JP2004358848A - 建築部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】カルボキシル変性ラテックスゴム等を原料として得られるラテックスフォームを発泡体層として使用することで、所定の粘着性および機械的強度を併有し、容易な脱着性および優れた耐久性を備える建築部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】所要の基材12と、この基材12に積層させた発泡体層14とからなる建築部材において、前記発泡体層14は、ガラス転移点が−30℃以上であって、カルボキシル化させた変性ラテックスゴム24と、この変性ラテックスゴム24を発泡化させ得る天然その他のラテックスゴム22と、ゲル化剤、気泡安定剤その他所要の副原料とを混合したラテックスフォーム原料を使用して製造される。
【選択図】 図1
【解決手段】所要の基材12と、この基材12に積層させた発泡体層14とからなる建築部材において、前記発泡体層14は、ガラス転移点が−30℃以上であって、カルボキシル化させた変性ラテックスゴム24と、この変性ラテックスゴム24を発泡化させ得る天然その他のラテックスゴム22と、ゲル化剤、気泡安定剤その他所要の副原料とを混合したラテックスフォーム原料を使用して製造される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、建築部材およびその製造方法に関し、更に詳細には、タイル、タイルカーペットその他各種床材に代表される内装材または各種外装材用途に使用され、容易に施工・脱着可能で、かつ再使用に供し得るだけの充分な強度を有する建築部材と、該建築部材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、タイル、タイルカーペットまたは長尺シート等の床材に代表される建築部材を施工する際、接着剤を下地に塗布し、該接着剤を介して貼着するという方法が一般的に採用されている。また前記床材を改装等を目的として貼りかえる、所謂再施工等に際しては、該床材を強制的に剥がし、その後下地に付着した接着剤をスクレーパー等の工具を用いて作業者が別途削り取った後に、該下地に接着剤を塗布し直して新たな床材を貼着するという方法が一般的に用いられている。
【0003】
そして一般的に前記接着剤は、塗布後に所定の接着作用を発現するまでに所定の時間、所謂オープンタイムが必要とされるため、前記床材を接着剤にて下地に貼着するに際しては、時間的な余裕が最大で30分程度必要となっていた。また前記接着剤の下地に対する塗布作業は、作業者の労力負担が大きく、前記オープンタイムと労力負担とにより、前記床材の施工作業効率の向上は困難であった。
【0004】
また前記接着剤としては、一般に溶媒として水を使用するラテックス系接着剤と、溶媒として各種溶剤を使用する溶剤系接着剤との2種類が使用されているが、両接着剤には以下に記載する問題が夫々指摘された。すなわち前記ラテックス系接着剤の場合には、長いオープンタイムが必要であり、かつ前記床材貼着後における接着剤乾燥にも長い時間が必要であるため、施工時間が長く必要とされる。これに対し、溶剤系接着剤は溶剤の乾燥は室温においても容易であるため、前述のオープンタイムや乾燥時間については短縮が可能である一方、該溶媒である酢酸エチルやトルエン等の溶剤が人体に対しては一般に有害でありかつ環境負荷が高い問題が指摘される。
【0005】
これらの問題を解決するため、下記の特許文献1、2および3に示す如く、前記床材の設置および剥離を容易にすることを目的とした考案および発明がが案出されている。前記特許文献1には、塩化ビニール樹脂製等のプラスチックタイルの裏面にマイクロポーラスな連続気泡構造を有する粘着シート状物を設けた床材が開示されており、該マイクロポーラスな連続気泡構造により脱着が可能な構成となっている。また特許文献2は、カーペット等繊維床材の裏面に粘弾性を有する微多孔質膜を積層した床材が開示されており、該微多孔質膜により再剥離機能と、形状保持性および耐久性との併有がなされている。そして前記特許文献3には、塩化ビニール樹脂製等のプラスチックタイルの裏面に独立気泡を有するアクリル樹脂発泡体を設けた床材が開示されており、該アクリル樹脂発泡体により容易な施工と滑り止めとをなし得る構成となっている。
【0006】
【特許文献1】
登録実用新案3018810号公報
【特許文献2】
特開平4−105613号公報
【特許文献3】
特開平8−302978号公報
【0007】
【発明が解決すべき課題】
しかし前述の特許文献1〜3に係る各床材においては以下の欠点が指摘される。すなわち、特許文献1および2に係る各床材の場合、基材部分の材質に対して、発泡体層をなすポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、NBRまたはSBR等を付与した後、該発泡体表面に対して別途粘着剤を付与するための工程が必要であるので、その製造工程が煩雑となり、生産効率の低下が指摘される。また粘着性を発現する粘着剤は前記発泡体層の表面の擦れ等の物理的な接触により粘着性が無くなってしまうため、例えばオフィスビルや店舗フロア等の歩行者通行量が多い場所においては、長時間に亘って使用し得る耐久性がない。
【0008】
また前記特許文献3に係る床材の場合、該床材をなすアクリル樹脂発泡体が有する自己粘着性による強固な粘着力が期待できる一方、該発泡体が有する機械的強度は小さく、その結果、例えば下地等の粘着対象物から該床材を引き剥がす際に該発泡体自体が破損してしまい、再使用に耐えない。更にアクリル樹脂は、メチロール基同士の縮合反応や、メチロール基とエポキシ基との反応による架橋によって機械的強度を発現するものであるが、両架橋構造の形成にはメチロール基を導入する為に環境汚染物質であるホルムアルデヒドが必須とされるため、環境負荷や人体への悪影響の点でも問題が指摘される。
【0009】
【発明の目的】
この発明は、前述した従来技術に係る建築部材およびその製造方法に関して内在していた欠点に鑑み、これを好適に解決すべく提案されたものであって、カルボキシル変性ラテックスゴム等を原料として得られるラテックスフォームを発泡体層として使用することで、所定の粘着性および機械的強度を併有し、容易な脱着性および優れた耐久性を備える建築部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の発明に係る建築部材は、所要の基材と、該基材に積層させた発泡体層とからなる建築部材において、
前記発泡体層は、ガラス転移点が−30℃以上であって、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムと、この変性ラテックスゴムを発泡化させ得る天然その他のラテックスゴムと、ゲル化剤、気泡安定剤その他所要の副原料とを混合したラテックスフォーム原料を使用して得たラテックスフォームであることを特徴とする。
【0011】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の別の発明に係る建築部材の製造方法は、基材と、そのガラス転移点が−30℃以上であると共に、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムと、この変性ラテックスゴムを発泡化させ得る天然その他のラテックスゴムとを準備し、
前記ラテックスゴムおよび変性ラテックスゴムを混合し、
得られた混合ラテックスゴム100重量部に対し、気泡安定剤1.0〜5.0重量部および所要の副原料を混合して液状原料とし、
この液状原料100重量部に対し、ゲル化剤1〜10重量部および所定の気体を混合することでゲル化したラテックスフォーム原料を得て、
前記ゲル化したラテックスフォーム原料を加熱して架橋・硬化を進行させることで、前記基材に対して積層させた発泡体層を形成させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る建築部材およびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下に説明する。本願の発明者は、建築部材を構成する所要厚さの基材に積層される発泡体層として、そのガラス転移点が−30℃以上であるカルボキシル化した変性ラテックスゴムと、該変性ラテックスゴムを発泡化させ得る天然その他のラテックスゴムとを所定割合で混合することで得られるラテックスフォームを使用することで、該ラテックスフォームが有する高い機械的強度および耐圧縮永久歪みと、該変性ラテックスゴムのカルボキシル基が有する電荷および得られる該ラテックスフォーム、すなわち発泡体層に形成される半独泡構造により好適に発現される粘着性とを併有する建築部材が得られることを知見したものである。
【0013】
本発明の好適な実施例に係る建築部材10は、図1に示す如く、所定厚さを有する基材12と、該基材12に積層させた発泡体層14とから基本的に構成される。前記発泡体層14は、カルボキシル化された変性ラテックスゴム(以下、カルボキシル変性ラテックスゴムと云う)24と、該カルボキシル変性ラテックスゴム24を発泡化させ得る天然その他のラテックスゴム(以下、ラテックスゴムと云う)22とからなる骨格16と、エアー等の所定の気体(詳細は[0028]に後述)によって形成されるセル18とを有するラテックスフォームから構成される。そして前記発泡体層14は、カルボキシル変性ラテックスゴム24が有するカルボキシル基(官能基)のマイナス電荷による電荷的な粘着効果(図1においては−(マイナス)の記号で概念的に図示している)と、得られる発泡体層14が有する半独泡構造の所謂吸盤(負圧)作用による構造的な粘着効果との相乗効果により、良好な粘着効果を発現するものである。なお前記電荷的な粘着効果および構造的な粘着効果は、夫々電荷の接近度合いおよび前記セル18内の負圧状態の保持度合い、すなわち前記発泡体層14と被粘着物との密着度に伴って高まるものである。
【0014】
前述した構造的な粘着効果の理解に資するため、図2に示すように、前記発泡体層14内に形成されるセル18が独泡構造である場合を例にとって説明する。この図2は、開口状態となっている前記セル18を有する発泡体層14の表面部分を拡大して示したものである。この場合、構造的な粘着効果については、▲1▼外部に対して開口しているセル18の総数と、▲2▼該セル18の内部体積との積によって疑似的にその強度の大小を表すことが可能である。ここで、前述の▲1▼外部に対して開口しているセル18の総数は、吸盤作用に関わるセル18の総数を表し、また▲2▼該セル18の内部体積は、該セル18が排出し得る空気量、すなわち1つの該セル18が発現する吸盤効果の強度を表す指標として捉えることができる。そして前記セル18が独泡構造をなす場合、前記▲1▼および▲2▼は該セル18の大きさだけで決定され、この大きさが小さければ▲1▼は増加する一方で▲2▼は減少し(図2(a)参照)、反対に大きければ▲1▼は減少する一方で▲2▼は増加する(図2(b)参照)、すなわち▲1▼および▲2▼の双方を高い水準で維持することが極めて困難といえる。これは前記建築部材10の体積が有限であるためであり、前記セル18の内部体積とその存在数とが反比例することは自明である。
【0015】
