JP2004200369A - パワーモジュール用基板及びパワーモジュール - Google Patents
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- H01L23/473—Arrangements for cooling, heating, ventilating or temperature compensation ; Temperature sensing arrangements involving the transfer of heat by flowing fluids by flowing liquids
Abstract
【課題】絶縁性基板及び放熱体の双方の熱膨張係数差に拘わることなく、反りを低減できると共に、熱伝導率が低下することも抑制できるパワーモジュール用基板を提供すること。
【解決手段】放熱体16の放熱体本体17に低熱膨張材18が積層される。放熱体本体17は、例えば純Al,Al合金,純Cu又はCu合金等,好ましくは純度99.5%以上の純Alのような熱伝導性の良好な材質、いわゆる高熱伝導材で形成され、低熱膨張材18は、放熱体本体17の熱膨張係率より低い熱膨張係数の材質、例えばFe―Ni系合金からなる。低熱膨張材18の積層方向の厚さAは、放熱体本体17の積層方向の厚さBの0.05倍以上0.10倍以下となるように形成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】放熱体16の放熱体本体17に低熱膨張材18が積層される。放熱体本体17は、例えば純Al,Al合金,純Cu又はCu合金等,好ましくは純度99.5%以上の純Alのような熱伝導性の良好な材質、いわゆる高熱伝導材で形成され、低熱膨張材18は、放熱体本体17の熱膨張係率より低い熱膨張係数の材質、例えばFe―Ni系合金からなる。低熱膨張材18の積層方向の厚さAは、放熱体本体17の積層方向の厚さBの0.05倍以上0.10倍以下となるように形成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、大電圧・大電流を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュール用基板に係り、特に半導体チップ等の発熱体から発生する熱を放散させる放熱体を有するパワーモジュール用基板及びパワーモジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のパワーモジュール用基板にあっては、セラミックス材料からなる絶縁基板(セラミックス基板)に金属薄板が直接積層され、この金属薄板に可塑性多孔質金属層を介し、ヒートシンクからなる放熱体が積層接着される(例えば、特許文献1参照)。可塑性多孔質金属層は、気孔率20〜50%のCuの多孔質焼結体であり、絶縁基板が、これに搭載されている半導体チップからの熱を受けたとき、その熱変形を吸収することで絶縁基板及び放熱体の反りや割れを防止できるように構成され、いわゆる応力緩和層をなしている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−335652号公報(第4−12頁、図1〜図5)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記に示す従来のパワーモジュール用基板は、可塑性多孔質金属層が、絶縁基板や放熱体の熱変形を吸収するので、絶縁基板と放熱体との熱膨張係数が異なっても、絶縁基板,放熱体に反りや割れが起こることを防止できるようにしているものの、絶縁基板と放熱体との間に可塑性多孔質金属層が介在しているので、その分だけ熱抵抗が上昇して熱伝導率が低下してしまい、放熱効果が悪くなっていた。
【0005】
一般に、絶縁基板と放熱体とのように、互いに熱膨張係数の異なる材質で構成する場合、両者の熱膨張係数の差による反りを防ぐためには、両者の熱膨張係数を合わせることが容易に考えられる。その場合、熱膨張係数の低い方(絶縁基板)に合わせることとなるが、そうすると、反りを低減できる反面、その分だけ熱伝導率が低下して放熱効果の低下をきたしてしまい、反り対策と良好な熱伝導との双方を兼ね備えたものの要請に答えることができない問題があった。