JP2004263778A - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】変速指令時t1から上昇する締結油圧指令値Pcでロスストロークを終了するt2に油圧スイッチがONしてこれを検知し、初期圧Poinitより第一勾配β1で低下させる制御をt2以後も所定時間Δthだけt3まで継続させる。t3以後はPoを、T3以前のPoの演算を継続した時に得られる破線で示した掛け替え制御前解放圧推定値(Poinit−β1×TM1)より、t3からの経過時間(TM2−Δth)と第二勾配β2に対応する係数(同符号β2)との乗算値β2×(TM2−Δth)を差し引いて求めた圧力に定める。故に掛け替え制御前解放圧推定値がPo1に低下するt4まではPoをβ1+β2=β3の勾配で低下させて目標値X1に速やかに接近させ、その後はPoをβ2で低下させて目標値X1にし得る。
【選択図】 図11
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機の変速制御装置、特に摩擦要素の掛け替えにより行う掛け替え変速を好適に遂行させるための変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機は、複数のクラッチやブレーキ等の摩擦要素を選択的に油圧作動(締結)させることにより歯車伝動系の動力伝達経路(変速段)を決定し、作動する摩擦要素を切り換えることにより他の変速段への変速を行うよう構成する。
【0003】
従って自動変速機には、複数の摩擦要素のうち第一の摩擦要素を作動油圧の上昇により締結させると共に第二の摩擦要素を作動油圧の低下により解放させる、いわゆる摩擦要素の掛け替えにより行う掛け替え変速が存在する。
なお本明細書では、当該掛け替え変速に際し締結状態から解放状態に切り替えるべき摩擦要素を解放側摩擦要素、その作動油圧を解放側作動油圧と称し、また逆に、解放状態から締結状態に切り換えるべき摩擦要素を締結側摩擦要素、その作動油圧を締結側作動油圧と称する。
【0004】
当該掛け替え変速に際し、解放側摩擦要素を解放させるための解放側作動油圧の低下制御、および締結側摩擦要素を締結させるための締結側作動油圧の上昇制御を、従来、例えば特許文献1に示すように行うことが提案されている。
【0005】
つまり図13(a)に示すように、掛け替え変速の指令瞬時t1から締結側作動油圧PCを上昇させることにより、締結側摩擦要素をリターンスプリングに抗してストロークさせ、締結側摩擦要素がロスストロークを終了したのを、PC=P1になった時にONする油圧スイッチにより検知する。
【0006】
一方で解放側作動油圧POは、変速指令瞬時t1から、締結側摩擦要素のロスストローク終了検知瞬時t2までの間、解放側摩擦要素がスリップし始める直前の締結容量となるようにP4まで急速に低下させ、その後瞬時t3までの間は、上記の掛け替えが行われるようにゆっくりと低下させ、以後は急速に0まで低下させる。
【0007】
他方で締結側作動油圧PCは、締結側摩擦要素のロスストローク終了検知瞬時t2以後に、上記の掛け替え変速を開始させてトルクフェーズを終了させるための初期棚圧P2まで急上昇させ、その後瞬時t3を経て瞬時t4までの間、所定のゆっくりとした棚圧勾配で更に上昇させてイナーシャフェーズが終了する圧力P3に至らしめ、その後瞬時t5までの間に最高値(図ではライン圧PL)まで上昇させる。
【0008】
ところで上記した従来の制御を行う場合、解放側作動油圧POを急速に低下させる瞬時t3は、通常、油圧回路に設けたオリフィスコントロールバルブがこれを決定する。
つまりこのオリフィスコントロールバルブは、その設定圧よりも締結側作動油圧PCが高くなった図13(a)の瞬時t3に解放側作動油圧POを急速に低下させるよう機能する。
【0009】
上記オリフィスコントロールバルブの設定圧は一定であるため、例えばスロットル開度が大きい場合の変速動作の際に、締結側および解放側の各摩擦要素の締結容量が不足してエンジンの空吹け、すなわちエンジン回転数の急激な上昇が発生することを防ぐためには、設定圧を高めに設定する必要がある。
【0010】
ところで上記の要求に符合するようオリフィスコントロールバルブの設定圧を高めに取った場合、スロットル開度が中〜低開度である場合の変速動作時に、解放側摩擦要素の締結容量が過多となり、その結果、図13(b)に示すように、変速機出力トルクTOに、トルクフェーズにおける深く、かつ時間の長いトルクの低下(引き)が生じる。
このためスロットル開度が中〜低開度である場合の変速時に滑らかな変速動作が困難になり、また変速動作中に大きなショックを発生させるといった、車両の運転性や乗り心地に好ましくない影響を与える懸念がある。
【0011】
また上記の制御によれば、スロットル開度が中〜低開度である場合の変速時に締結側摩擦要素がスリップ状態である時間が長くなることにもなり、各摩擦要素における発熱量を増加させ、それによって摩擦要素の耐久性にも影響を及ぼす。
【0012】
そこで本願出願人は先に特許文献2により図14に示すごとく、掛け替え変速に際し解放側摩擦要素の作動油圧Poを、ロスストローク終了検知時t2から所定時間Δthの間はスロットル開度に応じた一定値Po1とし、その後所定の勾配β2で低下させるような構成の変速制御装置を提案済である。
ここで、変速指令瞬時t1から解放側摩擦要素の作動油圧Poをスロットル開度に応じた一定値Po1に向かわせるときの油圧勾配β1は、実際の油圧のアンダーシュートや個体差状況の差により実際の油圧が狙いの油圧より低くなってしまう、等の原因により解放側摩擦要素の作動油圧Poが一定値Po1を越えて低下することのないように定める。
【0013】
