JP2004299371A - 汎用インキにて印刷可能な積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】汎用インキを用いて印刷を行っても、ボコツキと呼ばれる、フィルムの変形現象が発生せず、美麗な印刷物を与える積層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】延伸フィルムの一方の側に、インキバリア層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより熱可塑性樹脂からなる1以上の層を設け、次いで、インキ受理層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより多孔性填料を含有する熱可塑性樹脂からなる1以上の層を設ける。この場合において、延伸フィルムの裏面側にも、インキ受理層及び/又はインキバリア層を設けるのが好ましい。延伸フィルムとしては、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に無機充填剤や発泡剤を練り込んで延伸したタイプのもの等を用いることができる。
【選択図】 なし
【解決手段】延伸フィルムの一方の側に、インキバリア層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより熱可塑性樹脂からなる1以上の層を設け、次いで、インキ受理層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより多孔性填料を含有する熱可塑性樹脂からなる1以上の層を設ける。この場合において、延伸フィルムの裏面側にも、インキ受理層及び/又はインキバリア層を設けるのが好ましい。延伸フィルムとしては、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に無機充填剤や発泡剤を練り込んで延伸したタイプのもの等を用いることができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は汎用インキにて印刷ができ、かつ、美麗な印刷物を与える積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、合成紙として、熱可塑性樹脂に無機充填剤や発泡剤を練り込んで延伸したタイプのものが知られ、ポスター、ラベル、配送伝票等、耐水性が要求される各種分野で用いられている。
【0003】
このような合成紙の印刷に際しては、通常、合成紙専用インキが用いられる。紙の印刷に汎用されているインキは合成紙に殆ど染込まない。そのため、汎用インキを用いて合成紙に印刷を行うと、印刷されたインキは合成紙表面に滞留して乾燥し、印刷後の合成紙を擦ったりした場合に、乾燥したインキが合成紙表面から剥がれ落ちたり、合成紙表面で砕けたりして印刷面を汚してしまう。一方、合成紙専用インキは、不飽和結合を多く含む植物油を主体とした溶剤を用いており、印刷されたインキが合成紙の表面に滞留しても、滞留したインキが酸化重合して強固なインキ層を形成する。従って、合成紙専用インキを用いれば、汎用インキを用いた場合に発生する印刷トラブルを防止することができるからである。
【0004】
しかし、合成紙専用インキは、その乾燥(印刷された合成紙表面へのインキの固定)を、専ら酸化重合にのみ頼っているため、乾燥速度が非常に遅いという欠点がある。そこで、合成紙表面に適宜インキ受理層を設ける等により、汎用インキを用いても印刷可能な合成紙の開発が進められている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭53−6676号公報(第1頁、特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
合成紙の印刷面に適当なインキ受理層を設ければ、汎用インキを用いても美麗な印刷物を得ることができるはずである。インキはこの受理層に染込むので、表面に滞留して乾燥することはない。ところが、こうしてインキ受理性を改善しても、得られた合成紙はなお、汎用インキでの印刷に適さないものであった。汎用インキを用いてこの合成紙に印刷を行うと、合成紙が不規則に波打つといった現象、いわゆるボコツキを生じる場合があったからである。ボコツキが生じると印刷物の美観が損なわれるだけでなく、印刷物のその後の加工適性をも損ねるおそれがある。
【0007】
本願発明は、かかる問題点を踏まえ、汎用インキを用いて印刷を行っても、インキが剥がれたり砕けたりして印刷面を汚さず、しかも、ボコツキが発生しない、美麗な印刷物を与える積層フィルムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは鋭意研究の結果、合成紙を製造する際に行われる延伸とインキ溶剤とがボコツキ発生の原因であることを見出し、合成紙表面に、インキバリア層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより積層した熱可塑性樹脂からなる層を設けることにより、上記課題を解決して本願発明を完成した。
【0009】
即ち、本願発明は、延伸フィルムの一方の側に、インキバリア層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより熱可塑性樹脂からなる1以上の層を設け、次いで、インキ受理層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより多孔性填料を含有する熱可塑性樹脂からなる1以上の層を設けたことを特徴とする、積層フィルムに関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本願発明を詳細に説明する。
【0011】
本願発明において延伸フィルムとは、フィルム成形後、オンラインまたはオフラインで引張り力が加えられ、延伸されたフィルムのことをいう。このような延伸フィルムであれば、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル又はこれらの混合物等に無機充填剤や発泡剤を練り込み、これを延伸して製造される合成紙はもちろん、これらの熱可塑性樹脂又は混合物を、無機充填剤や発泡剤を入れずに、ただ延伸しただけのフィルムであってもよい。かかる延伸フィルムはいずれも、インキ溶剤の浸透によりボコツキを発生させるため、本願発明によってボコツキ発生を防止する必要があるからである。
