JP2004245981A - 平版印刷版及び製版方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インキ受理性、インキ脱離性、耐刷力、地汚れ、ブランパイル、現像寛容性等の総合的な印刷特性が満足できるアルミニウム印刷版の製版方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版において、該物理現像核とコロイダルシリカを混合して担持させたことを特徴とする平版印刷版。
【選択図】 なし。
【解決手段】アルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版において、該物理現像核とコロイダルシリカを混合して担持させたことを特徴とする平版印刷版。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版とその製版方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版については、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」、第101頁〜第130頁に幾つかの例が記載されている。
【0003】
銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版の中でも現在実用化されているものは、大きく2つのタイプに分けるられる。その1つのタイプは、ポリエチレン樹脂被覆紙やプラスチック樹脂フィルムのような支持体上に下塗り層、ハロゲン化銀乳剤層、及び物理現像核層を順次積層した平版印刷版(以降、フレキシブル印刷版と称す)である。この平版印刷版は、硬化されたゼラチン層(下塗り層及びハロゲン化銀乳剤層)の表面に存在する物理現像核にDTR現像処理によって析出した金属銀をインキ受容性の画像部として利用するものである。硬化されたゼラチン層は親水性であり、そのまま非画像部となる。このタイプの平版印刷版は、例えば、特開平5−100430号、同平8−262724号、同平9−171256号、同平11−84671号、同2000−241981号、同2000−275847号、同2001−281865号等公報に記載されている。
【0004】
もう1つのタイプは、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核を有し、その上にハロゲン化銀乳剤層を有する平版印刷版(以降、アルミニウム印刷版と称す)である。この平版印刷版は、アルミニウム支持体に担持された物理現像核にDTR現像処理によって析出した金属銀を画像部として利用するもので、銀画像部を露出させるために、ハロゲン化銀乳剤層などのゼラチン層が水洗処理によって除去される。水洗処理によって銀画像部が露出するのと同時に、親水性のアルミニウム表面(陽極酸化層)が露出して非画像部を形成する。
【0005】
アルミニウム印刷版は、例えば特開昭57−118244号、特開平3−116151号、同4−282295号、同平5−216236号、同平7−199471号、同平10−69086号、同平10−186668号、同平11−133614号、同2001−281870号、同2001−281868号、米国特許第4,567,131号、同第5,427,889号等の公報に詳しく記載されている。
【0006】
前記アルミニウム印刷版は物理現像核を塗布して製造されるが、該物理現像核を支持体上に設けるに際して、分散安定性を向上させるため水溶性のバインダーが使用され、微小な物理現像核が形成される。しかし、そのために現像後の銀画像の接着性が悪化し、耐刷性が低下し、或いは、現像が遅れ、現像寛容度が狭くなる欠点が見られた。
【0007】
前記アルミニウム印刷版の一般的な製版方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ハロゲン化銀乳剤層の除去)、仕上げ処理の工程から成っている。
【0008】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以降、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0009】
上記水洗処理は、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付けて乳剤層を剥離除去する方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで乳剤層を剥離する方法が一般的に採用されている。
【0010】
露出した銀画像部及び非画像部には、その保護のためにアラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸等の保護コロイドを含有する仕上げ液が塗布される。所謂、ガム引きと云われる処理が施される。この仕上げ液は、定着液やフィニッシング液とも称され、銀画像部を親油性にする化合物(以降、親油化剤と称す)を含有することも一般的である。
【0011】
前記アルミニウム印刷版の製版における課題の1つとして、ハロゲン化銀乳剤層と陽極酸化されたアルミニウム板が直接接触することにより、アルミニウム板の腐食が起こり、いわゆるエッチピットと称される斑点状の欠陥を生じることが知られている。この欠陥を解決するため、特開平3−116151号、同平5−313373号、同平8−234437号等には、物理現像核とハロゲン化銀乳剤層の間に中間層を設けることが知られている。
【0012】
また画質を良くする等のために、特開平5−265216号、同平5−313373号、同平8−314145号、同平9−185171号等には、ハロゲン化銀乳剤層の上に保護層を設けることが知られている。
【0013】
しかしながら、中間層や保護層を設けることはそれぞれの利点を有している反面、保護層は現像液(現像主薬)の浸透が遅くなる結果、また中間層はハロゲン化銀乳剤層からの銀錯塩の拡散を遅らせる結果、いずれもDTR現像を遅らせることになり、印刷特性等を悪化するという問題がある。
【0014】
ところで、平版印刷版の構成層中に現像に必要な量の現像主薬を含有させ、現像液には実質的に現像主薬を含有させない、いわゆるアルカリ活性化液で処理する方法(アクチベータ型)が知られている。前者のフレキシブル印刷版では、このアクチベータ型が主流であり、前述の公開公報に記載の態様はいずれもアクチベータ型である。アクチベータ型は、経時で酸化されて失活する現像主薬を含まないため現像液の保存安定性に優れている等の利点があり、アルミニウム印刷版において実現できれば有効な方法である。
【0015】
しかしながら、アクチベータ型アルミニウム印刷版といえども、現像主薬を含有する現像液で製版処理する従来のアルミニウム印刷版に比べて格別有利な印刷特性を示すものではなく、むしろアクチベータ型にすることによって劣った印刷特性しか示さないこともあった。
【0016】
従来の現像主薬を含有する現実化されている現像液には、アルカリ珪酸塩は用いられていないが、アルカリ珪酸塩を含有させることにより、アルミニウム板の腐食を抑制して画像再現性を良くすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0017】
また従来の現像主薬を含有する現実化されている現像液には、ハロゲン化銀溶剤としてチオ硫酸塩を含有しているが、チオ硫酸塩を減量もしくは使用しないことによりインキ受理性や耐刷力を改良することも知られている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0018】
【特許文献1】
特開平7−199471号公報
【特許文献2】
特開平4−306660号公報
【特許文献3】
特開2000−162763号公報
【0019】
しかしながら、これらの特許文献に具体化された方法によっても、インキ受理性、耐刷力、地汚れ、インキ脱離性、ブランパイル(印刷機ブランケットのインキ汚れ)、現像寛容性(現像条件の変化に対する安定性)等の総合的な印刷特性において満足できるアルミニウム印刷版は得られていないのが実情である。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題を解決し、インキ受理性、インキ脱離性、耐刷力、地汚れ、ブランパイル、現像寛容性等の総合的な印刷特性が満足できるアルミニウム印刷版とその製版方法を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の発明により達成された。
(1)アルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版において、該物理現像核とコロイダルシリカを混合して担持させたことを特徴とする平版印刷版。
(2)前記物理現像核の形成の前或いは後にアルカリ金属珪酸塩を含む水溶液でアルミニウム支持体を処理したことを特徴とする前記平版印刷版。
(3)前記ハロゲン化銀乳剤層を有する側の少なくとも1層の構成層にアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を含有させたことを特徴とする前記平版印刷版。
(4)前記平版印刷版を実質的に現像主薬を含有しない現像液で処理し、次いでハロゲン化銀乳剤層を水洗除去する(3)に記載の平版印刷版の製版方法。
(5)前記現像液が実質的にチオ硫酸塩を含有せず、アルカリ珪酸塩を含有することを特徴とする(4)に記載の平版印刷版の製版方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の平版印刷版は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核を有する。アルミニウム支持体は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム板であり、前記したような先行文献や米国特許第5,427,889号明細書、米国特許第5,405,730号明細書等に記載のアルミニウム板が使用できる。陽極酸化皮膜は、1平方メートル当り0.5g以上、好ましくは1.0g〜5g程度有するものが好ましい。
【0023】
本発明の物理現像核はコロイダルシリカと混合して担持される。本発明において好ましく用いられる物理現像核としては、公知の銀錯塩拡散転写法に用いられるものでよく、例えば金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物などが使用できる。物理現像核を支持体上に設けるに際し、物理現像核と一緒に有機バインダーを用いることができる。この有機バインダーとしては、物理現像核層のバインダーとして従来から公知の親水性コロイドやポリマーラテックスを用いることができる。これらの詳細及び製法については、例えば、特公昭48−30562号、特開昭48−55402号、同53−21602号、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」を参照し得る。アルミニウム支持体への物理現像核の担持方法としては上述の文献に記載されているような支持体製造後塗布する方法もあるが、支持体製造時に連続的に担持させる方法もある。
【0024】
