JP2004315698A - 液体洗浄剤組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は液体洗浄剤に関する。特に硬質表面上の石鹸カス汚れ又は変性油汚れに対して優れた洗浄力を有し、且つ均質で、安定性に優れた硬質表面用液体洗浄剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
テルペン系炭化水素やパラフィンなどの疎水性溶剤は変性油脂やグリース、油などの洗浄効果が優れるため、液体洗浄剤に広く利用されている。例えば、特許文献1にはテルペン化合物と界面活性剤を含有する油性汚れ除去用水分散性洗浄剤が開示されている。特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8にはテルペン化合物を含有する洗浄剤が開示されており、発明の詳細な説明や特許請求の範囲にはグリコールエーテル系溶剤を併用することが記載されている。特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12にはテルペン化合物とグリコール溶剤を含有する洗浄剤が開示されている。特許文献13、特許文献14、特許文献15にはテルペン系炭化水素と非イオン界面活性剤を含有する洗浄剤が開示されている。
【0003】
疎水性溶剤は水との親和性が小さく、水性の液体組成物として用いる場合には一般に界面活性剤と併用することが行われており、上記先行技術の大部分は界面活性剤と併用されている。また、分離や白濁などの安定性上の課題に対しては、疎水性溶剤に対する乳化力の点から非イオン界面活性剤が最も優れている。しかしながら、一般的な非イオン界面活性剤などの界面活性剤のみを用いる系では、界面活性剤のミセルなどの構造体に疎水性溶剤が強固に取り込まれるため、実際の洗浄に際して疎水性溶剤本来の高い洗浄力が損なわれ、期待される効果を得ることは出来ないという課題がある。また、非イオン界面活性剤も洗浄剤として有効な界面活性剤であるが、疎水性溶剤と併用すると、必然的に界面活性剤の本質である界面活性能が疎水性溶剤に費やされてしまうことから、望ましい洗浄効果を得ることができない。
【0004】
すなわち、非イオン界面活性剤の含有量を低減化させても安定性上の問題がなく、疎水性溶剤本来の効果を損なわず、しかも非イオン界面活性剤と疎水性溶剤の両方の洗浄効果を引き出す、優れた洗浄力を有する液体洗浄剤が求められている。
【0005】
一方、アルキル又はアルキレン鎖を有するポリオール系化合物を洗浄剤に利用する技術も知られている。ポリオール化合物としては、アルキルグリセリルエーテル系化合物、アルキルグリコシド等の糖系化合物、(ポリ)グリセリンの脂肪酸エステル系化合物等が知られている。例えば、アルキルグリセリルエーテル系化合物に関しては、特許文献16に、炭素数が5以下のモノアルキルモノグリセリルエーテルを用いる液体洗浄剤が記載されている。特許文献17には、グリセリルエーテルの50モル%以上がジ体である、炭素数12〜18のアルコールのグリセリルエーテルを含有し、任意成分ではあるが、非界面活性剤抑泡制剤として、例えばパラフィン等の高分子量炭化水素類、脂肪酸エステル類、一価アルコール類の脂肪酸エステル類、脂肪族C18〜C40ケトン類をなどの化合物を含有してもよいことが記載されている。また、界面活性剤として非イオン界面活性剤が例示されている。特許文献18には、炭素数1〜11のモノアルキルモノグリセリルエーテルにおいて、炭素数が異なるものの組合せないし異性体アルキルの組合せを混合して用いることでより優れた洗浄性を示す液体洗浄剤が記載されている。特許文献19には、炭素数が1〜12のアルキル基、アルケニル基、ベンジル基またはフェニル基の何れかを1つ有するモノグリセリルエーテル誘導体にテルペン系炭化水素、界面活性剤及びビルダーを含有する液体洗浄剤組成物が記載されている。その他グリセリルエーテル誘導体を含有する液体洗浄剤については、特許文献20には、メチル分岐のアルキル基を有するモノアルキルモノグリセリルエーテルを配合する油汚れや皮脂汚れに対して優れた洗浄性を示す洗浄剤組成物が、特許文献21には、炭素数8〜16のモノアルキル(モノ、ジ又はトリ)グリセリルエーテルを含有する洗浄剤が記載されている。また、グリセリルエーテル誘導体を含む一般式で示されたポリオール化合物を含有する洗浄剤としては、特許文献22、特許文献23、特許文献24の洗浄剤を挙げることができる。
【0006】
更に、アルキルグリコシド系化合物を含有する洗浄剤として、特許文献25、特許文献26、及び特許文献27には、アルキルグリコシド系界面活性剤と、モノテルペン又はセスキテルペン系炭化水素、及びその他成分を含有する液体洗浄剤が記載されている。
【0007】
しかしながら、これら技術においても疎水性溶剤と非イオン界面活性剤を併用した場合の課題を十分に解決できるものは見出されていない。
【0008】
以上から、非イオン界面活性剤の含有量を低減化させても安定性上の問題がなく、疎水性溶剤本来の効果を損なわず、しかも非イオン界面活性剤と疎水性溶剤の両方の洗浄効果を引き出す、優れた洗浄力を有する液体洗浄剤が求められている。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−19999号公報
【特許文献2】
特開2001−98296号公報
【特許文献3】
特開2000−96086号公報
【特許文献4】
特開2000−303095号公報
【特許文献5】
特開平10−1698号公報
【特許文献6】
特開平6−336598号公報
【特許文献7】
特開平5−279699号公報
【特許文献8】
特表平9−509438号公報
【特許文献9】
特開2001−247449号公報
【特許文献10】
特開2001−342500号公報
【特許文献11】
特開平7−310099号公報
【特許文献12】
特開平5−320694号公報
【特許文献13】
特開2001−247899号公報
【特許文献14】
特開平9−59695号公報
【特許文献15】
特開平9−310100号公報
【特許文献16】
特開平7−3289号公報
【特許文献17】
特表平7−500861号公報
【特許文献18】
特開平11−189796号公報
【特許文献19】
特開平11−256200号公報
【特許文献20】
特開昭57−133200号公報
【特許文献21】
米国特許第4,430,237号明細書
【特許文献22】
米国特許第3,427,248号明細書
【特許文献23】
特開昭64−67235号公報
【特許文献24】
特表平5−502687号公報
【特許文献25】
特開平2−182793号公報
【特許文献26】
