JP2004296240A - ニッケル水素二次電池及びニッケル水素二次電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高容量且つ長寿命であるニッケル水素二次電池の提供。
【解決手段】水酸化ニッケルを含有する正極と、水素吸蔵合金を含有する負極と、前記正極と前記負極との間に介装されたセパレータと、アルカリ電解液とが容器内に収納されてなるニッケル水素二次電池において、前記水素吸蔵合金は、ランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる第1の群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素、V,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる第2の群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素、及びAlを含有し、前記水素吸蔵合金における第1の元素に対するAlのモル比は0.3以下であることを特徴とするニッケル水素二次電池。
【選択図】 なし
【解決手段】水酸化ニッケルを含有する正極と、水素吸蔵合金を含有する負極と、前記正極と前記負極との間に介装されたセパレータと、アルカリ電解液とが容器内に収納されてなるニッケル水素二次電池において、前記水素吸蔵合金は、ランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる第1の群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素、V,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる第2の群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素、及びAlを含有し、前記水素吸蔵合金における第1の元素に対するAlのモル比は0.3以下であることを特徴とするニッケル水素二次電池。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はニッケル水素二次電池及びニッケル水素二次電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動工具、バックアップ電源、あるいは電気自動車等、近年、ニッケル水素二次電池の用途はますます拡大しており、これに伴って、ニッケル水素二次電池に対するその高容量化及び長寿命化の要望は強まる一方である。
ニッケル水素二次電池の高容量化・長寿命化の方法としては、例えば、電池缶内における部材の大きさや配置等を工夫して、電池缶内の有限な空間を有効に活用し、もって正極活物質及び負極活物質の含有量を増加させる方法と、正極及び負極における活物質の単位体積当りの利用率を高める方法とがある。
【0003】
前者の方法の場合、充放電反応に直接寄与しない導電部材や絶縁部材の使用は必要最低限にとどめられる。例えば、正極と負極とを隔てるために必須であるセパレータは可能な限り薄くされ、この薄くした分の体積が正極及び負極に割り当てられている。
例えば、特許文献1はこの種のニッケル水素二次電池を開示しており、この従来技術のニッケル水素二次電池にあっては、セパレータの厚みが0.15〜0.3mmに限定されている。
【0004】
また、後者の方法の場合、より多くのアルカリ電解液を正極と負極との間に存在させるべく、セパレータの目付量を下げたり、あるいは前者の場合と同様にセパレータを薄くすることが有効である。
さらに通常、ニッケル水素二次電池を作製する際には、電池組立後に活性化、あるいはコンディショニング等と呼ばれる処理を行う。これは、負極に用いられている水素吸蔵合金は空気中で表面酸化等により不導体化してしまうため、充放電を繰り返すことで、合金の割れを促進し、新鮮面を露出させることで反応性を向上させる必要があるためである。
【0005】
【特許文献1】
特開平3−59985号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、セパレータの厚みを薄くする薄型化や、あるいはその目付量を下げる低密度化を更に推し進めた場合、正極と負極との間において短絡が生じやすくなるという問題がある。特に、ニッケル水素二次電池においては、負極の水素吸蔵合金の一部が、アルカリ電解液中に一旦溶解してからセパレータに金属として析出し、この析出金属がセパレータを貫通して短絡を引き起こすというショートモードが存在する。そのため、先にあげた特許文献1のニッケル水素二次電池においても、セパレータの厚みは0.15mm以上に設定されている。
【0007】
本発明は、このような課題に対処するためになされたものであって、正負極間における短絡を防止しながら更なるセパレータの薄型化あるいは低密度化が可能であって、高容量且つ長寿命であるニッケル水素二次電池の提供を目的とする。また、前記活性化工程は、通常2〜4回程度の充放電を繰り返す必要があるため、その分の電気代が必要となる、完成まで時間を必要とする等、工業的には問題が多い。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者は、セパレータの薄型化及び低密度化により引き起こされる上述した電極間での短絡問題を解決すべく種々検討を重ねた。そしてその結果、発明者は、ランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる第1の群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素、V,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる第2の群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素、及びAlを含有し、第1の元素に対するAlのモル比は0.3以下である水素吸蔵合金を負極に適用することで、セパレータの薄型化・低密度化によって生じる上記の問題を改善できることを見出し、本発明のニッケル水素二次電池を開発するに至った。
【0009】
すなわち、上記目的を達成するために、本発明によれば、水酸化ニッケルを含有する正極と、水素吸蔵合金を含有する負極と、前記正極と前記負極との間に介装されたセパレータと、アルカリ電解液とが容器内に収納されてなるニッケル水素二次電池において、前記水素吸蔵合金は、ランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる第1の群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素、V,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる第2の群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素、及びAlを含有し、前記水素吸蔵合金における第1の元素に対するAlのモル比は0.3以下であることを特徴とするニッケル水素二次電池が提供される(請求項1)。
【0010】
上記した構成においては、前記第2の群は、更に、Cr,Mn,およびCoを含んでいてもよいが、前記水素吸蔵合金に含まれるCr,Mn,およびCoの全原子濃度が6atomic%以下であることが好ましい(請求項2)。
そして、前記水素吸蔵合金の組成は、一般式:
Ln1−xMgx(Ni1−y1−y2Ty1Aly2)z
(ただし、式中、Lnはランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、TはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、x,y1,y2,zはそれぞれ、0<x<1,0<y1+y2≦0.5,2.5≦z≦4.5として規定される数値である)で表されることが好ましい(請求項3)。
【0011】
また、前記セパレータの厚みは40〜120μmであることが好ましい(請求項4)。
そして、前記セパレータの目付けは30〜80g/cm2であることが好ましい(請求項5)。
また、本発明によれば、水酸化ニッケルを含有する正極と、一般式:
Ln1−xMgx(Ni1−y1−y2Ty1Aly2)z
