JP2004214018A - Nb3Sn線材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マトリックス材であるCu中にNbおよび5at%以下のBiを含有するSn−Bi合金からなるNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを内包した極細多芯構造を有する前駆体線材に対し、加熱炉中で625〜900℃の熱処理を2〜400時間行うことにより、極細多芯構造中のマイクロ複合フィラメントを拡散反応させ、Nb3Snフィラメントに変化させる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、Nb3Sn線材の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、高い値のJc値およびnon−Cu overall Jcを有するNb3Sn線材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
実用化されているNb3Sn線材の製造方法としては、従来、ブロンズ法、内部Sn拡散法、および、MJR法(Modified Jelly Roll法)が公知である(文献1)。
【0003】
図2に示すように、ブロンズ法は、ブロンズ[Cu−Sn合金]マトリックスにNbフィラメントを複合した極細多芯構造の線材を熱処理して、Nbとブロンズの拡散反応によりNb3Sn層を生成する方法である。この方法においては、最終的に、線材中に多量の低濃度のSnを含んだCuがマトリックスとして残留することが知られている。この方法においては、整った断面形状を有する線材を作ることができるが、初期のブロンズ中のSn濃度を大きく設定できないため、Jcの値が小さく、さらに、余分な低Sn濃度ブロンズが大量に残るため、non Cu overall Jcも小さくなる。さらに、伸線加工中に、繰り返し中間焼鈍を施さなければならないことが、この方法の問題点として挙げられている。
【0004】
また、図3に示すように、内部Sn拡散法は、Cuマトリックスの中にNbフィラメントを配し、中心部と外側にSnを配した線材をまず、低温で熱処理して、CuマトリックスとSnの拡散反応により高Sn濃度ブロンズを生成し、次いで高温で熱処理を施すことによりNb3Snを生成させる方法である。この方法においは、最終的に、線材中にマトリックスとして、多量の低Sn濃度のブロンズが残留する。初期のSn濃度を高く取れるため、Jcそのものが大きくなる。また、この方法においては、伸線工程で中間焼鈍がいらない等の利点を持つが、断面形状が崩れ易い(交流損失が大きくなる)、等の問題点を有する。
【0005】
MJR法においては、内部Sn拡散法と類似した形状の線材をCuシ−トと網目状にスリットを入れたNbシ−トを重ね合わせて、ロ−ル状に巻き組んで、Nb3Snを生成している。
【0006】
以上で説明した現在のNb3Snの製造方法においては、製造方法により分量が異なるものの、最終的なNb3Sn線材中に、超伝導特性あるいは安定性に対して余分な構成要素であるCu−Sn合金(ブロンズ部)が残存することが問題となる。このブロンズ部のCuは、拡散反応によるNb3Snの生成を低温で加速する働きがあり、微細結晶粒のNb3Snが生成するため、Cu添加した線材中に生成したNb3Sn層のJcは大きい値を示す。すなわち、このCuは、拡散反応段階において有用であるが、生成終了後に線材中にSnとの合金(ブロンズ)として残存し、最終段階の超伝導線材の構成要素としては不要であり、non−Cu overall Jcを引き下げる原因として作用している。
【0007】
【文献1】
超電導技術とその応用(編者 ISTECジャーナル編集委員会)
発行者 鈴木信夫 出版事業部 深山恒雄
発行所 丸善株式会社
平成8年10月31日発行(ISBN 4−621−04263−7 C3054)