【0012】
この延伸フィルムの一方の側(以下、表側とも言う。)にインキバリア層として設ける、熱可塑性樹脂からなる層を形成する樹脂は、原則として、これに積層されることとなるインキ受理層との接着性が良く、押出しラミネーションが可能な熱可塑性樹脂であれば、どのようなものでも使用することができる。例えば、このような樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ホモポリプロピレン(ホモPP)といったオレフィン系樹脂を始め、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等から選択することができる。中でも、ホモPPは結晶化度が高いことから、これを押出しラミネーション又は共押出しラミネーションによりインキバリア層として設けた場合には、インキ溶剤に対して高いバリア性を示すので、インキバリア層を形成する樹脂として好ましい。なお、本願発明において、インキバリア層は2層以上設けても構わない。
【0013】
インキバリア層は厚さ5μm以上、特に厚さ10〜15μmの範囲にあることが好ましい。層厚がこの程度であれば、インキバリア層は十分にその機能を発揮することができる。もっとも、この厚さは、インキバリア層を形成する熱可塑性樹脂の特性に応じて調節することができる。また、インキバリア層を2層以上設ける場合には、インキバリア層全体としてその機能を発揮できる厚さがあれば、インキバリア層1層の厚さはもっと薄くても構わない
インキバリア層の上には、インキ受理層を積層する。このインキ受理層は、主として熱可塑性樹脂、及び、この熱可塑性樹脂に配合される多孔性填料からなる。
【0014】
インキ受理層を形成する熱可塑性樹脂も、原則として、これを積層することとなるインキバリア層との接着性が良く、押出しラミネーションが可能な熱可塑性樹脂であれば、どのようなものでも使用することができる。例えば、このような樹脂は、HDPE、LDPE、LLDPE、ランダムPP、スーパーランダムポリプロピレン(スーパーランダムPP)、ホモPPといったオレフィン系樹脂を始め、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等から選択することができる。中でも、スーパーランダムPPは結晶化度が低く、樹脂自体がインキ溶剤吸収能に優れることからインキ受理層を形成する樹脂として好ましい。
【0015】
一方、上記熱可塑性樹脂に配合される多孔性填料は、粒径が0.1〜20μmの範囲にあることが好ましい。粒径が0.1μm未満では、本願発明の効果を達成することができない。また、粒径が20μmより大きいと、これが配合されるインキ受理層の厚さとの関係で、填料がこれらの層から突出してその表面を荒らしてしまい、インキバリア層との接着性や、この表面に印刷をした場合の印刷面の美麗性に悪影響を与えるおそれがある。なお、ここで多孔性填料とは、その表面に多数の微細孔を持ち、高い空隙率をもつ填料をいう。
【0016】
かかる多孔性填料としては、無機填料と有機填料のどちらでも使用することができる。無機填料としては、炭酸カルシウム(例えば、神島化学工業社製『カルシーズP』)、酸化チタン(例えば、石原産業社製『タイベーク』)、クレー、シリカ(例えば、富士シリシア化学社製『サイロホービック456』)、タルク(例えば、日本タルク社製『ACEシリーズ』)、又はマイカ(例えば、山口雲母社製『HC−1069』)等を、有機填料としては、アクリル系、ポリスチレン系、スチレンアクリル系、クマロンインデン系、変性メラミン系等の樹脂からなる填料であって、多数のミクロボイド構造を持つものを使用することができる。但し、インキ受理層の色調は、これに施される印刷の美麗性に影響を与える。従って、ここで使用する多孔性填料としては、高い白色度を有するものが好ましい。中でも、炭酸カルシウムは、空隙率が大きく、インキ溶剤の吸収能が高い白色填料であり、本願発明のインキ受理層中に配合する多孔性填料として好ましい。なお、炭酸カルシウムを始め、上記多孔性填料は1種のみを使用しても、又は2種以上を併用しても構わない。
【0017】
インキ受理層への多孔性填料の配合量は、そのインキ受理層に十分なインキ溶剤吸収能を付与するため、インキ受理層全体に対して15重量%以上、特に20重量%以上とすることが好ましい。一方、多孔性填料があまり多量に配合されるとインキ受理層を形成する熱可塑性樹脂の加工性が悪くなるので、この配合量は40重量%未満とすることが好ましい。
【0018】
インキ受理層は厚さ5μm以上、特に厚さ10〜15μmの範囲にあることが好ましい。層厚がこの程度であれば、インキ受理層は十分にその機能を発揮することができる。もっとも、この厚さは、インキ受理層を形成する熱可塑性樹脂の特性に応じて、調節することができる。なお、インキ受理層も2層以上設けて構わない。この場合には、インキ受理層全体としてその機能を発揮できる厚さがあれば、インキ受理層1層の厚さはもっと薄くても構わない。
【0019】
本願発明においては、上記インキバリア層及びインキ受理層は、いずれも、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより設ける。なお、いわゆるサンドイッチラミネーションも、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションの一変法であって、これらのラミネーション法の範疇に含まれる。インキバリア層及び/又はインキ受理層の積層にあたっては、必要に応じ、これらの方法を適宜選択し、組合せればよいが、多孔性填料を配合した熱可塑性樹脂は加工性が劣るので、これを単独で押出しラミネートすると、膜切れ等のトラブルが発生するおそれがある。従って、インキ受理層(多孔性填料を配合した熱可塑性樹脂からなる層)の積層は、インキバリア層(多孔性填料非配合の熱可塑性樹脂からなる層)との共押出しラミネーションにより行うことが好ましい。
【0020】