これに対し、本発明に係る建築部材10を構成する発泡体層14は、半独泡構造を有しているため、前記セル18の大きさを小さく維持することで、▲1▼外部に対して開口しているセル18の総数を稼ぎつつ、該半独泡構造により、▲2▼該セル18の内部体積との積を大きなものとし得る。すなわち、前記▲1▼および▲2▼の双方を高い水準で維持することで、高い構造的な粘着効果を発現させ得る。前記セル18の大きさについては、本発明に係る建築部材10の場合、該部材10の発泡体層14をなすラテックスフォームの骨格16におけるラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24をゲル化させる時間、すなわちゲル化剤の添加量によって任意に制御可能であるため殊に問題はないが、大き過ぎると前述の▲1▼が減少するため、好適には500μm以下に設定される。
【0016】
また前記建築部材10は、図3に示す各工程を経て好適に製造されている。この工程は、ラテックスフォーム原料調整工程S1、ゲル化工程S2、積層工程S3、加熱工程S4および最終工程S5から基本的に構成されている。また、前記各工程S1〜S5については、図4に示すような製造装置30により好適に実施される。前記製造装置30は、前記ラテックスフォーム原料調整工程S1およびゲル化工程S2を経ることで得られるゲル化したラテックスフォーム原料Mから、所要形状の建築部材10の基となるシート状物を連続的に製造する装置である。なお、ここで云うゲル化したラテックスフォーム原料Mおよびこの後に記載されるゲル化したラテックスフォーム原料Mとは、完全にゲル化が完了した原料だけを指すものでなく、前記ゲル化工程S2により添加されたゲル化剤により、前記ラテックスフォーム原料調整工程S1で得られる液状のラテックスフォーム原料(以下、液状原料と云う、後述[0018])から次第にゲル化している途上の原料および完全にゲル化した原料全てを指すものである。また以下に説明する各工程S1〜S5を実施するにあたり、前記建築部材10の原料となる基材12、ラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24並びに各副原料等は全て準備され、殊に該基材12については、例えばロール等に巻き付けられた長尺物として後述([0017])する移送機構36を構成する移送ベルト36a上に連続的に供給されているものとする。
【0017】
前記製造装置30は、具体的には前記ラテックスフォーム原料調整工程S1を実施して液状原料を得る混合機構32と、ゲル化したラテックスフォーム原料Mが供給される基材12を移送するため図示しない駆動源により駆動される移送ベルト36aを備えるベルトコンベア式の移送機構36と、この移送機構36の最上流側に配置され、前記ゲル化工程S2を実施すると共に、該基材12上にゲル化したラテックスフォーム原料Mを連続的に供給するミキシングヘッド34と、該ミキシングヘッド34の下流側に設置され、供給された該ゲル化したラテックスフォーム原料Mを所定厚さのシート状とする製品厚制御手段38と、その下流側に設けられる所定長さのトンネル式加熱炉40とから基本的に構成される。
【0018】
(ラテックスフォーム原料調整工程S1について)
前記混合機構32で行なわれる前記ラテックスフォーム原料調整工程S1は、得るべき建築部材10における発泡体層14を構成するラテックスフォームの各原料を混合・攪拌して液状のラテックスフォーム原料(液状原料)を得るための工程であり、前記ラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24を混合して混合ラテックスゴムを得る第1混合段階S11と、得られた混合ラテックスゴムに対して他の副原料を混合する第2混合段階S12とからなる。具体的には前記発泡体層14を構成するラテックスフォームを得るための各原料のうち、ゲル化剤およびセルを形成するエアー等の所定の気体以外の物質、すなわち2種類のラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24と、架橋剤である加硫剤、加硫促進剤、亜鉛華、起泡剤、気泡安定剤並びに老化防止剤等といった副原料とが混合される。そしてこれら各物質が混合されることで液状原料が得られる。
【0019】
前記ラテックスゴム22は、後述するカルボキシル変性ラテックスゴム24の発泡化をなし得るために使用されるものであり、また前記発泡体層14を構成するラテックスフォームの主原料でもある。そして一般的な、例えばNBRラテックス、SBRラテックス、クロロプレンゴム(CR)、NRラテックスゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)等の天然または合成のラテックスゴムが単独、または混合して使用される。そして前記ラテックスゴム22の物性として、そのガラス転移点が少なくとも−50℃以上、好適には−50〜20℃の範囲に設定されることが望ましい。このガラス転移点設定により、前記ラテックスゴム22に混合されるカルボキシル変性ラテックスゴム24が有する特徴的な性状、すなわち水分量が多くて固形分が少なく、▲1▼ゲル化が困難で、かつ▲2▼得られるラテックスフォームが高い硬度を発現するといった問題を効率的に回避し得る。
【0020】
前述の▲1▼ゲル化の問題は、ゲル化剤の増量や前記ラテックスゴム22の共存によって回避されるが、この方法も前述したように発泡体層14を構成するラテックスフォームの硬度を高くする作用がある。そしてこれら▲1▼のゲル化の問題と、▲2▼の高い硬度の発現との双方から、該ラテックスフォームの硬度が高く発現することが一般的である。そして前記硬度が高過ぎる場合、所謂形状追従性が大きく悪化して、前述の電荷的な粘着効果および構造的な粘着効果の好適な発現が阻害されることになる。これは形状追従性の悪化により、前記発泡体層14を構成するラテックスフォームと、被粘着物との間に密着状態が維持できなくなるために発生する。殊に前記形状追従性の悪化は、前記ラテックスフォームの表面形状と、被粘着物の被粘着表面の形状とが一致しない場合や、該被粘着表面の平滑性が低く、例えば凸凹である場合に顕著となる。
【0021】
そして前記ガラス転移点は、その温度において物質の内部構造が急激に変化する点であり、本発明における前記ラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24の場合では、温度の上昇と共に固体状態から柔軟性を増す、すなわち硬度が低下して所謂形状追従性が良好となる点である。そこで本発明は、常温において高い柔軟性を発現し得るガラス転移点、すなわち20℃以下のガラス転移点を有するよう設定された前記ラテックスゴム22を使用することで、該形状追従性の悪化を防止している。なお、前記ガラス転移点の温度が−50℃未満となると、通常の使用温度領域となる常温において流動性を発現してしまい、得られる発泡体層14を構成するラテックスフォームがその形状を維持し得なくなってしまう。また前記硬度については基本的に柔軟な方が好適であるが、本実施例においてはJIS K 6301に準拠したASKER F型により測定した硬度の値が50以下で有れば、前述の形状追従性は良好であることが確認されている。
【0022】
前記カルボキシル変性ラテックスゴム24としては、NBRラテックス、SBRラテックスまたはクロロプレンゴム(CR)のカルボキシル変性物或いはこれら各ラテックスゴムにおけるカルボキシル変性物の混合物が使用される。前記カルボキシル変性ラテックスゴム24の混合量は、主原料である前記ラテックスゴム22と該カルボキシル変性ラテックスゴム24との重量割合が、80:20〜20:80となるように設定される。そして前記カルボキシル変性ラテックスゴム24の混合割合が20未満となると、前記発泡体層14を構成するラテックスフォームが充分な粘着性を発現しなくなり、80を越えると前述([0019])したカルボキシル変性ラテックスゴム24の特性により、好適なゲル化の困難化や、形状追従性の低下が顕著となり、その結果、電荷的および構造的な双方の粘着効果(前述[0013])が期待できなくなる。
【0023】
また前記カルボキシル変性ラテックスゴム24のガラス転移点は、少なくとも−30℃以上に設定される。そして前記ガラス転移点を−30℃未満に設定すると常温域において高い流動性を発現してしまい、前述([0021])した如く、前記発泡体層14を構成するラテックスフォームがその形状を維持し得なくなってしまう。一方、前記ガラス転移点の上限については殊に設定していないが、前記ラテックスゴム22と同様に20℃以下であることが望ましい。このガラス転移点が高過ぎると、前述した形状追従性を良好な状態に維持できなくなり、その結果、前述した電荷的な粘着効果および構造的な粘着効果を充分に発現させ得なくなる。この点については、前記カルボキシル変性ラテックスゴム24を混合される他方のラテックスゴム22のガラス転移点を低く設定することで回避可能であるが、その一方で発泡体層14を構成するラテックスフォームの流動性が高くなって、形状を維持できなくなる畏れもある。
【0024】
前記第1混合段階S11における混合、すなわち前記カルボキシル変性ラテックスゴム24の混合の度合い(主原料となるラテックスゴム22中への該カルボキシル変性ラテックスゴム24の分散度合い)は、発泡体層14を構成するラテックスフォームの粘着性の発現度合いに直接的に関係している。そして充分な混合がなされていない場合には、前述([0013])した電荷的な粘着効果の発現がなされなくなってしまう。
【0025】
具体的には、混合される前記ラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24に余分な気泡を巻き込まない程度の剪断力を掛けた場合に、好適には30分程度の混合が必要とされることが経験的に分かっている。なお、本第1混合段階S11の実施は、その剪断速度が10〜10000min−1となるように実施されている。使用される混合(攪拌)機器が発揮し得る最高剪断速度Q(min−1)は、以下の式の如く定義される。
Q=(P×π×S)/V
ここで、
P:混合(攪拌)機器の攪拌羽根の翼径(mm)
π:3.14(円周率)
S:1分当たりの回転数
V:混合(攪拌)機器容器と混合(攪拌)羽根との間のクリアランス(隙間)における、最も狭い部分の距離(mm)
すなわち、前記剪断速度を実施し得る最高剪断速度を有するように、前記各要素が設定された混合(撹拌)装置を用いればよい。
【0026】
前記第2混合段階S12は、前記第1混合段階S11で得られた混合ラテックスゴムに対して、前記各副原料を添加。混合する段階である。前記各副原料の添加量としては、前記混合ラテックスゴム100重量部に対して、架橋剤である加硫剤および加硫促進剤が0.5〜6重量部、起泡剤が2〜6重量部、気泡安定剤が1.0〜5.0重量部、老化防止剤が1〜5重量部程度が夫々好適である。なお、前記副原料の種類および添加される量については、一例であり、前述の主原料の種類、一度に調整される原料の量等により、従来公知のものから適宜選択された副原料が必要量だけ使用される。
【0027】