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、生成されるNb3Sn中の余分な構成要素を取り除き、高い超伝導特性を有するNb3Sn線材の製造を実現する新しいNb3Sn線材の製造方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1に、マトリックス材であるCu中にNbおよび5at%以下のBiを含有するSn−Bi合金からなるNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを内包した極細多芯構造を有する前駆体線材に対し、加熱炉中で625〜900℃の熱処理を2〜400時間行うことにより、極細多芯構造中のマイクロ複合フィラメントを拡散反応させ、Nb3Snフィラメントに変化させることを特徴とするNb3Sn線材の製造方法を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、第2に、マトリックス材であるAg中にNbおよび5at%以下のBiを含有するSn−Bi合金からなるNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを内包した極細多芯構造を有する前駆体線材に対し、加熱炉中で625〜900℃の熱処理を2〜400時間行うことにより、極細多芯構造中のマイクロ複合フィラメントを拡散反応させ、Nb3Snフィラメントに変化させることを特徴とするNb3Sn線材の製造方法を、第3に、マトリックス材であるNb中にNbおよび5at%以下のBiを含有するSn−Bi合金からなるNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを内包した極細多芯構造を有する前駆体線材に対し、加熱炉中で625〜900℃の熱処理を2〜400時間行うことにより、極細多芯構造中のマイクロ複合フィラメントを拡散反応させ、Nb3Snフィラメントに変化させることを特徴とするNb3Sn線材の製造方法を提供する。
【0010】
また、この出願の発明は、以上のNb3Sn線材の製造方法として、第4に、マトリックス材とNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントとの間に、拡散反応の障壁となるバリアー材として、NbまたはTaのいずれかが挿入されていることを特徴とするNb3Sn線材の製造方法を、第5に、熱処理を行う以前において断面減少率が90%以上となるように前駆体線材に対して断面減少伸線加工を施し、バリアー材とマトリックス材との間に圧接することにより、良好な接合界面を形成し、接合界面における電気伝導度および熱伝導度を極低状態とすることを特徴とするNb3Sn線材の製造方法を、第6に、Sn−Bi合金が、Nb/Sn−Biマイクロ複合フィラメント中に均質に分布しており、平均直径が5μm以下の粒状、平均太さが5μm以下の糸状、または、平均厚さが5μm以下のフィルム状のうちのいずれかの形状を有することを特徴とするNb3Sn線材の製造方法を、第7に、Nb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントにおけるNbとSnとのat%組成比がM:N(ここで、72≦M≦80、20≦N≦28である)であることを特徴とするNb3Sn線材の製造方法を提供する。
【0011】
さらに、この出願の発明は、以上のNb3Sn線材の製造方法において製造されたNb3Sn線材を、Alメッキ、Alコンフォ−ム押し出し加工、または、Al管への真空封入のいずれかにより、Nb3Sn線材の全面をAlにより被覆し、次いで、230〜500℃、40気圧以上の圧力の不活性ガス雰囲気下において10分以上のHIP処理を行うことを特徴とするNb3Sn線材の製造方法をも提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、その実施の形態について説明する。
【0013】
この出願の発明であるNb3Sn線材の製造方法においては、Cuをマトリックス材とし、その中にNbと5at%以下のBiを含有するSn−Bi合金から構成されるNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを多数内包した極細多芯構造の前駆体線材を加熱炉中で625〜900℃で2〜400時間熱処理することにより、Nb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを拡散反応によりNb3Snフィラメントに変化させる。マトリックス材とマイクロ複合フィラメントとの間には、拡散反応の障壁となるNbもしくはTaがバリアー材として挿入されている。さらに、この前駆体線材は熱処理前に断面減少率で90%以上の断面減少伸線加工を施すことにより、バリアー材とマトリックス材のCuの間に圧接により良好な接合界面が形成され、安定化材としてCuが有効に働く状態(接合界面での電気伝導度、熱伝導度が極めて低い状態)になっている必要がある。
