JP2004292282A - 酸化亜鉛ナノ粒子及びその製造方法、並びに、その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物及びそれを用いた積層体 - Google Patents
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Abstract
【目的】超微粒子であると共に、凝集性が抑制され、且つ、光、熱、酸素等に対して安定な酸化亜鉛ナノ粒子、及びその製造方法、並びに、その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物、及びそれを用いた積層体を提供する。
【構成】酸化亜鉛結晶粒子の表面が酸化珪素組成を有する相で覆われてなる酸化亜鉛ナノ粒子であって、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下であり、且つ、Z平均粒径が3〜50nmであるか、又は、1重量%エタノール分散液として、23℃で3日間静置した後の該分散液の波長400nmにおける光路長10mmでの光線透過率が90%以上である酸化亜鉛ナノ粒子、及び、酸化亜鉛結晶粒子を含む液相中で、水、及び活性水素を有さない塩基性有機化合物の存在下、アルコキシシラン類を加水分解させ、その加水分解物のシラノール縮合反応により生成した酸化珪素組成を有する相で、酸化亜鉛結晶粒子の表面を覆う酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法、並びに、その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物、及びそれを用いた積層体。
【選択図】 なし
【構成】酸化亜鉛結晶粒子の表面が酸化珪素組成を有する相で覆われてなる酸化亜鉛ナノ粒子であって、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下であり、且つ、Z平均粒径が3〜50nmであるか、又は、1重量%エタノール分散液として、23℃で3日間静置した後の該分散液の波長400nmにおける光路長10mmでの光線透過率が90%以上である酸化亜鉛ナノ粒子、及び、酸化亜鉛結晶粒子を含む液相中で、水、及び活性水素を有さない塩基性有機化合物の存在下、アルコキシシラン類を加水分解させ、その加水分解物のシラノール縮合反応により生成した酸化珪素組成を有する相で、酸化亜鉛結晶粒子の表面を覆う酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法、並びに、その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物、及びそれを用いた積層体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超微粒子であると共に、その凝集性が抑制され、且つ、光、熱、酸素等に対して安定性を有する酸化亜鉛ナノ粒子、及びその製造方法、並びに、その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物、及びそれを用いた積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、酸化亜鉛は、紫外線遮蔽能に優れ、又、特有の発光能を有すること等から、各種材料の充填材、顔料等の外、紫外線遮蔽膜、反射防止膜、発光膜等の光学機能膜等として各種用途に用いられている。
【0003】
そして、その酸化亜鉛としては、前記の如き性能を有効に発現させるために微粒子化が追求され、その製法として、例えば、粒径が高々5nm程度であり量子効果により生じるエキシトン吸収帯を有する酸化亜鉛結晶粒子を、酢酸亜鉛と水酸化リチウムからエタノールを溶媒として合成する方法が報告されている(非特許文献1参照。)が、そのエタノール分散液を室温で放置すると、凝集性が抑制されていないため、24時間後には粒径の増大によるエキシトン吸収帯の長波長へのシフトが認められ、、数日後には析出物が生じて液が白濁するという問題があった。又、エタノールへの再分散性に優れた酸化亜鉛結晶粒子を、酢酸亜鉛からアンモニアを触媒としエタノールを溶媒として合成する方法が報告されている(非特許文献2参照。)が、得られる酸化亜鉛結晶粒子の粒径若しくは生成粒子の凝集性がエタノール分散液に残留するアンモニアの量により大きく変動するため、20nm以下程度の粒径の酸化亜鉛結晶粒子を凝集性が制御された状態で得ることは困難であった。
【0004】
【非特許文献1】
Lubomir Spanhel and Marc A. Anderson ; J. Am. Chem. Soc., 113, 2826−2833 (1991)
【非特許文献2】
Shuji Sakohara, Sanae Honda, Yutaka Yanai, and Marc A. Anderson ; J. Chem. Eng. Jpn., 23 , 15−21 (2001)
【0005】
一方、それらの酸化亜鉛結晶粒子の凝集性を抑制すべく、例えば、特許文献1には、酸化亜鉛を、酸化亜鉛に対して5〜100wt%のエチルセルロ−ス、ポリビニルブチラ−ル樹脂、ポリビニルアルコ−ル樹脂、アクリル樹脂、リン酸エステル系活性剤、不飽和ポリカルボン酸から選ばれた分散剤を含有する炭素数1〜5のアルコ−ルに分散させ、この分散液にアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン或いはこれらの低重合体を添加し、触媒の存在下に加水分解させ、酸化亜鉛の表面を酸化亜鉛重量の5〜100wt%のシリカで被覆する技術が開示されている。この加水分解の触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸類、蟻酸、酢酸、シユウ酸等の有機酸類や、アンモニア水、水酸化アンモニウム、モノエタノールアミン等のアミン類等が挙げられている。しかしこうして得られる被覆粒子は、その90wt%以上が粒径0.1〜9.0μmで、平均粒径0.5〜5.0μm程度であって、粒径20nm以下の酸化亜鉛結晶粒子を原料として用いても酸化亜鉛ナノ粒子を得ることはできなかった。
【0006】
又、非特許文献3には、トリオクチルホスフィンオキシドやアルキルアミン類を酸化亜鉛結晶粒子表面に結合した超微粒子が開示されている。この方法により、トルエン等の有機溶媒への分散安定性に優れた酸化亜鉛ナノ粒子が得られるが、燐原子や窒素原子を含有する有機化合物が酸化亜鉛結晶粒子表面に直接結合しているため、耐光性や耐熱性は十分でなかった。又、特許文献2には、チオール基とポリアルキレングリコール残基とを有する有機化合物を表面に有する半導体超微粒子が開示されており、その半導体種として酸化亜鉛が例示されている。この方法により、エタノール等の有機溶媒への分散安定性に優れた酸化亜鉛ナノ粒子が得られるが、硫黄原子を含有する有機化合物を分散安定化剤として含有するものであるので、耐光性、耐熱性、耐酸化性は十分でなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−193354号公報
【非特許文献3】
Moonsub Shim and Philippe Guyot−Sionnest ; J. Am. Chem. Soc., 123, 11651−11654 (2001)
【特許文献2】
特開2002−121549号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述の従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、超微粒子であると共に、凝集性が抑制され、且つ、光、熱、酸素等に対して安定な酸化亜鉛ナノ粒子、及びその製造方法、並びに、その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物、及びそれを用いた積層体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アルコキシシラン類を特定の触媒の存在下で反応させ生成された酸化珪素組成を有する相で酸化亜鉛結晶粒子表面を覆うことにより得られた酸化亜鉛ナノ粒子が、前記目的を達成できることを見いだし本発明を完成したもので、従って、本発明は、酸化亜鉛結晶粒子の表面が酸化珪素組成を有する相で覆われてなる酸化亜鉛ナノ粒子であって、Z平均粒径が3〜50nm、且つ、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下である酸化亜鉛ナノ粒子、及び、酸化亜鉛結晶粒子の表面が酸化珪素組成を有する相で覆われてなる酸化亜鉛ナノ粒子であって、1重量%エタノール分散液として、23℃で3日間静置した後の該分散液の波長400nmにおける光路長10mmでの光線透過率が90%以上、且つ、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下である酸化亜鉛ナノ粒子、を要旨とする。
【0010】
更に、本発明は、酸化亜鉛結晶粒子を含む液相中で、水、及び活性水素を有さない塩基性有機化合物の存在下、アルコキシシラン類を加水分解させ、その加水分解物のシラノール縮合反応により生成した酸化珪素組成を有する相で、酸化亜鉛結晶粒子の表面を覆う酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法、を要旨とする。
【0011】
更に、本発明は、前記酸化亜鉛ナノ粒子がマトリックス中に分散されてなる酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物、及び、基体表面に、該酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物の層が形成されてなる積層体、を要旨とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
〔酸化亜鉛ナノ粒子〕
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、酸化亜鉛結晶粒子の表面が酸化珪素組成を有する相で覆われてなるナノ粒子であって、Z平均粒径が3〜50nm、且つ、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下のものである。
【0013】
本発明において、酸化亜鉛結晶粒子は、X線回折(XRD)で酸化亜鉛結晶に帰属される回折ピークを有するものであり、そのZ平均粒径が1〜20nmのものであるのが好ましい。尚、その上限値は、超微粒子化した酸化亜鉛ナノ粒子を得ること、及び、後述する酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物における分散性を確保し透明性等の低下を防止すること、等の点から、15nmであるのが更に好ましく、10nmであるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子の有する紫外線遮蔽能、発光能等を有効に発現させる等の点から、2nmであるのが更に好ましく、3nmであるのが特に好ましい。
【0014】
尚、ここで、酸化亜鉛結晶粒子のZ平均粒径は、酸化亜鉛結晶粒子の5重量%以下の濃度でのエタノール分散液を、液透過型電子顕微鏡(TEM)観察用の、市販の非晶性炭素膜を設けた銅グリッドに塗布したものを観察試料とし、そのTEM観察像の画像処理により算出したものである。尚、画像処理において、粒子像が非円形である場合は、同面積の円の直径をその粒子像の粒径とした。
【0015】
又、酸化亜鉛結晶粒子は、前記Z平均粒径の範囲であれば、非凝集の1次結晶粒子のみからなる必要はなく、1次結晶粒子の凝集粒子を含んでいてもよいが、前記TEM画像処理での粒子像総面積における凝集粒子の占める面積の割合として、50%以下であるのが好ましく、30%以下であるのが更に好ましく、20%以下であるのが特に好ましい。
【0016】
又、酸化亜鉛結晶粒子の表面を覆う酸化珪素組成を有する相は、後述する酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法において、酸化亜鉛結晶粒子を含有する液相中で、水、及び活性水素を有さない塩基性有機化合物の存在下、アルコキシシラン類を加水分解させ、その加水分解物のシラノール縮合反応、所謂、ゾル−ゲル法、により形成されたものである。
【0017】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子において、酸化亜鉛結晶粒子とその表面を覆う酸化珪素組成を有する相がなす相構造に制限はないが、酸化亜鉛ナノ粒子の表面に酸化亜鉛結晶粒子が露出していないことが望ましい。典型的な相構造の例を図1に模式的に例示する。図1において、黒い部分は酸化亜鉛結晶粒子を、実線で囲まれた白い領域は酸化珪素組成を有する相を、それぞれ表す。図1中、(a)は、酸化亜鉛結晶粒子の1次粒子がそれぞれ独立して、その表面が層状の酸化珪素組成を有する相で覆われ、12個の酸化亜鉛ナノ粒子を形成している状態を示し、(b)は、複数の酸化亜鉛結晶粒子の1次粒子が互いに凝集することなく集合して、その集合体が酸化珪素組成を有する相で覆われ、4個の酸化亜鉛ナノ粒子を形成している状態を示し、(c)は、複数の酸化亜鉛結晶粒子の1次粒子が互いに凝集し、その凝集体の表面が層状の酸化珪素組成を有する相で覆われ、4個の酸化亜鉛ナノ粒子を形成している状態を示す。以上の典型的な例の外、例えば、1個の酸化亜鉛ナノ粒子が複数の酸化亜鉛結晶粒子を包含しており、それら酸化亜鉛結晶粒子の一部が凝集し他は非凝集状態の相構造を有するものであってもよく、又、前記(a)、(b)、及び(c)の相構造例の混合等、異なる相構造の酸化亜鉛ナノ粒子の混合物であってもよい。
【0018】
又、酸化珪素組成を有する相の厚みは、酸化亜鉛ナノ粒子の表面の任意の点から酸化亜鉛結晶粒子の表面までの最短距離において0.5〜50nmであるのが好ましい。尚、その上限値は、酸化亜鉛ナノ粒子中の酸化亜鉛結晶粒子の含有量を大きくできる等の点から、40nmであるのが更に好ましく、30nmであるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子の光触媒活性を封鎖する等の点から、1nmであるのが更に好ましく、2nmであるのが特に好ましい。尚、この酸化珪素組成を有する相の厚みも、前記TEM観察により算出される。
【0019】