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、絶縁基板及び放熱体の双方の熱膨張係数差があっても、これに拘わることなく反りを低減することができると共に、熱伝導率が低下することを抑制することができるパワーモジュール用基板及びパワーモジュールを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、絶縁基板と、該絶縁基板の一方の面側に設けられた放熱体とを備えたパワーモジュール用基板であって、前記放熱体は、放熱体本体に該放熱体本体の熱膨張係数より低い材質からなる低熱膨張材を積層して構成され、 該低熱膨張材の積層方向の厚さは、前記放熱体本体の積層方向の厚さの0.10倍以下で形成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明に係るパワーモジュール用基板によれば、放熱体が、放熱体本体と低熱膨張材とを積層して形成されると、放熱体全体の熱膨張係数を確実に下げることになるで、絶縁基板と放熱体全体との熱膨張係数の差が可及的に小さくなる。このため、絶縁基板と放熱体とをはんだ等によって接合した場合、放熱体に絶縁基板に向かう反りが発生することを確実に抑制することになる。さらに、低熱膨張材の積層方向の厚さが、放熱体本体の積層方向の厚さの0.10倍以下で形成されているので、放熱体全体の熱伝導率の低下も最小限に抑制することになる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のパワーモジュール用基板において、前記低熱膨張材の積層方向の厚さは、前記放熱体本体の積層方向の厚さの0.05倍以上で形成されていることを特徴とする。
【0010】
この発明に係るパワーモジュール用基板によれば、低熱膨張材の積層方向の厚さが、放熱体本体の積層方向の厚さの0.05倍以上で形成されているので、放熱体全体の熱膨張係数に寄与する低熱膨張材の影響を最小限維持することになり、放熱体全体としての熱膨張係数を確実に下げ、絶縁基板と放熱体全体との熱膨張係数の差が可及的に小さくなる。このため、絶縁基板と放熱体とをはんだ等によって接合した場合、放熱体に絶縁基板に向かう反りが発生することを確実に低減することになる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の絶縁基板上にチップを搭載してなることを特徴とする。
【0012】
この発明に係るパワーモジュールによれば、絶縁基板と放熱体との熱膨張係数の差に拘わることなく、両者の反りを可及的に抑えつつ良好な熱伝導率を有するパワーモジュールが得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の第一実施形態に係るパワーモジュール用基板を適用したパワーモジュールを示す全体図である。
本第一実施形態のパワーモジュールPにおいて、パワーモジュール用基板10は、大別すると図1に示すように、絶縁基板11と、放熱体16とを備える。
絶縁基板11は、例えばAlN,Al2O3,Si3N4,SiC等により所望の大きさに形成され、その上面及び下面に回路層12及び金属層13がそれぞれ積層接合される。回路層12及び金属層13は、純Al,Al合金,Cu等により形成されている。
【0014】
絶縁基板11の回路層12上にはんだ14によって半導体チップ30が搭載される一方、金属層13の下面にはんだ15によって、或いはろう付けや拡散接合等によって放熱体16が接合され、更に、この放熱体16が冷却シンク部20に取り付けられて使用され、該冷却シンク部20内の冷却水(或いは冷却空気)21により、放熱体16に伝達される熱が外部に放熱されることで、パワーモジュールPが構成されている。放熱体16は、冷却シンク部20に取付ねじ22によって密着した状態で取り付けられる。
【0015】
また、放熱体16を構成する放熱体本体17に低熱膨張材18が、図示しないろう材を介して積層接合されている。放熱体本体17は、例えば純Al,Al合金,純Cu,又はCu合金等,好ましくは純度99.5%以上の純Alのような熱伝導性の良好な材質,いわゆる高熱伝導材によって形成されている。高熱伝導材としては、熱伝導率が例えば、100W/m・K以上、好ましくは150W/m・K以上のものである。
【0016】
一方、低熱膨張材18は平板とされ、放熱体本体17の熱膨張係数より低い熱膨張係数の材質からなっており、放熱体本体17に積層することで、放熱体16全体の熱膨張係数と絶縁基板11の熱膨張係数との差を可及的に近づけさせるためのものである。この低熱膨張剤18は、Fe―Ni系合金,例えばインバー合金からなり、熱膨張係数がおよそ2.0×10−6/℃以下である。
ここで、インバー合金とは、室温付近でほとんど熱膨張が生じない合金であって、Feが64.6mol%で、Niが35.4mol%の組成率となっている。但し、Fe中には、それ以外の不可避不純物が含まれたものもインバー合金と呼ばれている。
【0017】
このような材質からなる低熱膨張材18は、前述したように、放熱体本体17と17との間に図示しないろう材を介して接合されている。従って、放熱体16が二枚の放熱体本体17と一枚の低熱膨張材18との三層構造であって、絶縁基板11側と冷却シンク部20側とに放熱体本体17が配置されている。
