JP2004284225A - 樹脂成形品の製造方法、金属構造体の製造方法、チップ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の樹脂成形品の製造方法は、基板上への第1レジスト層の形成、基板とマスク(A)との位置合わせ、マスク(A)を用いた第1レジスト層の露光、第1レジスト層の熱処理、第1レジスト層上への第2レジスト層の形成、基板とマスクBとの位置合わせ、マスク(B)を用いた第2レジスト層の露光、第2レジスト層の熱処理、レジスト層の現像を行い所望のレジストパターンを形成する、レジストパターン形成ステップを含む。さらに、レジストパターンにしたがって、基板上に金属構造体をメッキにより堆積させる金属構造体形成ステップと、金属構造体を型として、樹脂成形品を形成する成形品形成ステップによって、樹脂成形品が製造される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所望の造形深さを有する樹脂成形品の製造方法、それにより得られる樹脂成形品、及び樹脂成形品の製造に使用される金属構造体の製造方法に関する。特に、本発明の方法は、臨床検査分野、遺伝子処理分野、コンビナトリアルケミストリー分野の、診断、反応、分離、計測等に使用される樹脂成形品の製造法として有用である。
【0002】
【従来の技術】
今日、社会の成熟にしたがい、医療・健康に対する価値観は、狭い範囲の基本的健康から、「ゆたかですこやかな生活」を求めるよう変化しつつある。このような価値観の変化の背景で、医療費が増大し、また健康と疾病の境界領域にある人々が増加している。この背景から、また治療に比べて予防のほうが低負担であるため、今後の社会においては、個人の意識は、治療医学よりも予防医学を重視する方向に変化していくものと考えられている。このような個人意識の変化にともない、医療分野、なかでも臨床検査分野において、患者の近く、例えば手術室、ベッドサイド、あるいは在宅等で、より迅速な検査・診断を行うことが可能となる無拘束な検査システム、血液などの検体量がより少量ですむ無侵襲、または低侵襲である検査システムが望まれている。
また、前記のような迅速な検査・診断を行うことが可能となる無拘束な検査システムを実現するためには、検査・診断の際に使用される基板の小型化によって、例えば装置に携帯性を付与させることが必要である。
【0003】
マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が1mmから0.1mmに微細化が可能となれば、サンプルの微量化だけでなく、診断に要する時間を10分の1以下に短縮させることができる。さらに、マイクロマシン技術により流路の直径を微細化できれば、装置に携帯性を付与させると同時に、従来の大型装置と同じ機能を果たすことが期待されている。また、流路の微細化により、同一基板上に複数配することもでき、並列処理も期待されている。
そして、流路の微細化の際には、検体と試薬の混合を効果的に行う、またはセンサ、電極、コネクタ等を同一基板上に実装させること等を目的に、例えば30μmと100μmといった深さの異なる凹凸部を備える造形技術が望まれる。
【0004】
コンビナトリアルケミストリー分野、なかでも製薬開発におけるハイスループットスクリーニング(HTS、High Throughput Screening)において微細化が期待されている。コンビナトリアルケミストリーとは、組み合わせを利用して、多くの化合物群(ライブラリー)を効率的に合成し、活用することである。
ハイスループットスクリーニングに使用されている96穴プレート、384穴プレートは、複数のサンプルを同時にスクリーニングすることができ、例えば、自動分注装置との組み合わせによって創薬開発の加速に貢献している。
マイクロマシン技術により、例えば、容器の幅または直径が10mmから0.4mm、深さが10mmから0.3mmに微細化が可能になれば、同一基板上に1,000個〜5,000個のマイクロ容器を有することができ、創薬開発の飛躍的な加速が期待できる。
そして、容器の微細化の際には、サンプルの性状等、実験系の異なる化合物、またはサンプル量に応じたスクリーニングを行うこと等を目的に、例えば0.1mmと0.3mmといった深さの異なる造形技術が望まれる。
同様に、コンビナトリアルケミストリー分野、なかでも化学産業分野の化学合成・分析用途に供する場合にも微細化が期待されている。
【0005】
世界的なヒト・ゲノム解析計画の進展により、現在DNA診断が可能な疾患の種類や数は増加の一途をたどり、従来は生化学的分析により間接的に診断されてきた疾患の多くが、DNAレベルで疾患の原因あるいは発生機序にまで迫る確定的な診断ができるようになった。この結果、将来はオーダーメイド医療といわれる個人に適した副作用のない薬物治療のための診断、個人別の特定疾患の有無の診断に使用する基板が町の診療所レベルに普及することが予測されている。
また、サンプルの微量化、診断時間の短縮、検査装置に携帯性を付与させるために、精密で安価な基板が期待されている。
【0006】
遺伝子関連用途でよく利用される方法には、キャピラリー電気泳動法、マイクロアレイ方式、微量なゲノムサンプルを10万倍以上に増幅した高感度で検出できる遺伝子増幅(PCR:Polymerase Chain Reaction)法等がある。キャピラリー電気泳動法は、直径100〜200μmのキャピラリーに試料を導入、電気泳動により分離、光学的に検出するものである。このキャピラリー径の微細化が可能となれば、更に診断時間の高速化が期待されている。キャピラリー径の微細化により、同一基板上に複数配することもでき、並列処理も期待されている。
そして、キャピラリー径の微細化の際には、分離、検出を効果的に行う、または電気的センサ等を同一基板上に実装させること等を目的に、例えば30μmと100μmといった深さの異なる凹部を形成する造形技術が望まれる。
【0007】
マイクロアレイ方式の検出には、一般的に、蛍光強度法が用いられており、検出感度、および再現性が高くなければ、正確な遺伝子発現情報を取得することができない。基板上のアレイ密度を低くすることなく、検出感度、および再現性を高めるために1個のアレイ面積を広くすることが試みられている。しかしながら、平面基板上で拡大可能な面積には限界があり、基板上のアレイ密度を低くすること無く、検出感度と再現性を高めるのに限界が生じる。微細な凹、または凸形状を有する基板が可能になれば、1個のアレイ面積、および容積を飛躍的に増大させることが可能となり、検出感度、および再現性を高めることが期待されている。
そして、微細化の際には、サンプルの性状等の異なる化合物、またはサンプル量に応じたスクリーニングを行うこと等を目的に、例えば30μmと100μmといった深さの異なる凹部を形成する造形技術が望まれる。
【0008】
PCR法は、ポリメラーゼを使うことにより、目的とするDNAを短時間で10万倍以上に増幅するものである。この容器の小型化が可能となれば、高速化・高効率化とともに、高価な抗体や基質の使用量を低減できるといった低コスト化も期待されている。さらに、微細化により、同一基板上に複数の流路、複数の混合部、複数の容器を配することができれば、キャピラリー電気泳動法とPCR法とを同一基板上で行うことも期待されている。
そして、容器の微細化の際には、サンプルの性状等、実験系の異なる化合物、またはサンプル量に応じたスクリーニングを行うこと等を目的に、例えば30μmと100μmといった深さの異なる凹部を形成する造形技術が望まれる。
【0009】
従来の樹脂成形品は、鋳型または切削法による金属製金型を用いて、射出成形、ブロー成形あるいはプレス成形することにより、形成していた。
しかしながら、鋳型から金属製金型を作成する場合には、鋳型の精度に限界があるため、それを用いた金属製金型への造形範囲に制約がある。また、切削法により金属製金型を作製する場合も、切削バイト、およびそれを用いた工作精度に限界があるため、いずれの加工法を用いても精密、かつ微細な形状を有する樹脂成形品は実現されていないのが実情である。
このように、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、いずれの加工法においても精密、かつ微細な形状を有する樹脂成形品は実現されていないのが現状である。
【0010】
このため、得られた樹脂成形品を臨床検査分野、なかでも血液検査、尿検査、生化学分析用途等に供する場合、流路、容器の精度、小型化には限界があり、血液等の検体量が多くなるという問題があった。ひいては、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、検査・診断装置の携帯性を付与することができないといった欠点を有していた。
【0011】
同様にまた、鋳型や切削法による金属製金型を用いて得られた樹脂成形品をコンビナトリアルケミストリー関連用途、なかでも製薬開発におけるハイスループットスクリーニング用途に供する場合、容器の微細化には限界があり、創薬開発の飛躍的な加速(迅速化)、微量化(コストダウン)ができない欠点を有していた。
【0012】