ここで前記気泡安定剤については、通常のラテックスフォーム製造に比較してその添加量が1.0〜5.0重量部と過剰(通常は0.5〜1.5重量部)に添加されている。これは前述([0014])した構造的な粘着効果を効率的に発現させるべく、前記混合ラテックスゴムに混合された所定の気体等が形成するセル18の、本ラテックスフォーム原料調整工程S1以降における合一化等の現象を回避するための措置である。また前述([0019])した如く、前記カルボキシル変性ラテックスゴム24を使用した場合、通常のラテックスゴム22だけの場合に較べてそのゲル化時間(後述([0030]))が長く必要とされるが、前記セル18の合一等の現象は該ゲル化時間に比例して発生度合いが高くなるため、発生した該セル18の前記気泡安定剤の増量等による安定化措置の必要性は高い。なお、本実施例においては、主原料をなすラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24を予め混合し、しかる後にその他副原料を混合するようにしているが、該ラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24の混合について、前述([0021])した充分な剪断速度を与えられるので有れば、前記第1混合段階S1および第2混合段階S1を同時に実施するようにしてもよい。
【0028】
(ゲル化工程S2について)
前記ゲル化工程S2は、前記ラテックスフォーム原料調整工程S1で得られた液状原料に対して、所要のエアーまたは窒素等の各種不活性である所定の気体(以下、エアーと云う)およびゲル化剤を添加し、充分に混合させて該ラテックスフォーム原料中に気泡が多数存在する状態にすると共に、ゲル化されたラテックスフォーム原料Mを得るための工程である。そして通常は前記ラテックスフォーム原料調整工程S1を経て得られ、ポンプ等の供給手段34aで供給される前記液状原料と、図示しない手段により計量されて供給されるエアーと、同じく図示しない手段により計量されると共に、ポンプ等の供給手段34bで供給されるゲル化剤とをミキシングヘッド等の混合装置34により充分に混合されることで開始される。
【0029】
前記発泡体層14を構成するラテックスフォームの発泡倍率の制御は、前記液状原料に対するエアー量を調整することで容易に可能であり、また本発明においては基本的に該ラテックスフォームの発泡倍率も殊に限定されない。しかしこの発泡倍率は、前記ラテックスフォームの硬度および引張強度等の機械的物性値に密接に関係しており、本発明においても該硬度は粘着効果の発現に影響を与え、また引張強度は得られる建築部材10の再使用性に影響を与える点を鑑み、1.1〜10倍の範囲、好ましくは2〜5倍の範囲に設定することが望まれる。この発泡倍率が1.1倍未満であると、発泡体層14が柔軟性に乏しいものとなり、前述([0021])した形状追従性が悪化してしまう。一方、発泡倍率が10倍を越えると、前記発泡体層14の引張強度の低下が懸念され、前記建築部材10が再使用に際して破損する畏れがある。なおこの発泡倍率は、前記発泡体層14の体積を、使用した原料全てで除した値である。
【0030】
前記ゲル化剤は、直径0.5〜5.0μm程度の粒子の懸濁液状態、すなわちラテックス状態をなすラテックスゴムの粒子の化学的安定性を低下させると共に、凝集させて、所謂ゲル化状態とするための物質であり、一般的にはケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウムまたはケイフッ化カルシウム等のケイフッ化系物質等を水溶液状態とした液状物が使用される。そしてその添加量としては、前記液状原料100重量部に対して1〜10重量部程度が好適である。この添加量が前述の範囲外となると、好適なゲル化を発現できない、すなわち長時間に亘って液状原料のままであったり、短時間にゲル化が進行して所要形状への成形が困難になるといった問題が生じる。具体的にはゲル化の完了に必要な時間(ゲル化時間)が長くなり過ぎたり、短くなり過ぎてしまうことにより、前記セル18の好適な保持が困難(後述([0027]))となり、その結果、該セル18同士の合一等が発生して構造的な粘着効果の発現が充分になされなくなってしまう。また、前記ゲル化剤としては、殊に前述のケイフッ化ナトリウムは、ゲル化開始時間等の反応制御が容易であるため好適に使用されている。そして、前記ゲル化時間の調整と、ラテックスフォームからなる発泡体層14に防カビ性を付与とを目的として、亜鉛華も前記副原料として好適に使用される。前記防カビ効果は、前記床材、壁クロスシートおよび天井クロスシート等の内装用の建築部材においては、非常に有用な効果の1つである。
【0031】
(積層工程S3について)
そして前述の機構により好適にゲル化された液状原料、すなわちゲル化したラテックスフォーム原料Mは、その一端が前記ミキシングヘッド34により、移送ベルト36a上に上流側から連続的に供給されている長尺物形状の基材12上に制御下に吐出・供給され積層される。また、前記製品厚制御手段38は、前記基材12上に供給されたゲル化したラテックスフォーム原料Mを、発泡体層14を構成するラテックスフォームの厚さ、すなわち得るべき建築部材10の厚さに合わせるものであり、具体的にはドクターナイフまたはドクターロール等の従来公知の手段が採用される。また前記基材12は、製造される建築部材10の主要部であり、例えば一般的な床材であれば数mm厚の硬質塩化ビニル板が、また壁や天井用のクロスシートであれば難燃性の各種布紙または塩化ビニル等の各種樹脂シートが、夫々該基材12として好適に採用される。
【0032】
なお、前記基材12上に供給されたゲル化したラテックスフォーム原料Mの更に上側に不織布の如き物質で被覆するようにしてもよい。このようにすることで、最終的に得られる建築部材10を積層した際の保管・移送や、移送途中における粘着効果の発現による不具合を回避し得る。また前記基材12として、ロール状に巻き付けられた長尺物を使用しているが、この他、一定の大きさを有する板状またはシート状の基材12を、前記移送ベルト36aの上流側から連続的または間欠的に供給するようにしてもよい。この場合、前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mは、前記基材12の供給に従って前記ミキシングヘッド34を適宜制御することで該基材12上へ供給される。
【0033】
また、加熱により発泡体層14を形成する前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mは、前記製品厚制御手段38によりその厚さを任意に制御可能であるが、該厚さとしては0.3〜2mmの範囲にあることが好ましく、殊に0.5〜1.5mmが好適である。この厚さが0.3mm未満であると、前記発泡体層14が発現する引張強度が不足して前記建築部材10の再使用に際して破損する畏れや、該建築部材10を固定するのに充分な粘着性が得られなくなる畏れがある。一方、厚さが2mmを越えると、製造コスト等が悪化する問題の他、例えば数十枚積み重ねて保管される際や、使用に際しては、積み重ね、家具等の重量物の載置または人間の移動に伴う荷重負荷によって、該荷重負荷部分が撓んでしまい、その結果、部分によっては段差が生じて見栄えや安全性が悪化する点で問題がある。
【0034】
そして前述のゲル化の完了により、前記ゲル化したラテックスフォーム原料M中にあるエアーは気泡として保持されることになる。この気泡は、そのまま最終的に前記発泡体層14を構成するラテックスフォームのセル18となるため、該気泡の大きさはセル径を決定することになる。前記気泡径は、基本的に前記ゲル化時間に依存している。すなわち、ゲル化時間が長ければ、その間に前記ゲル化原料中に混合された気泡が互いに接触し合って合一して巨大化したり、該ゲル化原料外へ排出されることになってしまうので、該ゲル化時間が短い程、小さなセル径とし得る。この時点で、前記ラテックスフォーム原料Mは流動性の高い、所謂液状状態から脱してゲル化状態となるが、該液状の際に前記基材12上に供給されて該基材12表面に存在する微細な気泡等に入り込み、その状態でゲル化することになる。このため、前記ラテックスフォーム原料M、更には該ラテックスフォーム原料Mが架橋・硬化して得られる発泡体層14と前記基材12とは、所謂アンカー効果(図1参照)によって強固に固着されることになる。
【0035】
(加熱工程S4について)
前記加熱工程S4は、前記基材12上で所要厚さとされたゲル化したラテックスフォーム原料Mに、該原料Mの架橋が充分に進行するに足る加熱を行ない、架橋・硬化反応を進行・完了させて発泡体層14を構成するラテックスフォームとするための工程であり、本実施例においては連続的な加熱処理が可能な前記トンネル式加熱炉40によって実施される。本発明においては、前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mを充分に架橋・硬化させるべく、温度110〜150℃、時間5〜10分程度の条件で加熱を実施している。この温度および時間が所定範囲以外に設定されると、前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mが焦げたり、また前記ゲル化が充分に進行しない等の問題が生じる。本加熱工程S4に使用される加熱手段としては、前記トンネル式加熱炉40の他、前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mに充分な加熱を施し、架橋・硬化させ得るものであれば、如何なるものでも採用可能である。
【0036】
(最終工程S5について)
最終的に施される前記最終工程S5は、前記基材12と、該基材12に対して前述([0034])した物理的なアンカー効果により固着的に積層させた発泡体層14とからなる建築部材10に、切断等の後加工および検査等を実施する工程である。本最終工程S5を経ることで最終製品たる建築部材10が完成する。ここでは所要形状および大きさとされた例を記載しているが、例えば前記基材12がシート状物であり、得られた建築部材10が壁クロスシート等の場合には、前述した加工を施さず長尺物のままロール状に巻き取る等した後、別工程または建築部材10の使用現場において切断加工等を施して製品としてもよい。なお、ラテックスゴムから形成される発泡体層14の内部に形成されるセル18は、前述の加熱工程S4における前記ラテックスフォーム原料M中からの水分が蒸発により、該発泡体層14の表面では常に開口状態となっている。
【0037】
【別の実施例】
なお、前述の本実施例では前記移送機構36における移送ベルト36a上に前記基材12を流し、該基材12に対してゲル化したラテックスフォーム原料Mを連続的に供給する形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図5に示すような製造方法によって建築部材10を製造してもよい。この製造方法は、容易に離形し得る処理等を施した前記移送ベルト36aに対して、直接前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mを吐出・供給した後に供給された該ラテックスフォーム原料M上に該基材12を供給し、その後トンネル式加熱炉40により該ゲル化したラテックスフォーム原料Mを加熱して、架橋・硬化させることで前記建築部材10を得るものである。この場合、前記基材12上に直接ゲル化したラテックスフォーム原料Mを供給する場合に比較して、形成される発泡体層14の表面平滑性が高くなるため、前述([0013])した如く、電荷的な粘着効果および構造的な粘着効果がより強く発現される効果が期待できる。