特開平2−32197号公報
【特許文献27】
特開平3−269097号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、非イオン界面活性剤及び特定の疎水性溶剤を含有する液体洗浄剤組成物において、非イオン界面活性剤の含有量を低減化させても安定性上の問題がなく、疎水性溶剤本来の効果を損なわず、しかも非イオン界面活性剤と疎水性溶剤の両方の洗浄効果を引き出す、優れた洗浄力を有する液体洗浄剤組成物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)下記一般式(1)で示される化合物〔以下、(a)成分という〕、(b)炭素数が11〜16のアルキル基又はアルケニル基を有する非イオン界面活性剤〔以下、(b)成分という〕、(c)20℃で液体の疎水性有機溶剤〔以下、(c)成分という〕、及び(d)水〔以下、(d)成分という〕を含有し、(c)/(d)=0.5/99.5〜40/60(質量比)、(c)+(d)=50〜99質量%である液体洗浄剤組成物を提供する。
R1−T−[S]m (1)
〔式中、R1は2−エチルヘキシル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる1種のアルキル基であり、Tは−O−、−COO−、−OCO−、
【0012】
【化3】
【0013】
から選ばれる基であり、Tが−O−、−COO−又は−OCO−の場合、mは1であり、Tが
【0014】
【化4】
【0015】
の場合、mは2である。Sは1〜10個のヒドロキシ基を有する総炭素数4〜30の基である。但し、Sのヒドロキシ基が1個の場合、mは2であり、ヒドロキシ基が2個の場合、その少なくとも1つの基はオキシエチレン基又はポリオキシエチレン基(平均付加モル数5以下1超)に結合したヒドロキシ基である。〕
【0016】
【発明の実施の形態】
<(a)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物には、(a)成分として下記一般式(1)で示される化合物を含有する。
【0017】
R1−T−[S]m (1)
〔式中、R1は2−エチルヘキシル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる1種のアルキル基であり、Tは−O−、−COO−、−OCO−、
【0018】
【化5】
【0019】
から選ばれる基であり、Tが−O−、−COO−又は−OCO−の場合、mは1であり、Tが
【0020】
【化6】
【0021】
の場合、mは2である。Sは1〜10個のヒドロキシ基を有する総炭素数4〜30の基である。但し、Sのヒドロキシ基が1個の場合、mは2であり、ヒドロキシ基が2個の場合、その少なくとも1つの基はオキシエチレン基又はポリオキシエチレン基(平均付加モル数5以下1超)に結合したヒドロキシ基である。〕
【0022】
(a)成分は、一般式(1)中のR1は、2−エチルヘキシル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる1種のアルキル基を有するものであり、特に2−エチルヘキシル基を有する化合物が好ましい。
【0023】
R1は、対応するアルコールに由来することが好ましく、イソデシル基を有する(a)成分としては、ノネンをオキソ法でヒドロホルミル化した後、水素化して得られるイソデカノールから得られるものが好ましい。イソデカノールは、各位置にメチル分岐を有する多くの異性体の混合物であり、代表的な構造としては8−メチル−1−ノナノールである。イソノニル基を有する(a)成分としては、ジイソブチレンをオキソ方でヒドロホルミル化した後、水素化して得られるイソノニルアルコールから得られるものが好ましい。イソノニルアルコールは、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールが主成分である。また2−エチルヘキシル基を有する(a)成分としては、n−ブチルアルデヒドをアルドール縮合させた後、水素化して得られる2−エチル−1−ヘキサノールから得られるものが好ましい。
【0024】
一般式(1)の化合物は、本発明の(c)成分である疎水性有機溶剤と水との界面に配向しやすい性質を有する。(a)成分が一般的な界面活性剤と異なるところは、複数のヒドロキシ基を有すると共に、特定の分岐鎖アルキル基を有するため、(a)成分は(b)成分に対して親和性に乏しく、一方で適度の親水性を有する点であると考えられる。特にこの性質は、好ましい構造として規定される。尚、一般式(1)中のSが糖に由来する基の場合は、(b)成分の疎水性有機溶剤を取り込み強固なO/Wエマルジョンを形成しやすいため(b)成分が閉じ込められ、その結果、十分な洗浄力を得ることができない傾向がある。このため、一般式(1)の化合物は、Sが糖に由来する以外のものがより好ましい。なお、本発明において糖とは、ガラクトース、フルクトース等の単糖類、マルトース、キシロビオース等の二糖類、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0025】
一般式(1)で示される具体的な化合物としては、下記一般式(1−1)〜(1−4)の化合物を挙げることができる。
【0026】
【化7】
【0027】
〔式中、R1aは、2−エチルヘキシル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる1種のアルキル基、X、Yは、それぞれヒドロキシ基又は−O−CH2CH(V)CH2−Wであり、X及びYの両方がヒドロキシ基である場合を除く。ここでV、Wは、それぞれヒドロキシ基又は−O−CH2CH(V)CH2−Wである。〕
【0028】
【化8】
【0029】
〔式中、R1aは前記と同じであり、R1b及びR1cはエチレン基及び/又はプロピレン基である。m、nは、それぞれが0〜10、好ましくは0〜7の数であり、両方が0である場合を除く。より好ましくはmとnの合計が1〜3である。〕
【0030】
【化9】
【0031】
〔式中、R1a前記と同じであり、R1d、R1eは、それぞれ炭素数1〜3のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基であり、o及びpは、それぞれ1〜10の数である。〕
【0032】
【化10】
【0033】
〔式中、R1a、R1d、R1e、o及びpは、前記と同一の意味である。〕
【0034】
一般式(1−1)の化合物は、R1aOHで表されるアルコール化合物とエピハロヒドリンやグリシドール等のエポキシ化合物をBF3等のルイス酸触媒を用いて反応させて製造することができる。この反応には、国際出願98/50389号公報に記載の一般式(1−5)で表されるアルミニウム触媒を使用することが、経済性や好ましい洗浄効果を得る目的から好適である。
