JP2004340420A - 冷蔵庫 - Google Patents
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Abstract
【課題】断熱性能が高くかつ取り扱い性に優れる断熱材を使用して、冷蔵庫内の簡易かつ優れた断熱を可能とする。
【解決手段】エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬して超臨界乾燥によりエアロゲルを生成せしめてなるエアロゲルと繊維構造物との複合体断熱材Aを、扉16内面などの冷蔵庫内の壁面に貼り付け、また、同断熱材Aを、収納容器30,32,34、ダクト28の壁面、ダンパ50および仕切壁54の内部又は表面に取り付け、あるいはまた、同断熱材Aを、扉周縁部のガスケット64の内部に装入する。
【選択図】 図1
【解決手段】エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬して超臨界乾燥によりエアロゲルを生成せしめてなるエアロゲルと繊維構造物との複合体断熱材Aを、扉16内面などの冷蔵庫内の壁面に貼り付け、また、同断熱材Aを、収納容器30,32,34、ダクト28の壁面、ダンパ50および仕切壁54の内部又は表面に取り付け、あるいはまた、同断熱材Aを、扉周縁部のガスケット64の内部に装入する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷蔵庫に関し、特にその断熱構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷蔵庫の断熱材としては、一般的には、ポリウレタンフォームが用いられている。ポリウレタンフォームは、冷蔵庫本体の外箱と内箱との間の空隙や、扉外側材と扉内側材との間の空隙に、発泡原液を注入して発泡させることで、これらの隙間を充填した状態に成形されるものであり、熱伝導率は0.020〜0.022W/m・K程度が一般的である。
【0003】
近年、地球温暖化問題や原油価格の上昇による電気代の上昇に伴って、冷蔵庫には製品としての消費電気量削減の要求が大きくなってきている。かかる要求に応えるために、例えば冷蔵庫本体の断熱層を厚くしたのでは、庫内の収容量が少なくなってしまうという問題がある。すなわち、特に家庭用の冷蔵庫では、限られた設置面積で、より大きな収容量が要求されており、冷蔵庫本体の断熱層を厚くしたのでは、この要求に応えることができない。そのため、冷蔵庫本体の断熱性を有効に補い、冷蔵庫全体としての消費電気量の削減に結びつく手法が求められる。
【0004】
また、従来、冷蔵庫内の断熱材としては発泡スチロールや発泡ポリエチレンなどの合成樹脂発泡成形体が用いられており、例えば冷気を送るダクトの壁面に取り付けて貯蔵室内との断熱を行っている。しかしながら、これら従来の断熱材は、断熱性が十分に高いとは言えず、そのため、断熱材の厚みが必要になって、その分貯蔵室内が狭くなってしまう。従って、冷蔵庫内の各部材に用いる断熱材としても、より断熱性能の高いものが求められる。
【0005】
ところで、従来より、熱伝導率の小さい材料として、シリカエアロゲルが知られており、断熱材としての使用が提案されている。例えば、下記特許文献1には、モノリシックシリカエアロゲル成形体を真空断熱材のコア材として使用することが開示されている。
【0006】
シリカエアロゲルは、極度に高い多孔性を持つ二酸化ケイ素のゲルであり、非常に軽量で低熱伝導による高い断熱性を示すものであるが、従来のものは非常に崩れやすく、取り扱いにくいものであった。そのため、冷蔵庫内の壁面や各部材に簡単に取付可能というものではなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平6−281089号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、断熱性能が高くかつ取り扱い性に優れる断熱材を使用して、庫内の簡易かつ優れた断熱を可能とし、消費電力量の大幅な削減に寄与することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の冷蔵庫は、エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬して超臨界乾燥によりエアロゲルを生成せしめてなるエアロゲルと繊維構造物との複合体断熱材を、冷蔵庫内の壁面に貼り付けたものである。
【0010】