(ただし、式中、Lnはランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、TはV,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、x,y1,y2,zはそれぞれ、0<x<1,0<y1+y2≦0.5,2.5≦z≦4.5として規定される数値である)で表される組成を有する水素吸蔵合金を含有する負極と、前記正極と前記負極との間に介装されたセパレータと、アルカリ電解液とが容器内に収納されてなるニッケル水素二次電池を組立てる工程と、前記組立てられたニッケル水素二次電池に対して、このニッケル水素二次電池の公称容量よりも少ない充電量にて第1回目の充電処理を行なう活性化工程とを具備したことを特徴とするニッケル水素二次電池の製造方法が提供される(請求項6)。
【0012】
上記した製造方法においては、前記第2の群は、更に、Cr,Mn,およびCoを含んでいてもよいが、前記水素吸蔵合金に含まれるCr,Mn,およびCoの全原子濃度が6atomic%以下であることが好ましい(請求項7)。
そして、前記第1回目の充電量が前記公称容量の40〜80%であることが好ましい(請求項8)。
【0013】
また、前記活性化工程は、15〜35℃の環境温度下にて行なわれることが好ましい(請求項9)。
更に、前記活性化工程において、前記組立てられたニッケル水素二次電池に充放電処理を1回のみ行なうことが好ましい(請求項10)。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施形態のニッケル水素二次電池(以下、電池Aという)について詳述する。
電池Aは、後述する負極を備えている外は、公知の電池と同じ構成を有している。例えば電池Aは、負極端子を兼ねる、一端が開口した有底円筒形状の電池容器を有し、この開口は正極端子を兼ねる封口体により閉塞されている。電池容器内には、それぞれ板状の正極と負極とが、セパレータを介して巻回されてセパレータを挟んで互いに対向した状態で収容され、正極と正極端子との間、および負極と負極端子との間は、それぞれ電気的に接続されている。そして、これら電極とともに、電池容器内にはアルカリ電解液が収容されている。このアルカリ電解液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びこれらのうち2つ以上を混合した水溶液等を用いることができる。
【0015】
正極は、正極用芯体を有し、この芯体には正極用合剤が担持されている。ここで、正極用芯体は、公知のものでよく、例えば、多孔質構造を有するスポンジ状ニッケル等を使用することができる。
正極用合剤は、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質、添加剤及び結着剤等からなる。結着剤は公知のものでよく、親水性若しくは疎水性のポリマー等を使用することができ、それぞれの一例として、前者としてカルボキシメチルセルロース(CMC)、後者としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を挙げることができる。
【0016】
正極活物質についても公知のものを使用することができ、例えば、水酸化ニッケル粒子の外、ニッケルの平均価数が2.0を超えている水酸化ニッケル粒子(以下、高次水酸化ニッケル粒子ともいう)を用いることができる。この高次水酸化ニッケルにおいては、好ましいニッケルの平均価数の範囲は2.05〜2.30価であり、より好ましくは2.10〜2.30価である。
【0017】
これら水酸化ニッケル粒子および高次水酸化ニッケル粒子は、コバルト、亜鉛、カドミウム等を固溶していてもよい。そして、これら水酸化ニッケル粒子及び高次水酸化ニッケル粒子は、コバルト化合物からなる被覆層を表面に有する粒子(以下、複合粒子ともいう)であってもよい。更には、複合粒子は、コバルト化合物がNa等のアルカリカチオンを含有している粒子であってもよい。
【0018】
また、複合粒子における被覆層のコバルト化合物としては、例えば、三酸化二コバルト(Co2O3)、コバルト金属(Co)、一酸化コバルト(CoO)、水酸化コバルト(Co(OH)2)等を挙げることができる。この複合粒子のコバルト化合物にあっては、コバルトの平均価数が2.0を超えている高次コバルト化合物であることが好ましく、さらには、Na,K,Li等のアルカリカチオンを含む高次コバルト化合物であることがより好ましい。
【0019】
電池Aにおいて、正極と負極との間に介装されたセパレータの材質は、格段限定されることはなく、例えば、ポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを挙げることができる。
また、電池Aにおけるセパレータの厚みは、格段限定されることはないが、40〜120μmであることが好ましい。
【0020】
セパレータの好適な厚みを120μm以下とした理由は、電池Aにおいては後述する負極を用いたことでセパレータへの金属の析出が抑制されているので、析出金属によるセパレータの貫通を防止すべくセパレータを厚くする必要がない一方、セパレータが薄いほど、正極及び負極の体積を大きくすることができ、もって、電池容器内における正極活物質及び負極活物質の含有量を増やして電池Aの高容量化及び長寿命化を実現することができるからである。
【0021】
なお、セパレータの好適な厚みを40μm以上としたのは、長期にわたり正極と負極との間における絶縁性を確保するためである。
また、電池Aにおけるセパレータの目付量は、格段限定されることはないが、30〜80g/cm2であることが好ましい。
セパレータの好適な目付量を80g/cm2以下とした理由は、厚みについての場合と同様に析出金属によるセパレータの貫通を防止すべくセパレータの目付量を増やして密にする必要がない一方、セパレータの目付量が小さいほど、セパレータの密度が疎になり、セパレータにアルカリ電解液を多く含ませることができるからである。セパレータにアルカリ電解液を多く含ませることで、正極及び負極における正極活物質及び負極活物質の単位体積あたりの利用率を大きくすることができ、もって、電池Aの高容量化及び長寿命化を実現することができる。
【0022】
なお、セパレータの好適な目付量を30g/cm2以上とした理由は、長期にわたり正極と負極との間における絶縁性を確保するためである。
また、セパレータの密度を疎にすることは、次のような理由からも電池Aの長寿命化に効果を有することから好ましい。その理由は以下の通りである。電池缶内でガスが発生し、電池容器内の圧力が異常に上昇した場合、封口体に組み込まれた安全弁が作動してガスが電池容器内に放出される。このとき、ガスとともにアルカリ電解液も電池容器外に噴出し、電極反応に寄与する電解液が減少して電池の寿命が短くなる。ここで、セパレータを低密度化することは、セパレータに対するガスの透過性を高めることから、この低密度化によって、ガスが発生した場合でも電池容器内における圧力の異常な上昇を抑制することができる。その結果、噴出によるアルカリ電解液の減少が抑制されるので、電池Aの寿命が長くなる。
【0023】
電池Aの負極は、負極用芯体を有し、この芯体には負極用合剤が担持されている。ここで、負極用芯体は、公知のものでよく、例えば、パンチングメタル等を使用することができる。
負極用合剤は、負極活物質である水素を放出及び吸蔵可能な水素吸蔵合金と、結着剤とからなる。なお、結着剤としては、正極の場合と同様に公知のものを使用することができる。
【0024】
電池Aにおいては、水素吸蔵合金は、ランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる第1の群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素、V,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる第2の群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素、及びAlを含有している。ここで、水素吸蔵合金における第1の元素に対するAlのモル比は0.3以下である。
【0025】
この水素吸蔵合金において、第1の元素に対するAlのモル比を0.3以下としたのは、以下の理由による。