かかる構成によれば、一定値Po1がスロットル開度に応じて変化させるから、高スロットル開度での変速時におけるエンジンの空吹けを防ぎつつ、中〜低スロットル開度での変速時においては、トルクの引きが小さい良好な変速動作を実現することができる。
【0014】
【特許文献1】
特開平4−224549号公報
【特許文献2】
特開2002−89694号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、かかる特許文献1によっても以下の問題を生ずる懸念があることを確かめた。
つまり、締結側摩擦要素のロスストローク終了を油圧スイッチのONにより検知するが、油圧スイッチ自身のバラツキや、締結側作動油圧のバラツキや、締結側摩擦要素のロスストロークの個体差および経時変化や、油温変化などにより油圧スイッチのONタイミングがバラツキを生じてしまう。
このため図15に示すように、掛け替え変速指令瞬時t1以後一定値Po1に向けて低下している解放側作動油圧Poが未だ一定値Po1に低下していないのに油圧スイッチが瞬時t2においてONすることがある。
これを回避する一般的な方法として、
a)ピストンストロークまでに時間をかける。
b)勾配β1を大きくする。
の方法で、瞬時t2のタイミングで、解放側作動油圧Poが確実にPo1に達するようにすることが考えられる。
しかし、a)では、実変速開示までの時間が長くなり、b)では解放側油圧PoがPo1に到達した瞬間の挙動がアンダーシュートするなど安定しないなどの問題がある。
【0016】
この場合も上記の提案技術によれば、解放側作動油圧Poは油圧スイッチのON瞬時t2から所定時間Δth中に一定値Po1を指令され、結果として解放側作動油圧指令値Poが油圧スイッチのON瞬時t2において段差を持ったステップ状のものとなる。
これを図11に当てはめて示すと、解放側作動油圧指令値PoはX1で示すごときステップ状のものであり、実際の解放側作動油圧は同図にY1で示すごとくアンダーシュートして、一時的に、ハッチングを付して示すごとく空吹け防止用の必要油圧Zよりも低下する。
また、アンダーシュート状態から油圧が上昇に反転し、まだ油圧Po1に安定する前にβ2で斜め抜き制御が開始された場合、油圧Po1で安定している状態から開始した場合に比べて、油圧の応答が遅れる。
これがためエンジンの空吹けを生じたり、その後の油圧の応答遅れにより変速ショックの悪化を生ずる。
【0017】
なお上記の段差をなくすためには図16に実線で示すごとく、油圧スイッチのONで締結側摩擦要素のロスストロークを検知した瞬時t2以後も解放側作動油圧指令値Poを勾配β1で低下させ続け、瞬時t2から所定時間Δthが経過した時以後に解放側作動油圧指令値Poを勾配β2で低下させることが考えられる。
しかしこの場合、図15を移記した図16の破線特性との比較から明らかなように、勾配β2で低下させている最中において解放側作動油圧指令値Poが破線で示す狙いに一致せず、ショック対策上重要なトルクフェーズ後半からイナーシャフェーズ開始直後にかけて狙い通りの解放側摩擦要素の締結容量制御を実現することができなくなり、ショック上不利になる。
【0018】
更に、解放側作動油圧指令値Poを勾配β2で低下させる時の初期圧はスロットル開度やタービントルクが変動したときに変動させる必要があるが、油圧スイッチのONタイミングと所定時間Δthにより初期圧が変動する図16にようなケースでは、エンジンスロットル開度や変速機入力トルクが変動した場合において狙い通りに初期圧を変化させることは不可能であり、いずれにしても図16に示す対策は実際的でない。
【0019】
従って本発明は、この対策に代わる別の対策により、特許文献2と同じ目的を達成しつつ、つまり、掛け替え変速中の解放側の容量不備によるエンジンの空吹けの防止と、掛け替え変速中の締結側の容量上昇に対する解放側の容量の抜け遅れにより生ずるトルクのフェーズでトルクの引き時間の間のびに関する問題解決とを両立させつつ、
締結側摩擦要素のロスストローク終了の検知タイミングがばらついた場合でも、前記した解放側作動油圧のアンダーシュートに関する問題を生ずることのないようにした変速制御装置を提案することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
この目的のため本発明による自動変速機の変速制御装置は、請求項1に記載のごとく、
複数の摩擦要素のうち第一の摩擦要素を作動油圧の上昇により締結させると共に第二の摩擦要素を作動油圧の低下により解放させ、これら第一および第二の摩擦要素の掛け替えにより行う掛け替え変速を有し、該摩擦要素の掛け替えに際しては前記第一の摩擦要素のロスストローク終了が検知された後に、前記第二の摩擦要素に係わる作動油圧を設定勾配で低下させると共に前記第一の摩擦要素に係わる作動油圧を所定勾配で上昇させるようにした自動変速機において、
前記掛け替え変速の指令時に前記第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、前記第一の摩擦要素が解放状態であったとしても第二の摩擦要素が単独でエンジンの空吹けを阻止し得る最小限の変速機入力トルクごとの初期圧まで低下させ、
前記第一の摩擦要素のロスストローク終了が検知された時から変速機入力トルクごとの所定時間が経過した瞬時を掛け替え制御開始瞬時とし、前記掛け替え変速の指令時から該掛け替え制御開始瞬時までの掛け替え制御前においては前記第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、前記初期圧から変速機入力トルクごとの第一勾配で、しかし変速機入力トルクごとの設定圧未満にならないよう低下させ、
