JP2004325952A - 透光性薄膜およびその製造方法 - Google Patents

透光性薄膜およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ゾルゲル法あるいはスパッタリング法で得られる二酸化珪素膜の屈折率は、基板に用いるガラス板や樹脂等の屈折率よりも小さく、光の干渉作用によって反射色調や透過色調に変化が生じるという問題が生じた。さらに、二酸化珪素膜の上に、高屈折率の膜を積層すると、反射率が高くなってしまうという問題も生じた
【解決手段】二酸化珪素膜がアルゴンを含有し、含有されるアルゴンの量が、原子の数の比で、珪素の100に対してアルゴンの1〜10である、二酸化珪素膜を、圧力勾配型プラズマガンを用いたアークプラズマ蒸着法で成膜する
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラットパネルディスプレイ、電子デバイス、光学素子などに用いられる基体に塗布される二酸化珪素でなる透光性薄膜に関し、特に、基体の表面の特性改質膜、パッシベーション膜、ガスバリア膜として用いられる透光性薄膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
汎用タイプの液晶素子の基体として、従来からソーダライムガラスが多用されている。ソーダライムガラスを基体に用いると、ガラスに含まれるナトリウムが、ガラス表面から素子の中に拡散し、素子の性能や機能等を劣化させることがあった。このためソーダライムガラスの表面に、ゾルゲル法やスパッタ法で二酸化珪素膜をパシベーション膜としてコーティングし、ナトリウムイオンの拡散を防止していた(非特許文献1)。
【0003】
例えば、特許文献1では、基板表面にゾルゲル法による二酸化珪素膜を形成して、基板表面の欠陥や平滑性を改善している。
【0004】
また、スパッタリング法によってガラス板の表面に二酸化珪素膜を成膜して、ガラスからアルカリイオンが拡散することのない基板(特許文献2)や、同じくスパッタリング法によって、高分子フィルム基板に酸化珪素膜を成膜したガスバリア性高分子フィルムが知られている(特許文献3)。
【0005】
さらに、特許文献4には、酸化珪素薄膜が成膜された高分子フィルムを用いて、水蒸気の遮断性能の良い透明導電性積層体が記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−262584号報
【特許文献2】
特開2001−89843号公報
【特許文献3】
特開平6−192829号公報
【特許文献4】
特開平10−24520号公報
【非特許文献1】
内田龍男、内池平樹監修、“フラットパネルディスプレイ大事典”、工業調査会(2001)p104
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ゾルゲル法で成膜した二酸化珪素膜は、化学的耐久性、特に耐アルカリ性が乏しく、高濃度のアルカリ溶液、あるいはアルカリ性の強い洗剤で洗浄する工程を必要とするものには用いることができない。
【0008】
また、ゾルゲル法で得られる二酸化珪素膜の屈折率(約1.45)、あるいはスパッタリング法で得られる二酸化珪素膜の屈折率(約1.48)は、ポリエチレン系の樹脂の屈折率(1.50〜1.54)、あるいはガラス板の屈折率(1.52)よりも小さく、光の干渉作用によって反射色調や透過色調が変化するという問題が生じた。さらに、二酸化珪素膜の上に、高屈折率の膜を積層すると、反射率が高くなってしまうという問題も生じた。
【0009】
本発明の透光性薄膜は、上記事情に鑑み、フラットパネルディスプレイ、光学素子などに用いられる基体に対して、表面の特性改質膜、パッシベーション膜、ガスバリア膜などの目的に用いることのできる、光学的な変化を生じない透光性薄膜およびその成膜方法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の透光性薄膜は、基体の表面に成膜される二酸化珪素膜でなる透光性薄膜において、二酸化珪素膜がアルゴンを含有し、含有されるアルゴンの量が、原子の数の比で、珪素の100に対してアルゴンの1〜10であり、二酸化珪素膜の屈折率が1.50〜1.53であることを特徴とする透光性薄膜である。