同様に、得られた樹脂成形品をコンビナトリアルケミストリー関連用途、なかでも化学産業分野の化学合成・分析用途に供する場合、流路の精度、微細化には限界があり、化学合成・分析時間を短縮できない、混合、反応に使用する薬品量の低減、廃液量の低減、環境負荷の低減ができない欠点を有していた。
【0013】
同様に、鋳型や切削法による金属製金型を用いて得られた樹脂成形品を遺伝子関連分野、なかでもキャピラリー電気泳動法、マイクロアレイ方式による解析用途等、遺伝子増幅(PCR)法による増幅用途等に供する場合、微細化には限界があり、解析速度を高めることができない、サンプル量を少なくできないといった欠点を有していた。ひいては、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、基板を小型化することができないといった問題点も有していた。
【0014】
このような、鋳型または切削法による金属製金型を用いる場合の係る問題を解決する加工法として、半導体微細加工技術を応用したガラスまたはシリコン基板へのウェットエッチング加工、またはドライエッチング加工により微細加工を施す技術が知られている。しかしながら、ウェットエッチングでは、マスキング材料下部のアンダーエッチングの進行により、造形深さが0.5mmよりも深くなると幅(または直径)精度が得にくくなるため、精密な加工法とはいえなかった。
【0015】
ウェットエッチングに対して、ドライエッチングはSi半導体のパターン形成プロセスから発展した技術であり、各種プラズマ源種による各種電子部品、化合物半導体への応用が研究されている。しかしながら、この方法は、優れた微細加工性を有する反面、エッチング速度が500〜2,000nm/分と遅いため、例えば造形深さが0.1mmの加工を行う場合、50分以上の加工時間が必要となり、生産性に優れた安価な加工法とはいえなかった。
【0016】
また、ドライエッチングの加工時間が1時間以上になると、装置電極が熱を持つようになり、基板の変形、または装置の損傷が懸念されるため、装置電極が60℃を超えるような場合は装置を一時停止させ、再び加工を開始するなどの処置が必要となり生産性は更に低下する。
【0017】
そして、鋳型または切削法による金属性金型を用いる場合の係る問題を解決する他の方法としてリソグラフィー法が知られている。このリソグラフィー法では、まず、基板上にレジスト層を形成し、該レジスト層の露光を実施した後、現像によりレジストパターンを形成する。そして、前記レジストパターンにしたがって、前記基板上に金属構造体を電気メッキにより堆積させた後、前記金属構造体を型として射出成形で樹脂成形品を形成する。
【0018】
この方法によって製造される製品として、レーザーディスク、CD−ROM、ミニディスクなど、ピットやグルーブなどの深さの異なる構造を有する光ディスクが知られている、(例えば、特許文献1参照)。2層のレジスト層を使用し、異なるパターンを形成することでピットやグルーブなどの深さの異なる構造を形成する。この方法により、1枚の金属構造体から、例えば約5万枚以上の光ディスクを得ることが可能である。さらに、リソグラフィー法は、精密で極めて安価に製造できる点で、生産性に優れた方法といえる。また、扱える材料がシリコンとは異なる点でも優れている。しかし、リソグラフィー法が実現されている商品分野は上記光ディスクなどの分野に限定されており、臨床検査、コンビナトリアルケミストリーあるいは遺伝子関連分野など、光ディスクとは大きく異なる分野において使用される物質処理のための樹脂成形品について、様々な凹凸構造を有する精密な樹脂成形品を製造することは実現されていない。
【0019】
あるいは、従来の光ディスクの造形深さは、1〜3μmと浅いため、現像処理にて設計通りのレジストパターンを得ることは可能であった。しかしながら、同様に、例えば5μm以上、あるいは30μm以上といった深さの精密なレジストパターンを得ようとすると、レジストパターンが現像時に溶解、または変形してしまい、設計通りの形状を有するレジストパターンを得ることが困難であることを発明者らは見出した。そのため、設計通りのパターンを有する金属構造体、ひいては樹脂成形品を得ることができない。
【0020】
リソグラフィー法、なかでもシンクロトロン放射光を露光光源としたリソグラフィー法が知られている(例えば、特許文献2参照)。シンクロトロン放射光のもつ高い指向性はレーザー光に匹敵し、レーザーで実現できない短波長の光は、微細加工でネックとなる回折限界をクリアすることができる。したがって、シンクロトロン放射光を露光光源に用いた場合、より厚い層を露光処理することができるので、従来の光源と比較してより微細かつ深い造形深さを得ることが可能である。
【0021】
しかしながら、シンクロトロン放射光を用いたレジストパターン形成においても、現像工程におけるレジストの溶解性制御は同様に難しいこと推測される。
シンクロトロン放射設備は非常に大型の設備であり、その設備を建設・維持していくことは容易でない。特に、設備の建設、及び維持に多大なコストがかかる。また、露光時に使用されるマスクは、シンクロトロン放射光を吸収する特殊マスクが使用されており、深さの異なる構造体を得るには複数のマスクが必要となり、更にコストがかかる。したがって、射出成形によって得られた成形品のコストは、通常のリソグラフィー法によって得られた成形品よりも数十倍の高価格となることが予測される。
【0022】
【特許文献1】
特開2001−338444公報
【特許文献2】
特開2001−38738公報
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたもので、所望の形状を有する樹脂成形品を生産性良く製造することができる樹脂成形品の製造方法、及びその製造に使用される金属構造体の製造方法を提供することを一つの目的とする。
【0024】
また、本発明は、所望の造形深さを有する樹脂成形品、あるいは、臨床検査分野、遺伝子関連分野、コンビナトリアルケミストリー分野における使用に好適なチップを提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
以下に本発明の解決手段を開示する。本項における記載において、各ステップの記載順序は、明示的記載のない限り、各ステップの処理順序を規定するものではない。又、下に記載の各態様における要素は、適宜組み合わせて構成することができる。
本発明の第1の態様は樹脂成形品の製造方法であって、基板上にレジストパターンを形成するステップと、前記基板上に形成された前記レジストパターンにしたがって金属を付着し、金属構造体を形成するステップと、前記金属構造体を使用して、樹脂成形品を形成するステップと、を備えた樹脂成形品の製造方法において、前記レジストパターンを形成するステップは、複数のレジスト層を形成し、前記基板上に形成された前記複数のレジスト層を、現像処理するステップを備え、前記現像処理するステップにおいて、いずれかの一つのレジスト層よりも上層のレジスト層が、現像剤に対する溶解性が小さいように溶解性が制御されるものである。この構成を有することにより、第2レジスト層のパターンの変形を抑制することができ、所望の構造を有する樹脂成形品を製造することができる。尚、複数のレジスト層は、2層以上の全ての数の層数を含む。本態様は、例えば、3もしくはそれ以上のレジスト層が形成される場合を含む。又、一つレジスト層と上層のレジスト層は、直接重なる2つの層であるとは限らず、離れた層であることができる。金属の付着は、めっき処理の他、様々な方法で行うことができる。金属構造体は、例えば、スタンパとしてあるいは中間構造体として使用することができる。これらの点は、各態様において明示のない限り同様である。
【0026】
上記第1の態様にかかる樹脂成形品の製造方法において、前記溶解性の制御は、前記現像処理するステップの前に与えられる、前記一つのレジスト層への熱処理量と前記上層のレジスト層への熱処理量の調整による制御を含むことができる。これにより、効果的に溶解性制御を行うことができる。さらに、前記レジストパターンを形成するステップは、前記一つのレジスト層の露光処理の前に前記一つのレジスト層を熱処理するステップと、前記第2のレジスト層の露光処理の前に前記上層のレジスト層を熱処理するステップを含むことができる。これにより、例えば、レジストのベーク処理における熱量の調整を行うことができる。ここで、一つのレジスト層及び上層のレジスト層は、露光処理により現像液への溶解性が変化するレジストで形成されていることができる。あるいは、前記レジストパターンを形成するステップは、前記一つのレジスト層の露光処理の後に前記一つのレジスト層を熱処理するステップと、前記第2のレジスト層の露光処理の後に前記上層のレジスト層を熱処理するステップとを有することができる。ここで、一つのレジスト層及び上層のレジスト層は、露光及び熱処理により現像液への溶解性が変化するレジストで形成されていることができる。これにより、例えば、化学増幅型レジストの熱処理における熱量を調整することができる。
【0027】
