JP2004166522A - ポリヌクレオチド誘導体及びその利用 - Google Patents
ポリヌクレオチド誘導体及びその利用 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】簡便かつ正確に核酸塩基の同定を行えるポリヌクレオチド誘導体、その中間体として使用できるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体及び塩基化合物等を提供する。
【解決手段】以下の一般式(1)で表される化合物等。
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。)
【選択図】 図7
【解決手段】以下の一般式(1)で表される化合物等。
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。)
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩基配列中の特定部位の塩基の種類の決定に用いられるポリヌクレオチド誘導体、その中間体であるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体及び塩基化合物、並びに、その利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ハイブリダイゼーションを利用した核酸塩基決定は、プローブとしてのポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを、蛍光ラベルされた標的核酸とハイブリダイズさせ、その融解温度を測定することにより行っている。詳述すれば、プローブの所定位置の塩基が標的核酸の対応塩基と塩基対を形成する場合としない場合とで、2本鎖の融解温度が若干異なることを利用して、塩基の同定を行っている。
【0003】
しかし、この場合は、対合する塩基が塩基対を形成する場合としない場合との融解温度の差ができるだけ大きくなるような条件設定を、個々の標的核酸ごとに行う必要がある。また、塩基間の非特異的な吸着や塩基対形成の不安定性などによる検出エラーが生じ易い。さらに、標的核酸のラベル量を少なくせざるを得ない場合や、長時間の操作により蛍光が退色する場合には、検出誤差が大きくなる。
【0004】
なお、標的核酸配列を検出するために蛍光ラベルしたプローブを用いることも提案されている(例えば特許文献1、2、3及び4)。しかし、これらの蛍光プローブは、標的核酸と塩基対を形成することにより標的核酸を標識するものにすぎず、標的核酸中の特定塩基を同定することはできない。
【0005】
【特許文献1】
特公平3−71437号公報(第4欄一般式(I)、第5欄第5−9行)
【0006】
【特許文献2】
特表平9−505556号公報(請求項1、第15頁第11−19行)
【0007】
【特許文献3】
特開平6−135991号公報(請求項1、段落0004、段落0005)
【0008】
【特許文献4】
特開昭62−059293号公報(請求項1、第2頁右下欄第5−8行)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、簡便かつ正確に核酸塩基の同定を行えるポリヌクレオチド誘導体、その中間体として使用できるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体及び塩基化合物、DNAチップ、並びに、標的核酸中のヌクレオチドの同定方法を提供することを主目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明者は研究を重ね、以下の知見を見出した。
▲1▼ 1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(5)又は一般式(6)で表されるヌヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体は蛍光を発する。このポリヌクレオチド誘導体をプローブとして用いて標的核酸とのハイブリダイゼーションを行うと、相補鎖中の当該ヌクレオチド誘導体と対合するヌクレオチドの種類によって蛍光が増大したり、消光したり、蛍光
発光波長がシフトしたりする。
【0011】
【化7】
【0012】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
【0013】
【化8】
【0014】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
▲2▼ 例えば、上記一般式(5)において、R1がアミノ基であり、R2〜R8が水素原子であるポリヌクレオチド誘導体(ナフトデアザアデニン(NDA)含有ポリデオキシリボヌクレオチド誘導体)の場合には、 (NDA)含有ポリデオキシリボヌクレオチド誘導体と対合する相補鎖中のヌクレオチドがアデニル酸である場合には、2本鎖形成前の蛍光を維持するが、その他のチミジル酸、グアニル酸又はシチジル酸の場合には、蛍光が消光する。
▲3▼ また例えば、一般式(6)において、R11がメトキシ基であり、R9、R10、R12及びR13が水素原子であるポリヌクレオチド誘導体(メトキシベンゾデアザイノシン(MDI)含有ポリデオキシリボヌクレオチド誘導体)の場合には、 (MDI)含有ポリデオキシリボヌクレオチド誘導体と対合する相補鎖中のヌクレオチドがチミジル酸である場合には、蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに蛍光強度が大幅に増大する。一方、対合するヌクレオチドがアデニル酸又はグアニル酸である場合には、蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに蛍光強度が若干増大する。さらに、対合するヌクレオチドがチミジル酸である場合には、蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに、一本鎖の場合の蛍光強度が維持される。
▲4▼ 従って、標的核酸に相補的なポリヌクレオチドの所定位置のヌクレオチドに代えてこれらのヌクレオチド誘導体を導入したものをプローブとして用いることにより、標的核酸の所定位置の塩基を簡単かつ正確に同定できる。
【0015】
本発明は、前記知見に基づき完成されたものであり、以下の化合物、ヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド誘導体、DNAチップ及び標的核酸中のヌクレオチドの同定方法を提供する。
【0016】
項1. 以下の一般式(1)で表される化合物。
【0017】
【化9】
【0018】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。)
項2. 以下の一般式(2)で表される化合物。
【0019】
【化10】
【0020】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。)
項3. 以下の一般式(3)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体。
【0021】
【化11】
【0022】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。nは0、1、2又は3を示す。)
項4. 以下の一般式(4)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体。
【0023】
【化12】
【0024】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。nは0、1、2又は3を示す。)
項5. ポリヌクレオチドにおいて、1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(5)で表されるヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体。
【0025】
【化13】
【0026】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
項6. ポリヌクレオチドにおいて、1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(6)で表されるヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体。
【0027】
【化14】
【0028】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
項7. プローブとして用いるための項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体。
【0029】
項8. 基体上に1又は複数の項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体が固定又は吸着されたDNAチップ。
【0030】
項9. 項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体を試料中の標的核酸とハイブリダイズさせる工程と;
ハイブリダイズ産物の蛍光スペクトルを測定する工程と;
この蛍光スペクトルをハイブリダイズ前の請求項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体の蛍光スペクトルと比較することにより、標的核酸の特定位置のヌクレオチドの種類を同定する工程と
を含む標的核酸中のヌクレオチドの同定方法。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物
<塩基化合物>
本発明の第1の化合物は、文献未記載の新規化合物であり、以下の一般式(1)で表される。
【0032】
【化15】
【0033】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。)
また本発明の第2の化合物は、文献未記載の新規化合物であり、以下の一般式(2)で表される。
【0034】
【化16】
【0035】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。)本明細書において、低級アルキル基、モノ−(低級アルキル)アミノ基、ジ−(低級アルキル)アミノ基及び低級アルキルチオ基の低級アルキルとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4個程度の直鎖又は分岐状のアルキルが挙げられる。
【0036】
また、低級アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4個程度の直鎖又は分岐状のアルコキシ基が挙げられる。
【0037】
アシルオキシ基としては、以下の一般式(7)において、Rが例えば上記低級アルキル基、置換基を有していてよいフェニル基、ハロゲン原子等である置換基が挙げられる。
【0038】
【化17】
【0039】
また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0040】
また、フェニル基は、例えばアミノ基、モノ−(低級アルキル)アミノ基、ジ−(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基等の置換基を有していてもよい。
【0041】
本明細書において、R1〜R13が水酸基である場合には、互変異性によりオキソ基になる場合もある。
【0042】
一般式(1)の化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8の好適な組み合わせとしては、例えばR1がアミノ基であり、R2〜R8が水素原子である組み合わせ(ナフトデアザアデニン(NDA))が挙げられる。
【0043】
また、一般式(2)の化合物において、R9、R10、R11、R12及びR13の好適な組み合わせとしては、R11がメトキシ基であり、R9、R10、R12及びR13が水素原子である組み合わせ(メトキシベンゾデアザイノシン(MDI)); R10及びR11が結合してベンゾ環を形成し、R9、R12及びR13が水素原子である組み合わせ(ナフトデアザイノシン(NDI)); R9〜R13が水素原子である組み合わせ(ベンゾデアザイノシン(BDI))等が挙げられる。特にMDIが好ましい。
<ヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体>
本発明の第1のヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体は、文献未記載の新規化合物であって、以下の一般式(3)で表される化合物である。
【0044】
【化18】
【0045】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。nは0、1、2又は3を示す。)
本発明の第2のヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体は、文献未記載の新規化合物であって、以下の一般式(4)で表される化合物である。
【0046】
【化19】
【0047】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。nは0、1、2又は3を示す。)
R1〜R13については前述した通りである。
【0048】
R14が水素原子である場合には、上記化合物はデオキシリボヌクレオシド又はデオキシリボヌクレオチド誘導体であり、R14が水酸基である場合には、上記化合物はリボヌクレオシド又はリボヌクレオチド誘導体である。
【0049】
また、nが0である場合すなわちリン酸基が存在しない場合には、上記化合物はヌクレオシド誘導体であり、nが1、2又は3である場合には、上記化合物はヌクレオチド誘導体である。
<ポリヌクレオチド誘導体>
本発明の第1のポリヌクレオチド誘導体は、ポリヌクレオチドにおいて、1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(5)で表されるヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体である。
【0050】
【化20】
【0051】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
本発明の第2のポリヌクレオチド誘導体は、ポリヌクレオチドにおいて、1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(6)で表されるヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体である。
【0052】
【化21】
【0053】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
R1〜R14については前述した通りである。
【0054】
本発明のポリヌクレオチド誘導体は、DNAであってもよくRNAであってもよい。
【0055】
本発明のポリヌクレオチド誘導体のヌクレオチド数は特に限定されないが、例えば、最大100個程度、好ましくは最大50個程度、より好ましくは最大30個程度、さらにより好ましくは最大20個程度のヌクレオチドからなるものが挙げられる。すなわち、本発明のポリヌクレオチドにはオリゴヌクレオチドも含まれる。
【0056】
本発明のポリヌクレオチド誘導体は、全体のヌクレオチド数により異なるが、上記本発明のヌクレオチド誘導体を20個程度まで有していてよい。より好ましくは5個程度までである。上記本発明のヌクレオチド誘導体が余りに多いと、塩基間相互作用により蛍光波長が移動してしまう可能性がある。本発明の範囲であればこのような問題は生じない。
化合物の製造方法
<塩基化合物>
本発明の上記一般式(1)で表される化合物は、例えば以下の方法で合成できる。先ず、炭素原子1位から、水酸基、ニトロ基、R8、R7、R6、R5、R4、R3を置換基としてこの順に有するナフタレンを適当な溶媒に溶解させた溶液にp−トルエンスルフォニルクロリドを添加する。炭素原子1位に、置換基として、水酸基に代えてハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)を有している場合は、p−トルエンスルフォニルクロリドによる処理を必要とせず、次のエチルシアノアセテート及びtert−カリウムブトキシド添加のステップに直接進むことができる。