【0038】
また図6に示す如く、前記移送ベルト36a上に平滑性が高く、所定の厚さおよび耐熱性を有し、供給された前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mの製造装置50内での移送を行ない得る、例えばPETシート等の如きシート体37を連続的に供給して、該シート体37上に該ゲル化したラテックスフォーム原料Mの供給をするようにしてもよい。この場合、建築部材10において粘着性を発現する発泡体層14の表面平滑性がより高まるので、更に高い粘着効果が期待できる。更に前記発泡体層14の開放面が、前記シート体37によって保護されている状態で建築部材10が製造されるため、該建築部材10を積層した際の保管・移送や、移送途中における粘着効果の発現による不具合を回避し得る。
【0039】
【変更例】
前述の2つの実施例の他、ゲル化工程S2を経た後、加熱工程S4を実施するまでの間であって、ゲル化したラテックスフォーム原料Mが所定の粘度状態にある際に、例えば抗菌物質、抗菌・防臭物質、消臭物質、透湿抑制・防水物質、保温・蓄熟・発熱・吸収物質或いは撥水・吸油物質等の建材用途に有益な第3成分を付与して、該第3成分が有する機能を付与したり、得られる発泡体層14の表面に所要の型を使用することで、所定の曲率等を有する表面形状を形成するようにすることも可能である。前記型の使用により所定の曲率等を有する表面形状を形成した場合、得られた建築部材10を該曲率を有する床や壁等に対して高い密着性を保持しつつ施工し得る。
【0040】
前記第3成分を前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mに付与する際の、該ラテックスフォーム原料Mの表面の粘度は、1〜150Pa・sec(1,000〜150,000mPa・sec(1Pa・secはゲル化開始直後の粘度))の範囲内になっていることが望ましい。この粘度が1〜150Pa・secの範囲にない場合、前記第3成分が、前記発泡体層14を構成するラテックスフォーム表面に好適に固着せず、容易に剥離的に取れてしまう等の問題が生じる。
【0041】
【実験例】
以下に、本発明に係る建築部材についての各種物性についての実験例を示す。本実験においては、前記主原料たるラテックスゴムとしてSBRラテックスゴム(商品名 Nipol C−4850A;日本ゼオン製、ガラス転移点−47℃)、変性ラテックスゴムとしてSBRベースのラテックスゴム(商品名 NipolLX430;日本ゼオン製、ガラス転移点12℃)を、以下に示す表1に記載の割合で夫々使用し、本発明に係る建築部材の製造方法に従って更に該両ラテックスゴム100重量部に対して、加硫剤(商品名 軽井沢硫黄;軽井沢製練所製)を2.0重量部、加硫促進剤(商品名 ノクセラ−BZ;大内新興化学工業製)を1.5重量部、起泡剤(商品名 FR−14;花王製)を2.5重量部、気泡安定剤(商品名 トリメンベース;UNIROYAL製)を2.0重量部、老化防止剤(商品名スミライザ−BHT;共同薬品製)を2.0重量部加えて液状の原料とした後に、該液状原料に100重量部に対してゲル化剤(商品名 ケイフッカソーダー;三井化学製)3.0重量部と、225ml容器が45gの該液体原料で充満するようにエアー(乾燥空気)を加えて前記発泡体層となし、更に厚さ3mmの汎用硬質塩化ビニル板と積層することで、実施例1〜3並びに比較例1および2に係る建築部材(床材)を製造した。そしてこれを各物性試験に好適な大きさに加工して、以下に示す各物性値(発泡体層としてアスカーF硬度(°)、引張強さ(kPa)および粘着力(N)について、建築部材全体として粘着力(N)および引張剪断接着力(N/100mm2について)の測定を実施した。なお、本実験例中で使用する各機器については以下に記する。また参考例として、アクリル樹脂から製造した粘着性シートを製造し、同じく各物性値を測定した。
【0042】
【表1】
【0043】
(実施した測定およびその評価法)
・硬度:JIS K 6301に準拠したASKER F型により測定した(使用硬さ試験機:商品名;CL−150;高分子計器製)。
・引張強さ:得られた発泡体層から厚さ3mmの1号形試験片を作製し、該試験片の両端を離間するように引っ張って、その際の最大荷重(N)から
測定する(使用引張試験機:商品名;AGS−5kNB;島津製作所製)。
・ 粘着力:
1.得られた建築部材(全体厚さ3.5mm、発泡体層厚さ0.5mm)および発泡体層(厚さ3mm)を60mm×70mmの大きさにカットして試験片とし、これをロードセルの定盤に該試験片の測定対象面の反対面を両面テープ等を使用して固定させる。
2.引張試験機(商品名;AGS−5kND;島津製作所製)のチャックに取り付けられた530g、50φの荷重錘を前記試験片上面(測定対象面)に30秒載置する。
3.前記測定対象面に粘着状態となった荷重錘を引張スピード200mm/minで連続的に引き上げ、該測定対象面と荷重錘とが離れる際の荷重を粘着力とする。なお、前記荷重錘の荷重は、測定荷重より差し引くものとする。また本実施例における製造方法においては、得られる発泡体層には平滑性が高い表面(シート体側の面:表中では第1面と呼称する)と、他方の面との2つの表面(表中では第2面と呼称する)があるが、その双方について粘着力を測定した。なお、前記建築部材については、前記硬質塩ビシートからなる基材が積層されていない側の表面だけの測定となる。
・引張剪断接着力:JIS A 5536に準拠して測定した。前記粘着力は、密着性の強弱を示す指標であるが、これだけでは建築部材の評価として不充分であるため、該建築部材を床等に載置した際の横方向の動きの拘束性を考慮し、本指標が採用されている。具体的には、得られた建築部材を50mm×150mmの大きさにカットして試験片とし、荷重を3.5kgに設定して実施した。なお、この引張剪断断接着力は0.01N/mm2以上であれば、経験的に前記建築部材使用時の横方向の動きを抑制し得る。
【0044】
(結果)
得られた各測定結果等を上記表1に併記する。そして得られた結果より、主原料をなすラテックスゴムと、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムとの混合割合を80:20〜20:80の範囲(実施例1〜3)とすることで、良好な粘着力、すなわちアクリル樹脂から製造した粘着性シートの少なくとも90%程度の粘着力を発現しつつ、かつ該アクリル樹脂から製造した粘着性シートに較べて2.5〜4倍程度の引張強度を発現する発泡体層が得られることが確認された。殊に主原料をなすラテックスゴムと、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムとの混合割合が50:50の時に最も良好な粘着力を示し、また該両ラテックスゴムが夫々100%の時には粘着力が極めて低いことから、低い硬度の達成により発現する構造的な粘着効果と、変性ラテックスゴムの存在により発現される電荷的な粘着効果との双方のバランスが重要であることが示唆されている。更に第2面については、第1面の粘着力と較べて1/10の粘着力しか発現されておらず、ここから得られる発泡体層の表面平滑性も重要であることが確認された。
【0045】
また、建築部材として測定した粘着力についても、前記発泡体層の粘着力と同様の傾向が確認された。すなわち、主原料をなすラテックスゴムと、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムとの混合割合が50:50の時に最も良好な粘着力を示した。そして、前記引張剪断接着力についても同様の結果が確認され、主原料をなすラテックスゴムと、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムとの混合割合が本発明に係る範囲内である場合には、何れも0.01N/mm2以上の数値が得られた。なお、環境負荷物質の1つであるホルムアルデヒドについてはJIS A 6921に準拠した測定の結果、検出はされなかった。
【0046】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る建築部材およびその製造方法によれば、ガラス転移点が−30℃以上であり、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムと、この変性ラテックスゴムを発泡化させ得る天然その他のラテックスゴムと、ゲル化剤、気泡安定剤その他所要の副原料とを混合したラテックスフォーム原料を架橋・硬化させるようしたので、該変性ラテックスゴムにより発現される電荷的な粘着効果と、建築部材が有する構造的な粘着効果とを併有して高い粘着効果を発現する建築部材を製造し得る。
【0047】
また、前記発泡体層を構成するラテックスフォームの製造に際して、ホルムアルデヒド等の環境負荷物質を使用することがないため、環境汚染や作業者への悪影響がない。更に前記ラテックスフォームが有する高い引張強度および圧縮永久歪み等の物性により、高い機械的強度および繰り返し使用性の双方を併有し、優れた再使用性を発揮する建築部材を製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る建築部材の表面部分を拡大して示す断面図である。
【図2】実施例に係る建築部材におけるセル径と、構造的な粘着効果との関係を示す概略図である。
【図3】実施例に係る建築部材の製造工程を示すフローチャート図である。
【図4】実施例に係る建築部材の製造装置の一例を示す概略図である。
【図5】別の実施例に係る建築部材の製造装置の一例を示す概略図である。
【図6】別の実施例に係る建築部材の製造装置において、シート体を使用した場合の製造装置の全体を示す概略図である。
【符号の説明】
12 基材
14 発泡体層
18 セル
22 ラテックスゴム
24 変性ラテックスゴム
M ラテックスフォーム原料
【発明の属する技術分野】
この発明は、建築部材およびその製造方法に関し、更に詳細には、タイル、タイルカーペットその他各種床材に代表される内装材または各種外装材用途に使用され、容易に施工・脱着可能で、かつ再使用に供し得るだけの充分な強度を有する建築部材と、該建築部材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、タイル、タイルカーペットまたは長尺シート等の床材に代表される建築部材を施工する際、接着剤を下地に塗布し、該接着剤を介して貼着するという方法が一般的に採用されている。また前記床材を改装等を目的として貼りかえる、所謂再施工等に際しては、該床材を強制的に剥がし、その後下地に付着した接着剤をスクレーパー等の工具を用いて作業者が別途削り取った後に、該下地に接着剤を塗布し直して新たな床材を貼着するという方法が一般的に用いられている。
【0003】
そして一般的に前記接着剤は、塗布後に所定の接着作用を発現するまでに所定の時間、所謂オープンタイムが必要とされるため、前記床材を接着剤にて下地に貼着するに際しては、時間的な余裕が最大で30分程度必要となっていた。また前記接着剤の下地に対する塗布作業は、作業者の労力負担が大きく、前記オープンタイムと労力負担とにより、前記床材の施工作業効率の向上は困難であった。