【0035】
Al(OSO2−R1f)q(OR1g)r(OR1h)s (1−5)
(式中、R1fは置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R1g及びR1hは同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。qは1〜3、r及びsはそれぞれ0〜2の数であって、q+r+s=3である。)
【0036】
ここで、R1fは炭素数1〜5のアルキル基(好ましくはメチル基)、ヒドロキシ基若しくは炭素数1〜5のアルキル基を有していてもよいアリール基(好ましくは4−トルイル基又は4−ヒドロキシフェニル基)が好ましい。またR1g及びR1hは、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基(例えばイソプロピル基、オクチル基)、フェニル基が好ましい。
【0037】
上記触媒を用いて製造する場合において、エポキシ化合物はR1aOHに対して1.5〜5モル倍過剰に用いて反応することが一般式(1−1)の化合物を収率よく得るために好ましいが、一般式(1−1)においてX及びYの両方がヒドロキシ基である化合物(以下(a’)成分という)も含まれる。本発明では(a’)成分の比率が(a)成分に対して0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%であることが、本発明の効果を得る上で好ましい。このような(a’)成分の含有量を達成するためには、蒸留などの操作を行う。
【0038】
一般式(1−2)の化合物は、一般式(1−1)の化合物と同様の方法(但しR1aOHとエポキシ化合物のモル比は0.8〜1.5、好ましくは0.9〜1.2である)で製造することができる化合物R1a−O−CH2CH(OH)CH2−OHに、エチレンオキシド(以下EOと表記する)及び/又はプロピレンオキシド(以下POと表記する)、好ましくはEOを通常の方法で付加させて製造できる。
【0039】
一般式(1−3)の化合物において、−(R1dO)o−H、及び−(R1eO)p−Hは、異なっていてもよく、特にR1d、R1eがそれぞれ炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、o及びpは、それぞれ1〜10、好ましくは1〜3である。
【0040】
一般式(1−3)の化合物は、例えば脂肪酸とエタノールアミンを脱水反応し、得られた化合物にアルキレンオキシドを付加させることで容易に合成することができる。
【0041】
一般式(1−4)の化合物において、−(R1dO)o−H、及び−(R1eO)p−Hは、異なっていてもよく、特にR1d、R1eがそれぞれエチレン基であり、且つo及びpがそれぞれ1〜3であることが好ましい。
【0042】
一般式(1−4)の化合物は、例えば長鎖アルキル基を有する一級アミンにアルキレンオキシドを付加させることによって得ることができる。
【0043】
本発明では洗浄効果及び組成物の安定性の点から、一般式(1−1)〜(1−4)中のR1aは、2−エチルヘキシル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる1種のアルキル基であり、特に2−エチルヘキシル基が最も好ましい。また、一般式(1−1)〜(1−4)で示される化合物中で、より好ましくは一般式(1−1)の化合物及び一般式(1−2)の化合物から選ばれる1種以上、最も好ましくは一般式(1−1)の化合物である。
【0044】
(a)成分は、水溶液中での(c)成分の疎水性溶剤の性質を変えることなく、且つ均一に分散させることを可能とする。
【0045】
<(b)成分>
本発明の(b)成分としては、まず下記一般式(2)の化合物(以下(b1)成分とする)を挙げることができる。
【0046】
R2a−A−[(R2bO)a−R2c]b (2)
〔式中、R2aは、Aと結合する炭素原子が1級炭素原子又は2級炭素原子であり、且つ当該炭素原子に結合する炭素鎖は分岐鎖を持たない炭素数11〜16、好ましくは11〜14のアルキル基であり、R2bは炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。R2cは、炭素数1〜3のアルキル基、又は水素原子である。aは3〜20、好ましくは3〜15、より好ましくは5〜15、特に好ましくは5〜10の数を示す。Aは−O−、−COO−,−CON−又は−N−であり、Aが−O−又は−COO−の場合はbは1であり、Aが−CON−又は−N−の場合はbは1又は2である。〕
【0047】
一般式(2)の化合物の具体例として以下の一般式(2−1)〜一般式(2−4)の化合物を挙げることができる。
【0048】
R2a−O−(C2H4O)c−H (2−1)
〔式中、R2aは前記の意味を示す。cは3〜20、好ましくは3〜15の数である。〕
R2a−O−(C2H4O)d−(C3H6O)e−H (2−2)
〔式中、R2aは前記の意味を示す。d及びeはそれぞれ独立に0.1〜20、好ましくは3〜15の数であり、(C2H4O)と(C3H6O)はランダムあるいはブロック付加体であってもよい。〕
【0049】
【化11】
【0050】
〔式中、R2aは前記の意味を示す。f及びgはそれぞれ独立に0〜20の数であり、f+gは0〜20、好ましくは0〜10の数である。R2d、R2eはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。〕
【0051】
本発明の(b1)成分としては、一般式(2−1)の化合物が好ましく、特に洗浄効果、及び安定性の点から、酸素原子と結合する1級又は2級炭素原子を有する炭素数11〜16の直鎖アルキル基を有し、EOを平均3〜20モル、好ましくは3〜15モル、特に好ましくは5〜10モル付加させたポリオキシエチレンアルキルエーテルが最も好ましい。
【0052】
一般式(2−1)において、酸素原子と結合する1級炭素原子を有する炭素数11〜16の直鎖アルキル基R2aの具体的な例としては、ヤシ油やパーム油等の天然油脂から得られた直鎖アルコールを原料としたアルキル基と、石油原料系からオキソ法により得られた少量の分岐を含んだアルコールを原料としたアルキル基〔炭素数10〜14の1−オレフィンをヒドロホルミル化した後、水素化することで得られる。オキソ法によるアルコールは直鎖アルコールとβ位にアルコールヒドロキシ基に対してメチル基が分岐した分岐鎖1級アルコールの混合物として得られる。本発明の(b1)において直鎖アルキル基の原料としてオキソ法アルコールを選択する場合は、分岐鎖1級アルコールの含有率として30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好適である。〕を挙げることができる。