【0057】
次いで、適当な溶媒中にエチルシアノアセテート及びtert−カリウムブトキシドを添加する。次いで、酸性条件下で亜鉛粉末を添加する。次いで、ナトリウムメトキシド及びフォルムアミドを添加、加熱する。さらに、POCl3及びp−ジオキサンを添加する。これにより、一般式(1)において、R1がハロゲン原子であり、R2が水素原子であり、任意のR3、R4、R5、R6、R7及びR8を有する化合物が得られる。
【0058】
上記操作において、フォルムアミドに代えて、低級カルボン酸アミド、尿素または低級アルキル尿素を用いることにより、R2として低級アルキル基、アミノ基、低級アルキル置換アミノ基を導入できる。また、R2がアミノ基である化合物に亜硝酸塩添加後、低級アルキルアミンやハロゲン化剤などの求核性試薬を添加することにより、アルキルアミノ基やハロゲン原子などを導入できる。
【0059】
次いで、RO−、RS−、RHN−、(R)2N−、H2N−(いずれもRは低級アルキル基)等の求核性試薬を添加することにより、R1としてアミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を導入することができる。
<ヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体>
本発明のヌクレオシド誘導体は、例えば以下の方法で合成できる。先ず、2−デオキシ−D−リボースの1位水酸基をO−メチル化して1−メチルグリコシドを得る。次いで、適当な溶媒中でp−トルオイルクロリドを添加することにより3位炭素及び5位炭素の水酸基をトルオイル基等で置換する。次いで、塩酸を添加することにより、1位炭素に脱離基としての塩素原子を導入する。
【0060】
得られた化合物と、別途合成した塩基化合物とを常法により反応させることにより本発明のヌクレオシド誘導体が得られる。
【0061】
ヌクレオチド誘導体は当該ヌクレオシド誘導体から常法により得ることができる。すなわち、POCl3及びリン酸トリメチルを添加することにより、ヌクレオチド(n=1)が得られる。さらに、ピロリン酸トリブチルアンモニウム塩を添加することにより、三リン酸体が得られる。
<ポリヌクレオチド誘導体>
本発明のポリヌクレオチド誘導体は、例えば核酸自動合成機を用いたフォスフォロアミダイト法による化学合成方法において、特定ヌクレオシドに代えて本発明のヌクレオシド誘導体を用いることにより合成できる。
用途
本発明の(塩基)化合物、及び、ヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体は、ポリヌクレオチド誘導体の合成に供することができる。
【0062】
本発明の化合物及びヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体は蛍光を発するところ、これを含む本発明のポリヌクレオチド誘導体は、標的核酸とハイブリダイズさせると、1本鎖の場合に比べて、対合するヌクレオチドの種類によって蛍光の発光強度が増大したり、低減したり、発光波長がシフトしたりする。
【0063】
例えば、一般式(5)において、R1がアミノ基であり、R2〜R8が水素原子であり、R14が水素原子である場合(NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体)には、NDA含有ヌクレオチド誘導体に対合するヌクレオチドがシチジル酸である場合には1本鎖の場合と同様の蛍光強度を示すが、アデニル酸、チミジル酸又はグアニル酸である場合には蛍光が消光する。本発明のポリヌクレオチド誘導体は、この現象を利用して以下の用途に使用できる。
i) 標的核酸と相補的なポリヌクレオチド誘導体は、プローブとして用いることにより、標的核酸の特定位置のヌクレオチドの種類を決定できる。同様の方法で1塩基多型の検出に利用できる。
ii) DNAチップにおいて、ポリヌクレオチドに代えて基板上に固定ないしは吸着させることにより、特定核酸配列を有するか否かを確認できる。特に、標的核酸の特定位置のヌクレオチドの種類を決定できる。
iii) アンチセンスポリヌクレオチドに代えて使用する場合には、通常のポリヌクレオチドとは異なるために、核酸分解酵素(例えば制限酵素)や核酸結合タンパク質(例えば転写因子)等の標的核酸への結合を阻害できる。このことから、これらの作用を利用した実験用試薬として利用できる。
iv) それ自体蛍光を発するため、核酸の蛍光ラベルに使用できる。
v) DNA複製において、複製されるDNAと相補的なプローブとして使用すること によりDNA複製のリアルタイム検出ができる。同様に、RNAへの転写において 、転写されるRNAと相補的なプローブとして使用することによりRNA転写のリ アルタイム検出ができる。
vi) 相補的配列とハイブリダイズすることにより蛍光波長のシフトが起こるようなポリヌクレオチド誘導体である場合は、蛍光波長のシフトにより当該ポリヌクレオチド誘導体の酸化還元電位が変化する。このため、電極上に本発明のポリヌクレオチド誘導体を固定しておき、被験ポリヌクレオチドをこの電極に作用させて酸化還元電位を測定する方法で、核酸配列応答性のバイオセンサーとして利用できる。
vii) 本発明のポリヌクレオチドは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)に供される蛍光性プローブとして利用できる。
プローブ
前述したように、本発明のポリヌクレオチド誘導体は、プローブとして使用して試料中に含まれる標的核酸の特定位置の塩基の種類を決定できる。
【0064】
プローブとして使用する場合は、試料の種類によって異なるが、ヌクレオチド数は例えば4〜100個程度、好ましくは10〜30個程度とすることができる。
【0065】
試料が細胞抽出液等のヌクレアーゼを含むものである場合には、ヌクレアーゼにより切断され難いように、ホスホロチオエートDNA又はRNA、H−ホスホネートDNA又はRNA等の修飾核酸であってもよい。
【0066】
ハイブリダイズに際しては、標的核酸を含む試料に対して本発明のポリヌクレオチド誘導体を1nM〜1mM程度、特に1μM〜50μM程度添加することが好ましい。また、ハイブリダイズ条件はポリヌクレオチドの長さによっても異なるが、例えば0〜60℃程度、特に15〜40℃程度の温度で、例えば5〜60分間程度、特に5〜10分間程度行うことができる。また、ハイブリダイズさせる試料は、例えばpH5.5〜8.0程度、特にpH 6.5〜8.0程度に調整すればよい。
【0067】
また、試料から抽出及び精製された標的核酸と本発明のポリヌクレオチド誘導体とをハイブリダイズさせる場合には、ポリヌクレオチドの長さによって異なるが、例えば室温(25℃程度)〜50℃程度、10〜48時間程度、2〜6×SSC程度の条件とすることができる。さらに、同程度の濃度のSSC溶液で3〜5回程度洗浄すればよい。
DNA チップ
本発明のDNAチップ(又はDNAアレイ)は、基体上に本発明のポリヌクレオチド誘導体が固定又は吸着されたものである。固定には共有結合などによる結合も含まれる。
【0068】
基体上へのDNAのスポット径は特に限定されないが、例えば50〜200μm程度とすることができる。またスポットピッチは特に限定されないが、例えば100〜500μm程度とすることができる。
【0069】
基体の材料は特に限定されず、例えばガラス、シリカ、金等を用いることができる。また、基体の形状は、板状(基板状)、ビーズ状等のどのような形状のものであってもよい。
【0070】
基体上に本発明のポリヌクレオチド誘導体を結合する場合には、本発明のポリヌクレオチド誘導体の一端を、例えば金属−硫黄結合などの方法を使用して、基体に結合させることができる。
【0071】
DNAチップに固定等される本発明のポリヌクレオチド誘導体のヌクレオチド数は、試料の種類によって異なるが、例えば10〜200個程度、好ましくは50〜100個程度とすることができる。
【0072】
試料が細胞抽出液等のヌクレアーゼを含むものである場合には、本発明のポリヌクレオチド誘導体は、ヌクレアーゼにより切断され難いように、ホスホロチオエートDNA又はRNA、H−ホスホネートDNA又はRNA等の修飾核酸であってもよい。
【0073】
ハイブリダイズに際しては、基体に固定された本発明のポリヌクレオチド誘導体に対して、試料を例えば0.1μM〜100μM程度、特に1μM〜10μM程度添加することができる。また、ハイブリダイズ条件はポリヌクレオチド誘導体の種類によって異なるが、例えば0〜60℃程度、特に20〜40℃程度の温度で、例えば1〜30分間程度、特に1〜5分間程度とすることができる。また、ハイブリダイズさせる試料は例えばpH5.5〜8.0程度、特にpH 6.5〜8.0程度に調整しておくことが好ましい。
【0074】
ハイブリダイズ後は、チップの種類に適した洗浄液で2〜5回程度洗浄すればよい。
【0075】
また、試料から抽出及び精製された標的核酸を用いる場合には、標的核酸を例えば2〜6×SSC程度のハイブリダイズ溶液に溶解させたものを本発明のDNAチップに作用させるのが好ましい。温度、時間、洗浄条件については、未精製の標的核酸を用いる場合と同様である。
本発明のヌクレオチドの同定方法
本発明のヌクレオチドの同定方法は、上記説明した本発明のポリヌクレオチド誘導体を試料中の標的核酸とハイブリダイズさせる工程と;
ハイブリダイズ産物の蛍光スペクトルを測定する工程と;
この蛍光スペクトルをハイブリダイズ前の本発明のポリヌクレオチド誘導体の蛍光スペクトルと比較することにより、標的核酸の特定位置のヌクレオチドの種類を同定する工程とを含む方法である。
【0076】
試料は、核酸を含むものであればよく、細胞抽出液、血液のような体液、PCR産物、オリゴヌクレオチド等が挙げられる。
【0077】
ハイブリダイズ条件は、プローブ又はDNAチップについて説明した通りである。
【0078】
蛍光スペクトルは、常法に従い、照射波長250〜600nm程度で測定すればよい。ハイブリダイズ前のポリヌクレオチド誘導体の蛍光スペクトル測定と、ハイブリダイズ産物の蛍光スペクトル測定とは、同じ媒体に溶解又は懸濁させた状態で行うことが好ましい。通常はハイブリダイゼーション溶液に溶解又は懸濁させた状態で測定すればよい。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、簡便かつ正確に核酸塩基の同定を行えるポリヌクレオチド誘導体、その中間体として使用できるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体及び塩基化合物が提供される。
【0080】
また、本発明によれば、簡便かつ正確に核酸塩基の同定を行えるDNAチップ及び簡便かつ正確に標的核酸中の特定塩基の同定を行える方法が提供される。
【0081】
さらにいえば、本発明のヌクレオチド誘導体を含むポリヌクレオチド誘導体は、標的核酸とハイブリダイズさせると、標的核酸における当該ヌクレオチド誘導体と対合するヌクレオチドの種類によって、蛍光強度が増大したり、消光したり、発光波長特に極大波長がシフトしたりする。
【0082】
従来は、プローブと標的核酸との特定位置における塩基対形成の有無により、プローブと標的核酸とにより形成される2本鎖の融解温度が若干異なることに基づいて塩基の同定を行っていたため、検出可能な程度に融解温度差を大きくするために、個々の標的核酸ごとにハイブリダイズ条件設定を行う必要があった。これに対して本発明では、蛍光の増大、低減、波長のシフト等により塩基の同定を行うため、このような手間のかかるハイブリダイズ条件設定が不要である。
【0083】
また、2本鎖の融解によらないため、融解が生じ難いような長いポリヌクレオチド誘導体とすることもできる。
【0084】
また、塩基間の非特異的な吸着や塩基対形成の不安定性などによる検出エラーが生じ難い。
【0085】
また、対合するヌクレオチドにより蛍光発光の波長がシフトする場合には、特定ヌクレオチドと対合した場合の蛍光波長に合わせたフィルター(特定の数十nmの波長の光だけを透過するフィルターであり、市販されている)を使用してこのフィルターに蛍光を通すことにより、特定波長の蛍光だけを検出することができ、対合ヌクレオチドの検出感度が増大する。
【0086】
また、他の長波長蛍光色素を反応系中に添加することにより、蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)を利用して検出感度を向上させたり、目で見える色の蛍光に変化させることができる。
【0087】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1( NDA 含有ヌクレオシド誘導体の合成)
図1を参照して本発明の1実施態様であるデオキシリボヌクレオシド誘導体の合成方法を説明する。
<糖部分の調製>
2−デオキシ−D−リボース(3.0g、22.4mmol)を0.1%メタノール/HCl(60ml)中に溶解させ、20分間撹拌することによりメチルグリコシドを得た。炭酸銀(0.88g、3.19ml)を添加して溶液を中性に調整し、濾過し濃縮して、シロップを得た。残存するメタノールをピリジンとともに2回留去させることにより除去した。残存物を無水ピリジン中に溶解し、0℃で冷却し、p−トルオイルクロリド(7.50g、48.5mmol)を滴下した。滴下完了後、混合物を50℃で2時間加熱し、室温で終夜撹拌した。水(100ml)を添加し、混合物をエーテル(200ml)を用いて抽出した。エーテル相を水、希塩酸(5%)及び飽和NaHCO3溶液で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、留去により粘稠なシロップを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)により白色粉末として純粋な1α/β−O−メチル−2−デオキシ−D−リボフラノシルビス(p−トルエート)を得た(図1化合物(a))。
【0088】
化合物(a)(11.8g、30.7mmol)の溶液に酢酸中の1M塩酸溶液(110ml)を添加した。室温下で、この溶液にガス状HClを通し、約10分後に溶液中に塩化物が結晶化した。白色結晶を濾過により集め、ヘキサンで洗浄し、真空デシケーター中で水酸化カリウム上で乾燥させ、9.0gの純粋な1α−クロロ−2−デオキシ−D−リボフラノシルビス(p−トルエート)を得た(図1化合物(b))。
<核酸塩基誘導体部分の導入>
次に、図2を参照して、糖への核酸塩基誘導体の導入を説明する。2−ニトロ−1−ナフトール(95%、10.0g、50.1mmol)をピリジン(150ml)に溶解させ、p−トルエンスルフォニルクロリド(12.0g、62.9mmol)を0℃において加えた。混合物を室温下6時間撹拌した。得られた混合物を減圧により濃縮した。粗生成物をクロロフォルムを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、橙色の固形物として、2−ニトロナフチルp−トルエンスルフォネート(図2化合物(c))を得た。
【0089】
次いで、無水THF(170ml)中にエチルシアノアセテート(4.62ml、42.6mmol)を溶解させ氷冷した溶液に、tert−カリウムブトキシド(4.78g、42.6mmol)を添加した。得られた白色の懸濁液を15分間撹拌し、化合物(c)(7.3g、21.3mmol)を加えた。懸濁液を7時間還流しつつ加熱した。溶液を水に注入し、水性混合物を濃塩酸を用いてpH2に調整した。混合物をエーテルを用いて3回抽出し、次いで、有機化合物相を乾燥させ、減圧下に濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)にかけ、シアノ(2−ニトロ−ナフタレン−1−イル)酢酸エチルエーテル(図2化合物(d))(3.7g、13.8mmol、収率65%)を黄色固体として得た。
【0090】
化合物(d)の酢酸(150ml)溶液にZn粉末(3.9g、60mmol)を添加した。混合物を44℃に加熱し、3.3時間超音波処理しさらにZn粉末を追加した(2.4g、36.7mmol)。さらに加熱及び3.3時間超音波処理した後、混合物を濾過した。濾液を減圧により濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=20:1)により精製し、2−アミノ−3H−ベンゾ[e]インドール−1−カルボキシリックアシッドエチルエステル(図2化合物(e))(2.34g、9.2mmol、67%)を黒色固体として得た。
【0091】