本発明において使用されるコロイダルシリカは無水珪酸の超微粒子を水中に分散させたコロイド溶液であり、その表面には金属陽イオンM+及び水素イオンH+が存在する。金属陽イオンM+としては一般的にCa2+、Al3+、Zn2+、Na+、K+、Li+等が挙げられるが、ゲル化しにくいNa+、K+、Li+が好ましい。市販のコロイダルシリカは一般にSiO2を10〜50重量%、Na2Oを0.01〜2.00重量%含有し、粒子径は4〜100nmであり、また、pHは2〜11の範囲であるが、これらのコロイダルシリカはいずれも本発明に使用できる。
【0025】
物理現像核とコロイダルシリカを混合して塗布により担持させる場合、粒子径は4〜30nm、pHは1〜6が好ましく、塗布液には市販のコロイダルシリカをイオン交換水等で希釈して用い、塗布液の場合その濃度は0.001〜1重量%とする。アルミニウム支持体上の担持量は1〜100mg/m2が好ましい。
通常物理現像核の粒子径はコロイダルシリカより小さく、その担持量はコロイダルシリカの1/1〜1/1000で充分であり、物理現像核の一部或いは全部がコロイダルシリカ粒子の表面に担持される。これにより物理現像核が凝集することなく、実質的に粒径の大きな核として機能し、DTR現像を促進すると考えられる。さらに、コロイダルシリカはアルカリ珪酸塩処理した表面との接着性が良く、物理現像核を該表面に固定するものと考えられる。
【0026】
本発明に用いられるアルミニウム支持体は陽極酸化後、さらにアルカリ珪酸塩(珪酸アルカリ金属塩)を含有する水溶液で処理することが好ましい。該処理は物理現像核を担持させる前に施してもよいし、物理現像核を担持させた後に施してもよい。該処理はシリケート処理と呼ばれ、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、特開平2−107490号等の公報に開示されている方法により処理できる。アルカリ珪酸塩としては、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等が使用できる。珪酸ナトリウムにはオルト珪酸ナトリウム(SiO2/2Na2O)、メタ珪酸ナトリウム(SiO2/Na2O) 、二珪酸ナトリウム(2SiO2/2Na2O)、三珪酸ナトリウム(3SiO2/2Na2O)、四珪酸ナトリウム(4SiO2/2Na2O)等があり、珪酸カリウムには、メタ珪酸カリウム、二珪酸水素カリウムまたは四珪酸カリウムなどがある。
【0027】
アルカリ珪酸塩はその中に含まれる二酸化珪素SiO2と金属酸化物M2O(Mはアルカリ金属)との比率によりアルミニウム板の腐食抑制能力、親水化能力が異なり、上記比率以外の中間的な比率のものも製造されている。その比率としては珪酸アルカリ塩SiO2/M2Oの重量比で0.5〜4である。pHは7以上のアルカリ側で処理可能であるが、迅速かつ、均一にムラなく処理するには、pH11〜13の範囲が好ましい。アルカリ珪酸塩のpHは前記比率により異なるので、適宜この範囲に調整するため水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物を添加する。pH11より低いと非画像部の親水性が悪くなり、pH13より高いと処理条件によりアルミニウムの溶解が始まり、地汚れが発生する。アルカリ金属珪酸塩の濃度は1〜30重量%、好ましくは2〜15重量%、温度は15〜90℃、処理時間は0.5〜120秒の間で処理され、乾燥後の付着量は1〜100mg/m2である。陽極酸化後に施されるアルカリ珪酸塩処理は多孔質な酸化膜の表面や細孔内で酸化アルミニウムと化学反応しアルミノシリケート層を形成し、実質的に多孔質な親水性層を形成していると考えられる。
【0028】
本発明のアルミニウム印刷版は、上記物理現像核を担持するアルミニウム支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有する。ハロゲン化銀乳剤層に含有する銀量は、硝酸銀換算で、2.0g/m2以下が好ましく、1.8g/m2以下がより好ましく、下限は、1g/m2程度である。ハロゲン化銀乳剤層のバインダー(主としてゼラチン)の塗布量は好ましくは0.5〜2.0g/m2、特に好ましくは0.6〜1.8g/m2である。ハロゲン化銀乳剤層のバインダー(一般的には主としてゼラチン)の量は、硝酸銀に換算したハロゲン化銀に対して好ましくは40質量%以上140質量%以下、特に好ましくは50質量%以上130質量%以下である。ハロゲン化銀乳剤層は、2層以上に分けられていてもよい。
【0029】
本発明のハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤は、これまで知られている種々の方法を用いることができる。すなわち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン化物を反応させる形式としてはシングルジェット法、ダブルジェット法、それらの組合せなどのいずれを用いてもよい。ダブルジェット法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわちコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。また、英国特許第1,535,016号、特公昭48−36890号、同52−16364号等に記載されているように、硝酸銀やハロゲン化アルカリ水溶液の添加速度を粒子形成速度に応じて変化させる方法や、米国特許第4,242,445号、特開昭55−158124号等に記載されているように水溶液濃度を変化させる方法を用いて臨界過飽和度を越えない範囲において早く成長させる方法を用いることも出来る。また、粒子の内部(コア部)と外側(シェル部)からなる、コアシェル粒子等、多層構造粒子が用いることもできる。
【0030】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、一般に用いられる塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ臭化銀等から選択されるが、塩化銀70モル%以上、特に好ましくは塩化銀90モル%以上のハロゲン化銀が好ましい。沃化銀の含有量は0〜2モル%が好ましい。ハロゲン化銀結晶の形成時にロジウム塩やイリジウム塩のような金属塩を使用することもできる。
【0031】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の形状は、特に好ましくは立方体のような規則的な結晶体を有するものであるが、その他の八面体、不定形、板状のようなものであってもよい。ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、0.6μm以下の粒子が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmであって、粒子サイズ分布が95%の粒子が数平均粒子サイズの±30%以内、好ましくは±20%以内のサイズに入る単分散ハロゲン化銀粒子がよい。
【0032】
ハロゲン化銀乳剤層のバインダーとしては主としてゼラチンが用いられる。ゼラチンには酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等各種ゼラチンを用いることができる。また、それらの修飾ゼラチン(例えばフタル化ゼラチン、アミド化ゼラチンなど)も用いることができる。また更にポリビニルピロリドン、でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアガム、ヒドロキシエチルセルロース、各種ラテックス類等のバインダーを含有させることができる。
【0033】
ハロゲン化銀乳剤は、一般的には脱塩処理した後、種々の化学増感剤によって増感することが好ましく、硫黄増感、還元増感、金増感、セレン増感、テルル増感などの方法を用いることができるが、塩化金酸、三塩化金酸、チオシアネート金酸などを増感剤として用いる金増感が好ましい。さらに好ましくは、硫黄プラス金増感による化学増感が最も好ましい。硫黄増感剤としては、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物の他、種々の硫黄化合物、例えばチオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。
【0034】
ハロゲン化銀乳剤は、増感色素によって、紫外、可視光、近赤外の波長領域に分光増感することが好ましく、各種波長のレーザー光に対応した感光域を付与することによって、印刷版としての用途を一段と広げることができる。
【0035】
本発明のハロゲン化銀乳剤層には好ましくは現像主薬、好ましくはポリヒドロキシベンゼン系現像主薬を含有する。ポリヒドロキベンゼン系現像主薬の量は、まったく現像主薬を含有しないアルカリ活性化液で現像したときにDTR現像を十分に生起するに必要な量(すなわちアルカリ活性化に必要な量)であり、塗布銀量等にもよるが、一般的には硝酸銀に換算したハロゲン化銀1モル当たり0.2〜2モル、好ましくは0.3〜1モルである。
【0036】
本発明に用いられるポリヒドロキシベンゼン系現像主薬としては、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、クロルハイドロキノン、ブロモハイドロキノン、メチルハイドロキノン等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を併用してもよい。好ましくは、ハイドロキノンである。また、本発明のアルミニウム印刷版には、上記したポリヒドロキシベンゼン系現像主薬の他に、メトールや1−フェニル−3−ピラゾリジノン類のような補助現像主薬を含有させるのが特に好ましい。特に3−ピラゾリジノン類が好ましく、ハイドロキノン1モルに対し0.03〜0.24モル、好ましくは0.06〜0.15モルである。
【0037】
本発明に用いられるアルミニウム印刷版は、好ましくはハロゲン化銀乳剤層と物理現像核の間に中間層を設けるか、ハロゲン化銀乳剤層の上に保護層を設けるか、あるいは中間層と保護層の両方が設けられる。
【0038】
中間層及び保護層のバインダーとしては、ハロゲン化銀乳剤で述べたような、各種のゼラチン、ポリビニルピロリドン、でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアガム、ヒドロキシエチルセルロース、各種ラテックス類等が使用できる。中間層のバインダー塗布量は、0.05〜0.5g/m2、好ましくは0.1〜0.4g/m2である。保護層のバインダー塗布量は、0.2〜1.5g/m2、好ましくは0.3〜1.0g/m2である。中間層および保護層はそれぞれ2層以上に分かれていても良い。ハロゲン化銀乳剤層と中間層又は/及び保護層を合わせた構成層の全バインダー量は、好ましくは3.3g/m2以下、特に好ましくは1.3〜3.0g/m2である。後述の説明から自ずと理解されるが、全バインダー量が多すぎると、DTR現像速度が遅くなり、本発明の目的達成に不都合となる。また全バインダー量が少なすぎると、現像主薬の含有量が十分でなく、やはり本発明の目的達成に不都合となる。
【0039】