本発明の第2の冷蔵庫は、上記複合体断熱材を、冷蔵庫内の収納容器、冷蔵庫内部のダクトの壁面及び/又は該ダクトを開閉するダンパ、あるいはまた、温度帯の異なる貯蔵室間を仕切る仕切体の内部又は表面に取り付けたものである。
【0011】
本発明の第3の冷蔵庫は、上記複合体断熱材を、冷蔵庫扉の周縁部に取り付けられて冷蔵庫本体との間をシールするガスケットの内部に装入したものである。
【0012】
これら本発明の冷蔵庫において、上記複合体断熱材は、エアロゲルを含むものであるため断熱性に優れるとともに、該エアロゲルが繊維構造物で補強されたものであるため取り扱い性にも優れ、従って冷蔵庫内の壁面や各部材に簡単に取り付けて優れた断熱性を発揮させることができ、消費電力量の削減に寄与することができる。
【0013】
そして、特に第1の冷蔵庫では、該複合体断熱材を冷蔵庫内の壁面に貼り付けたことにより、冷蔵庫本体の断熱性を有効に補うことができる。また、第2の冷蔵庫では、発泡スチロールなどの従来の断熱材を用いる場合に比べて薄いものでありながら高い断熱性能を発揮させることができ、貯蔵空間の拡大に寄与することができる。更に、第3の冷蔵庫では、ガスケットを介しての冷気漏れを大幅に削減することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の冷蔵庫において断熱材として使用する上記複合体断熱材は、エアロゲルと繊維構造物との複合体であり、エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬し、該繊維構造物の存在下で超臨界乾燥により前記エアロゲル前駆体からエアロゲルを生成させることにより得られるものである。
【0015】
エアロゲルは、微細な空孔を多数持つ極めて空隙率(好ましくは空隙率99%以上)の高い固体である。より詳細には、二酸化ケイ素などを数珠状に結合した構造を持ち、ナノメータレベル(例えば2〜50nm)の空隙を多数持つ物質である。このようにナノメータレベルの細孔と格子状構造を持つため、気体分子の平均自由行程を縮小することができ、常圧でも気体分子同士の熱伝導が非常に少なく、熱伝導率が非常に小さいものである。
【0016】
エアロゲルとしては、ケイ素、アルミニウム、鉄、銅、ジルコニウム、ハフニウム、マグネシウム、イットリウムなどの金属酸化物からなる無機エアロゲルの使用が好ましく、より好ましくは二酸化ケイ素からなるシリカエアロゲルである。
【0017】
繊維構造物は、エアロゲルを補強し、また支持するための補強材ないし支持体として作用するものであり、フレキシブルな複合体断熱材を得るためにフレキシブルな織布、編布、不織布などが用いられ、より好ましくはフェルト又はブランケット状のものが用いられる。繊維構造物の材質としては、ポリエステル繊維等の有機繊維の他、ガラス繊維などの無機繊維を用いることもできる。
【0018】
上記複合体断熱材は、無機エアロゲルの場合、次のようにして得ることができる。まず、テトラエトキシシランなどの金属アルコキシドを、有機溶媒、例えばアルコール(エタノール)に溶かし、アルコキシド−アルコール溶液を調製する。これに水を加えて金属アルコキシドを加水分解させて、金属ヒドロキシドを含んでなるエアロゲル前駆体を形成する。このエアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬し、各繊維の周りに液体状のエアロゲル前駆体が染み渡るようにする。その後、エアロゲル前駆体には縮合反応(金属ヒドロキシドが金属酸化物となる反応)が起こり、そして、超臨界乾燥することによりエアロゲルが形成される。超臨界乾燥は、例えばオートクレーブを用いて、圧力をかけた状態で上記溶媒の臨界点よりも高い温度に加熱することにより行うことができる。このようにして繊維構造物で補強されたエアロゲルからなる複合体断熱材、より詳細には繊維構造物を補強材として繊維の隙間にエアロゲルを充填してなるエアロゲルと繊維構造物との複合体断熱材が得られる。
【0019】
本発明においては、該エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬した後、十分な時間をかけて熟成させて上記縮合反応を完了させ、その後、超臨界乾燥してもよいが、より好ましくは、米国特許第6068882号公報に記載されているように、浸漬後、縮合反応が始まった段階で、かつ熟成する前に、浸漬した繊維構造物をオートクレーブに入れて、超臨界乾燥を行うことである。このように熟成させることなく超臨界乾燥を行うことにより、繊維−繊維間の接触がほとんどなく、各繊維間にエアロゲルが介在し、該エアロゲルを介して熱が伝達するような構造にすることができ、断熱性をより高めることができる。