そして、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、そのZ平均粒径が、前記酸化珪素組成を有する相を含んだ値として3〜50nmのものである。尚、その上限値は、後述する酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物における分散性を確保し透明性等の低下を防止する等の点から、40nmであるのが更に好ましく、30nmであるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子の有する紫外線遮蔽能、発光能等を有効に発現させる等の点から、5nmであるのが更に好ましく、7nmであるのが特に好ましい。尚、この酸化亜鉛ナノ粒子のZ平均粒径も、前記TEM観察により算出される。
【0020】
又、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、非凝集性に優れるものであり、具体的には、1重量%エタノール分散液として、23℃で3日間静置した後の該分散液の波長400nmにおける光路長10mmでの光線透過率が90%以上、という非凝集性を示すものであり、その光線透過率は、93%以上であるのが好ましく、95%以上であるのが特に好ましい。又、その光線透過率を、1週間保持できるのが好ましく、2週間保持できるのが特に好ましい。
【0021】
更に、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、前記粒径、又は/及び、前記非凝集性を満足した上で、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下であるものであり、これら原子の合計含有量は、30ppm以下であるのが好ましく、20ppm以下であるのが特に好ましい。これら原子の合計含有量が前記範囲超過であると、光、熱、酸素等に対する安定性を損なうこととなる。尚、これら原子の含有量は、元素分析により測定される。
【0022】
そして、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、酸化亜鉛ナノ粒子の、例えばエタノール、テトラヒドロフラン等の非芳香族溶媒の分散液に、23℃、大気下で、100Wの超高圧水銀灯を液面上10cmの距離から連続照射したときに、白濁、沈殿、及び変色のいずれかを生じるまでの時間で耐光性を評価したときに、その時間が2時間以上のものであり、3時間以上であるのが好ましく、5時間以上であるのが特に好ましい。
【0023】
又、大気圧空気流通雰囲気下、熱重量分析(TG)により、30℃から300℃まで10℃/分で昇温し、次いで300℃で120分保持したときの重量減少で耐熱性を評価したときに、その重量減少が40重量%以下のものであり、30重量%以下であるのが好ましく、20重量%であるのが特に好ましい。
【0024】
又、大気圧空気流通雰囲気下、熱重量分析(TG)により、30℃から200℃まで10℃/分で昇温し、次いで200℃で300分保持したときの重量減少で耐酸化性を評価したときに、その重量減少が30重量%以下のものであり、20重量%以下であるのが好ましく、10重量%であるのが特に好ましい。
【0025】
〔酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法〕
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法は、前記酸化亜鉛結晶粒子を含む液相中で、水、及び活性水素を有さない塩基性有機化合物の存在下、アルコキシシラン類を加水分解させ、その加水分解物のシラノール縮合反応により生成した酸化珪素組成を有する相で、酸化亜鉛結晶粒子の表面を覆うことよりなる。
【0026】
ここで、酸化亜鉛結晶粒子としては、本発明の前記酸化亜鉛ナノ粒子において前述した酸化亜鉛結晶粒子が用いられ、その酸化亜鉛結晶粒子の製造方法に特に制限はなく、例えば、亜鉛塩を塩基性物質と液相で接触させる方法、及び、塩基性炭酸亜鉛を経由する方法などが例示される。これらの中で、本発明においては、酢酸亜鉛や硝酸亜鉛等の亜鉛塩を水酸化リチウム等の塩基性物質とエタノール等の有機溶媒中で接触させる方法(以降、「溶液接触法」と言うことがある。)が好ましい。
【0027】
その溶液接触法による酸化亜鉛結晶粒子の製造例は、前記従来の技術の欄における非特許文献1及び非特許文献2に解説されているが、この方法で使用する有機溶媒は、通常、その分子構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及び燐原子から選ばれる任意の陰性原子を含有する。これは、溶液接触法が極性、好ましくは水素結合性、の液相雰囲気で好ましく進行するためであり、その理由として、生成する酸化亜鉛結晶粒子を極性の高い溶媒分子が溶媒和して粒子凝集を防ぎ分散安定化する効果が考えられる。
【0028】
従って、溶液接触法に好適に使用される有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素数4以下のアルコール類、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、N−メチルモルホリン等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のヒドロキシエーテル類、プロピレングリコール−1−メチルエーテル−2−アセタート等のエーテルエステル類、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、キノリン等のピリジン誘導体等が例示される。これらの中で、酸化亜鉛結晶粒子の分散安定化効果等の点から、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、ヒドロキシエーテル類、アミド類が好ましく、中でも、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数3以下のアルコール類、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のヒドロキシエーテル類が更に好ましく、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数2又は3のアルコール類が特に好ましい。
【0029】
これらの有機溶媒は複数種を混合して使用してもよく、必要に応じて、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素等の非極性溶媒を加えてもよく、水を含有していてもよい。但し、水を含有する場合、酸化亜鉛結晶粒子の分散安定性の点で、溶液接触法の反応液中の水分量を10重量%以下とするのが好ましく、7重量%以下とするのが更に好ましく、5重量%以下とするのが特に好ましい。
【0030】
又、溶液接触法において用いられる塩基性物質は、亜鉛塩の対陰イオンと化合して副生成物の塩を生じる。例えば、塩基性物質として水酸化リチウムを、亜鉛塩として酢酸亜鉛を、それぞれ使用すると、酸化亜鉛結晶粒子の他に酢酸リチウムが副生成物の塩として生じる。こうした塩基性物質としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド類、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ベンジルアミン、アニリン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン等の1級アミン類、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン等の2級アミン類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、キノリン等の含窒素複素環類、アンモニア等が例示される。これらの中で、アルカリ金属水酸化物、4級アンモニウムヒドロキシド類、3級アミン類、及びアンモニアが好ましく、中で、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド類が特に好ましい。
【0031】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法に用いられる酸化亜鉛結晶粒子は、前記溶液接触法で製造されたものであって、反応液中に分散した状態でのものであっても、再沈殿法、クロマトグラフィ法、イオン交換等による脱塩法等により精製を加えた状態のものであってもよい。
【0032】
又、用いられる酸化亜鉛結晶粒子は、その表面に有機化合物を結合或いは吸着したものであってもよいが、酸化亜鉛結晶粒子全体に対して0.1〜50重量%であるのが好ましい。尚、その上限値は、後述する酸化亜鉛ナノ粒子の製造において用いられるアルコキシシラン類の反応性等の点から、40重量%であるのが更に好ましく、30重量%であるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子同士の凝集を抑制する等の点から、1重量%であるのが更に好ましく、5重量%であるのが特に好ましい。かかる有機化合物の具体例としては、前記溶液接触法において酢酸亜鉛を原料とした場合に表面に残存するアセチル基、溶液接触法に使用するエタノール等の溶媒分子等が挙げられる。
【0033】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法において、液相とするにおける溶媒としては、前記溶液接触法による酸化亜鉛結晶粒子の製造例で例示した有機溶媒が使用可能であるが、それらの中で、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数4以下のアルコール類、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のヒドロキシエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類が好ましく、中でも、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数3以下のアルコール類、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のヒドロキシエーテル類が更に好ましく、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数2又は3のアルコール類が特に好ましい。尚、これらの有機溶媒は複数種を混合して用いてもよい。
【0034】
このような液相反応における酸化亜鉛結晶粒子の使用量は、反応液の全重量に対して0.01〜10重量%とするのが好ましい。尚、その上限値は、酸化亜鉛結晶粒子同士の凝集を防止する等の点から、7重量%とするのが更に好ましく、5重量%とするのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子表面への酸化珪素組成を有する相の形成性や生産性等の点から、0.1重量%とするのが更に好ましく、0.5重量%とするのが特に好ましい。
【0035】
又、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法において用いられるアルコキシシラン類としては、下記一般式(1)、又は下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
R2 m −Si−(OR1 )4−m (1)
【0036】
式(1)中、R1 は、置換基を有していてもよい炭素数6以下のアルキル基を、R2 は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を示す。mは0〜3の整数であり、mが0、1、又は2の場合、複数のR1 は同じであっても異なっていてもよく、又、mが2、又は3の場合、複数のR2 は同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
R3 −〔Si(H)n −(OR1 )3−n 〕2 (2)
【0038】
式(2)中、R1 は、置換基を有していてもよい炭素数6以下のアルキル基を、R3 は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリーレン基を示す。nは0〜2の整数であり、nが0、又は1の場合、複数のR1 は同じであっても異なっていてもよく、又、R3 のアルキレン基、シクロアルキレン基、及びアリーレン基の置換基としてアルコキシシリル基を更に有していてもよい。
【0039】
これらのアルコキシシラン類の具体例として、前記一般式(1)で表されるものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、4−ブチルフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジドデシルジメトキシシラン、メチルオクチルジメトキシシラン、ドデシルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類が挙げられる。
【0040】
又、前記一般式(2)で表されるものとしては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3,5−トリス(トリメトキシシリル)ベンゼン等のアルコキシシリル基含有化合物類が挙げられる。
【0041】
又、これらのアルコキシシラン類の部分加水分解物やオリゴマー(例えば、三菱化学社製メトキシシランオリゴマー「MKCシリケートMS51」等。)を使用してもよい。これらの中で、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン若しくはテトラエトキシシランのオリゴマー等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン等の前記一般式(1)におけるR2 が炭素数12以下のアルキル基であるトリアルコキシシラン類、及び、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、ドデシルメチルジメトキシシラン等の前記一般式(1)における2つのR2 の全炭素数が13以下のアルキル基であるジアルコキシシラン類が好ましい。
【0042】
又、アルコキシシラン類として、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のフッ化アルキル基やフッ化アリール基を有するアルコキシシラン類を単独使用若しくは併用することにより、形成される酸化珪素組成を有する相に優れた耐水性、耐湿性、耐汚染性等を付与することができる。
【0043】