化合物(e)(1.1g、4.33mmol)の溶液、ナトリウムメトキシド(1.0g、18.5mmol)及びフォルムアミド(40ml)を220℃で6時間加熱し、220℃で濃縮して固体を得た。その固体をメタノール中で粉末にし、濾過した。濾液を濃縮して固体を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)により精製し、3,11−ジヒドロ−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール−4−オン(図2化合物(f))(379mg、1.61mmol、37%)を黄色固体として得た。
【0092】
化合物(f)(200mg、0.85mmol)、POCl3(20ml)及びp−ジオキサン(20ml)を3時間還流しつつ加熱した。混合物を濃縮して固体とし、次いで、水で洗浄した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=40:1)により精製し、4−クロロ−11H−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(図2化合物(g))(145mg、0.57mmol、67%)を黄色固体として得た。
【0093】
次いで、化合物(g)(112mg、0.44mmol)を無水アセトニトリル(10ml)中に室温で懸濁した。この懸濁液に水素化ナトリウム(油中60%、60mg、1.50mmol)を3回に分けて添加し、混合物を55℃で2時間撹拌した。これに、図1の化合物(b)(184mg、0.47mmol)を添加し、混合物を15分間撹拌し、乾燥するまで蒸発させ、残存物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)で精製し、黄色固体として4−クロロ−11−(2’デオキシ−3’,5’−ジ−O−p−トルオイル−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−11H−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(図2化合物(h))(234mg、0.38mmol、86%)を得た。
【0094】
40mlのメタノール/アンモニア溶液(−76℃で飽和)中の化合物(h)の懸濁液(101mg、0.167mmol)を密閉容器中で150℃で7時間撹拌した。混合物を蒸発により乾燥させ、残さをシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)により精製し、白色固体として4−アミノ−11−(2’−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−11H−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(55.6mg、0.158mmol、95%)(図2化合物(i))を得た。
【0095】
この化合物(i)は、塩基としてアデニン誘導体であるナフトデアザアデニン(NDA)を有するデオキシリボヌクレオシド誘導体である。
【0096】
実施例2( NDI 含有ヌクレオシド誘導体の合成)
図1を参照して説明する。実施例1において合成した化合物(h)(90mg、0.148mmol)、エタノール(5ml)、クロロフォルム(1.5ml)及び6M 水酸化ナトリウム水溶液(20ml)の混合物を還流しつつ4時間加熱した。次いで、飽和NH4Clを添加し、溶媒を蒸発させて固体を得た。次いでDMFを添加して濾過した。濾液を減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)で精製し、黄色固体として2’−デオキシ−β−エリスロ−ペントフラノシル−3,11−ジヒドロ−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(33mg、0.940mmol、収率66%)(図2化合物(j))。
【0097】
この化合物は、塩基としてイノシン誘導体であるナフトデアザイノシン(NDI)を有するデオキシリボヌクレオシド誘導体である。
【0098】
実施例3( MDI 含有ヌクレオシド誘導体の合成)
図3を参照して説明する。2−ブタノン(50ml)中に3−フルオロ−4−ニトロフェノール(6.0g、38.2mmol)、インドメタン(25ml)及び炭酸カリウム(10.0g、72.0mmol)を含む混合物を40℃で4時間加熱した。反応混合物を蒸発し、クロロホルム(50ml)中に注入した。これにより白色固体として6.81gの3−フルオロ−4−ニトロアニソール(図3化合物(k))が得られた。
【0099】
無水THF(153ml)中のエチルシアノアセテート(9.8ml、93.4mmol)の氷冷溶液に、窒素ガス下で、tert−カリウムブトキシド(10.9g、101.9mmol)を添加した。得られた白色懸濁液を15分間撹拌し、化合物(k)(8.0g、46.7mmol)を添加した。懸濁液を還流しつつ1.5時間加熱した。溶液を水中に注入し、水性混合物をエーテルで3回抽出し、有機化合物相を乾燥し、濃縮して油にした。次いで、この油をクロロフォルムに溶解し、カラムクロマトグラフィーでクロロフォルムを用いて溶出させることにより精製した。精製物画分を合わせて、濃縮することにより、淡黄色油としてシアノ(2−ニトロフェニル)酢酸エチルエステル(図3化合物(l))14.5gを得た。
【0100】
化合物(l)(13.2g、46.3mmol)の氷酢酸(185ml)溶液にZn粉末(12.1mg、185mmol)を添加した。混合物を超音波処理し、55℃で45分間加熱し、さらに4gのZn粉末を添加した。超音波処理後、さらに105分間加熱し、茶色混合物を濾過した。濾液を濃縮し、残さを得た。残さをカラムクロマトグラフィーにより精製し、連続的に0%、5%、10%の酢酸エチルのヘキサン溶液で溶出した。これにより、2−アミノ−5−メトキシ−1H−インドール−3−カルボキシリックアシッドエチルエステル(図3化合物(m))2.07g(収率52%)を得た。
【0101】
化合物(m)(100mg、0.42mmol)、ナトリウムメトキシド(50mg、0.93mmol)及びフォルムアミド(20ml)の懸濁液を220℃で1.5時間加熱した。溶液を25℃に冷却し、水中に注入した。茶色固体を集め、乾燥することにより1,9−ジヒドロ−6−メトキシ−4H−ピリミド[4,5−b]インドール−4−オン(図3化合物(n))(47mg、収率52%)を得た。
【0102】
化合物(n)(500mg、2.3mmol)、フォスフォリルクロリド(25ml)及び1,4−ジオキサン(25ml)の混合物を6時間還流した。混合物を減圧下に濃縮し、残さをエタノール中に注入した。5分間撹拌後、茶色の懸濁液を濾過し濾液を水中に注入した。白色固体として4−クロロ−6−メトキシ−1H−ピリミド[4,5−b]インドール(図3化合物(o))を回収した(620mg、収率96%)。
【0103】
化合物(o)(100mg、0.43mmol)を無水アセトニトリル(10ml)に室温で懸濁した。この懸濁液に水素化ナトリウム(油中60%、19mg、0.47mmol)を添加し、混合物を10分間還流しつつ撹拌した。リボース(184mg、0.47mmol)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン中の20%酢酸エチルで溶出させることより精製した。これにより、4−クロロ−6−メトキシ−7−(2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−トルオイル−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−7H−ピリミド[4,5−b]インドール(図3化合物(p))210mg(収率82%)を得た。
【0104】
10%エタノール及び1%クロロホルムを含む化合物(p)(100mg、0.17mmol)の3N水酸化ナトリウム水溶液を6時間還流した。冷却後、混合物を減圧下に濃縮し、残さをDMF(100ml)中に注入した。懸濁液を濾過し、濾液を減圧下に濃縮して乾燥し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)により精製し、1−ヒドロ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−7H−ピリミド[4,5−b]インドール−4−オン(図3化合物(q))53mg(収率94%)を得た。
【0105】
この化合物は、塩基としてイノシン誘導体であるメトキシベンゾデアザイノシン(MDI)を有するデオキシリボヌクレオシド誘導体である。
【0106】
実施例4( MDA 含有ヌクレオシド誘導体の合成)
図3を参照して説明する。20mlメタノール/アンモニア(−76℃で飽和)中の化合物(p)(500mg、0.85mmol)を密閉容器内で150℃で10時間撹拌した。濁った溶液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィによりクロロフォルム中の10%メタノールを用いて溶出し、4−アミノ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−7H−ピリミド[4,5−b]インドール(図3化合物(r))(420mg、75%)を得た。
【0107】
この化合物は、塩基としてメトキシベンゾデアザアデニン(MDA)を有するデオキシリボヌクレオシド誘導体である。
【0108】
実施例5( NDA 含有オリゴヌクレオチド誘導体の合成)
図4を参照して、実施例1により得られたNDA含有ヌクレオシド誘導体からNDA含有オリゴヌクレオチド誘導体を合成した例を説明する。
【0109】
N,N−ジメチルフォルムアミドジメチルアセタール(5ml、28mmol)を含む、図2の化合物(i)(55.6mg、0.158mmol)のジメチルフォルムアミド(5ml)溶液を室温下で3時間撹拌した。この溶液を減圧下で濃縮した。残さをシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)により精製し、黄色固体として4−(N,N’−ジメチルアミノメチリデン)アミノ−11−(2’−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−11H−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(図4化合物(s))(42.5mg、0.105mmol、66%)を得た。
【0110】
化合物(t)(22mg、0.031mmol)、N,N,N’,N’−テトライソプロピル−2−シアノエチルフォスフォロアミダイト(10.75ml、0.034mmol)及びテトラゾール(2.38mg、0.034mmol)の0.40mlアセトニトリル溶液を室温下で1.5時間撹拌した。混合物を濾過した。これにより、4−(N,N’−ジメチルアミノメチリデン)アミノ−11−(2’−デオキシ−5’−O−ジメトキシトリチル−β−D−エリスロ−ペントフラノシル−3’−O−シアノエチル−N,N’−ジイソプロピルフォスフォロアミダイト)−11H−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(図4化合物(u))を得た。この化合物(u)を精製せずにDNA合成に供した。
【0111】
化合物(u)を用いてアプライドバイオシステム392DNA/RNAシンセサイザーを用いてフォスフォロアミダイト法によりオリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体5’−CGCAATXTAACGC−3’(配列番号1)である(Xは、NDA含有デオキシリボヌクレオチド;化合物(u)相当)。得られたNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を5−ODS−Hカラム(10×150mm)を用いた逆相HPLCにより精製した。溶出は、0.1Mトリエチルアミンアセテート(TEAA),pH7.0においてアセトニトリルを20分間で5%から25%の勾配をつけて、流速3.0ml/分間で行った。
【0112】
実施例6( MDI 含有オリゴヌクレオチド誘導体の合成)
実施例5において、NDA含有ヌクレオシド誘導体に代えて、実施例3により得られたMDI含有ヌクレオシド誘導体(図3化合物(q))を用い、その他は実施例5と同様にしてMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体を合成した。
【0113】
実施例7( MDA 含有オリゴヌクレオチド誘導体の合成)
実施例5において、NDA含有ヌクレオシド誘導体に代えて、実施例4により得られたMDA含有ヌクレオシド誘導体(図3化合物(r))を用い、その他は実施例5と同様にしてMDA含有オリゴヌクレオチド誘導体を合成した。
<オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体の同定>
HPLC
実施例5により得られたNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチドを仔ウシ腸アルカリフォスファターゼ(50U/ml)、蛇毒フォスフォジエステラーゼ(0.15U/ml)及びP1ヌクレアーゼ(50U/ml)により37℃で3時間完全に分解した。分解産物をCHEMCOBOND 5−ODS−Hカラム(4.6×150mm)(0.1Mトリメチルアミンアセテート(TEAA)、pH7.0、40分間かけて0%から40%のアセトニトリルの勾配、流速1.0ml/分)を用いたHPLCにより分析した。0.1mMのデオキシアデニル酸(dA)、デオキシシチジル酸(dC)、デオキシグアニル酸(dG)及びデオキシチミジル酸(dT)を標準溶液として用いて、ピーク位置及び面積を比較することによりNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチドに含まれるヌクレオチドを確認した。
【0114】
HPLCの溶出パターンを図5に示す。図5の(a)がNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチドを酵素分解したサンプルの溶出パターンであり、図5の(b)はデオキシアデニル酸(dA)、デオキシシチジル酸(dC)、デオキシグアニル酸(dG)及びデオキシチミジル酸(dT)の混合物の溶出パターンである。図5から、dA、dC、dG、dTのいずれにも該当しないNDA含有デオキシリボヌクレオチドによると考えられるピークが観察された。
MALDI−TOF 質量分析
実施例5により得られたNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチドについて、2’,3’,4’−トリヒドロキシアセトフェノンをマトリクスとして用い、内部標準としてT8mer([M−H]−2370.60)及びT17mer([M−H]−5108.37)を用い、蛍光分光光度計(島津製作所製RF5300PC)を用いて、MALDI−TOF質量分析を行った。マススペクトルを図6に示す。計算上の[M−H]−4025.72が4025.86の位置に検出された。
【0115】
このことから、実施例5のオリゴヌクレオチドは、合成過程で分解反応のような副反応や反応停止等を起こさずに所望の組成で得られたものであることが分かる。
<蛍光分析>
NDA 含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体
実施例5により得られたNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を、2.5μMとなるように、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液を調製した。この溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて約25℃で測定したところ、励起波長350nm、発光波長383nmであり、420nmにおける蛍光強度は、2.0であった。
【0116】
上記溶液に、NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体とNDA含有ヌクレオチド以外の部分が相補的な、別途合成したオリゴデオキシリボヌクレオチド(A’);5’−GCGTTAAATTGCG−3’(配列番号2)、(T’);5’− GCGTTATATTGCG −3’(配列番号3)、(G’);5’−GCGTTAGATTGCG−3’(配列番号4)、(C’);5’−GCGTTACATTGCG −3’(配列番号5)をそれぞれ2.5μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0117】
