JP2004167837A - 無機質成形体およびその製造方法 - Google Patents

無機質成形体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有機結合材の添加量を増やさず、少量の有機結合材で所望の強度を保持できる無機質成形体およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】無機質構成要素と、親水性樹脂と、平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを必須成分とする混合物を成形し、加熱,硬化して得られる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機質構成要素と、親水性樹脂と、シリカ粉状体、特に、非晶質シリカ粉状体とを混合,成形し、加熱硬化させて得られる無機質成形体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、ガラス繊維等の無機繊維にセメント等の無機結合材を用いて成形,硬化させた無機質成形体があるが、硬くて加工し難く、かつ、重いという欠点があった。一方、無機繊維や無機粉状体に有機結合材を用いた無機質成形体は軽量で加工性に優れるが、所望の強度を確保しようとすると、有機結合材の添加量を高める必要があった。このため、防火上の規格から有機結合材の添加量を減らすとともに、強度を向上させる手法が望まれている。そして、有機結合材の添加量を増やさずに強度を向上させる方法として、有機シリコーンモノマーを添加し、無機成分と有機成分とを強固に連結することにより、強度を向上させる方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−281851号公報
【0004】
しかし、この手法によっても2割程度の強度向上が得られるだけであり、結合材の添加量を大巾に減らすと、所望の強度が得られないという問題点があった。
【0005】
本発明は、前記問題点に鑑み、有機結合材の添加量を増やさず、少量の有機結合材で所望の強度を確保できる無機質成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意研究の結果、親水性樹脂に微細な非晶質シリカ粉状体を添加すると、強度が向上することを知見し、この知見に基づいて完成した。
すなわち、本発明にかかる無機質成形体は、無機質構成要素と、親水性樹脂と、平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを必須成分とする混合物を成形し、加熱,硬化させたものである。
【0007】
また、本発明にかかる無機質成形体は、無機繊維、無機粉状体および親水性樹脂を必須成分とするスラリーから湿式抄造して得た湿潤マットを表裏層とし、無機発泡体および親水性樹脂を必須成分とする中層用混合物を前記表裏層用湿潤マット間に配置して中層とし、加熱,圧締して一体化した無機質成形体において、前記表裏層および中層のうち、少なくともいずれか一層に平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体を添加したことを特徴とする構成であってもよい。
【0008】
また、本発明にかかる無機質成形体の成形方法は、無機繊維、無機粉状体および親水性樹脂を必須成分とするスラリーから湿式抄造して少なくとも2枚の表裏層用湿潤マットを得、無機発泡体および親水性樹脂を必須成分とする中層用混合物を前記表裏層用湿潤マット間に均一な厚さに堆積させて中層とした後、熱圧工程および乾燥工程を経て一体化する無機質成形体の製造方法において、前記表裏層および中層のうち、少なくともいずれか一層に平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体を添加したことを特徴とする方法であってもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる第1実施形態は3層構造の無機質成形体に適用した場合である。
すなわち、無機繊維、無機粉状体および親水性樹脂を必須成分とするスラリーから湿式抄造して得た湿潤マットを表裏層とし、無機発泡体および親水性樹脂を必須成分とする中層用混合物を前記表裏層用湿潤マット間に配置して中層とし、加熱,圧締して一体化した無機質成形体において、前記表裏層および中層のうち、少なくともいずれか一層に平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体を添加したものである。
【0010】
無機繊維としては、例えば、ロックウール,スラグウール,グラスウール,ミネラルウール,ニッケルウール、および、ガラス繊維等を挙げることができ、これらは単独もしくは2種以上組み合せて使用できる。無機繊維の含有量は、表裏層全体の20〜60重量%とするのが好ましい。20重量%未満であると、所望の曲げ強度が得られないからであり、60重量%を越えると、相対的に無機粉状体の割合が減少するために所望の表面硬度が確保できないからである。
【0011】
なお、必要に応じ、無機繊維だけでなくポリプロピレン、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、麻、亜麻等の植物繊維、および、パルプ等の木質繊維を補助繊維として添加してもよい。
【0012】