【0014】
また、Sn−Bi合金は、Nb/Sn−Biマイクロ複合フィラメント中に均質に分布している。Sn−Bi合金の形状は粒状、糸状、または、フィルム状のいずれでもよい。Sn−Bi合金の寸法は5μm以下とする。ここで、寸法とは、粒状合金の平均直径、、糸状合金の平均太さ、あるいは、フィルム状合金の平均厚さを意味している。
【0015】
また、このNb/Sn−Biマイクロ複合体フィラメントは、NbとSnとのat%組成比は、M:N((ここで、72≦M≦80、20≦N≦28である)である。なお、Nb/Sn−Biマイクロ複合体フィラメントに対する熱処理における処理温度が、650℃〜900℃である場合においては、電気炉等の加熱炉中において処理時間が長時間となることから、真空中もしくは不活性ガス中における熱処理を施すことになる。
【0016】
また、この出願の発明であるNb3Sn線材の製造方法においては、Agをマトリックス材とし、その中にNbと5at%以下のBiを含有するSn−Bi合金から構成されるNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを多数内包した極細多芯構造の前駆体線材を625〜900℃で2〜400時間熱処理することにより、Nb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを拡散反応によりNb3Snフィラメントに変化させる。マトリックス材とマイクロ複合フィラメントとの間には、拡散反応の障壁となるNbもしくはTaがバリアー材として挿入されている。さらに、この前駆体線材は熱処理前に断面減少率で90%以上の断面減少伸線加工を施すことにより、バリアー材とマトリックス材であるAgの間に圧接により良好な接合界面が形成され、安定化材としてAgが有効に働く状態(接合界面での電気伝導度、熱伝導度が極めて低い状態)になっている必要がある。
【0017】
また、Sn−Bi合金は、Nb/Sn−Biマイクロ複合フィラメント中に均質に分布している。Sn−Bi合金の形状は粒状、糸状、または、フィルム状のいずれでもよい。Sn−Bi合金の寸法は5μm以下とする。ここで、寸法とは、粒状合金の平均直径、、糸状合金の平均太さ、あるいは、フィルム状合金の平均厚さを意味している。
【0018】
また、このNb/Sn−Biマイクロ複合体フィラメントは、NbとSnとのat%組成比は、M:N((ここで、72≦M≦80、20≦N≦28である)である。なお、Nb/Sn−Biマイクロ複合体フィラメントに対する熱処理における処理温度が、650℃〜900℃である場合においては、電気炉等の加熱炉中での処理時間が長時間となることから、真空中もしくは不活性ガス中における熱処理を施すことになる。
【0019】
また、この出願の発明であるNb3Sn線材の製造方法においては、Nbをマトリックス材とし、その中にNbと5at%以下のBiを含有するSn−Bi合金から構成されるNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを多数内包した極細多芯構造の前駆体線材を625〜900℃で2〜400時間熱処理することにより、Nb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを拡散反応によりNb3Snフィラメントに変化させる。
【0020】
また、Sn−Bi合金は、Nb/Sn−Biマイクロ複合フィラメント中に均質に分布している。Sn−Bi合金の形状は粒状、糸状、または、フィルム状のいずれでもよい。Sn−Bi合金の寸法は5μm以下とする。ここで、寸法とは、粒状合金の平均直径、、糸状合金の平均太さ、あるいは、フィルム状合金の平均厚さを意味している。
【0021】
また、このNb/Sn−Biマイクロ複合体フィラメントは、NbとSnとのat%組成比は、M:N((ここで、72≦M≦80、20≦N≦28である)である。なお、Nb/Sn−Biマイクロ複合体フィラメントに対する熱処理における処理温度が、650℃〜900℃である場合においては、電気炉等の加熱炉中での処理時間が長時間となる。
【0022】