これらの溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定したところ、オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)を加えた場合には、420nmにおける蛍光強度は0.3であった。オリゴデオキシリボヌクレオチド(T’)を加えた場合には、420nmにおける蛍光強度は0.3であり、オリゴデオキシリボヌクレオチド(G’)を加えた場合には、420nmにおける蛍光強度は0.5であり、オリゴデオキシリボヌクレオチド(C’)を加えた場合には、420nmにおける蛍光強度は4.6であった。
【0118】
このように、NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体は、相補鎖上のNDA含有ヌクレオチドと対合するヌクレオチドがデオキシシチジル酸である場合には、NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体単独の場合の蛍光強度が維持されるが、デオキシアデニル酸である場合には蛍光が85%消光し、デオキシチミジル酸である場合には蛍光が85%消光し、デオキシグアニル酸である場合には蛍光が75%消光した。蛍光スペクトルを図7に示す。
MDI 含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体
実施例6により得られたMDI含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を、25μMとなるように、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液を調製した。この溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて約25℃で測定したところ、励起波長320nm、発光波長411nmであり、411nmにおける蛍光強度は2.3であった。
【0119】
上記溶液に、上記オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)、(T’)、(G’)及び(C’)をそれぞれ25μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0120】
これらの溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定したところ、オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)を加えた場合には、発光極大波長が短波長側にシフトするとともに397nmにおける蛍光強度は4.6であった。オリゴデオキシリボヌクレオチド(T’)を加えた場合には、発光極大波長が短波長側にシフトするとともに396nmにおける蛍光強度は8.2であった。(G’)を加えた場合には、発光極大波長が短波長側にシフトするとともに399nmにおける蛍光強度は5.1であった。(C’)を加えた場合には、発光極大波長が短波長側にシフトするとともに398nmにおける蛍光強度は2.1であった。
【0121】
このように、MDI含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体は、それ単独の場合に比べて、相補鎖上のMDI含有ヌクレオチドと対合するヌクレオチドがデオキシチミジル酸である場合には蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに蛍光強度が大幅に増大した。これに対して、デオキシシチジル酸である場合には蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに蛍光強度が維持された、また、デオキシアデニル酸である場合及びデオキシグアニル酸である場合には蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに蛍光強度が若干増大した。
【0122】
蛍光スペクトルを図8に示す。
MDA 含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体
MDAオリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を、25μMとなるように、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液を調製した。この溶液に、MDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体とMDA含有ヌクレオチド以外の部分が相補的な、オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)、(T’)、(G’)及び(C’)をそれぞれ25μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0123】
これらの溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定したところ、オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)を加えた場合には、423nmにおける蛍光強度は0.3であった。オリゴデオキシリボヌクレオチド(T’)を加えた場合には、423nmにおける蛍光強度は0.4であった。(G’)を加えた場合には、421nmにおける蛍光強度は2.8であった。(C’)を加えた場合には、423nmにおける蛍光強度は10.8であった。
【0124】
このように、MDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体は、それ単独の場合に比べて、相補鎖上のMDA含有ヌクレオチドと対合するヌクレオチドがデオキシシチジル酸である場合に蛍光強度が大幅に増大した。また、対合するヌクレオチドがデオキシグアニル酸である場合には蛍光強度が若干増大した。これに対して、デオキシチミジル酸又はデオキシアデニル酸である場合には蛍光強度の変化は観察されなかった。
【0125】
蛍光スペクトルを図9に示す。
MDA 含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体
MDAオリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を、25μMとなるように、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液を調製した。この溶液に、MDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体とMDA含有ヌクレオチド以外の部分が相補的な、オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)、(T’)、(G’)及び(C’)をそれぞれ25μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0126】
各混合物に波長312nmの光を照射し、各混合物の色を観察した。各混合物をデジタルカメラで撮影した写真を図10に示す。図10に示されるように、相補鎖上のMDA含有ヌクレオチドと対合するヌクレオチドがデオキシシチジル酸である場合にのみ、1本鎖の場合には見られない強い蛍光が観察された。
【0127】
なお、各混合物の融解温度(Tm)を波長260nmにおける吸収スペクトルの変化を測定することにより決定したところ、(A’)の場合42.1℃、(T’)の場合54.6℃、(G’)の場合48.0℃、(C’)の場合52.0℃であり、ハイブリダイズを行った温度である25℃はいずれの組み合わせにおいても2本鎖を形成できる温度である。
<1塩基多型の検出>
家族性乳ガン及び卵巣癌で突然変異を引き起こす腫瘍抑制因子をコードする遺伝子であるBRCA−1の1塩基多型部位を含むポリヌクレオチドに対して、プローブとしてMDA含有オリゴヌクレオチド誘導体及びMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体をそれぞれ用いてハイブリダイゼーションを行い、蛍光を観察した。
【0128】
詳述すれば、BRCA−1のTアレルを含むポリヌクレオチドとして、5’−TATTTCATTGGTACC−3’(配列番号6)を合成し、Cアレルを含む配列として5’−TATTTCACTGGTACC−3’(配列番号7)を合成した。
【0129】
プローブとして、上記BRCA−1の部分配列に相補的であって、多型部位に対応する位置にMDA含有ヌクレオシド誘導体を有するオリゴヌクレオチド誘導体5’−GGTACCAXTGAAATA−3’(配列番号8)(Xは MDA含有オリゴヌクレオチド誘導体)を得た。合成方法は、実施例5において、NDA含有ヌクレオシド誘導体に代えて実施例4により得られたMDA含有ヌクレオシド誘導体を用い、その他は実施例5と同様とした。
【0130】
また同様にして、実施例3により得られたMDI含有ヌクレオシド誘導体を用いて配列番号8においてXがMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体であるMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体を得た。
【0131】
上記のMDA含有オリゴヌクレオチド誘導体及び上記のMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体を、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液を調製した。これらの溶液に、BRCA−1のTアレルを含むオリゴヌクレオチド及びBRCA−1のCアレルを含むオリゴヌクレオチドのそれぞれを、25μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0132】
各混合物に312nmの光を照射し、各混合物の色を観察した。各混合物をデジタルカメラで撮影した写真を図11に示す。図11から明らかなように、プローブとしてMDA含有オリゴヌクレオチド誘導体を用いた場合には、BRCA−1の多型部位がCアレルである場合に強い蛍光が観察された。また、プローブとしてMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体を用いた場合には、BRCA−1の多型部位がTアレルである場合にやや強い蛍光が観察された。
<熱力学パラメーター>
NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を、2.5μMとなるように、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液に、上記オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)、(T’)、(G’)及び(C’)をそれぞれ2.5μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0133】
各混合物について、形成された2本鎖の融解温度Tmを波長260nmにおける吸収スペクトルの変化を測定することにより決定した。
【0134】
対照として、上記NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体において、NDA含有デオキシリボヌクオチド誘導体に代えて、上記一般式(1)で表される化合物において、R1がアミノ基でありR2〜R6が水素原子であるベンゾデアザアデニン(BDA)を有するオリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を用いて、同様にしてオリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)、(G’)、(C’)及び(T’)とそれぞれ2本鎖を形成させ、それぞれTmを測定した。
【0135】
結果を以下の表1に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
表1に示すように、NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体ではオリゴデオキシリボヌクレオチド(C’)又は(T’)と対合させた場合には、オリゴデオキシリボヌクレオチド(G’)又は(A’)と対合させた場合に比べてTmが高かった。一方、BDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体では、オリゴデオキシリボヌクレオチド(T’)と対合させた場合にのみ比較的高いTmを示した。
【0138】
このことから、NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体は、オリゴデオキシリボヌクレオチド(C’)又は(T’)安定な2本鎖を形成できることが分かる。塩基部分において縮合しているベンゾ環が一つ増えることによりオリゴデオキシリボヌクレオチド(C’)とも安定な2本鎖を形成できるようになることが分かる。
【0139】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヌクレオチド又はヌクレオシド誘導体の合成に供される糖誘導体の合成手順を示す図である。
【図2】本発明のヌクレオシド誘導体の実施態様であるNDA含有デオキシリボヌクレオシド及びNDI含有デオキシリボヌクレオシドの合成手順を示す図である。
【図3】本発明のヌクレオシド誘導体の実施態様であるMDI含有デオキシリボヌクレオシド及びMDA含有デオキシリボヌクレオシドの合成手順を示す図である。
【図4】本発明のポリヌクレオチド誘導体の実施態様であるNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチドの合成手順を示す図である。
【図5】NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体の酵素分解物のHPLCパターンを示す図である。
【図6】NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体のマススペクトルを示す図である。
【図7】NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体に各種オリゴマーをハイブリダイズさせた場合の蛍光スペクトルの変化を示す図である。
【図8】MDI含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体に各種オリゴマーをハイブリダイズさせた場合の蛍光スペクトルの変化を示す図である。
【図9】MDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体に各種オリゴマーをハイブリダイズさせた場合の蛍光スペクトルの変化を示す図である。
【図10】MDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体に各種オリゴマーをハイブリダイズさせた場合の蛍光を観察した図面代用写真である。
【図11】乳ガン遺伝子であるBRCA−1の1塩基多型部位を含む部分配列に対して、プローブとしてMDA含有オリゴヌクレオチド誘導体及びMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体を用いてハイブリダイゼーションを行い、蛍光を観察した図面代用写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩基配列中の特定部位の塩基の種類の決定に用いられるポリヌクレオチド誘導体、その中間体であるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体及び塩基化合物、並びに、その利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ハイブリダイゼーションを利用した核酸塩基決定は、プローブとしてのポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを、蛍光ラベルされた標的核酸とハイブリダイズさせ、その融解温度を測定することにより行っている。詳述すれば、プローブの所定位置の塩基が標的核酸の対応塩基と塩基対を形成する場合としない場合とで、2本鎖の融解温度が若干異なることを利用して、塩基の同定を行っている。