【0020】
上記複合体断熱材の具体例としては、アスペンエアロジェル社の「スペースロフト AR3100」(商品名)や「パイロゲル AR3200」(商品名)などのガラス繊維やポリエステル繊維で補強されたシリカエアロゲルが好適なものとして挙げられる。これらの断熱材は、従来のポリウレタンフォームからなる断熱材の熱伝導率0.020〜0.022W/m・Kに対して、熱伝導率が0.010〜0.012W/m・Kと低く、優れた断熱性能を有する。
【0021】
以下に、該複合体断熱材の設置態様について説明する。
【0022】
上記複合体断熱材は、冷蔵庫本体を構成する内箱の庫内側面や、該本体の前面開口部を閉塞する扉の内側面のほか、冷蔵室、冷凍室及び野菜室などの貯蔵室の壁面など、冷蔵庫内の様々な壁面に貼り付けて断熱効果を発揮させることができる。なお、貼付方法は特に限定されず、両面テープを用いたり、各種接着剤を用いて貼り付けることができる。
【0023】
例えば、図1に示す冷蔵庫において、野菜室10、製氷室12及び冷凍室14の各扉16,18,20には、その扉内側面の略全域にシート状の上記複合体断熱材Aが貼付されており、扉の断熱性を該複合体断熱材Aにより補っている。これらの扉16,18,20は、冷蔵室22の扉24のようなヒンジ式ではなく、後方の収納容器を扉とともに引き出す引き出し式扉であるため、扉内側面は外観上の影響を与えず、そのため、かかる簡易な断熱性向上策が有効である。
【0024】
また、冷蔵庫本体26の内箱の庫内側壁面にもシート状の上記複合体断熱材Aが貼付されており、冷蔵庫本体26の断熱性向上を図っている。特に、図1では、ダクト28内の内箱壁面に貼付しているので、外観上の影響を与えずに冷蔵庫本体26の断熱性を向上することができる。
【0025】
上記複合体断熱材は、また、冷蔵庫内に配される各種のボックスやトレイなどの収納容器に取り付けて収納容器内の断熱を行うこともできる。
【0026】
例えば、図1に示す冷蔵庫において、製氷室12内の貯氷容器30および冷凍室14内の収納容器32,34には、その壁面にシート状の上記複合体断熱材Aが貼付されており、容器内を断熱している。貼付箇所は、例として容器の前面、底面及び左右両側面とすることができる。図2には、貯氷容器30における貼付例を示しており、容器の前面30a、底面30bおよび左右両側面30c,30dの各外表面に複合体断熱材Aが貼り付けられている。
【0027】
上記複合体断熱材は、また、冷蔵庫内部の冷気を送るダクトの壁面及び/又は該ダクトを開閉するダンパに取り付けて、ダクトとその周囲との断熱やダンパの前後の空間での断熱を行うこともできる。
【0028】
例えば、図1に示す冷蔵庫において、冷蔵室22の後方に設けられたダクト28には、その内壁面にシート状の上記複合体断熱材Aが貼付されている。詳細には、冷蔵室22の後面に設けられるダクト形成板36の背面に上記複合体断熱材Aが貼付されている。また、野菜室10の後方に設けられたダクト38の壁面にも上記複合体断熱材Aが貼付されている。詳細には、このダクト38内には蒸発器40が配されており、該ダクト38を形成する蒸発器カバー42に複合体断熱材Aが貼付されている。同様に、冷蔵室14の後方に設けられた蒸発器44を内部に備えるダクト46の壁面にも、上記複合体断熱材Aが貼付されている。
【0029】
図3は、ダクト28の途中に設けられた開口部48を開閉する板状のダンパ50にシート状の上記複合体断熱材Aを貼り付けた例を示しており、ダンパ50により開口部48を閉じた状態におけるダクト28前後での断熱を図っている。なお、符合52はダンパ50を駆動するモータを示している。
【0030】
上記複合体断熱材は、また、温度帯の異なる貯蔵室間を仕切る仕切体の内部又は表面に取り付けて、仕切体の断熱性能を向上することもできる。
【0031】
例えば、図1に示す冷蔵庫において、冷蔵空間である野菜室10とその下方の冷凍空間である製氷室12との間を仕切る仕切壁54の下面には、シート状の上記複合体断熱材Aが貼付されている。なお、このように仕切壁54の下面に貼り付ける代わりに、仕切壁54の内部に複合体断熱材Aを取り付けることもでき、その場合、仕切壁54内にポリウレタンフォームなどの合成樹脂フォームを発泡充填させる際に、発泡空間内に複合体断熱材Aを配置しておいて、一体に発泡成形することもできる。
【0032】
また、図1に示す冷蔵庫において、冷蔵室22の最下段には、他の空間よりも低温に設定されたチルド室などの低温空間56が設けられている。そして、この低温空間56を形成する天井板58の下面にシート状の上記複合体断熱材Aが貼付されており、上方空間との間で断熱を行っている。
