JP2004236794A - 皮膚水分保持機能試験シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粘着剤22により皮膚に貼付される透明フィルム12と、透明フィルム12の粘着剤22側の面に設けられ塩化コバルトを吸着させた複数の塩化コバルト紙24,26を有する。透明フィルム12には、塩化コバルトが吸湿により反応する発色の色見本20が設けられ、複数の塩化コバルト紙24,26は、異なる湿度で塩化コバルトの反応が開始されるように調整されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、皮膚の保湿性を試験する皮膚水分保持機能試験シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】実開昭62−70502号公報
通常、皮膚表面には適度な水分があり、水分が少ないと皮膚が乾燥して皮膚のトラブルの原因になる。そこで皮膚の保湿性を試験する方法として、実開昭62−70502号公報に開示されている生体表面水分蒸散速度測定器具があった。この測定器具は、周囲または全面に粘着剤を塗布した透明シートの中央部に塩化コバルト紙を貼付したもので、塩化コバルト紙には容易に剥離できる保護シートが取り付けられている。この生体表面水分蒸散速度測定器具の使用方法は、保護シートを外し、透明シートを皮膚に貼付して、塩化コバルト紙の色の変化を見るものである。塩化コバルト紙は、皮膚に当接させた状態で、皮膚表面から発散する水分により変色する。この色の変化は、塩化コバルト紙の吸湿度によって変わるので、皮膚に貼付した塩化コバルト紙の色を色見本と比較することにより、皮膚表面からの水分の発散度合い判定することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術の場合、塩化コバルト紙の色の変化は、青と淡赤色とその中間の肌色の3段階しか見分けがつかず、皮膚表面からの水分の発散度合いの判定が大まかで、細かく測定することは難しかった。また、塩化コバルト紙を皮膚表面に直接貼り付けると、塩化コバルト紙が直接接触している部分の皮膚からの水分しか塩化コバルト紙が吸収できず、反応が遅いという問題点もあった。
【0004】
この発明は上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、皮膚の水分保持能力を正確に、且つ簡単に試験することができる皮膚水分保持機能試験シートを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の皮膚水分保持機能試験シートは、粘着剤により皮膚に貼付される粘着フィルムと、上記粘着フィルムの粘着剤側の面に設けられ塩化コバルトを吸着させた保持体を有し、上記粘着フィルムの上記保持体近傍には、上記塩化コバルトが吸湿により反応する発色の色見本が設けられたものである。そして、上記保持体は疎水性の不織布で覆われ所定の湿度で塩化コバルトの反応が開始されるように調整されている。
【0006】
またこの発明は、粘着フィルムの粘着剤側の面に設けられ塩化コバルトを吸着させた複数の保持体を有し、上記粘着フィルムの上記保持体近傍には、上記塩化コバルトが吸湿により反応する発色の色見本が設けられ、上記複数の保持体は異なる湿度で塩化コバルトの反応が開始されるように調整されている皮膚水分保持機能試験シートである。
【0007】
また、上記保持体は、疎水性の不織布で覆われ、上記保持体は、濾紙である。ここで、濾紙に塩化コバルトを吸着させたものを塩化コバルト紙とする。
【0008】
この発明の皮膚水分保持機能試験シートは、被験者の皮膚に貼りつけ、皮膚の表面から蒸散する水分を塩化コバルト紙が吸湿して、その色が変化するものである。塩化コバルトは、無水塩では青色の三方晶系結晶であり、吸湿性を有し、水蒸気を吸収して淡赤色となる。この色の変化を、隣接した色見本と比較して皮膚の保湿性を測定する。塩化コバルト紙は、異なる湿度で反応が始まる複数の試験紙が設けられ、各塩化コバルト紙の色を色見本と比較することにより、正確に測定される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図3は、この発明の一実施形態を示すものであり、この実施形態の皮膚水分保持機能試験シート10には粘着フィルムとなる透明フィルム12が設けられ、その素材は柔軟性を有し透明性に優れ、また強靭性にも優れた樹脂フィルムで作られている。例えば、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ナイロン、ウレタン等が使用される。厚さは、20〜100ミクロンであり、好ましくは50〜75ミクロンである。透明フィルム12は、長丸に切断されている。
【0010】
透明フィルム12の表面12aには、所定の色の表シート14が印刷または貼り付けにより設けられている。表シート14には、中央付近に一対の矩形の透孔16が形成され、透孔16の内側は透明フィルム12が露出し、後述する塩化コバルト紙の色を視認する第一表示部18と第二表示部19となる。第一表示部18と第二表示部19の間には、後述する塩化コバルト紙の色見本20が印刷されている。色見本20は、三色が一対の表示部18,19間に並んで設けられ、一方の端に位置する第一区分20aは塩化コバルトの無水塩に近い青色であり、中央に位置する第二区分20bは薄い肌色であり、第一区部20aと反対側の第三区分20cは塩化コバルトが完全に吸湿したときの淡赤色である。