前記掛け替え制御開始瞬時以後の掛け替え制御中においては前記第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、前記掛け替え制御前における第二の摩擦要素に係わる作動油圧の演算を継続した時に得られる掛け替え制御前解放圧推定値より、前記掛け替え制御開始瞬時からの経過時間と変速機入力トルクごとの第二勾配に対応する係数との乗算値を差し引いて求めた圧力とするよう構成したことを特徴とするものである。
【0021】
なお上記した変速機入力トルクは請求項2〜4に記載のごとく、エンジン出力トルクおよびトルクコンバータ速度比から求めたトルクコンバータ出力トルク推定値、またはエンジンスロットル開度で代用するのがよく、
また前記初期圧は請求項2に記載のごとく、変速機入力トルクが大きいほど高くするのがよく、
更に前記設定圧は請求項3に記載のごとく、変速機入力トルクが大きいほど高くするのがよく、
また前記所定時間は請求項4に記載のごとく、変速機入力トルクが大きいほど長くするのがよい。
【0022】
【発明の効果】
締結側摩擦要素である第一の摩擦要素と解放側摩擦要素である第二の摩擦要素の掛け替えにより行う掛け替え変速に際し、
掛け替え変速指令時は第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、第一の摩擦要素が解放状態であったとしても第二の摩擦要素が単独でエンジンの空吹けを阻止し得る最小限の変速機入力トルクごとの初期圧まで低下させ、
第一の摩擦要素のロスストローク終了が検知された時から変速機入力トルクごとの所定時間が経過した瞬時を解放側の掛け替え制御開始瞬時とし、上記掛け替え変速の指令時から該解放側掛け替え制御開始瞬時までの解放側の掛け替え制御前においては第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、上記初期圧から変速機入力トルクごとの第一勾配で、しかし変速機入力トルクごとの設定圧未満にならないよう低下させ、
掛け替え制御開始瞬時以後の掛け替え制御中においては第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、上記掛け替え制御前における第二の摩擦要素に係わる作動油圧の演算を継続した時に得られる掛け替え制御前解放圧推定値より、掛け替え制御開始瞬時からの経過時間と変速機入力トルクごとの第二勾配に対応する係数との乗算値を差し引いて求めた圧力に定める。
【0023】
ところで、上記の掛け替え制御前において第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、上記初期圧から変速機入力トルクごとの第一勾配で、しかし変速機入力トルクごとの設定圧未満にならないよう低下させ、
その後の掛け替え制御中においては第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、上記掛け替え制御前における第二の摩擦要素に係わる作動油圧の演算を継続した時に得られる掛け替え制御前解放圧推定値より、掛け替え制御開始瞬時からの経過時間と変速機入力トルクごとの第二勾配に対応する係数との乗算値を差し引いて求めた圧力に定めることから、
第一の摩擦要素のロスストローク終了検知タイミングがバラツキを持たなければ当該検知時に第二の摩擦要素に係わる作動油圧が既に上記の設定圧まで低下していて、前記した提案技術と同じく、第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、第一の摩擦要素のロスストローク終了検知時から所定時間が経過するまでの間は変速機入力トルクごとの上記設定圧に保ち、その後はこの設定値から第二勾配で低下させ得ることとなり、
掛け替え変速中の解放側の容量不備によるエンジンの空吹けを防ぎつつ、掛け替え変速中の締結側の容量上昇に対する解放側の容量の抜け遅れにより生ずるトルクのフェーズでトルクの引き時間の間のびといった問題をなくして良好な変速動作を実現することができる。
【0024】
一方で第一の摩擦要素のロスストローク終了の検知タイミングがばらついて第二の摩擦要素に係わる作動油圧が上記の設定圧まで低下する前に当該ロスストローク終了の検知がなされた場合でも、
上記の掛け替え制御前においては第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、前記初期圧から変速機入力トルクごとの第一勾配で、しかし変速機入力トルクごとの設定圧未満にならないよう低下させることから、
上記ロスストローク終了検知時に第二の摩擦要素に係わる作動油圧が上記の設定圧になるようステップ状に指令されることがなく、従ってこの作動油圧がアンダーシュートにより空吹け防止用の必要油圧未満に低下して、エンジンの空吹けを生じさせたり、その後の油圧の応答遅れにより変速ショックの悪化を生じさせたりする問題を解消することができる。
【0025】
しかも、その後の掛け替え制御中においては第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、掛け替え制御前における第二の摩擦要素に係わる作動油圧の演算を継続した時に得られる掛け替え制御前解放圧推定値より、掛け替え制御開始瞬時からの経過時間と変速機入力トルクごとの第二勾配に対応する係数との乗算値を差し引いて求めた圧力に定めるため、
掛け替え制御前解放圧推定値が上記設定圧に低下するまでの間は第二の摩擦要素に係わる作動油圧を第一勾配および第二勾配の和値で表される急勾配で低下させて従来と同じ目標値に速やかに接近させ、その後は第二の摩擦要素に係わる作動油圧を第二勾配で低下させて従来と同じ目標値にし得ることとなり、
ショック対策上重要なトルクシャフェーズ後半からイナーシャーフェーズ開始直後にかけての第二の摩擦要素に係わる作動油圧、つまりその締結容量制御を狙い通りのものにすることができ、ショック上の不利益を生ずることがない。
【0026】