【0003】
しかし、この場合は、対合する塩基が塩基対を形成する場合としない場合との融解温度の差ができるだけ大きくなるような条件設定を、個々の標的核酸ごとに行う必要がある。また、塩基間の非特異的な吸着や塩基対形成の不安定性などによる検出エラーが生じ易い。さらに、標的核酸のラベル量を少なくせざるを得ない場合や、長時間の操作により蛍光が退色する場合には、検出誤差が大きくなる。
【0004】
なお、標的核酸配列を検出するために蛍光ラベルしたプローブを用いることも提案されている(例えば特許文献1、2、3及び4)。しかし、これらの蛍光プローブは、標的核酸と塩基対を形成することにより標的核酸を標識するものにすぎず、標的核酸中の特定塩基を同定することはできない。
【0005】
【特許文献1】
特公平3−71437号公報(第4欄一般式(I)、第5欄第5−9行)
【0006】
【特許文献2】
特表平9−505556号公報(請求項1、第15頁第11−19行)
【0007】
【特許文献3】
特開平6−135991号公報(請求項1、段落0004、段落0005)
【0008】
【特許文献4】
特開昭62−059293号公報(請求項1、第2頁右下欄第5−8行)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、簡便かつ正確に核酸塩基の同定を行えるポリヌクレオチド誘導体、その中間体として使用できるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体及び塩基化合物、DNAチップ、並びに、標的核酸中のヌクレオチドの同定方法を提供することを主目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明者は研究を重ね、以下の知見を見出した。
▲1▼ 1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(5)又は一般式(6)で表されるヌヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体は蛍光を発する。このポリヌクレオチド誘導体をプローブとして用いて標的核酸とのハイブリダイゼーションを行うと、相補鎖中の当該ヌクレオチド誘導体と対合するヌクレオチドの種類によって蛍光が増大したり、消光したり、蛍光
発光波長がシフトしたりする。
【0011】
【化7】
【0012】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
【0013】
【化8】
【0014】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
▲2▼ 例えば、上記一般式(5)において、R1がアミノ基であり、R2〜R8が水素原子であるポリヌクレオチド誘導体(ナフトデアザアデニン(NDA)含有ポリデオキシリボヌクレオチド誘導体)の場合には、 (NDA)含有ポリデオキシリボヌクレオチド誘導体と対合する相補鎖中のヌクレオチドがアデニル酸である場合には、2本鎖形成前の蛍光を維持するが、その他のチミジル酸、グアニル酸又はシチジル酸の場合には、蛍光が消光する。
▲3▼ また例えば、一般式(6)において、R11がメトキシ基であり、R9、R10、R12及びR13が水素原子であるポリヌクレオチド誘導体(メトキシベンゾデアザイノシン(MDI)含有ポリデオキシリボヌクレオチド誘導体)の場合には、 (MDI)含有ポリデオキシリボヌクレオチド誘導体と対合する相補鎖中のヌクレオチドがチミジル酸である場合には、蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに蛍光強度が大幅に増大する。一方、対合するヌクレオチドがアデニル酸又はグアニル酸である場合には、蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに蛍光強度が若干増大する。さらに、対合するヌクレオチドがチミジル酸である場合には、蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに、一本鎖の場合の蛍光強度が維持される。
▲4▼ 従って、標的核酸に相補的なポリヌクレオチドの所定位置のヌクレオチドに代えてこれらのヌクレオチド誘導体を導入したものをプローブとして用いることにより、標的核酸の所定位置の塩基を簡単かつ正確に同定できる。
【0015】
本発明は、前記知見に基づき完成されたものであり、以下の化合物、ヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド誘導体、DNAチップ及び標的核酸中のヌクレオチドの同定方法を提供する。
【0016】
項1. 以下の一般式(1)で表される化合物。
【0017】
【化9】
【0018】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。)
項2. 以下の一般式(2)で表される化合物。
【0019】
【化10】
【0020】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。)
項3. 以下の一般式(3)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体。
【0021】
【化11】
【0022】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。nは0、1、2又は3を示す。)
項4. 以下の一般式(4)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体。
【0023】
【化12】
【0024】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。nは0、1、2又は3を示す。)
項5. ポリヌクレオチドにおいて、1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(5)で表されるヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体。
【0025】
【化13】
【0026】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
項6. ポリヌクレオチドにおいて、1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(6)で表されるヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体。
【0027】
【化14】
【0028】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
項7. プローブとして用いるための項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体。
【0029】
項8. 基体上に1又は複数の項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体が固定又は吸着されたDNAチップ。
【0030】
項9. 項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体を試料中の標的核酸とハイブリダイズさせる工程と;
ハイブリダイズ産物の蛍光スペクトルを測定する工程と;
この蛍光スペクトルをハイブリダイズ前の請求項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体の蛍光スペクトルと比較することにより、標的核酸の特定位置のヌクレオチドの種類を同定する工程と
を含む標的核酸中のヌクレオチドの同定方法。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物
<塩基化合物>
本発明の第1の化合物は、文献未記載の新規化合物であり、以下の一般式(1)で表される。
【0032】
【化15】
【0033】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。)
また本発明の第2の化合物は、文献未記載の新規化合物であり、以下の一般式(2)で表される。
【0034】
【化16】
【0035】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。)本明細書において、低級アルキル基、モノ−(低級アルキル)アミノ基、ジ−(低級アルキル)アミノ基及び低級アルキルチオ基の低級アルキルとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4個程度の直鎖又は分岐状のアルキルが挙げられる。
【0036】
また、低級アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4個程度の直鎖又は分岐状のアルコキシ基が挙げられる。
【0037】
アシルオキシ基としては、以下の一般式(7)において、Rが例えば上記低級アルキル基、置換基を有していてよいフェニル基、ハロゲン原子等である置換基が挙げられる。
【0038】
【化17】
【0039】
また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0040】
また、フェニル基は、例えばアミノ基、モノ−(低級アルキル)アミノ基、ジ−(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基等の置換基を有していてもよい。
【0041】
本明細書において、R1〜R13が水酸基である場合には、互変異性によりオキソ基になる場合もある。
【0042】
一般式(1)の化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8の好適な組み合わせとしては、例えばR1がアミノ基であり、R2〜R8が水素原子である組み合わせ(ナフトデアザアデニン(NDA))が挙げられる。
【0043】
また、一般式(2)の化合物において、R9、R10、R11、R12及びR13の好適な組み合わせとしては、R11がメトキシ基であり、R9、R10、R12及びR13が水素原子である組み合わせ(メトキシベンゾデアザイノシン(MDI)); R10及びR11が結合してベンゾ環を形成し、R9、R12及びR13が水素原子である組み合わせ(ナフトデアザイノシン(NDI)); R9〜R13が水素原子である組み合わせ(ベンゾデアザイノシン(BDI))等が挙げられる。特にMDIが好ましい。
<ヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体>
本発明の第1のヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体は、文献未記載の新規化合物であって、以下の一般式(3)で表される化合物である。
【0044】
【化18】
【0045】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。nは0、1、2又は3を示す。)
本発明の第2のヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体は、文献未記載の新規化合物であって、以下の一般式(4)で表される化合物である。
【0046】
【化19】
【0047】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。nは0、1、2又は3を示す。)
R1〜R13については前述した通りである。
【0048】
R14が水素原子である場合には、上記化合物はデオキシリボヌクレオシド又はデオキシリボヌクレオチド誘導体であり、R14が水酸基である場合には、上記化合物はリボヌクレオシド又はリボヌクレオチド誘導体である。
【0049】
また、nが0である場合すなわちリン酸基が存在しない場合には、上記化合物はヌクレオシド誘導体であり、nが1、2又は3である場合には、上記化合物はヌクレオチド誘導体である。
<ポリヌクレオチド誘導体>
本発明の第1のポリヌクレオチド誘導体は、ポリヌクレオチドにおいて、1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(5)で表されるヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体である。
【0050】
【化20】
【0051】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同時に水素原子であることはない。R3とR4、R5とR6、R7とR8とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
本発明の第2のポリヌクレオチド誘導体は、ポリヌクレオチドにおいて、1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(6)で表されるヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体である。
【0052】
【化21】
【0053】
(式中、R9、R10、R11、R12、R13は同一又は互いに異なって、水素原子、アミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を表し、R9、R10、R11、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。R10とR11、R12とR13とが結合して置換基を有していてよいフェニル基を形成していてもよい。R14は水素原子又は水酸基を表す。)
R1〜R14については前述した通りである。
【0054】
本発明のポリヌクレオチド誘導体は、DNAであってもよくRNAであってもよい。
【0055】
本発明のポリヌクレオチド誘導体のヌクレオチド数は特に限定されないが、例えば、最大100個程度、好ましくは最大50個程度、より好ましくは最大30個程度、さらにより好ましくは最大20個程度のヌクレオチドからなるものが挙げられる。すなわち、本発明のポリヌクレオチドにはオリゴヌクレオチドも含まれる。
【0056】
本発明のポリヌクレオチド誘導体は、全体のヌクレオチド数により異なるが、上記本発明のヌクレオチド誘導体を20個程度まで有していてよい。より好ましくは5個程度までである。上記本発明のヌクレオチド誘導体が余りに多いと、塩基間相互作用により蛍光波長が移動してしまう可能性がある。本発明の範囲であればこのような問題は生じない。
化合物の製造方法
<塩基化合物>
本発明の上記一般式(1)で表される化合物は、例えば以下の方法で合成できる。先ず、炭素原子1位から、水酸基、ニトロ基、R8、R7、R6、R5、R4、R3を置換基としてこの順に有するナフタレンを適当な溶媒に溶解させた溶液にp−トルエンスルフォニルクロリドを添加する。炭素原子1位に、置換基として、水酸基に代えてハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)を有している場合は、p−トルエンスルフォニルクロリドによる処理を必要とせず、次のエチルシアノアセテート及びtert−カリウムブトキシド添加のステップに直接進むことができる。
【0057】
次いで、適当な溶媒中にエチルシアノアセテート及びtert−カリウムブトキシドを添加する。次いで、酸性条件下で亜鉛粉末を添加する。次いで、ナトリウムメトキシド及びフォルムアミドを添加、加熱する。さらに、POCl3及びp−ジオキサンを添加する。これにより、一般式(1)において、R1がハロゲン原子であり、R2が水素原子であり、任意のR3、R4、R5、R6、R7及びR8を有する化合物が得られる。
【0058】
上記操作において、フォルムアミドに代えて、低級カルボン酸アミド、尿素または低級アルキル尿素を用いることにより、R2として低級アルキル基、アミノ基、低級アルキル置換アミノ基を導入できる。また、R2がアミノ基である化合物に亜硝酸塩添加後、低級アルキルアミンやハロゲン化剤などの求核性試薬を添加することにより、アルキルアミノ基やハロゲン原子などを導入できる。
【0059】
次いで、RO−、RS−、RHN−、(R)2N−、H2N−(いずれもRは低級アルキル基)等の求核性試薬を添加することにより、R1としてアミノ基、モノ(低級アルキル)アミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、水酸基、アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、チオール基又は置換基を有していてよいフェニル基を導入することができる。
<ヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体>
本発明のヌクレオシド誘導体は、例えば以下の方法で合成できる。先ず、2−デオキシ−D−リボースの1位水酸基をO−メチル化して1−メチルグリコシドを得る。次いで、適当な溶媒中でp−トルオイルクロリドを添加することにより3位炭素及び5位炭素の水酸基をトルオイル基等で置換する。次いで、塩酸を添加することにより、1位炭素に脱離基としての塩素原子を導入する。
【0060】
得られた化合物と、別途合成した塩基化合物とを常法により反応させることにより本発明のヌクレオシド誘導体が得られる。
【0061】
ヌクレオチド誘導体は当該ヌクレオシド誘導体から常法により得ることができる。すなわち、POCl3及びリン酸トリメチルを添加することにより、ヌクレオチド(n=1)が得られる。さらに、ピロリン酸トリブチルアンモニウム塩を添加することにより、三リン酸体が得られる。
<ポリヌクレオチド誘導体>
本発明のポリヌクレオチド誘導体は、例えば核酸自動合成機を用いたフォスフォロアミダイト法による化学合成方法において、特定ヌクレオシドに代えて本発明のヌクレオシド誘導体を用いることにより合成できる。
用途
本発明の(塩基)化合物、及び、ヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体は、ポリヌクレオチド誘導体の合成に供することができる。
【0062】
本発明の化合物及びヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体は蛍光を発するところ、これを含む本発明のポリヌクレオチド誘導体は、標的核酸とハイブリダイズさせると、1本鎖の場合に比べて、対合するヌクレオチドの種類によって蛍光の発光強度が増大したり、低減したり、発光波長がシフトしたりする。
【0063】
例えば、一般式(5)において、R1がアミノ基であり、R2〜R8が水素原子であり、R14が水素原子である場合(NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体)には、NDA含有ヌクレオチド誘導体に対合するヌクレオチドがシチジル酸である場合には1本鎖の場合と同様の蛍光強度を示すが、アデニル酸、チミジル酸又はグアニル酸である場合には蛍光が消光する。本発明のポリヌクレオチド誘導体は、この現象を利用して以下の用途に使用できる。
i) 標的核酸と相補的なポリヌクレオチド誘導体は、プローブとして用いることにより、標的核酸の特定位置のヌクレオチドの種類を決定できる。同様の方法で1塩基多型の検出に利用できる。
ii) DNAチップにおいて、ポリヌクレオチドに代えて基板上に固定ないしは吸着させることにより、特定核酸配列を有するか否かを確認できる。特に、標的核酸の特定位置のヌクレオチドの種類を決定できる。
iii) アンチセンスポリヌクレオチドに代えて使用する場合には、通常のポリヌクレオチドとは異なるために、核酸分解酵素(例えば制限酵素)や核酸結合タンパク質(例えば転写因子)等の標的核酸への結合を阻害できる。このことから、これらの作用を利用した実験用試薬として利用できる。
iv) それ自体蛍光を発するため、核酸の蛍光ラベルに使用できる。
v) DNA複製において、複製されるDNAと相補的なプローブとして使用すること によりDNA複製のリアルタイム検出ができる。同様に、RNAへの転写において 、転写されるRNAと相補的なプローブとして使用することによりRNA転写のリ アルタイム検出ができる。
vi) 相補的配列とハイブリダイズすることにより蛍光波長のシフトが起こるようなポリヌクレオチド誘導体である場合は、蛍光波長のシフトにより当該ポリヌクレオチド誘導体の酸化還元電位が変化する。このため、電極上に本発明のポリヌクレオチド誘導体を固定しておき、被験ポリヌクレオチドをこの電極に作用させて酸化還元電位を測定する方法で、核酸配列応答性のバイオセンサーとして利用できる。
vii) 本発明のポリヌクレオチドは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)に供される蛍光性プローブとして利用できる。
プローブ
前述したように、本発明のポリヌクレオチド誘導体は、プローブとして使用して試料中に含まれる標的核酸の特定位置の塩基の種類を決定できる。
【0064】
プローブとして使用する場合は、試料の種類によって異なるが、ヌクレオチド数は例えば4〜100個程度、好ましくは10〜30個程度とすることができる。
【0065】
試料が細胞抽出液等のヌクレアーゼを含むものである場合には、ヌクレアーゼにより切断され難いように、ホスホロチオエートDNA又はRNA、H−ホスホネートDNA又はRNA等の修飾核酸であってもよい。
【0066】
ハイブリダイズに際しては、標的核酸を含む試料に対して本発明のポリヌクレオチド誘導体を1nM〜1mM程度、特に1μM〜50μM程度添加することが好ましい。また、ハイブリダイズ条件はポリヌクレオチドの長さによっても異なるが、例えば0〜60℃程度、特に15〜40℃程度の温度で、例えば5〜60分間程度、特に5〜10分間程度行うことができる。また、ハイブリダイズさせる試料は、例えばpH5.5〜8.0程度、特にpH 6.5〜8.0程度に調整すればよい。
【0067】
また、試料から抽出及び精製された標的核酸と本発明のポリヌクレオチド誘導体とをハイブリダイズさせる場合には、ポリヌクレオチドの長さによって異なるが、例えば室温(25℃程度)〜50℃程度、10〜48時間程度、2〜6×SSC程度の条件とすることができる。さらに、同程度の濃度のSSC溶液で3〜5回程度洗浄すればよい。
DNA チップ
本発明のDNAチップ(又はDNAアレイ)は、基体上に本発明のポリヌクレオチド誘導体が固定又は吸着されたものである。固定には共有結合などによる結合も含まれる。
【0068】
基体上へのDNAのスポット径は特に限定されないが、例えば50〜200μm程度とすることができる。またスポットピッチは特に限定されないが、例えば100〜500μm程度とすることができる。
【0069】
基体の材料は特に限定されず、例えばガラス、シリカ、金等を用いることができる。また、基体の形状は、板状(基板状)、ビーズ状等のどのような形状のものであってもよい。
【0070】
基体上に本発明のポリヌクレオチド誘導体を結合する場合には、本発明のポリヌクレオチド誘導体の一端を、例えば金属−硫黄結合などの方法を使用して、基体に結合させることができる。
【0071】
DNAチップに固定等される本発明のポリヌクレオチド誘導体のヌクレオチド数は、試料の種類によって異なるが、例えば10〜200個程度、好ましくは50〜100個程度とすることができる。
【0072】
試料が細胞抽出液等のヌクレアーゼを含むものである場合には、本発明のポリヌクレオチド誘導体は、ヌクレアーゼにより切断され難いように、ホスホロチオエートDNA又はRNA、H−ホスホネートDNA又はRNA等の修飾核酸であってもよい。
【0073】
ハイブリダイズに際しては、基体に固定された本発明のポリヌクレオチド誘導体に対して、試料を例えば0.1μM〜100μM程度、特に1μM〜10μM程度添加することができる。また、ハイブリダイズ条件はポリヌクレオチド誘導体の種類によって異なるが、例えば0〜60℃程度、特に20〜40℃程度の温度で、例えば1〜30分間程度、特に1〜5分間程度とすることができる。また、ハイブリダイズさせる試料は例えばpH5.5〜8.0程度、特にpH 6.5〜8.0程度に調整しておくことが好ましい。
【0074】
ハイブリダイズ後は、チップの種類に適した洗浄液で2〜5回程度洗浄すればよい。
【0075】
また、試料から抽出及び精製された標的核酸を用いる場合には、標的核酸を例えば2〜6×SSC程度のハイブリダイズ溶液に溶解させたものを本発明のDNAチップに作用させるのが好ましい。温度、時間、洗浄条件については、未精製の標的核酸を用いる場合と同様である。
本発明のヌクレオチドの同定方法
本発明のヌクレオチドの同定方法は、上記説明した本発明のポリヌクレオチド誘導体を試料中の標的核酸とハイブリダイズさせる工程と;
ハイブリダイズ産物の蛍光スペクトルを測定する工程と;
この蛍光スペクトルをハイブリダイズ前の本発明のポリヌクレオチド誘導体の蛍光スペクトルと比較することにより、標的核酸の特定位置のヌクレオチドの種類を同定する工程とを含む方法である。
【0076】
試料は、核酸を含むものであればよく、細胞抽出液、血液のような体液、PCR産物、オリゴヌクレオチド等が挙げられる。
【0077】
ハイブリダイズ条件は、プローブ又はDNAチップについて説明した通りである。
【0078】
蛍光スペクトルは、常法に従い、照射波長250〜600nm程度で測定すればよい。ハイブリダイズ前のポリヌクレオチド誘導体の蛍光スペクトル測定と、ハイブリダイズ産物の蛍光スペクトル測定とは、同じ媒体に溶解又は懸濁させた状態で行うことが好ましい。通常はハイブリダイゼーション溶液に溶解又は懸濁させた状態で測定すればよい。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、簡便かつ正確に核酸塩基の同定を行えるポリヌクレオチド誘導体、その中間体として使用できるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体及び塩基化合物が提供される。
【0080】
また、本発明によれば、簡便かつ正確に核酸塩基の同定を行えるDNAチップ及び簡便かつ正確に標的核酸中の特定塩基の同定を行える方法が提供される。
【0081】
さらにいえば、本発明のヌクレオチド誘導体を含むポリヌクレオチド誘導体は、標的核酸とハイブリダイズさせると、標的核酸における当該ヌクレオチド誘導体と対合するヌクレオチドの種類によって、蛍光強度が増大したり、消光したり、発光波長特に極大波長がシフトしたりする。
【0082】
従来は、プローブと標的核酸との特定位置における塩基対形成の有無により、プローブと標的核酸とにより形成される2本鎖の融解温度が若干異なることに基づいて塩基の同定を行っていたため、検出可能な程度に融解温度差を大きくするために、個々の標的核酸ごとにハイブリダイズ条件設定を行う必要があった。これに対して本発明では、蛍光の増大、低減、波長のシフト等により塩基の同定を行うため、このような手間のかかるハイブリダイズ条件設定が不要である。
【0083】
また、2本鎖の融解によらないため、融解が生じ難いような長いポリヌクレオチド誘導体とすることもできる。
【0084】
また、塩基間の非特異的な吸着や塩基対形成の不安定性などによる検出エラーが生じ難い。
【0085】
また、対合するヌクレオチドにより蛍光発光の波長がシフトする場合には、特定ヌクレオチドと対合した場合の蛍光波長に合わせたフィルター(特定の数十nmの波長の光だけを透過するフィルターであり、市販されている)を使用してこのフィルターに蛍光を通すことにより、特定波長の蛍光だけを検出することができ、対合ヌクレオチドの検出感度が増大する。
【0086】
また、他の長波長蛍光色素を反応系中に添加することにより、蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)を利用して検出感度を向上させたり、目で見える色の蛍光に変化させることができる。
【0087】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1( NDA 含有ヌクレオシド誘導体の合成)
図1を参照して本発明の1実施態様であるデオキシリボヌクレオシド誘導体の合成方法を説明する。
<糖部分の調製>
2−デオキシ−D−リボース(3.0g、22.4mmol)を0.1%メタノール/HCl(60ml)中に溶解させ、20分間撹拌することによりメチルグリコシドを得た。炭酸銀(0.88g、3.19ml)を添加して溶液を中性に調整し、濾過し濃縮して、シロップを得た。残存するメタノールをピリジンとともに2回留去させることにより除去した。残存物を無水ピリジン中に溶解し、0℃で冷却し、p−トルオイルクロリド(7.50g、48.5mmol)を滴下した。滴下完了後、混合物を50℃で2時間加熱し、室温で終夜撹拌した。水(100ml)を添加し、混合物をエーテル(200ml)を用いて抽出した。エーテル相を水、希塩酸(5%)及び飽和NaHCO3溶液で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、留去により粘稠なシロップを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)により白色粉末として純粋な1α/β−O−メチル−2−デオキシ−D−リボフラノシルビス(p−トルエート)を得た(図1化合物(a))。
【0088】
化合物(a)(11.8g、30.7mmol)の溶液に酢酸中の1M塩酸溶液(110ml)を添加した。室温下で、この溶液にガス状HClを通し、約10分後に溶液中に塩化物が結晶化した。白色結晶を濾過により集め、ヘキサンで洗浄し、真空デシケーター中で水酸化カリウム上で乾燥させ、9.0gの純粋な1α−クロロ−2−デオキシ−D−リボフラノシルビス(p−トルエート)を得た(図1化合物(b))。
<核酸塩基誘導体部分の導入>
次に、図2を参照して、糖への核酸塩基誘導体の導入を説明する。2−ニトロ−1−ナフトール(95%、10.0g、50.1mmol)をピリジン(150ml)に溶解させ、p−トルエンスルフォニルクロリド(12.0g、62.9mmol)を0℃において加えた。混合物を室温下6時間撹拌した。得られた混合物を減圧により濃縮した。粗生成物をクロロフォルムを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、橙色の固形物として、2−ニトロナフチルp−トルエンスルフォネート(図2化合物(c))を得た。
【0089】
次いで、無水THF(170ml)中にエチルシアノアセテート(4.62ml、42.6mmol)を溶解させ氷冷した溶液に、tert−カリウムブトキシド(4.78g、42.6mmol)を添加した。得られた白色の懸濁液を15分間撹拌し、化合物(c)(7.3g、21.3mmol)を加えた。懸濁液を7時間還流しつつ加熱した。溶液を水に注入し、水性混合物を濃塩酸を用いてpH2に調整した。混合物をエーテルを用いて3回抽出し、次いで、有機化合物相を乾燥させ、減圧下に濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)にかけ、シアノ(2−ニトロ−ナフタレン−1−イル)酢酸エチルエーテル(図2化合物(d))(3.7g、13.8mmol、収率65%)を黄色固体として得た。
【0090】
化合物(d)の酢酸(150ml)溶液にZn粉末(3.9g、60mmol)を添加した。混合物を44℃に加熱し、3.3時間超音波処理しさらにZn粉末を追加した(2.4g、36.7mmol)。さらに加熱及び3.3時間超音波処理した後、混合物を濾過した。濾液を減圧により濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=20:1)により精製し、2−アミノ−3H−ベンゾ[e]インドール−1−カルボキシリックアシッドエチルエステル(図2化合物(e))(2.34g、9.2mmol、67%)を黒色固体として得た。
【0091】
化合物(e)(1.1g、4.33mmol)の溶液、ナトリウムメトキシド(1.0g、18.5mmol)及びフォルムアミド(40ml)を220℃で6時間加熱し、220℃で濃縮して固体を得た。その固体をメタノール中で粉末にし、濾過した。濾液を濃縮して固体を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)により精製し、3,11−ジヒドロ−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール−4−オン(図2化合物(f))(379mg、1.61mmol、37%)を黄色固体として得た。
【0092】
化合物(f)(200mg、0.85mmol)、POCl3(20ml)及びp−ジオキサン(20ml)を3時間還流しつつ加熱した。混合物を濃縮して固体とし、次いで、水で洗浄した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=40:1)により精製し、4−クロロ−11H−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(図2化合物(g))(145mg、0.57mmol、67%)を黄色固体として得た。