上記第1の態様にかかる製造方法において、前記レジストパターンを形成するステップは、前記現像処理するステップの前に、前記一つのレジスト層を露光処理するステップと、前記上層のレジスト層を露光処理するステップと、を備え、前記溶解性の制御は、前記一つのレジスト層の露光量と前記上層のレジスト層の露光量の調整による制御を含むことができる。これにより、効果的に溶解性制御を行うことができる。ここで、一つのレジスト層及び上層のレジスト層は、露光処理により現像液への溶解性が変化するレジストで形成されていることができる。あるいは、前記一つのレジスト層及び上層のレジスト層は、露光及び熱処理により現像液への溶解性が変化するレジストで形成されていることができる。
【0028】
上記第1の態様にかかる製造方法において、前記一つのレジスト層及び上層のレジスト層は、露光及び熱処理により現像液への溶解性が変化するレジストであって、前記レジストパターンを形成するステップは、前記現像処理するステップの前に、前記一つのレジスト層を露光するステップと、前記露光された一つのレジスト層を熱処理することなく、前記上層のレジスト層を付着するステップと、前記上層のレジスト層を露光処理した後に、熱処理するステップと、を備えることができる。これにより、効果的に溶解性の制御を行うことができる。
【0029】
本発明の第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法は、物質の処理に使用される凹凸構造を備える樹脂成形品の製造方法であって、基板上にレジストパターンを形成するステップと、前記基板上に形成された前記レジストパターンにしたがって金属を付着し、金属構造体を形成するステップと、前記金属構造体を使用して、樹脂成形品を形成するステップと、を備え、前記レジストパターンを形成するステップが、複数のレジスト層を形成し、前記複数のレジスト層の内のマスクパターンを用いて露光処理された一つのレジスト層と、マスクパターンを用いて露光処理された前記一つのレジスト層よりも上層のレジスト層と、を現像処理し、深さの異なる複数の凹凸部を有するレジストパターンを形成するステップを有するものである。この構成を有することにより、深さの異なる複数の構造を有する物質の処理に使用される凹凸構造を、樹脂成形品上に形成することができる。
【0030】
上記第1もしくは第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法において、前記一つのレジスト層のパターンと、前記上層のレジスト層のパターンが異なることが好ましい。これにより、効果的に異なる深さの凹凸パターンを形成することができる。
【0031】
上記第1もしくは第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法において、前記レジストパターンを形成するステップは、所望の深さを有するパターンを形成するように、複数のレジスト層を付着するステップと、前記複数のレジスト層を露光マスクで1回の露光を行う、あるいは、それぞれレジスト層を同一パターンの露光マスクで露光を行うステップを備えることができる。これにより、所望の深さの凹凸パターンのレジスト層を形成することができる。
【0032】
上記第1もしくは第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法において、前記レジストパターンを形成するステップは、上層のレジスト層が露光された後に、さらに一つもしくはそれ以上のレジスト層の付着と露光処理を行い、3以上の異なる深さの凹凸部を形成することができる。
【0033】
上記第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法において、前記レジストパターンを形成するステップでは、1回の現像で異なる複数の深さの構造を有するレジストパターンを形成することが好ましい。
【0034】
上記第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法において、前記上層のレジスト層の露光処理において、前記一つのレジスト層の露光処理に用いられるマスクパターンの位置と同じ位置になるように、露光に用いられるマスクパターンの位置を合わせることが好ましい。これにより、正確な露光処理を行うことができる。
【0035】
上記第1もしくは第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法において、一つのレジスト層と上層のレジスト層に感度の異なるレジストを用いることが好ましい。これにより、より精密なパターニングを可能とする。
【0036】
上記第1もしくは第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法において、前記レジストパターンを形成するステップにおいて露光に用いられる光源は、紫外線ランプ又はレーザー光であることが好ましい。
【0037】
上記第1もしくは第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法において、前記樹脂成形品を形成するステップにより形成される樹脂成形品の凹凸部の深さは、実質的に5μm乃至500μmであることが好ましい。これにより、物質処理に好適な樹脂成形品を製造することができる。
上記第1もしくは第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法によって、流路パターン、混合部パターン、容器パターンの中から少なくとも一つのパターンを有する樹脂成形品を製造することができる。あるいは、電極、ヒータ、温度センサの中から少なくとも一つのパターンを有することができる。
上記第1もしくは第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法によって、臨床検査に用いられるチップを製造することができる。特に。血液検査用チップ、尿検査用チップ又は生化学検査用チップのいずれか一つであることができる。
上記第1もしくは第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法によって、コンビナトリアルケミストリーに用いられるチップを製造することができる。特に、医薬開発チップ又は化学合成・分析用チップであることができる。
上記第1もしくは第2の態様にかかる樹脂成形品の製造方法によって、遺伝子関連に用いられるチップを製造することができる。特に、遺伝子増幅用チップであることができる。
【0038】
本発明の第3の態様にかかる金属構造体の製造方法は、基板上にレジストパターンを形成するステップと、前記基板上に形成された前記レジストパターンにしたがって金属を付着し、樹脂成形品の製造に使用される金属構造体を形成するステップと、を備えた樹脂成形品の製造に使用される金属構造体の製造方法において、前記レジストパターンを形成するステップは、複数のレジスト層を形成し、前記基板上に形成された前記複数のレジスト層を、現像処理するステップを備え、前記現像処理するステップにおいて、いずれかの一つのレジスト層よりも上層のレジスト層が、現像剤に対する溶解性が小さいように溶解性が制御されるものである。この構成を有することにより、第2レジスト層のパターンの変形を抑制することができ、所望の構造を有する金属構造体を製造することができる。
【0039】
本発明の第4の態様にかかる金属構造体の製造方法は、物質の処理に使用される凹凸構造を備える樹脂成形品の製造に使用される金属構造体の製造方法であって、基板上にレジストパターンを形成するステップと、前記基板上に形成された前記レジストパターンにしたがって金属を付着し、金属構造体を形成するステップと、を備え、前記レジストパターンを形成するステップが、複数のレジスト層を形成し、前記複数のレジスト層の内のマスクパターンを用いて露光処理された一つのレジスト層と、マスクパターンを用いて露光処理された前記一つのレジスト層よりも上層のレジスト層と、を現像処理し、深さの異なる複数の凹凸部を有するレジストパターンを形成するステップを有する。これにより、深さの異なる複数の構造を有する物質の処理に使用される凹凸構造を、樹脂成形品上に形成することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において、変更、追加、変換することが可能であろう。
【0041】
図1は、本実施の形態における樹脂成形品の製造工程を示している。本実施の形態を実現するために使用される製造装置は広く知られたものであり、詳細な説明は省略される。図1を参照して、本実施の形態における製造方法を説明する。尚、図1は、化学増幅型ネガ型レジストを使用した例を示している。本形態のレジストパターン形成方法は、
a)基板上への第1レジスト層の形成
b)基板とマスク(A)との位置合わせ
c)マスク(A)を用いた第1レジスト層の露光
d)第1レジスト層の熱処理
e)第1レジスト層上への第2レジスト層の形成
f)基板とマスクとの位置合わせ
g)マスク(B)を用いた第2レジスト層の露光
h)第2レジスト層の熱処理
i)レジスト層の現像