【0011】
また、本発明の透光性薄膜は、前記透光性薄膜において、可視光透過率が80%以上であることを特徴とする透光性薄膜である。
【0012】
また、本発明の透光性薄膜は、前記透光性薄膜において、In、Al、Zr、Zn、Sn、Ti、Taのうちから選ばれる1種以上の元素が添加され、添加する量が、原子の数の比で、珪素の100に対して、添加する元素の、原子の数の合計が5未満であることを特徴とする透光性薄膜である。
【0013】
さらに、本発明の透光性薄膜の形成方法は、圧力勾配型プラズマガンを用いたアークプラズマ蒸着法で成膜することを特徴とする前記透光性薄膜の形成方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1に示すように、本発明の透光性薄膜1は、基体2の表面に成膜される二酸化珪素膜であり、該二酸化珪素膜はアルゴンを含有するものである。
【0015】
アルゴンの含有量は、原子の数の比で、珪素の100に対してアルゴンの1〜10とするのが望ましい。アルゴンの含有量が、原子の数の比で、珪素の100に対して1未満であると、屈折率は1.48以下となり、所望の屈折率である1.50〜1.53とならず、また、膜の化学的耐久性が十分なものとならない。一方、アルゴンの含有量が珪素の100に対して10を超えると、膜はポーラスになり、化学的耐久性能が低下するとともに、基体との密着性が低下し、膜が剥がれやすくなる。
【0016】
さらにまた、本発明の透光性薄膜は、化学的耐久性能のさらなる向上や、屈折率を制御して透光を向上する等の目的として、原子の網目構造の複雑化、緻密化を行うため、Si以外の金属であるIn、Al、Zr、Zn、Sn、Ti、Taのうち、1種以上の元素を添加することが好ましい。添加する元素の量は、原子の数の比で、珪素を100として、添加する元素の、原子の数の合計が5以下とすることが好ましい。添加する元素の、原子の数の合計とは、例えば、添加する元素がInとAlである場合、Inの原子の数とAlの原子の数との合計である。
【0017】
このような、ごく微量のIn、Al、Zr、Zn、Sn、Ti、Taの添加は、透光性薄膜の化学的耐久性を向上させるとともに、屈折率を調整することができ、また、基体の表面や、本透光性薄膜の下地として基体の表面に成膜されている膜や、電子素子等との密着性をよくすることに役立つ。
【0018】
本発明の透光性薄膜は、図1に示すように、基体の一つの表面のみに成膜して十分特性改善を有するが、用途によっては、基体の両面に成膜をしてもよい。
【0019】
本発明の透光性薄膜を成膜する基体には、特に制限するものではないが、ガラスであれば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、低アルカリガラス、高歪点ガラスが使用できる。また、プラスチック樹脂であれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレートの他にも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、および、これらの延伸フィルム、板材が使用出来る。これらの基体に用いるプラスチック樹脂の表面を、コロナ放電処理、アンカーコーティング処理、平滑化処理したものでも良い。
【0020】
また、本発明による透光性薄膜を成膜する基体には、ガラス、プラスチック樹脂の他に、ガラス、セラミックスや金属の上に各種有機物(モノマー、高分子)を塗布したものや、電子デバイス関連素子を成膜したものでも良い。
【0021】
本発明の透光性薄膜は、圧力勾配型ホロカソードプラズマガンを用いたアークプラズマ蒸着法を用いて、基体の表面に成膜することが好ましい。該アークプラズマ蒸着法は、例えば、図2に概略を示す成膜装置を用いる。該アークプラズマ蒸着法は、イオンプレーティングの1種であり、特開平9−194232号公報や特開平11−269636号公報に開示されている成膜方法である。
【0022】
