JP2004503195A - 電気モータ用の磁束リング - Google Patents

Abstract

電動工具のモータ用の磁束リングは、モータのモータ・ケースの内側に嵌合する環状ハウジングを有する。上記リング上には、少なくとも一個の磁石が在る。上記少なくとも一個の磁石は、等方性磁性材料から形成された部分および異方性磁性材料から形成された部分を含む。好適には、上記等方性磁性材料は上記異方性磁性材料間に介設される。上記磁石は、２段階射出プロセスにおいて上記磁束リング上に成形される。

Description

【０００１】
発明の背景および要約
本発明はＡＣおよびＤＣモータに関し、より詳細には斯かるモータ用の磁束リング（ｆｌｕｘ ｒｉｎｇ）に関する。
【０００２】
モータ性能を改善すべく、射出成形ボンド・ネオジム・鉄・ホウ素（Ｎ．Ｉ．Ｂ．）磁石（Ｉｎｊｅｃｔｉｏｎ Ｂｏｎｄｅｄ Ｎｅｏｄｙｍｉｕｍ−Ｉｒｏｎ−Ｂｏｒｏｎ （Ｎ．Ｉ．Ｂ．） ｍａｇｎｅｔ）などの希土類磁石（Ｒａｒｅ Ｅａｒｔｈ ｍａｇｎｅｔ）が用いられる。しかし乍ら射出成形ボンドＮ．Ｉ．Ｂ．磁石の定格動作温度は一般的に、１２０℃までの範囲である。故に電動工具は、この限られた温度までしか作動され得ない。また、射出成形ボンドＮ．Ｉ．Ｂ．磁石、特に等方性Ｎ．Ｉ．Ｂ．磁石は径方向に磁化するのが非常に困難である。而して径方向の磁界配向を可能とする異方性材料が用いられた場合、材料コストは法外に高くなる。
【０００３】
本発明は当分野において、優れた熱的性能を有するモータ用磁石を提供する。この磁石はまた、該磁石の径方向成分が磁束リングの中心に指向される如く更に容易に磁化される。該磁石はまた、コスト効率的でもある。
【０００４】
本発明の第１の見地に依れば、モータ用磁束リングはモータのモータ・ケースの内側に嵌合するリングを備える。上記リング上には少なくとも一個の磁石が位置される。上記少なくとも一個の磁石は、等方性磁性材料（ｉｓｏｔｒｏｐｉｃ ｍａｇｎｅｔｉｃ ｍａｔｅｒｉａｌ）から形成された部分および異方性磁性材料（ａｎｉｓｏｔｒｏｐｉｃ ｍａｇｎｅｔｉｃ ｍａｔｅｒｉａｌ）から形成された部分を含む。概略的に両磁石は等方性材料および異方性材料から形成される。上記等方性材料および異方性材料は磁粉である。また、上記等方性磁性材料および異方性磁性材料は、上記リング上への該材料の射出成形を可能とする樹脂内にある。上記等方性磁性材料部分は該等方性磁性材料部分が４０°乃至５０°の円弧上に亙る如く２個の異方性磁性材料部分間に介設される。上記磁石自体は、上記リングの回りで約１４０°の円弧上に亙る。上記等方性磁性材料部分は概略的に、上記モータの各極上に配置される。
【０００５】
本発明の第２の見地に依れば磁束リングを製造する方法は、繋止機構を有するリングを配備する段階を備える。上記リングは型内に載置される。上記リング上に第１等方性磁性材料を成形し、その場合に上記繋止機構は上記第１等方性磁性材料を上記リングに対して固定する。上記第１等方性磁性材料の近傍において上記リング上には、第２異方性磁性材料を成形する。上記繋止機構は上記第２異方性磁性材料を上記リングに固定する。更に、上記異方性磁性材料は上記第１等方性磁性材料の両側に成形される。上記第１等方性磁性材料は磁界の存在なしで成形される。上記第２異方性磁性材料は、約１，４００乃至１，６００アンペア／ｍ （１４００ − １６００ ａｍｐ／ｍｅｔｅｒ）の磁界下で成形される。また上記第１等方性磁性材料は上記リングの４０°乃至５０°の円弧に沿い成形される。上記磁石が上記円弧の約１４０°を占める如く、上記第２異方性磁性材料は上記円弧に沿い成形される。
【０００６】