【0011】
透明フィルム12の裏面12bには、粘着フィルムとなるための粘着剤22が設けられている。粘着剤22の素材は、アクリル系粘着剤またはSIS等の合成ゴム粘着剤からなる。
【0012】
そして、透明フィルム12の裏面12bの第一表示部18部分には、塩化コバルト水溶液を濾紙に吸着させた第一の塩化コバルト紙24が粘着剤22に取り付けられている。ここで、塩化コバルトは、無水塩では青色であり吸湿すると淡赤色に変化するものであり、RH70%のとき、15〜30分で変色する。また、透明フィルム12の裏面12bの第二表示部19部分には、第一の塩化コバルト紙24とは異なる濃度の塩化コバルト水溶液を吸着させた第二の塩化コバルト紙26が取り付けられている。第二の塩化コバルト紙26は、第一の塩化コバルト紙24よりも反応が遅くなるように、塩化コバルトの吸着条件を設定している。第一の塩化コバルト紙24と第二の塩化コバルト紙26の外側には、疎水性の不織布28が積層して取り付けられている。不織布28は、例えばポリエステル製であり、目付は20g/m2である。透明フィルム12の裏面12bには、粘着剤22及び不織布28を覆った剥離シート30が貼り合わせられている。そして、皮膚水分保持機能試験シート10は、樹脂フィルム等の袋に包装され、密封されている。
【0013】
次に、この実施形態の皮膚水分保持機能試験シート10の試験方法について説明する。まず、剥離シート30を、皮膚水分保持機能試験シート10の粘着面から剥がし、透明フィルム12の裏面12bの粘着剤22を露出させる。そして、被験者の皮膚に皮膚水分保持機能試験シート10を貼りつけ、その状態で所定時間放置する。このとき、第一表示部18から第一の塩化コバルト紙24の色の変化をみることができ、第二表示部19からも第二の塩化コバルト紙26の色の変化を見ることができる。
【0014】
そして、第一表示部18と第二表示部19の色の組み合わせを、図3(A)から図3(E)までのいずれの段階に相当するかを観察し、皮膚からの水分蒸発量を判定する。図3(A)は、第一表示部18、第二表示部19とも、色見本20の第一区分20aと同じ青色であり、剥離シート30を剥がした直後は、このような状態であり、RH50%以下で皮膚の水分蒸発量が小さい状態を示す。この後、吸湿すると、図3(B)のようにまず第一表示部18の色が変化し第二区分20bと同じ肌色となる。この状態は、RHが50から55%までで、皮膚の水分蒸発量がやや小さい状態を示す。次に図3(C)のように、第一表示部18が第三区分20cと同じ淡赤色になると、RH60%程度で皮膚の水分蒸発量が普通の状態を示す。次に、第二表示部19の色の変化が開始され、図3(D)のように第二表示部19が第二区分20bと同じ肌色となると、RH65%であり皮膚の水分蒸発量が高い状態を示す。次に図3(E)のように、第二表示部19が第三区分20cと同じ淡赤色になると、RH70%以上の水分蒸発量がかなり多い状態を示す。これにより、貼付から所定時間後、例えば15分後、20分後等にどの段階の色に変化するかを、色見本20と比較し皮膚の水分蒸発量を測定する。このように、第二の塩化コバルト紙26の反応を、第一の塩化コバルト紙24よりも遅くなるようにしているため、反応速度が異なる二種類の塩化コバルト紙の色変化を確認し、二種類の反応速度での違いにより正確に判定することができる。
【0015】
この実施形態の皮膚水分保持機能試験シート10によれば、第一表示部18と第二表示部19の2ヶ所から、塩化コバルトの色の変化を異なる湿度で反応を開始させて観察することができ、正確に皮膚の水分蒸発量を判定することができる。さらに、第一の塩化コバルト紙24、第二の塩化コバルト紙26は不織布28で覆われ、皮膚に不織布28が当接して発汗による水分を効率良く捕らえるため、正確に水分蒸発量を検知することができる。そして、皮膚からの水分蒸発量を知ることで、皮膚のトラブルを防ぐことに役立ち、また美容の面でも正確な肌の状態を知ることにより手入れ方法の判断に役立つ。
【0016】
ここで、皮膚からの水分の蒸発量が多い場合は、皮膚水分量も多い肌であり、逆に蒸発量が少ない場合は、皮膚水分量が少ない肌である。水分量が多く保湿性の高い肌は滑らかで弾力があり、潤いのある肌の状態を保つことができる。そして、この皮膚水分保持機能試験シート10を用いることにより、皮膚からの水分の蒸発量を半定量的に測定することができ、室温や湿度等の環境の影響を容易に測定することができる。
【0017】
また、皮膚からの水分蒸発を抑えて保湿効果を期待する化粧品衣類等の商品の場合は、水分蒸発量が少なく表れる方が、保湿効果が高い商品と言えるので、この皮膚水分保持機能試験シート10は、クリーム等の化粧品や衣類などの保湿性の測定にも利用することができる。
【0018】
