JP2004175981A - 樹脂の製造方法、樹脂、レジスト組成物、レジストパターン形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも、(a’1)ラクトン単位を有する(メタ)アクリル酸エステルと、(a’2)酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを含有するモノマー混合物を、炭素数5又は6の環状ケトン、及び置換基を有する単環又は二環式の芳香族化合物からなる群から選択される重合溶媒に溶解し、重合開始剤を用いて重合させることによって、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する樹脂を製造する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学増幅型レジスト、特に、ArFエキシマレーザー用の化学増幅型ポジ型レジスト等に好適に使用される、酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する樹脂の製造方法、該製造方法により製造される樹脂、該樹脂を含有するレジスト組成物、該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては一般に露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザー(248nm)が導入され、更に、ArFエキシマレーザー(193nm)が導入され始めている。
【0003】
KrFエキシマレ−ザやArFエキシマレーザ等の光源用のレジストには、微細な寸法のパターンを再現可能な高解像性と、このような短波長の光源に対する感度の高さが求められている。このような条件を満たすレジストの1つとして、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大するベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤(以下、PAGという)を含有する化学増幅型ポジ型レジスト組成物が知られている(特開2002−162745号公報)。
化学増幅型レジストの反応機構は、露光すると、レジスト中に配合された酸発生剤が酸を発生し、その酸により樹脂の溶解性が変化するというものである。例えば、樹脂に酸により脱離する溶解抑制基を導入しておくことにより、露光部のみ溶解抑制基が脱離し、現像液への溶解性が大きく増大する。一般的には、露光後に加熱処理することにより該溶解抑制基の脱離やレジスト内の酸の拡散が促進され、従来の非化学増幅型レジストと比較して非常に高い感度を出すことができる。
【0004】
これまで、KrFエキシマレーザーリソグラフィーにおいては、化学増幅型レジストのベース樹脂として、KrFエキシマレーザー(248nm)に対する透明性が高いポリヒドロキシスチレンやその水酸基を酸解離性溶解抑制基で保護したものが用いられきた。
しかし、これらの樹脂は、193nm付近における透明性が不十分なため、ArFエキシマレーザーリソグラフィーではほとんど使用不可能である。そのため、近年、レジストの基材樹脂として、193nmにおいて透明な、エステル側鎖部に酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する(メタ)アクリル系の樹脂が注目され、これまでに多数の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−268222号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、微細化の速度がますます加速しており、最近では、ArFの波長よりも大幅に小さい100nm以下のラインアンドスペースパターン、さらには70nm以下のアイソレートパターンを形成可能な解像度が求められるようになっている。
そのため、従来は問題ではなかったArF用レジストの問題点がクローズアップされるようになってきた。
【0007】
それらの問題点の中で最も重大視されている問題の1つがLER(ラインエッジラフネス)である。LERは、レジストパターンを形成した際に、ライン側壁に見られる不均一な凹凸である。
凹凸(LER)の大きさが一定である場合、ラインの幅が小さくなるにつれて、ラインの幅に対するLERの大きさの比率は高くなる。つまり、レジストパターンのサイズが微細化するにつれて、LERの重大性が相対的に大きくなる。LERは半導体デバイスの性能や信頼性、歩留まりなどに大きな影響を与えるので、LERの改善は重要な課題となっている。
LERの改善方法として一般的に挙げられるのは、酸の拡散長を伸ばすことである。また、低分子量ポリマーの混合や、分散度を制御することが考えられる。
しかしながら、これらの手法は解像性の低下を伴うものであり、微細な解像性が要求される場合に用いることはできないという問題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を鑑み、鋭意検討を行った結果、レジスト組成物に用いられる樹脂の製造の際に特定の重合溶媒を用いることにより、得られる樹脂を用いたレジストのLERが改善されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、前記課題を解決する本発明の第1の発明は、少なくとも、(a’1)ラクトン単位を有する(メタ)アクリル酸エステルと、(a’2)酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを含有するモノマー混合物を、重合溶媒に溶解し、重合開始剤を用いて重合させることによって、(A)酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する樹脂を製造する方法であって、
前記重合溶媒として、炭素数5又は6の環状ケトン、及び置換基を有する単環又は二環式の芳香族化合物からなる群から選択される溶剤を単独で又は混合して用いることを特徴とする、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する樹脂の製造方法である。