【0093】
次いで、化合物(g)(112mg、0.44mmol)を無水アセトニトリル(10ml)中に室温で懸濁した。この懸濁液に水素化ナトリウム(油中60%、60mg、1.50mmol)を3回に分けて添加し、混合物を55℃で2時間撹拌した。これに、図1の化合物(b)(184mg、0.47mmol)を添加し、混合物を15分間撹拌し、乾燥するまで蒸発させ、残存物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)で精製し、黄色固体として4−クロロ−11−(2’デオキシ−3’,5’−ジ−O−p−トルオイル−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−11H−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(図2化合物(h))(234mg、0.38mmol、86%)を得た。
【0094】
40mlのメタノール/アンモニア溶液(−76℃で飽和)中の化合物(h)の懸濁液(101mg、0.167mmol)を密閉容器中で150℃で7時間撹拌した。混合物を蒸発により乾燥させ、残さをシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)により精製し、白色固体として4−アミノ−11−(2’−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−11H−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(55.6mg、0.158mmol、95%)(図2化合物(i))を得た。
【0095】
この化合物(i)は、塩基としてアデニン誘導体であるナフトデアザアデニン(NDA)を有するデオキシリボヌクレオシド誘導体である。
【0096】
実施例2( NDI 含有ヌクレオシド誘導体の合成)
図1を参照して説明する。実施例1において合成した化合物(h)(90mg、0.148mmol)、エタノール(5ml)、クロロフォルム(1.5ml)及び6M 水酸化ナトリウム水溶液(20ml)の混合物を還流しつつ4時間加熱した。次いで、飽和NH4Clを添加し、溶媒を蒸発させて固体を得た。次いでDMFを添加して濾過した。濾液を減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)で精製し、黄色固体として2’−デオキシ−β−エリスロ−ペントフラノシル−3,11−ジヒドロ−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(33mg、0.940mmol、収率66%)(図2化合物(j))。
【0097】
この化合物は、塩基としてイノシン誘導体であるナフトデアザイノシン(NDI)を有するデオキシリボヌクレオシド誘導体である。
【0098】
実施例3( MDI 含有ヌクレオシド誘導体の合成)
図3を参照して説明する。2−ブタノン(50ml)中に3−フルオロ−4−ニトロフェノール(6.0g、38.2mmol)、インドメタン(25ml)及び炭酸カリウム(10.0g、72.0mmol)を含む混合物を40℃で4時間加熱した。反応混合物を蒸発し、クロロホルム(50ml)中に注入した。これにより白色固体として6.81gの3−フルオロ−4−ニトロアニソール(図3化合物(k))が得られた。
【0099】
無水THF(153ml)中のエチルシアノアセテート(9.8ml、93.4mmol)の氷冷溶液に、窒素ガス下で、tert−カリウムブトキシド(10.9g、101.9mmol)を添加した。得られた白色懸濁液を15分間撹拌し、化合物(k)(8.0g、46.7mmol)を添加した。懸濁液を還流しつつ1.5時間加熱した。溶液を水中に注入し、水性混合物をエーテルで3回抽出し、有機化合物相を乾燥し、濃縮して油にした。次いで、この油をクロロフォルムに溶解し、カラムクロマトグラフィーでクロロフォルムを用いて溶出させることにより精製した。精製物画分を合わせて、濃縮することにより、淡黄色油としてシアノ(2−ニトロフェニル)酢酸エチルエステル(図3化合物(l))14.5gを得た。
【0100】
化合物(l)(13.2g、46.3mmol)の氷酢酸(185ml)溶液にZn粉末(12.1mg、185mmol)を添加した。混合物を超音波処理し、55℃で45分間加熱し、さらに4gのZn粉末を添加した。超音波処理後、さらに105分間加熱し、茶色混合物を濾過した。濾液を濃縮し、残さを得た。残さをカラムクロマトグラフィーにより精製し、連続的に0%、5%、10%の酢酸エチルのヘキサン溶液で溶出した。これにより、2−アミノ−5−メトキシ−1H−インドール−3−カルボキシリックアシッドエチルエステル(図3化合物(m))2.07g(収率52%)を得た。
【0101】
化合物(m)(100mg、0.42mmol)、ナトリウムメトキシド(50mg、0.93mmol)及びフォルムアミド(20ml)の懸濁液を220℃で1.5時間加熱した。溶液を25℃に冷却し、水中に注入した。茶色固体を集め、乾燥することにより1,9−ジヒドロ−6−メトキシ−4H−ピリミド[4,5−b]インドール−4−オン(図3化合物(n))(47mg、収率52%)を得た。
【0102】
化合物(n)(500mg、2.3mmol)、フォスフォリルクロリド(25ml)及び1,4−ジオキサン(25ml)の混合物を6時間還流した。混合物を減圧下に濃縮し、残さをエタノール中に注入した。5分間撹拌後、茶色の懸濁液を濾過し濾液を水中に注入した。白色固体として4−クロロ−6−メトキシ−1H−ピリミド[4,5−b]インドール(図3化合物(o))を回収した(620mg、収率96%)。
【0103】
化合物(o)(100mg、0.43mmol)を無水アセトニトリル(10ml)に室温で懸濁した。この懸濁液に水素化ナトリウム(油中60%、19mg、0.47mmol)を添加し、混合物を10分間還流しつつ撹拌した。リボース(184mg、0.47mmol)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン中の20%酢酸エチルで溶出させることより精製した。これにより、4−クロロ−6−メトキシ−7−(2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−トルオイル−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−7H−ピリミド[4,5−b]インドール(図3化合物(p))210mg(収率82%)を得た。
【0104】
10%エタノール及び1%クロロホルムを含む化合物(p)(100mg、0.17mmol)の3N水酸化ナトリウム水溶液を6時間還流した。冷却後、混合物を減圧下に濃縮し、残さをDMF(100ml)中に注入した。懸濁液を濾過し、濾液を減圧下に濃縮して乾燥し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)により精製し、1−ヒドロ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−7H−ピリミド[4,5−b]インドール−4−オン(図3化合物(q))53mg(収率94%)を得た。
【0105】
この化合物は、塩基としてイノシン誘導体であるメトキシベンゾデアザイノシン(MDI)を有するデオキシリボヌクレオシド誘導体である。
【0106】
実施例4( MDA 含有ヌクレオシド誘導体の合成)
図3を参照して説明する。20mlメタノール/アンモニア(−76℃で飽和)中の化合物(p)(500mg、0.85mmol)を密閉容器内で150℃で10時間撹拌した。濁った溶液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィによりクロロフォルム中の10%メタノールを用いて溶出し、4−アミノ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−7H−ピリミド[4,5−b]インドール(図3化合物(r))(420mg、75%)を得た。
【0107】
この化合物は、塩基としてメトキシベンゾデアザアデニン(MDA)を有するデオキシリボヌクレオシド誘導体である。
【0108】
実施例5( NDA 含有オリゴヌクレオチド誘導体の合成)
図4を参照して、実施例1により得られたNDA含有ヌクレオシド誘導体からNDA含有オリゴヌクレオチド誘導体を合成した例を説明する。
【0109】
N,N−ジメチルフォルムアミドジメチルアセタール(5ml、28mmol)を含む、図2の化合物(i)(55.6mg、0.158mmol)のジメチルフォルムアミド(5ml)溶液を室温下で3時間撹拌した。この溶液を減圧下で濃縮した。残さをシリカゲルクロマトグラフィー(クロロフォルム:メタノール=10:1)により精製し、黄色固体として4−(N,N’−ジメチルアミノメチリデン)アミノ−11−(2’−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−11H−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(図4化合物(s))(42.5mg、0.105mmol、66%)を得た。
【0110】
化合物(t)(22mg、0.031mmol)、N,N,N’,N’−テトライソプロピル−2−シアノエチルフォスフォロアミダイト(10.75ml、0.034mmol)及びテトラゾール(2.38mg、0.034mmol)の0.40mlアセトニトリル溶液を室温下で1.5時間撹拌した。混合物を濾過した。これにより、4−(N,N’−ジメチルアミノメチリデン)アミノ−11−(2’−デオキシ−5’−O−ジメトキシトリチル−β−D−エリスロ−ペントフラノシル−3’−O−シアノエチル−N,N’−ジイソプロピルフォスフォロアミダイト)−11H−ベンゾ[e]ピリミド[4,5−b]インドール(図4化合物(u))を得た。この化合物(u)を精製せずにDNA合成に供した。
【0111】
化合物(u)を用いてアプライドバイオシステム392DNA/RNAシンセサイザーを用いてフォスフォロアミダイト法によりオリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体5’−CGCAATXTAACGC−3’(配列番号1)である(Xは、NDA含有デオキシリボヌクレオチド;化合物(u)相当)。得られたNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を5−ODS−Hカラム(10×150mm)を用いた逆相HPLCにより精製した。溶出は、0.1Mトリエチルアミンアセテート(TEAA),pH7.0においてアセトニトリルを20分間で5%から25%の勾配をつけて、流速3.0ml/分間で行った。
【0112】
実施例6( MDI 含有オリゴヌクレオチド誘導体の合成)
実施例5において、NDA含有ヌクレオシド誘導体に代えて、実施例3により得られたMDI含有ヌクレオシド誘導体(図3化合物(q))を用い、その他は実施例5と同様にしてMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体を合成した。
【0113】
実施例7( MDA 含有オリゴヌクレオチド誘導体の合成)
実施例5において、NDA含有ヌクレオシド誘導体に代えて、実施例4により得られたMDA含有ヌクレオシド誘導体(図3化合物(r))を用い、その他は実施例5と同様にしてMDA含有オリゴヌクレオチド誘導体を合成した。
<オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体の同定>
HPLC
実施例5により得られたNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチドを仔ウシ腸アルカリフォスファターゼ(50U/ml)、蛇毒フォスフォジエステラーゼ(0.15U/ml)及びP1ヌクレアーゼ(50U/ml)により37℃で3時間完全に分解した。分解産物をCHEMCOBOND 5−ODS−Hカラム(4.6×150mm)(0.1Mトリメチルアミンアセテート(TEAA)、pH7.0、40分間かけて0%から40%のアセトニトリルの勾配、流速1.0ml/分)を用いたHPLCにより分析した。0.1mMのデオキシアデニル酸(dA)、デオキシシチジル酸(dC)、デオキシグアニル酸(dG)及びデオキシチミジル酸(dT)を標準溶液として用いて、ピーク位置及び面積を比較することによりNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチドに含まれるヌクレオチドを確認した。
【0114】
HPLCの溶出パターンを図5に示す。図5の(a)がNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチドを酵素分解したサンプルの溶出パターンであり、図5の(b)はデオキシアデニル酸(dA)、デオキシシチジル酸(dC)、デオキシグアニル酸(dG)及びデオキシチミジル酸(dT)の混合物の溶出パターンである。図5から、dA、dC、dG、dTのいずれにも該当しないNDA含有デオキシリボヌクレオチドによると考えられるピークが観察された。
MALDI−TOF 質量分析
実施例5により得られたNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチドについて、2’,3’,4’−トリヒドロキシアセトフェノンをマトリクスとして用い、内部標準としてT8mer([M−H]−2370.60)及びT17mer([M−H]−5108.37)を用い、蛍光分光光度計(島津製作所製RF5300PC)を用いて、MALDI−TOF質量分析を行った。マススペクトルを図6に示す。計算上の[M−H]−4025.72が4025.86の位置に検出された。
【0115】
このことから、実施例5のオリゴヌクレオチドは、合成過程で分解反応のような副反応や反応停止等を起こさずに所望の組成で得られたものであることが分かる。
<蛍光分析>
NDA 含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体
実施例5により得られたNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を、2.5μMとなるように、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液を調製した。この溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて約25℃で測定したところ、励起波長350nm、発光波長383nmであり、420nmにおける蛍光強度は、2.0であった。
【0116】
上記溶液に、NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体とNDA含有ヌクレオチド以外の部分が相補的な、別途合成したオリゴデオキシリボヌクレオチド(A’);5’−GCGTTAAATTGCG−3’(配列番号2)、(T’);5’− GCGTTATATTGCG −3’(配列番号3)、(G’);5’−GCGTTAGATTGCG−3’(配列番号4)、(C’);5’−GCGTTACATTGCG −3’(配列番号5)をそれぞれ2.5μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0117】
これらの溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定したところ、オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)を加えた場合には、420nmにおける蛍光強度は0.3であった。オリゴデオキシリボヌクレオチド(T’)を加えた場合には、420nmにおける蛍光強度は0.3であり、オリゴデオキシリボヌクレオチド(G’)を加えた場合には、420nmにおける蛍光強度は0.5であり、オリゴデオキシリボヌクレオチド(C’)を加えた場合には、420nmにおける蛍光強度は4.6であった。
【0118】
このように、NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体は、相補鎖上のNDA含有ヌクレオチドと対合するヌクレオチドがデオキシシチジル酸である場合には、NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体単独の場合の蛍光強度が維持されるが、デオキシアデニル酸である場合には蛍光が85%消光し、デオキシチミジル酸である場合には蛍光が85%消光し、デオキシグアニル酸である場合には蛍光が75%消光した。蛍光スペクトルを図7に示す。