透光性薄膜を成膜する膜厚は、厚膜化による膜応力の増加や生産コストを考慮すると2μm以下とすることが好ましく、より好ましく500nm以下とする。ただし、多少の膜厚ムラがあっても、基体との屈折率差が少ない場合には干渉による色調変化は生じないために、外観上の変化は生じない。通常、透光性薄膜を形成する際には、膜厚を30〜500nmとすることが望ましい。本発明の透光性薄膜を、パッシベーション膜あるいは表面改質膜として用いる場合は、30nm以上とすることが好ましいが、ガスバリア膜として用いるには、100nm以上とすることが望ましい。
【0023】
In、Al、Zr、Zn、Sn、Ti、Ta等の金属を微量添加する場合には、可視光透過率が80%以上を満足させるように、添加量を調整する必要がある。
【0024】
図2に示す成膜装置は、真空チャンバー3と、真空チャンバー3の側壁に取り付けられた圧力勾配型プラズマガン4と、真空チャンバー3内の底部に配置したルツボ5と、真空チャンバー3内の上部に配置した基体支持ホルダー6によって構成されている。
【0025】
ルツボ5は、窒化ケイ素製やカーボン製のものを使用することが望ましい。
【0026】
圧力勾配型プラズマガン4には、圧力勾配型ホロカソードプラズマガンを用いることが望ましい。圧力勾配型プラズマガン4は、Ta製のパイプ7とLaB製の円盤8とで構成された複合陰極であり、Ta製のパイプ7の内部にArガスを導入した際に加熱されたTa、LaBから熱電子が放出され、プラズマビーム9を形成する。圧力勾配型プラズマガン4の内部は、真空チャンバー3より常に圧力が高く保たれており、高温に曝されたTaやLaBが酸素などの反応性ガスによって劣化することを防ぐ構造になっている。
【0027】
基体支持ホルダー6は、モーターにより回転する機構になっている。また、基体支持ホルダー6の上部には、基体加熱用ヒーター10と温度計11が配置されている。基体加熱用ヒーター10は、成膜する基体19を所定温度に保持するために設けられるもので、温度計11の測定値をもとに基体加熱ヒーター10の出力を制御している。また、真空チャンバー3の側壁には、ガス供給ノズル12が配置されており、このガス供給ノズル12には、図示しないマスフローコントローラを介して酸素ガス13が必要に応じて供給される。また、真空チャンバー3はコンダクタンスバルブ14を介して真空排気装置15に接続されており、真空チャンバー3に取り付けられた真空計16の測定値をもとに、コンダクタンスバルブ14の開度を調整して真空チャンバー3内が所定の圧力(真空度)に維持されるようになっている。
【0028】
電気的に絶縁性の高い原料を透光性薄膜の成膜に用いるときには、圧力勾配型プラズマガン4の近傍に設けた反射電子帰還電極17を使用して、真空チャンバー3中の電子を捕獲し、長時間安定して成膜できる。
【0029】
図2に示す成膜装置を用いて、次の手順で本発明の透光性薄膜を基体に成膜する。
【0030】
窒化珪素あるいはカーボンで製造されたルツボ5に、粒状の蒸発原料18を充填し、蒸発原料18が充填されたルツボ5を真空チャンバー3の底部にセットする。蒸発原料18は、ルツボに入れるため粒状であることが好ましいが、その形状を特に限定するものではない。
【0031】
蒸発原料18を成膜する基体2を基体支持ホルダー6に取り付け、真空チャンバー3内を約10−4Paに排気する。排気後、図示しないマスフローコントローラーを用いて流量を制御(10〜40sccm)した放電用Arガス20を、圧力勾配型プラズマガン4を通して真空チャンバー3内に供給する。
【0032】
次に、酸素ガス13をガス供給ノズル12から真空チャンバー3内に供給するとともに、真空排気装置15と真空チャンバー3との間に配置されたコンダクタンスバルブ14の開口の程度を調整して、真空チャンバー3内を約0.1Paの圧力に調整する。これらの反応ガス13は、図示しないマスフローコントローラーにより流量を制御する。流量は、膜組成、成膜速度、圧力勾配型プラズマガン4の出力、真空度、基体の温度、および放電圧力によって決定する。
【0033】
次に、圧力勾配型プラズマガン4を作動させ、プラズマビーム9をルツボ5内の蒸発原料18に収束させ、蒸発原料18が蒸発する温度に蒸発原料18を加熱する。プラズマビーム9をルツボ5中の蒸発原料18に集束させるために、集束コイル21や磁石22などを使用する。
【0034】