以上のように製造されたNb3Sn線材を、Alメッキ、Alコンフォ−ム押し出し加工、あるいは、Al管への真空封入等により、線材の全面をAlにより被覆した後、230〜500℃、40気圧以上の圧力の不活性ガス雰囲気下において10分以上のHIP処理を行うことにより、AlとNbの界面に優れた接合が形成され、安定化された超伝導線材とすることができる。
【0023】
Nb/Sn−Biマイクロ複合体フィラメント中のSn−Bi合金において、BiはSnの硬度を増加させ、Nbの硬度に近づけ、Nbとの複合加工性を改善する作用を有する。従来、通常のNbとSnのロッドインチュ−ブ法(Nb管にSn棒を詰め込んで伸線加工する製法)による複合体の伸線加工では、Snの径が50μm程度の複合体の作製が限界であった。一方、ロッドインチュ−ブ法によるNb/Sn−Biの複合体の伸線加工ではSn径が5μm以下である複合体線の作製が可能となった。また、ジェリ−ロ−ル法(Nbシ−トとSnシ−トを重ねてジェリ−ロ−ル状に巻き込んだ複合体線を伸線加工する製法)やクラッドチップ押出し法(Nbシ−トの両面にSnシ−トを重ね、ロ−ル圧延で圧接したシ−トをチップ上に切断し、押出し加工や伸線加工により複合線材を作成する製法)パウダ−インチュ−ブ法(金属パイプにNb紛とSn紛の混合紛を詰め込み伸線加工により複合線材に加工する製法)では、これよりも小さい寸法を有する1〜3μmのSnを含んだNb/Sn複合体が作製可能であるが、これらの製法において、Snの代わりに、Sn−Bi合金シ−トもしくはSn−Bi合金粉末を、出発材料として選択した場合、数百nmの寸法のSn−Bi合金を含んだマイクロ複合体線が製造可能である。この出願の発明においては、従来のNb3Sn線材の製造方法において利用されてきたCuの拡散促進効果を用いないことから、拡散反応を早く終わらせ、結晶粒成長を抑制する上で、拡散距離、すなわち、Snの径(実際は径の約1/2)を小さく設定する必要がある。結晶粒界は、Nb3Snの有力なピン止めセンターとして考えられており、したがって、Sn径の縮小は熱処理時間の短縮をもたらし、結晶粒径の小さなNb3Sn、すなわち、ピン止め点が多く超伝導相当たりの臨界電流密度Jcが大きいNb3Snの生成が可能となることを意味する。実験によると、前駆体線材のNb/Sn−Biマイクロ複合体フィラメント中におけるSn−Bi合金の寸法は5μm以下、好ましくは、2μm以下の場合、優れたJc値を得ることができた。
【0024】
また、Sn中のBi濃度は、固溶限界である5at%以下とすることが望ましい。5at%以上の濃度のBiを含んだSn合金は脆弱となり、複合加工特性がむしろ劣化する。
【0025】
Biの添加は、拡散生成したNb3SnのTcやHc2にほとんど悪影響をおよぼさず、その点で、好ましい。
【0026】
また、フィラメント中のNbとSnのat%による組成比は、Nb−20〜28at%Snとすることが好ましく、より好適には、Nb−21〜27at%Snとした場合に優れた超伝導特性が得られる。
【0027】
上記のとおりの、前駆体線材に対する熱処理ではその加熱温度に応じて、最適熱処理時間を適宜設定することになる。通常の熱処理炉で数十km長の線材の熱処理を行うにはコイル状に巻き込んで行う。この時、巻き線の中心部と表面では温度の上がり方、下がり方に差が出てくるため、熱処理条件があまり異ならないようにするためには、熱処理時間は、2時間以上、より好適には、10時間以上に設定される。一方、400時間を越える長時間熱処理では熱処理に必要な電力が大きくなり、線材コストを押し上げることになる。この2〜400時間を最適熱処理時間とする温度領域は625〜900℃である。
【0028】
この出願の発明であるNb3Sn線材の製造方法においては、従来技術で問題となっていたブロンズ残存をなくすことにより、余分な構成要素を取り除いている。一方、Cu添加なしで拡散速度が遅くなる問題は、拡散対を増やし、拡散距離を短くすることでNb3Sn生成量を増やし、解決している。
【0029】
さらに、この出願の発明であるNb3Sn線材の製造方法においては、拡散距離が短いことから、拡散熱処理条件も低温・短時間側にシフトし、結晶成長が起こりにくく、細かい結晶粒径を持つNb3Sn層の生成が実現し、Nb3Sn層当たりのJc値が大きくなっている。また、線材中のNb/Snの原子組成比を化学量論比に近づける設計が可能となるため、従来の実用Nb3Sn線材と比べ、特性が良好な化学量論組成のNb3Snがより多量に生成する。この作用も相乗してNb3Sn層当たり、大きなJcを得ることができる。