本発明の第３の見地に依ればモータは、磁束リングを含む固定子アセンブリを備える。上記磁束リングは環状ハウジングを備える。上記ハウジング上には少なくとも一個の成形磁石が受容される。上記ハウジング上の繋止機構は、上記少なくとも一個の磁石を上記環状ハウジング上に保持する。上記リング上には少なくとも一個の磁石が位置される。上記少なくとも一個の磁石は、等方性磁性材料から形成された部分および異方性磁性材料から形成された部分を含む。概略的に両磁石は、等方性材料および異方性材料から形成される。上記等方性材料および異方性材料は磁粉である。また上記等方性磁性材料および異方性磁性材料は、上記リング上への該材料の射出成形を可能とする樹脂内とされる。上記等方性磁性材料部分は該等方性磁性材料部分が４０°乃至５０°の円弧上に亙る如く２個の異方性磁性材料部分の間に介設される。上記磁石自体は、上記リングの回りで約１４０°の円弧上に亙る。上記等方性磁性材料部分は概略的に、上記モータの各極上に配置される。また上記モータは、上記固定子アセンブリ内で回転可能な電機子（ａｒｍａｔｕｒｅ）を備える。整流子（ｃｏｍｍｕｔａｔｏｒ）は上記電機子と共に回転可能であり且つシャフトを介して上記電機子に接続される。上記整流子にはブラシ・アセンブリが組合わされる。
【０００７】
本発明の第４の見地に依れば電動工具は、自身内にモータを備えたハウジングを備える。上記モータは、磁束リングを含む固定子アセンブリを備える。上記磁束リングは環状ハウジングを備える。該ハウジング上には少なくとも一個の成形磁石が受容される。上記ハウジング上の繋止部は、該環状ハウジング上に少なくとも一個の磁石を保持する。上記リング上には少なくとも一個の磁石が位置される。上記少なくとも一個の磁石は、等方性磁性材料から形成された部分および異方性磁性材料から形成された部分を含む。概略的に両磁石は、等方性材料および異方性材料から形成される。上記等方性材料および異方性材料は磁粉である。また上記等方性磁性材料および異方性磁性材料は、上記リング上への該材料の射出成形を可能とする樹脂内にある。上記等方性磁性材料部分は、該等方性磁性材料部分が４０°乃至５０°の円弧上に亙る如く２個の異方性磁性材料部分の間に介設される。上記磁石自体は、上記リングの回りで約１４０°の円弧上に亙る。上記等方性磁性材料部分は概略的に、上記モータの各極上に配置される。また上記モータは固定子アセンブリ内で回転可能な電機子を備える。整流子は上記電機子と共に回転可能であり且つシャフトを介して上記電機子に接続される。上記整流子にはブラシ・アセンブリが組合わされる。また上記電動工具は、上記モータ・シャフトと連結された出力部材を含む。上記モータに通電すべくまたは上記モータの通電を停止すべく該モータおよび電源の間には起動部材が電気的に連結される。一方、上記モータが通電されたとき、上記出力部材は回転する。
【０００８】
本発明の付加的な目的および利点は、好適実施例の詳細な説明、添付の各請求項および添付図面から明らかになり、或いは、発明を実施することで理解される。
【０００９】
好適実施例の詳細な説明
図１を参照すると、本発明に係る電動工具は参照番号１０で示され且つ表される。電動工具１０はドリルとして示されるが、電気モータを利用するネジ回し、紙やすりかけ機、回転工具、バリカン、ノコギリなどの任意の種類の電動工具が本発明のモータと共に使用され得る。電動工具１０は、モータ１４を囲繞するハウジング１２を含む。モータ１４ならびに電源２２に対しては、起動部材２０が連結される。電源２２は電力コード（ＡＣ電流）とされ得るか、或いは、示された如く上記電動工具はバッテリ（ＤＣ電流）を有し得る。モータ１４は出力部１６に連結されるが該出力部１６は、伝動器１７と、上記ドリルに対して（不図示の）工具を保持するチャック１８とを含み得る。