を行い、所望のレジストパターンを形成する。尚、上記処理の符号は、図面の符号とは一致していない。形成されたレジストパターンにしたがって、基板上に金属を付着することによって、金属構造体を形成する。金属の付着は好ましくは、電解メッキもしくは無電解メッキ処理によって行われる。
【0042】
この金属構造体を型として、樹脂成形品を形成することによって、樹脂成形品を製造することができる。あるいは、金属構造体は中間体として使用することができる。この中間構造体を使用して型を形成し、その型によって樹脂成形品を形成することが可能である。例えば、金属構造体にメッキ処理によって金属を付着することによって、金属の型を形成することが可能である。尚、上記処理のいくつかは、使用されるレジスト材料あるいはプロセスによって省略される。
【0043】
本形態のレジストパターンの形成処理について更に詳細に説明する。基板上に、例えば、深さ30μmと深さ100μmの凹凸部を備える構造体を得ようとした場合、下層である第1レジスト層(厚さ70μm)、上層である第2レジスト層(厚さ30μm)を順に形成し、各層に露光、または露光、熱処理を行う。現像処理工程では、最初に第2レジスト層が現像され、深さ30μmのパターンが得られる。次に第1レジスト層が現像され、第1レジスト層と第2レジスト層を合わせた深さ100μmのパターンが得られる。深さ100μmのパターンが得られる時点で、第2レジスト層の深さ30μmのパターンを現像液に溶解、または変形させないためには、各層の現像液への溶解性を制御することが重要であることを本発明者らは見出した。
【0044】
第1レジスト層と第2レジスト層の厚みの差が大きい、あるいはそれを合わせた厚みが厚くなるにつれ各層の溶解性を制御すること、特に、上層である第2レジスト層の現像剤への溶解性を小さくすることが重要である。第2レジスト層の溶解性は、下層である第1レジスト層よりも小さいことが重用である。アルカリ現像液を使用する現像処理においては、第2レジスト層が耐アルカリ性を持つことが必要となる。
【0045】
以下において、各処理について説明する。
a)基板上への第1レジスト層の形成について説明する。
成形品形成ステップで得られる樹脂成形品の平面度は、基板1上へ第1レジスト層2を形成する工程にて決定づけられる。すなわち、基板1上に第1レジスト層2を形成した時点の平面度が金属構造体、ひいては樹脂成形品の平面度に反映される。
【0046】
基板1上に第1レジスト層2を形成する方法は何ら限定されないが、一般的にスピンコート方式、ディッピング方式、ロール方式、ドライフィルムレジストの貼り合わせ等を挙げることができる。なかでも、スピンコート方式は、回転しているガラス基板上にレジストを塗布する方法で、直径300mmを超えるガラス基板にレジストを高い平面度で塗布する利点がある。従って、高い平面度を実現できる観点から、スピンコート方式が好ましく用いられる。
【0047】
用いられるレジストにはポジ型レジスト、ネガ型レジストの2種類がある。いずれも、レジストの感度、露光条件により、レジストの焦点深度が変わるため、例えばUV露光装置を使用した場合、露光時間、UV出力値をレジスト厚さ、感度に応じて種類を選択するのが望ましい。使用するレジストは、パターン形状の制御容易性の観点から、ネガ型レジストが好ましい。特に、大きな深さを備えるレジストパターンを形成する場合、現像剤への不溶化性を変化させるネガ型レジストが、レジストの溶解性を効果的に制御することができる点において、優れている。また、例えばスピンコート方式にて、第1レジスト層2上に第2レジスト層4を形成する場合、第2レジスト層4に含まれる溶剤(例えばシンナーなど)により第1レジストパターンの変形を防止する上でも、ネガ型レジストが好ましい場合がある。
【0048】
用いるレジストがウェットレジストの場合、例えばスピンコート方式で所定のレジスト厚さを得るには、スピンコート回転数を変更する方法と、粘度調整する方法がある。スピンコート回転数を変更する方法は、スピンコーターの回転数を設定することによって所望のレジスト厚さを得るものである。粘度調整する方法は、レジスト厚さが厚い場合、又は塗布面積が大きくなると平面度が低下することが懸念されるため、実際使用上で要求される平面度に応じて粘度を調整するものである。
【0049】
例えばスピンコート方式の場合、1回で塗布するレジスト層の厚さは、高い平面度を保持することを考慮し、好ましくは50μm以下の範囲内であることが望ましい。第1レジスト層2の厚さは、物質処理のための樹脂成形品製造のためには、1〜500μmが好ましい。所望の厚さのレジスト層を得るために、複数回のレジスト付着処理を繰り返すことができる。特に、高い平面度を保持したうえで、所望のレジスト層の厚さを得るためには、複数のレジスト層を形成することが有効である。これら複数の層は、後に一回の露光処理で同時に露光することができる。尚、一つのレジスト層を形成及び露光処理した後、さらにレジスト層を形成し、同一マスクパターンでの露光処理を行うことによって、同様に、第1レジスト層に深さの大きい凹部を形成することが可能である。
【0050】
スピンコート方式によりレジスト層を形成する場合、熱処理の一つであるレジストのベーク処理(溶剤の乾燥)におけるベーク量を調整することによって、レジストの溶解性を制御することができる。ベーク処理は一般的に露光処理の前に行われる。ベーク処理に用いる装置は、溶剤を乾燥できれば特に限定されるものではなく、オーブン、ホットプレート、熱風乾燥機等があげられる。熱処理量の一例であるベーク量は、ベーク時間もしくはベーク温度を制御することによって変化させることができる。例えば、体積あたりのベーク量を、第1レジスト層2が第2レジスト層4よりも小さくなるように調整することによって、2つのレジストの溶解性を制御することができる。尚、ベーク量による制御は、ネガ型レジストあるいはポジ型レジストの双方に適用することができる。
【0051】
第1レジスト層2に光分解型のポジ型レジストを使用した場合、第1レジスト層2のベークが進行しすぎると、レジストが極度に硬化し、後の現像において光が照射された部分を溶解させパターンを形成することが困難になることから、ベーク時間を短くする等、適宜選択することが好ましい。
【0052】
光分解型のポジ型レジスト、または化学増幅型ポジレストは、光架橋型のネガ型レジストと比較して、耐アルカリ性の発現幅は制限されるため、設定するレジスト厚さは、第1および第2の各層を合わせて5〜200μmの範囲内が好ましく、10〜100μmの範囲内であることがより好ましい。尚、第1レジストと第2レジストの材料を異なる場合、同じベーク量によって、溶解性を変化させることも可能である。
【0053】
b)基板とマスクAとの位置合わせについて説明する。
第1レジスト層2のパターンと、第2レジスト層4のパターンにおける位置関係を所望の設計通りにするためには、マスク(A)3を用いた露光時に、正確な位置合わせを行うことが必要となる。
【0054】
位置合わせには、基板とマスク(A)3の同位置に切削加工を施しピン固定する方法、レーザー干渉計を用い位置だしする方法、基板とマスクAの同位置に位置マークを作製、光学顕微鏡で位置合わせをする方法等があげられる。
【0055】
光学顕微鏡で位置合わせをする方法は、例えば、フォトリソグラフ法にて基板に位置マークを作製し、マスク(A)3にはレーザー描画装置で位置マークを描画する。光学顕微鏡を用いた手動操作においても、5μm以内の精度が簡単に得られる点で有効である。
【0056】
c)マスク(A)3を用いた第1レジスト層の露光について説明する。図1(b)に示される工程で使用するマスク(A)3は何ら限定されないが、エマルジョンマスク、クロムマスク等を挙げることが出来る。レジストパターン形成ステップでは、使用するマスクAによって流路の幅、深さ、容器間隔、および容器幅(または直径)、深さの寸法、および精度が左右される。そして、その寸法および精度は、樹脂成形品にも反映される。
【0057】
したがって、樹脂成形品の各寸法、および精度を所定のものとするためには、マスクAの寸法、および精度を規定する必要がある。マスク(A)3の精度を高める方法は何ら限定しないが、例えば、マスク(A)3のパターン形成に使用するレーザー光源をより波長の短いものに変えることを挙げることができるが、設備費用が高額であり、マスク(A)3製作費が高額となるため、樹脂成形品が実用的に要求される精度に応じて適宜規定するのが望ましい。
【0058】
マスク(A)3の材質は温度膨張係数、UV透過吸収性能の面から石英ガラスが好ましいが比較的高価であるため、樹脂成形品が実用的に要求される精度に応じて適宜規定するのが望ましい。設計通りの所望の深さ、または高さが異なる構造体、または第1レジストパターンと第2レジストパターンが異なる構造体を得るには、第1レジスト層2、および第2レジスト層4の露光に用いるマスクのパターン設計(透過/遮光部)が確実であることが必要であり、CAE解析ソフトを使用したシミュレーションもその解決策の一つである。
【0059】
露光に用いられる光源は設備費用が安価である紫外線またはレーザー光であることが好ましい。シンクロトロン放射光は露光深度が深いものの、かかる設備費用が高額であり、実質的に樹脂成形品の価格が高額となり、工業的に実用的でない。