前記課題を解決する本発明の第2の発明は、(A)少なくとも、(a1)ラクトン単位を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位と、(a2)酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位とを含有し、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する樹脂であって、前記製造方法によって製造されることを特徴とする樹脂である。
前記課題を解決する本発明の第3の発明は、前記樹脂と、(B)露光により酸を発生する酸発生剤とを含むレジスト組成物である。
前記課題を解決する本発明の第4の発明は、前記レジスト組成物を基板上に塗布し、プレべークし、選択的に露光した後、露光後加熱(PEB)を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成することを特徴とするレジストパターン形成方法である。
なお、「ラクトン単位」とは、単環又は多環式のラクトンから1個の水素原子を除いた基である。「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方あるいは両方を示す。「構成単位」とは、重合体を構成するモノマー単位を示す。また、以下の明細書中、「(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」を(メタ)アクリレート構成単位ということがある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、重合溶媒として、炭素数5又は6の環状ケトン、及び置換基を有する単環又は二環式の芳香族化合物からなる群から選択される溶剤を単独で又は混合して用いて、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマー混合物をラジカル重合して目的とする樹脂を得る。
【0010】
本発明によりLERの小さいレジストが得られる理由は必ずしも明確ではないが、次のような理由が考えられる。即ち、(メタ)アクリル系ポリマーの製造には一般的にラジカル重合が用いられている。ラジカル重合では、反応の初期に目的とする重合体が主に形成される。そのため、ラクトン単位を有する(メタ)アクリル酸エステルと、酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステル(一般に該酸解離性溶解抑制基は該ラクトン単位よりも極性が低い)等の2種以上のモノマーを混合して用いた場合に、その極性の差により各モノマーの分布が均一にならず、得られるポリマー内に、各モノマーが均一に分布したランダム性の高い部分と、同じ極性又は疎水性のモノマー同士が重合したランダム性の低い部分(塊)が形成されてしまうと考えられる。このような塊が存在するポリマーをレジストの樹脂成分に用いてレジストパターンを形成する場合、塊を構成するモノマーによってアルカリ溶解性が異なるため、露光部の現像液に対する溶解性にバラツキが生じ、現像後に得られるレジストパターンのLERが悪くなると考えられる。本発明者らは、実際、ラクトン単位を有する(メタ)アクリル酸エステルと、低極性の酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルの2種のモノマーを用い、アニオン重合によって意図的に塊が存在するポリマーを作成し、これを用いてレジストパターンを形成したところ、LERがよくないことを確認している。
これに対し、本発明においては、重合溶媒として、炭素数5又は6の環状ケトン、及び置換基を有する単環又は二環式の芳香族化合物からなる群から選択される溶剤を用いる。これらの溶剤は、エステル側鎖部の極性が異なる各種モノマーとの相溶性に優れ、その結果、各モノマーの分布が均一となり、ランダム性が向上して塊の形成が抑制されると考えられる。
ここで、本発明は特定の重合溶媒を用いることを特徴としている。これに対し、従来、ランダム重合の際にモノマー等を溶解する重合溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸エチルなどが使用されていた。これらの溶剤は、エステル側鎖部の極性が異なる各種モノマーとの相溶性がよくないために上述のような塊の形成を抑制することができないと考えられる。
【0011】
<樹脂の製造方法>
本発明の樹脂の製造方法においては、少なくとも、(a’1)ラクトン単位を有する(メタ)アクリル酸エステルと、(a’2)酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを含有するモノマー混合物を、重合溶媒に溶解し、重合開始剤を用いて重合させることによって、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する樹脂(以下、単に樹脂(A)ということがある)を得る。
樹脂(A)の製造に用いられるモノマーの種類は、少なくとも上述の2種の(メタ)アクリル酸エステル(すなわち、後述する<樹脂>の項で説明する構成単位(a1)及び(a2)を誘導するモノマー)が含まれていればその形態は特に限定されず、レジストパターンの形成時に使用する光源に応じ、化学増幅型ポジ型レジスト用のベース樹脂の製造に用いられている任意のモノマーを併せて用いることができる。そのような併せて用いるモノマーとしては、特に、後述する<樹脂>の項で説明する構成単位(a3)、(a4)等を誘導するモノマーが好ましく用いられる。
【0012】
樹脂(A)の製造は、上述のような(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーを含有するモノマー混合物を、熱分解性のラジカル重合開始剤等を用いて重合させる公知のラジカル重合等により行うことができる。
より具体的には、例えば、予め各モノマーを混合したモノマー混合物と重合開始剤を重合溶媒に溶解し、温度を上昇させて重合させることにより行うことができる。
また、予め昇温された重合溶媒中に、各モノマー及び重合開始剤を重合溶媒に溶解させた溶液を滴下して重合させてもよい。
【0013】