水素吸蔵合金中のAl元素はアルカリ電解液に溶出しやすい。Al元素が溶出した場合、水素吸蔵合金の表面構造が変質し、この変質の結果、水素吸蔵合金を構成するAl元素以外の他の元素の溶出が加速される。そこで、水素吸蔵合金におけるAl元素の第1の元素に対するモル比を0.3以下とすることで、水素吸蔵合金における表面構造を安定に保ち、他の構成元素の溶出を防止しているのである。
【0026】
なお、水素吸蔵合金において、第1の元素に対するAlのモル比は0.03以上であることが好ましい。その理由としては、水素吸蔵合金中に含まれるAl量があまりに少ないと、合金の表面構造変質が全く起こらなくなる。通常、水素吸蔵合金は電解液との反応により、表面が酸化し不導体化するが、表面構造変質と充放電の繰り返しにより、酸化されていない新鮮面が露出し導電性が保たれる。しかし、Alが少なく表面構造変質が十分に起こらない場合、充放電を繰り返しても合金が割れず、新鮮面が露出しないため、反応性が低下したままになってしまうからである。
【0027】
上述した水素吸蔵合金における第2の群は、更にCo、Mn、およびCrを含んでいても良く、水素吸蔵合金がこれらCo、Mn、およびCrのうちいずれか1つ以上を含む場合には、Co、Mn、およびCrの全原子濃度は6atomic%以下であることが好ましい。このことは以下のような理由による。
水素吸蔵合金中に含有されたCo元素、Mn元素、及びCr元素は、アルカリ電解液中に一旦溶出してからセパレータに金属として析出しやすい。そこで、水素吸蔵合金におけるCo元素、Mn元素、及びCr元素の全原子濃度を6atomic%以下とすることで、これら元素Co、Mn、及びCrの溶出量あるいは析出量を制限しているのである。
【0028】
このようにして、電池Aに用いられる水素吸蔵合金は、その構成元素、とりわけ、Co元素、Mn元素、Cr元素及びAl元素等のアルカリ電解液への溶出が低減され、アルカリ電解液に対する耐食性が高い。そのため、電池Aにおいては、水素吸蔵合金に含まれる金属元素が一旦アルカリ電解液中に溶出し、セパレータの表面や内部にて単独もしくは複合した金属として析出することが抑制されるので、析出金属が例えば針状に成長してセパレータを貫通する虞が低く、正極と負極との間における不所望の短絡発生が防止される。また、析出金属による貫通に備える必要がないことから、セパレータの薄型化あるいは低密度化を実施することができる。
【0029】
このような電池Aの水素吸蔵合金としては、その組成が一般式:
Ln1−xMgx(Ni1−y1−y2Ty1Aly2)z …(1)
(ただし、式中、Lnはランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、TはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、x,y1,y2,zはそれぞれ、0<x<1,0<y1+y2≦0.5,2.5≦z≦4.5として規定される数値である)で表されるもの(Re−Mg−Ni系合金)をあげることができる。
【0030】
ここで、上記した一般式(1)における、y1+y2,zの数値範囲の限定理由は以下のとおりである。
y1+y2については、y1+y2の値が0.5を超えると水素吸蔵合金の水素吸蔵量が低下するためである。
zについては、zの値が2.5未満であると、水素吸蔵合金の水素の保持能力が強くなりすぎて吸蔵した水素を放出しなくなるからであり、逆に、zが4.5を超えると、水素吸蔵合金の水素吸蔵サイトが減少して水素吸蔵量が低下するからである。
【0031】
なお、電池Aの水素吸蔵合金としては、上述したRe−Mg−Ni系合金の外、AB5型もあげることができるが、Re−Mg−Ni系合金の方がAB5型に比べてアルカリ電解液に対する耐食性が高いことから好ましい。
上述した構成を有する電池Aは、公知の方法を用いて組立てることができるが、Re−Mg−Ni系合金からなる水素吸蔵合金を含む電池Aの製造工程は、組立てられた電池Aに対して、電池Aの公称容量よりも少ない充電量にて第1回目の充電処理を行なう活性化工程を具備することが好ましい。このような活性化工程によれば、過充電時に正極からの酸素発生により水素吸蔵合金が酸化されるのを避けることができるためである。
【0032】
そして、第1回目の充電処理における充電量が公称容量の40〜80%であると、過充電による水素吸蔵合金の酸化を避けつつ、十分なレベルまで合金の反応性を向上させることができるので好ましく、また活性化工程は、15〜35℃の環境温度下にて行なわれると正極の充電受け入れ性が低下せずに充放電させることができるので好ましい。
【0033】
本発明は上述した一実施形態に限定されることはなく、種々変形が可能であって、例えば、電池Aの電池容器、封口体等の構造は格段限定されることはない。
【0034】
【実施例】
第1実施例:実施例1〜16,比較例1〜7
1.正極の作製
亜鉛3質量%及びコバルト1質量%を固溶した水酸化ニッケル粒子の粉末と、5質量%相当量の三酸化二イットリウム(Y2O3)粉末と、40質量%相当量のHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)分散液(分散媒:水40質量部、固形分60質量部)とを、水酸化ニッケル粉末とY2O3粉末とが均一に分散するよう混合して、正極活物質スラリーを得た。この活物質スラリーを発泡ニッケル基板に充填し、乾燥した後、この発泡ニッケル基板をプレス、裁断し、AAサイズのニッケル水素二次電池用の非焼結式正極を作製した。
【0035】
2.負極の作製
表1に示した一般式で表される組成を有する水素吸蔵合金のインゴットを用意した。そして、組成毎に、用意したインゴットを不活性ガス雰囲気中で機械的に粉砕し、篩分けにより400〜200メッシュの範囲の粒径を有する合金粉末を選別した。この選別された水素吸蔵合金粉末に対して、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置を使用して粒度分布を測定を行なった結果、重量積分50%に相当する平均粒径は45μmであった。
【0036】
なお、全実施例及び比較例において、Lnは、質量%で75%のLa、15%のNd、および10%のPrを主成分とするMm(ミッシュメタル)である。
その後、この合金粉末100質量部に対してポリアクリル酸ナトリウム0.4質量部、カルボキシメチルセルロース0.1質量部、および、ポリテトラフルオロエチレン分散液(分散媒:水40質量部、固形分60質量部)2.5質量部を加えて混練して負極活物質スラリーを得た。
【0037】
この負極活物質スラリーを、表面に厚さ60μmのNiめっきを施したFe製パンチングメタル基板の両面に均等に、かつ、各面における厚さが一定になるように塗着し、乾燥した。そして、このパンチングメタル基板をプレスしてから裁断し、それぞれ表1に示した組成の水素吸蔵合金を含有する、AAサイズのニッケル水素二次電池用の負極を作製した。
【0038】
3.ニッケル水素二次電池の組立て
上記のようにして作製した負極と正極とを、表1に示したように、ポリプロピレンまたはナイロン製の不織布からなり、それぞれ所定の厚み及び目付けを有するセパレータを介して巻回して、電池容器に収納したのち、この容器内に、リチウム、ナトリウムを含有した濃度30質量%の水酸化カリウム水溶液を注入して、公称容量1200mAhでAAサイズの実施例1〜9及び比較例1〜4のニッケル水素二次電池を作製した。
【0039】
4.電池の評価試験
得られた全ての実施例及び比較例のニッケル水素二次電池について、以下の評価試験を行い、それらの結果を表1に示した。
(1)ショート発生率
120mAの電流で16時間充電してから、240mAの電流で終止電圧0.5Vまで放電させて電池を活性化した。その後、温度60℃の雰囲気下で6ヶ月間放置してから、各実施例及び比較例につき200個中何個の電池においてショートが発生したかを調べ、その結果を百分率で表1に示した。
【0040】
(2)サイクル寿命
温度25℃の雰囲気下で、1000mAの電流で1時間充電してから1000mAの電流で終止電圧0.5Vまで放電する電池容量測定を、測定された電池容量が最初に測定された電池容量の80%以下になるまで繰り返し行ない、その繰り返した数をサイクル寿命として計数した。そして、この計数値を、実施例1の結果を100としたときの相対値として表1に示した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1からは以下のことが明らかである。