【0060】
光架橋型のネガ型レジストを用いて耐アルカリ性を発現させる方法として、ベーク時間の最適化の他に、架橋密度の最適化があげられる。通常、ネガ型レジストの架橋密度は、露光量によって設定することが可能である。このことから、第1レジスト層2の露光量と第2レジスト層4の露光量を調整することで、溶解性を制御することができる。露光量は、露光時間あるいは露光強度などを変化させることによって制御することができる。例えば、第1レジスト層2の体積あたりの露光量を、第2レジスト層4の体積あたりの露光量よりも小さくすることで、第1レジスト層2よりも第2レジスト層4の溶解性を小さくするように制御することができる。露光時間や露光強度等の露光条件はレジスト層の材質、厚み等により変化するため、得られるパターンに応じて適宜調節することが好ましい。特に流路の幅、深さ、容器間隔、および容器幅(または直径)、深さ等のパターンの寸法、および精度に影響を与えるため、露光条件はこれらも考慮して調節される。また、レジストの種類により焦点深度が変わるため、例えばUV露光装置を使用した場合、露光時間、UV出力値をレジストの厚さ、感度に応じて選択するのが望ましい。光架橋型のネガ型レジストの場合、設定するレジスト厚さは、各層を合わせて5〜500μmの範囲内が好ましく、10〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
【0061】
d)第1レジスト層2の熱処理について説明する。露光後の熱処理は、レジストパターンの形状を補正するためにアニールといわれる熱処理が知られている。特に、化学架橋を目的とし、化学増幅型レジストを使用した場合に行う。典型的な化学増幅型レジストは、レジスト中の感光剤として酸発生剤を含み、露光で発生した酸によって次の熱処理において反応が誘起され、現像液に対して不溶化あるいは可溶化が促進される。特に、化学増幅型ネガレジストは、主に、2成分系、または3成分系からなり、露光時の光によって化学構造の末端のエポキシ基が開環し、熱処理によって架橋反応させる。熱処理時間は、例えば膜厚100μmの場合、設定温度100℃の条件下においては数分で架橋反応が進行する。化学増幅型ネガ型レジストを使用した場合、露光量の調整のほかに、露光後の熱処理量を調整することによって、溶解性を制御することができる。この露光量、または熱処理量を多くすることによって、耐アルカリ性を発現させることが可能となる。熱処理量は、処理時間あるいは処理温度などによって変化させることができる。従って、第1のレジスト層へ与える体積あたりの熱処理量を、第2レジスト層よりも小さくすることによって、溶解性を第2レジスト層よりも小さくすることができる。
【0062】
第1レジスト層2の熱処理が進行しすぎると、後の現像において未架橋部分を溶解させパターンを形成することが困難になることから、この点も考慮して、設定するレジスト厚さが100μm以上でない場合、熱処理時間を短くする、または後の第2レジスト層形成後の熱処理のみとする等、適宜選択することが好ましい。
【0063】
e)第1レジスト層上への第2レジスト層4の形成について説明する。図1(c)に示されるように、露光処理された後の第1レジスト2上に第2レジスト4が付着される。a)について説明したことに加え、以下の点を記す。第2レジスト層のベーク処理量を調整することによって、第2レジスト層の現像剤に対する溶解性を制御することができる。ベーク処理は、温風を使用して、上側から熱を与えることが好ましい。例えば、熱処理時間を長くする、あるいは熱処理温度を高くすることによって、耐アルカリ性を発現させることが可能である。特に、第1レジスト層よりも溶解性を小さくするために、第1レジスト層よりも、体積あたりの与える熱処理量を大きくすることが重要である。例えば、第2レジスト層4のベーク時間(溶剤の乾燥時間)を長くし、レジストを硬化させ、より大きい耐アルカリ性を発現させることができる。通常、レジストは膜厚、シンナー等の溶剤濃度、および感度に応じてベーク時間を設定している。この時間を長くすることによってより大きい耐アルカリ性を持たせることが可能となる。スピンコート方式にて、ポジ型レジストを使用してレジスト層を形成する場合、ベーク時間を通常の1.5〜2.0倍程度とすることで、より大きな耐アルカリ性を発現させることができる。これにより、第1レジスト層と第2レジスト層の現像終了時、第2レジスト層のレジストパターンの溶解、または変形を抑制することができる。
【0064】
f)基板とマスク(B)5との位置合わせについて説明する。b)について説明したことと同様の要領にて、位置合わせを実施する。
【0065】
g)マスク(B)5を用いた第2レジスト層の露光について説明する。図1(d)に示すように、マスク(B)5を使用して、第2レジスト層4を露光処理する。マスク(B)5は、深さの異なる複数の凹凸部を備える凹凸パターンを形成するため、マスク(A)3とは、異なるマスクパターンを備えている。一部の露光領域は一致し、一部の露光領域が一致しなし。例えば、一致する部分において、より大きな造形深さを得ることができる。
【0066】
c)について説明したことと同様の要領にて、露光を実施する。この際、光架橋型のネガ型レジストを用いて露光量を調整することによって、溶解性を制御することができる。第2レジスト層の体積あたりの露光量を第1レジスト層よりも多くすることによって、第2レジスト層の溶解性を第1レジスト層よりも小さくすることができる。これにより、第2レジスト層のレジストパターンの溶解、または変形を抑制することができる。
【0067】
h)第2レジスト層4の熱処理について説明する。d)について説明したことに加え、以下の点を記す。化学増幅型レジストを使用する場合、露光量のほかに、露光処理後の熱処理における熱処理量、例えば処理時間や温度を調整することによって、溶解性を制御することが可能である。化学増幅型ネガレジストを第2レジスト層として使用し、露光後の熱処理を適切に行うことによって、後の現像処理において第1レジスト層のパターンが得られた時点で、第2レジスト層のパターンが溶解、または変形させないよう制御することができる。熱処理によって化学架橋が進行し、架橋密度を高めることで耐アルカリ性が発現する。例えば、耐アルカリ性を発現させるための熱処理時間は、通常の1.1〜2.0倍の範囲からレジストの厚さに応じて適宜選択することが好ましい。特に、第1レジスト層よりも溶解性を小さくするためには、第2レジスト層へ与えられる体積あたりの熱処理量は、第1レジスト層よりも多くすることが重要である。尚、d)において説明したように、必要により第1レジスト層における熱処理は行わない。第1レジスト層は第2レジスト層の熱処理時に、同時に熱処理が施される。この際、例えば、上側から温風により熱処理を行うことによって、第2レジスト層と第1レジスト層の熱処理量を適切に調整することができる。また、露光処理により溶解性が変化する通常の光架橋ネガレジストあるいは光分解ポジレジストに対して、露光後に熱処理を行うことによって、溶解性制御を行うことが可能である。これは、露光前のベーク処理と同様の効果を奏しうる。従って、第2レジスト層の熱処理量を増加することによって、その現像剤への溶解性を低下させることができる。
【0068】
i)レジスト層の現像について説明する。第1にレジスト層2と第2のレジスト層4は、1回の現像処理により現像され、パターンが形成される。図1(e)に示される工程の現像は用いたレジストに対応する所定の現像液を用いることが好ましい。現像時間、現像温度、現像液濃度等の現像条件はレジスト厚みやパターン形状に応じて適宜調節することが好ましい。例えば、必要な深さを得るために現像時間を長くしすぎると、容器間隔、および容器幅(または直径)が所定の寸法よりも大きくなってしまうため、適宜条件を設定することが好ましい。
【0069】
レジスト層全体の厚みが増してくると、現像工程において、レジスト底部の幅(または直径)よりも表面の幅(または直径)が広くなることが懸念される。レジストを複数層形成する場合、各レジスト層の形成において、感度の異なるレジストを段階に分けて形成することが好ましい場合がある。この場合には、例えば、表面に近い層のレジストの感度を底部に近い層よりも高くすることなどが挙げられる。さらに具体的には、感度の高いレジストとして東京応化工業株式会社製のBMR C−1000PMを、そして感度の低いレジストとして東京応化工業株式会社製のPMER−N−CA3000PMを用いることができる。その他、レジストの乾燥時間を変えることにより感度を調整するようにしてもよい。例えば、東京応化工業株式会社製のBMR C−1000PMを使用した場合、スピンコート後のレジスト乾燥時、1層目の乾燥時間を110℃で40分、2層目の乾燥時間を110℃で20分とすることで、1層目の感度を高めることができる。
【0070】
流路や混合部、容器などの深さ・精度が均一な成形品を得るための方法としては、例えば、レジスト塗布で使用するレジスト種類(ネガ型、ポジ型)を変更する方法、金属構造体の表面を研磨する方法などがあげられる。
【0071】