インキ受理層の上には、更に、バインダー又はバインダーと多孔性填料を主成分とする塗工層を設けることもできる。
【0021】
この場合において、バインダーは、印刷インキとの接着性、その塗工層が設けられることとなるインキ受理層との接着性、塗工層の他の主成分である多孔性填料に対する保持力、耐水性等を考慮して選択すればよい。通常は、合成樹脂性のバインダーが用いられる。例えば、かかるバインダーとして、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、各種アクリル酸、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等をモノマー成分とする単独重合体、共重合体及び/又はこれらの変性物を、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等と混合して、あるいは混合せずに用いることができる。
【0022】
また、上記塗工層に配合される多孔性填料としては、前記インキ受理層に用いた多孔性填料と同様のものを用いることができる。もっとも、上記バインダーとして、スチレンブタジエン系ラテックスなど、それ自体が高いインキ溶剤吸収能を有するものを用いた場合には、塗工層中への多孔性填料の配合は必ずしも要しない。
【0023】
塗工層は、どのような方法を用いて設けてもよい。典型的には、上記バインダーと多孔性填料とを水系溶媒に均一に分散させた後、この分散液をエアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ダイコーター、バーコーター等を用いて、インキ受理層表面に塗工する。塗工量は0.5〜10g/m2、特に1〜5g/m2が好ましい。塗工量が0.5g/m2未満ではこの塗工層の機能が十分に発揮できないので、わざわざこれを設ける意味がなく、塗工量が10g/m2よりも多いと、塗工層がインキ受理層表面から脱落するおそれがある。塗工層も、いわゆる二度塗り等の手段で二層以上設けて構わない。この場合は、塗工層全体としての塗工量が0.5〜10g/m2の範囲にあれば、塗工層1層あたりの塗工量はもっと少なくて構わない。
【0024】
本願発明の積層フィルムに、汎用インキを用いて印刷する場合には、前記インキ受理層又はこのインキ受理層上に設けた上記塗工層を印刷面とすることにより、印刷面の汚れがなく、ボコツキの発生がない、美麗な印刷物を得ることができる。このとき、印刷の方式は問わない。オフセット印刷、グラビア印刷、活版印刷等、種々の方式により印刷を行うことができる。
【0025】
なお、本願発明の積層フィルムにおいては、上記した以外にも、本願発明の目的を損なわない限り、他の層を設けることができる。
【0026】
例えば、ボコツキの発生をより完全に防止するため、上記インキバリア層、インキ受理層及び/又は塗工層は、延伸フィルムの他方の側(延伸フィルム表側とは反対の側。以下、裏側とも言う。)にも設けることができる。このとき、インキバリア層、インキ受理層及び塗工層のいずれかを単独で設けてもよく、これらを適宜組合せて設けてもよい。インキバリア層、インキ受理層及び塗工層を組合せて設ける場合には、インキバリア層はインキ受理層や塗工層よりも延伸フィルム側、インキ受理層は塗工層よりも延伸フィルム側、塗工層はインキ受理層表面に常に位置するよう積層すれば、これらの層の機能を十分に発揮することができる。なお、延伸フィルム表側に積層されるインキバリア層、インキ受理層及び塗工層と同様、これらは、それぞれが1以上の層であってもよい。
【0027】
また、延伸フィルムと、これにラミネートされるインキバリア層との接着性が悪い場合には、延伸フィルム表面にアンカーコート層を設けたり、延伸フィルムとインキバリア層との間に接着性樹脂層を設けることで、両層の十分な接着が得られる。このとき、接着性樹脂層を形成する樹脂としては、シングルサイト系触媒を用いて合成されたLLDPE(SS−LLDPE)や、変性ポリエチレン(例えば、三井化学(株)製『アドマー』)等を使用することができる。
【0028】
さらに、上記延伸フィルム、インキバリア層、インキ受理層、塗工層及び他の層には、本願発明の目的を損なわない限り、一般的に使用される種々の添加剤を添加したり、塗工剤を塗工したりすることができる。例えば、これらの添加剤や塗工剤として、延伸フィルム、インキバリア層及び他の層には帯電防止剤等を、インキ受理層には帯電防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤等を、塗工層にはレベリング剤、ブロッキング防止剤、滑剤等を使用することができる。
【0029】
本願発明の積層フィルムの製造にあたって、ラミネーションや塗工により各層を積層する場合には、その層間接着力を向上させるため、定法に従って、コロナ処理、オゾン処理又はフレーム処理を行うことができる。例えば、延伸フィルムにインキバリア層(又はインキバリア層とインキ溶剤吸収層)を押出しラミネート(又は共押出しラミネート)する場合には、Tダイ押出機から溶融して押出される溶融樹脂の延伸フィルム対向面、即ち、インキバリア層を形成する樹脂の表面にオゾン処理を行うか、あるいは、延伸フィルムのインキバリア層対向面を、インキバリア層の積層直前にコロナ処理すればよい。
【0030】
【作用】
延伸フィルムは、フィルムの成形後、加熱、引張り力による一軸又は二軸方向への延伸、その状態での冷却、という工程を経て製造される。このため、延伸フィルムでは、その内部に、延伸処理が行われた際にフィルムに生じた歪みがそのまま固定される。これは、延伸して製造されるタイプの合成紙も同様である。
【0031】
かかる合成紙に汎用インキを用いて印刷を行うと、たとえ、その印刷面にインキ受理層が設けられてあったとしても、印刷に用いたインキ溶剤のうち、インキ受理層で吸収しきれなかった分はインキ受理層を通って合成紙本体に染込み、延伸時に生じた合成紙内部の歪みを部分的に開放する。そのため、印刷後の合成紙が不規則に波打って、ボコツキが発生すると考えられる。
【0032】