プラズマビーム9によって加熱・蒸発した蒸発原料と導入された反応ガスは、プラズマ雰囲気23によってイオン化される。イオン化したこれらの物質は、雰囲気中のプラズマのもつプラズマポテンシャルと、基体のもつフローティングポテンシャルとの電位差によって基体に向かって加速され、粒子は約20eVという大きなエネルギーをもって基体2の下表面に到達・堆積し、非常に緻密な本発明の透光性薄膜が成膜される。
【0035】
本発明の透光性薄膜をアークプラズマ蒸着法で成膜する際、蒸発原料18にSiOx(0≦x≦2)を用いる。蒸発時の蒸気圧および蒸発の安定性から、好ましくはSiO、SiOが良い。このうちSiOは最も安価で、かつ最も扱いやすい材料である。
【0036】
原料は、粉体状、粒状、ブロック状のいずれの形態でも使用出来る。酸素源としてもちいる酸素系ガスにはOが望ましいが、Oでもよい。また、原料にSiOを用いるときには、酸素系ガスを必ず必要とするものではない。
【0037】
本発明の透光性透光性薄膜に用いる、Si以外の金属(In、Al、Zr、Zn、Sn、Ti、Ta)の蒸発原料18には、金属、酸化物または2種以上の金属からなる複酸化物が使用出来る。これらの金属や化合物を蒸発原料18として使用する場合には、蒸気圧や蒸発速度を十分に考慮する必要がある。
【0038】
【実施例】
以下に本発明の実施例を述べるが、本発明は、以下の実施例に限定するものではない。
【0039】
実施例1
本発明の透光性薄膜を、図2に示す成膜装置を用い、次に示す手順で基体に成膜した。
【0040】
蒸発原料18には、高純度化学製のSiO2粉粒体を使用した。これを、窒化ケイ素製のルツボ5に充填し、真空チャンバー3の底の、所定の位置に設置した。
【0041】
30cm角に切り出したソーダライムガラス(厚さ1.1mm)を純水中で超音波洗浄し、さらに、純水で十分にすすいだ後、乾燥して表面を清浄にして、基体19に用いた。
【0042】
このソーダライムガラスを真空チャンバー3内の基体支持ホルダー6に設置した。
【0043】
この後、真空チャンバー3内の圧力が1.0×10−4Paに達するまで、約2時間、真空排気装置15で排気した。なお、この排気中に、基体19は50℃に加熱した。
【0044】
圧力勾配型プラズマガン4に20sccmのアルゴンガスを流し、さらに、酸素ガスを50sccm流した。次に圧力勾配型プラズマガン4の出力が10kWになるまで徐々に電力を印可し、圧力勾配型プラズマガン4からプラズマビームを発生させて原料に照射し、原料を加熱して蒸発させた。なお、圧力勾配型プラズマガン4には、圧力勾配型ホロカソードプラズマガンを用いた。
【0045】
このとき、また、真空チャンバー3内の圧力が0.15Paとなるように真空排気装置10の排気を制御した。
【0046】
放電、圧力、原料の蒸発が安定した後、シャッターを20秒間開け、ガラス基板上に膜を成膜した。
【0047】
得られた膜の厚さは150nmであり、7.5nm・s−1という著しく早い成膜速度で成膜できた。また、二酸化珪素膜のSiとOの元素成分比をオージェ分光分析法で定量した結果、原子の数の比は、おおよそSi:O=1:2であった。同様に、二酸化珪素膜中のArの有無を蛍光X分析により確認した結果、膜の中にはArが存在していることがわかった。金属を基体にして同じ条件で膜を成膜し、膜中のSiとOの元素成分比を調べたところ、原子の数の比で、Si:Ar=100:2であった。
【0048】
得られた膜つきガラスの概観は、膜をつけないものとまったく変わりがなかった。分光特性から求めた波長550nmでの膜の屈折率は1.518で、通常、真空法で得られる二酸化珪素膜の屈折率(1.48)に比べて、大きい値を示した。また、消衰係数は0でまったく吸収のない膜であった。この膜つきガラスの透過率であるが、可視光線透過率91.5%と極めて透光性を示した。また、ガラス基板のみの透過率と同じ値であった。また、本実施例の二酸化珪素膜をガラスの両面に形成し、この両面に通常のガラス基板上に適用する2層系の低反射膜(ガラス側から、一層目の屈折率n=1.79(膜厚77nm)、2層目の屈折率n=1.45(膜厚95nm))を積層したところ、可視光反射率で、0.7%という低い反射率を示した。