本発明に用いられる現像液は、ハロゲン化銀乳剤層が現像主薬を含有しない場合は従来の現像主薬を含む現像液が使用できる。特にハロゲン化銀乳剤層に現像主薬を含有させた場合、現像液は現像主薬を含有しないアルカリ活性化液(アクチベータ)であり、現像主薬を全く含有しないのが好ましいことは言うまでもないが、その含有量だけでは実用的なDTR現像銀を形成出来ない程度の少量(例えば特開平5−107766号に記載のような、処理液1リットル当たり5×10−2モル以下の量)は勿論含有しても良い。さらに現像するのに十分量の現像主薬がアルミニウム印刷版に含有されている限り、通常の現像主薬の量を含有した現像液でも本発明の効果は失われないであろうと考えられる。
【0040】
本発明に用いられる現像液にはさらに、アルカリ珪酸塩(珪酸アルカリ金属塩)を含有させることが好ましい。アルカリ珪酸塩としては、例えば珪酸ナトリウム(オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、二珪酸ナトリウム、三珪酸ナトリウム、四珪酸ナトリウム等)、珪酸カリウム(メタ珪酸カリウム、二珪酸水素カリウム、四珪酸カリウム等)、珪酸リチウム等が使用できる。珪酸酸ナトリウムには、オルト珪酸ナトリウム(SiO2/2Na2O)、メタ珪酸ナトリウム(SiO2/Na2O) 、二珪酸ナトリウム(2SiO2/2Na2O)、三珪酸ナトリウム(3SiO2/2Na2O)、四珪酸ナトリウム(4SiO2/2Na2O)およSiO2とNa2Oとを上記以外の比率で含むものもある。珪酸カリウムも、メタ珪酸カリウム二珪酸水素カリウムまたは四珪酸カリウムなどがある。
【0041】
現像液に用いられるアルカリ珪酸塩の好ましい量は、アルカリ珪酸塩の種類、即ち各々のアルカリ珪酸塩中に含まれる金属酸化物と二酸化珪素の比率により異なる。金属酸化物を高い比率で含むアルカリ珪酸塩は高いpHを示すが緩衝能力、アルミニウム板の腐食抑制能力が乏しい。一方、二酸化珪素の比重が高いものは緩衝能力が高いが現像に必要なpHを現像液への添加により得ることが困難であるため、他のアルカリ剤を併用する必要があるが、現像液中の総塩濃度の増加はアルカリ活性化液のアルミニウム印刷版乳剤層への浸透性低下などDTR特性に影響を及ぼす。そのため、SiO2とM2O(Mはアルカリ金属)との比率を任意に変えて用いるのが望ましく、珪酸アルカリ塩SiO2/M2Oの重量比は0.5〜4、好ましくは2〜3の範囲が好ましく、この重量比の珪酸アルカリ塩をSiO2に換算して 0.05質量%以上、好ましくは0.15〜5質量%の範囲で含むことが望ましい。
【0042】
本発明に用いられる現像液には、珪酸アルカリ塩と併用できる他の公知のアルカリ剤として、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第三リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム等、保恒剤として、例えば亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、異性重亜硫酸カリウム等、ハロゲン化銀溶剤として、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、ウラシルのような環状イミド、チオサリチル酸誘導体、特開平6−83060号等に記載のメソイオン性化合物、特開平5−289348号等に記載のチオエーテル化合物、アルカノールアミン化合物等、増粘剤として、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等、カブリ防止剤として、例えば臭化カリウム等、親油化剤として、例えば1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール等、現像変成剤として、例えばポリオキシアルキレン化合物等の添加剤を含ませることができる。現像液のpHは11以上、好ましくは12〜14である。
【0043】
本発明においては、出来る限り速くDTR現像を起こすことが必要であるが、そのためにはチオ硫酸塩を実質的に含有しないことが特に好ましい。チオ硫酸塩を実質的に含有しないとは、全く含有しないことは勿論、現像液1リットル当たり0.02モル以下、望ましくは0.01モル以下の量を必要に応じて含有していてもよい。チオ硫酸塩以外のハロゲン化銀溶剤、例えばチオシアン酸塩、ウラシルのような環状イミド、チオサリチル酸誘導体、特開平6−83060号等に記載のメソイオン性化合物、特開平5−289348号等に記載のチオエーテル化合物、アルカノールアミン化合物等を含有させることが好ましい。特にアルカノールアミン化合物が好ましいが、前記したような他のハロゲン化銀溶剤でも可能である。
【0044】
アルカノールアミン化合物としては、例えば2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、N,N−エチル−2、2’−イミノジエタノール、2−メチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。添加量は現像液1リットル当り0.05モル〜2モル、好ましくは0.1モル〜2モル、特に好ましくは0.3モル〜1.5モルである。
【0045】
本発明の製版方法は、一般的には現像処理後に水洗処理が施され、ハロゲン化銀乳剤層等が水洗除去される。水洗処理方法としては、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付けてハロゲン化銀乳剤層剥離除去する方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで剥離する方法が一般的に採用されている。水洗処理に用いられる水洗液としては、水道水でもよいが、各種添加剤、例えば、pH4〜9のpH緩衝剤、防腐剤、タンパク質分解酵素、親油化剤等を含有してもよい。
【0046】
水洗処理でハロゲン化銀乳剤層等が剥離除去されることによって露出した銀画像部及び非画像部は、各々の親油性及び親水性を高めるため、及び版面の保護のために、仕上げ液による処理が施される。仕上げ液には前記親油化剤、及び非画像部の陽極酸化層の保護及び親水性向上のために、アラビヤゴム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸のプロピレングリコールエステル、ヒドロキシエチル澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアルコール等の保護コロイドを含有することが好ましい。
【0047】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明する。
実施例1
<アルミニウム印刷版A及びB、Cの作製>
幅1030mm、厚み0.24mmのA1050タイプアルミニウム板帯を25m/minの処理速度で移動させ、60℃、4%水酸化ナトリウム水溶液に10秒間浸漬した後、水洗し、30℃の1.5%の塩酸と2%の酢酸を満たした電解槽に浸漬し、電源より40A/dm2、50Hzの単相交流電流を30秒間流して、交流電解粗面化し、水洗し、その後50℃、10%硝酸水溶液に10秒間浸漬してデスマットし、水洗し、さらに25℃、20%硫酸中に通し、電流密度を調整して2.0g/m2の陽極酸化皮膜を形成し、水洗し、乾燥してシリケート処理しないアルミニウム支持体Aを作製した。次に陽極酸化後水洗し、以下に示す条件でシリケート処理し、水洗し、乾燥して、珪酸ナトリウムによるシリケート処理を施したアルミニウム支持体B〜Cを作製した。
【0048】
アルミニウム支持体:後処理
【0049】
次に上記アルミニウム支持体A〜Cに物理現像核として硫化パラジウム核をパラジウム付着量が0.5mg/m2となるように塗布し、その後乾燥した。次に、以下に示すハロゲン化銀乳剤Aを塗布乾燥してアルミニウム印刷版A〜Cを作成した。ハロゲン化銀乳剤Aのゼラチン塗布量は1.8g/m2、銀塗布量は1.8g/m2(硝酸銀換算)とした。
【0050】
<ハロゲン化銀乳剤A>
保護コロイドとしてアルカリ処理ゼラチンを用い、コントロールダブルジェット法で平均粒径0.3μmの、ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムを銀1モル当たり0.006ミリモルドープさせた塩ヨウ化銀乳剤(ヨウ化銀を0.5モル%含む)を調製した。その後、この乳剤をフロキュレーションさせ、洗浄した。さらにこの乳剤に硫黄金増感を施した後、安定剤を添加し、赤色領域に吸収極大を有する増感色素を用いて分光増感してハロゲン化銀乳剤Aとした。
【0051】
<アルミニウム印刷版D、E、Fの作製>
次に上記アルミニウム支持体A〜Cに物理現像核として硫化パラジウム核と、コロイダルシリカ(スノーテックス20:日産化学工業(株)製)の1/10(重量比)の混合物(pH8.7)をパラジウムの付着量で0.5mg/m2となるように塗布し、その後乾燥した。次に、アルミニウム印刷版Aと同様にしてアルミニウム印刷版D、E及びFを作成した。
【0052】
<アルミニウム印刷版G及びHの作製>
次に上記アルミニウム印刷版D及びEにおいて、コロイダルシリカとしてスノーテックスS(日産化学工業(株)製)を使用した以外アルミニウム印刷版Dと同様にしてアルミニウム印刷版G及びHを作製した。
【0053】
上記のようにして作成した平版印刷版を633nmの赤色LDレーザーを光源とする出力機で画像出力し、次に製版用プロセッサー(三菱製紙(株)社製のP−α880)で処理してアルミニウム印刷版を作製した。製版用プロセッサーは、現像処理工程(25℃、15秒)、水洗処理工程(35℃の水洗液をシャワー噴射しながらスクラブローラで乳剤層をウオッシュオフする)、仕上げ処理工程(22℃、15秒)及び乾燥工程から構成されている。現像液としては、下記に示す現像主薬を含有する現像液Aを用いた。また、本実施例に用いた水洗液と仕上げ液も以下に示す。
【0054】
<現像液A>
ハイドロキノン 20g
ジメチルフェニドン 2g
水酸化ナトリウム 20g
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 1g
無水亜硫酸ナトリウム 60g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
チオ硫酸ナトリウム(5水塩) 8g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.2に調整
【0055】
<水洗液>
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
モノエタノールアミン 13g
重亜硫酸ナトリウム 10g
第1燐酸カリウム 40g
タンパク質分解酵素 1g
水を加えて全量を1000mlに調整する。pHは6.0に調整した。
タンパク質分解酵素として、ビオプラーゼAL−15(細菌プロティナーゼ、長瀬産業(株)製)を用いた。
【0056】
<仕上げ液>
燐酸 0.5g
モノエタノールアミン 5.0g
2−メルカプト−5−nヘプチルオキサジアゾール 0.5g
ポリグリセロール(6量体) 50g
脱イオン水で1000mlとする。
pHは7.2に調整した。
【0057】
このようにして得られたアルミニウム印刷版を印刷機ハイデルベルグTOK(Heidelberg社製オフセット印刷機の商標)に掛けて、インキ(大日本インキ(株)社製のニューチャンピオン墨H)及び市販のPS版用給湿液を用いて印刷し、以下のようにしてインキ受理性、インキ脱離性、耐刷力、ブランパイル性を評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