尚、溶解性制御のために熱処理あるいは露光処理などの調整は、それぞれ単独もしくは組み合わせて使用することができる。レジストの溶解性の制御は、複数の深さを備える凹凸形状の形成に限定されず、深さもしくは高さが同じ、唯一のレベルを備えるパターンにも適用可能である。第1のレジスト層と第2のレジスト層のために特性の異なる材料を使用することによって、熱処理あるいは露光処理に対する感度を変化させることができる。これにより、同一条件の露光あるいは熱処理などを使用して、現像剤への溶解性を変化させることができる。
【0072】
上記例においては、第1レジスト層上に直接第2レジスト層が形成されているが、溶解性の制御は、層の順序もしくは数に関わらず、上層と下層の関係にある複数層の間で適用することができる。例えば、3以上の異なる深さの凹部を備えるパターンを形成するために、上記説明に従い3層以上のレジスト層の各レジスト層について付着・露光処理を行い、一回の現像処理によりパターン形成することができる。このとき、異なるマスクパターンを使用することによって、3以上の異なる深さの凹部を有するパターンを形成することができる。
【0073】
次に、金属構造体形成ステップについてさらに詳細に説明する。金属構造体形成ステップとはレジストパターン形成ステップで得られたレジストパターン6に沿って金属を堆積させ、金属構造体の凹凸面をレジストパターンに沿って形成することにより、金属構造体を得る工程である。
【0074】
図1(f)に示されるように、この工程では予めレジストパターン6に沿って導電性膜7を形成する。該導電性膜7の形成方法は特に限定されないが、好ましくは蒸着、スパッタリング等を用いることができる。導電性膜に用いられる導電性材料としては金、銀、白金、銅などを挙げることができる。
【0075】
図1(g)に示されるように、導電性膜7を形成した後、パターンに沿って金属をメッキにより堆積して金属構造体8を形成する。金属を堆積させるメッキ方法は特に限定されないが、例えば電解メッキ、無電解メッキ等を挙げることができる。用いられる金属は特に限定されないが、ニッケル、銅、金を挙げることができ、経済性・耐久性の観点からニッケルが好ましく用いられる。
【0076】
金属構造体8はその表面状態に応じて研磨しても構わない。ただし、汚れが造形物に付着することが懸念されるため、研磨後、超音波洗浄を実施することが好ましい。また、金属構造体8はその表面状態を改善するために、離型剤等で表面処理しても構わない。なお、金属構造体の深さ方向の傾斜角度は、樹脂成形品の形状から50°〜90°であることが望ましく、より望ましくは60°〜87°である。メッキにより堆積した金属構造体8はレジストパターンから分離される。
【0077】
成形品形成ステップについて更に詳細に説明する。成形品形成ステップは、図1(h)に示されるように、前記金属構造体8を型として、樹脂成形品9を形成する工程である。樹脂成形品9の形成方法は特に限定されないが、例えば射出成形、プレス成形、モノマーキャスト成形、溶剤キャスト成形、押出成形によるロール転写法等を挙げることができ、生産性、型転写性の観点から射出成形が好ましく用いられる。所定の寸法を選択した金属構造体を型として射出成形で樹脂成形品を形成する場合、金属構造体の形状を高い転写率で樹脂成形品に再現することが可能である。転写率を確認する方法としては、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等を使用して行うことができる。
【0078】
金属構造体を型として、例えば射出成形で樹脂成形品を形成する場合、1枚の金属構造体で1万枚〜5万枚、場合によっては20万枚もの樹脂成形品を得ることができ、金属構造体の製作にかかる費用負担を大幅に解消することが可能である。また、射出成形1サイクルに必要な時間は5秒〜30秒と短く、生産性の面で極めて効率的である。射出成形1サイクルで同時に複数個の樹脂成形品を形成可能な成形金型を使用すれば、更に生産性を向上することが可能となる。上記成形方法では金属構造体を金属型として用いても、金属構造体を予め用意した金属型内部にセットして用いても構わない。
【0079】
樹脂成形品を形成するのに使用する樹脂材料としては特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、スチレン系樹脂、アクリル・スチレン系共重合樹脂(MS樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系共重合樹脂、スチレン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系樹脂、ポリジメチルシロキサンなどのシリコン樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は必要に応じて滑剤、光安定剤、熱安定剤、防曇剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの1種または2種以上を含有することができる。
【0080】
前記成形方法により得られる樹脂成形品について更に詳細に説明する。図2は、本形態の製造方法を使用して製造しうる樹脂成形品の一例を示している。図2の樹脂成形品は、流路及び複数の流路が交差する混合部を有している。さらに、樹脂成形品は、ヒータ、温度センサ及び電極を有している。ヒータ及び温度センサは流露上に配置されている。電極もしくはヒータなどの金属部は、スパッタリングや蒸着にて形成することができる。加温、または反応処理を行うために必要とされる温度制御のため、温度センサが配置されている。このような樹脂成形品9の各寸法、および精度については、実際使用上で必要となる数値に応じて、前記各工程により、適宜調整することが望ましい。
【0081】
樹脂成形品の流路の幅の最小値は、マスクの加工精度に由来しており、工業技術的にはX線、レーザーなど波長の短いレーザー光を使用することでより微細化は可能であると推測される。しかし、本発明は精密で安価な樹脂成形品9を医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野へ広く提供することが目的であり、特に、臨床検査、コンビナトリアルケミストリー、あるいは遺伝子関連に使用されるチップに好適なものであることから、工業的に再現し易い観点で幅が5μm以上であることが好ましい。また、規格化されていない多品種小ロットの樹脂成形品9の用途においても、精密で安価な容器として提供していく観点から幅が5μm以上であることが好ましい。流路の幅の最大値は、特に制限されないが、微細化による診断時間の短縮、複数処理を可能とし、装置に携帯性を付与させるために、300μm以下であることが好ましい。
【0082】
樹脂成形品の流路の深さの最小値は、流路としての機能を有するためには、5μm以上であることが好ましい。流路の深さの最大値は、特に制限されないが、化学分析、DNA診断等の用途において、流路の幅の微細化による診断時間の短縮、複数処理を可能にし装置に携帯性を付与させるといった利点を損なわないために、300μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは200μm以下である。
【0083】
樹脂成形品の流路の長さの最小値は、化学分析、DNA診断等の用途において、試料の導入、分離(解析)の機能を有するために5mm以上であることが好ましい。流路の長さの最大値は、特に制限されないが、化学分析、DNA診断等の用途において、流路の長さを短くすることで診断時間の短縮、複数処理を可能にし装置に携帯性を付与させるといった利点を損なわないために、300mm以下であることが好ましい。
【0084】
樹脂成形品の容器間隔の最小値は、マスクの加工精度に由来しており、工業技術的にはX線、レーザーなど波長の短いレーザー光を使用することでより微細化は可能であると推測される。しかし、本発明は精密で安価な容器を医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野などへ広く提供することが目的であり、特に、臨床検査、コンビナトリアルケミストリー、あるいは遺伝子関連に使用されるチップに好適なものであることから、工業的に再現し易い観点から容器間隔が5μm以上であることが好ましい。
【0085】
また、容器間隔の最小値は、例えば、血液検査装置の位置決め精度によって決定される場合も想定されることから、装置の仕様に応じて適宜選択することが好ましい。また、規格化されていない多品種小ロットの用途においても、精密で安価な容器として提供していく観点から5μm以上であることが好ましい。容器間隔の最大値は、特に制限されないが、容器の小型化により複数処理を可能にし、装置に携帯性を付与させるために、10,000μm以下であることが好ましい。
【0086】
上記理由により、樹脂成形品の容器幅(または直径)においても、最小値5μm以上、最大値10,000μm以下であることが好ましい。樹脂成形品9の容器深さの最小値は、特に制限されないが、容器としての機能を有するために、10μm以上であることが好ましい。容器深さの最大値は、例えば、複数回のレジスト塗布、十分な焦点深度を得るために露光光源をX線ビーム等のレーザーを使用する等によって、より深い造形を得ることは可能であると推測される。しかし、本発明は、精密で安価な容器を医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野へ広く提供することが目的であり、工業的に再現し易い観点から深さが1000μm以下であることが好ましい。