【0030】
このように、この出願の発明であるNb3Sn線材の製造方法においては、Nb3Sn層当たりのJcが、従来法によるNb3Sn線材に比較し、1.2〜2倍程度向上し、さらに、出来上がった線材中の余分なブロンズを省略できる。余分なブロンズは、製法によって異なるが、実用Nb3Sn線材中の安定化材のCuを除いた部分の体積の40〜70%を占めている。逆に言うと、線材中で超伝導を担うNb3Snは30〜60%の体積率を占めるにすぎない。このため、新製法でのNb3Sn線材では安定化材を除いた線材全断面積当たりのJc (nonCu overall Jcと呼ばれ実用上極めて重要な特性) を2〜6倍程度、増大させることに成功した。
【0031】
NbとSnを複合加工して、線状に加工し、次いで拡散熱処理で、Nb3Snを生成しようという試みは、最も初期に研究された。しかし、Nbに比べて、Snが柔らかすぎ、Nb/Sn複合加工は困難である。したがって、断面減少率の大きな伸線加工は極めて困難であり、Snの寸法が50μm以下となるようなNb/Sn複合体作製は不可能であった。ただし、複合加工を利用しない製法で、Nbテ−プの両面にSnを溶融メッキし、拡散反応で、Nb3Sn層を表面に生成するNb3Sn拡散テ−プは、米国IGC社で1970年代に実用化されている。このNb3Sn核酸テープは、極細多芯線でないため、不安定であるという欠点は持っているが、安価で、nonCu overall Jcが大きいため、現在でも、わずかではあるが、使われている。
【0032】
ところで、Cuを介在させないNbとSnの相互拡散反応では、真空炉、もしくは不活性ガス雰囲下の通常の熱処理では数μmの厚さのNb3Sn拡散層の生成が工業的な上限である。これ以上の厚みを得ようとすると、低温熱処理では、工業的にコスト高となる極めて長時間の熱処理を必要とし、高温熱処理では、厚みは厚くできるが、加熱過程と、冷却過程で、不必要に時間がかかるため、ト−タルとして、結晶粒が粗大化するような長時間の熱処理となってしまい、Nb3Sn相当たりのJcが低下する。したがって、Snの寸法が50μm程度のNb/Sn複合線材を拡散熱処理すると、線材中に超伝導相のNb3Sn以外に多量の余剰Nbが残り、その他に、NbSn2相、Nb6Sn5相、及び未反応Sn相も多量に生成・残留するため、安定化材を除いた線材全断面積当たりのJcが小さくなり実用的ではない。一方、この出願の発明においては、Nb/Sn−Biの複合体線が伸線加工性に優れており、Sn−Biの寸法が2μm以下となる細かい複合体まで伸線加工ができる。したがって、Nb/Sn−Bi複合体線材中にはNb/Sn−Bi拡散対を多量に組み込むことが可能である。極細多芯線構造のNb3Sn前駆体線材中のNb/Sn−Biマイクロ複合体フィラメントのNb/Sn比をat%で、Nb3Sn化学量論組成比である3対1に近い組成比で組み込んだ場合、完全に拡散反応が完了すると、Nb/Sn−Biマイクロ複合体フィラメントを全て、Nb3Sn相単一に近づけることができる。Biは微量添加のため、Snと置換しているものと考えられる。
【0033】
この出願の発明であるNb3Sn線材の製造方法においては、上記の通り、最適な熱処理条件範囲が2箇所あり、一つは650〜850℃で数時間から数百時間の低温熱処理でNb3Snを拡散生成させる。
【0034】
安定化材のCuもしくはAg中に複合された状態で行うことができるので、安定化材の複合工程を別途考える必要がない。ただし、Alを安定化材とする場合は、どちらの熱処理条件でも、Alの融点を越えているか、激しく、Nb/Alの拡散反応が進行する条件となっており、好ましくない。したがって、Al安定化材の複合はNb3Sn層を生成させる熱処理が終了後、行わなくてはならない。
【0035】
以上は、この出願の発明における形態の一例であり、この出願の発明がこれらに限定されることはなく、その細部について様々な形態をとりうることが考慮されるべきであることは言うまでもない。
【0036】
この出願の発明は、以上の特徴を持つものであるが、以下に実施例を示し、さらに具体的に説明する。
【0037】
【実施例】
実施例1