更にこの作用効果を達成するのに掛け替え制御中の制御の切り替えが必要でなく、つまり、掛け替え制御中において第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、掛け替え制御前解放圧推定値より前記の乗算値を差し引いて求めた圧力に定める制御を継続するだけで上記の作用効果が奏し得られ、制御が煩雑になることもない。
【0027】
なお上記した変速機入力トルクは、エンジン出力トルクおよびトルクコンバータ速度比から求めたトルクコンバータ出力トルク推定値、またはエンジンスロットル開度で代用するのが実際的でコスト的にも有利である。
また前記の初期圧は、変速機入力トルクが大きいほど高くするのが、
更に前記の設定圧は、変速機入力トルクが大きいほど高くするのが、
また前記の所定時間は、変速機入力トルクが大きいほど長くするのが、実情によく符合して前記の作用効果が顕著になる点で好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る自動変速機の変速制御装置を示し、1はエンジン、2は自動変速機である。
エンジン1は、運転者が操作するアクセルペダルに連動してその踏み込みにつれ全閉から全開に向け開度増大するスロットルバルブにより出力を加減され、エンジン1の出力回転はトルクコンバータ3を経て自動変速機2の入力軸4に入力されるものとする。
【0029】
自動変速機2は、同軸突き合わせ関係に配置した入出力軸4,5上にエンジン1の側から順次フロントプラネタリギヤ組6およびリヤプラネタリギヤ組7を載置して具え、これらを自動変速機2における遊星歯車変速機構の主たる構成要素とする。
エンジン1に近いフロントプラネタリギヤ組6は、フロントサンギヤSF、フロントリングギヤRF、これらに噛合するフロントピニオンPF、および該フロントピニオンを回転自在に支持するフロントキャリアCFよりなる単純遊星歯車組とし、
エンジン1から遠いリヤプラネタリギヤ組7も、リヤサンギヤSR、リヤリングギヤRR、これらに噛合するリヤピニオンPR、および該リヤピニオンを回転自在に支持するリヤキャリアCRよりなる単純遊星歯車組とする。
【0030】
遊星歯車変速機構の伝動経路(変速段)を決定する摩擦要素としてはロークラッチL/C、2速・4速ブレーキ2−4/B、ハイクラッチH/C、ローリバースブレーキLR/B、ローワンウエイクラッチL/OWC、およびリバースクラッチR/Cを、以下のごとく両プラネタリギヤ組6,7の構成要素に相関させて設ける。
つまり、フロントサンギヤSFはリバースクラッチR/Cにより入力軸4に適宜結合可能にすると共に、2速・4速ブレーキ2−4/Bにより適宜固定可能とする。
【0031】
フロントキャリアCFはハイクラッチH/Cにより入力軸4に適宜結合可能にする。フロントキャリアCFは更に、ローワンウエイクラッチL/OWCによりエンジン回転と逆方向の回転を阻止すると共に、ローリバースブレーキLR/Bにより適宜固定可能とする。
そしてフロントキャリアCFと、リヤリングギヤRRとの間を、ロークラッチL/Cにより適宜結合可能とする。フロントリングギヤRFおよびリヤキャリアCR間を相互に結合し、これらフロントリングギヤRFおよびリヤキャリアCRを出力軸6に結合し、リヤサンギヤSRを入力軸4に結合する。
【0032】
上記遊星歯車変速機構の動力伝達列は、摩擦要素L/C,2−4/B,H/C,LR/B,R/Cの図2に実線の〇印で示す選択的油圧作動(締結)と、ローワンウェイクラッチL/OWCの同図に実線の〇印で示す自己係合とにより、前進第1速(1st)、前進第2速(2nd)、前進第3速(3rd)、前進第4速(4th)の前進変速段と、後退変速段(Rev)とを得ることができる。
なお図2に点線の〇印で示す油圧作動(締結)は、エンジンブレーキが必要な時に作動させるべき摩擦要素である。
【0033】
図2に示す変速制御用摩擦要素L/C,2−4/B,H/C,LR/B,R/Cの締結論理は図1に示すコントロールバルブボディー8により実現し、このコントロールバルブボディー8には図示せざるマニュアルバルブの他に、ライン圧ソレノイド9、ロークラッチソレノイド10、2速・4速ブレーキソレノイド11、ハイクラッチソレノイド12、ローリバースブレーキソレノイド13などを挿置する。
【0034】
ライン圧ソレノイド9はそのON,OFFにより、変速制御の元圧であるライン圧を高低切り替えし、図示しないマニュアルバルブは、希望する走行形態に応じて運転者により前進走行(D)レンジ位置、後退走行(R)レンジ位置、または駐停車(P,N)レンジ位置に操作されるものとする。
Dレンジでマニュアルバルブは、上記のライン圧を元圧としてロークラッチソレノイド10、2速・4速ブレーキソレノイド11、ハイクラッチソレノイド12、ローリバースブレーキソレノイド13のデューティ制御により対応するロークラッチL/C、2速・4速ブレーキ2−4/B、ハイクラッチH/C、ローリバースブレーキLR/Bの作動油圧を個々に制御し得るようライン圧を所定の回路に供給し、当該各ソレノイドのデューティ制御により図2に示した第1速〜第4速の締結論理を実現するものとする。
但しRレンジでは、マニュアルバルブはライン圧を上記各ソレノイドのデューティ制御に依存することなく直接、リバースクラッチR/CおよびローリバースブレーキLR/Bに供給し、これらを締結作動させることにより図2に示した後退の締結論理を実現するものとする。
なおP,Nレンジでマニュアルバルブはライン圧をどの回路にも供給せず、全ての摩擦要素を解放状態にすることにより自動変速機を中立状態にする。
【0035】
ライン圧ソレノイド9のON,OFF制御、およびロークラッチソレノイド10、2速・4速ブレーキソレノイド11、ハイクラッチソレノイド12、ローリバースブレーキソレノイド13のデューティ制御はそれぞれ変速機コントローラ14により実行し、