【0018】
また、この低熱膨張材18の積層方向の厚さAは、放熱体本体17の積層方向の厚さBの0.05倍以上0.10倍以下で形成されている。これは、放熱体16自体に低熱膨張材18を設けると、それだけ熱伝導率が低下するため、この熱伝導率の低下を極力抑えるためであるとともに、この熱伝導率の低下を抑えるために、徒に低熱膨張材18の厚さAを薄くすると、放熱体16自体の熱膨張係数に寄与する低熱膨張材18の影響が小さくなり、放熱体16自体の熱膨張係数が放熱体本体17の熱膨張係数と略同一となることを回避するためである。
すなわち、低熱膨張材18の厚さAを放熱体本体の厚さBの0.05倍以上0.10倍以下とすることにより、低熱膨張材18による放熱体16自体の熱膨張係数の低下,すなわち放熱体16の反り発生抑制と、放熱体16自体の熱伝導率の低下抑制とを図る構成となっている。
【0019】
以上説明したように、パワーモジュール用基板10を構成する放熱体16が、放熱体本体17と低熱膨張材18とを互いに積層して形成されると、放熱体16全体としての熱膨張係数を確実に下げることができるので、絶縁基板11と放熱体16全体との熱膨張係数の差を可及的に小さくすることができる。
【0020】
このため、絶縁基板11と放熱体16とをはんだ15(若しくはろう付けや拡散接合等)によって接合した場合、放熱体16に絶縁基板11に向かう反りが発生することを確実に抑制することができる。これにより、放熱体16を冷却シンク部20に取り付けても、冷却シンク部20と放熱体16との間に隙間が発生することを防止することができ、放熱体16から冷却シンク部20への熱の伝導効率低下を抑制することができる。
【0021】
しかも、低熱膨張材18が金属であってかつ相応の熱伝導率を有しているので、絶縁基板11上の半導体チップ30からの発熱が、回路層12,絶縁基板11,金属層13,はんだ15,放熱体16及び冷却シンク部20を介して外部に良好に放熱されることになる。すなわち、パワーモジュール用基板10全体としての熱伝導率が低下することを抑制することができ、パワーモジュール用基板10全体としての温度上昇を抑制することができる。この結果、絶縁基板11と放熱体16との熱膨張係数に差があっても、放熱体16の温度上昇を抑制することができるため、放熱体16の反り発生抑制効果を備えた,良好なパワーモジュール用基板10を得ることができる。
【0022】
また、低熱膨張材18の積層方向の厚さAは、放熱体本体17の積層方向の厚さBの0.05倍以上0.10倍以下で形成されているので、放熱体16自体の熱伝導率を低下させることなく、熱膨張係数の低下を図ることができる。
すなわち、低熱膨張材18の厚さAを、放熱体本体17の厚さBの0.05倍以下で形成すると、放熱体16自体の熱伝導率の低下を抑制することはできるが、放熱体16自体の熱膨張係数に寄与する低熱膨張材18の影響が小さくなり、放熱体16自体の熱膨張係数が、高熱膨張材である放熱体本体17のものと略同一となる。また、低熱膨張材18の厚さAを、放熱体本体17の厚さBの0.10倍以上で形成すると、放熱体16自体の熱膨張係数の低下を図ることができるが、放熱体16自体の熱伝導率が低下することになる。以上により、前記厚さAと厚さBとを前記範囲に設定することにより、放熱体16の熱膨張係数の低下,すなわち放熱体16の反り発生抑制と、放熱体16の熱伝導率の低下抑制とを両立させた、良好なパワーモジュール用基板10を得ることができる。
【0023】
次に、本発明の第二実施形態について説明するが、前述の第一実施形態と同様の部位には、同一符号を付し、その説明を省略する。
本第二実施形態によるパワーモジュール用基板が、前述の第一実施形態のパワーモジュール用基板と異なる点は、図2に示すように、放熱体16表面に、冷却シンク部20に換えてAl等からなる放熱フィン41を設けた点である。
この放熱フィン41は、図2に示すように、放熱体16表面に図示しないろう材を介して接合された接合部40aと、接合部40aの一端に設けられ接合部40aと直交して立上がる立上がり部40bと、立上がり部40bの上端に設けられ接合部40aに平行且つ離間する方向に延びる平坦部40cと、平坦部40cの一端に設けられ平坦部40cに直交且つ放熱体16に向かって折返る折返し部40dとを備えた突出部40が、放熱体16の沿面方向に沿って繰返し連続して設けられた構成となっている。この構成において、立上がり部40bと平坦部40cと折返し部40dと放熱体16表面とが空間40eを形成している。
以上説明したように、本第二実施形態によるパワーモジュール用基板においても、前述の第一実施形態の作用,効果を同様に奏することができる。