【0053】
酸素原子に結合した1級炭素原子を有する直鎖アルキル基R2aを有する一般式(2−1)の化合物としては、花王(株)製のカルコール20、カルコール40、カルコール60等を用いることができ、また、オキソ法アルコールを用いる場合には、三菱化学社製のドバノール23、ドバノール25、ドバノール45等を用いることができる。
【0054】
酸素原子に結合した2級炭素原子を有する直鎖アルキル基R2aを有する一般式(2−1)の化合物としては、日本触媒社製のソフタノール33(商標)、ソフタノール50(商標)、ソフタノール70(商標)、ソフタノール120(商標)を用いることができる。
【0055】
本発明の(b)成分として、他方の具体的な化合物としては、下記一般式(3)の化合物(以下(b2)成分という)が挙げられる。
【0056】
R3a−(OR3b)hGi (3)
〔式中、R3aは直鎖の炭素数8〜16、好ましくは9〜14のアルキル基、R3bは炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、特にエチレン基であり、Gは還元糖に由来する残基、hは平均値0〜6の数、好ましくは0〜3、特に好ましくは0の数であり、iは平均値1〜3、好ましくは1〜2の数を示す。〕
【0057】
この一般式(3)においては、酸素原子と結合するR3aの炭素原子は1級が好ましい。
【0058】
Gは還元糖に由来する残基であり、原料の還元糖としては、アルドースとケトースの何れであっても良く、また、炭素数が3〜6個のトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソースを挙げることができる。アルドースとして具体的にはアピオース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロースを挙げることができ、ケトースとしてはフラクトースを挙げることができる。本発明ではこれらの中でも特に炭素数5又は6のアルドペントースあるいはアルドヘキソースが好ましく、中でもグルコースが最も好ましい。
【0059】
一般式(3)の化合物は上記還元糖とR3a−(OR2b)h−OHとを酸触媒を用いてアセタール化反応又はケタール化反応することで容易に合成することができる。また、アセタール化反応の場合、ヘミアセタール構造であっても良く、通常のアセタール構造であっても良い。
【0060】
本発明における(b)成分としては、洗浄力の点から(b1)成分が好ましく、特に一般式(2−1)で示される化合物において、Aと結合するR2aの炭素原子が2級炭素原子である直鎖アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル又は一般式(2)で表される化合物のうち平均糖縮合度が1.2〜1.4のアルキルポリグルコシドが、洗浄効果及び安定性の点で最も好ましい。
【0061】
(b)成分は、(c)成分の疎水性溶剤としての性質を損なうことなく、且つ(a)成分の配合濃度が低くとも、安定な状態を形成することが可能となる。また(a)成分と併用することで、従来は(c)成分のミセル化により、阻害されていた(c)成分自体の洗浄力も回復することができ、優れた洗浄力を得ることが出来るようになる。
【0062】
<(c)成分>
本発明に用いる20℃で液体の疎水性有機溶剤は、一般的によく知られている下記式より求められる溶解度パラメーター(以下sp値)が10.0〜21.0、好ましくは14.0〜21.0、より好ましくは14.0〜19.0の有機溶剤であり、20℃の水に対する溶解度が0.5質量%以下のものである。この範囲において、優れた洗浄力を得ることができる。なお、sp値を求めるに当たっては、Hoy, K. L., The Hoy Tables of Solubility Parameters, Union Carbide Corporation, Solvents and Coatings Materials Division, South Charlston, WV (1985)記載の数値も用いるものとする。
【0063】
δ=(ΔH/V)1/2
δ;溶解度パラメーター(sp値)〔(J/cm3)1/2〕
ΔH;モル蒸発熱
V;モル体積
【0064】
疎水性有機溶剤は、sp値が上記の範囲であれば、エーテル基、アミド基、エステル基等を有してもよい。(b)成分としては、例えば、全炭素数が6〜30の炭化水素、一価の脂肪族アルコール及びそのエステル、その他脂肪酸エステル、並びに脂肪族ケトン等を挙げることができる。本発明では、特に炭素数が8〜20、より好ましくは8〜15の炭化水素が好ましい。
【0065】
炭化水素の具体例としてはオレフィン炭化水素、パラフィン炭化水素、芳香族炭化水素、及びテルペン系炭化水素を挙げることができる。
【0066】
オレフィン炭化水素としては、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、テトラデセン、などの直鎖オレフィン化合物、ジイソブチレン、トリイソブチレンなどの分岐鎖オレフィン化合物、及びシクロヘキセン、ジシクロペンテンなどの環状オレフィン化合物を用いることができる。
【0067】
パラフィン炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカンなどの直鎖パラフィン化合物や、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソヘキサン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、イソヘプタデカン、イソオクタデカンなどの分岐鎖パラフィン化合物、及びシクロヘキサンなどの環状パラフィン化合物を用いることができる。
【0068】
芳香族炭化水素としてはトルエン、キシレン、クメンを挙げることができる。
【0069】
テルペン系化合物としてはイソプレンの2量体であるモノテルペン化合物、3量体であるセスキテルペン化合物、及び4量体であるジテルペン化合物を用いることができる。具体的なテルペン化合物としてはα−ピネン、β−ピネン、カンフェン、リモネン、ジペンテン、テルピノーレン、ミルセン、β−カリオフィレン、セドレンが好適であり、特にリモネン、ジペンテン、テルピノーレンが好ましい。
【0070】