【0049】
得られた透光性薄膜つきガラスの化学的耐久性は、次のように評価した。耐酸性は弗硝酸水溶液(水:55%弗酸:60%硝酸=120:3:2(重量比))によるエッチング速度を、また、耐アルカリ性は30%NaOH水溶液中でのエッチング速度を測定した。結果を表1に示す。ゾルゲル法で成膜した、比較例3の二酸化珪素膜と比較して、本実施例の膜では、酸性水溶液に対するエッチング速度は0.4倍、アルカリ水溶液に対するエッチング速度は0.5倍であり、いずれも比較例3のゾルゲル法で成膜した二酸化珪素膜よりも良好な化学的耐久性を示した。また、本実施例の透光性薄膜は、テープ剥離試験でも膜の脱落がなく、非常に強固に基体19と密着していた。
【0050】
実施例2
実施例1で使用した装置、基体、蒸発原料と同じものを使用した。基体のソーダライムガラスを洗浄し、ついで真空チャンバー3中にセットして真空引きするとともに、基体加熱ヒーター10を作動させて100℃に加熱した。圧力勾配型プラズマガン4の出力を12kWとし、酸素ガスを30sccm流し、真空チャンバー3内の圧力を0.1Paとして40秒間、基体19上に膜を成膜した。
【0051】
得られた二酸化珪素膜の厚さは380nmであり、原子の数の比は、おおよそ、Si:O=1:2、かつSi:Ar=100:3の、アルゴンを微量に含む二酸化珪素の膜であった。
【0052】
得られた膜つきガラスの概観は膜をつけないものとまったく変わりがなかく、分光特性から求めた波長550nmでの膜の屈折率は1.528で、膜の消衰係数は0、可視光線透過率は92%であった。実施例1と同様に、この膜をガラス基板の両面に成膜した上に、通常のガラス基板上に適用する2層系の低反射膜を両面に成膜したところ、可視光反射率で、0.8%という低い反射率を示した。
【0053】
実施例1と同様に、化学的耐久性を評価した。結果を表1に示す。比較例3のゾルゲル法で成膜した二酸化珪素膜と比較して、本実施例の膜では、酸性水溶液に対するエッチング速度は0.2倍、アルカリ水溶液に対するエッチング速度は0.5倍と、いずれも比較例3のゾルゲル法で成膜した二酸化珪素膜よりも良好な化学的耐久性を示した。また、本実施例の透光性薄膜は、テープ剥離試験でも膜の脱落がなく、非常に強固に基体19と密着していた。
【0054】
比較例1
実施例1で使用した装置で、実施例1と同じ基体19を用いた。成膜圧力を0.5Paとする以外、実施例1と同じ条件で原料を蒸発させ、60秒間成膜した。
【0055】
得られた膜の厚さは280nmであり、膜の組成を分析した結果、原子の数の比で、Si:O=1:2の元素成分比を持っていたが、膜中にアルゴンは存在しなかった。分光特性から求めた波長550nmでの膜の屈折率は1.475で、膜の消衰係数は0であり、透過率は1と高い値を示したものの、わずかに褐色の干渉色が観察された。
【0056】
この膜の上に実施例1と同じ2層系の低反射膜を積層したところ、可視光反射率が1.2%という値を示し、反射率が1%を越えて、実施例1に比較し、良好な低反射特性が得られなかった。
【0057】
実施例1と同様に、化学的耐久性を評価した結果を表1に示す。比較例3のゾルゲル法で成膜した二酸化珪素膜と比較して、本比較例の膜では、酸性水溶液に対するエッチング速度は0.6倍、アルカリ水溶液に対するエッチング速度は0.7倍と、いずれもゾルゲル法で成膜した比較例3の二酸化珪素膜より良かったが、実施例1および実施例2の二酸化珪素膜よりも劣るものであった。
【0058】
比較例2
実施例1と同様に、30cm角に切り出したソーダライムガラスの両面を洗浄した。成膜はシリコンをターゲットとし、雰囲気を酸素ガスとした反応性スパッタ法で行った。先に洗浄した基体をチャンバー内に取り付け、1×10−4Paまで真空引きしてチャンバー内のアウトガスを除去した。基体とターゲット間の距離を10cmとし、基体を5rpmの速度で回転させた。酸素ガスを導入後、圧力を1Paに調整した後に、RF出力を1kW印加してプラズマを発生させ、30分間成膜した。なお、成膜時に基体は50℃に加熱した。
【0059】