重合溶媒としては、炭素数5又は6の環状ケトン、及び置換基を有する単環又は二環式の芳香族化合物からなる群から選択される溶剤(以下、特定環状溶剤ということがある)を用いる。これらの特定環状溶剤は、モノマー混合物、重合開始剤及び得られる共重合体のいずれとも相溶性に優れ、得られる共重合体中における各種構成単位の分布のランダム性を向上させると考えられる。
【0014】
炭素数5又は6の環状ケトンとしては、一般的に溶剤として用いられている任意のものが使用可能であり、例えば、沸点が200℃以下のものを用いることができる。具体的には、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。
置換基を有する単環又は二環式の芳香族化合物としては、例えば置換基として、炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基等の置換基を1つ以上有するものが挙げられ、具体的には、トルエン、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、キシレン、アニソール、ジエチルベンゼン、ジメチルナフタレンなどが挙げられる。
【0015】
特に、(a’1)、(a’2)の各モノマーの溶解性が優れる点から、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン及びアニソールからなる群から選択される重合溶媒が好ましい。
キシレンを用いる場合、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレンのいずれを用いてもよいが、これらの異性体の混合物を用いると、LERがさらに向上するので好ましい。これは、混合物を用いることにより、重合溶媒中の各モノマーの相溶性がさらに向上し、得られる樹脂(A)における各構成単位の分布がよりランダムになるためと考えられる。
【0016】
本発明においては、重合溶媒として、上述のような特定環状溶剤を、それぞれ単独で又は混合して用いることができる。
【0017】
本発明においては、重合溶媒に、上述の特定環状溶剤に加えて、沸点60〜90℃の低沸点溶剤を含有することが好ましい。このような低沸点溶剤を含有すると、還流により、重合溶媒の温度が上がりすぎるのを防ぐことができ、重合中の温度コントロールが容易である。
全重合溶媒中に占める低沸点溶剤の割合は、所望の重合温度に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%である。低沸点溶剤の割合が10質量%よりも低くなるにつれて温度コントロール効果が小さくなり、80質量%よりも高くなるにつれて、LERの改善効果が小さくなるおそれがある。
【0018】
前記低沸点溶剤としては、常圧における上記沸点の範囲内のものであれば一般的に溶剤として用いられている任意のものが使用可能である。
中でも、特に、テトラヒドロフラン、酢酸エチル及びメチルエチルケトンからなる群から選択される溶剤は、特定環状溶剤と混合したとき、各モノマーの溶解性に優れ、また重合開始剤の分解が制御しやすい点から好ましく用いられる。
【0019】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(使用温度60〜90℃)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル(使用温度45〜70℃))、2,2’−アゾビス−(2−メチルイソブチロニトリル)(使用温度60〜95℃)、tert−ブチルパーオクトエート(使用温度75〜100℃)、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(使用温度80〜110℃)、1−[(1−ジアゾ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(温度95〜120℃)等を挙げることができ、それぞれ、単独又は混合して用いることができる。
特に、AIBNは、容易に入手しやすく、工業的に重合開始剤として好ましく用いられる。
【0020】
重合溶媒中のモノマー混合物の配合量は、得られる樹脂の質量平均分子量が制御しやすい点から、好ましくは0.2〜2mol/L、より好ましくは0.4〜1.0mol/Lの範囲内であることが好ましい。
また、重合溶媒中の重合開始剤の配合量は、上記同様樹脂の質量平均分子量が制御しやすい点から、好ましくは0.02〜0.4mol/L、より好ましくは0.1〜0.2mol/Lの範囲内であることが好ましい。
また、モノマー混合物と重合開始剤とのモル比は、上記同様樹脂の質量平均分子量が制御しやすい点から、100:1〜5:1の範囲内であることが好ましい。
【0021】
重合条件は、適宜設定することができるが、重合温度については、通常60〜80℃の範囲が好ましい。
モノマー混合物と重合開始剤を重合溶媒に溶解し、温度を上昇させて重合させる場合、反応時間は、好ましくは1〜8時間程度とする。
また、予め昇温された重合溶媒中に、各モノマー及び重合開始剤を重合溶媒に溶解させた溶液を滴下して重合させてもよい。
【0022】
このようにして得られた共重合体を含有する反応液を、イソプロパノール、メタノール、水などの単独又は混合溶媒を貧溶媒とし、これら多量の貧溶媒中に滴下して、共重合体を析出させる。その後、得られた析出物を濾別、乾燥することにより、本発明の樹脂(A)を得ることができる。この工程は、場合により不要であることもあるが、反応液中に残存する未反応の単量体(モノマー)や重合開始剤等を取り除くのに有効である。これらの未反応物がそのまま残存しているとレジスト性能に悪影響を及ぼす可能性があるため、取り除いた方が好ましい。
【0023】
<樹脂>
次に、上記本発明の樹脂の製造方法によって得られる樹脂(A)について説明する。樹脂(A)は、その構成中に、少なくとも、ラクトン単位を有する(メタ)アクリレート構成単位(以下、構成単位(a1)ということがある)と、酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリレート構成単位(以下、構成単位(a2)ということがある)を有する。樹脂(A)は、酸が作用すると前記酸解離性溶解抑制基の少なくとも一部が解離して、樹脂(A)全体がアルカリ不溶性からアルカリ可溶性に変化するものである。
【0024】
[構成単位(a1)]