本発明では特に直鎖パラフィン化合物、分岐鎖パラフィン化合物、モノテルペン化合物及びセスキテルペン化合物から選ばれる1種以上が好ましく、特にデカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、リモネン、ジペンテン、テルピノーレンから選ばれる1種以上が洗浄効果の点から好適である。
【0071】
(c)成分は、油の性質に近いものであり、当然、水よりも油汚れに対して優れた洗浄力を有する。具体的に(c)成分のみで油汚れの洗浄を行なう場合、変性油汚れを溶解することができ、対象表面からの汚れの除去を容易にすることができる。しかしながら(c)成分のみでの洗浄剤は、(c)成分自体が洗浄表面に残留するという問題があり、更には引火などの安全性、また経済性においても不利である。そこで、前記のように、界面活性剤を用いて(c)成分を分散させた系が考えられるが、単に界面活性剤で分散させただけでは、(c)成分の性質が変わってしまい本来の洗浄力を発揮することができない。本発明は(c)成分の疎水性溶剤の性質を阻害せずに、水系の洗浄剤組成物を完成したところに意義がある。
【0072】
<(d)成分>
本発明の(d)成分は水であり、水に存在する微量の金属成分を除去したイオン交換水や蒸留水、もしくは次亜塩素酸塩や塩素で滅菌した滅菌水などを用いることができる。
【0073】
<その他の成分>
本発明では、洗浄力を向上させる目的から本発明の効果を妨げない程度に(b)成分以外の界面活性剤(以下(e)成分という)を含有することが好ましい。(e)成分としては陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤を挙げることができる。
【0074】
陰イオン界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩又はα−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩である。
【0075】
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、洗剤用界面活性剤市場に一般に流通しているものの中で、アルキル鎖の平均炭素数が8〜16のものであればいずれも用いることができ、例えば花王(株)製のネオペレックスF25、Shell社製のDobs102等を用いることができる。また、工業的には、洗剤用原料として広く流通しているアルキルベンゼンをクロルスルホン酸、亜硫酸ガス等の酸化剤を用いてスルホン化して得ることもできる。アルキル基の平均炭素数は10〜14が好ましい。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、平均炭素数10〜18の直鎖もしくは分岐鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコールに、EOを1分子当たり平均0.5〜5モル付加させ、これを例えば特開平9−137188号記載の方法を用いて硫酸化して得ることができる。アルキル基の平均炭素数は10〜16が好ましい。アルキル硫酸エステル塩としては炭素数10〜16、好ましくは10〜14の直鎖もしくは分岐鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコールをSO3又はクロルスルホン酸でスルホン化し、中和して得ることができる。α−オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数8〜18のα−アルケンをSO3でスルホン化し、水和/中和を経て生成することができ、炭化水素基中にヒドロキシ基が存在する化合物と不飽和結合が存在する化合物の混合物である。また、α−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩としてはアルキル基の炭素数は10〜16が好ましく、メチルエステル又はエチルエステルが洗浄効果の点から好ましい。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩が好適であり、洗浄効果の点からナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましい。
【0076】
本発明では、洗浄効果の点から炭素数10〜14のアルキル基を有し、EO平均付加モル数が1〜3のポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、及び炭素数11〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩が特に良好である。
【0077】
両性界面活性剤としては下記一般式(4)又は一般式(5)から選ばれる化合物を含有することが洗浄効果の点から好ましい。また、特に疎水性溶剤を含有すると泡立ちが大幅に低下するために一般式(4)又は一般式(5)から選ばれる化合物を含有すること好ましい。
【0078】
【化12】
【0079】
〔式中、R4aは炭素数8〜16、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜14の直鎖アルキル基又はアルケニル基であり、R4c、R4dは炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基である。R4bは炭素数1〜5、好ましくは2又は3のアルキレン基である。Aは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−、−O−から選ばれる基であり、bは0又は1の数である。〕
【0080】
【化13】
【0081】
〔式中、R5aは炭素数9〜23、好ましくは9〜17、特に好ましくは9〜15のアルキル基又はアルケニル基であり、R5bは炭素数1〜6、好ましくは2又は3のアルキレン基である。Bは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−、−O−から選ばれる基であり、cは0又は1の数である。R5c、R5dは、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R5eはヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜5、好ましくは1〜3のアルキレン基である。Dは−COO−、−SO3 −、−OSO3 −から選ばれる基である。〕
【0082】
陽イオン界面活性剤としては、下記一般式(6)〜(8)の化合物を用いることが洗浄効果及び、除菌効果の点から好ましい。
【0083】
【化14】
【0084】
