領域と前記皮膚穿刺器具の前記ベースとの間の空間を満たす結合剤とを有していることを特徴とする器具。
25. 前記ベースは、シリコンウェーハであり、前記皮膚穿刺部材は、微小針アレイであることを特徴とする請求項２４記載の器具。
26. 前記ベースの厚さは、約２５０ミクロンであることを特徴とする請求項２４記載の器具。
27. 前記凹み領域は、前記支持体の前記底面と同一平面内に位置した底面と、前記支持体の前記底面と前記凹部の前記底面との間に延びる側面とを有していることを特徴とする請求項２４記載の器具。
28. 前記凹み領域の前記側面は、前記支持体の前記底面に実質的に垂直であることを特徴とする請求項２７記載の器具。
29. 前記支持体は、前記凹み領域と連通していて、前記結合剤を前記凹み領域内へ差し向ける少なくとも１つのチャネルを有していることを特徴とする請求項２４記載の器具。
30. 前記少なくとも１つのチャネルは、前記支持体の前記底面に設けられた開放チャネルであることを特徴とする請求項２９記載の器具。
31. 前記支持体は、前記支持体の外縁部と前記皮膚穿刺器具との間で前記支持体の前記底面と連通した少なくとも１つのポートを有していることを特徴とする請求項２４記載の器具。
32. 前記皮膚穿刺器具は、前記少なくとも１つの皮膚穿刺部材と連通した状態で前記ベースを貫通して延びる少なくとも１つの通路を有していることを特徴とする請求項２４記載の器具。
33. 前記支持体は、前記皮膚穿刺器具と連通した中央通路を有していることを特徴とする請求項３２記載の器具。