ラクトン単位、つまり単環又は多環式のラクトンから水素原子を1つを除いた基は極性基であるため、構成単位(a1)は、樹脂(A)をポジ型レジスト組成物として用いたときに、レジスト膜と基板の密着性を高めたり、現像液との親水性を高めるために有効である。
そして、構成単位(a1)は、このようなラクトン単位を備えていれば特に限定するものではない。
ラクトン単位としては、具体的には、以下の構造式を有するラクトンから水素原子を1つを除いた基などが挙げられる。
【0025】
【化1】
【0026】
また、構成単位(a1)において、前記ラクトン単位が、以下の一般式(I)又は(II)から選択される少なくとも1種であると好ましい。
【0027】
【化2】
【0028】
前記構成単位(a1)として、さらに具体的には、例えば以下の構造式で表される(メタ)アクリレート構成単位が挙げられる。
【0029】
【化3】
(式中、Rは水素原子又はメチル基である。)
【0030】
【化4】
(式中、Rは水素原子又はメチル基である。)
【0031】
【化5】
(式中、Rは水素原子又はメチル基である。)
【0032】
【化6】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、mは0又は1である。)
【0033】
これらの中でも、α炭素にエステル結合を有する(メタ)アクリル酸のγ−ブチロラクトンエステル又は[化1]のようなノルボルナンラクトンエステルが、特に工業上入手しやすく好ましい。
【0034】
構成単位(a1)は、樹脂(A)を構成する全構成単位の合計に対して、20〜60モル%、より好ましくは30〜50モル%含まれていると好ましい。下限値より小さいと、解像性が低下し、上限値をこえるとレジスト溶剤に溶けにくくなるおそれがある。
【0035】
[構成単位(a2)]
構成単位(a2)の酸解離性溶解抑制基は、露光前の樹脂(A)全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有すると同時に、露光後に酸発生剤から発生した酸の作用により解離し、この樹脂(A)全体をアルカリ可溶性へ変化させる基である。
酸解離性溶解抑制基としてこれまで知られているものは、炭化水素基であるため、通常、前記ラクトン単位よりも極性が低く、一般的には疎水性である。このような酸解離性溶解抑制基としては、例えばArFエキシマレーザーのレジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。一般的には、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と環状又は鎖状の第3級アルキルエステルを形成するものが広く知られている。
【0036】
構成単位(a2)としては、特に、多環式基を含有する酸解離性溶解抑制基を含む構成単位を含むことが好ましい。多環式基としては、ArFレジストにおいて、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。例えば、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テロラシクロアルカンなどから1個の水素原子を除いた基などを例示できる。
具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
これらの中でもアダマンタンから1個の水素原子を除いたアダマンチル基、ノルボルナンから1個の水素原子を除いたノルボルニル基、テトラシクロドデカンから1個の水素原子を除いたテトラシクロドデカニル基が工業上好ましい。
【0037】
具体的には、構成単位(a2)が、以下の一般式(III)、(IV)又は(V)から選択される少なくとも1種であると好ましい。
【0038】
【化7】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R1は低級アルキル基である。)
【0039】
【化8】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R2及びR3はそれぞれ独立して低級アルキル基である。)
【0040】
【化9】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R4は第3級アルキル基である。)
【0041】
前記一般式(III)で表される構成単位は、(メタ)アクリレート構成単位に炭化水素基がエステル結合したものであって、エステル部の酸素原子(−O−)に隣接するアダマンチル基の炭素原子に、直鎖又は分岐鎖アルキル基が結合することにより、このアダマンチル基の環骨格上に第3級アルキル基が形成される。
【0042】
式中、R1としては、炭素数1〜5の低級の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。中でも、炭素数2以上、好ましくは2〜5のアルキル基が好ましく、この場合、メチル基の場合に比べて酸解離性が高くなる傾向がある。なお、工業的にはメチル基又はエチル基が好ましい。
【0043】
前記一般式(IV)で表される(メタ)アクリレート構成単位は、前記一般式(III)と同様に、(メタ)アクリレート構成単位に炭化水素基が結合したものであって、この場合は、(メタ)アクリレート構成単位のエステル部の酸素原子(−O−)に隣接する炭素原子が第3級アルキル基であり、該アルキル基中に、さらにアダマンチル基のような環骨格が存在するものである。
R2及びR3は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1〜5の低級アルキル基であると好ましい。このような基は、2−メチル−2−アダマンチル基より酸解離性が高くなる傾向がある。
より具体的には、R2、R3は、それぞれ独立して、上記R1と同様の低級の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。中でも、R2、R3が共にメチル基である場合が工業的に好ましい。
【0044】
前記一般式(V)で表される構成単位は、(メタ)アクリレート構成単位のエステルではなく、別のエステルの酸素原子(−O−)に隣接する炭素原子が第3級アルキル基であり、(メタ)アクリレート構成単位と該エステルとがテトラシクロドデカニル基のような環骨格に連結されているものである。
【0045】