(1)実施例1〜5においては、従来技術の電池に比べてセパレータが薄いにもかかわらずショート発生率が0.5%以下である。従って、実施例1〜5のニッケル水素二次電池によれば、ショート発生率の上昇を伴うことなく、正極活物質及び負極活物質の含有量を増やして高容量化・長寿命化を図ることが可能である。
ただし、比較例4においてはショート発生率が高くなっていることから、セパレータの厚みは少なくとも40μmにすることが好適であることがわかる。
【0043】
(2)実施例6〜9においては、目付量が低いにもかかわらずショート発生率が0.5%以下である。従って、実施例6〜9のニッケル水素二次電池によれば、ショート発生率の上昇を伴うことなく、セパレータに含まれるアルカリ電解液の量を増やして活物質の利用率を向上し、もって高容量化・長寿命化を図ることが可能である。
ただし、比較例5においてはショート発生率が高くなっていることから、セパレータの目付は少なくとも30g/cm2にすることが好適であることがわかる。
【0044】
(3)略一定なサイクル寿命を示す実施例1〜5に比べて、実施例6〜9ではサイクル寿命が長い。これは、セパレータの目付量を下げることで、セパレータに対するガスの透過性が高くなり、電池缶内における内圧の上昇及びアルカリ電解液の噴出が抑制されたためと考えられる。
(4)実施例11においては、従来技術の電池(比較例3)に比べてセパレータが薄く、かつ、目付量が低いにもかかわらず、ショート発生率が0.5%以下である。従って、実施例10のニッケル水素二次電池によれば、ショート発生率の上昇を伴うことなく、正極活物質及び負極活物質の含有量を増やすとともに、セパレータに含まれるアルカリ電解液の量を増やして活物質の利用率を向上し、格別に高容量化・長寿命化を図ることが可能である。
【0045】
(5)実施例11〜14と比較例6、7においては、Al量が0.3を超えるとショート発生率が増加し、0.03未満になるとサイクル寿命が低下している。このことからAl量は0.3〜0.03が望ましいことが分かる。
(6)CoとMnとCrの全原子濃度が6atomic%を超えている比較例2におけるショート発生率は、実施例11、15に比べて非常に高い。この理由としては、比較例2においては、水素吸蔵合金中に含まれたCo及びMnがアルカリ電解液中に一旦溶出してからセパレータに析出し、析出した金属Co及び金属Mnがセパレータを貫通したことが考えられる。また、実施例11と16の比較から、CoとMnとCrの個別の量よりも、これら三元素の合計量がショート率に影響することが分かる。
【0046】
(7)実施例1〜9におけるサイクル寿命は、比較例2に比べて短い。この理由としては、水素吸蔵合金中のCo量が少ないために、実施例1〜9の水素吸蔵合金においては、アルカリ電解液に対する耐食性が低いことが考えられる。
そこで、Co含有量は少ないけれども、アルカリ電解液に対して比較的高い耐食性を有する水素吸蔵合金を用いた実施例10のニッケル水素二次電池によれば、比較例2よりも長寿命化を図ることができる。
【0047】
第2実施例:実施例17〜29
1.正極の作製
実施例1〜16と同様にして、AAサイズのニッケル水素二次電池用の非焼結式正極を作製した。
2.負極の作製
表2に示した一般式で表される組成を有する水素吸蔵合金のインゴットを用意した。それ以外は実施例1〜16と同様にして、AAサイズのニッケル水素二次電池用の負極を作製した。
【0048】
3.ニッケル水素二次電池の組立て
上記のようにして作製した負極と正極とを用いて、実施例1〜16と同様にして、公称容量1200mAhでAAサイズの実施例17〜29のニッケル水素二次電池を組立てた。
【0049】
4.電池の活性化
上記のようにして組立てられたニッケル水素二次電池について、表2に示す条件で活性化を行った。
5.電池の評価試験
活性化処理された全ての実施例のニッケル水素二次電池について、以下の容量測定及びサイクル寿命評価試験を行い、それらの結果を表2に示した。
【0050】
(1)容量及びサイクル寿命
温度25℃の雰囲気下で、1000mAの電流で1時間充電してから1000mAの電流で終止電圧0.5Vまで放電する電池容量測定を、測定された電池容量が最初に測定された電池容量の80%以下になるまで繰り返し行ない、その繰り返した数をサイクル寿命として計数した。この計数値を実施例17の結果を100としたときの相対値として表2に示した。また、第1回目に測定された電池容量についても実施例17の結果を100としたときの相対値として併せて表2に示した。
【0051】
【表2】
【0052】
表2からは以下のことが明らかである。
(1)実施例17〜19においては、実施例25に比べると活性化が十分になされていないにもかかわらず、実施例25と同等の容量が得られている。一方、実施例17と同じ条件で活性化した実施例26は容量が低下した。これは、Re−Mg−Ni系合金はAB5型合金に比べて少ない電気量で活性化しても十分な容量が得られることを示している。
【0053】
また、実施例27、28からは、Re−Mg−Ni系合金においては、充電量が多くなりすぎると、サイクル寿命が低下することが分かる。これは、Re−Mg−Ni系合金の活性度が高いため、過充電時に発生する酸素と反応しやすく、劣化が促進されるためと考えられる。逆に実施例29からは、充電量が少なすぎても十分な容量が得られなくなることが分かる。これらのことから、Re−Mg−Ni系合金においては、初回の充電量は公称容量の40〜80%が適当であることが分かる。
【0054】
(2)実施例17、20〜23の比較から、活性化時の温度は35〜15℃が適当であることが分かる。これは、温度が高すぎると正極の充電受け入れ性が低下するため、実質的に十分に活性化がなされていない状態になり、逆に温度が低すぎると正極の充電受け入れ性が高くなりすぎて過充電になるためである。
(3)実施例17、24から、Re−Mg−Ni系合金では活性化の回数を1回にしても十分な容量が得られることがわかる。
【0055】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のニッケル水素二次電池によれば、高容量化及び長寿命化が可能であり、その工業的価値は大である。
また、本発明のニッケル水素二次電池の製造方法によれば、Re−Mg−Ni系合金の活性化に用いる電気量を削減できる。これは充放電に用いる電気代の削減・製品出荷までの時間短縮であり、その工業的価値は大である。
【発明の属する技術分野】
本発明はニッケル水素二次電池及びニッケル水素二次電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動工具、バックアップ電源、あるいは電気自動車等、近年、ニッケル水素二次電池の用途はますます拡大しており、これに伴って、ニッケル水素二次電池に対するその高容量化及び長寿命化の要望は強まる一方である。
ニッケル水素二次電池の高容量化・長寿命化の方法としては、例えば、電池缶内における部材の大きさや配置等を工夫して、電池缶内の有限な空間を有効に活用し、もって正極活物質及び負極活物質の含有量を増加させる方法と、正極及び負極における活物質の単位体積当りの利用率を高める方法とがある。
【0003】
前者の方法の場合、充放電反応に直接寄与しない導電部材や絶縁部材の使用は必要最低限にとどめられる。例えば、正極と負極とを隔てるために必須であるセパレータは可能な限り薄くされ、この薄くした分の体積が正極及び負極に割り当てられている。
例えば、特許文献1はこの種のニッケル水素二次電池を開示しており、この従来技術のニッケル水素二次電池にあっては、セパレータの厚みが0.15〜0.3mmに限定されている。
【0004】
また、後者の方法の場合、より多くのアルカリ電解液を正極と負極との間に存在させるべく、セパレータの目付量を下げたり、あるいは前者の場合と同様にセパレータを薄くすることが有効である。
さらに通常、ニッケル水素二次電池を作製する際には、電池組立後に活性化、あるいはコンディショニング等と呼ばれる処理を行う。これは、負極に用いられている水素吸蔵合金は空気中で表面酸化等により不導体化してしまうため、充放電を繰り返すことで、合金の割れを促進し、新鮮面を露出させることで反応性を向上させる必要があるためである。
【0005】