そこで本願発明では、このような延伸フィルムの一方の側に、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションによりインキ受理層及びインキバリア層を積層する。かかる積層フィルムのインキ受理層表面に印刷を行った場合、インキ溶剤はインキ受理層に染込み、更に、インキ受理層で吸収しきれなかったインキ溶剤はインキバリア層にも染込むが、延伸フィルムに染込むことはない。加えて、インキ受理層及びインキバリア層は押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより設けられているため、その内部に歪みが生じておらず、これらの層にインキ溶剤が染込んでもボコツキを起こすことはない。
【0033】
また、上記インキ受理層上にバインダー又はバインダーと多孔性填料からなる塗工層を設け、この塗工層表面に印刷を行えば、本願発明の積層フィルムは一層優れたインキ溶剤吸収能を示す。従って、この場合においては、より美麗な印刷物を与えることができる。
【0034】
さらに、本願発明において、上記延伸フィルムの他方の側にもインキバリア層、インキ受理層及び/又は塗工層を設ければ、ボコツキの発生をより完全に防止することができる。つまり、所定の印刷を終えた後の印刷物は、印刷面を上にして積み重ねられた状態で保管されるのが常であるが、この保管時に、印刷物の裏面には、その下に重ねられている印刷物の印刷面から、若干量のインキ溶剤が染込み、これが原因となってボコツキを起こすことがある。延伸フィルム裏側に設けられたインキバリア層、インキ受理層及び/又は塗工層は、このような裏面からの染込みをブロックする役割を果たすのである。もっとも、この場合において、インキバリア層、インキ受理層及び/又は塗工層は、いずれか1の層を設けただけでもよい。印刷物を積み重ねて保管した際に、裏面から染込むインキ溶剤の量は、印刷されることによって、その表面から染込むインキ溶剤の量に較べてかなり少ないので、これらのうちいずれかの層を設けただけでも、裏面からのインキ溶剤の染込みは十分にブロックすることができるからである。
【0035】
【実施例】
以下に、本願発明を実施例に基づいて説明する。
【0036】
[実施例1]
インキ受理層となる炭酸カルシウム35重量%を添加混合した溶融ホモPP(MFR25g/10分、密度0.91g/cm3)を、インキバリア層となる炭酸カルシウム無添加の溶融ホモPP(同上)と共に、厚さ80μmの2軸延伸PP製白色シートの両面に、炭酸カルシウム無添加のホモPP層が白色シート側に位置するように、Tダイを用いて押出温度290℃にて共押出ラミネーションを行い、次いで、この積層フィルム両面の最外層(炭酸カルシウム含有ホモPP層)にコロナ処理をして、汎用インキにて印刷可能な積層フィルムを得た。なお、このとき炭酸カルシウム含有ホモPP層及び炭酸カルシウム不含ホモPP層の厚さは、それぞれ8μmであった。
【0037】
この積層フィルムの一方の面に、一般コート紙用インキを用い、オフセット4色印刷機にて印刷したところ、印面の汚れのない印刷物を得ることができた。また、印刷面が上になるようにして積み重ね、室温に放置したこの印刷物について、印刷の翌日から1週間後まで毎日、目視にてフィルムの変形を観察したが、ボコツキは発生していなかった。
結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
2軸延伸ポリプロピレン製白色シートの一方の面にのみ、炭酸カルシウム含有溶融ホモPPと炭酸カルシウム不含溶融ホモPPとを共押出しラミネートした他は、実施例1と同様に、汎用インキにて印刷可能な積層フィルムを得て、その炭酸カルシウム含有ホモPP層表面に印刷を行い、評価した。
【0039】
表1より明らかなように、この積層フィルムも印面の汚れのない印刷物を与え、また、ボコツキも殆ど発生させなかった。
【0040】
[実施例3]
粒径1μm以下のクレー80重量部、及び、平均粒径4μmのシリカ20重量部を固形分濃度40重量%となるよう分散した水溶液に、スチレン変性アクリル酸エステル共重合樹脂の水系ディスパージョン(濃度48重量%、平均粒径0.4μm)110重量部を混合して塗工液を調製し、この塗工液2g/m2を、積層フィルム両面の最外層(インキ受理層)に塗工して塗工層とした他は、実施例1と同様に、汎用インキにて印刷可能な積層フィルムを得て、その一方の面に印刷を行い、評価した。
【0041】
表1より明らかなように、この積層フィルムも印面の汚れのない印刷物を与え、また、ボコツキは全く発生させなかった。
【0042】
[実施例4]
塗工層を積層フィルムの一方の面にのみ設け、この塗工層表面に印刷を行った他は、実施例3と同様に、汎用インキにて印刷可能な積層フィルムを得て評価した。
【0043】
表1より明らかなように、この積層フィルムも印面の汚れのない印刷物を与え、また、ボコツキは全く発生させなかった。
【0044】
[比較例1]
厚さ130μmの2軸延伸ポリプロピレン製白色シートの一方の面に直接オフセット印刷を行ったものについて、実施例1と同様に評価した。
【0045】
表2より明らかなように、出来上がりの印刷物は印面が汚く、ボコツキも発生した。
【0046】
[比較例2]
粒径1μm以下のクレー80重量部、及び、平均粒径4μmのシリカ20重量部を固形分濃度40重量%となるよう分散した水溶液に、スチレン変性アクリル酸エステル共重合樹脂の水系ディスパージョン(濃度48重量%、平均粒径0.4μm)110重量部を混合して塗工液を調製し、この塗工液2g/m2を、厚さ130μmの2軸延伸ポリプロピレン製白色シート両面に直接塗工して塗工層とした他は、実施例1と同様に、積層フィルムを得て評価した。
【0047】
表2より明らかなように、出来上がりの印刷物は印面こそ良好であったものの、ボコツキが発生した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【発明の効果】
本願発明の積層フィルムは、種々の印刷方式によっても汎用インキにて印刷することができ、美麗な印面を与える。しかも、本願発明の積層フィルムは、オフセット印刷を行った場合に特に起こり易い、ボコツキの発生をも防止する。
【0051】
また、本願発明の積層フィルムは、基材が延伸フィルムであるので、通常の印刷用紙と較べ、遥かに優れた耐水性を占めす。
【0052】
従って、本願発明の積層フィルムは、ポスター、ラベル、耐水伝票等、出来上がりの印刷物の美麗性と耐水性が共に要求される分野の印刷用フィルムとして、特に有用である。