【0033】
上記複合体断熱材は、また、冷蔵庫扉の周縁部に取り付けられて冷蔵庫本体との間をシールするガスケット(パッキン)の内部に装入して、ガスケットによるシール性を向上することもできる。
【0034】
図4はその一例を示したものであり、冷蔵庫本体60の前面開口を閉塞する扉62の周縁部には、軟質合成樹脂の押出成形品からなるガスケット64が全周にわたって取り付けられている。ガスケット64は、一般に、扉62の内側材66に設けられた溝68に嵌合される断面矢先状の取付部70と、冷蔵庫本体60に着磁するマグネット72を挿入するためのマグネット室74と、両者70,74を連結する中空部76とを備えてなる。本実施形態ではこの中空部76内に上記複合体断熱材Aを挿入・充填しており、複合体断熱材Aは上記のように優れた断熱性を持つため、ガスケット64によるシール性を大幅に向上することができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の冷蔵庫であると、冷蔵庫内の断熱材としてエアロゲルを繊維構造物で補強してなる複合体断熱材を用いるので、冷蔵庫内の壁面や各部材に簡単に取り付けて優れた断熱性を発揮させることができ、消費電力量の削減に寄与することができ、ひいては電気代の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷蔵庫の縦断面図である。
【図2】実施形態に係る貯氷容器の斜視図である。
【図3】実施形態に係るダンパの断面図である。
【図4】実施形態に係るガスケット周辺部の断面図である。
【符号の説明】
A……複合体断熱材
10……野菜室
12……製氷室
14……冷凍室
16……野菜室扉
18……製氷室扉
20……冷凍室扉
22……冷蔵室
26……冷蔵庫本体
28,38,46……ダクト
30,32,34……収納容器
50……ダンパ
54……仕切壁
56……低温空間
58……天井板(仕切体)
60……冷蔵庫本体
62……扉
64……ガスケット
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷蔵庫に関し、特にその断熱構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷蔵庫の断熱材としては、一般的には、ポリウレタンフォームが用いられている。ポリウレタンフォームは、冷蔵庫本体の外箱と内箱との間の空隙や、扉外側材と扉内側材との間の空隙に、発泡原液を注入して発泡させることで、これらの隙間を充填した状態に成形されるものであり、熱伝導率は0.020〜0.022W/m・K程度が一般的である。
【0003】
近年、地球温暖化問題や原油価格の上昇による電気代の上昇に伴って、冷蔵庫には製品としての消費電気量削減の要求が大きくなってきている。かかる要求に応えるために、例えば冷蔵庫本体の断熱層を厚くしたのでは、庫内の収容量が少なくなってしまうという問題がある。すなわち、特に家庭用の冷蔵庫では、限られた設置面積で、より大きな収容量が要求されており、冷蔵庫本体の断熱層を厚くしたのでは、この要求に応えることができない。そのため、冷蔵庫本体の断熱性を有効に補い、冷蔵庫全体としての消費電気量の削減に結びつく手法が求められる。
【0004】
また、従来、冷蔵庫内の断熱材としては発泡スチロールや発泡ポリエチレンなどの合成樹脂発泡成形体が用いられており、例えば冷気を送るダクトの壁面に取り付けて貯蔵室内との断熱を行っている。しかしながら、これら従来の断熱材は、断熱性が十分に高いとは言えず、そのため、断熱材の厚みが必要になって、その分貯蔵室内が狭くなってしまう。従って、冷蔵庫内の各部材に用いる断熱材としても、より断熱性能の高いものが求められる。
【0005】
ところで、従来より、熱伝導率の小さい材料として、シリカエアロゲルが知られており、断熱材としての使用が提案されている。例えば、下記特許文献1には、モノリシックシリカエアロゲル成形体を真空断熱材のコア材として使用することが開示されている。
【0006】