式中、R4は、tert−ブチル基やtert−アミル基のような第3級アルキル基であり、tert−ブチル基である場合が工業的に好ましい。
また、基−COOR4は、式中に示したテトラシクロドデカニル基の3又は4の位置に結合していてよいが、異性体として共に含まれるのでこれ以上は特定できない。また、(メタ)アクリレート構成単位のカルボキシル基残基は、テトラシクロドデカニル基の9又は10の位置に結合していてよいが、上記と同様に、異性体として共に含まれるので特定できない。
【0046】
これらの中でも、好ましくは一般式(III)、(IV)で表される構成単位の少なくとも一方を用いることが好ましい。特に、一般式(III)で表される構成単位を用いることが好ましく、この場合は、R1がメチル基又はエチル基のものが好ましい。また、一般式(III)、(IV)の構成単位を両方用いることも好ましく、この場合は、R1がメチル基、R2及びR3がメチル基である場合が、解像度に優れ、好ましい。
【0047】
構成単位(a2)は、樹脂(A)の全構成単位の合計に対して、前記構成単位(a2)が20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%含まれていることが望ましい。下限値以上とすることにより、ポジ型レジスト組成物として用いたときに、ポリマーの溶解性が酸の作用によって変化しやすく解像性に優れる。上限値をこえると他の構成単位とのバランス等の点からレジストパターンと基板との密着性が劣化するおそれがある。
【0048】
樹脂(A)は、さらに、任意に下記構成単位(a3)及び/又は(a4)を含んでいてもよい。
(a3):水酸基含有基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位
(a4):構成単位(a1)〜(a3)以外の他の構成単位
【0049】
[構成単位(a3)]
前記構成単位(a3)は水酸基を含有するため、構成単位(a3)を用いることにより、樹脂(A)全体の現像液との親水性が高まり、露光部におけるアルカリ溶解性が向上する。したがって、構成単位(a3)は解像性の向上に寄与するものである。
構成単位(a3)としては、例えばArFエキシマレーザーのレジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができ、例えば水酸基含有多環式基を含むことが好ましい。
多環式基としては、前記構成単位(a1)の説明において例示したものと同様の多数の多環式基から適宜選択して用いることができる。
具体的に、構成単位(a3)としては、水酸基含有アダマンチル基(水酸基の数は好ましくは1〜3、さらに好ましくは1である。)や、カルボキシル基含有テトラシクロドデカニル基(カルボキシル基の数は好ましくは1〜3、さらに好ましくは1である。)を有するものが好ましく用いられる。
さらに具体的には、水酸基含有アダマンチル基などが好ましく用いられる。
【0050】
具体的には、構成単位(a3)が、以下の一般式(VI)で表される構成単位であると、耐ドライエッチング性を上昇させ、パターン断面形状の垂直性を高める効果を有するため、好ましい。
【0051】
【化10】
(式中、Rは水素原子又はメチル基である。)
【0052】
構成単位(a3)は、樹脂(A)を構成する全構成単位の合計に対して、5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%含まれていると好ましい。下限値以上とすることにより、LERの向上効果が良好となり、上限値をこえると他の構成単位のバランスの点等からレジストパターン形状が劣化するおそれがある。
【0053】
構成単位(a4)は、上述の構成単位(a1)〜(a3)に分類されない他の構成単位であれば特に限定するものではない。すなわち酸解離性溶解抑制基、ラクトン、水酸基を含有しないものであればよい。例えば多環式基を含み、かつ(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位などが好ましい。この様な構成単位を用いると、ポジ型レジスト組成物用として用いたときに、孤立パターンからセミデンスパターン(ライン幅1に対してスペース幅が1.2〜2のラインアンドスペースパターン)の解像性に優れ、好ましい。
多環式基は、例えば、前記の構成単位(a1)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFポジレジスト材料やKrFポジレジスト材料等として従来から知られている多数のものが使用可能である。
特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。
これら構成単位(a4)として、具体的には、下記(VII)〜(IX)の構造のものを例示することができる。
【0054】
【化11】
(式中Rは水素原子又はメチル基である)
【0055】
【化12】
(式中Rは水素原子又はメチル基である)
【0056】
【化13】
(式中Rは水素原子又はメチル基である)
【0057】
構成単位(a4)は、樹脂(A)を構成する全構成単位の合計に対して、1〜30モル%、好ましくは5〜20モル%含まれていると、孤立パターンからセミデンスパターンの解像性に優れ、好ましい。
【0058】
樹脂(A)の構成単位は、構成単位(a1)及び(a2)に対し構成単位(a3)、(a4)を用途等によって適宜選択して組み合わせて用いることができるが、構成単位(a1)〜(a3)を全て含むものが、耐エッチング性、解像性、レジスト膜と基板との密着性などから好ましい。
【0059】
構成単位(a1)〜(a4)の組み合わせ及び比率は、要求される特性等によって適宜調整可能である。
構成単位(a1)及び(a2)の二元系のポリマーの場合、構成単位(a1)は、全構成単位中30〜70モル%、好ましくは40〜60モル%とし、構成単位(a2)は30〜70モル%、好ましくは40〜60モル%とすると、樹脂の合成における制御がしやすい点で好ましい。
また、さらに構成単位(a3)を含む三元系の場合は、構成単位(a1)は全構成単位中20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%とし、構成単位(a2)は全構成単位中20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%、(a3)は全構成単位中5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%とすると、耐エッチング性、解像性、密着性、レジストパターン形状の点で好ましい。