【００１０】
モータ１４は固定子アセンブリ３０を含むが、該固定子アセンブリ３０はハウジング３２、磁束リング３４および磁石３６および３８を含む。電機子４０は、シャフト４２と、積層体４６および巻線４８を備えた回転子４４と、シャフト４２に連結された整流子５０とを含む。上記モータはまた、端部プレート５２および５４も含む。端部プレート５２は、電動工具の出力部の一部であるピニオン６０に連結されたシャフト５８の一端を平衡化（ｂａｌａｎｃｅ）する軸受５６を含む。
【００１１】
整流子５０には、ブラシ６２および６４が組合わされる。シャフト４２の回転を平衡化すべく、端部キャップには軸受７０も連結される。
【００１２】
図２を参照すると、磁束リング３４が磁石３６および３８を備えて示されている。磁石３６および３８は、成形磁性材料から成る。該成形材料は好適には、射出成形材料である。リング３４は型（ｄｉｅ）内に位置決めされると共に、該磁束リング上に磁性材料が成形される。またハウジング３２は、磁束リングとして使用され得る。故にリング３４に関する説明は、モータ１４の金属ハウジング３２に対しても等しく適用され得る。
【００１３】
磁束リング３４は、磁石３６および３８を該リング３４に保持する繋止部８０を含む。繋止部８０は２種類とされ得る。先ず繋止部８２は、ハウジング３４に形成された開孔である。開孔８２は、第１部分８４および第２座ぐり部分８６を有する。座ぐり部分（ｃｏｕｎｔｅｒ−ｓｉｎｋ ｐｏｒｔｉｏｎ）８６は、リング３４の外部８８まで延在する。故に図３における断面に見られる如く、開孔８２内に成形磁性材料が受容されるときに該成形材料はネック９２およびヘッド９４を有する。ヘッド９４およびネック９２は全体的にリベット外観を呈することから、大寸のヘッド９４は磁石３６、３８をリング３４に保持すべく作用する。リング３４は該リング３４に各磁石を保持すべく、まさに複数の開孔繋止部８２を備え得る。
【００１４】
上記リング上には、付加的繋止部９６が利用され得る。繋止部９６は、リング３４の内側面９８から突出する。通常、繋止部９６はリング３４内へとスタンプ成形などされ、該突出繋止部９６の直近の開孔１００を形成する。故に、突出繋止部９６の回りに成形磁性材料が形成されるとき、該材料が繋止部９６の下側も通ることで開孔１００を充填する。これにより、磁石はリング３４に対して堅固に固定される。本発明に係る磁束リングおよび繋止部を更に理解するには、“磁束リングもしくはモータ・ハウジングに射出成形磁石を繋止するシステム”と称されると共に２０００年１月２７日に出願された米国特許出願第０９／４９２，０５９号および“永久磁石式モータ用磁束リング”と称されると共に２０００年３月８日に出願された米国特許出願第０９／５２０，４７１号を参照されたいが、両出願とも言及したことによりそれらの明細書および図面は本出願中に援用される。
【００１５】
磁石３６および３８に戻ると、説明は両者に該当することから一方のみが記述される。磁石３６および３８は、３つの部分１００、１０２および１０４へと分割される。部分１００は、部分１０２および１０４の間に介設される。磁石部分１００は磁石３６および３８に関し、Ｎ極およびＳ極に沿って位置決めされる。また磁性部分１００は、円弧の約４０°乃至５０°に沿っている。更に磁性部分１００は、等方性磁粉コンパウンドから形成される。また上記磁石は、等方性コンパウンドを射出可能形態とするための樹脂材料を含む。上記等方性磁粉コンパウンドは高温定格を有すると共に原位置で磁化され得る。故に上記等方性材料が磁化されるときに該材料は磁化用デバイスのＮ極およびＳ極に跨ることから、上記等方性材料は上記磁束リングの中心を指す各極と実質的に平行な磁界を有する。