【発明の属する技術分野】
本願発明は汎用インキにて印刷ができ、かつ、美麗な印刷物を与える積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、合成紙として、熱可塑性樹脂に無機充填剤や発泡剤を練り込んで延伸したタイプのものが知られ、ポスター、ラベル、配送伝票等、耐水性が要求される各種分野で用いられている。
【0003】
このような合成紙の印刷に際しては、通常、合成紙専用インキが用いられる。紙の印刷に汎用されているインキは合成紙に殆ど染込まない。そのため、汎用インキを用いて合成紙に印刷を行うと、印刷されたインキは合成紙表面に滞留して乾燥し、印刷後の合成紙を擦ったりした場合に、乾燥したインキが合成紙表面から剥がれ落ちたり、合成紙表面で砕けたりして印刷面を汚してしまう。一方、合成紙専用インキは、不飽和結合を多く含む植物油を主体とした溶剤を用いており、印刷されたインキが合成紙の表面に滞留しても、滞留したインキが酸化重合して強固なインキ層を形成する。従って、合成紙専用インキを用いれば、汎用インキを用いた場合に発生する印刷トラブルを防止することができるからである。
【0004】
しかし、合成紙専用インキは、その乾燥(印刷された合成紙表面へのインキの固定)を、専ら酸化重合にのみ頼っているため、乾燥速度が非常に遅いという欠点がある。そこで、合成紙表面に適宜インキ受理層を設ける等により、汎用インキを用いても印刷可能な合成紙の開発が進められている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭53−6676号公報(第1頁、特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
合成紙の印刷面に適当なインキ受理層を設ければ、汎用インキを用いても美麗な印刷物を得ることができるはずである。インキはこの受理層に染込むので、表面に滞留して乾燥することはない。ところが、こうしてインキ受理性を改善しても、得られた合成紙はなお、汎用インキでの印刷に適さないものであった。汎用インキを用いてこの合成紙に印刷を行うと、合成紙が不規則に波打つといった現象、いわゆるボコツキを生じる場合があったからである。ボコツキが生じると印刷物の美観が損なわれるだけでなく、印刷物のその後の加工適性をも損ねるおそれがある。
【0007】
本願発明は、かかる問題点を踏まえ、汎用インキを用いて印刷を行っても、インキが剥がれたり砕けたりして印刷面を汚さず、しかも、ボコツキが発生しない、美麗な印刷物を与える積層フィルムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは鋭意研究の結果、合成紙を製造する際に行われる延伸とインキ溶剤とがボコツキ発生の原因であることを見出し、合成紙表面に、インキバリア層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより積層した熱可塑性樹脂からなる層を設けることにより、上記課題を解決して本願発明を完成した。
【0009】
即ち、本願発明は、延伸フィルムの一方の側に、インキバリア層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより熱可塑性樹脂からなる1以上の層を設け、次いで、インキ受理層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより多孔性填料を含有する熱可塑性樹脂からなる1以上の層を設けたことを特徴とする、積層フィルムに関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本願発明を詳細に説明する。
【0011】
本願発明において延伸フィルムとは、フィルム成形後、オンラインまたはオフラインで引張り力が加えられ、延伸されたフィルムのことをいう。このような延伸フィルムであれば、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル又はこれらの混合物等に無機充填剤や発泡剤を練り込み、これを延伸して製造される合成紙はもちろん、これらの熱可塑性樹脂又は混合物を、無機充填剤や発泡剤を入れずに、ただ延伸しただけのフィルムであってもよい。かかる延伸フィルムはいずれも、インキ溶剤の浸透によりボコツキを発生させるため、本願発明によってボコツキ発生を防止する必要があるからである。
【0012】
この延伸フィルムの一方の側(以下、表側とも言う。)にインキバリア層として設ける、熱可塑性樹脂からなる層を形成する樹脂は、原則として、これに積層されることとなるインキ受理層との接着性が良く、押出しラミネーションが可能な熱可塑性樹脂であれば、どのようなものでも使用することができる。例えば、このような樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ホモポリプロピレン(ホモPP)といったオレフィン系樹脂を始め、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等から選択することができる。中でも、ホモPPは結晶化度が高いことから、これを押出しラミネーション又は共押出しラミネーションによりインキバリア層として設けた場合には、インキ溶剤に対して高いバリア性を示すので、インキバリア層を形成する樹脂として好ましい。なお、本願発明において、インキバリア層は2層以上設けても構わない。
【0013】
インキバリア層は厚さ5μm以上、特に厚さ10〜15μmの範囲にあることが好ましい。層厚がこの程度であれば、インキバリア層は十分にその機能を発揮することができる。もっとも、この厚さは、インキバリア層を形成する熱可塑性樹脂の特性に応じて調節することができる。また、インキバリア層を2層以上設ける場合には、インキバリア層全体としてその機能を発揮できる厚さがあれば、インキバリア層1層の厚さはもっと薄くても構わない
インキバリア層の上には、インキ受理層を積層する。このインキ受理層は、主として熱可塑性樹脂、及び、この熱可塑性樹脂に配合される多孔性填料からなる。
【0014】