無機粉状体は、防火性を維持しつつ、硬度を高めてネジ止め性能を高めるためであり、例えば、炭酸カルシウム,水酸化アルミニウム,スラグ等を挙げることができ、これらは単独あるいは2種以上組み合せて使用できる。無機粉状体の含有量は、表裏層全体の40〜70重量%とするのが好ましい。40重量%未満であると、所望の表面硬度が得られず、70重量%を越えると、強度を付与する無機繊維の割合が少なくなり、所望の曲げ強度が得られないからである。
【0013】
親水性樹脂としては、前記無機繊維および無機粉状体を相互に結合一体化して最終的な実用強度を発現するために添加されるものであり、いも類、米麦類、コーンやタピオカ類等の澱粉含有物から得た澱粉、変性澱粉等の天然高分子物質、さらに、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸など水酸基またはカルボシキル基をもったポリマーなどが挙げられる。そして、表裏層における親水性樹脂の添加量は、表裏層全体の2重量%から20重量%とするのが好ましい。2重量%未満であると、十分な強度が得られないからであり、20重量%を越えると、防火性が損なわれるからである。
【0014】
中層を構成する無機発泡体は、軽量化を図るために添加されるものであり、例えば、パーライト,黒曜石発泡体,シラス発泡体,ガラス発泡体等が挙げられる。そして、中層における無機発泡体の添加量は、中層全体の25重量%から90重量%とするのが好ましい。25重量%未満であると、所望の重量軽減効果が得られないからであり、90重量%を越えると、結合剤および繊維等の添加量が相対的に少なくなり、所望の圧縮強度が得られないからである。なお、中層には、必要に応じ、表裏層で使用する前記無機粉状体を添加してもよい。中層を密にし、釘保持力を高めることができるからである。
【0015】
中層を形成する親水性樹脂は、無機発泡体を相互に、あるいは、無機発泡体と他の無機質構成要素、例えば、無機繊維とを結合一体化させて強度を高めるために添加されるものである。そして、中層を形成する親水性樹脂は、中層全体の2重量%から20重量%とするのが好ましい。2重量%未満であると、十分な強度が得られないからであり、20重量%を越えると、防火性が損なわれるからである。
【0016】
非晶質シリカ粉状体としては、シリカヒューム、ガラス粉、シラス等の火山性ガラス粉、ホワイトカーボン等が挙げられる。そして、前記非晶質シリカ粉状体は平均粒径6μm以下、特に、3μm以下が好適である。前記シリカ粉状体が平均粒径6μmを越えると、十分な強度が得られないからである。また、非晶質シリカ粉状体は中性に限らず、アルカリ性および酸性であってもよく、特に、親水性樹脂に応じて強アルカリ性あるいは強酸性のものを使用してもよい。
そして、表裏層および中層における非晶質シリカ粉状体の添加量は、表裏層および中層全体の1重量%から80重量%とするのが好ましい。1重量%未満であると、十分な強度が得られないからであり、80重量%を越えると、結合剤や無機質構成要素等の添加量が相対的に少なくなり、所望の成形体が得られないからである。
【0017】
次に、本実施形態にかかる無機質成形体の製造方法の一例を説明する。
無機繊維、無機粉状体、親水性樹脂等を水中に投入,攪拌し、さらに、凝集剤およびその他の添加剤を加えることにより、固形分が数%のスラリーを得、これを長網式または丸網式等の抄造機に導いて表裏層となる湿潤マットを得る。
【0018】
一方、無機発泡体、無機繊維、無機粉状体および親水性樹脂に水を噴霧しながら均一に混合して中層用混合物を得る。そして、これを下層となる前記湿潤マットの片面に散布して一様に堆積させ、その上に上層となる前記湿潤マットを重ねて3層構造の積層体を得る。ついで、前記積層体を80℃〜180℃に加熱された熱圧プレスでプレスした後、100℃〜250℃の熱風ドライヤーで乾燥し、板状無機質成形体を得る。
【0019】
なお、前記熱圧プレスは80℃〜180℃に加熱されたスチール製ベルトからなる連続プレスで行ってもよい。また、本発明の表裏層は乾式製法で製造してもよく、中層は湿式製法で実施してもよい。
【0020】
本発明にかかる第2実施形態は単層の無機質成形体であり、無機質構成要素と、親水性樹脂と、平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを必須成分とする混合物を成形し、加熱,硬化させたものである。
【0021】
無機質構成要素としては、前述の第1実施形態で使用される無機繊維、無機粉状体、無機発泡体等が挙げられ、これら単体あるいは2種以上組み合せて使用できる。
【0022】
親水性樹脂は、前述の無機構質成要素を相互に結合一体化して最終的な実用強度を発現するために添加されるものである。そして、親水性樹脂は、無機質成形体全体の2重量%から20重量%とするのが好ましい。2重量%未満であると、十分な強度が得られないからであり、20重量%を越えると、防火性が損なわれるからである。
【0023】
そして、非晶質のシリカ粉状体の添加量は親水性樹脂に対して5ないし80重量%であることが好ましい。5重量%未満であると、十分な強度が得られないからであり、80重量%を越えると、親水性樹脂や無機質構成要素の添加量が相対的に少なくなり、所望の強度が得られないからである。
【0024】
【実施例】
(実施例1〜4)