そのために変速機コントローラ14には、エンジン1のスロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ15からの信号と、
エンジン回転数Ne(トルクコンバータ入力回転数)を検出するエンジン回転センサ16からの信号と、
トルクコンバータ3の出力回転数(変速機入力回転数)であるタービン回転数Ntを検出するタービン回転センサ17からの信号と、
自動変速機2の出力軸5の回転数NOを検出する出力回転センサ18からの信号と、
選択レンジを検出するインヒビタスイッチ19からの信号と、
掛け替え変速時に締結すべき締結側摩擦要素、つまり、図2から明らかなように2→3変速時はハイクラッチH/C、3→2変速時は2速・4速ブレーキ2−4/B、3→4変速時は2速・4速ブレーキ2−4/B、4→3変速時はロークラッチL/C内に配置された油圧スイッチ群20からの信号とをそれぞれ入力する。
ここで油圧スイッチ群20は、対応する摩擦要素の作動油圧が摩擦要素のロスストロークを終了して締結容量を発生させ始める圧力になった時にONするものとする。
【0036】
先ず本発明が関与するDレンジでの自動変速作用を説明するに、変速機コントローラ14は図示しない制御プログラムを実行して、予定の変速マップをもとにスロットル開度TVOおよび変速機出力回転数NO(車速)から、現在の運転状態において要求される好適変速段を検索する。
次いで変速機コントローラ14は、現在の選択変速段が好適変速段と一致しているか否かを判定し、不一致なら変速指令を発して好適変速段への変速が実行されるよう、つまり図2の締結論理表にもとづき当該変速のための摩擦要素の締結、解放切換えが行われるようソレノイド10〜13のデューティ制御により、当該摩擦要素の作動油圧を変更する。
【0037】
ここで第2速と第3速との間の変速や第3速と第4速との間の変速におけるように、或る摩擦要素を作動油圧の低下により解放させつつ、他の摩擦要素を作動油圧の上昇により締結させて行う掛け替え変速、特にアップシフト用の掛け替え変速を本実施の形態においては変速機コントローラの演算サイクル(例えば10m/sec)毎に各摩擦要素の作動油圧を制御するソレノイド10、11、12、13の一つ一つに対して以下のような制御から決められる油圧を各摩擦要素に供給するための信号を出力することとなる。
【0038】
かかる掛け替え変速を実行するために変速機コントローラ14が実行する制御プログラムは図3〜図5に示すごときもので、図3はメインルーチンを示し、図4および図5はそれぞれ締結側作動油圧指令値PCおよび解放側作動油圧指令値POの制御プログラムに係わるサブルーチンを示す。
図3のメインルーチンにおいては、先ずステップS31で本実施の形態が変速制御対象とするアップシフト中か否かをチェックッし、アップシフト中でなければ制御をそのまま終了するが、アップシフト中ならステップS32またはステップS33で、対応する摩擦要素を締結→解放切り替えすべきか、逆に解放→締結切り換えすべきか、或いは状態切り替えすべきでないかをチェックする。
【0039】
摩擦要素を状態切り替えすべきでないと判定する時は当然にステップS34で現在の状態を保持するよう摩擦要素の作動油圧を不変に保つ。
しかし、ステップS33で摩擦要素を解放→締結切り換えすべきと判定する時はステップS35において、締結側作動油圧指令値Pcを図4に示すプログラムの実行により演算して出力し、ステップS32で摩擦要素を締結→解放切り替えすべきと判定する時はステップS36において、解放側作動油圧Poを図5に示すプログラムの実行により演算し、その結果を対象となる摩擦要素の作動油圧とする。
【0040】
ここで図4に示す締結側作動油圧指令値Pcの演算処理を説明するに、先ずステップS41において摩擦要素がロスストロークを終了して締結容量を持ち始めた後か否かにより締結側の掛け替え制御が開始している否かを判定する。
当初は作動油圧が未だ締結側の掛け替え制御を開始していないから制御はステップS42に進み、ここで摩擦要素の油圧スイッチ20(図1参照)がONしたか否かのチェックにより、摩擦要素がロスストロークを終了して締結容量を持ち始めたか否か(締結側の掛け替え制御が開始可能か否か)を判定する。
【0041】
ステップS42で摩擦要素の油圧スイッチ20(図1参照)が未だOFFと判定するときは、ステップS43で締結側作動油圧指令値Pcを図10に示すように初期圧Pcinitより第一勾配α1で上昇させる。
よって締結側作動油圧指令値Pcは、図10に示すように変速指令瞬時t1からの経過時間を計測するタイマ値をTM1を用い、Pc=Pcinit+α1×TM1により求めることができる。
ここで初期圧Pcinitと勾配α1は、ロストロークを終了するまでの時間がなるべく短くなり、かつロストロークが終了した後の締結側作動油圧が次の掛け替え変速制御の開始圧として適切な油圧となるように決める。
【0042】
ステップS42で摩擦要素の油圧スイッチ20(図1参照)がONしたと判定する時(図10の瞬時t2)、ステップS44において摩擦要素がロスストロークを終了して締結容量を持ち始め、締結側の掛け替え制御が開始したとの判断を行うと共に、この時のタイマ値TM1を変速指令瞬時t1から掛け替え開始瞬時t2までの掛け替え開始時間としてメモリする。
次いでステップS45において締結側作動油圧指令値Pcを、図10に示すように掛け替え開始時油圧より第二勾配α2で上昇させる。
この間の締結側作動油圧指令値Pcは、図10に示すように掛け替え開始瞬時t2からの経過時間を計測するタイマ値をTM2を用い、Pc=掛け替え開始時油圧+α2×TM2により求めることができる。
なお掛け替え開始時油圧は、前記初期圧Pcinitに、ステップS44でメモリした上記の掛け替え開始時間と第一勾配α1との乗算値を加算して求め得る。
【0043】