これらのアルコキシシラン類は、1種を用いることとしても、複数種を用いることとしてもよい。但し、酸化亜鉛ナノ粒子の製造における酸化珪素組成を有する相の形成性の点で、モノアルコキシシラン類の使用量は、全アルコキシシラン類の70モル%以下となるようにすることが望ましい。又、テトラアルコキシシラン類の使用量を、全アルコキシシラン類の1〜90モル%とするのが好ましい。尚、酸化珪素組成を有する相の緻密性を向上させ、耐水性、耐酸性、耐亜鉛溶出性、酸化亜鉛結晶粒子の光触媒作用の封鎖能等を向上させる等の点から、その上限値は、80モル%とするのが更に好ましく、70モル%とするのが特に好ましく、その下限値は、5モル%とするのが更に好ましく、10モル%とするのが特に好ましい。
【0044】
これらのアルコキシシラン類の使用量は、反応液中に存在している亜鉛原子のモル数に対する珪素原子のモル数の比として、0.1〜100倍モルとするのが好ましい。尚、その上限値は、酸化亜鉛ナノ粒子中の酸化亜鉛結晶粒子の含有量を大きくできる等の点から、70倍モルとするのが更に好ましく、50倍モルとするのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛ナノ粒子に対する非凝集性付与等の点から、0.5倍モルとするのが好ましく、1倍モルとするのが特に好ましい。
【0045】
又、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法において用いられる活性水素を有さない塩基性有機化合物は、アルコキシシラン類の加水分解、シラノール縮合反応を触媒するものであり、具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリフェニルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン等の3級アミン類、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、キノリン等の含窒素複素環類等が挙げられ、中でも、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン等の炭素数6〜12の3級アミン類が好ましい。
【0046】
これらの、活性水素を有さない塩基性有機化合物の使用量は、反応液の全重量に対して、0.1〜30重量%とするのが好ましい。尚、その上限値は、反応の制御性、及び酸化亜鉛ナノ粒子に対する非凝集性付与等の点から、20重量%とするのが更に好ましく、10重量%とするのが特に好ましく、一方、その下限値は、反応速度等の点から、0.5重量%とするのが更に好ましく、1重量%とするのが特に好ましい。
【0047】
又、前記アルコキシシラン類を加水分解させるための水の使用量は、アルコキシシラン類中のアルコシキ基のモル数に対して、0.1〜10倍モルとするのが好ましい。尚、その上限値は、アルコキシシラン類の加水分解、シラノール縮合反応の制御性等の点から、7倍モルとするのが更に好ましく、5倍モルとするのが特に好ましく、一方、その下限値は、加水分解、及びシラノール縮合反応性等の点から、0.3倍モルとするのが更に好ましく、0.5倍モルとするのが特に好ましい。
【0048】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法において、前記アルコキシシラン類、活性水素を有さない前記塩基性有機化合物、及び水の添加方法や順序に特に制限はなく、例えば、前記酸化亜鉛結晶粒子を含む液相中に、先ずアルコキシシラン類を加え、次いで、活性水素を有さない塩基性有機化合物と水を逐次に或いは同時に加える方法、先ず活性水素を有さない塩基性有機化合物を加え、次いで、アルコキシシラン類と水を逐次に或いは同時に加える方法、アルコキシシラン類と活性水素を有さない塩基性有機化合物と水を予め混合しておき、加える方法等が可能である。これらの中で、水を最後に加える方法が反応の制御性の点で好ましく、先ずアルコキシシラン類を加え、次いで活性水素を有さない塩基性有機化合物を加え、最後に水を加える方法が最も好ましい。
【0049】
尚、前記溶液接触法による酸化亜鉛結晶粒子を原料として使用する場合、水酸化リチウム等の塩基性物質を酢酸亜鉛等の亜鉛塩に接触させ始めた時点から100時間以内にアルコキシシラン類による反応を行うことが、酸化亜鉛結晶粒子同士の凝集が過度に進行することを防ぐために好ましい。この時間は、70時間以内とするのが更に好ましく、50時間以内とするのが特に好ましい。
【0050】
[酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物]
前記方法により得られた本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、必要に応じて、再沈殿法、クロマトグラフィ法、脱塩法等により精製され、その有する紫外線遮蔽能、発光能、高屈折率性等を活かし、マトリックス中に分散された酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物として、例えば、紫外線遮蔽膜、反射防止膜、発光膜等の光学機能膜として有用である。
【0051】
その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物におけるマトリックスの好適な例は、珪素原子−酸素原子結合を主体とする酸化珪素組成を有するものであり、透明性と等方性等の点から非晶質であることが好ましい。このような酸化珪素組成を有するマトリックスの製造方法に制限はないが、アルコキシシラン類の加水分解及びシラノール縮合反応、所謂、ゾル−ゲル法、で製造されたものが好ましい。尚、その際、シラザン類等が併用されてもよく、又、必要に応じて、前記酸化亜鉛ナノ粒子の製造におけると同様にして有機溶媒を加えてもよく、水の量も前記の説明に準じて調製すればよく、反応触媒には、前記塩基類の外、塩酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の酸類、アルミニウムのアセチルアセトナート錯体等のルイス酸類も使用可能である。
【0052】
ここで、例えば、アルコキシシラン類としてトリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類、及びモノアルコキシシラン類のような珪素原子−炭素原子結合をその分子構造中に含有するものを使用すると、生成する酸化珪素組成を有するマトリックスには、珪素原子−炭素原子結合が含有され、又、ヘキサメチレンジシラザン等のシラザン類を使用すると、生成する酸化珪素組成を有するマトリックスには、珪素原子−窒素原子結合が含有される。更に、酸化珪素組成を有するマトリックスには、炭素原子間の単結合、二重結合、三重結合、或いは芳香族結合等の炭素原子−炭素原子結合、及び炭素原子−水素原子結合等の有機共有結合を含有していてもよい。
【0053】
尚、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物における酸化珪素組成を有するマトリックスとして、その元素組成中に珪素原子と酸素原子以外の元素の含有割合は、組成物としての耐熱性や機械的強度等の点から、50原子%以下であるのが好ましく、40原子%以下であるのが更に好ましく、30原子%以下であるのが特に好ましい。但し、組成物に機械的靱性を付与したり有機物との接着性を付与したい場合には、炭素原子や水素原子を含有する方が好ましく、このような目的においては、珪素原子と酸素原子以外の元素の含有割合は、5原子%以上であるのが好ましく、10原子%以上であるのが特に好ましい。こうした原子比は、酸化珪素組成を有するマトリックスの元素分析で測定される。
【0054】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子含有酸化珪素組成物における酸化亜鉛ナノ粒子の含有量は、酸化亜鉛結晶粒子の含有量として0.1〜70体積%であるのが好ましい。尚、その上限値は、組成物としての透明性と機械的強度等の点から、50体積%であるのが更に好ましく、30体積%であるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子の有用な性質を十分に発現する等の点から、0.5体積%であるのが更に好ましく、1体積%であるのが特に好ましい。この体積%は透過型電子顕微鏡による観察で算出される。
【0055】
又、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物におけるマトリックスとしては、前記酸化珪素組成を有するもの以外に各種の樹脂も用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリノルボルネン等の環状オレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ビスフェニールAポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフテレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂、シクロヘキサンジメタノールとシクロヘキサンジカルボン酸からなるポリエステル等の脂環式ポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66、半芳香族非晶性ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド等のポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂、トリアセチルセルロース等の置換基を有する可溶性セルロース類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体等の脂肪族ポリエーテル類、ポリカプロラクトンやポリ乳酸等の生分解性を有していてもよい脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール等が挙げられ、これらは樹脂状のものに限定されず、エラストマー状、又はゴム状であってもよい。これらの中で、透明性に優れるポリノルボルネン等の環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、脂環式ポリエステル樹脂、半芳香族非晶性ナイロン、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、トリアセチルセルロース等の置換基を有する可溶性セルロース類、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体等の脂肪族ポリエーテル類が好ましく、環状オレフィン系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、脂環式ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、可溶性セルロース類等が特に好ましい。
【0056】
これら例示した樹脂等は複数種を混合して用いてもよく、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂とポリアリレート樹脂の組み合わせは、透明性、機械的強度、耐熱性等の点で優れ、芳香族ポリカーボネート樹脂と脂環式ポリエステル樹脂の組み合わせは、透明性、機械的強度、耐光性、耐薬品性等の点で優れた組み合わせである。
【0057】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子含有の前記樹脂等の組成物における酸化亜鉛ナノ粒子の含有量は、0.1〜90重量%であるのが好ましい。尚、その上限値は、組成物としての透明性や機械的強度等の点から、70重量%であるのが更に好ましく、50重量%であるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子の有用な性質を十分に発現する等の点から、0.5重量%であるのが更に好ましく、1重量%であるのが特に好ましい。この重量%は、樹脂組成物を650℃の空気中で燃焼させた灰分測定により算出される。
【0058】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子含有の前記樹脂等の組成物の製造方法に制限はないが、通常、溶液混合法、溶融混練法等が用いられ、中でも、一軸又は二軸押出機等の混練機による溶融混練法が好ましい。又、いずれの製造方法においても、高濃度の酸化亜鉛ナノ粒子を含有するマスターバッチを予め作製し、希釈する方法を採ってもよい。
【0059】
[酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物の積層体]
本発明の前記酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物は、基体表面に、前記酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物の層が形成された積層体とすることにより、紫外線遮蔽膜、反射防止膜、発光膜等の光学機能膜の用途において有用なものとなる。
【0060】
尚、その積層体における酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物の層の厚みは、0.02〜1000μmであるのが好ましい。尚、その上限値は、層としての可撓性や透明性等の点から、500μmであるのが更に好ましく、100μmであるのが特に好ましく、一方、その下限値は、層としての機械的強度や光学特性を有効に発現させる等の点から、0.05μmであるのが更に好ましく、0.1μmであるのが特に好ましい。又、酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物層の表面平滑性は、表面粗さ計による最大凹凸であるRmax 値として、100nm以下であるのが好ましく、50nm以下であるのが更に好ましく、30nm以下であるのが特に好ましい。
【0061】
尚、積層体に用いられる基体の材質としては、ガラス、セラミクス、金属、半導体、無機塩、有機結晶、有機非晶質、合成樹脂等が例示され、中でも透明性と機械的強度等の点で、ガラス、及び、例えば、熱可塑性でも架橋型でもよいアクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等の透明合成樹脂が好ましい。又、基体形状としては、特に板状のものに限定されず、棒状、繊維状等であってもよく、その寸法としても特に制限はないが、厚みは0.01〜10mmであるのが好ましい。尚、その上限値は、積層体としての透明性等の点から、5mmであるのが更に好ましく、3mmであるのが特に好ましく、一方、その下限値は、積層体としての機械的強度等の点から、0.1mmであるのが更に好ましく、0.3mmであるのが特に好ましい。又、基体の幅は0.1〜1000mmであるのが好ましい。尚、その上限値は用途により適宜選択され、一方、その下限値は、積層体としての機械的強度等の点から、0.5mmであるのが更に好ましく、1mmであるのが特に好ましい。