また、さらに構成単位(a4)を含む四元系の場合は、構成単位(a1)は全構成単位中20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%とし、構成単位(a2)は全構成単位中20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%、(a3)は全構成単位中5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%、(a4)は全構成単位中1〜30モル%、好ましくは5〜20モル%とすると、上記特性を維持しつつ、孤立パターン、セミデンスパターンの解像性に優れ好ましい。
【0060】
樹脂(A)は、構成単位(a1)、(a2)、(a3)又は(a4)のような、アクリル酸エステルから誘導される構成単位と、メタクリル酸エステルから誘導される構成単位の一方あるいは両方を含むものである。これら構成単位(a1)、(a2)、(a3)又は(a4)において、アクリル酸エステルモノマーでもメタクリル酸エステルモノマーでも本発明の効果(LERの低減)はあるが、特にメタクリル酸エステルモノマーは、アクリル酸エステルモノマーに比べて重合反応速度が遅いので、本発明はメタクリル酸エステルモノマーに対して、優れた効果を発揮する。
【0061】
さらに詳しくは、前記樹脂(A)としては、以下の共重合体(イ)が、LERが小さく、好ましい。
共重合体(イ):構成単位(a1m)20〜60モル%、構成単位(a2m)20〜60モル%及び構成単位(a3m)5〜50モル%からなる共重合体。なお、上付文字mはメタクリレートを意味する。
また、この共重合体(イ)において、解像度、レジストパターン形状などの点から、これら構成単位(a1m)、(a2m)、及び(a3m)の合計に対して、前記構成単位(a1m)が20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%、構成単位(a2m)が20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%、前記構成単位(a3m)が5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%であると好ましい。
【0062】
なお、前記共重合体(イ)においては、構成単位(a3a)を配合することにより、水酸基が極性基であるため、樹脂(A)全体の現像液との親水性が高まり、露光部におけるアルカリ溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。
【0063】
樹脂(A)の質量平均分子量は、特に限定するものではないが、好ましくは5000〜30000、さらに好ましくは7000〜15000とされる。この範囲よりも大きいとレジスト溶剤への溶解性が悪くなり、小さいとレジストパターン断面形状が悪くなるおそれがある。
【0064】
<レジスト組成物>
次に、本発明のレジスト組成物は、上述の樹脂(A)(以下、(A)成分ということがある)と、露光により酸を発生する酸発生剤(以下、(B)成分ということがある)とを含むものである。
(B)成分としては、従来化学増幅型レジストにおける酸発生剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
【0065】
(B)成分の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネートなどのオニウム塩などを挙げることができる。これらのなかでもフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩が好ましい。
【0066】
(B)成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部とされる。0.5質量部未満ではパターン形成が十分に行われないし、30質量部を超えると均一な溶液が得られにくく、保存安定性が低下する原因となるおそれがある。
【0067】
また、本発明のレジスト組成物は、前記(A)成分と前記(B)成分と、後述する任意の成分を、好ましくは有機溶剤に溶解させて製造する。
有機溶剤としては、前記(A)成分と前記(B)成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルピン酸メチル、ピルピン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0068】
特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)、γ−ブチロラクトン等のヒドロキシ基やラクトンを有する極性溶剤との混合溶剤は、ポジ型レジスト組成物の保存安定性が向上するため、好ましい。
ELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比が6:4〜4:6であると好ましい。
PGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比が8:2乃至2:8、好ましくは8:2乃至5:5であると好ましい。
特にPGMEAとPGMEとの混合溶剤は、前記構成単位(a1)〜(a4)を全て含む(A)成分を用いる場合に、ポジ型レジスト組成物の保存安定性が向上し、好ましい。
また、有機溶剤として、その他には、PGMEA及び乳酸エチルの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
【0069】
また、本発明のレジスト組成物においては、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意の成分として第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミン等のアミンを含有させることができる。