インキ受理層を形成する熱可塑性樹脂も、原則として、これを積層することとなるインキバリア層との接着性が良く、押出しラミネーションが可能な熱可塑性樹脂であれば、どのようなものでも使用することができる。例えば、このような樹脂は、HDPE、LDPE、LLDPE、ランダムPP、スーパーランダムポリプロピレン(スーパーランダムPP)、ホモPPといったオレフィン系樹脂を始め、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等から選択することができる。中でも、スーパーランダムPPは結晶化度が低く、樹脂自体がインキ溶剤吸収能に優れることからインキ受理層を形成する樹脂として好ましい。
【0015】
一方、上記熱可塑性樹脂に配合される多孔性填料は、粒径が0.1〜20μmの範囲にあることが好ましい。粒径が0.1μm未満では、本願発明の効果を達成することができない。また、粒径が20μmより大きいと、これが配合されるインキ受理層の厚さとの関係で、填料がこれらの層から突出してその表面を荒らしてしまい、インキバリア層との接着性や、この表面に印刷をした場合の印刷面の美麗性に悪影響を与えるおそれがある。なお、ここで多孔性填料とは、その表面に多数の微細孔を持ち、高い空隙率をもつ填料をいう。
【0016】
かかる多孔性填料としては、無機填料と有機填料のどちらでも使用することができる。無機填料としては、炭酸カルシウム(例えば、神島化学工業社製『カルシーズP』)、酸化チタン(例えば、石原産業社製『タイベーク』)、クレー、シリカ(例えば、富士シリシア化学社製『サイロホービック456』)、タルク(例えば、日本タルク社製『ACEシリーズ』)、又はマイカ(例えば、山口雲母社製『HC−1069』)等を、有機填料としては、アクリル系、ポリスチレン系、スチレンアクリル系、クマロンインデン系、変性メラミン系等の樹脂からなる填料であって、多数のミクロボイド構造を持つものを使用することができる。但し、インキ受理層の色調は、これに施される印刷の美麗性に影響を与える。従って、ここで使用する多孔性填料としては、高い白色度を有するものが好ましい。中でも、炭酸カルシウムは、空隙率が大きく、インキ溶剤の吸収能が高い白色填料であり、本願発明のインキ受理層中に配合する多孔性填料として好ましい。なお、炭酸カルシウムを始め、上記多孔性填料は1種のみを使用しても、又は2種以上を併用しても構わない。
【0017】
インキ受理層への多孔性填料の配合量は、そのインキ受理層に十分なインキ溶剤吸収能を付与するため、インキ受理層全体に対して15重量%以上、特に20重量%以上とすることが好ましい。一方、多孔性填料があまり多量に配合されるとインキ受理層を形成する熱可塑性樹脂の加工性が悪くなるので、この配合量は40重量%未満とすることが好ましい。
【0018】
インキ受理層は厚さ5μm以上、特に厚さ10〜15μmの範囲にあることが好ましい。層厚がこの程度であれば、インキ受理層は十分にその機能を発揮することができる。もっとも、この厚さは、インキ受理層を形成する熱可塑性樹脂の特性に応じて、調節することができる。なお、インキ受理層も2層以上設けて構わない。この場合には、インキ受理層全体としてその機能を発揮できる厚さがあれば、インキ受理層1層の厚さはもっと薄くても構わない。
【0019】
本願発明においては、上記インキバリア層及びインキ受理層は、いずれも、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより設ける。なお、いわゆるサンドイッチラミネーションも、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションの一変法であって、これらのラミネーション法の範疇に含まれる。インキバリア層及び/又はインキ受理層の積層にあたっては、必要に応じ、これらの方法を適宜選択し、組合せればよいが、多孔性填料を配合した熱可塑性樹脂は加工性が劣るので、これを単独で押出しラミネートすると、膜切れ等のトラブルが発生するおそれがある。従って、インキ受理層(多孔性填料を配合した熱可塑性樹脂からなる層)の積層は、インキバリア層(多孔性填料非配合の熱可塑性樹脂からなる層)との共押出しラミネーションにより行うことが好ましい。
【0020】
インキ受理層の上には、更に、バインダー又はバインダーと多孔性填料を主成分とする塗工層を設けることもできる。
【0021】
この場合において、バインダーは、印刷インキとの接着性、その塗工層が設けられることとなるインキ受理層との接着性、塗工層の他の主成分である多孔性填料に対する保持力、耐水性等を考慮して選択すればよい。通常は、合成樹脂性のバインダーが用いられる。例えば、かかるバインダーとして、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、各種アクリル酸、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等をモノマー成分とする単独重合体、共重合体及び/又はこれらの変性物を、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等と混合して、あるいは混合せずに用いることができる。
【0022】
また、上記塗工層に配合される多孔性填料としては、前記インキ受理層に用いた多孔性填料と同様のものを用いることができる。もっとも、上記バインダーとして、スチレンブタジエン系ラテックスなど、それ自体が高いインキ溶剤吸収能を有するものを用いた場合には、塗工層中への多孔性填料の配合は必ずしも要しない。
【0023】
塗工層は、どのような方法を用いて設けてもよい。典型的には、上記バインダーと多孔性填料とを水系溶媒に均一に分散させた後、この分散液をエアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ダイコーター、バーコーター等を用いて、インキ受理層表面に塗工する。塗工量は0.5〜10g/m2、特に1〜5g/m2が好ましい。塗工量が0.5g/m2未満ではこの塗工層の機能が十分に発揮できないので、わざわざこれを設ける意味がなく、塗工量が10g/m2よりも多いと、塗工層がインキ受理層表面から脱落するおそれがある。塗工層も、いわゆる二度塗り等の手段で二層以上設けて構わない。この場合は、塗工層全体としての塗工量が0.5〜10g/m2の範囲にあれば、塗工層1層あたりの塗工量はもっと少なくて構わない。