rod−in−tube法により、Sn−4at%Bi合金棒がNbパイプに詰め込まれた複合体を溝ロ−ル加工し、次いで、伸線加工により細線状に加工することにより、短い線材に切断した。この複合細線を300本分束ね、拡散バリアーとなるNbパイプ中に詰め込み、さらに外側にマトリックス材となるCuパイプ(このCuは最終的には安定化材の役割をはたすが、この段階の工程ではダイス引きによる伸線加工の減摩材の役割も果たしている)をはめ込み、押し出し加工および伸線加工により、最外層がCu、中心層にNb/Sn−Bi複合体線(この部分が最終的に極細多芯線のNb3Snフィラメントとなる)、また、中間層に拡散バリアーとしてのNb層が存在する3層の単芯複合線として形成した。次いで、この単芯複合線を400本束ねて、Cu管に詰め込み、押し出し加工、伸線加工により、Cuマトリックスの極細多芯線構造の前駆体線に加工した。
【0038】
次いで、この前駆体線材を石英ガラスのカプセルに真空封入し、熱処理を行った結果、表1に示すように、比較例としての600℃×400h、950℃×0.1h、並びに従来のブロンズ法によるNb3Sn線材の場合との対比からも明らかであるように、優れた超伝導特性が得られた。Jc値は、4.2Kで測定した。
【0039】
【表1】
実施例2
実施例1と同様の製法により、Cu管の代わりにAg管を用い作成したAgマトリックスの前駆体線材に加工し熱処理を施したところ、表2に示すような超伝導特性が得られた。
【0040】
【表2】
実施例3
実施例1と同様のプロセスで、Cu管の代わりにNb管を使って作製したNbマトリックスの極細多芯構造の前駆体線を熱処理を施した線材に、Al管を被せ、両端を潰して、真空中で溶接した。その後、500気圧のArガス雰囲気中、400℃で1時間のHIP処理を施した。この線材の超伝導特性を測定したところ、Cuマトリックス線材やAgマトリクス線材と類似した超伝導特性を示し、特に低磁界で、Jcがかなり大きくなっても、電流−電圧特性は、スム−ズな立ち上がりを見せ、すべての測定において同一電流値で、電圧の立ち上がりが起こり、製造されたNb3Sn線材が極めて高い安定性を有することが認められた。線材断面を観察したとこる、Nb/Al界面に厚さ0.5μm程度の極薄い拡散層が生成していることが判明した。この程度の拡散層の存在は、線材の安定性に影響を与えないことが明らかになった。また、この界面はかなり頑丈で、線材を曲げても界面剥離は観察されなかった。
実施例4
実施例3と同様の方法でAl管被覆線材に各種のHIP処理を施したところ、HIP処理温度が550℃を越えた場合、10μm以上の厚さの拡散層が生成し、電流−電圧特性は急激な立ち上がりを見せ、しかも、立ち上がる電流値が、一定せず、計測のたびに異なる不安定性を示す。また、HIP処理温度が200℃以下の場合や、HIP圧力が35気圧以下の場合、強固なNb/Al界面は形成されず、線材を少し曲げる程度で、界面に剥離が観察された。
【0041】
【発明の効果】
この出願の発明によって、以上詳しく説明したとおり、生成されるNb3Sn中の余分な構成要素を取り除き、高い超伝導特性を有するNb3Sn線材の製造を実現する新しいNb3Sn線材の製造方法が提供される。
【0042】
従来のNb3Sn線材の製造方法においては、Cu添加による拡散促進効果を利用しており、Cu添加はNb3Sn生成に、低温・短時間熱処理を可能とし、細かい結晶粒のJcの大きいNb3Snを生成させる効果を持つが、一方で、製造される線材中にCu−Sn合金として残り、このCu−Sn合金は、安定化材として作用しないばかりか、線材のnon−Cu overall Jcを引き下げていた。この出願の発明であるNb3Sn線材の製造方法は、Snに対してBiを添加させることにより、Nbとの複合加工性が飛躍的に向上することに着目してなされたもので、Nb/Sn−Biマイクロ複合体フィラメントを含んだ線材を、Nb3Sn線材の前駆体線材として使うことを特徴としている。この出願の発明のNb3Sn線材の製造方法においては、線材中のNb/Sn−Bi拡散対の密度を増やし、拡散距離を飛躍的に短くする事で、Cuを拡散反応に関与させることなく、低温・短時間熱処理で、Nb3Sn層を生成させている。この製法で得られた線材のNb3Sn層当たりのJcはCu添加した製法の線材と比較して全く低下しておらず、それどころか、フィラメント中のSn濃度が高められ、化学量論組成に近い、特性の優れたNb3Snが多量に生成するため、むしろ、1.2〜2倍程度増加した。さらに、線材中の余分なCu−Sn合金の残存がなくなる事で、従来製法の2〜6倍大きいnon−Cu overall Jcが得られる。
【0043】