ここで低級脂肪族アミンとは炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを言い、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリベンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられるが、特にトリエタノールアミンのようなアルカノールアミンが好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのアミンは、(A)成分に対して、通常0.01〜1.0質量%の範囲で用いられる。
【0070】
本発明のレジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを添加含有させることができる。
【0071】
また、本発明のレジスト組成物は、特にArFエキシマレーザーに有用であるが、それより長波長のKrFエキシマレーザーや、それより短波長のF2レーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、電子線、X線、軟X線などの放射線に対しても有効である。
【0072】
<レジストパターン形成方法>
本発明のレジストパターン形成方法は、例えば以下の様にして行うことができる。
すなわち、まずシリコンウェーハのような基板上に、本発明のレジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベークを40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、レジスト膜を形成する。これに例えばArF露光装置などにより、ArFエキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して選択的に露光した後、80〜150℃の温度条件下、PEB(露光後加熱)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。次いでこれをアルカリ現像液、例えば0.05〜10質量%、好ましくは0.05〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理する。このようにして、マスクパターンに忠実なレジストパターンを得ることができる。
なお、基板とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けることもできる。
また、アルカリ現像液は、標準的には2.38質量%の濃度で用いられているが、それよりも希薄な濃度、例えば0.05〜0.5質量%の範囲内の現像液濃度でも現像可能であり、この範囲の濃度ではLERやパターン形状が良好になる傾向がある。
【0073】
レジスト膜は、通常、膜厚1μm以下、例えば300〜500nm程度の膜厚で形成されるが、微細化に伴うレジストの高アスペクト化によりArFエキシマレーザー用レジストではパターン倒れが大きな問題となっている。この解決策の一つとしてレジストの薄膜化がある。しかし、膜厚150〜300nm程度の薄膜を形成する場合は、若干、パターン形状が悪くなることがある。そこで、上述のような薄膜を形成する場合には、(B)成分の配合量を若干、例えば2〜3%程度増量することにより、良好なパターン形状とすることができる。
【0074】
この様な構成により得られるレジストパターンは、現像後のLERが小さい良好なものである。
【0075】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。
実施例1
2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート0.4molと、α−(γ−ブチロラクトン)メタクリレート0.4molと、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート0.2molとをシクロペンタノン600mlに溶解し、これにAIBN0.1molを加えて溶解した。得られた溶液を、65〜70℃に加熱し、この温度を3時間維持した。その後、得られた反応液を、よく撹拌したイソプロパノール3L中に注ぎ、析出した固形物をろ過により分離した。得られた固形物を、THF600mlに溶解し、よく撹拌したメタノール3L中に注ぎ、析出した固形物をろ過により分離し、乾燥させて、樹脂P1を得た。
【0076】
得られた樹脂P1を10gに、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホン酸塩0.25g、トリエタノールアミン0.02g、PGMEA54g及びEL36gを加えて溶解させ、これを孔径0.45μmのフィルターでろ過を行い、レジスト組成物R1を調製した。
【0077】
得られたレジスト組成物R1をスピンナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プレベークし、乾燥することにより、膜厚400nmのレジスト層を形成した。
ついで、ArF露光装置NSR S−302(ニコン社製;NA(開口数)=0.60,σ=0.75)により、ArFエキシマレーザー(193nm)をマスクパターンを介して選択的に照射した。
そして、130℃、90秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間パドル現像し、その後20秒間水洗して乾燥した。
【0078】
得られた120nmのライン&スペース(1:1)のパターンについて、LERを示す尺度である3σを求めたところ、6.3nmであった。
なお、3σは、測長SEM(日立製作所社製,商品名「S−9220」)により、試料のレジストパターンの幅を32箇所測定し、その結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)である。この3σは、その値が小さいほどLERが小さく、均一幅のレジストパターンが得られたことを意味する。
【0079】
実施例2
重合溶媒を、シクロペンタノン600mlから、シクロペンタノン300mlとTHF300mlの混合液に変更した以外は、実施例1と同様の条件で、樹脂P2及びレジスト組成物R2を製造し、レジストパターン形成を行った。
その結果、120nmのライン&スペース(1:1)が得られ、その3σは6.9nmであった。