シリカエアロゲルは、極度に高い多孔性を持つ二酸化ケイ素のゲルであり、非常に軽量で低熱伝導による高い断熱性を示すものであるが、従来のものは非常に崩れやすく、取り扱いにくいものであった。そのため、冷蔵庫内の壁面や各部材に簡単に取付可能というものではなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平6−281089号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、断熱性能が高くかつ取り扱い性に優れる断熱材を使用して、庫内の簡易かつ優れた断熱を可能とし、消費電力量の大幅な削減に寄与することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の冷蔵庫は、エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬して超臨界乾燥によりエアロゲルを生成せしめてなるエアロゲルと繊維構造物との複合体断熱材を、冷蔵庫内の壁面に貼り付けたものである。
【0010】
本発明の第2の冷蔵庫は、上記複合体断熱材を、冷蔵庫内の収納容器、冷蔵庫内部のダクトの壁面及び/又は該ダクトを開閉するダンパ、あるいはまた、温度帯の異なる貯蔵室間を仕切る仕切体の内部又は表面に取り付けたものである。
【0011】
本発明の第3の冷蔵庫は、上記複合体断熱材を、冷蔵庫扉の周縁部に取り付けられて冷蔵庫本体との間をシールするガスケットの内部に装入したものである。
【0012】
これら本発明の冷蔵庫において、上記複合体断熱材は、エアロゲルを含むものであるため断熱性に優れるとともに、該エアロゲルが繊維構造物で補強されたものであるため取り扱い性にも優れ、従って冷蔵庫内の壁面や各部材に簡単に取り付けて優れた断熱性を発揮させることができ、消費電力量の削減に寄与することができる。
【0013】
そして、特に第1の冷蔵庫では、該複合体断熱材を冷蔵庫内の壁面に貼り付けたことにより、冷蔵庫本体の断熱性を有効に補うことができる。また、第2の冷蔵庫では、発泡スチロールなどの従来の断熱材を用いる場合に比べて薄いものでありながら高い断熱性能を発揮させることができ、貯蔵空間の拡大に寄与することができる。更に、第3の冷蔵庫では、ガスケットを介しての冷気漏れを大幅に削減することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の冷蔵庫において断熱材として使用する上記複合体断熱材は、エアロゲルと繊維構造物との複合体であり、エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬し、該繊維構造物の存在下で超臨界乾燥により前記エアロゲル前駆体からエアロゲルを生成させることにより得られるものである。
【0015】
エアロゲルは、微細な空孔を多数持つ極めて空隙率(好ましくは空隙率99%以上)の高い固体である。より詳細には、二酸化ケイ素などを数珠状に結合した構造を持ち、ナノメータレベル(例えば2〜50nm)の空隙を多数持つ物質である。このようにナノメータレベルの細孔と格子状構造を持つため、気体分子の平均自由行程を縮小することができ、常圧でも気体分子同士の熱伝導が非常に少なく、熱伝導率が非常に小さいものである。
【0016】
エアロゲルとしては、ケイ素、アルミニウム、鉄、銅、ジルコニウム、ハフニウム、マグネシウム、イットリウムなどの金属酸化物からなる無機エアロゲルの使用が好ましく、より好ましくは二酸化ケイ素からなるシリカエアロゲルである。
【0017】
繊維構造物は、エアロゲルを補強し、また支持するための補強材ないし支持体として作用するものであり、フレキシブルな複合体断熱材を得るためにフレキシブルな織布、編布、不織布などが用いられ、より好ましくはフェルト又はブランケット状のものが用いられる。繊維構造物の材質としては、ポリエステル繊維等の有機繊維の他、ガラス繊維などの無機繊維を用いることもできる。
【0018】
上記複合体断熱材は、無機エアロゲルの場合、次のようにして得ることができる。まず、テトラエトキシシランなどの金属アルコキシドを、有機溶媒、例えばアルコール(エタノール)に溶かし、アルコキシド−アルコール溶液を調製する。これに水を加えて金属アルコキシドを加水分解させて、金属ヒドロキシドを含んでなるエアロゲル前駆体を形成する。このエアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬し、各繊維の周りに液体状のエアロゲル前駆体が染み渡るようにする。その後、エアロゲル前駆体には縮合反応(金属ヒドロキシドが金属酸化物となる反応)が起こり、そして、超臨界乾燥することによりエアロゲルが形成される。超臨界乾燥は、例えばオートクレーブを用いて、圧力をかけた状態で上記溶媒の臨界点よりも高い温度に加熱することにより行うことができる。このようにして繊維構造物で補強されたエアロゲルからなる複合体断熱材、より詳細には繊維構造物を補強材として繊維の隙間にエアロゲルを充填してなるエアロゲルと繊維構造物との複合体断熱材が得られる。