【0024】
本願発明の積層フィルムに、汎用インキを用いて印刷する場合には、前記インキ受理層又はこのインキ受理層上に設けた上記塗工層を印刷面とすることにより、印刷面の汚れがなく、ボコツキの発生がない、美麗な印刷物を得ることができる。このとき、印刷の方式は問わない。オフセット印刷、グラビア印刷、活版印刷等、種々の方式により印刷を行うことができる。
【0025】
なお、本願発明の積層フィルムにおいては、上記した以外にも、本願発明の目的を損なわない限り、他の層を設けることができる。
【0026】
例えば、ボコツキの発生をより完全に防止するため、上記インキバリア層、インキ受理層及び/又は塗工層は、延伸フィルムの他方の側(延伸フィルム表側とは反対の側。以下、裏側とも言う。)にも設けることができる。このとき、インキバリア層、インキ受理層及び塗工層のいずれかを単独で設けてもよく、これらを適宜組合せて設けてもよい。インキバリア層、インキ受理層及び塗工層を組合せて設ける場合には、インキバリア層はインキ受理層や塗工層よりも延伸フィルム側、インキ受理層は塗工層よりも延伸フィルム側、塗工層はインキ受理層表面に常に位置するよう積層すれば、これらの層の機能を十分に発揮することができる。なお、延伸フィルム表側に積層されるインキバリア層、インキ受理層及び塗工層と同様、これらは、それぞれが1以上の層であってもよい。
【0027】
また、延伸フィルムと、これにラミネートされるインキバリア層との接着性が悪い場合には、延伸フィルム表面にアンカーコート層を設けたり、延伸フィルムとインキバリア層との間に接着性樹脂層を設けることで、両層の十分な接着が得られる。このとき、接着性樹脂層を形成する樹脂としては、シングルサイト系触媒を用いて合成されたLLDPE(SS−LLDPE)や、変性ポリエチレン(例えば、三井化学(株)製『アドマー』)等を使用することができる。
【0028】
さらに、上記延伸フィルム、インキバリア層、インキ受理層、塗工層及び他の層には、本願発明の目的を損なわない限り、一般的に使用される種々の添加剤を添加したり、塗工剤を塗工したりすることができる。例えば、これらの添加剤や塗工剤として、延伸フィルム、インキバリア層及び他の層には帯電防止剤等を、インキ受理層には帯電防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤等を、塗工層にはレベリング剤、ブロッキング防止剤、滑剤等を使用することができる。
【0029】
本願発明の積層フィルムの製造にあたって、ラミネーションや塗工により各層を積層する場合には、その層間接着力を向上させるため、定法に従って、コロナ処理、オゾン処理又はフレーム処理を行うことができる。例えば、延伸フィルムにインキバリア層(又はインキバリア層とインキ溶剤吸収層)を押出しラミネート(又は共押出しラミネート)する場合には、Tダイ押出機から溶融して押出される溶融樹脂の延伸フィルム対向面、即ち、インキバリア層を形成する樹脂の表面にオゾン処理を行うか、あるいは、延伸フィルムのインキバリア層対向面を、インキバリア層の積層直前にコロナ処理すればよい。
【0030】
【作用】
延伸フィルムは、フィルムの成形後、加熱、引張り力による一軸又は二軸方向への延伸、その状態での冷却、という工程を経て製造される。このため、延伸フィルムでは、その内部に、延伸処理が行われた際にフィルムに生じた歪みがそのまま固定される。これは、延伸して製造されるタイプの合成紙も同様である。
【0031】
かかる合成紙に汎用インキを用いて印刷を行うと、たとえ、その印刷面にインキ受理層が設けられてあったとしても、印刷に用いたインキ溶剤のうち、インキ受理層で吸収しきれなかった分はインキ受理層を通って合成紙本体に染込み、延伸時に生じた合成紙内部の歪みを部分的に開放する。そのため、印刷後の合成紙が不規則に波打って、ボコツキが発生すると考えられる。
【0032】
そこで本願発明では、このような延伸フィルムの一方の側に、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションによりインキ受理層及びインキバリア層を積層する。かかる積層フィルムのインキ受理層表面に印刷を行った場合、インキ溶剤はインキ受理層に染込み、更に、インキ受理層で吸収しきれなかったインキ溶剤はインキバリア層にも染込むが、延伸フィルムに染込むことはない。加えて、インキ受理層及びインキバリア層は押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより設けられているため、その内部に歪みが生じておらず、これらの層にインキ溶剤が染込んでもボコツキを起こすことはない。
【0033】
また、上記インキ受理層上にバインダー又はバインダーと多孔性填料からなる塗工層を設け、この塗工層表面に印刷を行えば、本願発明の積層フィルムは一層優れたインキ溶剤吸収能を示す。従って、この場合においては、より美麗な印刷物を与えることができる。
【0034】
さらに、本願発明において、上記延伸フィルムの他方の側にもインキバリア層、インキ受理層及び/又は塗工層を設ければ、ボコツキの発生をより完全に防止することができる。つまり、所定の印刷を終えた後の印刷物は、印刷面を上にして積み重ねられた状態で保管されるのが常であるが、この保管時に、印刷物の裏面には、その下に重ねられている印刷物の印刷面から、若干量のインキ溶剤が染込み、これが原因となってボコツキを起こすことがある。延伸フィルム裏側に設けられたインキバリア層、インキ受理層及び/又は塗工層は、このような裏面からの染込みをブロックする役割を果たすのである。もっとも、この場合において、インキバリア層、インキ受理層及び/又は塗工層は、いずれか1の層を設けただけでもよい。印刷物を積み重ねて保管した際に、裏面から染込むインキ溶剤の量は、印刷されることによって、その表面から染込むインキ溶剤の量に較べてかなり少ないので、これらのうちいずれかの層を設けただけでも、裏面からのインキ溶剤の染込みは十分にブロックすることができるからである。
【0035】
【実施例】
以下に、本願発明を実施例に基づいて説明する。
【0036】
[実施例1]