【0024】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、第一,第二実施形態では、放熱体に積層された低熱膨張材として、Fe―Ni系合金を用いた例を示したが、他の低熱膨張材、例えば高炭素鋼(Fe−C)、42合金、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等で構成しても、同様の作用効果が得られる。
また、絶縁基板11において放熱体16側の面に金属層13が積層された例を示したが、これに限らず、金属層13が設けられていない絶縁基板11を放熱体16に直接接合しても、同様の作用効果が得られる。
さらに、平板により形成された低熱膨張材18に替えて、気孔率10%以上80%以下の,いわゆる低密度成型体としてもよい。例えば、圧紛体,グリーン体,又は発泡体,すなわちFe―Ni系合金の微細粒子が焼結されてなる中実の骨格間に、互いに連通する空隙が形成された三次元網目構造の多孔質焼結体でもよい。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、放熱体を、放熱体本体と低熱膨張材とを積層して形成することで、放熱体全体としての熱膨張係数を下げ、また低熱膨張材の積層方向の厚さを放熱体本体の積層方向の厚さの0.10倍以下で形成することで、放熱体全体としての熱伝導率の低下を抑制するように構成したので、絶縁基板と放熱体との熱膨張係数に差があっても、放熱体の反り発生抑制と、熱伝導率の低下抑制とを両立させた良好なパワーモジュール用基板が得られる。
【0026】
請求項2に係る発明によれば、低熱膨張材の積層方向の厚さが、放熱体本体の積層方向の厚さの0.05倍以上で形成されているので、放熱体全体の熱膨張係数に寄与する低熱膨張材の影響を最小限維持することができる。これにより、放熱体全体としての熱膨張係数の低下と熱伝導率の低下抑制とを両立させた良好なパワーモジュール用基板が得られる。
【0027】
請求項3に係る発明によれば、絶縁基板と放熱体との熱膨張係数の差に拘わることなく、両者の反りを可及的に抑えつつ良好な熱伝導率を有するパワーモジュールが得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第一実施形態に係るパワーモジュール用基板を適用したパワーモジュールを示す全体図である。
【図2】この発明の第二実施形態に係るパワーモジュール用基板を適用したパワーモジュールを示す全体図である。
【符号の説明】
10 パワーモジュール用基板
11 絶縁基板
16 放熱体
17 放熱体本体(高熱伝導材)
18 低熱膨張材
30 半導体チップ(チップ)
A 低熱膨張材の厚さ
B 放熱体本体(高熱伝導材)の厚さ
P パワーモジュール
【発明の属する技術分野】
この発明は、大電圧・大電流を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュール用基板に係り、特に半導体チップ等の発熱体から発生する熱を放散させる放熱体を有するパワーモジュール用基板及びパワーモジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のパワーモジュール用基板にあっては、セラミックス材料からなる絶縁基板(セラミックス基板)に金属薄板が直接積層され、この金属薄板に可塑性多孔質金属層を介し、ヒートシンクからなる放熱体が積層接着される(例えば、特許文献1参照)。可塑性多孔質金属層は、気孔率20〜50%のCuの多孔質焼結体であり、絶縁基板が、これに搭載されている半導体チップからの熱を受けたとき、その熱変形を吸収することで絶縁基板及び放熱体の反りや割れを防止できるように構成され、いわゆる応力緩和層をなしている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−335652号公報(第4−12頁、図1〜図5)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記に示す従来のパワーモジュール用基板は、可塑性多孔質金属層が、絶縁基板や放熱体の熱変形を吸収するので、絶縁基板と放熱体との熱膨張係数が異なっても、絶縁基板,放熱体に反りや割れが起こることを防止できるようにしているものの、絶縁基板と放熱体との間に可塑性多孔質金属層が介在しているので、その分だけ熱抵抗が上昇して熱伝導率が低下してしまい、放熱効果が悪くなっていた。
【0005】
