JP2004240174A - 離型フィルム用ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】クロスニコル下における550nm光の最大透過率が50%以下であり、フィルム中に存在する最大径150μm以上の異物が1個/m2以下、かつ最大径30μm以上の異物が4個/m2以下であることを特徴とする離形フィルム用ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示用途等のフィルムにおいて重要な特性である光学特性に優れたポリエステルフィルムであり、特に偏光板用の離型フィルムに好適に使用されるポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話やパーソナルコンピューターの急速な普及に伴い、従来型のディスプレイであるCRTに比べ薄型軽量化、低消費電力、高画質化が可能である液晶ディスプレイ(LCD)の需要が著しく伸びつつあり、LCDの大画面化についてもその技術の成長は著しい。LCDの大画面化の1例として、最近では例えば30インチ以上の大型TV用途にLCDが使用されている。大画面化されたLCDにおいては、LCD内に組み込まれたバックライトの輝度を上げることや、輝度を向上させるフィルムを液晶ユニット内に組み込むこと等により、大画面で明るいLCDとする場合が多い。
【0003】
このようないわゆる高輝度タイプのLCDでは、ディスプレイ中に存在する小さな輝点が問題となる場合が多く、ディスプレイ中に組み込まれる偏光板、位相差板または位相差偏光板といった構成部材においては、これまでの低輝度タイプのLCDでは問題にならなかったような微小なサイズの異物が問題となってきており、製造工程における異物の混入を防ぐ一方で、万一、異物が混入した場合であっても欠陥として確実に認知できるような検査性の向上も重要となってきている。
【0004】
例えば偏光板の欠陥検査としては、クロスニコル法による目視検査が一般的であり、さらに例えば40インチ以上の大型TV用途に使用する偏光板等では、クロスニコル法を利用した自動異物検査器による検査も実施されつつある。このクロスニコル法は2枚の偏光板をその配向主軸を直交させて消光状態とし、異物や欠陥があればそこが輝点として現れるので、目視による欠点検査ができるという方法である。ここで、偏光板には粘着剤層を介して離型層を設置したポリエステルフィルムが使用されており、2枚の偏光板の間に離形ポリエステルフィルムが挟み込まれた状態でクロスニコル検査を実施するが、一般に、離型ポリエステルフィルムをこれに用いた場合には、クロスニコル法の検査の障害となり、異物の混入や欠陥を見逃しやすくなるという不具合が生じる場合がある。また、ポリエステルフィルムに異物や欠陥がある場合には、偏光板の欠陥なのかどうかが判別できずに偏光板を不良品とする場合があるため、偏光板製造の際の不良率を上昇させる原因となる場合があり問題となる。
【0005】
従来の離型フィルム用二軸配向ポリエステルフィルムとしては、フィルム内の異物個数を規定しているもの(例えば、特許文献1参照)、二枚の偏光板の間にポリエステルフィルムを挟み込んだ際、リタデーション値がある範囲内である場合に検査性が向上するといったもの(例えば、特許文献2参照)、が開示されているが、これらを使用しても欠陥を確実に見いだすための検査を実施する場合には、問題となる場合がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−207119号公報
【特許文献2】特開2000−338327号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、その解決課題は、偏光板のクロスニコル法による検査において、精度ある検査を実施できるような離形フィルム用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムにより、上記課題が容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の要旨は、クロスニコル下における550nm光の最大透過率が50%以下であり、フィルム中に存在する最大径150μm以上の異物が1個/m2以下、かつ最大径30μm以上の異物が4個/m2以下であることを特徴とする離形フィルム用ポリエステルフィルムに存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸とから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、コハク酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。
【0011】
かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6―ナフタレート等が例示される。これらのポリマーはホモポリマーであってもよく、また第3成分を共重合させたものでもよい。
本発明のフィルムとしては、優れた強度や寸法安定性の観点から2軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましく、2軸延伸フィルムが好ましく用いられるが、得られたフィルムが2軸配向性を持てば、未延伸または少なくとも一方に延伸されたポリエステルフィルムを用いることもできる。
【0012】