【特許文献1】
特開平3−59985号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、セパレータの厚みを薄くする薄型化や、あるいはその目付量を下げる低密度化を更に推し進めた場合、正極と負極との間において短絡が生じやすくなるという問題がある。特に、ニッケル水素二次電池においては、負極の水素吸蔵合金の一部が、アルカリ電解液中に一旦溶解してからセパレータに金属として析出し、この析出金属がセパレータを貫通して短絡を引き起こすというショートモードが存在する。そのため、先にあげた特許文献1のニッケル水素二次電池においても、セパレータの厚みは0.15mm以上に設定されている。
【0007】
本発明は、このような課題に対処するためになされたものであって、正負極間における短絡を防止しながら更なるセパレータの薄型化あるいは低密度化が可能であって、高容量且つ長寿命であるニッケル水素二次電池の提供を目的とする。また、前記活性化工程は、通常2〜4回程度の充放電を繰り返す必要があるため、その分の電気代が必要となる、完成まで時間を必要とする等、工業的には問題が多い。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者は、セパレータの薄型化及び低密度化により引き起こされる上述した電極間での短絡問題を解決すべく種々検討を重ねた。そしてその結果、発明者は、ランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる第1の群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素、V,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる第2の群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素、及びAlを含有し、第1の元素に対するAlのモル比は0.3以下である水素吸蔵合金を負極に適用することで、セパレータの薄型化・低密度化によって生じる上記の問題を改善できることを見出し、本発明のニッケル水素二次電池を開発するに至った。
【0009】
すなわち、上記目的を達成するために、本発明によれば、水酸化ニッケルを含有する正極と、水素吸蔵合金を含有する負極と、前記正極と前記負極との間に介装されたセパレータと、アルカリ電解液とが容器内に収納されてなるニッケル水素二次電池において、前記水素吸蔵合金は、ランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる第1の群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素、V,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる第2の群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素、及びAlを含有し、前記水素吸蔵合金における第1の元素に対するAlのモル比は0.3以下であることを特徴とするニッケル水素二次電池が提供される(請求項1)。
【0010】
上記した構成においては、前記第2の群は、更に、Cr,Mn,およびCoを含んでいてもよいが、前記水素吸蔵合金に含まれるCr,Mn,およびCoの全原子濃度が6atomic%以下であることが好ましい(請求項2)。
そして、前記水素吸蔵合金の組成は、一般式:
Ln1−xMgx(Ni1−y1−y2Ty1Aly2)z
(ただし、式中、Lnはランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、TはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、x,y1,y2,zはそれぞれ、0<x<1,0<y1+y2≦0.5,2.5≦z≦4.5として規定される数値である)で表されることが好ましい(請求項3)。
【0011】
また、前記セパレータの厚みは40〜120μmであることが好ましい(請求項4)。
そして、前記セパレータの目付けは30〜80g/cm2であることが好ましい(請求項5)。
また、本発明によれば、水酸化ニッケルを含有する正極と、一般式:
Ln1−xMgx(Ni1−y1−y2Ty1Aly2)z
(ただし、式中、Lnはランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、TはV,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、x,y1,y2,zはそれぞれ、0<x<1,0<y1+y2≦0.5,2.5≦z≦4.5として規定される数値である)で表される組成を有する水素吸蔵合金を含有する負極と、前記正極と前記負極との間に介装されたセパレータと、アルカリ電解液とが容器内に収納されてなるニッケル水素二次電池を組立てる工程と、前記組立てられたニッケル水素二次電池に対して、このニッケル水素二次電池の公称容量よりも少ない充電量にて第1回目の充電処理を行なう活性化工程とを具備したことを特徴とするニッケル水素二次電池の製造方法が提供される(請求項6)。
【0012】
上記した製造方法においては、前記第2の群は、更に、Cr,Mn,およびCoを含んでいてもよいが、前記水素吸蔵合金に含まれるCr,Mn,およびCoの全原子濃度が6atomic%以下であることが好ましい(請求項7)。
そして、前記第1回目の充電量が前記公称容量の40〜80%であることが好ましい(請求項8)。
【0013】
また、前記活性化工程は、15〜35℃の環境温度下にて行なわれることが好ましい(請求項9)。
更に、前記活性化工程において、前記組立てられたニッケル水素二次電池に充放電処理を1回のみ行なうことが好ましい(請求項10)。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施形態のニッケル水素二次電池(以下、電池Aという)について詳述する。
電池Aは、後述する負極を備えている外は、公知の電池と同じ構成を有している。例えば電池Aは、負極端子を兼ねる、一端が開口した有底円筒形状の電池容器を有し、この開口は正極端子を兼ねる封口体により閉塞されている。電池容器内には、それぞれ板状の正極と負極とが、セパレータを介して巻回されてセパレータを挟んで互いに対向した状態で収容され、正極と正極端子との間、および負極と負極端子との間は、それぞれ電気的に接続されている。そして、これら電極とともに、電池容器内にはアルカリ電解液が収容されている。このアルカリ電解液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びこれらのうち2つ以上を混合した水溶液等を用いることができる。
【0015】
正極は、正極用芯体を有し、この芯体には正極用合剤が担持されている。ここで、正極用芯体は、公知のものでよく、例えば、多孔質構造を有するスポンジ状ニッケル等を使用することができる。
正極用合剤は、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質、添加剤及び結着剤等からなる。結着剤は公知のものでよく、親水性若しくは疎水性のポリマー等を使用することができ、それぞれの一例として、前者としてカルボキシメチルセルロース(CMC)、後者としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を挙げることができる。
【0016】
正極活物質についても公知のものを使用することができ、例えば、水酸化ニッケル粒子の外、ニッケルの平均価数が2.0を超えている水酸化ニッケル粒子(以下、高次水酸化ニッケル粒子ともいう)を用いることができる。この高次水酸化ニッケルにおいては、好ましいニッケルの平均価数の範囲は2.05〜2.30価であり、より好ましくは2.10〜2.30価である。
【0017】
これら水酸化ニッケル粒子および高次水酸化ニッケル粒子は、コバルト、亜鉛、カドミウム等を固溶していてもよい。そして、これら水酸化ニッケル粒子及び高次水酸化ニッケル粒子は、コバルト化合物からなる被覆層を表面に有する粒子(以下、複合粒子ともいう)であってもよい。更には、複合粒子は、コバルト化合物がNa等のアルカリカチオンを含有している粒子であってもよい。