一般に、絶縁基板と放熱体とのように、互いに熱膨張係数の異なる材質で構成する場合、両者の熱膨張係数の差による反りを防ぐためには、両者の熱膨張係数を合わせることが容易に考えられる。その場合、熱膨張係数の低い方(絶縁基板)に合わせることとなるが、そうすると、反りを低減できる反面、その分だけ熱伝導率が低下して放熱効果の低下をきたしてしまい、反り対策と良好な熱伝導との双方を兼ね備えたものの要請に答えることができない問題があった。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、絶縁基板及び放熱体の双方の熱膨張係数差があっても、これに拘わることなく反りを低減することができると共に、熱伝導率が低下することを抑制することができるパワーモジュール用基板及びパワーモジュールを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、絶縁基板と、該絶縁基板の一方の面側に設けられた放熱体とを備えたパワーモジュール用基板であって、前記放熱体は、放熱体本体に該放熱体本体の熱膨張係数より低い材質からなる低熱膨張材を積層して構成され、 該低熱膨張材の積層方向の厚さは、前記放熱体本体の積層方向の厚さの0.10倍以下で形成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明に係るパワーモジュール用基板によれば、放熱体が、放熱体本体と低熱膨張材とを積層して形成されると、放熱体全体の熱膨張係数を確実に下げることになるで、絶縁基板と放熱体全体との熱膨張係数の差が可及的に小さくなる。このため、絶縁基板と放熱体とをはんだ等によって接合した場合、放熱体に絶縁基板に向かう反りが発生することを確実に抑制することになる。さらに、低熱膨張材の積層方向の厚さが、放熱体本体の積層方向の厚さの0.10倍以下で形成されているので、放熱体全体の熱伝導率の低下も最小限に抑制することになる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のパワーモジュール用基板において、前記低熱膨張材の積層方向の厚さは、前記放熱体本体の積層方向の厚さの0.05倍以上で形成されていることを特徴とする。
【0010】
この発明に係るパワーモジュール用基板によれば、低熱膨張材の積層方向の厚さが、放熱体本体の積層方向の厚さの0.05倍以上で形成されているので、放熱体全体の熱膨張係数に寄与する低熱膨張材の影響を最小限維持することになり、放熱体全体としての熱膨張係数を確実に下げ、絶縁基板と放熱体全体との熱膨張係数の差が可及的に小さくなる。このため、絶縁基板と放熱体とをはんだ等によって接合した場合、放熱体に絶縁基板に向かう反りが発生することを確実に低減することになる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の絶縁基板上にチップを搭載してなることを特徴とする。
【0012】
この発明に係るパワーモジュールによれば、絶縁基板と放熱体との熱膨張係数の差に拘わることなく、両者の反りを可及的に抑えつつ良好な熱伝導率を有するパワーモジュールが得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の第一実施形態に係るパワーモジュール用基板を適用したパワーモジュールを示す全体図である。
本第一実施形態のパワーモジュールPにおいて、パワーモジュール用基板10は、大別すると図1に示すように、絶縁基板11と、放熱体16とを備える。
絶縁基板11は、例えばAlN,Al2O3,Si3N4,SiC等により所望の大きさに形成され、その上面及び下面に回路層12及び金属層13がそれぞれ積層接合される。回路層12及び金属層13は、純Al,Al合金,Cu等により形成されている。
【0014】
絶縁基板11の回路層12上にはんだ14によって半導体チップ30が搭載される一方、金属層13の下面にはんだ15によって、或いはろう付けや拡散接合等によって放熱体16が接合され、更に、この放熱体16が冷却シンク部20に取り付けられて使用され、該冷却シンク部20内の冷却水(或いは冷却空気)21により、放熱体16に伝達される熱が外部に放熱されることで、パワーモジュールPが構成されている。放熱体16は、冷却シンク部20に取付ねじ22によって密着した状態で取り付けられる。
【0015】
また、放熱体16を構成する放熱体本体17に低熱膨張材18が、図示しないろう材を介して積層接合されている。放熱体本体17は、例えば純Al,Al合金,純Cu,又はCu合金等,好ましくは純度99.5%以上の純Alのような熱伝導性の良好な材質,いわゆる高熱伝導材によって形成されている。高熱伝導材としては、熱伝導率が例えば、100W/m・K以上、好ましくは150W/m・K以上のものである。
【0016】