ステップS42で油圧スイッチがONしたと判定する時に実行されるステップS44は、ここで締結側の掛け替え制御が開始したとの判断により次の演算時にはステップS41からステップS44をスキップしてステップS45を実行するようになるため、ステップS42で油圧スイッチがONしたと判定する時に1回実行されるのみである。
ステップS41において摩擦要素がロスストロークを終了して油圧スイッチがONとなり、ステップS44で締結側の掛け替え制御開始判断しているか否かにより、ステップS45の締結側の掛け替え制御を行うか、ステップS43のピストンストローク制御を行うかを判断する。
【0044】
以上のようにしてステップS43またはステップS45で締結側作動油圧指令値Pcを決定した後は、ステップS46で掛け替え制御が終了したか否かをチェックし、掛け替え制御が終了した時ステップS47において締結側作動油圧指令値Pcを制御元圧であるライン圧PLにすると共に、タイマ値TM1およびタイマ値TM2、並びに各種の制御上のデータを次回の制御に備えてリセットしておく。
【0045】
次いで図5に示す解放側作動油圧指令値Poの演算処理を説明するに、先ずステップS51においてトルクコンバータ出力トルク(変速機入力トルク)であるタービントルクTtを演算する。
この演算に当たっては、タービン回転数Ntとエンジン回転数Neとの比(Nt/Ne)で定義されるトルクコンバータの速度比からトルクコンバータの性能線図を基にトルクコンバータのトルク比を求め、このトルク比とエンジントルク推定値との乗算によりタービントルクTtを求める。
なお変速機入力トルクとして当該タービントルクTtの代わりにスロットル開度TVOを用いてもよいこと勿論である。
【0046】
次のステップS52では、図6〜図9に例示するマップを基に上記のタービントルクTt(変速機入力トルク)から初期圧Poinit、設定圧Po1、第一勾配β1、および第二勾配β2を読み込むと共に、同じくタービントルクTt(変速機入力トルク)ごとの所定時間Δthを読み込む。
ここで初期圧Poinit、設定圧Po1、第一勾配β1、第二勾配β2、および所定時間Δthは、タービントルクTt(変速機入力トルク)が大きいほど大きな値に定め、
設定圧Po1は特に、締結側摩擦要素が解放状態であったとしても解放側摩擦要素が単独でエンジンの空吹けを阻止し得る最小限のタービントルクTt(変速機入力トルク)ごとの圧力とし、初期圧Poinitは、変速制御開始前の油圧から設定圧Po1に移行するまでに、動的な実油圧の変化(油圧のアンダーシュート等)を考慮しても、実油圧がPo1に到達するまでに決してPo1を下回らないことを補償し得る油圧とする。
【0047】
次いでステップS53において、締結側摩擦要素の油圧スイッチ20(図1参照)がONとなり(図10の瞬時t2)、且つ、それから上記の所定時間Δthが経過した図10の瞬時(掛け替え制御開始瞬時)t3に至ったか否かをチェックする。
ステップS53で図10の掛け替え制御開始瞬時t3に至る前と判定する間は(掛け替え変速指令時t1から掛け替え制御開始瞬時t3までの掛け替え制御前においては)、ステップS54において解放側作動油圧指令値Poを図10に示すように上記の初期圧Poinitより第一勾配β1で、しかし上記の設定圧Po1未満にならない態様で低下させる。
よってこの間における解放側作動油圧指令値Poは、Po=Poinit−β1×TM1(但し、Po≧Po1)により求めることができる。
【0048】
ステップS53で図10の掛け替え制御開始瞬時t3に至ったと判定した後は(掛け替え制御開始瞬時t3以後の掛け替え制御中においては)、ステップS55において解放側作動油圧指令値Poを、上記掛け替え制御前における解放側作動油圧指令値Poの演算Po=Poinit−β1×TM1(但し、Po≧Po1)を継続した時に得られる掛け替え制御前解放圧推定値[(Poinit−β1×TM1)(但し、掛け替え制御前解放圧推定値≧Po1)]より、掛け替え制御開始瞬時t3からの経過時間(TM2−Δth)と前記第二勾配β2に対応する係数(同符号β2)との乗算値β2×(TM2−Δth)を差し引いて求めた圧力とする。
【0049】
以上のようにしてステップS54またはステップS55で解放側作動油圧指令値Poを決定した後は、ステップS56で変速制御が終了したか否かをチェックし、変速制御が終了した時ステップS57において解放側作動油圧指令値Poを0にすると共に、タイマ値TM1およびタイマ値TM2、並びに各種の制御上のデータを次回の制御に備えてリセットしておく。
【0050】
本実施の形態によれば、締結側摩擦要素と解放側摩擦要素の掛け替えにより行う掛け替え変速に際し、解放側作動油圧指令値Poを図10につき上記したごとく、掛け替え変速指令時t1に解放側作動油圧指令値Poを前記の初期圧Poinitまで低下させ、
締結側摩擦要素のロスストローク終了を油圧スイッチ20(図1参照)のONにより検知した時t2から前記の所定時間Δthが経過した瞬時t3を掛け替え制御開始瞬時とし、掛け替え変速指令時t1から掛け替え制御開始瞬時t3までの掛け替え制御前においては解放側作動油圧指令値Poを、初期圧Poinitから前記の第一勾配β1で、しかし設定圧Po1未満にならないよう低下させ、
掛け替え制御開始瞬時t3以後の掛け替え制御中においては解放側作動油圧指令値Poを、上記掛け替え制御前における解放側作動油圧指令値Poの演算Po=Poinit−β1×TM1(但し、Po≧Po1)を継続した時に得られる掛け替え制御前解放圧推定値[(Poinit−β1×TM1)(但し、掛け替え制御前解放圧推定値≧Po1)]より、掛け替え制御開始瞬時t3からの経過時間(TM2−Δth)と前記第二勾配β2に対応する係数(同符号β2)との乗算値β2×(TM2−Δth)を差し引いて求めた圧力に定めることとなる。
【0051】