【0018】
また、複合粒子における被覆層のコバルト化合物としては、例えば、三酸化二コバルト(Co2O3)、コバルト金属(Co)、一酸化コバルト(CoO)、水酸化コバルト(Co(OH)2)等を挙げることができる。この複合粒子のコバルト化合物にあっては、コバルトの平均価数が2.0を超えている高次コバルト化合物であることが好ましく、さらには、Na,K,Li等のアルカリカチオンを含む高次コバルト化合物であることがより好ましい。
【0019】
電池Aにおいて、正極と負極との間に介装されたセパレータの材質は、格段限定されることはなく、例えば、ポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを挙げることができる。
また、電池Aにおけるセパレータの厚みは、格段限定されることはないが、40〜120μmであることが好ましい。
【0020】
セパレータの好適な厚みを120μm以下とした理由は、電池Aにおいては後述する負極を用いたことでセパレータへの金属の析出が抑制されているので、析出金属によるセパレータの貫通を防止すべくセパレータを厚くする必要がない一方、セパレータが薄いほど、正極及び負極の体積を大きくすることができ、もって、電池容器内における正極活物質及び負極活物質の含有量を増やして電池Aの高容量化及び長寿命化を実現することができるからである。
【0021】
なお、セパレータの好適な厚みを40μm以上としたのは、長期にわたり正極と負極との間における絶縁性を確保するためである。
また、電池Aにおけるセパレータの目付量は、格段限定されることはないが、30〜80g/cm2であることが好ましい。
セパレータの好適な目付量を80g/cm2以下とした理由は、厚みについての場合と同様に析出金属によるセパレータの貫通を防止すべくセパレータの目付量を増やして密にする必要がない一方、セパレータの目付量が小さいほど、セパレータの密度が疎になり、セパレータにアルカリ電解液を多く含ませることができるからである。セパレータにアルカリ電解液を多く含ませることで、正極及び負極における正極活物質及び負極活物質の単位体積あたりの利用率を大きくすることができ、もって、電池Aの高容量化及び長寿命化を実現することができる。
【0022】
なお、セパレータの好適な目付量を30g/cm2以上とした理由は、長期にわたり正極と負極との間における絶縁性を確保するためである。
また、セパレータの密度を疎にすることは、次のような理由からも電池Aの長寿命化に効果を有することから好ましい。その理由は以下の通りである。電池缶内でガスが発生し、電池容器内の圧力が異常に上昇した場合、封口体に組み込まれた安全弁が作動してガスが電池容器内に放出される。このとき、ガスとともにアルカリ電解液も電池容器外に噴出し、電極反応に寄与する電解液が減少して電池の寿命が短くなる。ここで、セパレータを低密度化することは、セパレータに対するガスの透過性を高めることから、この低密度化によって、ガスが発生した場合でも電池容器内における圧力の異常な上昇を抑制することができる。その結果、噴出によるアルカリ電解液の減少が抑制されるので、電池Aの寿命が長くなる。
【0023】
電池Aの負極は、負極用芯体を有し、この芯体には負極用合剤が担持されている。ここで、負極用芯体は、公知のものでよく、例えば、パンチングメタル等を使用することができる。
負極用合剤は、負極活物質である水素を放出及び吸蔵可能な水素吸蔵合金と、結着剤とからなる。なお、結着剤としては、正極の場合と同様に公知のものを使用することができる。
【0024】
電池Aにおいては、水素吸蔵合金は、ランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる第1の群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素、V,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる第2の群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素、及びAlを含有している。ここで、水素吸蔵合金における第1の元素に対するAlのモル比は0.3以下である。
【0025】
この水素吸蔵合金において、第1の元素に対するAlのモル比を0.3以下としたのは、以下の理由による。
水素吸蔵合金中のAl元素はアルカリ電解液に溶出しやすい。Al元素が溶出した場合、水素吸蔵合金の表面構造が変質し、この変質の結果、水素吸蔵合金を構成するAl元素以外の他の元素の溶出が加速される。そこで、水素吸蔵合金におけるAl元素の第1の元素に対するモル比を0.3以下とすることで、水素吸蔵合金における表面構造を安定に保ち、他の構成元素の溶出を防止しているのである。
【0026】
なお、水素吸蔵合金において、第1の元素に対するAlのモル比は0.03以上であることが好ましい。その理由としては、水素吸蔵合金中に含まれるAl量があまりに少ないと、合金の表面構造変質が全く起こらなくなる。通常、水素吸蔵合金は電解液との反応により、表面が酸化し不導体化するが、表面構造変質と充放電の繰り返しにより、酸化されていない新鮮面が露出し導電性が保たれる。しかし、Alが少なく表面構造変質が十分に起こらない場合、充放電を繰り返しても合金が割れず、新鮮面が露出しないため、反応性が低下したままになってしまうからである。
【0027】
上述した水素吸蔵合金における第2の群は、更にCo、Mn、およびCrを含んでいても良く、水素吸蔵合金がこれらCo、Mn、およびCrのうちいずれか1つ以上を含む場合には、Co、Mn、およびCrの全原子濃度は6atomic%以下であることが好ましい。このことは以下のような理由による。
水素吸蔵合金中に含有されたCo元素、Mn元素、及びCr元素は、アルカリ電解液中に一旦溶出してからセパレータに金属として析出しやすい。そこで、水素吸蔵合金におけるCo元素、Mn元素、及びCr元素の全原子濃度を6atomic%以下とすることで、これら元素Co、Mn、及びCrの溶出量あるいは析出量を制限しているのである。
【0028】
このようにして、電池Aに用いられる水素吸蔵合金は、その構成元素、とりわけ、Co元素、Mn元素、Cr元素及びAl元素等のアルカリ電解液への溶出が低減され、アルカリ電解液に対する耐食性が高い。そのため、電池Aにおいては、水素吸蔵合金に含まれる金属元素が一旦アルカリ電解液中に溶出し、セパレータの表面や内部にて単独もしくは複合した金属として析出することが抑制されるので、析出金属が例えば針状に成長してセパレータを貫通する虞が低く、正極と負極との間における不所望の短絡発生が防止される。また、析出金属による貫通に備える必要がないことから、セパレータの薄型化あるいは低密度化を実施することができる。
【0029】
このような電池Aの水素吸蔵合金としては、その組成が一般式:
Ln1−xMgx(Ni1−y1−y2Ty1Aly2)z …(1)
(ただし、式中、Lnはランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、TはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、x,y1,y2,zはそれぞれ、0<x<1,0<y1+y2≦0.5,2.5≦z≦4.5として規定される数値である)で表されるもの(Re−Mg−Ni系合金)をあげることができる。
【0030】
ここで、上記した一般式(1)における、y1+y2,zの数値範囲の限定理由は以下のとおりである。
y1+y2については、y1+y2の値が0.5を超えると水素吸蔵合金の水素吸蔵量が低下するためである。
zについては、zの値が2.5未満であると、水素吸蔵合金の水素の保持能力が強くなりすぎて吸蔵した水素を放出しなくなるからであり、逆に、zが4.5を超えると、水素吸蔵合金の水素吸蔵サイトが減少して水素吸蔵量が低下するからである。
【0031】
なお、電池Aの水素吸蔵合金としては、上述したRe−Mg−Ni系合金の外、AB5型もあげることができるが、Re−Mg−Ni系合金の方がAB5型に比べてアルカリ電解液に対する耐食性が高いことから好ましい。
上述した構成を有する電池Aは、公知の方法を用いて組立てることができるが、Re−Mg−Ni系合金からなる水素吸蔵合金を含む電池Aの製造工程は、組立てられた電池Aに対して、電池Aの公称容量よりも少ない充電量にて第1回目の充電処理を行なう活性化工程を具備することが好ましい。このような活性化工程によれば、過充電時に正極からの酸素発生により水素吸蔵合金が酸化されるのを避けることができるためである。