本発明におけるポリエステルフィルムは、偏光フィルム2枚を使用してクロスニコル状態とし、2枚の偏光フィルムの間にポリエステルフィルムを挟み込んだ積層体とした際に、積層体について550nm光の透過率が50%以下であり、好ましくは30%以下、15%以下の場合が最も好ましい。クロスニコル下での550nm光の最大透過率が50%を超える場合には、偏光板を使用したクロスニコル検査の際に光漏れが大きく、また面内での干渉色の変動が大きくなる傾向にあり、結果として輝点などの欠陥部分を見落とす可能性が高くなり好ましくない。
【0013】
さらに、フィルム中に存在する最大径150μm以上の異物は1個/m2以下であり、好ましくは0個/m2、また、最大径30μm以上の異物は4個/m2以下であり、好ましくは1個/m2以下である。最大径150μm以上の異物が1個/m2以下または最大径30μm以上の異物が4個/m2以下を逸脱する場合には、検査の際にポリエステルフィルム中の異物が輝点となり、偏光板等の不良と判別がつかない場合が多く、偏光板等自身を不良品と見なす場合があるため好ましくない。
フィルムヘーズについては6%以下であることが好ましく、フィルムヘーズが6%を超える場合には、欠陥部の輝点が発見しにくくなる傾向がある。
【0014】
また、ポリエステルフィルムを180℃、10分間熱処理した後、ジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー量(以下、表面OL量という)は、10mg/m2以下、さらには1mg/m2以下であることが望ましい。表面OL量が10mg/m2より多い場合には、離型層設置時の加熱工程においてフィルム表面にOLが析出し、離型層設置工程を汚染したり、離型層を設け偏光板に貼り合わせた際に、粘着剤へオリゴマーが転移し、結果として粘着剤に異物を混入させたりする場合がある。
【0015】
さらに、フィルム表面に存在する幅10μm以上の傷の数が、20個/m2以下、さらには10個/m2以下が好ましい。幅10μmの傷の数が20個/m2より多い場合、クロスニコル検査の際にフィルム表面の傷の箇所が輝点となる場合や、反射光により偏光板等の外観検査を行う場合、輝点として認知し偏光板等を不良品とする場合がある。
また、色差計を用いて透過光により測定されるb値は、−2.0〜2.0の範囲内であることが好ましい。b値がこの範囲を外れる場合には、ポリエステルフィルム上に離型層を設置した離型フィルムロールにおいてその端面の色調が極端に黄色い場合や青い場合があり、実用上問題の生じる場合がある。
【0016】
本発明のポリエステルフィルムには、作業性を良好にする目的でフィルム中にフィラーを添加し、フィルムの滑り性を向上させることが好ましく、添加するフィラーとしては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ゼオライト等の無機粒子、またはシリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、アクリル樹脂等の有機粒子を単独または混合体でフィルム中に配合させることが挙げられる。この場合、使用する粒子の平均粒径、添加量、さらに粒径分布は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されるものではないが、平均粒径は0.1〜4.0μm、添加量は0.01〜3.0重量%であることが好ましい。
【0017】
このような添加フィラー群の中でも、ポリエステルに対して0.03重量%以上の添加量でフィルム中に炭酸カルシウム粒子を配合することにより、異物の少ないポリエステルフィルムを作成することができ、好ましい場合がある。さらにポリエステルフィルム中に炭酸カルシウム粒子を使用する場合には、フィルムの中心面平均粗さ(SRa)を10nm以上とすることにより、離型層設置後のフィルムロールを巻き取る際や、フィルムを扱う際の作業性の点で好ましい場合がある。
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない限り、単層フィルムであっても複数の層が積層された多層フィルムであってもよいが、2種2層、2種3層や3種3層といった多層構成のフィルムであることが好ましい。
【0018】
以下、本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0019】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化することが好ましい。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で1.3〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で1.3〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。延伸方法としては、逐次2軸延伸であっても同時2軸延伸であってもよく、同時2軸延伸法による延伸方法が好ましい。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その要求特性に応じて必要な特性、例えば帯電防止性、耐候性および表面硬度の向上のため、必要に応じて縦延伸終了後、横延伸のテンター入口前にコートをしてテンター内で乾燥する、いわゆるインラインコートを行ってもよい。また、フィルム製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は水系または水分散系が好ましい。
【0021】
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を混合することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等を混合することができる。