〔式中、R6a及びR7aは炭素数5〜16、好ましくは6〜14のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基であり、R6c、R6dは炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。Tは−COO−、OCO−、−CONH−、−NHCO−、又は
【0085】
【化15】
【0086】
である。gは0又は1の数である。R6bは、炭素数1〜6のアルキレン基、又は−(O−R6f)e−である。ここでR6fはエチレン基もしくはプロピレン基、好ましくはエチレン基であり、eは1〜10、好ましくは1〜5の数である。R6eは炭素数1〜5、好ましくは2又は3のアルキレン基である。また、R8a、R8b、R8c、R8dはこれらの内2つ以上(好ましくは2つ)は炭素数8〜12のアルキル基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。さらにZ−は陰イオン基、好ましくはハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸イオンである。〕
【0087】
本発明の最も好ましい陽イオン界面活性剤としては下記のものを挙げることができる。
【0088】
【化16】
【0089】
本発明では(e)成分として一般式(5)の両性界面活性剤及び一般式(6)又は一般式(8)の陽イオン界面活性剤が好ましい。
【0090】
本発明では、洗浄効果を向上させる目的、及び低温あるいは高温における(c)成分である疎水性溶剤の分離や白濁を抑制するなどの効果により、グリコール系溶剤(以下(f)成分という)を併用することが好ましい。具体的には下記一般式(9)の化合物が好適である。
【0091】
R9a−(OR9b)f−OH (9)
〔式中、R9aは炭素数1〜7、好ましくは2〜5の炭化水素基であり、fは1〜5、好ましくは1〜4の数であり、R9bは炭素数2又は3のアルキレン基である。〕
【0092】
具体的に好ましい化合物としては以下のものを挙げることができる。
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレン(平均付加モル数3〜5)モノメチルエーテル、ポリオキシプロピレン(平均付加モル数3〜5)モノエチルエーテル、ポリオキシエチレン(平均付加モル数1〜5)モノフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(平均付加モル数1〜5)モノベンジルエーテル
【0093】
本発明では(f)成分として特にジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0094】
本発明では洗浄力をさらに向上させる目的から金属封鎖剤(以下(g)成分という)を含有することが好ましい。本発明に用いられる金属イオン封鎖剤としては、
(1)フィチン酸などのリン酸系化合物またはこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(2)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸などのホスホン酸またはこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(3)2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸などのホスホノカルボン酸またはこれのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(4)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシンなどのアミノ酸またはこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(5)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸。ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸、アルキルグリシン−N,N−ジ酢酸、アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸、セリン−N,N−ジ酢酸、グルタミン酸二酢酸、エチレンジアミンコハク酸などのアミノポリ酢酸またはこれらの塩、好ましくはアルカリ金属塩、もしくはアルカノールアミン塩
(6)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキメチル酒石酸などの有機酸またはこれらのアルカリ金属塩、もしくはアルカノールアミン塩
(7)ゼオライトAに代表されるアルミノケイ酸のアルカリ金属塩またはアルカノールアミン塩
(8)アミノポリ(メチレンホスホン酸)もしくはそのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、またはポリエチレンポリアミンポリ(メチレンホスホン酸)もしくはアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
を挙げることができる。
【0095】
これらの中で、上記(2)、(5)、(6)及び(7)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、上記(5)、及び(6)からなる群より選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0096】
本発明ではアルカリ剤(以下(h)成分という)を含有することが洗浄力の点から好ましい。アルカリ剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ジエチレントリアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられる。本発明で用いるアルカリ剤は特にモノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール及びモルホリンが良好である。
【0097】
本発明の液体洗浄剤組成物は、20℃におけるpHが2〜12、更に3〜11であることが、洗浄効果の点から好ましい。pH調整剤としては塩酸や硫酸など無機酸や、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸などの有機酸などの酸剤や、上記アルカリ剤を、単独もしくは複合して用いることが好ましく、特に塩酸、硫酸、クエン酸から選ばれる酸と水酸化ナトリウムや水酸化カリウムあるいは上記のアミン化合物から選ばれるアルカリ剤を用いることが好ましい。また、使い勝手の点から本発明の組成物は20℃における粘度は1〜100mPa・s、好ましくは1〜50mPa・sが良好である。ここで本発明でいう粘度は20℃の恒温槽で試料を30分間熟成させた後、TOKIMEC.INC製B型粘度計モデルBMを用いて測定したものである。