【0004】
また前記接着剤としては、一般に溶媒として水を使用するラテックス系接着剤と、溶媒として各種溶剤を使用する溶剤系接着剤との2種類が使用されているが、両接着剤には以下に記載する問題が夫々指摘された。すなわち前記ラテックス系接着剤の場合には、長いオープンタイムが必要であり、かつ前記床材貼着後における接着剤乾燥にも長い時間が必要であるため、施工時間が長く必要とされる。これに対し、溶剤系接着剤は溶剤の乾燥は室温においても容易であるため、前述のオープンタイムや乾燥時間については短縮が可能である一方、該溶媒である酢酸エチルやトルエン等の溶剤が人体に対しては一般に有害でありかつ環境負荷が高い問題が指摘される。
【0005】
これらの問題を解決するため、下記の特許文献1、2および3に示す如く、前記床材の設置および剥離を容易にすることを目的とした考案および発明がが案出されている。前記特許文献1には、塩化ビニール樹脂製等のプラスチックタイルの裏面にマイクロポーラスな連続気泡構造を有する粘着シート状物を設けた床材が開示されており、該マイクロポーラスな連続気泡構造により脱着が可能な構成となっている。また特許文献2は、カーペット等繊維床材の裏面に粘弾性を有する微多孔質膜を積層した床材が開示されており、該微多孔質膜により再剥離機能と、形状保持性および耐久性との併有がなされている。そして前記特許文献3には、塩化ビニール樹脂製等のプラスチックタイルの裏面に独立気泡を有するアクリル樹脂発泡体を設けた床材が開示されており、該アクリル樹脂発泡体により容易な施工と滑り止めとをなし得る構成となっている。
【0006】
【特許文献1】
登録実用新案3018810号公報
【特許文献2】
特開平4−105613号公報
【特許文献3】
特開平8−302978号公報
【0007】
【発明が解決すべき課題】
しかし前述の特許文献1〜3に係る各床材においては以下の欠点が指摘される。すなわち、特許文献1および2に係る各床材の場合、基材部分の材質に対して、発泡体層をなすポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、NBRまたはSBR等を付与した後、該発泡体表面に対して別途粘着剤を付与するための工程が必要であるので、その製造工程が煩雑となり、生産効率の低下が指摘される。また粘着性を発現する粘着剤は前記発泡体層の表面の擦れ等の物理的な接触により粘着性が無くなってしまうため、例えばオフィスビルや店舗フロア等の歩行者通行量が多い場所においては、長時間に亘って使用し得る耐久性がない。
【0008】
また前記特許文献3に係る床材の場合、該床材をなすアクリル樹脂発泡体が有する自己粘着性による強固な粘着力が期待できる一方、該発泡体が有する機械的強度は小さく、その結果、例えば下地等の粘着対象物から該床材を引き剥がす際に該発泡体自体が破損してしまい、再使用に耐えない。更にアクリル樹脂は、メチロール基同士の縮合反応や、メチロール基とエポキシ基との反応による架橋によって機械的強度を発現するものであるが、両架橋構造の形成にはメチロール基を導入する為に環境汚染物質であるホルムアルデヒドが必須とされるため、環境負荷や人体への悪影響の点でも問題が指摘される。
【0009】
【発明の目的】
この発明は、前述した従来技術に係る建築部材およびその製造方法に関して内在していた欠点に鑑み、これを好適に解決すべく提案されたものであって、カルボキシル変性ラテックスゴム等を原料として得られるラテックスフォームを発泡体層として使用することで、所定の粘着性および機械的強度を併有し、容易な脱着性および優れた耐久性を備える建築部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の発明に係る建築部材は、所要の基材と、該基材に積層させた発泡体層とからなる建築部材において、
前記発泡体層は、ガラス転移点が−30℃以上であって、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムと、この変性ラテックスゴムを発泡化させ得る天然その他のラテックスゴムと、ゲル化剤、気泡安定剤その他所要の副原料とを混合したラテックスフォーム原料を使用して得たラテックスフォームであることを特徴とする。
【0011】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の別の発明に係る建築部材の製造方法は、基材と、そのガラス転移点が−30℃以上であると共に、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムと、この変性ラテックスゴムを発泡化させ得る天然その他のラテックスゴムとを準備し、
前記ラテックスゴムおよび変性ラテックスゴムを混合し、
得られた混合ラテックスゴム100重量部に対し、気泡安定剤1.0〜5.0重量部および所要の副原料を混合して液状原料とし、
この液状原料100重量部に対し、ゲル化剤1〜10重量部および所定の気体を混合することでゲル化したラテックスフォーム原料を得て、
前記ゲル化したラテックスフォーム原料を加熱して架橋・硬化を進行させることで、前記基材に対して積層させた発泡体層を形成させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る建築部材およびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下に説明する。本願の発明者は、建築部材を構成する所要厚さの基材に積層される発泡体層として、そのガラス転移点が−30℃以上であるカルボキシル化した変性ラテックスゴムと、該変性ラテックスゴムを発泡化させ得る天然その他のラテックスゴムとを所定割合で混合することで得られるラテックスフォームを使用することで、該ラテックスフォームが有する高い機械的強度および耐圧縮永久歪みと、該変性ラテックスゴムのカルボキシル基が有する電荷および得られる該ラテックスフォーム、すなわち発泡体層に形成される半独泡構造により好適に発現される粘着性とを併有する建築部材が得られることを知見したものである。
【0013】
本発明の好適な実施例に係る建築部材10は、図1に示す如く、所定厚さを有する基材12と、該基材12に積層させた発泡体層14とから基本的に構成される。前記発泡体層14は、カルボキシル化された変性ラテックスゴム(以下、カルボキシル変性ラテックスゴムと云う)24と、該カルボキシル変性ラテックスゴム24を発泡化させ得る天然その他のラテックスゴム(以下、ラテックスゴムと云う)22とからなる骨格16と、エアー等の所定の気体(詳細は[0028]に後述)によって形成されるセル18とを有するラテックスフォームから構成される。そして前記発泡体層14は、カルボキシル変性ラテックスゴム24が有するカルボキシル基(官能基)のマイナス電荷による電荷的な粘着効果(図1においては−(マイナス)の記号で概念的に図示している)と、得られる発泡体層14が有する半独泡構造の所謂吸盤(負圧)作用による構造的な粘着効果との相乗効果により、良好な粘着効果を発現するものである。なお前記電荷的な粘着効果および構造的な粘着効果は、夫々電荷の接近度合いおよび前記セル18内の負圧状態の保持度合い、すなわち前記発泡体層14と被粘着物との密着度に伴って高まるものである。
【0014】
前述した構造的な粘着効果の理解に資するため、図2に示すように、前記発泡体層14内に形成されるセル18が独泡構造である場合を例にとって説明する。この図2は、開口状態となっている前記セル18を有する発泡体層14の表面部分を拡大して示したものである。この場合、構造的な粘着効果については、▲1▼外部に対して開口しているセル18の総数と、▲2▼該セル18の内部体積との積によって疑似的にその強度の大小を表すことが可能である。ここで、前述の▲1▼外部に対して開口しているセル18の総数は、吸盤作用に関わるセル18の総数を表し、また▲2▼該セル18の内部体積は、該セル18が排出し得る空気量、すなわち1つの該セル18が発現する吸盤効果の強度を表す指標として捉えることができる。そして前記セル18が独泡構造をなす場合、前記▲1▼および▲2▼は該セル18の大きさだけで決定され、この大きさが小さければ▲1▼は増加する一方で▲2▼は減少し(図2(a)参照)、反対に大きければ▲1▼は減少する一方で▲2▼は増加する(図2(b)参照)、すなわち▲1▼および▲2▼の双方を高い水準で維持することが極めて困難といえる。これは前記建築部材10の体積が有限であるためであり、前記セル18の内部体積とその存在数とが反比例することは自明である。
【0015】
これに対し、本発明に係る建築部材10を構成する発泡体層14は、半独泡構造を有しているため、前記セル18の大きさを小さく維持することで、▲1▼外部に対して開口しているセル18の総数を稼ぎつつ、該半独泡構造により、▲2▼該セル18の内部体積との積を大きなものとし得る。すなわち、前記▲1▼および▲2▼の双方を高い水準で維持することで、高い構造的な粘着効果を発現させ得る。前記セル18の大きさについては、本発明に係る建築部材10の場合、該部材10の発泡体層14をなすラテックスフォームの骨格16におけるラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24をゲル化させる時間、すなわちゲル化剤の添加量によって任意に制御可能であるため殊に問題はないが、大き過ぎると前述の▲1▼が減少するため、好適には500μm以下に設定される。
【0016】
また前記建築部材10は、図3に示す各工程を経て好適に製造されている。この工程は、ラテックスフォーム原料調整工程S1、ゲル化工程S2、積層工程S3、加熱工程S4および最終工程S5から基本的に構成されている。また、前記各工程S1〜S5については、図4に示すような製造装置30により好適に実施される。前記製造装置30は、前記ラテックスフォーム原料調整工程S1およびゲル化工程S2を経ることで得られるゲル化したラテックスフォーム原料Mから、所要形状の建築部材10の基となるシート状物を連続的に製造する装置である。なお、ここで云うゲル化したラテックスフォーム原料Mおよびこの後に記載されるゲル化したラテックスフォーム原料Mとは、完全にゲル化が完了した原料だけを指すものでなく、前記ゲル化工程S2により添加されたゲル化剤により、前記ラテックスフォーム原料調整工程S1で得られる液状のラテックスフォーム原料(以下、液状原料と云う、後述[0018])から次第にゲル化している途上の原料および完全にゲル化した原料全てを指すものである。また以下に説明する各工程S1〜S5を実施するにあたり、前記建築部材10の原料となる基材12、ラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24並びに各副原料等は全て準備され、殊に該基材12については、例えばロール等に巻き付けられた長尺物として後述([0017])する移送機構36を構成する移送ベルト36a上に連続的に供給されているものとする。
【0017】