【0062】
本発明の前記積層体の製造方法に制限はないが、公知の任意の液体塗布製膜法が利用可能である。つまり、本発明の前記酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物を与えるゾル−ゲル法原料液又は樹脂組成物を与える溶液を、例えばスピンコート、ディップコート、アプリケーターやダイコーターによる流延法等により前記基体表面に塗布し、乾燥させることにより製造可能である。
【0063】
本発明の積層体は、その酸化亜鉛ナノ粒子含有層に含有される酸化亜鉛結晶粒子の有する、例えば、紫外線の照射により可視光を発生する性質を利用して、紫外線を可視光に変換して微弱化若しくは遮蔽するための機能部材として、具体的には、例えば、紫外線が不要若しくは有害である光学装置、例えば太陽電池、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示装置、例えば超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等の紫外線を発生する光源を使用するプロジェクタ、等の部材やそのコーティングとして非常に有用である。又、ガラスや透明樹脂等の透明基体上に形成された酸化亜鉛ナノ粒子含有層は、酸化亜鉛結晶粒子が発生する光が該透明基体中を導波してその端面を明るく光らせる性質があるので、この端面の発光を利用する照明装置としても有用である。
【0064】
【実施例】
以下に本発明の内容及び効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。尚、各種同定や分析、実施例及び比較例における各種成形や評価は以下の方法で実施した。
【0065】
(1)X線回折(XRD)スペクトル:リガク(株)製「RINT1500」を用い、銅Kα線をX線源とし、波長1.5418Åで、23℃にて測定した。
(2)透過型電子顕微鏡(TEM)観察:日立製作所(株)社製「H−9000UHR型透過型電子顕微鏡」を用い、加速電圧300kV、観察時の真空度約7.6×10−9Torrにて測定した。
(3)吸収スペクトルと光線透過率:ヒューレットパッカード社製「HP8453型紫外・可視吸光光度計」を用い、室温にて測定した。
(4)元素分析:XPS分析で微量分析を行い、有機元素(特に硫黄)が多量に存在する場合は、通常の有機元素分析を併用した。
(5)膜厚及び表面平滑性の測定:(株)東京精密製の段差計である「サーフコム」を用い、走査速度0.6mm/秒で測定した。
(6)耐光性:酸化亜鉛ナノ粒子のエタノール分散液に、23℃、大気下で、100Wの超高圧水銀灯を液面上10cmの距離から連続照射し、白濁、沈殿、及び変色のいずれかの変性を生じるのでの時間を観察した。
(7)耐熱性:酸化亜鉛ナノ粒子を、大気圧空気流通雰囲気下、熱重量分析(TG)により、30℃から300℃まで10℃/分で昇温し、次いで300℃で120分保持したときの重量減少量を観察した。
(8)耐酸化性:酸化亜鉛ナノ粒子を、大気圧空気流通雰囲気下、熱重量分析(TG)により、30℃から200℃まで10℃/分で昇温し、次いで200℃で300分保持したときの重量減少量を観察した。
【0066】
実施例1(活性水素を有さない塩基の使用によるシリコーン相の形成)
エタノール10mL中に酢酸亜鉛2水和物0.220gを加え、加熱還流下、90℃にて1 時間撹拌した後、0℃に冷却し、次いで、この溶液に、エタノール10mLに水酸化リチウム1水和物0.059g(1.4当量)を溶解した溶液を、0℃にて攪拌しながら添加することにより、溶液接触法による酸化亜鉛結晶粒子を製造した。この時点での反応液の吸収スペクトルは、生成した酸化亜鉛結晶粒子によると考えられる318nmにエキシトン吸収ピークを有する吸収帯を示した。引き続いて、室温にて30分間撹拌後、攪拌を継続しながらメチルトリメトキシシラン0.400mLを添加し、更に、室温にて3時間撹拌後、トリエチルアミン1.53mLを添加し、更に脱塩水0.050mLを添加した。この時点での反応液の吸収スペクトルは、酸化亜鉛結晶粒子表面にシリコーン相が形成されたことによると考えられる324nmへのエキシトン吸収ピークのシフトを示した。こうして得た反応液は、一晩静置後も透明のままで沈殿を生じず、その吸収スペクトルは、一晩静置前と同一波長(324nm)にエキシトン吸収ピークを示した。
【0067】
一晩静置した反応液を濃縮・乾固し、この粉末をエタノール1.5mLに再分散して透明な分散液とし、該分散液をn−ヘキサン20mL中に投入して再沈殿させ、遠心分離、デカンデーション、真空乾燥することにより白色固体粉末0.2161gを得た。この粉末は、XRDスペクトルから、酸化亜鉛結晶を含むものであり、波長365nm及び254nmのいずれの紫外線を照射しても、白緑色の明るい発光を生じることを確認した。この粉末をエタノールに1重量%の濃度で再分散したとき透明な分散液を与え、この透明分散液をTEM観察用の非晶性炭素膜を設けた銅グリッドに塗布風乾してTEM観察したところ、Z平均粒径が約4nmであって、Z平均粒径約3.5nmの酸化亜鉛結晶粒子の表面がシリコーン相で覆われた酸化亜鉛ナノ粒子であることが分かった。又、この透明分散液は、23℃で1週間室温で静置しても沈殿や濁りを生じず、そのときの波長400nmにおける光路長10mmでの光線透過率は98%であった。
【0068】
又、この酸化亜鉛ナノ粒子の硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量は10ppm未満であり、耐光性は5時間以上、耐熱性は15重量%、耐酸化性は5重量%であり、いずれも優れるものであった。
【0069】
比較例1(酸化亜鉛結晶粒子表面にシリコーン相を形成しない場合)
実施例1の操作において、メチルトリメトキシシランを添加する直前の反応液は透明な分散液であったが、これを23℃で静置したところ酸化亜鉛結晶粒子によると考えられるエキシトン吸収ピークが経時的に長波長側にシフトし続け、約3日で白濁と沈殿を生じた。このときのZ平均粒径をTEM観察したところ、約40nmであった。又、エキシトン吸収ピークの長波長シフトは酸化亜鉛結晶粒子の大粒径化を意味するので、酸化亜鉛結晶粒子表面にシリコーン相を形成しない場合、酸化亜鉛結晶粒子は次第に凝集し最後には白濁や沈殿を生じることが分かった。
【0070】
比較例2(塩基としてのアンモニアの使用によるシリコーン相の形成)
実施例1の操作において、メチルトリメトキシシランを加える直前までは同じ操作を行った後、メチルトリメトキシシランの代わりにテトラエトキシシラン0.632mLを添加し、室温にて3時間撹拌後、2.0規定濃度のアンモニアのエタノール溶液5.5mLを添加し、一晩静置したところ、反応液は白濁していた。このときのZ平均粒径をTEM観察したところ、約50nmであった。又、この白濁液をn−ヘキサン250mLに投入して再沈殿させ、沈殿を濾別、乾燥して、白色固体粉末0.2616gを得た。この粉末は、XRDスペクトルで酸化亜鉛結晶パターンを示さず、波長365nmの紫外線を照射しても発光しなかった。従って、活性水素を有する塩基であるアンモニアの使用により、酸化亜鉛結晶粒子が変質したものと考えられた。
【0071】
比較例3(塩基としてのモノエチルアミン使用によるシリコーン相の形成)
実施例1の操作において、トリエチルアミンの代わりに70重量%モノエチルアミン水溶液0.885mLとエタノール0.255mLの混合溶液を加えた他は、同じ合成反応操作を行った。この反応液は一晩静置後も透明のままであった。このときのZ平均粒径をTEM観察したところ、約4nmであった。又、この反応液を濃縮・乾固した後、エタノール2mLに再分散して透明な分散液とし、n−ヘキサン20mL中に投入して再沈殿させ、遠心分離、デカンデーション、真空乾燥することにより白色固体粉末を得た。この粉末はエタノールに再分散可能であったが発光能は微弱であった。反応液の吸収スペクトルによる追跡で、酸化亜鉛結晶粒子に由来する吸収帯の吸収強度はモノエチルアミン添加後急激に低下した。このことから、活性水素を有する塩基であるモノエチルアミンの使用により酸化亜鉛結晶粒子が変質したものと考えられた。
【0072】
比較例4(塩基としてのジエチルアミン使用によるシリコーン相の形成)
比較例3において、添加した塩基をモノエチルアミンの代わりにジエチルアミン1.14mLとした以外は、同様の合成反応操作を行った。この反応液は一晩静置後も透明のままであった。このときのZ平均粒径をTEM観察したところ、約4nmであった。又、比較例3と同様の操作を行い得られた白色固体粉末は、反応液の吸収スペクトルによる追跡で、酸化亜鉛結晶粒子に由来する吸収帯の吸収強度はジエチルアミン添加後急激に低下した。このことから、活性水素を有する塩基であるジエチルアミンの使用により酸化亜鉛結晶粒子が変質したものと考えられた。
【0073】
実施例2(酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物1とその積層体)
シリコーンマトリックスを与えるゾル−ゲル法原料液として、メタノール30.3g、n−ブタノール71.9g、アルミニウムのアセチルアセトナート錯体0.48g、重合度分布が2〜20程度でピーク平均重合度が3〜4のテトラメトキシシランオリゴマー(三菱化学(株)製「MKCシリケートMS51」)48.4g、水11.3gの混合液を調製し、該原料液63.1gに、実施例1で得た酸化亜鉛ナノ粒子0.15gを含有する透明なエタノール分散液8gを混合した透明な混合液を、ガラス容器に入れ、基体として、7.5cm角で厚みが0.7mmのガラス板を液面に垂直に浸漬し、200mm/分の一定速度で引き上げ、ガラス板の両面に前記混合液をディップコートした後、150℃で加熱硬化処理することにより、ガラス基体の表面に、酸化亜鉛ナノ粒子含有シリコーン組成物層が形成された積層体を調製した。
【0074】
その酸化亜鉛ナノ粒子含有シリコーン組成物層中の酸化亜鉛結晶粒子の含有量は、TEM観察により測定した結果、約1体積%であり、酸化亜鉛ナノ粒子含有シリコーン組成物層の厚みは、それぞれ575nmであり、表面平滑性は、任意の10ケ所を2mm走査して測定したRmax 値として25nmであり、積層体の全光線透過率は94.6%、ヘイズ値は0.0%であった。この積層体は実施例1の酸化亜鉛ナノ粒子の発光能を保持しており、254nmの紫外線を照射すると白緑色の発光を示し、ガラス板の端面は非常に明るく光り、暗黒の暗室内でこの発光実験を行うと、その発光により文字が判別できたので、この積層体の発光能は照明デバイスとして利用可能であることが判明した。
【0075】
実施例3(酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物2とその積層体)
実施例1で得た酸化亜鉛ナノ粒子0.15gを含有する透明なエタノール分散液8gに、数平均分子量が約1.2万のポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体(Aldrich社製)0.5g、及び粘度平均分子量が40万のポリエチレンオキシド2.5gを溶解して得た透明な溶液を、実施例2で用いた基体としてのガラス板表面に23℃で、回転数1,000rpmでスピンコートした後、加熱、乾燥させることにより、ガラス基体の表面に、酸化亜鉛ナノ粒子含有共重合体組成物層が形成された積層体を調製した。
【0076】
その酸化亜鉛ナノ粒子含有共重合体組成物層中の酸化亜鉛結晶粒子の含有量は、TEM観察により測定した結果、約1体積%であり、酸化亜鉛ナノ粒子含有シリコーン組成物層の厚みは、それぞれ700nmであり、表面平滑性は、任意の10ケ所を2mm走査して測定したRmax 値として30nmであり、積層体の全光線透過率は94.0%、ヘイズ値は0.0%であった。この積層体は実施例1の酸化亜鉛ナノ粒子の発光能を保持しており、254nmの紫外線を照射すると白緑色の発光を示し、ガラス板の端面は非常に明るく光り、暗黒の暗室内でこの発光実験を行うと、その発光により文字が判別できたので、この積層体の発光能は照明デバイスとして利用可能であることが判明した。
【0077】
比較例5(粒径の大きな酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物と積層体)
比較例1で得られた白濁を生じた酸化亜鉛結晶粒子の分散液に、実施例1におけるメチルトリメトキシシランの添加以降の操作を行い、酸化亜鉛結晶粒子表面がシリコーン層で覆われた酸化亜鉛ナノ粒子の形成を試みた。得られた粉末は、TEM観察により20〜数100nmの粒径分布をもつ酸化亜鉛結晶粒子からなるものであり、この粉末0.15gをエタノールに分散した白濁した分散液8gを用い、実施例2におけると同様にしてディップコート法による積層体を製造した。その結果、酸化亜鉛ナノ粒子含有シリコーン組成物層は、目視で明らかに白濁しており、積層体の透明性は劣るものであった。
【0078】
比較例6(特許文献2による酸化亜鉛ナノ粒子の製造)
実施例1の操作において、メチルトリメトキシシランを加える直前までは同じ操作を行った後、酸化亜鉛結晶粒子の反応液に、トリエチレングリコールモノメチルエーテルの11−メルカプトウンデカン酸エステルを、生成する酸化亜鉛ナノ粒子の理論最大重量の4倍重量溶解し、エタノールが加熱還流する温度で2時間加熱した後、この反応液にトルエンを加え、エタノールを留去して得た溶液を水洗し、濃縮し、次いで、得られた残渣を最小量のトルエンに再溶解し、n−ヘキサン中に投入して再沈殿させ、遠心分離とデカンテーションにより沈殿粒子を単離した。この単離粒子はトルエンやエタノールへ再分散して透明な分散液を与えたので、用いたトリエチレングリコールモノメチルエーテルの11−メルカプトウンデカン酸エステルが、配位子として酸化亜鉛結晶粒子表面に結合した酸化亜鉛ナノ粒子であることが分かった。尚、このナノ粒子のZ平均粒子径は約4nmであった。
【0079】
又、この酸化亜鉛ナノ粒子の硫黄原子含有量は、40,000ppmであり、その耐光性は1時間以内、耐熱性は45重量%、耐酸化性は35重量%であり、いずれも劣るものであった。
【0080】
【発明の効果】