一方、低熱膨張材18は平板とされ、放熱体本体17の熱膨張係数より低い熱膨張係数の材質からなっており、放熱体本体17に積層することで、放熱体16全体の熱膨張係数と絶縁基板11の熱膨張係数との差を可及的に近づけさせるためのものである。この低熱膨張剤18は、Fe―Ni系合金,例えばインバー合金からなり、熱膨張係数がおよそ2.0×10−6/℃以下である。
ここで、インバー合金とは、室温付近でほとんど熱膨張が生じない合金であって、Feが64.6mol%で、Niが35.4mol%の組成率となっている。但し、Fe中には、それ以外の不可避不純物が含まれたものもインバー合金と呼ばれている。
【0017】
このような材質からなる低熱膨張材18は、前述したように、放熱体本体17と17との間に図示しないろう材を介して接合されている。従って、放熱体16が二枚の放熱体本体17と一枚の低熱膨張材18との三層構造であって、絶縁基板11側と冷却シンク部20側とに放熱体本体17が配置されている。
【0018】
また、この低熱膨張材18の積層方向の厚さAは、放熱体本体17の積層方向の厚さBの0.05倍以上0.10倍以下で形成されている。これは、放熱体16自体に低熱膨張材18を設けると、それだけ熱伝導率が低下するため、この熱伝導率の低下を極力抑えるためであるとともに、この熱伝導率の低下を抑えるために、徒に低熱膨張材18の厚さAを薄くすると、放熱体16自体の熱膨張係数に寄与する低熱膨張材18の影響が小さくなり、放熱体16自体の熱膨張係数が放熱体本体17の熱膨張係数と略同一となることを回避するためである。
すなわち、低熱膨張材18の厚さAを放熱体本体の厚さBの0.05倍以上0.10倍以下とすることにより、低熱膨張材18による放熱体16自体の熱膨張係数の低下,すなわち放熱体16の反り発生抑制と、放熱体16自体の熱伝導率の低下抑制とを図る構成となっている。
【0019】
以上説明したように、パワーモジュール用基板10を構成する放熱体16が、放熱体本体17と低熱膨張材18とを互いに積層して形成されると、放熱体16全体としての熱膨張係数を確実に下げることができるので、絶縁基板11と放熱体16全体との熱膨張係数の差を可及的に小さくすることができる。
【0020】
このため、絶縁基板11と放熱体16とをはんだ15(若しくはろう付けや拡散接合等)によって接合した場合、放熱体16に絶縁基板11に向かう反りが発生することを確実に抑制することができる。これにより、放熱体16を冷却シンク部20に取り付けても、冷却シンク部20と放熱体16との間に隙間が発生することを防止することができ、放熱体16から冷却シンク部20への熱の伝導効率低下を抑制することができる。
【0021】
しかも、低熱膨張材18が金属であってかつ相応の熱伝導率を有しているので、絶縁基板11上の半導体チップ30からの発熱が、回路層12,絶縁基板11,金属層13,はんだ15,放熱体16及び冷却シンク部20を介して外部に良好に放熱されることになる。すなわち、パワーモジュール用基板10全体としての熱伝導率が低下することを抑制することができ、パワーモジュール用基板10全体としての温度上昇を抑制することができる。この結果、絶縁基板11と放熱体16との熱膨張係数に差があっても、放熱体16の温度上昇を抑制することができるため、放熱体16の反り発生抑制効果を備えた,良好なパワーモジュール用基板10を得ることができる。
【0022】
また、低熱膨張材18の積層方向の厚さAは、放熱体本体17の積層方向の厚さBの0.05倍以上0.10倍以下で形成されているので、放熱体16自体の熱伝導率を低下させることなく、熱膨張係数の低下を図ることができる。
すなわち、低熱膨張材18の厚さAを、放熱体本体17の厚さBの0.05倍以下で形成すると、放熱体16自体の熱伝導率の低下を抑制することはできるが、放熱体16自体の熱膨張係数に寄与する低熱膨張材18の影響が小さくなり、放熱体16自体の熱膨張係数が、高熱膨張材である放熱体本体17のものと略同一となる。また、低熱膨張材18の厚さAを、放熱体本体17の厚さBの0.10倍以上で形成すると、放熱体16自体の熱膨張係数の低下を図ることができるが、放熱体16自体の熱伝導率が低下することになる。以上により、前記厚さAと厚さBとを前記範囲に設定することにより、放熱体16の熱膨張係数の低下,すなわち放熱体16の反り発生抑制と、放熱体16の熱伝導率の低下抑制とを両立させた、良好なパワーモジュール用基板10を得ることができる。
【0023】
次に、本発明の第二実施形態について説明するが、前述の第一実施形態と同様の部位には、同一符号を付し、その説明を省略する。
本第二実施形態によるパワーモジュール用基板が、前述の第一実施形態のパワーモジュール用基板と異なる点は、図2に示すように、放熱体16表面に、冷却シンク部20に換えてAl等からなる放熱フィン41を設けた点である。