【0098】
本発明の液体洗浄剤組成物は、貯蔵安定性を向上させる目的で、ハイドロトロープ剤を含有することが好ましく、具体的に好ましい化合物としては炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換したベンゼンスルホン酸又はその塩を挙げることができる。より具体的に好ましい例としては、p−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、p−クメンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸であり、塩を用いる場合にはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が良好である。
【0099】
また、本発明の組成物には、ゲル化防止のためのポリアルキレングリコールを配合してもよい。ゲル化防止としてのポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチングリコールを標準としたときのゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによって求められた重量平均分子量が500〜20000のポリプロピレングリコール、及びポリエチレングリコールが好ましい。
【0100】
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記成分の他、更に必要に応じて、通常の分散剤、キレート剤、香料、染料、顔料、防腐剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0101】
<液体洗浄剤組成物>
先にも述べたが、界面活性剤〔(b)成分〕を用いて、疎水性溶剤〔(c)成分〕を安定に配合することは可能である。しかしながら、その洗浄力は、極めて低減されたものとなり、(b)成分、(c)成分から期待された洗浄力を得ることができない。本発明は、(c)成分を、その性質を損なわないように水溶液中に配合するために、前記2−エチルヘキシル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる1種のアルキル基を有する特定の化合物[(a)成分]を用いることで、これら問題を解決するに至ったのである。(a)成分の化合物は、通常の界面活性剤と異なり、疎水性溶剤を、その性質を低下させることなく安定に配合する能力を有する。この作用機作は明確ではないが、(a)成分は、通常の界面活性剤と異なり、その疎水性と親水性の程度と分岐の構造から、疎水性溶剤を内部に閉じ込めた構造の強固なミセルを形成しにくく、例えばバイコンティニュアス構造のような疎水性溶剤の連続層が形成していることが考えられる。興味深いことは、(a)成分の使用により、(b)成分の界面活性剤による(c)成分の疎水性溶剤への影響が排除できること、更に本発明者らは(a)成分のみで、その配合量を多めにすることで、(c)成分の疎水性溶剤の性質を台無しにすることなく、安定化できることを見出しているが、(b)成分を併用することで、(a)成分の配合量を低減できることである。すなわち、(b)成分は(c)成分の性質を低下させることなく、且つ(a)成分の濃度も低下させ、安定性と洗浄力を保つことを可能とする。特に、(b)成分のうち直鎖の2級アルコールにEOを付加させた構造のポリオキシエチレンアルキルエーテル又は直鎖のアルキル基を有するアルキルポリグルコシドが最も効果的であり、安定性が最も優れる。
【0102】
特開平6−306400号公報には、▲1▼トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル等の両親媒性溶剤、▲2▼炭化水素などの非極性溶剤ないし弱極性溶剤、及び▲3▼水等の極性溶剤から構成される近三臨界点組成物を洗浄剤として用いることが開示されているが、該公報技術の実施例に用いられているトリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどの化合物は、均一相を形成するために添加量が多くなって疎水性溶剤に溶解し、疎水性溶剤の性質を変化させるため、期待される効果を得ることができない。また、特開2002−20791号公報には、バイコンティニュアス相を形成する液体洗浄剤が開示されている。しかしながら、使用している疎水性成分の極性が高く、十分な洗浄力を得ることができない。
【0103】
本発明の(a)成分は水にも疎水性溶剤にも溶解しづらい化合物であり、疎水性溶剤の性質を変化させることなく、組成物中に安定配合を可能にするものであり、その結果、高い洗浄効果を提供することができる。
【0104】
また、本発明の構成を採用すると、上記(g)成分のような両親媒性溶剤を併用しても、疎水性溶剤の性質を変化させることなく、逆に(g)成分と疎水性溶剤の両者の洗浄効果を十分発揮できる点については驚くべきことである。
【0105】
本発明における(c)成分と(d)成分の比率は、質量比で(c)/(d)=0.5/99.5〜40/60、好ましくは、1/99〜30/70、より好ましくは2/98〜10/90、且つ(c)成分と、(d)成分の合計(c)+(d)は50〜99質量%、好ましくは55〜98質量%、65〜98質量%であり、水を主溶媒とする液体洗浄剤組成物である。本発明の液体洗浄剤組成物は、(d)成分の溶媒中に(c)成分の疎水性溶剤としての性質を損なうことなく、且つ安定に配合するものであり、(a)成分が、安定化の為に配合される。しかしながら、(a)成分のみで安定化させるためには(a)成分の配合量を増やす必要があり、また洗浄力も不十分であった。本発明では更に(b)成分を併用することで、(a)成分の配合量を少なくし、(b)成分の洗浄力も発揮することができるようになる。なお(c)成分は(b)成分でミセルで可溶化させることができるが、(c)成分の疎水性溶剤の洗浄力が十分発揮できず、また界面活性剤自体の洗浄力も低下する。
【0106】