本発明のポリエステルフィルムに離型層を設置する場合、離型層を構成する材料は離型性を有するものであれば特に限定されるものではなく、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。それらの中でも、硬化型シリコーン樹脂を主成分とした場合に離型性が良好な点で良い。
【0022】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、溶剤付加型・溶剤縮合型・溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、種々の諸物性、特性は以下のように測定、または定義されたものである。
(1)クロスニコル下での550nm光 最大透過率の測定
ポリエステルフィルムの端部からフィルム幅方向に、フィルム幅に対して10、50、90%の位置に相当する箇所よりそれぞれ6cm角の正方形サンプルを切り出し、3箇所のフィルムについて王子計測機器社製の自動複屈折率計(KOBRA−21ADH)により、550nm光におけるリタデーション、および配向角をそれぞれ測定し、下記式▲1▼により550nm光における透過率を算出した。3箇所のサンプルの内、最も高い透過率をそのフィルムの最大透過率とした。
透過率=Sin(2θ)・Sin(π・Re/550) …▲1▼
(上記式中、θはポリエステルフィルムの配向角(deg.)Reはポリエステルフィルムのリタデーション(nm)を意味する)
【0024】
(2)異物個数の測定
幅700mm、長さ10m(面積7m2)のポリエステルフィルムをクロスニコル法を用いた目視による異物検査を行い、検出された全異物の大きさを光学顕微鏡を用いて測定し、長軸が150μm以上の大きさの異物個数、長軸が30μm以上の大きさの異物個数をカウントした後、単位面積あたりに換算した。
本実施例では、長尺サンプルにより異物検査を実施したが、例えばA4サイズのような小さなサンプルであっても上記と同様な手法により、異物個数の測定は可能である。
【0025】
(3)フィルムヘーズの測定
JIS−K6714に準じ、日本電色工業社製分球式濁度計NDH−20Dによりフィルムのヘーズを測定した。
【0026】
(4)表面オリゴマー量の測定
上部が開放され、底辺の面積が250cm2となるように、熱処理後のポリエステルフィルムを折って、四角の箱を作成する。塗布層を設けている場合は、塗布層面が内側となるようにする。次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF10mlを入れ3分間放置後DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してDMF中のオリゴマー量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m2)とする。DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解して作成した。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。なお、液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製 MCI GEL ODS 1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0027】
(5)傷個数の測定
幅1500mm、長さ10m(面積15m2)のフィルム表面にハロゲンライトにて光を当て、目視にてフィルム表面を観察、輝点となって現れるキズの個数をカウントし、全てのキズについて光学顕微鏡にて幅を測定し、幅10μm以上のキズの個数を算出した。本実施例では、長尺サンプルについて幅10μm以上のキズ個数をカウントしたが、例えばA4サイズ程度の大きさのフィルムであっても、上記と同様な方法にて幅10μm以上のキズ個数を測定することは可能である。
【0028】
(6)b値の測定
日本電色工業(株)製分光色色差計 SE−2000型を用いて、JIS Z−8722の方法に準じて透過法によるb値を測定した。
【0029】
(7)中心面平均粗さ(SRa)の測定
3cm角のフィルム試料の表面にAl蒸着を行い、直接位相検出干渉法である、いわゆる2光束干渉法を用いた非接触式3次元粗さ計(マイクロマップ社製512)で、測定波長:554nm、対物レンズ倍率:20倍の条件にて、突起高さ分布曲線より、232μm×177μmの測定領域におけるA面、およびC面の中心面平均粗さSRaを50点にわたり測定し、50点のSRa値を平均して、フィルムのSRaを算出した。
【0030】
(8)クロスニコル下での目視検査性
得られたポリエステルフィルムを用いて硬化型シリコーン樹脂(信越化学製「KS−779H」)100部、硬化剤(信越化学製「CAT−PL−8」)1部、メチルエチルケトン(MEK)/トルエン混合溶媒系2200部より成る離型剤を塗工量が0.1g/mm2になるように塗布して170℃で10秒間の乾燥を行い、離型フィルムを得た後、離型フィルムの幅方向が偏光フィルムの配向軸と平行となるように、粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ偏光板とし、密着させた離型フィルム上に配向軸がフィルム幅方向と直交するように検査用の偏光板を重ね合わせ、偏光板側より白色光を照射し、検査用の偏光板より10人の検査員がそれぞれ目視にて観察し、クロスニコル下での目視検査性を下記基準に従い評価した。なお、測定の際には、得られたポリエステルフィルムの端部からフィルム幅方向に、フィルム幅に対して10、50、90%の位置に相当する箇所よりそれぞれA4サイズのサンプルを切り出して実施した。
【0031】