この放熱フィン41は、図2に示すように、放熱体16表面に図示しないろう材を介して接合された接合部40aと、接合部40aの一端に設けられ接合部40aと直交して立上がる立上がり部40bと、立上がり部40bの上端に設けられ接合部40aに平行且つ離間する方向に延びる平坦部40cと、平坦部40cの一端に設けられ平坦部40cに直交且つ放熱体16に向かって折返る折返し部40dとを備えた突出部40が、放熱体16の沿面方向に沿って繰返し連続して設けられた構成となっている。この構成において、立上がり部40bと平坦部40cと折返し部40dと放熱体16表面とが空間40eを形成している。
以上説明したように、本第二実施形態によるパワーモジュール用基板においても、前述の第一実施形態の作用,効果を同様に奏することができる。
【0024】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、第一,第二実施形態では、放熱体に積層された低熱膨張材として、Fe―Ni系合金を用いた例を示したが、他の低熱膨張材、例えば高炭素鋼(Fe−C)、42合金、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等で構成しても、同様の作用効果が得られる。
また、絶縁基板11において放熱体16側の面に金属層13が積層された例を示したが、これに限らず、金属層13が設けられていない絶縁基板11を放熱体16に直接接合しても、同様の作用効果が得られる。
さらに、平板により形成された低熱膨張材18に替えて、気孔率10%以上80%以下の,いわゆる低密度成型体としてもよい。例えば、圧紛体,グリーン体,又は発泡体,すなわちFe―Ni系合金の微細粒子が焼結されてなる中実の骨格間に、互いに連通する空隙が形成された三次元網目構造の多孔質焼結体でもよい。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、放熱体を、放熱体本体と低熱膨張材とを積層して形成することで、放熱体全体としての熱膨張係数を下げ、また低熱膨張材の積層方向の厚さを放熱体本体の積層方向の厚さの0.10倍以下で形成することで、放熱体全体としての熱伝導率の低下を抑制するように構成したので、絶縁基板と放熱体との熱膨張係数に差があっても、放熱体の反り発生抑制と、熱伝導率の低下抑制とを両立させた良好なパワーモジュール用基板が得られる。
【0026】
請求項2に係る発明によれば、低熱膨張材の積層方向の厚さが、放熱体本体の積層方向の厚さの0.05倍以上で形成されているので、放熱体全体の熱膨張係数に寄与する低熱膨張材の影響を最小限維持することができる。これにより、放熱体全体としての熱膨張係数の低下と熱伝導率の低下抑制とを両立させた良好なパワーモジュール用基板が得られる。
【0027】
請求項3に係る発明によれば、絶縁基板と放熱体との熱膨張係数の差に拘わることなく、両者の反りを可及的に抑えつつ良好な熱伝導率を有するパワーモジュールが得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第一実施形態に係るパワーモジュール用基板を適用したパワーモジュールを示す全体図である。
【図2】この発明の第二実施形態に係るパワーモジュール用基板を適用したパワーモジュールを示す全体図である。
【符号の説明】
10 パワーモジュール用基板
11 絶縁基板
16 放熱体
17 放熱体本体(高熱伝導材)
18 低熱膨張材
30 半導体チップ(チップ)
A 低熱膨張材の厚さ
B 放熱体本体(高熱伝導材)の厚さ
P パワーモジュール
Claims (3)
- 絶縁基板と、該絶縁基板の一方の面側に設けられた放熱体とを備えたパワーモジュール用基板であって、
前記放熱体は、放熱体本体に該放熱体本体の熱膨張係数より低い材質からなる低熱膨張材を積層して構成され、
該低熱膨張材の積層方向の厚さは、前記放熱体本体の積層方向の厚さの0.10倍以下で形成されていることを特徴とするパワーモジュール用基板。 - 請求項1記載のパワーモジュール用基板において、
前記低熱膨張材の積層方向の厚さは、前記放熱体本体の積層方向の厚さの0.05倍以上で形成されていることを特徴とするパワーモジュール用基板。 - 請求項1又は2に記載の絶縁基板上にチップを搭載してなることを特徴とするパワーモジュール。
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- 2002-12-18 JP JP2002366518A patent/JP2004200369A/ja not_active Withdrawn
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