本発明は、超微粒子であると共に、凝集性が抑制され、且つ、光、熱、酸素等に対して安定な酸化亜鉛ナノ粒子、及びその製造方法、並びに、その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物、及びそれを用いた積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸化亜鉛ナノ粒子における典型的な相構造の例の模式図を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、超微粒子であると共に、その凝集性が抑制され、且つ、光、熱、酸素等に対して安定性を有する酸化亜鉛ナノ粒子、及びその製造方法、並びに、その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物、及びそれを用いた積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、酸化亜鉛は、紫外線遮蔽能に優れ、又、特有の発光能を有すること等から、各種材料の充填材、顔料等の外、紫外線遮蔽膜、反射防止膜、発光膜等の光学機能膜等として各種用途に用いられている。
【0003】
そして、その酸化亜鉛としては、前記の如き性能を有効に発現させるために微粒子化が追求され、その製法として、例えば、粒径が高々5nm程度であり量子効果により生じるエキシトン吸収帯を有する酸化亜鉛結晶粒子を、酢酸亜鉛と水酸化リチウムからエタノールを溶媒として合成する方法が報告されている(非特許文献1参照。)が、そのエタノール分散液を室温で放置すると、凝集性が抑制されていないため、24時間後には粒径の増大によるエキシトン吸収帯の長波長へのシフトが認められ、、数日後には析出物が生じて液が白濁するという問題があった。又、エタノールへの再分散性に優れた酸化亜鉛結晶粒子を、酢酸亜鉛からアンモニアを触媒としエタノールを溶媒として合成する方法が報告されている(非特許文献2参照。)が、得られる酸化亜鉛結晶粒子の粒径若しくは生成粒子の凝集性がエタノール分散液に残留するアンモニアの量により大きく変動するため、20nm以下程度の粒径の酸化亜鉛結晶粒子を凝集性が制御された状態で得ることは困難であった。
【0004】
【非特許文献1】
Lubomir Spanhel and Marc A. Anderson ; J. Am. Chem. Soc., 113, 2826−2833 (1991)
【非特許文献2】
Shuji Sakohara, Sanae Honda, Yutaka Yanai, and Marc A. Anderson ; J. Chem. Eng. Jpn., 23 , 15−21 (2001)
【0005】
一方、それらの酸化亜鉛結晶粒子の凝集性を抑制すべく、例えば、特許文献1には、酸化亜鉛を、酸化亜鉛に対して5〜100wt%のエチルセルロ−ス、ポリビニルブチラ−ル樹脂、ポリビニルアルコ−ル樹脂、アクリル樹脂、リン酸エステル系活性剤、不飽和ポリカルボン酸から選ばれた分散剤を含有する炭素数1〜5のアルコ−ルに分散させ、この分散液にアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン或いはこれらの低重合体を添加し、触媒の存在下に加水分解させ、酸化亜鉛の表面を酸化亜鉛重量の5〜100wt%のシリカで被覆する技術が開示されている。この加水分解の触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸類、蟻酸、酢酸、シユウ酸等の有機酸類や、アンモニア水、水酸化アンモニウム、モノエタノールアミン等のアミン類等が挙げられている。しかしこうして得られる被覆粒子は、その90wt%以上が粒径0.1〜9.0μmで、平均粒径0.5〜5.0μm程度であって、粒径20nm以下の酸化亜鉛結晶粒子を原料として用いても酸化亜鉛ナノ粒子を得ることはできなかった。
【0006】
又、非特許文献3には、トリオクチルホスフィンオキシドやアルキルアミン類を酸化亜鉛結晶粒子表面に結合した超微粒子が開示されている。この方法により、トルエン等の有機溶媒への分散安定性に優れた酸化亜鉛ナノ粒子が得られるが、燐原子や窒素原子を含有する有機化合物が酸化亜鉛結晶粒子表面に直接結合しているため、耐光性や耐熱性は十分でなかった。又、特許文献2には、チオール基とポリアルキレングリコール残基とを有する有機化合物を表面に有する半導体超微粒子が開示されており、その半導体種として酸化亜鉛が例示されている。この方法により、エタノール等の有機溶媒への分散安定性に優れた酸化亜鉛ナノ粒子が得られるが、硫黄原子を含有する有機化合物を分散安定化剤として含有するものであるので、耐光性、耐熱性、耐酸化性は十分でなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−193354号公報
【非特許文献3】
Moonsub Shim and Philippe Guyot−Sionnest ; J. Am. Chem. Soc., 123, 11651−11654 (2001)
【特許文献2】
特開2002−121549号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述の従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、超微粒子であると共に、凝集性が抑制され、且つ、光、熱、酸素等に対して安定な酸化亜鉛ナノ粒子、及びその製造方法、並びに、その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物、及びそれを用いた積層体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アルコキシシラン類を特定の触媒の存在下で反応させ生成された酸化珪素組成を有する相で酸化亜鉛結晶粒子表面を覆うことにより得られた酸化亜鉛ナノ粒子が、前記目的を達成できることを見いだし本発明を完成したもので、従って、本発明は、酸化亜鉛結晶粒子の表面が酸化珪素組成を有する相で覆われてなる酸化亜鉛ナノ粒子であって、Z平均粒径が3〜50nm、且つ、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下である酸化亜鉛ナノ粒子、及び、酸化亜鉛結晶粒子の表面が酸化珪素組成を有する相で覆われてなる酸化亜鉛ナノ粒子であって、1重量%エタノール分散液として、23℃で3日間静置した後の該分散液の波長400nmにおける光路長10mmでの光線透過率が90%以上、且つ、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下である酸化亜鉛ナノ粒子、を要旨とする。
【0010】
更に、本発明は、酸化亜鉛結晶粒子を含む液相中で、水、及び活性水素を有さない塩基性有機化合物の存在下、アルコキシシラン類を加水分解させ、その加水分解物のシラノール縮合反応により生成した酸化珪素組成を有する相で、酸化亜鉛結晶粒子の表面を覆う酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法、を要旨とする。
【0011】
更に、本発明は、前記酸化亜鉛ナノ粒子がマトリックス中に分散されてなる酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物、及び、基体表面に、該酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物の層が形成されてなる積層体、を要旨とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
〔酸化亜鉛ナノ粒子〕
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、酸化亜鉛結晶粒子の表面が酸化珪素組成を有する相で覆われてなるナノ粒子であって、Z平均粒径が3〜50nm、且つ、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下のものである。
【0013】
本発明において、酸化亜鉛結晶粒子は、X線回折(XRD)で酸化亜鉛結晶に帰属される回折ピークを有するものであり、そのZ平均粒径が1〜20nmのものであるのが好ましい。尚、その上限値は、超微粒子化した酸化亜鉛ナノ粒子を得ること、及び、後述する酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物における分散性を確保し透明性等の低下を防止すること、等の点から、15nmであるのが更に好ましく、10nmであるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子の有する紫外線遮蔽能、発光能等を有効に発現させる等の点から、2nmであるのが更に好ましく、3nmであるのが特に好ましい。
【0014】
尚、ここで、酸化亜鉛結晶粒子のZ平均粒径は、酸化亜鉛結晶粒子の5重量%以下の濃度でのエタノール分散液を、液透過型電子顕微鏡(TEM)観察用の、市販の非晶性炭素膜を設けた銅グリッドに塗布したものを観察試料とし、そのTEM観察像の画像処理により算出したものである。尚、画像処理において、粒子像が非円形である場合は、同面積の円の直径をその粒子像の粒径とした。
【0015】
又、酸化亜鉛結晶粒子は、前記Z平均粒径の範囲であれば、非凝集の1次結晶粒子のみからなる必要はなく、1次結晶粒子の凝集粒子を含んでいてもよいが、前記TEM画像処理での粒子像総面積における凝集粒子の占める面積の割合として、50%以下であるのが好ましく、30%以下であるのが更に好ましく、20%以下であるのが特に好ましい。
【0016】
又、酸化亜鉛結晶粒子の表面を覆う酸化珪素組成を有する相は、後述する酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法において、酸化亜鉛結晶粒子を含有する液相中で、水、及び活性水素を有さない塩基性有機化合物の存在下、アルコキシシラン類を加水分解させ、その加水分解物のシラノール縮合反応、所謂、ゾル−ゲル法、により形成されたものである。
【0017】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子において、酸化亜鉛結晶粒子とその表面を覆う酸化珪素組成を有する相がなす相構造に制限はないが、酸化亜鉛ナノ粒子の表面に酸化亜鉛結晶粒子が露出していないことが望ましい。典型的な相構造の例を図1に模式的に例示する。図1において、黒い部分は酸化亜鉛結晶粒子を、実線で囲まれた白い領域は酸化珪素組成を有する相を、それぞれ表す。図1中、(a)は、酸化亜鉛結晶粒子の1次粒子がそれぞれ独立して、その表面が層状の酸化珪素組成を有する相で覆われ、12個の酸化亜鉛ナノ粒子を形成している状態を示し、(b)は、複数の酸化亜鉛結晶粒子の1次粒子が互いに凝集することなく集合して、その集合体が酸化珪素組成を有する相で覆われ、4個の酸化亜鉛ナノ粒子を形成している状態を示し、(c)は、複数の酸化亜鉛結晶粒子の1次粒子が互いに凝集し、その凝集体の表面が層状の酸化珪素組成を有する相で覆われ、4個の酸化亜鉛ナノ粒子を形成している状態を示す。以上の典型的な例の外、例えば、1個の酸化亜鉛ナノ粒子が複数の酸化亜鉛結晶粒子を包含しており、それら酸化亜鉛結晶粒子の一部が凝集し他は非凝集状態の相構造を有するものであってもよく、又、前記(a)、(b)、及び(c)の相構造例の混合等、異なる相構造の酸化亜鉛ナノ粒子の混合物であってもよい。
【0018】
又、酸化珪素組成を有する相の厚みは、酸化亜鉛ナノ粒子の表面の任意の点から酸化亜鉛結晶粒子の表面までの最短距離において0.5〜50nmであるのが好ましい。尚、その上限値は、酸化亜鉛ナノ粒子中の酸化亜鉛結晶粒子の含有量を大きくできる等の点から、40nmであるのが更に好ましく、30nmであるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子の光触媒活性を封鎖する等の点から、1nmであるのが更に好ましく、2nmであるのが特に好ましい。尚、この酸化珪素組成を有する相の厚みも、前記TEM観察により算出される。
【0019】
そして、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、そのZ平均粒径が、前記酸化珪素組成を有する相を含んだ値として3〜50nmのものである。尚、その上限値は、後述する酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物における分散性を確保し透明性等の低下を防止する等の点から、40nmであるのが更に好ましく、30nmであるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子の有する紫外線遮蔽能、発光能等を有効に発現させる等の点から、5nmであるのが更に好ましく、7nmであるのが特に好ましい。尚、この酸化亜鉛ナノ粒子のZ平均粒径も、前記TEM観察により算出される。
【0020】
又、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、非凝集性に優れるものであり、具体的には、1重量%エタノール分散液として、23℃で3日間静置した後の該分散液の波長400nmにおける光路長10mmでの光線透過率が90%以上、という非凝集性を示すものであり、その光線透過率は、93%以上であるのが好ましく、95%以上であるのが特に好ましい。又、その光線透過率を、1週間保持できるのが好ましく、2週間保持できるのが特に好ましい。
【0021】
更に、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、前記粒径、又は/及び、前記非凝集性を満足した上で、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下であるものであり、これら原子の合計含有量は、30ppm以下であるのが好ましく、20ppm以下であるのが特に好ましい。これら原子の合計含有量が前記範囲超過であると、光、熱、酸素等に対する安定性を損なうこととなる。尚、これら原子の含有量は、元素分析により測定される。
【0022】
そして、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、酸化亜鉛ナノ粒子の、例えばエタノール、テトラヒドロフラン等の非芳香族溶媒の分散液に、23℃、大気下で、100Wの超高圧水銀灯を液面上10cmの距離から連続照射したときに、白濁、沈殿、及び変色のいずれかを生じるまでの時間で耐光性を評価したときに、その時間が2時間以上のものであり、3時間以上であるのが好ましく、5時間以上であるのが特に好ましい。
【0023】
又、大気圧空気流通雰囲気下、熱重量分析(TG)により、30℃から300℃まで10℃/分で昇温し、次いで300℃で120分保持したときの重量減少で耐熱性を評価したときに、その重量減少が40重量%以下のものであり、30重量%以下であるのが好ましく、20重量%であるのが特に好ましい。