インキ受理層となる炭酸カルシウム35重量%を添加混合した溶融ホモPP(MFR25g/10分、密度0.91g/cm3)を、インキバリア層となる炭酸カルシウム無添加の溶融ホモPP(同上)と共に、厚さ80μmの2軸延伸PP製白色シートの両面に、炭酸カルシウム無添加のホモPP層が白色シート側に位置するように、Tダイを用いて押出温度290℃にて共押出ラミネーションを行い、次いで、この積層フィルム両面の最外層(炭酸カルシウム含有ホモPP層)にコロナ処理をして、汎用インキにて印刷可能な積層フィルムを得た。なお、このとき炭酸カルシウム含有ホモPP層及び炭酸カルシウム不含ホモPP層の厚さは、それぞれ8μmであった。
【0037】
この積層フィルムの一方の面に、一般コート紙用インキを用い、オフセット4色印刷機にて印刷したところ、印面の汚れのない印刷物を得ることができた。また、印刷面が上になるようにして積み重ね、室温に放置したこの印刷物について、印刷の翌日から1週間後まで毎日、目視にてフィルムの変形を観察したが、ボコツキは発生していなかった。
結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
2軸延伸ポリプロピレン製白色シートの一方の面にのみ、炭酸カルシウム含有溶融ホモPPと炭酸カルシウム不含溶融ホモPPとを共押出しラミネートした他は、実施例1と同様に、汎用インキにて印刷可能な積層フィルムを得て、その炭酸カルシウム含有ホモPP層表面に印刷を行い、評価した。
【0039】
表1より明らかなように、この積層フィルムも印面の汚れのない印刷物を与え、また、ボコツキも殆ど発生させなかった。
【0040】
[実施例3]
粒径1μm以下のクレー80重量部、及び、平均粒径4μmのシリカ20重量部を固形分濃度40重量%となるよう分散した水溶液に、スチレン変性アクリル酸エステル共重合樹脂の水系ディスパージョン(濃度48重量%、平均粒径0.4μm)110重量部を混合して塗工液を調製し、この塗工液2g/m2を、積層フィルム両面の最外層(インキ受理層)に塗工して塗工層とした他は、実施例1と同様に、汎用インキにて印刷可能な積層フィルムを得て、その一方の面に印刷を行い、評価した。
【0041】
表1より明らかなように、この積層フィルムも印面の汚れのない印刷物を与え、また、ボコツキは全く発生させなかった。
【0042】
[実施例4]
塗工層を積層フィルムの一方の面にのみ設け、この塗工層表面に印刷を行った他は、実施例3と同様に、汎用インキにて印刷可能な積層フィルムを得て評価した。
【0043】
表1より明らかなように、この積層フィルムも印面の汚れのない印刷物を与え、また、ボコツキは全く発生させなかった。
【0044】
[比較例1]
厚さ130μmの2軸延伸ポリプロピレン製白色シートの一方の面に直接オフセット印刷を行ったものについて、実施例1と同様に評価した。
【0045】
表2より明らかなように、出来上がりの印刷物は印面が汚く、ボコツキも発生した。
【0046】
[比較例2]
粒径1μm以下のクレー80重量部、及び、平均粒径4μmのシリカ20重量部を固形分濃度40重量%となるよう分散した水溶液に、スチレン変性アクリル酸エステル共重合樹脂の水系ディスパージョン(濃度48重量%、平均粒径0.4μm)110重量部を混合して塗工液を調製し、この塗工液2g/m2を、厚さ130μmの2軸延伸ポリプロピレン製白色シート両面に直接塗工して塗工層とした他は、実施例1と同様に、積層フィルムを得て評価した。
【0047】
表2より明らかなように、出来上がりの印刷物は印面こそ良好であったものの、ボコツキが発生した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【発明の効果】
本願発明の積層フィルムは、種々の印刷方式によっても汎用インキにて印刷することができ、美麗な印面を与える。しかも、本願発明の積層フィルムは、オフセット印刷を行った場合に特に起こり易い、ボコツキの発生をも防止する。
【0051】
また、本願発明の積層フィルムは、基材が延伸フィルムであるので、通常の印刷用紙と較べ、遥かに優れた耐水性を占めす。
【0052】
従って、本願発明の積層フィルムは、ポスター、ラベル、耐水伝票等、出来上がりの印刷物の美麗性と耐水性が共に要求される分野の印刷用フィルムとして、特に有用である。
Claims (3)
- 延伸フィルムの一方の側に、インキバリア層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより熱可塑性樹脂からなる1以上の層を設け、次いで、インキ受理層として、押出しラミネーション又は共押出しラミネーションにより多孔性填料を含有する熱可塑性樹脂からなる1以上の層を設けたことを特徴とする、積層フィルム。
- インキ受理層の表面に、更に、バインダー又はバインダーと多孔性填料からなる1以上の塗工層を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルム。
- インキバリア層、インキ受理層及び塗工層のうちの少なくとも1の層を、積層フィルムの他方の側にも設けたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
Priority Applications (1)
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JP2003129575A JP2004299371A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 汎用インキにて印刷可能な積層フィルム |
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JP2009280262A (ja) * | 2008-05-23 | 2009-12-03 | Kawakami Sangyo Co Ltd | バンパー用包装材 |
-
2003
- 2003-03-31 JP JP2003129575A patent/JP2004299371A/ja active Pending
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