<クロスニコル下での目視検査性 判定基準>
(検査性良好) ◎>○>△>×>×× (検査性不良)
上記判定基準中、△以上のものが実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0032】
(9)異物認知性
硬化型シリコーン樹脂(信越化学製「KS−779H」)100部、硬化剤(信越化学製「CAT−PL−8」)1部、メチルエチルケトン(MEK)/トルエン混合溶媒系2200部よりなる離型剤を塗工量が0.1g/mm2になるようにポリエステルの片面に塗布して170℃で10秒間の乾燥を行い、離型フィルムを得た後、離型フィルムの幅方向が偏光フィルムの配向軸と平行となるように、公知のアクリル系粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ離形フィルム付きの偏光板を作成した。ここで、上記偏光板を作成する際、粘着剤と偏光フィルムとの間に50μm以上の大きさを持つ黒色の金属粉(異物)を50個/m2となるように混入させた。このようにして得られた異物を混入させた偏光板離型フィルム上に配向軸が離形フィルム幅方向と直交するように検査用の偏光板を重ね合わせ、偏光板側より白色光を照射し、検査用の偏光板より10人の検査員がそれぞれ目視にて観察し、粘着剤と偏光フィルムとの間に混入させた異物を見いだせるかどうかを下記分類にて評価した。なお、測定の際には、得られたフィルムの中央部と両端部の計3カ所のフィルムを用いて評価し、目視検査性が最も良好であった箇所の結果をもって、そのフィルムの異物認知性とした。
<異物認知性 分類基準>
(異物認知性良好) ◎>○>△>× (異物認知性不良)
上記判定基準中、○以上のものが実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0033】
実施例 1
(ポリエステルチップの製造法)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール70部、および酢酸カルシウム一水塩0.07部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノール留去させエステル交換反応を行い、反応開始後、約4時間半を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次に、燐酸0.04部および三酸化アンチモン0.035部を添加し、常法に従って重合した。すなわち、反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従い、チップ化して固有粘度が0.65であるポリエステルAを得た。
ポリエステルAを公知の方法により固層重合し、IV=0.75となるポリエステルBを得た。
上記ポリエステルAを製造する際、平均一次粒径0.7μmの炭酸カルシウムを10000ppm添加し、ポリエステルCを得た。
上記ポリエステルAを製造する際、平均一次粒径2.4μmの非晶質シリカを8000ppm添加し、ポリエステルDを得た。
上記ポリエステルAを製造する際、平均一次粒径60nmのδ型の酸化アルミニウムを20000ppm添加し、ポリエステルEを得た。
【0034】
(ポリエステルフィルムの製造)
上記ポリエステルA〜Eを表1に示す配合比でA層、B層用の混合原料とし、2台の二軸押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、A層を最外層(表層)、B層を中間層として、全厚みに対して、A層/B層/A層=8%/84%/8%の厚み比となるように、2種3層の構成で20℃に冷却したキャスティングドラム上に共押出し、冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て120℃で4.6倍の横延伸を施した後、225℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に10%の弛緩を加え、幅3000mm、厚み38μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは、目視検査性や異物認知性に優れ実用性の高いポリエステルフィルムであった。
【0035】
実施例2〜4
原料配合、製膜条件、フィルム厚みを表1記載のようにした以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、表1に示したような結果となり、それぞれで目視検査性や異物認知性に差があるものの、いずれも実用性の高いフィルムであった。
【0036】
比較例1〜4
原料配合、製膜条件を表2記載の如くとした以外、実施例1と同様にして製造しポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは目視検査性や異物認知性に差があるものの、何れも劣っており、b値も高く、実用性に欠けたフィルムであった。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、偏光板のクロスニコル法による検査において、精度ある検査を実施できるような離形フィルム用ポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
Claims (1)
- クロスニコル下における550nm光の最大透過率が50%以下であり、フィルム中に存在する最大径150μm以上の異物が1個/m2以下、かつ最大径30μm以上の異物が4個/m2以下であることを特徴とする離形フィルム用ポリエステルフィルム。
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