図1の図表Aに示す割合でシラス発泡体(平均粒径250μm)、親水性樹脂としてポリビニルアルコール樹脂、無機骨材として非晶質シリカ粉状体であるシリカヒューム(pH=3.5、平均粒径1μm)をそれぞれ混合して混合物を得た。そして、前記混合物100重量部に対して水50重量部を加えて均一に混練した後、所定の型枠に入れ、厚さ5mm、密度0.55g/cmに圧縮成形した。ついで、温度180℃で1時間乾燥し、試験用サンプルを得た。得られた試験用サンプルを平面引張り試験用治具に貼り合わせ、剥離強度を測定した。測定結果を図1の図表Aに示すとともに、図2にグラフ化した。
【0025】
(実施例5〜8)
図1の図表Bに示す割合でシラス発泡体(平均粒径250μm)、親水性樹脂としてポリビニルアルコール樹脂、無機骨材として非晶質シリカ粉状体であるシリカヒューム(pH=8、平均粒径0.5μm)をそれぞれ混合して混合物を得た。そして、他は前述の実施例1と同様に処理して試験用サンプルを得、実施例1と同一の条件で剥離強度を測定した。測定結果を図1の図表Bに示すとともに、図2にグラフ化した。
【0026】
(比較例1〜4)
図1の図表Cに示す割合でシラス発泡体(平均粒径250μm)、親水性樹脂としてポリビニルアルコール樹脂、無機骨材として結晶シリカ(平均粒径1μm)をそれぞれ混合して混合物を得た。そして、他は前述の実施例1と同様に処理して試験用サンプルを得、実施例1と同一の条件で剥離強度を測定した。測定結果を図1の図表Cに示すとともに、図2にグラフ化した。
【0027】
図1および図2から明かなように、実施例1〜8の全ての剥離強度が比較例1〜4のいずれの剥離強度よりも同等以上であることから、結晶シリカを添加するよりも非晶質シリカ粉状体を添加すれば、剥離強度が向上することを確認できた。特に、非晶質シリカ粉状体の酸性度が高いと、その添加量が増大するにつれて剥離強度が著しく大きくなる傾向にあることも判明した。
【0028】
(実施例9〜12)
図3の図表Aに示す割合でシラス発泡体(平均粒径250μm)、親水性樹脂としてスターチ、無機骨材として非晶質シリカ粉状体であるシリカヒューム(pH=3.5、平均粒径1μm)をそれぞれ混合して混合物を得た。そして、他は前述の実施例1と同様に処理して試験用サンプルを得、実施例1と同一の条件で剥離強度を測定した。測定結果を図3の図表Aに示すとともに、図4にグラフ化した。
【0029】
(実施例13〜16)
図3の図表Bに示す割合でシラス発泡体(平均粒径250μm)、親水性樹脂としてスターチ、無機骨材として非晶質シリカ粉状体であるシリカヒューム(pH=8、平均粒径0.5μm)をそれぞれ混合して混合物を得た。そして、他は前述の実施例1と同様に処理して試験用サンプルを得、実施例1と同一の条件で剥離強度を測定した。測定結果を図3の図表Bに示すとともに、図4にグラフ化した。
【0030】
(比較例5〜8)
図3の図表Cに示す割合でシラス発泡体(平均粒径250μm)、親水性樹脂としてスターチ、無機骨材として結晶シリカ(平均粒径1μm)をそれぞれ混合して混合物を得た。そして、他は前述の実施例1と同様に処理して試験用サンプルを得、実施例1と同一の条件で剥離強度を測定した。測定結果を図3の図表Cに示すとともに、図4にグラフ化した。
【0031】
図3および図4から明かなように、実施例9〜16の全ての剥離強度が比較例5〜8のいずれの剥離強度よりも同等以上であることから、結晶シリカ粉状体を添加するよりも非晶質シリカ粉状体を添加すれば、剥離強度が向上することを確認できた。特に、非晶質シリカ粉状体の酸性度が高いと、その添加量が増大するにつれて剥離強度が著しく大きくなる傾向にあることも判明した。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、親水性樹脂に微細な非晶質シリカ粉状体を添加することにより、有機結合材の添加量を増やすことなく、強度の大きい無機質成形体が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる実施例および比較例を示す図表である。
【図2】図1の図表をグラフ化したグラフ図である。
【図3】本発明にかかる他の実施例および比較例を示す図表である。
【図4】図2の図表をグラフ化したグラフ図である。

Claims (3)

  1. 無機質構成要素と、親水性樹脂と、平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを必須成分とする混合物を成形し、加熱,硬化させたことを特徴とする無機質成形体。
  2. 無機繊維、無機粉状体および親水性樹脂を必須成分とするスラリーから湿式抄造して得た湿潤マットを表裏層とし、無機発泡体および親水性樹脂を必須成分とする中層用混合物を前記表裏層用湿潤マット間に配置して中層とし、加熱,圧締して一体化した無機質成形体において、
    前記表裏層および中層のうち、少なくともいずれか一層に平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体を添加したことを特徴とする無機質成形体。
  3. 無機繊維、無機粉状体および親水性樹脂を必須成分とするスラリーから湿式抄造して少なくとも2枚の表裏層用湿潤マットを得、無機発泡体および親水性樹脂を必須成分とする中層用混合物を前記表裏層用湿潤マット間に均一な厚さに堆積させて中層とした後、熱圧工程および乾燥工程を経て一体化する無機質成形体の製造方法において、
    前記表裏層および中層のうち、少なくともいずれか一層に平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体を添加したことを特徴とする無機質成形体の製造方法。
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