前記製造装置30は、具体的には前記ラテックスフォーム原料調整工程S1を実施して液状原料を得る混合機構32と、ゲル化したラテックスフォーム原料Mが供給される基材12を移送するため図示しない駆動源により駆動される移送ベルト36aを備えるベルトコンベア式の移送機構36と、この移送機構36の最上流側に配置され、前記ゲル化工程S2を実施すると共に、該基材12上にゲル化したラテックスフォーム原料Mを連続的に供給するミキシングヘッド34と、該ミキシングヘッド34の下流側に設置され、供給された該ゲル化したラテックスフォーム原料Mを所定厚さのシート状とする製品厚制御手段38と、その下流側に設けられる所定長さのトンネル式加熱炉40とから基本的に構成される。
【0018】
(ラテックスフォーム原料調整工程S1について)
前記混合機構32で行なわれる前記ラテックスフォーム原料調整工程S1は、得るべき建築部材10における発泡体層14を構成するラテックスフォームの各原料を混合・攪拌して液状のラテックスフォーム原料(液状原料)を得るための工程であり、前記ラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24を混合して混合ラテックスゴムを得る第1混合段階S11と、得られた混合ラテックスゴムに対して他の副原料を混合する第2混合段階S12とからなる。具体的には前記発泡体層14を構成するラテックスフォームを得るための各原料のうち、ゲル化剤およびセルを形成するエアー等の所定の気体以外の物質、すなわち2種類のラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24と、架橋剤である加硫剤、加硫促進剤、亜鉛華、起泡剤、気泡安定剤並びに老化防止剤等といった副原料とが混合される。そしてこれら各物質が混合されることで液状原料が得られる。
【0019】
前記ラテックスゴム22は、後述するカルボキシル変性ラテックスゴム24の発泡化をなし得るために使用されるものであり、また前記発泡体層14を構成するラテックスフォームの主原料でもある。そして一般的な、例えばNBRラテックス、SBRラテックス、クロロプレンゴム(CR)、NRラテックスゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)等の天然または合成のラテックスゴムが単独、または混合して使用される。そして前記ラテックスゴム22の物性として、そのガラス転移点が少なくとも−50℃以上、好適には−50〜20℃の範囲に設定されることが望ましい。このガラス転移点設定により、前記ラテックスゴム22に混合されるカルボキシル変性ラテックスゴム24が有する特徴的な性状、すなわち水分量が多くて固形分が少なく、▲1▼ゲル化が困難で、かつ▲2▼得られるラテックスフォームが高い硬度を発現するといった問題を効率的に回避し得る。
【0020】
前述の▲1▼ゲル化の問題は、ゲル化剤の増量や前記ラテックスゴム22の共存によって回避されるが、この方法も前述したように発泡体層14を構成するラテックスフォームの硬度を高くする作用がある。そしてこれら▲1▼のゲル化の問題と、▲2▼の高い硬度の発現との双方から、該ラテックスフォームの硬度が高く発現することが一般的である。そして前記硬度が高過ぎる場合、所謂形状追従性が大きく悪化して、前述の電荷的な粘着効果および構造的な粘着効果の好適な発現が阻害されることになる。これは形状追従性の悪化により、前記発泡体層14を構成するラテックスフォームと、被粘着物との間に密着状態が維持できなくなるために発生する。殊に前記形状追従性の悪化は、前記ラテックスフォームの表面形状と、被粘着物の被粘着表面の形状とが一致しない場合や、該被粘着表面の平滑性が低く、例えば凸凹である場合に顕著となる。
【0021】
そして前記ガラス転移点は、その温度において物質の内部構造が急激に変化する点であり、本発明における前記ラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24の場合では、温度の上昇と共に固体状態から柔軟性を増す、すなわち硬度が低下して所謂形状追従性が良好となる点である。そこで本発明は、常温において高い柔軟性を発現し得るガラス転移点、すなわち20℃以下のガラス転移点を有するよう設定された前記ラテックスゴム22を使用することで、該形状追従性の悪化を防止している。なお、前記ガラス転移点の温度が−50℃未満となると、通常の使用温度領域となる常温において流動性を発現してしまい、得られる発泡体層14を構成するラテックスフォームがその形状を維持し得なくなってしまう。また前記硬度については基本的に柔軟な方が好適であるが、本実施例においてはJIS K 6301に準拠したASKER F型により測定した硬度の値が50以下で有れば、前述の形状追従性は良好であることが確認されている。
【0022】
前記カルボキシル変性ラテックスゴム24としては、NBRラテックス、SBRラテックスまたはクロロプレンゴム(CR)のカルボキシル変性物或いはこれら各ラテックスゴムにおけるカルボキシル変性物の混合物が使用される。前記カルボキシル変性ラテックスゴム24の混合量は、主原料である前記ラテックスゴム22と該カルボキシル変性ラテックスゴム24との重量割合が、80:20〜20:80となるように設定される。そして前記カルボキシル変性ラテックスゴム24の混合割合が20未満となると、前記発泡体層14を構成するラテックスフォームが充分な粘着性を発現しなくなり、80を越えると前述([0019])したカルボキシル変性ラテックスゴム24の特性により、好適なゲル化の困難化や、形状追従性の低下が顕著となり、その結果、電荷的および構造的な双方の粘着効果(前述[0013])が期待できなくなる。
【0023】
また前記カルボキシル変性ラテックスゴム24のガラス転移点は、少なくとも−30℃以上に設定される。そして前記ガラス転移点を−30℃未満に設定すると常温域において高い流動性を発現してしまい、前述([0021])した如く、前記発泡体層14を構成するラテックスフォームがその形状を維持し得なくなってしまう。一方、前記ガラス転移点の上限については殊に設定していないが、前記ラテックスゴム22と同様に20℃以下であることが望ましい。このガラス転移点が高過ぎると、前述した形状追従性を良好な状態に維持できなくなり、その結果、前述した電荷的な粘着効果および構造的な粘着効果を充分に発現させ得なくなる。この点については、前記カルボキシル変性ラテックスゴム24を混合される他方のラテックスゴム22のガラス転移点を低く設定することで回避可能であるが、その一方で発泡体層14を構成するラテックスフォームの流動性が高くなって、形状を維持できなくなる畏れもある。
【0024】
前記第1混合段階S11における混合、すなわち前記カルボキシル変性ラテックスゴム24の混合の度合い(主原料となるラテックスゴム22中への該カルボキシル変性ラテックスゴム24の分散度合い)は、発泡体層14を構成するラテックスフォームの粘着性の発現度合いに直接的に関係している。そして充分な混合がなされていない場合には、前述([0013])した電荷的な粘着効果の発現がなされなくなってしまう。
【0025】
具体的には、混合される前記ラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24に余分な気泡を巻き込まない程度の剪断力を掛けた場合に、好適には30分程度の混合が必要とされることが経験的に分かっている。なお、本第1混合段階S11の実施は、その剪断速度が10〜10000min−1となるように実施されている。使用される混合(攪拌)機器が発揮し得る最高剪断速度Q(min−1)は、以下の式の如く定義される。
Q=(P×π×S)/V
ここで、
P:混合(攪拌)機器の攪拌羽根の翼径(mm)
π:3.14(円周率)
S:1分当たりの回転数
V:混合(攪拌)機器容器と混合(攪拌)羽根との間のクリアランス(隙間)における、最も狭い部分の距離(mm)
すなわち、前記剪断速度を実施し得る最高剪断速度を有するように、前記各要素が設定された混合(撹拌)装置を用いればよい。
【0026】
前記第2混合段階S12は、前記第1混合段階S11で得られた混合ラテックスゴムに対して、前記各副原料を添加。混合する段階である。前記各副原料の添加量としては、前記混合ラテックスゴム100重量部に対して、架橋剤である加硫剤および加硫促進剤が0.5〜6重量部、起泡剤が2〜6重量部、気泡安定剤が1.0〜5.0重量部、老化防止剤が1〜5重量部程度が夫々好適である。なお、前記副原料の種類および添加される量については、一例であり、前述の主原料の種類、一度に調整される原料の量等により、従来公知のものから適宜選択された副原料が必要量だけ使用される。
【0027】
ここで前記気泡安定剤については、通常のラテックスフォーム製造に比較してその添加量が1.0〜5.0重量部と過剰(通常は0.5〜1.5重量部)に添加されている。これは前述([0014])した構造的な粘着効果を効率的に発現させるべく、前記混合ラテックスゴムに混合された所定の気体等が形成するセル18の、本ラテックスフォーム原料調整工程S1以降における合一化等の現象を回避するための措置である。また前述([0019])した如く、前記カルボキシル変性ラテックスゴム24を使用した場合、通常のラテックスゴム22だけの場合に較べてそのゲル化時間(後述([0030]))が長く必要とされるが、前記セル18の合一等の現象は該ゲル化時間に比例して発生度合いが高くなるため、発生した該セル18の前記気泡安定剤の増量等による安定化措置の必要性は高い。なお、本実施例においては、主原料をなすラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24を予め混合し、しかる後にその他副原料を混合するようにしているが、該ラテックスゴム22およびカルボキシル変性ラテックスゴム24の混合について、前述([0021])した充分な剪断速度を与えられるので有れば、前記第1混合段階S1および第2混合段階S1を同時に実施するようにしてもよい。
【0028】
(ゲル化工程S2について)
前記ゲル化工程S2は、前記ラテックスフォーム原料調整工程S1で得られた液状原料に対して、所要のエアーまたは窒素等の各種不活性である所定の気体(以下、エアーと云う)およびゲル化剤を添加し、充分に混合させて該ラテックスフォーム原料中に気泡が多数存在する状態にすると共に、ゲル化されたラテックスフォーム原料Mを得るための工程である。そして通常は前記ラテックスフォーム原料調整工程S1を経て得られ、ポンプ等の供給手段34aで供給される前記液状原料と、図示しない手段により計量されて供給されるエアーと、同じく図示しない手段により計量されると共に、ポンプ等の供給手段34bで供給されるゲル化剤とをミキシングヘッド等の混合装置34により充分に混合されることで開始される。
【0029】
前記発泡体層14を構成するラテックスフォームの発泡倍率の制御は、前記液状原料に対するエアー量を調整することで容易に可能であり、また本発明においては基本的に該ラテックスフォームの発泡倍率も殊に限定されない。しかしこの発泡倍率は、前記ラテックスフォームの硬度および引張強度等の機械的物性値に密接に関係しており、本発明においても該硬度は粘着効果の発現に影響を与え、また引張強度は得られる建築部材10の再使用性に影響を与える点を鑑み、1.1〜10倍の範囲、好ましくは2〜5倍の範囲に設定することが望まれる。この発泡倍率が1.1倍未満であると、発泡体層14が柔軟性に乏しいものとなり、前述([0021])した形状追従性が悪化してしまう。一方、発泡倍率が10倍を越えると、前記発泡体層14の引張強度の低下が懸念され、前記建築部材10が再使用に際して破損する畏れがある。なおこの発泡倍率は、前記発泡体層14の体積を、使用した原料全てで除した値である。