<インキ受理性>
インキ受理性は、印刷開始時に印刷物の画像濃度の変化が起きなくなる迄の印刷枚数で、下記の基準で評価した。
◎;10枚未満
○;10枚〜20枚未満
△;20枚〜30枚未満
×;30枚以上
【0059】
<インキ脱離性>
インキ脱離性は、オフセット輪転印刷機に印刷版を装着し、版面にインキを乗せた後、給湿液を送り非画像部のインキが取れるまでの印刷枚数で、下記の基準で評価した。
◎;20枚未満
○;20枚〜40枚未満
△;40枚〜60枚未満
×;60枚以上
【0060】
<耐刷力>
耐刷力は、銀画像部が欠落して印刷に供せなくなったときの印刷枚数(万枚)として表1に示した。
【0061】
<ブランパイル性>
ブランパイル性は、5万枚の印刷時点で、ブランケットのインキ汚れを下記の4段階の基準で評価した。
◎;全くインキ汚れが認められない。
○;僅かにインキ汚れが認められるが実用的に許容できる範囲。
△;かなりのインキ汚れが認められる。
×;著しいインキ汚れが認められる。
【0062】
【表1】
【0063】
テスト番号1は現在実用化されている標準的な態様である。テスト番号2及び3は前記の特許文献1に示される態様である。テスト番号4、5、6、7及び8は、物理現像核をコロイダルシリカと混合して担持した印刷版であり、従来の現像主薬を含有する現像液では比較のコロイダルシリカを含まないテスト番号1〜3より耐刷性も高く印刷特性に優れていることが判る。特に本発明の支持体を珪酸ナトリウムで後処理し、さらに物理現像核をコロイダルシリカと混合して担持させた本発明の印刷版D〜Hのテスト番号5、6、及び8は印刷版特性のバランスがよいことが判る。
【0064】
実施例2
次に実施例1のアルミニウム支持体において陽極酸化後、水洗し、直ちにアルミニウム印刷版Aで使用した物理現像核塗布液を陽極酸化面に流して処理し、水洗し、乾燥してアルミニウム支持体製造時に連続的に物理現像核を担持させたアルミニウム支持体(パラジウム付着量0.3g/m2)Dを作製した。次に、前記処理液の代わりに硫化パラジウム核と、コロイダルシリカ(スノーテックスO:日産化学工業(株)製)の1/5(重量比)の混合物(pH3)を使用して、処理し、水洗し、乾燥し、パラジウム付着量0.5mg/m2のアルミニウム支持体Eを作製した。次に、前記アルミニウム支持体Eに、さらにアルミニウム支持体Bの条件で珪酸ナトリウムによるシリケート処理を実施し、水洗、乾燥し、物理現像核担持後、アルカリ珪酸塩処理したアルミニウム支持体Fを作製した。
【0065】
<アルミニウム印刷版I、J、Kの作製>
次に上記アルミニウム支持体D、E及びFに実施例1と同様にしてハロゲン化銀乳剤を塗布し、アルミニウム印刷版I、J及びKを作製した。
【0066】
<アルミニウム印刷版L、M、Nの作製>
アルミニウム印刷版I、J及びKにおいて、硝酸銀に換算したハロゲン化銀1モル当たり0.35モルのハイドロキノンを、またハイドロキノン100質量部当たり15質量部の1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリゾン(ジメチルフェニドン)を各々ハロゲン化銀乳剤層に添加する以外はアルミニウム印刷版Iと同様にして、アルミニウム印刷版L、M及びNを作製した。
【0067】
このようにして得られたアルミニウム印刷版を実施例1の現像液A及び下記のアルカリ活性化現像液Bを使用し、実施例1と同様にして製版した。
【0068】
<アルカリ活性化現像液B>
水酸化ナトリウム 17g
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 1g
無水亜硫酸ナトリウム 60g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
チオ硫酸ナトリウム(5水塩) 8g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.2に調整
【0069】
このようにして得られたアルミニウム印刷版を実施例1と同様にして、印刷し、以下のようにしてインキ受理性、インキ脱離性、耐刷力、ブランパイル性を評価した。その結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
物理現像核をアルミニウム支持体製造時に連続的に処理して担持させる場合において、物理現像核をコロイダルシリカと混合させて後処理で担持させた本発明のアルミニウム印刷版J及びKは現像主薬を含有しない従来の現像液Aで製版してもコロイダルシリカを含まない物理現像核を担持させた印刷版Iより印刷特性が優れていることがわかる。さらに、ハロゲン化銀乳剤層に現像主薬を含有するアクチベータ型印刷版L〜Nにおいては物理現像核をコロイダルシリカと混合させた本発明の印刷版M及びNは飛躍的な印刷特性を示すことが判る。物理現像核担持後、さらに珪酸ナトリウムで処理した本発明のアルミニウム印刷版K及びNは印刷特性のバランスがよいことが判る。
【0072】
実施例3
実施例2において、現像条件を現像時間7秒に変化させて現像条件寛容性を調べた。結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表2〜表3の結果から、本発明の印刷版は、現像時間が変化しても安定した印刷特性を得ることが出来ることが分かる。特にアクチベータ型印刷版は印刷特性に優れ、製版条件の変動(季節による環境温度の変化、現像時間等)によっても常に安定した印刷特性が得られることを示している。
【0075】
実施例4
次に上記アルミニウム支持体A及びBに物理現像核として硫化パラジウム核をパラジウム付着量が0.5mg/m2となるように塗布したアルミニウム印刷版A及びBにおいて、ハロゲン化銀乳剤層を、中間層形成用ポリビニルアルコール(PVA)水溶液と、実施例1に示すハロゲン化銀乳剤Aと、保護層形成用ゼラチン水溶液を3重層同時塗布し、乾燥してアルミニウム印刷版O及びPを作製した。ハロゲン化銀乳剤Aのゼラチン塗布量は0.9g/m2、銀塗布量は1.5g/m2(硝酸銀換算)、中間層PVA塗布量は0.3g/m2、保護層ゼラチン塗布量は0.6g/m2とした。
【0076】
<アルミニウム印刷版Q、Rの作製>
アルミニウム印刷版O及Pにおいて、物理現像核として硫化パラジウム核と、コロイダルシリカ(スノーテックスC:日産化学工業(株)製)の1/5(重量比)の混合物(pH6)をパラジウムの付着量で0.5mg/m2となるように塗布し、その後乾燥した。次に、アルミニウム印刷版Oとまったく同様にして、中間層、保護層を有するハロゲン化銀乳剤層を塗布し、乾燥してアルミニウム印刷版Q及びRを作製した。
【0077】
<アルミニウム印刷版Sの作製>
アルミニウム印刷版Oにおいて、硝酸銀に換算したハロゲン化銀1モル当たり0.35モルのハイドロキノンを、またハイドロキノン100質量部当たり15質量部の1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリゾン(ジメチルフェニドン)を各々ハロゲン化銀乳剤層と保護層に対バインダー質量比が同じになるように分配して添加する以外はアルミニウム印刷版Oと同様にして、アルミニウム印刷版Sを作製した。
【0078】
<アルミニウム印刷版T、Uの作製>
アルミニウム印刷版Q及びRにおいて、アルミニウム印刷版Sと同様にハイドロキノンと1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリゾン(ジメチルフェニドン)を添加する以外はアルミニウム印刷版Qと同様にして、アルミニウム印刷版T及びUを作製した。
【0079】
上記のようにして作製した平版印刷版を実施例2と同様の現像液A及びアルカリ活性化現像液Bを使用し、さらに下記現像液C及びアルカリ活性化現像液Dを使用し、実施例1と同様の仕上げ液と水洗液を使用して処理してアルミニウム印刷版を作成した。
【0080】
<現像液C>
ハイドロキノン 20g
ジメチルフェニドン 2g
水酸化ナトリウム 20g
珪酸ナトリウム 15g
(珪酸濃度0.45質量%)
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 1g
無水亜硫酸ナトリウム 60g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.2に調整
【0081】
<アルカリ活性化現像液D>
水酸化カリウム 17g
珪酸ナトリウム 15g
(珪酸濃度0.45質量%)
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 1g
無水亜硫酸ナトリウム 60g
モノメチルエタノールアミン 70g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.2に調整
【0082】
このようにして得られたアルミニウム印刷版を実施例1と同様にして印刷し、以下のようにしてインキ受理性、インキ脱離性、耐刷力、ブランパイル性を評価した。その結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
テスト番号1は従来の印刷版の態様である。テスト番号2及び4は、テスト番号1及び3を前記の特許文献1に示されるアルカリ珪酸塩を含有する現像液で製版した印刷版であるが、印刷特性が悪化することを示す。これに対し、本発明の物理現像核にコロイダルシリカを混合したアルミニウム印刷版Q及びRではテスト番号6及び8のアルカリ珪酸塩を含有する現像液でも印刷特性は保持できることが判る。さらにハロゲン化銀乳剤層に現像主薬を含有させたアクチベータ型印刷版S、U及びVにおいて、本発明の物理現像核にコロイダルシリカを混合した印刷版U及びVは耐刷性もよく優れた印刷特性を示し、特に、チオ硫酸塩を含まず、アルカリ珪酸塩を含有する現像液で製版したテスト番号14の印刷版はバランスの取れた優れた印刷特性を示すことが判る。
【0085】
実施例5
実施例4において、現像条件を現像時間7秒に変化させて現像条件寛容性を調べた。結果を表5に示している。
【0086】
【表5】
【0087】
表4〜表5の結果から、本発明の印刷版は、現像時間が変化しても安定した印刷特性を得ることが出来ることが分かる。このことは、製版条件の変動(季節による環境温度の変化、現像時間等)によっても常に安定した印刷特性が得られることを示している。特に、本発明の物理現像核とコロイダルシリカを混合して担持させたアクチベータ型印刷版をアルカリ珪酸塩を含有させたアルカリ活性化現像液を使用して製版すると、現像寛容度の広い、安定した、耐刷性に優れたバランスのよい印刷特性が得られることが判る。
【0088】
【発明の効果】
本発明により、インキ受理性、インキ脱離性、耐刷力、地汚れ、ブランパイル、現像寛容性等の総合的な印刷特性が満足できるアクチベータ型アルミニウム印刷版が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版とその製版方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版については、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」、第101頁〜第130頁に幾つかの例が記載されている。
【0003】
銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版の中でも現在実用化されているものは、大きく2つのタイプに分けるられる。その1つのタイプは、ポリエチレン樹脂被覆紙やプラスチック樹脂フィルムのような支持体上に下塗り層、ハロゲン化銀乳剤層、及び物理現像核層を順次積層した平版印刷版(以降、フレキシブル印刷版と称す)である。この平版印刷版は、硬化されたゼラチン層(下塗り層及びハロゲン化銀乳剤層)の表面に存在する物理現像核にDTR現像処理によって析出した金属銀をインキ受容性の画像部として利用するものである。硬化されたゼラチン層は親水性であり、そのまま非画像部となる。このタイプの平版印刷版は、例えば、特開平5−100430号、同平8−262724号、同平9−171256号、同平11−84671号、同2000−241981号、同2000−275847号、同2001−281865号等公報に記載されている。
【0004】
もう1つのタイプは、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核を有し、その上にハロゲン化銀乳剤層を有する平版印刷版(以降、アルミニウム印刷版と称す)である。この平版印刷版は、アルミニウム支持体に担持された物理現像核にDTR現像処理によって析出した金属銀を画像部として利用するもので、銀画像部を露出させるために、ハロゲン化銀乳剤層などのゼラチン層が水洗処理によって除去される。水洗処理によって銀画像部が露出するのと同時に、親水性のアルミニウム表面(陽極酸化層)が露出して非画像部を形成する。
【0005】
アルミニウム印刷版は、例えば特開昭57−118244号、特開平3−116151号、同4−282295号、同平5−216236号、同平7−199471号、同平10−69086号、同平10−186668号、同平11−133614号、同2001−281870号、同2001−281868号、米国特許第4,567,131号、同第5,427,889号等の公報に詳しく記載されている。
【0006】
前記アルミニウム印刷版は物理現像核を塗布して製造されるが、該物理現像核を支持体上に設けるに際して、分散安定性を向上させるため水溶性のバインダーが使用され、微小な物理現像核が形成される。しかし、そのために現像後の銀画像の接着性が悪化し、耐刷性が低下し、或いは、現像が遅れ、現像寛容度が狭くなる欠点が見られた。
【0007】
前記アルミニウム印刷版の一般的な製版方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ハロゲン化銀乳剤層の除去)、仕上げ処理の工程から成っている。
【0008】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以降、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0009】
上記水洗処理は、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付けて乳剤層を剥離除去する方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで乳剤層を剥離する方法が一般的に採用されている。
【0010】
露出した銀画像部及び非画像部には、その保護のためにアラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸等の保護コロイドを含有する仕上げ液が塗布される。所謂、ガム引きと云われる処理が施される。この仕上げ液は、定着液やフィニッシング液とも称され、銀画像部を親油性にする化合物(以降、親油化剤と称す)を含有することも一般的である。
【0011】
前記アルミニウム印刷版の製版における課題の1つとして、ハロゲン化銀乳剤層と陽極酸化されたアルミニウム板が直接接触することにより、アルミニウム板の腐食が起こり、いわゆるエッチピットと称される斑点状の欠陥を生じることが知られている。この欠陥を解決するため、特開平3−116151号、同平5−313373号、同平8−234437号等には、物理現像核とハロゲン化銀乳剤層の間に中間層を設けることが知られている。
【0012】
また画質を良くする等のために、特開平5−265216号、同平5−313373号、同平8−314145号、同平9−185171号等には、ハロゲン化銀乳剤層の上に保護層を設けることが知られている。
【0013】
しかしながら、中間層や保護層を設けることはそれぞれの利点を有している反面、保護層は現像液(現像主薬)の浸透が遅くなる結果、また中間層はハロゲン化銀乳剤層からの銀錯塩の拡散を遅らせる結果、いずれもDTR現像を遅らせることになり、印刷特性等を悪化するという問題がある。
【0014】
ところで、平版印刷版の構成層中に現像に必要な量の現像主薬を含有させ、現像液には実質的に現像主薬を含有させない、いわゆるアルカリ活性化液で処理する方法(アクチベータ型)が知られている。前者のフレキシブル印刷版では、このアクチベータ型が主流であり、前述の公開公報に記載の態様はいずれもアクチベータ型である。アクチベータ型は、経時で酸化されて失活する現像主薬を含まないため現像液の保存安定性に優れている等の利点があり、アルミニウム印刷版において実現できれば有効な方法である。
【0015】
しかしながら、アクチベータ型アルミニウム印刷版といえども、現像主薬を含有する現像液で製版処理する従来のアルミニウム印刷版に比べて格別有利な印刷特性を示すものではなく、むしろアクチベータ型にすることによって劣った印刷特性しか示さないこともあった。
【0016】
従来の現像主薬を含有する現実化されている現像液には、アルカリ珪酸塩は用いられていないが、アルカリ珪酸塩を含有させることにより、アルミニウム板の腐食を抑制して画像再現性を良くすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0017】
また従来の現像主薬を含有する現実化されている現像液には、ハロゲン化銀溶剤としてチオ硫酸塩を含有しているが、チオ硫酸塩を減量もしくは使用しないことによりインキ受理性や耐刷力を改良することも知られている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0018】
【特許文献1】
特開平7−199471号公報
【特許文献2】
特開平4−306660号公報
【特許文献3】
特開2000−162763号公報
【0019】
しかしながら、これらの特許文献に具体化された方法によっても、インキ受理性、耐刷力、地汚れ、インキ脱離性、ブランパイル(印刷機ブランケットのインキ汚れ)、現像寛容性(現像条件の変化に対する安定性)等の総合的な印刷特性において満足できるアルミニウム印刷版は得られていないのが実情である。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題を解決し、インキ受理性、インキ脱離性、耐刷力、地汚れ、ブランパイル、現像寛容性等の総合的な印刷特性が満足できるアルミニウム印刷版とその製版方法を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の発明により達成された。
(1)アルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版において、該物理現像核とコロイダルシリカを混合して担持させたことを特徴とする平版印刷版。
(2)前記物理現像核の形成の前或いは後にアルカリ金属珪酸塩を含む水溶液でアルミニウム支持体を処理したことを特徴とする前記平版印刷版。
(3)前記ハロゲン化銀乳剤層を有する側の少なくとも1層の構成層にアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を含有させたことを特徴とする前記平版印刷版。
(4)前記平版印刷版を実質的に現像主薬を含有しない現像液で処理し、次いでハロゲン化銀乳剤層を水洗除去する(3)に記載の平版印刷版の製版方法。
(5)前記現像液が実質的にチオ硫酸塩を含有せず、アルカリ珪酸塩を含有することを特徴とする(4)に記載の平版印刷版の製版方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の平版印刷版は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核を有する。アルミニウム支持体は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム板であり、前記したような先行文献や米国特許第5,427,889号明細書、米国特許第5,405,730号明細書等に記載のアルミニウム板が使用できる。陽極酸化皮膜は、1平方メートル当り0.5g以上、好ましくは1.0g〜5g程度有するものが好ましい。
【0023】
本発明の物理現像核はコロイダルシリカと混合して担持される。本発明において好ましく用いられる物理現像核としては、公知の銀錯塩拡散転写法に用いられるものでよく、例えば金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物などが使用できる。物理現像核を支持体上に設けるに際し、物理現像核と一緒に有機バインダーを用いることができる。この有機バインダーとしては、物理現像核層のバインダーとして従来から公知の親水性コロイドやポリマーラテックスを用いることができる。これらの詳細及び製法については、例えば、特公昭48−30562号、特開昭48−55402号、同53−21602号、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」を参照し得る。アルミニウム支持体への物理現像核の担持方法としては上述の文献に記載されているような支持体製造後塗布する方法もあるが、支持体製造時に連続的に担持させる方法もある。
【0024】
本発明において使用されるコロイダルシリカは無水珪酸の超微粒子を水中に分散させたコロイド溶液であり、その表面には金属陽イオンM+及び水素イオンH+が存在する。金属陽イオンM+としては一般的にCa2+、Al3+、Zn2+、Na+、K+、Li+等が挙げられるが、ゲル化しにくいNa+、K+、Li+が好ましい。市販のコロイダルシリカは一般にSiO2を10〜50重量%、Na2Oを0.01〜2.00重量%含有し、粒子径は4〜100nmであり、また、pHは2〜11の範囲であるが、これらのコロイダルシリカはいずれも本発明に使用できる。
【0025】
物理現像核とコロイダルシリカを混合して塗布により担持させる場合、粒子径は4〜30nm、pHは1〜6が好ましく、塗布液には市販のコロイダルシリカをイオン交換水等で希釈して用い、塗布液の場合その濃度は0.001〜1重量%とする。アルミニウム支持体上の担持量は1〜100mg/m2が好ましい。
通常物理現像核の粒子径はコロイダルシリカより小さく、その担持量はコロイダルシリカの1/1〜1/1000で充分であり、物理現像核の一部或いは全部がコロイダルシリカ粒子の表面に担持される。これにより物理現像核が凝集することなく、実質的に粒径の大きな核として機能し、DTR現像を促進すると考えられる。さらに、コロイダルシリカはアルカリ珪酸塩処理した表面との接着性が良く、物理現像核を該表面に固定するものと考えられる。
【0026】