【0087】
樹脂成形品の平面度の最小値は、工業的に再現し易い観点から1μm以上であることが好ましい。樹脂成形品の平面度の最大値は、例えば、該成形品を他の基板と貼り合わせて使用する際に支障とならない観点から200μm以下であることが好ましい。樹脂成形品の流路の幅、深さの寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±0.5〜10%の範囲内であることが好ましい。樹脂成形品の容器間隔、容器幅(または直径)、深さの寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±0.5〜10%の範囲内であることが好ましい。
【0088】
樹脂成形品の厚さに対する寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±0.5〜10%の範囲内であることが好ましい。樹脂成形品の厚さは特に規定されないが、射出成形での取り出し時の破損、取り扱い時の破損、変形、歪みを考慮し、0.2〜10mmの範囲内であることが好ましい。樹脂成形品の寸法は特に限定されないが、リソグラフィー法でレジストパターンを形成する際、例えば、レジスト層の形成をスピンコート法にて行う場合、直径400mmの範囲の中から採取できるよう用途に応じて適宜選択することが好ましい。
【0089】
本発明により得られる樹脂成形品の用途は、特に、DNA診断用、検体容器、抗体容器、試薬容器などの医療用途、光学関連の前面板などの工業用途、細胞処理などのバイオテクノロジー用途、反応容器などの自動化学分析などの用途に好適である。特に、上記分野あるいはその他の分野において、物質処理のための凹凸構造を備える樹脂成形品であって、複数の異なる深さを備える凹凸構造を有する樹脂成形品製造に適用することができる。
【0090】
医療分野、なかでも抗血栓性(抗血小板付着)や細胞毒性試験における有害性の排除といった生体適合性を必要とする用途には、抗血栓性の効果が知られている材料を用いたり、表面処理を施したりすることが好ましい。表面処理により生体適合性を向上する方法として、例えば、射出成形で成形品を形成した後、スパッタリングによりSiO2膜を堆積させた後、熱酸化によりSiO2膜を成長させることで生体適合性を付与する方法があげられる。
【0091】
樹脂成形品を形成した後、医療分野、なかでも臨床検査分野において、生化学分析、DNA診断分野等に使用する場合、樹脂成形品上で加温、反応、信号検出等の処理を必要とする場合がある。樹脂成形品上で加温、または反応処理を行う方法として、例えば、スパッタリングにて電極パターンを形成し、装置から電圧を印加する方法や、ヒータを配置することが考えられる。また、加温、または反応処理を行う際、温度制御が必要となる場合は、例えば、温度センサを配置することも考えられる。信号検出を行う場合、例えば、フォトダイオードを配置することが考えられる。
【0092】
医療分野、なかでも臨床検査分野において、生化学分析、DNA診断分野等に使用する場合、流路の微細化によって診断に要する時間を短縮することが期待されている成形品は、本発明により得られる樹脂成形品を使用することによって達成される。本形態により得られる樹脂成形品は、精密で安価であり、生化学分析、DNA診断分野等、なかでも手術室、ベッドサイド、在宅、あるいは町の診療所等、産業上大量使用される用途において特に効果的である。
【0093】
本形態により得られる樹脂成形品は、精密で安価であり、該成形品を繰り返し使用することも可能であるが、基板表面の汚れ、変形等の欠陥が生じた場合、コスト高が極力抑えられるため廃棄して新品を使用しても、労力の解消、処理時間の短縮といった作業効率が重要である用途において特に効果的である。本形態により得られる樹脂成形品9は、精密で安価であり、医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野の他に、コンビナトリアルケミストリーといった自動化学分析の分野においても広く応用が期待できる。特に検体量の微少化は、同時に廃棄の際の廃液量を大幅に削減することができ、環境保全の観点からも特に効果的である。
【0094】
尚、本発明にかかる製造方法により金属構造体、および樹脂成形品を製造した場合、金属構造体、および樹脂成形品に、第1レジスト層上に第2レジスト層を形成したことによる第1レジスト層表面の数μm以内のうねり、および第1レジスト層パターン端部の傾斜が形成されることがあるが、実用上何ら問題はない。
【0095】
本形態により得られる樹脂成形品は、従来の成形品と対比して高い精度などを発揮することができる。また、当該樹脂成形品は精密であると同時に安価に形成することができるため、製造コストを極力抑えられる利点を発揮できるような産業上大量に使用される用途に適用した場合に、特に効果的である。
【0096】
【実施例】
本発明にしたがって、樹脂成形品を形成する方法について、図を参照しながら以下により具体的に説明する。図1(a)を参照して、まず基板上に、有機材料(東京応化工業製「PMER N−CA3000PM」をベースとする1回目のレジスト塗布を行った。そして、図1(b)を参照して第1レジスト層を形成した後、基板と所望の容器のマスクパターンに加工したマスクAとの位置合わせを行った。
【0097】
次にUV露光装置(キャノン製「PLA−501F」波長365nm、露光量300mJ/cm2)により、第1レジスト層をUV光により露光を行った後、ホットプレート(100℃×4分)を用いて第1レジスト層の熱処理を行った。図1(c)を参照して、まず基板上に、有機材料(東京応化工業製「PMERN−CA3000PM」をベースとする2回目のレジスト塗布を行った。そして、図1(d)を参照して第2レジスト層を形成した後、基板と所望の容器のマスクパターンに加工したマスク(B)との位置合わせを行った。
次にUV露光装置(キャノン製「PLA−501F」波長365nm、露光量100mJ/cm2)により、第2レジスト層をUV光により露光を行った後、ホットプレート(100℃×8分)を用いて第2レジスト層の熱処理を行った。図1(e)に示すように、前記レジスト層を有する基板を現像し、基板上にレジストパターンを形成した(現像液:東京応化工業製「PMER現像液P−7G」)。
【0098】
そして、図1(f)に示すように前記レジストパターンを有する基板表面に蒸着、またはスパッタリングを行い、レジストパターンの表面に銀からなる導電性膜を堆積させた。この工程において、他に白金、金、銅などを堆積させることができる。
次に、図1(g)に示すように前記レジストパターンを有する基板をメッキ液に浸け、電気メッキを行い、レジストパターンの谷間に金属構造体(以下、Ni構造体)を得た。この工程において、他に銅、金などを堆積させることができる。
図1(h)に示すように、得られたNi構造体を金型として、射出成形でプラスチック材をNi構造体に充填し、プラスチック成形体を得た。
【0099】
樹脂成形品1[流路を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を2回繰り返して第1レジスト層を形成、露光、熱処理を実施、さらにレジスト塗布を1回繰り返して第2レジスト層を形成、露光、熱処理を実施した後、図3に示すような横75mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、50μmと200μmの流路深さを有する樹脂成形品を製造した。
【0100】
樹脂成形品2[流路を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を3回繰り返して第1レジスト層を形成、露光、熱処理を実施、さらにレジスト塗布を1回繰り返して第2レジスト層を形成、露光、熱処理を実施した後、図4に示すような横75mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、25μmと300μmの流路深さを有する樹脂成形品を製造した。
【0101】
樹脂成形品3[容器を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を3回繰り返して第1レジスト層を形成、露光、熱処理を実施、さらにレジスト塗布を1回繰り返して第2レジスト層を形成、露光、熱処理を実施した後、図5に示すような横75mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、30μmと300μmの容器深さを有する樹脂成形品を製造した。
【0102】