【0032】
そして、第1回目の充電処理における充電量が公称容量の40〜80%であると、過充電による水素吸蔵合金の酸化を避けつつ、十分なレベルまで合金の反応性を向上させることができるので好ましく、また活性化工程は、15〜35℃の環境温度下にて行なわれると正極の充電受け入れ性が低下せずに充放電させることができるので好ましい。
【0033】
本発明は上述した一実施形態に限定されることはなく、種々変形が可能であって、例えば、電池Aの電池容器、封口体等の構造は格段限定されることはない。
【0034】
【実施例】
第1実施例:実施例1〜16,比較例1〜7
1.正極の作製
亜鉛3質量%及びコバルト1質量%を固溶した水酸化ニッケル粒子の粉末と、5質量%相当量の三酸化二イットリウム(Y2O3)粉末と、40質量%相当量のHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)分散液(分散媒:水40質量部、固形分60質量部)とを、水酸化ニッケル粉末とY2O3粉末とが均一に分散するよう混合して、正極活物質スラリーを得た。この活物質スラリーを発泡ニッケル基板に充填し、乾燥した後、この発泡ニッケル基板をプレス、裁断し、AAサイズのニッケル水素二次電池用の非焼結式正極を作製した。
【0035】
2.負極の作製
表1に示した一般式で表される組成を有する水素吸蔵合金のインゴットを用意した。そして、組成毎に、用意したインゴットを不活性ガス雰囲気中で機械的に粉砕し、篩分けにより400〜200メッシュの範囲の粒径を有する合金粉末を選別した。この選別された水素吸蔵合金粉末に対して、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置を使用して粒度分布を測定を行なった結果、重量積分50%に相当する平均粒径は45μmであった。
【0036】
なお、全実施例及び比較例において、Lnは、質量%で75%のLa、15%のNd、および10%のPrを主成分とするMm(ミッシュメタル)である。
その後、この合金粉末100質量部に対してポリアクリル酸ナトリウム0.4質量部、カルボキシメチルセルロース0.1質量部、および、ポリテトラフルオロエチレン分散液(分散媒:水40質量部、固形分60質量部)2.5質量部を加えて混練して負極活物質スラリーを得た。
【0037】
この負極活物質スラリーを、表面に厚さ60μmのNiめっきを施したFe製パンチングメタル基板の両面に均等に、かつ、各面における厚さが一定になるように塗着し、乾燥した。そして、このパンチングメタル基板をプレスしてから裁断し、それぞれ表1に示した組成の水素吸蔵合金を含有する、AAサイズのニッケル水素二次電池用の負極を作製した。
【0038】
3.ニッケル水素二次電池の組立て
上記のようにして作製した負極と正極とを、表1に示したように、ポリプロピレンまたはナイロン製の不織布からなり、それぞれ所定の厚み及び目付けを有するセパレータを介して巻回して、電池容器に収納したのち、この容器内に、リチウム、ナトリウムを含有した濃度30質量%の水酸化カリウム水溶液を注入して、公称容量1200mAhでAAサイズの実施例1〜9及び比較例1〜4のニッケル水素二次電池を作製した。
【0039】
4.電池の評価試験
得られた全ての実施例及び比較例のニッケル水素二次電池について、以下の評価試験を行い、それらの結果を表1に示した。
(1)ショート発生率
120mAの電流で16時間充電してから、240mAの電流で終止電圧0.5Vまで放電させて電池を活性化した。その後、温度60℃の雰囲気下で6ヶ月間放置してから、各実施例及び比較例につき200個中何個の電池においてショートが発生したかを調べ、その結果を百分率で表1に示した。
【0040】
(2)サイクル寿命
温度25℃の雰囲気下で、1000mAの電流で1時間充電してから1000mAの電流で終止電圧0.5Vまで放電する電池容量測定を、測定された電池容量が最初に測定された電池容量の80%以下になるまで繰り返し行ない、その繰り返した数をサイクル寿命として計数した。そして、この計数値を、実施例1の結果を100としたときの相対値として表1に示した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1からは以下のことが明らかである。
(1)実施例1〜5においては、従来技術の電池に比べてセパレータが薄いにもかかわらずショート発生率が0.5%以下である。従って、実施例1〜5のニッケル水素二次電池によれば、ショート発生率の上昇を伴うことなく、正極活物質及び負極活物質の含有量を増やして高容量化・長寿命化を図ることが可能である。
ただし、比較例4においてはショート発生率が高くなっていることから、セパレータの厚みは少なくとも40μmにすることが好適であることがわかる。
【0043】
(2)実施例6〜9においては、目付量が低いにもかかわらずショート発生率が0.5%以下である。従って、実施例6〜9のニッケル水素二次電池によれば、ショート発生率の上昇を伴うことなく、セパレータに含まれるアルカリ電解液の量を増やして活物質の利用率を向上し、もって高容量化・長寿命化を図ることが可能である。
ただし、比較例5においてはショート発生率が高くなっていることから、セパレータの目付は少なくとも30g/cm2にすることが好適であることがわかる。
【0044】
(3)略一定なサイクル寿命を示す実施例1〜5に比べて、実施例6〜9ではサイクル寿命が長い。これは、セパレータの目付量を下げることで、セパレータに対するガスの透過性が高くなり、電池缶内における内圧の上昇及びアルカリ電解液の噴出が抑制されたためと考えられる。
(4)実施例11においては、従来技術の電池(比較例3)に比べてセパレータが薄く、かつ、目付量が低いにもかかわらず、ショート発生率が0.5%以下である。従って、実施例10のニッケル水素二次電池によれば、ショート発生率の上昇を伴うことなく、正極活物質及び負極活物質の含有量を増やすとともに、セパレータに含まれるアルカリ電解液の量を増やして活物質の利用率を向上し、格別に高容量化・長寿命化を図ることが可能である。
【0045】
(5)実施例11〜14と比較例6、7においては、Al量が0.3を超えるとショート発生率が増加し、0.03未満になるとサイクル寿命が低下している。このことからAl量は0.3〜0.03が望ましいことが分かる。
(6)CoとMnとCrの全原子濃度が6atomic%を超えている比較例2におけるショート発生率は、実施例11、15に比べて非常に高い。この理由としては、比較例2においては、水素吸蔵合金中に含まれたCo及びMnがアルカリ電解液中に一旦溶出してからセパレータに析出し、析出した金属Co及び金属Mnがセパレータを貫通したことが考えられる。また、実施例11と16の比較から、CoとMnとCrの個別の量よりも、これら三元素の合計量がショート率に影響することが分かる。
【0046】
(7)実施例1〜9におけるサイクル寿命は、比較例2に比べて短い。この理由としては、水素吸蔵合金中のCo量が少ないために、実施例1〜9の水素吸蔵合金においては、アルカリ電解液に対する耐食性が低いことが考えられる。
そこで、Co含有量は少ないけれども、アルカリ電解液に対して比較的高い耐食性を有する水素吸蔵合金を用いた実施例10のニッケル水素二次電池によれば、比較例2よりも長寿命化を図ることができる。
【0047】
第2実施例:実施例17〜29
1.正極の作製
実施例1〜16と同様にして、AAサイズのニッケル水素二次電池用の非焼結式正極を作製した。
2.負極の作製
表2に示した一般式で表される組成を有する水素吸蔵合金のインゴットを用意した。それ以外は実施例1〜16と同様にして、AAサイズのニッケル水素二次電池用の負極を作製した。
【0048】
3.ニッケル水素二次電池の組立て
上記のようにして作製した負極と正極とを用いて、実施例1〜16と同様にして、公称容量1200mAhでAAサイズの実施例17〜29のニッケル水素二次電池を組立てた。
【0049】
4.電池の活性化
上記のようにして組立てられたニッケル水素二次電池について、表2に示す条件で活性化を行った。
5.電池の評価試験