【0024】
又、大気圧空気流通雰囲気下、熱重量分析(TG)により、30℃から200℃まで10℃/分で昇温し、次いで200℃で300分保持したときの重量減少で耐酸化性を評価したときに、その重量減少が30重量%以下のものであり、20重量%以下であるのが好ましく、10重量%であるのが特に好ましい。
【0025】
〔酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法〕
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法は、前記酸化亜鉛結晶粒子を含む液相中で、水、及び活性水素を有さない塩基性有機化合物の存在下、アルコキシシラン類を加水分解させ、その加水分解物のシラノール縮合反応により生成した酸化珪素組成を有する相で、酸化亜鉛結晶粒子の表面を覆うことよりなる。
【0026】
ここで、酸化亜鉛結晶粒子としては、本発明の前記酸化亜鉛ナノ粒子において前述した酸化亜鉛結晶粒子が用いられ、その酸化亜鉛結晶粒子の製造方法に特に制限はなく、例えば、亜鉛塩を塩基性物質と液相で接触させる方法、及び、塩基性炭酸亜鉛を経由する方法などが例示される。これらの中で、本発明においては、酢酸亜鉛や硝酸亜鉛等の亜鉛塩を水酸化リチウム等の塩基性物質とエタノール等の有機溶媒中で接触させる方法(以降、「溶液接触法」と言うことがある。)が好ましい。
【0027】
その溶液接触法による酸化亜鉛結晶粒子の製造例は、前記従来の技術の欄における非特許文献1及び非特許文献2に解説されているが、この方法で使用する有機溶媒は、通常、その分子構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及び燐原子から選ばれる任意の陰性原子を含有する。これは、溶液接触法が極性、好ましくは水素結合性、の液相雰囲気で好ましく進行するためであり、その理由として、生成する酸化亜鉛結晶粒子を極性の高い溶媒分子が溶媒和して粒子凝集を防ぎ分散安定化する効果が考えられる。
【0028】
従って、溶液接触法に好適に使用される有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素数4以下のアルコール類、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、N−メチルモルホリン等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のヒドロキシエーテル類、プロピレングリコール−1−メチルエーテル−2−アセタート等のエーテルエステル類、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、キノリン等のピリジン誘導体等が例示される。これらの中で、酸化亜鉛結晶粒子の分散安定化効果等の点から、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、ヒドロキシエーテル類、アミド類が好ましく、中でも、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数3以下のアルコール類、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のヒドロキシエーテル類が更に好ましく、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数2又は3のアルコール類が特に好ましい。
【0029】
これらの有機溶媒は複数種を混合して使用してもよく、必要に応じて、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素等の非極性溶媒を加えてもよく、水を含有していてもよい。但し、水を含有する場合、酸化亜鉛結晶粒子の分散安定性の点で、溶液接触法の反応液中の水分量を10重量%以下とするのが好ましく、7重量%以下とするのが更に好ましく、5重量%以下とするのが特に好ましい。
【0030】
又、溶液接触法において用いられる塩基性物質は、亜鉛塩の対陰イオンと化合して副生成物の塩を生じる。例えば、塩基性物質として水酸化リチウムを、亜鉛塩として酢酸亜鉛を、それぞれ使用すると、酸化亜鉛結晶粒子の他に酢酸リチウムが副生成物の塩として生じる。こうした塩基性物質としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド類、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ベンジルアミン、アニリン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン等の1級アミン類、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン等の2級アミン類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、キノリン等の含窒素複素環類、アンモニア等が例示される。これらの中で、アルカリ金属水酸化物、4級アンモニウムヒドロキシド類、3級アミン類、及びアンモニアが好ましく、中で、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド類が特に好ましい。
【0031】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法に用いられる酸化亜鉛結晶粒子は、前記溶液接触法で製造されたものであって、反応液中に分散した状態でのものであっても、再沈殿法、クロマトグラフィ法、イオン交換等による脱塩法等により精製を加えた状態のものであってもよい。
【0032】
又、用いられる酸化亜鉛結晶粒子は、その表面に有機化合物を結合或いは吸着したものであってもよいが、酸化亜鉛結晶粒子全体に対して0.1〜50重量%であるのが好ましい。尚、その上限値は、後述する酸化亜鉛ナノ粒子の製造において用いられるアルコキシシラン類の反応性等の点から、40重量%であるのが更に好ましく、30重量%であるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子同士の凝集を抑制する等の点から、1重量%であるのが更に好ましく、5重量%であるのが特に好ましい。かかる有機化合物の具体例としては、前記溶液接触法において酢酸亜鉛を原料とした場合に表面に残存するアセチル基、溶液接触法に使用するエタノール等の溶媒分子等が挙げられる。
【0033】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法において、液相とするにおける溶媒としては、前記溶液接触法による酸化亜鉛結晶粒子の製造例で例示した有機溶媒が使用可能であるが、それらの中で、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数4以下のアルコール類、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のヒドロキシエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類が好ましく、中でも、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数3以下のアルコール類、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のヒドロキシエーテル類が更に好ましく、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数2又は3のアルコール類が特に好ましい。尚、これらの有機溶媒は複数種を混合して用いてもよい。
【0034】
このような液相反応における酸化亜鉛結晶粒子の使用量は、反応液の全重量に対して0.01〜10重量%とするのが好ましい。尚、その上限値は、酸化亜鉛結晶粒子同士の凝集を防止する等の点から、7重量%とするのが更に好ましく、5重量%とするのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子表面への酸化珪素組成を有する相の形成性や生産性等の点から、0.1重量%とするのが更に好ましく、0.5重量%とするのが特に好ましい。
【0035】
又、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法において用いられるアルコキシシラン類としては、下記一般式(1)、又は下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
R2 m −Si−(OR1 )4−m (1)
【0036】
式(1)中、R1 は、置換基を有していてもよい炭素数6以下のアルキル基を、R2 は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を示す。mは0〜3の整数であり、mが0、1、又は2の場合、複数のR1 は同じであっても異なっていてもよく、又、mが2、又は3の場合、複数のR2 は同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
R3 −〔Si(H)n −(OR1 )3−n 〕2 (2)
【0038】
式(2)中、R1 は、置換基を有していてもよい炭素数6以下のアルキル基を、R3 は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリーレン基を示す。nは0〜2の整数であり、nが0、又は1の場合、複数のR1 は同じであっても異なっていてもよく、又、R3 のアルキレン基、シクロアルキレン基、及びアリーレン基の置換基としてアルコキシシリル基を更に有していてもよい。
【0039】
これらのアルコキシシラン類の具体例として、前記一般式(1)で表されるものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、4−ブチルフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジドデシルジメトキシシラン、メチルオクチルジメトキシシラン、ドデシルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類が挙げられる。
【0040】
又、前記一般式(2)で表されるものとしては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3,5−トリス(トリメトキシシリル)ベンゼン等のアルコキシシリル基含有化合物類が挙げられる。
【0041】
又、これらのアルコキシシラン類の部分加水分解物やオリゴマー(例えば、三菱化学社製メトキシシランオリゴマー「MKCシリケートMS51」等。)を使用してもよい。これらの中で、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン若しくはテトラエトキシシランのオリゴマー等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン等の前記一般式(1)におけるR2 が炭素数12以下のアルキル基であるトリアルコキシシラン類、及び、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、ドデシルメチルジメトキシシラン等の前記一般式(1)における2つのR2 の全炭素数が13以下のアルキル基であるジアルコキシシラン類が好ましい。
【0042】
又、アルコキシシラン類として、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のフッ化アルキル基やフッ化アリール基を有するアルコキシシラン類を単独使用若しくは併用することにより、形成される酸化珪素組成を有する相に優れた耐水性、耐湿性、耐汚染性等を付与することができる。
【0043】
これらのアルコキシシラン類は、1種を用いることとしても、複数種を用いることとしてもよい。但し、酸化亜鉛ナノ粒子の製造における酸化珪素組成を有する相の形成性の点で、モノアルコキシシラン類の使用量は、全アルコキシシラン類の70モル%以下となるようにすることが望ましい。又、テトラアルコキシシラン類の使用量を、全アルコキシシラン類の1〜90モル%とするのが好ましい。尚、酸化珪素組成を有する相の緻密性を向上させ、耐水性、耐酸性、耐亜鉛溶出性、酸化亜鉛結晶粒子の光触媒作用の封鎖能等を向上させる等の点から、その上限値は、80モル%とするのが更に好ましく、70モル%とするのが特に好ましく、その下限値は、5モル%とするのが更に好ましく、10モル%とするのが特に好ましい。
【0044】
これらのアルコキシシラン類の使用量は、反応液中に存在している亜鉛原子のモル数に対する珪素原子のモル数の比として、0.1〜100倍モルとするのが好ましい。尚、その上限値は、酸化亜鉛ナノ粒子中の酸化亜鉛結晶粒子の含有量を大きくできる等の点から、70倍モルとするのが更に好ましく、50倍モルとするのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛ナノ粒子に対する非凝集性付与等の点から、0.5倍モルとするのが好ましく、1倍モルとするのが特に好ましい。
【0045】
又、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法において用いられる活性水素を有さない塩基性有機化合物は、アルコキシシラン類の加水分解、シラノール縮合反応を触媒するものであり、具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリフェニルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン等の3級アミン類、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、キノリン等の含窒素複素環類等が挙げられ、中でも、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン等の炭素数6〜12の3級アミン類が好ましい。
【0046】
これらの、活性水素を有さない塩基性有機化合物の使用量は、反応液の全重量に対して、0.1〜30重量%とするのが好ましい。尚、その上限値は、反応の制御性、及び酸化亜鉛ナノ粒子に対する非凝集性付与等の点から、20重量%とするのが更に好ましく、10重量%とするのが特に好ましく、一方、その下限値は、反応速度等の点から、0.5重量%とするのが更に好ましく、1重量%とするのが特に好ましい。