ところで、上記の掛け替え制御前において解放側作動油圧指令値Poを、上記初期圧Poinitから第一勾配β1で、しかし設定圧Po1未満にならないよう低下させ、
その後の掛け替え制御中においては解放側作動油圧指令値Poを、上記掛け替え制御前における解放側作動油圧指令値Poの演算を継続した時に得られる掛け替え制御前解放圧推定値より、掛け替え制御開始瞬時t3からの経過時間と第二勾配β2に対応する係数との乗算値を差し引いて求めた圧力に定めるから、
油圧スイッチによる締結側摩擦要素のロスストローク終了検知タイミングがバラツキを持たなければ図10に示すごとく当該検知時t2に解放側作動油圧指令値Poが既に上記の設定圧Po1まで低下していて、前記した提案技術と同じく解放側作動油圧指令値Poを、締結側摩擦要素のロスストローク終了検知時t2から所定時間Δthが経過する瞬時t3までの間は設定圧Po1に保ち、その後この設定値から第二勾配β2で低下させ得ることとなり、
掛け替え変速中の解放側の容量設定の不備によるエンジンの空吹けを防ぎつつ、掛け替え変速中の締結側の容量上昇に対する解放側の容量の抜け遅れにより生ずるトルクのフェーズでトルクの引き時間の間のびといった問題をなくして良好な変速動作を実現することができる。
【0052】
一方で油圧スイッチによる締結側摩擦要素のロスストローク終了の検知タイミングがばらついて、図11に実線で示すごとく解放側作動油圧指令値Poが設定圧Po1に低下する前の瞬時t2に油圧スイッチのONにより当該ロスストローク終了の検知がなされた場合でも、
瞬時t3以前の掛け替え制御前においては解放側作動油圧指令値Poを、初期圧Poinitから第一勾配β1で、しかし設定圧Po1未満にならないよう低下させることから、
上記ロスストローク終了検知時に解放側作動油圧指令値Poが破線X1で示すように設定圧Po1になるようステップ状に指令されることがなく、従って解放側作動油圧がアンダーシュートによりY1で示すように空吹け防止用の必要油圧Z未満に低下して、エンジンの空吹けを生じさせたり、その後の油圧の応答遅れにより変速ショックの悪化を生じさせたりする問題を、変速機出力トルク波形から明らかなように解消することができる。
【0053】
しかも、瞬時t3以後の掛け替え制御中においては解放側作動油圧指令値Poを、瞬時t3以前の掛け替え制御前における解放側作動油圧指令値Poの演算を継続した時に得られる破線で示した掛け替え制御前解放圧推定値[(Poinit−β1×TM1)(但し、掛け替え制御前解放圧推定値≧Po1)]より、掛け替え制御開始瞬時t3からの経過時間(TM2−Δth)と第二勾配β2に対応する係数(同符号β2)との乗算値β2×(TM2−Δth)を差し引いて求めた圧力に定めるため、
掛け替え制御前解放圧推定値[(Poinit−β1×TM1)(但し、掛け替え制御前解放圧推定値≧Po1)]が設定圧Po1に低下する瞬時t4までの間は解放側作動油圧指令値Poを第一勾配β1および第二勾配β2の和値で表される急勾配β3で低下させて従来と同じ目標値X1に速やかに接近させ、その後は解放側作動油圧指令値Poを第二勾配β2で低下させて従来と同じ目標値X1にし得ることとなり、
ショック対策上重要なトルクフェーズ後半からイナーシャーフェーズ開始直後において解放側作動油圧指令値Po、とそれによって決まる締結容量制御を狙い通りのものにすることができ、ショック上の不利益を生ずることがない。
【0054】
更にこの作用効果を達成するのに掛け替え制御中の瞬時t4で制御の切り替えが必要でなく、つまり、掛け替え制御中において解放側作動油圧指令値Poを、掛け替え制御前解放圧推定値より前記の乗算値を差し引いて求めた圧力に定める制御を継続するだけで上記の作用効果が奏し得られ、制御が煩雑になることもない。
【0055】
なお図6および図7に示すごとく初期圧Poinitを、タービントルクTt(変速機入力トルク)が大きいほど高くし、設定圧Po1を、タービントルクTt(変速機入力トルク)が大きいほど高くし、また前記したごとく所定時間Δthを、タービントルクTt(変速機入力トルク)が大きいほど長くしたから、実情によく符合して前記の作用効果を顕著なものにすることができる。
【0056】
図12は、上記の変速制御中の瞬時t5にタービントルクTtがアクセルペダルの踏み込み等で増大した場合における締結側作動油圧指令値Pcおよび解放側作動油圧指令値Poの時系列変化を実線により示し、瞬時t5に初期圧Poinit、設定圧Po1、勾配α1,α2,β1,β2をトルク対応のものに切り替えるだけで、瞬時t5までの低トルク中は締結側作動油圧指令値Pcおよび解放側作動油圧指令値Poが当該低トルクに対応した破線で示す特性を辿るような時系列変化をするが、瞬時t5以後の大トルク中は締結側作動油圧指令値Pcおよび解放側作動油圧指令値Poが当該大トルクに対応した二点鎖線で示す特性を辿るような時系列変化に移行させて、常時タービントルクに応じた狙い通りの変速制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になる変速制御装置を具えた自動変速機の伝動列、およびその変速制御システムを示す概略系統図である。
【図2】同自動変速機の選択変速段と、摩擦要素の締結論理との関係を示す図である。
【図3】同実施の形態における変速制御装置が自動変速機をアップシフトさせる場合の各摩擦要素の作動油圧を決定する制御プログラムを示すメインルーチンである。
【図4】同メインルーチンにおける締結側作動油圧指令値の算出処理に関した制御プログラムを示すサブルーチンである。
【図5】同メインルーチンにおける解放側作動油圧指令値の算出処理に関した制御プログラムを示すサブルーチンである。
【図6】解放側作動油圧指令値の算出時に用いる初期圧の変化特性を示す線図である。
【図7】解放側作動油圧指令値の算出時に用いる設定圧の変化特性を示す線図である。