本発明の液体洗浄剤組成物中の具体的な各成分濃度は、(a)成分は好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、最も好ましくは0.5〜10質量%、(b)成分は好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、最も好ましくは0.5〜10質量%、(c)成分は好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、最も好ましくは0.5〜10質量%及び(d)成分は好ましくは30〜98質量%、より好ましくは35〜90質量%、最も好ましくは60〜90質量%である。
【0107】
更に、本発明の液体洗浄剤組成物において、疎水性溶剤の洗浄効果を十分発揮させる目的から(a)成分/(c)成分=90/10〜40/60(質量比)、更に80/20〜50/50(質量比)が好ましく、疎水性溶剤の分離・白濁などを抑制し、しかも洗浄効果を高める目的から(a)/(b)=90/10〜40/60(質量比)、更に80/20〜50/50(質量比)が好ましい。
【0108】
本発明において(e)成分は洗浄効果を高める目的から含有することが好ましく、含有量は組成物中に0.01〜10質量%、更に0.05〜8質量%が好適である。しかしながら、このような範囲を超えるような(e)成分の多量配合は疎水性溶剤の洗浄効果を低下させる場合があるため避けるべきである。
【0109】
本発明の(f)成分は洗浄効果を高め、且つ安定性を向上させる目的から含有することが好ましく、含有量は組成物中に1〜20質量%、更に3〜15質量%が好適である。
【0110】
(g)成分、(h)成分は、洗浄効果を向上させる目的から、組成物中に(g)成分を好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%、(h)成分を好ましくは0.05〜10質量%、特に好ましくは0.1〜8質量%含有することが、洗浄効果の点から好適である。
【0111】
本発明ではハイドロトロープ剤やゲル化防止剤などのその他成分は、使用目的、安定性、使い勝手などを考慮して適宜設定することができる。
【0112】
本発明の液体洗浄剤組成物は、変性油脂やグリース、油などの疎水性汚れに高い洗浄効果を示すものであり、工業用途あるいは一般家庭用途のいずれにおいても使用することが可能であり、特に一般家庭用の浴室洗浄剤として、浴室の皮脂やシリコーン汚れなどを対象とした洗浄剤、台所洗浄剤として、レンジ廻りや換気扇などの変性汚れなどを対象とした洗浄剤に有効である。
【0113】
【発明の効果】
本発明によれば、特に硬質表面上の石鹸カス汚れ又は変性油汚れに対して優れた洗浄力を有し、且つ均質で、安定性に優れた硬質表面用液体洗浄剤組成物が得られる。
【0114】
【実施例】
<配合成分>
【0115】
【化17】
【0116】
【化18】
【0117】
・b−1:ソフタノール70(日本触媒製、炭素数13の2級アルコールにEOを平均7モル付加させた化合物)
・b−2:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数7)
・b−3:ドバノール23(三菱化学社製、炭素数13のβ位メチル分岐、分岐鎖アルキル含有率が20質量%)に、EOを平均7モル付加させた化合物
・c−1:ドデカン(sp=15.2)
・c−2:リモネン(sp=17.3)
・c−3:アイソゾール400(新日本石油化学社製イソパラフィンsp=15.5)
・d−1:水
・e−1:N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン
・e−2:N−オクチル−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリド
・f−1:エチレングリコールモノブチルエーテル
・g−1:クエン酸
・h−1:水酸化ナトリウム
・h−2:モノエタノールアミン
【0118】
実施例1
表1〜2の液体洗浄剤組成物を調製し、下記の評価方法により安定性及び洗浄力を調べた。結果を表1〜2に示す。なお、比較品の一部は、便宜的にa’−1を(a)成分として(a)/(b)、(a)/(c)を算出した。
【0119】
<評価方法>
(1−1)安定性
○;室温(10〜30℃)で1ヶ月以上静置しても相分離や白濁をおこすことなく、安定な透明溶液である。
×:同条件において相分離、白濁、沈殿をおこす。
【0120】
(1−2)洗浄力(石鹸カス汚れ洗浄力)
3ヶ月間、実際に使用して石鹸カスが固着している洗面器(ポリプロピレン製)を、評価用の液体洗浄剤組成物を含ませたポリウレタン製のスポンジに約500gの荷重をかけて5往復こすった。この操作を20回行い、20回の平均値で表示した。
5:汚れ落ちが非常に良好
4:汚れ落ちが良好
3:汚れ落ちにムラがある
2:若干汚れが落ちる程度
1:殆ど汚れが落ちない
【0121】
(1−3)洗浄力(変性油汚れ洗浄力)
天ぷら油10gを鉄板に均一に塗布し、180℃の温度30分間焼き付けた後、更に室温で3ヶ月間放置することにより殆ど乾いた膜を形成してモデル汚染板とした。液体洗浄剤組成物約0.5mLを水平に固定したモデル汚染板に滴下し、1分間放置した。その後、浮き上がった汚れを脱脂綿で軽く除去した。この操作を計20回行い、それぞれの洗浄の程度を目視により観察して下記の基準により評価し、20回の平均値で表示した。
5:完全な汚れ落ち
4:60%から80%程度の汚れ落ち
3:50%から60%程度の汚れ落ち
2:30%から50%程度の汚れ落ち
1:30%程度までの汚れ落ち
0:まったく汚れが落ちない
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
また、本発明の液体洗浄剤組成物の配合例を表3に示す。配合例3−1〜3−4は石鹸カス汚れの洗浄に、また配合例3−5、3−6は油汚れの洗浄に、好適に用いられる。
【0125】
【表3】
Claims (2)
- (a)下記一般式(1)で示される化合物、(b)炭素数が11〜16のアルキル基又はアルケニル基を有する非イオン界面活性剤、(c)20℃で液体の疎水性有機溶剤、及び(d)水を含有し、(c)/(d)=0.5/99.5〜40/60(質量比)、(c)+(d)=50〜99質量%である液体洗浄剤組成物。
R1−T−[S]m (1)
〔式中、R1は2−エチルヘキシル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる1種のアルキル基であり、Tは−O−、−COO−、−OCO−、
- (a)/(b)=90/10〜40/60(質量比)、(a)/(c)=90/10〜40/60(質量比)である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
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