また、第一表示部18と第二表示部19は、色見本20と隣接しているため、正確に色見本20と比較することができる。そして、皮膚に皮膚水分保持機能試験シート10を貼付して、第一表示部18と第二表示部19の色の変化を色見本20と比較して観察するだけなので、操作が簡単で、再現性に優れており、コストも安価で経済的に優れた方法である。また、判定が容易であり、セルフメディケーションにより、手軽に測定を行うことができる。塩化コバルトは、皮膚に直接接することがないので安全である。
【0019】
なお、この発明の皮膚水分保持機能試験シートは上記各実施形態の形態に限定されるものではなく、例えば、図4,図5に示すように一枚の塩化コバルト紙32により、皮膚からの水分蒸発量を測定するものでも良い。この場合も、簡単に大まかな水分蒸発量を知ることができる。
【0020】
さらに、表シートはなくても良く、透明フィルムに直接色見本が印刷されても良い。表示部は、2箇所以外、例えば3箇所以上設けられても良い。各部材の素材や形状は、自由に変更可能である。
【0021】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。ここでは、塩化コバルトを濾紙に担持した場合を示す。まず、1000mlのビーカーに精製水450mlを取り、これに塩化コバルト50gを加えて溶解して第一の塩化コバルト紙24の10%水溶液を作る。次に、100×200mmサイズの濾紙(東洋濾紙(株)製 No.50)を前記水溶液に浸漬して水溶液を濾紙に十分含浸させて引き上げ、100℃の熱風で濾紙が青色になるまで乾燥し、第一の塩化コバルト紙24を作製した。第一の塩化コバルト紙24と同様して、1000mlのビーカーに精製水400mlを取り、これに塩化コバルト100gを加えて溶解して第二の塩化コバルト紙26の20%水溶液を作り、上記同様浸漬、乾燥し、第二の塩化コバルト紙26を作製した。次に図2に示すように、表シート14を設けた透明フィルム12の裏面に粘着剤22を設け、この粘着面に第一の塩化コバルト紙24及び第二の塩化コバルト紙26を貼り、さらに不織布28及び剥離シート30で覆い、皮膚水分保持機能試験シート10とした。
【0022】
以下に比較例を揚げて本発明を更に詳しく説明する。上記実施例の皮膚水分保持機能試験シート10及び比較例として市販の肌水分測定器(積水化学工業(株)製,品名:sittorisan)を用いて、被験者4人の上腕内側の肌の水分蒸発状態の測定を行った。結果を下記の表1に示す。
【0023】
この実施例の皮膚水分保持試験シート10は、貼付経過時間による表示色の変化を観察した。また比較例の肌水分測定器は、皮膚水分の数値を測定し、水分評価判定表と照らし合わせた。なお表1の比較例におけるAVは皮膚水分平均値を、SDは標準偏差を示す。
【0024】
【表1】
【発明の効果】
この発明の皮膚水分保持機能試験シートは、被験者の皮膚水分保持機能を簡単で正確に試験することができ、また室温や湿度等の環境の影響を容易に測定することができる。また、肌からの水分蒸発を防ぎ、保湿性の高い肌を維持することにより、滑らかで弾力のある美しい肌となり、化粧ののりがよい肌となる。このために皮膚からの水分蒸発量を半定量的に測定することにより、皮膚からの水分蒸発量が多い場合に起こる乾燥肌といった皮膚のトラブルを認識し、クリーム等の化粧品や衣類等の美容的な手入れの参考とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態の皮膚水分保持機能試験シートの正面図である。
【図2】この実施形態の皮膚水分保持機能試験シートの横断面図である。
【図3】この実施形態の皮膚水分保持機能試験シートの色の変化を示す正面図である。
【図4】この発明の他の実施形態の皮膚水分保持機能試験シートの正面図である。
【図5】この発明の他の実施形態の皮膚水分保持機能試験シートの背面図である。
【符号の説明】
10 皮膚水分保持機能試験シート
12 透明フィルム
14 表シート
16 透孔
18 第一表示部
19 第二表示部
20 色見本
22 粘着剤
24 第一の塩化コバルト紙
26 第二の塩化コバルト紙
28 不織布
30 剥離シート
Claims (4)
- 粘着剤により皮膚に貼付される粘着フィルムと、上記粘着フィルムの粘着剤側の面に設けられ塩化コバルトを吸着させた保持体を有し、上記粘着フィルムの上記保持体近傍には、上記塩化コバルトが吸湿により反応する発色の色見本が設けられ、上記保持体は疎水性の不織布で覆われ所定の湿度で塩化コバルトの反応が開始されるように調整されていることを特徴とする皮膚水分保持機能試験シート。
- 粘着剤により皮膚に貼付される粘着フィルムと、上記粘着フィルムの粘着剤側の面に設けられ塩化コバルトを吸着させた複数の保持体を有し、上記粘着フィルムの上記保持体近傍には、上記塩化コバルトが吸湿により反応する発色の色見本が設けられ、上記複数の保持体は異なる湿度で塩化コバルトの反応が開始されるように調整されていることを特徴とする皮膚水分保持機能試験シート。
- 上記保持体は、疎水性の不織布で覆われていることを特徴とする請求項1または2記載の皮膚水分保持機能試験シート。
- 上記保持体は濾紙であることを特徴とする請求項1または2記載の皮膚水分保持機能試験シート。
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