MDI 含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体
実施例6により得られたMDI含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を、25μMとなるように、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液を調製した。この溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて約25℃で測定したところ、励起波長320nm、発光波長411nmであり、411nmにおける蛍光強度は2.3であった。
【0119】
上記溶液に、上記オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)、(T’)、(G’)及び(C’)をそれぞれ25μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0120】
これらの溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定したところ、オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)を加えた場合には、発光極大波長が短波長側にシフトするとともに397nmにおける蛍光強度は4.6であった。オリゴデオキシリボヌクレオチド(T’)を加えた場合には、発光極大波長が短波長側にシフトするとともに396nmにおける蛍光強度は8.2であった。(G’)を加えた場合には、発光極大波長が短波長側にシフトするとともに399nmにおける蛍光強度は5.1であった。(C’)を加えた場合には、発光極大波長が短波長側にシフトするとともに398nmにおける蛍光強度は2.1であった。
【0121】
このように、MDI含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体は、それ単独の場合に比べて、相補鎖上のMDI含有ヌクレオチドと対合するヌクレオチドがデオキシチミジル酸である場合には蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに蛍光強度が大幅に増大した。これに対して、デオキシシチジル酸である場合には蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに蛍光強度が維持された、また、デオキシアデニル酸である場合及びデオキシグアニル酸である場合には蛍光極大波長が短波長側にシフトするとともに蛍光強度が若干増大した。
【0122】
蛍光スペクトルを図8に示す。
MDA 含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体
MDAオリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を、25μMとなるように、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液を調製した。この溶液に、MDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体とMDA含有ヌクレオチド以外の部分が相補的な、オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)、(T’)、(G’)及び(C’)をそれぞれ25μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0123】
これらの溶液の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定したところ、オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)を加えた場合には、423nmにおける蛍光強度は0.3であった。オリゴデオキシリボヌクレオチド(T’)を加えた場合には、423nmにおける蛍光強度は0.4であった。(G’)を加えた場合には、421nmにおける蛍光強度は2.8であった。(C’)を加えた場合には、423nmにおける蛍光強度は10.8であった。
【0124】
このように、MDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体は、それ単独の場合に比べて、相補鎖上のMDA含有ヌクレオチドと対合するヌクレオチドがデオキシシチジル酸である場合に蛍光強度が大幅に増大した。また、対合するヌクレオチドがデオキシグアニル酸である場合には蛍光強度が若干増大した。これに対して、デオキシチミジル酸又はデオキシアデニル酸である場合には蛍光強度の変化は観察されなかった。
【0125】
蛍光スペクトルを図9に示す。
MDA 含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体
MDAオリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を、25μMとなるように、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液を調製した。この溶液に、MDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体とMDA含有ヌクレオチド以外の部分が相補的な、オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)、(T’)、(G’)及び(C’)をそれぞれ25μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0126】
各混合物に波長312nmの光を照射し、各混合物の色を観察した。各混合物をデジタルカメラで撮影した写真を図10に示す。図10に示されるように、相補鎖上のMDA含有ヌクレオチドと対合するヌクレオチドがデオキシシチジル酸である場合にのみ、1本鎖の場合には見られない強い蛍光が観察された。
【0127】
なお、各混合物の融解温度(Tm)を波長260nmにおける吸収スペクトルの変化を測定することにより決定したところ、(A’)の場合42.1℃、(T’)の場合54.6℃、(G’)の場合48.0℃、(C’)の場合52.0℃であり、ハイブリダイズを行った温度である25℃はいずれの組み合わせにおいても2本鎖を形成できる温度である。
<1塩基多型の検出>
家族性乳ガン及び卵巣癌で突然変異を引き起こす腫瘍抑制因子をコードする遺伝子であるBRCA−1の1塩基多型部位を含むポリヌクレオチドに対して、プローブとしてMDA含有オリゴヌクレオチド誘導体及びMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体をそれぞれ用いてハイブリダイゼーションを行い、蛍光を観察した。
【0128】
詳述すれば、BRCA−1のTアレルを含むポリヌクレオチドとして、5’−TATTTCATTGGTACC−3’(配列番号6)を合成し、Cアレルを含む配列として5’−TATTTCACTGGTACC−3’(配列番号7)を合成した。
【0129】
プローブとして、上記BRCA−1の部分配列に相補的であって、多型部位に対応する位置にMDA含有ヌクレオシド誘導体を有するオリゴヌクレオチド誘導体5’−GGTACCAXTGAAATA−3’(配列番号8)(Xは MDA含有オリゴヌクレオチド誘導体)を得た。合成方法は、実施例5において、NDA含有ヌクレオシド誘導体に代えて実施例4により得られたMDA含有ヌクレオシド誘導体を用い、その他は実施例5と同様とした。
【0130】
また同様にして、実施例3により得られたMDI含有ヌクレオシド誘導体を用いて配列番号8においてXがMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体であるMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体を得た。
【0131】
上記のMDA含有オリゴヌクレオチド誘導体及び上記のMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体を、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液を調製した。これらの溶液に、BRCA−1のTアレルを含むオリゴヌクレオチド及びBRCA−1のCアレルを含むオリゴヌクレオチドのそれぞれを、25μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0132】
各混合物に312nmの光を照射し、各混合物の色を観察した。各混合物をデジタルカメラで撮影した写真を図11に示す。図11から明らかなように、プローブとしてMDA含有オリゴヌクレオチド誘導体を用いた場合には、BRCA−1の多型部位がCアレルである場合に強い蛍光が観察された。また、プローブとしてMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体を用いた場合には、BRCA−1の多型部位がTアレルである場合にやや強い蛍光が観察された。
<熱力学パラメーター>
NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を、2.5μMとなるように、0.1M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた溶液に、上記オリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)、(T’)、(G’)及び(C’)をそれぞれ2.5μMとなるように添加し、ボルテックスミキサーにて混合した。
【0133】
各混合物について、形成された2本鎖の融解温度Tmを波長260nmにおける吸収スペクトルの変化を測定することにより決定した。
【0134】
対照として、上記NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体において、NDA含有デオキシリボヌクオチド誘導体に代えて、上記一般式(1)で表される化合物において、R1がアミノ基でありR2〜R6が水素原子であるベンゾデアザアデニン(BDA)を有するオリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体を用いて、同様にしてオリゴデオキシリボヌクレオチド(A’)、(G’)、(C’)及び(T’)とそれぞれ2本鎖を形成させ、それぞれTmを測定した。
【0135】
結果を以下の表1に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
表1に示すように、NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体ではオリゴデオキシリボヌクレオチド(C’)又は(T’)と対合させた場合には、オリゴデオキシリボヌクレオチド(G’)又は(A’)と対合させた場合に比べてTmが高かった。一方、BDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体では、オリゴデオキシリボヌクレオチド(T’)と対合させた場合にのみ比較的高いTmを示した。
【0138】
このことから、NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体は、オリゴデオキシリボヌクレオチド(C’)又は(T’)安定な2本鎖を形成できることが分かる。塩基部分において縮合しているベンゾ環が一つ増えることによりオリゴデオキシリボヌクレオチド(C’)とも安定な2本鎖を形成できるようになることが分かる。
【0139】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヌクレオチド又はヌクレオシド誘導体の合成に供される糖誘導体の合成手順を示す図である。
【図2】本発明のヌクレオシド誘導体の実施態様であるNDA含有デオキシリボヌクレオシド及びNDI含有デオキシリボヌクレオシドの合成手順を示す図である。
【図3】本発明のヌクレオシド誘導体の実施態様であるMDI含有デオキシリボヌクレオシド及びMDA含有デオキシリボヌクレオシドの合成手順を示す図である。
【図4】本発明のポリヌクレオチド誘導体の実施態様であるNDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチドの合成手順を示す図である。
【図5】NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体の酵素分解物のHPLCパターンを示す図である。
【図6】NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体のマススペクトルを示す図である。
【図7】NDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体に各種オリゴマーをハイブリダイズさせた場合の蛍光スペクトルの変化を示す図である。
【図8】MDI含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体に各種オリゴマーをハイブリダイズさせた場合の蛍光スペクトルの変化を示す図である。
【図9】MDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体に各種オリゴマーをハイブリダイズさせた場合の蛍光スペクトルの変化を示す図である。
【図10】MDA含有オリゴデオキシリボヌクレオチド誘導体に各種オリゴマーをハイブリダイズさせた場合の蛍光を観察した図面代用写真である。
【図11】乳ガン遺伝子であるBRCA−1の1塩基多型部位を含む部分配列に対して、プローブとしてMDA含有オリゴヌクレオチド誘導体及びMDI含有オリゴヌクレオチド誘導体を用いてハイブリダイゼーションを行い、蛍光を観察した図面代用写真である。
Claims (9)
- 以下の一般式(3)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチド誘導体。
- ポリヌクレオチドにおいて、1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(5)で表されるヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体。
- ポリヌクレオチドにおいて、1又は2以上のヌクレオチドが以下の一般式(6)で表されるヌクレオチド誘導体で置換されているポリヌクレオチド誘導体。
- プローブとして用いるための請求項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体。
- 基体上に1又は複数の請求項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体が固定又は吸着されたDNAチップ。
- 請求項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体を試料中の標的核酸とハイブリダイズさせる工程と;
ハイブリダイズ産物の蛍光スペクトルを測定する工程と;
この蛍光スペクトルをハイブリダイズ前の請求項5又は6に記載のポリヌクレオチド誘導体の蛍光スペクトルと比較することにより、標的核酸の特定位置のヌクレオチドの種類を同定する工程と
を含む標的核酸中のヌクレオチドの同定方法。
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JP2006169240A (ja) * | 2004-11-18 | 2006-06-29 | Kyoto Univ | プロダン含有ヌクレオチド及びその利用 |
JPWO2006075735A1 (ja) * | 2005-01-14 | 2008-06-12 | 日本碍子株式会社 | アレイおよびハイブリダイズ方法 |
-
2002
- 2002-11-18 JP JP2002333353A patent/JP2004166522A/ja active Pending
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