【0047】
又、前記アルコキシシラン類を加水分解させるための水の使用量は、アルコキシシラン類中のアルコシキ基のモル数に対して、0.1〜10倍モルとするのが好ましい。尚、その上限値は、アルコキシシラン類の加水分解、シラノール縮合反応の制御性等の点から、7倍モルとするのが更に好ましく、5倍モルとするのが特に好ましく、一方、その下限値は、加水分解、及びシラノール縮合反応性等の点から、0.3倍モルとするのが更に好ましく、0.5倍モルとするのが特に好ましい。
【0048】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法において、前記アルコキシシラン類、活性水素を有さない前記塩基性有機化合物、及び水の添加方法や順序に特に制限はなく、例えば、前記酸化亜鉛結晶粒子を含む液相中に、先ずアルコキシシラン類を加え、次いで、活性水素を有さない塩基性有機化合物と水を逐次に或いは同時に加える方法、先ず活性水素を有さない塩基性有機化合物を加え、次いで、アルコキシシラン類と水を逐次に或いは同時に加える方法、アルコキシシラン類と活性水素を有さない塩基性有機化合物と水を予め混合しておき、加える方法等が可能である。これらの中で、水を最後に加える方法が反応の制御性の点で好ましく、先ずアルコキシシラン類を加え、次いで活性水素を有さない塩基性有機化合物を加え、最後に水を加える方法が最も好ましい。
【0049】
尚、前記溶液接触法による酸化亜鉛結晶粒子を原料として使用する場合、水酸化リチウム等の塩基性物質を酢酸亜鉛等の亜鉛塩に接触させ始めた時点から100時間以内にアルコキシシラン類による反応を行うことが、酸化亜鉛結晶粒子同士の凝集が過度に進行することを防ぐために好ましい。この時間は、70時間以内とするのが更に好ましく、50時間以内とするのが特に好ましい。
【0050】
[酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物]
前記方法により得られた本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、必要に応じて、再沈殿法、クロマトグラフィ法、脱塩法等により精製され、その有する紫外線遮蔽能、発光能、高屈折率性等を活かし、マトリックス中に分散された酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物として、例えば、紫外線遮蔽膜、反射防止膜、発光膜等の光学機能膜として有用である。
【0051】
その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物におけるマトリックスの好適な例は、珪素原子−酸素原子結合を主体とする酸化珪素組成を有するものであり、透明性と等方性等の点から非晶質であることが好ましい。このような酸化珪素組成を有するマトリックスの製造方法に制限はないが、アルコキシシラン類の加水分解及びシラノール縮合反応、所謂、ゾル−ゲル法、で製造されたものが好ましい。尚、その際、シラザン類等が併用されてもよく、又、必要に応じて、前記酸化亜鉛ナノ粒子の製造におけると同様にして有機溶媒を加えてもよく、水の量も前記の説明に準じて調製すればよく、反応触媒には、前記塩基類の外、塩酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の酸類、アルミニウムのアセチルアセトナート錯体等のルイス酸類も使用可能である。
【0052】
ここで、例えば、アルコキシシラン類としてトリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類、及びモノアルコキシシラン類のような珪素原子−炭素原子結合をその分子構造中に含有するものを使用すると、生成する酸化珪素組成を有するマトリックスには、珪素原子−炭素原子結合が含有され、又、ヘキサメチレンジシラザン等のシラザン類を使用すると、生成する酸化珪素組成を有するマトリックスには、珪素原子−窒素原子結合が含有される。更に、酸化珪素組成を有するマトリックスには、炭素原子間の単結合、二重結合、三重結合、或いは芳香族結合等の炭素原子−炭素原子結合、及び炭素原子−水素原子結合等の有機共有結合を含有していてもよい。
【0053】
尚、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物における酸化珪素組成を有するマトリックスとして、その元素組成中に珪素原子と酸素原子以外の元素の含有割合は、組成物としての耐熱性や機械的強度等の点から、50原子%以下であるのが好ましく、40原子%以下であるのが更に好ましく、30原子%以下であるのが特に好ましい。但し、組成物に機械的靱性を付与したり有機物との接着性を付与したい場合には、炭素原子や水素原子を含有する方が好ましく、このような目的においては、珪素原子と酸素原子以外の元素の含有割合は、5原子%以上であるのが好ましく、10原子%以上であるのが特に好ましい。こうした原子比は、酸化珪素組成を有するマトリックスの元素分析で測定される。
【0054】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子含有酸化珪素組成物における酸化亜鉛ナノ粒子の含有量は、酸化亜鉛結晶粒子の含有量として0.1〜70体積%であるのが好ましい。尚、その上限値は、組成物としての透明性と機械的強度等の点から、50体積%であるのが更に好ましく、30体積%であるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子の有用な性質を十分に発現する等の点から、0.5体積%であるのが更に好ましく、1体積%であるのが特に好ましい。この体積%は透過型電子顕微鏡による観察で算出される。
【0055】
又、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物におけるマトリックスとしては、前記酸化珪素組成を有するもの以外に各種の樹脂も用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリノルボルネン等の環状オレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ビスフェニールAポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフテレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂、シクロヘキサンジメタノールとシクロヘキサンジカルボン酸からなるポリエステル等の脂環式ポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66、半芳香族非晶性ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド等のポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂、トリアセチルセルロース等の置換基を有する可溶性セルロース類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体等の脂肪族ポリエーテル類、ポリカプロラクトンやポリ乳酸等の生分解性を有していてもよい脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール等が挙げられ、これらは樹脂状のものに限定されず、エラストマー状、又はゴム状であってもよい。これらの中で、透明性に優れるポリノルボルネン等の環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、脂環式ポリエステル樹脂、半芳香族非晶性ナイロン、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、トリアセチルセルロース等の置換基を有する可溶性セルロース類、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体等の脂肪族ポリエーテル類が好ましく、環状オレフィン系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、脂環式ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、可溶性セルロース類等が特に好ましい。
【0056】
これら例示した樹脂等は複数種を混合して用いてもよく、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂とポリアリレート樹脂の組み合わせは、透明性、機械的強度、耐熱性等の点で優れ、芳香族ポリカーボネート樹脂と脂環式ポリエステル樹脂の組み合わせは、透明性、機械的強度、耐光性、耐薬品性等の点で優れた組み合わせである。
【0057】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子含有の前記樹脂等の組成物における酸化亜鉛ナノ粒子の含有量は、0.1〜90重量%であるのが好ましい。尚、その上限値は、組成物としての透明性や機械的強度等の点から、70重量%であるのが更に好ましく、50重量%であるのが特に好ましく、一方、その下限値は、酸化亜鉛結晶粒子の有用な性質を十分に発現する等の点から、0.5重量%であるのが更に好ましく、1重量%であるのが特に好ましい。この重量%は、樹脂組成物を650℃の空気中で燃焼させた灰分測定により算出される。
【0058】
本発明の酸化亜鉛ナノ粒子含有の前記樹脂等の組成物の製造方法に制限はないが、通常、溶液混合法、溶融混練法等が用いられ、中でも、一軸又は二軸押出機等の混練機による溶融混練法が好ましい。又、いずれの製造方法においても、高濃度の酸化亜鉛ナノ粒子を含有するマスターバッチを予め作製し、希釈する方法を採ってもよい。
【0059】
[酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物の積層体]
本発明の前記酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物は、基体表面に、前記酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物の層が形成された積層体とすることにより、紫外線遮蔽膜、反射防止膜、発光膜等の光学機能膜の用途において有用なものとなる。
【0060】
尚、その積層体における酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物の層の厚みは、0.02〜1000μmであるのが好ましい。尚、その上限値は、層としての可撓性や透明性等の点から、500μmであるのが更に好ましく、100μmであるのが特に好ましく、一方、その下限値は、層としての機械的強度や光学特性を有効に発現させる等の点から、0.05μmであるのが更に好ましく、0.1μmであるのが特に好ましい。又、酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物層の表面平滑性は、表面粗さ計による最大凹凸であるRmax 値として、100nm以下であるのが好ましく、50nm以下であるのが更に好ましく、30nm以下であるのが特に好ましい。
【0061】
尚、積層体に用いられる基体の材質としては、ガラス、セラミクス、金属、半導体、無機塩、有機結晶、有機非晶質、合成樹脂等が例示され、中でも透明性と機械的強度等の点で、ガラス、及び、例えば、熱可塑性でも架橋型でもよいアクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等の透明合成樹脂が好ましい。又、基体形状としては、特に板状のものに限定されず、棒状、繊維状等であってもよく、その寸法としても特に制限はないが、厚みは0.01〜10mmであるのが好ましい。尚、その上限値は、積層体としての透明性等の点から、5mmであるのが更に好ましく、3mmであるのが特に好ましく、一方、その下限値は、積層体としての機械的強度等の点から、0.1mmであるのが更に好ましく、0.3mmであるのが特に好ましい。又、基体の幅は0.1〜1000mmであるのが好ましい。尚、その上限値は用途により適宜選択され、一方、その下限値は、積層体としての機械的強度等の点から、0.5mmであるのが更に好ましく、1mmであるのが特に好ましい。
【0062】
本発明の前記積層体の製造方法に制限はないが、公知の任意の液体塗布製膜法が利用可能である。つまり、本発明の前記酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物を与えるゾル−ゲル法原料液又は樹脂組成物を与える溶液を、例えばスピンコート、ディップコート、アプリケーターやダイコーターによる流延法等により前記基体表面に塗布し、乾燥させることにより製造可能である。
【0063】
本発明の積層体は、その酸化亜鉛ナノ粒子含有層に含有される酸化亜鉛結晶粒子の有する、例えば、紫外線の照射により可視光を発生する性質を利用して、紫外線を可視光に変換して微弱化若しくは遮蔽するための機能部材として、具体的には、例えば、紫外線が不要若しくは有害である光学装置、例えば太陽電池、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示装置、例えば超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等の紫外線を発生する光源を使用するプロジェクタ、等の部材やそのコーティングとして非常に有用である。又、ガラスや透明樹脂等の透明基体上に形成された酸化亜鉛ナノ粒子含有層は、酸化亜鉛結晶粒子が発生する光が該透明基体中を導波してその端面を明るく光らせる性質があるので、この端面の発光を利用する照明装置としても有用である。
【0064】
【実施例】
以下に本発明の内容及び効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。尚、各種同定や分析、実施例及び比較例における各種成形や評価は以下の方法で実施した。
【0065】
(1)X線回折(XRD)スペクトル:リガク(株)製「RINT1500」を用い、銅Kα線をX線源とし、波長1.5418Åで、23℃にて測定した。
(2)透過型電子顕微鏡(TEM)観察:日立製作所(株)社製「H−9000UHR型透過型電子顕微鏡」を用い、加速電圧300kV、観察時の真空度約7.6×10−9Torrにて測定した。
(3)吸収スペクトルと光線透過率:ヒューレットパッカード社製「HP8453型紫外・可視吸光光度計」を用い、室温にて測定した。
(4)元素分析:XPS分析で微量分析を行い、有機元素(特に硫黄)が多量に存在する場合は、通常の有機元素分析を併用した。