得られた二酸化珪素膜の膜厚は250nmであった。膜の組成を分析した結果、原子の数の比で、Si:O=1:2の元素成分比を持っており、膜中にアルゴンは存在しなかった。分光特性から求めた波長550nmでの膜の屈折率は1.470で、膜の消衰係数は0であり、褐色の干渉色が観察された。
【0060】
この膜付きガラスの両面に実施例1と同じ2層系の低反射膜を積層したところ、可視光反射率が1.2%という値を示し、反射率が1%を越えて良好な低反射特性は示さなかった。
【0061】
実施例1と同様に、化学的耐久性を評価した結果を表1に示す。ゾルゲル法で成膜した比較例3の二酸化珪素膜と比較して、本比較例の膜では、酸性水溶液に対するエッチング速度は0.6倍、アルカリ水溶液に対するエッチング速度は0.7倍と、いずれもゾルゲル法で成膜した二酸化珪素膜より良かったが、実施例1および実施例2の二酸化珪素膜よりは劣るものであった。
【0062】
比較例3
実施例1と同様に、30cm角に切り出したソーダライムガラスの両面を洗浄した。0.25mol/lの濃度になるようにイソプロピルアルコールで調製したSiアルコキシド溶液を25℃に保ち、この溶液に洗浄したガラスを浸漬後、ガラスのエッジを保持して垂直に7mm/sの一定速度で引き上げた。ガラスが溶液を離れた後、1分間溶媒を乾燥させた後、250℃で20分、さらに470℃で30分加熱して、二酸化珪素被膜つきガラスを得た。この二酸化珪素膜付きガラスを十分に冷却した後、上記の操作を繰り返し、同じ膜をもう1層積層し厚膜化した。
【0063】
こうして得られた二酸化珪素膜の膜厚は250nmであった。膜の組成を分析した結果、原子の数の比は、Si:O=1:2であり、膜中にアルゴンは存在しなかった。分光特性から求めた波長550nmでの膜の屈折率は1.450で、膜の消衰係数は0であり、褐色の干渉色が観察された。
【0064】
この膜付きガラスの両面に実施例1と同じ2層系の低反射膜を積層したところ、可視光反射率が1.5%という値を示し、反射率が1%を越えて良好な低反射特性は示さなかった。
【0065】
【表1】
Figure 2004325952
【0066】
【発明の効果】
本発明では、高い耐久性でかつ光学的な変化を与えることのない、特性改質膜、パッシベーション膜、ガスバリア膜などの透光性薄膜つき基体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透光性薄膜を基体に成膜したときの、構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の透光性薄膜の成膜方法に用いる成膜装置の概略図である。
【符号の説明】
1 透光性薄膜
2 基体
3 真空チャンバー
4 圧力勾配型プラズマガン
5 ルツボ
6 基体支持ホルダー
7 Ta製のパイプ
8 LaB6製の円盤
9 プラズマビーム
10 基体加熱用ヒーター
11 温度計
12 ガス供給ノズル
13 酸素ガス
14 コンダクタンスバルブ
15 真空排気装置
16 真空計
17 反射電子帰還電極
18 蒸発原料
19 基体
20 放電用アルゴンガス
21 収束コイル
22 磁石
23 プラズマ雰囲気

Claims (4)

  1. 基体の表面に成膜される二酸化珪素膜でなる透光性薄膜において、二酸化珪素膜がアルゴンを含有し、含有されるアルゴンの量が、元子の数の比で、珪素の100に対してアルゴンの1〜10であり、二酸化珪素膜の屈折率が1.50〜1.53であることを特徴とする透光性薄膜。
  2. 可視光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の透光性薄膜。
  3. In、Al、Zr、Zn、Sn、Ti、Taのうちから選ばれる1種以上の元素が添加され、添加する量が、原子の数の比で、珪素の100に対して、添加する元素の、原子の数の合計が5未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の透光性薄膜。
  4. 圧力勾配型プラズマガンを用いたアークプラズマ蒸着法で成膜することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の透光性薄膜の成膜方法。
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