本発明に用いられるアルミニウム支持体は陽極酸化後、さらにアルカリ珪酸塩(珪酸アルカリ金属塩)を含有する水溶液で処理することが好ましい。該処理は物理現像核を担持させる前に施してもよいし、物理現像核を担持させた後に施してもよい。該処理はシリケート処理と呼ばれ、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、特開平2−107490号等の公報に開示されている方法により処理できる。アルカリ珪酸塩としては、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等が使用できる。珪酸ナトリウムにはオルト珪酸ナトリウム(SiO2/2Na2O)、メタ珪酸ナトリウム(SiO2/Na2O) 、二珪酸ナトリウム(2SiO2/2Na2O)、三珪酸ナトリウム(3SiO2/2Na2O)、四珪酸ナトリウム(4SiO2/2Na2O)等があり、珪酸カリウムには、メタ珪酸カリウム、二珪酸水素カリウムまたは四珪酸カリウムなどがある。
【0027】
アルカリ珪酸塩はその中に含まれる二酸化珪素SiO2と金属酸化物M2O(Mはアルカリ金属)との比率によりアルミニウム板の腐食抑制能力、親水化能力が異なり、上記比率以外の中間的な比率のものも製造されている。その比率としては珪酸アルカリ塩SiO2/M2Oの重量比で0.5〜4である。pHは7以上のアルカリ側で処理可能であるが、迅速かつ、均一にムラなく処理するには、pH11〜13の範囲が好ましい。アルカリ珪酸塩のpHは前記比率により異なるので、適宜この範囲に調整するため水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物を添加する。pH11より低いと非画像部の親水性が悪くなり、pH13より高いと処理条件によりアルミニウムの溶解が始まり、地汚れが発生する。アルカリ金属珪酸塩の濃度は1〜30重量%、好ましくは2〜15重量%、温度は15〜90℃、処理時間は0.5〜120秒の間で処理され、乾燥後の付着量は1〜100mg/m2である。陽極酸化後に施されるアルカリ珪酸塩処理は多孔質な酸化膜の表面や細孔内で酸化アルミニウムと化学反応しアルミノシリケート層を形成し、実質的に多孔質な親水性層を形成していると考えられる。
【0028】
本発明のアルミニウム印刷版は、上記物理現像核を担持するアルミニウム支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有する。ハロゲン化銀乳剤層に含有する銀量は、硝酸銀換算で、2.0g/m2以下が好ましく、1.8g/m2以下がより好ましく、下限は、1g/m2程度である。ハロゲン化銀乳剤層のバインダー(主としてゼラチン)の塗布量は好ましくは0.5〜2.0g/m2、特に好ましくは0.6〜1.8g/m2である。ハロゲン化銀乳剤層のバインダー(一般的には主としてゼラチン)の量は、硝酸銀に換算したハロゲン化銀に対して好ましくは40質量%以上140質量%以下、特に好ましくは50質量%以上130質量%以下である。ハロゲン化銀乳剤層は、2層以上に分けられていてもよい。
【0029】
本発明のハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤は、これまで知られている種々の方法を用いることができる。すなわち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン化物を反応させる形式としてはシングルジェット法、ダブルジェット法、それらの組合せなどのいずれを用いてもよい。ダブルジェット法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわちコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。また、英国特許第1,535,016号、特公昭48−36890号、同52−16364号等に記載されているように、硝酸銀やハロゲン化アルカリ水溶液の添加速度を粒子形成速度に応じて変化させる方法や、米国特許第4,242,445号、特開昭55−158124号等に記載されているように水溶液濃度を変化させる方法を用いて臨界過飽和度を越えない範囲において早く成長させる方法を用いることも出来る。また、粒子の内部(コア部)と外側(シェル部)からなる、コアシェル粒子等、多層構造粒子が用いることもできる。
【0030】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、一般に用いられる塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ臭化銀等から選択されるが、塩化銀70モル%以上、特に好ましくは塩化銀90モル%以上のハロゲン化銀が好ましい。沃化銀の含有量は0〜2モル%が好ましい。ハロゲン化銀結晶の形成時にロジウム塩やイリジウム塩のような金属塩を使用することもできる。
【0031】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の形状は、特に好ましくは立方体のような規則的な結晶体を有するものであるが、その他の八面体、不定形、板状のようなものであってもよい。ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、0.6μm以下の粒子が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmであって、粒子サイズ分布が95%の粒子が数平均粒子サイズの±30%以内、好ましくは±20%以内のサイズに入る単分散ハロゲン化銀粒子がよい。
【0032】
ハロゲン化銀乳剤層のバインダーとしては主としてゼラチンが用いられる。ゼラチンには酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等各種ゼラチンを用いることができる。また、それらの修飾ゼラチン(例えばフタル化ゼラチン、アミド化ゼラチンなど)も用いることができる。また更にポリビニルピロリドン、でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアガム、ヒドロキシエチルセルロース、各種ラテックス類等のバインダーを含有させることができる。
【0033】
ハロゲン化銀乳剤は、一般的には脱塩処理した後、種々の化学増感剤によって増感することが好ましく、硫黄増感、還元増感、金増感、セレン増感、テルル増感などの方法を用いることができるが、塩化金酸、三塩化金酸、チオシアネート金酸などを増感剤として用いる金増感が好ましい。さらに好ましくは、硫黄プラス金増感による化学増感が最も好ましい。硫黄増感剤としては、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物の他、種々の硫黄化合物、例えばチオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。
【0034】
ハロゲン化銀乳剤は、増感色素によって、紫外、可視光、近赤外の波長領域に分光増感することが好ましく、各種波長のレーザー光に対応した感光域を付与することによって、印刷版としての用途を一段と広げることができる。
【0035】
本発明のハロゲン化銀乳剤層には好ましくは現像主薬、好ましくはポリヒドロキシベンゼン系現像主薬を含有する。ポリヒドロキベンゼン系現像主薬の量は、まったく現像主薬を含有しないアルカリ活性化液で現像したときにDTR現像を十分に生起するに必要な量(すなわちアルカリ活性化に必要な量)であり、塗布銀量等にもよるが、一般的には硝酸銀に換算したハロゲン化銀1モル当たり0.2〜2モル、好ましくは0.3〜1モルである。
【0036】
本発明に用いられるポリヒドロキシベンゼン系現像主薬としては、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、クロルハイドロキノン、ブロモハイドロキノン、メチルハイドロキノン等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を併用してもよい。好ましくは、ハイドロキノンである。また、本発明のアルミニウム印刷版には、上記したポリヒドロキシベンゼン系現像主薬の他に、メトールや1−フェニル−3−ピラゾリジノン類のような補助現像主薬を含有させるのが特に好ましい。特に3−ピラゾリジノン類が好ましく、ハイドロキノン1モルに対し0.03〜0.24モル、好ましくは0.06〜0.15モルである。
【0037】
本発明に用いられるアルミニウム印刷版は、好ましくはハロゲン化銀乳剤層と物理現像核の間に中間層を設けるか、ハロゲン化銀乳剤層の上に保護層を設けるか、あるいは中間層と保護層の両方が設けられる。
【0038】
中間層及び保護層のバインダーとしては、ハロゲン化銀乳剤で述べたような、各種のゼラチン、ポリビニルピロリドン、でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアガム、ヒドロキシエチルセルロース、各種ラテックス類等が使用できる。中間層のバインダー塗布量は、0.05〜0.5g/m2、好ましくは0.1〜0.4g/m2である。保護層のバインダー塗布量は、0.2〜1.5g/m2、好ましくは0.3〜1.0g/m2である。中間層および保護層はそれぞれ2層以上に分かれていても良い。ハロゲン化銀乳剤層と中間層又は/及び保護層を合わせた構成層の全バインダー量は、好ましくは3.3g/m2以下、特に好ましくは1.3〜3.0g/m2である。後述の説明から自ずと理解されるが、全バインダー量が多すぎると、DTR現像速度が遅くなり、本発明の目的達成に不都合となる。また全バインダー量が少なすぎると、現像主薬の含有量が十分でなく、やはり本発明の目的達成に不都合となる。
【0039】
本発明に用いられる現像液は、ハロゲン化銀乳剤層が現像主薬を含有しない場合は従来の現像主薬を含む現像液が使用できる。特にハロゲン化銀乳剤層に現像主薬を含有させた場合、現像液は現像主薬を含有しないアルカリ活性化液(アクチベータ)であり、現像主薬を全く含有しないのが好ましいことは言うまでもないが、その含有量だけでは実用的なDTR現像銀を形成出来ない程度の少量(例えば特開平5−107766号に記載のような、処理液1リットル当たり5×10−2モル以下の量)は勿論含有しても良い。さらに現像するのに十分量の現像主薬がアルミニウム印刷版に含有されている限り、通常の現像主薬の量を含有した現像液でも本発明の効果は失われないであろうと考えられる。
【0040】
本発明に用いられる現像液にはさらに、アルカリ珪酸塩(珪酸アルカリ金属塩)を含有させることが好ましい。アルカリ珪酸塩としては、例えば珪酸ナトリウム(オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、二珪酸ナトリウム、三珪酸ナトリウム、四珪酸ナトリウム等)、珪酸カリウム(メタ珪酸カリウム、二珪酸水素カリウム、四珪酸カリウム等)、珪酸リチウム等が使用できる。珪酸酸ナトリウムには、オルト珪酸ナトリウム(SiO2/2Na2O)、メタ珪酸ナトリウム(SiO2/Na2O) 、二珪酸ナトリウム(2SiO2/2Na2O)、三珪酸ナトリウム(3SiO2/2Na2O)、四珪酸ナトリウム(4SiO2/2Na2O)およSiO2とNa2Oとを上記以外の比率で含むものもある。珪酸カリウムも、メタ珪酸カリウム二珪酸水素カリウムまたは四珪酸カリウムなどがある。