樹脂成形品4[容器を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を1回行って第1レジスト層を形成、露光、熱処理を実施、さらにレジスト塗布を2回繰り返して第2レジスト層を形成、露光、熱処理を実施した後、図6に示すような横70mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、深さ150μmの底部に深さ30μmの容器を有する樹脂成形品を製造した。
【0103】
樹脂成形品5[凸パターンを有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を1回行って第1レジスト層を形成、露光、熱処理を実施、さらにレジスト塗布を3回繰り返して第2レジスト層を形成、露光、熱処理を実施した後、図7に示すような横75mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、20μmと300μmの凸パターンを有する樹脂成形品を製造した。このパターンは、20μmと300μmの凹部を有するものと捉えることができる。
【0104】
【発明の効果】
本発明により、所望の形状を有する樹脂成形品を生産性良く製造することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態における、樹脂成形品を形成する工程を示す模式図である。
【図2】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造される樹脂成形品の一例を示す図である。
【図3】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、流路を有する樹脂成形品を示す図である。
【図4】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、流路を有する樹脂成形品を示す図である。
【図5】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、容器を有する樹脂成形品を示す図である。
【図6】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、容器を有する樹脂成形品を示す図である。
【図7】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、凸パターンを有する樹脂成形品を示す図である。
【符号の説明】
1 基板、2 第1レジスト層、3 マスク(A)、4 第2レジスト層、5 マスク(B)、6 レジストパターン、7 導電性膜、8 金属構造体、9 樹脂成形品
Claims (18)
- 基板上にレジストパターンを形成するステップと、
前記基板上に形成された前記レジストパターンにしたがって金属を付着し、金属構造体を形成するステップと、
前記金属構造体を使用して、樹脂成形品を形成するステップと、を備えた樹脂成形品の製造方法において、
前記レジストパターンを形成するステップは、
複数のレジスト層を形成し、前記基板上に形成された前記複数のレジスト層を、現像処理するステップを備え、前記現像処理するステップにおいて、いずれかの一つのレジスト層よりも上層のレジスト層が、現像剤に対する溶解性が小さいように溶解性が制御される、樹脂成形品の製造方法。 - 前記溶解性の制御は、前記現像処理するステップの前に与えられる、前記一つのレジスト層への熱処理量と前記上層のレジスト層への熱処理量の調整による制御を含む、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記レジストパターンを形成するステップは、前記一つのレジスト層の露光処理の前に前記一つのレジスト層を熱処理するステップと、
前記上層のレジスト層の露光処理の前に前記上層のレジスト層を熱処理するステップを含む、請求項2に記載の樹脂成形品の製造方法。 - 前記レジストパターンを形成するステップは、前記一つのレジスト層の露光処理の後に前記一つのレジスト層を熱処理するステップと、前記上層のレジスト層の露光処理の後に前記上層のレジスト層を熱処理するステップとを有する、請求項2に記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記レジストパターンを形成するステップは、前記現像処理するステップの前に、
前記一つのレジスト層を露光処理するステップと、
前記上層のレジスト層を露光処理するステップと、を備え、
前記溶解性の制御は、前記一つのレジスト層の露光量と前記上層のレジスト層の露光量の調整による制御を含む、請求項1及至4に記載の樹脂成形品の製造方法。 - 前記一つのレジスト層及び上層のレジスト層は、露光及び熱処理により現像液への溶解性が変化するレジストであって、
前記レジストパターンを形成するステップは、前記現像処理するステップの前に、
前記一つのレジスト層を露光するステップと、
前記露光された一つのレジスト層を熱処理することなく、前記上層のレジスト層を付着するステップと、
前記上層のレジスト層を露光処理した後に、熱処理するステップと、
を備える、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。 - 物質の処理に使用される凹凸構造を備える樹脂成形品の製造方法であって、
基板上にレジストパターンを形成するステップと、
前記基板上に形成された前記レジストパターンにしたがって金属を付着し、金属構造体を形成するステップと、
前記金属構造体を使用して、樹脂成形品を形成するステップと、を備え、
前記レジストパターンを形成するステップが、
複数のレジスト層を形成し、前記複数のレジスト層の内のマスクパターンを用いて露光処理された一つのレジスト層と、マスクパターンを用いて露光処理された前記一つのレジスト層よりも上層のレジスト層と、を現像処理し、深さの異なる複数の凹凸部を有するレジストパターンを形成するステップを有する、方法。 - 前記レジストパターンを形成するステップは、所望の深さを有するパターンを形成するように、複数のレジスト層を付着するステップと、前記複数のレジスト層を露光マスクで1回の露光を行う、あるいは、それぞれレジスト層を同一パターンの露光マスクで露光を行うステップを備える、請求項1及至7記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記レジストパターンを形成するステップは、前記上層のレジスト層が露光された後に、さらに一つもしくはそれ以上のレジスト層の付着と露光処理を行い、2以上の異なる深さの凹凸部を形成する、請求項1及至8記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記レジストパターンを形成するステップでは、1回の現像で異なる複数の深さの凹凸部を有するレジストパターンを形成する、請求項7及至9記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記レジストパターンを形成するステップにおいて露光に用いられる光源は、紫外線ランプ又はレーザー光であることを特徴とする、請求項1及至10に記載の方法。
- 前記樹脂成形品を形成するステップにより形成される樹脂成形品の凹凸部の深さは、実質的に5μm乃至500μmである、請求項1及至11に記載の樹脂成形品の製造方法。
- 請求項1及至12に記載の製造方法により得られる樹脂成形品であって、流路パターン、混合部パターン、容器パターン、電極、ヒータ、温度センサの中から少なくとも一つを有する樹脂成形品。
- 請求項1及至13に記載の製造方法により得られる臨床検査に用いられるチップ。
- 請求項1及至13に記載の製造方法により得られるコンビナトリアルケミストリーに用いられるチップ。
- 請求項1及至13に記載の製造方法により得られる遺伝子関連に用いられるチップ。
- 基板上にレジストパターンを形成するステップと、
前記基板上に形成された前記レジストパターンにしたがって金属を付着し、樹脂成形品の製造に使用される金属構造体を形成するステップと、を備えた樹脂成形品に使用される金属構造体の製造方法において、
前記レジストパターンを形成するステップは、
複数のレジスト層を形成し、前記基板上に形成された前記複数のレジスト層を、現像処理するステップを備え、前記現像処理するステップにおいて、いずれかの一つのレジスト層よりも上層のレジスト層が、現像剤に対する溶解性が小さいように溶解性が制御される、樹脂成形品の製造に使用される金属構造体の製造方法。 - 物質の処理に使用される凹凸構造を備える樹脂成形品の製造に使用される金属構造体の製造方法であって、
基板上にレジストパターンを形成するステップと、
前記基板上に形成された前記レジストパターンにしたがって金属を付着し、金属構造体を形成するステップと、を備え、
前記レジストパターンを形成するステップが、
複数のレジスト層を形成し、前記複数のレジスト層の内のマスクパターンを用いて露光処理された一つのレジスト層と、マスクパターンを用いて露光処理された前記一つのレジスト層よりも上層のレジスト層と、を現像処理し、深さの異なる複数の王凸部を有するレジストパターンを形成するステップを有する、方法。
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