【0019】
本発明においては、該エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬した後、十分な時間をかけて熟成させて上記縮合反応を完了させ、その後、超臨界乾燥してもよいが、より好ましくは、米国特許第6068882号公報に記載されているように、浸漬後、縮合反応が始まった段階で、かつ熟成する前に、浸漬した繊維構造物をオートクレーブに入れて、超臨界乾燥を行うことである。このように熟成させることなく超臨界乾燥を行うことにより、繊維−繊維間の接触がほとんどなく、各繊維間にエアロゲルが介在し、該エアロゲルを介して熱が伝達するような構造にすることができ、断熱性をより高めることができる。
【0020】
上記複合体断熱材の具体例としては、アスペンエアロジェル社の「スペースロフト AR3100」(商品名)や「パイロゲル AR3200」(商品名)などのガラス繊維やポリエステル繊維で補強されたシリカエアロゲルが好適なものとして挙げられる。これらの断熱材は、従来のポリウレタンフォームからなる断熱材の熱伝導率0.020〜0.022W/m・Kに対して、熱伝導率が0.010〜0.012W/m・Kと低く、優れた断熱性能を有する。
【0021】
以下に、該複合体断熱材の設置態様について説明する。
【0022】
上記複合体断熱材は、冷蔵庫本体を構成する内箱の庫内側面や、該本体の前面開口部を閉塞する扉の内側面のほか、冷蔵室、冷凍室及び野菜室などの貯蔵室の壁面など、冷蔵庫内の様々な壁面に貼り付けて断熱効果を発揮させることができる。なお、貼付方法は特に限定されず、両面テープを用いたり、各種接着剤を用いて貼り付けることができる。
【0023】
例えば、図1に示す冷蔵庫において、野菜室10、製氷室12及び冷凍室14の各扉16,18,20には、その扉内側面の略全域にシート状の上記複合体断熱材Aが貼付されており、扉の断熱性を該複合体断熱材Aにより補っている。これらの扉16,18,20は、冷蔵室22の扉24のようなヒンジ式ではなく、後方の収納容器を扉とともに引き出す引き出し式扉であるため、扉内側面は外観上の影響を与えず、そのため、かかる簡易な断熱性向上策が有効である。
【0024】
また、冷蔵庫本体26の内箱の庫内側壁面にもシート状の上記複合体断熱材Aが貼付されており、冷蔵庫本体26の断熱性向上を図っている。特に、図1では、ダクト28内の内箱壁面に貼付しているので、外観上の影響を与えずに冷蔵庫本体26の断熱性を向上することができる。
【0025】
上記複合体断熱材は、また、冷蔵庫内に配される各種のボックスやトレイなどの収納容器に取り付けて収納容器内の断熱を行うこともできる。
【0026】
例えば、図1に示す冷蔵庫において、製氷室12内の貯氷容器30および冷凍室14内の収納容器32,34には、その壁面にシート状の上記複合体断熱材Aが貼付されており、容器内を断熱している。貼付箇所は、例として容器の前面、底面及び左右両側面とすることができる。図2には、貯氷容器30における貼付例を示しており、容器の前面30a、底面30bおよび左右両側面30c,30dの各外表面に複合体断熱材Aが貼り付けられている。
【0027】
上記複合体断熱材は、また、冷蔵庫内部の冷気を送るダクトの壁面及び/又は該ダクトを開閉するダンパに取り付けて、ダクトとその周囲との断熱やダンパの前後の空間での断熱を行うこともできる。
【0028】
例えば、図1に示す冷蔵庫において、冷蔵室22の後方に設けられたダクト28には、その内壁面にシート状の上記複合体断熱材Aが貼付されている。詳細には、冷蔵室22の後面に設けられるダクト形成板36の背面に上記複合体断熱材Aが貼付されている。また、野菜室10の後方に設けられたダクト38の壁面にも上記複合体断熱材Aが貼付されている。詳細には、このダクト38内には蒸発器40が配されており、該ダクト38を形成する蒸発器カバー42に複合体断熱材Aが貼付されている。同様に、冷蔵室14の後方に設けられた蒸発器44を内部に備えるダクト46の壁面にも、上記複合体断熱材Aが貼付されている。
【0029】
図3は、ダクト28の途中に設けられた開口部48を開閉する板状のダンパ50にシート状の上記複合体断熱材Aを貼り付けた例を示しており、ダンパ50により開口部48を閉じた状態におけるダクト28前後での断熱を図っている。なお、符合52はダンパ50を駆動するモータを示している。
【0030】
上記複合体断熱材は、また、温度帯の異なる貯蔵室間を仕切る仕切体の内部又は表面に取り付けて、仕切体の断熱性能を向上することもできる。