【００１６】
磁性部分１０２および１０４は所望樹脂を備えた異方性磁粉コンパウンドから形成されることから、これらもまた射出成形可能である。上記異方性磁粉材料は磁化するのが相当に容易なので、矢印により理解される如く異方性磁気磁石部分１０２および１０４の磁界は上記磁束リングの中心に向けて径方向に延在する。上記等方性磁性部分の各側部における夫々の異方性磁性部分を含めた上記磁石の合計円弧は、約１４０°である。
【００１７】
本発明に係る磁束リングを製造する方法は、環状ハウジングを配備することで達成される。該環状ハウジングは型内とされ、該型上には各磁石が射出成形され得る。先ず等方性磁性部分が磁束リング上に成形されると共に、上述の如く繋止部により磁束リングに固定される。第２の段階において上記異方性磁石部分は上記等方性磁性材料の両側に射出成形されることで、２個の異方性磁性材料部分の間に該等方性磁性材料が介設される。上記異方性磁性材料が成形される間において磁界は、該異方性磁石材料が約１，４００アンペア／ｍ （１４００ ａｍｐ／ｍｅｔｅｒ）の磁界内で成形される如く存在する。また上記等方性磁性材料を成形する間は、磁界は存在しない。成形の後で上記磁束リングの内側には磁化用マンドレルが位置されることで、ケース・アセンブリ（ｃａｎ ａｓｓｅｍｂｌｙ）全体が磁化される。この後に上記磁石は、各磁石の磁界が上記磁束リングの中心を指すべく磁化される。上記磁束リングが作製された後、該リングはモータ・ケース（ｍｏｔｏｒ ｃａｎ）内に溶接されると共に上述の各要素が付加されることでモータが形成される。モータはその後、電動工具のハウジング内に位置決めされる。
【００１８】
上記の詳細な説明は本発明の好適実施例を記述したが、本発明は添付の各請求項の有効範囲および正当な意味から逸脱せずに改変、変更および修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図１】
図１は、本発明に係る電動工具の断面図である。
【図２】
図２は、本発明に係る磁束リングの斜視図である。
【図３】
図３は、図２の３−３線に沿った断面図である。

Claims (30)

1. モータのモータ・ケースの内側に嵌装されるリングと、
   上記リング上の少なくとも一個の磁石であって、等方性磁性材料から形成された部分および異方性磁性材料から形成された部分を含む少なくとも一個の磁石と、
   を備えた、モータ用磁束リング。
2. 前記等方性磁性材料は等方性磁粉である、請求項１記載の磁束リング。
3. 前記異方性磁性材料は異方性磁粉である、請求項１記載の磁束リング。
4. 前記等方性磁性材料部分は２つの異方性磁性材料部分の間に介設される、請求項１記載の磁束リング。
5. 前記等方性磁性材料部分は前記リングの回りにおいて４０°乃至５０°の円弧に亙って延在し、且つ前記等方性磁性材料部分および２個の異方性磁性材料部分は上記リングの回りにおいて約１４０°に亙って延在する、請求項４記載の磁束リング。
6. 前記等方性磁性材料はモータの各極の一方に配置される、請求項５記載の磁束リング。
7. 前記ハウジングに一端が接続される、請求項６記載の磁束リング。
8. 当該磁束リングは一対の磁石を含む、請求項１記載の磁束リング。
9. 繋止機構を有するリングを配備することと、
   上記リングを型内に載置することと、
   上記リング上に第１等方性磁性材料を成形して上記繋止機構が上記第１等方性磁性材料を上記リング上に固定することと、
   上記第１等方性磁性材料の近傍において上記リング上に第２異方性磁性材料を成形して上記繋止機構が上記第２異方性磁性材料を上記リング上に固定することと、