活性化処理された全ての実施例のニッケル水素二次電池について、以下の容量測定及びサイクル寿命評価試験を行い、それらの結果を表2に示した。
【0050】
(1)容量及びサイクル寿命
温度25℃の雰囲気下で、1000mAの電流で1時間充電してから1000mAの電流で終止電圧0.5Vまで放電する電池容量測定を、測定された電池容量が最初に測定された電池容量の80%以下になるまで繰り返し行ない、その繰り返した数をサイクル寿命として計数した。この計数値を実施例17の結果を100としたときの相対値として表2に示した。また、第1回目に測定された電池容量についても実施例17の結果を100としたときの相対値として併せて表2に示した。
【0051】
【表2】
【0052】
表2からは以下のことが明らかである。
(1)実施例17〜19においては、実施例25に比べると活性化が十分になされていないにもかかわらず、実施例25と同等の容量が得られている。一方、実施例17と同じ条件で活性化した実施例26は容量が低下した。これは、Re−Mg−Ni系合金はAB5型合金に比べて少ない電気量で活性化しても十分な容量が得られることを示している。
【0053】
また、実施例27、28からは、Re−Mg−Ni系合金においては、充電量が多くなりすぎると、サイクル寿命が低下することが分かる。これは、Re−Mg−Ni系合金の活性度が高いため、過充電時に発生する酸素と反応しやすく、劣化が促進されるためと考えられる。逆に実施例29からは、充電量が少なすぎても十分な容量が得られなくなることが分かる。これらのことから、Re−Mg−Ni系合金においては、初回の充電量は公称容量の40〜80%が適当であることが分かる。
【0054】
(2)実施例17、20〜23の比較から、活性化時の温度は35〜15℃が適当であることが分かる。これは、温度が高すぎると正極の充電受け入れ性が低下するため、実質的に十分に活性化がなされていない状態になり、逆に温度が低すぎると正極の充電受け入れ性が高くなりすぎて過充電になるためである。
(3)実施例17、24から、Re−Mg−Ni系合金では活性化の回数を1回にしても十分な容量が得られることがわかる。
【0055】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のニッケル水素二次電池によれば、高容量化及び長寿命化が可能であり、その工業的価値は大である。
また、本発明のニッケル水素二次電池の製造方法によれば、Re−Mg−Ni系合金の活性化に用いる電気量を削減できる。これは充放電に用いる電気代の削減・製品出荷までの時間短縮であり、その工業的価値は大である。
Claims (10)
- 水酸化ニッケルを含有する正極と、
水素吸蔵合金を含有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介装されたセパレータと、
アルカリ電解液とが容器内に収納されてなるニッケル水素二次電池において、前記水素吸蔵合金は、ランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる第1の群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素、V,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる第2の群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素、及びAlを含有し、
前記水素吸蔵合金における第1の元素に対するAlのモル比は0.3以下であることを特徴とするニッケル水素二次電池。 - 前記第2の群は、更に、Cr,Mn,およびCoを含み、
前記水素吸蔵合金に含まれるCr,Mn,およびCoの全原子濃度が6atomic%以下であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル水素二次電池。 - 前記水素吸蔵合金の組成は、一般式:
Ln1−xMgx(Ni1−y1−y2Ty1Aly2)z
(ただし、式中、Lnはランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、TはV,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、x,y1,y2,zはそれぞれ、0<x<1,0<y1+y2≦0.5,2.5≦z≦4.5として規定される数値である)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のニッケル水素二次電池。 - 前記セパレータの厚みは40〜120μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニッケル水素二次電池。
- 前記セパレータの目付量は30〜80g/cm2であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニッケル水素二次電池。
- 水酸化ニッケルを含有する正極と、
一般式:
Ln1−xMgx(Ni1−y1−y2Ty1Aly2)z
(ただし、式中、Lnはランタノイド元素,Ca,Sr,Sc,Y,Ti,ZrおよびHfよりなる第1の群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、TはV,Nb,Ta,Mo,Fe,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,PおよびBよりなる第2の群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、x,y1,y2,zはそれぞれ、0<x<1,0<y1+y2≦0.5,2.5≦z≦4.5として規定される数値である)で表される組成を有する水素吸蔵合金を含有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介装されたセパレータと、
アルカリ電解液とが容器内に収納されてなるニッケル水素二次電池を組立てる工程と、
前記組立てられたニッケル水素二次電池に対して、このニッケル水素二次電池の公称容量よりも少ない充電量にて第1回目の充電処理を行なう活性化工程とを具備したことを特徴とするニッケル水素二次電池の製造方法。 - 前記第2の群は、更に、Cr,Mn,およびCoを含み、
前記水素吸蔵合金に含まれるCr,Mn,およびCoの全原子濃度が6atomic%以下であることを特徴とする請求項6に記載のニッケル水素二次電池の製造方法。 - 前記第1回目の充電量が前記公称容量の40〜80%であることを特徴とする請求項6または7に記載のニッケル水素二次電池の製造方法。
- 前記活性化工程は、15〜35℃の環境温度下にて行なわれることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のニッケル水素二次電池の製造方法。
- 前記活性化工程において、前記組立てられたニッケル水素二次電池に充放電処理を1回のみ行なうことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のニッケル水素二次電池の製造方法。
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JP2003086322A JP2004296240A (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | ニッケル水素二次電池及びニッケル水素二次電池の製造方法 |
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---|---|---|---|---|
CN104404280A (zh) * | 2014-12-01 | 2015-03-11 | 上海纳米技术及应用国家工程研究中心有限公司 | 一种超晶格RE-Mg-Ni系贮氢合金的制备方法 |
WO2018147019A1 (ja) * | 2017-02-09 | 2018-08-16 | 株式会社豊田自動織機 | ニッケル水素電池 |
-
2003
- 2003-03-26 JP JP2003086322A patent/JP2004296240A/ja active Pending
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