【0030】
前記ゲル化剤は、直径0.5〜5.0μm程度の粒子の懸濁液状態、すなわちラテックス状態をなすラテックスゴムの粒子の化学的安定性を低下させると共に、凝集させて、所謂ゲル化状態とするための物質であり、一般的にはケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウムまたはケイフッ化カルシウム等のケイフッ化系物質等を水溶液状態とした液状物が使用される。そしてその添加量としては、前記液状原料100重量部に対して1〜10重量部程度が好適である。この添加量が前述の範囲外となると、好適なゲル化を発現できない、すなわち長時間に亘って液状原料のままであったり、短時間にゲル化が進行して所要形状への成形が困難になるといった問題が生じる。具体的にはゲル化の完了に必要な時間(ゲル化時間)が長くなり過ぎたり、短くなり過ぎてしまうことにより、前記セル18の好適な保持が困難(後述([0027]))となり、その結果、該セル18同士の合一等が発生して構造的な粘着効果の発現が充分になされなくなってしまう。また、前記ゲル化剤としては、殊に前述のケイフッ化ナトリウムは、ゲル化開始時間等の反応制御が容易であるため好適に使用されている。そして、前記ゲル化時間の調整と、ラテックスフォームからなる発泡体層14に防カビ性を付与とを目的として、亜鉛華も前記副原料として好適に使用される。前記防カビ効果は、前記床材、壁クロスシートおよび天井クロスシート等の内装用の建築部材においては、非常に有用な効果の1つである。
【0031】
(積層工程S3について)
そして前述の機構により好適にゲル化された液状原料、すなわちゲル化したラテックスフォーム原料Mは、その一端が前記ミキシングヘッド34により、移送ベルト36a上に上流側から連続的に供給されている長尺物形状の基材12上に制御下に吐出・供給され積層される。また、前記製品厚制御手段38は、前記基材12上に供給されたゲル化したラテックスフォーム原料Mを、発泡体層14を構成するラテックスフォームの厚さ、すなわち得るべき建築部材10の厚さに合わせるものであり、具体的にはドクターナイフまたはドクターロール等の従来公知の手段が採用される。また前記基材12は、製造される建築部材10の主要部であり、例えば一般的な床材であれば数mm厚の硬質塩化ビニル板が、また壁や天井用のクロスシートであれば難燃性の各種布紙または塩化ビニル等の各種樹脂シートが、夫々該基材12として好適に採用される。
【0032】
なお、前記基材12上に供給されたゲル化したラテックスフォーム原料Mの更に上側に不織布の如き物質で被覆するようにしてもよい。このようにすることで、最終的に得られる建築部材10を積層した際の保管・移送や、移送途中における粘着効果の発現による不具合を回避し得る。また前記基材12として、ロール状に巻き付けられた長尺物を使用しているが、この他、一定の大きさを有する板状またはシート状の基材12を、前記移送ベルト36aの上流側から連続的または間欠的に供給するようにしてもよい。この場合、前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mは、前記基材12の供給に従って前記ミキシングヘッド34を適宜制御することで該基材12上へ供給される。
【0033】
また、加熱により発泡体層14を形成する前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mは、前記製品厚制御手段38によりその厚さを任意に制御可能であるが、該厚さとしては0.3〜2mmの範囲にあることが好ましく、殊に0.5〜1.5mmが好適である。この厚さが0.3mm未満であると、前記発泡体層14が発現する引張強度が不足して前記建築部材10の再使用に際して破損する畏れや、該建築部材10を固定するのに充分な粘着性が得られなくなる畏れがある。一方、厚さが2mmを越えると、製造コスト等が悪化する問題の他、例えば数十枚積み重ねて保管される際や、使用に際しては、積み重ね、家具等の重量物の載置または人間の移動に伴う荷重負荷によって、該荷重負荷部分が撓んでしまい、その結果、部分によっては段差が生じて見栄えや安全性が悪化する点で問題がある。
【0034】
そして前述のゲル化の完了により、前記ゲル化したラテックスフォーム原料M中にあるエアーは気泡として保持されることになる。この気泡は、そのまま最終的に前記発泡体層14を構成するラテックスフォームのセル18となるため、該気泡の大きさはセル径を決定することになる。前記気泡径は、基本的に前記ゲル化時間に依存している。すなわち、ゲル化時間が長ければ、その間に前記ゲル化原料中に混合された気泡が互いに接触し合って合一して巨大化したり、該ゲル化原料外へ排出されることになってしまうので、該ゲル化時間が短い程、小さなセル径とし得る。この時点で、前記ラテックスフォーム原料Mは流動性の高い、所謂液状状態から脱してゲル化状態となるが、該液状の際に前記基材12上に供給されて該基材12表面に存在する微細な気泡等に入り込み、その状態でゲル化することになる。このため、前記ラテックスフォーム原料M、更には該ラテックスフォーム原料Mが架橋・硬化して得られる発泡体層14と前記基材12とは、所謂アンカー効果(図1参照)によって強固に固着されることになる。
【0035】
(加熱工程S4について)
前記加熱工程S4は、前記基材12上で所要厚さとされたゲル化したラテックスフォーム原料Mに、該原料Mの架橋が充分に進行するに足る加熱を行ない、架橋・硬化反応を進行・完了させて発泡体層14を構成するラテックスフォームとするための工程であり、本実施例においては連続的な加熱処理が可能な前記トンネル式加熱炉40によって実施される。本発明においては、前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mを充分に架橋・硬化させるべく、温度110〜150℃、時間5〜10分程度の条件で加熱を実施している。この温度および時間が所定範囲以外に設定されると、前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mが焦げたり、また前記ゲル化が充分に進行しない等の問題が生じる。本加熱工程S4に使用される加熱手段としては、前記トンネル式加熱炉40の他、前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mに充分な加熱を施し、架橋・硬化させ得るものであれば、如何なるものでも採用可能である。
【0036】
(最終工程S5について)
最終的に施される前記最終工程S5は、前記基材12と、該基材12に対して前述([0034])した物理的なアンカー効果により固着的に積層させた発泡体層14とからなる建築部材10に、切断等の後加工および検査等を実施する工程である。本最終工程S5を経ることで最終製品たる建築部材10が完成する。ここでは所要形状および大きさとされた例を記載しているが、例えば前記基材12がシート状物であり、得られた建築部材10が壁クロスシート等の場合には、前述した加工を施さず長尺物のままロール状に巻き取る等した後、別工程または建築部材10の使用現場において切断加工等を施して製品としてもよい。なお、ラテックスゴムから形成される発泡体層14の内部に形成されるセル18は、前述の加熱工程S4における前記ラテックスフォーム原料M中からの水分が蒸発により、該発泡体層14の表面では常に開口状態となっている。
【0037】
【別の実施例】
なお、前述の本実施例では前記移送機構36における移送ベルト36a上に前記基材12を流し、該基材12に対してゲル化したラテックスフォーム原料Mを連続的に供給する形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図5に示すような製造方法によって建築部材10を製造してもよい。この製造方法は、容易に離形し得る処理等を施した前記移送ベルト36aに対して、直接前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mを吐出・供給した後に供給された該ラテックスフォーム原料M上に該基材12を供給し、その後トンネル式加熱炉40により該ゲル化したラテックスフォーム原料Mを加熱して、架橋・硬化させることで前記建築部材10を得るものである。この場合、前記基材12上に直接ゲル化したラテックスフォーム原料Mを供給する場合に比較して、形成される発泡体層14の表面平滑性が高くなるため、前述([0013])した如く、電荷的な粘着効果および構造的な粘着効果がより強く発現される効果が期待できる。
【0038】
また図6に示す如く、前記移送ベルト36a上に平滑性が高く、所定の厚さおよび耐熱性を有し、供給された前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mの製造装置50内での移送を行ない得る、例えばPETシート等の如きシート体37を連続的に供給して、該シート体37上に該ゲル化したラテックスフォーム原料Mの供給をするようにしてもよい。この場合、建築部材10において粘着性を発現する発泡体層14の表面平滑性がより高まるので、更に高い粘着効果が期待できる。更に前記発泡体層14の開放面が、前記シート体37によって保護されている状態で建築部材10が製造されるため、該建築部材10を積層した際の保管・移送や、移送途中における粘着効果の発現による不具合を回避し得る。
【0039】
【変更例】
前述の2つの実施例の他、ゲル化工程S2を経た後、加熱工程S4を実施するまでの間であって、ゲル化したラテックスフォーム原料Mが所定の粘度状態にある際に、例えば抗菌物質、抗菌・防臭物質、消臭物質、透湿抑制・防水物質、保温・蓄熟・発熱・吸収物質或いは撥水・吸油物質等の建材用途に有益な第3成分を付与して、該第3成分が有する機能を付与したり、得られる発泡体層14の表面に所要の型を使用することで、所定の曲率等を有する表面形状を形成するようにすることも可能である。前記型の使用により所定の曲率等を有する表面形状を形成した場合、得られた建築部材10を該曲率を有する床や壁等に対して高い密着性を保持しつつ施工し得る。
【0040】
前記第3成分を前記ゲル化したラテックスフォーム原料Mに付与する際の、該ラテックスフォーム原料Mの表面の粘度は、1〜150Pa・sec(1,000〜150,000mPa・sec(1Pa・secはゲル化開始直後の粘度))の範囲内になっていることが望ましい。この粘度が1〜150Pa・secの範囲にない場合、前記第3成分が、前記発泡体層14を構成するラテックスフォーム表面に好適に固着せず、容易に剥離的に取れてしまう等の問題が生じる。
【0041】
【実験例】