この出願の発明であるNb3Sn線材の製造方法においては、実用に際して必要とされるTc、Hc2、Jc等の超伝導特性は従来のNb3Sn超伝導線材と全く同等か、大きく上回っており、実用上重要であると考えられる安定化材が複合された極細多芯線形状の線材を供給することが可能となる。Nb3Sn線材のnon−Cu overall Jcが、従来のNb3Sn線材と比較して2〜6倍程度高くなることは、経済的に極めて重要であると考えられる。すなわち、全く同一仕様の超伝導マグネットを、この出願の発明により製造されるNb3Sn線材で巻いた場合には、使う線材量を1/2〜1/6以下にすることが可能であることを意味している。さらに、冷却対象物の重量を大幅に減らすことができるため、冷却運転コストも大幅に低下するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術のNb3Sn線材の製造方法について示した概要図である。
【図2】従来技術のNb3Sn線材の製造方法について示した概要図である。
Claims (8)
- マトリックス材であるCu中にNbおよび5at%以下のBiを含有するSn−Bi合金からなるNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを内包した極細多芯構造を有する前駆体線材に対し、加熱炉中で625〜900℃の熱処理を2〜400時間行うことにより、極細多芯構造中のマイクロ複合フィラメントを拡散反応させ、Nb3Snフィラメントに変化させることを特徴とするNb3Sn線材の製造方法。
- マトリックス材であるAg中にNbおよび5at%以下のBiを含有するSn−Bi合金からなるNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを内包した極細多芯構造を有する前駆体線材に対し、加熱炉中で625〜900℃の熱処理を2〜400時間行うことにより、極細多芯構造中のマイクロ複合フィラメントを拡散反応させ、Nb3Snフィラメントに変化させることを特徴とするNb3Sn線材の製造方法。
- マトリックス材であるNb中にNbおよび5at%以下のBiを含有するSn−Bi合金からなるNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントを内包した極細多芯構造を有する前駆体線材に対し、加熱炉中で625〜900℃の熱処理を2〜400時間行うことにより、極細多芯構造中のマイクロ複合フィラメントを拡散反応させ、Nb3Snフィラメントに変化させることを特徴とするNb3Sn線材の製造方法。
- マトリックス材とNb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントとの間に、拡散反応の障壁となるバリアー材として、NbまたはTaのいずれかが挿入されていることを特徴とする請求項1または2のNb3Sn線材の製造方法。
- 熱処理を行う以前において断面減少率が90%以上となるように前駆体線材に対して断面減少伸線加工を施し、バリアー材とマトリックス材との間に圧接することにより、良好な接合界面を形成し、接合界面における電気伝導度および熱伝導度を極低状態とすることを特徴とする請求項4のNb3Sn線材の製造方法。
- Sn−Bi合金が、Nb/Sn−Biマイクロ複合フィラメント中に均質に分布しており、平均直径が5μm以下の粒状、平均太さが5μm以下の糸状、または、平均厚さが5μm以下のフィルム状のうちのいずれかの形状を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかのNb3Sn線材の製造方法。
- Nb/Sn−Biマイクロ複合フィラメントにおけるNbとSnとのat%組成比がM:N(ここで、72≦M≦80、20≦N≦28である)であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかのNb3Sn線材の製造方法。
- 請求項1ないし7のいずれかの方法により製造されたNb3Sn線材を、Alメッキ、Alコンフォ−ム押し出し加工、または、Al管への真空封入のいずれかにより、Nb3Sn線材の全面をAlにより被覆し、次いで、230〜500℃、40気圧以上の圧力の不活性ガス雰囲気下において10分以上のHIP処理を行うことを特徴とするNb3Sn線材の製造方法。
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