【図8】解放側作動油圧指令値の算出時に用いる第一勾配の変化特性を示す線図である。
【図9】解放側作動油圧指令値の算出時に用いる第二勾配の変化特性を示す線図である。
【図10】同実施の形態における変速制御装置が掛け替えアップシフト変速を行った時の締結側作動油圧指令値および解放側作動油圧指令値の時系列変化を、締結側摩擦要素のロスストローク終了検知がバラツキを持たなかった場合につき示す動作タイムチャートである。
【図11】同実施の形態における変速制御装置が掛け替えアップシフト変速を行った時の締結側作動油圧指令値および解放側作動油圧指令値の時系列変化を、締結側摩擦要素のロスストローク終了検知がバラツキを持った場合につき示す動作タイムチャートである。
【図12】同実施の形態における変速制御装置が掛け替えアップシフト変速を行っている最中にアクセルペダルの踏み込み等でトルクが増大した場合における締結側作動油圧指令値および解放側作動油圧指令値の時系列変化を示す動作タイムチャートである。
【図13】従来の変速制御装置が掛け替え変速を行う場合の締結側作動油圧指令値および解放側作動油圧指令値の時系列変化を示す動作タイムチャートであり、
(a)は、締結側作動油圧および解放側作動油圧の時系列変化に係わるタイムチャート、
(b)は、変速機出力トルクの時系列変化に係わるタイムチャートである。
【図14】図13に示す従来の変速制御装置が抱える問題解決を実現するために本願出願人が先に提案した変速制御装置が掛け替え変速を行う場合の解放側作動油圧指令値の時系列変化を示すタイムチャートである。
【図15】図14に示す提案技術において生ずる問題点を説明するのに用いた解放側作動油圧指令値の時系列変化を示すタイムチャートである。
【図16】図15において生ずる問題を解消するための改良提案を説明するのに用いた解放側作動油圧指令値の時系列変化を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
2 自動変速機
3 トルクコンバータ
4 入力軸
5 出力軸
6 フロントプラネタリギヤ組
7 リヤプラネタリギヤ組
8 コントロールバルブボディー
9 ライン圧ソレノイド
10 ロークラッチソレノイド
11 2速・4速ブレーキソレノイド
12 ハイクラッチソレノイド
13 ローリバースブレーキソレノイド
14 変速機コントローラ
15 スロットル開度センサ
16 エンジン回転センサ
17 タービン回転センサ
18 出力回転センサ
19 インヒビタスイッチ
20 油圧スイッチ群
L/C ロークラッチ
2−4/B 2速・4速ブレーキ
H/C ハイクラッチ
LR/B ローリバースブレーキ
R/C リバースクラッチ
L/OWC ローワンウエイクラッチ
Claims (4)
- 複数の摩擦要素のうち第一の摩擦要素を作動油圧の上昇により締結させると共に第二の摩擦要素を作動油圧の低下により解放させ、これら第一および第二の摩擦要素の掛け替えにより行う掛け替え変速を有し、該摩擦要素の掛け替えに際しては前記第一の摩擦要素のロスストローク終了が検知された後に、前記第二の摩擦要素に係わる作動油圧を設定勾配で低下させると共に前記第一の摩擦要素に係わる作動油圧を所定勾配で上昇させるようにした自動変速機において、
前記掛け替え変速の指令時に前記第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、前記第一の摩擦要素が解放状態であったとしても第二の摩擦要素が単独でエンジンの空吹けを阻止し得る最小限の変速機入力トルクごとの初期圧まで低下させ、
前記第一の摩擦要素のロスストローク終了が検知された時から変速機入力トルクごとの所定時間が経過した瞬時を掛け替え制御開始瞬時とし、前記掛け替え変速の指令時から該掛け替え制御開始瞬時までの掛け替え制御前においては前記第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、前記初期圧から変速機入力トルクごとの第一勾配で、しかし変速機入力トルクごとの設定圧未満にならないよう低下させ、
前記掛け替え制御開始瞬時以後の掛け替え制御中においては前記第二の摩擦要素に係わる作動油圧を、前記掛け替え制御前における第二の摩擦要素に係わる作動油圧の演算を継続した時に得られる掛け替え制御前解放圧推定値より、前記掛け替え制御開始瞬時からの経過時間と変速機入力トルクごとの第二勾配に対応する係数との乗算値を差し引いて求めた圧力とするよう構成したことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 - 請求項1において、前記変速機入力トルクをエンジン出力トルクおよびトルクコンバータ速度比から求めたトルクコンバータ出力トルク推定値、またはエンジンスロットル開度で代用し、
前記初期圧を変速機入力トルクが大きいほど高くしたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 - 請求項1または2において、前記変速機入力トルクをエンジン出力トルクおよびトルクコンバータ速度比から求めたトルクコンバータ出力トルク推定値、またはエンジンスロットル開度で代用し、
前記設定圧を変速機入力トルクが大きいほど高くしたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項において、前記変速機入力トルクをエンジン出力トルクおよびトルクコンバータ速度比から求めたトルクコンバータ出力トルク推定値、またはエンジンスロットル開度で代用し、
前記所定時間を変速機入力トルクが大きいほど長くしたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
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