以下に、本発明に係る建築部材についての各種物性についての実験例を示す。本実験においては、前記主原料たるラテックスゴムとしてSBRラテックスゴム(商品名 Nipol C−4850A;日本ゼオン製、ガラス転移点−47℃)、変性ラテックスゴムとしてSBRベースのラテックスゴム(商品名 NipolLX430;日本ゼオン製、ガラス転移点12℃)を、以下に示す表1に記載の割合で夫々使用し、本発明に係る建築部材の製造方法に従って更に該両ラテックスゴム100重量部に対して、加硫剤(商品名 軽井沢硫黄;軽井沢製練所製)を2.0重量部、加硫促進剤(商品名 ノクセラ−BZ;大内新興化学工業製)を1.5重量部、起泡剤(商品名 FR−14;花王製)を2.5重量部、気泡安定剤(商品名 トリメンベース;UNIROYAL製)を2.0重量部、老化防止剤(商品名スミライザ−BHT;共同薬品製)を2.0重量部加えて液状の原料とした後に、該液状原料に100重量部に対してゲル化剤(商品名 ケイフッカソーダー;三井化学製)3.0重量部と、225ml容器が45gの該液体原料で充満するようにエアー(乾燥空気)を加えて前記発泡体層となし、更に厚さ3mmの汎用硬質塩化ビニル板と積層することで、実施例1〜3並びに比較例1および2に係る建築部材(床材)を製造した。そしてこれを各物性試験に好適な大きさに加工して、以下に示す各物性値(発泡体層としてアスカーF硬度(°)、引張強さ(kPa)および粘着力(N)について、建築部材全体として粘着力(N)および引張剪断接着力(N/100mm2について)の測定を実施した。なお、本実験例中で使用する各機器については以下に記する。また参考例として、アクリル樹脂から製造した粘着性シートを製造し、同じく各物性値を測定した。
【0042】
【表1】
【0043】
(実施した測定およびその評価法)
・硬度:JIS K 6301に準拠したASKER F型により測定した(使用硬さ試験機:商品名;CL−150;高分子計器製)。
・引張強さ:得られた発泡体層から厚さ3mmの1号形試験片を作製し、該試験片の両端を離間するように引っ張って、その際の最大荷重(N)から
測定する(使用引張試験機:商品名;AGS−5kNB;島津製作所製)。
・ 粘着力:
1.得られた建築部材(全体厚さ3.5mm、発泡体層厚さ0.5mm)および発泡体層(厚さ3mm)を60mm×70mmの大きさにカットして試験片とし、これをロードセルの定盤に該試験片の測定対象面の反対面を両面テープ等を使用して固定させる。
2.引張試験機(商品名;AGS−5kND;島津製作所製)のチャックに取り付けられた530g、50φの荷重錘を前記試験片上面(測定対象面)に30秒載置する。
3.前記測定対象面に粘着状態となった荷重錘を引張スピード200mm/minで連続的に引き上げ、該測定対象面と荷重錘とが離れる際の荷重を粘着力とする。なお、前記荷重錘の荷重は、測定荷重より差し引くものとする。また本実施例における製造方法においては、得られる発泡体層には平滑性が高い表面(シート体側の面:表中では第1面と呼称する)と、他方の面との2つの表面(表中では第2面と呼称する)があるが、その双方について粘着力を測定した。なお、前記建築部材については、前記硬質塩ビシートからなる基材が積層されていない側の表面だけの測定となる。
・引張剪断接着力:JIS A 5536に準拠して測定した。前記粘着力は、密着性の強弱を示す指標であるが、これだけでは建築部材の評価として不充分であるため、該建築部材を床等に載置した際の横方向の動きの拘束性を考慮し、本指標が採用されている。具体的には、得られた建築部材を50mm×150mmの大きさにカットして試験片とし、荷重を3.5kgに設定して実施した。なお、この引張剪断断接着力は0.01N/mm2以上であれば、経験的に前記建築部材使用時の横方向の動きを抑制し得る。
【0044】
(結果)
得られた各測定結果等を上記表1に併記する。そして得られた結果より、主原料をなすラテックスゴムと、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムとの混合割合を80:20〜20:80の範囲(実施例1〜3)とすることで、良好な粘着力、すなわちアクリル樹脂から製造した粘着性シートの少なくとも90%程度の粘着力を発現しつつ、かつ該アクリル樹脂から製造した粘着性シートに較べて2.5〜4倍程度の引張強度を発現する発泡体層が得られることが確認された。殊に主原料をなすラテックスゴムと、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムとの混合割合が50:50の時に最も良好な粘着力を示し、また該両ラテックスゴムが夫々100%の時には粘着力が極めて低いことから、低い硬度の達成により発現する構造的な粘着効果と、変性ラテックスゴムの存在により発現される電荷的な粘着効果との双方のバランスが重要であることが示唆されている。更に第2面については、第1面の粘着力と較べて1/10の粘着力しか発現されておらず、ここから得られる発泡体層の表面平滑性も重要であることが確認された。
【0045】
また、建築部材として測定した粘着力についても、前記発泡体層の粘着力と同様の傾向が確認された。すなわち、主原料をなすラテックスゴムと、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムとの混合割合が50:50の時に最も良好な粘着力を示した。そして、前記引張剪断接着力についても同様の結果が確認され、主原料をなすラテックスゴムと、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムとの混合割合が本発明に係る範囲内である場合には、何れも0.01N/mm2以上の数値が得られた。なお、環境負荷物質の1つであるホルムアルデヒドについてはJIS A 6921に準拠した測定の結果、検出はされなかった。
【0046】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る建築部材およびその製造方法によれば、ガラス転移点が−30℃以上であり、カルボキシル化させた変性ラテックスゴムと、この変性ラテックスゴムを発泡化させ得る天然その他のラテックスゴムと、ゲル化剤、気泡安定剤その他所要の副原料とを混合したラテックスフォーム原料を架橋・硬化させるようしたので、該変性ラテックスゴムにより発現される電荷的な粘着効果と、建築部材が有する構造的な粘着効果とを併有して高い粘着効果を発現する建築部材を製造し得る。
【0047】
また、前記発泡体層を構成するラテックスフォームの製造に際して、ホルムアルデヒド等の環境負荷物質を使用することがないため、環境汚染や作業者への悪影響がない。更に前記ラテックスフォームが有する高い引張強度および圧縮永久歪み等の物性により、高い機械的強度および繰り返し使用性の双方を併有し、優れた再使用性を発揮する建築部材を製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る建築部材の表面部分を拡大して示す断面図である。
【図2】実施例に係る建築部材におけるセル径と、構造的な粘着効果との関係を示す概略図である。
【図3】実施例に係る建築部材の製造工程を示すフローチャート図である。
【図4】実施例に係る建築部材の製造装置の一例を示す概略図である。
【図5】別の実施例に係る建築部材の製造装置の一例を示す概略図である。
【図6】別の実施例に係る建築部材の製造装置において、シート体を使用した場合の製造装置の全体を示す概略図である。
【符号の説明】
12 基材
14 発泡体層
18 セル
22 ラテックスゴム
24 変性ラテックスゴム
M ラテックスフォーム原料
Claims (10)
- 所要の基材(12)と、該基材(12)に積層させた発泡体層(14)とからなる建築部材において、
前記発泡体層(14)は、ガラス転移点が−30℃以上であって、カルボキシル化させた変性ラテックスゴム(24)と、この変性ラテックスゴム(24)を発泡化させ得る天然その他のラテックスゴム(22)と、ゲル化剤、気泡安定剤その他所要の副原料とを混合したラテックスフォーム原料(M)を使用して得たラテックスフォームである
ことを特徴とする建築部材。 - 前記ラテックスゴム(22)とカルボキシル化させた変性ラテックスゴム(24)との混合割合は、重量比で80:20〜20:80の範囲に設定される請求項1記載の建築部材。
- 前記気泡安定剤の添加量は、前記ラテックスゴム(22)およびカルボキシル化させた変性ラテックスゴム(24)の混合物100重量部に対して、1.0〜5.0重量部の範囲に設定される請求項1または2記載の建築部材。
- 得られる発泡体層(14)におけるセル(18)の径は、500μm以下に設定される請求項1〜3の何れかに記載の建築部材。
- 前記ラテックスゴム(22)のガラス転移点は、−50〜20℃の範囲に設定される請求項1〜4の何れかに記載の建築部材。
- 基材(12)と、そのガラス転移点が−30℃以上であると共に、カルボキシル化させた変性ラテックスゴム(24)と、この変性ラテックスゴム(24)を発泡化させ得る天然その他のラテックスゴム(22)とを準備し、
前記ラテックスゴム(22)および変性ラテックスゴム(24)を混合し、
得られた混合ラテックスゴム100重量部に対し、気泡安定剤1.0〜5.0重量部および所要の副原料を混合して液状原料とし、
この液状原料100重量部に対し、ゲル化剤1〜10重量部および所定の気体を混合することでゲル化したラテックスフォーム原料(M)を得て、
前記ゲル化したラテックスフォーム原料(M)を加熱して架橋・硬化を進行させることで、前記基材(12)に対して積層させた発泡体層(14)を形成させるようにした
ことを特徴とする建築部材の製造方法。 - 前記ゲル化したラテックスフォーム原料(M)は、前記基材(12)上に供給された後に所定厚とされ、次いで加熱されることで該基材(12)に対して積層された発泡体層(14)とされる請求項6記載の建築部材の製造方法。
- 前記ゲル化したラテックスフォーム原料(M)は、所定のフィルム(37)上に供給された後に、所定厚とされると共にその上面に積層的に配置される前記基材(12)と共に加熱されて、該基材(12)に対して積層された発泡体層(14)とされる請求項6記載の建築部材の製造方法。
- 前記ラテックスゴム(22)と、カルボキシル化された変性ラテックスゴム(24)との混合は、剪断速度が10〜10000min−1となるように実施される請求項6〜8の何れかに記載の建築部材の製造方法。
- 前記ゲル化剤として、ケイフッ化ナトリウムの如きケイフッ化系物質が使用される請求項6〜9の何れかに記載の建築部材の製造方法。
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Cited By (3)
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JP2014234638A (ja) * | 2013-06-03 | 2014-12-15 | アキレス株式会社 | 充填用ウレタンボード |
JP2019116590A (ja) * | 2017-12-27 | 2019-07-18 | 株式会社イノアックコーポレーション | Sbrラテックスフォーム及びその製造方法 |
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-
2003
- 2003-06-05 JP JP2003161164A patent/JP2004358848A/ja active Pending
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