【0041】
現像液に用いられるアルカリ珪酸塩の好ましい量は、アルカリ珪酸塩の種類、即ち各々のアルカリ珪酸塩中に含まれる金属酸化物と二酸化珪素の比率により異なる。金属酸化物を高い比率で含むアルカリ珪酸塩は高いpHを示すが緩衝能力、アルミニウム板の腐食抑制能力が乏しい。一方、二酸化珪素の比重が高いものは緩衝能力が高いが現像に必要なpHを現像液への添加により得ることが困難であるため、他のアルカリ剤を併用する必要があるが、現像液中の総塩濃度の増加はアルカリ活性化液のアルミニウム印刷版乳剤層への浸透性低下などDTR特性に影響を及ぼす。そのため、SiO2とM2O(Mはアルカリ金属)との比率を任意に変えて用いるのが望ましく、珪酸アルカリ塩SiO2/M2Oの重量比は0.5〜4、好ましくは2〜3の範囲が好ましく、この重量比の珪酸アルカリ塩をSiO2に換算して 0.05質量%以上、好ましくは0.15〜5質量%の範囲で含むことが望ましい。
【0042】
本発明に用いられる現像液には、珪酸アルカリ塩と併用できる他の公知のアルカリ剤として、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第三リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム等、保恒剤として、例えば亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、異性重亜硫酸カリウム等、ハロゲン化銀溶剤として、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、ウラシルのような環状イミド、チオサリチル酸誘導体、特開平6−83060号等に記載のメソイオン性化合物、特開平5−289348号等に記載のチオエーテル化合物、アルカノールアミン化合物等、増粘剤として、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等、カブリ防止剤として、例えば臭化カリウム等、親油化剤として、例えば1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール等、現像変成剤として、例えばポリオキシアルキレン化合物等の添加剤を含ませることができる。現像液のpHは11以上、好ましくは12〜14である。
【0043】
本発明においては、出来る限り速くDTR現像を起こすことが必要であるが、そのためにはチオ硫酸塩を実質的に含有しないことが特に好ましい。チオ硫酸塩を実質的に含有しないとは、全く含有しないことは勿論、現像液1リットル当たり0.02モル以下、望ましくは0.01モル以下の量を必要に応じて含有していてもよい。チオ硫酸塩以外のハロゲン化銀溶剤、例えばチオシアン酸塩、ウラシルのような環状イミド、チオサリチル酸誘導体、特開平6−83060号等に記載のメソイオン性化合物、特開平5−289348号等に記載のチオエーテル化合物、アルカノールアミン化合物等を含有させることが好ましい。特にアルカノールアミン化合物が好ましいが、前記したような他のハロゲン化銀溶剤でも可能である。
【0044】
アルカノールアミン化合物としては、例えば2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、N,N−エチル−2、2’−イミノジエタノール、2−メチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。添加量は現像液1リットル当り0.05モル〜2モル、好ましくは0.1モル〜2モル、特に好ましくは0.3モル〜1.5モルである。
【0045】
本発明の製版方法は、一般的には現像処理後に水洗処理が施され、ハロゲン化銀乳剤層等が水洗除去される。水洗処理方法としては、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付けてハロゲン化銀乳剤層剥離除去する方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで剥離する方法が一般的に採用されている。水洗処理に用いられる水洗液としては、水道水でもよいが、各種添加剤、例えば、pH4〜9のpH緩衝剤、防腐剤、タンパク質分解酵素、親油化剤等を含有してもよい。
【0046】
水洗処理でハロゲン化銀乳剤層等が剥離除去されることによって露出した銀画像部及び非画像部は、各々の親油性及び親水性を高めるため、及び版面の保護のために、仕上げ液による処理が施される。仕上げ液には前記親油化剤、及び非画像部の陽極酸化層の保護及び親水性向上のために、アラビヤゴム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸のプロピレングリコールエステル、ヒドロキシエチル澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアルコール等の保護コロイドを含有することが好ましい。
【0047】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明する。
実施例1
<アルミニウム印刷版A及びB、Cの作製>
幅1030mm、厚み0.24mmのA1050タイプアルミニウム板帯を25m/minの処理速度で移動させ、60℃、4%水酸化ナトリウム水溶液に10秒間浸漬した後、水洗し、30℃の1.5%の塩酸と2%の酢酸を満たした電解槽に浸漬し、電源より40A/dm2、50Hzの単相交流電流を30秒間流して、交流電解粗面化し、水洗し、その後50℃、10%硝酸水溶液に10秒間浸漬してデスマットし、水洗し、さらに25℃、20%硫酸中に通し、電流密度を調整して2.0g/m2の陽極酸化皮膜を形成し、水洗し、乾燥してシリケート処理しないアルミニウム支持体Aを作製した。次に陽極酸化後水洗し、以下に示す条件でシリケート処理し、水洗し、乾燥して、珪酸ナトリウムによるシリケート処理を施したアルミニウム支持体B〜Cを作製した。
【0048】
アルミニウム支持体:後処理
【0049】
次に上記アルミニウム支持体A〜Cに物理現像核として硫化パラジウム核をパラジウム付着量が0.5mg/m2となるように塗布し、その後乾燥した。次に、以下に示すハロゲン化銀乳剤Aを塗布乾燥してアルミニウム印刷版A〜Cを作成した。ハロゲン化銀乳剤Aのゼラチン塗布量は1.8g/m2、銀塗布量は1.8g/m2(硝酸銀換算)とした。
【0050】
<ハロゲン化銀乳剤A>
保護コロイドとしてアルカリ処理ゼラチンを用い、コントロールダブルジェット法で平均粒径0.3μmの、ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウムを銀1モル当たり0.006ミリモルドープさせた塩ヨウ化銀乳剤(ヨウ化銀を0.5モル%含む)を調製した。その後、この乳剤をフロキュレーションさせ、洗浄した。さらにこの乳剤に硫黄金増感を施した後、安定剤を添加し、赤色領域に吸収極大を有する増感色素を用いて分光増感してハロゲン化銀乳剤Aとした。
【0051】
<アルミニウム印刷版D、E、Fの作製>
次に上記アルミニウム支持体A〜Cに物理現像核として硫化パラジウム核と、コロイダルシリカ(スノーテックス20:日産化学工業(株)製)の1/10(重量比)の混合物(pH8.7)をパラジウムの付着量で0.5mg/m2となるように塗布し、その後乾燥した。次に、アルミニウム印刷版Aと同様にしてアルミニウム印刷版D、E及びFを作成した。
【0052】
<アルミニウム印刷版G及びHの作製>
次に上記アルミニウム印刷版D及びEにおいて、コロイダルシリカとしてスノーテックスS(日産化学工業(株)製)を使用した以外アルミニウム印刷版Dと同様にしてアルミニウム印刷版G及びHを作製した。
【0053】
上記のようにして作成した平版印刷版を633nmの赤色LDレーザーを光源とする出力機で画像出力し、次に製版用プロセッサー(三菱製紙(株)社製のP−α880)で処理してアルミニウム印刷版を作製した。製版用プロセッサーは、現像処理工程(25℃、15秒)、水洗処理工程(35℃の水洗液をシャワー噴射しながらスクラブローラで乳剤層をウオッシュオフする)、仕上げ処理工程(22℃、15秒)及び乾燥工程から構成されている。現像液としては、下記に示す現像主薬を含有する現像液Aを用いた。また、本実施例に用いた水洗液と仕上げ液も以下に示す。
【0054】
<現像液A>
ハイドロキノン 20g
ジメチルフェニドン 2g
水酸化ナトリウム 20g
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 1g
無水亜硫酸ナトリウム 60g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
チオ硫酸ナトリウム(5水塩) 8g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.2に調整
【0055】
<水洗液>
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
モノエタノールアミン 13g
重亜硫酸ナトリウム 10g
第1燐酸カリウム 40g
タンパク質分解酵素 1g
水を加えて全量を1000mlに調整する。pHは6.0に調整した。
タンパク質分解酵素として、ビオプラーゼAL−15(細菌プロティナーゼ、長瀬産業(株)製)を用いた。
【0056】
<仕上げ液>
燐酸 0.5g
モノエタノールアミン 5.0g
2−メルカプト−5−nヘプチルオキサジアゾール 0.5g
ポリグリセロール(6量体) 50g
脱イオン水で1000mlとする。
pHは7.2に調整した。
【0057】
このようにして得られたアルミニウム印刷版を印刷機ハイデルベルグTOK(Heidelberg社製オフセット印刷機の商標)に掛けて、インキ(大日本インキ(株)社製のニューチャンピオン墨H)及び市販のPS版用給湿液を用いて印刷し、以下のようにしてインキ受理性、インキ脱離性、耐刷力、ブランパイル性を評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
<インキ受理性>
インキ受理性は、印刷開始時に印刷物の画像濃度の変化が起きなくなる迄の印刷枚数で、下記の基準で評価した。
◎;10枚未満
○;10枚〜20枚未満
△;20枚〜30枚未満
×;30枚以上
【0059】
<インキ脱離性>
インキ脱離性は、オフセット輪転印刷機に印刷版を装着し、版面にインキを乗せた後、給湿液を送り非画像部のインキが取れるまでの印刷枚数で、下記の基準で評価した。
◎;20枚未満
○;20枚〜40枚未満
△;40枚〜60枚未満
×;60枚以上
【0060】
<耐刷力>
耐刷力は、銀画像部が欠落して印刷に供せなくなったときの印刷枚数(万枚)として表1に示した。
【0061】
<ブランパイル性>
ブランパイル性は、5万枚の印刷時点で、ブランケットのインキ汚れを下記の4段階の基準で評価した。
◎;全くインキ汚れが認められない。
○;僅かにインキ汚れが認められるが実用的に許容できる範囲。
△;かなりのインキ汚れが認められる。
×;著しいインキ汚れが認められる。
【0062】
【表1】
【0063】