   を備えて成る、磁束リングの製造方法。
10. 前記第１等方性磁性材料の両側に前記第２異方性磁性材料を成形することを更に備えて成る、請求項９記載の方法。
11. 磁界なしで前記第１等方性磁性材料を成形することを更に備えて成る、請求項９記載の方法。
12. 約１，４００乃至１，６００アンペア／ｍの磁界下で前記第２異方性磁性材料を成形することを更に備えて成る、請求項９記載の方法。
13. 前記リングの約４０°乃至５０°の円弧部分に沿い前記第１等方性磁性材料を成形することを更に備えて成る、請求項１０記載の方法。
14. 前記磁石が前記円弧の約１４０°を占める如く前記第２異方性磁性材料を上記円弧に沿い成形することを更に備えて成る、請求項１３記載の方法。
15. 等方性磁性材料から形成された部分および異方性磁性材料から形成された部分を含む少なくとも一個の磁石を当該磁束リング上に備えた磁束リングを含む固定子アセンブリと、
    上記固定子アセンブリ内で回転可能な電機子と、
    上記電機子と共に回転可能であり且つ該電機子に対してシャフトを介して接続された整流子と、
    上記整流子と組合わされたブラシ・アセンブリと、
    を備えたモータ。
16. 等方性磁性材料は等方性磁粉である、請求項１５記載の磁束リング。
17. 前記異方性磁性材料は異方性磁粉である、請求項１５記載の磁束リング。
18. 前記等方性磁性材料部分は２つの異方性磁性材料部分の間に介設される、請求項１５記載の磁束リング。
19. 前記等方性磁性材料部分は前記リングの回りにおいて４０°乃至５０°の円弧に亙って延在し、且つ前記等方性磁性材料部分および２個の異方性磁性材料部分は上記リングの回りにおいて約１４０°に亙って延在する、請求項１８記載の磁束リング。
20. 前記等方性磁性材料はモータの各極の一方に配置される、請求項１９記載の磁束リング。
21. 前記ハウジングに一端が接続される、請求項２０記載の磁束リング。
22. 当該磁束リングは一対の磁石を含む、請求項１５記載の磁束リング。
23. ハウジングと、
    上記ハウジング内のモータであって、
    等方性磁性材料から形成された部分および異方性磁性材料から形成された部分を含む少なくとも一個の磁石を当該磁束リング上に備えた磁束リングを含む固定子アセンブリ、
    上記固定子アセンブリ内で回転可能な電機子、
    上記電機子と共に回転可能であり且つ該電機子に対してシャフトを介して接続された整流子、および、
    上記整流子と組合わされたブラシ・アセンブリ、
    を備えたモータと、
    電源と、
    上記モータ・シャフトと連結された出力部材と、
    通電されたときに上記出力部材を回転させる上記モータに通電すべくまたは上記モータの通電を停止すべく上記モータおよび上記電源の間に電気的に連結された起動部材と、
    を備えた電動工具。
24. 等方性磁性材料は等方性磁粉である、請求項２３記載の磁束リング。
25. 前記異方性磁性材料は異方性磁粉である、請求項２３記載の磁束リング。
26. 前記等方性磁性材料部分は２つの異方性磁性材料部分の間に介設される、請求項２３記載の磁束リング。
27. 前記等方性磁性材料部分は前記リングの回りにおいて４０°乃至５０°の円弧に亙って延在し、且つ前記等方性磁性材料部分および２個の異方性磁性材料部分は上記リングの回りにおいて約１４０°に亙って延在する、請求項２６記載の磁束リング。
28. 前記等方性磁性材料はモータの各極の一方に配置される、請求項２７記載の磁束リング。
29. 前記ハウジングに一端が接続される、請求項２８記載の磁束リング。
30. 当該磁束リングは一対の磁石を含む、請求項２３記載の磁束リング。