【0080】
実施例3
重合溶媒を、シクロペンタノン600mlから、キシレン300ml(o−、m−、p−キシレンの混合物)とTHF300mlの混合液に変更した以外は、実施例1と同様の条件で、樹脂P3及びレジスト組成物R3を製造し、レジストパターン形成を行った。
その結果、120nmのライン&スペース(1:1)が得られ、その3σは7.2nmであった。
【0081】
実施例4
重合溶媒を、シクロペンタノン600mlから、アニソール300mlとTHF300mlの混合液に変更した以外は、実施例1と同様の条件で、樹脂P4及びレジスト組成物R4を製造し、レジストパターン形成を行った。
その結果、120nmのライン&スペース(1:1)が得られ、その3σは7.3nmであった。
【0082】
実施例5
α−(γ−ブチロラクトン)メタクリレートを、同量のノルボルナンラクトンメタクリレート([化3])に変更した以外は、実施例2と同様の条件で、樹脂P5及びレジスト組成物R5を製造し、レジストパターン形成を行った。
その結果、120nmのライン&スペース(1:1)が得られ、その3σは7.3nmであった。
【0083】
比較例1
重合溶媒を、シクロペンタノン600mlから、THF600mlに変更した以外は、実施例1と同様の条件で、樹脂P6及びレジスト組成物R6を製造し、レジストパターン形成を行った。
その結果、120nmのライン&スペース(1:1)が得られたが、その3σは8.4nmであった。
【0084】
比較例2
重合溶媒を、シクロペンタノン300mlとTHF300mlの混合液から、THF600mlに変更した以外は、実施例5と同様の条件で樹脂を製造しようとしたが、室温では、ノルボルナンラクトンメタクリレートが十分に溶解せず、樹脂を製造することができなかった。
【0085】
上述のように、本発明に係る実施例においては、LERが小さい、形状の良好なライン&スペースパターンが得られた。
これに対して、THFを用いた比較例1においてはLERが大きく、また、モノマーとして、ノルボルナンラクトンメタクリレートを用いた比較例2においては、室温で樹脂を製造することができなかった。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の樹脂の製造方法は、特定の重合溶媒を用いることにより、LERの小さいレジストパターンを形成可能なレジスト組成物に好適に使用される樹脂を製造することができる。
また、本発明の樹脂の製造方法によって得られる樹脂は、レジストの樹脂成分として好適に用いられるものであり、該樹脂を含むレジスト組成物は、現像後のLERが小さいレジストパターンを形成することができる。
Claims (13)
- 少なくとも、(a’1)ラクトン単位を有する(メタ)アクリル酸エステルと、(a’2)酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを含有するモノマー混合物を、重合溶媒に溶解し、重合開始剤を用いて重合させることによって、(A)酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する樹脂を製造する方法であって、
前記重合溶媒として、炭素数5又は6の環状ケトン、及び置換基を有する単環又は二環式の芳香族化合物からなる群から選択される溶剤を単独で又は混合して用いることを特徴とする、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する樹脂の製造方法。 - 前記重合溶媒が、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン及びアニソールからなる群から選択される溶剤である請求項1記載の樹脂の製造方法。
- 前記重合溶媒が、さらに、沸点60〜90℃の低沸点溶剤を含有する請求項1又は2記載の樹脂の製造方法。
- 前記重合溶媒中に占める前記低沸点溶剤の割合が10〜60質量%である請求項3記載の樹脂の製造方法。
- 前記低沸点溶剤が、テトラヒドロフラン、酢酸エチル及びメチルエチルケトンからなる群から選択される溶剤である請求項3又は4記載の樹脂の製造方法。
- 前記重合溶媒中の前記モノマー混合物及び前記重合開始剤の配合量が、それぞれ、0.2〜2mol/L及び0.02〜0.4mol/Lの範囲内である請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
- 前記重合開始剤がラジカル重合開始剤である請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
- 前記モノマー混合物が、さらに、(a’3)水酸基含有基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- (A)少なくとも、(a1)ラクトン単位を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位と、(a2)酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位とを含有し、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する樹脂であって、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする樹脂。
- 前記構成単位(a1)及び(a2)に加えて、さらに、(a3)水酸基含有基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を含有する請求項9記載の樹脂。
- 質量平均分子量が5000〜30000の範囲内である請求項9又は10記載の樹脂。
- 請求項9〜11のいずれか1項に記載の樹脂と、(B)露光により酸を発生する酸発生剤とを含むレジスト組成物。
- 請求項12記載のレジスト組成物を基板上に塗布し、プレべークし、選択的に露光した後、露光後加熱(PEB)を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成することを特徴とするレジストパターン形成方法。
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