テスト番号1は現在実用化されている標準的な態様である。テスト番号2及び3は前記の特許文献1に示される態様である。テスト番号4、5、6、7及び8は、物理現像核をコロイダルシリカと混合して担持した印刷版であり、従来の現像主薬を含有する現像液では比較のコロイダルシリカを含まないテスト番号1〜3より耐刷性も高く印刷特性に優れていることが判る。特に本発明の支持体を珪酸ナトリウムで後処理し、さらに物理現像核をコロイダルシリカと混合して担持させた本発明の印刷版D〜Hのテスト番号5、6、及び8は印刷版特性のバランスがよいことが判る。
【0064】
実施例2
次に実施例1のアルミニウム支持体において陽極酸化後、水洗し、直ちにアルミニウム印刷版Aで使用した物理現像核塗布液を陽極酸化面に流して処理し、水洗し、乾燥してアルミニウム支持体製造時に連続的に物理現像核を担持させたアルミニウム支持体(パラジウム付着量0.3g/m2)Dを作製した。次に、前記処理液の代わりに硫化パラジウム核と、コロイダルシリカ(スノーテックスO:日産化学工業(株)製)の1/5(重量比)の混合物(pH3)を使用して、処理し、水洗し、乾燥し、パラジウム付着量0.5mg/m2のアルミニウム支持体Eを作製した。次に、前記アルミニウム支持体Eに、さらにアルミニウム支持体Bの条件で珪酸ナトリウムによるシリケート処理を実施し、水洗、乾燥し、物理現像核担持後、アルカリ珪酸塩処理したアルミニウム支持体Fを作製した。
【0065】
<アルミニウム印刷版I、J、Kの作製>
次に上記アルミニウム支持体D、E及びFに実施例1と同様にしてハロゲン化銀乳剤を塗布し、アルミニウム印刷版I、J及びKを作製した。
【0066】
<アルミニウム印刷版L、M、Nの作製>
アルミニウム印刷版I、J及びKにおいて、硝酸銀に換算したハロゲン化銀1モル当たり0.35モルのハイドロキノンを、またハイドロキノン100質量部当たり15質量部の1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリゾン(ジメチルフェニドン)を各々ハロゲン化銀乳剤層に添加する以外はアルミニウム印刷版Iと同様にして、アルミニウム印刷版L、M及びNを作製した。
【0067】
このようにして得られたアルミニウム印刷版を実施例1の現像液A及び下記のアルカリ活性化現像液Bを使用し、実施例1と同様にして製版した。
【0068】
<アルカリ活性化現像液B>
水酸化ナトリウム 17g
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 1g
無水亜硫酸ナトリウム 60g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
チオ硫酸ナトリウム(5水塩) 8g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.2に調整
【0069】
このようにして得られたアルミニウム印刷版を実施例1と同様にして、印刷し、以下のようにしてインキ受理性、インキ脱離性、耐刷力、ブランパイル性を評価した。その結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
物理現像核をアルミニウム支持体製造時に連続的に処理して担持させる場合において、物理現像核をコロイダルシリカと混合させて後処理で担持させた本発明のアルミニウム印刷版J及びKは現像主薬を含有しない従来の現像液Aで製版してもコロイダルシリカを含まない物理現像核を担持させた印刷版Iより印刷特性が優れていることがわかる。さらに、ハロゲン化銀乳剤層に現像主薬を含有するアクチベータ型印刷版L〜Nにおいては物理現像核をコロイダルシリカと混合させた本発明の印刷版M及びNは飛躍的な印刷特性を示すことが判る。物理現像核担持後、さらに珪酸ナトリウムで処理した本発明のアルミニウム印刷版K及びNは印刷特性のバランスがよいことが判る。
【0072】
実施例3
実施例2において、現像条件を現像時間7秒に変化させて現像条件寛容性を調べた。結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表2〜表3の結果から、本発明の印刷版は、現像時間が変化しても安定した印刷特性を得ることが出来ることが分かる。特にアクチベータ型印刷版は印刷特性に優れ、製版条件の変動(季節による環境温度の変化、現像時間等)によっても常に安定した印刷特性が得られることを示している。
【0075】
実施例4
次に上記アルミニウム支持体A及びBに物理現像核として硫化パラジウム核をパラジウム付着量が0.5mg/m2となるように塗布したアルミニウム印刷版A及びBにおいて、ハロゲン化銀乳剤層を、中間層形成用ポリビニルアルコール(PVA)水溶液と、実施例1に示すハロゲン化銀乳剤Aと、保護層形成用ゼラチン水溶液を3重層同時塗布し、乾燥してアルミニウム印刷版O及びPを作製した。ハロゲン化銀乳剤Aのゼラチン塗布量は0.9g/m2、銀塗布量は1.5g/m2(硝酸銀換算)、中間層PVA塗布量は0.3g/m2、保護層ゼラチン塗布量は0.6g/m2とした。
【0076】
<アルミニウム印刷版Q、Rの作製>
アルミニウム印刷版O及Pにおいて、物理現像核として硫化パラジウム核と、コロイダルシリカ(スノーテックスC:日産化学工業(株)製)の1/5(重量比)の混合物(pH6)をパラジウムの付着量で0.5mg/m2となるように塗布し、その後乾燥した。次に、アルミニウム印刷版Oとまったく同様にして、中間層、保護層を有するハロゲン化銀乳剤層を塗布し、乾燥してアルミニウム印刷版Q及びRを作製した。
【0077】
<アルミニウム印刷版Sの作製>
アルミニウム印刷版Oにおいて、硝酸銀に換算したハロゲン化銀1モル当たり0.35モルのハイドロキノンを、またハイドロキノン100質量部当たり15質量部の1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリゾン(ジメチルフェニドン)を各々ハロゲン化銀乳剤層と保護層に対バインダー質量比が同じになるように分配して添加する以外はアルミニウム印刷版Oと同様にして、アルミニウム印刷版Sを作製した。
【0078】
<アルミニウム印刷版T、Uの作製>
アルミニウム印刷版Q及びRにおいて、アルミニウム印刷版Sと同様にハイドロキノンと1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリゾン(ジメチルフェニドン)を添加する以外はアルミニウム印刷版Qと同様にして、アルミニウム印刷版T及びUを作製した。
【0079】
上記のようにして作製した平版印刷版を実施例2と同様の現像液A及びアルカリ活性化現像液Bを使用し、さらに下記現像液C及びアルカリ活性化現像液Dを使用し、実施例1と同様の仕上げ液と水洗液を使用して処理してアルミニウム印刷版を作成した。
【0080】
<現像液C>
ハイドロキノン 20g
ジメチルフェニドン 2g
水酸化ナトリウム 20g
珪酸ナトリウム 15g
(珪酸濃度0.45質量%)
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 1g
無水亜硫酸ナトリウム 60g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.2に調整
【0081】
<アルカリ活性化現像液D>
水酸化カリウム 17g
珪酸ナトリウム 15g
(珪酸濃度0.45質量%)
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 1g
無水亜硫酸ナトリウム 60g
モノメチルエタノールアミン 70g
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.2に調整
【0082】
このようにして得られたアルミニウム印刷版を実施例1と同様にして印刷し、以下のようにしてインキ受理性、インキ脱離性、耐刷力、ブランパイル性を評価した。その結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
テスト番号1は従来の印刷版の態様である。テスト番号2及び4は、テスト番号1及び3を前記の特許文献1に示されるアルカリ珪酸塩を含有する現像液で製版した印刷版であるが、印刷特性が悪化することを示す。これに対し、本発明の物理現像核にコロイダルシリカを混合したアルミニウム印刷版Q及びRではテスト番号6及び8のアルカリ珪酸塩を含有する現像液でも印刷特性は保持できることが判る。さらにハロゲン化銀乳剤層に現像主薬を含有させたアクチベータ型印刷版S、U及びVにおいて、本発明の物理現像核にコロイダルシリカを混合した印刷版U及びVは耐刷性もよく優れた印刷特性を示し、特に、チオ硫酸塩を含まず、アルカリ珪酸塩を含有する現像液で製版したテスト番号14の印刷版はバランスの取れた優れた印刷特性を示すことが判る。
【0085】
実施例5
実施例4において、現像条件を現像時間7秒に変化させて現像条件寛容性を調べた。結果を表5に示している。
【0086】
【表5】
【0087】
表4〜表5の結果から、本発明の印刷版は、現像時間が変化しても安定した印刷特性を得ることが出来ることが分かる。このことは、製版条件の変動(季節による環境温度の変化、現像時間等)によっても常に安定した印刷特性が得られることを示している。特に、本発明の物理現像核とコロイダルシリカを混合して担持させたアクチベータ型印刷版をアルカリ珪酸塩を含有させたアルカリ活性化現像液を使用して製版すると、現像寛容度の広い、安定した、耐刷性に優れたバランスのよい印刷特性が得られることが判る。
【0088】
【発明の効果】
本発明により、インキ受理性、インキ脱離性、耐刷力、地汚れ、ブランパイル、現像寛容性等の総合的な印刷特性が満足できるアクチベータ型アルミニウム印刷版が得られる。
Claims (5)
- アルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理現像核を有する平版印刷版において、物理現像核をコロイダルシリカと混合して担持させたことを特徴とする平版印刷版。
- 前記物理現像核の担持の前或いは後にアルカリ金属珪酸塩を含む水溶液で前記アルミニウム支持体を処理したことを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版。
- 前記ハロゲン化銀乳剤層を有する側の少なくとも1層の構成層にアルカリ活性化に必要な量の現像主薬を含有させたことを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版。
- 請求項3に記載の平版印刷版を実質的に現像主薬を含有しない現像液で処理し、次いでハロゲン化銀乳剤層を水洗除去する平版印刷版の製版方法。
- 前記現像液が実質的にチオ硫酸塩を含有せず、アルカリ珪酸塩を含有することを特徴とする請求項4に記載の平版印刷版の製版方法。
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JP2003034457A JP2004245981A (ja) | 2003-02-13 | 2003-02-13 | 平版印刷版及び製版方法 |
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- 2003-02-13 JP JP2003034457A patent/JP2004245981A/ja active Pending
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