【0031】
例えば、図1に示す冷蔵庫において、冷蔵空間である野菜室10とその下方の冷凍空間である製氷室12との間を仕切る仕切壁54の下面には、シート状の上記複合体断熱材Aが貼付されている。なお、このように仕切壁54の下面に貼り付ける代わりに、仕切壁54の内部に複合体断熱材Aを取り付けることもでき、その場合、仕切壁54内にポリウレタンフォームなどの合成樹脂フォームを発泡充填させる際に、発泡空間内に複合体断熱材Aを配置しておいて、一体に発泡成形することもできる。
【0032】
また、図1に示す冷蔵庫において、冷蔵室22の最下段には、他の空間よりも低温に設定されたチルド室などの低温空間56が設けられている。そして、この低温空間56を形成する天井板58の下面にシート状の上記複合体断熱材Aが貼付されており、上方空間との間で断熱を行っている。
【0033】
上記複合体断熱材は、また、冷蔵庫扉の周縁部に取り付けられて冷蔵庫本体との間をシールするガスケット(パッキン)の内部に装入して、ガスケットによるシール性を向上することもできる。
【0034】
図4はその一例を示したものであり、冷蔵庫本体60の前面開口を閉塞する扉62の周縁部には、軟質合成樹脂の押出成形品からなるガスケット64が全周にわたって取り付けられている。ガスケット64は、一般に、扉62の内側材66に設けられた溝68に嵌合される断面矢先状の取付部70と、冷蔵庫本体60に着磁するマグネット72を挿入するためのマグネット室74と、両者70,74を連結する中空部76とを備えてなる。本実施形態ではこの中空部76内に上記複合体断熱材Aを挿入・充填しており、複合体断熱材Aは上記のように優れた断熱性を持つため、ガスケット64によるシール性を大幅に向上することができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の冷蔵庫であると、冷蔵庫内の断熱材としてエアロゲルを繊維構造物で補強してなる複合体断熱材を用いるので、冷蔵庫内の壁面や各部材に簡単に取り付けて優れた断熱性を発揮させることができ、消費電力量の削減に寄与することができ、ひいては電気代の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷蔵庫の縦断面図である。
【図2】実施形態に係る貯氷容器の斜視図である。
【図3】実施形態に係るダンパの断面図である。
【図4】実施形態に係るガスケット周辺部の断面図である。
【符号の説明】
A……複合体断熱材
10……野菜室
12……製氷室
14……冷凍室
16……野菜室扉
18……製氷室扉
20……冷凍室扉
22……冷蔵室
26……冷蔵庫本体
28,38,46……ダクト
30,32,34……収納容器
50……ダンパ
54……仕切壁
56……低温空間
58……天井板(仕切体)
60……冷蔵庫本体
62……扉
64……ガスケット
Claims (5)
- エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬して超臨界乾燥によりエアロゲルを生成せしめてなるエアロゲルと繊維構造物との複合体断熱材を、冷蔵庫内の壁面に貼り付けたことを特徴とする冷蔵庫。
- エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬して超臨界乾燥によりエアロゲルを生成せしめてなるエアロゲルと繊維構造物との複合体断熱材を、冷蔵庫内の収納容器に取り付けたことを特徴とする冷蔵庫。
- エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬して超臨界乾燥によりエアロゲルを生成せしめてなるエアロゲルと繊維構造物との複合体断熱材を、冷蔵庫内部のダクトの壁面及び/又は該ダクトを開閉するダンパに取り付けたことを特徴とする冷蔵庫。
- エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬して超臨界乾燥によりエアロゲルを生成せしめてなるエアロゲルと繊維構造物との複合体断熱材を、温度帯の異なる貯蔵室間を仕切る仕切体の内部又は表面に取り付けたことを特徴とする冷蔵庫。
- エアロゲル前駆体に繊維構造物を浸漬して超臨界乾燥によりエアロゲルを生成せしめてなるエアロゲルと繊維構造物との複合体断熱材を、冷蔵庫扉の周縁部に取り付けられて冷蔵庫本体との間をシールするガスケットの内部に装入したことを特徴とする冷蔵庫。
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