(5)膜厚及び表面平滑性の測定:(株)東京精密製の段差計である「サーフコム」を用い、走査速度0.6mm/秒で測定した。
(6)耐光性:酸化亜鉛ナノ粒子のエタノール分散液に、23℃、大気下で、100Wの超高圧水銀灯を液面上10cmの距離から連続照射し、白濁、沈殿、及び変色のいずれかの変性を生じるのでの時間を観察した。
(7)耐熱性:酸化亜鉛ナノ粒子を、大気圧空気流通雰囲気下、熱重量分析(TG)により、30℃から300℃まで10℃/分で昇温し、次いで300℃で120分保持したときの重量減少量を観察した。
(8)耐酸化性:酸化亜鉛ナノ粒子を、大気圧空気流通雰囲気下、熱重量分析(TG)により、30℃から200℃まで10℃/分で昇温し、次いで200℃で300分保持したときの重量減少量を観察した。
【0066】
実施例1(活性水素を有さない塩基の使用によるシリコーン相の形成)
エタノール10mL中に酢酸亜鉛2水和物0.220gを加え、加熱還流下、90℃にて1 時間撹拌した後、0℃に冷却し、次いで、この溶液に、エタノール10mLに水酸化リチウム1水和物0.059g(1.4当量)を溶解した溶液を、0℃にて攪拌しながら添加することにより、溶液接触法による酸化亜鉛結晶粒子を製造した。この時点での反応液の吸収スペクトルは、生成した酸化亜鉛結晶粒子によると考えられる318nmにエキシトン吸収ピークを有する吸収帯を示した。引き続いて、室温にて30分間撹拌後、攪拌を継続しながらメチルトリメトキシシラン0.400mLを添加し、更に、室温にて3時間撹拌後、トリエチルアミン1.53mLを添加し、更に脱塩水0.050mLを添加した。この時点での反応液の吸収スペクトルは、酸化亜鉛結晶粒子表面にシリコーン相が形成されたことによると考えられる324nmへのエキシトン吸収ピークのシフトを示した。こうして得た反応液は、一晩静置後も透明のままで沈殿を生じず、その吸収スペクトルは、一晩静置前と同一波長(324nm)にエキシトン吸収ピークを示した。
【0067】
一晩静置した反応液を濃縮・乾固し、この粉末をエタノール1.5mLに再分散して透明な分散液とし、該分散液をn−ヘキサン20mL中に投入して再沈殿させ、遠心分離、デカンデーション、真空乾燥することにより白色固体粉末0.2161gを得た。この粉末は、XRDスペクトルから、酸化亜鉛結晶を含むものであり、波長365nm及び254nmのいずれの紫外線を照射しても、白緑色の明るい発光を生じることを確認した。この粉末をエタノールに1重量%の濃度で再分散したとき透明な分散液を与え、この透明分散液をTEM観察用の非晶性炭素膜を設けた銅グリッドに塗布風乾してTEM観察したところ、Z平均粒径が約4nmであって、Z平均粒径約3.5nmの酸化亜鉛結晶粒子の表面がシリコーン相で覆われた酸化亜鉛ナノ粒子であることが分かった。又、この透明分散液は、23℃で1週間室温で静置しても沈殿や濁りを生じず、そのときの波長400nmにおける光路長10mmでの光線透過率は98%であった。
【0068】
又、この酸化亜鉛ナノ粒子の硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量は10ppm未満であり、耐光性は5時間以上、耐熱性は15重量%、耐酸化性は5重量%であり、いずれも優れるものであった。
【0069】
比較例1(酸化亜鉛結晶粒子表面にシリコーン相を形成しない場合)
実施例1の操作において、メチルトリメトキシシランを添加する直前の反応液は透明な分散液であったが、これを23℃で静置したところ酸化亜鉛結晶粒子によると考えられるエキシトン吸収ピークが経時的に長波長側にシフトし続け、約3日で白濁と沈殿を生じた。このときのZ平均粒径をTEM観察したところ、約40nmであった。又、エキシトン吸収ピークの長波長シフトは酸化亜鉛結晶粒子の大粒径化を意味するので、酸化亜鉛結晶粒子表面にシリコーン相を形成しない場合、酸化亜鉛結晶粒子は次第に凝集し最後には白濁や沈殿を生じることが分かった。
【0070】
比較例2(塩基としてのアンモニアの使用によるシリコーン相の形成)
実施例1の操作において、メチルトリメトキシシランを加える直前までは同じ操作を行った後、メチルトリメトキシシランの代わりにテトラエトキシシラン0.632mLを添加し、室温にて3時間撹拌後、2.0規定濃度のアンモニアのエタノール溶液5.5mLを添加し、一晩静置したところ、反応液は白濁していた。このときのZ平均粒径をTEM観察したところ、約50nmであった。又、この白濁液をn−ヘキサン250mLに投入して再沈殿させ、沈殿を濾別、乾燥して、白色固体粉末0.2616gを得た。この粉末は、XRDスペクトルで酸化亜鉛結晶パターンを示さず、波長365nmの紫外線を照射しても発光しなかった。従って、活性水素を有する塩基であるアンモニアの使用により、酸化亜鉛結晶粒子が変質したものと考えられた。
【0071】
比較例3(塩基としてのモノエチルアミン使用によるシリコーン相の形成)
実施例1の操作において、トリエチルアミンの代わりに70重量%モノエチルアミン水溶液0.885mLとエタノール0.255mLの混合溶液を加えた他は、同じ合成反応操作を行った。この反応液は一晩静置後も透明のままであった。このときのZ平均粒径をTEM観察したところ、約4nmであった。又、この反応液を濃縮・乾固した後、エタノール2mLに再分散して透明な分散液とし、n−ヘキサン20mL中に投入して再沈殿させ、遠心分離、デカンデーション、真空乾燥することにより白色固体粉末を得た。この粉末はエタノールに再分散可能であったが発光能は微弱であった。反応液の吸収スペクトルによる追跡で、酸化亜鉛結晶粒子に由来する吸収帯の吸収強度はモノエチルアミン添加後急激に低下した。このことから、活性水素を有する塩基であるモノエチルアミンの使用により酸化亜鉛結晶粒子が変質したものと考えられた。
【0072】
比較例4(塩基としてのジエチルアミン使用によるシリコーン相の形成)
比較例3において、添加した塩基をモノエチルアミンの代わりにジエチルアミン1.14mLとした以外は、同様の合成反応操作を行った。この反応液は一晩静置後も透明のままであった。このときのZ平均粒径をTEM観察したところ、約4nmであった。又、比較例3と同様の操作を行い得られた白色固体粉末は、反応液の吸収スペクトルによる追跡で、酸化亜鉛結晶粒子に由来する吸収帯の吸収強度はジエチルアミン添加後急激に低下した。このことから、活性水素を有する塩基であるジエチルアミンの使用により酸化亜鉛結晶粒子が変質したものと考えられた。
【0073】
実施例2(酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物1とその積層体)
シリコーンマトリックスを与えるゾル−ゲル法原料液として、メタノール30.3g、n−ブタノール71.9g、アルミニウムのアセチルアセトナート錯体0.48g、重合度分布が2〜20程度でピーク平均重合度が3〜4のテトラメトキシシランオリゴマー(三菱化学(株)製「MKCシリケートMS51」)48.4g、水11.3gの混合液を調製し、該原料液63.1gに、実施例1で得た酸化亜鉛ナノ粒子0.15gを含有する透明なエタノール分散液8gを混合した透明な混合液を、ガラス容器に入れ、基体として、7.5cm角で厚みが0.7mmのガラス板を液面に垂直に浸漬し、200mm/分の一定速度で引き上げ、ガラス板の両面に前記混合液をディップコートした後、150℃で加熱硬化処理することにより、ガラス基体の表面に、酸化亜鉛ナノ粒子含有シリコーン組成物層が形成された積層体を調製した。
【0074】
その酸化亜鉛ナノ粒子含有シリコーン組成物層中の酸化亜鉛結晶粒子の含有量は、TEM観察により測定した結果、約1体積%であり、酸化亜鉛ナノ粒子含有シリコーン組成物層の厚みは、それぞれ575nmであり、表面平滑性は、任意の10ケ所を2mm走査して測定したRmax 値として25nmであり、積層体の全光線透過率は94.6%、ヘイズ値は0.0%であった。この積層体は実施例1の酸化亜鉛ナノ粒子の発光能を保持しており、254nmの紫外線を照射すると白緑色の発光を示し、ガラス板の端面は非常に明るく光り、暗黒の暗室内でこの発光実験を行うと、その発光により文字が判別できたので、この積層体の発光能は照明デバイスとして利用可能であることが判明した。
【0075】
実施例3(酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物2とその積層体)
実施例1で得た酸化亜鉛ナノ粒子0.15gを含有する透明なエタノール分散液8gに、数平均分子量が約1.2万のポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体(Aldrich社製)0.5g、及び粘度平均分子量が40万のポリエチレンオキシド2.5gを溶解して得た透明な溶液を、実施例2で用いた基体としてのガラス板表面に23℃で、回転数1,000rpmでスピンコートした後、加熱、乾燥させることにより、ガラス基体の表面に、酸化亜鉛ナノ粒子含有共重合体組成物層が形成された積層体を調製した。
【0076】
その酸化亜鉛ナノ粒子含有共重合体組成物層中の酸化亜鉛結晶粒子の含有量は、TEM観察により測定した結果、約1体積%であり、酸化亜鉛ナノ粒子含有シリコーン組成物層の厚みは、それぞれ700nmであり、表面平滑性は、任意の10ケ所を2mm走査して測定したRmax 値として30nmであり、積層体の全光線透過率は94.0%、ヘイズ値は0.0%であった。この積層体は実施例1の酸化亜鉛ナノ粒子の発光能を保持しており、254nmの紫外線を照射すると白緑色の発光を示し、ガラス板の端面は非常に明るく光り、暗黒の暗室内でこの発光実験を行うと、その発光により文字が判別できたので、この積層体の発光能は照明デバイスとして利用可能であることが判明した。
【0077】
比較例5(粒径の大きな酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物と積層体)
比較例1で得られた白濁を生じた酸化亜鉛結晶粒子の分散液に、実施例1におけるメチルトリメトキシシランの添加以降の操作を行い、酸化亜鉛結晶粒子表面がシリコーン層で覆われた酸化亜鉛ナノ粒子の形成を試みた。得られた粉末は、TEM観察により20〜数100nmの粒径分布をもつ酸化亜鉛結晶粒子からなるものであり、この粉末0.15gをエタノールに分散した白濁した分散液8gを用い、実施例2におけると同様にしてディップコート法による積層体を製造した。その結果、酸化亜鉛ナノ粒子含有シリコーン組成物層は、目視で明らかに白濁しており、積層体の透明性は劣るものであった。
【0078】
比較例6(特許文献2による酸化亜鉛ナノ粒子の製造)
実施例1の操作において、メチルトリメトキシシランを加える直前までは同じ操作を行った後、酸化亜鉛結晶粒子の反応液に、トリエチレングリコールモノメチルエーテルの11−メルカプトウンデカン酸エステルを、生成する酸化亜鉛ナノ粒子の理論最大重量の4倍重量溶解し、エタノールが加熱還流する温度で2時間加熱した後、この反応液にトルエンを加え、エタノールを留去して得た溶液を水洗し、濃縮し、次いで、得られた残渣を最小量のトルエンに再溶解し、n−ヘキサン中に投入して再沈殿させ、遠心分離とデカンテーションにより沈殿粒子を単離した。この単離粒子はトルエンやエタノールへ再分散して透明な分散液を与えたので、用いたトリエチレングリコールモノメチルエーテルの11−メルカプトウンデカン酸エステルが、配位子として酸化亜鉛結晶粒子表面に結合した酸化亜鉛ナノ粒子であることが分かった。尚、このナノ粒子のZ平均粒子径は約4nmであった。
【0079】
又、この酸化亜鉛ナノ粒子の硫黄原子含有量は、40,000ppmであり、その耐光性は1時間以内、耐熱性は45重量%、耐酸化性は35重量%であり、いずれも劣るものであった。
【0080】
【発明の効果】
本発明は、超微粒子であると共に、凝集性が抑制され、且つ、光、熱、酸素等に対して安定な酸化亜鉛ナノ粒子、及びその製造方法、並びに、その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物、及びそれを用いた積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸化亜鉛ナノ粒子における典型的な相構造の例の模式図を示す。
Claims (10)
- 酸化亜鉛結晶粒子の表面が酸化珪素組成を有する相で覆われてなる酸化亜鉛ナノ粒子であって、Z平均粒径が3〜50nm、且つ、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下であることを特徴とする酸化亜鉛ナノ粒子。
- 酸化亜鉛結晶粒子の表面が酸化珪素組成を有する相で覆われてなる酸化亜鉛ナノ粒子であって、1重量%エタノール分散液として、23℃で3日間静置した後の該分散液の波長400nmにおける光路長10mmでの光線透過率が90%以上、且つ、硫黄原子、燐原子、及び窒素原子の合計含有量がナノ粒子全体重量に対して50ppm以下であることを特徴とする酸化亜鉛ナノ粒子。
- 酸化亜鉛結晶粒子のZ平均粒径が1〜20nmである請求項1又は2に記載の酸化亜鉛ナノ粒子。
- 酸化亜鉛結晶粒子を含む液相中で、水、及び活性水素を有さない塩基性有機化合物の存在下、アルコキシシラン類を加水分解させ、その加水分解物のシラノール縮合反応により生成した酸化珪素組成を有する相で、酸化亜鉛結晶粒子の表面を覆うことを特徴とする酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
- 活性水素を有さない塩基性有機化合物が3級アミン類である請求項4に記載の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
- 酸化亜鉛結晶粒子のZ平均粒径が1〜20nmである請求項4又は5に記載の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の酸化亜鉛ナノ粒子がマトリックス中に分散されてなることを特徴とする酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物。
- マトリックスが酸化珪素組成を有するものである請求項7に記載の酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物。
- 基体表面に、請求項7又は8に記載の酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物の層が形成されてなることを特徴とする積層体。
- 積層体が、その酸化亜鉛ナノ粒子含有組成物層の発光能を利用する光学装置用である請求項9に記載の積層体。
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